JP6528441B2 - 4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含有してなる塩化ビニル系ペーストゾル組成物 - Google Patents
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Description
本発明の塩化ビニル系ペーストゾル組成物は、下記の本エステルからなる塩化ビニル系ペーストゾル用可塑剤をペースト用塩化ビニル系樹脂に配合することにより得られる。
本発明の塩化ビニル系樹ペーストゾル可塑剤は、特定の脂肪族飽和アルコール(アルコール成分)と4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸若しくはその無水物(酸成分)をエステル化反応して得られる4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含有することを最大の特徴としている。
本発明に係る4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「本エステル」という。)は、所定の酸成分とアルコール成分とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化することにより容易に得られる。
本発明で用いる脂肪族飽和アルコールは、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコールであり、主成分である炭素数9の脂肪族飽和アルコールの割合が、本発明で用いる脂肪族飽和アルコール中に、好ましくは60%以上(60〜100%)、より好ましくは70%以上(70〜100%)、特に好ましくは80%以上(80〜100%)が推奨される。
また、炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量は、本発明で用いる脂肪族飽和アルコール中に、60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは70〜90重量%の範囲が推奨され、かつ、炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコール(例えば2−メチルオクタノール等)の含有量が、40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10〜30重量%の範囲が推奨される。
上記アルコール成分と4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸若しくはその無水物とのエステル化反応を行うに際し、該アルコール成分は、例えば、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸若しくはその無水物1モルに対して、好ましくは2.00モル〜5.00モル、より好ましくは2.01モル〜3.00モル、特に2.02モル〜2.50モルを使用することが推奨される。
本発明で用いられるペースト用塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われ、例えば、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法や、水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法が挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300〜6000であり、好ましくは400〜5000、さらに好ましくは700〜4500である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
塩化ビニル系ペーストゾル組成物における本エステルの含有量としては、その用途に応じて適宜選択されるが、通常、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜300重量部であり、好ましくは5〜200重量部である。1重量部未満では所定の可塑化効果が得られにくく、300重量部を越えて配合した場合には、成形体表面へのブリードが激しく、いずれの場合も好ましくない。但し、上記の塩化ビニル系ペーストゾル組成物に対して充填剤などを添加する場合は、充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて当該可塑剤を配合することができる。例えば、ペースト用塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、充填剤として炭酸カルシウムを100重量部配合した場合には、本エステルを1〜500重量部程度配合することができる。
本発明に係る塩化ビニル系ペーストゾル組成物は、コーティング成形、スプレー成形、浸漬成形、回転成形、スラッシュ成形、スプレッド成形、カレンダー成形、押し出し成形などの方法により成形した後、加熱溶融することにより、所望の形状の成形体に成形することができる。
本発明の実施例及び比較例で用いる原料のアルコール成分の直鎖率はガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定した。GCによる原料のアルコール成分の測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム DB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μl
定量:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
なお内部標準物質の選定に当たっては、原料のアルコール成分に1−ヘキサノールがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
下記の製造例で得られた本エステル又は本発明外のエステルは次の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
色相:JIS K−0071(1998)に準拠して測定した。
ペースト用塩化ビニル樹脂(重合度1100、商品名「Zest P22」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に可塑剤60重量部を加え、均一になるまでハンドリング混合し塩化ビニルペーストゾル組成物とした。このペーストゾル組成物を温度25℃、湿度60%の条件で7日間熟成した。塩化ビニル系ペーストゾル組成物の調製直後(ゾル粘度 初期)と7日間熟成後(ゾル粘度 7日後)のゾル粘度(Ps・s)をB型粘度計(ローターNo.4、5rpm、1分後の値)で測定した。また、粘度上昇値は、下記(式1)により求めた。粘度上昇値の値が小さいほど、粘度安定性に優れると言える。
粘度上昇値(Pa・s)=(ゾル粘度 7日後)−(ゾル粘度 初期) (式1)
ペースト用塩化ビニル樹脂(重合度1100、商品名「Zest P22」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、安定剤としてカルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.9及び0.6重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合した後、可塑剤60重量部を加え、均一になるまでハンドリング混合し塩化ビニルペーストゾル組成物とした。調製したペーストゾル組成物をステンレス板上に約1mm厚でコーティングし、185℃のオーブン中で15分間加熱してゲル化させ、冷却後得られた塩化ビニルシート(塩化ビニル系ペーストゾル成形体)を用いて測定した。
(4)引張特性:JIS K−6723(1995)に準拠し、シートの100%モジュラス、破断強度、破断伸びを測定した。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示し、破断強度、破断伸びはその材料の実用的な強度の目安であり、一般的にはその値が大きいほど実用的な強度に優れると言うことができる。
a)揮発減量:ギヤーオーブン中、シートを170℃で30分、60分加熱した後のシートの重量変化を測定し、下記(式2)により重量減少率(重量%)を算出し、その重量減少率を以て揮発減量とした。揮発減量の値が小さいほど、耐熱性が高いと言える。
揮発減量(%)=((試験前の重量―試験後の重量)/試験前の重量)×100 (式2)
b)シート着色 :ギヤーオーブン中、シートを170℃で30分、60分間加熱した後の着色度の強弱を目視により6段階で評価した。
◎:着色なし、 ○:僅かに着色、 ○△:少し着色、
△:着色、 ×:強い着色、 ××:著しい着色
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物182.6g(1.2モル,新日本理化(株)製:リカシッドTH)、炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコール重量85.1%と炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコール重量11.7%を含む脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416g(2.9モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.24gを加え、反応温度を200℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とする4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「エステル1」という。)449gを得た。
得られたエステル1は、エステル価:260mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色相:10であった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりにn−ノニルアルコール416gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(n−ノニル)(以下、「エステル2」という。)360gを得た。
得られたエステル2は、エステル価:257mgKOH/g、酸価:0.06mgKOH/g、色相:20であった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりにn−ノニルアルコール248g(1.7モル)とイソノニルアルコール124g(0.9モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「エステル3」という。)370gを得た。
得られたエステル3は、エステル価:257mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色相:10であった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりに2−エチルヘキサノール374gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(2−エチルヘキシル)(以下、「エステル4」という。)269gを得た。
得られたエステル4は、エステル価:283mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:10であった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりにイソノニルアルコール415gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソノニル(以下、「エステル5」という。)350gを得た。
得られたエステル5は、エステル価:261mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:10であった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりにn−ノニルアルコール208g(1.4モル)とイソノニルアルコール208g(1.4モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(以下、「エステル6」という。)432gを得た。
得られたエステル6は、エステル価:258mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色相:10であった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)416gの代わりにイソデシルアルコール456gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジイソデシル(以下、「エステル7」という。)460gを得た。
得られたエステル7は、エステル価:246mgKOH/g、酸価:0.06mgKOH/g、色相:20であった。
製造例1で得られた4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル(エステル1)を用いて、上記「(3)塩化ビニル系ペーストゾル組成物のゾル粘度」及び「(4)塩化ビニル系ペーストゾル組成物の調製及びそれからなる塩化ビニルシートの作製」の記載に従って、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調製し、続いて得られた塩化ビニルペーストゾル組成物より塩化ビニルシートを作製し、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果を表1に示した。
エステル1の代わりにエステル2を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調製し、続いて塩化ビニルシートを作製して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
エステル1の代わりにエステル3を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調製し、続いて塩化ビニルシートを作製して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
エステル1の代わりにエステル4を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調製し、続いて塩化ビニルシートを作製して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
エステル1の代わりにエステル5を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調製し、続いて塩化ビニルシートを作製して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
エステル1の代わりにエステル6を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調製し、続いて及び塩化ビニルシートを作製して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
エステル1の代わりにエステル7を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調製し、続いて塩化ビニルシートを作製して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
エステル1の代わりにフタル酸ジー2−エチルヘキシル(新日本理化(株)製、サンソサイザーDOP)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系ペーストゾル組成物を調製し、続いて塩化ビニルシートを作製して、ゾル粘度測定、引張試験、耐寒性試験及び耐熱性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
Claims (5)
- ペースト用塩化ビニル系樹脂及び4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸若しくはその無水物と脂肪族飽和アルコールとをエステル化反応して得られる4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含有する塩化ビニル系ペーストゾル組成物であって、前記脂肪族飽和アルコールが、炭素数9 の脂肪族飽和アルコールを主成分(脂肪族飽和アルコールを100重量%とした場合に、該脂肪族飽和アルコール中に占める割合が60%以上)とし、上記脂肪族飽和アルコール中の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールの含有量が60重量%以上であり、かつ炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールの上記脂肪族飽和アルコール中の含有量が40重量%以下であり、更に、該脂肪族飽和アルコールの混合物の直鎖率が60%以上であることを特徴とする塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
- 前記脂肪族飽和アルコールが、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分(脂肪族飽和アルコールを100重量%とした場合に、該脂肪族飽和アルコール中に占める割合が70%以上)とし、炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールの脂肪族飽和アルコール中の含有量が70重量%以上であり、かつ炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールの脂肪族飽和アルコール中の含有量が30重量%以下であり、更に、該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が70%以上である請求項1に記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
- 前記脂肪族飽和アルコールが、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分(脂肪族飽和アルコールを100重量%とした場合に、該脂肪族飽和アルコール中に占める割合が80%以上)とし、炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールの脂肪族飽和アルコール中の含有量が70〜90重量%であり、かつ炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールの脂肪族飽和アルコール中の含有量が10〜30重量%であり、更に、該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が70〜90%である請求項2に記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物。
- ペースト用塩化ビニル系樹脂及び4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸若しくはその無水物と炭素数9 の脂肪族飽和アルコールを主成分(脂肪族飽和アルコールを100重量%とした場合に、該脂肪族飽和アルコール中に占める割合が60%以上)とする脂肪族飽和アルコールとをエステル化反応して得られる4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステルを含有する塩化ビニル系ペーストゾル組成物の製造方法であって、前記脂肪族飽和アルコールが、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する方法及び(2)炭素数9 のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造された直鎖構造及び分岐鎖構造を有する脂肪族飽和アルコールを含むことを特徴とする塩化ビニル系ペーストゾル組成物の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の塩化ビニル系ペーストゾル組成物を成形して得られる塩化ビニル系樹脂成形体。
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