JP6512120B2 - 含フッ素エラストマーの基材への接着方法 - Google Patents

含フッ素エラストマーの基材への接着方法 Download PDF

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Description

本発明は、光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の硬化物(含フッ素エラストマー)を基材に接着させる方法に関する。
従来、アルケニル基とヒドロシリル基とのヒドロシリル化付加反応を利用した加熱硬化タイプの硬化性含フッ素エラストマー組成物は公知であり、更に第3成分として、ヒドロシリル基とエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基を有するオルガノポリシロキサンを添加することにより自己接着性を付与した組成物が提案されている(特許文献1:特許第3239717号公報及び特許文献2:特許第3567973号公報)。これは、比較的短時間の加熱により硬化させることができ、得られた硬化物(含フッ素エラストマー)は、耐溶剤性、耐薬品性、耐熱性、低温特性、低透湿性、電気特性に優れているので、これらの特性が要求される各種工業分野の接着用途に使用されている。特に、自動車工業において電装部品の接着シール剤として多用されている。
近年、省エネルギー化や生産性の向上の観点から、より低温且つ短時間で硬化・接着可能なエラストマー材料の開発が求められている。しかしながら、上記加熱硬化タイプの接着剤組成物(硬化性含フッ素エラストマー組成物)で速硬化性を得ようとすると、保存安定性や可使時間が犠牲になってしまい、逆に良好な保存安定性や可使時間の確保には速硬化性が犠牲になる、というジレンマがあった。また、一度の加熱処理で硬化工程と接着工程を担っているため、より低温で硬化物と基材との接着性を得ようとした場合、硬化工程に時間がかかってしまい、その結果短時間で硬化と接着性を得ることが困難であった。
一方、撥水撥油性、耐薬品性などに優れたエラストマー組成物として、(A)少なくとも2個のアルケニル基を有し、パーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状フルオロポリエーテル化合物、(B)少なくとも2個のメルカプト基を有し、1価フルオロアルキル基又は1価フルオロポリエーテル基を有するオルガノポリシロキサン及び(C)光開始剤を含有する光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物が開発されており、自動車用、化学プラント用、インクジェットプリンター用、半導体用製造ライン用など、各種電気電子部品のコーティング材、ポッティング材としての応用が期待されている(特許文献3:特開2007−106785号公報)。
しかし、上記のアルケニル基とメルカプト基とのエンチオール反応による光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、硬化物がゲル状又はゴム状で非常に軟らかく、また各種基材へ接着性を持たないため、各種基材へのコーティング、ポッティング用途としては好適な材料ではあるが、封止材、接着シール材など、基材への接着性を求められる用途や、エラストマー材料としての強度が求められる用途には適用が困難な材料であった。
よって、後者のような用途にも適用可能で、室温で良好な保存性と速硬化性を兼ね備え、低温且つ短時間で接着性を発現するフルオロエラストマー材料の開発と共に低温且つ短時間でこれと基材とを接着する方法が望まれていた。
特許第3239717号公報 特許第3567973号公報 特開2007−106785号公報
従って、本発明は、良好な保存安定性と速硬化性を併せ持ち、且つ低温にて短時間で接着が可能な光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を用いた接着方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、基材表面を予め酸素を含む雰囲気中でプラズマ照射することにより該基材表面を改質させ、その上に光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を塗布し、該組成物を光照射して硬化させた後、10〜120℃で静置することで、基材に該組成物の硬化物(含フッ素エラストマー)を低温且つ短時間で接着させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の硬化物の基材への接着方法を提供するものである。
[1]
基材表面を予め酸素を含む雰囲気中でプラズマ照射することにより該基材表面を改質させ、その表面上に
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有する含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してSi−H基が0.5〜3モルとなる量、
(C)光活性型ヒドロシリル化反応触媒:金属原子質量換算で0.1〜500ppm、
(D)疎水性シリカ粉末:1〜30質量部、
及び
(E)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基をそれぞれ1個以上有する(B)成分以外のオルガノポリシロキサン:0.05〜5質量部
を含有する光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を塗布し、該組成物を10〜120℃において近紫外線により光照射して硬化させると共に光照射後に10〜120℃で静置して基材に上記エラストマー組成物のゴム硬化物を接着させる工程を含むことを特徴とする該基材に該エラストマー組成物のゴム硬化物を接着させる方法。
[2]
(C)成分が、(η 5 −シクロペンタジエニル)トリ(σ−アルキル)白金錯体化合物又はβ−ジケトナト白金錯体化合物である[1]に記載の接着方法。
[3]
(A)成分が、下記式(1)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物である[1]又は[2]に記載の接着方法。
CH2=CH−(X)a−Rf1−(X’)a−CH=CH2 (1)
[式(1)中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−〔ここで、Yは−CH2−、−Si(CH32CH2CH2CH2−、−Si(CH3)(CH=CH2)CH2CH2CH2−、−Si(CH=CH22CH2CH2CH2−又は下記構造式(Z)
Figure 0006512120
(式(Z)中、R3、R4はそれぞれ独立に−CH3又は−CH=CH2である。)
で示されるo−、m−又はp−シリルフェニレン基であり、R1は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である。〕であり、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR2−Y’−〔ここで、Y’は−CH2−、−CH2CH2CH2Si(CH32−、−CH2CH2CH2Si(CH3)(CH=CH2)−、−CH2CH2CH2Si(CH=CH22−又は下記構造式(Z’)
Figure 0006512120
(式(Z’)中、R3’、R4’はそれぞれ独立に−CH3又は−CH=CH2である。)
で示されるo−、m−又はp−シリルフェニレン基であり、R2は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である。〕である。aは独立に0又は1である。Rf1は下記式(i)又は(ii)
Figure 0006512120
(式(i)中、p及びqはそれぞれ0又は1〜150の整数であって、且つpとqの和の平均は2〜200である。rは0〜6の整数であり、tは2又は3である。)
Figure 0006512120
(式(ii)中、uは1〜200の整数であり、vは1〜50の整数であり、tは2又は3である。)
で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。]
[4]
光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物が、更に(F)成分として、ヒドロシリル化反応の反応制御剤を含む[1]〜[3]のいずれかに記載の接着方法。
[5]
光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物が、更に(G)成分として、カルボン酸無水物を含む[]〜[4]のいずれかに記載の接着方法。
[6]
基材が金属、ガラス、セラミック又は合成樹脂である[1]〜[5]のいずれかに記載の接着方法。
[7]
上記光照射後に10分間〜48時間静置して基材に上記ゴム硬化物を接着させる[1]〜[6]のいずれかに記載の接着方法。
なお、本発明において、「直鎖状ポリフルオロ化合物」又は「直鎖状パーフルオロポリエーテル構造」とは、主鎖のパーフルオロポリエーテル構造を構成する2価のフルオロオキシアルキレン繰り返し単位同士が直鎖状に連結していることを意味するものであって、個々の2価フルオロオキシアルキレン単位それ自体は、例えば、−[CF2CF(CF3)O]−などの分岐構造を有するフルオロオキシアルキレン単位であってもよい。
本発明の接着方法によれば、光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物が紫外線等の光照射により活性化してヒドロシリル化付加反応を進行させることができるため、低温且つ短時間で光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の硬化物(フルオロポリエーテル系エラストマー)を基材に接着させることができる。
本発明の実施例において、調製例1、2の組成物の光硬化性を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の基材に光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の硬化物を接着させる方法は、基材表面を予め酸素を含む雰囲気中でプラズマ照射することにより該基材表面を改質させ、その表面上に光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を塗布し、該組成物を光照射して硬化させた後、10〜120℃で静置する工程を含むことを特徴とする。
まず、本発明に用いる光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物について説明する。
光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物
本発明に用いる光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物は、次の(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分を含有するものが好ましい。
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中に直鎖状のパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物、
(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有する含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン、
(C)光活性型ヒドロシリル化反応触媒、
(D)疎水性シリカ粉末、
及び
(E)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基をそれぞれ1個以上有する(B)成分以外のオルガノポリシロキサン。
〔(A)成分〕
光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物における(A)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中に直鎖状のパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物であり、下記式(1)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物が好ましい。
CH2=CH−(X)a−Rf1−(X’)a−CH=CH2 (1)
[式(1)中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−〔ここで、Yは−CH2−、−Si(CH32CH2CH2CH2−、−Si(CH3)(CH=CH2)CH2CH2CH2−、−Si(CH=CH22CH2CH2CH2−又は下記構造式(Z)
Figure 0006512120
(式(Z)中、R3、R4はそれぞれ独立に−CH3又は−CH=CH2である。)
で示されるo−、m−又はp−シリルフェニレン基であり、R1は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である。〕であり、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR2−Y’−〔ここで、Y’は−CH2−、−CH2CH2CH2Si(CH32−、−CH2CH2CH2Si(CH3)(CH=CH2)−、−CH2CH2CH2Si(CH=CH22−又は下記構造式(Z’)
Figure 0006512120
(式(Z’)中、R3’、R4’はそれぞれ独立に−CH3又は−CH=CH2である。)
で示されるo−、m−又はp−シリルフェニレン基であり、R2は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である。〕である。aは独立に0又は1である。Rf1は下記式(i)又は(ii)
Figure 0006512120
(式(i)中、p及びqはそれぞれ0又は1〜150の整数であって、且つpとqの和の平均は2〜200である。rは0〜6の整数であり、tは2又は3である。)
Figure 0006512120
(式(ii)中、uは1〜200の整数であり、vは1〜50の整数であり、tは2又は3である。)
で表される、好適には分岐構造を有する2価フルオロオキシアルキレン単位である−[CF2CF(CF3)O]−を含有する、2価の直鎖状パーフルオロポリエーテル基である。]
ここで、R1及びR2としては、水素原子、炭素数1〜12、特に1〜10の非置換若しくは置換の1価炭化水素基が好ましく、該1価炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素等のハロゲン原子で置換した置換1価炭化水素基などが好ましいものとして挙げられる。
上記式(1)中のRf1は2価の直鎖状パーフルオロポリエーテル基であり、下記式(i)又は(ii)で表される、好適にはパーフルオロオキシアルキレン繰り返し構造中に分岐を有する2価フルオロオキシアルキレン単位である−[CF2CF(CF3)O]−を含有するものである。
Figure 0006512120
(式(i)中、p及びqはそれぞれ0又は1〜150の整数、好ましくは10〜150の整数であって、且つpとqの和の平均は2〜200、好ましくは20〜160である。また、rは0〜6の整数、好ましくは0〜4の整数であり、tは2又は3である。)
Figure 0006512120
(式(ii)中、uは1〜200の整数、好ましくは20〜160の整数であり、vは1〜50の整数、好ましくは5〜40の整数であり、tは2又は3である。)
Rf1基の好ましい例としては、例えば、下記の3つのものが挙げられる。この内、特に1番目の式の構造の2価の基が好ましい。
Figure 0006512120
(式中、p1及びq1はそれぞれ1〜150の整数であり、p1+q1(平均)=2〜200である。Lは2〜6の整数である。)
Figure 0006512120
(式中、p2及びq2はそれぞれ1〜150の整数であり、p2+q2(平均)=2〜200である。Lは2〜6の整数である。)
Figure 0006512120
(式中、u1は1〜200の整数であり、v1は1〜50の整数である。)
(A)成分の好ましい例としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0006512120
[式(2)中、X1は−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR11−CO−(Yは前記と同じものを示し、R11は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基である。)を示し、X1’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR12−Y’−(R12は上記R11と同じものを示し、Y’は前記と同じものを示す。)で表される基であり、aは独立に0又は1であり、Lは2〜6の整数であり、p3及びq3はそれぞれ1〜150の整数であり、p3+q3(平均)=2〜200である。]
式(1)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
Figure 0006512120
(式中、p’及びq’はそれぞれ1〜150の整数であり、p’+q’=6〜200を満足する数を示す。)
Figure 0006512120
(式中、p’及びq’はそれぞれ1〜150の整数であり、p’+q’=6〜200を満足する数を示す。)
Figure 0006512120
(式中、p’及びq’はそれぞれ1〜150の整数であり、p’+q’=6〜200を満足する数を示す。)
Figure 0006512120
(式中、p”及びq”はそれぞれ1〜150の整数であり、p”+q”=2〜200を満足する数を示す。)
上記式(1)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物に含まれるアルケニル基量は0.005〜0.050モル/100gが好ましく、更に好ましくは0.007〜0.040モル/100gである。直鎖状フルオロポリエーテル化合物に含まれるアルケニル基量が少なすぎると得られる硬化物の物理的強度が低下したり、硬化物が得られなくなったりする場合がある。直鎖状フルオロポリエーテル化合物に含まれるアルケニル基量が多すぎると得られる硬化物が脆く割れ易い場合がある。
なお、上記式(1)の直鎖状フルオロポリエーテル化合物の粘度(23℃)は、100〜100,000mPa・s、より好ましくは500〜50,000mPa・s、更に好ましくは1,000〜20,000mPa・sの範囲内にあることが、光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物をシール、ポッティング、コーティング、含浸等に使用する際に、得られる硬化物においても適当な物理的特性を有するので望ましい。式(1)の直鎖状フルオロポリエーテル化合物は用途に応じて最も適切な粘度のものを選択する。また、低粘度のポリマーと高粘度のポリマーを混合し、所望の粘度に調整して用いることも可能である。
なお、本発明において、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により測定することができるが、特に、上記式(1)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物の粘度(23℃)は、JIS K7117−1に準拠して測定することが好ましい。また、主鎖のパーフルオロポリエーテル構造を構成するパーフルオロオキシアルキレン単位の繰り返し数などで反映される直鎖状フルオロポリエーテル化合物の重合度(又は分子量)は、例えば、フッ素系溶剤を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
更に、上記式(1)の直鎖状フルオロポリエーテル化合物を目的に応じた所望の数平均分子量又は重量平均分子量に調節して使用するため、予め上記したような直鎖状フルオロポリエーテル化合物を分子内にヒドロシリル基(Si−H基)を2個含有する有機ケイ素化合物と通常の方法及び条件でヒドロシリル化反応させ、鎖長延長した生成物を(A)成分として使用することも可能である。
これらの直鎖状フルオロポリエーテル化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
(A)成分の1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中に直鎖状のパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物の組成物中の配合量は、50〜99質量%とすることが好ましく、特に70〜95質量%とすることが好ましく、更に80〜95質量%とすることが好ましい。
〔(B)成分〕
(B)成分は、1分子中に含フッ素有機基を1個以上、好ましくは1〜10個有し、且つケイ素原子に直結した水素原子(即ち、Si−Hで示されるヒドロシリル基)を2個以上、好ましくは3〜50個有する含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンである。(B)成分は、上記(A)成分の架橋剤及び/又は鎖長延長剤として機能するものであり、また、(A)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性等の観点から、含フッ素有機基として、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロオキシアルキル基、2価のパーフルオロアルキレン基、又は2価のパーフルオロオキシアルキレン基等のフッ素含有基を有するものが好ましい。
なお、(B)成分は、エポキシ基及びトリアルコキシシリル基を含有しないものであることから、後述する(E)成分とは相違する。
この1価又は2価の含フッ素有機基としては、例えば下記式で表されるパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキレン基及びパーフルオロオキシアルキレン基等を挙げることができる。
g2g+1
−Cg2g
(式中、gは1〜20の整数、好ましくは2〜10の整数である。)
Figure 0006512120
(式中、fは1〜200の整数、好ましくは1〜100の整数であり、hは1〜3の整数である。)
Figure 0006512120
(式中、i及びjはそれぞれ1以上の整数、好ましくは1〜100の整数であり、i+jの平均は2〜200、好ましくは2〜100である。)
−(CF2O)d−(CF2CF2O)e−CF2
(式中、d及びeはそれぞれ1〜50の整数、好ましくは1〜40の整数である。)
また、これらパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキレン基又はパーフルオロオキシアルキレン基とケイ素原子とは2価の連結基により繋がれていることが好ましく、該2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基及びそれらの組み合わせ、若しくはこれらの基にエーテル結合酸素原子、アミド結合、カルボニル結合、エステル結合、ジオルガノシリレン基等を介在させたものであってもよく、例えば、以下の炭素数2〜12の2価の連結基等が挙げられるが、これらに限定されない。
−CH2CH2−、
−CH2CH2CH2−、
−CH2CH2CH2OCH2−、
−CH2CH2CH2−NH−CO−、
−CH2CH2CH2−N(Ph)−CO−、
−CH2CH2CH2−N(CH3)−CO−、
−CH2CH2CH2−N(CH2CH3)−CO−、
−CH2CH2−Si(CH32−Ph’−N(CH3)−CO−、
−CH2CH2CH2−Si(CH32−Ph’−N(CH3)−CO−、
−CH2CH2CH2−O−CO−
(式中、Phはフェニル基であり、Ph’はフェニレン基である。)
また、この(B)成分の含フッ素オルガノ水素シロキサンにおける上記1価又は2価の含フッ素有機基及びケイ素原子に結合した水素原子以外のケイ素原子に結合した1価の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子、臭素原子、塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基で置換された、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、シアノエチル基等の炭素数1〜20、好ましくは1〜12の非置換又はハロゲン若しくはシアノ基置換の1価炭化水素基が挙げられる。
(B)成分の含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンとしては、環状、鎖状、三次元網状及びそれらの組み合わせのいずれでもよい。この含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンのケイ素原子数は、特に制限されるものではないが、通常2〜60、好ましくは3〜30程度である。
このような1価又は2価の含フッ素有機基及びケイ素原子結合水素原子を有する(B)成分の含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンとしては、例えば次の化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、下記式において、Meはメチル基を示し、Phはフェニル基を示す。
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
上記(B)成分の含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンに含まれるSi−H基量は、0.00050〜0.01000モル/gが好ましく、更に好ましくは0.00100〜0.00800モル/gである。含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンに含まれるSi−H基量が少なすぎると架橋密度が不十分となり、得られる硬化物の物理的特性が低下する場合がある。また、含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンに含まれるSi−H基量が多すぎると硬化時に発泡したり、得られる硬化物の物理的特性が経時で大きく変化したりする場合がある。
これらの含フッ素オルガノ水素ポリシロキサンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
上記(B)成分の配合量は、(A)成分中に含まれるビニル基、アリル基、シクロアルケニル基等のアルケニル基1モルに対し、(B)成分中のヒドロシリル基、即ちSi−H基が0.5〜3.0モルとなる量が好ましく、特に0.8〜2.0モルとなる量が好ましい。ヒドロシリル基(≡Si−H)が少なすぎると、架橋密度が不十分となる結果、硬化物が得られないことがある。また、ヒドロシリル基(≡Si−H)が多すぎると硬化時に発泡することがある。
〔(C)成分〕
(C)成分は、光活性型ヒドロシリル化反応触媒である。光活性型ヒドロシリル化反応触媒は、光、特に300〜400nmの紫外線の照射によって活性化され、(A)成分中のアルケニル基と、(B)成分中のヒドロシリル基との付加反応を促進する触媒である。この光活性型ヒドロシリル化反応触媒は、主に白金族系金属触媒及びニッケル系金属触媒が挙げられ、白金族系金属触媒としては白金系、パラジウム系、ロジウム系の金属錯体化合物、ニッケル系金属触媒としてはニッケル系、鉄系、コバルト系の金属錯体化合物が挙げられる。中でも白金系金属錯体化合物は、比較的入手し易く且つ良好な触媒活性を示すため好ましい。
光活性型の白金系金属錯体化合物としては、例えば、(η5−シクロペンタジエニル)トリ(σ−アルキル)白金錯体化合物やβ−ジケトナト白金錯体化合物などがあり、具体的には、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(1,2,3,4,5−ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルエチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルアセチル白金(IV)、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(メトキシカルボニルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)トリメチルシクロペンタジエニル白金(IV)、トリメチル(アセチルアセトナト)白金(IV)、トリメチル(3,5−ヘプタンジオネート)白金(IV)、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金(IV)、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金(II)、ビス(2,4−へキサンジオナト)白金(II)、ビス(2,4−へプタンジオナト)白金(II)、ビス(3,5−ヘプタンジオナト)白金(II)、ビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオナト)白金(II)、ビス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)白金(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)白金(II)などが挙げられる。
これらの触媒の使用にあたっては、それが固体触媒であるときには固体状で使用することも可能であるが、より均一な硬化物を得るためには適切な溶剤に溶解したものを(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物に相溶させて使用することが好ましい。
(C)成分の配合量は、(A)成分の質量に対して金属原子(白金族金属原子)の質量換算で0.1〜500ppmが好ましく、特に1〜100ppmが好ましい。配合量が少なすぎると、十分な光硬化性が得られず、一方多すぎると得られる硬化物の耐熱性に悪影響を及ぼす可能性がある。
〔(D)成分〕
(D)成分は、疎水性シリカ粉末であり、光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物から得られる硬化物に適切な物理的強度を付与すると同時に、後述する(E)成分のオルガノポリシロキサンを該組成物中に均一に分散させる作用を有するものである。この(D)成分の疎水性シリカ粉末としては、シリコーンゴム用充填剤として公知のBET比表面積が50m2/g以上、特に50〜400m2/gの微粉末シリカを疎水化処理したものが好適である。
微粉末シリカとしては、煙霧質シリカ(ヒュームドシリカ又は乾式シリカ)、沈降性シリカ(湿式シリカ)、コロイドシリカ等が例示されるが、これらの中では煙霧質シリカが最も好ましい。
BET比表面積が50m2/g未満の場合は、得られる硬化物の物理的強度が不十分であり、また、(E)成分が均一に分散しないことがある。400m2/gを超えると混練作業が困難となり、(D)成分の分散が不均一になる場合がある。なお、本発明におけるBET比表面積は、DIN 66131に準拠して測定できる。
また、上記微粉末シリカの疎水化処理剤としては、オルガノクロロシラン、オルガノジシラザン、環状オルガノポリシラザン、線状オルガノポリシロキサン等が例示されるが、これらの中ではオルガノクロロシラン、オルガノジシラザン、環状オルガノポリシラザンが好ましい。
この(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.5〜30質量部が好ましく、1〜25質量部がより好ましい。配合量が0.5質量部未満の場合には、得られる硬化物の物理的特性が低下し、且つ接着性が不安定になることがある。一方、30質量部を超えると組成物の流動性が悪くなり、また光による硬化性も著しく低下することがある。
〔(E)成分〕
(E)成分である接着性官能性基を有するオルガノポリシロキサンは、接着性を向上させるための接着剤として配合するものである。このようなオルガノポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基をそれぞれ1個以上有するオルガノポリシロキサンであり、好ましくは更に加えてケイ素原子に結合した炭素原子又は炭素原子と酸素原子を含む2価の連結基を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又は1価のパーフルオロオキシアルキル基を1個以上有するオルガノポリシロキサンである。なお、(E)成分は、エポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基を含有する点で(B)成分と相違する。
このようなオルガノポリシロキサンのシロキサン骨格は、環状、鎖状、分岐状などのいずれでもよく、またこれらの混合形態でもよい。
具体的には、下記平均組成式で表わされるものを用いることができる。
Figure 0006512120
(式中、R5は独立に非置換又はハロゲン置換の1価炭化水素基であり、A、Bは下記に示す。wは0≦w≦100、xは1≦x≦100、yは1≦y≦100、zは0≦z≦100を示す。)
5の非置換又はハロゲン置換の1価炭化水素基としては、炭素数1〜10、特に1〜8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素等のハロゲン原子で置換した置換1価炭化水素基などが挙げられ、この中で特にメチル基が好ましい。
wは0≦w≦20が好ましく、xは1≦x≦20が好ましく、yは1≦y≦20が好ましく、zは1≦z≦20が好ましく、3≦w+x+y+z≦50が好ましい。
Aは炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基を示し、具体的には、下記の基を挙げることができる。
Figure 0006512120
[式中、R6は酸素原子が介在してもよい炭素数1〜10、特に1〜5の2価炭化水素基(アルキレン基、シクロアルキレン基等)を示す。]
−R7−Si(OR83
[式中、R7は炭素数1〜10、特に1〜4の2価炭化水素基(アルキレン基等)を示し、R8は炭素数1〜8、特に1〜4の1価炭化水素基(アルキル基等)を示す。]
Figure 0006512120
[式中、R9は水素原子又はメチル基を示し、R10は炭素数1〜8、特に1〜4の1価炭化水素基(アルキル基等)を示し、kは2〜10の整数を示す。]
Bは、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を含む2価の連結基を介してケイ素原子に結合した1価のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロオキシアルキル基を示す。1価のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロオキシアルキル基の例としては、例えば、下記式で表されるもの等を挙げることができる。
g’2g’+1
(式中、g’は1〜20、好ましくは2〜10の整数である。)
F−[CF(CF3)CF2O]f’−Ch’2h’
(式中、f’は2〜200、好ましくは2〜100の整数であり、h’は1〜3の整数である。)
炭素原子又は炭素原子と酸素原子を含む2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基及びそれらの組み合わせ、或いはこれらの基にエーテル結合酸素原子、アミド結合、カルボニル結合等を介在させたものであってもよく、例えば、
−CH2CH2−、
−CH2CH2CH2−、
−CH2CH2CH2OCH2−、
−CH2CH2CH2−NH−CO−、
−CH2CH2CH2−N(CH3)−CO−、
−CH2CH2CH2−N(Ph)−CO−
(但し、Phはフェニル基である。)
等の炭素数2〜12の2価の連結基が挙げられる。
これらのオルガノポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(Si−H基)を3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに、ビニル基、アリル基等の脂肪族不飽和基とエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基とを含有する化合物、更に必要により脂肪族不飽和基とパーフルオロアルキル基又はパーフルオロオキシアルキル基とを含有する化合物を、常法に従って部分付加反応させることにより得ることができる。なお、上記脂肪族不飽和基の数は、Si−H基の数より少ない必要がある。
このオルガノポリシロキサンの製造に際しては、反応終了後に目的物質を単離してもよいが、未反応物及び付加反応触媒を除去しただけの混合物を使用することもできる。
(E)成分のオルガノポリシロキサンとして、具体的には、下記の構造式で示されるものが例示される。なお、下記式において、Meはメチル基であり、Phはフェニル基である。
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
(w1、y1、z1は正の整数、x1は0以上の整数。)
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
(w1、y1、z1は正の整数、x1は0以上の整数。)
Figure 0006512120
(E)成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(E)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.05〜5.0質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。0.05質量部未満の場合にはこれを配合する効果が得られず、5.0質量部を超えると組成物の流動性が悪くなり、得られる硬化物の物理的強度が低下し、また硬化性を阻害する可能性がある。
また、組成物全体中に含まれるケイ素原子結合アルケニル基の合計に対する組成物全体中に含まれるヒドロシリル基(Si−H基)の合計のモル比、特には(A)成分のケイ素原子結合アルケニル基に対する(B)成分及び(E)成分中のSi−H基の合計のモル比(Si−H基/アルケニル基)が、0.5〜3.0モル/モル、特に0.8〜2.0モル/モルとなる量であることが好ましい。組成物全体中に含まれるヒドロシリル基(Si−H基)の量が上記モル比よりも少ないと、架橋密度が不十分となる結果、硬化物が得られなかったり、また、所望の接着性が得られない場合があり、逆にこのモル比より多いと、脱水素反応による発泡が多くなり、表面が平滑な硬化物を得られない場合がある。
本発明に用いる光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物には、更に、任意成分として、必要に応じて適宜、以下の成分を添加してもよい。
〔(F)成分〕
(F)成分は、ヒドロシリル化反応の反応制御剤である。ここで、反応制御剤の例としては、例えば、1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノールなどのアセチレンアルコールや、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のアセチレン化合物、以下の構造式で示される含フッ素アセチレンアルコール化合物、ポリメチルビニルシロキサン環式化合物及び有機リン化合物などが挙げられる。
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
これら反応制御剤は、その化学構造によって制御能力が異なるため、添加量についてはそれぞれ最適な量に調整すべきである。一般的に、制御剤の添加量が少なすぎると室温での長期保存安定性が得られず、多すぎると硬化性が鈍くなり、十分な硬化性が得られなくなる可能性がある。
〔(G)成分〕
(G)成分であるカルボン酸無水物は、これを配合することによって(E)成分の接着付与能力を向上させ、光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の接着性の発現を促進させるためのものである。このような成分としては、エポキシ樹脂用の硬化剤として使用されているものはすべて包含され、室温で固体状でも液体状でもよく、トリアルコキシシリル基を含んでいてもよい。
具体的には下記の構造式で示されるものが例示される。なお、これらの化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
Figure 0006512120
(G)成分を配合する場合、その配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.1〜2.0質量部が好ましく、特に0.1〜1.0質量部が好ましい。(G)成分の配合量が0.1質量部未満の場合には十分な接着促進効果が得られない。(G)成分の配合量が2.0質量部を超えると組成物の保存性が悪くなり、得られる硬化物の物理的強度が低下し、且つ経時変化することが多いので好ましくない。
〔その他の成分〕
光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物においては、その実用性を高めるために上記の成分以外にも、可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤、無機充填剤、接着促進剤、シランカップリング剤等の各種配合剤を必要に応じて添加することができる。これら添加剤の配合量は、本発明の目的を損なわない範囲、組成物の特性及び得られる硬化物の物性を損なわない限りにおいて任意である。
可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤として、下記式(3)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物及び/又は下記式(4)、(5)若しくは(6)で表される直鎖状又は側鎖を有するポリフルオロ化合物を併用することができる。
Rf2−(X’)aCH=CH2 (3)
[式中、X’は上記(A)成分の式(1)の化合物中のX’の定義と同じであり、aは0又は1であり、Rf2は、下記式(iii)である。
Figure 0006512120
(式中、a1は1以上の整数、好ましくは2〜100の整数であり、b1は1〜3の整数であり、且つa1は、好適には、上記(A)成分のRf1基に関するp+q(平均)及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和よりも小さい。)]
1−(CF2CF2CF2O)c1−D2 (4)
(式中、D1及びD2は、それぞれ独立に式:Cs2s+1−(sは0〜3)で表される基であり、c1は1〜200の整数、好ましくは2〜100の整数であり、且つ、c1は、好適には、前記(A)成分のRf1基に関するp+q(平均)及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和よりも小さい。)
3−O−(CF2O)d1(CF2CF2O)e1−D3 (5)
(式中、D3は式:Cs2s+1−(sは0〜3)で表される基であり、d1及びe1はそれぞれ1〜200の整数、好ましくは1〜100の整数であり、且つ、d1とe1の和は、好適には、前記(A)成分のRf1基に関するp+q(平均)及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和以下である。)
3−O−(CF2O)f1[CF2CF(CF3)O]g1−D3 (6)
(式中、D3は上記と同じであり、f1及びg1はそれぞれ1〜200の整数、好ましくは1〜100の整数であり、且つ、f1とg1の和は、好適には、前記(A)成分のRf1基に関するp+q(平均)及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和以下である。)
上記式(3)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる(なお、下記a1’は、上記a1の要件を満足するものである。)。
Figure 0006512120
(式中、a1’は1〜100の整数である。)
上記式(4)、(5)若しくは(6)で表される直鎖状又は側鎖を有するポリフルオロ化合物の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる(なお、下記c1’、d1’とe1’の和、及びf1’とg1’の和は、上記c1、d1とe1の和、及びf1とg1の和の要件を満足するものである。)。
F−(CF2CF2CF2O)c1’−CF2CF3
CF3−[(OCF2CF2e1’(OCF2d1’]−O−CF3
CF3−[(OCF(CF3)CF2g1’(OCF2f1’]−O−CF3
(式中、c1’は1〜200の整数であり、d1’は1〜200の整数、e1’は1〜200の整数で、d1’+e1’=2〜201、f1’は1〜200の整数、g1’は1〜200の整数で、f1’+g1’=2〜201である。)
また、上記式(3)〜(6)の化合物の回転粘度計による粘度(23℃)は、上記式(1)の直鎖状フルオロポリエーテル化合物と同様の理由により、5〜100,000mPa・sの範囲であることが望ましい。
上記式(3)〜(6)の化合物を配合する場合、その配合量は、光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物中の(A)成分100質量部に対して1〜300質量部が好ましく、特に50〜250質量部が好ましい。
無機充填剤として、例えば、石英粉末、溶融石英粉末、珪藻土、炭酸カルシウム等の補強性又は準補強性充填剤、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、アルミン酸コバルト等の無機顔料、酸化鉄、カーボンブラック、酸化セリウム、水酸化セリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン等の耐熱向上剤、アルミナ、窒化硼素、炭化ケイ素、金属粉末等の熱伝導性付与剤、カーボンブラック、銀粉末、導電性亜鉛華等の導電性付与剤等を添加することができる。
また、チタン酸エステル等の接着促進剤、エポキシ基含有シラン等のシランカップリング剤を添加することができる。
光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物は、上記した(A)〜(E)成分と、必要によりその他の任意成分とを、プラネタリーミキサー、ロスミキサー、ホバートミキサー等の混合装置、必要に応じてニーダー、三本ロール等の混練装置を使用して均一に混合することによって製造することができる。
次に、基材と光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の硬化物との接着方法について説明する。
基材と光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の硬化物との接着方法
本発明の基材に光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の硬化物(含フッ素エラストマー)を接着させる方法は、以下3つの工程よりなる。つまり、
1.まず、基材表面をプラズマ照射により改質させる工程、
2.次に、表面改質を行った基材上に上記光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を塗布し、光硬化させる工程、
3.最後に、上記得られた含フッ素エラストマーを一定時間放置することで、プライマー皮膜を介して含フッ素エラストマーを基材に接着させる工程
である。以下、それぞれの工程に関して詳述する。
1.基材表面を改質させる工程
まず、基材表面を酸素を含む雰囲気中でのプラズマ照射により改質させる。本発明における基材の表面改質方法は、酸素を含む雰囲気中にてプラズマ照射により行われる。なお、プラズマ照射による基材の表面改質とは、一般的に、金属基材やガラス、セラミック等の無機基材に対しては、ゴミや脂分などの有機物を分解・クリーニングする効果が、有機樹脂製の基材に対しては、上記のクリーニング効果に加え、更に、該樹脂表面を分解して基材の表面に凹凸を与えたり、カルボニル基などの極性基を生やしたりする効果(親水性化効果)があると考えられている。
ここで、本発明で用いられる基材は特に限定されないが、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属、ガラス、セラミック等の無機材料、及びPPS、PBT、PET、ナイロン等の合成樹脂(有機樹脂)などが挙げられる。
また、表面改質の効果を高めるため、上記プラズマ照射を実施する前に、基材表面を有機溶剤等による脱脂処理やプリベーク処理等を行うことが好ましい。
本発明で実施する基材への表面改質方法について説明する。
プラズマ処理方法
本発明に用いるプラズマ処理の方法については、大気圧、低圧いずれのプラズマ処理を用いてもよいが、該プラズマ処理は少なくとも酸素を含む雰囲気中で行うことが必要であり、好ましくは空気、より好ましくは酸素を含むガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス等)の雰囲気中でプラズマを発生させ表面改質を行うとよい。
大気圧プラズマ処理を行う場合、照射距離は3mm〜10cm、好ましくは5mm〜5cmである。照射距離が近すぎると、処理面積が狭まることによる作業性低下や基材の劣化を招く可能性がある等の点から好ましくなく、距離が遠すぎると、改質効率が低下し、所望の改質効果が得られなくなる可能性があるため好ましくない。
また、大気圧プラズマの照射時間は1〜120秒、好ましくは5〜60秒である。照射時間がこれよりも短いと所望の改質効果が得られない可能性があり、逆に長いと作業性低下や基材の劣化を招く可能性がある等の理由から好ましくない。
低圧プラズマ処理を行う場合、50〜500Wの高周波出力で5〜120秒、好ましくは100〜300Wで10〜60秒照射を行えばよい。これよりも低出力、短時間での照射では、所望の改質効果が得られない可能性があり、これよりも高出力、長時間の照射では作業性の低下や基材の劣化等を招く可能性があるため好ましくない。
2.光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を光硬化させる工程
次に、上記工程1で得られた表面改質を行った基材表面上に、上記光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を塗布し、該組成物に光照射して硬化させることにより、含フッ素エラストマーを得る。
ここで、硬化の際、照射する光は、近紫外線(以下、単に、紫外線と記載する場合がある。)であることが好ましく、特には、発光スペクトルにおける最大ピーク波長が300〜400nmの領域にあり、且つ300nmより短い波長領域にある各波長の放射照度は前記最大ピーク波長の放射照度の5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、つまり0に近ければ近いほど好ましい。300nmより短い波長領域にあり、放射照度が前記最大ピーク波長の放射照度の5%より大きい波長を有する光を照射すると、ポリマー末端基の分解が起きたり、触媒の一部が分解したりするなどして、十分な硬化物を得ることができない可能性がある。
光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を硬化させて含フッ素エラストマーを得るのに用いる活性光線種は特に限定はされないが、上記波長の紫外線が好ましい。紫外線照射量(照度)は、積算光量として好ましくは1,000〜50,000mJ/cm2、より好ましくは2,000〜20,000mJ/cm2、更に好ましくは5,000〜10,000mJ/cm2とすることが良好な硬化性を得る上で望ましい。紫外線照射量(照度)が上記範囲未満の場合、組成物中の光活性型ヒドロシリル化反応触媒を活性化するのに十分なエネルギーが得られず、十分な物性(機械的強度等)を有する硬化物(含フッ素エラストマー)を得ることができない可能性があり、一方、紫外線照射量(照度)が上記範囲を超える場合、組成物に必要以上のエネルギーが照射され、ポリマー末端基の分解が起こったり、触媒の一部が失活したりするなどして、十分な硬化物を得ることができない可能性がある。
紫外線照射は複数の発光スペクトルを有する光であっても、単一の発光スペクトルを有する光であってもよい。また、単一の発光スペクトルは300〜400nmの領域にブロードなスペクトルを有するものであってもよい。単一の発光スペクトルを有する光は、300〜400nm、好ましくは350〜380nmの範囲にピーク(即ち、最大ピーク波長)を有する光である。このような光を照射する光源としては、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や、紫外線発光半導体レーザー等の紫外線発光半導体素子光源が挙げられる。
複数の発光スペクトルを有する光を照射する光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、ナトリウムランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等のランプ等、窒素等の気体レーザー、有機色素溶液の液体レーザー、無機単結晶に希土類イオンを含有させた固体レーザー等が挙げられる。
前記光が発光スペクトルにおいて300nmより短い波長領域にピークを有する場合、若しくは300nmより短い波長領域に前記発光スペクトルにおける最大ピーク波長の放射照度の5%より大きい放射照度を有する波長が存在する場合(例えば、発光スペクトルが広域波長領域に渡ってブロードである場合)には、光学フィルターにより300nmより短い波長領域にある波長の光を除去することが好ましい。これにより、300nmより短い波長領域にある各波長の放射照度を最大ピーク波長の放射照度の5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、更に好ましくは0%にすることができる。なお、発光スペクトルにおいて300〜400nmの波長領域に複数のピークが存在する場合には、その中で最大の吸光度を示すピーク波長を最大ピーク波長とする。光学フィルターは300nmより短い波長をカットするものであれば特に制限されず公知のものを使用すればよい。例えば365nmバンドパスフィルター等を使用することができる。なお、紫外線の照度、スペクトル分布は分光放射照度計、例えばUSR−45D(ウシオ電機)にて測定することができる。
光照射装置としては特に限定されないが、例えば、スポット式照射装置、面式照射装置、ライン式照射装置、コンベア式照射装置等の照射装置が使用できる。
光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を硬化させる際、光照射時間は、用いる光の照度によるが、例えば1〜300秒、好ましくは10〜200秒、より好ましくは30〜150秒であり、光照射の1〜60分後、特には5〜30分後には組成物は流動性を失いゴム弾性体を得ることができる。
また光硬化の際の環境温度は、硬化時間に影響を与える。つまり、低い温度では硬化完了に要する時間がより長く、逆に高い温度ではより短くなる。光硬化の特長を活かす意味で、硬化の際の環境温度は10〜120℃が好ましい。それより低いと、硬化に長時間を要するため作業性の面から好ましくなく、逆にそれより高いと、基材によっては熱劣化(熱変形・熱変色)を引き起こす可能性があるため好ましくない。
本発明において、光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の、表面改質処理を行った基材への塗布方法は、組成物を基材上に塗布した後、上記方法により光照射を行い硬化させてもよく、また別途光照射を行った組成物を、硬化するまでの間に基材上に塗布する方法でもよい。
ここで、上記組成物の塗布方法としては特に限定されないが、ポッティングやバーコーター塗布、ロール塗布、スピンコートなどが例として挙げられる。また、上記組成物の塗布量は特に限定されないが、塗布厚みが1μm〜10mm、特に10μm〜5mmとなる量であることが好ましい。
3.硬化した含フッ素エラストマーを基材に接着させる工程
上記、基材上で硬化した含フッ素エラストマーを所定時間以上静置することで、基材に含フッ素エラストマーを接着させることができる。ここで十分な時間静置しないと、ゴム弾性を有する硬化物は得られるものの、基材との接着性が不十分になる場合がある。
その際、静置する環境温度は10〜120℃であることが必要である。この温度範囲より低いと接着性の発現により長時間を要することになり、逆にこの温度範囲より高いと基材によっては熱劣化(熱変形・熱変色)を引き起こす可能性があるため好ましくない。
また静置する時間については、環境温度によって左右されるため特に限定されず、適宜選択すればよいが、5分間〜7日間が好ましく、更に10分間〜48時間が好ましく、特に6時間〜48時間が好ましい。
本発明の接着方法は、光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の硬化物を自動車関連部品、各種電気・電子部品などに接着させる方法として有用である。例えば、自動車の制御系に使用される各種圧力センサー、ガス濃度検知器、温度センサーなどの検知器・センサーの接着シール剤や保護用コーティング剤、ポッティング剤、また各種ガス、温水、薬品などに曝されるセンサーなどの保護用封止剤、インクジェットプリンター用の接着剤、プリンターヘッド用の接着剤・封止剤、レーザープリンターや複写装置のロールやベルトのコーティング剤、各種回路基板の接着シール剤、コーティング剤、ポッティング剤などとして、これらの部品に光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の硬化物を接着するのに有用な方法である。
以下、調製例、参考例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示す。Meはメチル基を示し、Viはビニル基を示す。また、分子量はGPC分析におけるポリスチレン換算の数平均分子量を示す。粘度は23℃における測定値を示す(JIS K7117−1に準拠)。
ベースコンパウンドの調製
下記式(7)で示されるポリマー(粘度11,000mPa・s、数平均分子量17,500、ビニル基量0.012モル/100g)100部をプラネタリーミキサー内に仕込み、内温を50〜100℃に保持しながら、ジメチルジクロロシランで表面処理された煙霧質シリカ(BET比表面積110m2/g)10部を分割添加した。その後、加熱を停止して1時間減圧下(ゲージ圧;−0.093MPa)で混練した。引き続き混練しながら装置を加熱し、内温が130℃に達してから130〜160℃に保持しながら1時間減圧下(ゲージ圧;−0.093MPa)で熱処理した。次に、内容物を40℃以下に冷却後、内容物を取り出し、三本ロールを2回通してベースコンパウンドを得た。
Figure 0006512120
(m+n≒90)
光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の調製
[調製例1]
上記ベースコンパウンド110部に対して上記式(7)で示されるポリマー100部、下記式(10)で示されるカルボン酸無水物0.5部をプラネタリーミキサー内に仕込み、均一になるまで混合した。これに(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)の1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液(白金濃度3.0質量%)0.11部、1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンのトルエン溶液(5.0質量%)0.06部を添加し、均一になるまで混合した。次に下記式(8)で示される含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン3.0部(Si−H基量0.0050モル/g)、下記式(9)で示される含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン2.6部(Si−H基量0.00683モル/g)、下記式(11)で示される接着付与剤4.4部、下記式(12)で示されるエポキシ基含有シラン化合物0.2部を順次添加し、均一になるように混合した。その後、脱泡操作を行うことにより組成物を調製した。
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
Figure 0006512120
[調製例2]
上記ベースコンパウンド70.0部に、上記式(7)で示されるポリマー63.8部をプラネタリーミキサー内に仕込み、均一になるまで混合した。これに(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)の1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液(白金濃度3.0質量%)0.07部、1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンのトルエン溶液(5.0質量%)0.04部を添加し、均一になるまで混合した。次に上記式(8)で示される含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン1.6部、上記式(9)で示される含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン1.6部、下記式(13)で示される接着付与剤2.5部、下記式(14)で示される接着付与剤0.6部を順次添加し、均一になるように混合した。その後、脱泡操作を行うことにより組成物を調製した。
Figure 0006512120
Figure 0006512120
[調製例3]
上記調製例1において、光活性型ヒドロシリル化反応触媒;(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)の1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液(白金濃度3.0質量%)0.11部の代わりに、非光活性型ヒドロシリル化反応触媒;白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のエタノール溶液(白金濃度3.0質量%)0.11部に変更した以外は同様にして組成物を調製した。
光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の保存安定性
[参考例1、2]
上記調製例1、2より得られた組成物の遮光中23℃での保存安定性を確認した。その際、保存安定性の評価方法としては、JIS K7117−1に準拠し、TV−10U型回転粘度計(東機産業(株)製)による23℃における初期粘度と23℃×2週間後の粘度変化より評価を行った。その結果を調製例1、2の組成物の組成と共に表1に示す。
[比較参考例1]
上記調製例3より得られた組成物において、上記参考例1、2と同様にして保存安定性を確認した。その結果を調製例3の組成物の組成と共に表1に示す。
Figure 0006512120
表1の結果より、光活性型ヒドロシリル化反応触媒を用いた本参考例1、2の組成物は、良好な保存安定性が得られることが確認された。
光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物の光硬化性評価
[参考例3]
上記調製例1より得られた組成物を、25℃、8mmφのアルミニウム基材上、試料厚み0.5mmで塗布し、UV照射を行い、25℃での弾性率の経時変化を測定した。測定にはTAインスツルメント社製アレスG2を使用し、UV照射にはLumen Dynamics社製OmniCure S2000に320−390nmのバンドパスフィルターを付け、365nmで100mW/cm2のUV照度で45秒間照射を行った。その結果を図1に示す。
[参考例4]
上記参考例3において、用いる組成物を調製例2より得られた組成物に変更した。その結果を図1に示す。
図1の結果より、本発明の参考例3、4における調製例1、2で得られた組成物は、いずれも良好な光硬化性を示すことが確認された。
プラズマ照射による基材表面の濡れ性変化
[参考例5]
エタノール洗浄による脱脂処理を行ったエポキシガラス、PPS、PBT及びPETの基材表面に大気圧プラズマ処理(浅草製作所社製プラズマシャワー照射装置、照射距離;3cm、照射時間;20秒)を実施し、水接触角を測定した。
なお、水接触角は、自動接触角計(協和界面科学社製)を用いて測定した。その結果を表2に示す。
[参考例6]
上記参考例5において、プラズマ処理を低圧プラズマ照射装置(ヤマト科学社製プラズマドライクリーナー、O2/Ar=80cc/20cc、RF出力;250W、照射時間;30秒)に変更した以外は同様に試験を行った。その結果を表2に示す。
[比較参考例2]
上記参考例5において、エタノール洗浄による脱脂処理のみ行った基材の水接触角を測定した。その結果を表2に示す。
Figure 0006512120
表2の結果より、酸素を含む雰囲気中でのプラズマ処理によって基材表面がより親水性に改質されていることが確認された。
光硬化物の接着性評価
[実施例1]
上記参考例5と同様に大気圧プラズマ処理を行ったエポキシガラス、PPS、PBT及びPETの基材上に上記調製例1より得られた光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を約2gポッティングし、UV−LED照射器(365nmタイプ、CCS社製)を用いて光照射を行った。その際、365nmで100mW/cm2のUV照度で23℃×90秒間照射を行った。光照射後、23℃×24時間静置し、その後各基材への接着性を確認した。ゴムの凝集破壊が確認された場合は○、界面剥離が確認された場合は×で評価した。なお、接着性の評価基準として、基材上のゴム硬化物層(含フッ素エラストマー層)をスパチュラで削り取って、基材とゴム硬化物層との接着界面を目視にて観察し、ゴム硬化物層の表層部だけが削れて、深部(基材とゴム硬化物層との界面)が基材上に残っていれば「凝集破壊」、ゴム硬化物層の全体が深部(基材との界面)から根こそぎ削れて、基材上にゴム硬化物層が全く残らなかったら「界面剥離」とした。その結果を表3に示す。
[実施例2]
上記実施例1において、使用する光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を調製例2で作製したものに変更した以外は、同様に評価を行った。その結果を表3に示す。
[実施例3]
上記実施例1において、使用する基材を上記参考例6と同様に低圧プラズマ処理を行ったものに変更した以外は、同様に評価を行った。その結果を表3に示す。
[実施例4]
上記実施例2において、使用する基材を上記参考例6と同様に低圧プラズマ処理を行ったものに変更した以外は、同様に評価を行った。その結果を表3に示す。
[比較例1]
上記実施例1において、使用する基材を上記比較参考例2と同様にエタノール洗浄による脱脂処理のみ行ったものに変更した以外は、同様に評価を行った。その結果を表3に示す。
[比較例2]
上記実施例2において、使用する基材を上記比較参考例2と同様にエタノール洗浄による脱脂処理のみ行ったものに変更した以外は、同様に評価を行った。その結果を表3に示す。
[比較例3]
上記実施例1において、プラズマ処理を低圧プラズマ照射の条件を「O2/Ar=80cc/20cc、RF出力;250W、照射時間;30秒」から「Ar=10cc、RF出力;250W、照射時間;30秒」に変更した以外は、同様に評価を行った。その結果を表3に示す。
[比較例4]
上記実施例1において、光照射後の静置条件を5℃×24時間に変更した以外は、同様に評価を行った。その結果を表3に示す。
[比較例5]
上記実施例1において、光照射後の静置条件を150℃×24時間に変更した以外は、同様に評価を行った。その結果を表3に示す。
Figure 0006512120
表3の結果より、本発明の実施例において、基材表面を予め酸素を含むガス雰囲気中でプラズマ処理し、光照射後23℃×24時間静置することにより、良好な接着性が得られることが確認された。

Claims (7)

  1. 基材表面を予め酸素を含む雰囲気中でプラズマ照射することにより該基材表面を改質させ、その表面上に
    (A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、
    (B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有する含フッ素オルガノ水素ポリシロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してSi−H基が0.5〜3モルとなる量、
    (C)光活性型ヒドロシリル化反応触媒:金属原子質量換算で0.1〜500ppm、
    (D)疎水性シリカ粉末:1〜30質量部、
    及び
    (E)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子と、炭素原子又は炭素原子と酸素原子を介してケイ素原子に結合したエポキシ基及び/又はトリアルコキシシリル基をそれぞれ1個以上有する(B)成分以外のオルガノポリシロキサン:0.05〜5質量部
    を含有する光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物を塗布し、該組成物を10〜120℃において近紫外線により光照射して硬化させると共に光照射後に10〜120℃で静置して基材に上記エラストマー組成物のゴム硬化物を接着させる工程を含むことを特徴とする該基材に該エラストマー組成物のゴム硬化物を接着させる方法。
  2. (C)成分が、(η 5 −シクロペンタジエニル)トリ(σ−アルキル)白金錯体化合物又はβ−ジケトナト白金錯体化合物である請求項1記載の接着方法。
  3. (A)成分が、下記式(1)で表される直鎖状フルオロポリエーテル化合物である請求項1又は2に記載の接着方法。
    CH2=CH−(X)a−Rf1−(X’)a−CH=CH2 (1)
    [式(1)中、Xは−CH2−、−CH2O−、−CH2OCH2−又は−Y−NR1−CO−〔ここで、Yは−CH2−、−Si(CH32CH2CH2CH2−、−Si(CH3)(CH=CH2)CH2CH2CH2−、−Si(CH=CH22CH2CH2CH2−又は下記構造式(Z)
    Figure 0006512120
    (式(Z)中、R3、R4はそれぞれ独立に−CH3又は−CH=CH2である。)
    で示されるo−、m−又はp−シリルフェニレン基であり、R1は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である。〕であり、X’は−CH2−、−OCH2−、−CH2OCH2−又は−CO−NR2−Y’−〔ここで、Y’は−CH2−、−CH2CH2CH2Si(CH32−、−CH2CH2CH2Si(CH3)(CH=CH2)−、−CH2CH2CH2Si(CH=CH22−又は下記構造式(Z’)
    Figure 0006512120
    (式(Z’)中、R3’、R4’はそれぞれ独立に−CH3又は−CH=CH2である。)
    で示されるo−、m−又はp−シリルフェニレン基であり、R2は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である。〕である。aは独立に0又は1である。Rf1は下記式(i)又は(ii)
    Figure 0006512120
    (式(i)中、p及びqはそれぞれ0又は1〜150の整数であって、且つpとqの和の平均は2〜200である。rは0〜6の整数であり、tは2又は3である。)
    Figure 0006512120
    (式(ii)中、uは1〜200の整数であり、vは1〜50の整数であり、tは2又は3である。)
    で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。]
  4. 光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物が、更に(F)成分として、ヒドロシリル化反応の反応制御剤を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着方法。
  5. 光硬化性フルオロポリエーテル系エラストマー組成物が、更に(G)成分として、カルボン酸無水物を含む請求項〜4のいずれか1項に記載の接着方法。
  6. 基材が金属、ガラス、セラミック又は合成樹脂である請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着方法。
  7. 上記光照射後に10分間〜48時間静置して基材に上記ゴム硬化物を接着させる請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着方法。
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