JP3953068B2 - スローアウェイ式ボールエンドミル - Google Patents
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Description
このチップは、上面と側面との稜線部に形成された略1/4円弧状をなす切刃が、複数の正弦波形を含み、切削抵抗を低減させ、ワークから生成される切屑の破断及び除去を向上させるようにしたものである。
また、この波形状をなす切刃は、波形を構成する溝部の深さ(山部の高さ)が、すべての溝(山)について同一となっている、すなわち、切刃がその全長に亘って同一の振幅を有する波形状をなしている。
しかしながら、アップカット(切屑厚みが薄いところから厚くなるようにワークを切削していく上向き削り)でワークを切削していく場合には、最後に厚みの厚い切屑が圧縮されるので、この切屑が分断されずに連なって生成されてしまうことがあり、切屑排出性を良好に保つことが困難となるおそれがあった。
なお、アップカットの場合でも切屑を確実に分断することができるように、セレーションを構成する溝部の深さを深く設定したならば、切屑の分断には効果があるものの、この切刃の波形がすべての溝部と山部について同一の振幅を有するように形成されていることから、必然的に振幅の非常に大きい波形状をなす切刃とならざるを得ず、切刃強度を不用意に低めてしまうので、効果的な解決手段とは成り得なかった。
そして、セレーションを構成する溝部のうちの少なくとも一つが、他の溝部よりも深く形成された深溝部とされているため、この深溝部の存在によって、切削抵抗を低減するだけでなく、切屑の安定した分断効果を確実に得ることができる。このように、他の溝部よりも深さの深い深溝部によって、切屑分断効果を得るようにしていることから、アップカットのように切屑を分断しづらい状況であったとしても、深溝部のみの深さを設定することによって確実な切屑分断効果を得ることができ、他の溝部までを深く形成する必要がなくなるので、切刃強度を必要以上に低下させてしまうことがない。
ここで、深溝部の溝深さが1.2mmより浅すぎると、深溝部による切屑の確実な分断効果を得ることができなくなってしまうおそれがあり、一方、深溝部の溝深さが3.0mmより深すぎても、この深溝部周辺の切刃強度を必要以上に低下させてしまうおそれがある。
それゆえ、本発明では、深溝部の深さを1.2〜3.0mmの適切な範囲に設定している。
ここで、深溝部を除く他の溝部(浅溝部)の深さが0.3mmより浅すぎると、浅溝部による切削抵抗低減の効果が得られにくくなってしまうおそれがあり、一方、浅溝部の深さが1.2mmより深すぎても、この浅溝部周辺の切刃強度の低下を招いてしまうおそれがある。
それゆえ、本発明では、浅溝部の深さを、0.3〜1.2mmの適切な範囲に設定している。
ここで、隣接する溝部の底同士の間の距離が2.0mmより小さすぎると、上面の辺綾部に形成される切刃が非常に細かい波形状を呈し、一方、隣接する溝部の底同士の間の距離が10.0mmより大きすぎても、上面の辺綾部に形成される切刃が非常に緩やかな波形状を呈することとなるので、切削抵抗の低減を図ったり、切屑を分断することができなくなってしまうおそれが生じてしまう。
それゆえ、本発明では、切刃上における隣接する溝部の底同士の間の距離を、2.0〜10.0mmの適切な範囲に設定している。
つまり、切刃によって切削されたワークの加工面に、この切刃の波形が反映されてしまうときに、上記のように例えば2枚のチップを配置することで、ワークの加工面の面粗さの低下を抑制することができる。
そして、セレーションを構成する溝部のうちの少なくとも一つが、他の溝部よりも深く形成された深溝部とされているため、この深溝部の存在によって、切削抵抗を低減するだけでなく、切屑を安定した分断効果を確実に得ることができる。このように、他の溝部よりも深さの深い深溝部によって、切屑分断効果を得るようにしていることから、アップカットのように切屑を分断しづらい状況であったとしても、深溝部のみの深さを適宜設定することによって、他の溝部までを深く形成する必要がなくなり、これにより、切刃強度を低下させることなく、確実な切屑分断効果を得ることができる。
図1は本発明の実施形態であるスローアウェイ式ボールエンドミルに装着されるチップの斜視図、図2は同チップの上面図、図3は同チップのA方向矢視図、図4は同チップのB方向矢視図、図5は同チップの切刃を平面に展開して見たときの仮想の説明図である。
なお、これら略1/4円弧状をなす一対の切刃17,17は、詳しくは、平面視において、各切刃17の先端側部分を構成してワークの主たる切削に供されることになる略1/4円弧状をなす円弧部分と、この略円弧部分に接線の関係で滑らかに連なり、各切刃17の後端側部分を構成する略直線状をなす直線部分とから構成されている。
上面12に傾斜面12A,12Bが形成されていることで、一方の切刃17の先端側部分を構成する円弧部分の先端側一部分が、傾斜面12A上に形成されているとともに、一方の切刃17の後端側部分を構成する直線部分が、傾斜面12B上に形成されている。
また、他方の切刃17にも、略円弧状の第一傾斜切刃17Cと略直線状の第二傾斜切刃17Dとが形成されていて、一方の切刃17と同様の構成とされている。
なお、一方の切刃17の長手方向(延在方向)の両端に位置する山部15は、その一部が上面12に形成された傾斜面12A,12Bにさしかかっているために、他の山部15よりもわずかに低い高さとなっている。
そして、これら第一深溝部14Aと第二深溝部14Cとは、一方の切刃17における略1/4円弧状をなす円弧部分(第二傾斜切刃17Dを除く切刃17)を複数(3つ)に略等分割する位置に交差するようにそれぞれ配置されている。
さらには、第一深溝部14A,第二深溝部14Cのうちでも、第二深溝部14Cが第一深溝部14Aよりも深く形成されているため、このブレーカ傾斜面12Dも、第二深溝部14Cに接続される部分の方(切刃17の先端のコーナー部17Aから遠ざかった位置に配置された深溝部に接続される部分の方)が、第一深溝部14Aに接続される部分よりも切刃17に近づくように張り出している。
すなわち、この切刃17上における溝部14の深さの関係が、(第一浅溝部14Bの深さHB)=(第二浅溝部14Dの深さHD)<(第一深溝部14Aの深さHA)<(第二深溝部14Cの深さHC)、となっているのである。
また、切刃17上における隣接する山部15の頂点15X同士の間の距離(山部15間ピッチ)も、略等間隔になるように設定され、かつ、隣接する溝部14の底14X同士の間の距離Pと略同一となっている。加えて、隣接する溝部14の底14Xと山部15の頂点15Xとの間の距離(溝部14と山部15間のピッチ)も略等間隔になるように設定されている。
図6は本実施形態であるスローアウェイ式ボールエンドミルの平面図、図7は同ボールエンドミルの側面図、図8は同ボールエンドミルの先端面図である。
これらのチップポケット22A,22Bの工具回転方向T前方側を向く壁面には、それぞれの工具本体先端側に第一のチップ取付座23,23が形成されているとともに、それぞれの工具本体後端側に第二のチップ取付座24,24が形成されている。
また、この第一のチップ取付座23,23の底面23A,23Aは、図7に示すように工具本体後端側に向かうにしたがい工具回転方向T後方側に傾斜するように形成されている。
また、第一のチップ取付座23の底面23Aに形成されたキー23C,23Cがチップ10のキー溝18,18に係合しており、チップ10のズレが防止されている。
また、切刃17における第一傾斜切刃17Cは、そのアキシャルレーキ角が負角のネガに設定される一方、切刃17における第二傾斜切刃17Dは、そのアキシャルレーキ角が正角のポジに設定される。
このチップ10′は、図6及び図8に示すように、チップ10′の切刃17の先端のコーナー部17Aが、チップ10の切刃17の先端のコーナー部17Aよりもわずかに工具本体外周側に位置させられ、そこからチップ10′の切刃17が工具本体後端外周側に延びており、チップ10′の切刃17の軸線O回りの回転軌跡が、チップ10の切刃17の回転軌跡とオーバーラップするように配置されている。
さらに、一方のチップポケット22Aの工具本体後端側の第二のチップ取付座24には、略四角形平板状をなすチップ40が、その上面の辺稜部に形成された略直線状をなす切刃41の回転軌跡を、他方のチップポケット22Bの第二のチップ取付座24に装着されたチップ30の切刃31の回転軌跡とオーバーラップさせるように装着されている。
これにより、略1/4円弧状をなす切刃17から生成される切屑の厚みにあわせて、必要十分な深さをもった第一深溝部14A及び第二深溝部14Cを配置できることとなり、切屑を確実に分断しつつも、必要以上の切刃強度の低下を招くことがなくなるのである。
それゆえ、本実施形態では、切刃17上における第一深溝部14Aと第二深溝部14Cとの深さHA,HCを、1.2〜3.0mmの適切な範囲に設定したことにより、切刃強度の低下を必要以上に生じさせることなく、安定して切屑を分断することができる。
それゆえ、本実施形態では、切刃17上における第一浅溝部14Bと第二浅溝部14Dとの深さHB,HDを、0.3〜1.2mmの適切な範囲に設定したことにより、切刃強度の低下を招くことなく、安定して切削抵抗の低減を図ることができる。
それゆえ、本実施形態では、距離Pを、2.0mm〜10.0mmと適切な範囲に設定したことにより、波形状の切刃17による切削抵抗の低減効果と、切屑の分断効果を安定して得ることができる。
これに対して、本実施形態では、チップ10の切刃17がなす各溝部14の回転軌跡が通過する位置及び各山部15の回転軌跡が通過する位置が、それぞれ、チップ10′の切刃17がなす各山部15の回転軌跡が通過する位置及び各溝部14の回転軌跡が通過する位置と略同一になるように、チップ10,10′が装着されている。
ただし、本実施形態においては、チップ10の上面12の長手方向の両端側部分に、傾斜面12A,12Bが形成されているが、チップ10の厚みが十分に大きく確保できる場合などには、この傾斜面12A,12Bは形成されていなくてもよい。
このため、側面13における第二逃げ面13Bについては、チップ10の第一のチップ取付座23への固定に使用されないことから、厳密な精度管理が必要とならず、その研磨加工を必ずしも必要としないのである。
それゆえ、側面13については、その第一逃げ面13Aのみを研磨加工によって精度良く仕上げればよく、加工時間の大幅な短縮を図ることができる。
例えば、セレーション16を構成する溝部14と山部15とが、切刃17から離間するにしたがい、下面11に近づく方向に傾斜していて、切刃17に対してポジのすくい角が与えられているようにしてもよいし、切刃17から離間するにしたがい下面11から離れる方向に傾斜していて、切刃17に対してネガのすくい角が与えられているようにしてもよい。
この傾斜角は、切刃強度や切れ味を考慮すると、−15゜〜15゜の範囲に設定されることが好ましい(切刃17にポジのすくい角が与えられる方向を正とし、ネガのすくい角が与えられる方向を負とする)。
さらに、一対の切刃17,17が形成されて略木の葉型状とされたチップ10を用いているが、これに限定されることなく、チップの片側のみに切刃が形成されているようなチップを用いてもよい。
11 下面
12 上面
12A,12B 傾斜面
13 側面
14 溝部
14A 第一深溝部
14B 第一浅溝部
14C 第二深溝部
14D 第二浅溝部
15 山部
16 セレーション
17 切刃
17A,17B コーナー部
17C 第一傾斜切刃
17D 第二傾斜切刃
20 スローアウェイ式ボールエンドミル
21 工具本体
HA 第一深溝部の深さ
HB 第一浅溝部の深さ
HC 第二深溝部の深さ
HD 第二浅溝部の深さ
O 軸線
P 隣接する溝部の底同士の距離
Claims (11)
- 工具本体の先端部に、切刃を有するスローアウェイチップが装着されたスローアウェイ式ボールエンドミルであって、
前記スローアウェイチップは、着座面とされる下面に対向する上面と側面との稜線部に略円弧状の切刃が形成されてなり、前記工具本体に装着されたときに、該切刃の回転軌跡が略球面の一部をなすように形成され、前記上面に、複数の溝部と山部とが交互に配列されてなるセレーションが前記切刃に交差するように形成されて、該切刃が波形状をなし、かつ、前記溝部のうちの少なくとも一つが、他の溝部よりも深く形成された深溝部とされていることを特徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。 - 請求項1に記載のスローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、
前記スローアウェイチップの前記溝部と山部とが曲面によって構成されていることを特徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。 - 請求項1または請求項2に記載のスローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、
前記スローアウェイチップの前記溝部と山部とがそれぞれ前記切刃に略直交する方向に延びて該切刃に交差していることを特徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。 - 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、
前記スローアウェイチップの前記深溝部が、前記切刃におけるワークの切削に供される切刃部分を複数に略等分割する位置に配置されていることを特徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、
前記スローアウェイチップの前記深溝部が複数形成されているとともに、これら深溝部の深さが前記切刃の先端から遠ざかるにしたがい順次深くなるように設定されていることを特徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。 - 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のスローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、
前記スローアウェイチップの前記切刃を、前記溝部と山部とが延びる方向に沿って前記側面に対向して見たとき、
前記切刃上における前記深溝部の深さが、1.2〜3.0mmの範囲に設定されていることを特徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。 - 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のスローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、
前記スローアウェイチップの前記切刃を、前記溝部と山部とが延びる方向に沿って前記側面に対向して見たとき、
前記切刃上における前記深溝部を除く他の溝部の深さが、0.3〜1.2mmの範囲に設定されていることを特徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。 - 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のスローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、
前記スローアウェイチップの前記切刃を、前記溝部と山部とが延びる方向に沿って前記側面に対向して見たとき、
前記切刃上における隣接する前記溝部の底同士の間の距離が、2.0〜10.0mmの範囲に設定されていることを特徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。 - 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のスローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、
前記スローアウェイチップの前記切刃を、前記溝部と山部とが延びる方向に沿って前記側面に対向して見たとき、
前記切刃上における隣接する前記溝部の底同士の間の距離が、略等間隔になるように設定されていることを特徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。 - 請求項9に記載のスローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、
前記スローアウェイチップが2枚装着されるとともに、
前記スローアウェイチップが、一方の前記スローアウェイチップの前記切刃における前記溝部の回転軌跡が通過する位置と、他の前記スローアウェイチップの前記切刃における前記山部の回転軌跡が通過する位置とが略同一になるように配置されたことを特徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。 - 請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のスローアウェイ式ボールエンドミルにおいて、
前記スローアウェイチップの前記切刃の先端部分に連なる前記上面が、該切刃の先端に向かうにしたがい前記下面に近づく傾斜面とされていて、この傾斜面を除く前記上面に前記セレーションが形成されていることを特徴とするスローアウェイ式ボールエンドミル。
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