JP6507355B1 - 切削インサート及び切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】切れ刃が欠損しにくく、切りくず排出性に優れた切削インサートを提供すること【解決手段】切削インサート10は、端面視において、第2周側面部18から離れ、第4周側面部22に近づくほど、第1方向に進行するように傾斜する第1接続部30Aと、第1接続部30Aの一端である中央点に接続し、第2周側面部18から離れ、第4周側面部22に近づくほど第3方向に進行するように傾斜する第2接続部30Bとを備え、切れ刃24は、中央点C1を含む仮想平面PR1から第1距離L1離れた第1接続部30A上に形成される第1切れ刃部24Aと、側面視において、第1曲率半径より小さい第2曲率半径を有する凹円弧状であって、仮想平面PR1から第1距離より大きい第2距離L2離れた第2接続部30B上に形成される第2切れ刃部24Bと、第1切れ刃部24Aと第2切れ刃部24Bとを接続する第3切れ刃部24Cとを備える。【選択図】図3

Description

本発明は、切削インサート及び切削工具に関する。
従来より、金属などの被削材を、工具ボデーに取り付けられる切削インサートを用いて切削することが行われている。
特許文献1には、切削インサートを工具ボデーに安定して固定するために、貫通穴の中心軸から離れるように傾斜する面や、中心軸に平行な面が周側面に形成された切削インサートが開示されている。更に、特許文献1の図4に示される側面視には、中心軸О1と交差する部分に小さな曲率半径の円弧状の切れ刃を頂点とする山型の主切れ刃9が示されている。
国際公開WO2016/047795号公報
しかしながら、小さな曲率半径の円弧状の切れ刃を山型の頂点部分に形成すると、被削材に切れ刃が接触する食いつきの際に、切れ刃が欠損しやすく、工具寿命の低下を招く。
また、中心軸O1において主切れ刃9が頂点を有し、中心軸O1から離れ外周側に近づくほど、側面視における高さが小さくなるように主切れ刃9は傾斜している。このため、切りくずが外周側に進行しやすい。すると、壁加工のように、外周側に壁面が対向する切削を行う際に、切削インサートと壁面との間に切りくずが挟まり、切削インサートが切りくずを噛み込んでしまうおそれがある。
そこで本発明は、切れ刃が欠損しにくく、かつ、切りくずの排出性を向上させることが可能となる切削インサート及び切削工具を提供することを目的とする。
本開示の一側面に係る切削インサートは、第1端面と、第1端面と反対方向を向いた第2端面と、第1端面と第2端面とを接続し、第1方向を向いた第1周側面部、第1方向と垂直な第2方向を向いた第2周側面部、第2方向と垂直な第3方向を向いた第3周側面部及び第3方向と垂直な第4方向を向いた第4周側面部を備える周側面と、第1端面と第1周側面部との接続部の少なくとも一部に形成される切れ刃と、を備え、被削物に対して所定の回転軸で相対的に回転することにより、切れ刃で被削物を切削する。
そして、第1端面と第1周側面部との接続部は、第1端面に対向する方向から見た端面視において、第2周側面部から離れ、第4周側面部に近づくほど、第1方向に進行するように傾斜する第1接続部と、第1接続部の一端である中央点に接続し、第2周側面部から離れ、第4周側面部に近づくほど第3方向に進行するように傾斜する第2接続部とを備え、切れ刃は、第1周側面部に対向する方向から見た側面視において、第1曲率半径を有する凸円弧状であって、第1方向及び第3方向に平行で、第2方向及び第4方向に垂直で、かつ、中央点を含む仮想平面から第1距離離れた第1接続部上に形成される第1切れ刃部と、側面視において、第1曲率半径より小さい第2曲率半径を有する凹円弧状であって、仮想平面から第1距離より大きい第2距離離れた第2接続部上に形成される第2切れ刃部と、第1切れ刃部と第2切れ刃部とを接続するように第1接続部及び第2接続部にまたがって形成される底刃部とを備える。
なお、仮想平面に垂直で、かつ、第1周側面部、第2周側面部、第3周側面部及び第4周側面部を通過する第2仮想平面を基準とする切れ刃のすくい角は、第1切れ刃部と底刃部との接続点において正の値を有し、かつ、接続点から中央点に至るまで、単調に増加することが好ましい。
なお、本発明における「単調に増加する」又は「単調増加」とは、広義の単調増加をいい、値が増加する狭義の単調増加の場合のみならず、値が一定の場合も含む。
また、本発明における周側面を構成する第1方向を向いた第1周側面部とは、第1方向と垂直、又は、概ね垂直な面を有する部分のみに限られない。隣接する周側面部、例えば、第2周側面部と、丸みを帯びる曲面で接続される場合は、このような接続部分については、第1方向と傾斜する面を有するが、端面視において、法線と第1方向のなす角が、法線と第2方向のなす角より小さい面は第1方向を向いた面に相当する。同様に、第1周側面部と第4周側面部が、丸みを帯びる曲面で接続される場合は、このような接続部分については、第1方向と傾斜する面を有するが、端面視において、法線と第1方向のなす角が、法線と第4方向のなす角より小さい面は第1方向を向いた面に相当する。他の方向を向いた面についても同様の意義を有する。また、各周側面部同士は直接接続されている必要はなく、異なる面を介して間接的に接続されていてもよい。
また、本発明における「円弧状」とは、発明の属する技術分野において、円弧として取り扱われる範囲を含む趣旨であり、中心からの距離が一定の円弧、または、中心からの距離がほぼ一定(たとえば平均値からの変動が10%未満)の曲線を含む。また、凸円弧状とは、外方に向かって膨らむように、すなわち、中心が、表面から内部側に位置する円弧状のことをいい、凹円弧状とは、内方に向かって窪むように、すなわち、中心が、表面から外部側に位置する円弧状のことをいう。
また、「直線状」とは、発明の属する技術分野において、直線として取り扱われる範囲を含む趣旨であり、直線(製造誤差を含む)、または、ほぼ直線(たとえば近似直線を基準として、その直線の長さに対する変動量が所定以下(たとえば10%未満)の曲線、または、直線と曲線の集合)を含む。
また、本開示の一側面に係る切削工具は、回転軸を中心に回転し、切削インサートを保持するためのチップ座を有するボデーと、チップ座に第2端面が当接するようにボデーに取り付けられる切削インサートを備える。
切削工具としては、エンドミルやフライスなどの転削工具が好ましい。
切削インサート10の斜視図 切削インサート10を第2周側面部18に対向する方向から見た側面視 切削インサート10を第1端面12に対向する方向から見た端面視 切削インサート10を第1周側面部16に対向する方向から見た側面視 切削インサート10を第1端面12に対向する方向から見た端面視 切削インサート10のA−A断面図 切削インサート10のB−B断面図 切削インサート10のC−C断面図 エンドミル100の斜視図
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。たとえば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に組み合わせることもできる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る切削インサート10の斜視図である。また、図2は、切削インサート10を第2周側面部18に対向する方向から見た側面視(正面図)である。図3は、切削インサート10を第1端面12に対向する方向から見た端面視(平面図)である。図4は、切削インサート10を第1周側面部16に対向する方向から見た側面視(左側面図)である。
図1に示されるように、切削インサート10は、紙面上方を向いた第1端面12と、反対の紙面下方を向いた第2端面14と、第1端面12と第2端面14を接続する第1周側面部16、第2周側面部18、第3周側面部20、第4周側面部22を備える。また、切削インサート10の中央部には、第1端面12及び第2端面14を貫通する貫通穴Hが形成される。切削インサート10の端面視であって、切削インサート10を貫通穴Hの中心軸AX1の方向から見た図に相当する図3に示されるように、第1周側面部16は、中心軸AX1に垂直であって、図3における紙面左方向に相当する第1方向を向いた面であり、第2周側面部18は、中心軸AX1に垂直であって、同図の紙面下方向に相当する第2方向を向いた面であり、第3周側面部20は、中心軸AX1に垂直であって、同図の紙面右方向に相当する第3方向を向いた面であり、第4周側面部22は、中心軸AX1に垂直であって、紙面上方向に相当する第4方向を向いた面である。第1方向及び第3方向は互いに平行であり、それぞれ、互いに平行な第2方向及び第4方向と垂直である。
第2周側面部18及び第4周側面部22は、両端の第1周側面部16又は第3周側面部20との接続部分を除き、平面、又は、概ね平坦に、互いに平行に形成されている。
更に図3に示されているように、第1周側面部16と第1端面12との接続部は、端面視において、第2周側面部18から離れ、第4周側面部22に近づくほど、第1方向に進行するように、又は、第1方向と平行な方向における切削インサート10の幅が大きくなるように、傾斜する第1接続部30Aを備える。更に、第1接続部30Aに接続し、同じく端面視において、第2周側面部18から離れ、第4周側面部22に近づくほど、第3方向に進行するように、又は、第1方向と平行な方向における切削インサート10の幅が小さくなるように、傾斜する第2接続部30Bを備える。第1接続部30Aと、第2接続部30Bは、中央点C1で接続する。中央点C1は、第1周側面部16と第1端面12との接続部の紙面縦方向の中点に位置する。また、貫通穴Hの中心軸AX1を含み、中央点C1を通過する第1仮想平面PR1は、第2周側面部18及び第4周側面部22とそれぞれ平行である。
図1及び図3に示されるように、第1端面12は、貫通穴Hを囲むように形成される平坦なボス面部12Aを備えている。後に詳述するように、ボス面部12Aは、第2端面14側に形成されている切れ刃を用いて加工する際に、ボデー50(図9)のチップ座面に当接する面である。第1端面12の第1方向端部に形成されるすくい面部12B及び第3方向端部に形成されるすくい面部12B’は、切削に適した構造を実現するために、曲面から構成されている。
まず、すくい面を含む第1端面12と逃げ面を含む第1周側面部16との接続部に形成される切れ刃24について説明する。
図3及び図4に示されるように、切れ刃24は、第1切れ刃部24A、第2切れ刃部24B、第3切れ刃部24C(「底刃部」の一例)、第4切れ刃部24D、第5切れ刃部24Eから構成される。
第4切れ刃部24Dは、第1接続部30Aの第2周側面部18側に形成される切れ刃であり、切削インサート10がボデー50(図9)に取り付けられたときに、ボデー50の先端外周側に位置する切れ刃である。
第1方向から第1周側面部16を見た図4に示されるように、第4切れ刃部24Dは、第1仮想平面PR1に垂直で、第1端面12と第2端面14の中間に位置し、第1周側面部16、第2周側面部18、第3周側面部20及び第4周側面部22を通過する第2仮想平面PR2とほぼ一定の距離を有するように(ただし第2周側面部18に近づくほどわずかな増加率で狭義の単調増加となるように)、かつ、他の切れ刃24の中で第2仮想平面PR2から最も離間するように形成される。
同じく図4に示されるように、第1切れ刃部24Aは、第2仮想平面PR2とほぼ平行に形成される第4切れ刃部24Dと滑らかに接続し、緩やかに第2仮想平面PR2に近づくように第1接続部30A内に形成される。第1切れ刃部24Aは、第1方向から第1周側面部16を見た側面視において、第1の曲率半径を有する凸円弧状、すなわち、外方に膨らむように形成される。また、図3に示されるように、端面視において、第1切れ刃部24Aは、第1仮想平面PR1から第1距離L1離間して(すなわち、第1切れ刃部24Aと第1仮想平面PR1との最小距離が第1距離L1となるように)形成される。
第3切れ刃部24Cは、第1切れ刃部24Aと滑らかに接続し、第2仮想平面PR2に近づくように第1接続部30Aから中央点C1を介して第2接続部30Bにわたる部分に形成される。第3切れ刃部24Cは、第1方向から第1周側面部16を見た側面視において、直線状に形成される。また、図3に示されるように、端面視において、中心軸AX1との第1方向の距離が最大となる中央点C1を含む底刃として形成される。
第2切れ刃部24Bは、第3切れ刃部24Cと滑らかに接続し、緩やかに第2仮想平面PR2に近づくように第2接続部30B内に形成される。第2切れ刃部24Bは、第1方向から第1周側面部16を見た側面視において、第2の曲率半径を有する凹円弧状、すなわち、内方に窪むように形成される。ここで、第2の曲率半径は、第1の曲率半径より小さい。このため、第1切れ刃部24Aの曲率よりも、第2切れ刃部24Bの曲率の方が大きい。また、図3に示されるように、端面視において、第2切れ刃部24Bは、第1仮想平面PR1から第2距離L2離間して(すなわち、第2切れ刃部24Bと第1仮想平面PR1との最小距離が第2距離L2となるように)形成される。ここで、第2距離L2は、第1距離L1の方が大きい。このため、第1切れ刃部24Aよりも、第2切れ刃部24Bの方が、第1仮想平面PR1から離間して形成される。
第5切れ刃部24Eは、第1接続部30Aの第4周側面部22側に形成される切れ刃であり、切削インサート10がボデー50(図9)に取り付けられたときに、ボデー50の先端内周側に位置する切れ刃である。
第5切れ刃部24Eは、第2仮想平面PR2とほぼ一定の距離を有するように、かつ、切れ刃24の中で第2仮想平面PR2から最小の距離で、離間するように形成される。
以上のような第1切れ刃部24A乃至第5切れ刃部24Eから切れ刃24は形成されており、端面視においては、中央点C1を底とするV字型に形成され、第1方向から見た側面視においては、中央点C1を含む底刃に相当する直線状の第3切れ刃部24Cの一端に接続する円弧状の第1切れ刃部24Aにより第2仮想平面PR2と平行に近い方向に曲げ、他端に接続する、第1切れ刃部24Aより曲率の大きい円弧状の第2切れ刃部24Bにより第2仮想平面PR2と平行に近い方に曲げるように形成される。したがって、第1切れ刃部24Aの方が、第2切れ刃部24Bよりも、長く、また、第3切れ刃部24Cの方が、第1切れ刃部24A及び第2切れ刃部24Bよりも長く形成される。更に、第1切れ刃部24Aよりも、第2切れ刃部24Bの方が切削インサート10のほぼ中央を通過する第1仮想平面PR1から離れた位置に形成される。
また、本実施形態に係る切削インサート10は、方向を特定するために第1端面12に形成されたマークなど切削に関与しない部分を除き、中心軸AX1に対して180度回転対称に形成され(図3)、かつ、第1仮想平面PR1と第2仮想平面PR2の交線であって、第1周側面部16の中央部と第2周側面部18の中央部を通過する中心軸AX2に対して180度回転対称に形成される(図4)。このため、第1端面12と第3周側面部20との接続部、第2端面14と第1周側面部16との接続部、及び、第2端面14と第3周側面部20との接続部には、それぞれ切れ刃24と同一形状の切れ刃が形成される。従って、第1周側面部16と第2端面14との接続部のうち、第1周側面部16の第4切れ刃部24Dに対向する接続部には、第5切れ刃部24Eと同一形状の切れ刃が形成され、第5切れ刃部24Eに対向する接続部には、第4切れ刃部24Dと同一形状の切れ刃が形成され、第3切れ刃部24Cに対向する接続部には、第3切れ刃部24Cと同一形状の切れ刃が形成される。その結果、図4に示されるように、第1周側面部16における中心軸AX1方向の長さは、概ね、一定となる。
なお、切れ刃24は、第1端面12と第1周側面部16の接続部の全域に形成する必要はなく、例えば、その両端部が切削に関与しない用途で用いられる切削インサートに本発明を適用する場合は、その両端部に切れ刃を設けなくてもよい。また、第4切れ刃部24D及び第5切れ刃部24Eは、本実施の形態に限られるものではなく、例えば、第4切れ刃部24Dは、第2周側面部18に近づくほど第2仮想平面PR2に近づくように傾斜して形成してもよい。また、第1接続部30A及び第2接続部30Bは、第1端面12と第1周側面部16の接続部の全域に設ける必要はなく、例えば、両端部において異なる構造を採用してもよい。ただし、中央点C1を含む中央部付近において、第1接続部30A及び第2接続部30Bに相当する傾斜が形成される必要がある。また、中央点C1は、第1端面12と第1周側面部16の接続部の中点に設けられる必要はなく、中点からわずかに離間した位置などに中央点C1に相当する点が位置するように、第1接続部30A及び第2接続部30Bに相当する2つの傾斜を設けてもよい。
次いで、切削インサート10のすくい面の構造について説明する。図5は、切削インサート10を、すくい面を含む第1端面12に対向する方向から見た端面視である。上述したように、第1端面12と第3周側面部20の接続部には、切れ刃24と同一構造の切れ刃が、中心軸AX1に対して180度回転対称に形成されているので、同一構造の構成要素には、同一符号、または、同一符号にダッシュをつけることにより重複した説明を簡略、又は、省略する。
図5に示されるように、第1端面12と第3周側面部20の接続部には、第1切れ刃部24A’乃至第5切れ刃部24E’が形成される。図6、図7及び図8は、それぞれ、図5のA−A断面の断面図、B−B断面の断面図及びC−C断面の断面図である。ここで、B−B断面は、第1仮想平面PR1に含まれ、中央点C1に相当する中央点C1’を含む断面である。A−A断面は、第1仮想平面PR1から第4周側面部22の側に第1距離L1だけ離間する位置における断面であり、従って、第1切れ刃部24A’と第3切れ刃部24C’を接続する位置を含む。C−C断面は、第1仮想平面PR1から第2周側面部18の側に第1距離L1だけ離間する位置における断面であり、従って、第3切れ刃部24C’が形成されている位置における断面である。
本実施形態に係る切削インサート10における第2仮想平面PR2を基準とするすくい角は、第1切れ刃部24A’と第3切れ刃部24C’の接続点から、中央点C1を経て、中央点C1と第2切れ刃部24B’との間の位置まで、狭義の意味で単調に増加する。そして、最大値に至った後、第2切れ刃部24B’との接続点を経て、第5切れ刃部24E’の途中の位置に至るまで、狭義の意味で単調に減少する。換言すると、切れ刃24のすくい角は、中央点C1と、第3切れ刃部24C’と第2切れ刃部24B’の接続点との間の位置において最大の正のすくい角を有し、その位置をピークとして、第4周側面部22に向かう方向については第1切れ刃部24A’に至るまで狭義の意味で単調に減少し、第2周側面部18に向かう方向については第2切れ刃部24B’を超えて第5切れ刃部24E’の一点に至るまで狭義の意味で単調に減少する。なお、切削インサート10がボデー50に取り付けられた際の軸方向すくい角も同様の関係を有するようにボデー50のチップ座面は形成されている。
図6に示されるように、第1切れ刃部24A’と第3切れ刃部24C’との接続点における正のすくい角α1は、15度であり、第1切れ刃部24A’内におけるすくい角も概ね同じ値を有する。この位置からすくい角は単調に増加し、図7に示されるように中央点C1’における正のすくい角α2は、16度となる。この位置からすくい角は更に単調に増加し、図8に示されるC−C断面における正のすくい角α3は、18度となる。すくい角は、その後単調に減少し、第5切れ刃部24E’内において10度未満となる。切れ刃24’が上記したようなすくい角を有するように、すくい面部12B’は形成される。切削インサート10は、中心軸AX1に対し180度回転対称に形成されるため、切れ刃24及びすくい面部12Bも、切れ刃24’及びすくい面部12B’と同一形状を備える。
次いで図4を用いてボス面部12Aの位置について説明する。同図に示されるように、ボス面部12Aは、第2仮想平面PR2と平行な平面となるように形成される。また、ボス面部12Aと第2仮想平面PR2との距離は、第2切れ刃部24Bと第2仮想平面PR2との距離より大きく、第1切れ刃部24Aと第2仮想平面PR2との距離より小さくなる。すなわち、ボス面部12Aを含む平面と、第3切れ刃部24Cが交わるようにボス面部12Aは形成される。
図9は、切削インサート10及び切削インサート10と同一の2つの切削インサート10’及び10’’がボデー50に取り付けられたエンドミル100の斜視図である。同図に示されるように、ボデー50は、円柱状のシャンク52を備え、その回転軸AX3の先端には、切削インサートを保持するための同一構造からなる3つのチップ座面54、54’及び54’’が回転軸AX3を中心に120度間隔で形成されている。チップ座面54は、平面部を備え、この平面部に開口するように雌ねじが形成されている。切削インサート10の貫通穴Hを貫通する雄ねじをこの雌ねじに螺合して雄ねじの頭部で第1端面12のボス面部12Aを押圧し、第2端面14に形成されるボス面部14Aをチップ座面54の平面部に当接させることにより、切削インサート10は、ボデー50に固定される。ボデーの回転軸AX3方向からみた先端視において、回転軸AX3と切削インサート10の切れ刃24とを結ぶ少なくとも一つの接線は、第1切れ刃部24A内の点を通過するようにチップ座面54は形成されている。切削インサート10’及び10’’も同様にボデー50のチップ座面54’及び54’’に取り付けられる。なお、切削インサート10は、中心軸AX1に対し180度回転対称に形成されるから、切れ刃24が欠損した後は、切れ刃24’を用いて切削することができ、また、中心軸AX2に対し180度回転対称に形成されるから、切れ刃24’が欠損した後は、第2端面14側に形成された二つの切れ刃を順次用いて切削することができる。
このようなエンドミル100を用いて、ステンレスなどの脆性材を被削材として切削する際の作用について以下に説明する。
切削インサート10を、回転軸AX3を中心に回転させると、被削材に切れ刃24が食いつき、切削が開始する。このとき、切り込む領域の面積等切削条件によるが、回転軸AX3を中心とする回転方向において第1切れ刃部24Aが先端に位置するように切削インサート10を取り付けることによって、第1切れ刃部24Aを被削材に食いつかせやすくすることが可能になる。第1切れ刃部24Aは、第3切れ刃部24Cのそれと比較して大きな曲率半径を有する円弧状に形成されるから、切りくずを薄く引き伸ばしやすく、このため、高送りの切削であっても、第1切れ刃部24Aへの切削抵抗を低減し、切削インサート10の長寿命化を図ることが可能となる。また、第1切れ刃部24Aを円弧状に形成したので、切りくずを左右に分かれさせやすく、すなわち、外周側に位置する第2周側面部18方向に伸展する切りくずと、内周側に位置する第4周側面部22方向に伸展する切りくずに分けやすくすることが可能になる。このとき、第1切れ刃部24Aと内周側に隣接する第3切れ刃部24Cのすくい角は、第1切れ刃部24Aのすくい角より大きくなるようにすくい面部12Bは形成されている。このため、第1切れ刃部24Aから内周側に進行する切りくずがすくい面部12Bに接触することにより、切削インサート10が切削抵抗を受けたり、切りくずがカールして第1周側面部18の方向に進行して噛み込みが発生することを抑制し、切りくずが引き延ばされることを促進することができる。ただし加工条件によっては、例えば、中央点C1付近の第3切れ刃部24Cから加工が開始されることもある。
さらにこのような第1切れ刃部24Aは、中央点C1よりも外周側に離間して形成される。本出願の発明者らが様々な形状を有する切削インサートを用いて、シミュレーションを実施し、また、実際に切削を行って、生成される切りくずの形状や、切れ刃への欠損、切削抵抗や、切削インサートの温度等を比較したところ、中央点C1付近に第1切れ刃部24Aに相当する切れ刃を形成すると、切りくずの多くが外周方向に伸展してしまい、特に、切削インサート10が被削材を切削して形成される、被削材における複数の内壁面に囲まれる閉鎖空間内を継続的に切削インサート10が位置しながら加工する際に、切削インサート10の外周側に対向する被削材の内壁面と切削インサート10の間に切りくずが挟まって噛み込みを生じてしまう可能性が高くなることがわかった。切削インサート10において被削材に食いつくことが期待される第1切れ刃部24Aは、第1距離L1に相当する距離だけ中央点C1から離間するため、切りくずを左右に分散させやすい。さらに、第1切れ刃部24Aが食いついた後、直線状に形成された第3切れ刃部24Cで被削材が切削されるから、曲率が大きい切れ刃で切削する場合と比較して、切りくずがカールされにくく引き伸ばされることを促進することができる。ここで切削インサートの厚みをある程度確保するためには、第3切れ刃部24Cに接続する円弧状の第2切れ刃部24Bが必要になるが、第2切れ刃部24Bを中央点C1から、第1距離L1より大きい第2距離L2の位置に設けた。このため、曲率が大きい結果、仮に切削に関与すると切りくずをカールさせる原因になりやすい第2切れ刃部24Bが切削に関与する場合が少なくなり、曲率が小さい第1切れ刃部24Aと更に曲率が小さいかゼロとなる第3切れ刃部24Bを主に用いて切削を完了することが可能になる。
また、第4切れ刃部24Dは、第2仮想平面PR2と平行か、あるいは、第2周側面部20に近づくほど第2仮想平面PR2との距離が増加するように形成することが好ましい。このような構成とすることによって、外周方向に伸展する切りくずが過大になって溝等の閉鎖空間を加工した際に噛み込みが起きる可能性を低減することが可能になる。ただし本発明はこれに限られるものではなく、例えば、閉鎖空間を加工することを意図しない切削インサートにおいて、第4切れ刃部24Dに相当する位置の切れ刃を第2周側面部20に近づくほど第2仮想平面PR2との距離が減少するように形成してもよい。このように形成することによって、径方向外側への切りくずの伸展が促進されるが、より第1切れ刃部24Aを食いつかせやすくなる。
またボス面部12Aは、第2切れ刃部24Bよりも第2仮想平面PR2から離れた位置に形成されるので、第1切れ刃部24A及び第3切れ刃部24Cにより生成された切りくずがボス面部12Aに衝突し、ボス面部12Aが傷つく可能性を低減することができる。切りくずがボス面部12Aに衝突すると、加工の安定性が損なわれ、また、ボス面部12Aをボデー50に当接させる際の固定性が損なわれる。
なお、第3切れ刃部24Cは、直線でなくてもよく曲線から構成してもよい。ただし、第1切れ刃部24Aよりも曲率半径が大きい曲線であることが好ましい。
また、ボス面部12Aは、ボデー50に固定されるための曲面から構成してもよい。
10…切削インサート、12…第1端面、12A…ボス面部、12B…すくい面部、14…第2端面、14A…ボス面部、16…第1周側面部、18…第2周側面部、20…第3周側面部、22…第4周側面部、24…切れ刃、30A…接続部、30B…接続部、50…ボデー、52…シャンク、54…チップ座面、100…エンドミル

Claims (6)

  1. 第1端面と、
    前記第1端面と反対方向を向いた第2端面と、
    前記第1端面と前記第2端面とを接続し、第1方向を向いた第1周側面部、前記第1方向と垂直な第2方向を向いた第2周側面部、前記第2方向と垂直な第3方向を向いた第3周側面部及び前記第3方向と垂直な第4方向を向いた第4周側面部を備える周側面と、
    前記第1端面と前記第1周側面部との接続部の少なくとも一部に形成される切れ刃と、
    を備え、被削物に対して所定の回転軸で相対的に回転することにより、前記切れ刃で前記被削物を切削する切削インサートであって、
    前記第1端面と前記第1周側面部との接続部は、前記第1端面に対向する方向から見た端面視において、前記第2周側面部から離れ、前記第4周側面部に近づくほど、前記第1方向に進行するように傾斜する第1接続部と、前記第1接続部の一端である中央点に接続し、前記第2周側面部から離れ、前記第4周側面部に近づくほど前記第3方向に進行するように傾斜する第2接続部とを備え、
    前記切れ刃は、前記第1周側面部に対向する方向から見た側面視において、第1曲率半径を有する凸円弧状であって、前記第1方向及び前記第3方向に平行で、前記第2方向及び前記第4方向に垂直で、かつ、前記中央点を含む仮想平面から第1距離離れた前記第1接続部上に形成される第1切れ刃部と、前記側面視において、前記第1曲率半径より小さい第2曲率半径を有する凹円弧状であって、前記仮想平面から前記第1距離より大きい第2距離離れた前記第2接続部上に形成される第2切れ刃部と、前記第1切れ刃部と前記第2切れ刃部とを接続するように前記第1接続部及び前記第2接続部にまたがって形成される底刃部とを備え
    前記第1端面及び前記第2端面を貫通する貫通穴が形成され、
    前記仮想平面は、前記貫通穴の中心軸を含み、
    前記仮想平面に垂直で、かつ、前記第1周側面部、前記第2周側面部、前記第3周側面部及び前記第4周側面部を通過する第2仮想平面と、前記第1切れ刃部、前記底刃部及び前記第2切れ刃部との距離は、前記第2周側面部から離れ、前記第4周側面部に近づくほど小さくなる、
    切削インサート。
  2. 前記第2仮想平面を基準とする前記切れ刃のすくい角は、前記第1切れ刃部と前記底刃部との接続点において正の値を有し、かつ、前記接続点から前記中央点に至るまで、広義単調増加することを特徴とする請求項1に記載の切削インサート。
  3. 前記切削インサートは、前記貫通穴の中心軸に対して180度回転対称に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の切削インサート。
  4. 前記切削インサートは、前記貫通穴の中心軸に垂直で、前記第1周側面部及び前記第3周側面部を通過する第2中心軸に対して180度回転対称に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の切削インサート。
  5. 前記第1端面は、前記貫通穴を囲む平面部を有し、
    前記側面視において、前記平面部を含む平面は、前記底刃部と交わり、前記第2切れ刃部は、前記平面と前記第2端面との間に形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の切削インサート。
  6. 回転軸を中心に回転し、切削インサートを保持するためのチップ座を有するボデーと、
    前記チップ座に前記第2端面が当接するように前記ボデーに取り付けられる請求項1からの何れか一項に記載の切削インサートと、
    を備える切削工具。
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