JP2006088232A - ボールエンドミル - Google Patents

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健志 渡辺
Junichi Kurosawa
淳一 黒澤
Takamasa Endo
孝政 遠藤
Satoshi Ishii
聡 石井
Takumi Obinata
工 小日向
Ryoko Takano
良子 高野
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Abstract

【課題】 仕上げ加工において仕上げ面精度を長時間、高精度に維持することができると共に、荒加工においても工具寿命を延長させて高精度で行うエンドミルを提供する。
【解決手段】 ボールエンドミル1は、軸線回りに回転される工具本体の外周に一対の螺旋状の外周刃を備えると共に、工具本体の先端部に正面視で円弧状に形成され外端部を外周刃に連絡された一対のR切削刃5,5を備え、各R切削刃5,5における工具本体の中心C側の内端部5e,5e間にチゼルエッジ6を設け、各R切削刃5,5の工具本体の中心C側における芯上がり厚さHを工具半径の1.5%〜8.0%、チゼルエッジ6のチゼル角度θを30°〜90°とし、各R切削刃5,5の第1の先端逃げ面(逃げ面)5aに、逃げ角を2°〜7°、逃げ幅Eを工具半径の0.3%〜4.0%に設定したスモールリリーフ7、7を設けた構成とされている。
【選択図】 図4

Description

本発明は、工作機械を使用して金型のキャビティ、コア等のワークを加工するのに適するボールエンドミルに関する。
従来、この種のボールエンドミルとして、軸線回りに回転される工具本体の外周に形成された一対の螺旋状の外周刃と、工具本体の先端部に正面視で円弧状に形成された一対の底刃とを備え、該各底刃が、工具本体の外周側の各外端部を前記各外周刃に接続され、工具本体の回転中心側の各内端部の切刃を、該回転中心より回転方向の前方へ突き出した芯上がり位置に設定され、前記回転中心を通り前記各内端部の切刃を結ぶ線上に切刃の一部をなすチゼルエッジを設けたものが知られている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
特開2000−233311号公報 特開2001−334405号公報 特開2001−341026号公報
一般に、ボールエンドミルのチゼルエッジは、前記一対の底刃の逃げ面が交差する領域にあり、各底刃と比較して刃先強度が強くその格差が大きいので、ボールエンドミルは、その底刃の中心付近における切削領域では、仕上げ加工の場合、チゼルエッジと底刃の切刃の摩耗量、すなわち、それらの刃先の後退量に大きな差が生じるため、ワークの切削面が均一に仕上がらないという問題があり、また、荒加工の場合、前記刃先の強度の格差から底刃の中心付近に異常摩耗が生じ、ついには大きく欠損を引き起こす事態に至ることがあり、工具寿命を著しく低下させる問題がある。一方、荒加工の場合の工具寿命を向上させる目的で、底刃とチゼルエッジの交点における各底刃の接線どうしの間隔であるチゼル幅(芯上がり厚さ)を大きくすると、一対の底刃の逃げ面どうしが干渉し合うため、底刃の中心付近における工具精度が著しく悪化してしまい、また、前記チゼル幅を小さくすると、底刃の中心付近における工具精度は向上するが、荒加工において強度不足となってしまう問題がある。
そこで、前記従来のボールエンドミルにおいては、前記チゼルゼルエッジに関し、底刃とチゼルエッジの交点における各底刃の接線と該チゼルエッジとのなす角度であるチゼル角、前記チゼル幅(芯上がり厚さ)、チゼルエッジの長さを特定の寸法、数値に設定することにより、工具寿命を延長させると共に、ワークの切削仕上げ面精度を向上させことを提案している。
しかしながら、前記従来のボールエンドミルにいては、チゼルエッジの形状を改善して工具寿命と仕上げ加工における仕上げ面精度の向上を図る工夫がなされているものの、前記チゼルエッジに係る形状以外に、切削加工精度に大きく影響を及ぼす底刃の形状については何ら考慮が払われておらず、仕上げ加工において仕上げ面精度を長時間、高精度に維持し、かつ荒加工においても工具寿命を延長させようとする要求に対して、十分に応えることができない不満がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、仕上げ加工において仕上げ面精度を長時間、高精度に維持することができると共に、荒加工においても工具寿命を延長させて高精度加工を行うことができるボールエンドミルを提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために、以下の点を特徴としている。
すなわち、本発明の請求項1に係るボールエンドミルは、軸線回りに回転される工具本体の外周に一対の螺旋状の外周刃を備えると共に、工具本体の先端部に正面視で円弧状に形成され外端部を前記外周刃に連絡された一対のR切削刃を備え、該各R切削刃における工具本体の中心側の端部間にチゼルエッジを設けたボールエンドミルにおいて、前記各R切削刃の工具本体の中心側における芯上がり厚さを工具半径の1.5%〜8.0%、前記チゼルエッジのチゼル角度を30°〜90°とし、各R切削刃の逃げ面に、逃げ角を2°〜7°、逃げ幅を工具半径の0.3%〜4.0%に設定したスモールリリーフを設けたことを特徴としている。
請求項2に係るボールエンドミルは、請求項1に記載のボールエンドミルにおいて、前記スモールリリーフの逃げ角を、前記工具本体の中心側において2°〜7°に設定し、前記外周刃側に向かって徐々に大きくなるように連続的に変化させたことを特徴としている。
請求項3に係るボールエンドミルは、請求項1または2に記載のボールエンドミルにおいて、前記スモールリリーフの前記外周刃側における逃げ角を、前記工具本体の中心側における逃げ角より5°〜20°だけ大きく設定したことを特徴としている。
本発明によれば、以下の優れた効果を奏する。
すなわち、請求項1に係るボールエンドミルによれば、各R切削刃における工具本体の中心側においては、切れ味を損なわずに、チゼルエッジとR切削刃との間の刃先強度の差を緩和させることができるから、前記チゼルエッジとR切削刃との刃先の後退摩耗量の差を減少させることができ、滑らかな摩耗形態とすることができる。また、R切削刃の全体にわたってスモールリリーフが設けられているから、切れ味を損なわずに、切刃の強度を増大させることができ、ワークのコーナー部の切削においてもビビリ振動の発生を抑制することができる。
したがって、ワークの仕上げ加工における仕上げ面精度を良好に、かつ長時間維持させることができると共に、荒加工においても、工具切刃の欠損を防止して長寿命な切削加工が可能となり、また、R切削刃における工具本体の中心側の工具精度、加工精度を向上させることができる。
また、請求項2に係るボールエンドミルによれば、R切削刃における外周刃側のワークの仕上げ加工面に対する擦り現象を抑制することができて、柔らかい材料のワークであっても良好に切削加工を行って、高精度の仕上げ加工面を得ることができる。
また、請求項3に係るボールエンドミルによれば、R切削刃における外周刃側のスモールリリーフの逃げ角を、工具本体の中心側のそれより所定量だけ大きく設定することにより、R切削刃の刃先強度の低下を抑えながら、請求項2係るボールエンドミルによる効果を確実に発揮させることができる。
以下、本発明の一実施の形態に係るボールエンドミルについて図面を参照して説明する。図1〜図3において、1は本発明の一実施の形態に係るボールエンドミルを示す。このボールエンドミル1は、超硬合金等の硬質材料で形成された円柱状の工具本体2(図1、図2では先端側のみ図示)を備えている。該工具本体2の先端側外周には、その先端(工具先端)から基端側に向かって螺旋状に捻れた二条の切屑排出溝3,3が、工具本体2の周方向に等間隔をあけて形成されている。そして、各切屑排出溝3,3の工具回転方向(図1〜図3で矢印T方向)を向く壁面3aと工具本体2の先端側外周側2aとの交差稜線部には、前記切屑排出溝3に沿った螺旋状の二枚の外周刃4,4が形成されている。各外周刃4,4の工具回転方向Tの後方側には、第1の逃げ面4aと逃げ部4bが順に設けられている。
また、前記工具本体2の軸方向の先端部には、工具本体2の軸線Sの回りに半球状の回転軌跡をなす表面上にあって、正面視で(図1)で円弧状に形成され、平面視(図3)で略工具本体2の直径方向に沿う切刃を有する一対の底刃(以下、「R切削刃」という)5,5が形成されている。そして、該各R切削刃5,5は、工具本体2の直径方向における外端部が前記各外周刃4,4に連続され、前記工具本体2の回転中心(中心)C側の内端部5e,5eが、図4に示すように、工具回転方向Tの前側へ突き出した位置(芯上がり位置)に設定され、前記各内端部の切刃どうしが前記中心Cを通るチゼルエッジ6によって連絡されている。各底刃5,5の工具回転方向Tの後方側には、第1、第2の先端逃げ面5a,5bがこの順に設けられ、第2の先端逃げ面5bが切欠面5cを介して前記外周刃4の逃げ部4bに連絡されている。
さらに、前記第1の先端逃げ面(逃げ面)5aには、図3、図4に示すように、前記R切削刃5,5に近接した部分に小幅の逃げ面(以下「スモールリリーフ」という)7,7が、工具本体2の中心C側から前記外周刃4側に向けてR切削刃5,5に沿って形成されている。該スモールリリーフ7,7は、図5に示すように、逃げ角αが2°〜7°、逃げ幅Eが工具半径の0.3%〜4.0%の範囲に設定され、工具本体2の中心C側から前記外周刃4側まで、前記数値範囲から選択して設定された一定値に従って形成されている。そして、一方のR切削刃5におけるスモールリリーフ7の工具本体2の中心C側の部分は、前記チゼルエッジ6に沿って徐々に逃げ幅Eを狭めながら、他方のR切削刃5の内端部に接続されるようになっており、したがって、チゼルエッジ6は工具本体2の中心部において鈍角の切刃からなる底刃の一部を形成している。
また、前記各R切削刃5,5とチゼルエッジ6の交点における各R切削刃5,5の接線L1,L1どうしの間隔であるチゼル幅(以下「芯上がり厚さ」という)Hは、工具半径の1.5%〜8.0%に設定され、前記チゼルエッジ6の方向線L2の、R切削刃5の前記接線L1から工具回転方向T側に計測した角度(以下「チゼル角度」という)θは、30°〜90°に設定されている。
前記R切削刃5,5の工具回転方向Tの前側には、該R切削刃5,5の切刃の掬い面を形成するためのギャッシュ8a,8aが、工具本体2の中心C側の位置から工具本体2の外周側に至る位置に設けられ、また、該ギャッシュ8a,8aの工具本体の中心側の部分に、R切削刃5,5の切刃による切屑を排出するためのポケット8b,8bが設けられている。前記ギャッシュ8a,8aは切欠面8c,8cを介して前記切屑排出溝3,3に連絡されている。
前記のように構成された実施の形態に係るボールエンドミル1は、工具本体2を工具ホルダ等に取り付けてマシニングセンタ等の工作機械の主軸に装着され、該主軸の回転で工具本体2の軸線Sの回りに回転されると共に、前記軸線S方向や工具本体2の直径方向側への三次元方向への切削送りを与えられて、プラスチックスの成形加工に使用する精密金型のキャビティ等のワークの所定箇所に荒加工や仕上げ加工を行う。その際、工具本体2の外周刃4,4でワークの凹所の側壁面等が加工され、各R切削刃5,5によってワークの凹所の底面、コーナー部やその他の曲面が切削される。
この場合、前記チゼルエッジ6は鈍角で刃先強度が大きく、一方、R切削刃5,5は刃先が鋭角で刃先強度がチゼルエッジ6より劣るので、この刃先強度の差によって、図6に示すように、チゼルエッジ6とR切削刃5,5の刃先後退摩耗量(図6で破線は仕上げ加工の場合、鎖線は荒加工の場合を示す)に差が生じて、前記R切削刃5,5とチゼルエッジ6とによって切削される切削加工面に段差が生じ、これにより、ワークの加工面精度が低下するおそれがある。
しかし、前記のように、ボールエンドミル1は、各R切削刃5,5の工具本体2の中心C側の内端部における芯上がり厚さHを工具半径の1.5%〜8.0%、前記チゼルエッジ6のチゼル角度θを30°〜90°とし、各R切削刃5,5の第1の先端逃げ面5aに、逃げ角αを2°〜7°、逃げ幅Eを工具半径の0.3%〜4.0%に設定したスモールリリーフ7をR切削刃5,5に沿って設けたので、前記チゼルエッジ6の長さが短縮されてチゼルエッジ6による加工領域が減少されると共に、スモールリリーフ7,7の比較的小さな逃げ角αと適切な逃げ幅Eの設定により、前記R切削刃5,5の刃先強度がその切れ味を損なわずに向上される。
このため、工具本体2の中心Cの付近においては、前記チゼルエッジ6とR切削刃5,5との間の刃先強度の差を緩和させることができて、チゼルエッジ6とR切削刃5,5との刃先の後退摩耗量の差を減少させることができ、図6に実線で示すように、チゼルエッジ6とR切削刃5,5の刃先どうしが比較的に滑らかに接続された摩耗形態とすることができる。また、R切削刃5,5は、その全体にわたってスモールリリーフ7,7が設けられているから、切れ味を損なわずに、切刃の強度を増大させることができ、ワークのコーナー部の切削においてもビビリ振動の発生を抑制することができる。
したがって、ワークの仕上げ加工における仕上げ面精度を良好に、かつ長時間維持させることができると共に、荒加工においても、工具切刃の欠損を防止して長寿命な切削加工が可能となり、また、R切削刃5,5における工具本体2の中心C側の部分の工具精度、加工精度を向上させることができる。
なお、前記各R切削刃5,5の工具本体2の中心C側の内端部5e,5eにおける芯上がり厚さHが、前記下限設定値である工具半径の1.5%を下まわる範囲であると、R切削刃5,5の工具本体2の中心側における刃先強度が弱くなり、また、上限設定値である工具半径の8.0%を超える範囲であると、チゼルエッジ6の長さBが長くなることから、工具本体2の中心部における工具切刃とワークの切削による仕上げ面との擦れが増大し、該仕上げ面を悪化させると共に、切削負荷が大きくなり、工具の異常摩耗や欠損を引き起こし易くなる。より良好な切削を行うには、芯上がり厚さHは工具半径の2.0%〜6.0%、より好ましくは、直径0.6mm以上2.0mm未満の工具場合、工具半径の4.0%〜5.0%、直径2.0mm以上4.0mm未満の工具の場合、工具半径の4.0%〜6.0%、直径4.0mm以上12.0mm以下の工具の場合、工具半径の2.0%〜4.0%の範囲に設定する。
また、前記チゼル角度θが、前記下限設定値である30°を下まわる範囲であると、前記チゼルエッジ6の長さBが長くなることから、前記と同様に仕上げ面を悪化させる。より良好な切削を行うには、前記チゼル角度θは好ましくは45°〜90°、より好ましくは60°〜90°の範囲に設定する。
また、前記スモールリリーフ7、7の逃げ角αが、前記下限設定値である2°を下まわる範囲であると、前記R切削刃5,5の切刃部における逃げ面の仕上げ面からの逃げ量が小さくなり過ぎるため、該逃げ面が擦れ易く、前記仕上げ面を悪化させると共に、切削負荷が増大し、工具の異常摩耗や折損を引き起こし易くなる。また、前記上限設定値である7°を超える範囲であると、前記チゼルエッジ6とR切削刃5,5との間に生じる切刃の強度差が許容範囲を超えることから、仕上げ加工の場合、チゼルエッジ6とR切削刃5,5の刃先の後退摩耗量に差が生じて仕上げ面を悪化させ、荒加工の場合、R切削刃5,5が異常摩耗を引き起こして折損に至ることがある。より良好な切削を行うには、前記逃げ角αは5°またはその付近の数値に設定するのが好ましい。
さらに、前記逃げ幅Eが前記下限設定値である工具半径の0.3%を下まわる範囲であると、R切削は5,5の刃先強度が低下するため、前記と同様に、チゼルエッジ6とR切削刃5,5の刃先の後退摩耗量に差が生じて仕上げ面を悪化させ、また、前記上限設定値である工具半径の4.0%を超える範囲であると、切削負荷が増大して工具の異常摩耗や折損を引き起こし易くなる。より良好な切削を行うには、前記逃げ幅Eは工具半径の0.5%〜3.0%、より好ましくは、直径0.6mm以上4.0mm未満の工具の場合、1.0%〜3.0%、直径4.0mm以上12.0mm以下の工具の場合、0.5%〜2.0%の範囲に設定する。
そして、前記実施の形態に係るボールエンドミル1は、限定するわけではないが、特に、工具直径が0.6mm〜12mmのボールエンドミルに適用して、前記各R切削刃5,5の工具本体2の中心C側の内端部における芯上がり厚さHと、前記チゼルエッジ6のチゼル角度θと、スモールリリーフ7,7の逃げ角αと、その逃げ幅Eの特定項目に対して、それぞれ、前記特定の数値範囲に設定することにより、携帯電話等の小型電子機器を内蔵するプラスチックケース等を成形する精密金型を加工する場合に要求される工具精度の高精度化および長寿命化、高精度仕上げ加工を確実に実現することができ、前記特定項目のいずれもが前記特定の数値範囲に設定されることが重要である。
図7は、工具直径6mmのボールエンドミル1を使用してワークの切削加工試験を行って、前記スモールリリーフ7の逃げ角αを2°〜7°、逃げ幅Eを工具半径の0.3%〜4.0%とした場合における、切削加工面の仕上げ面粗さに対する前記芯上がり厚さHおよび前記チゼル角度θの関係を示したものである。なお、工具直径が上記サイズ以外のものを使用した場合も同様な試験結果が得られているが、その詳細は省略する。
前記切削加工試験は、ワークとしてHRC52に熱処理されたSUS420J2材を使用し、乾式エアーブローにより切削した。切削条件は、荒加工の場合、工具の回転数15000min−1、送り速度4000mm/min、軸方向切り込み0.3mm、径方向切り込み2.0mmとした。また、仕上げ切削の場合、工具の回転数15000min−1、送り速度2000mm/min、軸方向切り込み0.1mm、径方向切り込み0.1mmとした。
これによると、芯上がり厚さHが大きくなると仕上げ面粗さが大きくなり、前記チゼル角度θが小さくなるしたがって、仕上げ面粗さが大きくなり、その芯上がり厚さHの変化に対して仕上げ面粗さが悪化する度合が顕著となり、チゼル角度θが30°を下まわる範囲では、芯上がり厚さHを小さくした場合ても、精密金型等において要求される仕上げ面粗さ(例えば4μm)を得ることができず、前記芯上がり厚さHを工具半径の1.5%〜8.0%とし、チゼル角度θを30°〜90°とした場合に、前記要求仕上げ面粗さ4μmを十分に満たし、さらに、チゼル角度θを45°〜90°とした場合に、更に高精度の仕上げ面粗さ3μmにも対応することができ、また、チゼル角度θを60°〜90°とすると、一層、仕上げ面精度を向上できることが判る。
なお、前記芯上がり厚さHが工具半径の1.5%を下まわる範囲では、荒加工中に前記R切削刃5,5における工具本体2の中心C側が欠損して、正常な切削加工ができない状態に至ることがあった。また、前記芯上がり厚さHが工具半径の8.0%を超える範囲では、仕上げ面厚さHが急激に大きくなる範囲であり、前記要求仕上げ面粗さに対する前記チゼル角度θの下限の設定範囲が制限される。
図8は、前記切削加工試験において、前記芯上がり幅Hを工具半径の1.5%〜8.0%とし、前記チゼル角度θを30°〜90°とした場合における、前記スモールリリーフ7の逃げ角αと逃げ幅Eと切削加工面の仕上げ面粗さとの関係を示したものである。
これによると、実線で囲まれたスモールリリーフの逃げ角αが2°〜7°、逃げ幅Eが工具半径の0.3%〜4.0%の矩形状の領域Xが、ワークの仕上げ面精度が良く(仕上げ面粗さが小さく)、かつその仕上げ面精度を長時間維持することができる領域であり、破線で囲まれた領域Yが、R切削刃5,5における工具本体2の中心C側とワークの切削による仕上げ面との擦れにより、仕上げ面精度が悪化する(仕上げ面粗さが大きくなる)領域であり、一点鎖線で囲まれた領域Zが、切削初期の仕上げ面精度(仕上げ面粗さ)が良いが、該仕上げ面精度を長時間維持することができない領域となっている。
前記切削試験結果によって、前記ボールエンドミル1において、R切削刃5,5の芯上がり厚さHを工具半径の1.5%〜8.0%とし、チゼル角度θを30°〜90°とし、前記スモールリリーフ7の逃げ角αを2°〜7°、逃げ幅Eを工具半径の0.3%〜4.0%に設定した場合に、前記R切削刃5,5の刃先の異常摩耗や欠損を防止して、切削加工面の仕上げ面精度を良好に、かつ長時間維持させ得ることが判明した。
なお、前記実施の形態に係るボールエンドミルにおいては、前記スモールリリーフ7,7の逃げ角αと逃げ幅Eを、工具本体2の中心C側から前記外周刃4,4側まで一定値に設定したので、R切削刃の全体にわたって刃先強度を均等に保って高硬度材料からなるワークの切削加工を良好に行えて好ましいが、本発明はこれに限らず、工具本体2の中心側を前記設定値(逃げ角αが2°〜7°、逃げ幅Eが工具半径の0.3%〜4,0%)とし、前記外周刃4,4側の少なくとも逃げ角αを中心側の前記設定値より5°〜20°、より好ましくは10°〜15°だけ大きく設定して、工具本体2の中心C側から外周刃4,4側に向かって徐々に大きくなるように連続的に変化させる構成とすることができる。なお、この場合、逃げ幅Eは一定であっても、外周刃4.4側へ行くにしたがって徐々に大きくなるように変化させてもよい。
このように前記逃げ角αを変化させると、該逃げ角αが外周刃側に近づくにしたがって第1の先端逃げ面5aの通常の逃げ角に程度に大きくなるので、R切削刃5,5における外周刃4,4側のワークの切削による仕上げ面に対する擦り現象が抑制され、特に、一般鋼材やアルミニウム、銅等の非鉄金属材料等の柔らかい材料からなるワークの切削加工において、前記外周刃4,4に擦り現象で発生する微細切屑が溶着することにより仕上げ面が荒らされるのを防止して、良好にワークの切削加工を行うことでき、高精度の仕上げ面を得ることができる。
また、前記実施の形態に係るボールエンドミルにおいては、工具本体2を超硬合金等を使用して、これにR切削刃5,5と外周刃4,4を形成したが、前記R切削刃5,5は、前記工具材料に限定されることはなく、CBN焼結体、ダイヤモンド焼結体(PCD)等の工具素材を使用することができる。CBN焼結体、ダイヤモンド焼結体等の工具素材を使用した場合は、前記R切削刃の刃先を、鏡面研磨によって半径0.005mm〜0.015mmに丸め処理をすることによって、切刃剛性を一層向上させることができ、鏡面とした刃先の面精度が切削加工面に転写されるため、ワークの仕上げ面の精度を極めて向上させることができる。
本発明の一実施の形態に係るボールエンドミルを示す正面図である。 図1のイ矢視図である。 本発明の一実施の形態に係るボールエンドミルを示す平面図である。 本発明の一実施の形態に係るボールエンドミルの工具本体の中心部付近の拡大平面図である。 図4のロ−ロ断面図である。 チゼルエッジとR切削刃の摩耗状態を示す説明図である。 仕上げ面粗さに対する芯上がり厚さおよびチゼル角度θの関係を示す線図である。 スモールリリーフ7の逃げ角と逃げ幅と仕上げ面粗さとの関係を示す図である。
符号の説明
1 ボールエンドミル
2 工具本体
3 切屑排出溝
4 外周刃
5 底刃(R切削刃)
5a 第1の先端逃げ面
6 チゼルエッジ
7 小幅の逃げ面(スモールリリーフ)
8a ギャッシュ
8b ポケット
α 逃げ角
θ チゼル角度
C 工具本体の中心
E 逃げ幅
H チゼル幅(芯上がり厚さ)
S 軸線
T 工具回転方向

Claims (3)

  1. 軸線回りに回転される工具本体の外周に一対の螺旋状の外周刃を備えると共に、工具本体の先端部に正面視で円弧状に形成され外端部を前記外周刃に連絡された一対のR切削刃を備え、該各R切削刃における工具本体の中心側の端部間にチゼルエッジを設けたボールエンドミルにおいて、
    前記各R切削刃の工具本体の中心側における芯上がり厚さを工具半径の1.5%〜8.0%、前記チゼルエッジのチゼル角度を30°〜90°とし、各R切削刃の逃げ面に、逃げ角を2°〜7°、逃げ幅を工具半径の0.3%〜4.0%に設定したスモールリリーフを設けたことを特徴とするボールエンドミル。
  2. 前記スモールリリーフの逃げ角を、前記工具本体の中心側において2°〜7°に設定し、前記外周刃側に向かって徐々に大きくなるように連続的に変化させたことを特徴とする請求項1に記載のボールエンドミル。
  3. 前記スモールリリーフの前記外周刃側における逃げ角を、前記工具本体の中心側における逃げ角より5°〜20°だけ大きく設定したことを特徴とする請求項2に記載のボールエンドミル。
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