JP6521258B2 - 海老肉代替物及びその製造法 - Google Patents

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Description

本発明は、海老肉代替物に関する。より詳しくは、本発明は、海老肉のような食感を有しており、各種加工食品などに使用される海老肉の代替原料として使用することができる、海老肉代替物に関する。
海老はさまざまな料理に使用される貴重な動物性蛋白質源である。海老の肉は加熱するとプリプリとした弾力を有しつつ、シャキシャキとした噛み切れの良い食感を有するため、アジア諸国や欧米諸国など世界中の人々に好まれ、広く食されている。
しかし昨今、東南アジアなどの養殖場で海老の伝染病が大流行するなどの不可避的な事情から、海老の入荷数量が減ってしまい、その需給バランスの乖離により、輸入冷凍海老の価格が高騰してしまうことがある。
このような状況下で、海老肉が使用された加工食品の市場において、海老肉とは別の原料が使用されている、海老肉特有の食感を持つ海老肉代替物の需要が、今後高まっていくものと考えられる。
従来も、海老の肉繊維風に模造された海老様食品が知られている。これは例えば魚肉すり身を使用して作った繊維状の蒲鉾や、あるいは魚肉すり身に大豆繊維などの繊維を混合したものなどである(特許文献1,2)。また、特許文献3では、こんにゃく片とアルギンゼリーの皮膜からなる生海老風の食品が提案されている。また、特許文献4では、加熱凝固性β−1,3−グルカンの繊維状ゲルを成形して得られる海老様食品が提案されている。
実願昭60−31780号(実開昭61−148194号)のマイクロフィルム 特公昭48−17062号公報 実開昭63−122094号公報 特開平8−238075号公報
上述の通り従来の特許文献1〜4のような海老肉様食品は、海老の生の食感や海老フライの食感に主眼が置かれている。これらは、ゲルが繊維状に束ねられていて、蒲鉾のような食感を有していると考えられる。しかしこのような食感は、加熱した海老肉の本来のシャキシャキとした噛み切れの良い食感とは異なるものである。
このように、従来の技術では、加熱した海老肉の本来の良い食感を再現したような海老肉様食品はを得られていなかった。
かかる実情に鑑み、本発明は、海老肉が使用される加工食品の中に、海老肉の代替原料として使用することができる、食感が加熱した海老肉に近似した、海老肉代替物を提供することを課題とするものである。
本発明者は、ハンバーグのような畜肉加工食品のミンチなどの代替原料として使用されている、組織状大豆蛋白素材などの組織状蛋白素材を、海老肉代替物として利用することを着想した。しかし、従来の畜肉の代替原料として使用されている組織状蛋白素材を用いても、本発明者は加熱した海老肉独特のシャキシャキとした噛み切れの良い食感を再現するには到らなかった。
そこで本発明者は、さらに種々検討を行った結果、組織化原料として植物性蛋白原料と共に卵黄やレシチンを添加して押出成型機で組織化することを試みた。そして本発明者は、これにより得られた組織状蛋白素材の含水状態での食感が、加熱した海老肉独特の食感に非常に近いことを見出した。すなわち本発明者は、該組織状蛋白素材を主体として構成される物が目的の海老肉代替物として使用できる知見を得た。本発明はかかる知見に基づき完成されるに到ったものである。
即ち、本発明は、以下のような構成を包含する。
(1)組織状蛋白素材を主体として構成されており、該組織状蛋白素材は植物性蛋白質、および、卵黄もしくはレシチンが少なくとも組織化されたものであることを特徴とする、海老肉代替物、
(2)該植物性蛋白質が、大豆蛋白質,えんどう豆蛋白質又は菜種蛋白質である、前記(1)記載の海老肉代替物、
(3)該海老肉代替物のサイズが粒径として0.3〜3cmである、前記(1)又は(2)記載の海老肉代替物、
(4)該海老肉代替物の組織の空隙中に、加熱凝固体がさらに含まれる、前記(1)〜(3)の何れか1項に記載の海老肉代替物、
(5)該凝固体は、加熱凝固性原料が加熱凝固されたものである、前記(4)記載の海老肉代替物、
(6)前記(1)〜(5)の何れか1項に記載の海老肉代替物が含まれる、食品、
(7)該海老肉代替物のサイズが粒径として0.3〜3cmであり、かつ該食品が、該海老肉代替物と他の食品材料が混合され加熱処理されて得られる、前記(6)記載の食品、
(8)少なくとも植物性蛋白原料,卵黄もしくはレシチン及び水を組織化原料とし、該原料を押出成型機に供給し、混練および加圧加熱を行い、押出成型機の出口に設置されたダイより該混練物を常圧下に押出すことにより組織化し、これを成形して得られることを特徴とする、海老肉代替物の製造法、
(9)全組織化原料の乾燥重量中における、該卵黄又はレシチンの割合が、0.5〜10重量%である、前記(8)記載の製造法、
(10)該植物性蛋白原料が、大豆,えんどう豆及び菜種からなる群より選択される1種以上に由来する蛋白素材である、前記(8)又は(9)記載の製造法、
(11)該蛋白素材が、脱脂粕,濃縮蛋白,抽出蛋白及び分離蛋白からなる群より選択される1種以上である、前記(10)記載の製造法、
(12)該植物性蛋白原料が、大豆由来であり、かつ、脱脂粕,濃縮蛋白,抽出蛋白及び分離蛋白からなる群より選択される1種以上である、前記(8)又は(9)記載の製造法、
(13)全組織化原料の乾燥重量中における、植物性蛋白原料の割合が、50重量%以上である、前記(8)〜(12)の何れか1項に記載の製造法、
(14)全組織化原料の乾燥重量中における、該卵黄又はレシチンの割合が、0.5〜10重量%であり、かつ、植物性蛋白原料の割合が、50重量%以上である、前記(8),(10)〜(12)の何れか1項に記載の製造法。
なお、脱脂大豆等の植物性蛋白原料を主原料とし、一軸又は二軸押出成型機(エクストルーダー)を用いて高温,高圧下に組織化して得られる組織状蛋白素材は、牛肉や豚肉などの畜肉の代替用原料として、ハンバーグ,ミートボール,ギョーザ,肉まん,シューマイ,メンチカツ,コロッケ,そぼろ等の畜肉系惣菜に利用されている。しかし、組織状蛋白素材が海老肉の代替原料として用いられる例はない。
本発明によれば、海老入り焼売や海老入りカツレツ(海老が入った成形生地にパン粉をまぶして油で揚げたカツレツ)等の海老肉を使用した加工食品に使用されている海老肉に食感が非常に近似した、海老肉代替物が提供されることができる。該食品素材は、海老肉の一部又は全部と代替して、海老肉が使用される多様な加工食品に利用されることができる。そして副次的には、該海老肉代替物は従来の魚肉すり身を使用した海老様食品とは異なり予め乾燥して流通されることができるため、加工食品メーカーは該海老肉代替物を長期に保管しておくことができる。そのため該海老肉代替物の提供は、加工食品の製造効率の向上にも貢献することができる。
本発明の海老肉代替物は、組織状蛋白素材を主体として構成されており、ここで該組織状蛋白素材は植物性蛋白質、および、卵黄もしくはレシチンが少なくとも組織化されたものであることを特徴とする。以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
(組織状蛋白素材)
本発明の海老肉代替物は、まず組織状蛋白素材を主体として構成されていることを特徴とする。ここで「主体」とは、海老肉代替物の組織を構成する主体であることを意味する。言い換えれば、本発明の海老肉代替物は、組織状蛋白素材が構造体となっている。組織状蛋白素材は、一般に植物性蛋白質が少なくとも組織化されたものである。具体的には、組織状蛋白素材は、脱脂大豆や分離大豆蛋白などの植物性蛋白原料と水を少なくとも含む組織化原料を均一に加圧加熱下に混練し、常圧下に押出すことにより、組織化原料の混練物の組織を膨化させて得られるものである。より具体的には組織状蛋白素材は以下のようにして得られるものである。まず一軸エクストルーダーや二軸エクストルーダーのような押出成型機に、組織化原料と水が供給される。次に、押出成型機の内部で、加圧加熱された条件下において、該原料が均一に混練される。次に、押出成型機の出口部分に装着されたダイから、該混練物が常圧下に押出されることにより、該混練物が組織化される。次に、該押出物は、カッターによる切断等により粒状等に成形され、必要によりその後乾燥されて、組織状蛋白素材が得られる。
(植物性蛋白原料)
上記組織状蛋白素材の製造において組織化原料として用いられる植物性蛋白原料は、植物性蛋白質を含有する原料である。例えば、大豆,えんどう豆,菜種(キャノーラ),綿実,落花生,ゴマ,サフラワー,向日葵,コーン,ベニバナ,ココナッツ等の油糧種子あるいは米,大麦,小麦等の穀物種子に由来する蛋白素材等が用いられる。すなわち、これら油糧種子や穀物種子に由来する、脱脂粕,濃縮蛋白,抽出蛋白,さらに該抽出蛋白を精製加工した分離蛋白などが、単独で又は併用されて用いられる。分離蛋白としては、米グルテリン,大麦プロラミン,小麦プロラミン,小麦グルテン,大豆グロブリン,落花生アルブミン等が例示される。また、これらの蛋白素材がさらに熱処理,酸処理,アルカリ処理,酵素処理等により加工された蛋白素材等も該原料として使用される。入手の容易性および経済性等の点では、大豆,えんどう豆及び菜種からなる群より選択される1種以上に由来する蛋白素材が、該植物性蛋白原料としてより好ましい。すなわち、該組織状蛋白素材に含まれる植物性蛋白質が、大豆蛋白質,えんどう豆蛋白質又は菜種蛋白質であるのが好ましい。
例えば植物性蛋白原料を大豆由来にしたい場合、大豆蛋白質を含む原料を用いればよく、丸大豆や半割れ大豆などの「全脂大豆」や、全脂大豆から油脂を除去した「減脂大豆」もしくは「脱脂大豆」や、脱脂大豆から含水エタノール洗浄や酸性水洗浄等により蛋白質が濃縮された「濃縮大豆蛋白」や、脱脂大豆から水抽出された「抽出蛋白」や、さらには抽出蛋白から蛋白質が精製された「分離大豆蛋白」等が例示され、これらの少なくとも1種以上が選択されることができる。
植物性蛋白原料のうち、製造コストをより重視する場合は、脱脂大豆のような、油脂や澱粉が抽出されて除去された後の「抽出粕」が、比較的安価であり、用いられることが好ましい。また製造コストよりも、海老肉代替物の品質が重視される場合には、求められる品質に応じて、蛋白質含量が乾燥重量中70重量%以上の「濃縮蛋白」や、蛋白質含量が乾燥重量中80重量%以上の「分離蛋白」が、適宜選択されることもできる。
本発明において、組織状蛋白素材に使用される全組織化原料の乾燥重量中における、植物性蛋白原料の割合は、求められる品質により、他原料との兼ね合いで適宜設定されることができる。特に該割合は、組織状蛋白素材の乾燥重量中50重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、90重量%以上とすることができる。
(卵黄、レシチン)
本発明における組織状蛋白素材は、組織化原料として卵黄又はレシチンが植物性蛋白質と共に組織化されたものである。このことは、加熱した海老肉様の食感を再現する上で重要な要件となる。
卵黄としては、液卵黄,凍結卵黄,乾燥卵黄,酵素処理卵黄などを特に限定なく使用できる。
またもう1つの選択肢であるレシチンとしては、卵黄,大豆,菜種,穀類等に由来する各種レシチンを限定なく使用することができる。もし卵アレルギーが懸念される場合には、卵黄以外に由来するレシチンを使用すればよい。また、レシチンは酵素処理されたリゾレシチンであってもよい。また、レシチンとしては、該レシチンを比較的多量に含有するレシチン含有物を用いてもよい。なお本発明では、卵黄とレシチンが併用されうることは無論である。
卵黄又はレシチンが必須に含まれた状態で組織化原料が組織化されることにより、適度に組織化物の膨化が抑制されるためか、得られる組織化物は、水戻しした後の食感がシャキシャキとした噛み切れの良い食感(言い換えれば、例えば咀嚼した際に口の中で音が鳴るような食感)となる。
ここで卵黄又はレシチンは、全組織化原料の乾燥重量中0.5〜10重量%、好ましくは0.7〜5重量%含有することにより、得られる組織化物はより海老肉に近い良好な食感に調整されることができる。ただし、この記載が製造者の嗜好の差により上記範囲が適宜変更されることを阻害するものではない。
なお、前記の植物性蛋白原料には、その種類によっては脱脂大豆などのようにレシチンが元来含まれている場合があるが、その量は微量なものである。本発明においては、該植物性蛋白原料に加えて、レシチンが組織化原料中に添加されることが必要である。
(油脂)
本発明における組織状蛋白素材を製造するための組織化原料としては、上記必須原料の他に油脂を用いることもできる。また、植物性蛋白原料として脱脂していない圧扁大豆を併用する場合は、該大豆に含まれる油脂を該油脂として利用することができる。添加する油脂としては、大豆油,菜種油,ヒマワリ油,ベニバナ油,コーン油,米糠油,ゴマ油,パーム油,パーム核油,ヤシ油,カカオバターなどの植物油脂;魚油,鯨油,乳脂,牛脂,豚脂などの動物油脂;およびこれらを分別油,硬化油,エステル交換油などを用いることができる。
該油脂を該組織化原料として適量用いることにより、以下に記載する押出成型機からの押出に際し、組織状蛋白素材の膨化を適度に抑制することができる。該膨化が適度に抑制されれば、該組織状蛋白素材の食感は適度に硬くなる方向に進む。そのため、該油脂の添加は、より海老肉に近い食感の硬さに近づける効果がある。
添加する油脂の量は特に限定されないが、全組織化原料の乾燥重量に対して通常0.01〜6重量%が適当である。また粉末油脂のように油脂を水中油型エマルジョンとして添加する場合には、より多く含ませることができ、全組織化原料の乾燥重量に対して0.1〜12重量%が適当である。
(他の組織化原料)
その他、該組織化原料には、カゼイン等の植物性蛋白素材以外の蛋白素材や、澱粉,多糖類,ミネラル,食物繊維,ゲル化剤,その他の公知の添加物を併用することもできる。また後述するような副原料を予め組織化原料に添加しておいてもよい。
(押出成型機)
加圧加熱は、一軸押出成型機や二軸押出成型機などの公知の押出成型機(エクストルーダー)を用い、公知の方法に従って行うことができる。二軸以上の軸を有する押出成型機は、混練が強く安定的に組織化原料を組織化することができるため、より好ましい。
該押出成型機は、原料供給口と、バレル内のスクリューによる原料送り,混練,加圧(圧縮),加熱が可能な機構を有し、先端バレルに装着したダイを有する装置を用いることが好ましい。
(ダイ)
上記押出成型機の先端の出口に設置されるダイは、押出成型機のスクリュー送り方向に押し出すダイでも、送り方向の外周方向に押し出す、いわゆるペリフェラルダイなどのいずれも用いることができる。
本発明においては、直径が1〜10mm程度の円形の孔を有するものが好ましい。直径の長さは求める海老肉様の組織化物の大きさによって任意に変更できる。
(加水)
植物性蛋白素材や卵黄などの組織化原料を、押出成型機に供給する際に、組織化原料の1つとして水を加える。本発明の製造方法では、押出成型機に供給される原料全体の水分が10〜60重量%、好ましくは15〜55重量%となるように加水することができる。
(組織化条件)
上記の組織化原料を該押出成型機の中で加圧加熱下に均一に混練し、該混練物をダイより押し出すための組織化条件は、公知の条件に基づいて適宜選択および調整できる。非限定的な例を示すと、加熱条件は先端バレル温度120〜220℃が好ましく、140〜200℃がさらに好ましい。加圧条件はバレル先端のダイ圧力が1〜100kg/cmが好ましく、3〜60kg/cmがさらに適当である。
(水分)
本発明において、ダイから押し出された組織化物は、そのまま組織状蛋白素材とすることができるが、流通時の保存性を考慮して予め乾燥しておくことができる。成形および乾燥する際の乾燥条件は、公知の条件に基づいて適宜選択および調整できる。非限定的な例を示すと、流動層乾燥機などを用い、60〜100℃の熱風に該組織状蛋白素材を10〜60分間当てることなどによって乾燥させることができる。また、乾燥後に得られる組織状蛋白素材の水分は、常温で長期保存を可能にする観点から、15重量%以下が好ましく、1〜12重量%がさらに好ましく、2〜10重量%がさらに適当である。
本発明の海老肉代替物は、以上により得られる組織状蛋白素材を主体として構成されており、そして含水状態ではシャキシャキとして噛み切れの良い海老肉に似た食感を有する。主体として構成されている組織状蛋白素材には後述する副原料を予め付着あるいは吸収させておくことができる。
海老肉代替物のサイズは成形条件を調整して適当なサイズに適宜調整することができる。通常は粒径として0.3〜3cmとすることができる。
(海老肉代替物の利用)
本発明の海老肉代替物であって乾燥タイプを使用する場合、予め水で膨潤させて使用することができる。この場合、水は醤油,ダシ,スープ,みりん,酢,料理酒,塩等の調味料や、糖類などの甘味料や、胡椒などの香辛料や、海老様の色合いにするための色素等の各種副原料を含むものであってもよい。該副原料は味付け、風味付けやコク味付け、あるいは海老の風合いを出す目的などに使用される原料全般を意味する。また、該副原料は、製造時の組織化原料として添加されてもよく、これによってもともと該副原料を含む海老肉代替物とすることができる。
本発明の海老肉代替物の一つの発展的な態様は、該海老肉代替物の組織の空隙中に、加熱凝固体がさらに含まれる構成である。
例えば、上記の水又は調味料を含む水に、さらに卵白等の加熱凝固性原料を混合して海老肉代替物の組織の空隙中に吸収させ、該加熱凝固性原料が加熱凝固されることにより、該組織状蛋白素材と該加熱凝固体との複合的な食感が与えられる。具体的には、シャキシャキとした噛み切れの良い食感に、さらにプリプリとした弾力のある食感が加えられ、より海老肉様の食感に近似した海老肉代替物を得ることができる。
これらの海老肉代替物は、海老の一部又は全部と代替して海老が一般に使用されている各種食品の原料に添加して、該海老肉代替物が含まれる食品とすることができる。特に、海老フライのように海老の胴体がそのまま用いられるような食品よりは、カッターなどにより適度な大きさに刻んだ海老の肉片を磨り潰されない程度に他の食品材料と混合し、場合によっては成形した生地とし、フライ,蒸し,焼成,炒め等の加熱処理を行って得られるようなフライ食品,蒸し食品,焼成食品,炒め食品などの加熱加工食品が好ましい。このときの該海老肉代替物のサイズは、上述したとおり、粒径として0.3〜3cmが適当である。このような加熱加工食品としては焼売,餃子,カツレツ,饅頭,お好み焼き,炒飯やこれらに類する加熱加工食品が挙げられる。また、これらの海老肉代替物を用いて瓶詰めもしくは袋詰めのレトルト食品や乾燥食品などを製造することもできる。
以下、実施例等により本発明の実施形態についてさらに具体的に記載する。なお、以下「%」及び「部」は特に断りのない限り「重量%」及び「重量部」を意味するものとする。
(実施例1)海老肉代替物の製造
植物性蛋白原料である脱脂大豆粉(乾燥重量中の蛋白質含量:50.6%)98部、卵黄粉末(太陽化学(株)製)2部および水を組織化原料として準備した。以下の押出成型条件にて、二軸エクストルーダーに該組織化原料を供給して混練および加熱加圧を行った。そして該エクストルーダーの出口に設置されたスリット状のダイより該混練物を常圧下に押出し、組織化させた。なお水の量は、組織化時の全原料中の水分が30%となるように調整した。
該組織化物は、長さ15mm程度となるように、該ダイから押し出された直後にカッターで切断することにより、成形した。次いで熱風乾燥機にて、該成形物の水分が8%となるように熱風で乾燥を行い、組織状蛋白素材T1を得た。
○押出成型条件
・ダイ :φ3mm×1穴
・粉体原料流量 :30kg/時
・スクリュー回転数 :200rpm
・バレル温度 :入口側:80℃,中央部:120℃,出口側:150℃
(試験例1) 植物性蛋白原料の変更
実施例1において、植物性蛋白原料である脱脂大豆粉を粉末状分離大豆蛋白「フジプロR」(不二製油(株)製、乾燥重量中の蛋白質含量85.5%)に変更する以外は同様の条件にして、組織状蛋白素材T2を製造した。
(試験例2) 卵黄配合量の変更
試験例1において、卵黄粉末の配合量を2部から0部,0.2部,0.3部,10部又は12部のそれぞれ5種類に変更し、他は同様の条件にして、組織状蛋白素材T3〜T7をそれぞれ製造した。
(試験例3) 大豆レシチンの使用と大豆レシチン配合量の変更
試験例1において、卵黄粉末を大豆レシチン粉末「SLP−ホワイト」(辻製油(株)製)に変更し、大豆レシチン粉末の配合量を0.2部,0.3部,2部,10部又は12部のそれぞれ5種類に変更し、他は同様の条件にして、組織状蛋白素材T8〜T12をそれぞれ製造した。
(試験例4) 卵黄の変更
実施例1において、卵黄粉末を大豆油又はカゼインナトリウムの2種類に変更し、他は同様の条件にして、組織状蛋白素材T13,T14をそれぞれ製造した。
(品質評価)
実施例1、試験例1〜4で製造された各組織状蛋白素材T1〜T14を試料とし、社内の嗜好パネラー5名に依頼して、食感を評価項目として官能評価を行った。
[食感の評価]
各組織状蛋白素材を10倍量の水で80℃、10分間湯戻しした後、1分間湯切りを行ったものを口に入れ咀嚼してもらい、評点法を用いて評価をしてもらった。
1点:スポンジ感が強い、又は、硬すぎる
2点:ややスポンジ感がある、又は、やや硬い
3点:加熱した海老肉様の食感を少し感じる
4点:加熱した海老肉様の食感を十分感じる
5点:加熱した海老肉様の食感を強く感じる
の5段階で評価してもらい、5名の平均値を求めた。そして各平均値について、
A(4.5点以上) B(3.5点以上4.5点未満)
C(2.5点以上3.5点未満) D(1.5点以上2.5点未満)
E(1.5点未満)
の5段階で評価付けを行い、「C」評価以上に評価された試料を合格とした。なお、ここで「加熱した海老肉様の食感」とは、シャキシャキとした噛み切れの良い海老肉様の食感をいう。
Figure 0006521258
(考 察)
○試験例1の評価
組織化原料として植物性蛋白原料である「分離大豆蛋白」を使用したT2は、加熱した海老肉様の食感を強く有しており、スポンジ感を感じない適度な硬さを有し、かつ風味も良好であり、海老肉代替物として用いるのに優れた品質を有していた。
○実施例1の評価
組織化原料として植物性蛋白原料である「脱脂大豆」を使用したT1は、T2と同様にスポンジ感を感じず、風味も良好であり、T2と比べると硬い食感であったものの、加熱した海老肉様の食感を有しており、海老肉代替物として用いるのに適した品質を有していた。
○試験例2,3の評価
組織化原料として卵黄の代わりにレシチンを使用したT10は、T2と同等の良好な品質を有していた。なお、T10とは別に、卵黄とレシチンを1部ずつ併用して同様に組織化した組織状蛋白素材も製造した(T10−2)ところ、これもT2と同等の良好な品質を有していた。
組織化原料として卵黄もレシチンも使用しないT3は、風味は悪くなかったものの、畜肉代替原料として用いられる柔らかいスポンジ感を強く感じた。そのため、加熱した海老肉様の食感とは言い難いものであり、海老肉代替物としては不適な品質を有していた。
T4,T5,T8,T9の結果より、卵黄やレシチンの配合量が少なくなるにつれて海老肉様の食感が弱くなり、代わりにスポンジ感が増して海老肉様の食感から離れてくる傾向にあった。
一方、T6,T7,T11,T12の結果より、卵黄やレシチンの配合量が多くなるに連れて、スポンジ感がなく、よりしっかりとしたシャキシャキ感が出る傾向となったが、逆に食感が硬くなり、海老肉様の食感から離れてくる傾向にあった。
○試験例4の評価
組織化原料として卵黄の代わりに大豆油やカゼインナトリウムを使用したT13,T14は、何れも海老肉様の食感に欠け、むしろスポンジ感を感じるものであり、無添加のT3と同様に海老肉代替物としては不適な品質を有していた。
(実施例2) 海老肉代替物の製造(2)
実施例1で得られた組織状蛋白素材(T1)を約20倍の熱湯に入れて水戻しした。ザルで湯をきり、吸水した組織状蛋白素材を準備した。
次に、該素材100部に副原料として卵白粉(加熱凝固性原料)7部、海老パウダー1部、グリシン1部、MSG1部、食塩1部をふりかけ、該素材の組織の空隙中にこれらが十分に吸収されるまでもみ込んだ。これをナイロン袋に入れて密封したものを沸騰水で5分間加熱し、これにより該素材の組織の空隙中に吸収された卵白を凝固させた。
得られた素材は、該組織の空隙中に加熱凝固体がさらに含まれる複合的な構成であり、風味は海老肉の風味に近く、シャキシャキとした食感を有することに加え、さらにプリプリとした加熱した海老肉のような歯応えのある食感を有しており、海老肉代替物として用いるのに優れた品質を有していた。
(実施例3) 海老肉代替物を使用した加工食品への応用例
実施例1および試験例1で得られた組織状蛋白素材(T1,T2)を海老肉代替物としてそれぞれ水戻しした。白身魚のすり身200部に、塩とコショウを少々、及び海老パウダーを少々添加して味付けし、次に該海老肉代替物100部を入れ、混ぜ合わせた。得られた生地を成形し、表面に小麦粉、卵、パン粉を付けて油で揚げることにより、海老肉入りの様なカツレツを調製した。
得られたカツレツは、食すると加熱した海老肉様の独特のシャキシャキとした食感を感じることができた。以上より、T1,T2の組織状蛋白素材は海老肉代替物として十分に活用できるものであった。したがって実施例2の海老肉代替物を用いればさらに良好な食感の海老カツ食品を調製することができる。

Claims (9)

  1. 少なくとも植物性蛋白原料,卵黄もしくはレシチン及び水を組織化原料とし、
    ここで、該植物性蛋白原料は、脱脂粕,濃縮蛋白及び分離蛋白からなる群より選択される1種以上であり、
    該卵黄又はレシチンの、全組織化原料の乾燥重量中における割合は、0.5〜10重量%であることを特徴とし、
    組織化原料を押出成型機に供給し、混練および加圧加熱を行い、押出成型機の出口に設置されたダイより該混練物を常圧下に押出すことにより組織化し、これを成形して得られることを特徴とする、海老肉代替物の製造法。
  2. 全組織化原料中の水分が、10〜60重量%である、請求項1記載の製造法。
  3. 加圧加熱時の先端バレル温度が、140〜200℃である、請求項1又は2記載の製造法。
  4. 該植物性蛋白原料が、大豆,えんどう豆及び菜種からなる群より選択される1種以上に由来する蛋白素材である、請求項1〜3の何れか1項記載の製造法。
  5. 該植物性蛋白原料が、大豆由来である、請求項1〜3の何れか1項記載の製造法。
  6. 全組織化原料の乾燥重量中における、植物性蛋白原料の割合が、50重量%以上である、請求項1〜5の何れか1項記載の製造法。
  7. 該海老肉代替物のサイズが粒径として0.3〜3cmである、請求項1〜6の何れか1項記載の製造法。
  8. 請求項1〜7の何れか1項記載の製造法で得られる海老肉代替物を用いて、該組織の空隙中に、加熱凝固性原料を吸収させ、加熱凝固させることを特徴とする、海老肉代替物の製造法。
  9. 加熱凝固性原料が卵白である、請求項8記載の海老肉代替物の製造法。
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