図1A〜図2Iにおいて、紙面上下方向は、上下方向(第1方向、厚み方向)であり、紙面上側が上側(第1方向一方側、厚み方向一方側)、紙面下側が下側(第1方向他方側、厚み方向他方側)である。紙面左右方向は、左右方向(第1方向に直交する第2方向)であり、紙面左側が左側(第2方向一方側)、紙面右側が右側(第2方向他方側)である。紙厚方向は、前後方向(第1方向および第2方向に直交する第3方向)であり、紙面手前側が前側(第3方向一方側)、紙面奥側が後側(第3方向他方側)である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
<第1実施形態>
1.被覆光半導体素子の製造方法
本発明の被覆光半導体素子の製造方法の第1実施形態は、仮固定シートの一例としての第1仮固定シート10の上面に互いに間隔を隔てて仮固定された複数の光半導体素子1と、複数の光半導体素子1から露出する第1仮固定シート10の上面に直接接触するように、複数の光半導体素子1を被覆する第1被覆層の一例としての第1蛍光体層2とを用意する工程(1)(図1Aおよび図1B参照)と、隣接する光半導体素子1の間に位置する第1蛍光体層2に、上方に向かって開放される溝3を設ける工程(2)(図1C参照)と、第2被覆層4を溝3に充填して、光半導体素子1、第1蛍光体層2および第2被覆層4を備える被覆光半導体素子5を得る工程(3)(図1D〜図2H参照)と、被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10から第1転写シート27に転写する工程(4)(図2I参照)とを備える。
以下、各工程を順次説明する。
1−1.工程(1)
図1Aおよび図1Bに示すように、工程(1)では、複数の光半導体素子1と、第1蛍光体層2とを用意する。すなわち、第1仮固定シート10の上面に互いに間隔を隔てて仮固定された複数の光半導体素子1と、複数の光半導体素子1から露出する第1仮固定シート10の上面に第1蛍光体層2が直接接触するように、複数の光半導体素子1を被覆する第1蛍光体層2とを用意する。
より具体的には、図1Aに示すように、工程(1)では、まず、複数の光半導体素子1を、第1仮固定シート10の上面に互いに間隔を隔てて仮固定する。
光半導体素子1は、電気エネルギーを光エネルギーに変換する光半導体素子である。光半導体素子は、光半導体素子とは技術分野が異なるトランジスタなどの整流器を含まない。光半導体素子1は、例えば、厚み(上下方向の最大長さ)が面方向長さ(具体的には、左右方向長さおよび前後方向長さ)より短い断面視略矩形状および平面視略矩形状を有している。光半導体素子1の下面の一部は、バンプ(図示せず)によって形成されている。バンプは、基板50(図4参照、後述)の上面に設けられる端子(図4において図示せず)と電気的に接続されるように構成されている。
光半導体素子1としては、具体的には、青色光を発光する青色LED(発光ダイオード素子)が挙げられる。
光半導体素子1の厚み(上下方向長さ)L1は、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。光半導体素子1の幅(左右方向長さおよび前後方向長さ)L2は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.2μm以上であり、また、例えば、5000μm以下、好ましくは、2000μm以下である。
第1仮固定シート10は、複数の光半導体素子1を仮固定し、また、その後、第1蛍光体層2によって複数の光半導体素子1をまとめて被覆して封止して、その後、第1蛍光体層2に溝3を形成するための支持部材である。
第1仮固定シート10は、仮固定層11と、支持層12とを備える。
仮固定層11は、複数の光半導体素子1を仮固定するために、仮固定層11の上部に設けられる。仮固定層11は、感圧接着層を有しており、感圧接着層は、例えば、感圧接着剤から、左右方向および前後方向に延びる略平板形状に形成されている。感圧接着剤としては、例えば、処理(具体的には、活性エネルギー線の照射など)によって、感圧接着力が低減する感圧接着剤が挙げられる。また、仮固定層11は、1つの感圧接着層と、その感圧接着層の下面に設けられる基材(図示せず)とを有することができる。さらに、仮固定層11は、2つの感圧接着層と、それらの間に介在する基材(図示せず)とを有することもできる。さらに、仮固定層11の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、150μm以下である。
支持層12は、仮固定層11を支持するために、仮固定層11の下面に設けられる。支持層12としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム(PETなど)などのポリマーフィルム、例えば、セラミクスシート、例えば、金属箔などが挙げられる。好ましくは、ポリマーフィルムが挙げられる。支持層12の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
そして、複数の光半導体素子1を、第1仮固定シート10の上面に互いに間隔を隔てた仮固定する。具体的には、複数の光半導体素子1を仮固定層11の上面に、左右方向および前後方向に間隔を隔てて整列配置する。より具体的には、複数の光半導体素子1の下面を、第1仮固定シート10の仮固定層11の上面に接触させる。
隣接する光半導体素子1間の間隔L3は、例えば、0.1mm以上、好ましくは、0.3mm以上であり、また、例えば、3mm以下、好ましくは、2mm以下である。複数の光半導体素子1のピッチP、すなわち、一の光半導体素子1の幅L2と、一の光半導体素子1とそれに隣接する光半導体素子1との間の間隔L3との総和P(=L2+L3)は、例えば、0.3mm以上、好ましくは、0.5mm以上であり、また、例えば、5mm以下、好ましくは、3mm以下である。
図1Bに示すように、その後、第1蛍光体層2によって、複数の光半導体素子1を、複数の光半導体素子1から露出する第1仮固定シート10の上面に第1蛍光体層2が直接接触するように、被覆する。
第1蛍光体層2によって、複数の光半導体素子1を被覆するには、まず、第1蛍光体層2を調製する。
第1蛍光体層2は、平面視において、複数の光半導体素子1を含む寸法を有しており、略矩形平板形状を有している。第1蛍光体層2は、光半導体素子1から発光される青色光の一部を、例えば、黄色光、赤色光、緑色光などに変換する波長変換層である。第1蛍光体層2は、蛍光体樹脂組成物からなる。
蛍光体樹脂組成物は、蛍光体と、透明樹脂組成物とを含有している。
蛍光体としては、例えば、青色光を黄色光に変換することのできる黄色蛍光体、青色光を赤色光に変換することのできる赤色蛍光体、青色光を緑色光に変換することのできる緑色蛍光体などが挙げられる。
黄色蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca)2SiO4;Eu、(Sr,Ba)2SiO4:Eu(バリウムオルソシリケート(BOS))などのシリケート蛍光体、例えば、Y3Al5O12:Ce(YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)、Tb3Al3O12:Ce(TAG(テルビウム・アルミニウム・ガーネット):Ce)などのガーネット型結晶構造を有するガーネット型蛍光体、例えば、Ca−α−SiAlONなどの酸窒化物蛍光体などが挙げられる。
赤色蛍光体としては、例えば、CaAlSiN3:Eu、CaSiN2:Euなどの窒化物蛍光体などが挙げられる。
緑色蛍光体としては、例えば、Lu3Al5O12:Ce(LuAG:ルテニウムアルミニウムガーネット)などのガーネット型蛍光体が挙げられる。
このような蛍光体のなかでは、好ましくは、黄色蛍光体単独、または、赤色蛍光体と緑色蛍光体との組み合わせが挙げられる。
蛍光体の形状としては、例えば、球状、板状、針状などが挙げられる。好ましくは、流動性の観点から、球状が挙げられる。
蛍光体の最大長さの平均値(球状である場合には、平均粒子径)は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
蛍光体の配合割合は、透明樹脂組成物100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、50質量部以下である。また、蛍光体の配合割合は、蛍光体樹脂組成物に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
透明樹脂組成物は、例えば、光半導体素子1を封止するための封止材として使用される透明性の樹脂組成物が挙げられる。具体的には、透明樹脂組成物としては、例えば、熱硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物、好ましくは、熱硬化性樹脂組成物が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、2段反応硬化性樹脂組成物、1段反応硬化性樹脂組成物が挙げられる。
2段反応硬化性樹脂組成物は、2つの反応機構を有しており、第1段の反応で、Aステージ状態からBステージ化(半硬化)し、次いで、第2段の反応で、Bステージ状態からCステージ化(完全硬化)することができる。つまり、2段反応硬化性樹脂組成物は、適度の加熱条件によりBステージ状態となることができる熱硬化性樹脂組成物である。ただし、2段反応硬化性樹脂組成物は、強度の加熱によって、Aステージ状態から、Bステージ状態を維持することなく、一度にCステージ状態となることもできる。なお、Bステージ状態は、熱硬化性樹脂組成物が、液状であるAステージ状態と、完全硬化したCステージ状態との間の状態であって、硬化およびゲル化がわずかに進行し、圧縮弾性率がCステージ状態の弾性率よりも小さい半固体または固体状態である。
1段反応硬化性樹脂組成物は、1つの反応機構を有しており、第1段の反応で、Aステージ状態からCステージ化(完全硬化)することができる。なお、1段反応硬化性樹脂組成物は、第1段の反応の途中で、その反応が停止して、Aステージ状態からBステージ状態となることができ、その後のさらなる加熱によって、第1段の反応が再開されて、Bステージ状態からCステージ化(完全硬化)することができる熱硬化性樹脂組成物を含む。つまり、かかる熱硬化性樹脂組成物は、Bステージ状態となることができる熱硬化性樹脂組成物である。一方、1段反応硬化性樹脂組成物は、1段の反応の途中で停止するように制御できず、つまり、Bステージ状態となることができず、一度に、Aステージ状態からCステージ化(完全硬化)する熱硬化性樹脂組成物を含む。
透明樹脂組成物としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。透明樹脂組成物として、好ましくは、シリコーン樹脂が挙げられる。
上記した透明樹脂組成物は、同一種類または複数種類のいずれでもよい。
シリコーン樹脂としては、透明性、耐久性、耐熱性、耐光性の観点から、例えば、付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物、縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物などのシリコーン樹脂組成物が挙げられる。シリコーン樹脂は、単独で使用してもよく、あるいは、併用することもできる。
付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物は、1段反応硬化性樹脂組成物であって、例えば、アルケニル基含有ポリシロキサンと、ヒドロシリル基含有ポリシロキサンと、ヒドロシリル化触媒とを含有する。
具体的には、例えば、付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物として、Bステージ状態となることができる1段反応硬化性樹脂組成物であるフェニル系シリコーン樹脂組成物、例えば、Bステージ状態となることができない1段反応硬化性樹脂組成物であるメチル系シリコーン樹脂組成物が挙げられる。好ましくは、フェニル系シリコーン樹脂組成物が挙げられる。
付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物は、例えば、特開2015−073084号公報などに記載される付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物が挙げられる。
縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物は、2段反応硬化性樹脂であって、具体的には、例えば、特開2010−265436号公報、特開2013−187227号公報などに記載される第1〜第8の縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物、例えば、特開2013−091705号公報、特開2013−001815号公報、特開2013−001814号公報、特開2013−001813号公報、特開2012−102167号公報などに記載されるかご型オクタシルセスキオキサン含有シリコーン樹脂組成物などが挙げられる。
なお、付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物および縮合・付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物は、固体状であって、熱可塑性および熱硬化性を併有する。
なお、蛍光体樹脂組成物には、必要に応じて、顔料(フィラーを含む)、シランカップリング剤、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、変色防止剤、紫外線吸収剤などの公知の添加物を適宜の割合で添加することができる。
なお、第1蛍光体層2を剥離シート(図示せず)によって、支持して保護することができる。
図示しない剥離シートは、第1蛍光体層2によって光半導体素子1を封止するまでの間、第1蛍光体層2を保護するために、第1蛍光体層2の裏面(図1Aにおける上面)に剥離可能に貼着されている。剥離シート(図示せず)としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム(PETなど)などのポリマーフィルム、例えば、セラミクスシート、例えば、金属箔などが挙げられる。好ましくは、ポリマーフィルムが挙げられる。剥離シート(図示せず)の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
第1蛍光体層2が、フェニル系シリコーン樹脂組成物(1段反応硬化性樹脂組成物(付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物))を含有する場合には、アルケニル基と、ヒドロシリル基とのヒドロシリル化反応が途中まで進行して、一旦、停止させる。
光半導体素子1を被覆する前の第1蛍光体層2の厚みL0は、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
その後、第1蛍光体層2を、複数の光半導体素子1および第1仮固定シート10に対して、圧着する。好ましくは、第1蛍光体層2を、複数の光半導体素子1を支持する剥離シート6に対して、熱圧着(熱プレス)する。
具体的には、まず、第1蛍光体層2と、複数の光半導体素子1および第1仮固定シート10とを、熱源を備える平板プレスなどに設置する。平板プレスは、図示しないが、平坦な上面を有する下金型と、それの上側に対向配置され、平坦な下面を有する上金型とを備える。
そして、平板プレスによって、第1蛍光体層2と、複数の光半導体素子1および第1仮固定シート10とを熱プレスする。
平板プレスにおける温度は、第1蛍光体層2が、付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物を含有する場合には、付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物の熱可塑温度またはそれ以上であって、好ましくは、付加反応硬化型シリコーン樹脂組成物の熱可塑および熱硬化を一度に実施する観点から、熱硬化温度またはそれ以上であって、具体的には、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。
プレス時間は、例えば、1分間以上、好ましくは、5分間以上であり、また、例えば、60分間以下、好ましくは、20分間以下である。
上記した熱プレスによって、第1蛍光体層2が、熱可塑性および熱硬化性を有するフェニル系シリコーン樹脂組成物を含有する場合には、第1蛍光体層2が可塑化する。引き続き、可塑化した第1蛍光体層2によって、複数の光半導体素子1を埋設する。
このとき、図1Bに示すように、複数の光半導体素子1から露出する仮固定層11の上面に、第1蛍光体層2が直接接触する。つまり、第1蛍光体層2は、光半導体素子1の上面および側面と、仮固定層11から露出する仮固定層11の上面とに、直接接触する。
これによって、図1Bに示すように、1つの第1蛍光体層2によって、複数の光半導体素子1を封止する。
これにより、複数の光半導体素子1と、1つの第1蛍光体層2とを備える第1被覆素子集合体41を、第1仮固定シート10に仮固定された状態で、得る。
図1Bに示すように、第1被覆素子集合体41において、第1蛍光体層2の上面は、面方向に沿う平坦面を有している。
また、第1被覆素子集合体41において、複数の光半導体素子1のそれぞれの下面は、仮固定シート10の上面に直接接触(仮固定)されている。
光半導体素子1の上側に位置する第1蛍光体層2(上側第1蛍光体層52)の厚みL4は、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、300μm以下である。隣接する光半導体素子1間に位置する第1蛍光体層2の厚みL5は、例えば、15μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1500μm以下である。
1−2.工程(2)
図1Cに示すように、工程(2)では、隣接する光半導体素子1の間に位置する第1蛍光体層2に、上方に向かって開放される溝3を設ける。
溝3は、複数の光半導体素子1のそれぞれを仕切るように、平面視略碁盤目状(略井桁状)を有する。
具体的には、ダイシングソー35などの切断装置によって、隣接する光半導体素子1の間に位置する第1蛍光体層2をハーフカットする。つまり、隣接する光半導体素子1の間の中央に位置する第1蛍光体層2の上端部および上下方向途中部を切断する。すなわち、隣接する光半導体素子1の間に位置する第1蛍光体層2の下端部を、切断せず、存置させる。
詳しくは、切断装置を、第1蛍光体層2の上側から、第1蛍光体層2の上面に進入させ、続いて、切断装置が、第1蛍光体層2の下面に到達する前に、切断を終了させる(寸止めする)。
これによって、隣接する光半導体素子1の間に位置する第1蛍光体層2に、上方に向かって開口される溝3を設ける。
また、溝3が設けられることにより、第1蛍光体層2には、底部36が設けられる。底部36は、第1蛍光体層2における光半導体素子1の側面を被覆する部分から、面方向外側に張り出す張出部である。底部36の上面は、第1蛍光体層2において光半導体素子1の上面を被覆する部分から一段下側に下がるように位置しており、そのため、底部36の上面と、上記した部分の上面との間に段差が形成されている。
溝3の幅L6は、ダイシングソー35の厚みに対応して設定されており、具体的には、例えば、10μm以上、好ましくは、15μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
溝3の深さL7は、例えば、50μm以上、好ましくは、75μm以上、より好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、2000μm以下である。
底部36の厚みL8(仮固定層11の上面から、底部36の上面までの距離)は、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、25μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、75μm以下である。底部36の厚みL8の厚みが上記した下限以上であれば、切断装置(具体的には、ダイシングソー35など)による第1蛍光体層2への進入深さの精度を、例えば、少なくとも10μm程度と大きく設定することが許容される。
底部36の厚みL8の厚みが上記した上限以下であれば、側方への光の漏れを抑制し、また、上方への輝度(正面輝度)を向上させることができる。
溝3の内側面と、光半導体素子1の側面との距離αは、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
1−3.工程(3)
図1D〜図2Hに示すように、工程(3)では、第2被覆層4を溝3に充填する。
第2被覆層4を溝3に充填する方法は、例えば、保護シート6を第1蛍光体層2の上面に配置する工程(i)(図1D参照)と、第1仮固定シート10、光半導体素子1、第1蛍光体層2および保護シート6を、真空下に配置する工程(ii)(図1E参照)と、被覆材料43を、第1被覆素子集合体41の周囲を囲むように、第1仮固定シート10および保護シート6に接触させて、密閉空間17を形成する工程(iii)(図1E参照)と、被覆材料43を密閉空間17に流入させる工程(iv)(図2F参照)と、保護シート6を剥離する工程(v)(図2G参照)とを備える。工程(i)〜工程(v)は、順次実施される。
1−3−1.工程(i)
図1Dおよび図3Aに示すように、工程(i)では、保護シート6を上側第1蛍光体層52の上面に配置する。その際、保護シート6が溝3の上端を閉塞するが、溝3に充填されないように、保護シート6を配置する。
保護シート6は、厚み方向に投影したときに、第1被覆素子集合体41を含む略矩形平板形状を有する。また、保護シート6は、厚み方向に投影したときに、第1仮固定シート10に含まれる略矩形平板形状を有する。具体的には、保護シート6は、第1被覆素子集合体41より大きい寸法を有し、かつ、第1仮固定シート10より小さい寸法を有する。
保護シート6は、後述する工程(iii)(図2Fおよび図3C参照)において、被覆材料43が、上側第1蛍光体層52の上面を被覆せず、上側第1蛍光体層52の上面を露出させるためのシートである。保護シート6は、被覆光半導体素子5に対して剥離可能な感圧接着シートである。
保護シート6は、感圧接着層61と、感圧接着層61を支持する支持シート62とを備える。
感圧接着層61は、例えば、感圧接着剤から、略平板形状に形成されている。
感圧接着剤としては、例えば、処理(具体的には、活性エネルギー線の照射など)によって、感圧接着力が低減する感圧接着剤が挙げられる。
そのような感圧接着剤としては、例えば、炭素−炭素二重結合が導入された樹脂組成物などが挙げられる。樹脂組成物は、炭素−炭素二重結合を有するポリマーが挙げられる。
そのようなポリマーは、例えば、以下の方法によって、調製される。
すなわち、例えば、主ビニルモノマーと、第1官能基を有する副ビニルモノマーとを含有するモノマー成分を、第1官能基が消失しないように、共重合して、第1官能基を有する前駆体ポリマーを調製する。別途、第1官能基と反応することができる第2官能基と、炭素−二重結合とを有する化合物を準備する。その後、この化合物を前駆体ポリマーに配合して、第1官能基と第2官能基とを反応させる。
第1官能基と第2官能基との組合せとして、例えば、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せなどが挙げられる。第1官能基として、好ましくは、ヒドロキシル基が挙げられる。第2官能基として、好ましくは、イソシアネート基が挙げられる。
主モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート(2EHA/2EHMA)、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレートなどの、アルキル部分の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。主モノマーの、モノマー成分における配合割合は、例えば、70質量%以上、好ましくは、90質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下である。
副ビニルモノマーは、主ビニルモノマーとして共重合することができるビニルモノマーである。副ビニルモノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマーなどが挙げられ、好ましくは、ヒドロキシル基含有モノマーが挙げられる。
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(2−HEA/HEMA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。好ましくは、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)が挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。副ビニルモノマーの、モノマー成分における配合割合は、例えば、30質量%以下であり、また、例えば、1質量%以上である。
化合物としては、イソシアネート基含有化合物が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリロイルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどの、イソシアネート基含有ビニルモノマーが挙げられる。好ましくは、メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。
化合物の配合割合は、ポリマーにおける二重結合の導入量が、例えば、0.01ミリモル/g以上、好ましくは、0.2ミリモル/g以上となり、また、例えば、10.0ミリモル/g以下、好ましくは、5.0ミリモル/g以下となるように、調整される。
前駆体ポリマーを調製するには、上記したモノマー成分を、上記した割合で、重合開始剤の存在下で、例えば、溶液重合させる。
重合開始剤としては、例えば、過酸化物、過硫酸塩、レドックス系開始剤などが挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。好ましくは、過酸化物が挙げられる。過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、モノパーオキシカーボネート、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ケトンパーオキサイドなどが挙げられ、好ましくは、ジアシルジパーオキサイドが挙げられる。
ジアシルジパーオキサイドとしては、例えば、ジベンゾイルパーオキサイド(BPO)、ジ−p−ニトロベンゾイルパーオキサイド、ジ−p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイドなどが挙げられる。好ましくは、ジベンゾイルパーオキサイド(BPO)が挙げられる。
重合開始剤の配合割合は、モノマー成分100質量部に対して、例えば、0.005質量部以上、例えば、1質量部以下である。
また、溶液重合では、重合溶媒が用いられる。重合溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなど芳香族炭化水素、例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素などが挙げられる。好ましくは、芳香族炭化水素が挙げられる。
そして、主ビニルモノマーと、副ビニルモノマーとを含有するモノマー成分を、副ビニルモノマーの第1官能基が消失しないように、共重合させて、第1官能基を有する前駆体ポリマーを調製する。
続いて、前駆体ポリマーに、上記した化合物を配合する。好ましくは、ヒドロキシル基を含有する前駆体ポリマーに、イソシアネート基含有化合物を配合して、ヒドロキシル基とイソシアネート基とを反応させて、ウレタン結合を形成する。そして、得られたポリマーには、化合物が有する炭素−炭素二重結合が導入される。
その後、ポリマーに、光重合開始剤を配合する。
光重合開始剤は、後述する工程(v)(図2G参照)において活性エネルギー線が感圧接着層61に照射されたときに、ラジカルを発生させて、樹脂組成物に導入された炭素−炭素二重結合を互いに反応させるための光重合触媒である。光重合開始剤の10時間半減期温度は、例えば、20℃以上、好ましくは、50℃以上であり、また、例えば、107℃以下、好ましくは、100℃以下である。
光重合開始剤としては、例えば、ケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。好ましくは、チオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンが挙げられる。好ましくは、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オンが挙げられる。
光重合開始剤の配合割合は、ポリマー100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
また、ポリマーには、架橋剤などの添加剤を適宜の割合で配合することができる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。好ましくは、イソシアネート系架橋剤が挙げられる。
感圧接着層61を形成するには、支持シート62の表面に、感圧接着剤を塗布し、その後、乾燥させる。
支持シート62としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム(PETなど)などのポリマーフィルム、例えば、セラミックスシート、例えば、金属箔などが挙げられる。支持シート62の厚みは、例えば、80μm以上、好ましくは、110μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、250μm以下である。
乾燥温度は、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上であり、また、例えば、150℃以下、好ましくは、130℃以下である。乾燥温度は、例えば、5分以下である。
その後、必要により、感圧接着剤をエージングする。エージング温度は、例えば、25℃以上、好ましくは、40℃以上であり、また、例えば、70℃以下、好ましくは、60℃以下である。エージング時間は、例えば、10時間以上、また、例えば、120時間以下である。
これにより、感圧接着層61が、支持シート62の表面に形成される。
感圧接着層61の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、250μm以下、好ましくは、100μm以下である。
これにより、感圧接着層61と、感圧接着層61の上面に配置される支持シート62とを備える保護シート6を得る。
保護シート6は、図2Fおよび図3Cに示す工程(iii)において、実質的に変形しない程度の剛性および靱性を有する。具体的には、保護シート6の25℃における引張弾性率が、例えば、250MPa以上、好ましくは、500MPa以上、より好ましくは、1000MPa以上であり、また、例えば、20,000MPa以下である。
その後、保護シート6を、第1被覆素子集合体41に貼り合わせる。具体的には、感圧接着層61を、上側第1蛍光体層52の上面に貼り合わせる。これによって、上側第1蛍光体層52の上面は、保護シート6によって感圧接着されて、保護(被覆)される。
一方、溝3の底面(底部36の上面)は、保護シート6の下面と、厚み方向に間隔が隔てられている。溝3の底面と、保護シート6の下面との距離L7は、溝3の深さL7と同一である。
1−3−2.工程(ii)
図1Eに示すように、工程(ii)では、第1被覆素子集合体41、第1仮固定シート10および保護シート6を、真空下に配置する。例えば、第1被覆素子集合体41、第1仮固定シート10および保護シート6を、真空装置16に配置する。
真空装置16は、真空チャンバー18と、真空ライン19と、真空ポンプ20と、真空バルブ21と、大気ライン22と、大気バルブ23と、ステージ(図示せず)とを備える。
真空チャンバー18は、第1被覆素子集合体41、第1仮固定シート10および保護シート6を収容できる密閉容器である。
真空ライン19の一端(吸引方向上流側端)は、真空チャンバー18に接続され、真空ライン19の他端(吸引方向下流側端)は、真空ポンプ20に接続されている。
真空ポンプ20は、真空ライン19を介して、真空チャンバー18内の空間に連通するように構成されている。
真空バルブ21は、真空ライン19の途中に介在している。
大気ライン22は、真空ライン19の途中、具体的には、真空ライン19において真空チャンバー18および真空バルブ21の間の部分から分岐するラインであり、一端が、大気に開放するように構成されている。
大気バルブ23は、大気ライン22の途中に介在している。
図示しないステージは、真空チャンバー18内に収容されており、略板形状を有している。また、ステージは、吸着機構などの固定部材を有しており、これによって、第1仮固定シート10の下面を吸着(固定)するように構成されている。
そして、第1被覆素子集合体41、第1仮固定シート10および保護シート6を、真空チャンバー18内に配置して、真空チャンバー18の気圧を真空圧にする。
具体的には、まず、真空バルブ21および大気バルブ23を開放する。これによって、真空ポンプ20は、大気ライン22と連通する。この状態で、真空ポンプ20を作動させる。その後、第1被覆素子集合体41、第1仮固定シート10および保護シート6を真空チャンバー18内に、第1仮固定シート10をステージ(図示せず)に固定されるように、設置し、続いて、真空チャンバー18内の空間(チャンバー空間)34内を密閉する。
その後、大気バルブ23を閉鎖する。これによって、真空ポンプ20は、真空バルブ21を介して、チャンバー空間24と連通する。すると、チャンバー空間24の気圧は、真空となる。具体的には、チャンバー空間24の気圧(真空圧)は、被覆材料43を密閉空間17に円滑に流入させる観点から、例えば、1.0×10−2MPa以下、好ましくは、1.0×10−3MPa以下であり、また、例えば、第1蛍光体層2におけるボイドの発生をより有効に抑制する観点から、5.5×10−4MPa以上である。
1−3−3.工程(iii)
図2Fおよび図3Cに示すように、工程(iii)では、被覆材料43を、第1被覆素子集合体41の周囲を囲むように、第1仮固定シート10および保護シート6に接触させて、密閉空間17を形成する。
被覆材料43は、常温(25℃)で流動性を有する被覆組成物からなる。
被覆組成物は、例えば、光反射性成分および/または光吸収性成分と、樹脂とを含有する。
光反射性成分としては、例えば、Ti,Zr,Nb,Alからなる群から選択される1種の酸化物、例えば、AlNおよび/またはMgFなどの粒子(光反射性粒子)が挙げられる。具体的には、光反射性成分としては、TiO2,ZrO2,Nb2O5,Al2O3,MgF,AlN,SiO2からなる群から選択される少なくとも1種である。高い光反射性を確保する観点から、好ましくは、TiO2,ZrO2,Nb2O5,Al2O3が挙げられ、より好ましくは、TiO2が挙げられる。
光反射性粒子の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.15μm以上であり、また、例えば、80μm以下、好ましくは、50μm以下である。
光反射性成分の配合割合は、被覆組成物に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、70質量%以下である。また、光反射性成分の、樹脂100質量部に対する配合割合は、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
光吸収性成分としては、例えば、顔料、染料などが挙げられ、光吸収性の観点から、好ましくは、カーボンブラックなどの光吸収性粒子が挙げられる。光吸収性粒子の平均粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、15nm以上であり、また、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下である。
光吸収性成分の配合割合は、被覆組成物に対して、例えば、0.1質量%以上、例えば、10質量%以下である。また、光吸収性成分の、樹脂100質量部に対する配合割合は、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、25質量部以下である。
樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、例えば、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性樹脂などの硬化性樹脂が挙げられ、好ましくは、硬化性樹脂が挙げられ、より好ましくは、耐熱性の観点から、好ましくは、熱硬化性樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。耐光性の観点から、好ましくは、シリコーン樹脂が挙げられる。シリコーン樹脂としては、例えば、特開2015−073084号公報に開示されるメチル系シリコーン樹脂組成物が挙げられる。
樹脂の配合割合は、被覆組成物に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上であり、また、例えば、95質量%以下、好ましくは、90質量%以下である。
また、被覆組成物は、例えば、シリカ、ガラスなどの無機フィラーを適宜の割合で配合することができる。さらに、被覆組成物は、例えば、Ag,Cuなどの金属材料や、ダイヤモンド、AlNなどを適宜の割合で配合することもできる。
一方、第1実施形態において、被覆組成物は、蛍光体を含有しない。
被覆組成物を調製するには、上記した各成分を上記した割合で配合して混合する。
被覆組成物の常温(25℃)における粘度は、例えば、1Pa・s以上、好ましくは、2Pa・s以上であり、また、例えば、50Pa・s以下、好ましくは、40Pa・s以下である。被覆組成物の粘度は、E型粘度計で測定される。
被覆組成物の粘度が上記した下限以上であれば、光反射性成分および/または光吸収性成分が沈降することを抑制することができる。被覆組成物の粘度が上記した上限以下であれば、第1蛍光体層2におけるボイドの発生を抑制することができる。
被覆材料43を、第1被覆素子集合体41の周囲を囲むように、第1仮固定シート10および保護シート6に接触させるには、例えば、真空注入装置(真空ディスペンサ)39、真空印刷機、描画装置などの塗布装置によって、被覆材料43を、保護シート6の周端縁の下面と、それに対向する第1仮固定シート10の上面との間に、塗布する。好ましくは、真空ディスペンサ39を用いて、被覆材料43を塗布する。真空ディスペンサ39は、上下方向に延び、下方に向かうに従って断面積が小さくなるノズル40と、ノズル40に接続されるタンク(図示せず)とを備える。
なお、上記した塗布装置は、上記した真空装置16に予め組み込まれており、具体的には、真空チャンバー18内に設置されている。また、被覆材料43を、図1Dおよび図3B(ハッチング部分)に示すように、第1被覆素子集合体41が配置される領域の周囲において、平面視略矩形枠(額縁)形状となるように、被覆材料43を塗布する。被覆材料43が有する枠(額縁)形状は、保護シート6の周方向に沿って、途中で途切れない、連続形状である。
また、被覆材料43は、絶縁板12の上面から上側に向かって盛り上がる断面形状を有している。
被覆材料43の塗布量は、次に説明する密閉空間17の体積と同一またはそれより大きい体積に設定されており、具体的には、容量基準で、密閉空間17の体積に対して、例えば、100%以上、好ましくは、110%以上、より好ましくは、120%以上であり、また、例えば、200%以下である。
被覆材料43によって密閉された空間は、密閉空間17を形成する。
密閉空間17は、溝3を含む空間であって、被覆材料43と、保護シート6と、第1仮固定シート10と、第1蛍光体層2(第1被覆素子集合体41)とにより区画される空間である。
密閉空間17の気圧は、チャンバー空間24の上記した気圧と同一である。
1−3−4.工程(iv)
工程(iv)では、図2Fに示すように、チャンバー空間24(密閉空間17の外側におけるチャンバー空間24)の気圧を大気圧にする。
具体的には、まず、真空バルブ21を閉鎖し、その後、大気バルブ23を開放する。
これにより、チャンバー空間24が、大気ライン22を介して、大気に開放される。すると、大気が大気ライン22を介してチャンバー空間24に一気に流入するので、チャンバー空間24の気圧が大気圧になる。
一方、密閉空間17の気圧は、真空圧のままである。そのため、密閉空間17の気圧は、チャンバー空間24の気圧より低くなる。つまり、密閉空間17およびチャンバー空間24において、差圧が生じる。差圧は、チャンバー空間24の気圧から密閉空間17の気圧を差し引いた圧力差([チャンバー空間24の気圧]−[密閉空間17の気圧])であり、具体的には、例えば、0.095MPa以上、好ましくは、0.096MPa以上、より好ましくは、0.097MPa以上であり、また、例えば、0.1MPa以下である。
上記した差圧が生じると、図2Fに示すように、密閉空間17に被覆材料43が流入し、密閉空間17が被覆材料43によって充填される。
これによって、被覆材料43は、上側第1蛍光体層52の上面を露出させるように、溝3に充填される。
これによって、密閉空間17と同一形状を有し、被覆材料43からなる第2被覆層4が形成される。つまり、溝3に第2被覆層4が充填される。溝3に充填された第2被覆層4の厚みL7は、溝3の深さL7と同一である。
これにより、複数の光半導体素子1、第1蛍光体層2と、第2被覆層4とを備える第2被覆素子集合体29を、第1仮固定シート10および保護シート6により支持された(挟まれた)状態で、得る。第2被覆素子集合体29は、産業上利用可能なデバイスであり、好ましくは、複数の光半導体素子1と、1つの第1蛍光体層2と、1つの第2被覆層4とのみからなる。
その後、第2被覆素子集合体29を、第1仮固定シート10および保護シート6とともに、真空チャンバー18から取り出す。
1−3−5.工程(v)
工程(v)では、図2Gに示すように、第2被覆層4が硬化性樹脂を含有する場合には、硬化性樹脂を硬化させる。具体的には、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂であれば、第2被覆層4を加熱する。
その後、図2Gの矢印で示すように、保護シート6を第2被覆素子集合体29から剥離する。
具体的には、まず、上記した活性エネルギー線を保護シート6に照射して、保護シート6の感圧接着力を低減させる。続いて、保護シート6を、上側第1蛍光体層52の上面と、第2被覆層4の上面とから、引き剥がす。
これによって、上側第1蛍光体層52の上面と、第2被覆層4の上面とは、上側に向かって露出する露出面となる。第2被覆層4の上面は、上側第1蛍光体層52の上面と面一に形成されている。
これにより、上面が露出された第2被覆素子集合体29を、第1仮固定シート10に支持された状態で得る。
その後、図2Hに示すように、第2被覆素子集合体29の第2被覆層4とそれに対応する第1蛍光体層2とを切断して、光半導体素子1を個片化する。具体的には、ダイシングソーなどの切断装置によって、第2被覆層4と、溝3に対応する第1蛍光体層2(底部36)とを厚み方向に沿って切断する。
これによって、1つの光半導体素子1と、1つの第1蛍光体層2と、1つの第2被覆層4とを備える被覆光半導体素子5が、第1仮固定シート10に支持された状態で、得られる。被覆光半導体素子5は、産業上利用可能なデバイスであり、好ましくは、1つの光半導体素子1と、1つの第1蛍光体層2と、1つの第2被覆層4とのみからなる。
詳しくは、被覆光半導体素子5は、光半導体素子1と、光半導体素子1の上面および側面を被覆し、底部36を有する第1蛍光体層2と、第1蛍光体層2の側方に位置し、第1蛍光体層2の側面、および、底部36の上面を被覆する第2被覆層4とを備える。
図4が参照されるように、第2被覆層4の幅βは、底部36の長さβと同一である。第2被覆層4の幅βは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
1−4.工程(4)
図2Iに示すように、工程(4)では、被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10から第1転写シート27に転写する。
具体的には、図2Hに示すように、まず、複数の被覆光半導体素子5の上方に、第1転写シート27に配置する。その後、第1転写シート27を引き下げて、第1転写シート27の下面を、複数の被覆光半導体素子5の上面(上側第1蛍光体層52の上面および第2被覆層4の上面)に接触させる。
第1転写シート27としては、公知の転写シートが挙げられ、例えば、SPVシリーズ(日東電工社製)などが挙げられる。
複数の被覆光半導体素子5の第1転写シート27に対する接着力F2は、複数の被覆光半導体素子5の第1仮固定シート10に対する接着力F1に比べて、例えば、高い。複数の被覆光半導体素子5の第1転写シート27に対する接着力F2が複数の被覆光半導体素子5の第1仮固定シート10に対する接着力F1に比べて高い場合には、工程(4)において、被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10から第1転写シート27に確実に転写することができる。
複数の被覆光半導体素子5の転写シート27に対する接着力F2は、複数の被覆光半導体素子5の仮固定シート10に対する接着力F1に対して、例えば、100%超過、好ましくは、110%以上、より好ましくは、120%以上であり、また、例えば、300%以下である。
具体的には、複数の被覆光半導体素子5の第1転写シート27に対する接着力F2は、例えば、0.2N/20mm以上、好ましくは、0.3N/20mm以上、より好ましくは、0.4N/20mm以上であり、また、例えば、3.0N/20mm以下である。接着力F2の測定方法は、後の実施例で説明される。
なお、複数の被覆光半導体素子5の第1仮固定シート10に対する接着力F1は、複数の被覆光半導体素子5の、処理(活性エネルギー線の照射)後の第1仮固定シート10に対する接着力F1であって、具体的には、例えば、0.4N/20mm以下、好ましくは、0.2N/20mm以下、より好ましくは、0.15N/20mm以下であり、また、例えば、0.01N/20mm以上である。複数の被覆光半導体素子5の、処理後の第1仮固定シート10に対する接着力F1の測定方法は、後の実施例で説明される。
次いで、第1転写シート27を第1仮固定シート10に対して引き上げる。これによって、被覆光半導体素子5の下面が、第1仮固定シート10の上面から引き剥がされる。具体的には、光半導体素子1の下面と、第1蛍光体層2の底部36の下面とが、仮固定層11の上面から、引き剥がされる。
これにより、光半導体素子1と、第1蛍光体層2と、第2被覆層4とを備える被覆光半導体素子5を第1転写シート27に転写する。
図4に示すように、その後、被覆光半導体素子5を、基板50に実装する。
具体的には、被覆光半導体素子5を基板50に対してフリップチップ実装する。すなわち、被覆光半導体素子5の光半導体素子1のバンプ(図示せず)を、基板50の端子(図示せず)と電気的に接続させる。
これによって、図4に示すように、基板50と、基板50に実装される被覆光半導体素子5とを備える発光装置51が得られる。詳しくは、発光装置51は、基板50と、基板50に実装された光半導体素子1と、光半導体素子1の側面を被覆し、底部36を有する第1蛍光体層2と、第1蛍光体層2の側面、および、底部36の上面を被覆する第2被覆層4とを備える。底部36の下面は、基板50の上面と接触している。
この発光装置51では、基板50から供給される電気によって、光半導体素子1が発光する。光半導体素子1で発光された光の一部は、第1蛍光体層2によって、波長変換される。波長変換された光のうち、上方に向かう光は、そのまま、上側に照射される。とりわけ、光半導体素子1から側方に向かって発光された光は、底部36によって十分に波長変換された光と、第1蛍光体層2において底部36の上側部分によって波長変換された光とが、適度に混合される。
1−5.第1実施形態の作用効果
そして、この方法によれば、図2Fに示すように、工程(3)では、第1蛍光体層2の底部36が、溝3に充填された第2被覆層4と、第1仮固定シート10との間に介在しているので、第2被覆層4が第1仮固定シート10に直接接触することが防止される。そのため、たとえ、第2被覆層4の感圧接着力が高くても、第2被覆層4が第1仮固定シート10に接着することを防止することができる。
その結果、図2Iに示すように、工程(4)において、被覆光半導体素子5を第1仮固定シート10から確実に剥離することができる。
また、被覆光半導体素子5の第1仮固定シート10に対する接着力F2が、被覆光半導体素子5の、処理後の第1仮固定シート10に対する接着力F1に比べて、低ければ、工程(4)において、被覆光半導体素子5が、第1仮固定シート10から第1転写シート27に転写されず、第1仮固定シート10に感圧接着された状態となる。被覆光半導体素子5の第1仮固定シート10に対する接着力F2が、被覆光半導体素子5の、処理後の第1仮固定シート10に対する接着力F1と同一であれば、工程(4)において、被覆光半導体素子5が、第1仮固定シート10から第1転写シート27に確実に転写されない。
しかし、この方法によれば、被覆光半導体素子5の第1仮固定シート10に対する接着力F2が、被覆光半導体素子5の、処理後の第1仮固定シート10に対する接着力F1に比べて、高いので、図2Iに示すように、工程(4)において、被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10から第1転写シート27により一層確実に転写することができる。
この方法によれば、第1蛍光体層2は、蛍光体を含有するので、光半導体素子1から発光された光を、波長変換することができる。
この方法において、図2Fに示すように、工程(3)では、第1蛍光体層2の上面を露出させるように、第2被覆層4を溝3に充填するので、上方への指向性を有する光を発光する被覆光半導体素子5を得ることができる。さらには、上方への指向性を有する光を発光する発光装置51を得ることができる。
<第1実施形態の変形例>
第1実施形態では、工程(3)を、差圧を利用する方法(工程(ii)〜工程(iv))によって、実施しているが、例えば、図1Dおよび図2Gが参照されるように、差圧を利用せず、上側第1蛍光体層52の上面を保護シート6で被覆しながら、溝3に第2被覆層4を形成することもできる。
詳しくは、この変形例では、表面に保護シート6が設けられた金型に、被覆材料43を流し込み、その後、図1Cに示される第1被覆素子集合体41を上下反転させて、上側第1蛍光体層52が保護シート6に接触するように、第2被覆層4をモールド成形する。
また、第1実施形態では、第2被覆層4は、光反射性成分および/または光吸収性成分を含有する光学機能層である。
しかし、この変形例の第2被覆層4は、光反射性成分および光吸収性成分のいずれをも含有せず、樹脂のみからなる透明層であっていてもよい。
<第2実施形態>
第2実施形態において、上記した第1実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第1実施形態では、図1E〜図2Gに示すように、工程(3)において、上側第1蛍光体層52の上面を露出させるように、第2被覆層4を溝3に充填している。
しかし、第2実施形態では、図5Cに示すように、上側第1蛍光体層52の上面を被覆するように、第2被覆層4を溝3に充填する。
本発明の被覆光半導体素子の製造方法の第2実施形態は、第1仮固定シート10の上面に互いに間隔を隔てて仮固定された複数の光半導体素子1を、第1蛍光体層2によって、複数の光半導体素子1から露出する第1仮固定シート10の上面に第1蛍光体層2が直接接触するように、被覆する工程(1)(図5A参照)と、隣接する光半導体素子1の間に位置する第1蛍光体層2に、上方に向かって開放される溝3を設ける工程(2)(図5B参照)と、第2被覆層4を溝3に充填して、光半導体素子1、第1蛍光体層2および第2被覆層4を備える被覆光半導体素子5を得る工程(3)(図5Cおよび図6D参照)と、被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10から第1転写シート27に転写する工程(4)(図6E参照)とを備える。
工程(3)では、まず、上記した被覆材料43から、略平板形状に形成された第2被覆層4を調製する。
第2被覆層4の厚みL9は、例えば、50μm以上、好ましくは、75μm以上、より好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、2500μm以下である。
その後、第2被覆層4を、第1被覆素子集合体41および第1仮固定シート10に対して、例えば、圧着、好ましくは、熱圧着(熱プレス)する。
圧着(熱圧着)の条件は、被覆材料に含有される樹脂の種類によって、適宜調整される。
これによって、第2被覆層4は、溝3に充填されつつ、上側第1蛍光体層52を被覆する。また、第2被覆層4は、溝3の上方にも配置される。これによって、複数の光半導体素子1と、1つの第1蛍光体層2と、1つの第2被覆層4とを備える第2被覆素子集合体29が得られる。
第2被覆素子集合体29における第2被覆層4は、面方向に沿って延びる形状を有する。具体的には、第2被覆層4の上面は、面方向に沿って延びる平坦面を有する。一方、第2被覆層4の下面は、溝3に対応して、下方に突出する突出部45と、上側第1蛍光体層52の上面を被覆し、下方に向かって開放される凹部46とを一体的に有する。
工程(3)では、その後、図6Dに示すように、溝3に対応する第1蛍光体層2および第2被覆層4を切断する。具体的には、底部36、および、第2被覆層4の突出部45を、ダイシングソーなどの切断装置によって、切断する。
これによって、1つの光半導体素子1と、1つの第1蛍光体層2と、1つの第2被覆層4とを備える被覆光半導体素子5が、第1仮固定シート10に支持された状態で、得られる。
被覆光半導体素子5において、上側第1蛍光体層52の上側に位置する第2被覆層4の厚みzは、図7が参照されるように、比較的薄く設定されており、具体的には、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、300μm以下であり、また、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上である。
被覆光半導体素子5では、第2被覆層4によって、上側第1蛍光体層52の上面と、第1蛍光体層2の側面と、底部36の上面とが、被覆されている。
そして、被覆光半導体素子5を、図6Eに示すように、工程(5)において、第1仮固定シート10から第1転写シート27に転写し、その後、図7に示すように、基板50にフリップチップ実装する。これによって、発光装置51を得る。
<第2実施形態の作用効果>
第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、第2実施形態によれば、図5Cに示すように、工程(3)において、上側第1蛍光体層52の上面を被覆するように、第2被覆層4を溝3に充填するので、光半導体素子1から上方に発光された光は、一部が、上側第1蛍光体層52によって波長変換され、その後、第2被覆層4を通過するので、それらの光が適度に混合される。そのため、光学特性に優れる被覆光半導体素子5、および、光学特性に優れる発光装置51を得ることができる。
<第2実施形態の変形例>
第2実施形態では、上側第1蛍光体層52の上側に位置する第2被覆層4の厚みzを、比較的薄く設定しているが、この変形例では、例えば、上側第1蛍光体層52の上側に位置する第2被覆層4の厚みzを比較的厚く設定する。上側第1蛍光体層52の上側に位置する第2被覆層4の厚みzは、具体的には、例えば、5μm以上、好ましくは、50μm以上、より好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、500μm以下である。
上側第1蛍光体層52の上側に位置する第2被覆層4の厚みzが上記した下限以上であれば、被覆光半導体素子5、および、発光装置51は、均一な光を発光することができる。
<第3実施形態および第4実施形態>
第3実施形態および第4実施形態において、上記した第1実施形態および第2実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第1実施形態および第2実施形態では、蛍光体を第2被覆層4に含有させていない。
しかし、第3実施形態および第4実施形態では、図8および図9が参照されるように、蛍光体を、第2被覆層の一例としての第2蛍光体層84に含有させる。つまり、第1蛍光体層2および第2蛍光体層84は、ともに、蛍光体を含有する。好ましくは、第1蛍光体層2が、赤色蛍光体を含有し、第2蛍光体層84が、緑色蛍光体を含有する。
第3実施形態および第4実施形態の第2蛍光体層84は、第1実施形態および第2実施形態の第2被覆層4と同様の形状および構造を有している。第2蛍光体層84は、上記した被覆組成物に含有される樹脂と、蛍光体とを含有する。蛍光体の含有割合は、樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下、好ましくは、50質量部以下である。また、蛍光体の含有割合は、樹脂および蛍光体の総質量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
第1蛍光体層2に含まれる蛍光体の、第2蛍光体層84に含まれる蛍光体に対する含有割合(第1蛍光体層2に含まれる蛍光体/第2蛍光体層84に含まれる蛍光体)は、質量基準で、例えば、0.1以上、好ましくは、0.5以上であり、また、例えば、10以下、好ましくは、2以下である。
図8に示すように、第3実施形態の製造方法により得られる被覆光半導体素子5は、光半導体素子1と、光半導体素子1の上面および側面を被覆し、底部36を有する第1蛍光体層2と、第1蛍光体層2の側面、および、底部36の上面を被覆する第2蛍光体層84とを備える。
第3実施形態において、第2蛍光体層84の幅βは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
第2蛍光体層84の厚みL7は、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
また、図9に示すように、第4実施形態の製造方法により得られる被覆光半導体素子5は、光半導体素子1と、光半導体素子1の上面および側面を被覆し、底部36を有する第1蛍光体層2と、第1蛍光体層2の上面(底部36の上面を含む)および側面を被覆する第2蛍光体層84とを備える。第2蛍光体層84の上面は、面方向に延びる平坦面である。第2蛍光体層84の下面は、突出部45および凹部46を有する。
第4実施形態において、第2蛍光体層84の幅βは、第3実施形態におけるそれと同一である。上側第1蛍光体層52の上側に位置する第2蛍光体層84の厚みzは、例えば、比較的厚く設定され、具体的には、例えば、10μm以上、好ましくは、25μm以上、より好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、2000μm以下である。
<第3実施形態および第4実施形態の作用効果>
第3実施形態および第4実施形態によっても、上記した各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
図8に示すように、第3実施形態により得られた被覆光半導体素子5によれば、光半導体素子1から上方に向かって発光された光は、上側第1蛍光体層52によって波長変換される。また、光半導体素子1から側方に向かって発光された光は、第1蛍光体層2および第2蛍光体層84によって、順次波長変換される。そのため、発光効率に優れた被覆光半導体素子5、ひいては、発光効率に優れた発光装置51を得ることができる。
図9に示すように、第4実施形態により得られた被覆光半導体素子5によれば、光半導体素子1から上方および側方に向かって発光された光は、第1蛍光体層2および第2蛍光体層84によって、順次波長変換される。そのため、光の均一性および発光効率に優れた被覆光半導体素子5、ひいては、発光効率に優れた発光装置51を得ることができる。
<第5実施形態および第6実施形態>
第5実施形態および第6実施形態において、上記した第1実施形態〜第4実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第3実施形態および第4実施形態では、蛍光体を、第1被覆層の一例としての第1蛍光体層2に含有させている。
しかし、第5実施形態および第6実施形態では、蛍光体を、第1被覆層82に含有させない。つまり、第1被覆層82は、蛍光体を含有しない透明層である。
一方、第2蛍光体層84は、蛍光体を含有する蛍光体層である。好ましくは、第2蛍光体層84は、黄色蛍光体を含有する。
第5実施形態および第6実施形態の第1被覆層82は、図10および図11に示すように、第1実施形態および第2実施形態の第1蛍光体層2と同様の形状および構造を有している。第1被覆層82は、上記した透明樹脂組成物(蛍光体を含有しない樹脂組成物)からなる。そのため、第1被覆層82は、透明性を有する透明層である。
なお、図1Bおよび図1Cが参照されるように、工程(2)では、複数の光半導体素子1と、それらを被覆し、溝3を有する第1被覆層82とを備える第1被覆素子集合体41(図1Bおよび図1Cにおいて図示されず)が、第1仮固定シート10が支持された状態で得られる。
第2蛍光体層84は、第1実施形態および第2実施形態の第2被覆層4と同様の形状および構造を有している。第2蛍光体層84は、第3実施形態および第4実施形態と同じ第2蛍光体層84を形成するための組成物からなり、つまり、樹脂と蛍光体とを含有する。
図10に示すように、第5実施形態の製造方法により得られる被覆光半導体素子5は、光半導体素子1と、光半導体素子1の上面および側面を被覆し、底部36を有する第1被覆層82と、第1被覆層82の側方に位置する第1被覆層82の側面、および、底部36の上面を被覆する第2蛍光体層84とを備える。被覆光半導体素子5の第1被覆層82は、光半導体素子1の上側に位置する部分(上側第1被覆層83。第1実施形態における上側第1蛍光体層52に対応。)を有し、上側第1被覆層83の上面を露出している。
第5実施形態において、溝3の内側面と、光半導体素子1の側面との距離αは、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。第2蛍光体層84の厚みL7は、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
また、図11に示すように、第6実施形態の製造方法により得られる被覆光半導体素子5は、光半導体素子1と、光半導体素子1の上面および側面を被覆し、底部36を有する第1被覆層82と、上側第1被覆層83を被覆する第2蛍光体層84とを備える。
第6実施形態において、第2蛍光体層84の幅βは、第5実施形態におけるそれと同一である。上側第1被覆層83の上側に位置する第2蛍光体層84の厚みzは、例えば、比較的厚く設定され、具体的には、例えば、20μm以上、好ましくは、50μm以上、より好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、2000μm以下である。
<第5実施形態および第6実施形態の作用効果>
第5実施形態および第6実施形態によっても、上記した各実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
図10に示すように、第5実施形態により得られた被覆光半導体素子5によれば、光半導体素子1から発光された光は、第1被覆層82を透過する。第1被覆層82を側方に向かって透過した光は、第2蛍光体層84によって、波長変換された後、上方斜め側方に向かう。そのため、光の取出効率を向上させることができる。
図11に示すように、第6実施形態により得られた被覆光半導体素子5によれば、光半導体素子1から発光された光は、第1被覆層82を透過する。第1被覆層82を側方に向かって透過した光は、第2蛍光体層84によって、波長変換された後、上方斜め側方に向かう。また、上側第1被覆層83を上方に向かって透過した光は、その一部が、第2蛍光体層84によって波長変換された後、上方に向かう。そのため、この被覆光半導体素子5は、発光効率に優れる。
<第7実施形態>
第7実施形態において、上記した第1実施形態〜第6実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第1実施形態では、仮固定シートの一例として、第1仮固定シート10を挙げている。一方、第7実施形態では、図15Cに示すように、仮固定シートの一例として、第1転写シート37を挙げる。
また、第1実施形態では、図1Aおよび図1Bに示すように、工程(1)において、複数の光半導体素子1のそれぞれの下面を仮固定シート10に直接仮固定している。
一方、第7実施形態では、工程(1)において、図15Cに示すように、複数の光半導体素子1のそれぞれを、第1蛍光体層2を介して、間接的に、仮固定シート10に仮固定する。
本発明の被覆光半導体素子の製造方法の第7実施形態は、第1被覆素子集合体41を用意する工程(図15Aおよび図15B参照)、第1被覆素子集合体41を仮固定シートの一例としての第1転写シート37に転写する工程(1)(図15C参照)、溝3を設ける工程(2)(図15D参照)、第2被覆層4を溝3に充填する工程(3)(図16E参照)、被覆光半導体素子5を第1転写シート37から転写シートの一例としての第2転写シート38に転写する工程(4)(図16F参照)、第2被覆層4の一部を除去する工程(図16G参照)を備える。第7実施形態では、上記した各工程が順次実施される。
図15Cに示すように、工程(1)では、第1被覆素子集合体41を第1転写シート37に転写する。第1被覆素子集合体41を第1転写シート37に転写するには、図15Bが参照されるように、まず、第1被覆素子集合体41の上方に第1転写シート37を配置する。第1転写シート37は、互いに間隔を隔てて配置された光半導体素子1を含む第1被覆素子集合体41を仮固定できる仮固定シートでもある。第1転写シート37としては、上記した転写シート27と同様の転写シートが挙げられる。
その後、第1転写シート37を引き下げて、第1転写シート37の下面を、第1被覆素子集合体41の上面に接触させる。
次いで、第1転写シート37を第1仮固定シート10に対して引き上げる。これにより、第1被覆素子集合体41の下面が、第1仮固定シート10の上面から引き剥がされる。これにより、複数の光半導体素子1と、それらを被覆する第1蛍光体層2とを備える第1被覆素子集合体41が、第1転写シート37に仮固定される。その後、図15Cに示すように、第1被覆素子集合体41および第1転写シート37を上下反転させる。
これにより、第1被覆素子集合体41は、その下面が第1転写シート37が支持された状態で、上面が露出する。第1被覆素子集合体41において、複数の光半導体素子1の下面は、第1蛍光体層2を介して、第1転写シート37の上側において、第1転写シート37に支持(仮固定)されている。また、第1被覆素子集合体41において、光半導体素子1の上面が露出する。なお、第1被覆素子集合体41において、光半導体素子1の上面は、上記したバンプによって形成されている。また、第1蛍光体層2は、複数の光半導体素子1と、第1転写シート37との間に介在している。
図15Dに示すように、工程(2)では、第1被覆素子集合体41において、隣接する光半導体素子1の間に位置する第1蛍光体層2に、上方に向かって開放される溝3を設ける。
溝3は、光半導体素子1のバンプ(上面)と同じ方向、具体的には、上側に向かって開放される。
溝3の深さL7は、光半導体素子1の厚みL1に対して、例えば、大きく設定されている。具体的には、溝3の深さL7は、例えば、50μm以上、好ましくは、100μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
図16Eに示すように、次いで、光半導体素子1の上面(バンプ)を被覆するように、第2被覆層4を溝3に充填する。
その後、図16Fに示すように、溝3に対応する第1蛍光体層2および第2被覆層4を切断する。
これによって、1つの光半導体素子1と、1つの第1蛍光体層2と、1つの第2被覆層4とを備える被覆光半導体素子5が、第1転写シート37に支持(仮固定)された状態で、得られる。
被覆光半導体素子5において、光半導体素子1の上側に位置する第2被覆層4の厚みh1は、例えば、500μm以下、好ましくは、300μm以下であり、また、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上である。
その後、図16Gに示すように、第2被覆層4の上端部を除去する。
具体的には、複数の光半導体素子1のそれぞれの上面を被覆する第2被覆層4を除去する。これとともに、底部36の上側に位置する第2被覆層4の上端部も除去する。
第2被覆層4の上端部を除去するには、例えば、図示しないが、(1)感圧接着シートを用いる方法、例えば、図示しないが、(2)溶媒を用いる方法、例えば、図示しないが、(3)研磨部材を用いる方法などが採用される。以下、各方法を説明する。
(1)感圧接着シートを用いる方法
感圧接着シートは、感圧接着剤から調製されており、前後方向および左右方向に連続するシート形状を有している。感圧接着シートの大きさは、例えば、感圧接着シートを、厚み方向に投影したときに、複数の第2被覆層4の上端部を含むことができる大きさに設定されている。感圧接着剤としては、例えば、アクリル系感圧接着剤、ゴム系感圧接着剤、シリコーン系感圧接着剤、ウレタン系感圧接着剤、ポリアクリルアミド系感圧接着剤などが挙げられる。また、感圧接着シートは、支持材などで支持されていてもよい。感圧接着シートの25℃における粘着力(180℃剥離接着力)は、例えば、7.5(N/20mm)以上、好ましくは、10.0(N/20mm)以上であり、また、例えば、100(N/20mm)以下、好ましくは、20.0(N/20mm)以下である。
感圧接着シートを用いる方法では、感圧接着シートの感圧接着面(感圧接着シートが支持材が支持されている場合には、支持材によって支持される面に対する逆側面)を、第2被覆層4の上面に感圧接着し、続いて、第2被覆層4の上端部を引き剥がす。具体的には、まず、感圧接着シートを下降させ、続いて、感圧接着シートを第2被覆層4の上端部に対して感圧接着し、その後、感圧接着シートを第2被覆層4の上端部とともに、上昇させる(引き上げる)。
光半導体素子1の上側に位置する第2被覆層4は、光半導体素子1の上面(バンプ)との界面で剥離し、感圧接着シートに追従する。
なお、第2被覆層4の上端部の剥離が一回で完了しない時には、上記動作を複数回繰り返し、これによって第2被覆層4の上端部の剥離を完了させる。このとき、第2被覆層4において、底部36の上側に位置する第2被覆層4の上端部も、光半導体素子1の上側に位置する第2被覆層4とともに、感圧接着シートに追従する。
(2)溶媒を用いる方法
溶媒としては、例えば、被覆樹脂組成物を完全または部分的に溶解または分散させることができる溶媒が選択される。具体的には、溶媒としては、有機溶媒、水系溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、例えば、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素、例えば、トルエンなどの芳香族炭化水素、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテルなどが挙げられる。好ましくは、アルコール、芳香族炭化水素が挙げられる。
この方法では、具体的には、上記を溶媒を布に吸収させ、その布によって、第2被覆層4の上面を拭く。これによって、第2被覆層4の上端部が除去される。
(3)研磨部材を用いる方法
研磨部材としては、バフなどの布、ブラシ、ウォーターブラストなどが挙げられる。
研磨部材によって、第2被覆層4の上面を研磨する。これによって、第2被覆層4の上端部が除去される。
これによって、光半導体素子1の上面と、第1蛍光体層2の上面と、第2被覆層4の上面とが、面一となる。つまり、光半導体素子1の上面は、第1蛍光体層2の上面、および、第2被覆層4の上面と同一平面を形成する。
これによって、第2被覆層4の厚みh2は、例えば、15μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
そして、被覆光半導体素子5を、図16Gの仮想線が参照されるように、第2転写シート38に転写した後、図17に示すように、被覆光半導体素子5を、コレットを備えるピックアップ装置(図示せず)などを用いて、基板50にフリップチップ実装する。これによって、発光装置51を得る。
複数の被覆光半導体素子5の第2転写シート38に対する接着力F4は、複数の被覆光半導体素子5の第1転写シート37に対する接着力F3に比べて、例えば、高い。複数の被覆光半導体素子5の第2転写シート38に対する接着力F4が複数の被覆光半導体素子5の第1転写シート37に対する接着力F3に比べて高い場合には、工程(4)において、被覆光半導体素子5を、第1転写シート37から第2転写シート38に確実に転写することができる。
複数の被覆光半導体素子5の第2転写シート38に対する接着力F4は、複数の被覆光半導体素子5の第1転写シート37に対する接着力F3に対して、例えば、100%超過、好ましくは、110%以上、より好ましくは、120%以上であり、また、例えば、300%以下である。
<第7実施形態の作用効果>
第7実施形態によっても、第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
そして、この方法によれば、図16Eに示すように、工程(3)では、第1蛍光体層2の底部36が、溝3に充填された第2被覆層4と、第1転写シート37との間に介在しているので、第2被覆層4が第1転写シート37に直接接触することが防止される。そのため、たとえ、第2被覆層4の感圧接着力が高くても、第2被覆層4が第1転写シート37に接着することを防止することができる。
その結果、図16Fおよび図16Gに示すように、工程(4)において、被覆光半導体素子5を第1転写シート37から確実に剥離することができる。
また、被覆光半導体素子5の第2転写シート38に対する接着力F4が、被覆光半導体素子5の、処理後の第1転写シート37に対する接着力F3に比べて、低ければ、工程(4)において、被覆光半導体素子5が、第1転写シート37から第2転写シート38に転写されず、第1転写シート37に感圧接着された状態となる。被覆光半導体素子5の第2転写シート38に対する接着力F4が、被覆光半導体素子5の、処理後の第1転写シート37に対する接着力F3と同一であれば、工程(4)において、被覆光半導体素子5が、第1転写シート37から第2転写シート38に確実に転写されない。
しかし、この方法によれば、被覆光半導体素子5の第2転写シート38に対する接着力F4が、被覆光半導体素子5の、処理後の第1転写シート37に対する接着力F3に比べて、高いので、図16Gに示すように、工程(4)において、被覆光半導体素子5を、第1転写シート37から第2転写シート38により一層確実に転写することができる。
また、図17に示すように、この被覆光半導体素子5では、第1蛍光体層2が底部36を有するので、光半導体素子1から発光され、上方斜め側方に向かう光を、底部36によって、効率的に波長変換することができる。そのため、光の取出効率に優れる被覆光半導体素子5、さらには、光の取出効率に優れる発光装置51を得ることができる。
<第8実施形態>
第8実施形態において、上記した第1実施形態〜第7実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第7実施形態では、図17に示すように、第1蛍光体層2に張出部である底部36を設けている。
第8実施形態では、図19に示すように、第1蛍光体層2は、張出部である底部36を備えない。
本発明の被覆光半導体素子の製造方法の第8実施形態は、第7実施形態に備えられる各工程の他に、図18Aおよび図18Bに示すように、第1蛍光体層2において、底部36を含む上端部を除去する工程を備える。
第1蛍光体層2の上端部を除去する工程は、図18Aに示す、被覆光半導体素子5を第2転写シート38に転写する工程(4)の後に実施される。
図18Bに示すように、第1蛍光体層2の上端部を除去する工程では、第7実施形態において第2被覆層4の上端部を除去する方法と同様の方法が採用される。
これによって、第1蛍光体層2において底部36を含む上端部が除去される。
すると、第2被覆層4の上端部が、上側に露出される。第2被覆層4の上面と、第1蛍光体層2の上面とは、面一になる。つまり、第2被覆層4の上面と、第1蛍光体層2の上面とは、同一平面を形成する。
第1蛍光体層2は、略有底箱形状を有し、また、その下端部に光半導体素子1が埋設された形状を有する。つまり、下部に光半導体素子1を被覆しており、下方に向かって開放される凹部を有する形状を有する。具体的には、第1蛍光体層2は、上側に露出する上面(上端面)と、第2転写シート38に感圧接着する下面と、第2被覆層4の内側面に被覆される外側面と、光半導体素子1の上面および側面を被覆する内面とを有する。
第2被覆層4は、第1蛍光体層2の面方向外側に配置されており、略矩形枠形状を有する。第2被覆層4は、第1蛍光体層2の上面と面一である上面と、第1蛍光体層2および光半導体素子1の下面と面一である下面と、面方向外側に向かって露出する外側面と、第1蛍光体層2の外側面を被覆する内側面とを有する。
上側第1蛍光体層52の厚みL4は、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。
その後、図19に示すように、被覆光半導体素子5を、コレットを備えるピックアップ装置(図示せず)などを用いて、基板50にフリップチップ実装する。これによって、発光装置51を得る。
<第8実施形態の作用効果>
第8実施形態によっても、第7実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、被覆光半導体素子5および発光装置51では、第1蛍光体層2が底部36(図17参照)を備えないので、側方への光の漏れを抑制し、また、上方への輝度(正面輝度)を向上させることができる。
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
まず、各成分を詳説する。
フェニル系シリコーン樹脂組成物:特開2015−073084号公報の実施例に記載のフェニル系シリコーン樹脂組成物A
メチル系シリコーン樹脂組成物:商品名「LS1−6140」、Nusil社製
酸化チタン:光反射性成分、商品名「R−706」、平均粒子径0.38μm、Dupont社製
シリカフィラー:無機フィラー、商品名「FB9454」、平均粒子径20μm、デンカ社製
カーボンブラック:光吸収性粒子、商品名「MA600」、平均粒子径20nm、三菱化学社製
黄色蛍光体:YAG蛍光体、商品名「Y468」、YAG:Ce、平均粒子径17μm、ネモト・ルミマテリアル社製
赤色蛍光体:CASN蛍光体、商品名「ER6238」、CaAlSiN3:Eu、平均粒子径15μm、Intematix社製
緑色蛍光体:LuAG蛍光体:商品名「LP−6956」、Lu3Al5O12:Ce、平均粒子径15μm、LWB社製
(第1実施形態に対応する実施例および比較例)
実施例1
工程(1):図1Aに示すように、厚みL1が150μm、幅L2が1140μmである青色LEDからなる光半導体素子1を、第1仮固定シート10の上面に、間隔L3 300μm(ピッチP1440μm)を隔てて、複数整列配置した。第1仮固定シート10は、両面テープからなる仮固定層11と、ステンレス板からなる支持層12とを備えている。
次いで、黄色蛍光体15質量部、および、フェニル系シリコーン樹脂組成物100質量部を含有する蛍光体樹脂組成物から、平板状の第1蛍光体層2を調製した。第1蛍光体層2の厚みL0は、350μmであった。
その後、図1Bに示すように、第1蛍光体層2を複数の第1蛍光体層2に対して、熱圧着した。熱圧着の条件は、90℃、10分間であった。これによって、複数の光半導体素子1から露出する第1仮固定シート10の上面に、第1蛍光体層2が直接接触した。
上側第1蛍光体層52の厚みL4は150μmであり、隣接する光半導体素子1間に位置する第1蛍光体層2の厚みL5は300μmであった。
工程(2):図1Cに示すように、厚み200μmのダイシングソー35によって、隣接する光半導体素子1の間に位置する第1蛍光体層2に、溝3を設けた。
溝3の幅L6は200μmであり、溝3の深さL7は、280μmであった。また、底部36の厚みL8は、20μmであった。溝3の内側面と、光半導体素子1の側面との距離αは、100μmであった。
複数の光半導体素子1と、溝3を有する第1蛍光体層2とを備える第1被覆素子集合体41を得た。
工程(3):第2被覆層4を溝3に充填する方法として、工程(i)〜工程(v)を順次実施した。
工程(i):まず、感圧接着剤を調製した。
すなわち、温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた反応容器に、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)100質量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)12.6質量部と、ジベンゾイルパーオキサイド(BPO、重合開始剤)(商品名「ナイパーBW」、日油社製)0.25質量部とを、トルエン(重合溶媒)に投入して、窒素ガス気流下60℃で、モノマー成分を共重合させた。これにより、アクリル系ポリマーの45質量%トルエン溶液を得た。これにメタクリロイルオキシエチルイソシアネート13.5質量部を配合して、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(イソシアネート基含有化合物)をアクリル系ポリマーに対して付加反応させ、炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを調製した。また、上記アクリル系ポリマーのトルエン溶液に、アクリル系ポリマーの固形分100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」、日本ポリウレタン工業社製)0.1質量部と、光重合開始剤(商品名「イルガキュア127」、(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)2質量部とを添加した。これによって、炭素−炭素二重結合が導入された樹脂組成物からなる感圧接着剤を調製した。
続いて、感圧接着剤を、厚み125μmのPETフィルム(大三紙業社製)からなる支持シート62の表面に塗布した後、120℃で3分間乾燥し、さらに50℃で24時間、エージングした。これにより、厚み30μmの感圧接着層61を、支持シート62の表面に形成した。
これにより、感圧接着層61と、支持シート62とを備え、厚み145μmの保護シート6を準備した。なお、保護シート6の25℃における引張弾性率は、3,650MPaであった。
その後、図1Dに示すように、保護シート6の感圧接着層61を、上側第1蛍光体層52の上面に、ハンドローラを用いて、貼り合せた。なお、感圧接着層61の下面と、溝3の底面とは、間隔が隔てられた。
工程(ii):図1Eに示すように、真空チャンバー18、真空ライン19、真空ポンプ20、真空バルブ21、大気ライン22、大気バルブ23と、被覆材料43を充填した真空ディスペンサ39とを装備した真空装置16を準備した。
続いて、真空バルブ21および大気バルブ23を開放した状態で、真空ポンプ20を作動させ、その後、第1被覆素子集合体41、第1仮固定シート10および保護シート6を真空チャンバー18内に設置した。
続いて、チャンバー空間24内を密閉し、次いで、大気バルブ23を閉鎖した。すると、チャンバー空間24の気圧は、6.6×10−4MPaになった。
工程(iii):メチル系シリコーン樹脂組成物100質量部、酸化チタン10質量部、シリカフィラー100質量部からなる被覆材料43を調製した。
次いで、図1Eに示すように、真空ディスペンサ39のノズル41から、被覆材料43 1.3mL(密閉空間7の体積の142%)を、保護シート6の周端縁の下面と、それに対向する第1仮固定シート10の上面との間に、塗布した。これによって、密閉空間7を形成した。
工程(iv):次いで、図2Fに示すように、真空バルブ21を閉鎖し、その後、大気バルブ23を開放した。これによって、チャンバー空間24の気圧を大気圧にした。
すると、密閉空間7に被覆材料43が流入し、密閉空間7が被覆材料43によって充填された。つまり、密閉空間7と同一形状を有し、被覆材料43からなる第2被覆層4が形成された。すなわち、第2被覆層4が溝3に充填された。そして、複数の光半導体素子1、第1蛍光体層2と、第2被覆層4とを備える第2被覆素子集合体29が得られた。
その後、第1仮固定シート10、第2被覆素子集合体29および保護シート6を、真空チャンバー18から取り出した。
工程(v):次いで、図2Gに示すように、第2被覆素子集合体29および保護シート6を、熱風循環式乾燥機に投入して、150℃で2時間加熱することによって、第2被覆層4を完全硬化させた。
その後、活性エネルギー線を保護シート6に照射して、感圧接着層61の感圧接着力を低減させた。続いて、保護シート6を、図2Gの矢印で示すように、上側第1蛍光体層52の上面と、第2被覆層4の上面とから、引き剥がした。
図2Hに示すように、その後、厚み40μmのダイシングソーにより、第2被覆層4と、底部36とを厚み方向に沿って切断した。これにより、複数の被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10に支持された状態で、得た。第2被覆層4の幅βは、300μmであった。被覆光半導体素子5の寸法は、2440μm×2440μm×300μmであった。
工程(4):図2Iに示すように、複数の被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10から、SPV−224(日東電工社製)からなる第1転写シート27に転写した。
発光装置の製造:
その後、被覆光半導体素子5を基板50にフリップチップ実装して、発光装置51を得た。
実施例2および3
工程(2)において、溝3に対応する底部36の厚みL8を、表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様に処理して、被覆光半導体素子5を得、続いて、発光装置51を得た。
比較例1
工程(2)では、図12Aに示すように、ダイシングソー35によって、第1蛍光体層2に、その厚み方向を貫通する開口部3’を設けた以外は、実施例1と同様に処理して、第1被覆素子集合体41を得た。開口部3’から、第1仮固定シート10の上面が露出していた。また、第1蛍光体層2には、底部36(張出部)が形成されていなかった。
工程(3)では、図12Bに示すように、第2被覆層4は、開口部3’において、第1仮固定シート10の上面に直接接触していた。
そして、工程(4)では、図12Dに示すように、被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10から第1転写シート27に転写することができなかった。
(第2実施形態に対応する実施例)
実施例4
工程(3)において、差圧を利用する方法(工程(ii)〜工程(iv))に代えて、モールド成形によって、第2被覆層4を形成した以外は、実施例2と同様にして、被覆光半導体素子5を得、続いて、発光装置51を得た。
実施例5および6
酸化チタン10質量部に代えて、カーボンブラック10質量部を配合して、被覆材料43を調製した以外は、実施例2と同様にして、被覆光半導体素子5を得、続いて、発光装置51を得た。
実施例7
酸化チタンを配合せずに、被覆材料43を調製した以外は、実施例4と同様にして、被覆光半導体素子5を得、続いて、発光装置51を得た。
比較例2
工程(2)では、図13Aに示すように、ダイシングソー35によって、第1蛍光体層2に、その厚み方向を貫通する開口部3’を設けた以外は、実施例7と同様に処理して、第1被覆素子集合体41を得た。開口部3’から、第1仮固定シート10の上面が露出していた。また、第1蛍光体層2には、底部36(張出部)が形成されていなかった。
工程(3)では、図13Bに示すように、第2被覆層4は、開口部3’において、第1仮固定シート10の上面に直接接触していた。
そして、工程(4)では、図13Dに示すように、被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10から第1転写シート27に転写することができなかった。
(第4実施形態に対応する実施例および比較例)
実施例8
赤色蛍光体0.8質量部、および、フェニル系シリコーン樹脂組成物100質量部を含有する蛍光体樹脂組成物から、平板状の第1蛍光体層2を調製した点、および、緑色蛍光体22質量部、および、メチル系シリコーン樹脂組成物100質量部から、被覆材料43を調製した点以外は、実施例4と同様に処理して、図9に示す被覆光半導体素子5を得、続いて、図9の仮想線に示すように、発光装置51を得た。
図9に示すように、被覆光半導体素子5は、光半導体素子1と、赤色蛍光体およびフェニル系シリコーン樹脂組成物を含有する第1蛍光体層2と、緑色蛍光体およびメチル系シリコーン樹脂組成物を含有する第2蛍光体層84とを備えている。
比較例3
工程(2)では、図14Aに示すように、ダイシングソー35によって、第1蛍光体層2に、その厚み方向を貫通する開口部3’を設けた以外は、実施例8と同様に処理して、第2被覆素子集合体29を得た。開口部3’から、第1仮固定シート10の上面が露出していた。また、第1蛍光体層2には、底部36(張出部)が形成されていなかった。
工程(3)では、図14Bに示すように、第2蛍光体層84は、開口部3’において、第1仮固定シート10の上面に直接接触していた。
そして、工程(4)では、図14Dに示すように、被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10から第1転写シート27に転写することができなかった。
(第6実施形態に対応する実施例)
実施例9
フェニル系シリコーン樹脂組成物からなる透明樹脂組成物から、平板状の第1被覆層82を調製した点、および、メチル系シリコーン樹脂組成物100質量部、および、黄色蛍光体15質量部から、被覆材料43を調製した点以外は、実施例4と同様に処理して、図11に示す被覆光半導体素子5を得、続いて、図11の仮想線に示すように、発光装置51を得た。
図11に示すように、被覆光半導体素子5は、光半導体素子1と、フェニル系シリコーン樹脂組成物を含有する第1被覆層82(透明層)と、黄色蛍光体およびメチル系シリコーン樹脂組成物を含有する第2蛍光体層84とを備えている。
(評価)
下記の項目について評価した。それらの結果を表1〜表4に記載する。
(仮固定シートに対する接着力F1)
各実施例および各比較例において、第1被覆素子集合体41の、紫外線照射後の第1仮固定シート10に対する接着力F1を、180度剥離試験により、測定した。
(転写シートに対する接着力)
各実施例および各比較例において、被覆光半導体素子5の第1転写シート27に対する接着力F1を、180度剥離試験により、測定した。
(転写シートへの転写性)
被覆光半導体素子5の、第1仮固定シート10から第1転写シート27への転写性を、下記の基準に従って評価した。
○:被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10から第1転写シート27への転写できた。
×:被覆光半導体素子5を、第1仮固定シート10から第1転写シート27への転写できなかった。
(正面輝度)
発光装置51における正面輝度は、大塚電子社製、配光測定システムおよび分光器MCPDPD−9800を用い、常温、300mAで点灯させた。
発光した光をLED光源から316mm離れた距離に積分球を設置し、正面光(0°方向)の光量を、比較例1を100としたときに、90以上を○、90未満を×と判定した。
(視認性)
被覆光半導体素子5における視認性は、LED光源を使用し、縦20mm、横20mmのアルファベット文字A〜Zの表示板を作成し、任意の文字を表示させた。表示した文字を3mの距離から読み取り、識別できた人が100人中70人以上であれば「○」、識別できた人が70人未満であれば「×」と判定した。
(光の取出効率)
発光装置51の光の取出効率は、大塚電子社製、積分球および分光器MCPD−9800を用い、常温、300mAで点灯させ、全光束を測定し、下記の基準に従って評価した。
◎:105[lm/W]以上
○:90[lm/W]以上、105[lm/W]未満