JP2005111651A - チップおよびフライスカッタおよびそれらを用いた加工方法 - Google Patents

チップおよびフライスカッタおよびそれらを用いた加工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミニウム合金とこれより耐摩耗性の高い材料とを共に仕上げ正面フライス加工するとき、アルミニウム合金の加工面の表面あらさと切れ刃寿命とを改善する。
【解決手段】フライスカッタに組み込まれるチップ10は、ダイヤモンド焼結体12からなる切れ刃13を備え、該チップ10の上面に対向する方向からみたとき、該切れ刃13は、該フライスカッタ1の先端外周部に配設され外側に凸円弧状をなすコーナ刃14と、該コーナ刃14の内周側に連設され外側に凸円弧状をなすワイパー刃15と、該ワイパー刃15の内周側に連設され直線状又は外側に凸円弧状をなす逃がし部16とからなる。さらに、該コーナ刃14の曲率半径R1は1.6〜5.0mmの範囲に設定され、該ワイパー刃15の曲率半径R2は300〜500mmの範囲に設定される。
【選択図】図1

Description

本発明は、チップおよびフライスカッタおよびそれらを用いた加工方法に関する。
非鉄合金、特にアルミニウム合金の正面フライス加工には、ダイヤモンド焼結体(以下、PCDという)からなる切れ刃を装着したフライスカッタが一般的に広く使用されている。この種のフライスカッタとして、図14に例示するように、環状のカッタ本体(2)に複数のロケータ(9)を装着し、各ロケータ(9)にチップ(10)を固定したフライスカッタ(1)等が知られている。このチップ(10)は、超硬合金からなる基材の切れ刃部分にPCD(12)が固着されている。そして、いずれのチップ(10)も切れ刃部分は全てPCDである。
上述したフライスカッタ(1)は、通常、直線状のさらえ刃を有し、いずれのさらえ刃も軸線(O)方向への突出量をそろえて固定されている。高精度な仕上げ面が要求される場合などには一部のさらえ刃をその他のさらえ刃よりも該軸線(O)方向に突出させてワイパー刃とした仕上げフライスカッタ(1)が使用され、この場合、ワイパー刃を曲率半径の大きい円弧状としたものが使用されることも多い。(例えば、特許文献1参照)
特開平8−309612号公報
アルミニウム合金製部品のなかには、図12および図13の模式図に示すように、アルミニウム合金から構成された主要な部材(以下、アルミ部(21)という)に耐摩耗性の高い鋳鉄等からなる耐摩耗性部材(以下、ライナー部(22)という)を一体的に鋳込まれるか、又は一体的に着装された部品(20)がある。アルミ部(21)、ライナー部(22)をともに上述したフライスカッタ(1)によって同時に仕上げ加工すると、ライナー部(22)に対して該フライスカッタ(1)の回転方向(K)前方側に位置するアルミ部(21)の加工面には、引っ掻き傷(30)が生じてしまう。
通常、仕上げ加工におけるチップ交換時期は、加工面の表面あらさ規格を判定基準とすることが多く、上述したようにアルミ部(21)の加工面に引っ掻き傷(30)が生じると、加工面の表面あらさ規格を超えてしまうため、チップ(10)の交換時期がきわめて早くなり、工具費が高騰する問題があった。そのようなことから、上述した引っ掻き傷(30)の発生をおさえるため、フライスカッタ(1)の切れ刃(13)形状等の改善が望まれていた。
また、正面フライス加工の専用工作機械においては、主軸に装着されたフライスカッタ(1)を送り方向(F)後方側で切込み方向にわずかに後退させるように、主軸の回転軸線(O)を前記送り方向(F)に直交する線に対してわずかな角度だけ傾斜させた、いわ
ゆるヒーリングを採用したものが多く見られる。それに対して正面フライス加工だけでなく穴明け加工、エンドミル加工等の複数の工程をこなすマシニングセンタ等においては、前記ヒーリングが採用されておらず、フライスカッタ(1)は、前記送り(F)方向と平行な状態で主軸に装着されている。したがって、マシニングセンタ等における仕上げ正面フライス加工では、フライスカッタ(1)の送り方向(F)後方側で切れ刃(13)が被削材をわずかに切削する、いわゆる後刃切削の現象が生じる。この後刃切削現象が生じると、チップ(10)の切れ刃寿命が低下するとともに、加工面には図12の(d)に示すようなあやめ模様(31)が生じ表面あらさが低下してしまう問題があった。
本発明は、叙上の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、アルミ部とライナー部とを共に切削する際に、アルミ部の加工面の表面あらさと切れ刃寿命とを改善するチップおよびフライスカッタおよびそれらを用いた加工方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明のチップは、フライスカッタに組込まれるチップにおいて、ダイヤモンド焼結体からなる切れ刃を備え、該チップの厚み方向の上面に対向する方向からみて、該切れ刃は、該フライスカッタの先端外周部に配設され外側に凸円弧状をなすコーナ刃と、該コーナ刃に連続するとともに該フライスカッタの内周側に延び外側に凸円弧状をなすワイパー刃と、該ワイパー刃に連続するとともに内周側に延びる直線状又は外側に凸円弧状をなす逃がし部とから構成され、円弧状をなす該コーナ刃の曲率半径(R1)が1.6〜5.0mmの範囲に設定され、さらに、円弧状をなす該ワイパー刃の曲率半径(R2)が300〜500mmの範囲に設定され、該コーナ刃と該ワイパー刃とがなめらかにつながれていることを特徴とする。
また、本発明のフライスカッタは、複数個のチップを備えたフライスカッタにおいて、複数個の前記チップのうち少なくとも1個が上述した本発明のチップであることを特徴とする。
また、本発明の加工方法は、上述した本発明のフライスカッタを用いた加工方法であって、切削速度VcをVc=200〜500m/min、1刃当り送り量fzをfz=0.1〜0.3mm/刃、切込みdをd=0.01〜0.70mmの範囲に設定し、さらに、水溶性切削油剤を用いた湿式切削としたことを特徴とする。
該フライスカッタの先端外周部に形成されたコーナ刃は、切り取り厚みが大きくなるため比較的硬度の高い耐摩耗部材を切削したときに高い負荷を受けチッピングや欠損が生じやすくなる。そして、これらチッピングや欠損等に伴って該コーナ刃の刃先にはライナー部
を構成する材料が凝着し、この凝着物がアルミ部のアルミニウム合金の加工面に引っ掻き傷を生じさせる主因と考えられる。そのようなことから、上述した構成を有するチップによれば、該チップ上面に対向する方向からみて円弧状をなす該コーナ刃の曲率半径(R1
)を1.6〜5.0mmの範囲に設定し、該コーナ刃と該コーナ刃の内周側に設けられるワイパー刃との交差部をなめらかに角が生じないようにつなぐことによって、該コーナ刃は、切り取り厚みが減少しライナー部を切削したときのチッピング又は欠損が生じにくくなる。そのため、該コーナ刃の刃先の凝着によるアルミ部の加工面への引っ掻き傷がおさえられる。また引っ掻き傷が生じたとしてもその傷の深さはごく浅くなる。前記曲率半径(R1)を1.6〜5.0mmの範囲に限定した理由は、前記曲率半径(R1)が1.6mm未満だと、上述した効果が得られないおそれがあり、5.0mmを超えると、該コーナ刃の切込み限界が非常に小さくなるおそれがあり、それを回避しようとすると、PCDが大型化してしまい、不経済となってしまうからである。
さらに、該チップ上面に対向する方向からみて円弧状をなすワイパー刃の曲率半径(R2)を300〜500mmの範囲に設定することによって、該ワイパー刃の切削に関与する長さ(加工面との接触長さ)が十分長くなるとともに、前記円弧の切込み方向における最突出部と両端部との段差が小さくなる。そのため、仮にコーナ刃の刃先の凝着によってアルミ部の加工面に引っ掻き傷が生じても、該ワイパー刃によってこの引っ掻き傷は確実に削り取られ、加工面の外観および表面あらさが大幅に向上する。しかも該ワイパー刃は、コーナ刃にくらべ刃先への熱的、機械的負荷が低いため、チッピングや欠損が発生せず非常に軽微な摩耗が生じるのみであることから、上述した効果が長時間維持され、切れ刃
寿命の向上がはかられる。該ワイパー刃の曲率半径(R2)を300〜500mmの範囲に限定した理由は、300mm未満だと、上述した効果が得られなくなり、また加工面の平滑さが損なわれ表面あらさまたはうねりが悪化するおそれがあり、500mmを超えると、該ワイパー刃の切削に関与する長さが長くなりすぎて切削抵抗が高くなるおそれがあり、あるいは、該チップのフライスカッタへの取付精度のわずかな誤差によって、加工面の表面あらさの悪化を招くおそれがあるからである。
また、本発明のフライスカッタによれば、該フライスカッタに装着される複数個のチップのうち、少なくとも1個が上述の本発明のチップとされ、該チップのワイパー刃を他のチップのさらえ刃に対して該フライスカッタの軸線(O)方向先端側へ突出させることによ
って、該チップの切れ刃が加工面を形成することになり、良好な表面あらさが得られることになる。2個以上の該チップを該フライスカッタに装着する場合には、これら該チップのワイパー刃を他のチップのさらえ刃に対して該フライスカッタの軸線(O)方向先端側へ突出させ、且つ各ワイパー刃の突出量を略同一量とする。このように該チップの個数を増やすことによって、該チップの切れ刃の損傷が軽減し、加工面においては良好な表面あらさが長時間維持される。したがって、該チップの個数は、該フライスカッタに装着されるチップ全個数の30%以上の整数以上とされるのが好ましく、該フライスカッタに装着されるチップの全数とされるのが特に好ましい。
本発明に係る加工方法によれば、切削速度Vcを200〜500m/minの範囲に設定することにより、ライナー部切削時の切れ刃、特にコーナ刃への熱的、機械的衝撃が軽減され、該切れ刃のチッピングや欠損の発生がおさえられる。Vcが200m/min未満になると加工能率が低下するおそれがある。1刃当り送り量が0.1〜0.3mmの範囲に設定されると、切れ刃、特にコーナ刃への機械的衝撃が軽減され、該切れ刃のチッピングや欠損がおさえられる。1刃当り送り量が0.1mm/刃未満では加工能率が低下するおそれがあり、そのうえ該切れ刃の擦り摩耗の増加により切れ刃寿命が低下するおそれがある。1刃当り送り量が0.3mm/刃を超えると、該切れ刃への機械的衝撃が高くなり
、特にコーナ刃のチッピングや欠損が生じやすくなる。切込みが0.01〜0.7mmの範囲に設定されると、切削時、特にライナー部の切削時に該切れ刃、特にコーナ刃への熱的、機械的衝撃が低くなり、該切れ刃のチッピングや欠損の発生がおさえられる。切込み
が0.7mmを超えると、ライナー部切削時の該切れ刃、特にコーナ刃への熱的、機械的衝撃が高くなり、該切れ刃のチッピングや欠損の発生が生じやすくなる。切込みが0.01mm未満、または、該チップとともにフライスカッタに装着される他のチップのさらえ刃に対する該チップのワイパー刃の突出量が0.01mm未満になると、前工程で粗加工を行ったときに生じた加工面の傷、または、前記他のチップによって生じた加工面の傷が該ワイパー刃で削り取れないおそれがある。水溶性切削油剤を用いた湿式切削では、該切れ刃への熱的衝撃および刃先の凝着が軽減され、該切れ刃のチッピングや欠損が生じにくくなるとともに、刃先へのアルミ部、ライナー部の凝着がおさえられる。そのため、加工面の引っ掻き傷がおさえられ表面あらさが良好となり、しかも切れ刃寿命が向上する。
本発明のチップにおいて、ワイパー刃の外周側端部と内周側端部との該フライスカッタの径方向の間隔が、該チップが装着される該フライスカッタの1回転当り送り量の1.2倍以上に設定されるのが好ましい。そうすれば、1つの該チップのワイパー刃によって加工
面が形成されたとしても、加工面の平滑さが良好であり、表面あらさが向上且つ安定する。前記間隔は0.5〜10mmの範囲に設定されるのがより好ましい。これは、該チップを装着した該フライスカッタの現実的な1回転当り送り量は、およそ0.4〜9mm/revの範囲に設定されることから、前記間隔が0.5mm未満になると、加工面の表面あらさが悪化するおそれがあり、前記間隔が10mmを超えると、PCDが大型化するため不経済となってしまうからである。
本発明のチップにおいて、逃がし部が直線状をなし、且つフライスカッタの軸線(O)とのなす角度(δ)が75〜87°の範囲に設定されるのが好ましい。そうすれば、該逃がし部は、ワイパー刃に対して該軸線(O)方向の後端側に向かって逃げが付与されるので、加工面の表面あらさを劣化させず、しかも切削抵抗を増加させることがない。また、マシニングセンタ等の主軸にヒーリングが採用されていない工作機械において、後刃切削したときに該逃がし部の切り取り厚みが小さくなるので、チッピングや欠損、ならびに刃先への凝着がおさえられ、加工面にあやめ模様が生じるのを防止する。なお、該逃がし部が後刃切削する場合には、該逃がし部の逃げ面の逃げ角(β)が0〜35°の範囲で付与されるのが好ましい。
本発明のチップにおいて、逃がし部が円弧状をなし、且つ前記円弧の曲率半径(R3)が1.6〜5.0mmの範囲に設定され、ワイパー刃となめらかにつながれるのが好ましい。そうすれば、該逃がし部は、該ワイパー刃に対して該軸線(O)方向の後端側に向かって逃げが付与されるので、加工面の表面あらさを劣化させず、しかも切削抵抗を増加させることがない。また、マシニングセンタ等の主軸にヒーリングが採用されていない工作機械において、該逃がし部の後刃切削時における切り取り厚みが小さくなるので、チッピングや欠損、ならびに刃先の凝着がおさえられ、加工面にあやめ模様が生じるのを防止する。なお、該逃がし部が後刃切削する場合には、該逃がし部の逃げ面の逃げ角(β)が0〜35°の範囲で付与されるのが好ましい。
本発明のチップにおいて、逃がし部の切れ刃稜に連なる逃げ面の逃げ角は、コーナ刃およびワイパー刃の切れ刃稜に連なる逃げ面の逃げ角より小さく、且つ0〜25°の範囲に設定されるのが好ましい。主軸にヒーリングが採用された正面フライス専用加工機等で仕上げフライス加工を行なう場合、該逃がし部の切れ刃稜は、被削材に対してフライスカッタの軸線(O)方向に逃がされ切削に関与しない。したがって、該逃がし部における逃げ角は、前記コーナ刃および前記ワイパー刃における逃げ角よりも小さくしてもよく、前記逃げ角は、さらに好ましくは0〜17°、特に好ましくは0〜10°の範囲に設定される。そうすれば、前記逃がし部の強度が高められることになる。
本発明のチップにおいて、逃がし部の切れ刃稜から連なる逃げ面の逃げ角は、コーナ刃およびワイパー刃の切れ刃稜から連なる逃げ面の逃げ角と略同一、且つ0〜35°の範囲に設定されるのが好ましい。そうすれば、主軸にヒーリングが採用されないマシニングセンタ等で仕上げフライス加工を行なう場合、該逃がし部が切削に関与したときに被削材に対する逃げが確保でき、切削抵抗の増大が防止できる。
本発明のチップにおいて、切れ刃は、ダイヤモンドの含有率が92体積%〜98体積%の範囲とされたPCDからなり、さらにダイヤモンド粒子の平均粒径が4〜60μmの範囲とされ、該ダイヤモンド焼結体のビッカース硬度がHv8000〜12000の範囲であるのが好ましい。そうすれば、該PCDの硬度が十分高く、耐摩耗性が向上する。
本発明のチップにおいて、該切れ刃にはホーニングがないのが好ましい。そうすれば、該切れ刃を構成するコーナ刃、ワイパー刃、逃がし部の切れ味が良好となり刃先の凝着がおさえられる。
本発明のチップにおいて、切れ刃には該切れ刃の稜線に沿ってコーナ刃とワイパー刃と逃がし部にわたってホーニングが設けられ、このホーニングの幅は、該チップの上面に対向する方向からみたとき0.005〜0.03mmの範囲に設定されるとともに、ホーニング角度は該チップの上面に対して10〜30°の範囲に設定されるのが好ましい。切れ刃の切れ味の点では、上述したとおりホーニングをしないことが好ましいが、耐摩耗性の高いPCDの使用、切れ刃への負荷が高い切削条件等により、切れ刃の刃先にチッピングや欠損を生じるおそれがある場合には、前記ホーニングを切れ刃稜線に沿って設けることにより、刃先強度が高められ切れ刃寿命が向上する。なお、ホーニング幅が0.005mm未満またはホーニング角度が10°未満になると、刃先強度の改善効果が低いためチッピングや欠損を生じるおそれがあり、ホーニング幅が0.03mmを超えるかまたはホーニング角度が30°を超えると、刃先の鈍化により凝着が生じやすくなり加工面の表面あらさが劣化するおそれがある。
本発明のチップにおいて、該切れ刃が逃げ面側から再研削されるとともに、該切れ刃の形状が再研削の前後で略同一であり、且つ該チップをフライスカッタに装着したとき、該切れ刃の該フライスカッタの径方向における位置が再研削の前後で略同一であることが好ましい。そうすれば、該切れ刃の外径寸法が再研削の前後で変わらず、該チップが複数個装着された場合、これら該チップ相互間の切れ刃形状および刃先振れ精度が再研削の前後で同一となるため、該チップの管理が非常に容易であるとともに再研削の前後でほぼ同一の切れ刃寿命が得られる。
本発明のフライスカッタにおいて、該チップの切れ刃が逃げ面側から再研削されるとともに、該チップの上面に対向する方向からみたとき、該切れ刃の形状が再研削の前後で略同一あり、且つ該切れ刃の該フライスカッタの径方向における位置が再研削の前後で略同一であるのが好ましい。そうすれば、該切れ刃の外径寸法が再研削の前後で変わらず、該チップが複数個装着された場合、これら該チップ相互間の切れ刃形状および刃先振れ精度が再研削の前後で同一となるため、該チップの管理が非常に容易であるとともに再研削の前後でほぼ同一の切れ刃寿命が得られる。
次に、本発明を適用した実施例について図を参照しながら説明する。図1〜図6は本実施例に係るチップの形状を示す図である。図1はこのチップの正面図であり、図2、図3、図4はそれぞれ図1に示すチップの右側面図、下面図、左側面図である。図5は他の実
施例のチップ正面図である。図6は図1に示すチップの再研削後の正面図である。図7〜図9は実施例1のチップを装着するフライスカッタの形状を示す図である。図7はこのフライスカッタの正面図であり、図8は図7に示すフライスカッタの要部下面図であり、図9は図7に示すフライスカッタの断面正面図である。図10は切削時の切れ刃と加工面の状態を示す図である。
本実施例に係るチップ(10)は、図1〜図4に示すように、例えば超硬合金からなる基材(11)と、その上面コーナ部付近にろう付けされて切れ刃(13)を形成するPCD(12)とからなる。このPCD(12)は略長方形を呈し、超硬合金からなる台金(12b)とダイヤモンド焼結体層(12a)とが積層で一体焼結されている。図1に示すように、該切れ刃(13)は、該チップ(10)がフライスカッタに装着されたとき、該
フライスカッタの先端外周部に配設されコーナ刃(14)と、該コーナ刃(14)に連続して該フライスカッタの内周側に延びるワイパー刃(15)と、該ワイパー刃(15)に連続して該フライスカッタの内周側に延びる逃がし部(16)とから構成されている。
該チップ(10)の上面(すくい面)に対向する方向からみたとき、該コーナ刃(14)は、外側に凸円弧状をなし、前記円弧の外周側端部で切削に関与しない外周直線部(17)によって前記円弧が切り取られるように交差する。該ワイパー刃(15)は、外側に凸
円弧状をなし、該コーナ刃(14)と角が残らないようになめらかにつながる。該逃がし部(16)は直線状、または、外側に凸円弧状をなし、該ワイパー刃(15)に対してY方向(フライスカッタの軸線(O)方向後端側)に逃げている。そして、該コーナ刃(14)、該ワイパー刃(15)のそれぞれの逃げ面(13b)は、切削時に被削材に対して逃げが確保されるよう、図2〜図4に示すように所定の逃げ角(β)が付与される。この逃げ角(β)は0〜35°の範囲に設定されるのが好ましい。
フライスカッタ(1)には、図7〜図9に示すようにカッタ本体(2)の先端外周部に複数のチップ座(3)が周面に沿って設けられ、本実施例では14個のチップ座(3)が設けられている。これらチップ座(3)には、本実施例のチップ(10)が該フライスカッタ(1)の切れ刃(13)として少なくとも1つ装着されるのが好ましい。該チップ(10)は、切れ刃(13)を該カッタ本体(2)の先端面(2c)から突出させるようにチップ座(3)に載置され、該フライスカッタ(1)の回転方向(K)を向く壁面(上面)を、クランプねじ(5)で締め込まれた楔部材(4)によって押圧され、該カッタ本体(2)に固定されている。該チップ(10)を他のチップとともに該カッタ本体(2)へ装着する場合、該チップ(10)は、そのワイパー刃(15)を他のチップのさらえ刃に対して、該カッタ本体(2)の軸線(O)方向先端側に突出するように装着されるのが好ましい。また該チップ(10)を2個以上装着する場合には、これら該チップ(10)は、それらのワイパー刃(15)を他のチップのさらえ刃に対して該軸線(O)方向先端側に突出するとともに、それらのワイパー刃(15)の前記突出方向の振れを例えば10μm以内に揃えて装着されるのが好ましい。なお、本実施例では14個すべてのチップ座に該チップ(10)が装着され、これら該チップ(10)のワイパー刃(15)が前記突出方向の振れを5μm以内に設定されている。
チップ座(3)の該カッタ本体(2)の軸線(O)方向後方側には、該チップ(10)を該軸線(O)方向先端側へ突出させる微調整楔(6)と調整ねじ(7)が装着されている。前記微調整楔(6)に近接するボルト(8)は、該カッタ本体(2)にねじ込まれ、このボルト(8)の頭部の一部が前記微調整楔(6)の上方にオーバーハングするように配設され、該フライスカッタ回転時の遠心力および振動による前記微調整楔(6)の飛散を防止する。
従来、アルミニウム合金の仕上げフライスカッタに装着されるチップは、図1に示すチップと同様に、コーナ刃(14)およびワイパー刃(15)を設けたものがあった。しかし、この種のチップにおいて、アルミニウム合金と、耐摩耗性の高い鋳鉄等の材料とからなる被削材を仕上げ正面フライス加工する場合、コーナ刃(14)およびワイパー刃(15)の形状が加工面の表面あらさ、切れ刃(13)の寿命に大きな影響を及ぼすことが実験よりわかった。以下、本実施例のチップおよび比較従来チップを用いた実験について説明する。
本実施例のチップ(10)、比較従来チップともに、ワイパー刃(15)の曲率半径(R2)が300mmに設定され、該ワイパー刃(15)の外周側端部(15a)と内周側端部(15b)とのX方向(フライスカッタの径方向)の間隔(L1)は、3.3mmに設定される。そして、コーナ刃(14)の曲率半径(R1)は、本実施例のチップでは、1.6mmと2.0mmに設定され、比較従来チップでは、1.2mmに設定される。これらチップをそれぞれ上述した本実施例のカッタ本体(2)の全てのチップ座(3)に装着し、図12に示す部品(20)の上面(20a)の仕上げ正面フライス加工を行った。切削条件は、切削速度VcがVc=296m/min、切込みdがd=0.3mm、1回転当り送り量frがfr=2.7mm/rev、湿式切削(水溶性切削油剤を使用)であり、フライスカッタ(1)の回転方向(K)、送り方向(F)はそれぞれ図12の矢印K、矢印Fで示すとおりである。
上述の3種のチップを装着した各フライスカッタ(1)の切れ刃寿命は、該フライスカッタ(1)によって加工した部品(20)の上面(20a)の表面あらさにおける最大高さRyが表面あらさ規格である最大高さRy6.3μmを超えた時点の加工回数とした。表1に各チップを装着した各フライスカッタ(1)の切れ刃寿命(加工回数)およびその時点のコーナ刃(14)の逃げ面(13b)における最大逃げ面摩耗幅VNmaxを示す。この最大逃げ面摩耗幅VNmaxの測定箇所は図9に示すとおりである。
表1
Figure 2005111651
表1の実験No.1に示すように、コーナ刃(14)の曲率半径(R1)が1.2mmの比較従来チップを装着したフライスカッタでは、加工回数は120回にとどまった。この加工回数において、コーナ刃(14)には、チッピングが発生し、コーナ刃(14)の逃げ面最大摩耗幅VNmaxの平均値、最大値はそれぞれ0.15mm、0.16mmに達した。一方、コーナ刃(14)の曲率半径(R1)が1.6mmおよび2.0mmに設定された本実施例のチップ(10)では、表1の実験No.2、3に示すように、加工数は1200回以上と大幅に向上した。しかも1200回加工時のコーナ刃(14)には、チッピングがなく、VNmaxの平均値、最大値はそれぞれ0.09mm、0.10mmと大幅に減少した。
以上のことから、コーナ刃(14)の曲率半径(R1)が1.2mm以下の場合、コーナ刃(14)の早期チッピングにより刃先に凝着が生じ、比較的強度の低いアルミ部(21)の加工面に引っ掻き傷が生じ、加工面の表面あらさが早期に悪化するのに対し、曲率半径(R1)が1.6mm以上の場合、コーナ刃(14)のチッピング又は欠損がなくなり、加工面の表面あらさが長時間良好に維持される結果、長い切れ刃寿命が得られる。なお、前記曲率半径(R1)は5.0mmを超えると、切込み限界が小さくなるか、またはPCDが大型化し不経済になるおそれがあるので、前記曲率半径(R1)は5.0mm以下とするのが好ましい。
次に、チップのコーナ刃(14)の曲率半径(R1)は2.0mmに設定され、ワイパー刃(15)の曲率半径(R2)は、本実施例のチップ(10)では300mm、400mmに設定され、比較従来チップでは、200mmに設定される。また、該ワイパー刃(15)の外周側端部(15a)と内周側端部(15b)とのX方向(フライスカッタの径方向)の間隔(L1)は、4.0mmに設定される。これらチップをそれぞれ上述した本実施例のカッタ本体(2)の全てのチップ座(3)に装着した。そして、これらフライスカッタ(1)によって図13に示す部品(20)の上面(20a)の仕上げ正面フライス加工を行った。フライスカッタ(1)はK方向に回転し、矢印Fで示すとおり2回に分割して送られる。切削条件は、切削速度VcがVc=311m/min、切込みdがd=0.3mm、1回転当り送り量frがfr=3.1mm/rev、湿式切削(水溶性切削油剤を使用)である。上述の3種のチップを装着した各フライスカッタ(1)の切れ刃寿命の判定基準は、上述した実験と同様である。表2に各チップを装着した各フライスカッタ(1)の切れ刃寿命と加工面の目視による外観状況を示す。
表1の実験No.4に示すように、ワイパ−刃(15)の曲率半径(R2)が200mmに設定された比較従来チップでは、加工回数200回の時点でアルミ部(21)の加工面に引っ掻き傷(30)が生じ、この引っ掻き傷(30)が生じた箇所の表面あらさは規格値であるRy6.3μmを越えていた。一方、ワイパー刃(15)の曲率半径(R2)が300mm、400mmに設定された本実施例のチップ(10)では、表1の実験No.3、5に示すように、それぞれ1200回、1400回加工した時点でアルミ部(21)の加工面に引っ掻き傷(30)はなく表面あらさも規格値以内であった。しかも、加工面の平滑さについても向上し、加工面全体の平面度が向上するという結果が得られた。
以上のことから、ワイパー刃(15)は、該チップ(10)の上面(すくい面)に対向する方向からみたとき、円弧状をなし、前記円弧の曲率半径(R2)が300mm以上に設定されることによって、切削に関与する長さ(加工面との接触長さ)が十分長くなるとともに、前記円弧の最突出部(15c)と両端部(15a、15b)とのY方向(フライスカッタの軸線(O)方向)の段差が小さくなる。そのため、コーナ刃(14)の刃先の凝着によるアルミ部(21)の加工面に引っ掻き傷(30)が生じても、該ワイパー刃(15)によってこの引っ掻き傷(30)は確実に削り取られることになり、加工面の外観および表面あらさが大幅に向上する。前記曲率半径(R2)は500mmを超えると、切削に関与する長さが長くなりすぎて切削抵抗が高くなるおそれがあり、あるいは、該チップ(10)のカッタ本体(2)への取付精度の誤差によって、加工面の表面あらさの悪化を招くおそれがあるので、前記曲率半径(R2)は500mm以下とするのが好ましい。
本実施例のチップ(10)において、ワイパー刃(15)の外周側端部(15a)と内周側端部(15b)とのX方向(フライスカッタの径方向)の間隔(L1)は、該チップ(10)が装着されたフライスカッタ(1)の1回転当り送り量frの1.2倍以上に設定されるのが好ましい。そうすれば、1つの該チップ(10)のワイパー刃(15)によって加工面が形成されたとしても、加工面の平滑さが良好であり、表面あらさが向上且つ安定する。さらに前記間隔(L1)が、0.5〜10mmの範囲に設定されるのがより好ましい。これは、該チップ(10)を装着した該フライスカッタ(1)の現実的な1回転当り送り量は、およそ0.4〜8mm/revの範囲に設定されることから、前記間隔(L1)が0.5mm未満になると、加工面の表面あらさが悪化するおそれがあり、前記間隔(L1)が10mmを超えると、PCDが大型化するため不経済となってしまうからである。
本実施例のチップ(10)において、逃がし部(16)は、図1に示すように直線状をなし、該フライスカッタ(1)の軸線(O)とのなす角度(δ)が75〜87°の範囲に設定されるか、または、図5に示すように円弧状をなし、この円弧の曲率半径(R3)が1.6〜5.0mmの範囲に設定され、ワイパー刃(15)との交差部に角がないようになめらかにつながるのが好ましい。そうすれば、逃がし部(16)は、ワイパー刃(15)
に対してY方向(フライスカッタの軸線(O)方向)の逃げが付与されるので、加工面の表面あらさを劣化させず、しかも切削抵抗を増加させることがない。また、マシニングセンタ等の主軸にヒーリングが採用されていない工作機械において、逃がし部(16)の後刃切削時におけるチッピングや欠損、ならびに刃先への凝着がおさえられ、加工面にあやめ模様(31)が生じるのを防止する。
上述したように、主軸にヒーリングが採用されていないマシニングセンタ等の工作機械で使用する場合、逃がし部(16)は、後刃切削時に切削に関与する場合があるので、該逃がし部(16)における逃げ角(β)は、コーナ刃(14)およびワイパー刃(15)における逃げ角(β)と略同一且つ0〜35°の範囲に設定されるのが好ましい。そうすれば、該逃がし部(16)による後刃切削時の切削抵抗の増大が防止できる。一方、主軸にヒーリングが採用された正面フライス専用加工機等で仕上げフライス加工を行なう場合、該逃がし部(16)の切れ刃稜は、被削材に対してフライスカッタ(1)の軸線(O)方向に確実に逃がされ後刃切削を生じない。したがって、該逃がし部(16)における逃げ角(β)は、コーナ刃(14)およびワイパー刃(15)における逃げ角(β)よりも小さく且つ0〜25°、さらに好ましくは0〜17°、特に好ましくは0〜10°の範囲に設定される。そうすれば、該逃がし部(16)の強度が高められる。
また該逃がし部(16)で後刃切削する場合、該逃がし部(16)の外周側端部(16a)と内周側端部(16b)とのX方向(フライスカッタの径方向)の間隔(L2)、およびワイパー刃(15)の外周側端部(15a)と内周側端部(15b)とのX方向(フライスカッタの径方向)の間隔(L1)が大きく変動するのは、加工面の表面あらさの点で好ましくない。したがって、該チップ(10)は、コーナ刃(14)の外周側端部(14a)からワイパー刃(15)の内周側端部(15b)までの前記方向の間隔(L)を、例えば±0.07mm以下、好ましくは±0.05mm以下の厳しい公差で管理するのが好ましく、本実施例では前記公差は±0.05mmに設定されている。
本実施例のチップ(10)において、PCDからなる切れ刃は、ダイヤモンド含有率が92体積%〜98体積%の範囲が好ましい。また該PCDのビッカース硬度はHv8000〜12000の範囲にあるのが好ましい。該PCDのダイヤモンド含有率が92体積%未満または該PCDの硬度がHv8000未満になると、ライナー部を切削したときの切れ刃摩耗による切れ刃の鈍化とそれに伴う刃先への凝着が生じやすくなり、該PCDのダイヤモンド含有率が98体積%を超えるか、または該PCDの硬度がHv12000を超えると、結合相が不足しダイヤモンド粒子の脱落が生じやすくなり、切れ刃のチッピングや欠損が生じやすくなる。また、ダイヤモンド粒子の平均粒径は好ましくは4〜60μmの範囲、より好ましくは10〜60μmの範囲、特に好ましくは20〜60μmの範囲である。そうすれば、該PCDの硬度が十分高く、耐摩耗性が向上する。
チップ(10)の切れ刃(13)には、ホーニングを施さないのが好ましい。そうすれば該切れ刃を構成するコーナ刃(14)、ワイパー刃(15)、逃がし部(16)の切れ味が良好となり刃先の凝着がおさえられる。PCD(12)のダイヤモンド含有率が比較的高く、さらにダイヤモンド粒子の平均粒径が比較的大きい場合には、PCD(12)の靭性が不足するおそれがあるため、コーナ刃(14)とワイパー刃(15)と逃がし部(16)にわたり、これらの切れ刃稜に沿ってホーニングが設けられるのが好ましい。このホーニングの幅は、該チップのすくい面(13a)に対向する方向からみたとき、0.005〜0.03mmの範囲に設定されるとともに、ホーニング角度はすくい面(13a)に対して10〜30°の範囲に設定されることが好ましく、本実施例では、ホーニング幅は0.015mm、ホーニング角度は18°に設定されている。ホーニング幅が0.005mm未満またはホーニング角度が10°未満になると、刃先強度の改善効果が低いためチッピングや欠損を生じるおそれがあり、ホーニング幅が0.03mmを超えるかまたはホーニング角度が30°を超えると、刃先の鈍化により凝着が生じやすくなり加工面の表面あらさが劣化するおそれがある。
本実施例のチップ(10)において、切れ刃(13)は、図6に示すように逃げ面(13b)側から再研削されるとともに、切れ刃(13)形状が再研削の前後で同一であり、且つ該チップ(10)をカッタ本体(2)に装着したとき、該切れ刃(13)の該カッタ本体(2)の径方向の位置が再研削の前後で同一であることが好ましい。そうすれば、該切れ刃(13)の再研削前後においてはもちろんのこと、再研削量、再研削回数の異なるチップ(10)間において、該切れ刃(13)の外径寸法が変わらず、該チップ(10)が複数個装着された場合の該チップ(10)相互間の切れ刃(13)形状および刃先振れ精度が同一となるため、該チップ(10)の管理が非常に容易であるとともに切れ刃損傷量の安定化により再研削の有無にかかわらず安定して長い切れ刃寿命が得られる。
本実施例のフライスカッタ(1)において、該フライスカッタに装着される複数個のチップのうち少なくとも1個は、上述した本実施例のチップ(10)とされる。そして、該チップ(10)のワイパー刃(15)を該フライスカッタ(1)の軸線(O)方向先端側へ突出させることにより、前記ワイパー刃(15)によって加工面が形成されるので、良好な表面あらさが得られる。該チップ(10)の個数が増すにしたがい該チップ(10)の切れ刃(13)の損傷が軽減し、加工面においては良好な表面あらさが長時間維持される。したがって、該フライスカッタ(1)に装着される該チップ(10)の個数は、該フライスカッタ(1)に装着されるチップ個数の30%以上の整数以上であることがさらに好ましく、該フライスカッタ(1)に装着されるチップの全個数とされるのが特に好ましい
本実施例のフライスカッタ(1)において、チップ(10)の切れ刃(13)が逃げ面(13b)側から再研削されるとともに、切れ刃(13)形状が再研削の前後で略同一あり、且つ該切れ刃(13)の該フライスカッタ(1)の径方向の位置が再研削の前後で略同一であることが好ましい。そうすれば、該切れ刃(13)の再研削量、再研削回数が異なるチップ(10)間において、該切れ刃(13)の外径寸法が変わらず、該チップ(10)が複数個装着された場合のチップ(10)相互間の該切れ刃(13)形状および刃先振れ精度がほぼ同一となるため、該チップ(10)の管理が非常に容易であるとともに再研削の有無にかかわらず安定して長い切れ刃寿命が得られる。
本実施例のチップ(10)およびフライスカッタ(1)を用いて、アルミ部(21)とライナー部(22)とを共に仕上げ加工する場合、該フライスカッタ(1)は、中央部の取付穴(2d)によりアーバ又はアダプタ等を介して図示しない工作機械の主軸に装着される。そして、該フライスカッタ(1)は、軸線(O)を中心として矢印K方向に回転せしめられ、図12、図13に示す部品(被削材)(20)の加工面(21)に対して該軸線(O)方向に所定の切込みを与えられ、さらに該軸線(O)に直交する方向(F)に送りを与えられることにより、切削加工を行なう。
このとき、切削速度VcはVc=200〜500m/min、1刃当り送り量fzはfz=0.1〜0.3mm/刃、切込みdはd=0.01〜0.7mmの範囲に設定され、さらに、水溶性切削油剤を用いた湿式切削とされることが好ましい。切削速度Vcを500m/min以下とすることにより、ライナー部(22)切削時の切れ刃(13)、特にコーナ刃(14)は、熱的、機械的衝撃が軽減され、チッピングや欠損の発生がおさえられる。Vcが200m/min未満になると加工能率が低下するおそれがある。1刃当り送り量fzが0.1mm/刃未満でも同様に加工能率が低下するおそれがあり、そのうえ切れ刃(13)の擦り摩耗の増加により切れ刃寿命が低下するおそれがある。1刃当り送り量fzが0.3mm/刃を超えると、切れ刃(13)への機械的衝撃が高くなり、特にコーナ刃(14)のチッピングや欠損が生じやすくなる。切込みdが0.7mmを超えると、ライナー部(22)切削時の切れ刃(13)、特にコーナ刃(14)への熱的、機械的衝撃が高くなり、チッピングや欠損の発生が生じやすくなる。切込みdが0.01mm未満になると、例えば前工程、または、本実施例のチップ(10)とともに同一カッタ本体(2)に装着される他のチップによって粗加工された加工面の傷が、本実施例のチップ(10)による仕上げ加工で削り取れないおそれがある。水溶性切削油剤を用いた湿式切削では、切れ刃(13)への熱的衝撃が軽減され、チッピングや欠損が生じにくくなるとともに、刃先へのアルミ部(21)、ライナー部(22)の凝着がおさえられる。そのため、加工面の引っ掻き傷(30)およびあやめ模様(31)がおさえられ表面あらさが良好となり、しかも切れ刃寿命が向上する。
本発明に係るチップ(10)およびフライスカッタ(1)およびそれらを用いた加工方法は、以上に説明した実施例に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
本実施例に係るチップの正面図である。 図1に示すチップの右側面図である。 図1に示すチップの下面図である。 図1に示すチップの左側面図である。 他の実施例に係るチップの正面図である。 図1に示すチップの再研削後の正面図である。 本実施例に係るフライスカッタの正面図である。 図7に示すフライスカッタの要部下面図である 図7に示すフライスカッタの断面正面図である。 図7に示すフライスカッタの切削時における切れ刃と加工面の状態を示す図 図1に示すチップのコーナ刃の最大逃げ面摩耗幅VNmaxの測定箇所を示す図であり、(a)はすくい面側からみた図であり、(b)は逃げ面側からみた図である。 アルミ部とライナー部とからなる部品の模式図であり、(a)は正面図、(b)は 側面図、(c)は加工面の引っ掻き傷が生じたときの要部正面図であり、(d)はあやめ模様が生じたときの要部正面図である。 アルミ部とライナー部からなる部品の模式図であり、(a)は正面図であり、(b)は側面図、(c)は加工面の引っ掻き傷が生じたときの要部正面図である。 従来のアルミニウム合金切削用フライスカッタの斜視図である。
符号の説明
1 フライスカッタ
2 カッタ本体
10 チップ
11 基材
12 PCD
13 切れ刃
13a すくい面
13b 逃げ面
14 コーナ刃
15 ワイパー刃
16 逃がし部
20 部品(被削材)
20a 上面
21 アルミ部
22 ライナー部
30 引っ掻き傷
31 あやめ模様

Claims (14)

  1. フライスカッタに組込まれるチップにおいて、ダイヤモンド焼結体からなる切れ刃を備え、該チップの厚み方向の上面に対向する方向からみて、該切れ刃は、該フライスカッタの先端外周部に配設され外側に凸円弧状をなすコーナ刃と、該コーナ刃に連続するとともに該フライスカッタの内周側に延び外側に凸円弧状をなすワイパー刃と、該ワイパー刃に連続するとともに内周側に延びる直線状又は外側に凸円弧状をなす逃がし部とから構成され、円弧状をなす該コーナ刃の曲率半径(R1)が1.6〜5.0mmの範囲に設定され、さらに、円弧状をなす該ワイパー刃の曲率半径(R2)が300〜500mmの範囲に設定され、該コーナ刃と該ワイパー刃とがなめらかにつながれていることを特徴とするチップ。
  2. 該ワイパー刃の外周側端部と内周側端部との該フライスカッタの径方向の間隔が、該チップが装着される該フライスカッタの1回転当り送り量の1.2倍以上に設定されることを特徴とする請求項1に記載のチップ。
  3. 該ワイパー刃の外周側端部と内周側端部との該フライスカッタの径方向の間隔が、0.5〜10mmの範囲に設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチップ。
  4. 該逃がし部が直線状をなし、且つ該フライスカッタの軸線(O)とのなす角度(δ)が75〜87°の範囲に設定されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のチップ。
  5. 該逃がし部が円弧状をなし、且つ前記円弧の曲率半径(R3)が1.6〜5.0mmの範囲に設定され、該ワイパー刃となめらかにつながれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のチップ。
  6. 該逃がし部の切れ刃稜に連なる逃げ面の逃げ角は、該コーナ刃および該ワイパー刃の切れ刃稜に連なる逃げ面の逃げ角より小さく、且つ0〜25°の範囲に設定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のチップ。
  7. 該逃がし部の切れ刃稜に連なる逃げ面の逃げ角は、該コーナ刃および該ワイパー刃の切れ刃稜に連なる逃げ面の逃げ角と略同一、且つ0〜35°の範囲に設定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のチップ。
  8. 該切れ刃は、ダイヤモンドの含有率が92体積%〜98体積%の範囲とされたダイヤモンド焼結体からなり、さらにダイヤモンド粒子の平均粒径が4〜60μmの範囲とされ、該ダイヤモンド焼結体のビッカース硬度がHv8000〜12000の範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のチップ。
  9. 該切れ刃にはホーニングがないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のチップ。
  10. 該切れ刃には、該切れ刃の稜線に沿ってコーナ刃とワイパー刃と逃がし部にわたってホーニングが設けられ、該ホーニングの幅は、該チップの上面に対向する方向からみたとき0.005〜0.03mmの範囲に設定されるとともに、該ホーニングの角度は該チップの上面に対して10〜30°の範囲に設定されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のチップ。
  11. 該切れ刃が逃げ面側から再研削されるとともに、該チップの上面に対向する方向からみたとき、該切れ刃の形状が再研削の前後で略同一であり、且つ該切れ刃の該フライスカッタにおける径方向の位置が再研削の前後で略同一であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のチップ。
  12. 複数個のチップを備えたフライスカッタにおいて、複数個の前記チップのうち少なくとも1個が請求項1〜11のいずれか1項に記載のチップであることを特徴とするフライスカッタ。
  13. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のチップを装着するフライスカッタにおいて、該チップの切れ刃が逃げ面側から再研削されるとともに、該チップの上面に対向する方向からみたとき、該切れ刃の形状が再研削の前後で略同一あり、且つ該切れ刃の該フライスカッタにおける径方向の位置が再研削の前後で略同一であることを特徴とする請求項12に記載のフライスカッタ。
  14. 請求項12又は請求項13に記載のフライスカッタを用いた加工方法であって、切削速度VcをVc=200〜500m/min、1刃当り送り量fzをfz=0.1〜0.3mm/刃、切込みdをd=0.01〜0.70mmの範囲に設定し、さらに、水溶性切削油剤を用いた湿式切削としたことを特徴とする加工方法。
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