以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は、トリフェニレン骨格を含有するエポキシ樹脂と硬化剤または硬化促進剤と無機フィラーとを含有する。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂はトリフェニレン骨格を含有することを特徴としている。トリフェニレン骨格は円盤状の平面性の高い骨格であり、πスタッキングによる強い自己集積性を示す。そのため、トリフェニレン骨格を含有するエポキシ樹脂組成物は、硬化中にトリフェニレンが自己集積化して液晶性もしくは結晶性の規則性構造を形成するため高い熱伝導率を示す。無機フィラー存在下ではフィラーがエポキシ樹脂の液晶性発現を阻害する場合がある為、本発明に用いるトリフェニレン骨格を含有するエポキシ樹脂は、必ずしも液晶性を示す必要はない。
本発明に用いるトリフェニレン骨格含有エポキシ樹脂は、具体的には下記式(1)で示されるエポキシ樹脂である。
(式中、−Rは−R1−R2−R3もしくは−R4である置換基であり、少なくとも3つの−Rは−R1−R2−R3であり、すべてのRは互いに同一であっても異なっていても良い。
ここで、−R1−は下記式(2)で示される2価の連結基である。
前記式(2)のR5は水素原子もしくは置換基を有していても良い炭素数1〜20の炭化水素基もしくは置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。
さらに、−R2−は下記式(3)で示される2価の連結基である。
さらに、−R3は下記式(4)で示される反応性基である。
前記式中nは1〜20の整数を表し、nが大きいと高温での分子運動性が高くなり、ガラス転移温度が低下してしまうため、耐熱性が強く求められる場合には1〜10であることが好ましく、さらには1〜6であることが好ましい。また、式中mは1〜10の整数を表し、nと同様に耐熱性が強く求められる場合には1〜5であることが好ましく、さらには1〜3であることが好ましい。−R1−R2−R3が複数である場合には、それぞれのnおよびmは同一でも異なっていても良い。
上記の構造の中でも特に、長期の熱安定性を求められる分野では、エステル結合を有さない構造が好ましく、また、高い熱伝導性を求められる分野では、樹脂の配向性を高めるため−R2−は疎水性相互作用の強いアルキレン鎖が好ましい。そのような置換基−R1−R2−R3の具体例としては、例えば、下記式(5)で示されるものが挙げられる。
前記式(1)において、6つの−Rのうち−R1−R2−R3の数が3〜6であり、多官能であるほど硬化物の架橋密度が高まり耐熱性が向上するため、耐熱性が強く求められる場合には4〜6が好ましく、熱伝導性が強く求められる場合には、3〜5が好ましい。また、すべての−Rは互いに同一であっても異なっていても良い。
さらに、R4は水素原子もしくは置換基を有していても良い炭素数1〜20の炭化水素基を表す。前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、シクロプロペニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基が挙げられる。前記の置換基は、本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物およびその硬化物に著しい影響を与えるものでなければいかなる置換基を有していても良い。エポキシ樹脂の低溶融粘度化には、運動性の高い長鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基が好ましいが、運動性の高い置換基はエポキシ樹脂硬化物の耐熱性を低下させる。また、嵩高い置換基は、分子の配向を阻害し熱伝導率を低下させる。したがって、本発明のエポキシ樹脂に導入されるR4としては、炭素数1〜10の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜10の直鎖状の炭化水素基であることがさらに好ましい。
さらに、R5は水素原子もしくは置換基を有していても良い炭素数1〜20の炭化水素基もしくは置換基を有していても良い炭素数1〜20のアルコキシ基を表す。前記炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、シクロプロペニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基が挙げられる。前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基等が挙げられる。前記の置換基は、本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物およびその硬化物に著しい影響を与えるものでなければいかなる置換基を有していても良い。エポキシ樹脂の低溶融粘度化には、運動性の高い長鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等のアルキル基もしくは長鎖状のアルコキシ基が好ましいが、運動性の高い置換基はエポキシ樹脂硬化物の耐熱性を低下させる。また、嵩高い置換基は、分子の配向を阻害し熱伝導率を低下させる。したがって、本発明のエポキシ樹脂に導入されるR5としては、水素原子もしくは炭素数1〜10である炭化水素基もしくはアルコキシ基であることが好ましく、水素原子もしくは炭素数1〜10の直鎖状の炭化水素基もしくはアルコキシ基であることがさらに好ましい。
前記式(1)で表されるトリフェニレン骨格含有エポキシ樹脂は、公知の方法により製造する事ができる。トリフェニレン骨格上の各種置換基−R1−R2−R3、R4は、トリフェニレン骨格を構築した後に導入しても良いし、予め目的の置換基を導入しておいたベンゼン誘導体を用いてトリフェニレン骨格を構築しても良い。トリフェニレン骨格の構築方法としては、例えばベラトロール、もしくは、目的の置換基が導入されたベンゼン誘導体の金属触媒を用いたカップリング反応等が挙げられる(Chem.Rev.,2002,102,1359、Angew.Chem.Int.Ed.,2010,49,44,8209、Org.Lett.,2010,12,3,628)。ここで、前記ベンゼン誘導体とは、カップリング反応に必要な官能基を有するベンゼンを表し、具体的な官能基の例としては、例えば、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲノ基;トリメチルシリル、トリメトキシシリル、トリフルオロシリル、クロロジメチルシリル等のシリル基;トリメチルスタニル、トリブチルスタニル等のスタニル基;ジヒドロキシボロニル等のボロニル基;トリフラート、ノナフラート、メシラート基、トシラート基等のスルホニル基、マグネシウムハライド基、亜鉛ハライド基等が挙げられる。
ここで、−R3は酸性および塩基性条件に不安定であるため、例えば、−R1−R2−R3が導入された状態でのベンゼン誘導体の酸化カップリング反応や、塩基性条件下でのトリフェニレンもしくはベンゼン誘導体への−R1−R2−R3の導入が困難な場合がある。その場合には、酸性および塩基性条件に安定な−R1−R2−R3の前駆体をトリフェニレンもしくはベンゼン誘導体に導入し、その後−R1−R2−R3へと変換するのが良い。−R1−R2−R3の前駆体の構造としては−R1−R2−CH=CH2、−R1−R2−OH等が挙げられる。−R1−R2−CH=CH2を−R1−R2−R3へと変換へと変換する方法としては、周知慣用の方法を用いることができるが、例えば、次亜塩素酸やN−ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤を用いてハロヒドリンを形成したのちエポキシへと変換する方法(J.Organomet.Chem.,2005,690,12,3009、Tetrahedron Lett.,2010,51,52,6830)や特表平8−503729の76−77頁に記載の方法等が挙げられる。また、−R1−R2−OHを−R1−R2−R3へと変換する方法としては−R1−R2−OHの水酸基にエピハロヒドリンを反応させてハロヒドリンを形成した後、脱ハロゲン化水素化する方法が挙げられる。
トリフェニレンもしくはベンゼン誘導体への−R1−R2−R3、−R1−R2−R3の前駆体および−R4の導入方法としては、例えば、水酸基を有するトリフェニレンもしくはベンゼン誘導体にエピハロヒドリンを反応させてハロヒドリンを形成した後、脱ハロゲン化水素化する方法、水酸基を有するトリフェニレンもしくはベンゼン誘導体に対し、末端にハロゲノ基もしくはトリフラート、ノナフラート、メシラート基、トシラート基等のスルホニル基を有する−R1−R2−R3、−R1−R2−R3の前駆体および−R4を反応させる方法(J.Chem.Soc.,1852,106,229、J.Med.Chem.,2013,56,21,8626)、もしくは、末端に水酸基を有する−R1−R2−R3、−R1−R2−R3の前駆体および−R4を光延条件下(O.Synthesis,1981)もしくはフィッシャーエステル化条件(A.Ber.Dtsch.Chem.Ges. 1895,28,3252)で反応させる方法(Bioorg.Med.Chem.Lett.,2007,17, 20,5600)等が挙げられる。
−R1−R2−R3、−R1−R2−R3の前駆体および−R4を位置選択的に導入したい場合には、適宜トリフェニレンもしくは前記ベンゼン誘導体の水酸基を保護することができる。保護基は、具体的には保護および脱保護が容易なものであれば周知慣用のものが使用できるが、例えばメチル基、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、トリチル基、テトラヒドロフリル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基またはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等のシリル基が挙げられる。
前記トリフェニレンもしくはベンゼン誘導体のフェノール性水酸基、もしくは、−R1−R2−R3の前駆体である−R1−R2−OHのアルコール性水酸基とエピハロヒドリンを反応させる条件としては、例えば水酸基のモル数に対し、エピハロヒドリンを2〜10倍量(モル基準)となる割合で添加し、更に、水酸基のモル数に対し0.9〜2.0倍量(モル基準)の塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。この塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリン類を留出せしめ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリンは反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン類の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類とを併用することが可能であり、経済的に好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
また、前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂100質量%に対して0.1〜3.0質量%となる割合であることが好ましい。また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜2種以上を併用してもよい。
前述のエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂100質量%に対して0.1〜3.0質量%となる割合であることが好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより目的とするエポキシ樹脂を得ることができる。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に用いる硬化剤は、特に限定はなく、通常のエポキシ樹脂の硬化剤として常用されている化合物は何れも使用することができ、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノール系化合物などが挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、オルトフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体、グアナミン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、4,4’,4”−トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は硬化促進剤を単独で、あるいは前記の硬化剤と併用して用いる事ができる。硬化促進剤としてエポキシ樹脂の硬化反応を促す種々の化合物が使用でき、例えば、リン系化合物、第3級アミン化合物、イミダゾール化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。この中でも、イミダゾール化合物、リン系化合物、第3級アミン化合物の使用が好ましく、特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルホスフィン、第3級アミンでは1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−ウンデセン(DBU)が好ましい。
本発明の熱伝導材料用エポキシ組成物は、更にフィラーを必須成分として含有する。ここで用いるフィラーは無機系フィラーが好ましく、樹脂組成物に耐熱性の向上、難燃性、低線膨張係数化や低誘電率化等の特性を付与することができる。特に、熱伝導率の高い無機系フィラーを用いる事で、本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の熱伝導率をさらに向上させることが出来る。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に用いられるフィラーとして、耐熱性の向上、難燃性の付与、低誘電率の低下や線膨張係数の低下等のために、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、水酸化アルミ等の各種フィラーが用いられる。半導体封止材用に用いるフィラーとしてシリカを用いることが好ましく、耐熱性の向上や線膨張係数の低下させることができる。シリカとしては例えば溶融シリカ、結晶シリカが挙げられる。前記のフィラーの配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記の溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の全体量に対して65質量%以上が好ましい。また、電子回路基板などには、難燃性付与のため、水酸化アルミが好ましく用いられる。
また、本発明熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に用いる無機フィラーとしては、公知慣用の金属系フィラー、無機化合物フィラー、炭素系フィラー等を用いる事が出来る。具体的には、例えば、銀、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属系フィラー、アルミナ、マグネシア、ベリリア、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン等の無機系フィラー、ダイヤモンド、黒鉛、グラファイト、炭素繊維等の炭素系フィラーなどが挙げられる。少なくとも1種の熱伝導性フィラーが選択されて使用されるが、結晶形、粒子サイズ等が異なる1種あるいは複数種の熱伝導性フィラーを組み合わせて使用する事も可能である。電子機器等の用途での熱伝導材料の場合には、電気絶縁性が求められる事が多く、これらのフィラーのうち、熱伝導性と体積固有抵抗のいずれも高い、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ベリリア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、ダイヤモンドから選択される少なくとも1種の絶縁性の熱伝導性フィラーの使用が好ましい。熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に対する熱伝導性フィラーの充填量には限りがあり、充填量が多くなりすぎると例えば熱伝導性接着材として用いるときの接着性等の物性を低下させてしまうため、熱伝導率の高い熱伝導性フィラーの使用が好ましく、10W/m/K以上の熱伝導性フィラーの使用がより好ましい。中でもアルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化マグネシウムが熱伝導性と絶縁性の確保の点で好ましく、特にアルミナが熱伝導性と絶縁性に加えて樹脂に対する充填性が良くなるのでより好ましい。
これらの熱伝導性フィラーとして、表面処理を行ったものを使用する事もできる。例えば、無機系フィラーなどは、シラン系、チタネート系およびアルミネート系カップリング剤などで、表面改質されたものを使用する事ができる。熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の流動性などから、前記のカップリング剤で処理したフィラーを用いた方が良い場合が多く、例えば、表面処理により、硬化物における樹脂とフィラーの密着性が更に高められ、樹脂と熱伝導性フィラーの間での界面熱抵抗が低下し熱伝導性が向上する。
カップリング剤の中でも、シラン系カップリング剤の使用が好ましく、例えば、シランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β(3,4エポキシシンクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシリメトキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
表面処理は、公知慣用のフィラーの表面改質方法により行え、例えば、流体ノズルを用いた噴霧方式、せん断力のある攪拌、ボールミル、ミキサー等の乾式法、水系または有機溶剤系等の湿式法を採用することができる。せん断力を利用した表面処理は、フィラーの破壊が起こらない程度にして行うことが望ましい。
乾式法における系内温度ないしは湿式法における処理後の乾燥温度は、表面処理剤の種類に応じ熱分解しない領域で適宜決定される。例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシランで処理する場合は、80〜150℃の温度が望ましい。
前記の熱伝導性フィラーの平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.2μm、好ましい上限が50μmである。上記の熱伝導性フィラーの平均粒子径が0.2μm未満であると、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなって、作業性等が低下することがある。上記の熱伝導性フィラーの平均粒子径が50μmを超えたものを多量に使用すると、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の硬化物と基材との接着力が不足して、電子部品の反りが大きくなったり、冷熱サイクル下等においてクラック又は剥離が生じたり、接着界面で剥離が生じたりすることがある。上記の熱伝導性フィラーの平均粒子径のより好ましい下限は0.4μm、より好ましい上限は30μmである。
前記の熱伝導性フィラーの形状は特に限定されないが、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の流動性からは球に近い方が好ましい。例えば、アスペクト比(粒子の短径の長さに対する粒子の長径の長さの比(長径の長さ/短径の長さ))は、特に限定されないが、1に近いほど好ましく、好ましくは、1〜80であり、さらに好ましくは1〜10である。
前記の熱伝導性フィラーの熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物中の含有量は特に限定されず、用途で求められる熱伝導率の程度に応じて配合されるが、好ましくは、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の100質量%中、上記の熱伝導性フィラーの含有量は40〜95質量%である。上記の熱伝導性フィラーの含有量が40質量%未満であると、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は充分な熱伝導性が得られない。上記の熱伝導性フィラーの含有量が95質量%を超えると、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の硬化物と基材の接着力が不足して、電子部品の反りが大きくなったり、冷熱サイクル下等においてクラック又は電子部品の剥離が生じたり、接着界面で剥離が生じたりする。また、上記の熱伝導性フィラーの含有量が95質量%を超えると、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなって塗布性、作業性等が低下する。熱伝導性フィラーの機能を効果的に発現し、高い熱伝導性を得るためには、熱伝導性フィラーが高充填されている方が好ましく、60〜95質量%の使用が好ましい。エポキシ樹脂組成物の流動性も考慮すると、より好ましくは、60〜90質量%の使用である。
前記の熱伝導性フィラーは、2種類以上の粒子径の異なるものを混合して用いることが好ましく、これにより大粒子径の熱伝導性フィラーの空隙に小粒子径の熱伝導性フィラーがパッキングされることによって、単一粒子径の熱伝導性フィラーのみを使用するよりも密に充填されるために、より高い熱伝導率を発揮することが可能である。例えば、アルミナを使用した場合、熱伝導性フィラー中、平均粒子径5〜20μm(大粒子径)を45
〜75質量%、平均粒子径0.4〜1.0μm(小粒子径)を25〜55質量%の範囲の割合で混合することで、密に熱伝導性フィラーを充填することができ、高い熱伝導性が得られる。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分として、前記した式(1)で表されるトリフェニレン骨格を含有するエポキシ樹脂を単独で用いてもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂を併用して用いても良い。具体的には、エポキシ樹脂成分の全質量に対して前記のエポキシ樹脂が30質量%以上、好ましくは40質量%以上となる範囲で他のエポキシ樹脂を併用することができる。
ここで前記のトリフェニレン骨格を含有するエポキシ樹脂と併用され得る他のエポキシ樹脂としては、種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;レゾルシノールジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等のベンゼン型エポキシ樹脂;テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂、トリグリシジルオキシビフェニル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルオキシビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ターフェニル型もしくは部分水添加ターフェニル型エポキシ樹脂;1,6−ジグリシジルオキシナフタレン型エポキシ樹脂、1−(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)−1−(2−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)メタン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)−1−フェニル−メタン、1,1−ビ(2,7−ジグリシジルオキシナフチル)等のナフタレン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等を用いて合成されるリン含有エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;キサンテン型エポキシ樹脂;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキヒシクロヘキシル)アジペート等の脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等のヘテロ環含有エポキシ樹脂;フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルp−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステル、トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシリレンジアミン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジグリシジルヒダントイン、グリシジルグリシドオキシアルキルヒダントイン等のヒダントイン型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は、更に、繊維質基材を含有することができる。繊維質基材を添加することで、本発明の熱伝導材料用樹脂組成物に対し、強度及び低線膨張係数を付与することができ、繊維強化樹脂として好適に使用可能である。ここで、使用される繊維質基材は、例えば、植物繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等があり、織布状でも不織布状でも繊維の集合体であっても分散体であっても良い。繊維質基材としては具体的には紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、アラミド不織布、ガラスマット、ガラスロービング布等が挙げられ、たとえば電子回路基板として用いる場合、強度や低線膨張係数を付与できることからガラス繊維が好ましい。例えばガラス繊維を用いたプリプレグの作製の場合、樹脂の流動性(含浸性)の観点から好ましいものは、ガラス繊維の直径10μm以下、繊維の密度が40〜80本/インチで、かつ、エポキシシランカップリング剤もしくはアミノシランカップリング剤等のシランカップリング剤で処理したガラス布である。さらに好適には、縦糸と横糸の網の隙間を極力なくす処理を施したものがよい。ガラス不織布としては、目付15g/m2、厚さ約0.1mm〜目付120g/m2、厚さ約1.0mmのものが好ましい。なお、本発明に用いる繊維質基材は、厚さ100μm以下であることが使用目的の観点から好ましい。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は、有機溶剤を配合しても良い。ここで使用し得る有機溶剤としては、特に限定はないが、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線基板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
また、本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は、難燃性を発揮させるために、例えば電子回路基板の分野においては、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
前記の非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
前記のリン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
前記の有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に対して、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量%の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量%の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量%の範囲で配合することが好ましい。
また前記のリン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
前記の窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
前記のトリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
前記のシアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
前記の窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に対して、0.05〜10質量%の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量%の範囲で配合することが好ましい。
また、前記の窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
前記のシリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
前記のシリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に対して、0.05〜20質量%の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
前記の無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
前記の金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
前記の金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
前記の金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
前記の金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
前記のホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
前記の低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
前記の無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物に対して、0.5〜50質量%の範囲で配合することが好ましく、特に5〜30質量%の範囲で配合することが好ましい。
前記の有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
前記の有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に対して、0.005〜10質量%の範囲で配合することが好ましい。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、カップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。本発明の式(1)で表されるエポキシ樹脂、硬化剤または硬化促進剤の配合された本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は、半導体封止材料、電子回路基板用材料等に好適に用いることができる。特に、本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂は熱伝導性に優れることから、熱伝導材料用の中でも放熱材料用として特に好適に使用することができ、熱伝導性接着材等に特に好ましく使用できる。
[熱伝導性接着材料]
例えば熱伝導性接着材料として用いる場合、パワーモジュールなどの電気・電子機器の放熱させたい部位と放熱部材(例えば、金属板やヒートシンク)を接着させ、良好な放熱を発現させるために使用される。その際の使用される放熱材料用エポキシ樹脂組成物の形態には特に制限はないが、液状あるいはペースト状に設計した熱伝導性接着材料の場合は、液状あるいはペースト状の熱伝導性接着材料を接着面の界面に注入後、接着し、硬化させれば良い。固形状に設計されたものは、粉体状、チップ状であってもよく、接着面の界面に置き、熱溶融させる事で接着し、硬化させれば良い。
本発明の熱伝導性接着材料は、未硬化の状態で接着対象物に接触させた上で硬化し接着させてもよいし、半硬化の状態で接着対象物に接触させた上で硬化し接着させてもかまわない。
本発明の樹脂組成物は、熱伝導性接着材料をシート状に加工した、熱伝導性接着シートとしても好適に使用可能である。この場合、樹脂組成物をシート状に加工し、接着面の界面に置き、熱溶融させる事で接着し、硬化させることができる。
本発明の樹脂組成物を熱伝導性接着シートとする場合、硬化剤としてはアミノ系硬化剤を含有していると、成形性に優れるため好ましい。
また、本発明の樹脂組成物がフェノキシ樹脂を含有していると、成形性に優れるためさらに好ましい。
本発明の熱伝導性接着材料または熱伝導性接着シートを用いて基材同士を接着させた上で硬化させることで、本発明の樹脂組成物を含有する積層体を製造することができる。
本発明の積層体は、中間層である樹脂組成物層が高い熱伝導性を有することから、基材あるいは上層の一方から一方へ熱伝導させる用途で好適に用いることができ、特に半導体やパワーモジュールといった発熱性の電子電気部材と、金属板やヒートシンクといった放熱部材を積層した積層体である、放熱部品として好適に使用可能である。
〔半導体封止材料〕
例えば、半導体封止材料に用いられる熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物を作製するためには、前記のポリグリシジルオキシ−p−ターフェニル化合物である多官能ターフェニル型エポキシ樹脂と前記の硬化剤を、例えば、押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合して溶融混合型の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物を得ればよい。その際、フィラーとしては、シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化アルミが用いられ、その充填率は熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物100質量%当たり、充填剤を30〜95質量%の範囲で用いられる。中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、65質量%以上が好ましく、70質量%以上が特に好ましく、それらの効果を格段に上げるためには、80質量%以上が一層その効果を高めることができる。
半導体パッケージ成形としては、該組成物を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物である半導体装置を得る方法がある。
本発明の半導体封止材料に用いられる熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物には、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高めるために、必要に応じて、カップリング剤を用いてもよい。カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウム系化合物、ジルコニウム系化合物、リン系化合物、アルミニウムキレート類等が挙げられる。
上記のカップリング剤の配合量は、フィラーに対して0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜2.5質量%がより好ましい。0.01質量%未満では各種パッケージ構成部材との接着性が低下する傾向があり、5質量%を超えるとボイド等の成形不良が発生し易い傾向がある。
さらに、本発明の半導体封止材料に用いられる熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物には、その他の添加剤として、離型剤、着色剤、応力緩和剤、密着性向上剤、界面活性剤などを必要に応じて配合することができる。
離型剤としては、例えば、カルナバワックスや炭化水素系、脂肪族系、アミド系、エステル系、高級アルコール系、高級脂肪酸金属塩系等が挙げられる。
前記の炭化水素系としては、パラフィンワックス、ポリオレフィン系ワックス等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスは、酸化されていない無極性のポリオレフィンワックスと酸化ポリオレフィンワックスに大別され、それぞれにポリエチレン系,ポリプロピレン系、および酢ビ−エチレン共重合系がある。
脂肪酸系としては、モンタン酸、ステアリン酸、へベニン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、アミド系としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エステル系としては、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ステアリル、高級アルコール系としては、ステアリルアルコール、高級脂肪酸金属塩としてはステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
着色剤としては、ベンガラ、カーボンブラック、ガラス組成物等の無機系着色剤やフタロシアニン系化合物、アントラキノン系、メチン系、インジゴイド系、アゾ系の有機化合物の色素がいずれも使用可能であるが、着色効果に優れることからカーボンブラックが好ましい。
低応力化剤(応力緩和剤)としては、特に制限はなく、例えば、シリコーンオイル、液状ゴム、ゴム粉末、熱可塑性樹脂等のアクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体などのブタジエン系共重合体ゴムやシリコーン系化合物に記載されたもの等が挙げられる。
さらに、耐湿信頼性テストにおける信頼性向上を目的として、ハイドロタルサイト類や、水酸化ビスマスなどのイオントラップ剤を配合してもよい。
密着性向上剤としては、特に制限はなく、例えば、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド、ベンゾチアゾール骨格を有する化合物、インデン樹脂、架橋したジアリルフタレート樹脂粉末およびブタジエン系ゴム粒子等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド等が挙げられる。
本発明の半導体封止材料に用いられる熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は、各種原材料を均一に分散混合できるのであればいかなる手法を用いても調製できるが、一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。成形条件に合うような寸法及び質量でタブレット化すると使いやすい。
本発明で得られる半導体封止材料に用いられる熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物により封止した素子を備えた電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載し、必要な部分を本発明の半導体封止材料で封止した電子部品装置などが挙げられる。このような電子部品装置としては、具体的には、1)リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の半導体封止材料を用いてトランスファー成形等により封止してなる、DIP、PLCC、QFP、SOP、SOJ、TSOP、TQFP等の一般的な樹脂封止型IC、2)テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の半導体封止材料で封止したTCP、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、3)トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の半導体封止材料で封止したCOBモジュール、4)ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、マザーボード接続用の端子を形成したインターポーザ基板に半導体チップを搭載し、バンプまたはワイヤボンディングにより半導体チップとインターポーザ基板に形成された配線を接続した後、本発明の半導体封止材料で半導体チップ搭載側を封止したBGA、CSP、MCPなどの片面封止パッケージが挙げられる。中でも本発明で得られる半導体封止材料に用いられる熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物で封止した素子を備えた片面封止型パッケージは反り量が小さいという特徴を有する。
上記リードフレームとしては、銅(銅合金も含む)のリードレーム、銅板等の表面にメッキ等の方法でNi層を形成しているNiメッキしたリードフレーム 、42アロイ製のリードレームを使用することができる。
本発明の半導体封止材料に用いられる熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物を用いて素子を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的であるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等を用いてもよい。
〔電子回路基板〕
本発明の電子回路基板に用いられる熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物は、具体的には、プリント配線基板材料、フレキシルブル配線基板材料、ビルドアップ基板用層間絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム材料、樹脂注型材料等に用いられる。また、これら各種用途のうち、プリント配線基板、フレキシルブル配線基板材料、ビルドアップ基板用層間絶縁材料およびビルドアップ用接着フィルムの用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ、いわゆる電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高難燃性、高耐熱性、低熱膨張性、及び溶剤溶解性といった特性からフレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料に用いることが好ましい。
ここで、本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物からプリント配線基板を製造するには、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に加えて、有機溶剤を配合し、ワニス化したエポキシ樹脂組成物とし、補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材とは、本発明の繊維質基材であり、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性樹脂組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この時用いる樹脂組成物と繊維質基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント配線基板を得ることができる。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物からフレキシルブル配線基板を製造するには、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に加えて、リン原子含有化合物、硬化促進剤、及び有機溶剤を配合して、リバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて、電気絶縁性フィルムに塗布する。次いで、加熱機を用いて60〜170℃で1〜15分間加熱し、溶媒を揮発させて、接着剤組成物をB−ステージ化する。次いで、加熱ロール等を用いて、接着剤に金属箔を熱圧着する。その際の圧着圧力は2〜200N/cm、圧着温度は40〜200℃が好ましい。それで十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全硬化が必要な場合は、さらに100〜200℃で1〜24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の接着剤組成物膜の厚みは、5〜100μmの範囲が好ましい。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては、例えば、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に加えて、ゴム、フィラーなどを適宜配合し、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物に加えて、有機溶剤を配合し、ワニス化したエポキシ樹脂組成物とし、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
本発明の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
ここで、多層プリント配線板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の熱伝導材料用エポキシ樹脂組成物を、支持フィルムの表面に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させてエポキシ樹脂組成物の層を形成させることにより製造することができる。
形成される層の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
なお、前記の層は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
上記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm2(9.8×104〜107.9×104N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
したがって、該エポキシ樹脂を用いることによって、熱伝導材料用エポキシ樹脂硬化物は極めて優れた耐熱性、高熱伝導性および低熱膨張性を発現することから、高温安定性かつ高熱伝導性が要求される熱伝導材料用途、特に放熱材料用として好適に使用可能であり、熱伝導性接着材、高性能半導体の封止材料および電子回路基板材料に好適に使用できる。
本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。尚、融点、GPC、HPLCは以下の条件にて測定した。
1)融点:示差熱熱量重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA6200)を用いて測定した。
測定条件
測定温度: 室温〜300℃
測定雰囲気: 窒素
昇温速度: 10℃/min
2)GPC:測定条件は以下の通り。
測定装置 :昭和電工株式会社製「Shodex GPC−104」、
カラム: 昭和電工株式会社製「Shodex KF−401HQ」
+昭和電工株式会社製「Shodex KF−401HQ」
+昭和電工株式会社製「Shodex KF−402HQ」
+昭和電工株式会社製「Shodex KF−402HQ」
検出器: RI(示差屈折率計)
データ処理: ウォーターズ株式会社製「Empower 2」
測定条件: カラム温度 40℃
移動相: テトラヒドロフラン
流速: 1.0ml/分
標準 : (使用ポリスチレン)
ウォーターズ株式会社製「Polystyrene Standard 400」
ウォーターズ株式会社製「Polystyrene Standard 530」
ウォーターズ株式会社製「Polystyrene Standard 950」
ウォーターズ株式会社製「Polystyrene Standard 2800」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
3)HPLC:測定条件は以下の通り。
測定装置: アジレント・テクノロジー社製「1260 インフィニティシステム」
カラム: アジレント・テクノロジー社製「Poroshell 120 EC−C18」
カラム温度: 40℃
移動相: 水/アセトニトリル
グラジエント条件: 0min〜1.67min:水/アセトニトリル=70/30
1.67min〜5.00min:70/30→5/95
5.00min〜8.00min:5/95
8.00min〜9.33min:5/95→70/30
流速:1mL/min
検出器:UV(波長275nm)
定量法:絶対検量線を用いた面積百分率法
試料:樹脂固形分換算で0.1質量%のアセトニトリル溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(3.3μl)。
合成例1
(2,3,6,7,10,11−ヘキサグリシジルオキシトリフェニレンの合成)
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン5g、エピクロルヒドリン51g、n−ブタノール18g、水51g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.1gを仕込み溶解させた。45℃に昇温した後に、20%水酸化ナトリウム水溶液7.4gを8時間要して添加し、その後更に50℃に昇温し48%水酸化ナトリウム水溶液6gを更に1時間要して添加した。反応終了後、水9gを加えて静置した後、下層を除いた。その後、150℃減圧下で未反応エピクロルヒドリンを留去した。それで得られた粗エポキシ樹脂にアセトン20mL、トルエン10mLを加え、シリカゲルショートカラムにてゲルおよび高極性成分を除いた後、溶媒を減圧留去した。得られた固形分はアセトンを用いて再結晶させ、析出した結晶をろ別、乾燥し、下記式(6)で表される2,3,6,7,10,11−ヘキサグリシジルオキシトリフェニレンを主成分とするエポキシ樹脂(A−1)1.6gを得た。得られたエポキシ樹脂(A−1)は融点154℃の固体であった。GPC測定により面積比で75%以上が目的物であり、MS測定により、2,3,6,7,10,11−ヘキサグリシジルオキシトリフェニレンを示す660のピークが検出された。
合成例2
(2,3,6,7,10,11−ヘキサ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレンの合成)
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン25g、ジメチルホルムアミド472g、炭酸カリウム128gを仕込み、60℃に昇温して30分撹拌した。5−ブロモペンテン69gを添加して23時間反応させた後、さらに5−ブロモペンテン11gを添加して24時間反応させた。その後、再度5−ブロモペンテン11gを添加して127時間反応させた。反応終了後、反応液を水1Lに注ぎ、析出した固形分をろ過により回収した。得られた固形分にトルエン500mLを加えて溶解し、シリカゲルショートカラムにて高極性成分を除いた後、溶媒を減圧留去した。得られた固形分はエタノールを用いて再結晶させ、析出した結晶をろ別、乾燥し、下記式(7)で表される2,3,6,7,10,11−ヘキサ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレンを41gを得た。
合成例3
(2,3,6,7,10,11−ヘキサ(3−オキシラニルプロピルオキシ)トリフェニレンの合成)
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例2で合成した2,3,6,7,10,11−ヘキサ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレン35g、ジメチルスルホキシド864g、水48gを仕込み、60度に昇温して溶解させた。室温まで冷却した後に、N−ブロモスクシンイミド68gを少量ずつ30分間を要して添加し3時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル1.5Lおよび水1Lを加え、分液漏斗に移して酢酸エチル層を分離した。酢酸エチル層は水および飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去して固形分62gを得た。次いで、温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、得られた固形分を30g、メチルイソブチルケトン561g、水420g、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド3gを仕込み、50℃に昇温して溶解した。5%水酸化ナトリウム水溶液118gを添加して1.5時間反応させた後、さらに80℃に昇温して3.5時間反応させた。その後、さらに5%水酸化ナトリウム水溶液36gを添加して5時間反応させた。反応終了後、静置して下層を棄却し、溶媒を減圧留去した。得られた固形分にトルエン100mLおよびアセトン10mLを加え溶解し、シリカゲルカラムにて分離精製した後、溶媒を減圧留去し、下記式(8)で表される2,3,6,7,10,11−ヘキサ(3−オキシラニルプロポキシ)トリフェニレンであるエポキシ樹脂(A−2)8.5gを得た。得られたエポキシ樹脂(A−2)は融点86℃の固体であった。HPLC測定により面積比で98%以上が目的物であり、MS測定により、2,3,6,7,10,11−ヘキサ(3−オキシラニルプロピルオキシ)トリフェニレンを示す828のピークが検出された。
合成例4
(トリ(t−ブチルジメチルシリル)トリヒドロキシトリフェニレンの合成)
温度計、滴下ロート、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、2,3,6,7,10,11−ヘキサヒドロキシトリフェニレン100g、ジメチルホルムアミド1900gを仕込み、溶解させて5℃以下に冷却した。ジイソプロピルエチルアミン118gおよびt−ブチルジメチルシリルクロリド137gをそれぞれ別の滴下ロートから同時に30分間を要して滴下した後、室温まで昇温して3時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル1.5Lおよび水1Lを加え、分液漏斗に移して酢酸エチル層を分離した。酢酸エチル層は水および飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去して固形分180gを得た。得られた固形分にヘプタン100mLおよびトルエン100mLを加え溶解し、シリカゲルショートカラムに吸着させた。ヘプタン500mLおよびトルエン500mLの混合液を通して低極性成分を除いた後に、トルエン1Lを通して目的成分を回収し溶媒を減圧留去して、下記式(9)およびその官能基側鎖の位置異性体の混合物であるトリ(t−ブチルジメチルシリル)トリヒドロキシトリフェニレン135gを得た。
合成例5
(トリ(t−ブチルジメチルシリル)トリ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレンの合成)
温度計、滴下ロート、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例4で得られたトリ(t−ブチルジメチルシリル)トリヒドロキシトリフェニレン130g、4−ペンテン−1−オール67g、トリフェニルホスフィン153g、トルエン1100gを仕込み、ジエチルアゾジカルボキシラート258gを30分間を要して滴下し、室温で2時間反応させた。反応終了後、反応液をろ過して不溶の副生成物を除去し、分液漏斗に移して水1Lを加え、トルエン層を分離した。トルエン層は水および飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去して固形分160gを得た。得られた固形分にヘプタン100mLおよびトルエン100mLを加え溶解し、シリカゲルショートカラムにて高極性成分を除き、溶媒を減圧留去して、下記式(10)およびその官能基側鎖の位置異性体の混合物であるトリ(t−ブチルジメチルシリル)トリ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレン144gを得た。
合成例6
(トリヒドロキシトリ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレンの合成)
温度計、滴下ロート、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例5で得られたトリ(t−ブチルジメチルシリル)トリ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレン144g、テトラヒドロフラン680gを仕込み、溶解させて5℃以下に冷却した。テトラブチルアンモニウムフロリドの23%テトラヒドロフラン溶液668gを30分間を要して滴下し、5℃以下で2時間反応させた。反応終了後、反応液を分液漏斗に移して酢酸エチル1Lおよび水1Lを加え、酢酸エチル層を分離した。酢酸エチル層は飽和塩化アンモニウム水溶液、水および飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去して下記式(11)およびその官能基側鎖の位置異性体の混合物であるトリヒドロキシトリ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレン110gを得た。
合成例7
(トリアリルオキシトリ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレンの合成)
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例6で得られたトリヒドロキシトリ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレン70g、ジメチルホルムアミド500gを仕込み、60℃に昇温して溶解した。10%NaOH水溶液160gを仕込み、60℃で30分撹拌した。アリルブロミド64gを60℃で添加し、60℃で2時間反応させた。その後、アセトン500gを添加し、80℃でさらに2時間反応させた。反応終了後、反応液を水3Lに注いで目的物を沈降させ、デカンテーションにより沈殿物を回収した。得られた沈殿物にトルエン1Lおよび水1Lを加えて分液漏斗に移し、トルエン層を分離した。トルエン層は水および飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去して粘調液体を得た。得られた粘調液体にトルエン100mLを加え溶解し、シリカゲルショートカラムにて高極性成分を除き、溶媒を減圧留去して、下記式(12)およびその官能基側鎖の位置異性体の混合物であるトリアリルオキシトリ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレン53gを得た。
合成例8
(トリグリシジルオキシトリ(3−オキシラニルプロピルオキシ)トリフェニレンの合成)
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、合成例7で合成したトリアリルオキシトリ(ペンタ−4−エン−1−イルオキシ)トリフェニレン40g、ジメチルスルホキシド900g、水50gを仕込み、60℃に昇温して溶解させた。室温まで冷却した後に、N−ブロモスクシンイミド88gを少量ずつ30分間を要して添加し3時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル1.5Lおよび水1Lを加え、分液漏斗に移して酢酸エチル層を分離した。酢酸エチル層は水および飽和食塩水で洗浄し、溶媒を減圧留去して粘調液体74gを得た。次いで、温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素ガスパージを施しながら、得られた粘調液体70g、メチルイソブチルケトン1200g、水900g、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド7gを仕込み、50℃に昇温して溶解した。5%水酸化ナトリウム水溶液294gを添加し、80℃に昇温して3時間反応させた。その後、さらに5%水酸化ナトリウム水溶液45gを添加して2時間反応させた。反応終了後、静置して下層を棄却し、溶媒を減圧留去した。得られた固形分にトルエン100mLおよびアセトン10mLを加え溶解し、シリカゲルカラムにて分離精製した後、溶媒を減圧留去し、下記式(13)およびその官能基側鎖の位置異性体の混合物であるトリグリシジルオキシトリ(3−オキシラニルプロピルオキシ)トリフェニレンであるエポキシ樹脂(A−3)8.5gを得た。得られたエポキシ樹脂(A−3)は粘調液体であった。HPLC測定により面積比で95%以上が目的物であり、MS測定により、トリグリシジルオキシトリ(3−オキシラニルプロピルオキシ)トリフェニレンを示す744のピークが検出された。
〔実施例1〜3および比較例1〕
合成例1、3および8で得られた本発明のエポキシ樹脂(A−1、A−2、A−3)および比較用のエポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)社製エピクロン850S)(A−4)、硬化促進剤としてイミダゾール(2E4MZ、2PHZ−PW(四国化成工業(株)社製))無機充填材として市販のシランカップリング処理アルミナ(アドマテックス(株)社製、AC9500−SCX)を用いて表1に示した組成で配合し、3本ロールで樹脂の溶融温度以上で混練し、脱泡することで樹脂組成物を作製した。得られた樹脂組成物を用いて、熱プレス成形により樹脂硬化物試験片(30×30×0.5mm)を作成した。得られた硬化物について耐熱性、熱伝導度を評価した。
〔比較例2〜5〕
合成例1、3および8で得られた本発明のエポキシ樹脂(A−1、A−2、A−3)および比較用エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC(株)社製エピクロン850S)(A−4)、硬化促進剤としてイミダゾール(2E4MZ、2PHZ−PW(四国化成工業(株)社製))を用いて表1に示した組成で配合し、それぞれ配合物を30×30×0.5mmの型枠に流し込み、所定の硬化条件で硬化した後、型枠から成型物を取出し、得られた硬化物について耐熱性、熱伝導度を評価した。結果を表1に示す。
<耐熱性(ガラス転移温度)>
粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置RSAII、レクタンギュラーテンション法;周波数3.5Hz、昇温速度3℃/min)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度として評価した。
<熱伝導度>
熱伝導率(λ)を、比重(ρ)、熱拡散率(α)、比熱容量(C)を用いて、λ=αρCの式に基づき、算出した。比重、熱拡散率および比熱容量は、それぞれ、以下に示す方法により求めた。
(1)比重
電子天秤CP224Sおよび比重測定キットYDK01CP(ザルトリウス社製)を用いて、比重を測定した。
(2)熱拡散率
熱拡散率測定装置LFA447Nanoflash(NETZSCH社製)を用いて、25℃における熱拡散率を測定した。
(3)比熱容量
示差走査熱量計EXSTAR7200(日立ハイテクサイエンス社製)により、25℃における比熱容量を算出した。
測定条件
測定温度:−20〜100℃
測定雰囲気:窒素
昇温速度:10℃/min
表1の結果からわかるように、トリフェニレン骨格を含有する多官能エポキシ樹脂を無機フィラーとの組成物とした場合、無機フィラーが示す高熱伝導性と、トリフェニレンの強い自己集積性に起因するエポキシ樹脂の配向による高熱伝導化効果により優れた熱伝導性を発現でき、さらに樹脂の多官能設計に由来する優れた耐熱性を示す。