本発明の実施の形態につき図面に示す実施例を参照して説明する。
本実施例では、図1及び図2に示すように、ブラケット1をケース101に組み付けるための組み付け構造1000(図2参照)が形成されるとともに、図3及び図4に示すように、このブラケット1をパネル部材200へ取り付けるための取付構造2000(図4参照)が形成される。以下、これらの組み付け構造1000及び取付構造2000に関して説明する。
ケース101は、ECU100(Electronic Control Unit:電子制御部品)の筐体である。このため、本実施例の組み付け構造1000は、ブラケット1をECU100に組み付けるための組み付け構造ともいえる。ECU100は、図18及び図19に示すように、ケース101と、ケース101に内包される回路基板120と、回路基板120と接続するコネクタ130と、を有する。
ケース101は、互いに対向する四角形状の主面101bと、それら主面101bの対向空間の外周を取り囲む外周側面101aと、を有する。ただし、ケース101の本体部111は、それら主面101bの対向空間の外周のうち三方(即ち3面)を被うのみであり、それら3方にそれぞれ長方形状の外周側面101aを有する一方で、残りの一方(即ち1面)には開口部111Hが形成されている。回路基板120は、この開口部111Hから本体部111の内部に収容される。回路基板120には、端子部131を接続させる形でコネクタ130が組み付けられている。回路基板120が本体部111に収容された際、コネクタ130は、相手コネクタと接続する接続部132を開口部111Hから露出した状態とされる。ケース101は、この開口部111Hを覆うように本体部111に組み付けられるカバー112を有する。カバー112は、コネクタ130を露出させるコネクタ用開口部112Hを有し、コネクタ130とケース101の開口部111Hの内縁との間の隙間を塞ぐ形で、本体部111に対し組み付けられる。
ブラケット1は樹脂製であり、図1及び図2に示すように、ブラケット本体10と、ケース101を組み付けるための組付け部20と、を有する。
ブラケット本体10は、組付け部20によってケース101が組み付けられた組み付け状態(図2参照)において、ケース101の主面101bと対面して配置される主面対向部3と、主面対向部3から主面101b側へと延び出し、ケース101の外周側面101aと対向する位置に配置される側面対向部2と、を有する。
主面対向部3は、図7及び図8に示すように、上記組み付け状態(図2参照)において、ケース101の主面101bと対面する主面3aを有するとともに、その主面3aから突出するリブ状の当て止め部31と、その主面3aから斜め方向に延び出し、組み付けられたケース101の主面101bを弾性的に押し付ける弾性押付片32と、を有する。
側面対向部2は、主面対向部3からその主面3a側に向かって、主面対向部3に直交する方向200Z(図4参照)へ延び出す形で形成されている。図11に示すように、側面対向部2は、上記組み付け状態(図2参照)において、主面対向部3に対し主面3a側で対向する先端フレーム部2Aと、ケース101の外周方向S(図21参照)における一方の側で先端フレーム部2Aと主面対向部3とを連結する第一の側方フレーム部2Bと、他方の側で先端フレーム部2Aと主面対向部3とを連結する第二の側方フレーム部2Cと、外周方向Sの中央で先端フレーム部2Aと主面対向部3とを連結する中央フレーム部2Dと、を有した枠形状を形成している。
組付け部20は、図7及び図8に示すように、挿入部21と、抜け止め係止部22と、を有する。一方、ケース101は、図23に示すように、その外周側面101a上に、挿入部21が挿入される間隙102Gを形成する組付け部102を有する。組付け部20は、この間隙102Gに挿入部21を挿入させる形で、ケース101の組付け部102に対し組み付けられる。
ケース101の組付け部102は、図21及び図22に示すように、外周側面101a上で互いがケース101の外周方向S(図21参照)において対向する形で上方に向けて突出形成される対向壁部102B、102Bと、それら対向壁部102B、102Bの先端側から屈曲してケース101の外周方向側へと延び出す弾性押付部102A、102Aと、を有したL字状対向壁部である。両弾性押付部102Aは、図23の最下図に示すように、対向壁部102B側から外周側面101aと平行をなして互いが接近する方向に延び出す弾性基端部102Qと、その弾性基端部102Qの先端側で外周側面101a側に向かうよう傾斜する弾性先端部102Pと、をそれぞれが有している。挿入部21が挿入される間隙102Gは、対向壁部102B、102Bの対向間(図13参照)で、なおかつ互いに接近するよう延び出す弾性押付部102A、102Aと外周側面101aとの間(図12A及び図12B参照)に形成されている。間隙102Gへの挿入部21の挿入方向Iは、ここではケース101において組付け部102(弾性押付部102A、102A)を有する外周側面101aに平行で、なおかつ外周方向S(図21参照)に直交する方向とされている。他方、挿入部21は板状に形成され、ケース101の組付け部102が形成する上記間隙102Gへと挿入されることにより、組付け部102に対し抜け止め状態となり、その結果、図2のようにブラケット1がケース101に組み付く。
挿入部21は、組み付け状態にあるブラケット1の側面対向部2において、ケース101の外周側面101aに近い側に位置し(図2参照)、主面対向部3からその直交方向200Z(図12A参照)に延出形成されている。また、挿入部21は、図7及び図8に示すように、中央フレーム部2Dにおける外周方向S(図21参照)の一方の側(即ち、第一の側方フレーム部2B側)と他方の側(即ち、第二の側方フレーム部2C側)で、ケース101の外周側面101aに向かう下方向へと延び出す基端壁部24、24の先端側から、互いに離間する方向へとそれぞれ延び出した板状壁部であり、互いに離間する方向へと延び出した先の先端面21b、21b(挿入部21の両側面21b、21bともいう)には、図11に示すように、摺動突起部21Tが形成されている。
摺動突起部21Tは、図11及び図13に示すように、上記間隙102Gへの挿入部21の挿入に際して対向壁部102B、102Bと対面する挿入部21の両側の側面21b、21bに、それぞれ突出形成された円弧状の突出部である。これら摺動突起部21Tは、間隙102Gへの挿入部21の挿入に際して、上記対向壁部102B、102Bに対し面接触というよりも点接触に近い形で押し付けられるから、接触面積が小さく、挿入部21の挿入抵抗を大きく減じることができる。これにより、ブラケット1とケース101の組み付けが容易になっている。
ここでの摺動突起部21Tは、図11に示すように、当該両側の側面21b、21bのうちの一方の側(即ち、第一の側方フレーム部2B側)の側面21bに2つ、その逆の他方の側(即ち、第二の側方フレーム部2C側)の側面21bに1つ、合わせて3つ形成されている。それら3つの摺動突起部21Tによって対向壁部102B、102Bと3点で接触することにより、挿入によってケース101に組み付けられたブラケット1は、当該ケース101に対しそれら3点を通過する平面内における任意の方向への移動が全て規制されたガタつき防止状態となる。
また、挿入部21は、上記間隙102Gに挿入される際に、その上面21aが弾性押付部102Aによって下方に押し付けられる。ここでの上面21aは、図12Aに示すように、挿入部21の挿入方向Iにおける後方側上面21a3と、その後方側上面21a3から挿入方向Iの前方に向かって下る中間斜面21a2と、その中間斜面21a2から挿入方向Iの前方に向かって延びて後方側上面21a3よりも下側に位置する前方側上面21a1と、を有し、更にその前方側上面21a1の挿入方向Iの前方に上記ガイド斜面をなす前端上面21a0を有している。挿入部21が上記間隙102Gに挿入される際、弾性押付部102Aは、これら上面21a0、21a1、21a2、21a3を挿入方向Iにおける前方側から後方側へと順に摺動していく。さらにいえば、挿入部21は、上面21aの裏の底面が平坦に形成されているから、これら上面21a0、21a1、21a2、21a3に応じて、挿入方向Iにおける前方側ほど薄い形状になっている。なお、これら上面21a0、21a1、21a2、21a3は、少なくとも弾性押付部102Aが摺動する領域に形成されていればよく、残余の領域は同様の形状でなくともよい。ここでは挿入部21における弾性基端部102Bと対向する面領域が、最も厚みのある上面21a3の領域と同じ厚みで形成されている。
また、摺動突起部21Tは、図13に示すように、挿入方向Iに向かって、挿入部21の両側の側面21b、21bに交互に現れるよう形成されている。ここでの摺動突起部21Tは、図11に示すように、挿入部21の一方の側面21b上で前方側上面21a1に対応する区間に1つ、挿入部21の他方の側面21b上で中間斜面21a2に対応する区間に1つ、挿入部21の一方の側面21b上で後方側上面21a3に対応する区間に1つ形成されている。
抜け止め係止部22は、図11に示すように、側面対向部2において挿入部21の挿入方向Iの前方側で、ケース101の外周側面101aへの接近方向である下方に向かって突出形成される。挿入部21は、側面対向部2においてこの抜け止め係止部22よりも下側に位置するとともに、自身の挿入方向Iの前方側端部21Aが抜け止め係止部22よりも挿入方向Iの後方側に位置している。
ここでの抜け止め係止部22は、図8に示すように、側面対向部2の先端フレーム部2Aにおいて下方に突出する形で形成されている。具体的にいえば、図11、図7、図8に示すように、抜け止め係止部22は、先端フレーム部2Aにおいて、中央フレーム部2Dが接続する中央接続部2ADと側方フレーム部2B、2Cが接続する側方接続部2AB、2ACとの間の区間に形成されている。さらにいえば、図10に示すように、抜け止め係止部22は、先端フレーム部2Aにおける中央接続部2ADと側方接続部2AB、2ACとの間の区間の中央に形成されている。一方で、それら区間中央の両側には、抜け止め係止部22が非形成とされており、この部分が脆弱部2AE、2AE(図14参照)とされている。つまり、先端フレーム部2Aにおいて、抜け止め係止部22が形成された中央区間や他のフレーム部2B、2C、2Dとの接続部2AB、2AC、2ADが形成される両端区間は、いずれも剛性の高い高剛性部として形成される一方、それら抜け止め係止部22や接続部2AB、2AC、2ADが非形成の区間は、それら高剛性部よりも剛性が低く弾性変形の生じやすい脆弱部2AEとして形成されている。
抜け止め係止部22は、ケース101との組み付け状態(図2参照)においては、ケース101にて所定の係止部をなす組付け部102に対し係止し、ケース101を抜け止め状態に保持する。具体的にいえば、抜け止め係止部22は、上記弾性押付部102Aと外周側面101aとの間の間隙102Gに挿入部21が所定の組み付け位置まで挿入された際に、弾性押付部102Aに対し挿入部21の挿入方向Iの前方側に回り込んで、弾性押付部102Aの前方側端面102aに対し係止される(図12Bの下図参照)。
このようにブラケット1は、ケース101の外周側面101a上で、L字状対向壁部をなす組付け部102によって形成される間隙102Gに、挿入部21を挿入させることで、当該組付け部102を抜け止め係止部22が係止した抜け止め状態となることにより、ケース101に対し組み付けられる。
ここで、組付け部20によるブラケット1とケース101(ECU100)との組み付け方法及び組み付け構造1000について、具体的に説明する。
既に述べたように、ブラケット1とケース101との組み付けは、図12Aと図12Bと図13とに示すように、ブラケット1の挿入部21を、ケース101の組付け部102に設けられた間隙102G(第一対向間)に挿入することによってなされる。ただし、この挿入に際しては、ケース101の間隙102Gを形成する弾性押付部102Aに、ブラケット1の抜け止め係止部22と挿入部21との対向間20G(第二対向間:図12Aの上図参照)を通過させる必要があるが、図12Aの上図に示すように、ブラケット1の挿入部21をそのままケース101の間隙102Gに挿入しようとしても、ブラケット1の抜け止め係止部22とケース101の弾性押付部102Aとが当接して、ケース101の弾性押付部102Aはブラケット1の上記対向間20Gに進入できない。このため、ブラケット1の挿入部21も、ケース101の間隙102Gに進入できず、ブラケット1とケース101は組み付かない。
ところが、図12Aの中央図及び下図に示すように、上記当接状態のブラケット1の組付け部20を、ケース101の弾性押付部102Aに押し付けて、側面対向部2と組付け部20と弾性押付部102Aとのいずれか又は複数を弾性変形させることで、ケース101の弾性押付部102Aをブラケット1の上記対向間20G(第二対向間)に進入可能となり、これによりブラケット1の挿入部21もケース101の上記間隙102G(第一対向間)に挿入可能になる。具体的にいえば、主に以下の3つの弾性変形が生じて、上記対向間20Gに弾性押付部102Aが進入可能になる。
第一の弾性変形は、側面対向部2の弾性変形であり、図14に示すように、挿入方向I側に向かうブラケット1の抜け止め係止部22が、弾性押付部102Aによって押し上げられる弾性変形である。この第一の弾性変形は、先端フレーム部2Aにおいて抜け止め係止部22の両側の脆弱部2AE、2AEにおいて生じる弾性変形であり、それら脆弱部2AEが弾性変形することで、先端フレーム部2Aの中央が押し上げられる。その結果、ブラケット1の抜け止め係止部22と挿入部21との対向間20G(図12A参照)が拡がり、当該対向間20Gに弾性押付部102Aが進入しやすくなる。
第二の弾性変形は、弾性押付部102Aの弾性変形であり、図12Aの下図に示すように、弾性押付部102Aの先端側の弾性先端部102Pが、その下側に入り込むブラケット1の挿入部21によって押し上げられる弾性変形である。この第二の弾性変形は、弾性押付部102Aの先端側で下方に下る傾斜片として形成されている弾性先端部102Pにおいて生じる弾性変形である。弾性押付部102Aは、弾性先端部102Pが押し上げられることで、弾性基端部102Qを含む弾性押付部102A全体が直線状に近づいて厚み方向の幅が狭くなり、その結果、ブラケット1の抜け止め係止部22と挿入部21との対向間20Gに進入しやすい形状になる。
第三の弾性変形は、組付け部20の弾性変形であり、図12Aの下図に示すように、弾性押付部102Aによってブラケット1の挿入部21が押し下げられる弾性変形である。この第三の弾性変形は、挿入部21において挿入方向Iの前方側から生じる弾性変形である。挿入部21は、弾性先端部102Pが接触してくる挿入方向Iの前方側から押し下げられていき、これにより、ブラケット1における抜け止め係止部22と挿入部21との対向間20Gが拡がって、当該対向間20Gに弾性押付部102Aが進入しやすくなる。弾性押付部102Aに対し最初に接触する挿入部21の挿入方向Iの前方側は、上面21a0、21a1が形成されている比較的薄い部分(図12Aの上図参照)であり、弾性変形が生じやすい。
第一、第二、第三の弾性変形を生じさせる手順について説明する。
まずは図12Aの中央図に示すように、弾性押付部102Aを、ブラケット1における上側の抜け止め係止部22と下側の挿入部21との間となる対向間20G(第二対向間)から、挿入部21の挿入方向Iとは逆向きに進入させ、対向間20Gの奥に受け入れる。当該受け入れの際には、その受け入れ方向J(挿入方向Iとは逆方向)の前方側が上側で後方側が下側となるようケース101をブラケット1に対し傾斜させる。そして、その傾斜したケース101を、受け入れ方向J側に向かってその傾斜方向K1に移動させて、弾性押付部102Aを第二対向間20Gに進入させる。つまり、弾性押付部102Aを、抜け止め係止部22の下側から斜め上方(図中では左上方向)に向かう形で、上記対向間20Gに接近させていく。
そうすると、図12Aの下図に示すように、挿入部21の前端上面21a0に対し弾性押付部102Aが当接する。ここでの挿入部21の前端上面21a0は、挿入方向Iの前方側に向かって下るガイド斜面として形成されているから、弾性押付部102Aは、当該前端上面21a0に当接した際に、挿入部21が挿入方向Iの奥へと押し込まれると、そのまま当該前端上面21a0上を上記受け入れ方向J側に摺動していく。このとき、弾性押付部102Aは、摺動する前端上面21a0を下方に押し下げ、かつ上側に位置する抜け止め係止部22を上方へ押し上げるから、これにより、上記の第一と第三の弾性変形(図12Aの下図及び図14参照)が生じ、ブラケット1の対向間20Gが押し拡げられる。
一方で、このときの弾性押付部102Aは、図14に示すように、上側に位置する抜け止め係止部22から弾性基端部102Qに対する下方への押し付けと、下側に位置する挿入部21から弾性先端部102Pに対する上方への押し付けとの双方を受けることになり、基端側の弾性基端部102Qが下方に沈み、先端側の弾性先端部102Pが上方に押し上がる上記の第二の弾性変形が生じる。その結果、弾性押付部102Aは、全体の厚み方向の幅が狭くなる。厚み方向の幅が狭くなった弾性押付部102Aは、ブラケット1の対向間20Gを拡げる上記第一と第三の弾性変形がそれほど大きく生じなくても、対向間20Gの奥へと進入可能になる。
このようにして、ブラケット1の対向間20G(第二対向間)に弾性押付部102Aを受け入れ可能とし、弾性押付部102Aを、上記受け入れ方向J側に移動させて当該対向間20G(第二対向間)の奥へと進入させることにより、ブラケット1の挿入部21は、ケース101の間隙102G(第一対向間)へと挿入されていく。図13に示すように、ブラケット1の挿入部21の間隙102Gへの挿入は、挿入部21の両側の側面21b、21bに形成された摺動突起部21Tが、ケース101の対向壁部102B、102Bの内側壁面102b上を摺動する形でなされる。更に、挿入部21の間隙102Gへの挿入は、図12Bの中央図及び下図と図14に示すように、ケース101の弾性押付部102Aを、挿入部21の上面21aに押し付け、当該上面21a上で摺動させる形でなされる。
その後、図12Bの下図及び図13の右上図に示すように、弾性押付部102A全体が抜け止め係止部22を通り過ぎ、その受け入れが完了すると、上記の第一から第三の弾性変形が全て解除され(即ち、弾性復帰して)、挿入部21は所定の組み付け位置に到達する。これにより、ブラケット1は、ケース101に対し組み付けられた状態となる。具体的にいえば、第一の弾性変形が解除されることにより、抜け止め係止部22が弾性押付部102Aに対し挿入方向Iの後方側に回り込んで係止した状態となって、弾性押付部102Aの挿入方向Iの逆向き(即ち、挿入方向Iの後方側)への抜けを阻止された抜け止め状態となる。これにより、ブラケット1がケース101に対し組み付く。
なお、弾性押付部102Aに関する上述の第二及び第三の弾性変形は、ここでは上記抜け止め状態となったときに完全に解除されるとしているが、挿入部21の上面21a(具体的にいえば後方側上面21a3)に対しては当接した状態となっている。ただし、上記抜け止め状態において、上述の第二の弾性変形及び第三の弾性変形のいずれか又は双方が、わずかに残った状態であってもよい。
このようにしてケース101に対し抜け止め状態となったブラケット1は、図4に示すように、上記所定の組み付け位置に保持される。上記組み付け位置に保持されたブラケット1は、上記組み付け位置を更に越えて、主面対向部3をケース101側へとさらに接近させることが可能である。ただし、その接近は、ブラケット1の主面対向部3に形成される当て止め部31と弾性押付片32とによって規制される。
当て止め部31は、上記抜け止め状態において、ブラケット1の主面対向部3と対面するケース101の主面101bに対し近接対向する。この当て止め部31は、ブラケット1が挿入方向Iの奥側に過剰に移動した際に当接して、それ以上の移動を規制する。
弾性押付片32は、上記抜け止め状態において、ブラケット1の主面対向部3と対面するケース101の主面101bを挿入方向Iの逆向きに常に押し付けるよう弾性変形している(図4参照)。これにより、ケース101は、組付け部102(ここでは弾性押付部102A)が抜け止め係止部22に係止(接触)した状態に保持している。
次に、上述のようにブラケット1の挿入部21をケース101の間隙102Gに挿入する際の挿入抵抗について説明する。
挿入部21の間隙102Gへの挿入に伴い発生する挿入抵抗は、図15の曲線Zに示すように、上述の第一から第三の弾性変形が生じる際に最初のピークZ1を迎える。そして、間隙102Gに対し挿入部21の2つ目の摺動突起部21Tが進入した際に第二のピークZ2を迎え、ケース101の弾性押付部102Aが中間斜面21a2から後方側上面21a3に乗り上げる際に第三のピークZ3を迎え、間隙102Gに対し挿入部21の3つ目の摺動突起部21Tが進入した際に第四のピークZ4を迎える。
なお、図15の曲線Aは、上述の第一から第三の弾性変形によって生じる挿入抵抗値であり、曲線Bは、2つ目の摺動突起部21Tが間隙102Gに進入することにより生じる挿入抵抗値であり、曲線Cは、弾性押付部102Aが中間斜面21a2から後方側上面21a3に乗り上げることにより生じる挿入抵抗値であり、曲線Dは、3つ目の摺動突起部21Tが間隙102Gに進入することにより挿入抵抗値であり、曲線Zは、それらの挿入抵抗値を合成した挿入抵抗値である。いずれの曲線A、B、C、D、Zもそれぞれの挿入抵抗の傾向が反映されるよう簡易的に示したものにすぎず、具体的な挿入抵抗値が反映されたものではない。
図15の曲線Aに示すように、第一から第三の弾性変形により生じる挿入抵抗は、ケース101の弾性押付部102Aがブラケット1の挿入部21の前端上面21a0上を摺動していく際に増大していき、前方側上面21a1に達した際にピークaを迎え、その後、なだらかに減少していく。第一から第三の弾性変形による挿入抵抗のピークaは、図14のように、抜け止め係止部22と挿入部21との対向間20Gに弾性押付部102Aが進入可能となった時、即ち上述の第一及び第二の弾性変形が最大変位で生じた時であり、その後、ブラケット1は、その弾性変形状態を保ちながら挿入部21をケース101の間隙102Gに摺動させていく引き摺り抵抗を受け続ける。
図15の曲線Bに示すように、2つ目の摺動突起部21Tにより生じる挿入抵抗は、挿入方向Iにおいてブラケット1の挿入部21の両側面21b、21bに交互に形成された摺動突起部21Tのうち、挿入方向Iの前方側から数えて2つ目の摺動突起部21Tが、ケース101の間隙102Gに進入した際(図13の右下図参照)にピークbを迎え、その後、なだらかに減少していく。ブラケット1の挿入部21は、当該間隙102Gに挿入方向Iの前方側から数えて1つ目の摺動突起部21Tが進入する際(図13の左下図参照)には、その1つ目の摺動突起部21Tが形成される側面21bとは逆側の側面21bの摺動突起部21Tが、まだ当該間隙102Gに進入していないため、この段階では、当該間隙102Gに、挿入部21は余裕を持って進入することができる。ところが、挿入方向Iの前方側から数えて2つ目の摺動突起部21Tは、上記の1つ目の摺動突起部21Tとは逆側の側面21bに形成された突起であり、これが当該間隙102Gに進入する際には、それら1つ目と2つ目の両側の摺動突起部21T、21Tを双方とも押し潰す形で摺動抵抗が生じる。この摺動抵抗も、2つ目の摺動突起部21Tが当該間隙102Gに進入する際にピークbを迎えた後は、それら摺動突起部21T、21Tの間を挿入部21が摺動していく引き摺り抵抗を受け続ける。
図15の曲線Cに示すように、ケース101の弾性押付部102Aが中間斜面21a2から後方側上面21a3に乗り上げていくときに生じる挿入抵抗は、ブラケット1の挿入部21の上面21aを摺動していくケース101の弾性押付部102Aが、中間斜面21a2上で後方側上面21a3に近づくほど増大して、後方側上面21a3に乗り上げる際にピークcを迎え、その後、なだらかに減少していく。なお、ここでの後方側上面21a3は、挿入方向Iにおいて、上述の2つ目の摺動突起部21Tよりも後方に位置するため、ピークcは、ピークbよりも後に発生している。中間斜面21a2及び後方側上面21a3による挿入抵抗のピークcは、ケース101の弾性押付部102Aに生じる第二の弾性変形が最大変位で生じた時であり、その後は、当該弾性変形状態を保ちながら弾性押付部102Aが後方側上面21a3上を摺動していくことによる引き摺り抵抗を受け続ける。
図15の曲線Dに示すように、3つ目の摺動突起部21Tにより生じる挿入抵抗は、挿入方向Iにおいてブラケット1の挿入部21の両側面21b、21bに交互に形成された摺動突起部21Tのうち、挿入方向Iの前方側から数えて3つ目の摺動突起部21Tが、ケース101の間隙102Gに進入した際(図13の右上図参照)にピークdを迎え、その後、なだらかに減少していく。ブラケット1の挿入部21は、当該間隙102Gに挿入方向Iの前方側から数えて2つ目の摺動突起部21Tが進入した際(図13の右下図参照)には、挿入方向Iに対し傾斜する方向にガタつく状況にあるが、3つ目の摺動突起部21Tが当該間隙102Gに進入した際(図13の右上図参照)には、3点接触によるガタつき防止状態となり、挿入姿勢が固定される。この摺動抵抗は、3つ目の摺動突起部21Tが当該間隙102Gに進入する際にピークdを迎えた後は、全摺動突起部21Tが摺動することによる引き摺り抵抗を受け続ける。
ブラケット1の挿入部21をケース101の間隙102Gに挿入していく際の全区間における挿入抵抗(曲線Z)は、これら4つの挿入抵抗(曲線A、B、C、D)を合成した形にほぼ一致する。本実施例では、これら4つの挿入抵抗(曲線A、B、C、D)を合成した際に、挿入方向Iにおける各々のピークa、b、c、dの位置が異なるように設定されている。これにより、全体の挿入抵抗(曲線Z)に、ピークが重なって挿入抵抗が激増するような区間が無いようにしてある。
なお、これらの挿入抵抗(曲線A、B、C、D)のほかにも、全体の挿入抵抗(曲線Z)を変化させる要素はあるが、それらは上記挿入抵抗(曲線A、B、C、D)よりも影響が小さいため省略している。
次に、組み付けられたブラケット1とケース101(ECU100)を外す方法と、それを可能にするブラケット1とケース101(ECU100)との組み付け構造1000について、図16及び図17を用いて具体的に説明する。
なお、ブラケット1に対するケース101の取り外し方向は、既に述べた挿入部21の挿入方向Iと同方向であるから、ここでは同じ符号を付して、取り外し方向Iということとする。既に述べた弾性押付部102Aの受け入れ方向Jは、この取り外し方向Iとは逆方向である。また、挿入方向Iは、ケース101に対するブラケット1の組み付け方向ということもできる。
組み付けられているブラケット1とケース101は、弾性押付部102Aに対し抜け止め係止部22が、ケース101の取り外し方向の後方側に回り込んで係止し、抜け止め状態となっている(図16の第一図(最上図)参照)。この抜け止め状態を解除してブラケット1からケース101を取り外すために、まずは、弾性押付部102Aの取り外し方向Iの後方側(図16の左側)が上側で取り外し方向Iの前方側(図16の右側)が下側となるよう、ケース101をブラケット1に対し傾斜させる(図16の第二図及び図17参照)。このとき、弾性押付部102Aが、挿入部21における取り外し方向Iの前方側(即ち、対向間20G側)を下方に押し付ける。これにより、挿入部21の取り外し方向Iの前方側が弾性的に押し下げられ、対向間20G(第二対向間)が押し拡げられる。そして、ブラケット1に対し傾斜したケース101を、取り外し方向Iの前方側に向かってその傾斜方向K2に移動させることで、弾性押付部102Aの対向間20G(第二対向間)への進入が可能になる(図16の第三図参照)。つまり、弾性押付部102Aを抜け止め係止部22が係止していた状態が解除される。そして、弾性押付部102Aが抜け止め係止部22を通過することにより、ケース101は、ブラケット1からの離脱が完了する(図16の第四図(最下図)参照)。なお、離脱が完了した後には、押し下げられていた挿入部21は元の位置に弾性復帰する。
このように、ケース101に対し抜け止め状態に組み付けられたブラケット1は、図17のようにケース101を傾斜させることで、そのケース101(ECU100)を簡単に取り外すことができる。この傾斜は、ケース101とブラケット1の主面対向部3との間に形成される空隙9Sがあることにより可能となっている。ブラケット1は、ケース101が組み付けられている状態において、ケース101を弾性押付片32が受け入れ方向Jとは逆側へ押し付けており、これにより、主面対向部3と当該ケース101との対向間に空隙9Sを形成している。上記ケース101の傾斜は、この空隙9S(さらにいえば、この空隙9Sの組付け部2側から遠い側(図17の下側))にケース101を進入させる形でなされている。また、ブラケット1とケース101とを組み付ける場合も、ケース101をブラケット1に対し傾斜させるが(図12Aの中央図)、この傾斜もこの隙間9Sとなる空間を利用している。
なお、図中に示した傾斜方向K1、K2は、ケース101に対するブラケット1の組み付け・取り外しが可能となるよう、係止部4、5の対向方向200Y(以下、係止部対向方向200Yという)における主面対向部3の第一側(図17の下側)が主面対向部3に接近し、その逆の第二側(図17の上側)が主面対向部3から離間した方向であればよく、固定的に定められた方向ではない。図12A、図16、図17に示す傾斜方向K1、K2は、ケース101に対するブラケット1の組み付け・取り外しに必要な傾斜方向の一例であり、その傾斜角度は、組付け部2の各部の弾性変形量に応じてそれらの図とは異なってもよい。また、その傾斜角度は、ケース101に対するブラケット1の組み付け・取り外しの途中に、その傾斜角度が変化することもありうる。傾斜方向K1、K2の双方が一致している必要もない。
主面対向部3は、図7及び図8に示すように、既に述べた組み付け状態(図2参照)において、ケース101の主面101bと対面する主面3aを有するとともに、その主面3aから突出するリブ状の当て止め部31と、その主面3aから斜め方向に延び出し、組み付けられたケース101の主面101bを弾性的に押し付ける弾性押付片32と、を有する。
ところで、本実施例のブラケット本体10は、図7及び図8に示すように、当て壁部23、23を有する。
当て壁部23、23は、ブラケット1とケース101との組み付け状態(図2参照)において、挿入部21に対しケース101の外周方向Sにおける両外側となる位置を、側面対向部2からケース101の外周側面101aに向けて延び出す壁部であり、外周側面101aと当接して配置される。ここでの当て壁部23、23は、第一の側方フレーム部2Bと第二の側方フレーム部2Cにそれぞれ形成されている。ケース101とブラケット1とを組み付けるための上述のような挿入構造(即ち、挿入部21と組付け部102)は、ブラケット1がケース101に対し外周方向S(図21参照)へと揺動する形でガタつきを生じる可能性がある。これに対し当て壁部23、23は、その挿入構造を、ケース101の外周方向Sの大外の位置で挟むように設けられ、ケース101の外周側面101aと当接するから、ブラケット1の外周方向Sへの揺動を妨げることができる。
ここでの当て壁部23、23は、側面対向部2の第一の側方フレーム部2B及び第二の側方フレーム部2Cから、それぞれケース101の外周側面101aと当接する長さだけ下方に延びた壁部である。また、ここでの当て壁部23、23は、それら第一の側方フレーム部2Bと第二の側方フレーム部2Cとに対しそれぞれの長手方向に沿って形成されており、ケース101の外周側面101aとの接触面積を当該長手方向においてより広く確保して、外周方向Sへの揺動を抑えている。また、当て壁部23、23は、主面対向部3と接続しているため剛性が高く、外周方向Sへの揺動をより安定して抑えることができる。
また、当て壁部23、23の一方には、図7及び図8に示すように、切り欠き部23Kが形成されている。
ケース101は、外周側面101aにおける当て壁部23の一方に対応する位置に、外向きに突出した凸部103(図1参照)を有しており、切り欠き部23Kは、ブラケット1がケース101に組み付けられる際に当該凸部103を避けるよう、切り欠かれている。これにより、ケース101にブラケット1を組み付ける際には、ケース101の凸部103の位置とブラケット1の切り欠き部23Kの位置を合わせなければ、当て壁部23と凸部103とが干渉して組み付けられなくなる。ここでのケース101には、図18に示すように、ブラケット1を組み付けるための組付け部102が複数個所に設けられている。具体的にいえば3つの外周側面101aにそれぞれに設けられている。
なお、凸部103は、ここではケース101のカバー112に設けられた組付け部110Kによって形成されている。ここでのケース101は、図18及び図19に示すように、本体部111の外周における一面に形成された開口部111Hに対しカバー112が組み付けられており、そのカバー112には、ケース101の外周方向Sにおいてその開口部111Hに隣接する双方の外周側面101aに対し外側から重なる形で組み付く組付け部110Kが形成されている。組付け部110Kは、ケース101の外周側面101a上に重なって位置するため、当該外周側面101a上で外向きに飛び出し、凸部103として現れる。
ここで、ケース101をなす本体部111とカバー112との組み付け方法について説明する。
図23に示すように、本体部111とカバー112とを組み付けるためには、まずは本体部111の開口部111Hに、カバー112を接近させていく。カバー112が開口部111Hに接近していくと、組付け部110Kは、本体部111において開口部111Hに隣接する外周側面101a上で、当該開口部111H側に形成された係止突起部101Kに当接する。この当接状態から、カバー112を更に押し込んでいくと、組付け部110Kが弾性変形して係止突起部101K上に乗り上げ、乗り越える。そして、組付け部110Kは、乗り越えた先で該係止突起部101Kと係止して抜け止め状態となる。これにより、カバー112が本体部111の開口部111Hに組み付く。
このとき、組付け部110K上には、切り欠き部23Kが重なるように位置する(図23の最下図参照)。これにより、切り欠き部23Kは、カバー112の開口部111Hに対する組み付き状態の解除動作を妨げるロック部として機能することとなる。即ち、開口部111Hからカバー112を外すためには、カバー112を、開口部111Hに組み付けたときとは逆向きに移動させる必要がある。ところがこの移動には、組付け部110Kと係止突起部101Kとの係止状態を解除する必要がある。解除のためには、組付け部110Kが、係止突起部101Kを組付けたときとは逆向きに乗り上げ、乗り越える弾性変形が必要となるが、組付け部110Kにおいて係止突起部101Kと係止している先端部111Kの上方には、側方フレーム部2Cが位置しているため、乗り上げ、乗り越えるための弾性変形ができない。その結果、ブラケット1が組み付いた状態は、組付け部110Kと係止突起部101Kとの係止状態を解除できないロック状態となる。
ここでの組付け部110Kの先端部111Kは、図23の最下図に示すように、切り欠き部23Kの対向面との間に形成された空隙の空隙幅よりも厚みがあるため、ブラケット1が組み付いた状態において組付け部110Kと係止突起部101Kとの係止状態の解除を確実に防ぐことができる。
次に、ブラケット1のパネル部材200への取り付けについて説明する。
ブラケット1は、図3に示すように、挿通係止部4と回り込み係止部5とを有する。他方、パネル部材200は、挿通係止部4に対応する第一取付孔204と、回り込み係止部5に対応する第二取付孔205とを、厚み方向に貫通する貫通孔として有する。
挿通係止部4は、図4に示すように、係止部4、5の対向方向200Yにおける主面対向部3の第一側(図4の下側)から、主面対向部3の後方側(即ち、ケース101との対面側とは逆側)へと延出し、パネル部材200の対応する第一取付孔204に挿通係止される。ここでの挿通係止部4は、支柱部42と、弾性係止片41と、を有する。支柱部42は、ブラケット本体10から後方に延出し、第一取付孔204に挿通される。弾性係止片41は、係止部対向方向200Yにおける支柱部42の第一側(図4の下側)を、支柱部42の先端側から基端側へ向かって延出し、支柱部42が第一取付孔204に挿通された際には、パネル部材200をその背面200b側から正面200a側に押し付ける形で係止する。また、この係止状態において、弾性係止片41は、係止部対向方向200Yにおける第二側(図4の上側)に弾性変形した状態にあり、第一取付孔204内でパネル部材200を、係止部対向方向200Yにおける第一側(図4の下側)に押し付けている。
ここでの弾性係止片41は、基端側弾性部41Bと、先端側弾性部41Aと、を有する。基端側弾性部41Bは、支柱部42とは逆側の外表面41b(以下、基端側傾斜外表面41bという)が、支柱部42の先端側から基端側に向かうに従い、支柱部42から離れていく傾斜形状を有する(図5参照)。先端側弾性部41Aは、支柱部42とは逆側の外表面41a(以下、先端側傾斜外表面41aという)が、支柱部42の先端側から基端側に向かうに従い、支柱部42に近づいていく傾斜形状を有する(図5参照)。ここでの先端側弾性部41A及び基端側弾性部41Bは、双方の接続部で屈曲した屈曲形状をなし、基端側傾斜外表面41bと先端側傾斜外表面41aとが折り返すように連続している。
また、先端側弾性部41Aの先端部41AT(以下、挿通先端部41ATという)は、第一取付孔204内を挿通して、パネル部材200の表面200a側に突出する(図4参照)。挿通先端部41ATは、支柱部42とは逆側の外表面41t(図25参照:以下、先端外表面41tという)が、支柱部42の先端側から基端側に向かうに従い、先端側傾斜外表面41aとの接続部に凹状の角部を形成する傾斜形状を有する(図5の上図参照)。
回り込み係止部5は、図4に示すように、基端部53と、中間部51と、先端部52と、を有する屈曲したアーム状をなし、弾性変形可能な弾性アームとして形成されている。基端部53は、係止部対向方向200Yにおける主面対向部3の第一側とは逆の第二側(図4の上側)から主面対向部3の後方側(即ち、ケース101との対面側とは逆側)に延出し、パネル部材200の対応する第二取付孔205に挿通される。中間部51は、第二取付孔205内に位置する基端部53の先で、当該パネル部材200の背面200b側に回り込み、当該背面200bに沿って係止部対向方向200Yにおける第二側(図4の上側)へと延出している。先端部52は、当該背面200b側に回り込んだ中間部51の先端側でパネル部材200に対し背面200b側から接触する接触部である。ここでの先端部52は、中間部51の先端側でパネル部材200側に突出し、その背面200bと接触する突起部である。この先端部52の接触の際、回り込み係止部5は、先端部52側がパネル部材200の背面200bから離れる方向に弾性変形を生じており、その結果、先端部52は、パネル部材200の背面200bを正面200a側に押し付ける形で接触する。
ここで、ブラケット1のパネル部材200への取付方法及び取付構造2000について、図5を用いて具体的に説明する。
まずは図5の上図に示すように、ブラケット1の回り込み係止部5を、パネル部材200の第二取付孔205に挿通する。第二取付孔205に挿通された回り込み係止部5は、基端部53がパネル部材200の第二取付孔205内を通過し、中間部51がパネル部材200の背面200b側で係止部対向方向200Yにおける第二側(図5の右側)へと延出した状態となる。
そしてこの状態から、ブラケット1の挿通係止部4を、パネル部材200の第一取付孔204に挿入する。このとき挿通係止部4は、図5の中央図に示すように、弾性係止片41を支柱部42に接近させて全体をすぼませた弾性変形状態となって、第一取付孔204に挿通される。具体的にいえば、挿通係止部4は、第一取付孔204に挿入されていくときに、基端側傾斜外表面41bが第一取付孔204の係止部対向方向200Yにおける第一側(図5の中央図の左側:矢印p0の方向側)の内縁204c(図6B参照)上をスライドする形で押し付ける。この押し付けにより、弾性係止片41は、挿入が進むほど支柱部42側に接近していく弾性変形が生じる。また、この押し付けにより、ブラケット1の全体が係止部対向方向200Yにおける第二側(図5中央図の右側:矢印P0の方向側)へと押し付けられ、回り込み係止部5の基端部53が第二取付孔205の当該第二側の内縁205dに接触して、押し付けられた挿通押付状態となる。
そして、挿通係止部4の第一取付孔204への挿入が進んでいくと、図5の中央図に示すように、ブラケット1の回り込み係止部5の先端部52がパネル部材200の裏面200bと接触し、なおかつブラケット1の支点部7がパネル部材200の表面200aと接触した状態となる。ここから更に挿通係止部4を挿入させていくためには、挿通係止部4をより支柱部42へと接近させる弾性変形が必要となる。このとき、第一取付孔204へと押し込んでいく挿通係止部4を力点、パネル部材200の表面200aと接触した支点部7を支点、パネル部材200の裏面200bと接触した回り込み係止部5の先端部52を作用点とする形で、てこの原理が働く。このため、挿通係止部4の第一取付孔204への押し込み力が比較的小さくても、このてこの原理によって大きな挿入力を生じさせることができるから、挿通係止部4を第一取付孔204へと容易に挿入することができる。
なお、支点部7は、主面対向部3において、挿通係止部4と回り込み係止部5との間の、当該回り込み係止部5側の位置に設けられており、ここではパネル部材200に正面200a側から当接する。図5に示されている支点部7は、第二取付孔205上に位置し、パネル部材200の表面200aに接触していないように見えるが、実際には、図4に示すように、パネル部材200における第二取付孔205の周辺部に対し正面200a側から接触している。また、ここでの支点部7は、図1に示すように、回り込み係止部5の基端部53の基端側で、回り込み係止部5の幅方向両側に長く延出するリブとして形成されている。
挿通係止部4の第一取付孔204への挿入が、てこの原理を利用する形で更に進んでいくと、第一取付孔204内を挿通係止部4の基端側弾性部41Bが通過し終える。そして今度は、第一取付孔204内を挿通係止部4の先端側弾性部41Aが通過していく。第一取付孔204内を先端側弾性部41Aが通過していくときには、図5の下図に示すように、先端側傾斜外表面41aが第一取付孔204の係止部対向方向200Yにおける第一側の内縁204c(図6B参照)上をスライドする形で押し付けた状態となる。先端側傾斜外表面41aは、その傾斜形状から、第一取付孔204の係止部対向方向200Yにおける第一側の内縁204cを第一側(図5の下図の左側:矢印p1の方向側)に押し付けつつ、パネル部材200を裏面200b側から表面200a側に向けて押し付ける。その結果、挿通係止部4は、弾性係止片41を少しずつ弾性復帰させつつ、先端側傾斜外表面41aが第一取付孔204の係止部対向方向200Yにおける第一側の内縁204cを押し付ける自身の力によって第一取付孔204の奥へと進入していく。その進入は、図5の下図に示すように、パネル部材200が、ブラケット1の主面対向部3に形成された当て壁部8と当接する位置で停止する。
この停止状態では、弾性係止片41が弾性復帰途中であるから、依然として、先端側傾斜外表面41aが第一取付孔204の係止部対向方向200Yにおける第一側の内縁204cを当該第一側(図5の下図の左側:矢印p1の方向側)へと押し付け、かつパネル部材200を裏面200b側から正面200a側へと押し付けた状態に保たれる。つまり、この状態の挿通係止部4は、弾性係止片41の先端側傾斜外表面41aがパネル部材200の裏面200b側から係止(接触)した挿通係止状態にある。そして、このとき回り込み係止部5も、パネル部材200の裏面200b側に回り込んで係止状態となっている。このように、挿通係止部4と回り込み係止部5との双方の係止状態が成立した状態が、ブラケット1がパネル部材200に対し取り付けられた取付状態である。
この取付状態において、弾性復帰途中の弾性係止片41は、既に述べたように、パネル部材200の係止部対向方向200Yにおける第一側(図5の下図の左側)において、当て壁部8側(即ち、主面対向部3側)へと弾性的に常に押し付けた状態に保たれている。よって、ブラケット1は、取り付けられたパネル部材200の当該第一側において、パネル部材200との接近離間方向に生じるガタつきが抑制された状態にある。
また、この取付状態において、回り込み係止部5は、パネル部材200の係止部対向方向200Yにおける第二側(図5の下図の右側)において、裏面200b側へと回り込んで先端部52側が当該パネル部材200から離間する側へと弾性変形した弾性変形状態にあり、当該先端部52がパネル部材200を支点部7側(即ち、主面対向部3側)へと弾性的に常に押し付けた状態に保たれている。よって、ブラケット1は、取り付けられたパネル部材200の係止部対向方向200Yにおける第二側において、当該パネル部材200との接近離間方向に生じるガタつきが抑制された状態にある。
また、この取付状態において、弾性復帰途中にある弾性係止片41は、パネル部材200の係止部対向方向200Yにおける第一側において、第一取付孔204の内縁204cを、当該第一側(図5の下図のp1方向側)へと弾性的に常に押し付けた状態に保たれている。また、この押し付けにより、ブラケット1は、その全体が係止部対向方向200Yにおける第二側(図5の下図のp2方向側)にも常に押し付けられた状態に保たれている。よって、ブラケット1は、取り付けられたパネル部材200に対し係止部対向方向200Yの第一側や第二側へと生じるガタつきが抑制された状態にある。
また、この取付状態において、各係止部4、5は、対応する取付孔204、205に挿通され、その内縁204c、205dに当接して係止状態となるだけでなく、それら取付孔204、205内における所定位置に位置保持されている。以下、この位置保持について説明する。
挿通係止部4及び第一取付孔204の内縁には、図6Aに示すように、その挿通係止状態において、係止部対向方向200Yの第一側(図6Aの上側)に向けて常に押し付けられている弾性係止片41(先端側弾性部41A)を、第一取付孔204の係止部対向方向200Yにおける第一側の内縁204c(図6B参照)に接する形で定められた第一所定位置に止める位置保持部が設けられている。ここでは、図6Bに示すように、支柱部42に設けられた取付孔内縁押付部48、49と、第一取付孔204の内縁204a、204bとが位置保持部として機能している。
ここでの弾性係止片41は、第一取付孔204内において、係止部対向方向200Y(図6Aの上下方向)のガタつきを自らの押し付けによって抑えているが、弾性係止片41には、その係止部対向方向200Yに直交する直交方向200X(図6Aの左右方向)におけるガタつきを防ぐ手段が無いと、弾性係止片41だけでは挿通係止部4を第一所定位置に止めることはできない。
これに対し取付孔内縁押付部48は、挿通係止部4が第一取付孔204に挿通係止された状態において、上記直交方向200Xにおける第一側(図6Bの左側)で第一取付孔204の内縁204aと当接する当接部である。他方、取付孔内縁押付部49は、第一取付孔204に挿通係止された状態において、その逆の第二側(図5Aの右側)で第一取付孔204の内縁204bを押し付けるよう弾性変形可能な弾性片である。これにより、挿通係止部4は、第一取付孔204に挿通係止された状態において、第一取付孔204の内縁204a、204bを取付孔内縁押付部48、49が上記直交方向200Xに常に押し付けた状態となるため、上記直交方向200X(図6Bの左右方向)におけるガタつきを防いで第一所定位置に止まることができる。
具体的にいえば、第一取付孔204は、四角形状の貫通孔、さらにいえば第二取付孔205よりも係止部対向方向200Yに長い長方形状の貫通孔として形成されており、係止部対向方向200Yとその直交方向200Xとのそれぞれに対し直交する4つの直線状の内縁204a、204b、204c、204dに取り囲まれている。取付孔内縁押付部48は、上記直交方向200Xに所定幅を有する支柱部42の、当該直交方向200Xにおける第一側(図6Bの左側)の端部である。取付孔内縁押付部48の先端面は、第一取付孔204における上記直交方向200Xの第一側に位置する直線状の内縁204aに対し直線状に面接触する接触領域を有している。他方、取付孔内縁押付部49は、上記直交方向200Xに所定幅を有する支柱部42の第二側(図6Bの右側)の端部から延出して、上記直交方向200Xの第一側に弾性変形可能とされた弾性片である。このため、取付孔内縁押付部49は、挿通係止部4が第一取付孔204に挿通係止された状態において、上記直交方向200Xの第一側に弾性変形する形で第一取付孔204内に収容され、第一取付孔204における直線状の内縁204bを常に押し付けている。
ここでの取付孔内縁押付部49は、係止部対向方向200Y側(ここでは図6Bの上側)かつ上記直交方向200Xの第二側(図6Bの右側)となる斜め方向49y(図6B参照)に延出する形で形成されている。挿通係止部4の挿通係止状態(図5の下図参照)において、取付孔内縁押付部49は、上記直交方向200Xの第一側へと弾性的に押し曲げられた弾性変形状態に保たれ、第一取付孔204の内縁204bを常に押し付けた状態とされる。これにより、挿通係止部4は、上記直交方向200Xおいて第一取付孔204の内縁204a、204bを常に押し付けた状態となって、上記直交方向200Xにおけるガタつきの防止と位置保持とを実現している。
一方、回り込み係止部5及び第二取付孔205の内縁にも、図6Aに示すように、その回り込み係止状態において、係止部対向方向200Yの第二側(図6Aの下側)に向けて常に押し付けられている基端部53を、第二取付孔205の当該第二側の内縁205d上に定められた第二所定位置に止める位置保持部が設けられている。ここでは、図6Cに示すように、回り込み係止部5の基端部に設けられた取付孔内縁押付部59、59と、第二取付孔205の内縁205a、205bとが、位置保持部として機能している。
ここでの基端部53は、逆側の第一取付孔204内における弾性係止片41の係止部対向方向200Yの第一側への押し付けによって、第二取付孔205の係止部対向方向200Yにおける第二側の内縁205dへと押し付けられており、係止部対向方向200Y(図6Aの上下方向)のガタつきが抑えられている。ところが、基端部53には、その係止部対向方向200Yに直交する直交方向200X(図6Aの左右方向)におけるガタつきを防ぐ手段が無いと、弾性係止片41だけでは挿通係止部4を第一所定位置に止めることはできない。
これに対し、回り込み係止部5は、直交方向200Xのガタつきを防いで第二所定位置に止まるために、取付孔内縁押付部59、59を基端部53に有した形状となっている。取付孔内縁押付部59、59は、回り込み係止部5が第二取付孔205に係止された回り込み係止状態において、それぞれが上記直交方向200Xにおける第一側及びその逆の第二側(図6Cの左側及び右側)で第二取付孔205の内縁205a、205bを押し付けるよう弾性変形可能な弾性片である。これにより、回り込み係止部5は、第二取付孔205に挿通係止された状態において、第二取付孔205の内縁205a、205bを常に押し付けた状態となるため、上記直交方向200X(図6Cの左右方向)におけるガタつきを防いで第二所定位置に止まることができる。
具体的にいえば、第二取付孔205は、四角形状の貫通孔、さらにいえば第一取付孔204よりも上記直交方向200Xに長い長方形状の貫通孔として形成されており、係止部対向方向200Yとその直交方向200Xとのそれぞれに対し直交する4つの直線状の内縁205a、205b、205c、205dに取り囲まれている。取付孔内縁押付部59、59は、それぞれが上記直交方向200Xに所定幅を有する基端部53の両側(図6Cの左右両側)の端部から外向きに延出して、基端部53の先端側(即ち、中間部51側)からの押し付けによって上記直交方向200Xの内向きに弾性変形可能とされた弾性片である。このため取付孔内縁押付部59、59は、回り込み係止部5が第二取付孔205に係止された回り込み係止状態において、それぞれが上記直交方向200Xの内向きに弾性変形する形で第二取付孔205内に収容され、第二取付孔205における直線状の内縁205a、205bを常に押し付けている。
ここでの取付孔内縁押付部59、59は、基端部53から上記直交方向200Xの外向きに延出する形で形成されている。回り込み係止部5の回り込み係止状態(図5の下図参照)において、取付孔内縁押付部59、59は、それぞれが上記直交方向200Xの内向きに弾性的に押し曲げられた弾性変形状態に保たれ、それぞれが第二取付孔205の内縁205a、205bを常に押し付けた状態とされる。これにより、回り込み係止部5は、上記直交方向200Xおいて第二取付孔205の内縁205a、205bを常に押し付けた状態となって、上記直交方向200Xにおけるガタつきの防止と位置保持とを実現している。
なお、各取付孔内縁押付部49、59、59は、主面対向部3との間に空隙を挟んでおり、主面対向部3とは非接続に形成されている。これにより、各取付孔内縁押付部49、59、59は、弾性変形を生じやすくなっている。
また、ここでの挿通係止部4及び回り込み係止部5は、回り込み係止部5(基端部53)の方が挿通係止部4(弾性係止片41、支柱部42)よりも上記直交方向200Xの幅が広い。また、第一取付孔204及び第二取付孔205についても、第二取付孔205の方が第一取付孔204よりも、上記直交方向200Xの孔幅が広く形成されている。このため本実施例では、係止部対向方向200Yの第一側(図6Aの上側)において、第一取付孔204に対し挿通係止部4が当該第一側に向かって押し付ける第一側押付領域4Sに対し、係止部対向方向200Yの第二側(図6Aの下側)において、第二取付孔205に対し回り込み係止部5が当該第二側向かって押し付ける第二側押付領域5Sの方が、押し付け方向(即ち、係止部対向方向200Y)に直交する方向200Xに長い領域として設けられている。つまり、回り込み係止部5は、上記直交方向200Xに長いため、第二取付孔205の係止部対向方向200Yにおける第二側の内縁205dに対し、上記直交方向200Xの両端側の2か所において接触しているとみることができる一方、挿通係止部4は、上記直交方向200Xに短いから、第一取付孔204の係止部対向方向200Yにおける第一側の内縁204cに対し、1か所で接触しているとみることができる。このため、ブラケット1は、パネル部材200の異なる3か所において、互いに離間する側へと押し付けられた形で組み付けられているといえる。このような3点での支持は、係止部対向方向200Yへのガタを防止するだけでなく、それら3点を通過する平面上でそれら3点のうち1点を中心に回転する方向へのガタつきも抑えることができる。また、このような3点支持は、三脚等のように、2点や1点での支持に比べて安定し、かつ4点以上での支持より効率的であるという利点もある。
このような形でブラケット1がパネル部材200に取り付けられることにより、挿通係止部4や回り込み係止部5は、車両の走行振動等でブラケット1に上記直交方向200Xへの力が働いたとしても、弾性係止片41によって係止部対向方向200Yに常に押し付けられる力と、取付孔内縁押付部49、59、59によって上記直交方向200Xに常に押し付けられる力とを利用して、第一取付孔204や第二取付孔205内に定められた第一所定位置や第二所定位置に止まることができる。仮にそれら所定位置からずれたとしても、それら係止部対向方向200Yと上記直交方向200Xとに作用する押し付け力が、挿通係止部4や回り込み係止部5を押し戻すから、容易に元の所定位置に戻ることができる。
次に、ブラケット1のパネル部材200からの取り外し方法及びそれを可能にする取り付け構造2000について、図24及び図25を用いて具体的に説明する。
ブラケット1をパネル部材200から取り外すためには、ブラケット1とパネル部材200との間の空隙9Sに治具9Dを進入させ、当該治具9Dによって弾性係止片41(挿通先端部41A)を支柱部42側に押し込み、第一取付孔204との挿通係止状態を解除することにより可能となる。
ここでは、治具9Dによる弾性係止片41(挿通先端部41A)の押し込みが容易になるよう、ブラケット1の主面対向部3に切り欠き部39が設けられている(図3参照)。具体的にいえば、切り欠き部39は、ブラケット1の主面対向部3を、係止部対向方向200Yの第一側の端部から挿通係止部4の弾性係止片41の直下までを切り欠いた形で形成されている。ブラケット1は、パネル部材200に取り付けられた状態において、切り欠き部39の当該第一側の開放側から治具9D(ここでは棒状治具)を進入させることにより、第一取付孔204を通ってブラケット1側に突出する弾性係止片41の先端部41AT(以下、挿通先端部41ATという)を支柱部42側に弾性変形させることが可能であり、当該弾性変形によって挿通係止部4の第一取付孔204への挿通係止状態が解除され、前記パネル部材から取り外すことができる。
具体的にいえば、まずは図24の上図に示すように、マイナスドライバーのような棒状治具9Dを、パネル部材200の表面200aに沿って(例えば表面200a上を滑らすように)切り欠き部39の開放側から奥へと進入させていく。そうすると、弾性係止片41の挿通先端部41Aに接触する。ただし、接触しても棒状治具9Dの進入を止めることはできず、弾性係止片41を支柱部42側へと弾性変形させる形で棒状治具9Dの進入は続く。この進入は、図24の中央図に示すように、弾性変形した弾性係止片41(挿通先端部41A)が支柱部42に当接する位置まで続く。
弾性係止片41(挿通先端部41A)が支柱部42に当接すると、第一取付孔204との挿通係止状態が解除され、弾性係止片41を含む挿通係止部4全体が、第一取付孔204から離脱可能になる。したがって、図24の中央図のような状態で、棒状治具9Dの先端側をそのままにして、棒状治具9Dの基端側をパネル部材200から離脱する方向へ持ち上げることにより、ブラケット1あるいはケース101が押し上げられて、挿通係止部4が第一取付孔204から離脱する。挿通係止部4が離脱したならば、残りは回り込み係止部5を第二取付孔205から取り外せば、ブラケット1はパネル部材200から取り外すことができる。
ただし、ここでの棒状治具9Dは、マイナスドライバーであり、その先端部9DTが先細り形状をなしている。このため、図24の中央図の状態から、ブラケット1がパネル部材200から取り外されていく手順は、以下のようになる。
即ち、図25に示すように、弾性係止片41(挿通先端部41A)を支柱部42に当接させた棒状治具9Dは、その進入方向のさらに奥へと進入する。具体的にいえば、弾性係止片41の挿通先端部41Aに接触した棒状治具9Dは、挿通先端部41Aの先端外表面41t上をスライドする形で、進入方向のさらに奥へと進入していく。このとき、挿通先端部41Aの先端外表面41tは、棒状治具9Dの進入方向においてブラケット1側へと上る傾斜面として形成されているため、棒状治具9Dは、挿通先端部41Aの先端外表面41t上をスライドしていく形で矢印D1の方向へと移動していく。この移動によって棒状治具9Dは、ブラケット1側に変位していき、その結果、ブラケット1の切り欠き部39の底部39Dと当接して、これを矢印D2方向へと押し上げていくことになる。つまり、パネル部材200の表面200aに沿ってブラケット1の切り欠き部39内に進入させた棒状治具9Dは、そのまま奥へと進入させていくだけで、挿通係止部4の係止状態を解除するだけでなく、ブラケット1に接近していく方向に自然に変位して、ブラケット1をパネル部材200から離脱させる側へと持ち上げていく。このため、ブラケット1が持ち上がっていくときに、棒状治具9Dの先端側をそのまますくい上げるように矢印D2方向へと動かせば、ブラケット1はパネル部材200から簡単に取り外すことができる。なお、図24及び図25については、ケース101の内部構造に関する図示を省略している。
以上、本発明の第一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
以下、上記実施例とは異なる別の実施例や変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、上記実施例と下記例とは、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
上記実施例のブラケット1は、1つの挿通係止部4と、それよりも幅広となる1つの回り込み係止部5とによって、パネル部材200に対し取り付けられていたが、挿通係止部4と回り込み係止部5の数は、これとは異なっていてもよい。
例えば1つの挿通係止部4と、2つの回り込み係止部5によって、パネル部材200に対し取り付けられていてもよい。以下、図26及び図27A〜図27Cに示す第二実施例について説明する。
第二実施例においては、パネル部材200に第一取付孔204が1つ設けられ、その第一取付孔204に対し1つの挿通係止部が挿通係止される。第一取付孔204の係止部対向方向200Yにおける第一側の内縁204cは、図27Bに示すように、当該第一側に向けて押し付けられた弾性係止片41(先端側弾性部41A)を、当該内縁204c上の第一所定位置に止める位置保持形状を有する。ここでの内縁204cは、弾性係止片41が係止部対向方向200Yにおける第一側に押し付けられた際、当該弾性係止片41によるブラケット1の押付方向p1に直交する直交方向200Xの両側で対向し、かつその対向幅が当該第一側ほど狭幅とされた対向部204C、204Cを有する。弾性係止片41がそれら対向部204C、204Cに両側から挟まれる位置が、挿通係止部4の第一所定位置と定められている。
具体的にいえば、ここでの第一取付孔204の内縁204cは、円弧状に形成され、弾性係止片41における第一取付孔204の内縁204cとの接触面41u(弾性係止片41の係止部対向方向200Yにおける第一側(図27Bの上側)の面)が、内縁204cの円弧よりも径の小さい円弧状に形成されている。この場合、円弧状の内縁204cの係止部対向方向200Yにおける最も第一側の位置が第一所定位置、その第一所定位置に対し上記直交方向200Xにおける第一側の円弧区間が一方の対向部204C、その逆の第二側の円弧区間が他方の対向部204Cである。弾性係止片41は、第一所定位置に位置した状態において、それら対向部204C、204Cの双方に同時に接触しており、この同時接触状態が上述した対向部204C、204Cに両側から挟まれた状態である。
また、第二実施例においては、パネル部材200に第二取付孔205が2つ設けられ、それら第二取付孔205、205に対しそれぞれ1つの挿通されて係止される。第二取付孔205の係止部対向方向200Yにおける第二側の内縁205dは、図27Cに示すように、当該第二側に向けて押し付けられた回り込み係止部5の基端部53を、当該内縁205d上の第二所定位置に止める位置保持形状を有する。ここでの内縁205dは、回り込み係止部5の基端部53が係止部対向方向200Yにおける第二側に押し付けられた際、当該基端部53によるブラケット1の押付方向p2に直交する上記直交方向200Xにおける両側で対向し、かつその対向幅が係止部対向方向200Yにおける第二側ほど狭幅とされた対向部205C、205Cを有しており、当該基端部53がそれら対向部205C、205Cに両側から挟まれる位置が第二所定位置と定められている。
具体的にいえば、ここでの第二取付孔205の内縁205dが円弧状に形成され、更に回り込み係止部5の基端部53における第二取付孔205の内縁205dとの接触面53d(基端部53の係止部対向方向200Yにおける第二側(図27Cの下側)の面)が、内縁205dの円弧よりも径の小さい円弧状に形成されている。この場合、円弧状の内縁205dの係止部対向方向200Yにおける最も第二側の位置が第二所定位置、その第二所定位置に対し上記直交方向200Xにおける第二側の円弧区間が一方の対向部205C、その逆の第二側の円弧区間が他方の対向部205C、205Cである。回り込み係止部5の基端部53は、第二所定位置に位置した状態において、それら対向部205C、205Cの双方に同時に接触しており、この同時接触状態が、対向部205C、205Cに両側から挟まれた状態である。
このように、第二実施例では、挿通係止部4による第一取付孔204の押し付け位置が1か所、回り込み係止部5の基端部53による第二取付孔205の押し付け位置が2か所あり、これら合わせて3か所において係止部対向方向200Yへの押し付けがなされている。このような三点での支持は、2点や1点での支持に比べて安定し、かつ4点以上での支持より効率的であるから、第二実施例のブラケット1も、パネル部材200に対しガタつきなく安定して組み付けることができる。なお、挿通係止部4と回り込み係止部5の数を逆にして、第一取付孔204の押し付け位置を2か所、第二取付孔205の押し付け位置を1か所とすることもできる。
また、第二実施例のように、挿通係止部4と回り込み係止部5とが合計で3つ設けられる構成に関しては、以下のような構成とすることもできる。
即ち、第二実施例においては、1つの挿通係止部4から2つの回り込み係止部5までの距離が双方とも同じであったが、例えば図28に示すように、それら3つの係止部のうち1つの係止部から他の係止部までの距離として定められる3つの係止位置間距離d1、d2、d3を、それぞれ異なる長さとすることができる。このように3つの係止部でパネル部材に対し組み付けられる場合、1つの係止部から他の2つの係止部までの距離が一致していると、パネル部材と平行な平面上において、1つの係止部から等距離にある2つの係止部が、その1つの係止部を中心とする同一の円弧軌跡上を揺動する形で、ブラケットがガタつく可能性がある。しかしながら、上記のように1つの係止部から他の2つの係止部までの距離を異なるようにすることで、2つの係止部の揺動軌跡が一致しなくなるため、揺動を妨げ、ガタつきを抑制することができる。
図28に示す第三実施例では、挿通係止部4の係止位置から一方の回り込み係止部5の係止位置までの距離d1と、挿通係止部4の係止位置から他方の回り込み係止部5の係止位置までの距離d2と、2つの回り込み係止部5の係止位置の間の距離d3と、が異なっている。
なお、上述の係止位置間距離d1、d2、d3は、図28に示すように、ブラケット1とパネル部材200の取付状態において、パネル部材200に設けられた取付孔204、205とそこに挿通されたブラケット1の係止部4、5とが係止(接触)している係止位置間の距離(接触位置間あるいは押し付け位置間の距離ともいえる)のことをいうものとする。
また、第一実施例のように、1つの挿通係止部4、1つの回り込み係止部5と、を有するが、第一実施例とは異なるような構成としてもよい。例えば図29に示す第四実施例のような構成とすることができる。
第二及び第三実施例においては、1つの取付孔204、205に対し1つの係止部4、5が挿通されているが、1つの取付孔204、205に対し2つの係止部4、5が挿通されてもよい。例えば図29に示す第四実施例のように、1つの第二取付孔205に対し2つの回り込み係止部5、5が挿通されるように構成することができる。この構成では、第一取付孔204及び挿通係止部4の構成は第二及び第三実施例と同様であるが、第二取付孔205及び回り込み係止部5の構成が第二及び第三実施例とは異なっている。
即ち、第四実施例において、第二取付孔205の内縁205dは、対向部205D、205Dを有する。対向部205D、205Dのうちの一方は、2つの回り込み係止部5、5の基端部53、53が係止部対向方向200Yにおける第二側(図29の下側)に押し付けられた際にそれら基端部53、53によるブラケット1の押付方向p2に直交する直交方向200Xの両側で対向し、その対向幅が係止部対向方向200Yにおける第二側ほど狭幅とされている。また、この構成において、第二取付孔205の内縁205dは、対向部205D、205Dの係止部対向方向200Yにおける第二側(図29の下側)に移動規制部205Eを有する。移動規制部205Eは、2つの回り込み係止部5、5の基端部53、53が当該第二側に押し付けられた際に、対向部205D、205Dに沿って当該第二側に押し付けられる基端部53、53に対し当接して、当該押し付けによる移動を妨げる壁部として形成されている。
次に、第五実施例について、図30A〜図30Cと、図31A及び図31Bとを用いて説明する。
第五実施例では、図30A及び図30Bに示すように、パネル部材200に設けられる第一取付孔204の形状が、四方の角部が他の実施例よりも径大の円弧形状をなして形成されている。さらにいえば、第一取付孔204は、係止部対向方向200Yの第一側と第二側との双方の内縁204c、204dが円弧状で、係止部対向方向200Yの直交方向200Xの両側の内縁204a、204bが直線状をなす略楕円状をなす。
挿通係止部4は、他の実施例と同様に形成されている。支柱部42の直交方向200Xの両側の端部には、第一取付孔内縁押付部48、49が形成されており、そのうちの一方(ここでは図30Bの右側)の第一取付孔内縁押付部49は、係止部対向方向200Yの第一側(図30Bの上側)に延び出し、上記直交方向200Xの内側(第一取付孔内縁押付部48側:図30Bの左側)に弾性変形可能な弾性片49である。
第一取付孔204は、挿通係止部4の挿通係止状態において当該弾性片49(の先端部49A)に押し付けられる内縁204rが係止部対向方向200Yの第一側(図30Bの上側)に向かうほど直交方向200Xの内側(図30Bの左側)に位置する湾曲形状を有する。この内縁204rは、第一取付孔204における係止部対向方向200Yの第一側の内縁204cの一端側であり、押し付けてくる弾性片49の延出先端側(先端部49A)を自身の湾曲形状に沿うよう弾性変形させる。これにより、第一取付孔204は、弾性変形したその弾性片49によって、係止部対向方向200Yの第一側(図30Bの上側)と直交方向200Xの外側(図30Bの右側)との双方に押し付けられた状態となる。
また、挿通係止部4の弾性係止片41は、図30Bに示すように、挿通係止部4の挿通係止状態において、円弧状をなす第一取付孔204の内縁204cに対し、第一側への押し付け方向p1(200Y)に直交する直交方向200Xにおいて、その中央を挟んだ一方側とその逆の他方側との2位置41a0、41b0で押し付ける形状をなす。他方、回り込み係止部5の基端部53は、図30Cに示すように、第二取付孔205の内縁に対し直交方向200Xの両側で接触する形状を有する。即ち、基端部53は、上記直交方向の両端側で外向きに突出する第二取付孔内縁押付部59、59を有しており、それら第二取付孔内縁押付部59、59が、第二取付孔205における直交方向200Xの両側の内縁205a、205bに対し接触する形状をなす。そして、図30Aに示すように、回り込み係止部5の基端部53が第二取付孔205の内縁205a、205bに接触する接触位置53a0、53b0は、挿通係止部4の弾性係止片41が第一取付孔204の内縁204cを押し付ける2位置41a0、41b0よりも、上記直交方向200Xにおいて外側に位置している。
ここで、ブラケット1に対し上記直交方向200Xの振動が生じた場合を考える。なお、図31Aは、パネル部材200に取り付けられた状態のブラケット1の裏面3b側(即ち、主面3aの裏側)を示した図であり、パネル部材200の第一取付孔204と第二取付孔205が二点鎖線で示されている。
上記振動が生じることにより、挿通係止部4は、図31Aの左右へと変位する。図31Bに示すように、挿通係止部4が図31Aの左側に変位する力Fを受けた場合、挿通係止部4には、図31Aの左側の第二取付孔内縁押付部59が第二取付孔205の内縁205bと接触する接触位置53bを中心に回転させる左向きの力が作用する。この力は、上記2位置41a0、41b0においてそれぞれ矢印41aR、41bRの方向に作用する力である。なお、符号41ar、41brは、回転中心となる接触位置53bからそれら2位置41a0、41b0に向かう径方向を示している。挿通係止部4は、上記2位置41a0、41b0で第一取付孔204の円弧状の内縁204cを押し付けており、その押し付ける力によって当該円弧状の内縁204c上をスライドする形で、図中左側へと変位する。ただし、上記2位置41a0、41b0において作用する力のうち、一方の位置41b0で作用する力は、第一取付孔204の円弧状の内縁204cを、その接線方向41b1に向かう成分を有しつつも、その法線方向41b2に向かう成分も比較的大きく有している。このため、挿通係止部41の押し付け位置41b0は、接線方向41b1の力を受けて当該円弧状の内縁204cに沿ってスライドするだけではなく、当該円弧状の内縁204cを押し付ける方向41b2にも力を作用させる。つまり、振動によってブラケット1が受ける力Fは、その一部が円弧状の内縁204cを押し付ける力として当該内縁204cに受け止められることで、円弧状の内縁204cに沿った方向に作用する力が減じられるから、当該内縁204cに沿ったスライド変位、即ちガタつきを抑えることができる。これは、挿通係止部4が図31Aの右側に変位する場合も同様である(この場合、上記線方向41b1に接線方向41a1が対応し、上記法線方向41b2に法線方向41a2が対応する)。このように、第五実施例では、第一取付孔204の円弧状の内縁204cに対する弾性係止部41の2点接触により、ブラケット1のガタつきを抑制できる。