JPWO2020245878A1 - ボールエンドミル及び切削インサート - Google Patents

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Abstract

ボール半径R1よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される大径刃111a〜111eを備えるので、単一の曲率半径の円弧状に形成されるボール刃で平面を切削する場合に比べ、各大径刃111a〜111eによる平面の切削によって加工面の面粗さを向上させることができる。更に、各大径刃111a〜111eが円弧状に形成されるので、直線状の切れ刃で曲面を切削する場合に比べ、各大径刃111a〜111eでの曲面の切削によって加工面の面粗さを向上させることができる。よって、各大径刃111a〜111eによる平面および曲面の切削時にピックフィードを大きくすることができるので、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることができる。

Description

本発明は、ボールエンドミル及び切削インサートに関し、特に、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることができるボールエンドミル及び切削インサートに関する。
半球状のボール刃を備えるボールエンドミルが知られている。単一の曲率半径の円弧状に形成されるボール刃で平面の切削(仕上げ加工)を行う場合、加工面の面粗さを向上させるためにはピックフィード(加工を行うピッチ)を小さくする必要がある。よって、加工能率が低下するという問題点がある。
この問題点に対し、特許文献1には、ボール刃(切刃)に複数の直線状切刃を設ける技術が記載されている。この技術によれば、同一のピックフィードで平面の切削を行う場合、単一の曲率半径の円弧状に形成されるボール刃での切削に比べ、直線状切刃での切削によって加工面の面粗さを向上させることができる。即ち、直線状切刃で平面の切削を行うことにより、ピックフィードを大きくしても円弧状のボール刃で切削した場合と同等の面粗さを得ることができるので、加工能率を向上させることができる。
特開平07−132407号公報(例えば、段落0019,0026〜0028、図2,3)
しかしながら、上述した従来の技術では、直線状切刃によって曲面の切削を行うと面粗さが低下し易くなる。よって、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることが困難であるという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることができるボールエンドミル及び切削インサートを提供することを目的としている。
この目的を達成するために本発明のボールエンドミル及び切削インサートは、軸線回りの回転軌跡が略半球状に形成されるボール刃を前記軸線方向の先端に備えるものであり、前記ボール刃は、そのボール刃のボール半径よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される大径刃を備え、前記ボール刃の中心から前記ボール半径の80%以上120%以下の領域内において、前記ボール刃の先端から外周端にかけて複数の前記大径刃が形成される。
請求項1記載のボールエンドミル及び請求項10記載の切削インサートによれば、ボール刃は、そのボール刃のボール半径よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される大径刃を備えるので、単一の曲率半径の円弧状に形成されるボール刃で平面を切削する場合に比べ、大径刃での平面の切削によって加工面の面粗さを向上させることができる。更に、大径刃が円弧状に形成されるので、直線状の切れ刃で曲面を切削する場合に比べ、大径刃での曲面の切削によって加工面の面粗さを向上させることができる。
よって、大径刃による平面および曲面のそれぞれの切削時にピックフィードを大きくすることができるので、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることができるという効果がある。
また、ボール刃の中心からボール半径の80%以上120%以下の領域内において、ボール刃の先端から外周端にかけて複数の大径刃が形成されるので、大径刃の曲率半径がボール半径よりも大きい場合であっても、大径刃によって形成されるボール刃の刃形(輪郭形状)を円弧に近い形状とすることができる。よって、大径刃よりも小さい曲率半径の曲面を複数の大径刃によって同時に切削する場合に、加工能率が低下することを抑制できるという効果がある。
請求項2記載のボールエンドミルによれば、請求項1記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。ボール刃の先端から外周端側にかけての所定領域内において、複数の大径刃の切削幅がそれぞれ同一とされる。これにより、3軸加工で切削を行う(被削物に対するボールエンドミルの相対的な角度が不変である)場合に、角度の異なる加工面(平面や曲面)を各大径刃で切削した際の面粗さを均一にし易くできる。よって、3軸加工で切削を行う場合であっても、角度の異なる平面や曲面における加工能率をバランス良く向上させることができるという効果がある。
なお、所定領域とは、少なくとも「ボール刃の最も先端側に位置する大径刃から、最も外周端側に位置する大径刃に隣り合う大径刃までの領域」であり、より好ましくは、「ボール刃の最も先端側に位置する大径刃から、最も外周端側に位置する大径刃までの領域」である。
請求項3記載のボールエンドミルによれば、請求項2記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。複数の大径刃の曲率半径がそれぞれ同一とされるので、3軸加工で切削を行う場合に、角度の異なる加工面を各大径刃で切削した際の面粗さをより均一にし易くできる。よって、3軸加工で切削を行う場合であっても、角度の異なる平面や曲面における加工能率をよりバランス良く向上させることができるという効果がある。
請求項4記載のボールエンドミルによれば、請求項3記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。ボール刃の中心を中心にしてボール半径の仮想円を描いた場合に、その仮想円が複数の大径刃のそれぞれの回転軌跡に内接するので、軸線に対する各大径刃の傾斜をボール刃の先端から外周端にかけて徐々に変化させることができる。よって、3軸加工で切削を行う場合であっても、角度の異なる平面や曲面における加工能率を更にバランスよく向上させることができるという効果がある。
また、軸線に対する各大径刃の傾斜をボール刃の先端から外周端にかけて徐々に変化させることにより、角度の異なる平面や曲面を5軸加工で切削する場合に、それら平面や曲面に各大径刃を沿わせるためのボールエンドミルの振り角を極力小さくすることができる。よって、5軸加工で切削を行う場合に、角度の異なる平面や曲面における加工能率を向上させることができるという効果がある。
更に、ボール刃の中心を中心にしてボール半径の仮想円を描いた場合に、その仮想円が複数の大径刃のそれぞれの回転軌跡に内接するので、大径刃によって形成されるボール刃の刃形をより円弧に近い形状とすることができる。よって、大径刃よりも小さい曲率半径の曲面を複数の大径刃で同時に切削する場合に、加工能率が低下することをより効果的に抑制できるという効果がある。
請求項5記載のボールエンドミルによれば、請求項4記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。ボール刃の先端から外周端にかけて5以上の大径刃が形成されるので、大径刃の数が5未満である場合に比べ、3軸加工で切削を行う場合に様々な角度の平面や曲面を各大径刃で切削することができる。よって、3軸加工で切削を行う場合であっても、角度の異なる平面や曲面の加工能率をよりバランス良く向上させることができるという効果がある。
また、ボール刃の先端から外周端にかけて16以下の大径刃が形成されるので、大径刃の数が16を超える場合に比べ、各大径刃の切削幅を大きく確保することができる。これにより、大径刃による切削時にピックフィードを大きくすることができるので、各大径刃による加工能率を向上させることができるという効果がある。
請求項6記載のボールエンドミルによれば、請求項1から5のいずれかに記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。ボール刃は、大径刃どうしの間を接続しボール半径よりも小さい曲率半径の円弧状に形成される複数の小径刃を備えるので、各大径刃の間を小径刃によって滑らかに接続することができる。これにより、複数の大径刃で同時に切削する場合に、各大径刃の接続部分でチッピングが生じることを抑制できるという効果がある。
請求項7記載のボールエンドミルによれば、請求項1又は2に記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。ボール刃の最も先端側に位置する大径刃は、他の大径刃よりも曲率半径および切削幅が大きくされる。これにより、例えば、軸線と直交する平面を3軸加工で切削する場合に、ボール刃の最も先端側に位置する大径刃での切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができるという効果がある。
請求項8記載のボールエンドミルによれば、請求項1又は2に記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。ボール刃の最も外周端側に位置する大径刃は、他の大径刃よりも曲率半径および切削幅が大きくされる。これにより、例えば、軸線と平行な平面を3軸加工で切削する場合に、ボール刃の最も外周端側に位置する大径刃での切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができるという効果がある。
請求項9記載のボールエンドミルによれば、請求項1又は2に記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。ボール刃の中心を通る仮想線であって軸線に対して45°の角度となる仮想線上に位置する大径刃は、他の大径刃よりも曲率半径および切削幅が大きくされる。これにより、例えば、軸線に対して傾斜する加工面を3軸加工で切削する場合に、軸線に対して45°の角度となる仮想線上に位置する大径刃での切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができるという効果がある。
(a)は、本発明の一実施形態におけるボールエンドミルの正面図であり、(b)は、図1(a)のIIb−IIb線におけるボールエンドミルの部分拡大断面図である。 (a)は、切削インサートの正面図であり、(b)は、図2(a)の矢印IIb方向視における切削インサートの側面図であり、(c)は、図2(a)の矢印IIc方向視における切削インサートの底面図である。 切削インサートの第1ボール刃および第2ボール刃の刃形を模式的に示した模式図である。 (a)は、本発明のボールエンドミルによってワークを切削する様子を示す模式図であり、(b)は、単一Rのボールエンドミルによってワークを切削する様子を示す模式図である。 (a)は、ボールエンドミルによってワークを3軸加工で切削する様子を示す模式図であり、(b)は、ボールエンドミルによってワークを5軸加工で切削する様子を示す模式図である。 (a)は、第1の変形例における切削インサートの第1ボール刃および第2ボール刃の刃形を模式的に示した模式図であり、(b)は、第2の変形例における切削インサートの第1ボール刃および第2ボール刃の刃形を模式的に示した模式図である。 第3の変形例における切削インサートの第1ボール刃および第2ボール刃の刃形を模式的に示した模式図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、ボールエンドミル1の構成について説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態におけるボールエンドミル1の正面図であり、図2(b)は、図1(a)のIIb−IIb線におけるボールエンドミル1の部分拡大断面図である。
図1に示すように、ボールエンドミル1は、その基端側の部位を構成するシャンク部2と、そのシャンク部2の先端に接続される本体部3と、を備え、本体部3の先端に切削インサート100が着脱自在に固定される刃先交換式のボールエンドミルとして構成される。
シャンク部2及び本体部3は、それぞれ軸線O回りの円柱状に形成される。シャンク部2が工作機械の主軸に装着され、軸線O回りに回転させられることで被削材の切削加工が行われる。
本体部3の先端側には、軸線Oと直交する方向(図1(b)の上下方向)に所定間隔を隔てる一対の固定部30が形成される。それら一対の固定部30の間には、本体部3の基端側(図1(b)の右側)に向けて凹む断面矩形の凹部31が形成され、この凹部31に切削インサート100が挿入可能に構成される。
一対の固定部30のうちの一方(図1(b)の上側)の固定部30には貫通孔30aが形成され、他方(図1(b)の下側)の固定部30には貫通孔30aに対応した位置にめねじ孔30bが形成される。凹部31に切削インサート100を挿入した状態で、固定部30の貫通孔30aと切削インサート100の取付穴104とに挿入したねじ4をめねじ孔30bに締結することにより、固定部30(凹部31)に切削インサート100が固定される。
一対の固定部30の先端側は略半球状に形成されており、固定部30に切削インサート100が固定された状態においては、切削インサート100の第1ボール刃110及び第2ボール刃120が、正面視において固定部30の周囲に露出するように構成されている。
次いで、図2を参照して、切削インサート100の構成について説明する。図2(a)は、切削インサート100の正面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印IIb方向視における切削インサート100の側面図であり、図2(c)は、図2(a)の矢印IIc方向視における切削インサート100の底面図である。
なお、以下の説明においては、切削インサート100を単体で説明する場合においても、ボールエンドミル1(図1参照)に取付けられた状態を基準にして切削インサート100の各部について説明する。よって、ボールエンドミル1に切削インサート100が取り付けられた状態(図1の状態)において、ボールエンドミル1の先端側を構成する部位を切削インサート100の先端、それとは反対側の部位を切削インサート100の基端、ボールエンドミル1の外周端側を構成する部位を切削インサート100の外周端とそれぞれ定義して説明する。また、切削インサート100の厚み方向(図2(a)の紙面垂直方向)を単に「厚み方向」と記載して説明する。
図2に示すように、切削インサート100は、超硬合金等の硬質材料を用いて略平板状に形成され、軸線Oに対して180°回転させた場合に同一形状となる表裏対称の形状となっている。切削インサート100は、厚み方向視(図2(a)参照)において円の基端側(図2(a)の上側)の一部が切欠かれた形状とされ、切削インサート100の先端側は、厚み方向視において略半円状に形成される。
ここで、切削インサート100の基端側の面であって軸線Oと直交する面を基端面101と定義し、切削インサート100の厚み方向(軸線Oと直交する方向)を向く面を一対の側面102,103と定義する。
一対の側面102,103を貫通するようにして断面円形の取付穴104が形成され、この取付穴104は、後述するボール刃の中心C(図2(a)参照)と略一致する位置に形成される。切削インサート100の先端(図2(a)の下側の端部)から基端面101の外周端側(図2(a)の左右方向端部)にかけた切削インサート100の外周縁部には、一対の側面102,103から厚み方向に凹むようにして一対のすくい面105が形成される。なお、一対のすくい面105のうち、第2ボール刃120のすくい面105については図示を省略する。
これら一対のすくい面105は、ボールエンドミル1(図1参照)取り付けられた状態における切削インサート100の回転方向T(図2(c)の反時計回りの方向)の前方側を向く面である。一対のすくい面105の回転方向Tの後方側には、すくい面105に連なるようにして一対の逃げ面106,107が形成され、逃げ面106,107とすくい面105との交差稜線部に第1ボール刃110及び第2ボール刃120が形成される。
第1ボール刃110及び第2ボール刃120は、回転方向Tの前方側に向けて凸の湾曲形状に形成され(図2(b)参照)、切削インサート100の先端視(図2(c)参照)において、第1ボール刃110及び第2ボール刃120によって略S字状のボール刃が形成される。
第1ボール刃110及び第2ボール刃120は、厚み方向視において切削インサート100の先端に向けて凸の略半円状に形成される切れ刃である。第1ボール刃110及び第2ボール刃120は実質的に同一の構成であるので、第2ボール刃120には第1ボール刃110と同一の符号を付して説明する。
第1ボール刃110及び第2ボール刃120は、それら第1ボール刃110及び第2ボール刃120の中心C(軸線O上の中心)から遠ざかる方向に凸の円弧状に形成される複数(本実施形態では、5つ)の大径刃111a〜111eと、それら複数の大径刃111a〜111eどうしの間を接続し中心Cから遠ざかる方向に凸の円弧状に形成される複数(本実施形態では、4つ)の小径刃112と、を備える。
なお、以下の説明においては、複数の大径刃111a〜111eのうち、最も先端側に位置するものを底大径刃111a、最も外周端側に位置するものを外周大径刃111e、底大径刃111a及び外周大径刃111eの間に位置するものを傾斜大径刃111b〜111dと定義して説明するが、底大径刃111a、傾斜大径刃111b〜111d、及び、外周大径刃111eをまとめて記載する場合には、「各大径刃111」と省略して記載する。
次いで、図3を参照して、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の詳細構成について説明する。図3は、切削インサート100の第1ボール刃110及び第2ボール刃120の刃形を模式的に示した模式図である。即ち、図3は、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の刃形(輪郭形状)を厚み方向に投影した図であり、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の回転軌跡を示している。
図3に示すように、各大径刃111は、第1ボール刃110及び第2ボール刃120のボール半径R1(本実施形態では、10mm)よりも大きい曲率半径(本実施形態では、30mm)の円弧状に形成される。各小径刃112は、ボール半径R1よりも小さい曲率半径(本実施形態では、3mm)の円弧状に形成される。
なお、ボール半径R1とは、第1ボール刃110の外周端E1(第2ボール刃120の外周端E2)に向けて軸線Oから垂直に延ばした線分の長さであり、その線分と軸線Oとの交点が第1ボール刃110及び第2ボール刃120の中心Cとなる。
各大径刃111及び各小径刃112は、第1ボール刃110(第2ボール刃120)の中心Cからボール半径R1の105%以下の領域内に形成される。よって、各大径刃111の曲率半径がボール半径R1よりも大きい場合であっても、第1ボール刃110(第2ボール刃120)の刃形、即ち、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。
底大径刃111aの刃長は、外周大径刃111eの刃長(外周端E1までの刃長)と同一の長さであり、各傾斜大径刃111b〜111dの刃長は、底大径刃111aの刃長の2倍の長さとなっている。即ち、第1ボール刃110(第2ボール刃120)の先端を0°の切削位置、第1ボール刃110の外周端E1(第2ボール刃120の外周端E2)を90°の切削位置と定義すると、0°から90°にかけての切削領域において、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の刃長を等分割することで各大径刃111が形成される。
よって、0°から90°かけての切削領域において、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の2つの底大径刃111aによる切削幅L1(本実施形態では、3mm)は、各傾斜大径刃111b〜111dによる切削幅L1と同一の長さである。
また、0°から90°の切削位置までが第1ボール刃110(第2ボール刃120)の切削領域とした場合には、外周大径刃111eによる切削幅L2は、2つの底大径刃111aによる切削幅L1の2分の1となっているが、外周大径刃111eは、90°の切削位置を越えて切削インサート100の基端側に向けて延設される。即ち、外周大径刃111eも、2つの底大径刃111aによる切削幅L1と同等の切削幅での切削が可能であり、実質的には、各大径刃111による切削幅はそれぞれ同一の長さとなっている。
また、厚み方向視において、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の中心Cを中心にしてボール半径R1の仮想円V1(図3の拡大部分参照)を描いた場合、その仮想円V1が各大径刃111に内接する(各大径刃111のそれぞれの回転軌跡が仮想円V1に接する)ように構成されている。よって、軸線Oと、2つの底大径刃111aの中央における接線とがなす角度は90°であるのに対し、軸線Oと、各大径刃111b〜111eの中点における接線とがなす角度は、底大径刃111aから外周大径刃111eにかけて段階的に(本実施形態では、22.5°ずつ)変化するように構成される。
小径刃112は、隣り合う各大径刃111(例えば、底大径刃111a及び傾斜大径刃111b)を延長した2つの円弧に内接する円弧状に形成される。これにより、小径刃112によって各大径刃111どうしが滑らかに接続されている。
このように構成された第1ボール刃110及び第2ボール刃120による切削態様について、図3〜図5を参照して説明する。図4(a)は、本発明のボールエンドミルによってワークWを切削する様子を示す模式図であり、図4(b)は、単一RのボールエンドミルによってワークWを切削する様子を示す模式図である。図5(a)は、ボールエンドミル1A〜1CによってワークWを3軸加工で切削する様子を示す模式図であり、図5(b)は、ボールエンドミル1D〜1FによってワークWを5軸加工で切削する様子を示す模式図である。
図4(a)に示すように、ワークWの平面の切削(例えば、金型等の底面の仕上げ加工)を行う場合、切削インサート100の2つの底大径刃111aによって所定の切り込み深さで切削する(図4(a)の2点鎖線を参照)。
次いで、ボールエンドミル1をワークWの表面に沿って所定のピックフィードPの分だけ移動させて切削を行うが(図4(a)の実線部分を参照)、このピックフィードPの大きさは、求められる面粗さに応じて適宜設定される。この場合、底大径刃111aは、ボール半径R1(図3参照)よりも大きい曲率半径の円弧状に形成されるので、底大径刃111aによるワークWの平面の切削によって加工面の面粗さを向上させることができる。
即ち、図4(b)に示すように、例えば、ボール半径R1(図3参照)の単一の円弧状に形成されるボール刃510(以下、単に「単一Rのボール刃510」と記載する)により、上述した底大径刃111aでの切削時と同一のピックフィードPで切削を行うと、底大径刃111aでの切削に比べてカスプハイトh(削り残し)が大きくなり、面粗さが低下し易い。
言い換えると、本実施形態のように、ボール半径R1よりも大きい曲率半径の円弧状の底大径刃111aを備える構成であれば、ピックフィードPを小さくしても、単一Rのボール刃510での切削時と同等の面粗さを得ることができる。更に、底大径刃111aが円弧状に形成されるので、図示は省略するが、ワークWの曲面を切削する場合においては、その曲面に沿った切削を底大径刃111aによって行うことができる。よって、従来のようにボール刃に直線状の切れ刃を設ける場合に比べ、曲面の面粗さを向上させることができる。
従って、底大径刃111aによるワークWの平面および曲面の双方の切削時において、ピックフィードPを大きくすることができるので、平面および曲面の双方の切削における加工能率を向上させることができる。なお、このような底大径刃111aによる作用効果は、他の傾斜大径刃111b〜111dや外周大径刃111eにおいても同様に奏するものである。
ここで、ボールエンドミル1(図1参照)による切削は、ワークWに対するボールエンドミル1の傾斜(相対的な角度)が一定の状態とされる3軸加工や、ボールエンドミル1の傾斜が可変とされる5軸加工で行われる。これら3軸加工や5軸加工における第1ボール刃110及び第2ボール刃120の切削態様について更に説明する。まず、3軸加工について説明する。
図5(a)に示すように、ワークWは、様々な角度の平面W1や曲面W2〜W4から構成されることがあるため、そのようなワークWの切削を1つの工具で(工具を交換することなく)行うためには、各平面W1や曲面W2〜W4の加工能率をバランスよく向上させる必要がある。
これに対して本実施形態では、切削幅L2(図3参照)が同一の長さとされる各大径刃111が、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の先端から外周端にかけて5つ設けられる。これにより、角度(軸線Oに対する傾斜角)の異なる平面W1や曲面W2,W3を各大径刃111で切削を行った場合に(図5(a)のボールエンドミル1A〜1C参照)、それら各大径刃111の切削による加工面の面粗さを均一にし易くできる。
言い換えると、複数の大径刃111を備えることにより、3軸加工のようにワークWに対するボールエンドミル1A〜1Cの相対的な角度の変更が不能である場合であっても、各平面W1や曲面W2,W3に各大径刃111を沿わせ易くできるので、角度の異なる平面W1や曲面W2,W3における加工能率をバランスよく向上させることができる。更に、各大径刃111の曲率半径がそれぞれ同一とされるので、各大径刃111の切削による加工面の面粗さをより均一にし易くできる。よって、角度の異なる平面W1や曲面W2,W3における加工能率をよりバランスよく向上させることができる。
また、軸線Oに対する各大径刃111の傾斜が底大径刃111aから外周大径刃111eにかけて徐々に変化しているため、これによっても、3軸加工を行う場合において、角度の異なる平面W1や曲面W2,W3における加工能率をよりバランスよく向上させることができる。
ここで、各大径刃111よりも大きい曲率半径の曲面W2,W3や平面W1ではなく、各大径刃111よりも小さい曲率半径(例えば、ボール半径R1と同一の半径)の曲面W4を切削する場合もある。この場合、かかる曲面W4を各大径刃111によって同時に切削することになるため(図5(a)のボールエンドミル1A参照)、曲面W4の削り残しを低減させるためには、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の刃形が円弧(単一R)に近い方が良い。
一方、本実施形態では、ボール半径R1よりも大きい曲率半径で各大径刃111が形成されているため、単一Rのボール刃に比べると曲面W4の切削時の削り残しが生じ易いが、その削り残しを極力低減できる構成となっている。
即ち、各大径刃111及び各小径刃112は、第1ボール刃110(第2ボール刃120)の中心C(図3参照)からボール半径R1の105%以下の領域内に形成されるため、各大径刃111の曲率半径がボール半径R1よりも大きい場合であっても、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。
また、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の中心Cを中心にしてボール半径R1の仮想円V1(図3の拡大部分参照)を描いた場合、各大径刃111の回転軌跡に仮想円V1が接するように構成されているため、これによっても、各大径刃111の回転軌跡を円弧に近い形状にできる。
更に、ボール半径R1よりも小さい曲率半径の円弧状に形成される各小径刃112(図3参照)によって各大径刃111どうしの間が滑らかに接続されているため、各小径刃112が非形成である場合に比べ、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。
このように、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡(第1ボール刃110及び第2ボール刃120の刃形)を円弧に近い形状とすることにより、各大径刃111の曲率半径よりも小さい半径の曲面W4を切削する場合であっても、切削時の削り残しを極力低減させることができる。よって、かかる曲面W4の切削時の加工能率が低下することを抑制することができる。
また、各小径刃112によって各大径刃111どうしの間が滑らかに接続されているため、各大径刃111によってワークWの曲面W4を同時に切削する場合であっても、各大径刃111の接続部分でチッピングが生じることを抑制できる。また、各小径刃112の切削幅は、各大径刃111の切削幅よりも小さくされているので、各大径刃111の間に小径刃112を設けた場合であっても、各大径刃111の切削幅を確保できる。よって、各大径刃111による平面および曲面の切削時にピックフィードを大きくすることができるので、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることができる。次いで、5軸加工について説明する。
図5(b)に示すように、5軸加工でワークWの切削を行う場合、ワークWに対するボールエンドミル1A〜1Cの相対的な角度を任意に設定することができるので、3軸加工で切削を行う場合に比べ、角度の異なる平面W5や曲面W6,W7の面粗さを向上させることができる。
即ち、例えば、各大径刃111に比べて曲率半径の小さい各小径刃112を最もワークW側に突出させた状態で切削を行うと、加工面の面粗さが低下し易くなる。これに対して本実施形態では、角度の異なる平面W5や曲面W6,W7に各大径刃111を沿わせるようにしてボールエンドミル1A〜1Cを傾斜させて切削することができるので、角度の異なる平面W5や曲面W6,W7の切削時の面粗さ(加工能率)を向上させることができる。
また、第1ボール刃110及び第2ボール刃120(図3参照)の先端から外周端にかけて5つの大径刃111が形成され、軸線Oに対する各大径刃111の角度が底大径刃111aから外周大径刃111eにかけて徐々に変化しているため、角度の異なる平面W5や曲面W6,W7に各大径刃111を沿わせる際に、ボールエンドミル1D〜1Fの振り角(ワークWに対する相対的な角度の調整量)を極力小さくすることができる。よって、角度の異なる平面W5や曲面W6,W7を5軸加工で切削する際の加工能率を向上させることができる。
次いで、図6及び図7を参照して切削インサート100の変形例について説明するが、上述した切削インサート100と同一の部分には同一の符号を付して説明する。まず、図6を参照して、切削インサート100の第1の変形例および第2の変形例について説明する。
図6(a)は、第1の変形例における切削インサート200の第1ボール刃210及び第2ボール刃220の刃形を模式的に示した模式図であり、図6(b)は、第2の変形例における切削インサート300の第1ボール刃310及び第2ボール刃320の刃形を模式的に示した模式図である。
なお、図6は、第1ボール刃210,310及び第2ボール刃220,320の刃形(輪郭形状)を厚み方向に投影した図であり、第1ボール刃210,310及び第2ボール刃220,320の回転軌跡を示している。
また、第1の変形例および第2の変形例における切削インサート200,300は、各大径刃111の切削幅や曲率半径が異なる点を除き、上記実施形態の切削インサート100と実質的に同一の構成であるので、第1の変形例および第2の変形例における切削インサート200,300の各大径刃111には上記実施形態の切削インサート100の各大径刃111と同一の符号を付して説明する。
図6(a)に示すように、第1の変形例における切削インサート200の各大径刃111は、第1ボール刃210及び第2ボール刃220のボール半径(本実施形態では、10mm)よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される。また、各小径刃112は、第1ボール刃210及び第2ボール刃220のボール半径よりも小さい曲率半径(本実施形態では、3mm)の円弧状に形成される。
なお、ボール半径とは、第1ボール刃210(第2ボール刃220)の外周端に向けて軸線Oから垂直に延ばした線分の長さであり、その線分と軸線Oとの交点が第1ボール刃210及び第2ボール刃220の中心Cとなる。
第1ボール刃210及び第2ボール刃220の2つの底大径刃111aによる切削幅L3と、外周大径刃111eによる切削幅L3と、底大径刃111a及び外周大径刃111eに隣り合う傾斜大径刃111b,111dによる切削幅L3とがそれぞれ同一の長さ(本実施形態では、2.5mm)となっている。また、底大径刃111a、外周大径刃111e、及び、傾斜大径刃111b,111dの曲率半径(本実施形態では、30mm)は、それぞれ同一となっている。
一方、3つの傾斜大径刃111b〜111dのうち、第1ボール刃210及び第2ボール刃220の中心Cを通る仮想線V2であって軸線Oに対して45°の角度となる仮想線V2上に位置する傾斜大径刃111c(仮想線V2上に回転軌跡を有する傾斜大径刃111c)は、他の大径刃111a,111b,111d,111eよりも切削幅L4(本実施形態では、5.6mm)及び曲率半径(本実施形態では、40mm)が大きくされる。
これにより、軸線Oに対して45°前後に傾斜するワークの加工面を3軸加工で切削する場合に、傾斜大径刃111cでの切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができる。一方、それとは異なる角度で傾斜するワークの加工面は、他の大径刃111a,111b,111d,111eで切削を行うことにより、加工面の面粗さ(加工能率)を向上させることができる。
ここで、切削インサート200を回転させた場合、軸線Oに最も近い位置に形成される底大径刃111aの周速が遅くなるため、底大径刃111aの切削時には加工面の面粗さが比較的低下し易い。一方、軸線Oから最も遠い位置に形成される外周大径刃111eの周速は比較的速いものの、外周大径刃111eで切削を行うと、軸線Oと直交する方向の力がボールエンドミルに加わり易くなる(ボールエンドミルがたわみやすくなる)ため、外周大径刃111eの切削時には加工面の面粗さが比較的低下し易い。
即ち、各大径刃111のうち、軸線Oに対して45°の角度となる仮想線V2上に位置する傾斜大径刃111cで切削を行うことが刃の周速や工具のたわみの観点から好ましい。これに対して本実施形態では、傾斜大径刃111cの切削幅L4および曲率半径が最も大きくされているため、5軸加工によって角度の異なる平面や曲面に傾斜大径刃111cを沿わせて切削することができるので、他の大径刃111a,111b,111d,111eで切削を行う場合に比べて加工面の面粗さ(加工能率)を特に効果的に向上させることができる。
なお、第1ボール刃210及び第2ボール刃220の中心Cを中心にしてボール半径の仮想円(図示せず)を描いた場合、その仮想円が、傾斜大径刃111cを除く他の大径刃111a,111b,111d,111eが内接する一方、その仮想円よりも傾斜大径刃111cが内側に形成されている。このように、中心Cを中心にしたボール半径の仮想円に各大径刃111の一部が接しない場合、第1ボール刃210及び第2ボール刃220の刃形の形状が円弧とは異なる形状になり易い。
これに対して第1の変形例では、各大径刃111及び各小径刃112は、第1ボール刃210(第2ボール刃220)の中心Cからボール半径の90%以上110%以内の領域内に形成される。よって、傾斜大径刃111bの切削幅L4や曲率半径が他の大径刃111a,111b,111d,111eの切削幅L3や曲率半径よりも大きい場合であっても、第1ボール刃210(第2ボール刃220)の刃形、即ち、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。これにより、各大径刃111の曲率半径よりも小さい半径の曲面を各大径刃111で同時に切削する場合に、加工能率が低下することを抑制できる。
図6(b)に示すように、第2の変形例における切削インサート300の各大径刃111は、第1ボール刃310及び第2ボール刃320のボール半径(本実施形態では、10mm)よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される。各小径刃112は、第1ボール刃310及び第2ボール刃320のボール半径よりも小さい曲率半径(本実施形態では、3mm)の円弧状に形成される。
なお、ボール半径とは、第1ボール刃310(第2ボール刃320)の外周端に向けて軸線Oから垂直に延ばした線分の長さであり、その線分と軸線Oとの交点が第1ボール刃310及び第2ボール刃320の中心Cとなる。
各傾斜大径刃111b〜111d及び外周大径刃111eによる切削幅L5(本実施形態では、2.5mm)は、それぞれ同一の長さとなっている。また、それら各傾斜大径刃111b〜111d及び外周大径刃111eは、それぞれ同一の曲率半径(本実施形態では、30mm)の円弧状に形成される。
一方、第1ボール刃310及び第2ボール刃320の2つの底大径刃111aは、他の大径刃111b〜111eよりも切削幅L6(本実施形態では、7.5mm)及び曲率半径(本実施形態では、40mm)が大きくされる。
これにより、軸線Oに対して直交するワークの加工面を3軸加工で切削する場合に、底大径刃111aでの切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができる。一方、それとは異なる角度で傾斜するワークの加工面は、他の大径刃111b〜111eで切削を行うことにより、加工面の面粗さ(加工能率)を向上させることができる。
なお、第1ボール刃310及び第2ボール刃320の中心Cを中心にしてボール半径の仮想円(図示せず)を描いた場合、その仮想円が2つの底大径刃111a及び外周大径刃111eに内接するように構成されているが、他の傾斜大径刃111b〜111dは、かかる仮想円よりも外側に形成されている。上述した通り、ボール半径の仮想円に各大径刃111の一部が接しない場合、各大径刃111によって形成される刃形の形状が円弧とは異なる形状になり易い。
これに対して第2の変形例においても、各大径刃111及び各小径刃112は、第1ボール刃310(第2ボール刃320)の中心Cからボール半径の90%以上110%以下の領域内に形成される。よって、第1ボール刃310(第2ボール刃320)の刃形、即ち、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。これにより、各大径刃111の曲率半径よりも小さい半径の曲面を各大径刃111で同時に切削する場合に、加工能率が低下することを抑制できる。
次いで、図7を参照して、切削インサート100の第3の変形例について説明する。図7は、第3の変形例における切削インサート400の第1ボール刃410及び第2ボール刃420の刃形を模式的に示した模式図である。なお、図7は、第1ボール刃410及び第2ボール刃420の刃形(輪郭形状)を厚み方向に投影した図であり、第1ボール刃410及び第2ボール刃420の回転軌跡を示している。
図7に示すように、第3の変形例における切削インサート400の各大径刃111は、第1ボール刃410及び第2ボール刃420のボール半径(本実施形態では、10mm)よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される。また、各小径刃112は、第1ボール刃410及び第2ボール刃420のボール半径よりも小さい曲率半径(本実施形態では、3mm)の円弧状に形成される。
なお、ボール半径とは、第1ボール刃410(第2ボール刃420)の外周端に向けて軸線Oから垂直に延ばした線分の長さであり、その線分と軸線Oとの交点が第1ボール刃410及び第2ボール刃420の中心Cとなる。
底大径刃111aと外周大径刃111eとの間は、中径刃113によって接続されており、中径刃113は、第1ボール刃410及び第2ボール刃420のボール半径と同一の曲率半径の円弧状に形成される。中径刃113の外周端側は外周大径刃111eに直接接続される一方、中径刃113の先端側は小径刃112を介して底大径刃111aに接続される。
底大径刃111aは、軸線Oに達しない長さで形成されており、第1ボール刃410の底大径刃111aと、第2ボール刃420の底大径刃111aとが軸線O上に位置する一対の小径刃112によって接続されている。即ち、それら一対の小径刃112は、第1ボール刃410及び第2ボール刃420のそれぞれの最も先端側の切れ刃を構成している。
底大径刃111aによる切削幅L7と、外周大径刃111eによる切削幅L7とがそれぞれ同一の長さ(本実施形態では、3mm)となっている。また、底大径刃111aの曲率半径(本実施形態では、50mm)よりも、外周大径刃111eの曲率半径(本実施形態では、20mm)が小さくされている。一方、中径刃113は、各大径刃111よりも切削幅L8(本実施形態では10mm)が大きくされる。
このように、各大径刃111よりも曲率半径が小さい中径刃113を設け、その中径刃113の切削幅L8を最も大きくすることにより、各大径刃111よりも曲率半径が小さい曲面(即ち、ボール半径と同一の曲率半径の曲面)の加工能率を特に向上させることができる。
また、この切削インサート400を用いて5軸加工を行うことにより、中径刃113よりも曲率半径の大きい曲面や平面を各大径刃111で切削し、各大径刃111よりも曲率半径が小さい曲面を中径刃113で切削することにより、様々な曲率半径の曲面の切削時において、加工面の面粗さ(加工能率)を向上させることができる。
ここで、ボール刃によってワークの荒加工を行う場合、例えば、ボール半径よりも外側に突出している刃があると、取り代が過剰になることを抑制するためには、その突出した刃を基準にして加工軌跡の演算を行う必要がある。よって、複数の大径刃や小径刃がボール半径よりも突出している構成であると、加工軌跡の演算が複雑になり易い。
これに対して本実施形態では、第1ボール刃410及び第2ボール刃420の中心Cを中心にしてボール半径の仮想円V3(図7の拡大部分参照)を描いた場合、その仮想円V3に沿って中径刃113が形成される一方、底大径刃111a及び外周大径刃111eは、仮想円V3よりも内側に形成されている。即ち、各大径刃111、各小径刃112、及び、中径刃113のそれぞれは、ボール半径の仮想円V3よりも外側には突出しない構成となっている。
このように、仮想円V3(予め決めた基準円)内に各大径刃111、各小径刃112、及び、中径刃113を設けることにより、ボール半径のボール刃の形状を基準にした加工軌跡で荒加工を行えば、取り代が過剰になることを防止できる。言い換えると、ボール半径のボール刃の形状を基準にした加工軌跡で荒加工を行うことができるので、かかる加工軌跡の演算を容易に行うことができる。
一方、底大径刃111a及び外周大径刃111eは、仮想円V3よりも内側に形成されているが、第3の変形例においても、各大径刃111及び各小径刃112は、第1ボール刃410(第2ボール刃420)の中心Cからボール半径の95%以上の領域内に形成される。これにより、第1ボール刃410(第2ボール刃420)の刃形、即ち、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。よって、各大径刃111の曲率半径よりも小さい半径(例えば、ボール半径)の曲面を各大径刃111、各小径刃112、及び、中径刃113で同時に切削する場合に、加工能率が低下することを抑制できる。
以上、上記実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、各大径刃111、各小径刃112、及び、中径刃113の切削幅や曲率半径の数値は例示であり、適宜設定できる。
上記実施形態では、ボールエンドミル1に着脱自在に構成される切削インサート100,200,300,400に第1ボール刃110,210,310,410及び第2ボール刃120,220,320,420が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ソリッドタイプのボールエンドミルや、刃先ろう付けタイプのボールエンドミルに、第1ボール刃110,210,310,410及び第2ボール刃120,220,320,420に相当するボール刃を設けても良い。
上記実施形態では、切削インサート100,200,300,400に第1ボール刃110,210,310,410及び第2ボール刃120,220,320,420(2枚の切れ刃)が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、1枚の第1ボール刃110,210,310,410(第2ボール刃120,220,320,420)を1つの切削インサートに形成し、その切削インサートをボールエンドミル1に複数取り付ける構成でも良い。また、1つの切削インサートに第1ボール刃110,210,310,410や第2ボール刃120,220,320,420に相当するボール刃を3枚以上形成しても良い。
上記実施形態では、第1ボール刃110,210,310(第2ボール刃120,220,320)に5つの大径刃111が形成される場合、即ち、1枚のボール刃に5つの大径刃111が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1ボール刃410(第2ボール刃420)のように、1枚のボール刃に少なくとも2以上の大径刃111が形成されていれば良いが、大径刃111は、1枚のボール刃に5以上16以下の数で設けられることが好ましい。
即ち、大径刃111の数が5未満である場合、各大径刃111の刃長(切削幅)を長く形成できる一方で、3軸加工を行う場合に、各大径刃111で加工できる加工面(平面や曲面)の角度に制約が生じる。また、大径刃111の数が16を超える場合、3軸加工を行う場合に、様々な角度の平面や曲面を各大径刃111で切削できる一方で、各大径刃111の刃長(切削幅)が小さくなるため、1つの大径刃111で切削を行う場合に加工能率が低下する。
これに対し、1枚のボール刃に5以上の大径刃111を設けることにより、大径刃111の数が5未満である場合に比べ、3軸加工を行う場合に、様々な角度の平面や曲面を各大径刃111で切削することができる。よって、3軸加工で切削を行う場合であっても、角度の異なる平面や曲面の加工能率をよりバランス良く向上させることができる。また、1枚のボール刃に16以下の大径刃111を設けることにより、大径刃111の数が16を超える場合に比べ、各大径刃111の切削幅を大きく確保することができる。これにより、各大径刃111による平面および曲面の切削時にピックフィードを大きくすることができるので、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることができる。
上記実施形態では、第1ボール刃110,210,310,410(第2ボール刃120,220,320,420)において、各大径刃111の切削幅(曲率半径)がそれぞれ同一である場合や、傾斜大径刃111cの切削幅(曲率半径)が他の大径刃111a,111b,111d,111eよりも大きい場合や、底大径刃111aの切削幅(曲率半径)が他の大径刃111b〜111eよりも大きい場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、切削幅や曲率半径が各大径刃111のそれぞれにおいて異なっていても良いし、各大径刃111のうち、2以上の大径刃111の切削幅や曲率半径が他の大径刃111よりも大きく(小さく)される構成でも良い。
また、各大径刃111のうち、最も外周端側に位置する外周大径刃111eの切削幅および曲率半径を、他の大径刃111a〜111dよりも大きくする構成でも良い。これにより、軸線Oと平行な平面(例えば、ワークの壁面)を3軸加工で切削する場合に、外周大径刃111eでの切削によって加工面の面粗さを特に向上させることができる。
即ち、各大径刃111の切削幅や曲率半径は、切削を行うワークに応じて適宜設定すれば良く、各大径刃111の切削幅や曲率半径は如何なる値であっても良いが、各大径刃111及び各小径刃112(中径刃113)を、ボール刃の中心Cからボール半径の少なくとも80%以上120%以下の領域内に形成する(ボール刃の中心Cから各大径刃111及び各小径刃112(中径刃113)の各中点までの長さが、ボール半径の80%以上120%以下となる)ことが好ましい。かかる形成領域がボール半径の100%に近い程、各大径刃111及び各小径刃112(中径刃113)によって形成される刃形の形状を円弧に近い形状にすることができる。
また、各大径刃111及び各小径刃112(中径刃113)のそれぞれを、ボール刃の中心Cからボール半径の100%以下の領域内に形成することがより好ましい。これにより、ボール半径のボール刃の形状を基準にした加工軌跡で荒加工を行うことができるので、かかる加工軌跡の演算を容易に行うことができる。
上記実施形態では、各大径刃111どうしの間や、大径刃111及び中径刃113の間を小径刃112によって接続する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、小径刃112を省略して各大径刃111どうしを直接接続する構成や、大径刃111及び中径刃113を直接接続する構成でも良い。
1 ボールエンドミル
100,200,300,400 切削インサート
110,210,310,410 第1ボール刃(ボール刃)
111a 底大径刃(大径刃)
111b,111c,111d 傾斜大径刃(大径刃)
111e 外周大径刃(大径刃)
112 小径刃
120,220,320,420 第2ボール刃(ボール刃)
C ボール刃の中心
L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7 大径刃の切削幅
O 軸線
R1 ボール半径
V1 仮想円
V2 仮想線
【0004】
る場合に、それら平面や曲面に各大径刃を沿わせるためのボールエンドミルの振り角を極力小さくすることができる。よって、5軸加工で切削を行う場合に、角度の異なる平面や曲面における加工能率を向上させることができるという効果がある。
[0016]
更に、ボール刃の中心を中心にしてボール半径の仮想円を描いた場合に、その仮想円が複数の大径刃のそれぞれの回転軌跡に内接するので、大径刃によって形成されるボール刃の刃形をより円弧に近い形状とすることができる。よって、大径刃よりも小さい曲率半径の曲面を複数の大径刃で同時に切削する場合に、加工能率が低下することをより効果的に抑制できるという効果がある。
請求項2記載のボールエンドミルによれば、次の効果を奏する。ボール刃の最も先端側に位置する大径刃は、他の大径刃よりも曲率半径および切削幅が大きくされる。これにより、例えば、軸線と直交する平面を3軸加工で切削する場合に、ボール刃の最も先端側に位置する大径刃での切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができるという効果がある。
請求項2記載のボールエンドミルによれば、次の効果を奏する。ボール刃の最も外周端側に位置する大径刃は、他の大径刃よりも曲率半径および切削幅が大きくされる。これにより、例えば、軸線と平行な平面を3軸加工で切削する場合に、ボール刃の最も外周端側に位置する大径刃での切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができるという効果がある。
請求項2記載のボールエンドミルによれば、次の効果を奏する。ボール刃の中心を通る仮想線であって軸線に対して45°の角度となる仮想線上に位置する大径刃は、他の大径刃よりも曲串半径および切削幅が大きくされる。これにより、例えば、軸線に対して傾斜する加工面を3軸加工で切削する場合に、軸線に対して45°の角度となる仮想線上に位置する大径刃での切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができるという効果がある。
請求項3記載のボールエンドミルによれば、次の効果を奏する。大径刃は、ボール刃の先端側に位置する底大径刃と、ボール刃の外周端側に位置する外周大径刃と、を備え、ボール刃は、底大径刃および外周大径刃の間を接続しボール刃のボール半径と同一の曲率半径の円弧状に形成される中径刃を備え、中径刃は、ボール刃の中心を通る仮想線であって軸線に対して45°の角度となる仮想線上に位置する。これにより、中径刃よりも曲率半径の大きい曲面や平面を底大径刃および外周大径刃で切削し、ボール半径と同一の曲率半径の曲面を中径刃で切削することにより、様々な曲率半径の曲面の切削時において、加工面の面粗さ(加工能率)を向上させることができるという効果がある。
[0017]
請求項4記載のボールエンドミルによれば、請求項1又は2に記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。ボール刃の先端から外周端にかけて5以上の大径刃が形成されるので、大径刃の数が5未満である場合に比べ、3軸加工で切削を行う場合に様々な角度の平面や曲面を各大径刃で切削することができる。よって、3軸加工で切削を行う場合であっても、角度の異なる平面や曲面の加工能率をよりバランス良く向上させることができるという効果がある。
[0018]
また、ボール刃の先端から外周端にかけて16以下の大径刃が形成されるので、大径刃の数が16を超える場合に比べ、各大径刃の切削幅を大きく確保することができる。これにより、大径刃による切削時にピックフィードを大きくすることができるので、各大径刃による加工能率を向上させることができるという効果がある。
[0019]
請求項5記載のボールエンドミルによれば、請求項1又は2に記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。ボール刃は、大径刃どうしの間を接続しボール半径よりも小さい曲率半径の円弧状に形成される複数の小径刃を備えるので、各大径刃の間を小径刃によって滑らかに接続することができる。これにより、複数の大径刃で同時に切削する場合に、各大径刃の接続部分でチッピングが生じることを抑制できるという効果がある。
本発明は、ボールエンドミル及び切削インサートに関し、特に、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることができるボールエンドミル及び切削インサートに関する。
半球状のボール刃を備えるボールエンドミルが知られている。単一の曲率半径の円弧状に形成されるボール刃で平面の切削(仕上げ加工)を行う場合、加工面の面粗さを向上させるためにはピックフィード(加工を行うピッチ)を小さくする必要がある。よって、加工能率が低下するという問題点がある。
この問題点に対し、特許文献1には、ボール刃(切刃)に複数の直線状切刃を設ける技術が記載されている。この技術によれば、同一のピックフィードで平面の切削を行う場合、単一の曲率半径の円弧状に形成されるボール刃での切削に比べ、直線状切刃での切削によって加工面の面粗さを向上させることができる。即ち、直線状切刃で平面の切削を行うことにより、ピックフィードを大きくしても円弧状のボール刃で切削した場合と同等の面粗さを得ることができるので、加工能率を向上させることができる。
特開平07−132407号公報(例えば、段落0019,0026〜0028、図2,3)
しかしながら、上述した従来の技術では、直線状切刃によって曲面の切削を行うと面粗さが低下し易くなる。よって、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることが困難であるという問題点があった。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることができるボールエンドミル及び切削インサートを提供することを目的としている。
この目的を達成するために本発明のボールエンドミル及び切削インサートは、軸線回りの回転軌跡が略半球状に形成されるボール刃を前記軸線方向の先端に備えるものであり、前記ボール刃は、そのボール刃のボール半径よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される大径刃を備え、前記ボール刃の中心から前記ボール半径の80%以上120%以下の領域内において、前記ボール刃の先端から外周端にかけて複数の前記大径刃が形成される。
請求項1記載のボールエンドミル及び請求項記載の切削インサートによれば、ボール刃は、そのボール刃のボール半径よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される大径刃を備えるので、単一の曲率半径の円弧状に形成されるボール刃で平面を切削する場合に比べ、大径刃での平面の切削によって加工面の面粗さを向上させることができる。更に、大径刃が円弧状に形成されるので、直線状の切れ刃で曲面を切削する場合に比べ、大径刃での曲面の切削によって加工面の面粗さを向上させることができる。
よって、大径刃による平面および曲面のそれぞれの切削時にピックフィードを大きくすることができるので、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることができるという効果がある。
また、ボール刃の中心からボール半径の80%以上120%以下の領域内において、ボール刃の先端から外周端にかけて複数の大径刃が形成されるので、大径刃の曲率半径がボール半径よりも大きい場合であっても、大径刃によって形成されるボール刃の刃形(輪郭形状)を円弧に近い形状とすることができる。よって、大径刃よりも小さい曲率半径の曲面を複数の大径刃によって同時に切削する場合に、加工能率が低下することを抑制できるという効果がある。
請求項記載のボールエンドミル及び請求項6記載の切削インサートによればボール刃の先端から外周端側にかけての所定領域内において、複数の大径刃の切削幅がそれぞれ同一とされる。これにより、3軸加工で切削を行う(被削物に対するボールエンドミルの相対的な角度が不変である)場合に、角度の異なる加工面(平面や曲面)を各大径刃で切削した際の面粗さを均一にし易くできる。よって、3軸加工で切削を行う場合であっても、角度の異なる平面や曲面における加工能率をバランス良く向上させることができるという効果がある。
なお、所定領域とは、少なくとも「ボール刃の最も先端側に位置する大径刃から、最も外周端側に位置する大径刃に隣り合う大径刃までの領域」であり、より好ましくは、「ボール刃の最も先端側に位置する大径刃から、最も外周端側に位置する大径刃までの領域」である。
また、請求項記載のボールエンドミル及び請求項6記載の切削インサートによれば複数の大径刃の曲率半径がそれぞれ同一とされるので、3軸加工で切削を行う場合に、角度の異なる加工面を各大径刃で切削した際の面粗さをより均一にし易くできる。よって、3軸加工で切削を行う場合であっても、角度の異なる平面や曲面における加工能率をよりバランス良く向上させることができるという効果がある。
また、請求項記載のボールエンドミル及び請求項6記載の切削インサートによればボール刃の中心を中心にしてボール半径の仮想円を描いた場合に、その仮想円が複数の大径刃のそれぞれの回転軌跡に内接するので、軸線に対する各大径刃の傾斜をボール刃の先端から外周端にかけて徐々に変化させることができる。よって、3軸加工で切削を行う場合であっても、角度の異なる平面や曲面における加工能率を更にバランスよく向上させることができるという効果がある。
また、軸線に対する各大径刃の傾斜をボール刃の先端から外周端にかけて徐々に変化させることにより、角度の異なる平面や曲面を5軸加工で切削する場合に、それら平面や曲面に各大径刃を沿わせるためのボールエンドミルの振り角を極力小さくすることができる。よって、5軸加工で切削を行う場合に、角度の異なる平面や曲面における加工能率を向上させることができるという効果がある。
更に、ボール刃の中心を中心にしてボール半径の仮想円を描いた場合に、その仮想円が複数の大径刃のそれぞれの回転軌跡に内接するので、大径刃によって形成されるボール刃の刃形をより円弧に近い形状とすることができる。よって、大径刃よりも小さい曲率半径の曲面を複数の大径刃で同時に切削する場合に、加工能率が低下することをより効果的に抑制できるという効果がある。
請求項2記載のボールエンドミルによれば、次の効果を奏する。ボール刃の最も先端側に位置する大径刃は、他の大径刃よりも曲率半径および切削幅が大きくされる。これにより、例えば、軸線と直交する平面を3軸加工で切削する場合に、ボール刃の最も先端側に位置する大径刃での切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができるという効果がある。
請求項2記載のボールエンドミルによれば、次の効果を奏する。ボール刃の最も外周端側に位置する大径刃は、他の大径刃よりも曲率半径および切削幅が大きくされる。これにより、例えば、軸線と平行な平面を3軸加工で切削する場合に、ボール刃の最も外周端側に位置する大径刃での切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができるという効果がある。
請求項2記載のボールエンドミルによれば、次の効果を奏する。ボール刃の中心を通る仮想線であって軸線に対して45°の角度となる仮想線上に位置する大径刃は、他の大径刃よりも曲率半径および切削幅が大きくされる。これにより、例えば、軸線に対して傾斜する加工面を3軸加工で切削する場合に、軸線に対して45°の角度となる仮想線上に位置する大径刃での切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができるという効果がある。
請求項3記載のボールエンドミルによれば、次の効果を奏する。大径刃は、ボール刃の先端側に位置する底大径刃と、ボール刃の外周端側に位置する外周大径刃と、を備え、ボール刃は、底大径刃および外周大径刃の間を接続しボール刃のボール半径と同一の曲率半径の円弧状に形成される中径刃を備え、中径刃は、ボール刃の中心を通る仮想線であって軸線に対して45°の角度となる仮想線上に位置する。これにより、中径刃よりも曲率半径の大きい曲面や平面を底大径刃および外周大径刃で切削し、ボール半径と同一の曲率半径の曲面を中径刃で切削することにより、様々な曲率半径の曲面の切削時において、加工面の面粗さ(加工能率)を向上させることができるという効果がある。
請求項4記載のボールエンドミルによれば、請求項1又は2に記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。ボール刃の先端から外周端にかけて5以上の大径刃が形成されるので、大径刃の数が5未満である場合に比べ、3軸加工で切削を行う場合に様々な角度の平面や曲面を各大径刃で切削することができる。よって、3軸加工で切削を行う場合であっても、角度の異なる平面や曲面の加工能率をよりバランス良く向上させることができるという効果がある。
また、ボール刃の先端から外周端にかけて16以下の大径刃が形成されるので、大径刃の数が16を超える場合に比べ、各大径刃の切削幅を大きく確保することができる。これにより、大径刃による切削時にピックフィードを大きくすることができるので、各大径刃による加工能率を向上させることができるという効果がある。
請求項5記載のボールエンドミルによれば、請求項1又は2に記載のボールエンドミルの奏する効果に加え、次の効果を奏する。ボール刃は、大径刃どうしの間を接続しボール半径よりも小さい曲率半径の円弧状に形成される複数の小径刃を備えるので、各大径刃の間を小径刃によって滑らかに接続することができる。これにより、複数の大径刃で同時に切削する場合に、各大径刃の接続部分でチッピングが生じることを抑制できるという効果がある。
(a)は、本発明の一実施形態におけるボールエンドミルの正面図であり、(b)は、図1(a)のIIb−IIb線におけるボールエンドミルの部分拡大断面図である。 (a)は、切削インサートの正面図であり、(b)は、図2(a)の矢印IIb方向視における切削インサートの側面図であり、(c)は、図2(a)の矢印IIc方向視における切削インサートの底面図である。 切削インサートの第1ボール刃および第2ボール刃の刃形を模式的に示した模式図である。 (a)は、本発明のボールエンドミルによってワークを切削する様子を示す模式図であり、(b)は、単一Rのボールエンドミルによってワークを切削する様子を示す模式図である。 (a)は、ボールエンドミルによってワークを3軸加工で切削する様子を示す模式図であり、(b)は、ボールエンドミルによってワークを5軸加工で切削する様子を示す模式図である。 (a)は、第1の変形例における切削インサートの第1ボール刃および第2ボール刃の刃形を模式的に示した模式図であり、(b)は、第2の変形例における切削インサートの第1ボール刃および第2ボール刃の刃形を模式的に示した模式図である。 第3の変形例における切削インサートの第1ボール刃および第2ボール刃の刃形を模式的に示した模式図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、ボールエンドミル1の構成について説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態におけるボールエンドミル1の正面図であり、図2(b)は、図1(a)のIIb−IIb線におけるボールエンドミル1の部分拡大断面図である。
図1に示すように、ボールエンドミル1は、その基端側の部位を構成するシャンク部2と、そのシャンク部2の先端に接続される本体部3と、を備え、本体部3の先端に切削インサート100が着脱自在に固定される刃先交換式のボールエンドミルとして構成される。
シャンク部2及び本体部3は、それぞれ軸線O回りの円柱状に形成される。シャンク部2が工作機械の主軸に装着され、軸線O回りに回転させられることで被削材の切削加工が行われる。
本体部3の先端側には、軸線Oと直交する方向(図1(b)の上下方向)に所定間隔を隔てる一対の固定部30が形成される。それら一対の固定部30の間には、本体部3の基端側(図1(b)の右側)に向けて凹む断面矩形の凹部31が形成され、この凹部31に切削インサート100が挿入可能に構成される。
一対の固定部30のうちの一方(図1(b)の上側)の固定部30には貫通孔30aが形成され、他方(図1(b)の下側)の固定部30には貫通孔30aに対応した位置にめねじ孔30bが形成される。凹部31に切削インサート100を挿入した状態で、固定部30の貫通孔30aと切削インサート100の取付穴104とに挿入したねじ4をめねじ孔30bに締結することにより、固定部30(凹部31)に切削インサート100が固定される。
一対の固定部30の先端側は略半球状に形成されており、固定部30に切削インサート100が固定された状態においては、切削インサート100の第1ボール刃110及び第2ボール刃120が、正面視において固定部30の周囲に露出するように構成されている。
次いで、図2を参照して、切削インサート100の構成について説明する。図2(a)は、切削インサート100の正面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印IIb方向視における切削インサート100の側面図であり、図2(c)は、図2(a)の矢印IIc方向視における切削インサート100の底面図である。
なお、以下の説明においては、切削インサート100を単体で説明する場合においても、ボールエンドミル1(図1参照)に取付けられた状態を基準にして切削インサート100の各部について説明する。よって、ボールエンドミル1に切削インサート100が取り付けられた状態(図1の状態)において、ボールエンドミル1の先端側を構成する部位を切削インサート100の先端、それとは反対側の部位を切削インサート100の基端、ボールエンドミル1の外周端側を構成する部位を切削インサート100の外周端とそれぞれ定義して説明する。また、切削インサート100の厚み方向(図2(a)の紙面垂直方向)を単に「厚み方向」と記載して説明する。
図2に示すように、切削インサート100は、超硬合金等の硬質材料を用いて略平板状に形成され、軸線Oに対して180°回転させた場合に同一形状となる表裏対称の形状となっている。切削インサート100は、厚み方向視(図2(a)参照)において円の基端側(図2(a)の上側)の一部が切欠かれた形状とされ、切削インサート100の先端側は、厚み方向視において略半円状に形成される。
ここで、切削インサート100の基端側の面であって軸線Oと直交する面を基端面101と定義し、切削インサート100の厚み方向(軸線Oと直交する方向)を向く面を一対の側面102,103と定義する。
一対の側面102,103を貫通するようにして断面円形の取付穴104が形成され、この取付穴104は、後述するボール刃の中心C(図2(a)参照)と略一致する位置に形成される。切削インサート100の先端(図2(a)の下側の端部)から基端面101の外周端側(図2(a)の左右方向端部)にかけた切削インサート100の外周縁部には、一対の側面102,103から厚み方向に凹むようにして一対のすくい面105が形成される。なお、一対のすくい面105のうち、第2ボール刃120のすくい面105については図示を省略する。
これら一対のすくい面105は、ボールエンドミル1(図1参照)取り付けられた状態における切削インサート100の回転方向T(図2(c)の反時計回りの方向)の前方側を向く面である。一対のすくい面105の回転方向Tの後方側には、すくい面105に連なるようにして一対の逃げ面106,107が形成され、逃げ面106,107とすくい面105との交差稜線部に第1ボール刃110及び第2ボール刃120が形成される。
第1ボール刃110及び第2ボール刃120は、回転方向Tの前方側に向けて凸の湾曲形状に形成され(図2(b)参照)、切削インサート100の先端視(図2(c)参照)において、第1ボール刃110及び第2ボール刃120によって略S字状のボール刃が形成される。
第1ボール刃110及び第2ボール刃120は、厚み方向視において切削インサート100の先端に向けて凸の略半円状に形成される切れ刃である。第1ボール刃110及び第2ボール刃120は実質的に同一の構成であるので、第2ボール刃120には第1ボール刃110と同一の符号を付して説明する。
第1ボール刃110及び第2ボール刃120は、それら第1ボール刃110及び第2ボール刃120の中心C(軸線O上の中心)から遠ざかる方向に凸の円弧状に形成される複数(本実施形態では、5つ)の大径刃111a〜111eと、それら複数の大径刃111a〜111eどうしの間を接続し中心Cから遠ざかる方向に凸の円弧状に形成される複数(本実施形態では、4つ)の小径刃112と、を備える。
なお、以下の説明においては、複数の大径刃111a〜111eのうち、最も先端側に位置するものを底大径刃111a、最も外周端側に位置するものを外周大径刃111e、底大径刃111a及び外周大径刃111eの間に位置するものを傾斜大径刃111b〜111dと定義して説明するが、底大径刃111a、傾斜大径刃111b〜111d、及び、外周大径刃111eをまとめて記載する場合には、「各大径刃111」と省略して記載する。
次いで、図3を参照して、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の詳細構成について説明する。図3は、切削インサート100の第1ボール刃110及び第2ボール刃120の刃形を模式的に示した模式図である。即ち、図3は、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の刃形(輪郭形状)を厚み方向に投影した図であり、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の回転軌跡を示している。
図3に示すように、各大径刃111は、第1ボール刃110及び第2ボール刃120のボール半径R1(本実施形態では、10mm)よりも大きい曲率半径(本実施形態では、30mm)の円弧状に形成される。各小径刃112は、ボール半径R1よりも小さい曲率半径(本実施形態では、3mm)の円弧状に形成される。
なお、ボール半径R1とは、第1ボール刃110の外周端E1(第2ボール刃120の外周端E2)に向けて軸線Oから垂直に延ばした線分の長さであり、その線分と軸線Oとの交点が第1ボール刃110及び第2ボール刃120の中心Cとなる。
各大径刃111及び各小径刃112は、第1ボール刃110(第2ボール刃120)の中心Cからボール半径R1の105%以下の領域内に形成される。よって、各大径刃111の曲率半径がボール半径R1よりも大きい場合であっても、第1ボール刃110(第2ボール刃120)の刃形、即ち、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。
底大径刃111aの刃長は、外周大径刃111eの刃長(外周端E1までの刃長)と同一の長さであり、各傾斜大径刃111b〜111dの刃長は、底大径刃111aの刃長の2倍の長さとなっている。即ち、第1ボール刃110(第2ボール刃120)の先端を0°の切削位置、第1ボール刃110の外周端E1(第2ボール刃120の外周端E2)を90°の切削位置と定義すると、0°から90°にかけての切削領域において、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の刃長を等分割することで各大径刃111が形成される。
よって、0°から90°かけての切削領域において、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の2つの底大径刃111aによる切削幅L1(本実施形態では、3mm)は、各傾斜大径刃111b〜111dによる切削幅L1と同一の長さである。
また、0°から90°の切削位置までが第1ボール刃110(第2ボール刃120)の切削領域とした場合には、外周大径刃111eによる切削幅L2は、2つの底大径刃111aによる切削幅L1の2分の1となっているが、外周大径刃111eは、90°の切削位置を越えて切削インサート100の基端側に向けて延設される。即ち、外周大径刃111eも、2つの底大径刃111aによる切削幅L1と同等の切削幅での切削が可能であり、実質的には、各大径刃111による切削幅はそれぞれ同一の長さとなっている。
また、厚み方向視において、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の中心Cを中心にしてボール半径R1の仮想円V1(図3の拡大部分参照)を描いた場合、その仮想円V1が各大径刃111に内接する(各大径刃111のそれぞれの回転軌跡が仮想円V1に接する)ように構成されている。よって、軸線Oと、2つの底大径刃111aの中央における接線とがなす角度は90°であるのに対し、軸線Oと、各大径刃111b〜111eの中点における接線とがなす角度は、底大径刃111aから外周大径刃111eにかけて段階的に(本実施形態では、22.5°ずつ)変化するように構成される。
小径刃112は、隣り合う各大径刃111(例えば、底大径刃111a及び傾斜大径刃111b)を延長した2つの円弧に内接する円弧状に形成される。これにより、小径刃112によって各大径刃111どうしが滑らかに接続されている。
このように構成された第1ボール刃110及び第2ボール刃120による切削態様について、図3〜図5を参照して説明する。図4(a)は、本発明のボールエンドミルによってワークWを切削する様子を示す模式図であり、図4(b)は、単一RのボールエンドミルによってワークWを切削する様子を示す模式図である。図5(a)は、ボールエンドミル1A〜1CによってワークWを3軸加工で切削する様子を示す模式図であり、図5(b)は、ボールエンドミル1D〜1FによってワークWを5軸加工で切削する様子を示す模式図である。
図4(a)に示すように、ワークWの平面の切削(例えば、金型等の底面の仕上げ加工)を行う場合、切削インサート100の2つの底大径刃111aによって所定の切り込み深さで切削する(図4(a)の2点鎖線を参照)。
次いで、ボールエンドミル1をワークWの表面に沿って所定のピックフィードPの分だけ移動させて切削を行うが(図4(a)の実線部分を参照)、このピックフィードPの大きさは、求められる面粗さに応じて適宜設定される。この場合、底大径刃111aは、ボール半径R1(図3参照)よりも大きい曲率半径の円弧状に形成されるので、底大径刃111aによるワークWの平面の切削によって加工面の面粗さを向上させることができる。
即ち、図4(b)に示すように、例えば、ボール半径R1(図3参照)の単一の円弧状に形成されるボール刃510(以下、単に「単一Rのボール刃510」と記載する)により、上述した底大径刃111aでの切削時と同一のピックフィードPで切削を行うと、底大径刃111aでの切削に比べてカスプハイトh(削り残し)が大きくなり、面粗さが低下し易い。
言い換えると、本実施形態のように、ボール半径R1よりも大きい曲率半径の円弧状の底大径刃111aを備える構成であれば、ピックフィードPを小さくしても、単一Rのボール刃510での切削時と同等の面粗さを得ることができる。更に、底大径刃111aが円弧状に形成されるので、図示は省略するが、ワークWの曲面を切削する場合においては、その曲面に沿った切削を底大径刃111aによって行うことができる。よって、従来のようにボール刃に直線状の切れ刃を設ける場合に比べ、曲面の面粗さを向上させることができる。
従って、底大径刃111aによるワークWの平面および曲面の双方の切削時において、ピックフィードPを大きくすることができるので、平面および曲面の双方の切削における加工能率を向上させることができる。なお、このような底大径刃111aによる作用効果は、他の傾斜大径刃111b〜111dや外周大径刃111eにおいても同様に奏するものである。
ここで、ボールエンドミル1(図1参照)による切削は、ワークWに対するボールエンドミル1の傾斜(相対的な角度)が一定の状態とされる3軸加工や、ボールエンドミル1の傾斜が可変とされる5軸加工で行われる。これら3軸加工や5軸加工における第1ボール刃110及び第2ボール刃120の切削態様について更に説明する。まず、3軸加工について説明する。
図5(a)に示すように、ワークWは、様々な角度の平面W1や曲面W2〜W4から構成されることがあるため、そのようなワークWの切削を1つの工具で(工具を交換することなく)行うためには、各平面W1や曲面W2〜W4の加工能率をバランスよく向上させる必要がある。
これに対して本実施形態では、切削幅L2(図3参照)が同一の長さとされる各大径刃111が、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の先端から外周端にかけて5つ設けられる。これにより、角度(軸線Oに対する傾斜角)の異なる平面W1や曲面W2,W3を各大径刃111で切削を行った場合に(図5(a)のボールエンドミル1A〜1C参照)、それら各大径刃111の切削による加工面の面粗さを均一にし易くできる。
言い換えると、複数の大径刃111を備えることにより、3軸加工のようにワークWに対するボールエンドミル1A〜1Cの相対的な角度の変更が不能である場合であっても、各平面W1や曲面W2,W3に各大径刃111を沿わせ易くできるので、角度の異なる平面W1や曲面W2,W3における加工能率をバランスよく向上させることができる。更に、各大径刃111の曲率半径がそれぞれ同一とされるので、各大径刃111の切削による加工面の面粗さをより均一にし易くできる。よって、角度の異なる平面W1や曲面W2,W3における加工能率をよりバランスよく向上させることができる。
また、軸線Oに対する各大径刃111の傾斜が底大径刃111aから外周大径刃111eにかけて徐々に変化しているため、これによっても、3軸加工を行う場合において、角度の異なる平面W1や曲面W2,W3における加工能率をよりバランスよく向上させることができる。
ここで、各大径刃111よりも大きい曲率半径の曲面W2,W3や平面W1ではなく、各大径刃111よりも小さい曲率半径(例えば、ボール半径R1と同一の半径)の曲面W4を切削する場合もある。この場合、かかる曲面W4を各大径刃111によって同時に切削することになるため(図5(a)のボールエンドミル1A参照)、曲面W4の削り残しを低減させるためには、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の刃形が円弧(単一R)に近い方が良い。
一方、本実施形態では、ボール半径R1よりも大きい曲率半径で各大径刃111が形成されているため、単一Rのボール刃に比べると曲面W4の切削時の削り残しが生じ易いが、その削り残しを極力低減できる構成となっている。
即ち、各大径刃111及び各小径刃112は、第1ボール刃110(第2ボール刃120)の中心C(図3参照)からボール半径R1の105%以下の領域内に形成されるため、各大径刃111の曲率半径がボール半径R1よりも大きい場合であっても、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。
また、第1ボール刃110及び第2ボール刃120の中心Cを中心にしてボール半径R1の仮想円V1(図3の拡大部分参照)を描いた場合、各大径刃111の回転軌跡に仮想円V1が接するように構成されているため、これによっても、各大径刃111の回転軌跡を円弧に近い形状にできる。
更に、ボール半径R1よりも小さい曲率半径の円弧状に形成される各小径刃112(図3参照)によって各大径刃111どうしの間が滑らかに接続されているため、各小径刃112が非形成である場合に比べ、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。
このように、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡(第1ボール刃110及び第2ボール刃120の刃形)を円弧に近い形状とすることにより、各大径刃111の曲率半径よりも小さい半径の曲面W4を切削する場合であっても、切削時の削り残しを極力低減させることができる。よって、かかる曲面W4の切削時の加工能率が低下することを抑制することができる。
また、各小径刃112によって各大径刃111どうしの間が滑らかに接続されているため、各大径刃111によってワークWの曲面W4を同時に切削する場合であっても、各大径刃111の接続部分でチッピングが生じることを抑制できる。また、各小径刃112の切削幅は、各大径刃111の切削幅よりも小さくされているので、各大径刃111の間に小径刃112を設けた場合であっても、各大径刃111の切削幅を確保できる。よって、各大径刃111による平面および曲面の切削時にピックフィードを大きくすることができるので、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることができる。次いで、5軸加工について説明する。
図5(b)に示すように、5軸加工でワークWの切削を行う場合、ワークWに対するボールエンドミル1A〜1Cの相対的な角度を任意に設定することができるので、3軸加工で切削を行う場合に比べ、角度の異なる平面W5や曲面W6,W7の面粗さを向上させることができる。
即ち、例えば、各大径刃111に比べて曲率半径の小さい各小径刃112を最もワークW側に突出させた状態で切削を行うと、加工面の面粗さが低下し易くなる。これに対して本実施形態では、角度の異なる平面W5や曲面W6,W7に各大径刃111を沿わせるようにしてボールエンドミル1A〜1Cを傾斜させて切削することができるので、角度の異なる平面W5や曲面W6,W7の切削時の面粗さ(加工能率)を向上させることができる。
また、第1ボール刃110及び第2ボール刃120(図3参照)の先端から外周端にかけて5つの大径刃111が形成され、軸線Oに対する各大径刃111の角度が底大径刃111aから外周大径刃111eにかけて徐々に変化しているため、角度の異なる平面W5や曲面W6,W7に各大径刃111を沿わせる際に、ボールエンドミル1D〜1Fの振り角(ワークWに対する相対的な角度の調整量)を極力小さくすることができる。よって、角度の異なる平面W5や曲面W6,W7を5軸加工で切削する際の加工能率を向上させることができる。
次いで、図6及び図7を参照して切削インサート100の変形例について説明するが、上述した切削インサート100と同一の部分には同一の符号を付して説明する。まず、図6を参照して、切削インサート100の第1の変形例および第2の変形例について説明する。
図6(a)は、第1の変形例における切削インサート200の第1ボール刃210及び第2ボール刃220の刃形を模式的に示した模式図であり、図6(b)は、第2の変形例における切削インサート300の第1ボール刃310及び第2ボール刃320の刃形を模式的に示した模式図である。
なお、図6は、第1ボール刃210,310及び第2ボール刃220,320の刃形(輪郭形状)を厚み方向に投影した図であり、第1ボール刃210,310及び第2ボール刃220,320の回転軌跡を示している。
また、第1の変形例および第2の変形例における切削インサート200,300は、各大径刃111の切削幅や曲率半径が異なる点を除き、上記実施形態の切削インサート100と実質的に同一の構成であるので、第1の変形例および第2の変形例における切削インサート200,300の各大径刃111には上記実施形態の切削インサート100の各大径刃111と同一の符号を付して説明する。
図6(a)に示すように、第1の変形例における切削インサート200の各大径刃111は、第1ボール刃210及び第2ボール刃220のボール半径(本実施形態では、10mm)よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される。また、各小径刃112は、第1ボール刃210及び第2ボール刃220のボール半径よりも小さい曲率半径(本実施形態では、3mm)の円弧状に形成される。
なお、ボール半径とは、第1ボール刃210(第2ボール刃220)の外周端に向けて軸線Oから垂直に延ばした線分の長さであり、その線分と軸線Oとの交点が第1ボール刃210及び第2ボール刃220の中心Cとなる。
第1ボール刃210及び第2ボール刃220の2つの底大径刃111aによる切削幅L3と、外周大径刃111eによる切削幅L3と、底大径刃111a及び外周大径刃111eに隣り合う傾斜大径刃111b,111dによる切削幅L3とがそれぞれ同一の長さ(本実施形態では、2.5mm)となっている。また、底大径刃111a、外周大径刃111e、及び、傾斜大径刃111b,111dの曲率半径(本実施形態では、30mm)は、それぞれ同一となっている。
一方、3つの傾斜大径刃111b〜111dのうち、第1ボール刃210及び第2ボール刃220の中心Cを通る仮想線V2であって軸線Oに対して45°の角度となる仮想線V2上に位置する傾斜大径刃111c(仮想線V2上に回転軌跡を有する傾斜大径刃111c)は、他の大径刃111a,111b,111d,111eよりも切削幅L4(本実施形態では、5.6mm)及び曲率半径(本実施形態では、40mm)が大きくされる。
これにより、軸線Oに対して45°前後に傾斜するワークの加工面を3軸加工で切削する場合に、傾斜大径刃111cでの切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができる。一方、それとは異なる角度で傾斜するワークの加工面は、他の大径刃111a,111b,111d,111eで切削を行うことにより、加工面の面粗さ(加工能率)を向上させることができる。
ここで、切削インサート200を回転させた場合、軸線Oに最も近い位置に形成される底大径刃111aの周速が遅くなるため、底大径刃111aの切削時には加工面の面粗さが比較的低下し易い。一方、軸線Oから最も遠い位置に形成される外周大径刃111eの周速は比較的速いものの、外周大径刃111eで切削を行うと、軸線Oと直交する方向の力がボールエンドミルに加わり易くなる(ボールエンドミルがたわみやすくなる)ため、外周大径刃111eの切削時には加工面の面粗さが比較的低下し易い。
即ち、各大径刃111のうち、軸線Oに対して45°の角度となる仮想線V2上に位置する傾斜大径刃111cで切削を行うことが刃の周速や工具のたわみの観点から好ましい。これに対して本実施形態では、傾斜大径刃111cの切削幅L4および曲率半径が最も大きくされているため、5軸加工によって角度の異なる平面や曲面に傾斜大径刃111cを沿わせて切削することができるので、他の大径刃111a,111b,111d,111eで切削を行う場合に比べて加工面の面粗さ(加工能率)を特に効果的に向上させることができる。
なお、第1ボール刃210及び第2ボール刃220の中心Cを中心にしてボール半径の仮想円(図示せず)を描いた場合、その仮想円が、傾斜大径刃111cを除く他の大径刃111a,111b,111d,111eが内接する一方、その仮想円よりも傾斜大径刃111cが内側に形成されている。このように、中心Cを中心にしたボール半径の仮想円に各大径刃111の一部が接しない場合、第1ボール刃210及び第2ボール刃220の刃形の形状が円弧とは異なる形状になり易い。
これに対して第1の変形例では、各大径刃111及び各小径刃112は、第1ボール刃210(第2ボール刃220)の中心Cからボール半径の90%以上110%以内の領域内に形成される。よって、傾斜大径刃111bの切削幅L4や曲率半径が他の大径刃111a,111b,111d,111eの切削幅L3や曲率半径よりも大きい場合であっても、第1ボール刃210(第2ボール刃220)の刃形、即ち、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。これにより、各大径刃111の曲率半径よりも小さい半径の曲面を各大径刃111で同時に切削する場合に、加工能率が低下することを抑制できる。
図6(b)に示すように、第2の変形例における切削インサート300の各大径刃111は、第1ボール刃310及び第2ボール刃320のボール半径(本実施形態では、10mm)よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される。各小径刃112は、第1ボール刃310及び第2ボール刃320のボール半径よりも小さい曲率半径(本実施形態では、3mm)の円弧状に形成される。
なお、ボール半径とは、第1ボール刃310(第2ボール刃320)の外周端に向けて軸線Oから垂直に延ばした線分の長さであり、その線分と軸線Oとの交点が第1ボール刃310及び第2ボール刃320の中心Cとなる。
各傾斜大径刃111b〜111d及び外周大径刃111eによる切削幅L5(本実施形態では、2.5mm)は、それぞれ同一の長さとなっている。また、それら各傾斜大径刃111b〜111d及び外周大径刃111eは、それぞれ同一の曲率半径(本実施形態では、30mm)の円弧状に形成される。
一方、第1ボール刃310及び第2ボール刃320の2つの底大径刃111aは、他の大径刃111b〜111eよりも切削幅L6(本実施形態では、7.5mm)及び曲率半径(本実施形態では、40mm)が大きくされる。
これにより、軸線Oに対して直交するワークの加工面を3軸加工で切削する場合に、底大径刃111aでの切削によって加工面の面粗さ(加工能率)を特に向上させることができる。一方、それとは異なる角度で傾斜するワークの加工面は、他の大径刃111b〜111eで切削を行うことにより、加工面の面粗さ(加工能率)を向上させることができる。
なお、第1ボール刃310及び第2ボール刃320の中心Cを中心にしてボール半径の仮想円(図示せず)を描いた場合、その仮想円が2つの底大径刃111a及び外周大径刃111eに内接するように構成されているが、他の傾斜大径刃111b〜111dは、かかる仮想円よりも外側に形成されている。上述した通り、ボール半径の仮想円に各大径刃111の一部が接しない場合、各大径刃111によって形成される刃形の形状が円弧とは異なる形状になり易い。
これに対して第2の変形例においても、各大径刃111及び各小径刃112は、第1ボール刃310(第2ボール刃320)の中心Cからボール半径の90%以上110%以下の領域内に形成される。よって、第1ボール刃310(第2ボール刃320)の刃形、即ち、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。これにより、各大径刃111の曲率半径よりも小さい半径の曲面を各大径刃111で同時に切削する場合に、加工能率が低下することを抑制できる。
次いで、図7を参照して、切削インサート100の第3の変形例について説明する。図7は、第3の変形例における切削インサート400の第1ボール刃410及び第2ボール刃420の刃形を模式的に示した模式図である。なお、図7は、第1ボール刃410及び第2ボール刃420の刃形(輪郭形状)を厚み方向に投影した図であり、第1ボール刃410及び第2ボール刃420の回転軌跡を示している。
図7に示すように、第3の変形例における切削インサート400の各大径刃111は、第1ボール刃410及び第2ボール刃420のボール半径(本実施形態では、10mm)よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される。また、各小径刃112は、第1ボール刃410及び第2ボール刃420のボール半径よりも小さい曲率半径(本実施形態では、3mm)の円弧状に形成される。
なお、ボール半径とは、第1ボール刃410(第2ボール刃420)の外周端に向けて軸線Oから垂直に延ばした線分の長さであり、その線分と軸線Oとの交点が第1ボール刃410及び第2ボール刃420の中心Cとなる。
底大径刃111aと外周大径刃111eとの間は、中径刃113によって接続されており、中径刃113は、第1ボール刃410及び第2ボール刃420のボール半径と同一の曲率半径の円弧状に形成される。中径刃113の外周端側は外周大径刃111eに直接接続される一方、中径刃113の先端側は小径刃112を介して底大径刃111aに接続される。
底大径刃111aは、軸線Oに達しない長さで形成されており、第1ボール刃410の底大径刃111aと、第2ボール刃420の底大径刃111aとが軸線O上に位置する一対の小径刃112によって接続されている。即ち、それら一対の小径刃112は、第1ボール刃410及び第2ボール刃420のそれぞれの最も先端側の切れ刃を構成している。
底大径刃111aによる切削幅L7と、外周大径刃111eによる切削幅L7とがそれぞれ同一の長さ(本実施形態では、3mm)となっている。また、底大径刃111aの曲率半径(本実施形態では、50mm)よりも、外周大径刃111eの曲率半径(本実施形態では、20mm)が小さくされている。一方、中径刃113は、各大径刃111よりも切削幅L8(本実施形態では10mm)が大きくされる。
このように、各大径刃111よりも曲率半径が小さい中径刃113を設け、その中径刃113の切削幅L8を最も大きくすることにより、各大径刃111よりも曲率半径が小さい曲面(即ち、ボール半径と同一の曲率半径の曲面)の加工能率を特に向上させることができる。
また、この切削インサート400を用いて5軸加工を行うことにより、中径刃113よりも曲率半径の大きい曲面や平面を各大径刃111で切削し、各大径刃111よりも曲率半径が小さい曲面を中径刃113で切削することにより、様々な曲率半径の曲面の切削時において、加工面の面粗さ(加工能率)を向上させることができる。
ここで、ボール刃によってワークの荒加工を行う場合、例えば、ボール半径よりも外側に突出している刃があると、取り代が過剰になることを抑制するためには、その突出した刃を基準にして加工軌跡の演算を行う必要がある。よって、複数の大径刃や小径刃がボール半径よりも突出している構成であると、加工軌跡の演算が複雑になり易い。
これに対して本実施形態では、第1ボール刃410及び第2ボール刃420の中心Cを中心にしてボール半径の仮想円V3(図7の拡大部分参照)を描いた場合、その仮想円V3に沿って中径刃113が形成される一方、底大径刃111a及び外周大径刃111eは、仮想円V3よりも内側に形成されている。即ち、各大径刃111、各小径刃112、及び、中径刃113のそれぞれは、ボール半径の仮想円V3よりも外側には突出しない構成となっている。
このように、仮想円V3(予め決めた基準円)内に各大径刃111、各小径刃112、及び、中径刃113を設けることにより、ボール半径のボール刃の形状を基準にした加工軌跡で荒加工を行えば、取り代が過剰になることを防止できる。言い換えると、ボール半径のボール刃の形状を基準にした加工軌跡で荒加工を行うことができるので、かかる加工軌跡の演算を容易に行うことができる。
一方、底大径刃111a及び外周大径刃111eは、仮想円V3よりも内側に形成されているが、第3の変形例においても、各大径刃111及び各小径刃112は、第1ボール刃410(第2ボール刃420)の中心Cからボール半径の95%以上の領域内に形成される。これにより、第1ボール刃410(第2ボール刃420)の刃形、即ち、各大径刃111及び各小径刃112の回転軌跡を円弧に近い形状とできる。よって、各大径刃111の曲率半径よりも小さい半径(例えば、ボール半径)の曲面を各大径刃111、各小径刃112、及び、中径刃113で同時に切削する場合に、加工能率が低下することを抑制できる。
以上、上記実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、各大径刃111、各小径刃112、及び、中径刃113の切削幅や曲率半径の数値は例示であり、適宜設定できる。
上記実施形態では、ボールエンドミル1に着脱自在に構成される切削インサート100,200,300,400に第1ボール刃110,210,310,410及び第2ボール刃120,220,320,420が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、ソリッドタイプのボールエンドミルや、刃先ろう付けタイプのボールエンドミルに、第1ボール刃110,210,310,410及び第2ボール刃120,220,320,420に相当するボール刃を設けても良い。
上記実施形態では、切削インサート100,200,300,400に第1ボール刃110,210,310,410及び第2ボール刃120,220,320,420(2枚の切れ刃)が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、1枚の第1ボール刃110,210,310,410(第2ボール刃120,220,320,420)を1つの切削インサートに形成し、その切削インサートをボールエンドミル1に複数取り付ける構成でも良い。また、1つの切削インサートに第1ボール刃110,210,310,410や第2ボール刃120,220,320,420に相当するボール刃を3枚以上形成しても良い。
上記実施形態では、第1ボール刃110,210,310(第2ボール刃120,220,320)に5つの大径刃111が形成される場合、即ち、1枚のボール刃に5つの大径刃111が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1ボール刃410(第2ボール刃420)のように、1枚のボール刃に少なくとも2以上の大径刃111が形成されていれば良いが、大径刃111は、1枚のボール刃に5以上16以下の数で設けられることが好ましい。
即ち、大径刃111の数が5未満である場合、各大径刃111の刃長(切削幅)を長く形成できる一方で、3軸加工を行う場合に、各大径刃111で加工できる加工面(平面や曲面)の角度に制約が生じる。また、大径刃111の数が16を超える場合、3軸加工を行う場合に、様々な角度の平面や曲面を各大径刃111で切削できる一方で、各大径刃111の刃長(切削幅)が小さくなるため、1つの大径刃111で切削を行う場合に加工能率が低下する。
これに対し、1枚のボール刃に5以上の大径刃111を設けることにより、大径刃111の数が5未満である場合に比べ、3軸加工を行う場合に、様々な角度の平面や曲面を各大径刃111で切削することができる。よって、3軸加工で切削を行う場合であっても、角度の異なる平面や曲面の加工能率をよりバランス良く向上させることができる。また、1枚のボール刃に16以下の大径刃111を設けることにより、大径刃111の数が16を超える場合に比べ、各大径刃111の切削幅を大きく確保することができる。これにより、各大径刃111による平面および曲面の切削時にピックフィードを大きくすることができるので、平面および曲面の双方の切削において加工能率を向上させることができる。
上記実施形態では、第1ボール刃110,210,310,410(第2ボール刃120,220,320,420)において、各大径刃111の切削幅(曲率半径)がそれぞれ同一である場合や、傾斜大径刃111cの切削幅(曲率半径)が他の大径刃111a,111b,111d,111eよりも大きい場合や、底大径刃111aの切削幅(曲率半径)が他の大径刃111b〜111eよりも大きい場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、切削幅や曲率半径が各大径刃111のそれぞれにおいて異なっていても良いし、各大径刃111のうち、2以上の大径刃111の切削幅や曲率半径が他の大径刃111よりも大きく(小さく)される構成でも良い。
また、各大径刃111のうち、最も外周端側に位置する外周大径刃111eの切削幅および曲率半径を、他の大径刃111a〜111dよりも大きくする構成でも良い。これにより、軸線Oと平行な平面(例えば、ワークの壁面)を3軸加工で切削する場合に、外周大径刃111eでの切削によって加工面の面粗さを特に向上させることができる。
即ち、各大径刃111の切削幅や曲率半径は、切削を行うワークに応じて適宜設定すれば良く、各大径刃111の切削幅や曲率半径は如何なる値であっても良いが、各大径刃111及び各小径刃112(中径刃113)を、ボール刃の中心Cからボール半径の少なくとも80%以上120%以下の領域内に形成する(ボール刃の中心Cから各大径刃111及び各小径刃112(中径刃113)の各中点までの長さが、ボール半径の80%以上120%以下となる)ことが好ましい。かかる形成領域がボール半径の100%に近い程、各大径刃111及び各小径刃112(中径刃113)によって形成される刃形の形状を円弧に近い形状にすることができる。
また、各大径刃111及び各小径刃112(中径刃113)のそれぞれを、ボール刃の中心Cからボール半径の100%以下の領域内に形成することがより好ましい。これにより、ボール半径のボール刃の形状を基準にした加工軌跡で荒加工を行うことができるので、かかる加工軌跡の演算を容易に行うことができる。
上記実施形態では、各大径刃111どうしの間や、大径刃111及び中径刃113の間を小径刃112によって接続する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、小径刃112を省略して各大径刃111どうしを直接接続する構成や、大径刃111及び中径刃113を直接接続する構成でも良い。
1 ボールエンドミル
100,200,300,400 切削インサート
110,210,310,410 第1ボール刃(ボール刃)
111a 底大径刃(大径刃)
111b,111c,111d 傾斜大径刃(大径刃)
111e 外周大径刃(大径刃)
112 小径刃
113 中径刃
120,220,320,420 第2ボール刃(ボール刃)
C ボール刃の中心
L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7 大径刃の切削幅
O 軸線
R1 ボール半径
V1 仮想円
V2 仮想線

Claims (10)

  1. 軸線回りの回転軌跡が略半球状に形成されるボール刃を前記軸線方向の先端に備えるボールエンドミルにおいて、
    前記ボール刃は、そのボール刃のボール半径よりも大きい曲率半径の円弧状に形成される大径刃を備え、
    前記ボール刃の中心から前記ボール半径の80%以上120%以下の領域内において、前記ボール刃の先端から外周端にかけて複数の前記大径刃が形成されることを特徴とするボールエンドミル。
  2. 前記ボール刃の先端から外周端側にかけての所定領域内において、複数の前記大径刃の切削幅がそれぞれ同一とされることを特徴とする請求項1記載のボールエンドミル。
  3. 複数の前記大径刃の曲率半径がそれぞれ同一とされることを特徴とする請求項2記載のボールエンドミル。
  4. 前記ボール刃の中心を中心にして前記ボール半径の仮想円を描いた場合に、その仮想円が複数の前記大径刃のそれぞれの回転軌跡に内接することを特徴とする請求項3記載のボールエンドミル。
  5. 前記ボール刃の先端から外周端にかけて5以上16以下の前記大径刃が形成されることを特徴とする請求項4記載のボールエンドミル。
  6. 前記ボール刃は、前記大径刃どうしの間を接続し前記ボール半径よりも小さい曲率半径の円弧状に形成される複数の小径刃を備え、
    前記小径刃よりも前記大径刃の切削幅が大きくされることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のボールエンドミル。
  7. 前記ボール刃の最も先端側に位置する前記大径刃は、他の前記大径刃よりも曲率半径および切削幅が大きくされることを特徴とする請求項1又は2に記載のボールエンドミル。
  8. 前記ボール刃の最も外周端側に位置する前記大径刃は、他の前記大径刃よりも曲率半径および切削幅が大きくされることを特徴とする請求項1又は2に記載のボールエンドミル。
  9. 前記ボール刃の中心を通る仮想線であって前記軸線に対して45°の角度となる仮想線上に位置する前記大径刃は、他の前記大径刃よりも曲率半径および切削幅が大きくされることを特徴とする請求項1又は2に記載のボールエンドミル。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載のボールエンドミルの先端に取り付けられる切削インサートであって、
    前記ボール刃が形成されることを特徴とする切削インサート。
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