JP5088678B2 - ロングネックラジアスエンドミル - Google Patents
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Description
特許文献1には、加工面を滑らかに仕上げるため、コーナー刃をエンドミル本体の最先端に突出した後に後端側に向かうように湾曲させ、コーナー刃の工具軸線方向のすくい角を−10゜〜+10゜の範囲に設け、外周刃の逃げ面とコーナー刃の逃げ面とが連続して形成されたラジアスエンドミルが記載されている。
特許文献2には、円弧刃に繋がる第1底刃と、前記第1底刃のすきま角より大きいすきま角を有する第2底刃が設けられ切削負荷を緩和し、底刃の欠損とビビリ振動を抑制し、底面の仕上がりを向上し、切りくずの噛み込みを防止できるラジアスエンドミルが記載されている。
また、切削加工能率を上げるため用いる4枚刃以上の底刃を有するロングネックラジアスエンドミルの、少なくとも一枚の底刃が工具中心軸付近まで形成されている工具の刃付けにおいて、前記外周刃、前記ラジアス刃、前記底刃を連続加工するにあたり、回転方向後方側に位置する底刃に干渉しないためには、使用する砥石の先端角度は鋭角にして、前記底刃の刃先に対して砥石を更に傾けたりして加工しなければならなかった。このため、逃げ面の面粗さが悪くなったり、機械の動きは3次元的に複雑になり、加工に用いるNCプログラムが複雑になるうえ、機械の段取りを行う際の時間が掛かってしまい、更に、工具の製品精度を高めるためには、段取りを行う作業者の技術力が重要であり、熟練を有した作業者でないと容易に加工ができないといったことや工具の生産性が著しく低下するといった問題が発生していた。
これにより、刃径が6mm以下で首下長さが長いためにビビリ振動が発生しやすい形状であって、送り速度を上げた場合においても、切削抵抗を低減すると共にビビリ振動を抑え、削り残しを少なくして良好な面粗さを得ることができる。
リブ溝など深いポケットの加工の底面仕上げ加工を行う際に、送り速度を上げた場合でも、切削抵抗を低減し、ビビリ振動を抑制して、削り残しを除去し、底面仕上げで良好な加工面粗さが得られる。
本発明のロングネックラジアスエンドミルは、ラジアス刃、外周底刃の逃げ面が連続加工されていることにより、それぞれの刃部のつなぎ部が滑らかに接続され、つなぎ部の角がなくなるので、前記つなぎ部の角による加工面にすじが残らず、良好な加工面粗さを得ることができる。この効果は切削加工能率を上げるため用いる4枚刃以上のロングネックラジアスエンドミルの場合に特に効果を発揮する。
本発明によれば、傾斜切削を行う際においても、底刃のワークへの接触を少なくし、安定した加工がおこなえるために、工具の刃先に欠けなどが生じることなく、工具寿命を向上させることができる。
図2は、本発明例図1の刃部2の拡大図である。刃部2は、複数の外周刃6、ラジアス刃7、底刃8を有し、底刃8はラジアス刃7に接続する外周側底刃9および、外周側底刃9に接続され工具中心方向に向かう内周側底刃10からなる。また、ラジアス刃7は外周側底刃9と滑らかに接続するため、内周側へわずかに伸延させて、伸延の最終点におけるラジアス刃7の接線が外周側底刃9となるように接続されている。これにより、つなぎ部が滑らかに接続され、つなぎ部の角による加工面にすじが残らないと共に、良好な加工面粗さを得ることができる。
図3は図1の左側面視における拡大図である。図4は一刃の送り量が小さい場合、図5は一刃の送り量が大きい場合、の軌跡を示したものである。図4と図5を比較すると、図5の一刃の送り量が大きい場合には、削り残し15の削り残し量は大きくなることがわかる。
本発明のロングネックラジアスエンドミルにおいて、図3より、外周側底刃9の長さ13は、0.02mm以上0.3mm以下の範囲で設ける。本発明の工具形状では、外周側底刃9の長さ13の効果により一刃の送り量が大きい場合にも、図5における削り残し15を確実に切削して除去でき、さらに良好な加工面粗さが得られる。外周側底刃9の長さ13が0.02mm未満であると、送り速度を上げたときには削り残し15を除去できず、加工面粗さが悪化する恐れがある。また、外周側底刃9の長さ13が0.3mmを超えると、底面仕上げおよび傾斜切削を行う場合において被削材に接触する切れ刃長さが長くなるため、切削抵抗が増大し、ビビリ振動を誘発しやすくなる。
図7の、外周側底刃9がない従来例に示すように、底刃8が被削材に対して矢印で示すような応力を発生させ、かつ作用する力は分散されないために抵抗が大きく、ビビリ振動が発生する恐れがある。これに対して本発明の外周側底刃9は、矢印で示すように応力を分散させ、かつ図8の(ロ)から(ハ)に移動するに従い、被削材に対して内周側底刃10側からラジアス刃7側へ切削点が移動しながら切削するため、工具回転方向の切削抵抗が低減され、ビビリ振動を抑制でき、良好な加工面粗さを得る事ができる。このように本発明の外周側底刃9が内周側底刃10に対して角度を設けることによって、首下の長いロングネックラジアスエンドミルにおいて切削抵抗を低減して、より安定した加工ができる。
ここで、外周側底刃9の角度14が0.5゜未満の場合、切削抵抗の低減効果が十分でなく、首下長さ4の長いロングネックラジアスエンドミルではビビリ振動が発生するため、加工面粗さが悪くなってしまう恐れがある。また、外周側底刃9の角度14が4゜を超えると、切削抵抗の分力が工具半径方向に大きく働くため、ビビリ振動を発生させやすくなり、加工面粗さが悪くなってしまう恐れがある。
本発明のロングネックラジアスエンドミルにおいて、刃数が4枚刃以上であって、外周刃6、ラジアス刃7、外周側底刃9の逃げ面が、連続加工されていることが好ましい。これにより、つなぎ部の逃げ面が滑らかに接続され、つなぎ部に角が立たないことにより加工面に角によるすじが残らないため、良好な加工面粗さを得ることができる。
これに対して、本発明は前記外周刃6、前記ラジアス刃7、前記外周側底刃9までを連続加工し、内周側底刃10の加工を別の加工で行うために、回転方向後方に位置する刃に干渉することがなくなり、平らな面を持つ砥石などを使用することが可能になる。これにより加工するときの砥石の送り速度を上げても逃げ面の面粗さを良好にすることができる。これにより、使用するNCプログラムが単純となり、段取りに要する時間を短縮することができる。また、高度な加工技術を要することなく、精度の高い工具を製造することが可能になる。このことは、工具の再研磨を行う場合においても同様の効果を発揮し、本発明の工具形状の特徴を活かして容易に再研磨する事ができる。
また、工具を使用した場合の、底面仕上げで加工面粗さに影響を及ぼす部分は、主に前記外周刃6、前記ラジアス刃7、前記外周側底刃9との、つなぎ部分であり、最低限これらが連続加工されていることで、工具を使用したときに高品位な加工面を得ることができるのである。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例では、本発明の構成の範囲外も比較例として切削試験を行い、最適な範囲を確認することも目的とした。
本発明例1〜5、比較例6、7においては、刃数が4枚刃、刃径が3mm、首下長さが30mm(L/D=10倍)、ラジアス刃の円弧半径が0.5mm、シャンク径が6mmであるロングネックラジアスエンドミルであって、外周側底刃の角度を1.5゜、外周側底刃のすかし角が1゜、内周側底刃のすかし角が5゜、内周側底刃の心残し幅が刃径の2%とし、外周側底刃の長さを、表1に示すものを作製し、テストに供した。
被削材には材質がSUS420J2の硬さがHRC52であり、幅250mm、奥行き100mm、高さ100mmの鋼材を用いた。切削条件は、エンドミル工具軸線方向の切り込み量は0.05mm、径方向の切り込み量は0.5mm、回転数は10000min−1、送り速度は800mm/minとし、水溶性切削液を使用して、切削長が5mになるまで底面切削を行った。
評価として、ワークを切削後、切削した面の面粗さを接触式面粗さ測定器で、面粗さ最大高さRzを3ヶ所測定し、平均値とした。結果は、実用的に合格とされる面粗さ平均値が2.5μm以下の評価を「良い」以上として、◎:非常に良い、○:良い、×:悪い、の3段階に分けて、それぞれのテストの中で相対的に評価した。その結果を表1に示す。
比較例6のものは、外周側底刃の長さが0.02mmよりも短く、このために削り残しが大きくなる傾向となり、本発明例1〜5より加工面粗さが悪化することとなった。
比較例7のものは、外周側底刃の長さが0.3mmよりも長く、このため切れ刃長さが長くなり切削抵抗が大きくなり、外周側底刃の逃げ面磨耗が進行し易くなるため切れ味が低下し、悪化する傾向となり、加工面粗さ平均値が3.62μmと2.5μmを超えていた。
本発明例8〜14、比較例15、16のものは、外周側底刃の長さを0.1mmとし、外周側底刃の角度を変化させた以外は、実施例1と同様の基本工具諸元の試料を作製し、テストに供した。テストは、実施例1と同様の切削条件、加工ワーク形状、加工方法にて行い、実施例1と同様の方法で評価した。その結果を、表2に示す。
比較例15のものは、外周側底刃の傾斜角度が0.3゜と小さく、切削抵抗が分散されにくいため、抵抗の低減効果が十分でなくビビリ振動が発生し、加工面粗さが悪化する傾向となった。
比較例16のものは、外周側底刃の傾斜角度が4.3゜と大きく、切削抵抗の分力が工具半径方向に大きく働くため、ビビリ振動が発生され易く、外周側底刃の逃げ面摩耗幅が、本発明例8〜14のものよりも大きくなっており、加工面粗さが悪化し、加工面粗さ平均値が2.59μmと2.5μmを超えていた。
次に、本発明例17〜19、比較例20において、外周側底刃の長さを0.1mmとし、外周側底刃のすかし角を変化させた以外は、実施例1と同様の基本工具諸元の試料を作製し、テストに供した。テストは、実施例1と同様の切削条件、加工ワーク形状、加工方法にて行い、実施例1と同様の方法で評価した。その結果を、表3に示す。
本発明例21〜23、比較例24、25において、外周側底刃の長さを0.1mmとし、内周側底刃のすかし角を変化させた以外は、実施例1と同様の基本工具諸元の試料を作製し、テストに供した。テストは、実施例1と同様の切削条件、加工ワーク形状、加工方法にて行い、実施例1と同様の方法で評価した。その結果を、表4に示す。
比較例24のものは、内周側底刃のすかし角が2゜と小さいため切削抵抗が大きくなり、ビビリ振動の発生がし易くなる傾向となり、本発明例21〜23のものより加工面粗さが悪化することとなった。
比較例25のものは、内周側底刃のすかし角が9゜と大きいため刃先の強度が低下し、底刃の逃げ面摩耗が進行し、さらにチッピングが一部発生して、加工面粗さ平均値が2.64μmと2.5μmを超えていた。
次に、本発明例26〜32において、外周側底刃の長さを0.1mmとし、内周側底刃の心残し幅を変化させた以外は、実施例1と同様の基本工具諸元の試料を作製し、テストに供した。テストは、実施例1と同様の切削条件、加工ワーク形状、加工方法にて行い、実施例1と同様の方法で評価した。その結果を、表5に示す。
本発明例32のものは、内周側底刃の心残し幅が刃径の7%と厚く、切りくずの噛み込みや細かい切りくずによる擦りが発生した。そのために、本発明例32〜37のものより加工面粗さが悪化する傾向となった。
本発明例33と従来例34、35において、本発明例33を、外周側底刃の長さを0.1mmとし、実施例1と同様の基本工具諸元の試料を作製、従来例34を外周側底刃のすかし角と内周側底刃のすかし角が5゜と同一で、外周側底刃の傾斜角度が0゜とし、他は実施例1と同様の基本工具諸元の試料を作製した。また、従来例35は、外周側底刃のすかし角を1.0゜、外周側底刃の傾斜角度が0゜、底刃の工具軸線方向のすくい角を0゜とし、他は実施例1と同様の基本工具諸元の試料を作製した。テストは、実施例1と同様の切削条件、加工ワーク形状、加工方法にて行い、実施例1と同様の方法で評価した。その結果を、表6に示す。
従来例34のものは、外周側底刃のすかし角と内周側底刃のすかし角が5゜と同一で大きく、加工面の削り残しが除去されず大きく残っており、底面仕上げの加工面粗さが最も粗く測定された。
比較例35のものは、加工面の削り残しは除去されているが、外周側底刃の傾斜角度と底刃の工具軸線方向のすくい角が0゜のため、切削抵抗が増大され、ビビリ振動が発生し、底刃のすくい面にチッピングの発生が認められ、加工面粗さ平均値が4.21μmと悪く測定された。
2 刃部
3 首部
4 首下長さ
5 シャンク部
6 外周刃
7 ラジアス刃
8 底刃
9 外周側底刃
10 内周側底刃
11 外周側底刃8のすかし角
12 内周側底刃9のすかし角
13 外周側底刃の長さ
14 外周側底刃の角度
15 削り残し
16 回転方向のすくい面
17 工具軸線
18 内周側底刃の心残し幅
d 刃径
Claims (2)
- 刃径が6mm以下で首下長さが刃径の3倍以上に設けられているロングネックラジアスエンドミルであって、工具本体の外周刃に接続され先端方向に突出する複数のラジアス刃と、前記ラジアス刃に接続された底刃を設け、前記底刃はラジアス刃に接続する外周側底刃、前記外周側底刃に接続され工具中心方向に向かう内周側底刃からなり、
前記外周側底刃の長さは、0.02mm以上0.3mm以下の範囲に設け、前記ラジアス刃、前記底刃の回転方向のすくい面は同一平面状に設け、前記外周側底刃は、前記内周側底刃に対して0.5゜以上4゜以下の範囲の角度で回転方向後方へ傾斜し、前記外周側底刃のすかし角は0゜以上2゜以下の範囲、前記内周側底刃のすかし角は3゜以上7゜以下の範囲であることを特徴とするロングネックラジアスエンドミル。 - 刃数が4枚以上であって、少なくとも外周刃、前記ラジアス刃、前記外周側底刃の逃げ面が、連続加工されていることを特徴とする請求項1に記載のロングネックラジアスエンドミル。
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