JP2016141787A - 非フタル酸エステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびそれを含有してなる塩化ビニル系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 環境に優しく、かつ柔軟性、耐寒性が良好であり、更に耐熱性、耐フォギング性に優れた非フタル酸エステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびそれを含有してなる自動車部材等に好適な環境に優しい塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを目的とする。【解決手段】 特定のアルコールを使用することにより、環境的に問題であり、更に揮発性の高い炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルを実質的に含まない、環境に優しく、かつ柔軟性、耐寒性、耐熱性等の性能に優れた非フタル酸エステル系の可塑剤が得られ、その非フタル酸エステル系の可塑剤を含む塩化ビニル樹脂組成物から得られた塩化ビニル樹脂成形体を用いることにより、自動車用部材等に使用した際に生じる可塑剤由来のフォギング性を抑えることができる。【選択図】 なし
Description
本発明は、耐熱性、耐寒性に優れ、かつ柔軟性の良好な非フタル酸エステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびそれを含有してなる塩化ビニル系樹脂組成物に関し、詳しくは、不純物である炭素数8以下のアルコールとフタル酸類のエステルを実質的に含まない耐熱性、耐寒性に優れ、かつ柔軟性の良好なトリメリット酸トリエステルからなる非フタル酸エステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびそれを含有してなる自動車部材等に好適な塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
塩化ビニル系樹脂は、柔軟性をはじめとする種々の性能を付与するとともに、押出やカレンダー加工等の成形加工時の加工温度を低下させ、成形加工を容易にする目的で、可塑剤が添加された塩化ビニル系樹脂組成物として用いられることが多い。
このような塩化ビニル系樹脂組成物に用いられる可塑剤に求められる性能としては、該組成物を原料として成形加工品とした場合の、柔軟性、耐寒性、耐熱性、電気特性等種々の性能を付加する又は発揮させるところにある。このような塩化ビニル系樹脂組成物の可塑剤としては、これまで、価格、性能バランスの面より、例えばフタル酸ジ−2−エチルへキシル(DOP)やフタル酸ジイソノニル(DINP)に代表されるフタル酸エステル系の塩化ビニル用可塑剤が汎用的に使用されている。しかしながら、最近、化学物質の環境問題がクローズアップされている中で、可塑剤分野においては非フタル酸エステル系可塑剤、即ち炭素数が8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルを含まないか、含まれていても少量である可塑剤が市場で望まれる傾向になってきた。これまで、上記のようなフタル酸エステル類を実質的に含まない非フタル酸エステル系可塑剤としては、アセチルクエン酸トリブチル(以下、「ATBC」という)やアジピン酸ジ−2−エチルへキシル(以下、「DOA」という)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(以下、「DINCH」という)が、フタル酸エステル類が含まれていても少量である非フタル酸エステル系可塑剤としてはトリメリット酸トリ−2−エチルへキシル(以下、「TOTM」という)等のトリメリット酸エステル系の可塑剤が知られている(特許文献1〜4)が、性能面よりATBCやDOAはフタル酸エステル系可塑剤に比べて明らかに耐熱性が不足しているため代替は難しいことから、近時では比較的性能的にバランスに優れたDINCHやTOTMが注目されてきた。
特にトリメリット酸エステル系の可塑剤は、上述の通り、フタル酸エステルでは対応できない耐熱性等の要求される用途では、耐熱性に優れるトリメリット酸エステルが単独でまたはフタル酸エステルやアジピン酸エステルとの併用系で使われてきた。中でも、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(以下、「TOTM」という。)やトリメリット酸トリ−n−オクチル(以下、「n−TOTM」という。)などのオクチルエステルが、比較的に柔軟性や耐寒性と耐熱性・耐揮発性のバランスに優れ、フタル酸エステルの代替が可能な耐熱性の良い可塑剤として、耐熱電線や自動車のダッシュボード等に使用されてきた実績もあり、今後耐熱性に優れた非フタル酸エステル系の可塑剤として期待されている。
一般に、現在市販されているトリメリット酸エステル中には、原料に由来するフタル酸類のエステルが含まれていることが知られており、特に現在使われているTOTMやn−TOTMにはフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(以下、「DOP」という)やフタル酸ジーn−オクチル(以下、「n−DOP」という)等の上記フタル酸エステル類が含まれていることが知られている。
しかし、化学物質の環境問題が近年益々クローズアップされている中で、可塑剤分野においては炭素数が8以下のフタル酸エステルを含まないか、含まれていてもごく微量である非フタル酸エステル系可塑剤が市場で望まれる傾向が強くなり、非フタル酸エステルに関する基準が益々厳しくなってきているのが現状である。例えば、REACH規則 EC規則No1907/2006では、前記の様なフタル酸エステルの閾値が規定されており、成形品中に含まれる前記フタル酸エステルの含有量の少ない製品が強く望まれている。従って、トリメリット酸エステル中の上述の様な微量な不純物でさえ問題になってきており、その低減が望まれている。
その改善方法として原料トリメリット酸中のフタル酸類の量を400ppm以下へと少なくする試みがなされているが、製造コスト等を考慮すると、現実的には完全にフタル酸類を除去することは非常が困難であり、更にフタル酸類の量を少なくすれば少なくするほど製造コスト面でも実用化は難しいのが現状である(特許文献5)。
更に、別の改善方法として、揮発性が少なく、かつ環境への影響も少ないアルキル鎖長の大きな原料アルコールを用いる方法があり、その代表的ものとしてトリメリット酸トリイソノニル(以下、「TINTM」という)やトリメリット酸トリイソデシル(以下、「TIDTM」という)が知られているが、いずれも柔軟性等に問題があり、TOTMやn−TOTMと同じ様に使用することができないのが現状である。
以上の様な状況より、環境的に問題である炭素数が8以下のアルキルアルコールとフタル酸類とのエステルからなる不純物が少なく、かつ従来のTOTMやn−TOTM同じ様に使うことのできる耐熱性、耐寒性に優れ、かつ柔軟性の良好な非フタル酸エステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤が望まれている。
本発明の目的は、上記の問題点を解決できる、従来のTOTMやn−TOTMと同等の可塑性、柔軟性を示し、更に耐熱性、耐寒性も良好で、かつ環境的に問題のない非フタル酸エステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびその可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、トリメリット酸またはその酸無水物、好ましくはフタル酸類の含有量の少ないトリメリット酸またはその酸無水物と、アルキル鎖長の短いアルコールを実質的に含まない特定の構造のアルコールとを反応させることによりTOTMやn−TOTMと同等の可塑性や柔軟性を保持しつつ、耐熱性、耐寒性が更に向上された非フタル酸エステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
更に、現在市販されているトリメリット酸エステル、TOTMやn−TOTM中に含まれるDOPやn−DOPが比較的揮発性の高い不純物であり、例えば、より要求の厳しい自動車の内装材やクリーンルーム用の電線等においては、エステルそのものの揮発性だけではなく、その中に含まれる前記の様な少量の不純物がフォギングや汚染の原因となっており、その影響を無視することはできず、その改善が望まれていることから、耐フォギング性を確認した結果、炭素数8以下のアルコールとフタル酸類のエステルを実質的に含まない本発明に係る非フタル酸系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤を用いることにより、耐フォギング性に関しても改良できることを見出した。
即ち、本発明は、以下の特徴を有する塩化ビニル系樹脂用可塑剤およびそれを含む塩化ビニル系樹脂組成物を提供するものである。
[項1] トリメリット酸またはその無水物と、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とし、該脂肪族飽和アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が60%以上である脂肪族飽和アルコールとをエステル化反応して得られるトリメリット酸トリエステルからなる塩化ビニル系樹脂用可塑剤であって、
該トリメリット酸トリエステル中にフタル酸類と炭素数8以下のアルキルアルコールとのエステルが実質的に含まれないことを特徴とする塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
該トリメリット酸トリエステル中にフタル酸類と炭素数8以下のアルキルアルコールとのエステルが実質的に含まれないことを特徴とする塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
[項2] 前記脂肪族飽和アルコールが、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とし、脂肪族飽和アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が70%以上である[項1]に記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
[項3] 前記脂肪族飽和アルコールが、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とし、脂肪族飽和アルコール中の含有量が70〜90重量%の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと10〜30重量%の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が70〜90%である[項2]に記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
[項4] 前記脂肪族飽和アルコールが、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)該炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造された脂肪族飽和アルコールである[項1]〜[項3]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
[項5] 塩化ビニル系樹脂と[項1]〜[項4]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤を含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
[項6] 前記塩化ビニル系樹脂組成物が自動車部材用である、[項5]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
[項7] [項5]又は[項6]に記載の塩化ビニル系樹脂組成物から得られる塩化ビニル系樹脂成形体。
[項8] 前記塩化ビニル系樹脂成形体が自動車部材である、[項7]に記載の塩化ビニル系樹脂成形体。
本発明の非フタル酸エステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤は、環境に優しく、かつ可塑性、柔軟性に優れ、更に耐フォギング性の良好な塩化ビニル系樹脂用可塑剤として使用でき、その塩化ビニル系樹脂用可塑剤を含むことにより、良好な柔軟性を有し、かつ耐フォギング性に優れ、窓ガラス等の曇りや室内の汚染を低減した環境的に優しい塩化ビニル系樹脂組成物を得ることができる。
<塩化ビニル系樹脂用可塑剤>
本発明の塩化ビニル系樹脂用可塑剤は、特定の脂肪族飽和アルコール(アルコール成分)と特定のトリメリット酸またはその無水物(酸成分)をエステル化反応して得られるトリメリット酸トリエステルからなること、そしてそのトリメリット酸トリエステル中に、揮発性が高く、環境的にも問題である炭素数8以下のアルキルアルコールとフタル酸類とのエステルを実質的に含まないことを最大の特徴としている。
本発明の塩化ビニル系樹脂用可塑剤は、特定の脂肪族飽和アルコール(アルコール成分)と特定のトリメリット酸またはその無水物(酸成分)をエステル化反応して得られるトリメリット酸トリエステルからなること、そしてそのトリメリット酸トリエステル中に、揮発性が高く、環境的にも問題である炭素数8以下のアルキルアルコールとフタル酸類とのエステルを実質的に含まないことを最大の特徴としている。
本発明において、「フタル酸類の炭素数8以下のアルキルアルコールとのエステルが実質的に含まれない」とは、本発明の効果を発揮若しくは奏するために十分な程度に前記エステルの含有量が低いことを意味する。前述の様に、近年いわゆる非フタル酸エステル系の可塑剤には、前記エステルの含有量が、塩ビ樹脂組成物または成形体の全体量に対して、50ppm以下、特に30ppm以下であることが望まれており、本願における塩化ビニル系樹脂用可塑剤の含有量の上限値(500重量部)から換算すると、好ましい態様としては、塩化ビニル系樹脂用可塑剤中の前記エステルの含有量が、60ppm以下、好ましくは0.01〜60ppm、特に好ましくは0.01〜36ppm(重量比)であることが推奨される。従って、後述の実施例にある下記条件で行ったガスクロマトグラフィーによる分析方法にて検出限界(10ppm)以下であれば、実質的に含まれないことを意味する範疇であると言える。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム DB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μL
定量:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
また、分析方法は、前記ガスクロマトグラフィーが最も簡易で推奨されるが、それ以外の分析方法、例えば、高速液体クロマトグラフィーなどによる方法で測定することも可能であり、いずれの方法で測定しても同じ結果が得られる。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム DB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μL
定量:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
また、分析方法は、前記ガスクロマトグラフィーが最も簡易で推奨されるが、それ以外の分析方法、例えば、高速液体クロマトグラフィーなどによる方法で測定することも可能であり、いずれの方法で測定しても同じ結果が得られる。
本発明に係るトリメリット酸トリエステル(以下、「本エステル」という。)は、所定の酸成分とアルコール成分とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化することにより容易に得られる。
[脂肪族飽和アルコール]
本発明で用いる脂肪族飽和アルコールは、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコールであり、主成分である炭素数9の脂肪族飽和アルコールの割合が、本発明で用いる脂肪族飽和アルコール中に、好ましくは60重量%以上(60〜100重量%)、より好ましくは70重量%以上(70〜100重量%)、特に好ましくは80重量%以上(80〜100重量%)が推奨される。
本発明で用いる脂肪族飽和アルコールは、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコールであり、主成分である炭素数9の脂肪族飽和アルコールの割合が、本発明で用いる脂肪族飽和アルコール中に、好ましくは60重量%以上(60〜100重量%)、より好ましくは70重量%以上(70〜100重量%)、特に好ましくは80重量%以上(80〜100重量%)が推奨される。
また、本発明に係る脂肪族飽和アルコールは、その脂肪族飽和アルコールの直鎖率が、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは70〜90%の範囲が推奨される。
また、炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールの含有量は、本発明で用いる脂肪族飽和アルコール中に、60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは70〜90重量%の範囲が推奨され、かつ、炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコール(例えば2−メチルオクタノール等)の含有量が、40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10〜30重量%の範囲が推奨される。
また、炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールの含有量は、本発明で用いる脂肪族飽和アルコール中に、60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは70〜90重量%の範囲が推奨され、かつ、炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコール(例えば2−メチルオクタノール等)の含有量が、40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは10〜30重量%の範囲が推奨される。
本発明で用いる脂肪族飽和アルコールの態様の詳細として、該脂肪族飽和アルコールは、炭素数9の脂肪族飽和アルコールが主成分(好ましくは60重量%以上)であり、その脂肪族飽和アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が60%以上である。より好ましい態様としては、脂肪族飽和アルコールが、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分(好ましくは70重量%以上)とし、該脂肪族飽和アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が70%以上である態様が推奨され、特に好ましい態様としては、脂肪族飽和アルコールが、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分(好ましくは80重量%以上)とし、該脂肪族飽和アルコール中の含有量が70〜90重量%の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと10〜30重量%の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が70〜90%である態様が推奨される。
そして、直鎖率が60%以上であり、かつ炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールの含有量が60重量%以上であれば、柔軟性を低下することなく、十分に本発明の目的である耐熱性及び耐寒性の向上が得られる。逆に、上記直鎖率が60%未満または上記炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールの含有量が60重量%未満では、本発明の目的である耐寒性及び耐熱性の向上が不十分であり、更に柔軟性が低下する傾向にあり、好ましくない。
また、上記範囲でも本発明の目的である耐熱性及び耐寒性において十分な性能が得られるが、更に直鎖率を70〜90%の範囲に、かつ炭素数9の直鎖状飽和アルコールの含有量を70〜90重量%の範囲にすることにより、塩化ビニル系樹脂との混合がより容易となり、その結果引張伸び等の引張特性に関してもより向上させることが可能である。
本明細書及び特許請求の範囲において、脂肪族飽和アルコールの直鎖率とは、該脂肪族飽和アルコール中に占める直鎖アルコールの割合(重量比)であり、本発明の効果の観点から、実質的には炭素数9〜11の直鎖アルコールが占める割合とも言え、具体的にはガスクロマトグラフィーで分析する方法により求めることができる。
本発明で用いる炭素数9の脂肪族飽和アルコールは、例えば、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造することができる。
前記工程(1)のヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。
前記工程(2)の水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧下で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。
上記の工程で得られる炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とする脂肪族飽和アルコールの具体例(市販品)としては、約70重量%以上の直鎖状のノナノールと約30重量%以下の分岐鎖状のノナノールの混合物であるリネボール9(商品名、シェルケミカルズ社製)等が挙げられる。
[エステル化反応]
上記アルコール成分とトリメリット酸またはその無水物とのエステル化反応を行うに際し、該アルコール成分は、例えば、トリメリット酸またはその無水物1モルに対して、好ましくは3.05〜4.00モル、より好ましくは3.10〜3.80モル、特に3.15〜3.60モルを使用することが推奨される。
上記アルコール成分とトリメリット酸またはその無水物とのエステル化反応を行うに際し、該アルコール成分は、例えば、トリメリット酸またはその無水物1モルに対して、好ましくは3.05〜4.00モル、より好ましくは3.10〜3.80モル、特に3.15〜3.60モルを使用することが推奨される。
エステル化反応に用いる触媒としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸等が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体等が例示され、これらの1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することが可能である。
それらの中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01〜5.0重量%、より好ましくは0.02〜4.0重量%、特に0.03〜3.0重量%を使用することが推奨される。
エステル化温度としては、100℃〜230℃が例示され、通常、3〜30時間でエステル化反応は完結する。
本エステルの原料の酸成分である、トリメリット酸またはその無水物は、工業的に入手可能な市販のものを特に制限なく使用することができるが、好ましくはできるだけ高純度なものを使用することが好ましく、具体的にはフタル酸含有量が1000ppm以下、好ましく500ppm以下、より好ましくは400ppm以下のものが推奨される。また、エステル化反応の観点から、上記高純度のトリメリット酸無水物を使用することが最も推奨される。
上記高純度トリメリット酸無水物の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられるが、得られたトリメリット酸無視物が本発明の効果を奏するものであれば、特の下記製造方法に制約されるものではない。
プソイドクメンを、酢酸溶媒中で、臭素とジルコニウム、コバルト、マンガン等の重金属を主成分とする触媒の存在下、分子状酸素含有ガスで酸化するか、又は、ジメチルベンズアルデヒドを、水溶媒中で、臭素とマンガン等の重金属を主成分とする触媒の存在下、分子状酸素を含有するガスで酸化することにより、トリメリット酸を得ることができる。更に、無水トリメリット酸は、前記トリメリット酸を常法に従って脱水加熱無水化することにより得ることができる(例えば、特開昭58−116439号公報、特開昭61−280448号公報など)。
また、得られたトリメリット酸や無水トリメリット酸の純度が上げる方法としては、上記製造工程の中で、得られたトリメリット酸や無水トリメリット酸を晶析や再結晶化する方法、パラジウム等の貴金属を主成分とする水素化触媒の存在下で分子状水素と接触させて分離する方法、減圧蒸留する方法、無水化や蒸溜時にニッケル等を添加する方法、無水化後に酢酸や無水酢酸で加熱する方法などを挙げられる(例えば、特開2002−3443号公報、特開2004−331585号公報など)。
エステル化反応においては、該反応により生成する水の留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤を使用することが可能である。
また、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にてエステル化反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下または常圧下にて留去することが推奨される。
上記エステル化反応により得られた本エステルは、引き続き、必要に応じて塩基処理(中和処理)→水洗処理、液液抽出、蒸留(減圧、脱水処理)、吸着精製処理等により精製してもよい。
塩基処理に用いる塩基としては、塩基性の化合物であれば特に制約はなく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが例示される。
吸着精製に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
上記処理は、常温で行なっても良いが、40〜90℃程度に加温して行なうこともできる。
<塩化ビニル系樹脂組成物>
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、上述した本エステルを、可塑剤として塩化ビニル系樹脂に配合することにより得られる。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、上述した本エステルを、可塑剤として塩化ビニル系樹脂に配合することにより得られる。
[塩化ビニル系樹脂]
本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われ、汎用塩化ビニル樹脂の場合、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法が挙げられ、また、塩化ビニルペースト樹脂では水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法が挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300〜5000であり、好ましくは400〜3500、さらに好ましくは700〜3000である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
本発明で用いられる塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われ、汎用塩化ビニル樹脂の場合、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法が挙げられ、また、塩化ビニルペースト樹脂では水性媒体中で水溶性重合触媒の存在下に乳化重合する方法が挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300〜5000であり、好ましくは400〜3500、さらに好ましくは700〜3000である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
共重合体の場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等の炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸およびそのエステル類、メタクリル酸およびそのエステル類、マレイン酸およびそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル等のビニル化合物、ジアリルフタレート等の多官能性モノマー及びこれらの混合物と塩化ビニルモノマーとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、架橋アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエンースチレンーメチルメタクリレート共重合体(MBS)、ブタジエンーアクリロニトリルー(α−メチル)スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの混合物へ塩化ビニルモノマーをグラフトしたグラフト共重合体等が例示される。
[塩化ビニル系樹脂組成物]
塩化ビニル系樹脂組成物における本エステルの含有量としては、その用途に応じて適宜選択されるが、通常、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部であり、好ましくは5〜50重量部である。1重量部未満では所定の可塑化効果が得られにくく、100重量部を超えて配合した場合には、成形品表面へのブリードが激しく、いずれの場合も好ましくない。但し、上記の塩化ビニル系樹脂組成物に対して充填剤などを添加する場合は、充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて当該可塑剤を配合することができる。例えば、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、充填剤として炭酸カルシウムを100重量部配合した場合には、当該可塑剤を1〜500重量部程度配合することができる。
塩化ビニル系樹脂組成物における本エステルの含有量としては、その用途に応じて適宜選択されるが、通常、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部であり、好ましくは5〜50重量部である。1重量部未満では所定の可塑化効果が得られにくく、100重量部を超えて配合した場合には、成形品表面へのブリードが激しく、いずれの場合も好ましくない。但し、上記の塩化ビニル系樹脂組成物に対して充填剤などを添加する場合は、充填剤自身が吸油するために上記の範囲を超えて当該可塑剤を配合することができる。例えば、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、充填剤として炭酸カルシウムを100重量部配合した場合には、当該可塑剤を1〜500重量部程度配合することができる。
塩化ビニル系樹脂組成物は、本エステルと共に他の公知の可塑剤を併用することができる。又、必要に応じて難燃剤、安定剤、安定化助剤、着色剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、滑剤或いは帯電防止剤等の添加剤を配合することができる。
上記本エステル以外の他の可塑剤や添加剤は、1種でまたは2種以上適宜組み合わせて本エステルと共に配合されていてもよい。
本エステルと併用することができる公知の可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、等のアルキル鎖長の長いアルコールとのフタル酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、トリメリット酸トリイソノニル(TINTM)、トリメリット酸トリイソデシル(TIDTM)等のトリメリット酸エステル類、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル、アジピン酸等の二塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800〜4000のポリエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化エステル類、ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニルエステル(DINCH)等の脂環式二塩基酸エステル類、ジカプリン酸1.4−ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル類、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)類、イソソルビドジエステル類、パラフィンワックスやn−パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン類、塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル類、オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル類等が例示される。上記併用できる可塑剤を配合する場合、その配合量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜100重量部程度が推奨される。
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物、クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート等のリン系化合物、塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。その様な難燃剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する難燃剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸化合物、ジメチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズビスブチルマレエート、ジブチルスズジラウレート等の有機錫系化合物、アンチモンメルカプタイド化合物等が例示される。その様な安定剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する安定剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
安定化助剤としては、トリフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト等のホスファイト系化合物、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のベータジケトン化合物、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物、過塩素酸バリウム塩、過塩素酸ナトリウム塩等の過塩素酸塩化合物、ハイドロタルサイト化合物、ゼオライトなどが例示される。その様な安定化助剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する安定化助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べにがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙などが例示される。その様な着色剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する着色剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアレート、ステアリン酸カルシウムなどが例示される。その様な加工助剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する加工助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライトなどの金属酸化物、ガラス、炭素、金属などの繊維及び粉末、ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。その様な充填剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する充填剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などの有機金属系化合物などが例示される。中でも、2、4、6−位に少なくとも2つの電子供与性の置換基を有し、かつ2、6−位に少なくとも1つの立体障害性の置換基を有し、かつ該化合物の分子量が300〜3000の範囲であり、更にFedorsの推算法によるSP値が8〜15の範囲であるフェノール系の酸化防止剤を配合することにより、本発明の目的である耐フォギング性をより一層向上させることが可能であり、その配合が望ましい。その様な酸化防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する酸化防止剤の配合量は0.2〜20重量部程度が推奨される。
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物などが例示される。その様な紫外線吸収剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する紫外線吸収剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル及び1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N' −ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N' ,N'' ,N''' −テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が例示される。その様な光安定剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する光安定剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
滑剤としては、シリコーン、流動パラフィン、バラフィンワックス、ステアリン酸金属やラウリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が例示される。その様な滑剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する滑剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
帯電防止剤としては、アルキルスルホネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤などが例示される。その様な帯電防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂100重量部に対する帯電防止剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、本発明の塩化ビニル系樹脂用可塑剤、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を例えばモルタルミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、リボンブレンダー等の攪拌機により攪拌混合を行い、塩化ビニル系樹脂組成物の混合粉とすることができる。
一方、本発明の可塑剤、塩化ビニル系樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばコニカル二軸押出機、パラレル二軸押出機、単軸押出機、コニーダー型混練機、ロール混練機等の混練機により溶融成形することによりペレット状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
更に、本発明の可塑剤、塩化ビニル系ペースト樹脂及び必要に応じて各種添加剤を、例えばポニーミキサ、バタフライミキサ、プラネタリミキサ、リボンブレンダー、ニーダ、ディゾルバ、二軸ミキサ、ヘンシェルミキサー、三本ロールミル等の混合機により均一に混合し、必要に応じて減圧下で脱泡処理し、ペースト状の塩化ビニル系樹脂組成物を得ることもできる。
[塩化ビニル系樹脂成形体]
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物は、真空成形、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形、スプレッドコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、紙キャスティング、押出コーティング、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スラッシュ成形、回転成形、注型、ディップ成形等の従来公知の方法を用いて成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物は、真空成形、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、粉体成形、スプレッドコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、紙キャスティング、押出コーティング、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、スラッシュ成形、回転成形、注型、ディップ成形等の従来公知の方法を用いて成形加工することにより、所望の形状に成形することができる。
成形体の形状としては、特に限定されないが、例えば、ロッド状、シート状、フィルム状、板状、円筒状、円形、楕円形等あるいは装飾品等特殊な形状のもの、例えば多角形形状が例示される。
かくして得られた成形体は、ドアトリム、ダッシュボード、インストルメントパネル、コンソール、ドアシート、ATシフト、アームレスト、アンダーカーペット、トランクシート、ワイヤーハーネス、各種モール、サッシュ、シーリング材、ウェザーストリップ、ガスケット、アンダーコート材などの自動車部材に非常に有用であり、それ以外でも、水道管などのパイプ類、パイプ用の継手類、雨樋などの樋類、窓枠サイディング、平板、波板、各種レザー類、装飾シート、農業用フィルム、食品包装用フィルム、電線被覆、各種発泡製品、ホース、医療用チューブ、食品用チューブ、冷蔵庫用ガスケット、パッキン類、壁紙、床材、ブーツ、カーテン、靴底、手袋、止水板、玩具、化粧板、血液バック、輸液バック、ターポリン、マット類、遮水シート、土木シート、ルーフィング、防水シート、絶縁シート、工業用テープ、ガラスフィルム等の用途でも耐熱性、耐久性の要求の強い場合に有用である。
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
(1)原料のアルコール成分の直鎖率
本発明の実施例及び比較例で用いる原料のアルコール成分の直鎖率はガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定した。GCによる原料のアルコール成分の測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム DB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μL
定量:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
なお内部標準物質の選定に当たっては、原料のアルコール成分に1−ヘキサノールがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
本発明の実施例及び比較例で用いる原料のアルコール成分の直鎖率はガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定した。GCによる原料のアルコール成分の測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム DB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μL
定量:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
なお内部標準物質の選定に当たっては、原料のアルコール成分に1−ヘキサノールがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
(2)原料の酸成分中のフタル酸類の含有量
本発明の実施例及び比較例で用いる原料の酸成分中のフタル酸類の含有量はGCによって測定した。GCによる原料の酸成分中のフタル酸類の測定方法は次のとおりである。
《前処理》
原料のトリメリット酸無水物をアセトンに溶解させ、続いて、その溶液にジアゾメタンのジエチルエーテル溶液を加えてメチルエステル化処理し、GC用サンプルを調製した。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム DB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:10%アセトン/ジエチルエーテル溶液
注入量:1μL
定量:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
なお内部標準物質の選定に当たっては、原料のアルコール成分に1−ヘキサノールがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
本発明の実施例及び比較例で用いる原料の酸成分中のフタル酸類の含有量はGCによって測定した。GCによる原料の酸成分中のフタル酸類の測定方法は次のとおりである。
《前処理》
原料のトリメリット酸無水物をアセトンに溶解させ、続いて、その溶液にジアゾメタンのジエチルエーテル溶液を加えてメチルエステル化処理し、GC用サンプルを調製した。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム DB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:10%アセトン/ジエチルエーテル溶液
注入量:1μL
定量:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
なお内部標準物質の選定に当たっては、原料のアルコール成分に1−ヘキサノールがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
(3)トリメリット酸エステル中の炭素数8以下のアルコールとフタル酸類のエステルの含有量
本発明の実施例及び比較例で用いるトリメリット酸エステル中の炭素数8以下のアルコールとフタル酸類のエステルの含有量はGCによって測定した。GCの測定条件は、(1)原料のアルコール成分の直鎖率のGCの測定条件と同じ条件を用いた。
本発明の実施例及び比較例で用いるトリメリット酸エステル中の炭素数8以下のアルコールとフタル酸類のエステルの含有量はGCによって測定した。GCの測定条件は、(1)原料のアルコール成分の直鎖率のGCの測定条件と同じ条件を用いた。
(4)エステルの物性評価
下記の製造例で得られた本エステル又は本発明外のエステルは次の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
色相:JIS K−4101(Hazen)(1995)に準拠して測定した。
下記の製造例で得られた本エステル又は本発明外のエステルは次の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
色相:JIS K−4101(Hazen)(1995)に準拠して測定した。
(5)塩化ビニルシートの作製
塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、安定剤としてカルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.3及び0.2重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合した後、可塑剤50重量部を加え、均一になるまでハンドリング混合し塩化ビニル樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて160〜166℃で4分間溶融混練しロールシートを作製した。続いて162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。
塩化ビニル樹脂(ストレート、重合度1050、商品名「Zest1000Z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に、安定剤としてカルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.3及び0.2重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合した後、可塑剤50重量部を加え、均一になるまでハンドリング混合し塩化ビニル樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて160〜166℃で4分間溶融混練しロールシートを作製した。続いて162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。
[樹脂の物性評価]
(6)引張特性:JIS K−6723(1995)に準拠し、プレスシートの100%モジュラス、破断強度、破断伸びを測定した。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示し、破断強度、破断伸びはその材料の実用的な強度の目安であり、一般的にはその値が大きいほど実用的な強度に優れると言うことができる。
(6)引張特性:JIS K−6723(1995)に準拠し、プレスシートの100%モジュラス、破断強度、破断伸びを測定した。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示し、破断強度、破断伸びはその材料の実用的な強度の目安であり、一般的にはその値が大きいほど実用的な強度に優れると言うことができる。
(7)耐寒性:クラッシュベルグ試験機を用いて、JIS K−6773(1999)に準拠して測定した。柔軟温度(℃)が低いほど耐寒性に優れる。ここで言う柔軟温度とは、前記測定において所定のねじり剛性率(3.17×103kg/cm2)を示す低温限界の温度を指す。
(8)耐熱性:揮発減量及びシート着色の評価による。
a)揮発減量:ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で60分、120分加熱した後のロールシートの重量変化を測定し、重量減少率(重量%)を算出した。
数値が小さいほど、耐熱性が高い。
揮発減量(%)=((試験前の重量―試験後の重量)/試験前の重量)×100
b)シート着色 :ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で30分、60分間加熱した後の着色度の強弱を目視により5段階で評価した。
◎:着色なし、○:僅かに着色する、○△:少し着色する、△:着色する、×:強く着色する。
a)揮発減量:ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で60分、120分加熱した後のロールシートの重量変化を測定し、重量減少率(重量%)を算出した。
数値が小さいほど、耐熱性が高い。
揮発減量(%)=((試験前の重量―試験後の重量)/試験前の重量)×100
b)シート着色 :ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で30分、60分間加熱した後の着色度の強弱を目視により5段階で評価した。
◎:着色なし、○:僅かに着色する、○△:少し着色する、△:着色する、×:強く着色する。
(9)耐フォギング性
プレスシート4gをガラス製サンプル瓶に入れ、100℃、或いは120℃に温度調節したフォギング試験機にセットした。さらに、上記サンプル瓶にガラス板の蓋をした後、その上に20℃に温度調節した冷却水を通水した冷却板を載せ、100℃で8時間、或いは120℃で3時間熱処理を実施した。熱処理後、ヘイズメーター(東洋精機製作所製:ヘイズガードII)を用いて上記ガラス板の曇り度(Haze)(%)を測定した。
Haze値が小さいほど、耐フォギング性に優れる。
プレスシート4gをガラス製サンプル瓶に入れ、100℃、或いは120℃に温度調節したフォギング試験機にセットした。さらに、上記サンプル瓶にガラス板の蓋をした後、その上に20℃に温度調節した冷却水を通水した冷却板を載せ、100℃で8時間、或いは120℃で3時間熱処理を実施した。熱処理後、ヘイズメーター(東洋精機製作所製:ヘイズガードII)を用いて上記ガラス板の曇り度(Haze)(%)を測定した。
Haze値が小さいほど、耐フォギング性に優れる。
[製造例1]
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、前述の方法によって得られたトリメリット酸無水物(フタル酸類の含有量 400ppm)96.0g(0.5モル)、炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコール重量85.1%と炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコール重量11.7%を含む脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259g(1.8モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.13gを加え、反応温度を185℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とするトリメリット酸トリエステル(以下、エステル1という。)245gを得た。
得られたエステル1は、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:15であった。
更に、分析結果より得られたエステル1の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は検出限界以下であった。
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた2L四ツ口フラスコに、前述の方法によって得られたトリメリット酸無水物(フタル酸類の含有量 400ppm)96.0g(0.5モル)、炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコール重量85.1%と炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコール重量11.7%を含む脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259g(1.8モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.13gを加え、反応温度を185℃としてエステル化反応を実施した。減圧下アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とするトリメリット酸トリエステル(以下、エステル1という。)245gを得た。
得られたエステル1は、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.01mgKOH/g、色相:15であった。
更に、分析結果より得られたエステル1の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は検出限界以下であった。
[製造例2]
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにn−ノニルアルコール259gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル2という。)244gを得た。
得られたエステル2は、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.03mgKOH/g、色相:20であった。
更に、分析結果より得られたエステル2の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は検出限界以下であった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにn−ノニルアルコール259gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル2という。)244gを得た。
得られたエステル2は、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.03mgKOH/g、色相:20であった。
更に、分析結果より得られたエステル2の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は検出限界以下であった。
[製造例3]
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにn−ノニルアルコール181.3g(1.3モル)とイソノニルアルコール77.7g(0.5モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル3という。)243gを得た。
得られたエステル3は、エステル価:284mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色相:15であった。
更に、分析結果より得られたエステル3の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は検出限界以下であった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにn−ノニルアルコール181.3g(1.3モル)とイソノニルアルコール77.7g(0.5モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル3という。)243gを得た。
得られたエステル3は、エステル価:284mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色相:15であった。
更に、分析結果より得られたエステル3の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は検出限界以下であった。
[製造例4]
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりに2−エチルへキシルアルコール234gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル4という。)219gを得た。
得られたエステル4は、エステル価:309mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色相:20であった。
更に、分析結果より得られたエステル4の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は380ppmであった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりに2−エチルへキシルアルコール234gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル4という。)219gを得た。
得られたエステル4は、エステル価:309mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色相:20であった。
更に、分析結果より得られたエステル4の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は380ppmであった。
[製造例5]
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにn−オクチルアルコール234gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル5という。)220gを得た。
得られたエステル5は、エステル価:309mgKOH/g、酸価:0.05mgKOH/g、色相:20であった。
更に、分析結果より得られたエステル5の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は370ppmであった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにn−オクチルアルコール234gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル5という。)220gを得た。
得られたエステル5は、エステル価:309mgKOH/g、酸価:0.05mgKOH/g、色相:20であった。
更に、分析結果より得られたエステル5の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は370ppmであった。
[製造例6]
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにイソノニルアルコール259gを加えた以外は製造例1と同様にして、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル6という。)238gを得た。
得られたエステル6は、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.06mgKOH/g、色相:20であった。
更に、分析結果より得られたエステル6の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は検出限界以下であった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにイソノニルアルコール259gを加えた以外は製造例1と同様にして、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル6という。)238gを得た。
得られたエステル6は、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.06mgKOH/g、色相:20であった。
更に、分析結果より得られたエステル6の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は検出限界以下であった。
[製造例7]
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにイソデシルアルコール284gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル7という。)252gを得た。
得られたエステル7は、エステル価:265mgKOH/g、酸価:0.05mgKOH/g、色相:20であった。
更に、分析結果より得られたエステル7の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は検出限界以下であった。
脂肪族飽和アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにイソデシルアルコール284gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、エステル7という。)252gを得た。
得られたエステル7は、エステル価:265mgKOH/g、酸価:0.05mgKOH/g、色相:20であった。
更に、分析結果より得られたエステル7の中に含まれる炭素数8以下のアルコールとフタル酸類とのエステルの含有量は検出限界以下であった。
[実施例1]
製造例1で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル1)を用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製した。続いて、得られた塩化ビニル樹脂組成物より、上記「(5)塩化ビニルシートの作製
」に従って塩化ビニルシートを作製し、引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果を表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したが、ほとんど曇り感は確認されなかった。
製造例1で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル1)を用いて塩化ビニル系樹脂組成物を調製した。続いて、得られた塩化ビニル樹脂組成物より、上記「(5)塩化ビニルシートの作製
」に従って塩化ビニルシートを作製し、引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果を表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したが、ほとんど曇り感は確認されなかった。
[実施例2]
エステル1の代わりにエステル2を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したが、ほとんど曇り感は確認されなかった。
エステル1の代わりにエステル2を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したが、ほとんど曇り感は確認されなかった。
[実施例3]
エステル1の代わりにエステル3を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したが、ほとんど曇り感は確認されなかった。
エステル1の代わりにエステル3を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したが、ほとんど曇り感は確認されなかった。
[比較例1]
エステル1の代わりにエステル4を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したところ、少し曇り感が感じられた。
エステル1の代わりにエステル4を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したところ、少し曇り感が感じられた。
[比較例2]
エステル1の代わりにエステル5を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したところ、わずかではあるが、曇り感が感じられた。
エステル1の代わりにエステル5を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したところ、わずかではあるが、曇り感が感じられた。
[比較例3]
エステル1の代わりにエステル6を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したところ、わずかではあるが、曇り感が感じられた。
エステル1の代わりにエステル6を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したところ、わずかではあるが、曇り感が感じられた。
[比較例4]
エステル1の代わりにエステル7を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したが、ほとんど曇り感は確認されなかった。
エステル1の代わりにエステル7を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したが、ほとんど曇り感は確認されなかった。
[比較例5]
エステル1の代わりにジー2−エチルヘキシルフタレート(新日本理化(株)製、サンソサイザーDOP)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したところ、明らかに視界を遮るほどの曇りが生じていることが確認された。
エステル1の代わりにジー2−エチルヘキシルフタレート(新日本理化(株)製、サンソサイザーDOP)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物及び塩化ビニルシートを作製して引張試験、耐寒性試験、耐熱性試験及び耐フォギング性試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
フォギング試験後のガラス面を目視で観察したところ、明らかに視界を遮るほどの曇りが生じていることが確認された。
上記結果より、本発明のトリメリット酸トリエステルは、最近環境的に問題になっている炭素数8以下のアルコールとフタル酸類のエステルを実質的に含まないことが明らかであり、更に、表-1の結果より、従来のTOTMやn-TOTMと同等かそれ以上の柔軟性、耐寒性、耐揮発性等の耐熱性を有し、更にフォギング性にも優れていることがわかる。従って、本発明のトリメリット酸トリエステルが、環境に優しく、かつ性能的に優れた可塑剤として非常に有用であることがわかる。
本発明のトリメリット酸トリエステルは、環境に優しく、かつ可塑性、柔軟性に優れ、更に耐フォギング性の良好な非フタル酸エステル系の塩化ビニル系樹脂用可塑剤として様々な用途で使用することができ、その可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂組成物より得られる成形加工品は、良好な柔軟性を有し、かつ耐フォギング性に優れることから、例えば、窓ガラス等の曇りや室内の汚染を低減した環境的に優しい自動車部材として、また、厳しい環境下で使用されるフィルム・シート、電線被覆、壁紙、床材等の建築資材、医療材料などの用途で非常に有用である。
Claims (8)
- トリメリット酸またはその無水物と、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とし、該脂肪族飽和アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が60%以上である脂肪族飽和アルコールとをエステル化反応して得られるトリメリット酸トリエステルからなる塩化ビニル系樹脂用可塑剤であって、
該トリメリット酸トリエステル中にフタル酸類と炭素数8以下のアルキルアルコールとのエステルが実質的に含まれないことを特徴とする塩化ビニル系樹脂用可塑剤。 - 前記脂肪族飽和アルコールが、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とし、脂肪族飽和アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が70%以上である請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
- 前記脂肪族飽和アルコールが、炭素数9の脂肪族飽和アルコールを主成分とし、脂肪族飽和アルコール中の含有量が70〜90重量%の炭素数9の直鎖状の脂肪族飽和アルコールと10〜30重量%の炭素数9の分岐鎖状の脂肪族飽和アルコールを含有し、かつ該脂肪族飽和アルコールの直鎖率が70〜90%である請求項2に記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
- 前記脂肪族飽和アルコールが、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)該炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造方法により製造された脂肪族飽和アルコールである請求項1〜3のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤。
- 塩化ビニル系樹脂と請求項1〜4のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂用可塑剤を含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
- 前記塩化ビニル系樹脂組成物が自動車部材用である、請求項5に記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
- 請求項5又は請求項6に記載の塩化ビニル系樹脂組成物から得られる塩化ビニル系樹脂成形体。
- 前記塩化ビニル系樹脂成形体が自動車部材である、請求項7に記載の塩化ビニル系樹脂成形体。
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