JP6497677B2 - ブロック共重合体、表面処理剤、その膜、およびそれを被覆した細胞培養基材 - Google Patents

ブロック共重合体、表面処理剤、その膜、およびそれを被覆した細胞培養基材 Download PDF

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Description

本発明は、高効率な細胞培養を可能にすると共に、短時間での細胞剥離を可能にする細胞培養基材の表面処理剤として有用なブロック共重合体、その膜、該膜を表面に被覆した細胞培養基材に関する。
細胞培養は生化学的な現象の理解や有用物質の産生などに用いられ、また近年、幹細胞の発見や培養技術の進歩により、再生医療を始めとする細胞を用いた治療に大きな注目が寄せられている。
細胞の多くは接着性を有しており、体内においてはコラーゲン、フィブロネクチン、ラミニンなどの生体高分子に接着し、増殖・分化することが知られている。同様に、細胞培養においても接着性を有する細胞の多くは、培養する際に何らかの基材に接着する必要がある。従来、基材としては表面処理したガラスあるいは高分子が用いられていた。例えば、ポリスチレンにγ線照射あるいはシリコーンコーティングを行なった基材がある。また、コラーゲンやフィブロネクチンのような生体高分子を表面に塗布した基材も用いられる。
増殖する細胞は基材上で培養後、一般的に別の基材に植え継ぐ必要が有り、多くの場合にはタンパク質分解酵素が用いられている。タンパク質分解酵素は細胞表面にあるタンパク質を分解し、細胞と基材の間の結合および細胞間の結合を切る役目を担っている。一方、タンパク質分解酵素は細胞の生存率に大きな影響を与えることが知られており、タンパク質分解酵素を用いずに細胞を基材から分離する手法は細胞にダメージを与えない方法として重要である。再生医療においても同様に、体外で培養した細胞にダメージを与えずに、さらに細胞間の結合を切断しない方法で細胞又は組織化した細胞を基材から分離し、体内に戻すことが求められており、タンパク質分解酵素を用いずに基材から分離する方法が求められている。
上記問題を解決するために、温度応答性ポリマーを基材表面に被覆した細胞培養基材が特許文献1に開示されている。このような基材によれば、周囲環境の温度降下による温度応答性ポリマーのゾル転移で基材表面の接着力を弱めて、細胞を剥離させて回収することができる。通常、細胞は体温付近で接着・培養する必要があり、培養後、体温以下に供することで細胞を剥離できる基材が必要となる。
特許文献2および3には、水中におけるゾル転移温度[臨界溶解温度(LCST)]が体温以下の範囲にある温度応答性ポリマーとして、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(LCST=約32℃)、ポリ(N−n−プロピルアクリルアミド)(LCST=21℃)、ポリ(N−n−プロピルメタクリルアミド)(LCST=約32℃)、ポリ(N−エトキシエチルアクリルアミド)(LCST=約35℃)、ポリ(N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド)(LCST=約28℃)、ポリ(N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド)(LCST=約35℃)、及びポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)(LCST=32℃)等が記載されている。
上記温度応答性ポリマーを細胞培養基材に用いる場合、臨界溶解温度以下に細胞培養基材の温度を下げる必要があるが、その時間によっては同時に細胞を低温化してしまう。細胞の低温化は細胞の活性低下を及ぼすため、冷却時間の短縮が必要である。
さらに、上記温度応答性ポリマーを細胞培養基材に用いる場合、細胞培養温度である体温付近で接着性細胞が基材表面に接着し、増殖することができるが、従来の基材に比べると、増殖速度が小さく、細胞培養効率の向上が必要である。
特開平2−211865号公報 特開平3−266980号公報 特開平5−244938号公報
本発明の目的は、高い細胞培養効率を可能にすると共に、短時間での細胞剥離を可能にする細胞培養基材の表面処理剤として有用なブロック共重合体、その膜、およびそれを被覆した細胞培養基材を提供することにある。
本発明者らは、以上の点を鑑み、鋭意研究を重ねた結果、温度応答性の重合体を、細胞非接着性の重合体でブロック共重合させたブロック共重合体を基材上に被覆し成膜することで、高い細胞培養効率を可能にすると共に、短時間での細胞剥離を可能にすることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明によれば、下記(A)および(B)の重合体ブロックから構成されるブロック共重合体が提供される。
(A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位(a)からなる重合体のブロック。
Figure 0006497677
(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、RおよびRは各々独立して、水素基、炭素数1〜3の炭化水素基、炭素数3または4の酸素含有炭化水素基である。)
(B)下記一般式(2)で表される繰り返し単位(b)
Figure 0006497677
(式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は(ポリ)オキシエチレン基であり、Rは、炭素数1〜4の2価の炭化水素基であり、R、R、及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基であり、Aは、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びエーテル結合からなる群から選択される2価の結合である。)
と下記一般式(3)で表される繰り返し単位(c)
Figure 0006497677
(式中、R10は水素原子又はメチル基であり、R11は、炭素数2〜20の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和の1価の炭化水素基である。)
からなる重合体のブロック。
また、本発明によれば、ブロック(A)とブロック(B)から構成されるブロック共重合体を含む、基材用の表面処理剤が提供される。
さらに、本発明によれば、ブロック(A)とブロック(B)から構成されるブロック共重合体を含む表面処理剤を基材に塗布することによって得られる膜が提供される。
さらに、本発明によれば、ブロック(A)とブロック(B)から構成されるブロック共重合体から得られた膜で表面を被覆した細胞培養用基材が提供される。
温度応答性の重合体と、細胞非接着性の重合体及び基板接着性を有する重合体からなるブロック共重合体とをブロック共重合させて得た本発明に係るブロック共重合体は、ブロック共重合体の基板への接着性を確保しつつ、培養時における細胞のブロック共重合体への接着性を高め、それにより高い細胞培養効率を可能にする。さらに細胞培養後に、温度降下させた場合に、基材表面の親水化が促進され、細胞の剥離性が高まる。これにより細胞剥離に必要な冷却時間を短縮することが可能となり、細胞培養後、冷却処理を施しても、細胞にダメージを与えることなく、短時間で細胞を回収できる細胞培養基材が得られるようになる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その趣旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
1.ブロック共重合体
本発明のブロック共重合体は一般式(1)で表される繰り返し単位(a)からなる温度応答性重合体のブロック(A)、および一般式(2)で表される繰り返し単位(b)と一般式(3)で表される繰り返し単位(c)とからなる重合体のブロック(B)から構成される。
ブロック共重合体中のブロック(A)とブロック(B)の配列としては、A−B、A−B−A、B−A−B、A−B−A−B、A−B−A−B−A、B−A−B−A−Bを例示することができるが、細胞剥離に必要な冷却時間を短縮することを目的に、A−Bであることが好ましい。
ブロック共重合体中のブロック(A)は、温度応答性に寄与するブロックである。かかるブロック(A)を含むブロック共重合体は、培養温度である37℃付近では疎水性を示す一方で、温度を臨界溶解温度(LCST)以下に低下させた場合に親水性を示すようになる。臨界溶解温度は、使用するブロック(A)のモノマーに応じて異なるが、細胞の活性を低下させない観点から、通常25℃〜35℃の範囲に臨界溶解温度を有するモノマーを使用することが好ましい。培養温度では、ブロック(A)は疎水性を有することから、タンパク質が吸着しやすく、吸着されたタンパク質を足場にして、細胞の接着培養が可能となる。一方で、温度を低下させた場合、親水性に変化することで、細胞の剥離が促進される。
ブロック共重合体中のブロック(B)は、細胞膜のリン脂質類似構造を有する繰り返し単位(b)と、疎水性の繰り返し単位(c)とからなっており、理論に限定されることを意図するものではないが、繰り返し単位(b)が細胞の剥離性に寄与する一方で、繰り返し単位(c)が、ブロック共重合体の基板への接着性に寄与すると考えられる。したがって、繰り返し単位(b)の割合が高くなるほど、細胞が剥離しやすくなり、温度応答性のブロック(A)とのブロック共重合体を形成した場合に、細胞剥離に必要とされる冷却時間が短くなると考えられる。
ブロック共重合体中の全繰り返し単位[(a)+(b)+(c)]に対する繰り返し単位(a)の比率は、通常1〜95mol%である。細胞の接着性を高め、増殖効率を高める観点から、繰り返し単位(a)の比率は、1mol%以上であり、好ましくは5mol%以上であり、より好ましくは10mol%以上であり、さらに好ましくは25mol%以上であり、さらにより好ましくは40mol%以上である。一方で、温度低下の際の細胞の剥離性を高める観点から、繰り返し単位(a)の比率は、95mol%以下であり、好ましくは85mol%以下であり、より好ましくは75mol%以下であり、さらに好ましくは70mol%以下である。
ブロック共重合体中の全繰り返し単位[(a)+(b)+(c)]に対する繰り返し単位[(b)+(c)]の比率は、通常5mol〜99mol%である。細胞の接着性を高め、増殖効率を高める観点から、好ましくは95mol%以下であり、より好ましくは90mol%以下であり、さらに好ましくは75mol%以下であり、さらにより好ましくは60mol%以下である。一方で、温度低下の際の細胞の剥離性を高める観点から、5mol%以上であり、好ましくは15mol%以上であり、より好ましくは25mol%以上であり、さらにより好ましくは30mol%以上である。
本発明のブロック共重合体を構成するブロック(A)は一般式(1)で表される繰り返し単位(a)からなる温度応答性の重合体である。この重合体は、培養温度では、疎水性を示す一方で、水中におけるゾル転移温度[臨界溶解温度(LCST)]以下では親水性を示す。細胞の活性に影響を与えない一方で、疎水性から親水性への性質を変化させるために、臨界溶解温度(LCST)は、通常10℃〜45℃の範囲であり、好ましくは20℃〜35℃の範囲である。
一般式(1)において、
は水素原子又はメチル基である。
およびRは各々独立して、水素基、炭素数1〜3の炭化水素基、炭素数3または4の酸素含有炭化水素基である。
炭素数1〜3の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基を例示できるが、LCSTを20℃〜35℃の範囲にするたに、好ましくはエチル基またはイソプロピル基が用いられる。
炭素数3または4の酸素含有炭化水素基としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、フルフリル基、テトラヒドロフルフリル基を例示できるが、LCSTを28℃〜40℃の範囲にするたに、好ましくはエトキシエチル基またはテトラヒドロフルフリル基が用いられる。
重合反応によって繰り返し単位(a)を生成するモノマーとしては、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、N−メトキシエチルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−エトキシエチルメタクリルアミド、N−フルフリルアクリルアミド、N−フルフリルメタクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミドから選ばれる少なくとも1つのモノマーの(共)重合体を例示できるが、LCSTを28℃〜40℃の範囲にするために、さらに好ましくはN,N−ジエチルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミドを用いることができる。
本発明のブロック共重合体を構成するブロック(B)は一般式(2)で表される繰り返し単位(b)と一般式(3)で表される繰り返し単位(c)からなる重合体である。ブロック(B)中の繰り返し単位(b)と繰り返し単位(c)の配列はランダム配列である。ブロック(B)中の全繰り返し単位[(b)+(c)]に対する繰り返し単位(b)の比率は、通常1〜90mol%である。温度低下の際の細胞の剥離性を高める観点から、繰り返し単位(b)の比率は、好ましくは3mol%以上であり、より好ましくは5mol%以上であり、さらに好ましくは10mol%以上である。また、重合体の基板への接着性を高める観点から、好ましくは70%以下であり、より好ましくは50%以下であり、さらにより好ましくは35%以下である。
ブロック(B)中の全繰り返し単位[(b)+(c)]に対する繰り返し単位(c)の比率は10〜99mol%である。温度低下の際の剥離性を高める観点から、好ましくは97mol%以下であり、より好ましくは95mol%以下であり、さらに好ましくは90mol%以下である。また、重合体の基板への接着性の観点から、好ましくは30%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらにより好ましくは65%以上である。
一般式(2)において、
は水素原子又はメチル基であり、細胞剥離に必要な冷却時間を短縮することを目的に好ましくはメチル基を用いる。
は、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は(ポリ)オキシエチレン基:−(OCH2CH2n−(式中、nは1〜10である。なお、該ポリオキシエチレン基は−O−を介して基Aと結合する)であり、細胞剥離に必要な冷却時間を短縮することを目的に好ましくは炭素数1〜6の2価の炭化水素基、特にアルキレンである。このようなアルキレンとして、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレンなどが例示され、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、特にエチレンである。
は、炭素数1〜4の2価の炭化水素基であり、細胞剥離に必要な冷却時間を短縮することを目的に好ましくは炭素数1〜4のアルキレン、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが例示され、エチレンが特に好ましい。
、R、及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基、例えばメチル基又はエチル基であり、細胞剥離に必要な冷却時間を短縮することを目的に、特にR、R、及びRが、同時に、水素原子又はメチル基、特にメチル基であることが好ましい。
Aは、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びエーテル結合からなる群から選択される2価の結合であり、細胞剥離に必要な冷却時間を短縮することを目的に、エステル結合、アミド結合、特にエステル結合が好ましい。
重合反応によって繰り返し単位(b)を生成するモノマーとしては、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリン、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルホスホリルコリン、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルホスホリルコリン、ω−(メタ)アクリロイル(ポリ)オキシエチレンホスホリルコリン、2−アクリルアミドエチルホスホリルコリン、3−アクリルアミドプロピルホスホリルコリン、4−アクリルアミドブチルホスホリルコリン、6−アクリルアミドヘキシルホスホリルコリン、10−アクリルアミドデシルホスホリルコリン、ω−(メタ)アクリルアミド(ポリ)オキシエチレンホスホリルコリンを例示できるこれらのモノマーは、細胞膜の構成要素であるリン脂質に類似する構造を有することから細胞の接着性を抑制することができる。細胞培養基材にした場合に細胞剥離に必要な冷却時間を短縮することを目的に、好ましくは2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを用いる。
一般式(3)において、
10は水素原子又はメチル基であり、得られる共重合体の安定性の点から好ましくはメチル基である。
11は、炭素数2〜20の1価の炭化水素基であり、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−トリデシル基、n−ステアリル基を例示できるが、ブロック共重合体の基材への接着性を高める目的にn−ブチル基を用いる。
重合反応によって繰り返し単位(c)を生成するモノマーとしては、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ペンチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−ヘプチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−デシルメタクリレート、n−トリデシルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレートを例示できるが、安定な培養基材を得ることを目的にn−ブチルメタクリレートを用いる。
本発明のブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、通常、3,000〜1,000,000Daの範囲にある。本発明のブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、溶液粘度が高くなりすぎない観点から、1,000,000Da以下であり、好ましくは500,000Da以下であり、より好ましくは250,000Da以下である。また、基材からの溶出を低減する観点から、好ましくは3,000Da以上であり、よりしくは4,000Da以上であり、さらに好ましくは5,000Da以上である。
本発明のブロック共重合体の合成方法としては、特に限定はないが、株式会社エヌ・ティー・エス発行、“ラジカル重合ハンドブック”、p.161〜225(2010)に記載のリビングラジカル重合技術を用いて、繰り返し単位(a)を生成するモノマー、繰り返し単位(b)を生成するモノマー、及び繰り返し単位(c)を生成するモノマーを共重合することができる。より具体的に、N−イソプロピルアクリルアミド、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンおよびn−ブチルメタクリレートを共重合する方法を用いることができる。
重合するモノマーの順番としては、繰り返し単位(b)を生成するモノマーと繰り返し単位(c)を生成するモノマーをランダム共重合に供し、未反応モノマーを除いた後に、繰り返し単位(a)を生成するモノマーと重合する方法が行われる。さらに別の態様では、繰り返し単位(a)を生成するモノマーを重合し、未反応モノマーを除いた後、繰り返し単位(b)を生成するモノマーと繰り返し単位(c)を生成するモノマーをランダム共重合に供する方法であってもよい。さらに別の態様では、繰り返し単位(a)を生成するモノマーを重合し、未反応モノマーを除いた後、繰り返し単位(b)を生成するモノマーと繰り返し単位(c)を生成するモノマーをランダム共重合し、未反応モノマーを除いた後、さらに繰り返し単位(a)を生成するモノマーを重合する方法であってもよい。これらの方法は、例示であり、本発明を限定することを意図するものではない。より具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとn−ブチルメタクリレートを同時に重合(ランダム共重合)し、未反応モノマーを除いた後、N−イソプロピルアクリルアミドを重合する方法、N−イソプロピルアクリルアミドを重合し、未反応モノマーを除いた後、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとn−ブチルメタクリレートをランダム共重合する方法、N−イソプロピルアクリルアミドを重合し、未反応モノマーを除いた後、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとn−ブチルメタクリレートをランダム共重合し、未反応モノマーを除いた後、さらにN−イソプロピルアクリルアミドを重合する方法を例示することができる。
2.表面処理剤
本発明の基材用の表面処理剤は、上記ブロック共重合体を含むものである。より好ましくは、シャーレー、マルチウェルプレート、フラスコなどの細胞培養基材用の表面処理剤である。本発明の表面処理剤は、基材に塗布するだけで表面処理を行なうことができるものである。
本発明の表面処理剤は、上記ブロック共重合体以外に、本共重合体を溶解することができる各種溶剤を含むものであってもよい。ブロック共重合体を溶解できる溶剤としては、特に限定はされないが、適用後に蒸発して残留しない溶媒が好ましく、また、残留していても培養細胞に及ぼす影響が小さい、エタノール、水とエタノールの混合溶媒が特に好ましい。本発明の表面処理剤は、通常、溶液状のものであるが、上記の溶媒で溶解可能な粉末状であってもよい。
本発明の表面処理剤の対象基材としては、特に限定はないが、前記ブロック共重合体は疎水性相互作用で基材に接着することから、好ましくは各種疎水性ポリマー材料が用いられる。疎水性ポリマー材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー、ポリジメチルシロキサン等の各種シリコーンゴム、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等が挙げられる。また、金属基材、セラミックス基材あるいはガラス基材にシランカップリング剤で表面処理したものも用いることができる。
また、基材の形状は、特に限定はないが、例えば、板状、ビーズ状および繊維状の形状のほか、板状の基材に設けられた穴や溝や突起なども挙げられる。
本発明の表面処理剤を基材に塗布する方法としては、例えば、はけ塗り、ディップコーティング、スピンコーティング、バーコーティング、流し塗り、スプレー塗装、ロール塗装、エアーナイフコーティング、ブレードコーティングなど通常知られている各種の方法を用いることが可能である。
3.膜
本発明の膜は、上記表面処理剤を基材に塗布することによって得られる膜である。上記表面処理剤を基材に塗布したのちに、乾燥する工程をさらに含んでもよい。本発明の膜の厚さは、通常、1nm以上10μm以下である。細胞培養基材に被覆した時に細胞の接着性を担保する観点から、10μm以下であり、好ましくは7.5μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。一方で、細胞培養基材を被覆している膜上に細胞が接着した場合に、細胞剥離に必要とされる冷却時間を短縮する観点から、1nm以上であり、好ましくは5nm以上であり、さらにより好ましくは10nm以上である。
本発明の膜は、温度応答性のブロック(A)と、リン脂質類似構造を有する繰り返し単位(b)及び疎水性の繰り返し単位(c)からなるブロック(B)とからなるブロック共重合体を含む。これらの各ブロックの性質に起因して、細胞培養基材に対して接着性を有するとともに、培養温度、例えば37℃以上では、膜表面は疎水性を示すことにより、タンパク質などの付着を可能とし、細胞の接着培養が可能となる。細胞培養後に、温度降下させることで、膜表面が親水性に変化し、細胞剥離を促すことができ、細胞非接着性のリン脂質類似構造を有する繰り返し単位(b)を含むことで、剥離に必要な冷却時間を短縮することが可能になる。本発明の膜は、ブロック共重合体の自己組織化により形成されるミクロ相分離構造をとることができ、ミクロ相分離構造のドメイン径およびドメイン間隔は、各繰り返し単位の比率、ブロック共重合体の分子量、塗布方法および塗布条件で任意に制御できる。細胞培養基材に被覆した時に、細胞培養後、温度降下による基材表面の親水化を促進し、細胞剥離に必要な冷却時間を短縮することを目的に、ドメイン径およびドメイン間隔を細胞増殖因子よりも大きく、細胞よりも小さいことが好ましい。
4.細胞培養用基材
本発明の細胞培養用基材は、上記膜で基材表面を被覆した細胞培養用基材である。一の態様では、基材と、基材表面を被膜するように配置された本発明にかかるブロック共重合体とを含む、細胞培養用基材である。本発明の細胞培養用基材を用いて培養される細胞としては、通常の培養温度、即ち約37℃以上で培養する際に、基材の表面に接着可能なものであれば特に限定されるものではない。例えばチャイニーズハムスター卵巣由来CHO細胞やマウス結合組織L929細胞、ヒト胎児腎臓由来細胞HEK293細胞やヒト子宮頸癌由来HeLa細胞等の種々の培養細胞株に加え、例えば生体内の各組織、臓器を構成する上皮細胞や内皮細胞、収縮性を示す骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、神経系を構成するニューロン細胞、グリア細胞、繊維芽細胞、生体の代謝に関与する肝実質細胞、肝非実質細胞や脂肪細胞、分化能を有する細胞として、種々の組織に存在する幹細胞、さらにはそれらから分化誘導した細胞等を用いることができる。幹細胞としては、ES細胞、EG細胞、iPS細胞など任意の幹細胞を用いることもできる。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。なお、断りのない限り、試薬は市販品を用いた。
<ブロック共重合体の組成>
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JNM−GSX400)を用いたプロトン核磁気共鳴分光(1H−NMR)スペクトル分析、およびフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)(Perkin Elmer社製、商品名SPECTRUM ONE)より求めた。
<ブロック共重合体の分子量、分子量分布>
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置としては東ソー(株)製 HLC−8120GPCを用い、カラムとしては、東ソー製 TSKgel α−Mを用い、カラム温度を40℃に設定し、溶離液として10mM−LiBr メタノール/水溶液(メタノール:水=70vol%:30vol%)を用いて測定した。測定試料は2.0mg/mLで調製し、0.1mL注入して測定した。分子量の検量線は、分子量既知のポリエチレンオキサイド試料を用いて校正した。なお、MnとMwはポリエチレンオキサイド換算の値として求めた。
<細胞培養用基材表面の対水接触角>
水中、40℃および20℃での気泡接触角(θ)(°)を測定し、40℃および20℃の対水接触角(180−θ)(°)を算出した。θは協和界面科学(株)製接触角計DM300を用いて、水中、3μLの気泡の接触角を測定した。
実施例1
[重合体ブロック(B)の合成]
100mLの2口ナス型フラスコに2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを1.00g(3.39mmol)、n−ブチルメタクリレート1.12g(7.88mmol)、RAFT剤として4−シアノ−4−[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルフォニル]ペンタノイックアシッド72mg(178μmol)、アゾビスイソブチロニトリル6mg(37μmol)を加え、1,4−ジオキサン/エタノール=1:1混合溶液20mLに溶解した。窒素バブリングを15分行った後、65℃で18時間反応させた。反応後、反応溶液をジエチルエーテル500mLに注ぎ込み、析出した白色固体をろ過、乾燥して、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとn−ブチルメタクリレートのランダム共重合体(重合体ブロック(B))を得た。
[ブロック共重合体の合成]
100mLの2口ナス型フラスコに上記重合体ブロック(B)1.00g、N−イソプロピルアクリルアミド0.30g(2.65mmol)、アゾビスイソブチロニトリル6mg(37μmol)を加え、1,4−ジオキサン/エタノール=1:1混合溶液20mLに溶解した。窒素バブリングを15分行った後、65℃で18時間反応させた。反応後、反応溶液をヘキサン500mLに注ぎ込み、析出した白色固体をろ過して、減圧下、80℃で、6時間乾燥して、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとn−ブチルメタクリレートのランダム共重合体にN−イソプロピルアクリルアミドがブロック共重合したブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の組成、MnおよびMw/Mnを表1に示す。
[表面処理剤の調製]
上記ブロック共重合体0.10gをエタノール49.90gに溶解し、0.2重量%の表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
φ60mmポリスチレン製シャーレに上記表面処理剤2.5mL加え、窒素気流で乾燥した。さらに、減圧化で乾燥し、前記ブロック共重合体の膜で表面を被覆した細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
[細胞培養評価および剥離評価]
上記細胞培養基材を用い、マウス結合組織L929細胞(2.8×105個/mL)1mLを播種し、10vol%ウシ胎児血清を含むダルベッコ・フォークト変法イーグル最小必須培地(10vol%FBS/DMEM)4mLを加え、37℃、CO2濃度5%で培養した。所定時間毎に、10×10倍の顕微鏡で接着細胞数をカウントし、接着細胞が基材表面の100%を覆うまで培養した。培養開始24時間後、72時間後の細胞接着密度(個/mm2)、細胞接着密度が700個/mm2に達するまでの日数(培養日数)を表1に示す。さらに、その後、基材を10℃に冷却し、所定時間毎に、10×10倍の顕微鏡で接着細胞数をカウントし、接着していた細胞の100%が剥離するまでの時間(剥離時間)を計測した。その剥離時間を表1に示す。
実施例2
[重合体ブロック(B)の合成]
4−シアノ−4−[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルフォニル]ペンタノイックアシッドを60mg(149μmol)用いたこと以外は、実施例1[重合体ブロック(B)の合成]と同じ方法で合成を行い、重合体ブロック(B)を得た。
[ブロック共重合体の合成]
上記重合体ブロック(B)を用いたこと以外は、実施例1[ブロック共重合体の合成]と同じ方法で合成を行い、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の組成、MnおよびMw/Mnを表1に示す。
[表面処理剤の調製]
上記ブロック共重合体を用いたこと以外は、実施例1[表面処理剤の調製]と同じ方法で調製を行い、表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
上記表面処理剤を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養用基材の調製]と同じ方法で調製を行い、細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
[細胞培養評価および剥離評価]
上記細胞培養基材を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養評価および剥離評価]と同じ方法で評価を行った。培養開始24時間後、72時間後の細胞接着密度、培養日数、および剥離時間を表1に示す。
実施例3
[重合体ブロック(B)の合成]
4−シアノ−4−[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルフォニル]ペンタノイックアシッドを48mg(119μmol)用いたこと以外は、実施例1[重合体ブロック(B)の合成]と同じ方法で合成を行い、重合体ブロック(B)を得た。
[ブロック共重合体の合成]
上記重合体ブロック(B)を用いたこと以外は、実施例1[ブロック共重合体の合成]と同じ方法で合成を行い、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の組成、MnおよびMw/Mnを表1に示す。
[表面処理剤の調製]
上記ブロック共重合体を用いたこと以外は、実施例1[表面処理剤の調製]と同じ方法で調製を行い、表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
上記表面処理剤を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養用基材の調製]と同じ方法で調製を行い、細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
[細胞培養評価および剥離評価]
上記細胞培養基材を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養評価および剥離評価]と同じ方法で評価を行った。培養開始24時間後、72時間後の細胞接着密度、培養日数、および剥離時間を表1に示す。
実施例4
[重合体ブロック(B)の合成]
4−シアノ−4−[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルフォニル]ペンタノイックアシッドを24mg(59μmol)用いたこと以外は、実施例1[重合体ブロック(B)の合成]と同じ方法で合成を行い、重合体ブロック(B)を得た。
[ブロック共重合体の合成]
上記重合体ブロック(B)を用い、N−イソプロピルアクリルアミド0.60g(5.30mmol)を用いたこと以外は、実施例1[ブロック共重合体の合成]と同じ方法で合成を行い、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の組成、MnおよびMw/Mnを表1に示す。
[表面処理剤の調製]
上記ブロック共重合体を用いたこと以外は、実施例1[表面処理剤の調製]と同じ方法で調製を行い、表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
上記表面処理剤を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養用基材の調製]と同じ方法で調製を行い、細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
[細胞培養評価および剥離評価]
上記細胞培養基材を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養評価および剥離評価]と同じ方法で評価を行った。培養開始24時間後、72時間後の細胞接着密度、培養日数、および剥離時間を表1に示す。
実施例5
[ブロック共重合体の合成]
N−イソプロピルアクリルアミド1.20g(10.6mmol)を用いたこと以外は、実施例4[ブロック共重合体の合成]と同じ方法で合成を行い、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の組成、MnおよびMw/Mnを表1に示す。
[表面処理剤の調製]
上記ブロック共重合体を用いたこと以外は、実施例1[表面処理剤の調製]と同じ方法で調製を行い、表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
上記表面処理剤を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養用基材の調製]と同じ方法で調製を行い、細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
[細胞培養評価および剥離評価]
上記細胞培養基材を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養評価および剥離評価]と同じ方法で評価を行った。培養開始24時間後、72時間後の細胞接着密度、培養日数、および剥離時間を表1に示す。
実施例6
[ブロック共重合体の合成]
実施例1[重合体ブロック(B)の合成]で合成した重合体ブロック(B)を用いたこと以外は、実施例5[ブロック共重合体の合成]と同じ方法で合成を行い、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の組成、MnおよびMw/Mnを表1に示す。
[表面処理剤の調製]
上記ブロック共重合体を用いたこと以外は、実施例1[表面処理剤の調製]と同じ方法で調製を行い、表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
上記表面処理剤を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養用基材の調製]と同じ方法で調製を行い、細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
[細胞培養評価および剥離評価]
上記細胞培養基材を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養評価および剥離評価]と同じ方法で評価を行った。培養開始24時間後、72時間後の細胞接着密度、培養日数、および剥離時間を表1に示す。
実施例7
[重合体ブロック(B)の合成]
4−シアノ−4−[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルフォニル]ペンタノイックアシッドを12mg(30μmol)用いたこと以外は、実施例1[重合体ブロック(B)の合成]と同じ方法で合成を行い、重合体ブロック(B)を得た。
[ブロック共重合体の合成]
上記重合体ブロック(B)を用い、N−イソプロピルアクリルアミド1.20g(10.6mmol)を用いたこと以外は、実施例1[ブロック共重合体の合成]と同じ方法で合成を行い、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の組成、MnおよびMw/Mnを表1に示す。
[表面処理剤の調製]
上記ブロック共重合体を用いたこと以外は、実施例1[表面処理剤の調製]と同じ方法で調製を行い、表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
上記表面処理剤を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養用基材の調製]と同じ方法で調製を行い、細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
実施例8
[ブロック共重合体の合成]
N−イソプロピルアクリルアミド1.80g(15.9mmol)を用いたこと以外は、実施例4[ブロック共重合体の合成]と同じ方法で合成を行い、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の組成、MnおよびMw/Mnを表1に示す。
[表面処理剤の調製]
上記ブロック共重合体を用いたこと以外は、実施例1[表面処理剤の調製]と同じ方法で調製を行い、表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
上記表面処理剤を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養用基材の調製]と同じ方法で調製を行い、細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
[細胞培養評価および剥離評価]
上記細胞培養基材を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養評価および剥離評価]と同じ方法で評価を行った。培養開始24時間後、72時間後の細胞接着密度、培養日数、および剥離時間を表1に示す。
実施例9
[ブロック共重合体の合成]
実施例7[重合体ブロック(B)の合成]で合成した重合体ブロック(B)を用い、N−イソプロピルアクリルアミド1.80g(15.9mmol)を用いたこと以外は、実施例1[ブロック共重合体の合成]と同じ方法で合成を行い、ブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の組成、MnおよびMw/Mnを表1に示す。
[表面処理剤の調製]
上記ブロック共重合体を用いたこと以外は、実施例1[表面処理剤の調製]と同じ方法で調製を行い、表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
上記表面処理剤を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養用基材の調製]と同じ方法で調製を行い、細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
比較例1
[表面処理剤の調製]
実施例1[重合体ブロック(B)の合成]で合成した2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとn−ブチルメタクリレートのランダム共重合体を用いたこと以外は、実施例1[表面処理剤の調製]と同じ方法で調製を行い、表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
上記表面処理剤を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養用基材の調製]と同じ方法で調製を行い、細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
[細胞培養評価および剥離評価]
上記細胞培養基材を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養評価および剥離評価]と同じ方法で評価を行った。培養開始24時間後、72時間後の細胞接着密度を表1に示すが、細胞が基材に接着せず、繰り返し単位(a)が1mol%未満になると、37℃での基材表面の疎水性が低減され、細胞の増殖を確認できなかった。したがって、細胞の剥離性を評価することはできなかった。
比較例2
[細胞培養評価および剥離評価]
ポリスチレン製シャーレ上にN−イソプロピルアクリルアミドをグラフト重合し、N−イソプロピルアクリルアミド重合体で表面を被覆した、株式会社セルシード製UpCell(登録商標)φ60mmディッシュを用いたこと以外は、実施例1[細胞培養評価および剥離評価]と同じ方法で評価を行った。培養開始24時間後、72時間後の細胞接着密度、培養日数、および剥離時間を表1に示す。繰り返し単位(a)が95mol%超になると、37℃からの温度降下による基材表面の親水化が抑制され、細胞剥離に必要な冷却時間(剥離時間)が増加した。
比較例3
[重合体ブロック(B)の合成]
100mLの2口ナス型フラスコにn−ブチルメタクリレート2.13g(15.0mmol)、RAFT剤として4−シアノ−4−[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルフォニル]ペンタノイックアシッド97mg(240μmol)、アゾビスイソブチロニトリル2.5mg(15μmol)を加え、1,4−ジオキサン15mLに溶解した。窒素バブリングを15分行った後、65℃で15時間反応させた。反応後、反応溶液をメタノール500mLに注ぎ込み、析出した白色固体をろ過、乾燥して、n−ブチルメタクリレートの重合体(重合体ブロック(B))を得た。
[ブロック共重合体の合成]
100mLの2口ナス型フラスコに上記重合体ブロック(B)1.00g、N−イソプロピルアクリルアミド1.20g(10.6mmol)、アゾビスイソブチロニトリル6mg(37μmol)を加え、1,4−ジオキサン20mLに溶解した。窒素バブリングを15分行った後、65℃で30時間反応させた。反応後、反応溶液をジエチルエーテル500mLに注ぎ込み、析出した白色固体をろ過して、減圧下、80℃で、6時間乾燥して、n−ブチルメタクリレートの重合体にN−イソプロピルアクリルアミドがブロック共重合したブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体の組成、MnおよびMw/Mnを表1に示す。
[表面処理剤の調製]
上記ブロック共重合体を用いたこと以外は、実施例1[表面処理剤の調製]と同じ方法で調製を行い、表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
上記表面処理剤を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養用基材の調製]と同じ方法で調製を行い、細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
[細胞培養評価および剥離評価]
上記細胞培養基材を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養評価および剥離評価]と同じ方法で評価を行った。培養開始24時間後、72時間後の細胞接着密度、培養日数、および剥離時間を表1に示す。ブロック(B)中の繰り返し単位(b)の比率が1mol%未満になると、37℃からの温度降下による基材表面の親水化が抑制され、細胞剥離に必要な冷却時間(剥離時間)が増加した。
比較例4
[ランダム共重合体の合成]
100mLの2口ナス型フラスコに2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを1.00g(3.39mmol)、n−ブチルメタクリレート1.12g(7.88mmol)、N−イソプロピルアクリルアミド0.60g(5.30mmol)、RAFT剤として4−シアノ−4−[(ドデシルスルフォニルチオカルボニル)スルフォニル]ペンタノイックアシッド73mg(181μmol)、アゾビスイソブチロニトリル4mg(24μmol)を加え、1,4−ジオキサン/エタノール=1:2混合溶液15mLに溶解した。窒素バブリングを30分行った後、65℃で12時間反応させた。反応後ヘキサンで再沈し、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとn−ブチルメタクリレートとN−イソプロピルアクリルアミドがランダム共重合した共重合体を得た。得られたランダム共重合体の組成、MnおよびMw/Mnを表1に示す。
[表面処理剤の調製]
上記ランダム共重合体を用いたこと以外は、実施例1[表面処理剤の調製]と同じ方法で調製を行い、表面処理剤を調製した。
[細胞培養用基材の調製]
上記表面処理剤を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養用基材の調製]と同じ方法で調製を行い、細胞培養用基材を調製した。37℃および20℃での対水接触角を表1に示す。
[細胞培養評価および剥離評価]
上記細胞培養基材を用いたこと以外は、実施例1[細胞培養評価および剥離評価]と同じ方法で評価を行った。培養開始24時間後、72時間後の細胞接着密度、培養日数、および剥離時間を表1に示す。繰り返し単位(a)が共重合体中にランダムに配列されることによって、37℃での基材表面の疎水性が低減され、細胞の接着密度が低下し、培養日数が増加した。また、37℃からの温度降下による基材表面の親水化が抑制され、細胞剥離に必要な冷却時間(剥離時間)が増加した。
Figure 0006497677

Claims (7)

  1. 下記(A)および(B)の重合体ブロックから構成されるブロック共重合体であり、ブロック共重合体中の全繰り返し単位[(a)+(b)+(c)]に対する繰り返し単位(a)の比率が1〜95mol%であり、ブロック(B)中の全繰り返し単位[(b)+(c)]に対する繰り返し単位(b)の比率が1〜90mol%であることを特徴とするブロック共重合体
    (A)下記一般式(1)で表される繰り返し単位(a)からなる重合体のブロック。
    Figure 0006497677
    (式中、Rは水素原子又はメチル基であり、RおよびRは各々独立して、水素基、炭素数1〜3の炭化水素基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、フルフリル基、又はテトラヒドロフルフリル基であり、但し、R およびR が同時に水素基である場合を除く。)
    (B)下記一般式(2)で表される繰り返し単位(b)と、
    Figure 0006497677
    (式中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは、炭素数1〜12の2価の炭化水素基、又は(ポリ)オキシエチレン基であり、Rは、炭素数1〜4の2価の炭化水素基であり、R、R、及びRは、互いに独立して、水素原子又は炭素数1〜2の炭化水素基であり、Aは、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びエーテル結合からなる群から選択される2価の結合である。)
    下記一般式(3)で表される繰り返し単位(c)
    Figure 0006497677
    (式中、R10は水素原子又はメチル基であり、R11は、炭素数2〜20の直鎖又は分枝鎖の飽和又は不飽和の1価の炭化水素基である。)
    からなる重合体のブロック。
  2. ブロックの配列が(A)−(B)であることを特徴とする請求項1記載のブロック共重合体。
  3. 全繰り返し単位[(a)+(b)+(c)]に対する繰り返し単位(a)の比率が5〜85mol%であり、ブロック(B)中の全繰り返し単位[(b)+(c)]に対する繰り返し単位(b)の比率が3〜70mol%であることを特徴とする請求項1または2に記載のブロック共重合体。
  4. 数平均分子量(Mn)が5,000以上1,000,000以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロック共重合体と溶剤とを含むことを特徴とする細胞培養用基材の表面処理剤。
  6. 請求項5に記載の表面処理剤を基材に塗布することによって得られる膜。
  7. 基材と、基材表面を被膜するように配置された請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロック共重合体とを含む、細胞培養用基材。
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