JP2017113898A - 初期着色性に優れた塩化ビニル系樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

初期着色性に優れた塩化ビニル系樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】 パウダースラッシュ成形における高温下での成形時の着色性を改善し、透明系や淡色系にも使用可能な初期着色性の改善された塩化ビニル系樹脂組成物及びそのパウダースラッシュ成形体を提供することを目的とする。【解決手段】 特定の構造を有するトリメリット酸トリエステルを可塑剤として配合することにより、高温下における成形時の着色性が大きく改善され、初期着色性に優れたパウダースラッシュ成形体及び自動車内装部品を得ることができる。【選択図】なし

Description

本発明は、初期着色性に優れたパウダースラッシュ成形体及びその成形体の原材料である塩化ビニル系樹脂組成物に関し、詳しくは、特定の構造のトリメリット酸トリエステルを可塑剤として用いることにより、成形時の着色が少なく、透明系や淡色系の自動車材料などに好適な初期着色性に優れた塩化ビニル系樹脂組成物及びその成形体に関する。
塩化ビニル系樹脂組成物は、加工性が良好であり、かつ優れた耐薬品性や耐久性を有し、更に可塑剤の配合により様々な硬度に調整可能である。特に可塑剤を配合した軟質塩化ビニル系樹脂組成物はポリオレフィン等に比べて、独特の「柔らかく、しっとりした触感」を有し高級感をもたらすため、インストルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装部品として多く使用されている。
上記軟質塩化ビニル系樹脂組成物に配合される可塑剤としては、これまでフタル酸ジ2−エチルへキシル(DOP)およびフタル酸ジイソノニル(DINP)に代表されるフタル酸エステル系の可塑剤が汎用的に使用されてきた。また、最近は耐揮発性の要求が厳しくなっており、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル(TOTM)に代表されるトリメリット酸エステル系の可塑剤の使用が増えてきている(特許文献1)。
上記自動車内装部品は、射出成形や押出成形等の様々な成形方法により製造されているが、中でもパウダースラッシュ成形による方法が、例えばポリウレタン樹脂等との積層体などで多く用いられている(特許文献2)。
パウダースラッシュ成形による方法とは、粉末原料を粉末供給ボックスから、樹脂の融点以上の高温に加熱した金型へ投入後、加熱金型を回転又は揺動させて投入した粉末を金型内面に溶着させ、未溶着粉末を粉末供給ボックスに回収し、最後に金型を冷却して成形体を脱型する方法である。前記方法の特徴は、インストルメントパネルのような大型かつ複雑な成形体の製造に有効である一方、用いられる塩化ビニル系樹脂組成物には、複雑な金型の隅々まで行き渡る粉体流動性及び高温下での成形における耐熱性、速やかな金型内でのゲル化、成形後の金型からの型離れなどの性質が重要である。
しかし、近年上記特徴よりパウダースラッシュ成形法が、透明系や淡色系の製品にも応用されてきており、その場合上述の様に高温下での成形であるか故に、成形時に着色しやすく、その改善が求められている。
特開平7−173354号公報 特開平10−113994号公報
本発明の目的は、上記問題点を解決できる、即ち、初期着色性に優れたパウダースラッシュ成形体及びその成形体の原材料である塩化ビニル系樹脂組成物を提供することである。
本発明者らは、かかる現状に鑑み、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の構造のトリメリット酸トリエステルを可塑剤として用いることにより、パウダースラッシュ成形時の着色が少なく、透明系や淡色系の自動車材料などに好適な初期着色性に優れた塩化ビニル系樹脂組成物及びその成形体を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下に示す特定の構造を有するトリメリット酸トリエステルを可塑剤として含有するパウダースラッシュ成形体、その成形体の原材料として用いられる塩化ビニル系樹脂組成物及びその成形体の製造方法、並びに、初期着色性に優れた自動車内装部品及びパウダースラッシュ成形時の着色の抑制方法を提供するものである。
[項1] 平均粒子径が50μm以上である粒子状の塩化ビニル系樹脂と、粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して50〜200重量部の下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルを含有してなることを特徴とする、初期着色性に優れたパウダースラッシュ成形体。
[式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
[項2] 前記飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が70%以上である、[項1]に記載のパウダースラッシュ成形体。
[項3] 前記飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が75〜98重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと2〜25重量%の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が75〜98%である、[項2]に記載のパウダースラッシュ成形体。
[項4] 前記トリメリット酸トリエステルの含有量が、粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して30〜160重量部の範囲である[項1]〜[項3]の何れかに記載のパウダースラッシュ成形体。
[項5] 前記トリメリット酸トリエステルの含有量が、粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して50〜130重量部の範囲である[項4]に記載のパウダースラッシュ成形体。
[項6] 前記粒子状の塩化ビニル系樹脂の平均粒子径が、50〜500μmである[項1]〜[項5]の何れかに記載のパウダースラッシュ成形体。
[項7] 前記粒子状の塩化ビニル系樹脂の平均粒子径が、50〜300μmである[項6]に記載のパウダースラッシュ成形体。
[項8] 前記粒子状の塩化ビニル系樹脂の平均粒子径が、100〜300μmである[項7]に記載のパウダースラッシュ成形体。
[項9] 更に、前記粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1重量部以上の平均粒子径が50μm未満である微粒子状の塩化ビニル系樹脂を含む[項1]〜[項8]の何れかに記載のパウダースラッシュ成形体。
[項10] 前記微粒子状の塩化ビニル系樹脂の平均粒子径が、0.01〜50μmである[項9]に記載のパウダースラッシュ成形体。
[項11] 前記微粒子状の塩化ビニル系樹脂の平均粒子径が、0.1〜10μmである[項10]に記載のパウダースラッシュ成形体。
[項12] 前記微粒子状の塩化ビニル系樹脂の含有量が、前記粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部の範囲である[項9]〜[項11]の何れかに記載のパウダースラッシュ成形体。
[項13] 前記微粒子状の塩化ビニル系樹脂の含有量が、前記粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して5〜50重量部の範囲である[項12]に記載のパウダースラッシュ成形体。
[項14] 前記微粒子状の塩化ビニル系樹脂の含有量が、前記粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して10〜50重量部の範囲である[項13]に記載のパウダースラッシュ成形体。
[項15] 前記微粒子状の塩化ビニル系樹脂の含有量が、前記粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して20〜50重量部の範囲である[項14]に記載のパウダースラッシュ成形体。
[項16] 170℃、30分間の耐熱着色性試験の前後における色差ΔEが20以下である[項1]〜[項15]の何れかに記載のパウダースラッシュ成形体。
[項17] 前記成形体が自動車内装部品である、[項1]〜[項16]の何れかに記載のパウダースラッシュ成形体。
[項18] 平均粒子径が50μm以上である粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部と、粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して50〜200重量部の下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルを含有してなることを特徴とする、初期着色性に優れたパウダースラッシュ成形体を得るために使用される塩化ビニル系樹脂組成物。
[式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族ア
ルコールの直鎖率が60%以上である。]
[項19] 更に、前記粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1重量部以上の平均粒子径が50μm未満である微粒子状の塩化ビニル系樹脂を含む[項18]に記載のパウダースラッシュ成形体を得るために使用される塩化ビニル系樹脂組成物。
[項20] 塩化ビニル系樹脂100重量部と、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して35〜200重量部の下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルを含有してなることを特徴とする、初期着色性に優れた自動車内装部品。
[式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
[項21] 塩化ビニル系樹脂100重量部と、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して35〜200重量部の下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルを含有してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いることを特徴とする、成形時の着色の抑制されたパウダースラッシュ成形体の製造方法。
[式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
[項22] 塩化ビニル系樹脂100重量部と、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して35〜200重量部の下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルを含有してなる塩化ビニル系樹脂組成物を用いることを特徴とする、パウダースラッシュ成形時の着色の抑制方法。
[式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
上記特定の構造を有するトリメリット酸トリエステルを可塑剤として含有する塩化ビニル系樹脂組成物より得られたパウダースラッシュ成形体及び該成形体からなる自動車材料は、成形時の着色、即ち初期着色が少なく、得られた成形品の調色性に優れており、特に色むらの出やすい透明系や淡色系の材料で非常に有用である。
本特許におけるパウダースラッシュ成形体の初期着色性は、簡易的にロールシートの加熱試験にて確認することができる。具体的には、温度履歴の少ないロールシートを作製し、そのロールシートを170℃、30分間加熱した後、加熱前後のロールシートの色差ΔEを測定し、その色差ΔEが小さいほど、成形時の熱履歴による着色も少なくなる。実際に、ΔEの値が20以下であるとき、通常の条件下におけるパウダースラッシュ成形時の着色がほとんど見られないことが、確認されている。従って、上記ΔEが20以下であれば、初期着色性に優れ、透明系や淡色系の材料にも使用することができると言える。また、上記トリメリット酸トリエステルは、初期着色性だけでなく、自動車内装部品を始めとした各種成形体の基本的な要求特性である、耐熱性や耐寒性、柔軟性にも非常に優れており、様々な用途に適用することが可能である。
<パウダースラッシュ成形用塩化ビニル系樹脂組成物>
本発明のパウダースラッシュ成形用塩化ビニル系樹脂組成物は、特定の構造を有するトリメリット酸トリエステルを可塑剤として平均粒子径50μm以上である粒子状の塩化ビニル系樹脂に配合することにより得られる。また、成形時のゲル化性等を向上するために、更に平均粒子径50μm未満である微粒子状の塩化ビニル系樹脂が配合されていても良い。
[可塑剤]
本発明に係る可塑剤は、下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステル(以下、本エステル)という。)からなることを最大の特徴としている。
[式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
上記本エステルは、特定の酸成分とアルコール成分とを常法に従って、好ましくは窒素等の不活性化ガス雰囲気下において、無触媒又は触媒の存在下でエステル化することにより容易に得られる。
酸成分
上記本発明で用いる特定の酸成分とは、トリメリット酸またはその無水物であり、特に制約はなく、通常使用されている市販のものを使用することができる。また、エステル化反応の観点から、上記トリメリット酸無水物を使用することが最も推奨される。
アルコール成分
上記本発明で用いる特定のアルコール成分とは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコールであり、主成分である炭素数9の脂肪族アルコールの割合が、本発明で用いる飽和脂肪族アルコール中に、好ましくは60重量%以上(60〜100重量%)、より好ましくは70重量%以上(70〜100重量%)、特に好ましくは80重量%以上(80〜100重量%)であることが推奨される。当該飽和脂肪族アルコールは、前記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルを構成するアルキル基となる原料アルコールであり、即ち前記説明は該アルキル基の説明と同義となる。
また、上記飽和脂肪族アルコールは、その直鎖率が、60%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であることが推奨される。また、炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量が、本発明に用いる飽和脂肪族アルコール中に、60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上であることが推奨され、かつ、炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール(例えば、2−メチルオクタノール等)の含有量が、40重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下であることが推奨される。
また、上記飽和脂肪族アルコールの炭素数の範囲としては、好ましくは7〜13、より好ましくは8〜12、特に好ましくは9〜11が推奨される。
本発明で用いる飽和脂肪族アルコールの態様の詳細として、該飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールが主成分(好ましくは60重量%以上)であり、その飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。より好ましい態様としては、該飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分(好ましくは70%以上)とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が70%以上である態様が推奨され、特に好ましい態様としては、飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分(好ましくは80%以上)とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が80重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと20重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が80%以上である態様が推奨される。
飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上であり、かつ炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールの含有量が60重量%以上であれば、成形時の着色が少なく、即ち初期着色性に優れ、更に良好な耐熱性、耐寒性や柔軟性を保持しつつ、ゾル特性の向上が可能である。
上記の炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とする飽和脂肪族アルコールの具体例(市販品)としては、約80重量%以上の直鎖状のノナノールと約20重量%以下の分岐鎖状のノナノールの混合物であるシェルケミカルズ社製のリネボール9(商品名)や約90重量%以上の直鎖状のノナノールと約10重量%以下の分岐鎖状のノナノールの混合物であるオクセア社製のn−Nonanol等が挙げられる。
また、上記の炭素数9の飽和脂肪族アルコールは、例えば、(1)1−オクテン、一酸化炭素と水素とのヒドロホルミル化反応による炭素数9のアルデヒドを製造する工程及び(2)炭素数9のアルデヒドを水素添加してアルコールに還元する工程を具備する製造工程により製造することができる。
(1)の工程であるヒドロホルミル化反応は、例えば、コバルト触媒又はロジウム触媒の存在下、1−オクテン、一酸化炭素及び水素を反応することにより炭素数9のアルデヒドを製造することができる。
(2)の工程である水素添加は、例えば、ニッケル触媒又はパラジウム触媒等の貴金属触媒の存在下、炭素数9のアルデヒドを水素加圧下で、水素添加することによりアルコールに還元することができる。
エステル化反応
本発明に係るエステル化反応とは、上記アルコール成分と酸成分とのエステル化反応を意味し、そのエステル化反応を行うに際し、該アルコール成分は、例えば、酸成分1モルに対して、好ましくは3.05〜4.00モル、より好ましくは3.10〜3.80モル、特に3.15〜3.60モルを使用することが推奨される。
エステル化反応に触媒を使用する場合、その触媒としては、鉱酸、有機酸、ルイス酸類等が例示される。より具体的には、鉱酸として、硫酸、塩酸、燐酸等が例示され、有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が例示され、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、スズ誘導体、チタン誘導体、鉛誘導体、亜鉛誘導体等が例示され、これらの1種又は2種以上を併用することが可能である。
それらの中でも、p−トルエンスルホン酸、炭素数3〜8のテトラアルキルチタネート、酸化チタン、水酸化チタン、炭素数3〜12の脂肪酸スズ、酸化スズ、水酸化スズ、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが特に好ましい。その使用量は、例えば、エステル合成原料である酸成分およびアルコール成分の総重量に対して、好ましくは0.01重量%〜5.0重量%、より好ましくは0.02重量%〜4.0重量%、特に0.03重量%〜3.0重量%を使用することが推奨される。
エステル化反応時の温度としては、100℃〜230℃が例示され、通常、3時間〜30時間で反応は完結する。
エステル化反応においては、反応により生成する水の留出を促進するために、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの水同伴剤を使用することが可能である。
また、エステル化反応時に原料、生成エステル及び有機溶媒(水同伴剤)の酸化劣化により酸化物、過酸化物、カルボニル化合物などの含酸素有機化合物を生成すると耐熱性、耐候性等に悪影響を与えるため、系内を窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下又は不活性ガス気流下で、常圧ないし減圧下にて反応を行うことが望ましい。エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下または常圧下にて留去することが推奨される。
上記エステル化反応により得られた本エステルは、引き続き、必要に応じて塩基処理(中和処理)→水洗処理、液液抽出、蒸留(減圧、脱水処理)、吸着処理等により精製してもよい。
塩基処理に用いる塩基としては、塩基性の化合物であれば特に制約はなく、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが例示される。
吸着処理に用いる吸着剤としては、活性炭、活性白土、活性アルミナ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、シリカアルミナ、ゼオライト、マグネシア、カルシア、珪藻土などが例示される。それらを1種で又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
上記エステル化反応後の精製処理は、常温で行なっても良いが、40〜90℃程度に加温して行なうこともできる。
[粒子状の塩化ビニル系樹脂]
本発明で用いられる粒子状の塩化ビニル系樹脂とは、汎用の成形方法において主として使用されている塩化ビニル系樹脂であり、塩化ビニル系樹脂を主成分とする。その主成分とする塩化ビニル系樹脂は、具体的には、塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの単独重合体及び塩化ビニルあるいは塩化ビニリデンの共重合体であり、その製造方法は、従来公知の重合方法で行われ、例えば、油溶性重合触媒の存在下に懸濁重合する方法などが挙げられる。これらの塩化ビニル系樹脂の重合度は、通常300〜5000であり、好ましくは400〜3500、さらに好ましくは700〜3000である。この重合度が低すぎると耐熱性等が低下し、高すぎると成形加工性が低下する傾向がある。
前記粒子状の塩化ビニル系樹脂の平均粒子径は、50μm以上であり、好ましくは50〜500μm、より好ましくは50〜300μm、特に好ましくは100〜300μmの範囲であることが推奨される。粒子状の塩化ビニル系樹脂の平均粒径が50μm以上であることにより、塩化ビニル系樹脂組成物の粉体流動性をより向上させることができる。
また、上記共重合体の場合、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン等の炭素数2〜30のα−オレフィン類、アクリル酸およびそのエステル類、メタクリル酸およびそのエステル類、マレイン酸およびそのエステル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル等のビニル化合物、ジアリルフタレート等の多官能性モノマー及びこれらの混合物と塩化ビニルモノマーとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、ブチルゴム、架橋アクリルゴム、ポリウレタン、ブタジエンースチレンーメチルメタクリレート共重合体(MBS)、ブタジエンーアクリロニトリルー(α−メチル)スチレン共重合体(ABS)、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート及びこれらの混合物へ塩化ビニルモノマーをグラフトしたグラフト共重合体等が例示される。
[微粒子状の塩化ビニル系樹脂]
本発明に用いられる微粒子状の塩化ビニル系樹脂微粒子とは、一般的にペーストゾル成形等に用いられている微粒子状の塩化ビニル系樹脂を主成分とする塩化ビニル系樹脂である。具体的には、塩化ビニルのホモポリマーが主として使われるが、その他に塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体等のコポリマーなども使用することができる。
微粒子状の塩化ビニル系樹脂の平均粒子径は、好ましくは50μm未満であり、より好ましくは0.01〜50μm、特に好ましくは0.1〜10μmの範囲であることが推奨される。
また、微粒子状の塩化ビニル系樹脂の配合量は、粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは5〜50重量部、特に好ましくは10〜50重量部の範囲であることが推奨される。微粒子状の塩化ビニル系樹脂を1重量部以配合することにより、パウダースラッシュ成形時のゲル化性等の成形性や得られた成形品の表面平滑性等特性を向上させることができる。
上記微粒子状の塩化ビニル系樹脂を構成する塩化ビニル系樹脂の重合度は、本発明の効果を奏する限り特に制約はないが、通常500〜2000、好ましくは800〜1500の範囲の重合度の樹脂が好ましく使用することができる。
パウダースラッシュ成形用塩化ビニル系樹脂組成物は、本エステルと共に他の公知の可塑剤を併用することができる。又、必要に応じて難燃剤、安定剤、安定化助剤、着色剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤(老化防止剤)、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、滑剤、ダスティング剤(粉体流動性改良剤)、帯電防止剤或いは発泡材等の添加剤を配合することができる。
前記本エステル以外の他の可塑剤や添加剤は、1種でまたは2種以上適宜組み合わせて本エステルと共に配合されていてもよい。
本エステルと併用することができる公知の可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート等の安息香酸エステル類、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)、フタル酸ジトリデシル(DTDP)、等のアルキル鎖長の長いアルコールとのフタル酸エステル類、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル(DOS)、セバシン酸ジイソノニル(DINS)等の脂肪族二塩基酸エステル類、本発明の範囲外のトリメリット酸エステル類、ピロメリット酸テトラ−2−エチルヘキシル(TOPM)等のピロメリット酸エステル類、リン酸トリ−2−エチルヘキシル(TOP)、リン酸トリクレジル(TCP)等のリン酸エステル類、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのアルキルエステル、アジピン酸等の二塩基酸とグリコールとのポリエステル化によって合成された分子量800〜4000のポリエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化エステル類、ヘキサヒドロフタル酸ジイソノニルエステル(DINCH)等の脂環式二塩基酸エステル類、ジカプリン酸1,4−ブタンジオール等の脂肪酸グリコールエステル類、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)類、イソソルビドジエステル類、パラフィンワックスやn−パラフィンを塩素化した塩素化パラフィン類、塩素化ステアリン酸エステル等の塩素化脂肪酸エステル類、オレイン酸ブチル等の高級脂肪酸エステル類等が例示される。前記併用できる可塑剤を配合する場合、その配合量は、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対し、1〜100重量部程度が推奨される。
なお、前記塩化ビニル系樹脂の合計とは、粒子状の塩化ビニル系樹脂の単独(重量部)、或いは粒子状の塩化ビニル系樹脂と微粒子状の塩化ビニル系樹脂の総量(重量部)を総称した意味で使用しており、以下においても同様の意味で用いている。
難燃剤としては、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛等の無機系化合物、クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート等のリン系化合物、塩素化パラフィン等のハロゲン系化合物等が例示される。その様な難燃剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する難燃剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
安定剤としては、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オクチル酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸化合物、ジメチルスズビス−2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズビスブチルマレエート、ジブチルスズジラウレート等の有機錫系化合物、アンチモンメルカプタイド化合物等が例示される。その様な安定剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する安定剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
安定化助剤としては、トリフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリデシルフォスファイト等のホスファイト系化合物、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のベータジケトン化合物、グリセリン、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等のポリオール化合物、過塩素酸バリウム塩、過塩素酸ナトリウム塩等の過塩素酸塩化合物、ハイドロタルサイト化合物、過塩素酸処理ハイドロタルサイト、ゼオライトなどが例示される。その様な安定化助剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する安定化助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
着色剤としては、カーボンブラック、硫化鉛、ホワイトカーボン、チタン白、リトポン、べにがら、硫化アンチモン、クロム黄、クロム緑、コバルト青、モリブデン橙などが例示される。その様な着色剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する着色剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
加工助剤としては、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、ブチルステアレート、ステアリン酸カルシウムなどが例示される。その様な加工助剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する加工助剤の配合量は0.1〜20重量部程度が推奨される。
充填剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、珪藻土、フェライトなどの金属酸化物、ガラス、炭素、金属などの繊維及び粉末、ガラス球、グラファイト、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウムなどが例示される。その様な充填剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する充填剤の配合量は1〜100重量部程度が推奨される。
酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]メタン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのフェノール系化合物、アルキルジスルフィド、チオジプロピオン酸エステル、ベンゾチアゾールなどの硫黄系化合物、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン酸系化合物、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアリールジチオリン酸亜鉛などの有機金属系化合物などが例示される。中でも、2、4、6−位に少なくとも2つの電子供与性の置換基を有し、かつ2、6−位に少なくとも1つの立体障害性の置換基を有し、かつ該化合物の分子量が300〜3000の範囲であり、更にFedorsの推算法によるSP値が8〜15の範囲であるフェノール系の酸化防止剤を配合することにより、本発明の目的である耐フォギング性をより一層向上させることが可能であり、その配合が望ましい。その様な酸化防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する酸化防止剤の配合量は0.2〜20重量部程度が推奨される。
紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレートなどのサリシレート系化合物、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、1−ジオクチルアミノメチルベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物の他、シアノアクリレート系化合物などが例示される。その様な紫外線吸収剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する紫外線吸収剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステル及び1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N' −ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、N,N' ,N'' ,N''' −テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン等が例示される。その様な光安定剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する光安定剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
滑剤としては、シリコーン、流動パラフィン、バラフィンワックス、ステアリン酸金属やラウリン酸金属塩などの脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド類、脂肪酸ワックス、高級脂肪酸ワックス等が例示される。その様な滑剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する滑剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
ダスティング剤(粉体流動性改良剤)としては、炭酸カルシウム、タルク、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、無水珪酸などの無機微粒子、ポリアクリロニトリル系樹脂微粒子、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂微粒子、ポリスチレン系樹脂微粒子、ポリエチレン系樹脂微粒子、ポリプロピレン系樹脂微粒子、ポリエステル系樹脂微粒子、ポリアミド系樹脂微粒子などの有機微粒子などが例示される。その様なダスティング剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂組成物100重量部に対するダスティング剤の配合量は0.01〜50重量部程度が推奨される。
帯電防止剤としては、アルキルスルホネート型、アルキルエーテルカルボン酸型又はジアルキルスルホサクシネート型のアニオン性帯電防止剤、ポリエチレングリコール誘導体、ソルビタン誘導体、ジエタノールアミン誘導体などのノニオン性帯電防止剤、アルキルアミドアミン型、アルキルジメチルベンジル型などの第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム型の有機酸塩又は塩酸塩などのカチオン性帯電防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型などの両性帯電防止剤などが例示される。その様な帯電防止剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する帯電防止剤の配合量は0.1〜10重量部程度が推奨される。
発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等の有機発泡剤、重曹等の無機発泡剤などが例示される。又、発泡剤を配合する場合、塩化ビニル系樹脂の合計100重量部に対する発泡剤の配合量は0.1〜30重量部程度が推奨される。
<パウダースラッシュ成形体>
本発明の係るパウダースラッシュ成形体は、上記パウダースラッシュ成形用塩化ビニル系樹脂組成物をパウダースラッシュ成形することにより製造することができる。
パウダースラッシュ成形
上記パウダースラッシュ成形の方法としては、本発明の効果を損なうことがない限り、特に制約はなく、例えば、同じ大きさの開口部を持つ粉末樹脂を収容する粉末供給ボックスと所定の温度に加熱可能な目的に応じた形状のスラッシュ型から構成される一般的なパウダースラッシュ成形装置を用いて、下記の様な工程により成形することができる。(1)粉末供給ボックスに粉末状の上記パウダースラッシュ成形用塩化ビニル系樹脂組成物を収容し、別途スラッシュ型を加熱炉内でガス、電気等の加熱源を用いて所定の温度に予め加熱しておく。前記スラッシュ型の温度は目的に応じて適宜調整可能であるが、一般的には150〜300℃、好ましくは200〜300℃、より好ましくは220〜260℃程度に設定することが推奨される。(2)前記粉末供給ボックスとスラッシュ型をスラッシュ型が上方になる様に連結し、系内を密閉させる。(3)続いて、連結した状態で両者を反転させて、自重により粉末供給ボックス内の粉末樹脂をスラッシュ型内に落下させて、スラッシュ型の内面に付着させる。(4)所望の膜厚になるまで一定時間その状態を保持した後、再度元の状態になる様に反転させる。この時、未溶融の粉末樹脂は粉末供給ボックスに収用され、次の成形に使用することができる。また、複雑な形状の場合、上記(3)(4)の工程を繰り返すことも可能である。(5)最後に、スラッシュ型を粉末供給ボックスから切り離し、冷却後、得られたパウダースラッシュ成形体を取り出す。
<自動車内装部品>
本発明に係る自動車内装部品は、上記パウダースラッシュ成形用塩化ビニル系樹脂組成物を用いてパウダースラッシュ成形方法にて溶融成形加工することにより得られる。但し、本発明の効果が奏する限りにおいては、パウダースラッシュ成形以外の成形方法、例えば、真空成型、圧縮成形、押出成形、射出成形、カレンダー成形、プレス成形、ブロー成形、スプレッド成形、ディッピング成形、グラビア成形、パウダースラッシュ成形以外の粉体成形等の従来公知の方法を用いることを阻害するものではない。
かくして得られた自動車内部品は、インストルパネル、ドアトリム、トランクトリム、座席シート、ピラーカバー、天井材、リアトレイ、コンソールボックス、エアバッグカバー、アームレスト、ヘッドレスト、メーターカバー、クラッシュパッド、フロアカーペット等の自動車内部品として好適に使用することができる。
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。尚、実施例や比較例中の化合物の略号、及び各特性の測定は以下の通りである。
(1)原料のアルコール成分の直鎖率
本発明の実施例及び比較例で用いる原料のアルコール成分の直鎖率はガスクロマトグラフィー(以下GCと略記)によって測定した。GCによる原料のアルコール成分の測定方法は次のとおりである。
《GCの測定条件》
機種:ガスクロマトグラフ GC−17A(島津製作所製)
検出器:FID
カラム:キャピラリーカラム DB−1 30m
カラム温度:60℃から290℃まで昇温。昇温速度=13℃/分
キャリアガス:ヘリウム
試料:50%アセトン溶液
注入量:1μL
定量:1−ヘキサノールを内部標準物質として用い定量した。
なお内部標準物質の選定に当たっては、原料のアルコール成分に1−ヘキサノールがGCで検出限界以下であったことを予め確認した。
(2)エステルの分析
下記の製造例で得られた本エステル又は本発明外のエステルは次の方法で分析を行った。
エステル価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
酸価:JIS K−0070(1992)に準拠して測定した。
色数(ハーゼン):JIS K−4101(Hazen)(1993)に準拠して測定した。
(3)塩化ビニルシートの作製
粒子状の塩化ビニル樹脂粒子(汎用塩化ビニル樹脂、重合度1050、平均粒子径170μm、商品名「ZEST 1000Z」、新第一塩ビ(株)製)100重量部に対して、安定剤としてカルシウムステアレート(ナカライテスク(株)製)及びジンクステアレート(ナカライテスク(株)製)を各々0.3及び0.2重量部を配合し、モルタルミキサーで攪拌混合した後、可塑剤60重量部を加え、ドライブレンドした。ドライブレンド時の温度は120℃である。50℃に冷却した後、微粒子状の塩化ビニル樹脂(ペースト用塩化ビニル樹脂、重合度1100、平均粒子径1.0μm、品名「ZEST P22」、新第一塩ビ(株))10重量部加え、均一になるまでハンドリング混合し塩化ビニル系樹脂組成物とした。この樹脂組成物を5×12インチの二本ロールを用いて160〜166℃で4分間溶融混練しロールシートを作製した。続いて162〜168℃×10分間プレス成形を行い、厚さ約1mmのプレスシートを作製した。
なお、上記で得られた塩化ビニル系樹脂組成物は、通常のパウダースラッシュ成形時における粉体流動性やゲル化性を満足するものであることが確認されている。
[樹脂の物性評価]
(4)初期着色性:ロールシート耐熱着色性試験後の色差の評価による。
耐熱着色性試験前後の色差ΔE:ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で30分間加熱し、加熱前のロールシートのイエローインデックス(YI)と、加熱前後のロールシートのLab表色系での色差ΔEを分光測色計(コニカミノルタ(株):CM−5)にて測定した。下記式を用いて加熱着色性試験前後の色差ΔEを求めた。ΔEの値が小さいほど、着色変化が少なく、初期着色性に優れることを示す。
ΔE=[(ΔL)+(Δa)+(Δb)1/2
なお、式中の「L値」、「a値」、「b値」とは、それぞれLab表色系において明度、黄〜青の軸で表される色度、赤〜緑の軸で表される色度を示す指標である。「a値」は大きいほど赤方向、小さいほど緑方向を示す。「b値」は大きいほど黄方向、小さいほど青方向を示す。
(5)耐熱性:揮発減量の評価による。
揮発減量:ギヤーオーブン中、ロールシートを170℃で60分、120分加熱した後のロールシートの重量変化を測定し、重量減少率(重量%)を算出した。数値が小さいほど、耐熱性に優れる。
(6)耐熱老化性:JIS K−6723(1995)に準拠し、120℃で120時間の加熱条件で加熱後引張試験を行った。結果は常態に対する試験後のプレスシートの破断伸び残率(%)で示した。数値が100%に近いほど、耐熱老化性に優れる。
破断伸び残率=(加熱後引張試験のプレスシートの破断伸び)/(加熱前引張試験のプレスシートの破断伸び)×100
(7)耐フォギング性:プレスシート4gをガラス製サンプル瓶に入れ、100℃に温度調節したフォギング試験機にセットした。さらに、前記サンプル瓶にガラス板の蓋をした後、その上に20℃に温度調節した冷却水を通水した冷却板を載せ、100℃で3時間熱処理を実施した。熱処理後、ヘイズメーター(東洋精機製作所製:ヘイズガードII)を用いて前記ガラス板の曇り度(Haze)(%)を測定した。
Haze値が小さいほど、耐フォギング性に優れる。
(8)耐候性:キセノンウェザーメーター(スガ試験機(株))による照射200時間の試験後のイエローインデックス(YI)を測定した。
(9)耐寒性:クラッシュベルグ試験機を用いて、JIS K−6773(1999)に準拠して測定した。柔軟温度(℃)が低いほど耐寒性に優れる。ここで言う柔軟温度とは、前記測定において所定のねじり剛性率(3.17×103kg/cm2)を示す低温限界の温度を指す。
(10)引張特性:JIS K−6723(1995)に準拠し、プレスシートの100%モジュラス、破断強度、破断伸びを測定した。100%モジュラスの値が小さいほど柔軟性が良好であることを示し、破断強度、破断伸びはその材料の実用的な強度の目安であり、一般的にはその値が大きいほど実用的な強度に優れると言うことができる。
[製造例1]
温度計、デカンター、攪拌羽、還流冷却管を備えた1L四ツ口フラスコに、トリメリット酸無水物(工業用市販品)96g(0.5モル)、炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコール重量85.1%と炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコール重量11.7%を含む飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259g(1.8モル)、及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.13gを加え、反応温度を190℃としてエステル化反応を実施した。減圧下原料アルコールを還流させて生成水を系外へ除去しながら、反応溶液の酸価が0.5mgKOH/gになるまで反応を行った。反応終了後、未反応アルコールを減圧下で系外へ留去した後、常法に従って中和、水洗、脱水して目的とするトリメリット酸トリエステル(以下、「エステル1」という。)245gを得た。
得られたエステル1は、エステル価:284mgKOH/g、酸価:0.02mgKOH/g、色数:20であった。
[製造例2]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにn−ノニルアルコール245g(1.7モル)とイソノニルアルコール14g(0.1モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「エステル2」という。)242gを得た。
得られたエステル2は、エステル価:283mgKOH/g、酸価:0.04mgKOH/g、色数:20であった。
[製造例3]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにn−ノニルアルコール173g(1.2モル)とイソノニルアルコール87g(0.6モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「エステル3」という。)240gを得た。
得られたエステル3は、エステル価:282mgKOH/g、酸価:0.05mgKOH/g、色数:20であった。
[製造例4]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにn−ノニルアルコール130g(0.9モル)とイソノニルアルコール130g(0.9モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「エステル4」という。)241gを得た。
得られたエステル4は、エステル価:283mgKOH/g、酸価:0.05mgKOH/g、色数:20であった。
[製造例5]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりに2−エチルへキシルアルコール234g(1.8モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「エステル5」という。)219gを得た。
得られたエステル5は、エステル価:309mgKOH/g、酸価:0.06mgKOH/g、色数:20であった。
[製造例6]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにイソノニルアルコール259g(1.8モル)を加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「エステル6」という。)236gを得た。
得られたエステル6は、エステル価:285mgKOH/g、酸価:0.03mgKOH/g、色数:10であった。
[製造例7]
飽和脂肪族アルコール(シェルケミカルズ社製:リネボール9)259gの代わりにイソデシルアルコール285gを加えた以外は製造例1と同様に実施して、トリメリット酸トリエステル(以下、「エステル7」という。)228gを得た。
得られたエステル7は、エステル価:265mgKOH/g、酸価:0.02mgKOH/g、色数:20であった。
[実施例1]
前記「(3)塩化ビニルシートの作製」に記載した通り、製造例1で得られたトリメリット酸トリエステル(エステル1)を可塑剤として用いて本発明のパウダースラッシュ成形用塩化ビニル系樹脂組成物を調製した。続いて、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシート(ロールシート及びプレスシート)を作製し、初期着色性試験、耐熱性試験、耐熱老化性試験、耐フォギング性試験、耐候性試験、耐寒性試験、引張試験を行なった。得られた結果を表1に示した。
[実施例2]
エステル1の代わりにエステル2を用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明のパウダースラッシュ成形用塩化ビニル系樹脂組成物を調製した後、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して初期着色性試験、耐熱性試験、耐熱老化性試験、耐フォギング性試験、耐候性試験、耐寒性試験、引張試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[実施例3]
エステル1の代わりにエステル3を用いた以外は実施例1と同様に実施して、本発明のパウダースラッシュ成形用塩化ビニル系樹脂組成物を調製した後、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して初期着色性試験、耐熱性試験、耐熱老化性試験、耐フォギング性試験、耐候性試験、耐寒性試験、引張試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例1]
エステル1の代わりにエステル4を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製した後、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して初期着色性試験、耐熱性試験、耐熱老化性試験、耐フォギング性試験、耐候性試験、耐寒性試験、引張試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例2]
エステル1の代わりにエステル5を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製した後、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して初期着色性試験、耐熱性試験、耐熱老化性試験、耐フォギング性試験、耐候性試験、耐寒性試験、引張試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例3]
エステル1の代わりにエステル6を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製した後、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して初期着色性試験、耐熱性試験、耐熱老化性試験、耐フォギング性試験、耐候性試験、耐寒性試験、引張試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例4]
エステル1の代わりにエステル7を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製した後、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製して初期着色性試験、耐熱性試験、耐熱老化性試験、耐フォギング性試験、耐候性試験、耐寒性試験、引張試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例5]
エステル1の代わりにフタル酸ジ2−エチルヘキシル(新日本理化社製:サンソサイザーDOP)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製した後、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製し初期着色性試験、耐熱性試験、耐熱老化性試験、耐フォギング性試験、耐候性試験、耐寒性試験、引張試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
[比較例6]
エステル1の代わりにフタル酸ジイソノニル(新日本理化社製:サンソサイザーDINP)を用いた以外は実施例1と同様に実施して、塩化ビニル系樹脂組成物を調製した後、得られた塩化ビニル系樹脂組成物より塩化ビニルシートを作製し初期着色性試験、耐熱性試験、耐熱老化性試験、耐フォギング性試験、耐候性試験、耐寒性試験、引張試験を行なった。得られた結果をまとめて表1に示した。
表1の結果より、明らかに本発明のトリメリット酸トリエステルを配合したパウダースラッシュ成形用塩化ビニル系樹脂組成物を用いることにより(実施例1〜3)、本発明外のトリメリット酸トリエステルを用いた場合(比較例1〜4)と比較して、耐熱着色性試験前後の色差の値が低下しており、初期着色性が大きく改善されていることがわかる。従って、先の説明より、本発明に係る塩化ビニル系樹脂組成物を用いて成形されたパウダースラッシュ成形体は初期着色性に優れた成形体であると言うことができる。実際に実施例1の樹脂組成物を用いてパウダースラッシュ成形した成形体の初期着色性が非常に良好なものであることが確認されている。更に、初期着色性以外の物性を見ても、本発明外の比較例と比べて、本発明内の実施例の優位性は明らかである。また、現在最も汎用的に使われているフタル酸エステル系のDOPやDINPを用いた場合(比較例5、6)と比較すると、その優位性は更に顕著である。
本発明のパウダースラッシュ成形体及び該成形体からなる自動車内装部品は、成形体及び自動車内装部品本来の性能である柔軟性、耐寒性、耐熱性等の性能が良好であり、かつ成形時の着色、即ち初期着色が少なく、得られた成形体の調色性に優れており、特に色むらの出やすい透明系や淡色系の自動車内装部品、例えば、インストルパネル、ドアトリム、トランクトリム、座席シート、ピラーカバー、天井材、リアトレイ、コンソールボックス、エアバッグカバー、アームレスト、ヘッドレスト、メーターカバー、クラッシュパッド、フロアカーペット等として非常に有用である。

Claims (12)

  1. 平均粒子径が50μm以上である粒子状の塩化ビニル系樹脂と、粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して50〜200重量部の下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルを含有してなることを特徴とする、初期着色性に優れたパウダースラッシュ成形体。
    [式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
  2. 前記飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が70重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと30重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が70%以上である、請求項1に記載のパウダースラッシュ成形体。
  3. 前記飽和脂肪族アルコールが、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が75〜98重量%の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと2〜25重量%の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が75〜98%である、請求項2に記載のパウダースラッシュ成形体。
  4. 前記トリメリット酸トリエステルの含有量が、粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して30〜160重量部の範囲である請求項1〜3に記載のパウダースラッシュ成形体。
  5. 前記トリメリット酸トリエステルの含有量が、粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して50〜130重量部の範囲である請求項4に記載のパウダースラッシュ成形体。
  6. 更に、前記粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1重量部以上の平均粒子径が50μm未満である微粒子状の塩化ビニル系樹脂を含む請求項1〜5の何れかに記載のパウダースラッシュ成形体。
  7. 前記微粒子状の塩化ビニル系樹脂の含有量が、粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して1〜50重量部の範囲である請求項6に記載のパウダースラッシュ成形体。
  8. 170℃、30分間の耐熱着色性試験の前後における色差ΔEが20以下である請求項1〜7の何れかに記載のパウダースラッシュ成形体。
  9. 前記成形体が自動車内装部品である、請求項1〜8の何れかに記載のパウダースラッシュ成形体。
  10. 平均粒子径が50μm以上である粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部と、粒子状の塩化ビニル系樹脂100重量部に対して50〜200重量部の下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルを含有してなることを特徴とする、初期着色性に優れたパウダースラッシュ成形体を得るために使用される塩化ビニル系樹脂組成物。
    [式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
  11. 更に、平均粒子径が50μm未満である微粒子状の塩化ビニル系樹脂を含む請求項10に記載のパウダースラッシュ成形体を得るために使用される塩化ビニル系樹脂組成物。
  12. 塩化ビニル系樹脂100重量部と、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して50〜200重量部の下記一般式(1)で示されるトリメリット酸トリエステルを含有してなることを特徴とする、初期着色性に優れた自動車内装部品。
    [式中、R、R及びRは、同一又は異なって、飽和脂肪族アルコールから水酸基を除いた残基であって、その飽和脂肪族アルコールは、炭素数9の飽和脂肪族アルコールを主成分とし、該飽和脂肪族アルコール中の含有量が60重量%以上の炭素数9の直鎖状の飽和脂肪族アルコールと40重量%以下の炭素数9の分岐鎖状の飽和脂肪族アルコールを含有し、かつ該飽和脂肪族アルコールの直鎖率が60%以上である。]
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