JP6507655B2 - 多孔質膜用塗工液及びその製造方法 - Google Patents

多孔質膜用塗工液及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、各種光学素子や画像表示装置等に施される超低屈折光学薄膜として有用な多孔質膜の製造に好適な塗工液及びその製造方法に関する。
デジタルカメラや放送用カメラ、車載カメラ、光ピックアップ装置や半導体装置の対物レンズ、眼鏡レンズ、光学用反射鏡、ローパスフィルタ等の光学基材には、光透過率を向上させることを目的として、反射防止膜が施される。従来、反射防止膜は、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理的方法により形成されてきた。しかしこれらの成膜方法は真空機器を必要とするためコストが高いという欠点を有する。
単層の反射防止膜は、基材より小さく、かつ空気等の入射媒質より大きい屈折率を有するように設計される。屈折率1.5程度のガラスからなるレンズの反射防止膜は、屈折率1.2〜1.25が理想的であると言われている。しかし、物理的方法により形成できる反射防止膜において、このような理想的な屈折率を有する物質は無いので、屈折率1.38のMgF2が反射防止膜材料として汎用されている。
しかし近年、幅広い波長領域の光線を使用する光学機器も製作されるようになってきており、幅広い波長範囲で優れた光学特性を有する反射防止膜が望まれるようになってきた。しかも光学素子は複数のレンズ群により構成されることが多いので、各レンズ面での反射による透過光量の損失が多くなるのを防ぐために、一般的に多層構成の反射防止膜を設けている。多層反射防止膜は、各界面で生じた反射光と、各層に入射する光線とが干渉によって相殺し合うように設計される。多層構成の反射防止膜は、さらにコストが高いという欠点を有する。
そこで、脱水重縮合を用いたゾル−ゲル法を利用した湿式法(ディップコート法、ロールコート法、スピンコート法、フローコート法、スプレーコート法等)により、反射防止膜を形成する方法が提案されている。
例えば特開2006-215542号(特許文献1)は、基材の表面に順に形成された緻密層及びシリカエアロゲル多孔質層からなり、屈折率が基材からシリカエアロゲル多孔質層まで順に小さくなっている反射防止膜を提案している。このシリカエアロゲル多孔質層は、(i) ゾル状又はゲル状の酸化珪素を有機修飾剤と反応させて有機修飾ゾル又は有機修飾ゲルとし、(ii) 前記有機修飾ゾル又は前記有機修飾ゲルをゾル状にしたものを緻密層表面にコーティングし、得られた有機修飾シリカゲル層にスプリングバック現象を生じさせ、有機修飾シリカエアロゲル層にし、(iii) 得られた有機修飾シリカエアロゲル層を熱処理して有機修飾基を除去することにより形成する。
シリカエアロゲル多孔質層は屈折率が1.20程度と小さく、それを有する反射防止膜は幅広い波長範囲で優れた反射防止特性を有する。しかもゾル−ゲル法により作製できることから、コストパフォーマンスにも優れている。しかし、機械的強度が弱く、基材に対する密着性が弱く、耐擦傷性が十分とはいえなかった。
特開2009-258711号(特許文献2)は、シリカエアロゲルからなる多孔質膜を基材表面に塗布・乾燥した後にアルカリ処理を施すことで、機械的強度及び耐擦傷性の優れた低屈折率膜を作製している。しかし多孔質膜の形成とその膜の硬質化処理において、成膜とアルカリ処理の2段階で実施する必要があり、多段階でコストパフォーマンスと膜形成の安定性において課題がある。
特開2006-215542号公報 特開2009-258711号公報
従って、本発明の目的は、分散液にアルカリ処理を施す為の試薬を添加することにより、成膜とアルカリ処理を同時に行うことが可能でかつ保存安定性に優れた多孔質膜の製造に好適な塗工液及びその製造方法を提供することである。
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、多孔質膜の製造に用いる塗工液において、分散媒中にアルキルジシラザンにより表面修飾されたシリカナノ粒子を分散させ、かつ金属アルコキシド及び有機アミンの少なくとも1種を添加させることにより、多孔質膜の形成とその膜の硬質化処理において、成膜とアルカリ処理を同時に行うことができ、かつ保存安定性に優れた多孔質膜用塗工液が得られることを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の多孔質膜用塗工液は、アルキルジシラザンにより表面修飾されたシリカナノ粒子が分散媒中に分散した分散液であって、金属アルコキシド及び有機アミンの少なくとも1種が添加されていることを特徴とする。
前記金属アルコキシドは炭素数が1〜3のアルカリ金属アルコキシドであるのが好ましく、前記有機アミンがジエチルアミン又はトリエチルアミンであるのが好ましい。
前記分散媒はケトン系溶媒として、メチルエチルケトン及び4-メチル-2-ペンタノン、カルボン酸エステル系溶媒として酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸プロピル、及びグリコールエーテル系溶媒として2-メトキシメタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。
前記分散液のシリカ固形分濃度が0.1〜10質量%であるが好ましく、前記金属アルコキシド及び前記有機アミン/前記シリカナノ粒子が質量比で1×10-3〜1.0であるが好ましい。前記シリカナノ粒子のメジアン径が10〜100 nmであるのが好ましい。
前記アルキルジシラザンは一般式(1)
R1R2R3Si-NH-Si R1R2R3・・・(1)
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素、炭素数1以上7以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又は炭素数3以上6以下の環状のアルキル基、又はアリール基である。)で表されるテトラアルキルジシラザン又はヘキサアルキルジシラザンであるのが好ましい。
上記塗工液を製造する本発明の方法は、アルコキシシランを加水分解重合することによりシリカ湿潤ゲルを生成し、前期シリカ湿潤ゲルをアルキルジシラザンにより表面修飾した後、前記表面修飾シリカ湿潤ゲルを前記分散媒中で超音波分散して前記表面修飾シリカナノ粒子の分散液を生成し、前記分散液に金属アルコキシド及び有機アミンの少なくとも1種を添加することを特徴とする。
前記アルコキシシランは、4官能性アルコキシシラン及びその2〜5量体のオリゴマーから選ばれた少なくとも1種の第一のアルコキシシランと3官能性の第二のアルコキシシランから選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
前記第二のアルコキシシランが3-メタクリロキシプロピル基、3-グリシドキシプロピル基及びビニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含むのが好ましく、前記第一のアルコキシシランと前記第二のアルコキシシランの混合比がモル比で1:1〜10:1であるのが好ましい。
前記シリカナノ粒子をアルキルジシラザンにより表面修飾する前に、前記シリカ湿潤ゲルの溶媒をn-ヘキサン及び4-メチル-2-ペンタノンから選ばれる少なくとも1種に置換するのが好ましい。
前記超音波分散を発振周波数:10〜30 kHz、定格出力:50〜1200 W及び超音波処理時間:5〜180分の条件下で行うが好ましい。
アルキルジシラザンにより表面修飾されたシリカナノ粒子が分散媒中に分散し、かつ金属アルコキシド及び有機アミンの少なくとも1種が添加された本発明の塗工液は、多孔質膜の形成とその膜の硬質化処理において、成膜とアルカリ処理を同時に行うことができ、かつ保存安定性に優れている。
実施例1及び比較例1の塗工液を示す写真である。
[1] 塗工液の製造方法
本発明の実施態様による塗工液の製造方法は、アルコキシシランを加水分解重合することによりシリカ湿潤ゲルを生成し、シリカナノ粒子をアルキルジシラザンにより表面修飾した後、シリカ湿潤ゲルを分散媒中で超音波分散してシリカナノ粒子の分散液を生成し、分散液に金属アルコキシド及び有機アミンの少なくとも1種を添加することを特徴とする。
(1) シリカ湿潤ゲルの作製
(a) 原料
(a-1) アルコキシシラン
アルコキシシランはモノマーでもオリゴマーでも良いが、4官能性アルコキシシラン及びその2〜5量体のオリゴマーから選ばれた少なくとも1種の第一のアルコキシシランと3官能性の第二のアルコキシシランから選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。アルコキシル基を3つ以上有するアルコキシシラン又はその混合物を出発原料とすることにより、優れた均一性を有するシリカエアロゲル膜が得られる。
4官能性アルコキシシランは、例えばメトキシ、エトキシ、ノルマルプロポキシ、イソプロポキシ、ノルマルブトキシ、イソブトキシ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の炭素数1〜6のアルコキシ基を含むのが好ましい。各アルコキシ基は同一でも異なっていても良い。4官能性アルコキシシランの具体例としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。アルコキシシランオリゴマーはアルコキシシランモノマーの加水分解・重縮合により得られる。
3官能性の第二のアルコキシシランは3-メタクリロキシプロピル基、3-グリシドキシプロピル基及びビニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含むのが好ましい。またアルコキシ基は例えばメトキシ、エトキシ、ノルマルプロポキシ、イソプロポキシ、ノルマルブトキシ、イソブトキシ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。各アルコキシ基は同一でも異なっていても良い。第二のアルコキシシランの具体例としてはビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
第一のアルコキシシランと第二のアルコキシシランの混合比がモル比で1:1〜10:1であるのが好ましい。この範囲であれば、アルコキシシランの加水分解重縮合の反応が均一に進み、シリカ骨格を形成し易く、粒子径の整った分散性に優れた有機修飾シリカナノ粒子を作製でき、かつ優れた成膜性と膜厚均一性を有するシリカエアロゲル膜が得られる。上記範囲は3:1〜6:1であるのがより好ましい。
(a-2) シリカ合成反応溶液の反応溶媒
シリカ合成反応溶液の反応溶媒は水とアルコールからなるのが好ましい。アルコールとしてはメタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、i-プロピルアルコールが好ましく、エタノールが特に好ましい。溶媒の水/アルコールのモル比は0.01〜2とするのが好ましい。水/アルコールのモル比が2超であると、加水分解反応が速く進行し過ぎる。水/アルコールのモル比が0.01未満であると、アルコキシシランの加水分解が十分に起こらず、シリカ骨格の形成が起こりにくい。
(a-3) 触媒
アルコキシシランのアルコール溶液に加水分解反応の触媒を添加した水溶液を添加するのが好ましい。適当な触媒を添加することによりアルコキシシランの加水分解反応を促進することができる。触媒は酸性でも塩基性でもよいが、塩基性が好ましい。酸性の触媒としては塩酸、硝酸及び酢酸が挙げられる。塩基性の触媒としてはアンモニア、アミン、NaOH及びKOHが挙げられる。好ましいアミンとしてアルコールアミン、アルキルアミン(例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、n-ブチルアミン及びn-プロピルアミン。)が挙げられる。
(b) シリカ湿潤ゲルの作製
アルコキシシラン、アルコール及び触媒が添加された水を混合し溶解する。アルコール溶媒/アルコキシシランのモル比は3〜200にするのが好ましい。モル比が3未満であると、アルコキシシランが溶解し難過ぎ、アルコキシシランの重合度が高くなり過ぎる。モル比が200超であると、アルコキシシランの重合度が低くなり過ぎ、湿潤ゲルを形成しにくくなる。触媒/アルコキシシランのモル比は1×10-5〜1にするのが好ましく、1×10-4〜1×10-1にするのがより好ましい。モル比が1×10-5未満であると、アルコキシシランの加水分解が十分に起こらない。モル比を1超としても、触媒効果は増大しない。水/アルコキシシランのモル比は0.5〜20にするのが好ましく、5〜15にするのがより好ましい。
アルコキシシランを含む溶液を1〜168時間程度エージングする。具体的には、15〜60℃で溶液を静置するか、ゆっくり撹拌する。アルコキシシランにアルコールを添加して15〜30℃で5〜30分撹拌した後、塩基性触媒を含む水を添加して15〜30℃で5〜30分撹拌し、20〜30℃で12〜72時間静置するのが特に好ましい。エージングによりゲル化が進行し、シリカ湿潤ゲルが生成する。シリカ合成反応を行った後、エタノール等のアルコールを用いてシリカ湿潤ゲルを洗浄し、未反応物等を除去するのが好ましい。
(2) シリカ湿潤ゲルの溶媒置換
シリカ湿潤ゲルの溶媒をn-ヘキサン及び4-メチル-2-ペンタノンから選ばれる少なくとも1種等の有機溶媒に置換しても良い。ゲルに取り込まれている溶媒は、ゲルの入った容器に置換すべき溶媒を注ぎ、振とうした後でデカンテーションする操作を繰り返すことによって置換することができる。シリカナノ粒子を有機修飾する前にシリカ湿潤ゲルの溶媒を有機溶媒に置換しておくことにより、有機修飾剤のシリカ湿潤ゲルへの分散性が向上し、シリカ湿潤ゲルの有機修飾反応を十分かつ均一に進行させることができる。
(3) シリカ湿潤ゲルのアルキルジシラザンによる表面修飾
シリカ湿潤ゲルに有機修飾剤であるアルキルジシラザンの溶液を加え、シリカ湿潤ゲルとアルキルジシラザン溶液とが十分接触した状態にすることにより、シリカ湿潤ゲルを構成するシリカナノ粒子の末端にある水酸基等の親水性基を疎水性の有機基に置換する。5〜30 mm角程度に切断する等して湿潤ゲルの表面積を大きくしたものに、アルキルジシラザン溶液を加えるのが好ましい。予めシリカ湿潤ゲルの表面積を大きくしておくことで、有機修飾剤との反応を効率的に進行させることができる。
シリカナノ粒子を表面修飾するアルキルジシラザンは一般式(1)
R1R2R3Si-NH-Si R1R2R3・・・(1)
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素、炭素数1以上7以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又は炭素数3以上6以下の環状のアルキル基、又はアリール基である。)で表されるテトラアルキルジシラザン又はヘキサアルキルジシラザンであることが好ましい。
具体的に好適なアルキルジシラザンとしては、R1、R2及びR3がそれぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基又はt-ブチル基であるものが好ましい。また環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられる。これらのアルキルジシラザンの具体例は、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサn-プロピルジシラザン、ヘキサiso-プロピルジシラザン、ヘキサn-ブチルジシラザン、ヘキサt-ブチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、1,1,2,2-テトラメチル-3,3-ジエチルジシラザン、1,1,2,2-テトラメチルジシラザン、1,1,2,2-テトラエチルジシラザン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシラザン、1,3-ビス(3,3,3-トリフルオロプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、テトラメチル-1,3-ジフェニルジシラザン、テトラメチル-1,3-ビス(クロロメチル)ジシラザン、などが挙げられる。中でも、ヘキサメチルジシラザンが特に好ましい。
(4) 超音波処理
超音波処理により、シリカ湿潤ゲルを分散媒中に分散させて分散液を生成する。超音波処理により、電気的な力若しくはファンデルワールス力によって凝集していたゲルが解離するか、金属と酸素との共有結合が壊れて、分散状態になると考えられる。照射する超音波の周波数は10〜30 kHzとするのが好ましい。出力は50〜1200 Wとするのが好ましい。
超音波処理時間は5〜180分間とするのが好ましい。超音波を長く照射するほど、シリカ湿潤ゲルのクラスターが細かく粉砕され、凝集の少ない状態になる。このため超音波処理によって得られるシリカ湿潤ゲル中で、有機修飾シリカのコロイド粒子が単分散に近い状態になる。超音波処理時間を5分未満とすると、コロイド粒子が十分に解離しない。超音波処理時間を180分超としても、有機修飾シリカのコロイド粒子の解離状態はほとんど変わらない。
分散媒は成膜時のハンドリング性、レベリング性及び均一成膜性に優れ、有機修飾されたシリカナノ粒子を分散可能な有機溶媒が望ましく、具体例としてケトン系溶媒として、メチルエチルケトン及び4-メチル-2-ペンタノン、カルボン酸エステル系溶媒として酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸プロピル、及びグリコールエーテル系溶媒として2-メトキシメタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びこれらの混合物が挙げられる。分散媒はシリカ湿潤ゲルの溶媒置換に用いた有機溶媒と同じ種類でも良く、異なる種類でも良い。
分散媒は、有機修飾シリカに対して優れた親和性を有するケトン系溶媒が特に好ましい。ケトン系溶媒中で、有機修飾シリカは良好な分散状態になる。ケトンの有する置換基はアルキル基でもよいし、アリール基でもよい。好ましいアルキル基は炭素数1〜5程度のものである。
ケトン系溶媒は60℃以上の沸点を有するのが好ましい。60℃未満の沸点を有するケトンは、後述する超音波照射の工程で揮発しすぎる。例えばアセトンを分散媒として用いると、超音波照射中にアセトンが大量に揮発してしまうため、分散液の濃度を調節し難過ぎる。また成膜工程においても素早く揮発し過ぎるため、十分な成膜時間が得られないという問題もある。
ケトン系溶媒のうち、好ましいのはカルボニル基の両側に異なる置換基を有する非対称なケトンである。非対称ケトンは大きな極性を有するために、有機修飾シリカに対して特に優れた親和性を有する。
(5) 金属アルコキシド及び有機アミンの少なくとも1種の添加
アルキルジシラザンにより表面修飾されたシリカナノ粒子が分散媒中に分散した分散液に金属アルコキシド及び有機アミンの少なくとも1種を添加する。
金属アルコキシドの添加は金属アルコキシドの溶液を用いて行うのが好ましい。金属アルコキシドはアルカリ処理に使用するアルカリとして用いられる。アルカリ処理に使用するアルカリをシリカナノ多孔質膜の出発原料のアルコキシシランと同様にアルコキシル基を有する金属アルコキシドとすることにより、成膜とアルカリ処理に必要な条件が比較的近くなるため、成膜時にアルカリ処理を同時に行うことが可能になる。また成膜及びアルカリ処理後の残留物の洗浄も容易である。
金属アルコキシドは炭素数が1〜3のアルカリ金属アルコキシドであるのが好ましい。具体的には、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド等が挙げられる。特に好ましいアルカリ金属アルコキシドはナトリウムメトキシド及びナトリウムエトキシドである。金属アルコキシドのアルコキシル基はシリカナノ粒子の出発原料のアルコキシシランと同じ種類のものを用いるのが好ましい。それにより成膜時のアルカリ処理による未反応シラノール基の反応性が向上する。
有機アミンの添加は有機アミンの溶液を用いて行うのが好ましい。有機アミンは金属アルコキシドと同様にアルカリ処理に使用するアルカリとして用いられる。有機アミンは成膜を阻害せず、成膜及びアルカリ処理後の残留物の洗浄も容易なアルキルアミンやアルコキシアミンが好ましい。
アルキルアミンとしては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、n-アミルアミン、n-ヘキシルアミンなどのアルキル基を有する化合物、メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキシエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチルアミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミンなどのアルコキシ基を有する化合物などが挙げられる。
アルコキシアミンとしては、メトキシアミン、エトキシアミン、プロポキシアミン、ブトキシアミンなどの第一級アミン、第二級アミン又は第三級アミンが挙げられる。
有機アミンとしては上記具体的以外にもラウリルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を用いることができる。
[2] 塗工液
本発明の塗工液は、アルキルジシラザンにより表面修飾されたシリカナノ粒子が分散媒中に分散した分散液であって、金属アルコキシド及び有機アミンの少なくとも1種が添加されている。本発明の塗工液には金属アルコキシド及び有機アミンの少なくとも1種が添加されているので、成膜時にアルカリ処理を同時に行うことができる。アルカリ処理により未反応シラノール基が縮合してSi-O-Si結合が増加するため、耐擦傷性に優れ、経時変化が小さいシリカエアロゲル膜を形成することができる。また分散液の溶媒として有機溶媒を用いると、成膜時に優れたハンドリング性、レベリング性及び均一成膜性が得られる。
無機材料のシリカナノ粒子をアルキルジシラザンにより表面修飾して表面改質することにより、有機溶媒からなる分散媒中の分散性が向上するとともに、分散媒中での金属アルコキシド及び有機アミンのアルカリ処理試薬による反応シラノール基の反応が抑えられ、塗工液がゲル化するのを遅らせることができる。そのため優れた保存安定性を有する塗工液が得られ、かかる塗工液を用いたシリカエアロゲル膜の安定した量産が可能となる。
アルキルジシラザンにより表面修飾されたシリカナノ粒子はメジアン径が10〜100 nmであるのが好ましい。ここでメジアン径は、粒子の集合の全体積を100%として累積曲線を求めた時、累積値が50%となる点の粒子径であり、動的光散乱法により求められる。アルキルジシラザンにより表面修飾されたシリカナノ粒子のメジアン径がこの範囲内であると、実質的に平滑な表面を有するシリカエアロゲル膜が得られる。表面修飾されたシリカナノ粒子のメジアン径が10nm未満だと粒子同士の凝集が起こり易い為、分散媒中の分散性が悪くなる。
分散液のシリカ固形分濃度は0.1〜10質量%であるのが好ましい。シリカ固形分濃度がこの範囲内であれば、シリカナノ粒子の分散性を維持しつつ、均一な膜厚を有する薄層を形成し得る。分散液のシリカ固形分濃度は2.0〜7.0質量%であるのがより好ましい。
金属アルコキシド及び有機アミン/シリカナノ粒子は質量比で1×10-3〜2.0であるのが好ましい。質量比がこの範囲内であれば、成膜時のアルカリ処理による未反応シラノール基の高い反応性が得られる。金属アルコキシド及び有機アミン/シリカナノ粒子は質量比で5.0×10-3〜1.0であるのがより好ましい。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1
(1-1)シリカ湿潤ゲルの作製
扶桑化学工業株式会社製のメチルシリケート51(テトラメトキシシランの平均4量体)5.90 gと和光純薬工業株式会社製のメタノール(特級)50.55gの混合物に和光純薬工業株式会社製の28%アンモニア(特級)から調整した0.1 Nのアンモニア水3.20 gを添加し10分間攪拌した。その後、室温にて3日間静置して加水分解重縮合反応を促進させエージングした。
(1-2)シリカ湿潤ゲルの溶媒置換
工程(1-1)で作製したシリカ湿潤ゲルを2cm角程度の大きさに切り出し、それを結晶皿にとり、和光純薬工業株式会社製のエタノール(特級)を添加し、マグネティックスターラーを用いて300 rpmでゆっくり1日間攪拌して、シリカ湿潤ゲル中の溶媒をエタノールに置換した。置換後にデカンテーションすることにより、エタノール溶媒置換されたシリカ湿潤ゲルを得た。溶媒置換に用いたエタノールは、シリカ湿潤ゲル20 gに対して100 mlの割合で添加した。
エタノールにより溶媒置換されたシリカ湿潤ゲルに和光純薬工業株式会社製の4-メチル-2-ペンタノン(特級)を添加し、マグネティックスターラーを用いて300 rpmでゆっくり1日間攪拌して、シリカ湿潤ゲル中の溶媒を4-メチル-2-ペンタノンに置換した。置換後にデカンテーションすることにより、4-メチル-2-ペンタノンに溶媒置換されたシリカ湿潤ゲルを得た。溶媒置換に用いた4-メチル-2-ペンタノンは、シリカ湿潤ゲル20 gに対して100 mlの割合で添加した。
(1-3)シリカ湿潤ゲルの表面修飾
工程(1-2)で作製したシリカ湿潤ゲル60 gを結晶皿にとり、東京化成工業株式会社製の1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンと和光純薬工業株式会社製の4-メチル-2-ペンタノン(特級)からなる混合液体を添加し、マグネティックスターラーを用いて300 rpmでゆっくり1日間攪拌して、シリカ湿潤ゲル中のシリカナノ粒子の末端を有機修飾した。有機修飾後にデカンテーションすることにより、有機修飾シリカ湿潤ゲルを得た。1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンと4-メチル-2-ペンタノンの混合液は、体積比にして10 ml:90 mlの割合で混合して作製した。シリカ湿潤ゲルの有機修飾は、シリカ湿潤ゲル20 gに対して、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンと4-メチル-2-ペンタノンの混合液が100 mlの割合で添加した。
(1-4)有機修飾シリカ湿潤ゲルの洗浄
工程(1-3)で作製したシリカ湿潤ゲル60 gを結晶皿にとり、和光純薬工業株式会社製の4-メチル-2-ペンタノン(特級)を添加し、マグネティックスターラーを用いて300 rpmでゆっくり1日間攪拌して、有機修飾シリカ湿潤ゲルを洗浄した。その後デカンテーションすることにより、有機修飾剤及び副生成物の除去された有機修飾シリカ湿潤ゲルを得た。洗浄に用いた4-メチル-2-ペンタノンは、シリカ湿潤ゲル20 gに対して100 mlの割合で添加した。
(1-5)有機修飾シリカ湿潤ゲルの超音波分散液の作製
工程(1-4)で作製した有機修飾シリカ湿潤ゲルを100 mlディスポビーカーにとり、和光純薬工業株式会社製の4-メチル-2-ペンタノン(特級)を添加し、マグネティックスターラーを用いて700 rpmで攪拌しながら株式会社日本精機製作所の超音波分散装置(定格出力600 W、発振周波数19.5 KHz±1KHz)で2時間超音波分散した。分散液の濃度は、シリカ固形分濃度にして3.5質量%になるように調整した。分散液のシリカ固形分濃度は、有機修飾シリカ湿潤ゲルを120℃の送風定温恒温機(イナートオーブン)に2時間入れて乾燥したときの、乾燥前後の質量から算出した固形分から調製した。
(1-6) 有機修飾シリカ湿潤ゲル分散液へのアルカリ金属アルコキシドの添加
工程(1-5)で作製した有機修飾シリカ湿潤ゲルの超音波分散液(有機修飾シリカナノ粒子分散液)3mlと予め和光純薬工業株式会社製28質量%ナトリウムメトキシドメタノール溶液から調製した0.35質量%のナトリウムメトキシドメタノール溶液0.9 mlを混合して、一液性のシリカエアロゲル膜製造用塗工液を作製した。
実施例2
工程(2-1)〜(2-5)を実施例1の工程(1-1)〜(1-5)と同様に行った。
(2-6) 有機修飾シリカ湿潤ゲル分散液への有機アミンの添加
工程(2-5)で作製した有機修飾シリカナノ粒子分散液3mlと予め和光純薬工業株式会社製のジエチルアミンと4-メチル-2-ペンタノンから調製した1.00質量%のジエチルアミン溶液0.9 mlを混合して、一液性のシリカエアロゲル膜製造用塗工液を作製した。
実施例3
(3-1)シリカ湿潤ゲルの作製
扶桑化学工業株式会社製のメチルシリケート51(テトラメトキシシランの平均4量体)5.90 g、JNC株式会社製サイラエースS710(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)1.00 g及び和光純薬工業株式会社製のメタノール(特級)50.55 gの混合物に和光純薬工業株式会社製の28%アンモニア(特級)から調整した0.15 Nのアンモニア水3.20 gを添加し10分間攪拌した。その後、室温にて3日間静置して加水分解重縮合反応を促進させエージングした。
(3-2)シリカ湿潤ゲルの溶媒置換
工程(3-1)で作製したシリカ湿潤ゲルを用い、4-メチル-2-ペンタノンの代わりにn-ヘキサンを置換溶媒として用いた以外は実施例1と同様に行った。溶媒置換に用いたn-ヘキサンは、シリカ湿潤ゲル20 gに対して100 mlの割合で添加した。
工程(3-3)〜(3-6)を工程(3-2)で作製したシリカ湿潤ゲルを用い、工程(3-3)のシリカ湿潤ゲルの表面修飾において、表面修飾剤を拡散させる溶媒に4-メチル-2-ペンタノンの代わりにn-ヘキサンを用いた以外は実施例1の工程(1-3)〜(1-6)と同様に行い、一液性のシリカエアロゲル膜製造用塗工液を作製した。
実施例4
工程(4-1)〜(4-5)を実施例3の工程(3-1)〜(3-5)と同様に行い、工程(4-6)を工程(4-5)で作製した有機修飾シリカ湿潤ゲルの超音波分散液を用いた以外は実施例2の工程(2-6)と同様に行い、一液性のシリカエアロゲル膜製造用塗工液を作製した。
実施例5
工程(5-1)〜(5-5)を実施例3の工程(3-1)〜(3-5)と同様に行い、工程(5-6)を工程(5-5)で作製した有機修飾シリカ湿潤ゲルの超音波分散液を用い、0.50質量%のナトリウムメトキシドメタノール溶液を用いた以外は実施例3の工程(3-6)と同様に行い、一液性のシリカエアロゲル膜製造用塗工液を作製した。
実施例6
工程(6-1)〜(6-5)を実施例4の工程(4-1)〜(4-5)と同様に行い、工程(6-6)を工程(6-5)で作製した有機修飾シリカ湿潤ゲルの超音波分散液を用い、ジエチルアミンの代わりにトリエチルアミンを用いた以外は実施例4の工程(4-6)と同様に行い、一液性のシリカエアロゲル膜製造用塗工液を作製した。
実施例7
(7-1)シリカ湿潤ゲルの作製
JNC株式会社製サイラエースS710の代わりにJNC株式会社製サイラエースS510(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を用いた以外は実施例3の工程(3-1)と同様に行った。
工程(7-2)〜(7-6)を工程(7-1)で作製したシリカ湿潤ゲルを用いた以外は実施例3の工程(3-2)〜(3-6)と同様に行い、一液性のシリカエアロゲル膜製造用塗工液を作製した。
比較例1
工程(A-1)及び(A-2)を実施例1の工程(1-1)及び(1-2)と同様に行った。
(A-3)シリカ湿潤ゲルの表面修飾
工程(A-2)で作製したシリカ湿潤ゲル60 gを結晶皿にとり、東京化成工業株式会社製のトリメチルクロロシランと和光純薬工業株式会社製の4-メチル-2-ペンタノン(特級)からなる混合液体を添加し、マグネティックスターラーを用いて300 rpmでゆっくり1日間攪拌して、シリカ湿潤ゲル中のシリカナノ粒子の末端を有機修飾した。有機修飾後にデカンテーションすることにより、有機修飾シリカ湿潤ゲルを得た。トリメチルクロロシランと4-メチル-2-ペンタノンの混合液は、体積比にして5ml:95 mlの割合で混合して作製した。シリカ湿潤ゲルの有機修飾は、シリカ湿潤ゲル20 gに対して、トリメチルクロロシランと4-メチル-2-ペンタノンの混合液が100 mlの割合で添加した。
工程(A-4)〜(A-6)を工程(A-3)で作製したシリカ湿潤ゲルを用いた以外は実施例1の工程(1-4)〜(1-6)と同様に行い、一液性のシリカエアロゲル膜製造用塗工液を作製した。
比較例2
工程(B-1)を実施例3の工程(3-1)と同様に行い、工程(B-2)〜(B-6)を工程(B-1)で作製したシリカ湿潤ゲルを用いた以外は比較例1の工程(A-2)〜(A-6)と同様に行い、一液性のシリカエアロゲル膜製造用塗工液を作製した。
比較例3
工程(C-1)〜(C-5)を比較例2の工程(B-1)〜(B-5)と同様に行い、工程(C-6)を工程(C-5)で作製した有機修飾シリカ湿潤ゲルの超音波分散液を用いた以外は比較例2の工程(B-6)と同様に行い、一液性のシリカエアロゲル膜製造用塗工液を作製した。
塗工液の保存安定性試験
実施例1〜7及び比較例1〜3をそれぞれ温度25±5℃、相対湿度40±20%で放置し、流動性を失うまでの時間を塗工液が入っている容器を30°傾けることで確認した。流動性を失わない塗工液は、液面を水平に保ち、流動性が失われてゲル化した塗工液は、容器を傾けても液面が動かなかった。得られた結果を表1に示す。
表1から分かるように、実施例1〜7の塗工液は比較例1〜3と比べて保存安定性に優れていた。また上記条件で350日間放置した実施例1及び比較例1の塗工液を図1に示す。図1に示すように、実施例1の塗工液は流動性を維持していたが、比較例1の塗工液は流動性を失っているのが分かる。

Claims (14)

  1. アルキルジシラザンにより表面修飾されたシリカナノ粒子が分散媒中に分散した分散液であって、金属アルコキシド及び有機アミンの少なくとも1種が添加されていることを特徴とする多孔質膜用塗工液。
  2. 請求項1に記載の多孔質膜用塗工液において、前記金属アルコキシドは炭素数が1〜3のアルカリ金属アルコキシドであることを特徴とする多孔質膜用塗工液。
  3. 請求項1又は2に記載の多孔質膜用塗工液において、前記有機アミンがジエチルアミン又はトリエチルアミンであることを特徴とする多孔質膜用塗工液。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質膜用塗工液において、前記分散媒はケトン系溶媒として、メチルエチルケトン及び4-メチル-2-ペンタノン、カルボン酸エステル系溶媒として酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸プロピル、及びグリコールエーテル系溶媒として2-メトキシメタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする多孔質膜用塗工液。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の多孔質膜用塗工液において、前記分散液のシリカ固形分濃度が0.1〜10質量%であることを特徴とする多孔質膜用塗工液。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の多孔質膜用塗工液において、前記金属アルコキシド及び前記有機アミン/前記シリカナノ粒子が質量比で1×10-3〜2.0であることを特徴とする多孔質膜用塗工液。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の多孔質膜用塗工液において、前記シリカナノ粒子のメジアン径が10〜100 nmであることを特徴とする多孔質膜用塗工液。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の多孔質膜用塗工液において、前記アルキルジシラザンは一般式(1)
    R1R2R3Si-NH-Si R1R2R3・・・(1)
    (式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素、炭素数1以上7以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、又は炭素数3以上6以下の環状のアルキル基、又はアリール基である。)で表されるテトラアルキルジシラザン又はヘキサアルキルジシラザンであることを特徴とする多孔質膜用塗工液。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の多孔質膜用塗工液を製造する方法であって、アルコキシシランを加水分解重合することによりシリカ湿潤ゲルを生成し、シリカナノ粒子をアルキルジシラザンにより表面修飾した後、前記シリカ湿潤ゲルを前記分散媒中で超音波分散して前記シリカナノ粒子の分散液を生成し、前記分散液に金属アルコキシド及び有機アミンの少なくとも1種を添加することを特徴とする多孔質膜用塗工液の製造方法。
  10. 請求項9に記載の多孔質膜用塗工液の製造方法において、前記アルコキシシランは、4官能性アルコキシシラン及びその2〜5量体のオリゴマーから選ばれた少なくとも1種の第一のアルコキシシランと3官能性の第二のアルコキシシランから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする多孔質膜用塗工液の製造方法。
  11. 請求項10に記載の多孔質膜用塗工液の製造方法において、前記第二のアルコキシシランが3-メタクリロキシプロピル基、3-グリシドキシプロピル基及びビニル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含むことを特徴とする多孔質膜用塗工液の製造方法。
  12. 請求項10又は11に記載の多孔質膜用塗工液の製造方法において、前記第一のアルコキシシランと前記第二のアルコキシシランの混合比がモル比で1:1〜10:1であることを特徴とする多孔質膜用塗工液の製造方法。
  13. 請求項9〜12に記載の多孔質膜用塗工液の製造方法において、前記シリカナノ粒子をアルキルジシラザンにより表面修飾する前に、前記シリカ湿潤ゲルの溶媒をn-ヘキサン及び4-メチル-2-ペンタノンから選ばれる少なくとも1種に置換することを特徴とする多孔質膜用塗工液の製造方法。
  14. 請求項9〜13に記載の多孔質膜用塗工液の製造方法において、前記超音波分散を発振周波数:10〜30 kHz、定格出力:50〜1200 W及び超音波処理時間:5〜180分の条件下で行うことを特徴とする多孔質膜用塗工液の製造方法。
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