JP2021151210A - マイクロキャリアおよびそれを用いた細胞の培養方法 - Google Patents

マイクロキャリアおよびそれを用いた細胞の培養方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、細胞を培養、回収、製造するためのマイクロキャリアを提供することである。【解決手段】上記課題は、粒子の表面に、細胞非接着層、細胞接着層が順に積層されてなり、細胞非接着層がポリエチレンオキサイド骨格を含むことを特徴とするマイクロキャリアにより解決できる。また、細胞非接着層が、ポリエチレンオキサイド構造を有する質量平均分子量が2000以上のポリマー(A)を含むことを特徴とする上記マイクロキャリアにより解決できる。また、ポリマー(A)が、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上、2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマー部分(A1)と、ポリエチレンオキサイド部分(A2)とが、下記一般式(I)の構造を介して結合してなることを特徴とする上記マイクロキャリアにより解決できる。【選択図】図1

Description

本発明は、新規な生体適合性樹脂を用いてなるマイクロキャリア、およびそれを用いた細胞の培養方法に関する。
今日、動物細胞培養技術が著しく進歩し、動物細胞を対象とした研究開発もさまざまな分野に広がって実施されるようになってきた。対象となる動物細胞の使われ方も、細胞そのものや、その産生物を製品化するだけでなく、今や細胞やその表層蛋白質を分析することで有用な医薬品を設計したり、患者本人の細胞を生体外で増殖させたり、或いはその細胞の機能を高めて生体内へ戻し治療することも実施されつつある。
ヒト細胞を含め動物細胞の多くは付着依存性のものであり、生体外で培養しようとするときは、それらを一度、培養面に付着させる必要性がある。このような付着依存性細胞の培養において、マイクロキャリアを用いた培養方法は、培養表面積/容積の値が小さい従来のフラスコやローラーボトルを用いた単層培養法に比べ、少ない容積で培養表面積を拡大させ、同時に培養容積当たりの細胞密度を高く保つことが出来るため、現在広く採用され、多くの研究者らによって設計、考案がなされてきた。
また、付着依存性の細胞は培養面に付着する際、自ら接着性蛋白質を産生する。従って、その細胞を剥離させるには、従来技術ではその接着性蛋白質を破壊しなければならない。しかしながら、通常行われている酵素処理では、細胞が培養中に産生した各種細胞固有の細胞表層蛋白も同時に破壊されてしまうという重大な課題があった。この細胞回収時の課題の解決が、今後動物細胞を対象とした研究開発を飛躍的に発展させる上で強く求められていた。
このような背景のもと、例えば、特許文献1には、水に対する上限若しくは下限臨界溶解温度が0 〜80℃ であるポリマーで器材表面を被覆した細胞培養支持体上にて、細胞を上限臨界溶解温度以下または下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下にすることにより酵素処理なくして培養細胞を剥離させる新規な細胞培養法が記載されている。また、特許文献2には、この温度応答性細胞培養器材を利用して皮膚細胞を上限臨界溶解温度以下或いは下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上或いは下限臨界溶解温度以下にすることにより培養皮膚細胞を低損傷で剥離させることが記載されている。また、特許文献3には、この温度応答性細胞培養器材を用いて培養細胞の表層蛋白質の修復方法が記載されている。温度応答性細胞培養器材を利用することにより、従来の培養技術に対しさまざまな新規な展開をはかれるようになってきた。更に、特許文献4には、ポリアルキルアクリルアミドの温度応答性を利用し、基材面の温度を変えることで、細胞の(非)接着性を調節し、細胞を回収できるマイクロキャリアを提供するが記載されている。
特開平2−211865号公報 特開平05−192138号公報 特開2008−220354号公報 特開2013−59312号公報
しかし、特許文献1,2,3に記載されるような温度応答性細胞培養器材では、主にシャーレ状の基材を対象にした技術であり、細胞を大量に培養できるビーズ状の基材表面を設計する上ではさらなる改良が求められていた。また、特許文献4に記載されるようなマイクロキャリアがあったが、温度応答性の欠点としては、温度を調節する設備が必要であり、培養温度の変化により、細胞に対してダメージを与える懸念もあった。
よって、本発明が解決しようとする課題は、細胞毒性が低く、培養面と細胞との接着性を調節し、酵素処理なくして培養細胞を剥離させる新規な細胞培養用マイクロキャリアを提供することである。
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポリエチレンオキサイド骨格を細胞非接着層に含むことで、マイクロキャリアビーズの表面に、細胞非接着層、細胞接着層の順で積層されてなるマイクロキャリア上で細胞培養を行った場合に、培養温度の変化や酵素による細胞に対するダメージを回避し、かつ効率的に細胞を回収できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、粒子の表面に、細胞非接着層、細胞接着層が順に積層されてなり、細胞非接着層がポリエチレンオキサイド骨格を含むことを特徴とするマイクロキャリアに関する。
また、本発明は、細胞非接着層が、質量平均分子量が2000以上であり、ポリエチレンオキサイド部分を有するポリマー(A)を含むことを特徴とするマイクロキャリアに関する。
また、本発明は、ポリマー(A)が、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上、2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマー部分(A1)と、ポリエチレンオキサイド部分(A2)とが、下記一般式(I)の構造を介して結合してなることを特徴とする、マイクロキャリアに関する。
Figure 2021151210
(式中、R11はメチル基又はシアノ基を表し、R12は単結合、又は−CONH−若しくは−C(=NH)NH−で示される基を表し、R13は−COO−、−O−又は−OCO−で示される基を表し、kは1〜3の整数を表す。)
また、本発明は、式(I)が、式(IA)〜(IC)のいずれかで示されるものであるマイクロキャリアに関する。
Figure 2021151210
また、本発明は、ポリマー(A)が、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)との合計の質量]が0.01%以上、99.0%未満であるマイクロキャリアに関する。
また、本発明は、ポリマー(A)が、高分子アゾ系重合開始剤を用いてアクリル系モノマーを重合してなるポリマーであり、高分子アゾ系重合開始剤が、ポリエチレンオキサイド部分(A2)を有し、質量平均分子量が5,000〜10万であるマイクロキャリアに関する。
また、本発明は、高分子アゾ系重合開始剤が、次式(II)で示されるものであるマイクロキャリアに関する。
Figure 2021151210
(式中、m、nはそれぞれ1以上の整数を示す。)
また、本発明は、細胞接着層が、細胞外マトリックス、合成基質から選ばれる少なくとも1種を含む組成物(B)を含むことを特徴とするマイクロキャリアに関する。
また、本発明は、組成物(B)が、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上、2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマー(B1)を含むことを特徴とするマイクロキャリアに関する。
また、本発明は、接着細胞を含む細胞を培養するためのマイクロキャリアに関する。
また、本発明は、マイクロキャリアにより細胞を培養することを特徴とする、細胞の培養方法に関する。
また、本発明は、マイクロキャリアにより細胞を培養し、培養された細胞を回収することを特徴とする細胞の回収方法に関する。
また、本発明は、上記方法により培養又は回収された細胞に関する。
本発明により、細胞毒性が低く、かつ、効率的に細胞を回収できるマイクロキャリアであって、作成が容易かつ安価であり、効率的に細胞を培養および回収する方法を提供することができる。
図1は、本発明のマイクロキャリアの上面図及び断面図である。
<マイクロキャリア>
本発明のマイクロキャリアは、粒子の表面に、細胞非接着層、細胞接着層が順に積層されてなり、細胞非接着層がポリエチレンオキサイド骨格を含むことを特徴とする。
本発明では、粒子の表面に、細胞非接着層、細胞接着層の順で積層されてなることで、培養の過程において、マイクロキャリアの形状を維持しつつ、培養初期において、細胞が十分に細胞接着層に接着し、増殖ができる。また、培養後期において、細胞非接着層に含まれるポリエチレンオキサイド骨格が徐々に培養面へ偏析し、細胞非接着性を示し、細胞が培養面から容易に剥離し、細胞を回収することができる。
マイクロキャリアの直径は特に限定されないが、粒子の最も長い寸法で示したときに、好ましくは50〜1000μmであり、より好ましくは50〜800μmであり、さらに好ましくは500〜500μmである。上記範囲内であると、細胞培養時にマイクロキャリアが凝集しにくいため培地中に分散が容易である。また、大き過ぎるとマイクロキャリアによる本来の大量培養が実現できず好ましくない場合がある。
本発明では、マイクロキャリアとしては比重が1.0〜1.2の材質のものが好ましく、より好ましくは1.0〜1.05である。上記範囲内であると、細胞培養中に、マイクロキャリアが沈殿しにくいため、分散させるために強い攪拌を必要とすることがない。
<粒子>
マイクロキャリアを形成する粒子の材質としては、特に限定されないが、具体的にはプラスチックや多糖類が挙げられる。そのような粒子としては特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、セルロース、シクロデキストリン、或いはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。その際、マイクロキャリアは多孔質のものであっても良く、多孔質のものでなくてもよい。マイクマイロキャリアが多孔質の場合、その細孔径は特に制約されるものではない。
粒子の直径は特に限定されないが、粒子の最も長い寸法で示したときに、好ましくは50〜1000μmであり、より好ましくは50〜800μmであり、さらに好ましくは500〜500μmである。上記範囲内であると、細胞培養時にマイクロキャリアが凝集しにくいため培地中に分散が容易である。また、大き過ぎるとマイクロキャリアによる本来の大量培養が実現できず好ましくない場合がある。
<細胞非接着層>
本発明の細胞非接着層は、ポリエチレンオキサイド骨格を含むものであれば、いかなるものも使用できる。
市販品としては、プルロニック(登録商標)(BASF社製Pluronic F127((PEG)99(PPG)69(PEG)99)である)等が挙げられる。
また、ポリエチレンオキサイド構造を含有する(メタ)アクリレート化合物も挙げられる。
具体的には、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル}エーテル、1,2−ポリプロピレングリコール−ビス{(メタ)アクリロイル−ポリ(オキシエチレン)}エーテル、ビス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)−メチル}ベンゼン、ビス{(メタ)アクリロイル−ポリ(オキシエチレン)}ビスフェノールA、ビス{3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−2−プロピル−ポリ(オキシエチレン)}ビスフェノールA、ビス{(メタ)アクリロイル−ポリ(オキシエチレン)}ビスフェノールF、1,2,3−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}プロパン、トリメチロールプロパン−トリス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、ペンタエリスリトール−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、ジトリメチロールプロパン−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、ジペンタエリスリトール−ヘキサ{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンポリエチレンオキサイドポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート等を例示することができる。
好ましくは、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール−ヘキサ{(メタ)アクリロイルオキシ−ポリ(エチレンオキシ)}エーテル、ポリグリセリンポリエチレンオキサイドポリ(メタ)アクリレート化合物、またはポリエチレンオキサイド部分を有するアクリル系ポリマー(A)である。
細胞非接着層は、ポリエチレンオキサイド部分を有する質量平均分子量が2000以上のポリマー(A)を含むことがより好ましい。
ポリマー(A)の質量平均分子量は、粒子へ塗布する容易さの観点から、3,000〜1,000,000であることがより好ましく、5,000〜500,000がさらに好ましい。
ポリマー(A)は、公知の方法により合成できる。例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、分散(沈殿)重合などが好ましく、溶液重合や分散(沈殿)重合がより好ましい。
ポリマー(A)のガラス転移温温度は、−70℃〜70℃であることが好ましく、より好ましくは、−50℃〜50℃である。ポリマー(A)のガラス転移温度を−70℃〜70℃の範囲に調製することで、粒子に対する良好なコーティング性が可能となり、粒子への密着性を付与することができる。このように、ポリマー(A)は、分子量、側鎖官能基種類および側鎖官能基導入量を最適化することが可能である。中でも、Tgが−70℃〜70℃であり、側鎖にC元素、H元素、およびO元素を含むポリマー(A)が好ましい。
ポリマー(A)は、水/1−オクタノール分配係数(cLogPow:以下LogP)の平均値が0以上、2以下であるモノマーから形成されるアクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)とを有することが好ましい。
LogPは、化学物質の性質を表す数値の一つであり、添加量に依存しない一定の値である。対象とする物質が、水と1−オクタノールの混合液において、水相とオクタノール相が接した系中で平衡状態にある場合を対象として、各相の濃度をその常用対数で示したものである。LogPが大きくなると、比較的に疎水性が増大する傾向があり、LogPが小さくなると、比較的に親水性が増大する傾向がある。
LogPの測定は、一般にJIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、LogPは実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。LogPの計算に用いる方法やソフトウェアについては公知のものを用いることができるが、本発明ではCambridgeSoft社のシステム:ChemdrawPro11.0に組み込まれたプログラムを用い、LogPを求めている。
ポリマー(A)は、前記LogPの平均値が0以上、2以下(以下、0〜2)であるモノマーから形成されるアクリル系ポリマー部分(A1)を有すると、水に対する溶解性が制御され、粒子への密着性が向上するため好ましい。
また、本発明のポリマー(A)は、ポリマー(A)が、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上、2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマー部分(A1)と、ポリエチレンオキサイド部分(A2)とが、下記一般式(I)の構造を介して結合してなることが好ましい。
Figure 2021151210
(式中、R11はメチル基又はシアノ基を表し、R12は単結合、又は−CONH−若しくは−C(=NH)NH−で示される基を表し、R13は−COO−、−O−又は−OCO−で示される基を表し、kは1〜3の整数を表す。)
また、本発明のポリマー(A)は、アクリルポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)とが下記式(IA)、(IB)又は(IC)のいずれかの構造(結合構造))を介して結合してなることが好ましい。ポリエチレンオキサイド部分(A2)を主鎖に組み込むことで、培地中、ミクロ相分離が誘起され、表面凝集構造が変化することによる細胞非接着層に含まれるポリエチレンオキサイド骨格が、培養面への偏析を誘導することができるため好ましい。
ポリマー(A)は、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)との合計の質量]=0.01%以上10.0%以下、すなわち、(A2)/[(A1)+(A2)]=0.1%以上10.0%以下であることが好ましい。親水性に富むポリエチレンオキサイド部分(A2)と疎水性に富むアクリル系ポリマー部分(A1)のバランスにより、細胞非接着層に含まれるポリエチレンオキサイド骨格が培養面への偏析し、細胞がマイクロキャリアの表面から容易に剥離することができるものと考察できる。また、(A2)が0.01%以上.10.0%以下という範囲で制御されており、親水性が高くなりすぎない設計となっているため、粒子に対する密着性を高めることができる。
Figure 2021151210
式(IA)、(IB)又は(IC)のいずれかの結合構造を有するポリマー(A)の合成方法は特に限定されない。上記の式(IA)で示される結合構造を有するポリマー(A)の合成方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤として4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)(例えば、富士フイルム和光純薬工業株式会社の市販品「V−501」等)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にカルボキシル基を有するアクリル樹脂が得られる。これに、PEG部分を構成する原料としてポリエチレングリコールを加え、エステル化反応をさせることで、アクリル系ポリマー部分と、PEG部分とが上記式(IA)で結合してなるポリマー(A)を得ることができる。
あるいは、ポリマー(A)を合成する際のラジカル重合開始剤として、下記式(II)で示される、PEG部分(A2)とアゾ基を含む構造単位を有する高分子アゾ重合開始剤を用いて好ましく合成することができる。式中、m及びnは、それぞれ独立に1以上の整数である。高分子アゾ重合開始剤は、高分子セグメントとアゾ基(−N=N−)が繰り返し結合した構造を有しており、本実施形態では、高分子セグメントとしてPEGブロックを含む高分子アゾ開始剤を用いることで、容易にポリマー(A)を合成できる。
Figure 2021151210
高分子アゾ重合開始剤を用いる場合、該開始剤中に含まれるアゾ基のモル数に対する、アクリル系モノマーの全モル数の比率を適宜変更することによって、ポリマー(A)の質量平均分子量の調整ができる。例えば、高分子アゾ重合開始剤中に含まれるアゾ基のモル数に対する、アクリル系モノマーの全モル数の比率が200であると、200量体のアクリル系ポリマーがPEG鎖の間に組み込まれることになり、ポリマーの絡み合いによる高い凝集力を付与することができる。
高分子アゾ重合開始剤の質量平均分子量は、5,000〜10万程度であることが好ましく、1万〜5万程度であることがより好ましい。また、該開始剤のPEG部分の分子量は、800〜1万程度であることが好ましく、1,000〜8,000程度であることがより好ましい。また、好ましくはmは15〜200、より好ましくはmは20〜100であり、好ましくはnは3〜50、より好ましくはnは4〜30である。
前記高分子アゾ重合開始剤は、PEG部分(A2)を有しているため、水、アルコール、及び有機溶剤に可溶であり、溶液重合、乳化重合、又は分散重合によりブロック重合体の合成が可能である。また、分子鎖骨格中に重合開始部分(ラジカル発生部分:―N=N−)を有しているため、別途重合開始剤を使用する必要がなく、さらには末端反応性マクロモノマーに比べてラジカルの反応性、及び安定性が高いという特徴を有している。
前記高分子アゾ重合開始剤は、・C(CH3)CN−(CH22−COO−(CH2CH2O)m−CO−(CH22−C(CH3)CN・にて示されるようなラジカルを生じ、後述するアクリル系モノマーを重合させる。そして、アクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマー部分(A1)と前記ラジカル由来の部分とが結合した主鎖を形成し、ポリマー(A)を形成する。PEG部分(A2)は、ラジカルの一部に由来する。
高分子アゾ重合開始剤の具体例としては、富士フィルム和光純薬製の高分子アゾ開始剤VPE0201(上記式(II)の(CHCHO)の部分の分子量が約2000、nが6程度)などが例示される。
高分子アゾ重合開始剤の他に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ開始剤や、過酸化ベンゾイルのうようなの有機過酸化物開始剤を併用することができる。これらの他の開始剤を併用することにより、開始効率を高め、効率よくアクリル系ポリマー部分(A1)にPEGに組み込むことができ、残留モノマーを減らすことができる。
ポリマー(A)合成時には、用途に応じてラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、リモネン等の連鎖移動剤を使用して、分子量や末端構造を制御してもよい。
式(IB)で示される結合構造を有するポリマー(A)の合成方法としては、例えば、アクリル系モノマーを、ヒドロキシ基を有するアゾ重合開始剤を用いて重合し、末端にヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーブロックを得る工程、及び前記アクリル系ポリマーブロックおよびポリエチレングリコールと、2官能のイソシアネート化合物とをウレタン化反応させる工程を含む方法により製造することができる。例えば、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド](例えば、富士フィルム和光純薬工業株式会社の市販品「VA−086」等)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にヒドロキシル基を有するアクリル樹脂が得られる。これに、PEG部分を構成する原料としてポリエチレングリコールを加え、2官能イソシアネート化合物を用いてウレタン化反応させることで、アクリル系ポリマー部分と、PEG部分とが結合してなるブロック重合体を得ることができる。
ウレタン化反応の際用いられる2官能イソシアネート化合物としては、例えば、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
式(IC)で示される結合構造を有するポリマー(A)の合成方法としては、例えば、アクリル系モノマーを、カルボキシル基を有するアゾ重合開始剤を用いて重合し、カルボキシル基を有するアクリル系ポリマーブロックを得る工程、及び前記アクリル系ポリマーブロックにポリエチレングリコールをエステル化反応させる工程を含む方法により製造することができる。
例えば、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]4水和物(例えば、富士フィルム和光純薬工業株式会社の市販品「VA−057」等)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にカルボキシル基を有するアクリル樹脂が得られる。これに、PEG部分を構成する原料としてポリエチレングリコールを加え、エステル化反応をさせることで、アクリル系ポリマー部分と、PEG部分とが結合してなるポリマー(A)を得ることができる。
なお、式(IB)または(IC)の結合構造を有するポリマー(A)を得る際に、上述した「他の開始剤」も適宜併用することができる。また、連鎖移動剤も適宜使用できる。
本発明において、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量とは、ポリエチレンオキサイド構造を含む原料の質量をそのまま適用する。例えば、式(IA)で示される結合構造を有する場合はポリエチレンオキサイド部分(A2)とアゾ基を含む高分子アゾ系重合開始剤の質量である。また、アクリル系ポリマー部分(A1)の質量は、重合に供したアクリル系モノマーの合計量である。
すなわち、モノマー99.5質量部、ポリエチレンオキサイド部分(A2)を有する高分子アゾ系重合開始剤0.5質量部を用いて合成した場合、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)との合計の質量]は0.5%となる。
(モノマー)
ポリマー(A)のアクリル系ポリマー部分(A1)の原料であるアクリル系モノマーについて説明する。なお、本発明において、アクリル系モノマーとは、アクリルモノマーとメタクリルモノマーの両方を意味する。
アクリル系モノマーの水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値は0以上、2以下が好ましい。LogPの平均値が低すぎると、ポリマー(A)の親水性が高く水に対する溶解性が向上するため、安定な塗膜を形成することができない恐れがある。
一方、LogPの平均値が高すぎると、ブロック共重合体の水に対する溶解性は抑えられるものの、疎水性が高すぎるために、スフェロイドを形成することができない恐れがある。さらに、LogPは生物学的な活性(毒性)と高い相関関係があり、本発明の課題である浮遊スフェロイド同士の凝集による内部壊死の抑制および生物学的安全性の効果を最大限に発揮することができない恐れがある。
本発明において、LogPの平均値は、使用する各モノマーのLogPを、各モノマーの質量%で平均した値とする。すなわち、LogPが0のモノマーとLogPが2のモノマーを50:50質量%の割合で仕込む場合、LogPの平均値は1となる。
本発明では、使用するアクリル系モノマーのLogPが0〜2の範囲であれば、ホモポリマーまたはコポリマー部分の原料として使用することができる。また、使用するアクリル系モノマーのLogPが0〜2の範囲外であっても、その他のアクリル系モノマーを含めたLogPの平均値が0〜2の範囲であれば、コポリマー部分の原料として使用することができる。
水/1−オクタノール分配係数(LogP)が0以上2以下であるモノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜4のアルキルアクリレート;アルキル基の炭素数が1〜3のアルキルメタクリレート;メトキシメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシメチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−[2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ]エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ブタジエン、イソプレンなどのビニル基含有モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、1−ビニルイミダゾール、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物のうち、特に2−メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートが経済性や操作性の点から好ましい。
ポリマー(A)は、架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーを共重合させることが好ましい。架橋塗膜を形成することにより、ポリマー(A)が粒子から剥離するのを抑えることができる。
LogPが0〜2であり、官能基を有するモノマーとしては、カルボキシル基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマーなどを使用することができる。例えば、カルボキシル基が導入された共重合体は、エポキシ化合物やアジリジン化合物、カルボジイミド化合物、金属キレート化合物、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド化合物により架橋することができる。水酸基が導入された共重合体は、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物等により架橋することができる。アミノ基が導入された共重合体は、エポキシ化合物により架橋することができる。イソシアネート基が導入された共重合体は、水酸基含有化合物により架橋することができる。これら、架橋点となる官能基を有するモノマーの使用量は、全モノマーの合計100質量%中、10質量%以下で使用することが好ましい。10質量%以下で使用することで、架橋剤を併用した場合に適度な架橋密度を有する塗膜を得ることができる。
アクリル系ポリマー部分(A1)は、水/1−オクタノール分配係数(LogP)が0〜2であるモノマーのみから形成されるホモポリマー部分もしくはコポリマー部分である。また、LogPが0〜2であるモノマーを一種類だけ用いてポリマー(A)を得てもよいし、LogPが0〜2であるモノマーを複数種用いて重合してポリマー(A)を得てもよい。
LogPが0〜2の範囲外のモノマーの中で、架橋点となる官能基を有さないモノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が5〜20のアクリレート、アルキル基の炭素数が4〜20のメタクリレート、スチレンなどのビニル基含有モノマーなどが挙げられる。
LogPが0〜2の範囲外のモノマーの中で、架橋点となる官能基を有するモノマーとしては、例えば、マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマー、4−ヒドロキシスチレン、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有モノマーなどが挙げられる。
さらに、本発明では、ポリマー(A)に架橋構造を導入するために多官能モノマーを共重合させてもよい。共重合しながら架橋する場合、架橋割合は、用いる多官能モノマー量が多いほど架橋度が高くなり、反応中にゲル化する可能性も高まる。そのため、多官能モノマーの量としては、全モノマー100質量%中、0.01〜10質量%の範囲が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。ポリマー(A)が多官能モノマーにより架橋している場合、難水溶性になるため、架橋剤を使用した場合と同様に、粒子や細胞非接着層からの剥離を低減することができる。
<細胞接着層>
本発明の細胞接着層とは、細胞接着性を有するものであれば、いかなるものも使用できるが、細胞外マトリックスおよび合成基質からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む組成物(B)を含むことが好ましい。このようにすることで、細胞の付着性をさらに向上することができるという利点がある。
[細胞外マトリクス]
細胞外マトリクスとしては、具体的には、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、ヒアルロン酸、ビトロネクチン、カドヘリンからなる少なくとも1種のものが挙げられる。
好ましくは、コラーゲン、ラミニン及びフィブロネクチンの細胞外マトリクスである。
コラーゲンとは、コラーゲンは、結合組織と基底膜の主要なタンパク質成分で、伸張強度と組織分布の異なる多数の型が存在している。多くの体内組織中の構造の硬さや柔軟さ、構造変化は、細胞の制限や区分化と同様に、コラーゲン組成の変化によるものである。コラーゲンの市販品としては、Collagentype i〜ivの酸抽出コラーゲン、ペプシン可溶化コラーゲン(ニッピ社製)、AteloCellシリーズのウシ皮由来の高純度コラーゲン酸性溶液(高研社製)、Cellmatrixシリーズの豚腱由来のペプシン可溶化コラーゲン(新田ゼラチン社製)、セルキャンパスシリーズの鱗由来コラーゲン(多木化学社製)等が利用可能である。
ラミニンとは、ほとんどの組織の基底膜に存在している糖タンパク質である。α1、β1、γ1の3本鎖から構成される。コラーゲンやヘパラン硫酸と結合して、基底膜の構成および機能を担っている。培養系においては主に上皮細胞、内皮細胞、肝細胞等を接着し、また、神経細胞の軸索伸展を促進し、分化、走化性などにも関わっている。癌の転移能と関係が深く、高転移性の癌細胞は細胞表面にラミニンレセプターが多くなることが知られている。ラミニンの市販品としては、マウスEHS肉腫由来のラミニン溶液(富士フイルム和光純薬社)、Recombinant Human Laminin(オリエンタル酵母社)、通常ヒトES細胞で発現分泌されるラミニンLaminin521(BioLamina社製)、i Matrix−511(タカラバイオ社製:ラミニンのα鎖、β鎖、γ鎖のC末端領域から構成されるもの)等が利用可能である。
フィブロネクチンとは、血漿フィブロネクチン、細胞性フィブロネクチン、胎児性フィブロネクチン、単鎖フィブロネクチンの4種類がある。フィブロネクチンは、細胞外マトリクスを形成する糖タンパク質で、ポリペプチドが二量体を形成している。
フィブロネクチンの市販品としては、ヒト血漿由来のフィブロネクチン溶液(富士フィルム和光純薬社製)、ウシ血漿由来のフィブロネクチン溶液(シグマアルドリッチ社)等が利用可能である。
これらの細胞外マトリクスは単独で使用しても良く、複数を混合して使用することもできる。複数を混合して使用する市販品としては、マトリゲル(コーニング社製:ラミニンivコラーゲン、ヘパリン硫酸プロテグリカン、エンタクチン/ニドゲン及び成長因子の混合物)等が利用可能である。
[合成基質]
合成基質としては、オリゴペプチド担持ポリマーが挙げられる。オリゴペプチド担持ポリマーは、アルギニンーグリシンーアスパラギン酸(RGD)配列を有するオリゴペプチドをポリマーに共有結合させた基質である。市販品としてSynthemaxシリーズ(コーニング社製)等が利用可能である。
[ポリマー(B1)]
組成物(B)は、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上、2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマー(B1)をさらに含むことが好ましい。これにより、
細胞非接着層に含まれるポリエチレンオキサイド骨格のマイクロキャリア表面への偏析を促進し、細胞回収の効率が高まるという利点がある。
アクリル系ポリマー(B1)とは、細胞非接着層に含まれるポリマー(A)において、LogPの平均値が0以上、2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマー(A1)と同様な骨格であれば、いかなるものも使用できる。例えば、細胞非接着層に含まれるポリマー(A)が、メトキシエチルアクリレートモノマーとポリエチレングリコールーメタクリレートモノマーから形成されるポリマーであれば、アクリル系ポリマー(B1)は、メトキシエチルアクリレートモノマーから形成されるメトキシエチルアクリレートポリマーである。また、例えば、細胞非接着層に含まれるポリマー(A)が、テトラヒドロフルフリルアクリレートモノマーがポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤での重合により得たポリマーであれば、アクリル系ポリマー(B1)は、テトラヒドロフルフリルアクリレートモノマーから形成されるテトラヒドロフルフリルアクリレートポリマーである。
[溶剤]
ポリマー(A)は、溶剤を加えた溶液の形態で用いることができる。溶媒としては、粒子を溶解させないものであれば特に限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン(以下、MEKという)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒等が挙げられる。
また、組成物(B)は、溶剤を含有することができる。溶剤を含有することで細胞接着層が細胞非接着層への塗工性を向上することできる。組成物(B)の溶剤としては、水溶性溶媒を使用するのが好ましく、グリコールエーテル類、ジオール類がよく、中でも(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテル、炭素数3〜6のアルカンジオールが効果的である。グリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。ジオール類の具体例としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。この中でも効果が高いのは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールである。これらの溶剤は単独で使用してもよく、水や酢酸水溶液、乳酸水溶液、などの水溶液を複数混合して使用することもできる。
[積層方法]
本発明の粒子の表面に、細胞非接着層、細胞接着層が順に積層する方法とは、浸漬、刷毛、浸漬、ローラ、スプレー、注入、塗工機など種々の塗布方法により粒子の表面に溶液を塗布することもできる。塗布後、溶媒を除去した後の塗膜の膜厚は限定されないが、100μm以下が好ましい。10μm以下がより好ましく、5μm以下がより好ましい。
[細胞]
本発明の培養方法で培養される細胞は特に限定されず、一般に、増殖のために適切な表面に自身を接着させる必要がある細胞であることが好ましい。細胞の種類は特に限定されず、筋芽細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、神経細胞、肝細胞などいかなるものであってもよい。また、主としてヒト由来のものを用いるが、ヒト以外の動物(具体的には、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ニワトリなど)由来の細胞を用いてもよい。
また、本発明で使用可能な培養可能な肝細胞とは、ヒト由来または動物から肝細胞を単離する方法は、公知の方法に従って行うことができる。肝細胞の由来は胎児、新生児、成体のいずれであってもよい。また、胚性幹(ES) 細胞および誘導多能性(iPS)幹細胞、または臍帯血、骨髄、脂肪、血液由来組織性幹細胞から分化誘導される肝細胞を用いることもできる。これらの細胞から肝細胞を誘導する方法は公知の方法に従って行うことができる。
本発明のマイクロキャリアにより細胞を培養する、細胞の培養方法としては特に限定されないが、従来公知の培地等を使用することができる。培養条件は特に限定されず、各種細胞に適した条件で培養すればよい。
[培地]
本発明で用いる培地は、特に限定されないが、例えば、動物細胞を培養する培地であれば、無血清培地、血清含有培地等が挙げられる。そのような培地は、さらにレチノイン酸、アスコルビン酸等の分化誘導物質を添加してもよい。マイクロキャリアの細胞接着層への播種密度は当該技術分野における常法に従えば良く特に限定されるものではない。
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例において、Mwは質量平均分子量、Tgはガラス転移温度を意味する。
<質量平均分子量(Mw)の測定方法>
ポリマー(A)の質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用した。測定装置及び測定条件としては、下記条件1によることを基本とし、試料の溶解性等により条件2とした。ただし、重合体種によっては、さらに適宜適切なキャリア(溶離液)及びそれに適合したカラムを選定した。その他の事項については、JISK7252−1〜4:2008に基づいた。なお、難溶の高分子化合物については下記条件の下、溶解可能な濃度で測定した。
カラム:TOSOHTSKgelSuperHZM−H、
TOSOHTSKgelSuperHZ4000 及び
TOSOHTSKgelSuperHZ2000を連結したもの。
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
<ガラス転移温度(Tg)の測定方法>
乾燥したポリマー(A)、ポリマー(B1)、について、メトラー・トレド社製「DSC−1」を使用し、サンプル量約5mgをアルミニウム製標準容器に秤量し、温度変調振幅±1℃、温度変調周期60秒、昇温速度2℃/分の条件にて、−80〜200℃まで測定し、可逆成分の示差熱曲線からガラス転移温度を求めた。
<ポリエチレンオキサイド骨格の含有量の測定方法>
ポリエチレンオキサイド骨格の含有量=[ポリエチレンオキサイド骨格を含む化合物の仕込み量(g)/有効成分またはモノマー、開始剤、触媒の仕込み総量(g)]×100%
<ポリマー(A)>
[製造例1]
[ポリマー(A−1)]
・BASF社製のPluronicF−127水溶液(有効成分10%)を使用した。
ポリエチレンオキサイド骨格の含有量は100%であった。
[製造例2]
[ポリマー(A−2)]
・温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてMEK450質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてメトキシポリエチレングリコールーメタクリレート(日油社製ブレンマーPME200)を50.0質量部、重合開始剤としてAIBN(2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル))を0.5質量部、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプでMEKを除去した後、エタノール/水=90/10質量部からなる混合溶媒を加えて希釈することで、固形分1質量%のポリマー(A−2)溶液を得た。得られたポリマー(A−2)のMwは0.4万、Tgは−59℃、ポリエチレンオキサイド骨格の含有量は99%であった。
[製造例3]
[ポリマー(A−3)]
・温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてMEK50質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてメトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールーメタクリレート(日油社製ブレンマーPME200)をそれぞれ、44.8質量部、5.2質量部、重合開始剤としてAIBN(2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル))を1.0質量部、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプでMEKを除去した後、エタノール/水=90/10質量部からなる混合溶媒を加えて希釈することで、固形分1質量%のポリマー(A−3)溶液を得た。得られたポリマー(A−3)のMwは1.4万、Tgは−16℃、ポリエチレンオキサイド骨格の含有量は10.3%であった。
[製造例4]
[ポリマー(A−4)]
・温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてMEK50質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてテトラヒドロフルフリルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールーメタクリレート(日油社製ブレンマーPME1000)をそれぞれ、43.2質量部、6.8質量部、重合開始剤としてAIBN(2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル))を0.5質量部、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプでMEKを除去した後、エタノール/水=90/10質量部からなる混合溶媒を加えて希釈することで、固形分1質量%のポリマー(A−4)溶液を得た。得られたポリマー(A−4)のMwは3.0万、Tgは−17℃、ポリエチレンオキサイド骨格の含有量は13.6%であった。
[製造例5〜6]
[ポリマー(A−5〜6)]
ポリマー(A−4)と同様の方法で、表1の組成および仕込み質量部に従って合成を行った。
Figure 2021151210



[製造例7]
[ポリマー(A−7)]
・温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてMEK130質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてメトキシエチルアクリレートを100質量部、重合開始剤としてV501(富士フィルム和光純薬工業社製:アゾ開始剤)を4.2質量部、溶媒としてMEKを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止し、末端がカルボン酸のアクリル樹脂を得た。その後、PEG2000(日油株式会社製、ポリエチレングリコール、Mn=2000、水酸基価=56)を1部、及び触媒としてテトラブチルオルソチタネートを0.05部仕込み、85℃まで昇温し、MEKの流出を確認してから、温度を120℃に昇温し、その後、30分ごとに10℃ずつ昇温しながら脱水反応を続けた。温度が230℃になった後、そのままの温度で3時間反応を続け、約2kPaの真空化で1時間保持し、さらに約1kPaの真空化で2〜3時間反応させ、温度を低下させた。内温が100℃まで低下したところに、エタノール/水=90/10質量部からなる混合溶媒を加えて希釈することで、固形分1質量%のポリマー(A−7)溶液を得た。得られたポリマー(A−7)のMwは4.5万、Tgは−43℃、ポリエチレンオキサイド骨格の含有量は0.91質量%、モノマーの平均LogPは0.48であった。
[製造例8]
[ポリマー(A−8)]
・温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてアセトン130質量部を
仕込み、撹拌下55℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてテトラヒドロフルフリルアクリレートを100質量部、重合開始剤としてVA086(富士フィルム和光純薬工業社製:アゾ開始剤)を3.9質量部、溶媒としてアセトンを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止し、末端が水酸基のアクリル樹脂を得た。その後、PEG2000(日油株式会社製、ポリエチレングリコール、Mn=2000、水酸基価=56)を0.5部、イソホロンジイソシアネートを0.5部、触媒としてジメチルベンジルアミンを0.01部仕込み、55℃まで昇温し、FT−IRでイソシアネート基由来のピーク(2254cm−1付近)がなくなるまで反応した。反応停止後、ダイヤフラムポンプでアセトンを除去し、エタノール/水=90/10質量部からなる混合溶媒を加えて希釈することで、固形分1質量%のポリマー(A−8)溶液を得た。得られたポリマー(A−8)のMwは5.1万、Tgは−10℃、ポリエチレンオキサイド骨格の含有量は0.48質量%、モノマーの平均LogPは0.78であった。
[製造例9]
[ポリマー(A−9)]
・温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてアセトン130質量部を仕込み、撹拌下55℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてテトラヒドロフルフリルアクリレートを100質量部、重合開始剤としてVA057(富士フィルム和光純薬工業社製:アゾ開始剤)を7.0質量部、溶媒としてアセトンを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止し、末端がカルボキシル基のアクリル樹脂を得た。その後、EX861(ナガセケムテックス株式会社製、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量=551g/eq.)を1部、触媒としてジメチルベンジルアミンを0.01部仕込み、55℃まで昇温し、アセトンを留去しながら反応した。反応停止後、ダイヤフラムポンプでアセトンを完全に除去し、エタノール/水=90/10質量部からなる混合溶媒を加えて希釈することで、固形分1質量%のポリマー(A−9)溶液を得た。得られたポリマー(A−9)のMwは3.9万、Tgは−8℃、ポリエチレンオキサイド骨格の含有量は0.93質量%、モノマーの平均LogPは0.78であった。
ポリマー(A−7〜9)の特性値を表2に示す。
Figure 2021151210



[製造例10]
[ポリマー(A−10)]
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてMEK65質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてテトラヒドロフルフリルアクリレートを50質量部、重合開始剤としてVPE0201(富士フイルム和光純薬工業社製:マクロアゾ開始剤)を0.5質量部、溶媒としてMEKを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプでMEKを除去した後、エタノール/水=90/10質量部からなる混合溶媒を加えて希釈することで、固形分1質量%のブロック重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体のMwは12.5万、Tgは−50℃、ポリエチレンオキサイド骨格の含有量は1.0質量%、モノマーの平均LogPは0.78であった。
[製造例11〜12]
[ポリマー(A−11〜12)]
ポリマー(A−10)と同様の方法で、表3の組成および仕込み質量部に従って合成を行った。
その特性値を表3に示す。
Figure 2021151210
表1〜3中、略号は以下の通り。
MEA:メトキシエチルアクリレート、LogP=0.48
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート、LogP=0.78
VPE0201:ポリエチレングリコールユニット含有高分子アゾ重合開始剤
AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
MEK:メチルエチルケトン
[製造例13]
[組成物(B1−1)]
・温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてMEK450質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてメトキシエチルアクリレートを50.0質量部、重合開始剤としてAIBNを0.6質量部、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプでMEKを除去した後、エタノール/水=90/10質量部からなる混合溶媒を加えて希釈することで、固形分1質量%の組成物(B1−1)溶液を得た。得られた組成物(B1−1)のMwは3.3万、Tgは−50℃,モノマーのLogPは0.48であった。
[製造例14]
[組成物(B1−2)]
・温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてMEK450質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてテトラヒドロフルフリルアクリレートを50.0質量部、重合開始剤としてAIBNを1.0質量部、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させた後、室温に冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプでMEKを除去した後、エタノール/水=90/10質量部からなる混合溶媒を加えて希釈することで、固形分1質量%の組成物(B1−2)溶液を得た。得られた組成物(B1−2)のMwは2.3万、Tgは−12℃、モノマーのLogPは0.78であった。
Figure 2021151210

[製造例15]
[組成物 (B2−1)]
・セルキャンパスAQ−03A(多木化学社製のコラーゲン溶液、有効成分:0.3%)を使用した。
[製造例16]
[組成物 (B2−2)]
・ヒト血漿由来フィブロネクチン溶液(富士フイルム和光純薬社製、有効成分:0.05%)を使用した。
[製造例17〜22]
[組成物(B−1〜B−6)]
表5の固形分配合比になるように混合し、シェイカーで撹拌を行い、十分に均一になるまで攪拌した。その後、目開き1.0μmのメンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去し本発明の組成物(B−1〜B−6)を作成した。
Figure 2021151210
<積層体の調製>
ポリエチレンオキサイド骨格の偏析挙動を評価するために、市販品フイルムの表面に、ポリマー(A)を含む細胞非接着層、組成物(B)を含む細胞接着層の順に積層された積層体(G1〜14)を調製した。
[製造例23〜34]
[積層体G1〜12]
市販品フイルムとしては、ポリスチレンフィルム(三菱樹脂社製、グレード:サントクリア)を使用し、その表面に、表6の構成となるようにポリマー(A)を2mL添加し、3000rpmで30秒間スピンコートした。室温で24時間乾燥し、この細胞非接着層上に、さらに組成物(B)を同様にスピンコートし、乾燥し、積層体(G1〜12)を得た。
[比較製造例1]
[積層体G13]
・ポリスチレンフィルム(三菱樹脂社製、グレード:サントクリア)を使用した。
[比較製造例2]
[積層体G14]
・ポリスチレンフィルム(三菱樹脂社製、グレード:サントクリア)の表面に、組成物(B−1)を2mL添加し、3000rpmで30秒間スピンコートした。室温で24時間乾燥し、組成物(B−1)で表面を被覆し、積層体(G14)を得た。
積層体G1〜14の構成を表6に示す。
Figure 2021151210


<積層体の評価>
[製造例23〜34]、[比較製造例1、2]
[水中接触角の変化]
本明細書において、積層体G1〜14の水中接触角とは、積層体G1〜14を1、3日目の水中に浸漬後の状態で、積層体G1〜14の表面に触れた空気の接触角を意味する。
水中接触角測定は、自動接触角計DM−301(協和界面科学社製、商品名)を用い、水中で、上記積層体G1〜14の表面に気泡を接触させるcaptive bubble法を用いて行った。
水中接触角が大きいほど、積層体G1〜14の親水性が高いことを意味する。
・評価基準:
水中気泡接触角の変化=浸漬3日目の水中接触角(°)―浸漬1日目の水中接触角(°)
〇:≧10°
△:0°<水中気泡接触角の変化<10°
×:0°≦水中気泡接触角の変化
実験の結果を表6に示す。
[ゼータ電位の変化]
本明細書において、積層体G1〜14のゼータ電位とは、積層体G1〜14を1、3日目の水中に浸漬後の状態で、積層体G1〜14の表面に触れたゼータ電位を意味する。
ゼータ電位測定は、積層体G1〜14をゼータ電位計(大塚電子,ELSZ−2000ZEH)に付属の平板セルに挿入し、セル内部をモニター粒子含有塩化ナトリウム水溶液で満たし、該ゼータ電位計を用いて25℃で、1、7日目の水中に浸漬後積層体G1〜14のゼータ電位を測定した。
・評価基準:
ゼータ電位の変化=浸漬3日目のゼータ電位(mV)―浸漬1日目のゼータ電位(mV)
〇:≧10mV
△:0°<ゼータ電位の変化<10mV
×:0°≦ゼータ電位の変化
実験の結果を表6に示す。
<マイクロキャリアの調製>
[実施例1〜12]
[マイクロキャリアS1〜12]
・表7の構成に従い、ナス型フラスコに直径200μmのポリスチレン(Pst)粒子10gとポリマー(A)20gを加えた。ロータリーエバポレーターを用い、40℃で撹拌しながら減圧することで、溶媒を完全に除去し、ポリマー(A)を粒子に被覆した。重量測定から、コート量は5μg/cmであった。そして、ポリマー(A)を粒子に被覆した粒子と組成物(B)10gを加えた。ロータリーエバポレーターを用い、40℃で撹拌しながら減圧することで、溶媒を完全に除去し、コート量は2.5μg/cmであり、マイクロキャリアS1〜12を得た。
[比較例3]
[マイクロキャリアS13]
・先述のポリスチレン粒子10gを使用した。
[比較例4]
[マイクロキャリアS14]
・ナス型フラスコに直径200μmのポリスチレン粒子10gと組成物(B−1)20gを加えた。ロータリーエバポレーターを用い、40℃で撹拌しながら減圧することで、溶媒を完全に除去し、組成物(B−1)を粒子に被覆した。重量測定から、コート量は5μg/cmであった。
<マイクロキャリアの評価>
[マイクロキャリア表面での細胞培養]
[培養細胞の増殖]
AGCテクノグラス製のφ35mmIWAKI無処理ディッシュに、マイクロキャリア(S1〜14)上にチャイニーズハムスター卵巣由来CHO−K1細胞を1×10、2ml播種した。37℃、CO2濃度5%で培養した。培地は10%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン−アンホテリシンB(Biological Industries USA.InC.,Cromwell,CT,USA)を補充した1.5mLのαMEM(Wako.Osaka,Japan)を添加したものを使用した。
培養1日目、マイクロキャリア(S1〜14)表面への細胞接着を確認した。マイクロキャリア(S1〜14)を回収し、1ccのトリプシンEDTA溶液を加え、37℃、CO2濃度5%で5分間静置し、残りの細胞をビーズから剥離した。剥離した細胞の数は血球計算盤で計測した。
細胞増殖率:培養1日目後細胞の数/播種した細胞の数 ×100%
・評価基準:
〇:≧150%
△:100%≦細胞増殖率<150%
×:<100%
実験の結果を表7に示す。
[細胞の回収]
AGCテクノグラス製のφ35mmIWAKI無処理ディッシュに、マイクロキャリア(S1〜14)上にチャイニーズハムスター卵巣由来CHO−K1細胞を1×10、2ml播種した。37℃、CO2濃度5%で培養した。培地は10%FBS、1%ペニシリン−ストレプトマイシン−アンホテリシンB(Biological Industries USA.InC.,Cromwell,CT,USA)を補充した1.5mLのαMEM(Wako.Osaka,Japan)を添加したものを使用した。
培養3日目、マイクロキャリア(S1〜14)を回収し、マイクロキャリアに付着した細胞の数をカウントするために、1ccのトリプシンEDTA溶液を加え、37℃、CO2濃度5%で5分間静置し、細胞をマイクロキャリアから剥離した。剥離した細胞の数は血球計算盤で計測した。
また、マイクロキャリアから培地中に剥離した細胞をカウントするために、3%FBS(ウシ胎仔血清)/PBSで1 回洗浄後、セルストレーナーに通過させた懸濁液中の細胞を血球計算盤で計測した。
培養3日目の細胞回収率=[セルストレーナーに通過させた細胞の数/マイクロキャリアに付着した細胞の数]×100%
・評価基準:
〇:≧100%
△:50%≦培養3日目の細胞の回収率<100%
×:<50%
実験の結果を表7に示す。
Figure 2021151210

<結果>
表6に示す実施例と比較例を見て分かる通り、製造例23〜34で使用しているポリスチレンフィルムの表面にポリマー(A)、組成物(B)の順で積層されてなる積層体G1〜12は、比較例製造例1で使用している積層体G13、比較製造例2で使用しているポリスチレンフィルムの表面に組成物(B)積層されてなる積層体G14に対して、水中に浸漬の経時変化による水中接触角、ゼータ電位の変化が見られた。積層体G1〜12は、浸漬3日目の水中接触角と浸漬1日目の水中接触角の差が+10°以上とゼータ電位の差が+10mV以上を示したことは、親水性のポリエチレンオキサイド骨格が積層体の表面へ徐々に偏析したためであると考えられる。
表7に示す実施例と比較例を見て分かる通り、実施例1〜12で使用しているポリスチレン粒子の表面にポリマー(A)、組成物(B)の順で積層されてなるマイクロキャリアS1〜12は、比較例1で使用しているマイクロキャリアS13、比較例2で使用しているポリスチレン粒子の表面に組成物(B)積層されてなるマイクロキャリアS14に対して、細胞の増殖率、細胞の回収率が高かった。
また、実施例4、5、11、12に使用されるマイクロキャリアS4、S5、S11、S12は、親水性―疎水性のバランスが最適に設計されるため、培養層が播種の初期段階(播種1日目)で、細胞に対する接着性を付与し、高い細胞増殖性が得られる。これは、播種1日目で、細胞が培養面に接着し始めて、細胞を増殖したものである。播種3日を経過した後、ポリエチレンオキサイド骨格が積層体の表面へ徐々に偏析すると、細胞が自然にマイクロキャリアの表面から脱離し始める挙動を示した。これにより、得られた細胞を、容易に回収することができた。
本発明に記載されるマイクロキャリアを利用することで、各組織から得られた細胞を大量に効率良く培養できるようになる。この培養方法を利用すれば、損傷なく、効率良く細胞を剥離することができるようになる。
1 粒子
2 細胞非接着層
3 細胞接着層





Claims (13)

  1. 粒子の表面に、細胞非接着層、細胞接着層が順に積層されてなり、細胞非接着層がポリエチレンオキサイド骨格を含むことを特徴とするマイクロキャリア。
  2. 細胞非接着層が、ポリエチレンオキサイド構造を有する質量平均分子量が2000以上のポリマー(A)を含むことを特徴とする請求項1に記載のマイクロキャリア。
  3. ポリマー(A)が、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上、2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマー部分(A1)と、ポリエチレンオキサイド部分(A2)とが、下記一般式(I)の構造を介して結合してなることを特徴とする、請求項2に記載のマイクロキャリア。
    Figure 2021151210
    (式中、R11はメチル基又はシアノ基を表し、R12は単結合、又は−CONH−若しくは−C(=NH)NH−で示される基を表し、R13は−COO−、−O−又は−OCO−で示される基を表し、kは1〜3の整数を表す。)
  4. 式(I)が、式(IA)〜(IC)のいずれかで示されるものである請求項3に記載のマイクロキャリア。
    Figure 2021151210
  5. ポリマー(A)が、ポリエチレンオキサイド部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド部分(A2)との合計の質量]が0.01%以上、10.0%以下である、請求項3又は4に記載のマイクロキャリア。
  6. ポリマー(A)が、高分子アゾ系重合開始剤を用いてアクリル系モノマーを重合してなるポリマーであり、高分子アゾ系重合開始剤が、ポリエチレンオキサイド部分(A2)を有し、質量平均分子量が5,000〜10万である請求項3〜5のいずれか1項に記載のマイクロキャリア。
  7. 高分子アゾ系重合開始剤が、次式(II)で示されるものである、請求項6に記載のマイクロキャリア。
    Figure 2021151210
    (式中、m、nはそれぞれ1以上の整数を示す。)
  8. 細胞接着層が、細胞外マトリックスおよび合成基質からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む組成物(B)を含むことを特徴とする、請求項1〜7いずれか1項に記載のマイクロキャリア。
  9. 組成物(B)が、水/1−オクタノール分配係数(LogP)の平均値が0以上、2以下であるアクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマー(B1)を含むことを特徴とする、請求項8に記載のマイクロキャリア。
  10. 接着細胞を含む細胞を培養するための、請求項1〜9いずれか1項に記載のマイクロキャリア。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロキャリアにより細胞を培養することを特徴とする、細胞の培養方法。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のマイクロキャリアにより細胞を培養し、培養された細胞を回収することを特徴とする、細胞の回収方法。
  13. 請求項11又は12に記載の方法により培養又は回収された細胞。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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