以下に、添付図面を参照して、本発明に係る貨幣処理システムについて詳細に説明する。貨幣処理システムは、金融機関の窓口で行う貨幣処理で作業の一部を顧客自らに行ってもらうセミセルフ式のシステムである。貨幣処理システムでは、紙幣及び硬貨の両方を処理対象とすることができる。以下では、窓口業務を行うために銀行に設置された貨幣処理システムを例に説明する。
図1は、本実施形態に係る貨幣処理システムで送受信される情報の概要を説明する図である。図1では、携帯端末10と、サーバ20と、貨幣処理装置30及びテラー端末40との間で送受信される情報の種類を示している。
貨幣処理システムは、携帯端末10と、サーバ20と、貨幣処理装置30及び該貨幣処理装置30に接続されたテラー端末40とを含んでいる。貨幣処理装置30及びテラー端末40は、銀行の窓口に設置されている。携帯端末10は窓口での貨幣処理を依頼する顧客に1台ずつ割り当てられており、顧客は割り当てられた携帯端末10を持って移動することができる。
携帯端末10は、例えば、タッチパネル式の液晶表示部を備えるタブレット等、持ち運び可能な小型のコンピュータ装置で、各種情報の入力、出力及び記憶を実行する機能を有する。携帯端末10は、顧客が、貨幣処理に必要な金額や銀行口座の口座番号等の伝票データを入力するために利用される。また、携帯端末10では、顧客に対する情報の報知や、顧客への操作要求等も行われる。携帯端末10は、サーバ20、貨幣処理装置30及びテラー端末40との間で、有線又は無線によるデータ通信を行う機能を有している。
サーバ20は、操作部、表示部、記憶部、制御部等を備えるコンピュータ装置である。サーバ20は、顧客が携帯端末10に入力した伝票データ、貨幣処理装置30で行われる貨幣処理データ等、貨幣処理システムで行われる貨幣処理に関するデータを携帯端末10毎に区別して管理する機能を有する。
貨幣処理装置30は、入金口に受け付けた貨幣を識別計数して一時保留部に収納して、識別計数結果が承認されると一時保留部の貨幣を収納部に収納する入金処理、収納部に収納されている貨幣を出金口に排出する出金処理等、各種の貨幣処理を行う機能を有する。貨幣処理装置30は、この他にも、入金口に受け付けた貨幣を筐体内部に取り込んで搬送する搬送部、搬送部によって搬送する貨幣の金種、真偽等を識別して計数する識別部、識別部によって偽券と識別された貨幣等を排出するためのリジェクト部、これら各部の機能及び動作を制御して貨幣処理を実現する制御部等を有している。貨幣処理装置30によって行われる貨幣処理と、貨幣処理を行う際の各部の動作については、特開2001−093022号公報等に開示されているため詳細な説明は省略する。
テラー端末40は、操作部、表示部、制御部、記憶部等を備えるコンピュータ装置で、貨幣処理装置30と通信可能に接続されている。テラー端末40を操作して、貨幣処理装置30で行われる貨幣処理に関するデータ入力、貨幣処理の制御、貨幣処理で得られた貨幣の識別結果の確認等を行うことができる。また、テラー端末40を金融機関の勘定系システムとオンライン接続することにより、口座元帳で口座に関する情報更新等を行うことも可能となっている。
図1に示すように、携帯端末10には、サーバ20で発行された受付番号が付与される。携帯端末10は、付与された受付番号をサーバ20から受信して記憶する。なお、受付番号とは、銀行窓口で行われる貨幣処理のそれぞれを識別するための識別番号である。
銀行窓口での入金処理や出金処理を依頼する顧客は、例えば、入出金する金額、金種、口座番号、氏名、住所等、処理に必要な情報を、伝票データとして、携帯端末10に入力する。携帯端末10は、顧客によって入力された伝票データと受付番号とをサーバ20へ送信する。サーバ20は、携帯端末10から受信した伝票データと、携帯端末10に付与した受付番号とを関連付けて管理する。
ただし、携帯端末10が受付番号を記憶して、サーバ20が受付番号と携帯端末10で入力された伝票データとを関連付けて管理することができれば、データを送受信する順序は特に限定されない。例えば、サーバ20が受付番号を発行する前に携帯端末10からサーバ20へ伝票データのみを送信して、伝票データを受信したサーバ20が受付番号を発行して携帯端末10へ送信し、サーバ20から受付番号を受信した携帯端末10がこの受付番号を記憶する態様であってもよい。
貨幣処理システムでは、複数台の携帯端末10が利用されるため、携帯端末10は、各携帯端末10を識別するための端末識別番号によって管理されている。サーバ20は、携帯端末10に付与された受付番号と、携帯端末10から受信した伝票データとを、端末識別番号と関連付けた状態で管理する。
窓口の貨幣処理装置30で、顧客が依頼した貨幣処理を実行する際には、顧客が手にする携帯端末10に記憶されている受付番号が、携帯端末10からテラー端末40へ送信される。携帯端末10から受信した受付番号をテラー端末40からサーバ20へ送信することにより、受付番号と関連付けてサーバ20で管理されている伝票データが、サーバ20からテラー端末40へ送信される。
テラー端末40は、サーバ20から受信した伝票データを携帯端末10に送信する。顧客が、携帯端末10の画面上に表示された伝票データを承認する操作を行うと、承認結果が携帯端末10からテラー端末40へ送信される。
伝票データに問題がないことが確認できると、テラー端末40は、貨幣処理装置30を占有状態にして、伝票データに基づく貨幣処理を開始する。ここで、占有状態とは、貨幣処理装置30で開始した貨幣処理を完了するまでの間、この貨幣処理に関する操作以外は受け付けない状態を言う。
貨幣処理装置30を占有状態にして貨幣処理を開始すると、携帯端末10の画面上には、貨幣処理を進めるために顧客が行う操作の案内等、貨幣処理に関する情報が表示される。例えば、入金処理であれば、携帯端末10の画面上に、入金する貨幣を貨幣処理装置30の入金口に投入するよう促すメッセージが表示される。顧客は、携帯端末10の画面上に表示されるメッセージに従って、入金する貨幣を貨幣処理装置30の入金口に投入する。また、例えば、出金処理であれば、携帯端末10の画面上に、出金口に排出した貨幣の抜き取りを促すメッセージが表示される。顧客は、出金する貨幣を出金口から抜き取る。
なお、伝票データ、貨幣処理結果等、携帯端末10の画面上に表示される貨幣処理に関する情報は、テラー端末40にも表示されるようになっている。窓口のテラーは、テラー端末40に表示される情報を確認しながら、必要に応じて、顧客が行う貨幣処理を補助する。
貨幣処理を実行して処理を完了可能な状態になると、貨幣処理装置30で得られた貨幣処理結果が、テラー端末40から携帯端末10へ送信される。具体的には、入金処理の場合には貨幣処理装置30で得られた入金貨幣の識別計数結果が携帯端末10に送信され、出金処理の場合には貨幣処理装置30から出金された貨幣の金種、金種別枚数及び合計金額等の情報が携帯端末10に送信される。
顧客が、携帯端末10の画面上に表示された貨幣処理結果を確認して承認する操作を行うと、承認結果が携帯端末10からテラー端末40へ送信される。顧客が貨幣処理を承認すると、テラー端末40は、貨幣処理装置30での貨幣処理を完了して、貨幣処理装置30の占有状態を解除する。占有状態の解除により、貨幣処理装置30では、次の貨幣処理を行える状態となる。
貨幣処理を完了すると、貨幣処理装置30で行われた貨幣処理に関するデータが、受付番号と共にテラー端末40からサーバ20へ送信される。サーバ20では、受付番号と、伝票データと、貨幣処理データとを関連付けて管理する。
なお、携帯端末10及びサーバ20と、テラー端末40との間で行うとしたデータ通信については、携帯端末10及びサーバ20と、貨幣処理装置30との間で行われる態様であっても構わない。
このように、貨幣処理システムでは、入金処理や出金処理に必要な金額や口座番号等の情報を、顧客自らが携帯端末10に入力する。携帯端末10に入力された伝票データは、サーバ20に送信されるので、サーバ20で、銀行内で行われる全ての窓口処理を管理することができる。窓口で貨幣処理を行う際には、顧客が手にする携帯端末10と、テラー端末40又は貨幣処理装置30と、サーバ20との間で、伝票データや貨幣処理結果等、貨幣処理を進めるために必要なデータが送受信される。窓口で伝票データを入力する作業が不要であるため、顧客が窓口にいる滞在時間を短縮して、効率よく窓口業務を進めることができる。また、テラーは、テラー端末40の画面上に表示される情報により、顧客が進める貨幣処理の処理状況を確認して、必要な場合にのみ顧客の作業を補助するだけでよいので、テラーの作業負担を軽減することができる。
次に、銀行内での貨幣処理システムの設置例及び貨幣処理システムの構成について説明する。図2は、貨幣処理システムを利用する銀行1の店舗内の様子を模式的に示した図である。図2では、上から見た店舗内の様子を示している。実際には、窓口4に、複数台の貨幣処理装置30と、各貨幣処理装置30を左右から操作するための端末台60等が設置されるが、以下では、説明を簡単にするため、窓口4に1台の貨幣処理装置30が設置されている場合を例に説明する。また、貨幣処理装置30の左右それぞれに設置されるテラー端末40、スキャナ付プリンタ50、端末台60については、左右の区別なく示す場合には数字のみの符号で示し、左右の装置を区別して示す場合には数字の末尾にアルファベットを付した符号で示す。
銀行1内には、店舗の入口に近い側に設けられた総合受付2と、店舗奥側に設けられた窓口4と、窓口4での処理の順番を待つ顧客が待機する待合スペース3とが設けられている。総合受付2には、サーバ20と通信可能に接続された受付装置25が設置されており、受付係5aの銀行員が配置されている。総合受付2で受け付けを行って、受付係5aから携帯端末10aを受け取った顧客6aは、待合スペース3へ移動する。総合受付2では、受付装置25を介して、携帯端末10とサーバ20との間でデータ通信を行って受付処理を行うが詳細は後述する。
待合スペース3では、顧客6bが、総合受付2で受け取った携帯端末10bを操作して、窓口4で依頼する貨幣処理に関する金額、口座番号、氏名、住所等の情報を、伝票データとして入力する。待合スペース3には、顧客自らが行う伝票データの入力を補助するために、案内係5bの銀行員が配置されている。待合スペース3で顧客が携帯端末10bに入力した伝票データは、携帯端末10からサーバ20へ送信される。
窓口4では、貨幣処理装置30を挟んで、別々の顧客6c、6dが、携帯端末10c、10dを端末台60a、60bにセットして貨幣処理を行えるようになっている。具体的には、左側の顧客6cが貨幣処理を行う間は、貨幣処理装置30が左側の顧客6cの占有状態となり、右側の顧客6dが貨幣処理を行う間は、貨幣処理装置30は右側の顧客6dの占有状態となって貨幣処理が進められるが、詳細については後述する。
貨幣処理装置30は、入金口30a及び出金口30bを有し、入金口30a及び出金口30bが設けられた装置前面を窓口4の外側にいる顧客6c、6dに向けて設置されている。顧客6cが入金処理を行う場合には、顧客6cが自ら貨幣を入金口30aに投入する。また、出金処理を行う場合には、出金口30bに排出された貨幣を顧客が抜き取る。なお、入金口30a及び出金口30bのそれぞれには、開閉が自動制御されるシャッターが設けられており、通常は閉じた状態にあるシャッターが、入金貨幣の投入時や出金貨幣の抜き取り時等、必要な場合にのみ自動的に開くようになっている。
貨幣処理装置30に接続された2台のテラー端末40は、表示画面を、窓口4を担当する銀行員であるテラー5cに向けて配置されている。また、貨幣処理装置30の左右両側に、端末台60及びスキャナ付プリンタ50が1台ずつ配置されている。具体的には、顧客6c、6dから見て貨幣処理装置30の左奥側にテラー端末40aが設置され、右奥側にテラー端末40bが設置されている。そして、貨幣処理装置30左側のカウンターテーブルの上に、端末台60a及びスキャナ付プリンタ50aが配置され、右側のカウンターテーブルの上に端末台60b及びスキャナ付プリンタ50bが配置されている。なお、スキャナ付プリンタ50については、貨幣処理装置30の左右それぞれに1台ずつ、合計2台を配置する態様に限定されず、1台のみを配置して利用する態様であっても構わない。
テラー端末40aの画面には、貨幣処理装置30の左側で顧客6cが行う操作や貨幣処理内容に関する情報が表示され、テラー端末40bの画面には、貨幣処理装置30の右側で顧客6dが行う操作や貨幣処理内容に関する情報が表示される。窓口4に配置されたテラー5cは、テラー端末40a、40bに表示される情報を確認して、必要に応じて、顧客6c、6dに操作方法や作業内容の説明等を行って、顧客自らが進める貨幣処理を補助する。テラー5cは、テラー端末40a、40bを操作して、顧客6c、6dの行う操作を、顧客に代わって実行することもできる。
スキャナ付プリンタ50は、通帳や帳票への印字と、運転免許証等の身分証明書のスキャンとを行う機能を有する。例えば、顧客が行った貨幣処理が、口座更新を伴うものであった場合には、携帯端末10に、スキャナ付プリンタ50に通帳をセットするよう指示する情報が表示される。顧客が、携帯端末10の画面に表示される情報に従って、スキャナ付プリンタ50に通帳をセットすると、口座更新に関する情報が通帳に印字される。
また、例えば、顧客が行う貨幣処理が身分証明書を必要とするものである場合には、テラー5cが、顧客の身分証明書を確認する。そして、テラー5cが、身分証明書をスキャナ付プリンタ50にセットすると、身分証明書をスキャンして画像が取得される。取得された画像は、テラー端末40を介してサーバ20へ送信され、サーバ20で、顧客が行う貨幣処理に関する情報と関連付けて管理される。
端末台60は、携帯端末10と、サーバ20及びテラー端末40との間で、データ通信を確立する機能を有する。端末台60は、サーバ20及びテラー端末40が有線接続されたネットワークと有線接続されている。携帯端末10と端末台60とを通信可能に接続することにより、携帯端末10、サーバ20及びテラー端末40の間で、有線接続されたネットワークを利用して、セキュリティ性の高いデータ通信を行うことが可能となる。具体的には、端末台60に携帯端末10をセットすると、携帯端末10と端末台60との間で近距離無線技術によるデータ通信が確立される。ただし、携帯端末10に設けられた通信用端子と、端末台60に設けられた通信用端子とを接続することにより、携帯端末10と端末台60との間でデータ通信を確立させる態様であっても構わない。
端末台60の利用状態はサーバ20によって監視されており、左右いずれかの端末台60に携帯端末10をセットできる状態になると、サーバ20は、顧客を端末台60へ案内する呼出処理を行う。呼出処理は、携帯端末10の画面上への情報表示、携帯端末10が備えるスピーカによる通知音又は音声の再生、携帯端末10が備えるLEDの発光等によって行われる。待合スペース3で伝票データの入力を終えた顧客は、携帯端末10での呼び出しを受けて、窓口4へ移動する。このとき、携帯端末10の画面上には、窓口4を示す情報、貨幣処理装置30を示す情報、貨幣処理装置30の左右いずれの方向から貨幣処理を行うかを示す情報等が表示されるようになっている。顧客は、画面上の情報に従って窓口4へ移動して、貨幣処理装置30の右側又は左側で、指定された端末台60に携帯端末10をセットして貨幣処理を開始するが、これらの処理の詳細については後述する。
次に、貨幣処理システムの構成について説明する。図3は、貨幣処理システムの構成概略を示すブロック図である。銀行1内のネットワーク70には、サーバ20と、受付装置25と、テラー端末40a、40bと、端末台60a、60bとが有線接続されている。2台のテラー端末40a、40bは、貨幣処理装置30に有線接続されている。また、テラー端末40aにはスキャナ付プリンタ50aが有線接続され、テラー端末40bにはスキャナ付プリンタ50bが有線接続されている。
携帯端末10(10a、10b…)は、無線LAN等の無線通信によりネットワーク70に接続して、サーバ20及びテラー端末40(40a、40b)とデータ通信を行う機能を有している。また、携帯端末10は、近距離無線技術による通信機能を有しており、端末台60(60a、60b)との間で近距離無線技術による通信を確立することにより、端末台60を介してサーバ20及びテラー端末40とデータ通信を行えるようになっている。同様に、携帯端末10と受付装置25との間で近距離無線技術による通信を確立することにより、受付装置25を介してサーバ20及びテラー端末40とデータ通信を行えるようになっている。
図1に示したように、携帯端末10と、テラー端末40と、サーバ20との間で、受付番号や伝票データ等のデータが送受信されるが、貨幣処理システムでは、データに係るセキュリティを確保するため、個人情報を含むデータは暗号化した上で送受信するようになっている。
また、貨幣処理システムでは、セキュリティ対策として通信方法を使い分けることも可能となっている。具体的には、受付番号の送受信は無線LANやBluetooth(登録商標)等の通信技術を利用して行い、個人情報が含まれる伝票データ等の送受信は、他の装置によって受信できないように、有線又は近距離無線技術を利用して行うよう設定することができる。近距離無線技術として、例えばNFCを利用する。NFCのように、データ通信可能な範囲が10cm程度の無線通信技術を利用して、携帯端末10と、受付装置25及び端末台60との間でデータを送受信すれば、他の装置ではこのデータを受信することができず、通信データに係るセキュリティを確保することができる。無線LANやBluetooth等の無線による通信、有線による通信、NFC等の近距離無線による通信のうち、いずれを利用してデータ通信を行うかは、送受信するデータの種類毎に設定できるようになっている。
図4は、サーバ20で管理される管理データの例を示す図である。図4に示すように、管理データには、対応要否、処理状況、端末識別番号、受付装置、受付番号、伝票データ、貨幣処理装置、関連データの項目が含まれている。
対応要否の項目は、待合スペース3及び窓口4で、顧客の補助が必要であるか否かを示す情報である。例えば、顧客が携帯端末10を受け取ってから所定時間を超えても、携帯端末10からサーバ20へ伝票データが送信されない場合に、この項目に、対応が必要であることを示す情報が表示される。図4の例は、端末識別番号がA003の携帯端末10を操作する顧客への対応が必要であることを示している。図2に示すように待合スペース3に配置された案内係5bは、図4に示す管理データを参照して、端末識別番号が「A003」の携帯端末10で伝票データの入力に時間がかかっていることを認識すると、この携帯端末10を操作する顧客の状況を確認して、必要に応じて伝票データの入力を補助する。
また、顧客を呼び出して窓口4へ案内してから所定時間を超えても貨幣処理を完了しない場合に、対応要否の項目に、対応が必要であることを示す情報が表示される。例えば、窓口4で、貨幣処理装置30の左側から貨幣処理を行う顧客の処理に時間がかかり、右側の顧客が所定時間を超えて待たされているような場合に、対応要否の項目が「要」となる。窓口4のテラー5cが貨幣処理を実行中の左側の顧客に対応する一方で、別の係員が、図4に示す管理データを参照して、窓口4で長時間待たされている顧客がいることを認識して、この顧客を別の貨幣処理装置30の所へ案内する。
図4に示す処理状況の項目は、携帯端末10毎、すなわち顧客毎の処理状況を示す情報である。処理状況の項目から、伝票データの入力を待つ「伝票待」、伝票データの入力を終えて窓口4での貨幣処理の順番を待つ「処理待」、窓口4で貨幣処理を行う「処理中」、窓口4での貨幣処理を完了した「完了」のうち、どの状況にあるかを認識できるようになっている。
図4に示す端末識別番号の項目は、携帯端末10のそれぞれを識別する識別番号である。受付装置の項目は、受付装置25のそれぞれを識別するための装置識別番号と、総合受付2で顧客の受付処理を行った受付日時とを含んでいる。受付番号の項目は、各携帯端末10、すなわち各顧客に付与された受付番号である。伝票データの項目は、サーバ20に伝票データを登録した登録日時と、伝票データとして顧客が携帯端末10に入力した金額や口座番号等の伝票内容とを含んでいる。伝票内容には、取引が、入金、出金、振り込み、両替、税金の支払い、公金の支払い等、どのような内容であるかを示す取引種別が含まれている。貨幣処理装置の項目は、端末台60に携帯端末10がセットされた端末セット日時と、携帯端末10がセットされた端末台60が貨幣処理装置30の左右いずれに設置されたかを示す情報と、貨幣処理装置30のそれぞれを識別するための装置識別番号と、貨幣処理が開始された日時を示す処理開始日時と、貨幣処理装置30で行われた取引のそれぞれを識別するための取引番号と、貨幣処理を行って得られた貨幣の識別計数結果や、出金した貨幣の金種、枚数及び合計金額等、貨幣処理で処理された貨幣を特定するための貨幣処理データとを含んでいる。関連データの項目は、例えば、身分証明書をスキャンしたデータ等、貨幣処理と関連して保存されたデータを特定するための情報である。
図4の例では、端末識別番号「A001」の携帯端末10を手にした顧客は、装置識別番号「B001」の受付装置25で受付を行って、受付番号「0001」を付与された後、装置識別番号「C001」の貨幣処理装置30を右側(図中「R」)から操作して取引番号「入金001」の入金処理を完了しており、この入金処理に関する関連データ「R001」がサーバ20で管理されていることを示している。
端末識別番号「A002」の携帯端末10を操作する顧客は、装置識別番号「C001」の貨幣処理装置30の左側(図中「L」)にある端末台60aに携帯端末10をセットして、貨幣処理を実行可能な「処理中」の状況にあることを示している。貨幣処理が開始されると、貨幣処理開始日時の項目に開始日時が登録される。そして、顧客が貨幣処理を承認して処理を完了すると、取引番号の項目に取引番号が登録され、処理された貨幣の金種や金額等の情報が貨幣処理データの項目に登録される。また、貨幣処理を行う際に、スキャナ付プリンタ50aで身分証明書のスキャン等が行われた場合には、スキャンして得られた画像等のデータがサーバ20に登録されて、登録したデータを特定する情報が関連データの項目に登録される。
端末識別番号「A004」の携帯端末10を操作する顧客については、サーバ20への伝票データの登録を終えて、貨幣処理を開始するために窓口4へ呼び出されるのを待つ「処理待」の状況にあることを示している。この顧客が呼び出されて窓口4へ移動し、端末台60にセットした携帯端末10と、サーバ20及びテラー端末40との間で通信可能な状態になると、貨幣処理装置の項目にある端末セット日時、左右及び装置識別番号に情報が登録される。
端末識別番号「A003」及び「A005」の携帯端末10を操作する2人の顧客については、携帯端末10に入力した伝票データがサーバ20に登録されるのを待つ「伝票待」の状態であることを示している。また、端末識別番号「A003」の携帯端末10では、総合受付2で受け付けを行ってから、伝票データがサーバ20へ登録されない状態が長く続いているため、対応要否の項目が「要」となっている。
このように、サーバ20で管理される管理データでは、各携帯端末10による処理状況、各携帯端末10で入力された伝票データ及び貨幣処理データ、各携帯端末10に関する処理が行われた受付装置25及び貨幣処理装置30等の情報が、携帯端末10毎に管理されている。これにより、顧客が、携帯端末10への伝票データの入力や貨幣処理装置30での貨幣処理に時間がかかっている場合に、銀行員がこれを認識して顧客を補助することができる。また、管理データに、携帯端末10の端末識別番号、受付装置25の装置識別番号、貨幣処理装置30の装置識別番号を登録することにより、携帯端末10、受付装置25、貨幣処理装置30が複数台ある場合にも、各装置で行われた処理を区別できるようになっている。これにより、貨幣処理の内容に問題が生じた場合には、処理に関係する装置のみを対象として原因を調査することができる。
次に、貨幣処理システムで行われる処理の流れについて説明する。図5及び図6は、顧客が銀行1の店舗に来店してから、携帯端末10に入力した伝票データがサーバ20の管理データに登録されるまでの処理の流れを示すタイムチャートである。図5と図6では、サーバ20が携帯端末10に受付番号を発行するタイミング(ステップS6、S12)と、携帯端末10に入力された伝票データをサーバ20に登録するタイミング(ステップS7、S18)との前後関係が異なっている。銀行1では、店舗での運用に応じて、図5又は図6のいずれの方法によって受付から伝票データの登録までの処理を進めるかを選択できるようになっている。
図5は、携帯端末10からサーバ20へ伝票データを送信した後に、サーバ20が、携帯端末10に付与する受付番号を発行する場合のタイムチャートである。図2に示す総合受付2で受付処理を開始する際には、受付装置25が携帯端末10aの端末識別番号を取得する(図5ステップS1)。受付装置25による端末識別番号の取得方法については、有線又は無線での通信によって受付装置25が携帯端末10から端末識別番号を取得する態様であってもよいし、顧客6a又は受付係5aが、端末識別番号又は端末識別番号を特定可能な情報を受付装置25に入力する態様であっても構わない。
受付装置25は、端末識別番号を取得すると、これをサーバ20へ送信する(ステップS2)。サーバ20は、受信した端末識別番号を、図4に示すように管理データに登録する(ステップS3)。
総合受付2で携帯端末10を手にした顧客は、待合スペース3へ移動する。待合スペース3で、顧客6bが、金額や口座番号等の伝票データを携帯端末10bへ入力すると(ステップS4)、伝票データは、携帯端末10bからサーバ20へ送信される(ステップS5)。このとき、伝票データと共に、携帯端末10bの端末識別番号がサーバ20へ送信される。
サーバ20は、伝票データ及び端末識別番号を受信すると受付番号を発行して(ステップS6)、受付番号及び伝票データを、図4に示すように、携帯端末10bの端末識別番号と関連付けて管理データに登録する(ステップS7)。そして、サーバ20は、発行した受付番号を携帯端末10に送信する(ステップS8)。携帯端末10は、サーバ20から受付番号を受信すると、これを記憶して(ステップS9)、窓口4で貨幣処理を開始するための呼び出しを待つ待機状態となる。
図6は、サーバ20が携帯端末10へ付与する受付番号を発行して送信した後に、携帯端末10からサーバ20へ伝票データを送信する場合のタイムチャートである。図2に示す総合受付2で、顧客6a又は受付係5aが、受付装置25を操作して受付処理を開始すると、受付装置25からサーバ20へ、受付番号を要求する信号が送信される(図6ステップS11)。この信号を受信したサーバ20は、受付番号を発行して(ステップS12)、受付装置25に送信する(ステップS13)。受付番号を受信した受付装置25が、携帯端末10へ受付番号を送信すると(ステップS14)、携帯端末10がこれを記憶する(ステップS15)。ただし、サーバ20で発行された受付番号を、受付装置25を介さずに、サーバ20から携帯端末10へ直接送信するよう設定することも可能となっている。
受付番号を記憶した携帯端末10を手にした顧客は、待合スペース3へ移動する。待合スペース3で、顧客6bが、金額や口座番号等の伝票データを携帯端末10bへ入力すると(ステップS16)、伝票データは、携帯端末10bからサーバ20へ送信される(ステップS17)。このとき、伝票データと共に、携帯端末10bに記憶していた受付番号と、携帯端末10bの端末識別番号とがサーバ20へ送信される。
サーバ20は、伝票データと、受付番号及び端末識別番号とを受信すると、図4に示すように、伝票データ及び端末識別番号を、発行済みの受付番号と関連付けて管理データに登録する(ステップS18)。携帯端末10は、サーバ20へ伝票データを送信した後、窓口4で貨幣処理を開始するための呼び出しを待つ待機状態となる。
なお、図5及び図6では、携帯端末10からサーバ20へ伝票データを送信する例を示しているが、伝票データを、受付装置25を介して送信することも可能となっている。例えば、大量の紙幣を入金したり出金したりする場合に、入出金処理に係る情報のセキュリティを確保するため、携帯端末10と受付装置25との間を近距離無線技術によって通信可能に接続して、伝票データを携帯端末10から受付装置25に送信する。そして、受付装置25は、有線接続されたネットワーク70を介して、携帯端末10から受信した伝票データをサーバ20へ送信する。携帯端末10と受付装置25との間では近距離無線技術を利用することにより、送受信するデータを他の装置で受信することはできない。また、受付装置25とサーバ20との間では、両方が有線接続された銀行1内のネットワーク70を利用することにより、送受信するデータを他の装置で受信することはできない。これにより、伝票データに係るセキュリティを確保することができる。
待機状態にある携帯端末10の画面上には、銀行1の金融商品の案内等、各種の広告が表示されるようになっている。サーバ20は、図4に示すように、管理データ上で携帯端末10の処理状況を監視している。サーバ20は、携帯端末10の処理状況が処理待になると、伝票データに含まれる住所や銀行口座等の情報から顧客に関連すると推測される広告を選択して携帯端末10に送信する。そして、携帯端末10の画面上に、サーバ20から受信した広告が表示される。
サーバ20は、管理データに伝票データを登録して処理待の状態にある携帯端末10を、受付番号に基づいて、順に窓口4へ呼び出す。図7は、顧客を窓口4へ呼び出してから、この顧客が貨幣処理を完了するまでの処理の流れを示すタイムチャートである。
なお、貨幣処理システムでは、窓口4で貨幣処理を開始する際に、携帯端末10がセットされた端末台60が、貨幣処理装置30の左右いずれに設置されたものであるかが認識されるようになっている。携帯端末10が左側の端末台60aにセットされると、携帯端末10、サーバ20、左側のテラー端末40a、左側のスキャナ付プリンタ50a、及び左側の端末台60aによって以下の処理が進められる。同様に、携帯端末10が右側の端末台60bにセットされると、携帯端末10、サーバ20、右側のテラー端末40b、右側のスキャナ付プリンタ50b、及び右側の端末台60bによって以下の処理が進められるが、処理手順及び処理内容は左右で同一であるため、以下では左右の別を省略して説明する。
図2に示すように、窓口4では、左右両側から貨幣処理装置30を利用できるようになっている。サーバ20は、貨幣処理装置30の左右いずれかで貨幣処理を開始できる状態になると、窓口4、貨幣処理装置30及び左右いずれかの端末台60を指定する情報を携帯端末10に送信して顧客を呼び出す(図7ステップS21)。携帯端末10の画面上にサーバ20から受信した呼出情報が表示されると(ステップS22)、顧客は、窓口4の貨幣処理装置30へ移動する。そして、顧客は、指示された左右いずれかの端末台60へ携帯端末10をセットして、携帯端末10とサーバ20及びテラー端末40とを通信可能に接続する(ステップS23)。携帯端末10を端末台60にセットすると、携帯端末10に記憶されていた受付番号がサーバ20へ送信される(ステップS24)。受付番号を受信したサーバ20は、受付番号に対応して管理されている伝票データを検索して(ステップS25)、受付番号及び伝票データをテラー端末40へ送信する(ステップS26)。
テラー端末40は、受信した受付番号及び伝票データを画面上に表示すると共に(ステップS27)、伝票データを携帯端末10へ送信して伝票データの承認を要求する(ステップS28)。なお、携帯端末10への伝票データの送信は、テラー端末40から行う態様に限定されず、サーバ20から、テラー端末40及び携帯端末10の両方へ伝票データを送信する態様であってもよい。
携帯端末10の画面上には、サーバ20からテラー端末40へ送信された伝票データが表示される。また、これに加えて、携帯端末10の画面上には、表示された伝票データに間違いなければ、これを承認するよう要求する情報が表示される。顧客は、画面上に表示された伝票データを確認して、これを承認する操作を行う(ステップS29)。顧客が伝票データを承認すると、これを示す信号が携帯端末10からテラー端末40へ送信される(ステップS30)。
テラー端末40は、伝票データを承認する信号を受信すると、貨幣処理装置30の制御を開始する(ステップS31)。そして、テラー端末40は、貨幣処理装置30に向けて、必要に応じて伝票データに含まれる貨幣の金種や金額等の情報から成る貨幣処理データを送信すると共に、貨幣処理の開始を指示するコマンドを送信する(ステップS32)。
貨幣処理データを受信した貨幣処理装置30は、貨幣処理データの送信元であるテラー端末40によって占有された占有状態となり、貨幣処理データに基づく貨幣処理を開始する(ステップS33)。具体的には、図2に示す左側のテラー端末40aから貨幣処理データを受信した場合には、貨幣処理装置30は左側のテラー端末40aの占有状態となり、右側のテラー端末40bからの指示を受け付けない状態となる。同様に、図2に示す右側のテラー端末40bから貨幣処理データを受信した場合には、貨幣処理装置30は右側のテラー端末40bの占有状態となり、左側のテラー端末40aからの指示を受け付けない状態となる。
貨幣処理が入金処理である場合には、貨幣処理装置30の入金口30aのシャッターが開き、入金する貨幣を入金口30aへ投入するよう指示する情報が携帯端末10の画面上に表示される。顧客が貨幣を入金口30aへ投入すると、貨幣処理装置30はシャッターを閉じて、入金口30aに受け付けた入金貨幣を識別計数して、装置内部の一時保留部へ収納する(ステップS34)。そして、貨幣処理装置30は、入金口30aへ投入された貨幣の識別計数結果を含む貨幣処理結果をテラー端末40へ送信する(ステップS35)。テラー端末40では、貨幣処理装置30から受信した貨幣処理結果が画面上に表示され、入金口30aに投入された貨幣の識別計数結果と伝票データに含まれる入金貨幣の情報とを比較して確認する処理が実行される(ステップS36)。入金口30aへ投入された貨幣の識別計数結果と、伝票データに示された入金貨幣の情報とが一致することを確認した後、貨幣処理結果とこの貨幣処理結果の承認を要求する信号とが、テラー端末40から携帯端末10へ送信される(ステップS37)。携帯端末10の画面上には、貨幣処理結果と貨幣処理の承認を要求する情報とが表示されるので、顧客が、この情報を確認して貨幣処理結果を承認する操作を行うと(ステップS38)、これを示す信号が携帯端末10からテラー端末40へ送信される(ステップS39)。こうして貨幣処理結果が承認されると、テラー端末40は、貨幣処理を完了するための処理を開始して(ステップS40)、貨幣処理装置30へ貨幣処理の完了を指示するコマンドを送信する(ステップS41)。これを受けて、貨幣処理装置30は、一時保留部に収納されていた貨幣を繰り出して、各貨幣の金種等に対応する収納部に収納する(ステップS42)。こうして貨幣処理を完了すると、テラー端末40による貨幣処理装置30の占有状態が解除される(ステップS43)。
なお、図7には示していないが、入金処理時に貨幣処理装置30から釣銭を払い出す必要がある場合には、貨幣処理装置30での識別計数結果と伝票データに含まれる入金金額とを比較するテラー端末40がこれを認識して、釣銭があることを示す情報を携帯端末10の画面上に表示させると共に、出金口30bへの釣銭の出金を指示するコマンドを貨幣処理装置30に送信する。また、貨幣処理装置30に投入された貨幣が伝票データに含まれる入金金額に満たない場合には、テラー端末40がこれを認識して、貨幣処理装置30に追加の貨幣の投入を指示する情報を携帯端末10の画面上に表示させると共に、追加の入金処理の実行を指示するコマンドを貨幣処理装置30に送信する。この他、例えば、顧客が貨幣処理結果を承認せず携帯端末10で入金処理をキャンセルする操作を行った場合には、テラー端末40がこれを認識して、顧客が投入した貨幣を一時保留部から出金口30bへ繰り出して顧客へ返却するよう指示するコマンドを貨幣処理装置30に送信するが、これらの処理内容は従来同様であるため詳細な説明は省略する。
一方、貨幣処理が出金処理である場合には、貨幣処理装置30は、装置内部の収納部に収納されている貨幣を繰り出して識別計数しながら、出金処理で指定された全ての貨幣を出金口30bに排出する(ステップS34)。貨幣処理装置30は、出金口30bに排出した貨幣の金種及び合計金額等を含む貨幣処理結果をテラー端末40へ送信する(ステップS35)。テラー端末40では、貨幣処理装置30から受信した貨幣処理結果が画面上に表示され、出金口30bに排出された貨幣の金種及び金額と、伝票データに含まれる出金貨幣の情報とを比較して確認する処理が実行される(ステップS36)。出金口30bへ排出された貨幣の情報と、伝票データに示された出金貨幣の情報とが一致することを確認した後、貨幣処理結果とこの貨幣処理結果の承認を要求する信号とが、テラー端末40から携帯端末10へ送信される(ステップS37)。携帯端末10の画面上には、貨幣処理結果と貨幣処理の承認を要求する情報とが表示されるので、顧客が、この情報を確認して貨幣処理結果を承認する操作を行うと(ステップS38)、これを示す信号が携帯端末10からテラー端末40へ送信される(ステップS39)。こうして貨幣処理結果が承認されると、テラー端末40は、貨幣処理を完了するための処理を開始して(ステップS40)、貨幣処理装置30へ貨幣処理の完了を指示するコマンドを送信する(ステップS41)。これを受けて、貨幣処理装置30は出金口30bのシャッターを開き、顧客は、シャッターが開いた出金口30bから出金貨幣を抜き取る(ステップS42)こうして貨幣処理を完了すると、テラー端末40による貨幣処理装置30の占有状態が解除される(ステップS43)。
なお、図7には示していないが、例えば、顧客が貨幣処理結果を承認せず携帯端末10で出金処理をキャンセルする操作を行った場合には、テラー端末40がこれを認識して、出金口30bのシャッターを閉じたまま、出金口30bの貨幣を繰り出して貨幣処理装置30内の収納部へ収納するよう指示するコマンドを貨幣処理装置30に送信する。また、出金処理については、ステップS37〜S39の処理を省略する態様であってもよい。また、出金処理時にも一時保留部を利用する設定となっている場合には、出金する貨幣を一時保留部へ収納した状態で(ステップS34)、その後の処理(ステップS35〜S41)が行われ、一時保留部の貨幣を出金口30bへ排出した後に出金口30bのシャッターを開くことになるが(ステップS42)、これらの処理内容は従来同様であるため詳細な説明は省略する。
貨幣処理を完了した貨幣処理装置30は、入金又は出金した貨幣の金種、金種別枚数、合計金額等の情報を含む貨幣処理結果を、携帯端末10、サーバ20及びテラー端末40に向けて送信する(ステップS44)。
携帯端末10は、貨幣処理装置30から受信した信号により、貨幣処理を完了したことを認識すると、携帯端末10を回収するため、携帯端末10をテラー5cに返却するよう指示する情報を画面上に表示する(ステップS45)。このとき、携帯端末10の記憶部に保存されていた伝票データ等の情報が自動的に消去されるようになっている。ただし、携帯端末10でのデータ消去のタイミングは設定により変更できるようになっており、例えば、テラー5cによる所定の手動操作を受けてデータを消去したり、貨幣処理を完了して端末台60から回収された携帯端末10と端末台60との間で近距離無線による通信が途切れたタイミングで伝票データを自動消去したりすることができる。
テラー端末40は、貨幣処理装置30から受信した信号により、貨幣処理を完了したことを認識すると、スキャナ付プリンタ50から、貨幣処理の結果を示すレシートを出力する(ステップS46)。顧客は、出力されたレシートを、貨幣処理に関する控えとして保管する。また、テラー端末40には、テラー5cに、貨幣処理を完了した携帯端末10を回収するよう指示する情報が表示される。テラー5cは、この指示を受けて、顧客から携帯端末10を回収する。回収した携帯端末10は窓口4から総合受付2に運ばれて、新たに来店した顧客に手渡されることになる。ただし、携帯端末10の回収は、窓口4でテラー5cが回収する態様に限定されず、貨幣処理を終えた顧客が総合受付2で返却する態様等であっても構わない。
なお、貨幣処理に関して通帳への印字が必要である場合には、携帯端末10及びテラー端末40の画面上に、通帳への印字を行うよう指示する情報が表示される(ステップS45、S46)。そして、顧客が、スキャナ付プリンタ50に通帳をセットすると、通帳に貨幣処理に関する情報が印字される(ステップS46)。
サーバ20は、貨幣処理装置30から貨幣処理結果を受信すると、これを管理データに登録する(ステップS47)。具体的には、図4に示す管理データの処理状況が「完了」に更新され、貨幣処理データの項目に貨幣処理結果が登録される。
なお、本実施形態では、銀行1で準備した携帯端末10を総合受付2で顧客に貸し出す例を説明したが、本実施形態がこれに限定されるものではない。例えば、伝票データを入力する携帯端末10の一部又は全部を、顧客が所有する携帯電話やタブレット等の端末とする態様であっても構わない。この場合は、予め、顧客の所有する携帯端末10に、銀行1の貨幣処理システムに対応した専用のアプリケーション(ソフトウェアプログラム)をインストールして、アプリケーション毎に付与されたシリアル番号を利用する。具体的には、アプリケーションのシリアル番号を、顧客所有の携帯端末10のそれぞれを識別する端末識別番号として利用することにより、上述した各処理を実現することができる。例えば、総合受付2で、顧客の所有する携帯端末10で専用アプリケーションを起動して受付装置25との間でNFCやBluetooth等による通信を開始すると、無線LANの設定が行われ、顧客の所有する携帯端末10が銀行1内のネットワーク70に接続される。窓口4で、顧客の所有する携帯端末10を端末台60に置いた際には、NFC、Bluetooth、無線LAN等の無線通信技術を利用して、専用アプリケーションとテラー端末40及びサーバ20との間でデータ通信を行う。これにより、上述した各処理を、顧客所有の携帯端末10を利用して実現することができる。なお、携帯端末10からサーバ20への伝票データの送信(図5ステップS5又は図6ステップS17)、サーバ20が携帯端末10を呼び出す呼出処理(図7ステップS21)については、無線LAN等の無線通信技術を利用してアプリケーション上で実行する態様の他、携帯端末10とサーバ20との間で電子メールを送受信することによって行う態様であっても構わない。予め、アプリケーションに顧客のメールアドレスを登録して、受付装置25での受付処理時にこのメールアドレスを取得すれば、サーバ20と顧客所有の携帯端末10との間で電子メールを送受信することができる。
また、顧客の所有する携帯電話やタブレット等では、専用のアプリケーションを利用して伝票データの入力のみを行って、銀行1内では、総合受付2で準備した携帯端末10を顧客に貸し出して利用する態様であってもよい。具体的には、例えば、顧客が、所有する携帯電話やタブレット等で専用のアプリケーションを起動して伝票データを入力すると、アプリケーション上で伝票データを示す2次元バーコードが作成される。顧客が、携帯電話やタブレット等の画面上に表示された2次元バーコードを、受付装置25が備えるカメラ部分にかざすと、受付装置25は2次元バーコードを読み取って、顧客が先に入力していた伝票データを認識する。そして、受付装置25は、認識した伝票データを、総合受付2で管理する銀行1の携帯端末10及びサーバ20に送信する。すなわち、受付装置25が図5又は図6に示す処理を実行して、携帯端末10には受付番号が記憶され、サーバ20には受付番号及び伝票データが登録された状態となる。顧客は、受付番号が記憶された携帯端末10を受け取って待合スペース3へ移動すると、やがて窓口4へ呼び出されて図7に示すように貨幣処理を実行することができる。
また、貨幣処理装置30で貨幣処理を行う際には、テラー端末40が貨幣処理装置30を占有状態にするが、テラー端末40は携帯端末10で行われる操作を受けて動作しており、実際には携帯端末10が貨幣処理装置30を専有した状態となる。貨幣処理装置30を専有状態とする態様については、テラー端末40を介して行う態様に限定されるものではなく、例えば、端末台60にセットされた携帯端末10によって、ネットワーク70を介して貨幣処理装置30を専有状態にして、貨幣処理を進める態様であってもよい。また、端末台60を貨幣処理装置30に直接接続して、この端末台60にセットされた携帯端末10によって貨幣処理装置30を専有状態にする態様であっても構わない。
また、窓口4では、1台の貨幣処理装置30に対して1台のテラー端末40を接続する態様であってもよい。この場合も、貨幣処理装置30の左右それぞれに配置された端末台60a、60bにセットした携帯端末10によって、貨幣処理装置30を占有状態にして貨幣処理を行う。
なお、携帯端末10によって貨幣処理装置30を専有する場合には、図7に示すステップS29及びS30による承認処理が携帯端末10で行われた後、ステップS31〜S41の間でテラー端末40が行うよう記載した処理が、引き続き携帯端末10によって実行される。このとき、テラー端末40の画面上には、左右いずれの携帯端末10によって貨幣処理装置30が専有されているかを示す情報、携帯端末10の画面上に表示される情報、顧客が携帯端末10に入力した情報、貨幣処理装置30の処理状況等が表示される。これにより、テラー5cは、テラー端末40の画面に表示された情報を確認しながら、必要に応じて顧客を補助することができる。
また、図7に示した処理について、顧客が携帯端末10を利用して入力した伝票データを取得するステップS24〜S30の処理については、サーバ20を介さずに、テラー端末40が携帯端末10から伝票データを直接受信する態様であってもよい。具体的には、先に携帯端末10に入力され、携帯端末10の記憶部に記憶されていた伝票データを、携帯端末10からテラー端末40へ直接送信して、その後のステップS31以降の処理を行う態様であってもよい。
また、本実施形態では、貨幣処理システムが、携帯端末10、サーバ20、貨幣処理装置30及びテラー端末40によって構成される例を示したが、貨幣処理システムの構成がこれに限定されるものではない。例えば、所定のテラー端末40又は貨幣処理装置30が、上述したサーバ20の機能を兼ね備え、携帯端末10、貨幣処理装置30及びテラー端末40によって貨幣処理システムを構成する態様であってもよい。また、所定の貨幣処理装置30が、上述したサーバ20及びテラー端末40の機能を兼ね備え、携帯端末10及び貨幣処理装置30によって貨幣処理システムを構成する態様であっても構わない。
上述してきたように、本実施形態に係る貨幣処理システムによれば、貨幣処理装置30は、伝票データの入力や確認の作業が行われる間は占有されず、貨幣処理が行われる間のみ(図7ステップS33〜S43)占有される。貨幣処理装置30が占有状態となる時間を短縮することにより顧客の待ち時間を短縮することができる。
また、貨幣処理システムでは、顧客自らが、貨幣処理に必要となる金額や口座番号等の情報を伝票データとして携帯端末10に入力する。顧客1人に1台ずつ携帯端末10が割り当てられ、各顧客が並行して伝票データの入力を行うことができるので、貨幣処理を効率よく進めることができる。
また、貨幣処理システムでは、セミセルフ式の貨幣処理を実現して、伝票データの入力、確認、承認等の操作、貨幣処理装置30の入金口30aへの貨幣の投入、出金口30bからの貨幣の抜き取り等が顧客によって行われる。これにより窓口4を担当するテラー5cの負担を大幅に軽減すると共に、貨幣処理に関するトラブルを回避することができる。
また、携帯端末10を利用して行われる伝票データの入力状況、貨幣処理装置30で行われる貨幣処理の処理状況等をサーバ20で管理することにより、携帯端末10の操作方法の説明等、対応が必要な顧客の存在を認識することができる。銀行1内で顧客が行う作業を必要に応じて補助することにより窓口業務を円滑かつ効率よく進めることができる。