JP6549044B2 - 自動車用遮熱合わせガラス - Google Patents

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本発明は、自動車用遮熱合わせガラスに関するものである。
従来から、自動車等の交通機関の省エネルギー対策の一つとして、熱線遮蔽性能を有した透明材料の開発が進められている。例えば、車窓から降り注ぐ太陽光線のうちの可視光線は透過するが、熱線は遮蔽し、かつ車内の熱を外部へ逃がさないための断熱機能を有した窓板用透明材料が開発されている。
窓板用透明材料に熱線を遮蔽する機能を付与する方法としては、アルミニウム等の金属層をフィルム等の上に均一に形成する方法が広く採用されている。
ところが、このような均一な金属層は、一般に電磁波を反射するため、車内において携帯電話や携帯テレビ等を使用することが困難になるといった問題が生じることがある。そこで、熱線は遮蔽するが、電磁波は透過させるといった機能を有したガラス板やフィルムの開発が進められてきている。
例えば、特許文献1には、ガラス基板上に所定の長さ以下に分割された膜を有する熱線反射ガラスが開示されている。また、特許文献2には、金属酸化物層と金属層の積層構造部を有する透明積層フィルムを2枚の透明基材で挟んだ構造体であって、該積層構造部に溝部が形成された遮熱性合わせ構造体が開示されている。さらに、特許文献3には、ガラス等の基材上に金属層および誘電体層が交互に積層された交互積層体を有する熱反射構造体が開示されている。
特公平8−28592号公報 特開2013−209230号公報 特開2013−256104号公報
しかしながら、特許文献1の熱線反射ガラスは、レーザー加工で分割溝を形成するものであり、生産性に劣るものであった。また、特許文献2には、積層構造部の溝部を形成するための方法がいくつか開示されているが、金属層の分断化の程度の制御が不十分であるため、可視光線透過率や電磁波透過性において、改良の余地を有するものであった。また、レーザー加工による方法は生産性に劣るものである。さらに、特許文献3には、誘電体層におけるクラックについての記載はあるものの、クラックの面内方向の大きさは制限されず、可視光線透過性や電磁波透過性において、必ずしも優れた性能とはならず、改良の余地を有するものであった。
自動車用遮熱合わせガラスにおいては、さらに、赤外線通信や赤外線カメラへの対応のために、波長850nm帯における分光透過率が高いことが要求される。また、省エネルギーと快適性の観点から、熱線を十分に遮蔽しつつ、可視光線は広い波長領域において透過性をさらに高めたいという要求も存在する。
このように、光の波長による選択性をより向上させた自動車用遮熱合わせガラスに対する要求は一層強いものとなってきている。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、熱線遮蔽性能、可視光線透過性能、ヘイズ、電磁波透過性能および選択的な分光透過性能に優れ、生産性にも優れた自動車用遮熱合わせガラスを提供することを課題とする。
本発明者は、熱線遮蔽性能、可視光線透過性能、電磁波透過性能の両立を図るために、遮熱フィルムまたは遮熱合わせガラスが有する金属層の形態について検討を進めた。その結果、基材フィルム上に所定形状の島状の金属皮膜を多数配置してなる金属層が有効であることが判明した。このような金属層であれば、島状の金属皮膜間の隙間を可視光線と電磁波とが透過して、可視光線透過性能と電磁波透過性能を付与することが可能となる。
さらに、このような島状の金属皮膜を多数配置したフィルムを高い生産性で製造する方法について検討を加えたところ、金属皮膜を有したフィルムを所定の比率で延伸することによって、比較的容易に製造できることを見出した。
そして、複数の島状の金属皮膜のサイズの平均値が80〜500μmである場合には、熱線を十分に遮蔽しつつ、ヘイズを増大させることなく、波長380〜780nmの可視光線の透過量を増大させることが可能となる。一方では、近赤外線領域の下限側にある波長850nmの近赤外線の透過量を増大させることも可能となる。
本発明は、このような検討を踏まえて、完成するに至ったものである。すなわち、本発明は以下のような構成を有するものである。
(1)本発明の自動車用遮熱合わせガラスは、2枚のガラス板によって遮熱フィルムが挟まれた構成を有する自動車用遮熱合わせガラスである。前記遮熱フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の表面に、少なくとも2層の金属層と少なくとも3層の金属酸化物層とからなる金属積層部を有している。前記金属層は銀、または銀と他の金属からなる化合物を含有する層であり、前記金属酸化物層は亜鉛ドープ酸化インジウムまたは錫ドープ酸化インジウムを含有する層である。前記金属層と前記金属酸化物層は交互に形成されており、前記金属層と前記金属酸化物層の層数の合計が5以上であり、前記金属積層部は、格子状のクラックによって複数の島状部に分断されている。複数の前記島状部の一辺の長さの平均値は、10点平均法にて80〜500μmであり、可視光線透過率は70%以上であり、波長850nmの分光透過率は35%以上であり、ヘイズは2%以下であり、電磁波遮蔽率は10dB以下である。
(2)本発明の自動車用遮熱合わせガラスは、遮熱性能TTSが60%以下であるであることが好ましい。
(3)本発明の自動車用遮熱合わせガラスは、波長1700nmの分光透過率が5%以下であるであることが好ましい。
本発明の自動車用遮熱合わせガラスは、熱線遮蔽性能、可視光線透過性能、ヘイズ、電磁波透過性能、選択的な分光透過性能および生産性に優れている。
本実施形態の自動車用遮熱合わせガラスの層構成を示す模式的断面図である。 本実施形態の自動車用遮熱合わせガラスの製造方法を示す模式図である。 遮熱合わせガラスの金属積層部の島状部を示す拡大写真の例である。 遮熱合わせガラスの金属積層部の島状部を示す拡大写真の例である。 遮熱合わせガラスの金属積層部の島状部を示す拡大写真の例である。 遮熱フィルムの金属積層部の島状部を示す拡大写真の例である。 遮熱フィルムの金属積層部の島状部を示す拡大写真の例である。 遮熱フィルムの金属積層部のクラックの形態を示す拡大斜視図である。
本発明の実施形態について説明する。但し、本発明の実施形態は、以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に係る自動車用遮熱合わせガラス(以下、「遮熱合わせガラス」ともいう。)は、自動車用窓板として使用されるものであり、2枚のガラス板とその間に挟まれた遮熱フィルムとを有している。遮熱フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の表面に、少なくとも1層の金属層と少なくとも1層の金属酸化物層とからなる金属積層部を有している。ここで、遮熱とは、熱線遮蔽性のことを意味する。
(電磁波、可視光線、近赤外線、遠赤外線、紫外線)
本実施形態において、電磁波とは、波長10mm〜10km、周波数30KHz〜30GHz程度の電磁波のことをいう。ラジオ放送、テレビ放送、無線通信、携帯電話、衛星通信等に使用される電磁波領域のものである。なお広義には、下記の可視光線、近赤外線、遠赤外線、紫外線等も電磁波に含まれる。
本実施形態において、可視光線とは、電磁波のうち肉眼で認識することができる光のことであり、一般に波長380〜780nmの電磁波のことを指している。近赤外線とは、およそ波長800〜2500nmの電磁波であり、赤色の可視光線に近い波長を有する。近赤外線は、太陽光の中に含まれており、物体を加熱する作用がある。これに対して、遠赤外線は、およそ波長5〜20μm(5000〜20000nm)の電磁波であり、太陽光の中には含まれず、室温付近の物体から放射される波長に近いものである。また、紫外線とは、およそ波長10〜380nmの電磁波である。
本実施形態において、熱線とは、紫外線〜近赤外線の領域のことを意味する。
[遮熱合わせガラス]
図1は、本実施形態の遮熱合わせガラスの層構成を示す模式的断面図である。
本実施形態の遮熱合わせガラス10において、2枚のガラス板6、7の間には、遮熱フィルム4が挟まれている。遮熱フィルム4は、透明樹脂からなる基材フィルム1の一方の表面に金属積層部2を有するものである。さらに基材フィルム1の他方の面および金属積層部2の外側の面にそれぞれ、接着層5が設けられている。そして、遮熱フィルム4は、その上下の接着層5によって2枚のガラス板6、7とそれぞれ貼合されている。図1においては、例えば、上方が車内側であり、下方が車外側である。
以下、遮熱合わせガラス10を構成する各部材について説明する。
(ガラス板)
遮熱合わせガラス10におけるガラス板6、7はいずれも、車内に外界から太陽光を取り込むための透明な板である。一般的には、いわゆる無機のガラス板や透明な有機樹脂からなる樹脂板が用いられる。無機のガラスとしては、ソーダ石灰ガラスが代表的なものである。透明な有機樹脂としては、アクリル系、スチレン系、水添環状樹脂、ポリカーボネート系、ポリエステル系など種々の樹脂を使用することができる。
本発明者は、熱線の遮蔽性能のより一層の向上を図るために、光の波長との関係に着目して、検討を進めた。その結果、近赤外線の波長領域(800〜2500nm)の透過率を低下させることが熱線の遮蔽性能の向上に有効であることを見出した。
さらに、近赤外線の波長領域において、遮蔽性能を高めるべく検討を進めたところ、遮熱合わせガラス10においては、特に限定されないが2枚のガラス板6、7のうち車内側のガラス板6が鉄イオンを含有していることが有効であることを見出した。
鉄イオンを含有するガラス板としては、特に限定されないが二酸化珪素(SiO)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カルシウム(CaO)を主成分とするソーダ石灰ガラスであって、鉄分をFeとして0.3〜0.9質量%含有し、鉄分を高い還元率で還元したガラス板が好ましい。鉄分の高い還元率の目安は、Fe2+/Fe3+で50〜250%である。鉄分を還元して2価の鉄イオンの含有量を増大させることによって、赤外線領域の吸収率を高めることができる。鉄分を還元する方法には、ソーダ石灰ガラス原料として珪砂、長石、ソーダ灰、ベンガラ等の粉末を用い、還元剤としてカーボンを用いて、電気溶融窯等で溶融させる方法等がある。また、鉄分の還元率は、レドックス測定装置によって測定することができる。
鉄イオンを含有するガラス板を遮熱合わせガラス10の車内側のガラス板6として使用することによって、近赤外線の波長領域における遮蔽性能のより一層の向上を図ることが可能となる。遮熱フィルム4の金属積層部2との複合効果によって、遮熱合わせガラス10としての熱線遮蔽性能をより一層向上させることが可能となる。
(基材フィルム)
基材フィルム1は、遮熱フィルム4の形態を維持するための基材であり、金属積層部2、接着層5等を保持する機能を有している。そのため、基材フィルム1は、機械的強度、可視光線透過率、加工性等に優れていることが好ましい。また、基材フィルム1は、可視光線を透過させるように透明樹脂から構成されている。基材フィルム1として使用される透明樹脂としては、アクリル系、ポリカーボネート系、スチレン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、水添環状樹脂、フッ素系、シリコーン系、ウレタン系など種々の樹脂が使用でき、用途や目的に応じて、使い分けることができる。これらの透明樹脂の中では、加工性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系が好ましい。
基材フィルム1は、透明樹脂の機械的物性等にも因るが、厚さは、8〜800μmであることが好ましく、12〜400μmであることがより好ましい。
(金属積層部)
金属積層部2は、車外から照射される太陽光のうち、熱線と紫外線を主に反射によって遮蔽するとともに、車内から発せられる遠赤外線を主に反射によって遮蔽する層である。熱線、紫外線、遠赤外線の反射は、金属内の多数の自由電子が電磁波の振動電場に合わせて集団振動するために起きると考えられている。
金属積層部2は、基材フィルム1の少なくとも一方の表面に設けられた層である。金属積層部2は、基材フィルム1の車内側および車外側のいずれかに設置することができるが、基材フィルム1の車内側に設置する方が、熱線の遮蔽性能の向上効果に優れているため、好ましい。金属積層部2は、基材フィルム1の一方の面上に直接形成してもよいし、他の基材層上に形成して、その後基材フィルム1と接着層等によって貼合してもよい。
金属積層部2は、少なくとも2層の金属層と少なくとも3層の金属酸化物層とからなる。
金属層を構成する金属としては、Ag、Al、Sn、Ni、Cu、Cr、In、Pd、Pt、Au等を挙げることができる。これらの金属は、導電性能に優れ、熱線、遠赤外線、紫外線を反射することが可能である。また、気相法等によって基材フィルム1の上に皮膜を形成することが可能であり、エッチング等によって島状の金属皮膜を形成することが可能である。これらの金属は、単独で使用してもよいし、性能的に問題がなければ、合金として使用してもよい。
金属層を構成する金属としては、銀またはアルミニウムまたはこれらの合金から構成されていることが好ましい。導電性に優れ、気相法による金属皮膜の形成とエッチングが容易であることから、本発明では金属層として銀、または銀と他の金属からなる化合物を含有する層を採用するものである。すなわち、銀合金がより好ましい。銀合金としては、銀にAu、Pt、Pd、Cu、Niを数質量%含有させた合金等がある。
金属酸化物層を構成する金属酸化物としては、チタンドープ酸化亜鉛(酸化亜鉛・チタン、SZO)、錫ドープ酸化インジウム(酸化インジウム・錫、ITO)、亜鉛ドープ酸化インジウム(酸化インジウム・亜鉛、IZO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化タングステン、酸化チタン、酸化ニオブ等を挙げることができる。これらの中でも、錫ドープ酸化インジウム(酸化インジウム・錫、以下「ITO」と記載する。)、亜鉛ドープ酸化インジウム(酸化インジウム・亜鉛、以下「IZO」と記載する。)が透明性、安定性の観点から好ましい。金属酸化物層として、高屈折の材料を用いることによって、金属層の可視光線透過性を高めることが可能となる。また、これらの金属酸化物は、導電性を有しており、成膜時の成膜速度が速く、量産性に優れている。
金属層と金属酸化物層は、金属層と金属酸化物層が交互に形成されている。また金属層と金属酸化物層の層数の合計が5以上である。金属層と金属酸化物層が交互に形成されており、金属層と金属酸化物層の層数の合計が5以上であり、更に金属層が金属酸化層に挟まれることによって、光学特性を最適化することができる。
金属層の厚さは合計で、2〜120nmであることが好ましく、4〜70nmであることがより好ましく、5〜30nmであることがさらに好ましい。ここで、金属層の合計の厚さとは、AgやAg合金等の金属のみからなる層の厚さの合計のことをいう。金属層の厚さがこの範囲にあると、熱線、遠赤外線、紫外線の反射性能に優れ、耐久性と取扱性にも優れている。
金属酸化物層の厚さは、いずれも各層が35nmを超えていることが好ましい。金属酸化物層の各層の厚さを35nmを超えて厚くすることによって、850nmの分光透過率を増大させることができる。
また、可視光線透過率をより向上させるためには、金属酸化物層の厚さは合計で100nm以上であることが好ましく、130〜180nmであることがより好ましい。さらに、低反射率化の観点から、少なくとも1層の金属酸化物層の厚さが50nmを超えていることが好ましく、65nm以上であることがより好ましい。
金属層と金属酸化物層の層数の合計が5以上である金属積層部2の具体例としては、例えば、IZO/Ag/IZO/Ag/IZO、ITO/Ag/ITO/Ag/ITO等の5層からなる金属積層部が挙げられる。
(遮熱フィルム)
遮熱フィルム4は、基材フィルム1の少なくとも一方の表面に、少なくとも2層の金属層と少なくとも3層の金属酸化物層とからなる金属積層部2を有するものである。金属積層部2は、格子状のクラックによって複数の島状部に分断されている。金属積層部2として、島状部を多数適切に配置させることによって、可視光線透過性能、電磁波透過性能および選択的な分光透過性能に優れた遮熱フィルム4を得ることが可能となる。
本発明者は、基材フィルム1上に、金属層と金属酸化物層とからなる島状部が多数配置されてなる金属積層部2を効率よく形成する方法について検討を加えた。その結果、基材フィルム1上にクラックを有していない金属積層部2を形成させた後、金属積層部2が形成された基材フィルム1を、延伸することによって、金属積層部2に格子状のクラックを発生させて、金属積層部2を複数の島状部に分断させることに成功した。
金属積層部2が形成された基材フィルム1を延伸すると、基材フィルム1は伸度を有するため延伸されるものの、金属積層部2は伸度をほとんど有していないため、金属積層部2は延伸時の応力によって破断され、全面に無数のクラックが発生する。その結果、金属積層部2はクラックによって無数の島状部に分断されることとなる(後記する図3等参照)。
その結果、金属積層部2にクラックが存在していないときは、電磁波透過性に劣っていたものが、金属積層部2の全面に無数のクラックが発生することによって、電磁波透過性能が大きく向上し、可視光線透過性能も改善されることが分かった。
一般に、金属積層部2が形成された基材フィルム1を延伸する際に、延伸率が高いほど、金属積層部2の破断が一層進行して、生じるクラックの量が増大し、分断された島状部のサイズは小さくなっていく。クラックの量が増加し、分断された島状部間の隙間が増大することから、電磁波透過性は向上する。ところが、延伸率が過剰に高く、クラックの量が増加すると、遮熱フィルム4が白濁する現象が発生し、遮熱フィルム4のヘイズが増大することが分かった。ヘイズが増大すると、遮熱フィルム4の外観の商品性が低下し、遮熱合わせガラス10としての外観の商品性も低下することとなる。ヘイズの許容値は外観の商品性等から決まるものであるが、2%以下の低い数値のものが要求されている。ヘイズは好ましくは1%以下である。
本発明者は、上記の知見を踏まえて、格子状のクラックによって分断された島状部のサイズについて検討を加えた。その結果、格子状に分断された島状部の縦横の長さを平均化した一辺の長さを特定すること、すなわち島状部の一辺の長さの平均値を、10点平均法にて80〜500μmとすることが、遮熱フィルム4の熱線遮蔽性能、可視光線透過性能および電磁波透過性能をバランスよく満足させた上で、ヘイズを増大させないように維持できることを見出した。島状部のかかる一辺の長さ(以下、単に島状部のサイズともいう)の平均値が80μm未満であると、ヘイズが2%を超えて、商品性が低下する懸念がある。また、島状部のサイズの平均値が500μmを超えると、分断された島状部を肉眼で認識し易くなり、金属光沢が強くなり、外観の商品性が低下する。島状部のサイズの平均値は、好ましくは90〜400μmであり、より好ましくは100〜300μmであり、更に好ましくは100〜230μmであり、最も好ましくは110〜230μmである。
ここで、島状部のサイズの平均値(μm)は、10点平均法によって求められる。10点平均法による島状部のサイズの平均値は、島状部の拡大写真中からランダムに選択した10点の測定値の平均値として求められる。このとき、島状部のサイズは、島状部と同等の面積を有する正方形に換算したとき、その正方形の一辺の長さとして求められる。
また、島状部のサイズの平均値(μm)は、画像解析法によっても求められる。島状部の画像解析法によるサイズの平均値は、以下のようにしてコンピュータを用いた画像解析によって求められる。まず、金属積層部2が格子状に分断された島状部を有する基材フィルム1の表面顕微鏡写真を撮る。写真画面中の領域間の境界線を鮮鋭化することによって強調させる。その後境界線を接続し、二値化前の画像をブラシ画像加工する。二値化後の画像中の不要の周辺粒子を削除して、穴埋めを行うことによって、島状部の面積が求められる。その島状部の面積から面積の平均値を求め、平均面積を有する正方形の一辺の長さとしてサイズの平均値が算出される。上記処理が可能な画像解析法のソフトウェアとしては、例えば、日鉄住金テクノロジー株式会社の粒子解析(Ver3.5)等を用いることができる。
金属積層部2に発生させるクラックは、金属積層部2の表面抵抗値を増大させて、電磁波透過性を向上させるためには、金属積層部2を構成する金属層と金属酸化物層のすべての層を貫通して生じていることが好ましい。図8は、後記する実施例において、実験番号1の遮熱フィルムの金属積層部のクラックの形態を示す拡大斜視図である。延伸によって、金属積層部2には、金属層と金属酸化物層のすべての層を貫通してクラックが生じていることが分かる。
金属積層部2において、格子状に分断された島状部によって被覆されていない部分の面積率は、30%以下であることが好ましい。金属積層部2の島状部に被覆されていない部分の面積率が30%以下であるときに、熱線遮蔽性能、電磁波透過性能、可視光線透過性能をいずれもよりバランスよく満足させることができる。金属積層部2の島状部に被覆されていない部分の面積率は、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。
本発明者はさらに、遮熱フィルム4の熱収縮特性と電磁波透過性能との関係について検討した。後記するように、遮熱合わせガラス10を得るためには、遮熱フィルム4を2枚のガラス板の間に挟んで加熱する工程を経る。遮熱合わせガラス10を形成する工程においては80〜140℃程度に加熱される。遮熱合わせガラス10を得るための加熱の際に遮熱フィルム4は一般に熱収縮する。このとき、遮熱フィルム4の熱収縮率が高いと、格子状に分断された島状部間の隙間が小さくなり、電磁波透過性能が低下する現象があることを見出した。その結果、得られた遮熱合わせガラス10は、電磁波透過性能にやや劣るものとなる。
そこで、遮熱合わせガラス10を得るための加熱の際に、収縮して電磁波透過性能が低下することがないようにするために、遮熱フィルム4が持つべき熱収縮特性について検討を加えた。その結果、遮熱フィルム4の150℃で30分間加熱した時の縦方向(MD)と横方向(TD)のそれぞれの熱収縮率が3%以下であることが好ましいことを見出した。縦方向の熱収縮率は、2.5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましい。横方向の熱収縮率は、2%以下がより好ましく、1.5%以下がさらに好ましい。遮熱フィルム4の150℃で30分間加熱した時の縦方向と横方向のそれぞれの熱収縮率を3%以下とするためには、基材フィルム1の熱セットを150℃を超える温度で行う等の方法がある。熱収縮率の測定は、JIS C2151:2006に準拠して行う。
前記したように、遮熱合わせガラス10を製造する際の加熱工程において、遮熱フィルム4が収縮して、電磁波遮蔽率が増大しないようにするため、隣接する島状部間には十分に隙間が存在することが好ましい。隣接する島状部間の距離は、0.3μm以上が好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。ここで、島状部間の距離とは、島状部の端部と隣り合う島状部の端部との最短距離のことをいう。
(接着層)
本実施形態の遮熱合わせガラス10では、遮熱フィルム4は、基材フィルム1の金属積層部2が形成された面とは反対側の面および金属積層部2の外側の面のそれぞれに、接着層5が設けられた構成を有している。遮熱フィルム4は、これらの接着層5によってそれぞれ、ガラス板6、7と貼合されている。
接着層5としては、遮熱フィルム4とガラス板との中間層として汎用的に使用される樹脂膜であれば特に制限されないが、可視光線領域や赤外線領域に吸収が少ないものが好ましい。
接着層5に使用される接着剤としては、例えば、室温では粘着性のない接着剤として基材フィルム1等に塗布や積層され、遮熱合わせガラス10を構成する各材料を積層させた後に、加熱処理することによって、粘着性・接着性が発現し、各層間を接着させることを可能とする接着剤が挙げられる。
接着層5に使用される接着剤としては、具体的に、ポリビニルブチラール系樹脂(PVB系樹脂)等のポリビニルアセタール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(EVA系樹脂)、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
接着層5に使用される接着剤は公知の方法を用いて製造したものでもよいが、市販品を利用してもよい。市販品としては、例えば、積水化学工業社製や三菱樹脂社製の可塑化PVB、デュポン社製や武田薬品工業社製のEVA樹脂、東ソー社製の変性EVA樹脂等がある。
接着層5の厚さは、100〜1000μmであることが好ましい。
接着層5に使用される接着剤には、紫外線吸収剤、抗酸化剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、着色剤、接着調整剤等を適宜添加配合してもよい。
接着層5と金属積層部2とが接して存在しているときには、接着層5に用いられる接着剤としては、金属皮膜を劣化させないために、pHが中性のものが好ましい。具体的には、化学構造としてカルボン酸を含まないものが好ましい。また防錆材を添加してもよい。
[遮熱合わせガラスの製造方法]
次に、本実施形態の遮熱合わせガラス10の製造方法について説明する。
本実施形態の遮熱合わせガラス10の製造方法は、基材フィルム1の少なくとも一方の表面に、少なくとも1層の金属層と少なくとも1層の金属酸化物層とからなる金属積層部2を設ける工程(以下、「金属積層部形成工程」とも記載する。)と、金属積層部2が形成された基材フィルム1を延伸することによって、金属積層部2に格子状のクラックを発生させて、金属積層部2を複数の島状部に分断させて、遮熱フィルム4を形成する工程(以下、「遮熱フィルム形成工程」とも記載する。)と、遮熱フィルム4の形成後に、遮熱フィルム4を、2枚のガラス板6、7の間に挟んで加熱して、遮熱合わせガラス10を形成する工程(以下、「遮熱合わせガラス形成工程」とも記載する。)を有している。
以下、各工程について順に説明する。
(金属積層部形成工程)
まず、基材フィルム1の少なくとも一方の表面全体に、金属積層部2を形成する。金属積層部2は、少なくとも1層の金属層と少なくとも1層の金属酸化物層とからなるため、金属層と金属酸化物層とをそれぞれ所定の層数で所定の厚さで順次積層していく。例えば、ITO/Ag/ITO/Ag/ITOからなる5層構成であれば、まず基材フィルム1上にITO層を形成し、その後Ag層を形成し、次にITO層を形成し、さらにAg層を形成し、最後にITO層を形成する。
基材フィルム1上に金属層と金属酸化物層とを形成する方法は、一般に、気相法が用いられる。気相法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法など公知の方法を適宜選択することができる。
(遮熱フィルム形成工程)
次に、表面全体に金属積層部2が形成された基材フィルム1を延伸することによって、金属積層部2の全面に格子状のクラックを発生させて、金属積層部2を複数の島状部に分断させて、遮熱フィルム4を形成する。
本発明者は、格子状に分断された島状部のサイズの平均値が10点平均法にて80〜500μmであって、かつヘイズを2%以下に維持するための延伸条件について検討を加えた。その結果、金属積層部が形成されたフィルムを、延伸率1〜4%で延伸することによって、上記サイズの島状部を形成し、かつヘイズを2%以下に維持することができることを見出した。ここで、基材フィルム1の延伸率には、延伸装置において設定される設定値としての延伸率と、実際に得られた基材フィルム1から実測された延伸率とがあり、両者は異なっていることが多い。ここでいう延伸率1〜4%とは、実測された延伸率としての数値である。また、延伸率は、延伸加工を施す前の寸法に対する延伸加工後の寸法の変化率として求められ、MD方向とTD方向のいずれの方向においても求められる。また、基材フィルムを延伸率1〜4%で延伸するとは、MD方向とTD方向の少なくともいずれかの方向において、延伸率が1〜4%となっていればよい。
延伸方法には、1軸延伸法、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法の3種類がある。1軸延伸法では、MD方向に延伸される。逐次2軸延伸法と同時2軸延伸法では、MD方向とTD方向に延伸される。いずれの方法であっても、延伸率を1〜4%とすることによって、格子状に分断された島状部のサイズの平均値を10点平均法にて上記範囲内とすることができる。延伸率が1%未満であったり、延伸率が4%を超えたりすると、島状部のサイズの平均値を上記範囲内とすることが困難であったり、ヘイズを2%以下に維持することが困難となる。延伸率は、1.5〜4.0%であることがより好ましく、1.5〜3.5%であることがさらに好ましい。
また、遮熱合わせガラス用の遮熱フィルムの場合は、MD方向またはTD方向における延伸率と熱収縮率との差を求めたときに、差が0.5%以上であることが好ましい。差が0.5%未満であると、遮熱合わせガラス10を製造する際の加熱工程において、遮熱フィルム4が収縮した際に、島状部同士が接触して、最大抵抗値が減少して、電磁波遮蔽率が増大する懸念がある。
1軸延伸法では、通常、2軸延伸法に比べて金属積層部2が分断されにくいため、延伸率を比較的高くすることが必要となる。そのため、1軸延伸法では2軸延伸法に比べてヘイズが増大し易くなることから、1軸延伸法よりも2軸延伸法の方が好ましい。さらに、2軸延伸法の中でも、同時2軸延伸法で延伸すると、逐次2軸延伸法の場合に比べて、格子状に分断された島状部の形状がより正方形に近いものとなり、分断された島状部の形状の均一性が向上するため好ましい。
延伸条件として、延伸温度は基材フィルム1を構成する樹脂のガラス転位点温度や軟化点温度以上に設定することが好ましい。基材フィルム1がPETであるならば、ガラス転位点温度が約80℃であるので、80℃以上の温度で行うことが好ましい。また、融解を防止する観点から250℃以下で行うことが好ましい。基材フィルム1を構成する樹脂がPETのときは、延伸温度は160〜220℃であることがより好ましい。延伸速度は通常、30mm/分〜50m/分程度の範囲で設定する。
(遮熱合わせガラス形成工程)
遮熱フィルム形成工程の次に、遮熱フィルム4を、2枚のガラス板6、7の間に挟んで加熱して、遮熱合わせガラス10を形成する遮熱合わせガラス形成工程を行う。当該工程について以下に詳しく説明する。
まず、遮熱フィルム4の両面にそれぞれ接着層5を形成する。接着剤樹脂を溶剤に適当量混合し、適切な粘度の溶液を調製する。その溶液を基材フィルム1または金属積層部2の上にコーティングする。その後乾燥させることによって、接着層5を形成することができる。
遮熱フィルム4とガラス板6、7とを貼合する方法は特に制限されず、一般的な合わせガラスの製造方法を用いればよい。具体例を次に説明する。
図2は、本実施形態の遮熱合わせガラス10の製造方法を示す模式図である。
まず、図2(a)に示すように、2枚のガラス板6、7の間に、両面に接着層5を形成した遮熱フィルム4を積層する。積層されたガラス板6、遮熱フィルム4およびガラス板7は、ローラー21上を移動して、次の工程に移る。
次に、図2(b)に示すように、密閉されたチャンバ22内で、積層されたガラス板6、遮熱フィルム4およびガラス板7は、ヒータ23によって80〜140℃の温度範囲、例えば90℃程度に加熱される。続いて、1対の圧着ロール24を通過させることによって、積層されたガラス板6、遮熱フィルム4およびガラス板7は仮圧着される。
次に、図2(c)に示すように、仮圧着された遮熱合わせガラス10は、オートクレーブ25中に収納される。オートクレーブ25中で、約1MPaに加圧され、80〜140℃の温度範囲、例えば130℃程度に加熱されることによって、仮圧着後に残った気泡は取り除かれ、遮熱フィルム4の接着層がガラス板6、7と十分に貼合されて、遮熱合わせガラス10が製造される。
遮熱合わせガラス形成工程における加熱としては、仮圧着前の加熱とオートクレーブ25中での加熱の2回行われる。いずれの場合も加熱温度は、80〜140℃であることが好ましい。また、通常は、仮圧着前の加熱時よりもオートクレーブでの加熱時の方が加熱温度を高く設定する。
[遮熱フィルムおよび遮熱合わせガラスの性能]
以下、遮熱フィルム4、遮熱合わせガラス10が有する各種性能について説明する。
(可視光線透過率)
遮熱フィルム4および遮熱合わせガラス10は、波長380〜780nmの可視光線を透過させる。遮熱フィルム4および遮熱合わせガラス10の可視光線透過率は、70%以上であることが好ましい。可視光線透過率が70%以上であると、視野的に優れたものとなる。74%以上がより好ましい。可視光線透過率は、JIS R3106:1998に準拠して、赤外反射測定機を用いて測定することができる。可視光線透過率の数値は、遮熱フィルム4を構成する基材フィルム1、金属積層部2、接着層5の構成素材や厚さ、島状部のサイズ、ガラス板6、7の材質や厚さ等によって調整することができる。
(可視光線反射率)
遮熱フィルム4および遮熱合わせガラス10は、可視光線反射率が25%以下であることが好ましい。可視光線反射率が25%以下であると、金属光沢が少なく、商品としての外観に優れたものとなる。可視光線反射率は、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。可視光線反射率は、JIS R3106:1998に準拠して、赤外反射測定機を用いて測定することができる。可視光線反射率の数値は、前記した可視光線透過率の場合と同様に、構成する各層の素材や厚さ、島状部のサイズ等によって調整することができる。
(日射反射率)
遮熱フィルム4および遮熱合わせガラス10は、日射反射率が20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上がさらに好ましい。日射反射率が20%以上であると、熱線遮蔽性に優れたものとなる。日射反射率は、JIS R3106:1998に準拠して、赤外反射測定機を用いて測定することができる。日射反射率の数値は、前記した可視光線透過率の場合と同様に、構成する各層の素材や厚さ、島状部のサイズ等によって調整することができる。
(波長850nmの分光透過率)
赤外線通信や赤外線カメラへの対応のために、近赤外線領域の中でも波長850nmにおける分光透過率は高いことが要求される。波長850nmの分光透過率は、35%以上であり、37%以上であることが好ましい。波長850nmの分光透過率は、可視光線透過率と同様にして測定される。
(波長1700nmの分光透過率)
可視光線領域に隣接する近赤外線領域(波長800〜2500nm)では、透過率が低く、熱線を遮蔽することが望まれる。このことを定量的に示すために、波長1700nmにおける分光透過率を用いることとする。波長1700nmにおける分光透過率は、5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましい。波長1700nmの分光透過率は、可視光線透過率と同様にして測定される。
(遮熱性能)
遮熱フィルム4および遮熱合わせガラス10の遮熱性能の指標として、TTSを用いる。TTSは、ISO13837:2008に準拠して測定する。具体的には、TTS=27.6+0.724×(日射透過率)−0.276×(日射反射率)の式から算出される。この透過及び反射スペクトルは分光光度計を用いて測定する。TTSは、60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
(全光線透過率)
遮熱フィルム4および遮熱合わせガラス10は、全光線透過率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。全光線透過率が60%以上であると、視野的に優れたものとなる。全光線透過率は、JIS K7136:2000に準拠して測定する。全光線透過率の数値は、前記した可視光線透過率の場合と同様に、構成する各層の素材や厚さや、島状部のサイズ等によって調整することができる。
(ヘイズ)
遮熱フィルム4および遮熱合わせガラス10は、ヘイズが2%以下であることが好ましい。ヘイズが2%以下であると、視野的により優れたものとなる。ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠して、ヘイズメータ(曇り度計)を用いて測定することができる。ヘイズの数値は、前記した可視光線透過率の場合と同様に、構成する各層の素材や厚さや、島状部のサイズ等によって調整することができる。
(電磁波透過性)
遮熱フィルム4および遮熱合わせガラス10は、電磁波の透過性能を定量化して評価するために、電磁波遮蔽率という指標を用いている。評価方法としては、KEC法を採用した。電磁波の測定範囲は、30MHz〜1GHzである。電磁波遮蔽率は、周波数800MHzにおける数値(dB)を用いる。
電磁波遮蔽率は、10dB以下であることが好ましい。電磁波遮蔽率が10dB以下であるときに、車内における携帯電話や携帯テレビ等の使用時において、支障の少ないものとすることができる。電磁波遮蔽率は、より好ましくは5dB以下であり、さらに好ましくは3dB以下である。
電磁波遮蔽率の数値は、遮熱合わせガラス10を構成する各層の素材や厚さ、島状部のサイズ等によって調整することができる。
本実施形態の遮熱合わせガラス10は、電磁波を透過させるので、車内において携帯電話や携帯テレビ等を使用することができる。車外から照射される可視光線をある程度は透過させるので、車内を明るくすることができる。一方、遮熱合わせガラス10は、熱線を遮蔽するので、車内の気温の上昇を抑制することができる。また、車内から放射される遠赤外線は車外へ逃げないようにすることができる。一方、赤外線通信や赤外線カメラへの対応のための波長850nmの近赤外線は良好に透過させることができる。さらに、紫外線は遮蔽して、車内の物品が紫外線によって経時的に劣化することを防止することができる。
また、本実施形態の遮熱合わせガラス10は、2枚のガラス板6、7によって遮熱フィルム4が挟まれた構成であるため、いずれの側が車外側になっても、雨風等による劣化を低減することができる。
本実施形態を下記の実施例によって、さらに具体的に説明する。
(遮熱フィルムの作製)
基材フィルムとして、下記のPETフィルムを使用した(以下「PETフィルム」と記載する。)。
PETフィルム(a):東レ社製、UF83、100μm厚、熱収縮率(MD/TD=0.4%/0.1%)、
PETフィルム(b):東洋紡社製、A4300、100μm厚、熱収縮率(MD/TD=1.0%/0.4%)
熱収縮率は150℃で30分間加熱した時の測定値である。
遮熱フィルムJ4の製造方法について説明する。PETフィルム(a)の一方の面に5層構造の金属積層部を有するフィルムを作製した。具体的には、5×10−5Torrの真空下で、スパッタリング法を用いて、39nm厚さのIZO皮膜、6nm厚さのAg皮膜、78nm厚さのIZO皮膜、6nm厚さのAg皮膜、39nm厚さのIZO皮膜を順次積層して、5層構造の金属積層部を形成した。ここで、IZOとしては、酸化亜鉛を10%ドープした酸化インジウムを用いた。
遮熱フィルムJ4の場合と同様にして、以下の構成を有する遮熱フィルムを作製した。遮熱フィルムJ7:31nm厚IZO/6nm厚Ag/62nm厚IZO/6nm厚Ag/31nmIZO
遮熱フィルムJQ2:39nm厚ITO/6nm厚Ag/78nm厚ITO/6nm厚Ag/39nmITO
ここで、ITOとしては、錫を10%ドープした酸化インジウムを用いた。
遮熱フィルムJ3は、基材フィルムとしてPETフィルム(b)を使用した以外は、遮熱フィルムJ4の場合と同様にして、以下の構成を有する遮熱フィルムを作製した。
遮熱フィルムJ3:37nm厚IZO/6nm厚Ag/74nm厚IZO/6nm厚Ag/37nmIZO
(延伸加工)
次に、得られた金属積層部を有するフィルムの延伸加工を行った。延伸機として、卓上型の延伸機またはロール型の延伸機を用いた。ロール型の延伸機としては、ヒラノ技研工業社製の逐次2軸延伸機(オーブン長6.2m)を使用した。巾500mmのロールを使用し、表1に記載の延伸温度、引張速度、設定延伸率で延伸を行った。操作としては、先ずMD方向に延伸し、巻き取り、その後TD方向に延伸して、サンプルを作製した。卓上型の延伸機としては、井元製作所製の卓上型延伸機、形式IMC−11A9を用いた。寸法100mm×100mmの金属積層部を有するフィルムを使用し、表1に記載の延伸温度、引張速度、設定延伸率で延伸を行った。実測の延伸率は、延伸加工前後の寸法を測定して求めた。
(合わせガラスの作製)
合わせガラスとしては、寸法100mm×100mmで、図1に記載の構成を有する合わせガラスを、以下に記載する条件で作製した。
平らなテーブル上に、セントラル硝子社製フロートガラス板(厚さ2mm)を置き、その上に接着層として、380μm厚のPVB(ポリビニルブチラールフィルム、積水化学工業社製S−LEC PVB)のシート(以下「PVBシート」と記載する。)を置いた。
その上に、表1に記載されたように各種の延伸条件で延伸された遮熱フィルムを金属積層部を下側にして置き、さらに接着層としてのPVBシートを置き、最後にセントラル硝子社製フロートガラス板(厚さ2mm)を置いた。
得られた積層板を図2に記載した製造ラインに通した。すなわち、密閉されたチャンバ22内で、得られた積層板をヒータ23を用いて約90℃に加熱した。その後、1対の圧着ロール24を通過させることによって、積層されたガラス板6と遮熱フィルム4とガラス板7を仮圧着させた。
次に、仮圧着された遮熱合わせガラス10をオートクレーブ25中に収納した。オートクレーブ25中で、約1MPaに加圧し、約130℃で30分間加熱することによって、仮圧着後に残った気泡を取り除き、遮熱フィルム4が接着層によってガラス板6、7と十分に貼合された遮熱合わせガラス10を製造した。
表1と表2に、実験番号1〜12の遮熱フィルムと遮熱合わせガラスの作製条件と評価結果を示した。表1には、遮熱フィルムの延伸条件と性能評価の結果を示した。表2には、遮熱フィルムと遮熱合わせガラスの性能評価の結果を示した。実験番号5と実験番号8は、延伸加工を行わなかった遮熱フィルムの性能評価の結果である。それ以外の実験は、遮熱フィルムとその遮熱フィルムを用いて作製した遮熱合わせガラスの評価結果を上下に並べて示している。
<性能評価方法>
実施例、比較例において、島状部のサイズ、島状部間の距離、可視光線透過率、可視光線反射率、日射透過率、日射反射率、分光透過率、遮熱性能TTS、全光線透過率、ヘイズ、最大抵抗値、電磁波遮蔽率について、以下に記載の条件にて性能の評価を行った。
尚、遮熱フィルムおよび遮熱合わせガラスの評価は、金属積層部が形成された側と反対側から所定の光線を照射して、その透過光、反射光について行った(図1参照)。
(島状部のサイズの平均値)
10点平均法と画像解析法の2つの方法で評価した。10点平均法は、キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX−1000を用いて測定した。
(島状部間の距離)
日立ハイテクサイエンス社製AFM5000IIを用いて測定した。ランダムに選択された2つの島状部間の距離(隙間の距離)について、3点の平均値として求めた。
(可視光線透過率、可視光線反射率、日射透過率、日射反射率、分光透過率)
分光光度計(島津製作所社製、UV3160)を用いて分光透過率および分光反射率を測定し、JIS R3106:1998に基づき、可視光線透過率、可視光線反射率、日射透過率、日射反射率を算出した。
(遮熱性能)
ISO13837:2008に準拠して測定した。TTS=27.6+0.724×(日射透過率)−0.276×(日射反射率)の式から算出した。
(全光線透過率)
全光線透過率は、JIS K7136:2000に準拠して、日本電色工業社製ヘイズメーターNDH7000を用いて測定した。全光線透過率は、遮熱フィルムと遮熱合わせガラスの両方のサンプルを用いて測定した。
(ヘイズ)
ヘイズは、JIS K7136:2000に準拠して、日本電色工業社製ヘイズメーターNDH7000を用いて測定した。ヘイズは、遮熱フィルムと遮熱合わせガラスの両方のサンプルを用いて評価した。
(最大抵抗値)
最大抵抗値は、CUSTOM社製デジタルテスターCDM−11Dを用いて測定した。最大抵抗値は、遮熱フィルムを用いて測定した。最大抵抗値は数値が大きく、電気的に絶縁性であることが好ましい。
(電磁波透過性)
15cm×15cmのサンプルを使用して、KEC法によって、30MHz〜1GHzの周波数範囲で電磁波遮蔽率を測定した。電磁波遮蔽率の数値は、周波数800MHzのときの数値(dB)を用いた。電磁波遮蔽率は、遮熱フィルムと遮熱合わせガラスの両方のサンプルを用いて評価した。
図3〜図7はそれぞれ、実験番号2、4、7、9、11の遮熱フィルムまたは遮熱合わせガラスの金属積層部の島状部を示す拡大写真の例である。図6、図7に比べて図3〜5の島状部のサイズが小さくなっており、延伸率が大きくなるにつれて、島状部のサイズが小さくなっていることが分かる。
表1、表2の結果から分かるように、実験番号2、12の遮熱合わせガラスは、島状部のサイズの平均値が80〜500μmの範囲であり、いずれも可視光線透過率、波長850nmの分光透過率、ヘイズおよび電磁波遮蔽率において優れた性能を有していた。また、実験番号2、12の遮熱合わせガラスは、いずれも全光線透過率、可視光線反射率、日射反射率およびTTSにおいても優れており、1700nmの分光透過率も5%以下と低いものであった。
実験番号4の遮熱合わせガラスは、延伸率が比較的大きいため、島状部のサイズの平均値が80μm以下であり、ヘイズが劣っていた。実験番号10の遮熱合わせガラスは、850nmの分光透過率が劣っていた。実験番号7の遮熱合わせガラスは、延伸率と熱収縮率との差が小さいため、遮熱合わせガラス製造時の加熱処理時に遮熱フィルムが収縮し、金属積層部の隣接する島状部同士が一部接触したと推定され、電磁波透過性が劣っていた。
1 基材フィルム
2 金属積層部
3 保護層
4 遮熱フィルム
5 接着層
6、7 ガラス板
10 遮熱合わせガラス

Claims (3)

  1. 2枚のガラス板によって遮熱フィルムが挟まれた構成を有する自動車用遮熱合わせガラスであって、
    前記遮熱フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の表面に、少なくとも2層の金属層と少なくとも3層の金属酸化物層とからなる金属積層部を有するものであり、
    前記金属層が銀、または銀と他の金属からなる化合物を含有する層であり、
    前記金属酸化物層が亜鉛ドープ酸化インジウムまたは錫ドープ酸化インジウムを含有する層であり、
    前記金属層と前記金属酸化物層は交互に形成されており、前記金属層と前記金属酸化物層の層数の合計が5以上であり、
    前記金属積層部は、格子状のクラックによって複数の島状部に分断されており、
    前記島状部の一辺の長さの平均値が10点平均法にて80〜500μmであり、
    隣接する島状部間の距離が0.5〜5μmであり、
    可視光線透過率が70%以上であり、
    波長850nmの分光透過率が35%以上であり、
    ヘイズが2%以下であり、
    電磁波遮蔽率が10dB以下であることを特徴とする自動車用遮熱合わせガラス。
  2. 遮熱性能TTSが60%以下であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用遮熱合わせガラス。
  3. 波長1700nmの分光透過率が5%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動車用遮熱合わせガラス。
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