本発明は、車両の車輪の着脱作業に用いられる車輪着脱用治具において、車輪を支持する部分を上下方向についてフローティング支持するとともに横方向について移動可能に支持する構成を備えることにより、車輪の取付け作業に際しての車輪の位置合わせの容易化を図り、効率的な車輪の取付け作業を実現しようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態に係る車輪着脱用治具1は、図1に示すように、乗用車やトラック等の車両の車輪2の着脱作業に用いられるものである。車輪2は、ホイール3とホイール3のリムの外周に装着されたタイヤ本体4とからなるホイール組付体である。なお、本実施形態の車輪2は、乗用車用である。
車輪2の着脱作業としては、ジャッキアップされた車両の車軸5の端部に設けられたハブ6に対し、車輪2の着脱が行われる。ハブ6には、車軸5の回転軸を中心とする円周に沿って配設された複数本のハブボルト7が設けられており、これに対し、車輪2のホイール3側には、ハブボルト7を挿通させるための複数のボルト孔3aが設けられている。車輪2は、ホイール3のボルト孔3aを挿通したハブボルト7に、ホイールナットが螺合されることにより、ハブ6に固定されて装着される。なお、図示は省略するが、車輪2の固定構造としては、ハブ側に雌ネジ部が設けられ、ホイール3のボルト孔3aを介してハブ螺挿用のボルトをハブの雌ネジ部に螺挿することで車輪2を締結固定する構成のものもある。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について説明する。図2から図6に示すように、本実施形態に係る車輪着脱用治具1は、移動用の車輪11を有する移動台車部10上に、車輪2を立てた状態で軸心回りに回転可能に支持する車輪支持部20を所定の支持構造により支持する構成を備えた移動式の治具である。すなわち、車輪着脱用治具1は、車輪支持部20と、車輪支持部20を移動させる移動台部としての移動台車部10とを備え、工場等の作業現場において、移動台車部10により治具全体として移動可能に構成されている。
移動台車部10は、移動用の車輪11を支承する一対の支承台部12と、これら一対の支承台部12の間に架設され一対の支承台部12を互いに連結させる連結杆13とを有する。
支承台部12は、角パイプ状の部材により直線状に構成された支持棒体12aの両端部に、車輪11を支承する。つまり、移動台車部10においては、平面視で矩形状における四隅に対応する4箇所の位置に車輪11が設けられている。一対の支承台部12は、直線状の支持棒体12aの長手方向が互いに平行となるように配設されている。車輪11は、支持棒体12aの端部において、一対の支承台部12が互いに対向する方向(図5において左右方向)が回転軸方向となるように回転自在に支持されている。
連結杆13は、角パイプ状の部材により直線状に構成されており、一対の支承台部12間において支持棒体12aに対して垂直方向に横架され、一対の支承台部12を互いに繋ぐ。つまり、連結杆13は、一対の支承台部12とともに平面視で略「H」字状をなすように設けられている(図5参照)。
以上のように一対の支承台部12と連結杆13とを有する移動台車部10は、支承台部12の延設方向(図5における上下方向)を、車輪11による移動方向とする。そして、移動台車部10においては、その移動方向に沿う支承台部12の延設方向について、連結杆13は、支承台部12に対して一側寄りの位置にて架設されている。つまり、連結杆13は、支承台部12の長手方向の中央位置よりも支承台部12の一端部側(図5において上側)に寄った位置に設けられている。
本実施形態の車輪着脱用治具1では、移動台車部10において支承台部12の延設方向について連結杆13が中心位置に対して寄っている側(図5において上側)を後側とし、その反対側(図5において下側)を前側とする。すなわち、車輪着脱用治具1は、移動台車部10によって前後方向に移動可能に構成されている。また、本実施形態の車輪着脱用治具1では、一対の支承台部12間における連結杆13の架設方向を左右方向とする。
車輪支持部20は、前後方向を回転軸方向として回転自在に支承された一対のローラ21と、これら一対のローラ21を支持する支持フレーム体22とを有する。
ローラ21は、車輪2の幅方向の寸法と略同じ長さを有する細長いローラであり、車輪2を下側から支持するように設けられている。一対のローラ21は、互いに水平方向に対向するように互いに同じ高さ位置に設けられており、互いの間の間隔が車輪2の直径未満となるように配置されている。一対のローラ21は、車輪2の下側からタイヤ本体4の外周面の互いに異なる2箇所の位置に接触した状態で、車輪2を回転自在に載置支持する。
支持フレーム体22は、ローラ21を支持する一対の支持アーム23と、これら一対の支持アーム23を互いに連結させる前連結杆24および後連結杆25とを含む。
支持アーム23は、角パイプ状の部材により直線状に構成されたアーム体23aに、前後一対の支持部材23bを介してローラ21を支持する。一対の支持アーム23は、直線状のアーム体23aの長手方向を前後方向として互いに平行となるように配設されている。一対の支持アーム23は、各アーム体23aの一側の側面23cを互いに対向させており、この内側の側面23cに、一対の支持部材23bが設けられている。
支持部材23bは、板状の部材がL字状に屈曲した態様のL字金具であり、溶接やボルト固定等により、アーム体23aの側面23c側に固定される。支持部材23bは、L字状の一辺部をなす面部をアーム体23aに対する固定部とし、L字状の他の一辺部をなす面部を、板面が前後方向となるように側面23cに対して垂直状に突出させた状態で設けられる。一対の支持部材23bは、アーム体23aの側面23cから突出する面部同士を前後方向に対向させるように、前後方向について対称となるように設けられている。一対の支持部材23bのアーム体23aの側面23cからの一対の突出面部の間に、軸支部材23dによってローラ21が回転自在に支承されている。
前連結杆24および後連結杆25は、いずれも、角パイプ状の部材により直線状に構成されており、一対の支持アーム23間においてアーム体23aに対して垂直方向に横架され、一対の支持アーム23を互いに繋ぐ。前連結杆24および後連結杆25は、前後方向となる支持アーム23の長手方向に所定の間隔を隔てて互いに平行に配された状態で、支持アーム23の後端部間に架設されている。
したがって、前連結杆24および後連結杆25を一つの架設部分とした場合、一対の支持アーム23と、前連結杆24および後連結杆25とにより、平面視で前側が開放された略「コ」字状のフレーム体が構成される(図6参照)。そして、一対の支持アーム23の前連結杆24および後連結杆25による連結部分よりも前側のアーム部分に、それぞれローラ21が支持されている。
また、前連結杆24の中央部には、補助ローラ26が設けられている。補助ローラ26は、前連結杆24の下側の位置にて、前連結杆24を上下方向に貫通する軸支部26aによって上下方向を回転軸方向として支承されている。補助ローラ26は、前連結杆24の前面24aから一部を突出させるように設けられている(図5参照)。補助ローラ26は、一対のローラ21上に支持された車輪2の後面側に接触した状態で、一対のローラ21上に支持された車輪2の回転にともなって回転する。
以上のような車輪支持部20によれば、車輪2が、回転軸方向を前後方向として立った状態で一対のローラ21上に載置支持され、車輪着脱用治具1において仮想される所定の回転軸心を中心に回転可能に支持される。車輪2の回転にともない、車輪2を下側から支持する一対のローラ21、および車輪2の後側に当接した補助ローラ26が回転する。車輪支持部20は、平面視において、各支持アーム23の先端側の部分を除く大部分が、移動台車部10の連結杆13よりも前側の部分における左右の支承台部12間の範囲内に位置するように設けられている。
車輪着脱用治具1は、移動台車部10上に車輪支持部20を支持する支持構造として、昇降部30と、昇降機構部40と、昇降支持部50と、フローティング支持部60と、横移動支持部70とを備える。
昇降部30について説明する。昇降部30は、移動台車部10上に昇降可能に設けられた構成である。昇降部30は、移動台車部10上に立設された一対のガイド支柱31により、移動台車部10上における所定の位置での上下方向の移動、つまり昇降動作のガイドを受ける。
ガイド支柱31は、「コ」字状ないし「C」字状の横断面形状を有する溝形鋼(C形鋼)により構成されており、移動台車部10における支承台部12と連結杆13との連結部分の上に立設されている。つまり、ガイド支柱31は、連結杆13の両端部の支持棒体12aに対する連結部分の上に鉛直状に設けられている。かかるガイド支柱31の立設位置は、各支承台部12が支承する前後の車輪11の間に位置することとなる。
一対のガイド支柱31は、横断面形状における開放側を互いに対向させるように設けられている。一対のガイド支柱31の上端部間には、支持梁32が架設されている。支持梁32は、角パイプ状の部材の両端部がガイド支柱31の背面側に溶接やボルト等により固定されることで設けられている。一対のガイド支柱31と支持梁32により、門状のフレーム部分が構成されており、これに移動台車部10の連結杆13を加えて、矩形枠状のフレーム部分が構成されている。
昇降部30は、一対のガイド支柱31間に設けられる昇降本体部33と、昇降本体部33の両端部に設けられたスライド支持部34とを有する。昇降本体部33は、正方形状ないし矩形状の横断面形状を有する角パイプ状の部材により直線状に構成されており、一対のガイド支柱31間において水平方向に架設された態様で設けられている。昇降本体部33は、角パイプ状の外形における一側の側面を、上側に向け、昇降支持面30aとして水平面に沿わせている。
スライド支持部34は、昇降本体部33と比べて短い角パイプ状の部材により構成されたスライド体34aに、上下2つのガイドローラ34bを回転自在に支承した構成を備える。スライド支持部34は、スライド体34aの長手方向をガイド支柱31の長手方向に沿わせて、溝形鋼により構成されたガイド支柱31の内部に、ガイド支柱31に対して相対的に上下移動可能な状態で設けられている。スライド支持部34は、スライド体34aの矩形状の横断面形状を、ガイド支柱31の内部空間の横断面形状に対応させて、ガイド支柱31内に装入されている。
2つのガイドローラ34bは、スライド体34aの上端部および下端部それぞれの左右方向外側に支承されている。これら上下2つのガイドローラ34bは、スライド体34aの左右方向外側面から突出し、ガイド支柱31の左右方向外側の内面に接触するように設けられている。このように、スライド支持部34の2つのガイドローラ34bは、スライド体34aに対して上下両端部の左右方向外側の2箇所に配置されており、ガイド支柱31内におけるスライド支持部34の昇降動作にともなって回転する。このような構成により、昇降部30において、スライド体34aが上下2つのガイドローラ34bを介してガイド支柱31の左右方向外側で支持されるので、昇降部30のスムーズな昇降動作が実現される。なお、スライド体34aに対するガイドローラ34bの配置位置や個数等は特に限定されない。
一対のスライド支持部34は、左右方向に対称となるように構成されており、一対のスライド支持部34に対して、各スライド体34aの上下方向の略中央位置に、昇降本体部33が架設されている。昇降本体部33と一対のスライド支持部34は、上下方向にひしげた略「H」字状の態様をなし、昇降部30として、左右のガイド支柱31によりガイドされながら一体的に昇降する。つまり、一対のガイド支柱31は、昇降部30の昇降動作についてのガイドレールとして機能する。また、ガイド支柱31内に位置するガイドローラ34bにより、昇降部30の円滑な昇降動作が行われる。このように、昇降部30は、左右のスライド支持部34をガイド支柱31に対するガイド部分としてガイド支柱31内に位置させ、昇降本体部33を上下昇降可能に設けた構成である。
次に、昇降機構部40について説明する。昇降機構部40は、作業者等により所定の操作を受けることで、昇降部30を昇降させる。昇降機構部40は、一方の(図4における右側の)ガイド支柱31(31A)の背面側に設けられている。昇降機構部40は、昇降部30に作用して昇降部30を昇降させる昇降作用部としての回動アーム41と、作業者等による操作を受ける昇降操作部としての回転ハンドル42と、回転ハンドル42の操作により回動アーム41を動作させるための連動機構部とを有する。
回動アーム41は、そのアーム形状の一端部を構成する基部41aと、基部41aから延出された細長い板状のアーム部41bとを有する(図4参照)。回動アーム41は、基部41aを、ガイド支柱31Aの背面側に設けられた下軸支部43に支持させることで、前後方向を回動軸方向として回動可能に設けられている(図4参照)。
下軸支部43は、ガイド支柱31Aにおいて、ガイド支柱31Aの下部であって、昇降部30を構成するスライド支持部34よりも上方の高さ位置に設けられている。この下軸支部43に基部41a側が支持された回動アーム41は、アーム部41bの先端部を、昇降部30を構成する昇降本体部33の中間部に支持させている。したがって、回動アーム41は、下軸支部43から左右中央部側に斜め下方向に延出された態様で設けられている。
回動アーム41のアーム部41bの先端部は、昇降本体部33の長手方向の中間部に設けられたスライド軸支部44により、昇降本体部33に対して前後方向を回動軸方向として回動可能に軸支されている。スライド軸支部44は、昇降本体部33の長手方向の中央部からややガイド支柱31A側寄りの位置に穿設された長孔33aを貫通した状態で設けられている(図4参照)。長孔33aは、左右方向となる昇降本体部33の延設方向を長手方向とする孔であり、スライド軸支部44の昇降本体部33に対する左右方向の相対移動を許容する。
このような構成において、回動アーム41が下軸支部43を支点として回動することで、スライド軸支部44が下軸支部43を中心とする円弧に沿って上下に移動する。このスライド軸支部44の上下動の移動により、昇降本体部33を介して昇降部30が昇降動作する。スライド軸支部44の左右方向の動作は、長孔33aによって昇降本体部33に対する相対動作として許容される。
回転ハンドル42は、環状の把持部42aを有する回転操作部であり、ガイド支柱31Aの上端部近傍に設けられた上軸支部45により、前後方向を回転軸方向として回転可能に設けられている。上軸支部45は、回動アーム41を支持する下軸支部43の鉛直上方に位置する。上軸支部45は、ガイド支柱31Aを前後方向に貫通するように設けられている。
昇降機構部40は、回転ハンドル42の操作により回動アーム41を動作させるための連動機構部の構成要素として、回動アーム41を支持する下軸支部43と同軸配置された従動スプロケット46と、回転ハンドル42を支持する上軸支部45と同軸配置された駆動スプロケット47と、従動スプロケット46および駆動スプロケット47に巻回された無端状のチェーン48とを有する。
従動スプロケット46は、回動アーム41と連動するように、下軸支部43において前後方向を回転軸方向として回転可能に設けられている。つまり、従動スプロケット46が回転することにより、回動アーム41が回動する。下軸支部43は、減速機構によって、従動スプロケット46の回転を減速させて回動アーム41に伝達する。従動スプロケット46の数回転が、回動アーム41の、下軸支部43を起点に斜め下方向を向く回動位置からスライド軸支部44を上昇させて略水平方向となる回動位置までの回動動作に対応する。
駆動スプロケット47は、回転ハンドル42と一体的に回転するように、上軸支部45において前後方向を回転軸方向として回動可能に設けられている。昇降機構部40の連動機構部は、駆動スプロケット47を従動スプロケット46に比べて小径とし、駆動スプロケット47のトルクを抑え、小さな回転操作力によって従動スプロケット46を回転させることができるように構成されている。
昇降機構部40の連動機構部においては、従動スプロケット46の回転を回動アーム41に伝達する歯車機構部49が設けられている。歯車機構部49は、従動スプロケット46の軸回転の入力を受け、その回転を減速させて回動アーム41に伝達させるとともに、その回動位置を無段階で保持する。歯車機構部49としては、例えば、外歯歯車と内歯歯車の噛合を利用したいわゆるタウメル式のリクライニング装置において採用されている歯車機構が用いられる。かかる歯車機構は、公知の技術であるため、その詳細な説明については省略するが、概略的には、例えば次のような構成を備える。
図7に示すように、歯車機構部49は、従動スプロケット46と一体的に回動する入力軸46aを中央部に挿嵌させる。歯車機構部49は、ガイド支柱31A側に固定される外歯歯車101と、回動アーム41の基部41a側に固定される内歯歯車102とを有する。外歯歯車101の外歯101aと内歯歯車102の内歯102aとが互いに噛合する。内歯歯車102の内歯102aの歯数は、外歯歯車101の外歯101aの歯数よりも多い(例えば1つ多い)。入力軸46aの回転によって、内歯歯車102が外歯歯車101の軸を中心に噛合部位を変えながら相対的に揺動回転し、回動アーム41が無段階に回動する。
外歯歯車101の中央部には、円形の凹陥部101bが形成されており、内歯歯車102の中央部には、凹陥部101bより小径の円筒部102bが設けられている。外歯101aと内歯102aが噛合した状態において、凹陥部101bの中心に対して、円筒部102bの中心は偏心した位置に位置する。
凹陥部101bと円筒部102bとの間の偏心環状空間には、一対の楔部材103,104が介装されている。一対の楔部材103,104は、円環状のばね105により、凹陥部101bと円筒部102bとの間に楔を打ち込む方向に付勢されている(矢印A1,A2参照)。また、偏心環状空間における一対の103,104の間には、また、入力軸46aと一体的に回動して楔を押圧する部分であるロック解除カム部46bが介装されている。
このような構成により、歯車機構部49の自然状態においては、ばね105の付勢力による一対の楔部材103,104の楔作用によって、凹陥部101bと円筒部102bが押圧される。これにより、外歯歯車101と内歯歯車102の噛合部位において外歯101aと内歯102aとが互いに圧接し、外歯歯車101と内歯歯車102の相対回転、つまり従動スプロケット46の回転が規制される。
一方、従動スプロケット46の回転によって入力軸46aが回転することで、ロック解除カム部46bにより、一方の楔部材103(または104)が押圧され、押圧された楔部材103(または104)が、偏心環状空間における狭い領域から広い領域に向かう方向、つまり楔を引き抜く方向に移動する。この楔部材103(または104)の移動により、ばね105を介して他方の楔部材104(または103)が、ロック解除カム部46bに押圧された楔部材103(または104)と同じ回転方向に移動する。ここで移動する他方の楔部材104(または103)は、偏心環状空間における広い領域から狭い領域に向けて移動し、凹陥部101bと円筒部102bを介して、内歯歯車102を外歯歯車101に対して偏心させつつ回転させる。これにより、回動アーム41が回動する。
以上のような構成を備えた昇降機構部40によれば、図4に示す背面視で、回転ハンドル42を時計方向(矢印B1参照)に回転操作することにより、駆動スプロケット47およびチェーン48を介して従動スプロケット46が時計方向に回転する。これにより、入力軸46aが回転し、上述した歯車機構部49を介して、回動アーム41が下軸支部43を中心として時計方向に回動する(矢印B2参照)。この回動アーム41の回動にともない、昇降部30が上昇する。
一方、回転ハンドル42を反時計方向(矢印B3参照)に回転操作することにより、駆動スプロケット47およびチェーン48を介して従動スプロケット46が反時計方向に回転する。これにより、入力軸46aが回転し、上述した歯車機構部49を介して、回動アーム41が下軸支部43を中心として反時計方向に回動する(矢印B4参照)。この回動アーム41の回動にともない、昇降部30が下降する。
このような昇降機構部40による昇降部30の昇降操作においては、回転ハンドル42の回動操作を止めることで、歯車機構部49による制動作用によって、回動アーム41の回動位置、つまり昇降部30の昇降位置は自動的に保持される。つまり、車輪2を支持した状態の車輪着脱用治具1において、回転ハンドル42が操作されない限り、昇降部30の高さ位置は固定となる。以上のような昇降機構部40による昇降部30の昇降動作の動作ストロークは、例えば30cm程度である。
次に、昇降支持部50について説明する。昇降支持部50は、移動台車部10上に昇降可能に設けられている。昇降支持部50は、昇降部30の上方に設けられている。
昇降支持部50は、一対のガイド支柱31により、移動台車部10上における所定の位置での上下方向の移動、つまり昇降動作のガイドを受ける。昇降支持部50は、一対のガイド支柱31間に設けられる昇降本体部53と、昇降本体部53の両端部に設けられたスライド支持部54とを有する。昇降本体部53は、正方形状ないし矩形状の横断面形状を有する角パイプ状の部材により直線状に構成されており、一対のガイド支柱31間において水平方向に架設された態様で設けられている。昇降本体部53は、角パイプ状の外形における一側の側面を、下側に向け、昇降部30の昇降支持面30aに対向する支持面50aとして水平面に沿わせている。
スライド支持部54は、昇降本体部53と比べて短い角パイプ状の部材により構成されたスライド体54aに、上下2つのガイドローラ54bを回転自在に支承した構成を備える。スライド支持部54は、スライド体54aの長手方向をガイド支柱31の長手方向に沿わせて、ガイド支柱31に対して相対的に上下移動可能な状態でガイド支柱31の内部に設けられている。スライド支持部54は、スライド体54aの矩形状の横断面形状を、ガイド支柱31の内部空間の横断面形状に対応させて、ガイド支柱31内に装入されている。
2つのガイドローラ54bのうちの一方は、スライド体54aの上端部の前側に支承されている。この上側のガイドローラ54bは、スライド体54aの前面から突出し、ガイド支柱31の前側の内面に接触するように設けられている。また、2つのガイドローラ54bのうちの他方は、スライド体54aの下端部の後側に支承されている。この下側のガイドローラ54bは、スライド体54aの後面から突出し、ガイド支柱31の後側の内面に接触するように設けられている。このように、スライド支持部54の2つのガイドローラ54bは、スライド体54aに対して対角の位置となる上前側と下後側の2箇所に配置されており、ガイド支柱31内におけるスライド支持部54の昇降動作にともなって回転する。このような構成により、後述のとおり横移動支持部70を介して前側で車輪支持部20および車輪2の荷重を受ける昇降支持部50において、ガイド支柱31内で前傾する方向の作用を受けるスライド体54aが上下2つのガイドローラ54bを介してガイド支柱31の前側および後側の両側で支持されるので、昇降支持部50のスムーズな昇降動作が実現される。なお、スライド体54aに対するガイドローラ54bの配置位置や個数は特に限定されない。
一対のスライド支持部54は、左右方向に対称となるように構成されており、一対のスライド支持部54に対して、各スライド体54aの上下方向の中間部(やや下側よりの位置)に、昇降本体部53が架設されている。昇降本体部53と一対のスライド支持部54は、上下方向にひしげた略「H」字状の態様をなし、昇降支持部50として、左右のガイド支柱31によりガイドされながら一体的に昇降する。つまり、一対のガイド支柱31は、昇降支持部50の昇降動作についてのガイドレールとして機能する。また、ガイド支柱31内に位置するガイドローラ54bにより、昇降支持部50の円滑な昇降動作が行われる。このように、昇降支持部50は、左右のスライド支持部54をガイド支柱31に対するガイド部分としてガイド支柱31内に位置させ、昇降本体部53を上下昇降可能に設けた構成である。
昇降支持部50は、後述する横移動支持部70を介して、車輪支持部20を支持する。また、昇降支持部50は、後述するフローティング支持部60を介して、昇降部30とともに昇降する。昇降支持部50は、昇降部30の上方において、昇降部30とは独立した昇降動作が可能に設けられている。
続いて、フローティング支持部60について説明する。フローティング支持部60は、昇降支持部50を昇降部30に対して上下方向についてフローティング支持する。
本実施形態の車輪着脱用治具1においては、フローティング支持部60は、上下方向を伸縮方向として設けられる弾性体としてのコイルばね61の弾性力により昇降支持部50をフローティング支持する。そして、昇降部30には、コイルばね61を支持可能な弾性体支持部としてのばね支持筒62が複数設けられている。
ばね支持筒62は、円筒状の部分であり、昇降部30の昇降本体部33により形成される昇降支持面30a上に立設されている。ばね支持筒62は、昇降支持面30aの幅に納まる外径を有する。本実施形態では、左右方向に等間隔に3本のばね支持筒62が設けられている。
コイルばね61は、ばね支持筒62の外側に装着された状態で設けられている。つまり、コイルばね61は、ばね支持筒62を貫通させた状態で設けられている。コイルばね61は、ばね支持筒62に対して遊嵌されており、ばね支持筒62に支持された状態で、上下方向の力を受けることで伸縮する。図2から図5に示す例では、3本のばね支持筒62のうち、左右両側の2本のばね支持筒62に、コイルばね61が装着されている。
ばね支持筒62に支持されたコイルばね61は、上述したように上下方向に互いに対向する昇降部30の昇降支持面30aと昇降支持部50の支持面50aとの間に介装された態様となる。つまり、ばね支持筒62に装着されたコイルばね61の下端は、昇降支持面30aに接触した状態で支持され、同コイルばね61の上端は、支持面50aに接触した状態で支持される。
支持面50aにより下側からコイルばね61の弾性力を受ける昇降支持部50は、ばね支持筒62に対して上下方向に相対移動可能に設けられている。つまり、昇降支持部50は、昇降本体部53において下側からコイルばね61の弾性力を受けながら、ばね支持筒62の干渉を受けることなく昇降する。
具体的には、昇降支持部50の昇降本体部53には、ばね支持筒62に対応する位置に、上下方向に貫通するガイド孔53aが穿設されており、ばね支持筒62の上端部が、ガイド孔53aを上下方向に貫通している。ばね支持筒62の上端部は、ガイド孔53aを介して昇降本体部53の上面53bからわずかに突出している。ばね支持筒62は、ガイド孔53aにより昇降本体部53を上下に貫通することで、昇降支持部50の昇降動作についてのガイド棒の態様で昇降支持部50に対して相対移動する。
このような構成によれば、昇降支持部50は、ばね支持筒62に装着されたコイルばね61の弾性力によって、フローティング状態で支持される。つまり、昇降支持部50は、その昇降動作についてばね支持筒62の干渉を受けることなく、所定の高さ位置に保持された昇降部30に対して、コイルばね61の弾性力を受けて上下方向について浮動状態で支持される。したがって、コイルばね61は、車輪2を支持した状態の車輪着脱用治具1において、昇降支持部50をフローティング状態で支持することができる程度の弾性力を有する。
次に、横移動支持部70について説明する。横移動支持部70は、車輪支持部20を昇降支持部50に対して横方向に移動可能に支持する構成である。横移動支持部70は、昇降支持部50の昇降本体部53に対して支持アーム部73を介して水平方向に支持されるガイド筒71と、ガイド筒71に水平移動可能に挿入されるとともに車輪支持部20を支持するスライドバー72とを有する。
ガイド筒71は、正方形状ないし矩形状の横断面形状を有する角パイプ状の部材により直線状に構成された角筒状の部分であり、長手方向に貫通する横断面矩形状の細長い空間を形成する。ガイド筒71は、左右一対の支持アーム部73によって、長手方向が水平方向となるように、昇降本体部53に対して支持されている。
支持アーム部73は、図6に示すように、昇降本体部53の前面53cから水平前方に突出する水平部73aと、水平部73aの前端部から下方に垂設された垂下部73bとを有し、側面視で略「L」字状の形状を有する。支持アーム部73を構成する水平部73aおよび垂下部73bは、いずれも角パイプ状の部材により構成されている。本実施形態では、左右の支持アーム部73は、昇降本体部53に対し、左右方向について、左右のばね支持筒62用のガイド孔53aの位置よりも両外側の位置に設けられている。
支持アーム部73は、その垂下部73bの下端がガイド筒71の上面71aに溶接等によって固定されることで、ガイド筒71に固定される。一対の支持アーム部73は、ガイド筒71の両端部を支持する。一対の支持アーム部73により、ガイド筒71は、昇降本体部53に対して前側下方の位置に支持される。このように、ガイド筒71は、左右一対の支持アーム部73により、昇降本体部53に対して一体的に支持される。
スライドバー72は、正方形状ないし矩形状の横断面形状を有する角パイプ状の部材により構成された中空状のバー本体72aに、複数のローラ74を回転自在に支承した構成を備える。バー本体72aは、ガイド筒71よりも長い寸法を有し、スライドバー72は、ガイド筒71に挿入された状態で、その両端側の部分をガイド筒71から突出させる。
ローラ74は、バー本体72aの内部に設けられるとともに、バー本体72aの側面部に形成された矩形状の開口部72bを介して側面部から一側の端部を突出させるように設けられている。ローラ74は、スライドバー72のスライド方向に対応して回転するように、バー本体72aの壁面部に支承される。すなわち、複数のローラ74のうち、バー本体72aの上面部および下面部から一部を突出させるローラ74Aは、前後方向を回転軸方向として支承されており、バー本体72aの前面部および後面部から一部を突出させるローラ74Bは、上下方向を回転軸方向として支承されている。
本実施形態では、バー本体72aの各側面部に対して2個のローラ74が設けられており、スライドバー72全体で計8個のローラ74が設けられている。8個のローラ74は、互いに干渉しないようにバー本体72aの長手方向について互いに異なる位置に配置されている。
このように、本実施形態では、スライドバー72を構成するバー本体72aの4つの全ての側面部に対してローラ74が設けられている。したがって、ガイド筒71にスライドバー72が挿入された状態において、バー本体72aの各側面部に対応して設けられたローラ74は、その側面部が対向するガイド筒71の内側面に接触し、スライドバー72のガイド筒71に対する左右方向のスライド移動にともなって回転する。つまり、複数のローラ74は、スライドバー72のスライド移動についてガイドローラとして機能し、スライドバー72のスライド移動を円滑なものとする。なお、バー本体72aに対するローラ74の配置位置や個数等は特に限定されない。
以上のようにガイド筒71に対してスライド移動するように設けられたスライドバー72の、ガイド筒71からの両側の突出部分72cに、車輪支持部20が固定される。なお、スライドバー72において、複数のローラ74は、スライドバー72のガイド筒71に対する相対移動の範囲においてガイド筒71内に位置する部分に設けられている。
車輪支持部20は、スライドバー72の下側に固定される。車輪支持部20は、一対の支持アーム23と前連結杆24および後連結杆25とにより構成される前側開放の略「コ」字状のフレーム体において、左右両側の後端角部分において、スライドバー72の突出部分72cの固定を受ける。車輪支持部20の後端角部分には、ガイド筒71の下面部の厚さに対する矩形板状のスペーサ75が設けられており、このスペーサ75を介して、車輪支持部20がスライドバー72の突出部分72cに固定される。
車輪支持部20は、スライドバー72の左右の突出部分72cそれぞれに対して2本のボルト76、計4本のボルト76によって、スライドバー72に固定されている。ボルト76は、上方からスライドバー72の突出部分72cを貫通し、スペーサ75を介して後連結杆25に螺挿される。このため、スライドバー72の突出部分72c、スペーサ75、および後連結杆25には、それぞれボルト76の螺挿用の孔部が形成されている。
以上のようにして、横移動支持部70により、車輪支持部20が、昇降支持部50に対して左右方向にスライド移動可能に支持される。
以上のような構成を備えた本実施形態の車輪着脱用治具1においては、図6において分解斜視図で示す構成、すなわち、昇降支持部50、これに一対の支持アーム部73を介して支持されるガイド筒71、スライドバー72、および車輪支持部20が、フローティング支持部60によって一体的にフローティング状態で支持される部分となる。つまり、これらの構成は、車輪支持部20に車輪2がセットされた状態において、昇降部30に対して上下方向について一体的にフローティング状態で支持される。このフローティング支持状態は、セット状態の車輪2を上側から押すことで、コイルばね61の弾性力によって、車輪2がフローティング部分とともに跳ね返り上下方向に揺動するような態様の支持状態となる。なお、本実施形態の車輪着脱用治具1は、昇降部30を昇降させる昇降機構部40を除き、全体として左右方向について略対称に構成されている。
本実施形態の車輪着脱用治具1において、フローティング支持部60による上下方向の移動範囲は、数十mm程度(例えば、10〜20mm程度)である。このフローティング支持部60による上下方向の移動範囲においては、車輪2を支持した上述のフローティング部分が浮揚状態となり、かかる部分についての上下方向の移動がコイルばね61の弾性力によってサポートされ、軽い力での移動が可能となる。また、横移動支持部70による車輪支持部20の横方向のスライド移動範囲は、数十mm程度(例えば、10〜20mm程度)である。
本実施形態の車輪着脱用治具1を用いた車輪2の取付け作業について説明する。まず、車輪着脱用治具1において、車輪支持部20の一対のローラ21上に車輪2を載置支持させてセットする。車輪2をセットした車輪着脱用治具1を、移動台車部10により移動させ、ジャッキアップされた車両の車軸に近付け、移動台車部10による治具全体の移動と、昇降機構部40による昇降部30の昇降動作によって、車軸の位置に対する車輪2の軸心位置の大まかな位置合わせを行う。
車輪2をセットした車輪着脱用治具1においては、車輪2を支持したフローティング部分が浮揚状態で上下方向に数十mm程度のストロークで移動可能である(図3、矢印C1参照)。また、車輪支持部20は、横移動支持部70によって左右方向について数十mm程度のストロークでスライド移動可能である(図3、矢印C2参照)。つまり、車輪2の支持位置について、上下・左右方向について数十mm程度の範囲で自由度が得られる。
そこで、車輪2の大まかな位置合わせの後、フローティング支持部60による上下移動と、横移動支持部70による左右移動と、一対のローラ21による軸心回りの回転とにより、車輪2のホイール3のボルト孔3aを、車軸5の端部のハブボルト7の位置に合わせる細かい位置合わせを行い、車輪2を前進させて、ボルト孔3aにハブボルト7を挿通させる。そして、ホイール3のボルト孔3aを挿通したハブボルト7に、ホイールナットをハブボルト7に螺合することにより、車輪2がハブ6に固定されて装着される。なお、上述したようにハブ側に雌ネジ部が設けられる構成においては、ホイール3のボルト孔3aをハブの雌ネジ部の位置に合わせる細かい位置合わせを行い、車輪2を前進させて、ボルト孔3aにハブ螺挿用のボルトを挿通させてハブの雌ネジ部に螺挿することにより、車輪2がハブに締結固定されることになる。
上述の細かい位置合わせでの上下方向の位置合わせに関し、例えば、車輪2の位置が目標の位置よりも若干高い位置にある場合は、コイルばね61の付勢力に抗して車輪2を押さえ付けることで位置を合わせ、車輪2を前進させてボルト孔3aにハブボルト7またはハブ螺挿用のボルトを挿通させる。車輪2はフローティング状態で支持されていることから、車輪2を上から押さえ付けることで容易に車輪2を下降させることができる。一方、車輪2の位置が目標の位置よりも若干低い位置にある場合は、コイルばね61の付勢力をサポート力として車輪2を持ち上げることで位置を合わせ、車輪2を前進させてボルト孔3aにハブボルト7またはハブ螺挿用のボルトを挿通させる。車輪2はフローティング状態で支持されていることから、車輪2に持ち上げる方向の力を作用させることで容易に車輪2を上昇させることができる。
以上のような本実施形態に係る車輪着脱用治具1によれば、車輪2の位置合わせを容易に行うことができ、車輪2の取付け作業の作業性を向上することができる。
本実施形態の車輪着脱用治具1によれば、車輪支持部20上にセットされた車輪2について、昇降機構部40により操作される昇降部30の昇降動作による大まかな高さ位置の調整と、車輪支持部20の一対のローラ21による車輪2の回転による回転位置の調整とに加え、フローティング支持部60および横移動支持部70により、上下・左右方向の位置について例えば数十mmの範囲での微調整を行うことができる。すなわち、本実施形態の車輪着脱用治具1によれば、車輪2は、フローティング支持部60および横移動支持部70それぞれによる動作ストローク分、上下・左右方向についていわば遊びをもって支持されている状態となることから、昇降機構部40による大まかな位置調整と、フローティング支持部60および横移動支持部70を用いた細かい位置調整との2段階の位置調整が可能となる。
したがって、昇降機構部40による大まかな位置調整で仮に車輪2の位置が目標の位置に対してずれていたとしても、治具全体を移動させることなく、軽い力で容易に最終的な位置合わせを行うことが可能となる。このように、本実施形態の車輪着脱用治具1によれば、簡単な構成により、熟練を要することなく、車輪2の正確かつ迅速な取付け作業が可能となる。また、車輪2の位置合わせの正確性が向上することから、ハブボルト7またはハブの雌ネジ部に対するボルト孔3aの位置ずれによってハブボルト7がホイール3の裏側の面に接触し、あるいはハブ螺挿用のボルトがハブの雌ネジ部以外の部分に接触し、ホイール3またはハブの損傷が生じるといった不具合を容易に回避することができる。
また、本実施形態の車輪着脱用治具1においては、フローティング支持部60を構成するばね支持筒62が複数本(3本)設けられており、図2から図5に示す例では、3本のうち左右両側の2本のばね支持筒62のみにコイルばね61が装着されている。そこで、例えば、車輪2として、中型トラック用の車輪などの、乗用車用の車輪に対して比較的重い車輪を用いる場合は、左右両側のばね支持筒62に加えて、中央のばね支持筒62にもコイルばね61を装着することができる。
具体的には、図8に示すように、車輪着脱用治具1において、昇降支持部50は、昇降本体部53にばね支持筒62を貫通させてコイルばね61上に載置された状態で支持されているため、一対のガイド支柱31によりガイドされた状態で、そのまま持ち上げることができる(矢印D1参照)。昇降支持部50を持ち上げることで、昇降部30に対して昇降支持部50が上昇し、ばね支持筒62が昇降本体部53から抜けてばね支持筒62の上端側が開放された状態となり、ばね支持筒62に対して上側からコイルばね61の着脱が可能な状態となる。かかる状態において、3本のばね支持筒62のうちの中央のばね支持筒62に、別途準備しているコイルばね61Aを装着する(矢印D2参照)。
このように、本実施形態の車輪着脱用治具1において、フローティング支持部60は、複数のばね支持筒62を有しており、各ばね支持筒62に対するコイルばね61の着脱が可能に構成されており、車輪2の重量に応じて、装着するコイルばね61の本数が適宜調整される。すなわち、本実施形態の車輪着脱用治具1によれば、フローティング支持部60を構成するコイルばね61を着脱可能な複数のばね支持筒62を有することから、コイルばね61の本数や種類(ばね定数)を容易に調整することができる。これにより、コイルばね61の本数やコイルばね61自体を替えることで、対応可能な車輪2の重量の範囲を広げることができるので、例えば、乗用車用の車輪2から大型トラック用の車輪2まで等の広い範囲での適用が可能となり、支持対象である車輪2についての汎用性を向上することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について、図9および図10を用いて説明する。なお、第1実施形態と共通する部分については同一の符号を用いて説明を省略する。
図9および図10に示すように、本実施形態に係る車輪着脱用治具1Aは、セットされた車輪2が倒れることを防止するための倒れ防止バー80を備える点で、第1実施形態の車輪着脱用治具1と異なる。倒れ防止バー80は、車輪2に当接することで、車輪支持部20に支持された車輪2が倒れることを規制する傾倒規制部を構成する。
図9および図10に示すように、倒れ防止バー80は、略「コ」字状ないし略「U」字状に屈曲形成された棒状の部材であり、セットされた状態の車輪2に対して左右一側の部分に後側から前側に回り込むように設けられる。つまり、倒れ防止バー80は、平面視で略「コ」字状の屈曲形状が表れるように設けられ、その屈曲形状における一方の端部側の辺部を、セットされた状態の車輪2の前側にて水平方向に位置させる。この車輪2の前側に位置する辺部が、倒れ防止バー80において、車輪当接部81として、車輪2に当接することで、セットされた状態の車輪2が前側に傾倒することを規制する。
倒れ防止バー80は、一対のガイド支柱31のうち、昇降機構部40が設けられる側と反対側のガイド支柱31Bに着脱可能に支持された状態で設けられている。倒れ防止バー80は、車輪当接部81側と反対側の端部が、ガイド支柱31Bに設けられたバー支持部82に支持される。
バー支持部82は、上側開口の筒状に構成されており、ガイド支柱31Bの上下方向の中間部において左右方向の外側の側面に固定された状態で設けられている。これに対し、倒れ防止バー80においては、車輪当接部81側と反対側の端部に、略「コ」字状の屈曲形状をなす部分に対して垂直方向に屈曲形成された挿入支持部80aが形成されている。倒れ防止バー80は、挿入支持部80aをバー支持部82に対して上側から挿入させることで、ガイド支柱31Bに支持される。したがって、倒れ防止バー80は、略「コ」字状の屈曲形状をなす部分として、バー支持部82に挿入支持される挿入支持部80aから左右方向外側(図10において右側)への延出部分となる後側辺部80bと、後側辺部80bからの前側への延出部分となる外側辺部80cと、外側辺部80cの前端部からの左右方向内側(図10において左側)への延出部分とを有し、かかる前側の左右方向内側への延出部分が車輪当接部81となる。
また、バー支持部82においては、上側を開放側とする切欠き状の係止凹部82aが形成されており、倒れ防止バー80においては、挿入支持部80aに、係止凹部82aに係合する係止ピン80dが突設されている。このような構成により、挿入支持部80aがバー支持部82に上側から挿入されるとともに係止ピン80dが係止凹部82aに係合することで、ガイド支柱31に固定された状態で設けられたバー支持部82に対して軸支の態様で支持された倒れ防止バー80のバー支持部82に対する相対回動が規制され、倒れ防止バー80が車輪当接部81を車輪2の前側に位置させる状態が維持される。
また、図9および図10に示すように、車輪着脱用治具1においては、倒れ防止バー80の未使用時において、倒れ防止バー80を引っ掛けておくためのフック84が設けられている。フック84は、昇降支持部50を構成する昇降本体部53の後面側において、左右両側の2箇所の位置に設けられている。フック84は、昇降本体部53の後面から後方に延出する部分と、かかる部分の後端部から上方に屈曲する部分とにより略「L」字状をなす屈曲棒状の部分である。このフック84に対し、倒れ防止バー80は、後側辺部80bおよび車輪当接部81を両フック84の左右外側において下方に向けるように、直線状の中間部分である外側辺部80cを係止させた状態で引っ掛けられる。そして、倒れ防止バー80は、セットする車輪2の種類や大きさ等によって、必要に応じて、バー支持部82に装着されて使用される。
以上のように、倒れ防止バー80を備えた本実施形態の車輪着脱用治具1Aによれば、車輪2が前側に倒れることを防止することができる。これにより、車輪2の着脱作業の作業性の向上を図ることができる。また、セットする車輪2の種類や大きさ等の適用範囲を広げることができ、汎用性を向上させることができる。特に、車輪2が、ホイールが内側にオフセットしている構成のものである場合、内側(前側)に倒れやすくなるため、倒れ防止バー80によって車輪2が倒れることを効果的に防止することが可能となる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について、図11を用いて説明する。なお、第1実施形態と共通する部分については同一の符号を用いて説明を省略する。また、図11においては一部の構成の図示を省略している。
図11に示すように、本実施形態に係る車輪着脱用治具1Bは、フローティング支持部として、コイルばね61を用いた構成の代わりに、エアシリンダ90を備えた点で、第1実施形態の車輪着脱用治具1と異なる。つまり、本実施形態の車輪着脱用治具1Bにおいては、エアシリンダ90により、昇降支持部50を昇降部30に対して上下方向についてフローティング支持するフローティング支持部が構成されている。
エアシリンダ90は、シリンダ部91と、シリンダ部91の一端側から突出するピストンロッド92とを有する。ピストンロッド92は、シリンダ部91内に収納されたピストン(図示略)と一体的に設けられており、シリンダ部91内におけるピストンの往復摺動により、シリンダ部91からの突出量を変化させる。
本実施形態では、昇降部30の昇降本体部33上において、左右に2個のエアシリンダ90が設けられている。エアシリンダ90は、伸縮方向(ピストンロッド92の出没方向)を上下方向として、かつ、ピストンロッド92側を上側として、昇降部30の昇降本体部33と昇降支持部50の昇降本体部53との間に介設されている。つまり、エアシリンダ90は、シリンダ部91の基部側を昇降本体部33の昇降支持面30aに固定させるとともに、ピストンロッド92の先端を昇降支持部50の昇降本体部53に対して下側から当接させた状態で設けられている。これにより、昇降支持部50は、一対のエアシリンダ90のエア圧によって、フローティング状態で支持される。
また、各エアシリンダ90には、図示せぬアキュムレータ(蓄圧器)が接続され、エア圧の蓄圧が行われる。さらに、エアシリンダ90に供給されるエア圧に対しては、レギュレータ(図示略)を設け、エア圧を調整可能な構成を採用することもできる。これにより、例えば、車輪2について、乗用車用の小型のものから大型トラック用の大型のものまで対応することが可能となる。
以上のように実施形態を用いて説明した本発明に係る車輪着脱用治具は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
上述した実施形態においては、フローティング支持部60を構成する弾性体として、コイルばね61が採用されているが、弾性体としては、コイルばね61に限定されることなく、昇降支持部50をフローティング支持する機能を有するものであればよい。弾性体としては、例えば、板ばねや皿ばね等の他の種類のばねや、ゴム等の他の弾性部材が挙げられる。また、昇降部30上において弾性体を支持する弾性体支持部は、採用される弾性体に応じて、弾性体の昇降支持部50を支持しながらの上下方向の伸縮が可能な状態となるように、弾性体を昇降部30上の所定の位置に支持する構成として設けられる。
上述した実施形態においては、横移動支持部70として、ガイド筒71にスライドバー72を挿入させた構成を採用しているが、かかる構成の代わりに、例えば、平行リンク機構を採用することができる。具体的には、フローティング部分を構成する昇降支持部50に対して、上下方向を回動軸方向とする軸支部により支持されたリンクが、左右一対設けられ、かかるリンクに対してローラ21を含む車輪支持部20を支持するアームが上下方向を回動軸方向として回動可能に連結される。一対のアーム間には、一対のアームを互いに連結する連結部材が架設され、一対のアームの平行状態が保持される。アームとしては、上述した実施形態における支持アーム23に相当する構成が採用されてもよい。このような構成によっても、簡単な構造で、車輪支持部20を左右方向に移動可能に設けることができる。
また、上述した実施形態においては、昇降機構部40において回動アーム41の回動位置を無段階で保持するための構成として、歯車機構部49が採用されているが、かかる構成については、特に限定されるものではない。歯車機構部49の代わりに、例えば、ボールナットを用いた構造が考えられる。
また、上述した実施形態においては、移動台車部10について、移動用の車輪11によって前後方向を移動方向とする構成が採用されているが、移動台車部10としては、少なくとも前後方向に移動可能な構成であればよい。