JP2011212836A - ボールエンドミル及びその製造方法 - Google Patents

ボールエンドミル及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2011212836A
JP2011212836A JP2011060403A JP2011060403A JP2011212836A JP 2011212836 A JP2011212836 A JP 2011212836A JP 2011060403 A JP2011060403 A JP 2011060403A JP 2011060403 A JP2011060403 A JP 2011060403A JP 2011212836 A JP2011212836 A JP 2011212836A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
blade
edge
ball
cutting edge
radius
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2011060403A
Other languages
English (en)
Inventor
Shinko Furuno
真弘 古野
Kenshiro Tamaki
賢史朗 田牧
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Moldino Tool Engineering Ltd
Original Assignee
Hitachi Tool Engineering Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Tool Engineering Ltd filed Critical Hitachi Tool Engineering Ltd
Priority to JP2011060403A priority Critical patent/JP2011212836A/ja
Publication of JP2011212836A publication Critical patent/JP2011212836A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Milling Processes (AREA)
  • Finish Polishing, Edge Sharpening, And Grinding By Specific Grinding Devices (AREA)

Abstract

【課題】硬さと靭性を兼ね備えた難削材といわれる最近のプラスチック金型材の湿式仕上げ加工を含めた加工において、ボール刃全域で、チッピングなどの異常摩耗が抑制でき、チッピングなどがなく、仕上面荒さが良好な状態を維持しながら安定して切削加工できるボールエンドミル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】工具先端部に略円弧状のボール刃を有し、ボール刃の後端は外周刃につながる切れ刃を具備し、前記切れ刃は刃先処理されており、ボール刃の各位置での刃先稜線に直角な方向の断面で見たときにすくい面と逃げ面でなす刃先稜線の曲率半径R、R45がいずれも刃径Dの0.01%以上0.5%以下で、かつR<R45であり、刃先稜線の曲率半径をR90が刃径Dの0.025%を超え0.8%以下であるボールエンドミル、及びその製造方法である。
【選択図】図5

Description

本発明は硬質皮膜を被覆したボールエンドミルの新しい形状及びその製造方法に関するものである。
硬質皮膜を被覆した切削工具は、工作機械による金型加工や部品加工などに広く一般的に使用されている。一方、削られる側の金型や部品など(以下、総称してワークともいう)を構成する被削材に関しては、材料としての性能改良が進んでいる。例えば、プラスチック金型材料においては、射出成型の際にショット数が多くなってくると金型に割れが発生し金型に修正が必要になる。その金型の割れの発生までの時間を延ばすための材料の改良が成されており、今までの金型としての硬度は保ちつつ、鋼自体に靭性を持たせる傾向にある。例えば、日立金属株式会社製のHPM−MAGICなどのような高硬度と高靭性とを兼ね備えた金型用工具鋼が一般的になってきている。また部品加工においては、軽量且つ強度が高いものが求められており、強い衝撃に対しても充分耐えうるような材料が開発されている。
また、一方、前記の金型や部品を対象にした一般的な工作機械を用いたエンドミルを用いた切削加工においては、エンドミル本体が回転し、エンドミルの刃先稜線が被削材を塑性変形させて、切屑をせん断させ排出していく。その際、せん断された切屑はエンドミルのすくい面を介して排出され、逃げ面は被削材を擦りながら進むため、逃げ面の擦れによってワークの仕上面を形成していく。しかしながら、例えば前述先述したような近年開発されたプラスチック金型材料の切削や部品加工の切削においては、高硬度と高靭性とを兼ね備えた工具鋼金属材料の近年の普及により、いわゆる難削材化が進んでおりエンドミルに対して過酷な条件が要求される状況になっている。硬質皮膜を被覆した切削工具の開発においては、硬質皮膜自体の改良や切削工具の母材との密着性の改善も行われているが、依然としてエンドミルでは稜線部から硬質皮膜が剥離したり、切削の衝撃によるチッピングが起こるといった問題が発生しており、硬質皮膜を被覆したエンドミルの寿命の大部分が、このような硬質皮膜の剥離やチッピングに起因しているといっても過言ではない。
特に小径エンドミルにおいてこのような問題が顕著に現れる。小型で精密な金型の加工においては、深い部分や隅部を加工する深堀り加工を行うことが多く、首部を長くした小径ロングネックエンドミルが使用される。しかし、深堀り加工の場合、切削工具のたわみが発生しやすく、たわみが原因で振動が起きやすくなる。振動が起きることで、刃先稜線がチッピングを起こしたり、硬質皮膜の剥離が生じてしまうことで、加工面の悪化や形状誤差などが発生し、高精度な加工を行うことができないといった問題もある。また、小径ロングネックボールエンドミルでは生成された切りくず詰まりによる抵抗の増加が原因で折損にいたるケースも多く、切りくず排出が非常に重要になる。
これらの問題に対して、エンドミルの耐チッピング性を向上する目的や、刃先の強度を向上するために、いくつかの提案がなされている。
特開2001−9625号公報(特許文献1)は本件特許出願人による発明の提案であり、該公報には、成膜後に切れ刃稜線の凹凸を研磨により除去した仕上げ用ボールエンドミルが記載されている。特開2000−107926号公報(特許文献2)も本件特許出願人による発明の提案であり、該公報には、硬質皮膜の被覆後にすくい面と逃げ面の交差する切れ刃部分のすくなくとも皮膜の一部を除去したエンドミルが記載されている。また、特開2003−145337号公報(特許文献3)には、ボールエンドミルの回転中心部に位置する切れ刃部の硬質膜厚が、略半球の周辺に位置する切れ刃部の硬質膜厚より薄いボールエンドミル及びその製造方法が記載されている。
特開2001− 9625号公報 特開2000−107926号公報 特開2003−145337号公報
前述の先行技術文献で紹介したように、硬質皮膜を被覆したエンドミルの刃先稜線部の形状調整は一般に刃先処理と呼ばれ、研磨やショットブラストによる手段によって実施されてきた。しかしながら、従来提案されている手段は、工具の刃先を形成する研磨工程で発生する砥石による凹凸痕の除去や、硬質皮膜処理時に発生する皮膜上のドロップレット(パーティクルとも呼ばれる)の除去を主目的としたものである。
例えば、特許文献1に記載の発明は、硬質皮膜を施した後に刃先処理を行い、少なくともボール刃の回転中心近傍の切れ刃について、工具製造時の研削条痕である切れ刃の凹凸を研磨により除去したことを特徴としており、刃先稜線の状態を均一化することによって、切削における摩耗形態の安定化を実現させている。しかしながら、本発明者の検討によると、特にボールエンドミルにおいては、チゼル付近から外周刃まで一定の厚さの刃先稜線では、切削時にボールエンドミルでの各箇所での抵抗の掛かり方が異なり、刃先強度が不足する箇所もあれば、強度が強い反面として切削性が悪くなる場合もあり、結果的に不安定な切削となることが分かった。特に最近の高硬度、高靭性工具鋼材料の切削においては、特許文献1に記載の刃先処理では加工の安定性に欠け、切削工具の寿命に大きなばらつきが生じているのが現状である。
特許文献2は、本件特許出願人が切削工具の逃げ面とすくい面とが形成する刃先稜線の皮膜の一部を除去することを特徴とした刃先強化エンドミルとして提案したものである。この発明は、刃先稜線部の皮膜の膜割れを安定化させて刃先強度を向上させる点で一定の効果を上げたものであるが、切れ刃の箇所によって最適な刃先稜線の詳細な定義がなされていない。ボールエンドミルを使った加工においては、ボール刃のチゼル付近の加工と、外周刃での加工とでは加工中にかかる負荷が大きく異なり、外周刃での加工中にかかる負荷が極めて大きくなることから、外周刃のチッピングが多く発生してしまうという問題がある。さらに外周刃のチッピングを防げる程の刃先処理をボール刃に施した場合は、ボール刃のチゼル付近での硬質皮膜の形状を大きく変化させてしまうことで切削性が低下してしまうという問題がある。
また、特許文献3においては、スローアウェイチップを取り付けてなるボールエンドミルで、ボール刃の回転中心部と外周部とで形成される硬質膜の膜厚を変化させ、ボール刃の回転中心に位置する切れ刃部の硬質膜厚を薄くすることを特徴とした提案がされている。しかし、膜厚は耐摩耗性に対して非常に大きな影響力を持ち、厚膜であればあるほど、耐摩耗性が向上するが、切屑生成能力やワークの仕上げ面粗さに代表される切削性においては、大きな影響を及ぼさない。そればかりか、ボールエンドミルのような鋭利な刃先では、刃先稜線に硬質膜が8μm以上の厚膜の部分(特許文献3では切れ刃部の外周部である)を形成すると、刃先稜線部の硬質膜に当初からマイクロクラックが発生する確率が高くなるため、切削加工での初期の食付きの衝撃で切れ刃に被覆された皮膜が割れて、硬質膜の脱落、チッピングを生じてしまうという問題が発生する。このような刃先稜線部に生じた硬質皮膜内のマイクロクラックの一例を図15に示す。この現象は最近では硬質膜として主流になっているTiAl系化合物を含有する硬質膜の場合に顕著になる。
硬質膜の膜厚のみ規定した特許文献3のボールエンドミルでは、膜厚の薄いボール刃の回転中心付近では相対的に切削性が悪く、加工面が切りくずによって毟れやすくなり、膜厚が厚い外周付近では上記のように硬質膜内のマイクロクラックを起因とした欠けやチッピングが生じやすくなる。
本発明者は、ボール刃のチゼル付近の切削性の向上と、ボール刃の外周付近での硬質皮膜の剥離が無い刃先にすることを両立させて、ボール刃の刃先稜線全域で刃先強度を向上させてトータルとして工具の寿命を向上、安定化させる手段を種々検討した。そのためにボール刃の各部における刃先稜線の詳細な形状に着目した。
一般にはボールエンドミルのボール刃の刃先稜線は、逃げ面とすくい面との交差部として定義される。しかし、研磨などで刃先処理した逃げ面とすくい面との交差部は鋭くとがった部分ではなくて、丸みを帯びた刃先稜線となっているのが通常である。
チッピングの発生と硬質皮膜の剥離を抑制できるような刃先稜線形状のボールエンドミルは現在まで実現されていないため、長時間の切削において、安定した摩耗状態と加工面状態を維持することに充分に対応できずに問題が残っていた。また、従来のボールエンドミルは、刃先処理の有無に関わらず、一般的に言われる刃先稜線の形状がボールエンドミルのボール刃の各箇所で最適化されていないために、不安定な摩耗形態を呈する形になる。
本発明者は硬質皮膜を被覆したボールエンドミルに、種々の刃先処理によって逃げ面とすくい面の交叉する部分の形状をボール刃の位置によって変化させて切削試験を行った。その結果、ボール刃の各位置での刃先稜線に直角な断面で見たときに、逃げ面からすくい面に至る曲線の最初の曲率半径をボール刃の各部位によって制御することが大切であることが分かった。
以下に本発明でいう「刃先稜線の曲率半径」とは、一般的な大まかな刃先稜線の曲率半径とは異なり、前述のように、ボール刃の各位置での刃先稜線に直角な断面で見たときに、逃げ面からすくい面に至る曲線の最初の曲率半径として定義される。一例として挙げると図5(a)に示す刃先稜線の曲率半径R4のように、逃げ面からすくい面に至る曲線の最初の曲率半径が本発明でいう「刃先稜線の曲率半径」である。この定義は、逃げ面とすくい面に硬質皮膜が被覆されている場合には、逃げ面からすくい面に至る逃げ面での硬質皮膜が有する最初の丸み(曲面)のアール半径の大きさともいえる。
本発明における刃先稜線の曲率半径を前記のように制御する効果があることを導き出した理由は、ボールエンドミルの切削では、一定の回転数で切削する際、ボールエンドミルのボール刃の各部位では、周速が大きく変化するために切削性が異なり、硬質皮膜の厚さだけではなく特にボール刃の位置によって逃げ面とすくい面の繋ぎ方を最適にすることで、ボール刃の回転中心から外周刃近くまでの安定した切削が可能になるのではないかと推測されたためである。しかし、現在のボールエンドミルは、硬質皮膜が工具の長寿命化には必須であるために、本発明は硬質皮膜を被覆した後の刃先処理として新規で最適な処理方法を見出し、刃先稜線の各部位において最適な形状の刃先稜線の曲率半径の付与に成功したものである。
本発明のボールエンドミルの応用面の目的としては、上述したように、切削工具に溶着しやすく、さらに材料硬度が高い被削性の悪い金型用鋼などを、加工の初期から鏡面または鏡面に近いワークの面に仕上げ加工できるボールエンドミルを提案することである。本発明は、硬質皮膜の被覆を前提として、被覆処理後の刃先処理によってボール刃形状を切れ刃の各位置で制御して、ボール刃の刃先強度を向上し、かつ硬質皮膜の剥離を抑制できるような最適な刃先稜線形状のボールエンドミルを提供するものである。
また本発明は、刃先処理によって刃先稜線の曲率半径の付与を切れ刃の各位置で制御しうる、ボールエンドミルの最適な製造方法を提供することを目的としている。
すなわち第1の本発明は、工具先端部に略円弧状のボール刃を有し、ボール刃の後端は外周刃につながる切れ刃を具備するボールエンドミルであって、前記切れ刃は硬質皮膜を被覆後に刃先処理されており、前記ボール刃上にある任意の点と円弧状ボール刃の円の中心とを結んだ直線と、工具軸上でのボール刃の円の中心とを結んだ直線がなす角度が4度及び45度となる場所にあるボール刃について、ボール刃の各位置での刃先稜線に直角な方向の断面で見たときに、すくい面と逃げ面でなす刃先稜線の曲率半径をそれぞれR、R45とすると、RとR45はいずれも刃径Dの0.01%以上0.5%以下で、かつR<R45であり、前記角度が90度となる場所のボール刃について、刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの、すくい面と逃げ面でなす刃先稜線の曲率半径をR90とすると、前記R90が刃径Dの0.025%を超え0.8%以下であることを特徴とするボールエンドミルである。
第2の本発明は、第1の本発明において、外周刃の各位置での刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの、すくい面と逃げ面でなす外周刃の刃先稜線の曲率半径をRoutとすると、外周刃の刃先稜線の曲率半径Routがいずれも刃径Dの0.025%を超え0.8%以下であることを特徴とするボールエンドミルである。
第3の本発明は、第1または第2の本発明において、前記角度が4度以上45度以下となる範囲にあるボール刃の、ボール刃もしくは外周刃の各位置における刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの刃先稜線の曲率半径Rが刃径Dの0.01%以上0.5%以下、前記角度が45度を超え90度以下となる範囲にあるボール刃、及び外周刃の刃先稜線の曲率半径Rbが刃径Dの0.025%を超え0.8%以下であることを特徴とするボールエンドミルである。
第4の本発明は、第1乃至第3のいずれかの本発明において、前記角度が大きくなるに従い、ボール刃の各位置での刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの刃先稜線の曲率半径Rが徐々に大きいことを特徴としたボールエンドミルである。
第5の本発明は、第1乃至第4のいずれかの本発明において、前記角度が4度、45度、90度となる場所にあるボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量をそれぞれF、F45、F90とすると、F、F45、F90はいずれも刃径Dの0.03%以上0.5%以下で、かつF<F45<F90であり、前記角度が4度、45度、90度となる場所にあるボール刃のすくい面の皮膜擦れ量をそれぞれC、C45、C90とすると、C、C45、C90はいずれも刃径Dの0.03%以上0.5%以下で、かつC>C45>C90であることを特徴とするボールエンドミルである。
さらに第6の本発明は、ボールエンドミル自身を工具中心軸の回りに回転させる第1の回転手段、複数の前記ボールエンドミルを保持する保持ステーションを回転させる第2の回転手段、及び研磨媒体を装入したバレルの主軸を回転させる第3の回転手段、並びに前記工具の保持ステーションを工具中心軸方向に可動にする駆動手段からなるバレル研磨装置を用い、前記バレル研磨装置の研磨媒体内で、主に前記駆動手段によって前記ボールエンドミルのボール刃の位置制御と、前記第1乃至第3のいずれかの回転手段との組合せによって、前記ボール刃の逃げ面とすくい面の交叉する刃先稜線の曲率半径をボール刃の円弧の位置により変化させることを特徴とするボールエンドミルの刃先処理方法である。この方法を用いることにより、ボール刃の逃げ面とすくい面で形成される刃先稜線の曲率半径をボール刃の円弧の各位置で異ならせたボールエンドミルを製造することが可能となる。
なお、本発明の研磨媒体とは、ダイヤモンドパウダーなど直接的に研磨作用のある研磨材のほかに、有機系の樹脂系弾性材やクルミやココナッツの皮などからなる無機系の緩衝材を含めた前記研磨材の衝撃緩衝材を含めた概念である。
本発明のボールエンドミルは、硬さと靭性を兼ね備えた難削材といわれる最近のプラスチック金型材の湿式仕上げ加工を含めた加工において、ボール刃全域で、チッピングなどの異常摩耗が抑制でき、ボール刃の部分的なチッピングなどがなく刃先全体として均一な摩耗が進むので、安定して長寿命の切削加工ができる。
本発明のボールエンドミルによれば、ボール刃全域で切削加工の開始時から良好な仕上げ加工面を得ることができるので、切削加工を長時間続けても加工面の面粗さの変化が小さく高品位な加工面をボールエンドミルの寿命まで維持できる。
本発明のボールエンドミルによれば、逃げ面の皮膜擦れ量をF<F45<F90、すくい面の皮膜擦れ量をC>C45>C90とすることにより、切削速度が相対的に低くなり、切り屑除去が非常に困難となるチゼル近傍部においても、スムーズな切り屑の排出を行うことが可能になるため、切り屑詰まりによる切削抵抗の増加、異常摩耗の進行やチッピングを抑制することができる。さらに加工面が毟れること無く、良好な加工面に仕上げることが可能になる。
本発明のボールエンドミルの製造方法によれば、バレル研磨機の構造を改良して、特に本発明の実施の形態に示すように条件を最適化することによって、上記のような効果を発揮する新しい刃先稜線を形成できる。
本発明の一例であるボールエンドミルの概略構成を示す正面図である。 図1の左側面図をボールエンドミルの回転方向に90度回転させ、拡大した図である。 図2においてボール刃の2箇所の最外周部をむすんだ直線に垂直であり、かつ工具中心軸に垂直な視野(1)で示す矢印の方向から見た図である。 図3のボールエンドミルを工具の回転方向に45度回転させ、2箇所あるボール刃の最外周部をむすんだ直線を仮想回転軸として約45度チゼル部側を回転して起こして、図3と同じ視点位置から見た図である。 図4におけるA−A’断面図の拡大図である。 図4におけるB−B’断面図の拡大図である。 図4におけるC−C’断面図の拡大図である。 図4におけるD−D’断面図の拡大図である。 図4におけるE−E’断面図の拡大図である。 回転軸が3軸構成である本発明で実施したバレル研磨装置の概略図である。 図10に示すバレル研磨装置を図10における下側から見たときの図である。 図3のボールエンドミルを工具中心軸とボール刃の交点が下になるように180度回転させた図である。 本発明例25のチゼル刃近傍の拡大写真である。 従来例3のチゼル刃近傍の拡大写真である。 従来例3のボールエンドミルにおけるA−A’断面図の拡大図である。 図4におけるA−A’断面図の拡大図である。 図4におけるB−B’断面図の拡大図である。 図4におけるD−D’断面図の拡大図である。
以下、本発明を実施するための形態の一例を図1〜図8に基づいて説明する。
図1は、本発明の一例であるボールエンドミルの概略構成を示す正面図である。本発明によるボールエンドミル1は、二枚の切れ刃2と直径がシャンク径dで表されるシャンク部5からなり、切れ刃2は、工具中心軸O上にあるボール刃半径の中心点Xを円弧の中心として形成されたボール刃3と外周刃4から構成され、工具中心軸Oに平行に測定したときの長さは刃長Lで表される。本発明は切れ刃2の刃数が4枚や6枚など、他の刃数のボールエンドミルでも適用できる。
図2は、図1の左側面図をボールエンドミルの回転方向に90度回転させ、拡大した図である。図2に示すボールエンドミルは、二枚のボール刃3、二枚のボール刃3をつなぐチゼル刃6、切れ刃に沿って切屑を逃がすためのギャッシュ部7とを有する。2箇所ある最外周部8は二枚のボール刃3の最外周部でボール刃3が外周刃4につながるところである。また、2箇所の最外周部8の間隔は刃径Dとなる。
図2乃至図8を用いて本発明の重要な要素である、ボール刃の刃先稜線の曲率半径(アール半径ともいう)について説明する。
図3は、図2においてボール刃の2箇所の最外周部をむすんだ直線に垂直であり、かつ工具中心軸に垂直な視野(1)で示す矢印の方向から見た図である。4度の刃先断面観察部9は、ボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し4度を成す直線とボール刃3との交点である。工具中心軸Oに対し4度とは、チゼル部を避けた最も工具先端に近い位置が前記ボール刃3との交点となるように選ばれている。45度の刃先断面観察部10は、ボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し45度を成す直線とボール刃3との交点である。60度の刃先断面観察部11は、ボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し60度を成す直線とボール刃3との交点である。90度の刃先断面観察部12は、ボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し90度を成す直線とボール刃3との交点である。外周刃の刃先断面観察部13は、工具中心軸Oに対し90度を成す直線と外周刃4との交点である。90度の刃先断面観察部12及び外周刃の刃先断面観察部13は断面を視野(2)から観察している。つまり、90度の刃先断面観察部12及び外周刃の刃先断面観察部13は工具中心軸Oの方向から刃先稜線を観察している。
本発明における刃先稜線の曲率半径とは、図3に示すような刃先断面観察部とボール刃半径の中心点Xを通る直線に沿って切断した切断面、すなわち刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの刃先稜線の曲率半径を示す。例えばボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し4度を成す直線とボール刃3との交点における刃先稜線の曲率半径Rは、刃先断面観察部10とボール刃半径の中心点Xを通る直線に沿って切断した切断面における刃先稜線の曲率半径を示す。ただし、本発明におけるいずれの刃先稜線の曲率半径とも、その数値は逃げ面とすくい面が交叉する位置で逃げ面の硬質皮膜が有する最初の丸みのアール半径の大きさとして定義される。
図4は、図3のボールエンドミルを工具の回転方向に45度回転させ、2箇所あるボール刃の最外周部をむすんだ直線を仮想回転軸として約45度チゼル部側を回転して起こして、図3と同じ視点位置から見た図である。
図4におけるA−A’、B−B’、C−C’、D−D’及びE−E’はそれぞれ4度の刃先断面観察部9、45度の刃先断面観察部10、60度の刃先断面観察部11、90度の刃先断面観察部12及び外周刃の刃先断面観察部13に対応するボール刃の刃先稜線に直角方向の切断線である。この位置の切断によって刃先稜線を形成する逃げ面とすくい面の硬質皮膜、及び超硬母材が見え、それぞれの場所において逃げ面の硬質皮膜が有する最初の丸みのアール半径の大きさ、すなわち本発明における刃先稜線の曲率半径を測定することが可能である。
図5乃至図8はいずれも、ボール刃の刃先稜線に対してA−A’、B−B’、C−C’、及びD−D’の位置で直角に切断した刃先断面の拡大図である。図9は外周刃の刃先稜線に対してE−E’の位置で直角に切断した刃先断面の拡大図である。ボール刃の超硬母材19には硬質皮膜14が被覆され、逃げ面15及びすくい面16を形成している。刃先稜線断面部17は硬質皮膜の表面である逃げ面15から丸みを帯びて硬質皮膜表面であるすくい面16につながるように形成されている。図5乃至図9のように刃先稜線断面部17が丸みを帯びているのは、硬質皮膜処理後の刃先処理により刃先稜線部が削り取られた結果である。本発明における刃先稜線の曲率半径とは、前記逃げ面15の硬質皮膜表面が刃先稜線断面部17の丸みを帯びた部分につながる最初の丸みの半径として定義される。これは加工面に接触する部分18の曲率半径である。
本発明での刃先稜線の曲率半径の具体的な測定方法を述べる。前記逃げ面15の直線を刃先稜線側に延長させたとき、丸みを帯び始める点が存在する。丸みを帯び始める最初の点とそこから最初の曲率を形成する最も近い刃先稜線の二点をとり、合計三点で円を描きその半径を測定する。
図5は図4におけるA−A’断面図の拡大図である。図5(a)と図5(b)に示されているのは、ボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し4度を成す直線とボール刃3との交点における刃先稜線の曲率半径Rが刃径Dの0.04%の実施例である。A−A’断面図は、4度の刃先断面観察部9とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度となる位置における刃先稜線に対して直角方向の断面図である。A−A’断面図に近い刃先稜線はチゼルに最も近く、ボール刃の周速が小さくて切削速度が小さい部分である。したがってこの部分における刃先稜線断面部17は他の部分での刃先稜線断面部17と比較してできるだけシャープな形状にして切削性能を向上させることが望ましい。そこで本発明では、A−A’断面図に近い刃先稜線での刃先処理は注意深く行ない、図5(a)または図5(b)に示すような形状とする。図5(b)は図5(a)よりも刃先処理を念入りに行った例であり、刃先稜線断面部17での超硬母材19が一部露出した程度でもよいことを示す。図5(a)または図5(b)での逃げ面の硬質皮膜の最初の丸みである刃先稜線の曲率半径Rは図6乃至図9で示される他の部分の逃げ面の硬質皮膜の最初の丸みある刃先稜線の曲率半径と比較して最も小さい。また、刃先処理を受けて薄くなったすくい面から逃げ面に至る刃先稜線部での硬質皮膜の幅も図6乃至図9に示す他のアール刃の位置での薄くなった刃先稜線部での硬質皮膜の幅と比較して、相対的に大きいものである。これらのことにより、シャープな形状の刃先稜線断面部17が得られる。
図6は、図4におけるB−B’断面図の拡大図である。B−B’断面図は、45度の刃先断面観察部10とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が45度となる位置における刃先稜線に対して直角方向の断面図である。図6に示されているのはボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し45度を成す直線とボール刃3との交点における刃先稜線の曲率半径R45が刃径Dの0.07%の例である。
図7は、図4におけるC−C’断面図の拡大図である。C−C’断面図は、60度の刃先断面観察部11とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が60度となる位置における刃先稜線に対して直角方向の断面図である。図7に示されているのはボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し60度を成す直線とボール刃3との交点における刃先稜線の曲率半径R60が刃径Dの0.11%の例である。
なお、A−A’、B−B’、及びC−C’断面の観察の際には、集束イオンビームFIB装置を用いて、試料をチャンバー内でビーム電流により、観察部である刃先稜線の直角方向に約0.03mmの切り欠けを入れた。また、皮膜と超硬母材の界面状態を保護するため、刃先稜線断面部にレーザー照射後、白金膜を被覆することで断面の観察が可能になる。
図8は、図4におけるD−D’断面図の拡大図である。D−D’断面図は、90度の刃先断面観察部12とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が90度となる位置における刃先稜線に対して直角方向の断面図である。図8に示されているのはボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し90度を成す直線とボール刃3との交点における刃先稜線の曲率半径R90が刃径Dの0.13%の例である。
図9は、図4におけるE−E’断面図の拡大図である。E−E’断面図は、外周刃にある外周刃の刃先断面観察部13において、工具中心軸と直角方向に見たときの刃先稜線の断面拡大図である。図9に示されているのは工具中心軸Oに対し90度を成す直線と外周刃4との交点における外周刃の刃先稜線の曲率半径Routが刃径Dの0.13%の例である。
なお、D−D’断面とE−E’断面の観察の具体的な方法の一つは、ボールエンドミルの工具中心軸に対して直角方向に切断を行い、切断が完了する寸前で切断作業をとめ、薄く残った超硬母材部を傷つけないようにペンチ等で割り、皮膜と超硬母材の界面や表面状態を損傷させないようにして観察を行うことで可能である。本発明の実施例の観察もすべてこの方法で実施した。
本発明において、刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度及び45度となる場所にあるボール刃において、ボール刃の刃先稜線に対し直角方向の断面で見たときの刃先稜線の曲率半径R及び刃先稜線の曲率半径R45を刃径Dの0.01%以上0.5%以下で、かつR<R45とする。このことにより、外周刃に比べ切削速度が相対的に低くなり、切削抵抗が高くなってしまう工具中心軸Oに近い場所においても、切削抵抗による異常な摩耗進行やチッピングの発生を抑制し、切削の初期に形成したワークの良好な仕上げ加工面を維持することができる。刃先稜線の曲率半径R及び刃先稜線の曲率半径R45を刃径Dの0.01%未満とした場合、切れ刃稜線が鋭利になりすぎるために、早期にチッピングを起こしたり、不安定な皮膜の部分から剥離が生じやすくなる。刃先稜線の曲率半径R及び刃先稜線の曲率半径R45が0.5%を超える場合、切削性が悪くなり、抵抗も大きくかかることから、摩耗進行が早くなる。特にチゼル刃側の刃先稜線は周速がゼロに近いために、十分な切削性が得られにくい部位であるため、刃先稜線の曲率半径R及び刃先稜線の曲率半径R45はいずれも刃径Dの0.01%以上で0.5%以下で、かつR<R45とする必要がある。
本発明において、刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が90度となる場所におけるボール刃において、ボール刃の刃先稜線に対して直角方向の断面で見たときの、刃先稜線の曲率半径R90を刃径Dの0.025%を超え0.8%以下とする。このことにより、切削速度が高くなる外周刃に近いボール刃を用いて、例えば金型の壁面のような、垂直もしくは垂直に近い壁面の仕上げ加工をする際においても、壁面と切れ刃との接触から生じるボール刃の欠け及びチッピングの発生を抑制し、垂直もしくは垂直に近い壁面の加工面の仕上げ精度を向上させることが出来る。前記R90を刃径Dの0.025%未満とした場合、切削速度が上がる領域であるため、チッピングが起こりやすくなる。また、前記R90が刃径Dの0.8%を超える場合、刃先強度は確保されるが、切削性が悪くなるため、特に切削速度が上がる最外周で振動などが起こりやすくなり、切削が不安定になる。
さらに、本発明において工具中心軸Oに対し90度を成す直線と外周刃4との交点における刃先稜線の曲率半径Routを刃径Dの0.025%を超え0.8%以下とすることが望ましい。これにより、金型の壁面にような垂直もしくは垂直に近い壁面と外周刃が接触したときの欠けやチッピングが抑制され、壁面の加工面の仕上げ精度をさらに向上させることが出来る。
また本発明において、前記で定義される刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度以上45度以下の範囲のボール刃の刃先稜線において、前記刃先稜線に直角な断面で見たときの刃先稜線の曲率半径Rは刃径Dの0.01%以上で0.5%以下であり、前記角度が45度を超えて90度以下となる範囲にあるボール刃、及び外周刃の刃先稜線の曲率半径Rbが刃径Dの0.025%を超え0.8%以下であることが望ましい。この条件は、特定の前記角度だけでなく一定の角度範囲毎で刃先稜線の曲率半径が最適化されていることを意味し望ましい条件となる。
さらに本発明において、刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が大きくなるに従い、ボール刃の刃先稜線に直角方向の断面で見たときに刃先稜線の曲率半径Rが徐々に大きくなることが一層望ましい。これにより、連続してボール刃の刃先稜線の曲率半径Rを大きくすることとなり、切削速度の小さいチゼル付近では前記刃先稜線の曲率半径Rを小さくして切削性能を向上し、一方では切削速度の大きいボール刃の外周側での欠けやチッピングを抑制し、より安定した加工を行うことが可能となる。
次に本発明における皮膜擦れ量を定義する。
図16乃至18は図4におけるA−A’、B−B’、及びD−D’断面図の拡大図である。図16(a)は先稜線断面部17での超硬母材19を露出させずにバレル研磨装置による研磨を行った本発明のボールエンドミルを示す。図16(b)は先稜線断面部17での超硬母材19が一部露出させるようにバレル研磨装置による研磨を行った本発明のボールエンドミルを示す。本発明において、超硬母材のすくい面を延長した直線32と、逃げ面を延長した直線35との交点36と加工面に接触する部分18の幅を逃げ面の皮膜擦れ量F、F45、F90とする。また、超硬母材の逃げ面を延長した直線34と、すくい面を延長した直線33との交点37と、すくい面の硬質皮膜が超硬母材のすくい面に対し垂直になる方向に徐々に薄くなり始める点38との幅をすくい面の皮膜擦れ量C、C45、C90とする。なお、図16や図17に示すA−A’、B−B’断面の観察を行う際には、刃先稜線の曲率半径と同様に、集束イオンビームFIB装置を用いて、試料をチャンバー内でビーム電流により、観察部である刃先稜線の直角方向に約0.03mmの切り欠けを入れた。また、皮膜と超硬母材の界面状態を保護するため、刃先稜線断面部にレーザー照射後、白金膜を被覆することで断面の観察が可能になる。皮膜擦れ量測定の際は、刃先稜線断面部を走査型電子顕微鏡で拡大し、測定を行った。なお、D−D’断面の観察を行う際には、ボールエンドミルの工具中心軸に対して直角方向に切断を行い、刃先稜線断面部を走査型電子顕微鏡で拡大し、測定した。本発明の実施例の観察もすべてこの方法で実施した。
本発明において、刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度の位置におけるすくい面の皮膜擦れ量C、前記角度が45度の位置におけるすくい面の皮膜擦れ量C45、前記角度が90度の位置におけるすくい面の皮膜擦れ量C90が、刃径Dの0.03%以上0.5%以下でありなおかつC>C45>C90とする。このことにより、チゼル近傍部の切削速度が相対的に低くなり切り屑除去が非常に困難な場所もスムーズな切り屑の排出を行うことが可能になり、切り屑詰まりによる切削抵抗の増加、異常摩耗の進行やチッピングを抑制することができる。
前記角度が4度、45度、90度となる場所にあるボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C、C45、C90が刃径Dの0.03%未満である場合は、生成された切り屑がすくい面に滞留しスムーズな切り屑排出を行うことができない。また、すくい面の皮膜擦れ量C、C45、C90が刃径Dの0.5%よりも大きい場合は、すくい面の刃先量線近傍の膜厚が薄くなりクレータ摩耗が起きやすく、チッピングに至ってしまう。チゼル近傍部の切り屑除去が非常に困難な場所も、本発明のようにすくい面が平滑であればスムーズな切り屑の排出を行うことが可能になり、切り屑詰まりによる切削抵抗の増加、さらには工具折損の発生を抑制することができる。
本発明において、刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度の位置における逃げ面の皮膜擦れ量F、前記角度が45度の位置における逃げ面の皮膜擦れ量F45、前記角度が90度の位置における逃げ面の皮膜擦れ量F90が、刃径Dの0.03%以上0.5%以下でありなおかつF<F45<F90とする。
逃げ面の皮膜擦れ量F、F45、F90が刃径Dの0.03%未満の場合、良好な加工面を得ることが出来ない。また、前記皮膜擦れ量F、F45、F90が刃径Dの0.5%よりも大きい場合は刃先稜線近傍部の膜厚が非常に薄くなってしまい耐摩耗性が悪くなり、早期に寿命に至ってしまう。チゼル近傍部は切削速度が低く切削性が悪いため、切削中、常に加工面と接している逃げ面の平滑度は加工面に影響してくる。本発明のように逃げ面の刃先稜線近傍が平滑であれば、加工面が毟れること無く、良好な加工面に仕上げることが可能になる。ボールエンドミルを用いた切削においては外周側に近づくにつれて、切削速度が高く切り屑の除去よりも刃先強度が重要になってくるため、すくい面の皮膜擦れ量は徐々に小さくし逃げ面の皮膜擦れ量を徐々に大きくすることで刃先強度を大きくするとともに、逃げ面の表面状態を良好な状態にすることで、加工面においても良好な加工面を維持することができる。
次に、本発明のボールエンドミルの製造方法について説明する。ボールエンドミル母材に刃付けして硬質皮膜を被覆するまでの製造方法は、従来の超硬合金のボールエンドミルでの製造方法を適用できる。次に研磨を主体とする刃先処理工程に移る。本発明のボールエンドミルが有する刃先稜線の曲率半径は、回転軸が3軸構成であるドラム状研磨機器に工具をセットし、樹脂系弾性材や研磨材を含めた研磨媒体の中で刃先処理を行うバレル研磨処理を用いることで実現可能となる。
例えば図10は回転軸が3軸構成である本発明で実施したバレル研磨装置の概略図である。バレル研磨装置20はボールエンドミル1を工具中心軸の回りに回転させる第1の回転手段21、複数の前記第1の回転手段21を保持する保持ステーション22を回転させる第2の回転手段23、研磨材25を装入したバレル研磨装置の主軸O’を回転させる第3の回転手段24により構成される。それらが全ての軸において工具の切削回転方向に回転する。バレル研磨装置の主軸O’を回転させる第3の回転手段24は、回転とは直交する回転軸に平行な方向にも可動とする。すなわち、研磨材の動きの大きさに合わせて、ボールエンドミル1を直接保持する第1の回転手段21の位置を適正にすることができる。回転軸が3軸構成を選んだ理由は、本発明はボール刃の刃先稜線の位置によって異なる曲率半径を付与するために、研磨強度をできるだけ全方位で変化可能にする必要があるからである。研磨媒体の流動速度はバレル内で複雑であり、本発明では、主軸O’を回転させる第3の回転手段24は、回転とは直交する回転軸に平行な方向にも可動として、ボール刃の研磨媒体に当たる位置を上下にも制御できる構造とした。本発明の方法の具体的な装置の効果は、下記段落0052乃至段落0054でも解説する。
図11は図10に示すバレル研磨装置を図10における下側から見たときの図である。図11ではボールエンドミルの図示を省略してある。第1の回転手段21、第2の回転手段23、及び第3の回転手段24はそれぞれ、第1の回転手段の回転方向25、第2の回転手段の回転方向26、及び第3の回転手段の回転方向27に回転させることが出来る。
バレル研磨装置20をこのように構成することにより生じる、研磨材25とボールエンドミル1の相互作用について説明する。図12は図3のボールエンドミルを工具中心軸とボール刃の交点が下になるように180度回転させた図である。バレル研磨装置による刃先処理方法を実施したとき、研磨材25とボールエンドミル1との間に相対運動が生じ、研磨材25がバレル研磨装置の主軸O’に垂直な方向でボールエンドミル1のすくい面に衝突する。チゼル刃の近傍部にある4度の刃先断面観察部9において、工具中心軸と垂直方向で測定したときのすくい面の幅であるすくい面の幅29は狭いため、研磨材が流動しにくく、衝突回数が多くなる。そのため、すくい面側が大きく削り取られる。またボール刃中の、ボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し45度を成す直線とボール刃3との交点にある45度の刃先断面観察部10においては、チゼル刃の近傍部よりもドラム内での周速が上がるため研磨力自体が上がるのと、すくい面の幅30がチゼル刃の近傍部にある4度の刃先断面観察部9におけるすくい面の幅29よりも広くなるために研磨材が刃先稜線を研磨した後、逃げ面側とすくい面側に均等に、スムーズに流動していく。そのため、研磨により削り取られる量はチゼル刃の近傍部よりも少ないが刃先稜線の曲率半径がチゼル側よりも大きくなる。外周刃ではさらにその周速が上がるため、ボール刃中の、ボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し45度を成す直線とボール刃3との交点にある45度の刃先断面観察部10より研磨力が向上する。すくい面の幅は刃先断面観察部10と同様、研磨材が流動するのに充分なスペースを確保するようにする。このようにすると、外周刃では刃先稜線部のみが研磨され、研磨材は、逃げ面とすくい面とにスムーズに流れていく。従って、外周刃付近では刃先稜線の曲率半径は最も大きく形成されるが、削り取られる量は少なくなる。
また、各回転軸の設定によってボール刃の各部位の刃先稜線の曲率半径は調整が可能である。具体的には、研磨材25を装入したバレル研磨装置の主軸O’の回転数が大きいほど、ボール刃の外周付近刃先稜線の曲率半径が大きくなる。これは、外周に近い部分の研磨力が強くなるためである。逆に言えば、バレル研磨装置の主軸O’の回転数の調整だけでは、チゼル刃近傍の刃先稜線の曲率半径の調整は困難である。そのため、刃先稜線の曲率半径R45の大きさを制御するには、研磨力は保持ステーション22を回転させる第2の回転手段23と工具中心軸の回りに回転させる第1の回転手段21の回転数の調整が必要になる。保持ステーション22の回転では第3の回転手段24による回転に比べて、移動距離が小さくなり、チゼル刃近傍から45度部がよくこすれる状態になる。さらに工具中心軸の回りに回転させる、第1の回転手段21による回転を加えることで、よりチゼル刃近傍の研磨力を向上させることができるので、保持ステーション22を回転させる第2の回転手段23と工具中心軸の回りに回転させる第1の回転手段21の回転数を制御することにより、でチゼル刃近傍から45度部の研磨力を確保し、調整することができる。しかしながら、保持ステーション22を回転させる第2の回転手段23と工具中心軸の回りに回転させる第1の回転手段21の回転数が速すぎれば、チゼル刃近傍から45度にかけて刃先稜線の曲率半径が大きくなり、外周刃の刃先稜線の曲率半径との差が小さくなり切削抵抗が過大となる。逆に保持ステーション22を回転させる第2の回転手段23と工具中心軸の回りに回転させる第1の回転手段21の回転数が遅いと、チゼル刃近傍から45度にかけて刃先稜線の曲率半径が小さくなりすぎるため、外周刃の刃先稜線の曲率半径との差が大きくなりチッピングを抑制する効果が少なくなる。チゼル刃から45度、外周刃にかけて徐々に刃先稜線の曲率半径が増大していくのは、ボールエンドミルの直径がチゼル刃付近から外周刃にかけて徐々に大きくなるので、研磨材の研磨力がチゼル刃から外周刃にかけて徐々に増大する。
処理時間に関しては、その時間が長ければ長いほど処理量が大きくなる、つまりチゼル刃から外周刃にかけて全体的に刃先稜線の曲率半径は大きくなる。研磨材がこのように流動していくため、このバレル研磨装置20を用いた刃先処理方法が施されたボールエンドミル1は、切れ刃の場所によって本発明で定義される刃先稜線の曲率半径を異なるものとすることができる。今回のバレル処理による研磨方法においては、回転軸が3軸構成であり、バレルの深さ方向にも可変としてある。したがって、各軸の回転数、回転方向、処理深さなどを変えることができるのである。
本発明の回転軸が3軸構成であるドラム状研磨機器を用いた刃先処理方法には、樹脂系弾性材を含めた研磨材を使用する。本発明の刃先処理方法に適した樹脂系弾性材としては、粒径が0.1mm以上3mm未満のクルミやココナッツ、コーンが挙げられる。それらの樹脂系弾性材を粒径0.1μm以上0.5μm以下のダイヤモンドパウダーを油脂により塗布するなどして研磨材に含め、刃先処理を行うことにより、ボールエンドミルを切れ刃の場所によって刃先稜線の曲率半径が異なる形状に出来る。樹脂系弾性材や研磨材はボールエンドミルの形状や、目的とする刃先稜線の曲率半径の大きさなどにより、選択することが出来る。
バレル研磨装置20にある第1の回転手段21、第2の回転手段23、及び第3の回転手段24はそれぞれ独立して回転数及び回転方向を設定することが可能である。これらの条件を適宜選択することにより、切れ刃の場所による刃先稜線の曲率半径の変化の仕方を変化させることが出来る。例えば、刃先稜線の曲率半径R90を大きくするためには、バレル研磨装置の主軸O’を回転させる第3の回転手段24の回転数のみを増大し、保持ステーション22を回転させる第2の回転手段23と、ボールエンドミルを工具中心軸の回りに回転させる第1の回転手段21の回転数を維持することで、刃先稜線の曲率半径R90を決定付ける研磨力のみが増大するので刃先稜線の曲率半径R90を増大させることができる。刃先稜線の曲率半径R45を大きくするためには、保持ステーション22を回転させる第2の回転手段23の回転数のみを増大し、バレル研磨装置の主軸O’を回転させる第3の回転手段24と工具中心軸の回りに回転させる第1の回転手段21の回転数を維持することで、刃先稜線の曲率半径R45を決定付ける研磨力のみが増大するので刃先稜線の曲率半径R45を増大させることができる。また、刃先稜線の曲率半径Rを大きくするためには、ボールエンドミルを工具中心軸の回りに回転させる第1の回転手段21の回転数のみを増大し、バレル研磨装置の主軸O’を回転させる第3の回転手段24と保持ステーション22を回転させる第2の回転手段23の回転数を維持することで、刃先稜線の曲率半径Rを決定付ける研磨力のみが増大するので刃先稜線の曲率半径Rを増大させることができる。
以下、本発明を下記の実施例により詳細に説明するが、それらにより本発明が限定されるものではない。
以下の表中にある各実施例では、本発明、従来例、比較例を区分として示し、試料番号は本発明例、従来例、比較例ごとに、連続の通し番号で記載した。
(実施例1)
本発明例1乃至7および比較例1乃至3として、工具径Dが6mm、刃長Lが9mm、シャンク径dが6mmとし、AlCrSiNの皮膜を4μm施した。さらに、被覆後に本発明の製造方法であるバレル研磨処理による刃先処理を行い、処理条件の調整により、刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度にあるボール刃の刃先稜線の曲率半径Rを表1に示すように変化させた。また、本発明例1乃至7および比較例1乃至3の刃先稜線の曲率半径R45は30μm(刃径Dの0.5%)、刃先稜線の曲率半径R90は24μm(刃径Dの0.4%)、外周刃の刃先稜線の曲率半径Routは24μm(刃径Dの0.4%)として仕様を統一させた。
本発明例1乃至7について、刃先稜線の曲率半径Rはそれぞれ0.6μm(刃径Dの0.01%)、0.3μm(刃径Dの0.05%)、6μm(刃径Dの0.1%)、12μm(刃径Dの0.2%)、18μm(刃径Dの0.3%)、24μm(刃径Dの0.4%)、27μm(刃径Dの0.45%)とした。
比較例1乃至3については、刃先稜線の曲率半径Rをそれぞれ0.3μm(刃径Dの0.005%)、30μm(刃径Dの0.5%)、36μm(刃径Dの0.6%)とした。
試験方法として、切削テストは水溶性切削液を用いた湿式切削とし、被削材としてプラスチック用金型(日立金属株式会社製HPM−MAGIC)を用い、軸方向切り込み量0.2mm、ピック方向切り込み量0.2mm、回転数15000回転/min、送り速度4000mm/minでR状の面を走査線加工で仕上げ切削を行った。
評価方法として、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度となる位置にある逃げ面、前記角度が45度となる位置にある逃げ面及び前記角度が90度となる位置にある逃げ面の3箇所について、切削長が750mとなる段階におけるボール刃の逃げ面摩耗幅を光学顕微鏡を用いて測定した。その際3箇所の逃げ面摩耗幅が全て0.05mm以下となるものを評価良、1箇所でも逃げ面摩耗幅が0.05mmを超えたものを評価不良とした。
さらに、切削初期段階(切削長が1m)と切削長が750mとなる段階における被削材の加工面の仕上げ面最大高さ粗さRz(μm)を接触式の面粗さ測定器を用いて測定し、工具の送り方向で測定したときの仕上げ面最大高さ粗さRzが4μm未満のものを評価良、4μm以上のものを評価不良とした。最終的な評価は逃げ面摩耗幅及び仕上げ面最大高さ粗さRzの両方の評価が良のものは○、いずれか片方の評価が不良のものは×とした。評価結果を表1に示す。





表1に示すように、本発明例1乃至7は3箇所のボール刃の逃げ面摩耗幅が全て0.05mm以下となり、なおかつ切削初期段階(切削長が1m)と切削長が750mとなる段階における加工面の仕上げ面最大高さ粗さRzが4μm未満となり良好な結果を示した。
比較例1は、切削長が750mとなる段階において、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度となる位置にあるボール刃の逃げ面にチッピングがあることが確認された。また、仕上げ面最大高さ粗さRzは切削初期段階(切削長が1m)では1.3μmとなり評価良であったが、切削長が750mとなる段階においては7.1μmとなり評価不良であった。これは刃先稜線の曲率半径Rが小さすぎるためにボール刃と被削材が接触する際に生じる衝撃に耐えられなかったことが原因である。
比較例2は、切削長が750mとなる段階において、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度となる位置にあるボール刃の逃げ面摩耗幅が0.052mmであった。さらに、仕上げ面最大高さ粗さRzは切削初期段階(切削長が1m)では1.5μmとなり評価良であったが、切削長が750mとなる段階においては4.2μmとなり評価不良であった。これは刃先稜線の曲率半径Rが大きすぎ、なおかつ刃先稜線の曲率半径Rと刃先稜線の曲率半径R45とが同じであるために切削抵抗が過大となり、びびり振動が発生したことが原因である。
比較例3は、切削長が750mとなる段階において、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度となる位置にあるボール刃の逃げ面摩耗幅が0.061mmであった。さらに、仕上げ面最大高さ粗さRzは切削初期段階(切削長が1m)では2.1μmとなり評価良であったが、切削長が750mとなる段階においては5.8μmとなり評価不良であった。これは刃先稜線の曲率半径Rが大きすぎ、なおかつ刃先稜線の曲率半径Rが刃先稜線の曲率半径R45よりも大きいために切削抵抗が過大となり、びびり振動が発生したことが原因である。
(実施例2)
本発明例8乃至14および比較例4、5として、刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が45度にあるボール刃の刃先稜線の曲率半径R45を表2に示すように変化させた。それ以外の仕様は本発明例1と同仕様とした。
本発明例8乃至14について、刃先稜線の曲率半径R45はそれぞれ0.6μm(刃径Dの0.01%)、0.3μm(刃径Dの0.05%)、6μm(刃径Dの0.1%)、12μm(刃径Dの0.2%)、18μm(刃径Dの0.3%)、24μm(刃径Dの0.4%)、30μm(刃径Dの0.5%)とした。
比較例4、5については、刃先稜線の曲率半径R45をそれぞれ0.3μm(刃径Dの0.005%)、36μm(刃径Dの0.6%)とした。
本発明例8乃至14および比較例4、5はいずれも本発明のバレル研磨装置を用いて刃先稜線の曲率半径を調整したものである。
試験方法及び評価方法は実施例1と同様の方法とした。評価結果を表2に示す。




表2に示すように、本発明例8乃至14は3箇所のボール刃の逃げ面摩耗幅が全て0.05mm以下となり、なおかつ切削初期段階(切削長が1m)と切削長が750mとなる段階における加工面の仕上げ面最大高さ粗さRzが4μm未満となり良好な結果を示した。
比較例4は、切削長が750mとなる段階において、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が45度となる位置にあるボール刃の逃げ面にチッピングがあることが確認された。また、仕上げ面最大高さ粗さRzは切削初期段階(切削長が1m)では1.3μmとなり評価良であったが、切削長が750mとなる段階においては6.8μmとなり評価不良であった。これは刃先稜線の曲率半径R45が小さすぎるためにボール刃と被削材が接触する際に生じる衝撃に耐えられなかったことが原因であると推定される。
比較例5は、切削長が750mとなる段階において、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が45度となる位置にあるボール刃の逃げ面摩耗幅が0.060mmであった。さらに、仕上げ面最大高さ粗さRzは切削初期段階(切削長が1m)では1.8μmとなり評価良であったが、切削長が750mとなる段階においては5.6μmとなり評価不良であった。これは刃先稜線の曲率半径R45が大きすぎるために切削抵抗が過大となり、びびり振動が発生したことが原因であると考えられる。
(実施例3)
本発明例15乃至24について、刃先稜線の曲率半径R90はそれぞれ1.5μm(刃径Dの0.025%)、1.8μm(刃径Dの0.03%)、6μm(刃径Dの0.1%)、12μm(刃径Dの0.2%)、18μm(刃径Dの0.3%)、24μm(刃径Dの0.4%)、30μm(刃径Dの0.5%)、36μm(刃径Dの0.6%)、42μm(刃径Dの0.7%)、48μm(刃径Dの0.8%)とした。
比較例6、7については、刃先稜線の曲率半径R90をそれぞれ1.2μm(刃径Dの0.02%)、54μm(刃径Dの0.9%)とした。
本発明例15乃至24及び、比較例6、7についてはいずれも本発明のバレル研磨装置で刃先稜線の曲率半径を調整したものである。
試験方法及び評価方法は実施例1と同様の方法とした。評価結果を表3に示す。





表3に示すように、本発明例15乃至24は3箇所のボール刃の逃げ面摩耗幅が全て0.05mm以下となり、なおかつ切削初期段階(切削長が1m)と切削長が750mとなる段階における加工面の仕上げ面最大高さ粗さRzが4μm未満となり良好な結果を示した。
比較例6は、切削長が750mとなる段階において、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が90度となる位置にあるボール刃の逃げ面にチッピングがあることが確認された。また、仕上げ面最大高さ粗さRzは切削初期段階(切削長が1m)では1.6μmとなり評価良であったが、切削長が750mとなる段階においては6.1μmとなり評価不良であった。これは刃先稜線の曲率半径R90が小さすぎるためにボール刃と被削材が接触する際に生じる衝撃に耐えられなかったことが原因であると考えられる。
比較例7は、切削長が750mとなる段階において、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が90度となる位置にあるボール刃の逃げ面摩耗幅が0.063mmであった。さらに、仕上げ面最大高さ粗さRzは切削初期段階(切削長が1m)では1.8μmとなり評価良であったが、切削長が750mとなる段階においては6.2μmとなり評価不良であった。これは刃先稜線の曲率半径R90が大きすぎるために切削抵抗が大きくなり、ビビリ振動が生じた影響で大きくなったことが原因であると考えられる。
(実施例4)
本発明例25および従来例1乃至3として、本発明の刃先処理方法により製作されたボールエンドミルと、従来のボールエンドミルとで切削試験を行い、切削の安定性を評価した。
本発明例25について、刃先稜線の曲率半径Rと刃先稜線の曲率半径R45と刃先稜線の曲率半径R90はそれぞれ6μm(刃径Dの0.1%)、12μm(刃径Dの0.2%)、24μm(刃径Dの0.4%)とし、それ以外の仕様は本発明例1と同仕様とした。
図13は本発明例25のチゼル刃近傍の拡大写真である。図13(a)は、図4と同じ視点位置から見たときのチゼル刃近傍の拡大写真である。図13(b)は、図3と同じ視点位置から見たときのチゼル刃近傍の拡大写真である。図13(a)及び図13(b)に示されるように、ボール刃3において硬質皮膜の剥離が発生せず、良好なボール刃3が形成されているのがわかる。
従来例1は特許文献1に記載の、成膜後に切れ刃稜線の凹凸を研磨により除去した仕上げ用ボールエンドミルである。特許文献1に記載されるように研磨により刃先稜線を均一にして作製した。従来例1の刃先稜線の曲率半径Rと刃先稜線の曲率半径R45と刃先稜線の曲率半径R90はいずれも24μm(刃径Dの0.4%)とし、それ以外の仕様は本発明例1と同仕様とした。
従来例2は特許文献2に記載の、硬質皮膜の被覆後にすくい面と逃げ面の交差する切れ刃部分のすくなくとも皮膜の一部を除去したエンドミルである。特許文献2の図2に記載されるように、被覆後に曲面状に面取りを行い作製した。従来例2の刃先稜線の曲率半径RとR45とR90はいずれも60μm(刃径Dの1%)とし、それ以外の仕様は本発明例1と同仕様とした。
従来例3は特許文献3に記載の、ボールエンドミルの回転中心部に位置する切れ刃部の硬質膜厚が、略半球の周辺に位置する切れ刃部の硬質膜厚より薄いボールエンドミルである。特許文献3の図2に記載されるように、工具先端側の硬質皮膜の膜厚が外周側の硬質皮膜の膜厚よりも薄くなるように形成した。従来例3は硬質皮膜の被覆を行った後の刃先処理は行わなかった。
図14は従来例3のチゼル刃近傍の拡大写真である。図14(a)は、図4と同じ視点位置から見たときのチゼル刃近傍の拡大写真である。図14(b)は、図3と同じ視点位置から見たときのチゼル刃近傍の拡大写真である。図14(a)及び図14(b)に示されるように、ボール刃3において硬質皮膜の剥離が確認された。図15は従来例3のボールエンドミルにおけるA−A’断面図の拡大図である。ボール刃の超硬母材19には硬質皮膜14が被覆され、逃げ面15及びすくい面16を形成している。しかし刃先稜線断面部17は本発明例とは異なり、硬質皮膜の表面である逃げ面15から丸みを帯びて硬質皮膜表面であるすくい面16につながるように形成されておらず、さらに刃先稜線断面部17にはマイクロクラック31があることが確認された。
従来例3の刃先稜線の曲率半径Rと刃先稜線の曲率半径R45と刃先稜線の曲率半径R90は、刃先稜線断面部17が硬質皮膜の表面である逃げ面15から丸みを帯びて硬質皮膜表面であるすくい面16につながるように形成されていなかったため、測定することは出来なかった。
試験方法として、切削テストは水溶性切削液を用いた湿式切削とし、被削材としてプラスチック用金型(日立金属株式会社製HPM−MAGIC)を用い、軸方向切り込み量0.3mm、ピック方向切り込み量0.2mm、回転数15000回転/min、送り速度4000mm/minでR状の面を走査線加工で仕上げ切削を行った。
評価方法として、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度となる位置にある逃げ面、前記角度が45度となる位置にある逃げ面、前記角度が90度となる位置にある逃げ面の3箇所について、切削長が100mとなる段階におけるボール刃の逃げ面摩耗幅を光学顕微鏡を用いて測定した。その際3箇所の逃げ面摩耗幅が全て0.05mm以下となるものを評価良、1箇所でも逃げ面摩耗幅が0.05mmを超えたものを評価不良とした。
さらに、同じ評価をそれぞれ2本ずつ行ない、切削の安定性も評価した。上記の評価で2本とも3箇所の逃げ面摩耗幅が全て0.05mm以下となるものを評価○、2本中で1箇所でも逃げ面摩耗幅が0.05mmを超えたり、チッピングが発生したものがあった場合は評価×とした。評価結果を表4に示す。


表4に示すように、本発明例25は、3箇所のボール刃の逃げ面摩耗幅が全て0.05mm以下となり、なおかつ、同じ評価を2本行ない、2本とも良好な結果を示した。全ての工具で少ない摩耗幅、チッピングがなく、評価結果に大きなばらつきがなく2本全ての工具で良好な結果が得られたことから安定性に優れるといえる。
従来例1は、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度と前記角度が45度と前記角度が90度とで刃先稜線の曲率半径が同じ値を有しており、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度となる位置にあるボール刃の逃げ面にチッピングを起こした工具と、逃げ面摩耗幅が0.052mmとなった工具とがあった。
従来例2は、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度と前記角度が45度と前記角度が90度の位置とで刃先稜線の曲率半径が同じ値を有しておるが、その値が刃径Dの1%を超える非常に大きな値の60μmである。評価結果は、2本中2本共に評価に用いた2本の工具においてチッピングが発生したり、若しくは逃げ面摩耗幅が0.05mmを超えたりし、評価結果に大きなばらつきが確認された。これは、刃先稜線の曲率半径が非常に大きかったために、切削初期から切削抵抗が大きくかかったためである。
従来例3は、刃先稜線断面部17が硬質皮膜の表面である逃げ面15から丸みを帯びて硬質皮膜表面であるすくい面16につながるように形成されておらず、さらに切削加工前から刃先稜線にマイクロクラックがあったものである。評価結果は、2本中2本がチッピングを起こした。チッピングの箇所は、工具によって、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度の部分でチッピングが発生するか、前記角度が90度の部分でチッピングが発生するかは異なり、安定性にかける。これは、刃先稜線断面部17が硬質皮膜の表面である逃げ面15から丸みを帯びて硬質皮膜表面であるすくい面16につながるように形成されていないことから切削抵抗が大きくなったためである。
このことから特許文献に記載の方法で刃先稜線を形成したとしても、本発明の刃先稜線の曲率半径を有するボールエンドミルを形成することが出来ず、また特許文献に記載の方法で刃先稜線を形成したボールエンドミルである従来例1乃至3は、評価結果に大きなばらつきがあるため安定性に劣るといえる。
(実施例5)
本発明例26乃至35および比較例8、9として、外周刃の刃先稜線の曲率半径Routを表5に示すように変化させた。それ以外の仕様は本発明例3と同仕様とした。
本発明例26乃至35について、外周刃の刃先稜線の曲率半径Routはそれぞれ1.5μm(刃径Dの0.025%)、1.8μm(刃径Dの0.03%)、6μm(刃径Dの0.1%)、12μm(刃径Dの0.2%)、18μm(刃径Dの0.3%)、24μm(刃径Dの0.4%)、30μm(刃径Dの0.5%)、36μm(刃径Dの0.6%)、42μm(刃径Dの0.7%)、48μm(刃径Dの0.8%)とした。
比較例8、9については、刃先稜線の曲率半径Routをそれぞれ1.2μm(刃径Dの0.02%)、54μm(刃径Dの0.9%)とした。
試験方法として、切削テストは水溶性切削液を用いた湿式切削とし、被削材としてプラスチック用金型(日立金属株式会社製HPM−MAGIC)を用い、軸方向切り込み量0.3mm、ピック方向切り込み量0.3mm、回転数20000回転/min、送り速度4000mm/minでR状の面を走査線加工で仕上げ切削を行った。切削長は100mまで切削を行なった。
評価方法として、外周刃について、切削長が100mとなる段階における外周刃の逃げ面摩耗幅を光学顕微鏡を用いて測定した。その際外周刃の逃げ面摩耗幅が0.05mm以下となるものを評価良、逃げ面摩耗幅が0.05mmを超えたものを評価不良とした。さらに、切削初期段階(切削長が1m)と切削長が100mとなる段階における被削材の加工面の仕上げ面最大高さ粗さRz(μm)を接触式の面粗さ測定器を用いて測定し、工具の送り方向で測定したときの仕上げ面最大高さ粗さRzが4μm未満のものを評価良、4μm以上のものを評価不良とした。最終的な評価は逃げ面摩耗幅及び仕上げ面最大高さ粗さRzの両方の評価が良のものは○、いずれか片方の評価が不良のものは×とした。評価結果を表5に示す。







表5に示すように、本発明例26乃至35は外周刃の逃げ面摩耗幅が0.05mm以下となり、なおかつ切削初期段階(切削長が1m)と切削長が100mとなる段階における立ち壁の加工面の仕上げ面最大高さ粗さRzが4μm未満となり良好な結果を示した。
比較例8は、切削長が100mとなる段階において、外周刃の逃げ面にチッピングがあることが確認された。また、仕上げ面最大高さ粗さRzは切削初期段階(切削長が1m)では1.6μmとなり評価良であったが、切削長が100mとなる段階においては6.1μmとなり評価不良であった。これは外周刃の刃先稜線の曲率半径Routが小さすぎるため切削加工を行う位置が深くなり、また外周刃が切削加工後の壁面に接触するようなポケット加工などを行う際、外周刃が加工面、特にコーナ部分でビビリ振動を起こしチッピングが生じやすくなる。これは外周刃と被削材が接触する際に生じる衝撃に耐えられなかったことが原因であると考えられる。
比較例9は、切削長が100mとなる段階において、外周刃の逃げ面摩耗幅が0.041mmであり、外周刃の逃げ面にチッピングは発生していないことが確認された。また、仕上げ面最大高さ粗さRzは切削初期段階(切削長が1m)では1.8μmとなり評価良であったが、切削長が100mとなる段階においては6.2μmとなり評価不良であった。これは外周刃の刃先稜線の曲率半径Routが大きすぎるために、ポケット加工などを行う際、外周刃が加工面で食いついていかず、逃げ面だけがこすれたことが原因である。
(実施例6)
本発明例36乃至41として、工具径Dが10mm、刃長Lが15mm、シャンク径dが10mmとし、AlCrSiNの皮膜を4μm施した。さらに、被覆後にバレル研磨処理による刃先処理を行い、処理条件の調整により、刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度以上45度以下となる位置にあるボール刃の刃先稜線の曲率半径R及び前記角度が45度を超え90度以下となる範囲にある位置にあるボール刃と外周刃の刃先稜線の曲率半径Rb、ボール刃の刃先稜線の曲率半径Rを表6に示すように変化させ、切削評価を行った。
本発明例36乃至41において、刃先稜線の曲率半径Rを測定するために刃先稜線の曲率半径R、刃先稜線の曲率半径R15、刃先稜線の曲率半径R30、及び刃先稜線の曲率半径R45の4箇所の刃先稜線の曲率半径を測定した。
刃先稜線の曲率半径R15は、ボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し15度を成す直線とボール刃との交点である刃先断面観察部を、ボール刃の各位置での刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの刃先稜線の曲率半径である。
刃先稜線の曲率半径R30は、ボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し30度を成す直線とボール刃との交点である刃先断面観察部を、ボール刃の各位置での刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの刃先稜線の曲率半径である。
本発明例36乃至41において、刃先稜線の曲率半径Rbを測定するために刃先稜線の曲率半径R60、刃先稜線の曲率半径R75、刃先稜線の曲率半径R90、外周刃の刃先稜線の曲率半径Routの4箇所の刃先稜線の曲率半径を測定した。
刃先稜線の曲率半径R75は、ボール刃半径の中心点Xを通り工具中心軸Oに対し75度を成す直線とボール刃との交点である刃先断面観察部を、ボール刃の各位置での刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの刃先稜線の曲率半径である。
また、本発明例36乃至41において、ボール刃の刃先稜線の曲率半径Rを測定するために、刃先稜線の曲率半径R、刃先稜線の曲率半径R15、刃先稜線の曲率半径R30、及び刃先稜線の曲率半径R45、刃先稜線の曲率半径R60、刃先稜線の曲率半径R75、刃先稜線の曲率半径R90、の7箇所の刃先稜線の曲率半径の測定を行った。
本発明例36は、刃先稜線の曲率半径Rが1μm(刃径Dの0.01%)、刃先稜線の曲率半径R15及び刃先稜線の曲率半径R30が25μm(刃径Dの0.25%)、刃先稜線の曲率半径R45が50μm(刃径Dの0.5%)、刃先稜線の曲率半径R60が60μm(刃径Dの0.6%)、刃先稜線の曲率半径R75が70μm(刃径Dの0.7%)、刃先稜線の曲率半径R90が80μm(刃径Dの0.8%)、外周刃の刃先稜線の曲率半径Routが100μm(刃径Dの1%)とした。
本発明例37は、刃先稜線の曲率半径R、刃先稜線の曲率半径R15及び刃先稜線の曲率半径R30が25μm(刃径Dの0.25%)、刃先稜線の曲率半径R45が50μm(刃径Dの0.5%)、刃先稜線の曲率半径R60が60μm(刃径Dの0.6%)、刃先稜線の曲率半径R75が70μm(刃径Dの0.7%)、刃先稜線の曲率半径R90及び外周刃の刃先稜線の曲率半径Routが80μm(刃径Dの0.8%)とした。
本発明例38は、刃先稜線の曲率半径R及び刃先稜線の曲率半径R15が1μm(刃径Dの0.01%)、刃先稜線の曲率半径R30及び刃先稜線の曲率半径R45が1.5μm(刃径Dの0.015%)、刃先稜線の曲率半径R60及び刃先稜線の曲率半径R75が2μm(刃径Dの0.02%)、刃先稜線の曲率半径R90及び外周刃の刃先稜線の曲率半径Routが2.5μm(刃径Dの0.025%)とした。
本発明例39は、刃先稜線の曲率半径Rが10μm(刃径Dの0.1%)、刃先稜線の曲率半径R15及び刃先稜線の曲率半径R30が15μm(刃径Dの0.15%)、及び刃先稜線の曲率半径R45が20μm(刃径Dの0.2%)、刃先稜線の曲率半径R60、刃先稜線の曲率半径R75、刃先稜線の曲率半径R90、及び外周刃の刃先稜線の曲率半径Routが40μm(刃径Dの0.4%)とした。
本発明例40は、刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が大きくなるに従い、ボール刃の刃先稜線の曲率半径Rが徐々に大きくなる形状をしており、刃先稜線の曲率半径Rが1μm(刃径Dの0.01%)、刃先稜線の曲率半径R15が8μm(刃径Dの0.08%)、刃先稜線の曲率半径R30が15μm(刃径Dの0.15%)、及び刃先稜線の曲率半径R45が22μm(刃径Dの0.22%)、刃先稜線の曲率半径R60が29μm(刃径Dの0.29%)、刃先稜線の曲率半径R75が36μm(刃径Dの0.36%)、刃先稜線の曲率半径R90が43μm(刃径Dの0.43%)、外周刃の刃先稜線の曲率半径Routが50μm(刃径Dの0.5%)とした。
本発明例41は、本発明例40と同様に、刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が大きくなるに従い、ボール刃の刃先稜線の曲率半径Rが徐々に大きくなる形状をしており、刃先稜線の曲率半径Rが3μm(刃径Dの0.03%)、刃先稜線の曲率半径R15が18μm(刃径Dの0.18%)、刃先稜線の曲率半径R30が34μm(刃径Dの0.34%)、及び刃先稜線の曲率半径R45が50μm(刃径Dの0.5%)、刃先稜線の曲率半径R60が62μm(刃径Dの0.62%)、刃先稜線の曲率半径R75が70μm(刃径Dの0.7%)、刃先稜線の曲率半径R90が80μm(刃径Dの0.8%)、外周刃の刃先稜線の曲率半径Routが100μm(刃径Dの1%)とした。
試験方法は実施例1と同様の方法で行った。
評価方法として、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度となる位置にある逃げ面、前記角度が45度となる位置にある逃げ面、前記角度が90度となる位置にある逃げ面、及び外周刃の逃げ面の4箇所について、切削長が750mとなる段階におけるボール刃及び外周刃の逃げ面摩耗幅を光学顕微鏡を用いて測定した。その際4箇所の逃げ面摩耗幅が全て0.05mm以下となるものを評価良、1箇所でも逃げ面摩耗幅が0.05mmを超えたものを評価不良とした。
さらに、切削初期段階(切削長が1m)と切削長が750mとなる段階における被削材の加工面の仕上げ面最大高さ粗さRz(μm)を接触式の面粗さ測定器を用いて測定し、工具の送り方向で測定したときの仕上げ面最大高さ粗さRzが4μm未満のものを評価良、4μm以上のものを評価不良とした。最終的な評価は逃げ面摩耗幅及び仕上げ面粗さの両方の評価が良のものは○、いずれか片方の評価が不良のものは×とした。評価結果を表6に示す。



表6に示すように、本発明例36乃至41は4箇所のボール刃及び外周刃の逃げ面摩耗幅が全て0.05mm以下となり、なおかつ切削初期段階(切削長が1m)と切削長が750mとなる段階における加工面の仕上げ面最大高さ粗さRzが4μm未満となり良好な結果を示した。特にボール刃の刃先稜線の曲率半径Rが徐々に大きくなる形状である本発明例40及び41は、4箇所のボール刃及び外周刃の逃げ面摩耗幅が全て0.03mm以下となり、なおかつ切削初期段階(切削長が1m)と切削長が750mとなる段階における加工面の仕上げ面最大高さ粗さRzが2.5μm未満となり特に良好な結果を示した。
(実施例7)
本発明のボールエンドミルを得るための刃先処理方法については、バレル研磨装置による研磨処理を行なった。対象とするボールエンドミルは刃径Dが6mm、刃長Lが9mm、シャンク径dが6mmとし、AlCrSiNの皮膜を4μm施した。その後、刃先稜線アールを形成するために、表7に示す各種の刃先処理を実施し、最適な刃先処理条件を決定した。バレル研磨装置は事前の種々の検討により、ボールエンドミル自身を工具中心軸の回りに回転させる第1の回転手段、複数の前記ボールエンドミルを保持する保持ステーションを回転させる第2の回転手段、及び研磨材を装入したバレル研磨装置の主軸O’を回転させる第3の回転手段を有する装置とし、バレルの主軸は軸方向にも可動のものとした。バレル研磨装置の主軸O’の上下方向の可動化によって、ボールエンドミルのボール刃が研磨材と衝突する位置、すなわち研磨の程度を直接変化させることができる。表7に示すように回転数の組合せと回転方向を変えて時間も考慮して研磨を行った。
本発明例42、43について、第1の回転手段の回転数をそれぞれ184回転/min、210回転/minと変化させた。その他の処理条件は第2の回転手段の回転数は80回転/min、第3の回転手段は35回転/min、回転方向は右回転、処理時間は60秒として処理条件を統一させた。
本発明例44は、回転方向は左回転とし、その他の処理条件は本発明例42と同様とした。
比較例10、11については、第1の回転手段の回転数をそれぞれ158回転/min、237回転/minと変化させた。その他の処理条件は本発明例42と同様とした。
本発明例45、46について、第2の回転手段の回転数をそれぞれ60回転/min、80回転/minと変化させた。その他の処理条件は第1の回転手段の回転数は184回転/min、第3の回転手段は35回転/min、回転方向は右回転、処理時間は60秒として処理条件を統一させた。
本発明例47は、回転方向は左回転とし、その他の処理条件は本発明例46と同様とした。
比較例12、13については、第2の回転手段の回転数をそれぞれ40回転/min、100回転/minと変化させた。その他の処理条件は本発明例46と同様とした。
本発明例48、49について、第3の回転手段の回転数をそれぞれ30回転/min、35回転/minと変化させた。その他の処理条件は第1の回転手段の回転数は184回転/min、第2の回転手段は80回転/min、回転方向は右回転、処理時間は60秒として処理条件を統一させた。
本発明例50は、回転方向は左回転とし、その他の処理条件は本発明例49と同様とした。
比較例14、15については、第3の回転手段の回転数をそれぞれ25回転/min、40回転/minと変化させた。その他の処理条件は本発明例49と同様とした。
本発明例51について、本発明例42と同条件で行い、第1の回転手段の回転数を184回転/min、第2の回転手段の回転数は80回転/min、第3の回転手段は35回転/min、回転方向は右回転、処理時間は60秒とした。
比較例16、17については、処理時間をそれぞれ30秒、90秒とし、その他の処理条件は本発明例51と同様とした。
評価方法としては、それぞれの方法で刃先処理を行ったあと、刃先稜線の曲率半径R、刃先稜線の曲率半径R45、及び刃先稜線の曲率半径R90を測定し、RとR45がいずれも刃径Dの0.01%以上0.5%以下で、かつR<R45であり、刃先稜線の曲率半径R90が刃径Dの0.025%を超え0.8%以下の条件を全て満たしていたものを評価良とし、評価○とした。一つの条件でも満たしていないものを評価不良とし、評価×とした。評価結果を表7に示す。










表7に示すように、本発明例42乃至51はRとR45がいずれも刃径Dの0.01%以上0.5%以下で、かつR<R45であり、刃先稜線の曲率半径R90が刃径Dの0.025%を超え0.8%以下という条件を全て満たしており、非常に良好な刃先稜線の曲率半径をもつボールエンドミルが作製できた。本発明例44、本発明例47及び本発明例50はそれぞれ本発明例42、本発明例46、及び本発明例49と回転方向以外は同条件で回転方向を左回転にしたものであるが、回転方向が逆になっても回転数が同じであれば、研磨材の流動性に変りはないため、本発明例43と同様の刃先稜線の曲率半径をもつボールエンドミルが作製できた。
比較例10は第2の回転手段の回転数と第3の回転手段の回転数は充分であるものの、第1の回転手段の回転数が小さいために、チゼル刃付近の研磨力が小さくなる。また、比較例11は、逆に第1の回転手段の回転数が大きいために、チゼル刃付近の研磨力が大きくなる。従って、チゼル刃付近に形成される刃先稜線の曲率半径Rは本発明の狙いである刃先稜線の曲率半径から外れて形成されてしまう結果となった。
比較例12は第1の回転手段の回転数と第3の回転手段の回転数は充分であるものの、第2の回転手段の回転数が小さいために、45度付近の研磨力が小さくなる。また、比較例13は、逆に第2の回転手段の回転数が大きいために、45度付近の研磨力が大きくなる。従って、45度付近に形成される刃先稜線の曲率半径R45は本発明の狙いである刃先稜線の曲率半径から外れて形成されてしまう結果となった。比較例14は、第1の回転手段の回転数と第2の回転手段の回転数は充分であるものの、第3の回転手段の回転数が低く、研磨力が小さい。バレル研磨装置の主軸O’の回転は工具からすると送りに相当する。第3の回転手段の回転数が小さいと、研磨材の流動性も悪くなるため、特に大きな刃先稜線の曲率半径を形成させねばならない外周付近で研磨がなされない。また、比較例15は、逆に第3の回転手段の回転数が最も大きいので研磨力が強くメディアの流動性もよくなるが、外周刃付近のすくい面側の衝撃が大きくなり、刃先稜線の曲率半径R90が大きくつくため、切削性が悪くなる。
比較例16は処理時間が30秒であり、処理時間が不十分であったため、刃先稜線の曲率半径が全体的に小さくなった。研磨材の流動の仕方は問題ないが処理時間不足である。比較例17は、逆に処理時間が120秒と長く、ボール刃全体の刃先稜線の曲率半径が大きくなる。研磨材の流動性は良好であるが、擦れ時間が長すぎたため、刃先稜線の曲率半径は大きくなりすぎた。
従って、本発明を実施できる処理方法としては、刃径Dが6mmにおいては、第1の回転手段の回転数が184回転/min以上210回転/min以下、第2の回転手段の回転数が60回転/min以上80回転/min以下、第3の回転手段の回転数が30回転/min以上35回転/min以下で60秒の処理時間で処理すれば、発明の実施形態を形成することが可能である。
(実施例8)
本発明例52乃至65として、工具径Dが6mm、刃長Lが9mm、シャンク径dが6mmとし、AlCrSiNの皮膜を4μm施した。さらに、被覆後に本発明の製造方法であるバレル研磨処理による刃先処理を行い、処理条件の調整により、刃先断面観察部とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度、45度、90度にあるボール刃のすくい面の皮膜擦れ量であるC、C45、C90、逃げ面の皮膜擦れ量であるF、F45、F90を変化させた。
また、本発明例52乃至65において、刃先稜線の曲率半径Rは6μm(刃径Dの0.1%)、刃先稜線の曲率半径R45は12μm(刃径Dの0.2%)、刃先稜線の曲率半径R90は24μm(刃径Dの0.4%)、外周刃の刃先稜線の曲率半径Routは30μm(刃径Dの0.5%)として仕様を統一させた。
本発明例52は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを3μm(刃径Dの0.05%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を6μm(刃径Dの0.1%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を9μm(刃径Dの0.15%)とし、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F、F45、F90がF<F45<F90となるようにバレル研磨装置による研磨処理を行なった。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを9μm(刃径Dの0.15%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を6μm(刃径Dの0.1%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を3μm(刃径Dの0.05%)とし、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C、C45、C90がC>C45>C90となるようにバレル研磨装置による研磨処理を行なった。
本発明例53は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを6μm(刃径Dの0.1%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を18μm(刃径Dの0.3%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を30μm(刃径Dの0.5%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを30μm(刃径Dの0.5%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を18μm(刃径Dの0.3%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を6μm(刃径Dの0.1%)とした。
本発明例54は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを6μm(刃径Dの0.1%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を18μm(刃径Dの0.3%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を30μm(刃径Dの0.5%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを6μm(刃径Dの0.1%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を3μm(刃径Dの0.05%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を1.8μm(刃径Dの0.03%)とした。
本発明例55は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを1.8μm(刃径Dの0.03%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を3μm(刃径Dの0.05%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を6μm(刃径Dの0.1%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを30μm(刃径Dの0.5%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を18μm(刃径Dの0.3%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を6μm(刃径Dの0.1%)とした。
本発明例56は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを6μm(刃径Dの0.1%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を12μm(刃径Dの0.2%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を18μm(刃径Dの0.3%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを18μm(刃径Dの0.3%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を12μm(刃径Dの0.2%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を6μm(刃径Dの0.1%)とした。
本発明例57は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを0.3μm(刃径Dの0.005%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を0.4μm(刃径Dの0.007%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を0.6μm(刃径Dの0.01%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを3μm(刃径Dの0.05%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を2.4μm(刃径Dの0.04%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を1.8μm(刃径Dの0.03%)とした。
本発明例58は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを1.8μm(刃径Dの0.03%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を2.4μm(刃径Dの0.04%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を3μm(刃径Dの0.05%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを1.2μm(刃径Dの0.02%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を0.6μm(刃径Dの0.01%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を0.3μm(刃径Dの0.005%)とした。
本発明例59は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを0.3μm(刃径Dの0.005%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を0.4μm(刃径Dの0.007%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を0.6μm(刃径Dの0.01%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを1.2μm(刃径Dの0.02%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を0.6μm(刃径Dの0.01%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を0.3μm(刃径Dの0.005%)とした。
本発明例60は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを36μm(刃径Dの0.6%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を42μm(刃径Dの0.7%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を48μm(刃径Dの0.8%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを6μm(刃径Dの0.1%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を12μm(刃径Dの0.2%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を18μm(刃径Dの0.3%)とした。
本発明例61は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを6μm(刃径Dの0.1%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を12μm(刃径Dの0.2%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を18μm(刃径Dの0.3%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを36μm(刃径Dの0.6%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を42μm(刃径Dの0.7%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を48μm(刃径Dの0.8%)とした。
本発明例62は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを36μm(刃径Dの0.6%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を42μm(刃径Dの0.7%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を48μm(刃径Dの0.8%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを36μm(刃径Dの0.6%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を42μm(刃径Dの0.7%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を48μm(刃径Dの0.8%)とした。
本発明例63は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを12μm(刃径Dの0.2%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を30μm(刃径Dの0.5%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を24μm(刃径Dの0.4%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを15μm(刃径Dの0.25%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を18μm(刃径Dの0.3%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を21μm(刃径Dの0.35%)とした。
本発明例64は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを15μm(刃径Dの0.25%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を18μm(刃径Dの0.3%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を21μm(刃径Dの0.35%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを12μm(刃径Dの0.2%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を30μm(刃径Dの0.5%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を24μm(刃径Dの0.4%)とした。
本発明例65は、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量Fを12μm(刃径Dの0.2%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F45を30μm(刃径Dの0.5%)、ボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量F90を24μm(刃径Dの0.4%)とした。さらに、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量Cを12μm(刃径Dの0.2%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C45を30μm(刃径Dの0.5%)、ボール刃のすくい面の皮膜擦れ量C90を24μm(刃径Dの0.4%)とした。
試験方法として、切削テストは水溶性切削液を用いた湿式切削とし、被削材としてプラスチック用金型(日立金属株式会社製HPM−MAGIC)を用い、軸方向切り込み量0.3mm、ピック方向切り込み量0.3mm、回転数20000回転/min、送り速度4000mm/minでR状の面を走査線加工で仕上げ切削を行った。切削長は750mまで切削を行った。
試験方法は実施例1と同様の方法で行った。
評価方法として、測定箇所とボール刃半径の中心点とを結んだ直線と、工具中心軸とボール刃の交点とボール刃半径の中心点とを結んだ直線がなす角度が4度となる位置にある逃げ面、前記角度が45度となる位置にある逃げ面、前記角度が90度となる位置にある逃げ面の3箇所について、切削長が750mとなる段階におけるボール刃及び外周刃の逃げ面摩耗幅を光学顕微鏡を用いて測定した。その際3箇所の逃げ面摩耗幅が全て0.05mm以下となるものを評価良、1箇所でも逃げ面摩耗幅が0.05mmを超えたものを評価不良とした。
さらに、切削初期段階(切削長が1m)と切削長が750mとなる段階における被削材の加工面の仕上げ面最大高さ粗さRz(μm)を接触式の面粗さ測定器を用いて測定し、工具の送り方向で測定したときの仕上げ面最大高さ粗さRzが4μm未満のものを評価良、4μm以上のものを評価不良とした。最終的な評価は逃げ面摩耗幅及び仕上げ面粗さの両方の評価が良のものは○、いずれか片方の評価が不良のものは×とした。評価結果を表に示す。






表8に示すように、本発明例52乃至65はボール刃3箇所の逃げ面摩耗幅が全て0.05mm以下であり、なおかつ切削初期段階(切削長が1m)と切削長が750mとなる段階における加工面の仕上げ面粗さRzが4μm未満となり良好な結果を示した。
特に、逃げ面の皮膜擦れ量がF4<F45<F90かつ刃径Dの0.03以上0.5%以下であり、すくい面の皮膜擦れ量がC4<C45<C90かつ刃径Dの0.03%以上0.5%以下である本発明例52乃至56は3箇所の逃げ面摩耗幅が全0.03mm以下となり、なおかつ切削初期段階(切削長が1m)と切削長が750mとなる段階における加工面の仕上げ面最大高さ粗さRzが2.5μm未満となり特に良好な結果を示した。
本発明のボールエンドミルは、ボール刃のチゼル付近の切削性の向上と、ボール刃の外周付近での硬質皮膜の剥離が無い刃先にすることを両立させて、ボール刃の刃先稜線全域で刃先強度を向上させてトータルとして工具の寿命を向上、安定化させることが可能である。具体的な適用分野としては、高硬度と高靭性とを兼ね備えた金型用工具鋼の切削加工が挙げられ、金型用工具鋼の切削加工において、切削の最初からボールエンドミルの寿命まで、特に仕上面精度の良好な状態を続けられ安定した切削加工を行うことが可能である。
本発明は、上記本発明例に記載のAlCrSiNの硬質皮膜を被覆したボールエンドミルに限定されず、公知の硬質皮膜を被覆したボールエンドミルにおいて実用性に富むものである。例えば、AlCrSiN以外に、さらにTiSiN、CrSiN、AlCrN、TiAlNまたはTiN等の硬質皮膜を被覆したボールエンドミルは、上記本発明例のものとほぼ同等の有利な効果を奏することができる。
1 ボールエンドミル
2 切れ刃
3 ボール刃
4 外周刃
5 シャンク部
6 チゼル刃
7 ギャッシュ部
8 最外周部
9 4度の刃先断面観察部
10 45度の刃先断面観察部
11 60度の刃先断面観察部
12 90度の刃先断面観察部
13 外周刃の刃先断面観察部
14 硬質皮膜
15 逃げ面
16 すくい面
17 刃先稜線断面部
18 加工面に接触する部分
19 超硬母材
20 バレル研磨装置
21 第1の回転手段
22 保持ステーション
23 第2の回転手段
24 第3の回転手段
25 研磨材
26 第1の回転手段の回転方向
27 第2の回転手段の回転方向
28 第3の回転手段の回転方向
29 すくい面の幅
30 すくい面の幅
31 マイクロクラック
32 超硬母材のすくい面を延長した直線
33 すくい面を延長した直線
34 超硬母材の逃げ面を延長した直線
35 逃げ面を延長した直線
36 直線32と直線35の交点
37 直線33と直線34の交点
38 すくい面の硬質皮膜が超硬母材のすくい面に対し垂直になる方向に徐々に薄くなり始める点
39 超硬母材のすくい面
40 超硬母材の逃げ面
X ボール刃半径の中心点
O 工具中心軸
L 刃長
d シャンク径
D 刃径
刃先稜線の曲率半径
45 刃先稜線の曲率半径
60 刃先稜線の曲率半径
90 刃先稜線の曲率半径
out 外周刃の刃先稜線の曲率半径
逃げ面の皮膜擦れ量
45 逃げ面の皮膜擦れ量
90 逃げ面の皮膜擦れ量
すくい面の皮膜擦れ量
45 すくい面の皮膜擦れ量
90 すくい面の皮膜擦れ量
O’ バレル研磨装置の主軸

Claims (6)

  1. 工具先端部に略円弧状のボール刃を有し、ボール刃の後端は外周刃につながる切れ刃を具備するボールエンドミルであって、前記切れ刃は硬質皮膜を被覆後に刃先処理されており、前記ボール刃上にある任意の点と円弧状ボール刃の円の中心とを結んだ直線と、工具軸上でのボール刃の円の中心とを結んだ直線がなす角度が4度及び45度となる場所にあるボール刃について、ボール刃の各位置での刃先稜線に直角な方向の断面で見たときに、すくい面と逃げ面でなす刃先稜線の曲率半径をそれぞれR、R45とすると、RとR45はいずれも刃径Dの0.01%以上0.5%以下で、かつR<R45であり、前記角度が90度となる場所のボール刃について、刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの、すくい面と逃げ面でなす刃先稜線の曲率半径をR90とすると、前記R90が刃径Dの0.025%を超え0.8%以下であることを特徴とするボールエンドミル。
  2. 請求項1記載のボールエンドミルにおいて、外周刃の各位置での刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの、すくい面と逃げ面でなす外周刃の刃先稜線の曲率半径をRoutとすると、外周刃の刃先稜線の曲率半径Routがいずれも刃径Dの0.025%を超え0.8%以下であることを特徴とするボールエンドミル。
  3. 請求項1または2記載のボールエンドミルにおいて、前記角度が4度以上45度以下となる範囲にあるボール刃の、ボール刃もしくは外周刃の各位置における刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの刃先稜線の曲率半径Rが刃径Dの0.01%以上0.5%以下、前記角度が45度を超え90度以下となる範囲にあるボール刃、及び外周刃の刃先稜線の曲率半径Rbが刃径Dの0.025%を超え0.8%以下であることを特徴とするボールエンドミル。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載のボールエンドミルにおいて、前記角度が大きくなるに従い、ボール刃の各位置での刃先稜線に直角な方向の断面で見たときの刃先稜線の曲率半径Rが徐々に大きいことを特徴としたボールエンドミル。
  5. 請求項1乃至4のいずれかに記載のボールエンドミルにおいて、前記角度が4度、45度、及び90度となる場所にあるボール刃の逃げ面の皮膜擦れ量をそれぞれF、F45、及びF90とすると、F、F45、及びF90はいずれも刃径Dの0.03%以上0.5%以下で、かつF<F45<F90であり、前記角度が4度、45度、及び90度となる場所にあるボール刃のすくい面の皮膜擦れ量をそれぞれC、C45、及びC90とすると、C、C45、及びC90はいずれも刃径Dの0.03%以上0.5%以下で、かつC>C45>C90であることを特徴とするボールエンドミル。
  6. ボールエンドミル自身を工具中心軸の回りに回転させる第1の回転手段、複数の前記ボールエンドミルを保持する保持ステーションを回転させる第2の回転手段、及び研磨媒体を装入したバレルの主軸を回転させる第3の回転手段、並びに前記工具の保持ステーションを工具中心軸方向に可動にする駆動手段からなるバレル研磨装置を用い、前記バレル研磨装置の研磨媒体内で、主に前記駆動手段によって前記ボールエンドミルのボール刃の位置制御と、前記第1乃至第3のいずれかの回転手段との組合せによって、前記ボール刃の逃げ面とすくい面の交叉する刃先稜線の曲率半径をボール刃の位置により変化させることを特徴とするボールエンドミルの刃先処理方法。
JP2011060403A 2010-03-19 2011-03-18 ボールエンドミル及びその製造方法 Withdrawn JP2011212836A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011060403A JP2011212836A (ja) 2010-03-19 2011-03-18 ボールエンドミル及びその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010088142 2010-03-19
JP2010088142 2010-03-19
JP2011060403A JP2011212836A (ja) 2010-03-19 2011-03-18 ボールエンドミル及びその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2011212836A true JP2011212836A (ja) 2011-10-27

Family

ID=44943112

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011060403A Withdrawn JP2011212836A (ja) 2010-03-19 2011-03-18 ボールエンドミル及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2011212836A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015030073A (ja) * 2013-08-05 2015-02-16 日進工具株式会社 ボールエンドミル
US20150224585A1 (en) * 2012-10-29 2015-08-13 Kyocera Corporation Ball end mill
CN112584953A (zh) * 2019-06-03 2021-03-30 Osg株式会社 球头铣刀及切削刀片
JP7403610B1 (ja) 2022-11-04 2023-12-22 日進工具株式会社 被覆切削工具

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20150224585A1 (en) * 2012-10-29 2015-08-13 Kyocera Corporation Ball end mill
US10265784B2 (en) * 2012-10-29 2019-04-23 Kyocera Corporation Ball end mill
JP2015030073A (ja) * 2013-08-05 2015-02-16 日進工具株式会社 ボールエンドミル
CN112584953A (zh) * 2019-06-03 2021-03-30 Osg株式会社 球头铣刀及切削刀片
JPWO2020245878A1 (ja) * 2019-06-03 2021-09-13 オーエスジー株式会社 ボールエンドミル及び切削インサート
JP7104182B2 (ja) 2019-06-03 2022-07-27 オーエスジー株式会社 ボールエンドミル及び切削インサート
CN112584953B (zh) * 2019-06-03 2024-01-05 Osg株式会社 球头铣刀及切削刀片
JP7403610B1 (ja) 2022-11-04 2023-12-22 日進工具株式会社 被覆切削工具

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5764181B2 (ja) 硬質皮膜被覆切削工具
EP2722121B1 (en) Multi-edge endmill
JP5926877B2 (ja) ドリル
JP5088678B2 (ja) ロングネックラジアスエンドミル
KR101534120B1 (ko) 볼 엔드밀 및 인서트
JP2005001088A (ja) 硬質被膜被覆部材、およびその製造方法
JP5615053B2 (ja) 総形カッターの製造方法および総形カッターの研削工具
JP6828824B2 (ja) 小径ドリルおよび小径ドリルの製造方法
JP5845218B2 (ja) ボールエンドミル
JP2010162677A (ja) 小径cbnボールエンドミル
JP2011212836A (ja) ボールエンドミル及びその製造方法
JP5974695B2 (ja) ドリル及びドリルの刃先部の製造方法
JP2010162677A5 (ja)
WO2019003965A1 (ja) ボールエンドミル
JP6179165B2 (ja) ラジアスエンドミル
JP5906838B2 (ja) スクエアエンドミル
JP2006088232A (ja) ボールエンドミル
JP4796678B2 (ja) 先端逃げ面の研削形成方法及び回転切削工具
JP6212863B2 (ja) ラジアスエンドミル
JP2020040179A (ja) リブ溝の壁面の加工方法およびテーパエンドミル
JP2013013962A (ja) Cbnエンドミル
JPH04310325A (ja) 硬質膜被覆高速度鋼切削工具の製造方法
JP5786770B2 (ja) 切削インサート
JP2021109279A (ja) 回転切削工具
JP2003334715A (ja) リブ溝加工用テーパエンドミル

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20140603