JP7425947B1 - 細胞培養基材、細胞培養基材の製造方法、及びスフェロイドの製造方法 - Google Patents

細胞培養基材、細胞培養基材の製造方法、及びスフェロイドの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、内部壊死が起きない適切なサイズに制御された、活性の高いスフェロイドを高効率で形成可能な、細胞培養基材、細胞培養基材の製造方法、及びスフェロイドの製造方法を提供することにある。【解決手段】平面基材上にポリマー層を有する細胞培養基材であって、前記ポリマー層の表面における、大気中での算術平均粗さRaが0.8nm以下であり、水中での算術平均粗さRaが0.5~20.0nmである、細胞培養基材。【選択図】図1

Description

本発明は、細胞培養基材、細胞培養基材の製造方法、及びスフェロイドの製造方法に関する。
生体内では、肝臓、膵臓、皮膚、血管等の各器官を形成する細胞が、細胞同士で相互作用し三次元的にネットワークを形成した細胞凝集塊(本発明ではスフェロイドと同義とする)として存在している。このことから通常、ポリスチレン上で二次元的に培養した細胞は、その機能が実際の体内における機能と必ずしも相関しないことや、機能性が低いことが問題視されている。そのため、創薬スクリーニングや再生医療用途において細胞を三次元的に凝集させたスフェロイドが注目されている。
そこで、スフェロイドを製造する方法として、様々な樹脂基材を足場として用いた方法が提案されている。特許文献1には、細胞接着性が低い樹脂層を形成した容器内にて浮遊状態で培養を行なう方法が提案されている。しかし、そのような細胞接着性の低い樹脂では細胞の運動性が高すぎるために、細胞同士が過度に接着し、巨大化してしまうため、中心部の細胞が壊死してしまう懸念がある。
そのため、細胞の微接着性を付与した培養基材が、特許文献2~4、及び非特許文献1に開示されている。例えば、特許文献2及び3では、PEG鎖を主鎖に組み込んだアクリル樹脂を含む細胞培養用塗膜を具備する細胞培養用部材が開示されている。しかし、特許文献2及び3に記載された細胞培養用塗膜は、スピンコート法により形成されており、遠心方向への塗り斑や壁面でのコーティング樹脂の滞留により、培養面における膜のムラが生じるため、場所による物性のばらつきやスフェロイドの形成効率に問題があった。特許文献4では含フッ素ポリイミド基材を用いてスフェロイドを製造する手法が開示されている。しかし、特許文献4記載の基材を用いた場合、細胞の由来や継代数によっては、細胞の接着性が高く、スフェロイドが製造できない懸念がある。特許文献5では、温度応答性樹脂層による樹脂の剥離を利用して、スフェロイドを製造する手法等が開示されている。しかし、特許文献5に記載された手法では、スフェロイドを回収する際に温度変化を要するという問題点がある。さらに、非特許文献1ではヒアルロン酸-キトサン膜を平底の培養容器にコーティングし、幹細胞がスフェロイドを形成することを報告している。しかし、使用されているヒアルロン酸、及びキトサンは自然界に存在する天然物であり、ロットのブレ、安全性、及び価格面で課題があった。
他にも、特許文献6では凹凸構造をナノインプリントした基材を用いてスフェロイドを形成させる方法が開示されており、特許文献7では、マイクロパターンのような特殊な形状の基材上でスフェロイドを製造する手法が開示されているが、インプリントやプラズマエッジング加工に伴うコストや作成の煩雑さから、スフェロイドの大量製造には不向きである。さらに、特許文献8では、U底プレートに、PEG鎖を組み込んだ樹脂を塗布し、自重によりスフェロイドを形成させる方法が開示されている。しかし、これは播種した全ての細胞が自重により最密充填に倣ってスフェロイド化するため、内部壊死が引き起こされやすく、活性の悪い細胞も混在してしまう。さらに、1ウェルにつき1個のスフェロイドしか得られないため効率的な製造法ではないという問題点もある。
特開2008-061609号公報 特開2021-90419号公報 特開2021-45117公報 特許第6901252号公報 特開2020-62009号公報 特開2014-210404号公報 特開2006-67987号公報 特許第5831666号公報
HUANG,GUO-SHIANG,ETAL.BIOMATERALS,2011.07.16,VOL.32,P6929-6945.
上記事情に鑑み、本発明の目的は、内部壊死が起きない適切なサイズに制御された、活性の高いスフェロイドを高効率で形成可能な、細胞培養基材、細胞培養基材の製造方法、及びスフェロイドの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討した結果、大気中及び水中での膜表面の物性が一定の範囲内で制御されたポリマー層を具備した細胞培養基材を用いて、細胞培養を行った際に、活性の高い、適切なサイズのスフェロイドを高効率で提供できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の[1]~[15]に関する。
[1]
平面基材上にポリマー層を有する細胞培養基材であって、前記ポリマー層の表面における、大気中での算術平均粗さRaが0.8nm以下であり、水中での算術平均粗さRaが0.5~20.0nmである、細胞培養基材。
[2]
平面基材上にポリマー層を有する細胞培養基材であって、前記ポリマー層の表面における、大気中での算術平均粗さRaが0.8nm以下であり、水中での接触角が130度以上160度以下であり、式1で表される接触角ヒステリシスが20度以上である、細胞培養基材。
(式1)接触角ヒステリシス=(大気中での接触角)+(水中での接触角)-180(°)
[3]
ポリマー層の表面における、膜厚分布の標準偏差が40nm以下である、[1]又は[2]記載の細胞培養基材。
[4]
式2で表される算術平均粗さRaの差が0.5~20nmである、[1]~[3]いずれか記載の細胞培養基材。
(式2)算術平均粗さの差=(水中での算術平均粗さ)―(大気中での算術平均粗さ)(
nm)
[5]
ポリマー層の表面における水中での算術平均粗さRaが、前記ポリマー層の表面に水を接触させた直後及び24時間後においていずれも0.5~20.0nmである、[1]~[4]いずれか記載の細胞培養基材。
[6]
ポリマー層の表面における、SPMのフォースカーブ測定により評価した水中での弾性率が、0.01~10MPaである、[1]~[5]いずれか記載の細胞培養基材。
[7]
ポリマー層が、LogP(水/1-オクタノール分配係数)が0~10である疎水ユニット及び親水ユニットを有するコポリマーから形成される、[1]~[6]いずれか記載の細胞培養基材。
[8]
平面基材上にポリマー及び溶媒を含むコーティング剤をドロップキャストし、ポリマー層を形成する工程を含む、細胞培養基材の製造方法であって、前記細胞培養基材の前記ポリマー層の表面における、大気中での算術平均粗さRaが0.8nm未満であり、水中での算術平均粗さRaが0.5~20.0nmである、細胞培養基材の製造方法。
[9]
平面基材上にポリマー及び溶媒を含むコーティング剤をドロップキャストし、ポリマー層を形成する工程を含む、細胞培養基材の製造方法であって、前記細胞培養基材の前記ポリマー層の表面における、大気中での算術平均粗さRaが0.8nm未満であり、水中での接触角が130度以上160度以下であり、式1で表される接触角ヒステリシスが20度以上である、細胞培養基材の製造方法。
(式1)接触角ヒステリシス=(大気中での接触角)+(水中での接触角)―180(°)[10]
[1]又は[2]記載の細胞培養基材を用いて細胞を培養することにより、スフェロイドを形成する、スフェロイドの製造方法であって、前記スフェロイドが、直径50~250μmである、スフェロイドの製造方法。
[11]
式3で表わされる、ポリマー層の表面1cmあたりのスフェロイドの形成指標が、0.2~1.4%である、[10]記載のスフェロイドの製造方法。
(式3)(ポリマー層の表面1cmあたりのスフェロイドの形成指標)=[(スフェロイドの密度)÷(播種密度)]×100(%)
[12]
スフェロイドにおいて、Ki67の発現が陽性で、かつ、再播種72時間後の細胞増殖率が2倍以上である、[10]又は[11]記載のスフェロイドの製造方法。
[13]
スフェロイドにおいて、全体の細胞に対して内部の死細胞率が30%以下である、[10]~[12]いずれか記載のスフェロイドの製造方法。
[14]
スフェロイドを構成する細胞が、各種体細胞、癌細胞、体性幹細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞及びがん幹細胞からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、[10]~[13]いずれか記載のスフェロイドの製造方法。
[15]
[10]~[14]いずれか記載の細胞培養基材を具備する細胞培養容器。
本発明によれば、内部壊死が起きない適切なサイズに制御された、活性の高いスフェロイドを高効率で形成可能な、細胞培養基材、細胞培養基材の製造方法、及びスフェロイドの製造方法を提供できる。
実施例1-5で得られた細胞培養基材の、大気中におけるポリマー層の表面形状を示す図である。 実施例1-5で得られた細胞培養基材の、水中におけるポリマー層の表面形状を示す図である。 実施例1-5で得られた細胞培養基材の、水中におけるポリマー層の表面粗さを示す断面図である。
<細胞培養基材>
本発明の細胞培養基材の一実施形態は、平面基材上にポリマー層を有する細胞培養基材であって、前記ポリマー層の表面における、大気中での算術平均粗さRaが0.8nm以下であり、水中での算術平均粗さRaが0.5~20.0nmである。
また、本発明の細胞培養基材の一実施形態は、平面基材上にポリマー層を有する細胞培養基材であって、前記ポリマー層の表面における、大気中での算術平均粗さRaが0.8nm以下であり、水中での接触角が130度以上160度以下であり、式1で表される接触角ヒステリシスが20度以上である。
(式1)接触角ヒステリシス=(大気中での接触角)+(水中での接触角)-180(°)
本発明では、上記のように、ポリマー層表面の大気中での算術平均粗さが一定の均一性を有し、かつ、算術平均粗さ又は接触角が、大気中と水中とにおいて一定の変化をすることにより、細胞種に依らず、適切なサイズかつ高品質なスフェロイドを、効率的かつ選択的に形成させることができる。詳細は定かではないが、上記の態様により、ポリマー層表面のミクロ及びマクロな平滑性が担保されるとともに、水中におけるポリマー層表面の安定性を維持したまま、良質なスフェロイドを製造するための足場を構築することができるためと考えられる。
本発明の細胞培養基材は、平面基材を有しているが、使用時の形態は、フラスコ、バッグ等の立体的な成型体の他、シート状、プレート状、ディッシュ形状であってもよい。シート状のものとしては、フィルム、不織布、紙等が挙げられる。なお、平面基材上にポリマー層を形成し、シート状の細胞培養基材を作製した後に、プレート、ディッシュ等の成形品と接着又は接触させて使用してもよい。プレート状のものとしては例えば、6穴、12穴、24穴、96穴等の平底プレートが挙げられる。ディッシュ形状のものとしては例えば、直径35mm、60mm、90mm、100mm等のディッシュが挙げられる。均一なポリマー層形成の観点から、塗工面に湾曲がなく平面状であることが好ましい。また、スフェロイド大量製造の観点から、100mmディッシュ、フラスコ、フィルムがより好ましい。
<平面基材>
平面基材とは、水平に静置することが可能な部材のことをいい、わずかな湾曲がある基材を除くものではないが、目視できる湾曲はないことが好ましい。また、平面基材の曲率半径は100mm以上であることがより好ましく、1000mm以上であることが更に好ましく、10000mm以上であることが特に好ましい。平面基材の形態は、成型体の一部、フィルム、不織布等であってよい。
平面基材の材質は特に限定されないが、セルロース、ポリオレフィン、ポリシクロオレフ
ィン、ポリエステル、無機ガラス、カーボン、シリコーン、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合体)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニルエーテル、ポリアセタール(POM)、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアリールエーテル、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリアミド酸(PAA)、ポリアミドイミドアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル(PEN)樹脂等が挙げられ、樹脂であることが好ましく、中でもポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン樹脂がより好ましい。
また、ポリマー層の膜の均一性を向上させ、表面粗さを適切な範囲に調整するために、平面基材は、プラズマ処理、コロナ処理、シランカップリング剤を用いて表面に水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エステル基を有する親水化処理をされたものが好ましい。加えて、平面基材の表面粗さは均一なポリマー層形成の観点から、算術平均粗さRaが0.5~3.0nmであることが好ましい。
<ポリマー層>
本発明の細胞培養基材は、平面基材上にポリマー層を有する。
水中におけるポリマー層表面の安定性を維持したまま、スフェロイドを製造するための足場を構築するためには、大気中では平面基材/ポリマー層界面及びポリマー層/大気界面において、並びに、水中では基材/ポリマー層界面及びポリマー層/水界面において、ポリマーユニットの偏析制御が必要である。親水性ユニットと疎水性ユニットのバランスにより、基材側に偏析した疎水性ユニットがアンカー層としての役割を果たしながら、親水性ユニットは剥離することなく大気中及び水中で効率よく偏析することで、平均粗さRa及び接触角を一定の範囲内に制御しやすい。
(膜厚)
ポリマー層の膜厚は、均一なポリマー層の形成とスフェロイドのサイズを過度に巨大化させないという観点から、10~500nmが好ましく、10~300nmがより好ましく、40~200nmが更に好ましい。
また、ポリマー層表面の膜厚の標準偏差は40nm以下であり、30nm以下であることが好ましく、20nm以下であることが更に好ましく、10nm以下であることが特に好ましい。
(算術平均粗さ)
ポリマー層表面の大気中での算術平均粗さRaは、0.8nm以下であり、0.5nm以下であることが好ましく、0.3nm以下であることがより好ましい。大気中での算術平均粗さRaの上記範囲、及び上記膜厚の標準偏差は、ポリマー層表面のミクロ及びマクロな平滑性を担保するものであり、スフェロイドの製造における効率性、及び再現性を向上させるために重要である。平滑性が十分でなく、膜厚の標準偏差及び大気中での算術平均粗さRaが本発明の範囲を満たさない場合、細胞培養容器の一部でしかスフェロイドは形成されない。
ポリマー層表面の水中での算術平均粗さRaは、一実施形態においては0.5~20.0nmであり、好ましくは、0.5~10nmであり、より好ましくは1.0~5.0nmである。膜内のポリマーの親水ユニットが、適度な量、表面に偏析された場合に、上記範囲の算術平均粗さRaははじめて発現する。ポリマー層表面の水中での算術平均粗さRaが上記範囲であると、細胞の接着性が制御され安定的にスフェロイドを製造することが可能である。なお、本発明において、スフェロイドを製造するためには上記の膜表面粗さであることが重要であり、表面の相分離や凝集構造の有無によらない。
また、ポリマー層表面における水中での算術平均粗さRaは、ポリマー層の表面に水を接触させた直後及び24時間後において、いずれも0.5~20.0nmであることが好ましい。すなわち、ポリマー層表面における水中での算術平均粗さRaが、24時間一定範囲に維持されることが好ましく、当該維持時間は48時間であることがより好ましく、72時間であることが更に好ましい。上記の維持時間は細胞がスフェロイドを形成するのに十分な時間であり、この時間、算術平均粗さRaを上記範囲内に維持できていれば、スフェロイドが形成可能な微弱な相互作用の足場を安定的に維持できるため、安定的かつ高効率で適切なサイズのスフェロイドを提供することができる。
さらに、ポリマー層表面において、式2で表される算術平均粗さRaの差が0.5~20nmであることが好ましく、0.5~15nmであることがより好ましく、0.5~10nmであることが更に好ましく、0.5~5.0nmであることが特に好ましい。
(式2)算術平均粗さの差=(水中での算術平均粗さ)―(大気中での算術平均粗さ)(nm)
式2で表される算術平均粗さRaの差が上記範囲であると、適切なサイズの、活性の高いスフェロイドを製造することができる。これは、大気中では膜内に潜り込んでいた細胞非接着ユニットである親水性部が、水中で表面に偏析した度合いの指標となる。上記の算術平均粗さRaの差の場合、ポリマー表面と足場タンパク質及び細胞の接着性を制御できるため、活性の高い細胞を選択的に適切なサイズでスフェロイド化することが可能となる。なお、本発明において、幾何学的な表面粗さが、直接、細胞の接着性に影響を及ぼすということはない。
(水中接触角)
ポリマー層表面の水中接触角は、一実施形態においては130~160度であり、好ましくは140~155度であり、より好ましくは145~150度である。また、式1で表される接触角ヒステリシスは一実施形態においては20度以上であり、好ましくは30度以上である。
(式1)接触角ヒステリシス=(大気中での接触角)+(水中での接触角)―180(°)
ポリマー層表面の水中接触角と接触角ヒステリシスが上記範囲である場合、活性の高い細胞を適切なサイズでスフェロイド化することができる。これは、水中におけるポリマー中の親水ユニットの表面偏析及びポリマー層表面の膨潤度合いの指標である。細胞の接着には、水和しているポリマーの脱水和を伴う必要があるため、表面のポリマーが水和して膨潤している場合、細胞の接着性は制御され、スフェロイドサイズを調整することが可能である。
(膜厚分布の標準偏差)
ポリマー層表面における膜厚分布の標準偏差は、40nm以下であることが好ましく、35nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが更に好ましく、25nm以下であることが特に好ましい。膜厚分布の標準偏差が上記範囲であることにより、上記算術平均粗さと共にポリマー層表面の平滑性に寄与し、スフェロイドの製造における効率性、及び再現性を向上させる。
ポリマー層表面における、SPM(走査型プローブ顕微鏡)のフォースカーブ測定により測定した水中の弾性率は、好ましくは0.01~10Maであり、より好ましくは、0.1~5MPaであり、さらに好ましくは0.2~3MPaである。ポリマー層表面における水中の弾性率が上記範囲にあると、細胞が基材からの硬さを認識し、細胞骨格を成熟させて強固に接着してしまうことはなく、弱い力で接着して遊走することができるため、スフェロイドを効率的に製造することができる。
(ポリマー)
ポリマー層を形成するポリマーは、大気中及び水中における膜表面物性が上記特定の要件を満たすものであれば特に限定されない。ポリマー種としては例えば、アクリル系ポリマー、ビニル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリエステル、ポリアミドが挙げられ、モノマー種の選択幅や分子量制御の容易性、均一なポリマー層形成の簡便性の観点から、アクリル系ポリマーが好ましい。
また、水中における細胞非接着部位の表面偏析による、スフェロイドのサイズ制御の観点から、ポリマーは、疎水ユニット及び親水ユニットを有するコポリマーであることが好ましい。コポリマーとしては、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、マルチブロックポリマーのいずれでもよい。親水ユニットとしては例えば、ポリエチレンオキサイド、双性イオン、水酸基、リン酸基、エステル基を含む構造が挙げられ、ポリエチレンオキサイド、双性イオン、水酸基を含む構造が好ましく、ポリエチレンオキサイドを含む構造がより好ましい。疎水ユニットのモノマーとしては例えば、LogP(水/1-オクタノール分配係数)が0~10であるものが好ましく、0~2であるものがより好ましく、0.8~2であるものが更に好ましい。また、ポリマー層には、添加剤、架橋剤等を添加してもよく、医療用滅菌線照射等のいかなる処理を加えてもよい。
ポリマーの質量平均分子量は、合成や塗工の際のハンドリング性や基材への成膜性の観点から、ある程度高いことが望ましい。質量平均分子量が高いことによって、高分子鎖の絡み合い効果によって、基材との密着性が膜の均一性が向上する。一方、高すぎると、合成及び塗工の操作性が低下する。そのため、ポリマーの質量平均分子量は、5000~1000000であることが好ましく、より好ましくは、50000~800000、さらに好ましくは、200000~600000である。
以下、疎水ユニット及び親水ユニットを有するコポリマーのうち、親水ユニットとしてポリエチレンオキサイドを含むポリマーをポリマー(A)、双性イオンを含むポリマーをポリマー(B)、及び、水酸基を含むポリマーをポリマー(C)とし、それぞれ説明する。
[ポリマー(A)]
ポリマー(A)は、親水ユニットとしてポリエチレンオキサイドを含む。ポリマー(A)は、水/1-オクタノール分配係数(LogPow:以下LogP)の平均値が0以上、2以下(以下、0~2)であるモノマーから形成されるアクリル系ポリマー部分(A1)とポリエチレンオキサイド(PEG)部分(A2)とを有することが好ましい。
LogPは、化学物質の性質を表す数値の一つであり、添加量に依存しない一定の値である。対象とする物質が、水と1-オクタノールとの混合液において、水相とオクタノール相とが接した系中で平衡状態にある場合を対象として、各相の濃度をその常用対数で示したものである。LogPが大きくなると、比較的に疎水性が増大する傾向があり、LogPが小さくなると、比較的に親水性が増大する傾向がある。
LogPの測定は、一般にJIS日本工業規格Z7260-107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、LogPは実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。LogPの計算に用いる方法やソフトウェアについては公知のものを用いることができるが、本発明ではCambridgeSoft社のシステム:ChemDrawPro11.0に組み込まれたプログラムを用い、LogPを求めている。
ポリマー(A)は、前記LogPの平均値が0以上、2以下(以下、0~2)であるモノマーから形成されるアクリル系ポリマー部分(A1)を有しているため、水に対する溶解性が制御されるため、水中でも安定的な培養層を形成することができる。
ポリマー(A)は、下記(IA)、(IB)又は(IC)のいずれかの構造を有することが好ましい。さらに、ポリマー(A)は、アクリル系ポリマー部分(A1)とPEG(A2)とが下記式(IA)、(IB)又は(IC)のいずれかの構造(結合構造)を介して結合してなることがより好ましい。
一般式1
ポリマー(A)において、PEG部分(A2)の質量/[アクリル系ポリマー部分(A1)とPEG部分(A2)との合計の質量]の範囲は、特に限定されるものではないが、[PEG部分(A2)の質量/(アクリル系ポリマー部分(A1)とPEG部分(A2)との合計の質量)]×100=0.1%以上10.00%以下であることが好ましく、[(A2)/(A1)+(A2)]×100=1.0%以上、5.00%以下であることがより好ましい。親水性に富むポリエチレンオキサイド部分(A2)と疎水性に富むアクリル系ポリマー部分(A1)のバランスにより、基材と細胞及び細胞同士の接着性を調整し、スフェロイドサイズが制御可能なため、内部壊死を防ぐことができる。加えて、大気中では平面基材/ポリマー層界面及びポリマー層/大気界面において、並びに、水中では基材/ポリマー界面層及びポリマー層/水界面において、それぞれの界面エネルギーが低くなるように、ポリマーの各ユニット部分の偏析がおこるため、大気中及び水中の表面粗さ及び/又は接触角を調整することが可能である。
式(IA)、(IB)又は(IC)のいずれかの結合構造を有するポリマー(A)の合成方法は特に限定されない。上記の式(IA)で示される結合構造を有するポリマー(A)の合成方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤として4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(例えば、富士フイルム和光純薬株式会社の市販品「V-501」等)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にカルボキシル基を有するアクリル樹脂が得ら
れる。
これに、PEG部分を構成する原料としてポリエチレングリコールを加え、エステル化反応をさせることで、アクリル系ポリマー部分と、PEG部分とが上記式(IA)で結合してなるポリマー(A)を得ることができる。
あるいは、アクリル系ポリマーを合成する際のラジカル重合開始剤として、PEG部分(A2)とアゾ基を含む構造単位を有する下記式(II)で示される高分子アゾ重合開始剤を用いて好ましく合成することができる。式中、m及びnは、それぞれ独立に1以上の整数である。高分子アゾ重合開始剤は、高分子セグメントとアゾ基(-N=N-)が繰り返し結合した構造を有しており、本実施形態では、高分子セグメントとしてPEGブロックを含む高分子アゾ開始剤を用いることで、容易にポリマー(A)を合成できる。
一般式2
高分子アゾ重合開始剤を用いる場合、該開始剤中に含まれるアゾ基のモル数に対する、アクリル系モノマーの全モル数の比率を適宜変更することによって、ポリマー(A)の質量平均分子量を調整することができる。例えば、高分子アゾ重合開始剤中に含まれるアゾ基のモル数に対する、アクリル系モノマーの全モル数の比率を200とすると、200量体のアクリル系ポリマーがPEG鎖の間に組み込まれることになり、ポリマーの絡み合いによる高い凝集力を付与することができる。
高分子アゾ重合開始剤の質量平均分子量は、5,000~10万程度であることが好ましく、1万~5万程度であることがより好ましい。また、該開始剤のPEG部分の分子量は、800~1万程度であることが好ましく、1,000~8,000程度であることがより好ましい。
また、mは、好ましくは15~200、より好ましくは20~100であり、nは、好ましくは3~50、より好ましくは4~30である。
前記高分子アゾ重合開始剤は、PEG部分(A2)を有しているため、水、アルコール、及び有機溶剤に可溶であり、溶液重合、乳化重合、又は分散重合によりポリマー(A)の合成が可能である。また、分子鎖骨格中に重合開始部分(ラジカル発生部分:―N=N-)を有しているため、別途重合開始剤を使用する必要がなく、更には末端反応性マクロモノマーに比べてラジカルの反応性、及び安定性が高いという特徴を有している。
前記高分子アゾ重合開始剤は、・C(CH)CN-(CH-COO-(CHCHO)-CO-(CH-C(CH)CN・にて示されるようなラジカルを生じ、後述するアクリル系モノマーを重合させる。そして、アクリル系モノマーから形成されるアクリル系ポリマー部分(A1)と前記ラジカル由来の部分とが結合した主鎖を形成し、ポリマー(A)を形成する。PEG部分(A2)は、ラジカルの一部に由来する。
高分子アゾ重合開始剤の具体例としては、富士フイルム和光純薬株式会社の高分子アゾ開始剤VPE0201(上記式(II)の「(CHCHO)」の部分の分子量が約2000、nが6程度)等が例示される。
高分子アゾ重合開始剤の他に、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ開始剤や、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物開始剤を併用することができる。これらの他の開始剤を併用することにより、開始効率を高め、効率よくアクリル系ポリマー部分(A1)にPEGに組み込むことができ、残留モノマーを減らすことができる。
ポリマーの合成時には、用途に応じてラウリルメルカプタン、N-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、α-メチルスチレンダイマー、リモネン等の連鎖移動剤を使用して、分子量や末端構造を制御してもよい。
式(IB)で示される結合構造を有するポリマー(A)の合成方法としては、例えば、アクリル系モノマーを、ヒドロキシ基を有するアゾ重合開始剤を用いて重合し、末端にヒドロキシ基を有するアクリル系ポリマーブロックを得る工程、及び前記アクリル系ポリマーブロック及びポリエチレングリコールと、2官能のイソシアネート化合物とをウレタン化反応させる工程を含む方法により製造することができる。
例えば、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス[N-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルプロパンアミド](例えば、富士フイルム和光純薬株式会社の市販品「VA-086」等)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にヒドロキシル基を有するアクリル樹脂が得られる。これに、PEG部分を構成する原料としてポリエチレングリコールを加え、2官能イソシアネート化合物を用いてウレタン化反応させることで、アクリル系ポリマー部分と、PEG部分とが結合してなるポリマー(A)を得ることができる。
ウレタン化反応の際用いられる2官能イソシアネート化合物としては、例えば、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
式(IC)で示される結合構造を有するポリマー(A)の合成方法としては、例えば、アクリル系モノマーを、カルボキシル基を有するアゾ重合開始剤を用いて重合し、カルボキシル基を有するアクリル系ポリマーブロックを得る工程、及び前記アクリル系ポリマーブロックにポリエチレングリコールをエステル化反応させる工程を含む方法により製造することができる。
例えば、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]4水和物(例えば、富士フイルム和光純薬株式会社の市販品「VA-057」等)を用いてアクリル系ポリマーを合成すると、末端にカルボキシル基を有するアクリル樹脂が得られる。これに、PEG部分を構成する原料としてポリエチレングリコールを加え、エステル化反応をさせることで、アクリル系ポリマー部分と、PEG部分とが結合してなるポリマー(A)を得ることができる。
なお、式(IB)又は(IC)の結合構造を有するポリマー(A)を得る際に、上述した「他の開始剤」も適宜併用することができる。また、連鎖移動剤も適宜使用できる。
本発明において、PEG部分(A2)の質量とは、ポリエチレンオキサイド構造を含む原料の質量をそのまま適用する。例えば、式(IA)で示される結合構造を有する場合はポリエチレンオキサイド部分(A2)とアゾ基を含む高分子アゾ系重合開始剤の質量である。また、アクリル系ポリマー部分(A1)の質量は、重合に供したアクリル系モノマーの合計量である。
すなわち、モノマー99.50質量部、PEG部分(A2)を有する高分子アゾ系重合開始剤0.50質量部を用いて合成した場合、[PEG部分(A2)の質量/アクリル系ポリマー部分(A1)とPEG部分(A2)との合計の質量]×100は0.50%となる。
<モノマー>
次に、ポリマー(A)のアクリル系ポリマー部分(A1)の原料であるアクリル系モノマーについて説明する。なお、本発明において、アクリル系モノマーとは、アクリルモノマーとメタクリルモノマーの両方を意味する。
アクリル系モノマーの水/1-オクタノール分配係数(LogP)の平均値は0以上、2以下である。LogPの平均値が0より低いアクリル系モノマーを用いて合成する場合、ポリマー(A)の親水性が高く水に対する溶解性が向上するため、安定な塗膜を形成することができない。
一方、LogPの平均値が2より高いアクリル系モノマーを用いて合成する場合、ポリマー(A)の水に対する溶解性は抑えられるものの、疎水性が高く、表面への親水部の偏析が阻害されて、請求範囲内の膜物性にならないため、スフェロイドを製造することができない。
本発明において、LogPの平均値は、使用する各モノマーのLogPを、各モノマーの質量%で平均した値とする。すなわち、LogPが0のモノマーとLogPが2のモノマーを50:50質量%の割合で仕込む場合、LogPの平均値は1となる。
本発明では、使用するアクリル系モノマーのLogPが0~2の範囲であれば、ホモポリマー又はコポリマー部分の原料として使用することができる。また、使用するアクリル系モノマーのLogPが0~2の範囲外であっても、その他のアクリル系モノマーを含めたLogPの平均値が0~2の範囲であれば、コポリマー部分の原料として使用することができる。
水/1-オクタノール分配係数(LogP)が0以上2以下であるモノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1~4のアルキルアクリレート;アルキル基の炭素数が1~3のアルキルメタクリレート;メトキシメチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシメチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有モノマー;(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ブタジエン、イソプレン等のビニル基含有モノマーが挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物のうち、特に2-メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートがコストやハンドリング性の点から好ましい。
ポリマー(A)は、下記の架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーを共重合させることもできる。架橋塗膜を形成することにより、ポリマー(A)の剥離や溶出を抑えることができる。
LogPが0~2であり、官能基を有するモノマーとしては、カルボキシル基含有モノマ
ー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー等を使用することができる。
例えば、カルボキシル基が導入されたポリマーは、エポキシ化合物やアジリジン化合物、カルボジイミド化合物、金属キレート化合物、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド化合物により架橋することができる。水酸基が導入されたポリマーは、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物等により架橋することができる。アミノ基が導入されたポリマーは、エポキシ化合物により架橋することができる。イソシアネート基が導入されたポリマーは、水酸基含有化合物により架橋することができる。これら、架橋点となる官能基を有するモノマーの使用量は、全モノマーの合計100質量%中、10質量%以下で使用することが好ましい。10質量%以下で使用することで、架橋剤を併用した場合に適度な架橋密度を有する塗膜を得ることができる。
アクリル系ポリマー部分(A1)は、水/1-オクタノール分配係数(LogP)が0~2であるモノマーのみから形成されるホモポリマー部分もしくはコポリマー部分であることが好ましい。また、LogPが0~2であるモノマーを一種類だけ用いてポリマー(A)を得てもよいし、LogPが0~2であるモノマーを複数種用いて重合してポリマー(A)を得てもよい。
LogPが0~2の範囲外のモノマーの中で、架橋点となる官能基を有さないモノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が5~20のアクリレート、アルキル基の炭素数が4~20のメタクリレート、スチレン等のビニル基含有モノマー等が挙げられる。
LogPが0~2の範囲外のモノマーの中で、架橋点となる官能基を有するモノマーとしては、例えば、マレイン酸等のカルボキシル基含有モノマー、4-ヒドロキシスチレン、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有モノマー等が挙げられる。
更に、ポリマー(A)に架橋構造を導入するために多官能モノマーを共重合させてもよい。共重合しながら架橋する場合、架橋割合は、用いる多官能モノマー量が多いほど架橋度が高くなり、反応中にゲル化する可能性も高まる。そのため、多官能モノマーの量としては、全モノマー100質量%中、0.01~10.00質量%の範囲が好ましく、0.10~5.00質量%がより好ましい。ポリマー(A)が多官能モノマーにより架橋している場合、難水溶性になるため、架橋剤を使用した場合と同様に、基材からの剥離や溶出を低減することができる。
本発明において、ポリマー(A)は、公知の方法により合成できる。例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、分散(沈殿)重合等が好ましく、溶液重合や分散(沈殿)重合がより好ましい。
<ポリマー(B)>
ポリマー(B)は、親水ユニットとして双性イオン構造を含む。双性イオン構造としては例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン等のベタイン構造やアミンオキシド基が挙げられる。ベタイン構造とは、正電荷と負電荷を同一分子内の隣り合わない位置に持ち、正電荷をもつ原子には解離しうる水素原子が結合していない構造を指す。
以下、ポリマー(B)のうち、双性イオン構造としてベタイン構造を有するポリマー(BB)及びアミンオキシド基を有するポリマー(BA)についてそれぞれ説明する。
(ベタイン構造を有するポリマー(BB))
ベタイン構造を有するポリマー(BB)は下記一般式3~5で示される少なくともいずれかの構造単位を側鎖に有することが好ましい。
一般式3

一般式4

一般式5

(式中、Rは炭素数1~6のアルキレン基、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基、Rは炭素数1~4のアルキレン基、Xは酸素原子又はNH-、Yは-COO-又はSO3-、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基、R10~R14のうち4つは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基を表し、R10~R14のうちの1つはビニル系重合体の主鎖との結合位置を表し、R15は炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のヒドロキシアルキレン基を表し、*はビニル系重合体の主鎖との結合位置を表す。)
このようなポリマー(BB)は、以下の方法で得ることが好ましい。即ち、下記一般式6~8で示される少なくともいずれかのモノマー(bb1)~(bb3)と、必要に応じて他のモノマーとを共重合する。
(bb1)
一般式6

(bb2)
一般式7

(bb3)
一般式8
(式中、
は水素原子又はメチル基、
は水素原子又はメチル基、
は水素原子又はメチル基、
16~R20のうち4つは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基を表し、R16~R20のうちの1つはCH=C(R21)を表し、
21は水素原子又はメチル基を表す。)
その他の記号は、化学式3~5と同様。)
ベタイン構造を含むポリマー(BB)は、前述の通り、一般式6~8で示される群から選択される少なくともいずれかのモノマー(bb1)~(bb3)を共重合体の構造単位とするものである。モノマー(bb1)~(bb3)の利用によって、ビニル重合体の側鎖にベタイン構造を導入することができる。
<モノマー(bb1)>
モノマー(bb1)は、一般式6に示す通り、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ベタイン構造とを有する。
このようなモノマーとしては、例えば、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、等のN-(メタ)アクリロイルオキシアルキル-N,N-ジアルキルアンモニウムアルキル-A-カルボキシベタイン;N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、等のN-(メタ)アクリルアミドアルキル-N,N-ジアルキルアンモニウムアルキル-A-カルボキシベタイン;N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジエチルアンモニウムメチル-A-カルボキシベタイン、等のN-(メタ)アクリルアミドアルキル-N,N-ジアルキルアンモニウムアルキル-A-カルボキシベタイン;N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプピル-
N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)クリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)クリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-A-スルホベタイン、等のN-(メタ)アクリロイルオキシアルキル-N,N-ジメチルアンモニウムアルキル-A-スルホベタイン;N-(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ-N,N-メチルアンモニウムプロピル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシメトキシメトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキプロポキシプロポキシ-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシプロポキシ-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムエチル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリロイルオキシブトキシブトキシ-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-A-スルホベタイン、等のN-(メタ)アクリロイルオキシアルコキシアネルコキシ-N,N-ジメチルアンモニウムアルキル-A-スルホベタイン;N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムプロピル-A-スルホベタイン、N-(メタ)アクリルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-A-スルホベタイン等のN-(メタ)アクリルアミドアルキル-N,N-ジアルキルアンモニウムアルキル-A-スルホベタインが挙げられる。本発明において(メタ)アクリルと表記した場合、メタクリルもしくはアクリルであることを示す。
<モノマー(bb2)>
モノマー(bb2)も、一般式7に示す通り、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ベタイン構造とを有する。このようなモノマーとしては、例えば、1-ビニル-3-(3-スルホプロピル)イミダゾリウム内部塩、1-ビニル-3-(3-スルホブチル)イミダゾリウム内部塩、1-ビニル-2-メチル-3-(3-スルホプロピル)イミダゾリウム内部塩、1-ビニル--メチル-3-(4-スルホブチル)イミダゾリウム内部塩等の1-ビニル-2-アルキル-3-(4-スルホアルキル)イミダゾリウム内部塩が挙げられる。
<モノマー(bb3)>
モノマー(bb3)も、一般式8に示す通り、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、ベタイン構造とを有する。このようなモノマーとしては、例えば、2-ビニル-1-(3-スルホプロピル)ピリジニウム内部塩、2-ビニル-1-(3-スルホブチル)ピリジニウム内部塩、等の2-ビニル-1-(3-スルホアルキル)ピリジニウム内部塩;4-ビニル-1-(3-スルホプロピル)ピリジニウム内部塩、4-ビニル-1-(3-スルホブチル)ピリジニウム内部塩、等の4-ビニル-1-(3-スルホアルキル)ピリジニウム内部塩が挙げられる。
<モノマー(b1)>
ベタイン含有ポリマー(BB)を得る際に、モノマー(B1)~(B3)の他に、分配係数LogPが0~10であるモノマー(b1)を用いることができ、ポリマー(BB)は
、モノマー(b1)に基づく構造単位を含むことが好ましい。モノマー(b1)に基づく構造単位の導入により、極性が適切に制御され、水中での塗膜の安定性や細胞との疎水性相互作用が制御され、スフェロイドを効率的に形成しやすい足場を提供することができる。
分配係数LogPが0~10であるモノマー(b1)としては、例えば、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、Nーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、へプチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等のアルキルエステル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族エステル(メタ)アクリレート;スチレン、2-メチルスチレン、クロロスチレン、アリルベンゼン、エチニルベンゼン等の芳香族ビニルモノマーが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
モノマー(b1)に基づく構造単位は、ポリマー(BB)を構成するモノマー単位の合計100質量%中、50~95質量%含まれることが好ましく、50~80質量%がより好ましい。50質量%以上とすることにより、モノマー(bb1)~(bb3)の量が相対的に少なくなり、ポリマー(BB)の水中での膜安定性が向上するため溶出の懸念がなく、スフェロイドが安定的に製造できる足場を提供できる。
<ベタイン構造の含有量>
ポリマー(BB)におけるベタイン構造の含有量は、好ましくは、2.00~8.00mmol/gであり、より好ましくは2.00~5.00mmol/gである。ポリマー(BB)のベタイン含有量が上記の範囲である場合、親水性に富むベタイン構造部分と疎水性に富む(メタ)アクリル系ポリマー部分のバランスにより、基材と細胞及び細胞同士の接着性を調整し、スフェロイドサイズが制御可能なため、内部壊死を防ぐことができる。加えて大気中では平面基材/ポリマー層界面及びポリマー層/大気界面において、並びに、水中では基材/ポリマー層界面及びポリマー層/水界面において、それぞれの界面エネルギーが低くなるように、ポリマーの各ユニット部分の偏析がおこるため、大気中及び水中における表面粗さ及び/又は接触角を調整することが可能である。
(アミンオキシド基を有するポリマー(BA))
アミンオキシド基を有するポリマー(BA)におけるアミンオキシド基のイメージを下記一般式9にて示す。式中、R18、R19、R20は、それぞれ独立に有機基を表す。
一般式9
アミンオキシド基を有するポリマー(BA)は、前記R18、R19、R20のうち、少なくとも1つがポリマーに連結している。ポリマー(BA)は、アミンオキシド基を有することで親水性に富み、これにより、培養層が細胞に対する接着性を調節し、スフェロイドの形成に寄与する。
本発明において、アミンオキシド基を有するポリマー(BA)は、以下の2つの方法のいずれかで得ることができる。即ち、アミンオキシド基を有するモノマーと他のモノマーとを重合して、アミンオキシド基を有するポリマー(BA)を得ることができる。
あるいは、アミンオキシド基の前駆官能基とでもいうべき3級アミノ基を有するポリマーを得た後、前記3級アミノ基に酸化剤を反応させ、ポリマーにアミンオキシド基を導入することができる。本発明においては、副反応を生じ難いという点で後者の方法が好ましい。なお、3級アミノ基に酸化剤を反応させることを、以下「オキシド化」ともいう。
ポリマー(BA)としては、具体的には、下記一般式10~12で表される少なくともいずれかの構造を含むものであることが好ましく、中でも水中における膜表面への親水基偏析のしやすさの観点から、一般式10で表される構造を含むものが特に好ましい。
一般式10

一般式11

一般式12

(式中、Xは2価の結合基、又は直接結合、Yは0又は1、Rは炭素数1~6のアルキレン基、R、Rはそれぞれ独立して炭素数1~4のアルキル基、Rは水素原子又はメチル基、R~Rのうち4つは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表し、R~Rのうちの1つはポリマーの主鎖との結合位置を表し、*はポリマーの主鎖との結合位置を表す。)
このような構造を有するポリマー(BA)は、前述の通り、2つの方法で得ることができる。
即ち、3級アミノ基含有不飽和モノマー(ba)をオキシド化した後に、他のモノマーと重合するか、あるいは3級アミノ基含有不飽和モノマー(ba)と他のモノマーとを重合した後にオキシド化する方法である。
[3級アミノ基含有不飽和モノマー(ba)]
オキシド化前の前駆体としての3級アミノ基含有不飽和モノマー(ba)のうち、一般式10の構造を形成するためものとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N-ジエチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアリルアミン、P-ジメチルアミノメチルスチレン、P-ジメチルアミノエチルスチレン、P-ジエチルアミノメチルスチレン、P-ジエチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルビニルアミン、N,N-ジエチルビニルアミン、N,N-ジフェニルビニルアミンが挙げられる。或いは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和基含有酸無水物と、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン等との反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物とN,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン等との反応生成物が挙げられる。
一般式11の構造を形成するためのものとしては、例えば、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-メチル-3-ビニルピリジン、2-メチル-4-ニルピリジン、3-メチル-4-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、3-メチル-5-ビニルピリジン、4-メチル-5-ビニルピリジン、2-ラウリル-4-ビニルピリジン、2-ラウリル-5-ビニルピリジン、2-(T-ブチル)-4-ビニルピリジン、2-(T-ブチル)-5-ビニルピリジンが挙げられる。
一般式12の構造を形成するためのものとしては、例えば、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、4-メチル-1-ビニルイミダゾール、5-メチル-1-ビニルイミダゾール、2-ラウリル-1-ビニルイミダゾール、4-(T-ブチル)-1-ビニルイミダゾールが挙げられる。
[不飽和モノマー(b1)]
ポリマー(BA)を得る際に、前記モノマー(ba)の他に、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、炭素数1~22のアルキル基とを有するモノマー(B100)を用いることができる。モノマー(b1)に基づく構造の導入により極性等を調整することができる。これにより、培養面における、細胞に対する接着性を調整することができる。
1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、炭素数1~22のアルキル基とを有するモノマー(b1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等や、1-プロピレン、1-ブテン等のA-オレフィン系エチレン性不飽和モノマー等が挙げられる。モノマー(b1)は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
重合前のオキシド化、重合後のオキシド化について説明する。
重合前は3級アミノ基含有不飽和モノマー(ba)を含む溶液に、重合後は3級アミノ基含有不飽和モノマー(ba)を必須とするモノマーを重合したポリマーを含む溶液に、オキシド化剤を加えて20℃~100℃の範囲で0.1~100時間、好ましくは1~50時間反応させることによって、3級アミノ基をオキシド化することができる。
[オキシド化剤]
オキシド化剤としては、過酸化物又はオゾン等の酸化剤が用いられる。
過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、ベンゾイルパーオキシド、t-ブチルハイドロパーオキシド等が挙げられ、過酸化水素が好ましく、通常は水溶液の形で用いられる。程度の違いはあるが、過酸化物にはラジカル発生剤としての機能もあるため、3級アミノ基含有不飽和モノマー(ba)を必須の原料とする場合には、重合後にオキシド化することが好ましい。
一般的にはオキシド化剤の使用量は、オキシド化可能な官能基、即ち、3級アミノ基に対して、0.2~3倍モル当量の割合で使用し、更に0.5~2倍モル当量使用するのがより好ましい。得られたポリマー溶液は、残存した過酸化物を公知の方法で処理した後、使用することもできる。具体的には還元剤添加処理、イオン交換処理、活性炭処理、金属触媒による処理等が挙げられる。得られたポリマー溶液は、残存した過酸化物を公知の方法
で処理した後、使用することもできる。具体的には還元剤加処理、イオン交換処理、活性炭処理、金属触媒による処理等が挙げられる。得られたポリマー溶液はそのまま使用することもできるが、必要に応じて再沈殿、溶媒留去等の公知の方法でアミンオキシド基含有ポリマーを単離して使用することもできる。また、単離したアミンオキシド基含有ポリマーは、必要ならば再沈殿や、溶剤洗浄、膜分離、吸着処理等によってさらに精製できる。
<アミンオキシド基の含有量>
本発明におけるポリマー(BA)におけるアミンオキシド基の含有量は、好ましくは、2.00~8.00mmol/gであり、より好ましくは2.00~5.00mmol/gである。アミンオキシド基の含有量が上記の範囲である場合、親水性に富むアミンオキシド部分と疎水性に富むアクリル系ポリマー部分のバランスにより、基材と細胞及び細胞同士の接着性を調整し、スフェロイドサイズが制御可能なため、内部壊死を防ぐことができる。加えて大気中では平面基材/ポリマー界面及びポリマー/大気界面において、並びに、水中では基材/ポリマー界面及びポリマー/水界面において、それぞれの界面エネルギーが低くなるように、ポリマーの各ユニット部分の偏析がおこるため、大気中及び水中の表面粗さ及び/又は接触角を調整することが可能である。
アミンオキシド基を有するモノマーを重合してポリマー(BA)を得る場合、ポリマー(BA)中のアミンオキシド基含有量は、重合に用いたアミンオキシド基を有するモノマーの量から求めることができる。
一方、3級アミノ基含有モノマーを必須とするモノマーを重合した後、得られたポリマーをオキシド化する場合は、アミンオキシド基含有量は下記式4によって算出できる。
(式4)
[重合開始剤]
ポリマー(B)の重合には、ラジカル重合開始剤(以下、重合開始剤という)を使用することが好ましい。ラジカル重合を開始する能力を有するものであれば任意の開始剤、例えば公知の油溶性重合開始剤や水溶性重合開始剤を使用することができる。
油溶性重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス-シクロヘキサン-1-カルボニトリル等のアゾビス化合物等が挙げられる。
水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド等、公知のものを好適に使用することができる。
これらは1種類又は2種類以上を混合して使用することができる。これら重合開始剤は、エチレン性不飽和モノマー100質量部に対して、0.1~10質量部の量を用いるのが好ましい。
<ポリマー(C)>
ポリマー(C)は、水酸基を有する。ポリマー(C)は、構造単位(G)1molあたりに、1mol以上の水酸基を有することが好ましく、構造単位(G)1molあたりに、1mol以上の水酸基と、1molのアミド結合又はウレア結合とを有することがより好ましい。構造単位(G)の構造は、特に限定されず、用途に応じて任意に選択することができる。
ポリマー(C)が、構造単位(G)1molあたりに、1mol以上の水酸基と、1molのアミド結合又はウレア結合とを有することにより、ポリマー層表面の物性が適切に制御され、細胞の培養面への接着を抑制する結果、スフェロイドが形成される。また、ポリマー(C)は、アミド結合又はウレア結合を有することにより、コーティング剤として、培養面に対する親和性が高く、基材に対して接着性を付与することができ、膜の安定性に優れる。
構造単位(G)は、アミノ糖由来であることが好ましい。また、構造単位(G)におけるアミド結合又はウレア結合は、アミノ糖に含まれるアミノ基が、カルボキシル基又はイソシアネート基と反応することでアミド結合又はウレア結合を形成したものであることが好ましい。
アミノ糖とは、糖の水酸基がアミノ基で置換された、アミノ基を1つ含む糖類似構造であり、1molあたりに、5molの水酸基を有するものである。例えば、グルカミンが好ましく使用される。グルカミンとしては、例えば、D-グルカミン、N-メチル-D-グルカミン(メグルミン)、N-エチル-D-グルカミン、N-オクチル-D-グルカミンが挙げられる。
構造単位(G)の好ましい形態としては、下記の構造が挙げられる。
アミド結合を有するものとしては、一般式13~16:
一般式13
一般式14
一般式15
一般式16
等が挙げられる。
ウレア結合を有するものとしては、下記一般式17、18で表されるもの等が挙げられる。
一般式17
一般式18
上記一般式13~18中、
Rは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示し、
Yは、アミノ糖構造を示し、
**は、ポリマーの主鎖との結合位置を示す。
ポリマー(C)中に構造単位(G)を導入する方法は特に限定されないが、例えば、構造単位(G)1molあたりに、1mol以上の水酸基を有するモノマー(c1)及びモノマー(c2)の共重合体として得る方法が挙げられる。
<モノマー(c1)>
モノマー(c1)は水酸基を有するアクリル系モノマーである。例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2~4のヒドロキシアルキルエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸とのモノエステル;グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのモノマーの中でも、アクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2~4のヒドロキシアルキルエステルが好ましい。
<モノマー(c2)>
モノマー(c2)は、例えば、カルボキシル基又はイソシアネート基を有するモノマー(cc1)と、アミノ糖類の(c’)とを反応させて得ることができる。カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端にカルボキシル基を導入するアルキレンオキサイド付加系コハク酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。イソシアネート基を有するモノマーとしては、2-イソシアナトエチルアクリラート、2-イソシアナトエチルメタクリレートが挙げられる。モノマー(c2)の好ましい形態としては、下記の構造が挙げられる。
アミド結合を有するものとしては、一般式19~22:
一般式19
一般式20
一般式21
一般式22
が挙げられる。
ウレア結合を有するものとしては、一般式23、24:
一般式23
一般式24
が挙げられる。
上記一般式19~24中、
R及びRは、水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を示し、
Yは、アミノ糖構造を示す。
ポリマー(C)中に構造単位(G)を導入する別の方法としては、カルボキシル基又はイソシアネート基を有するモノマー(cc1)の共重合体を得た後、1molあたりに、2mol以上の水酸基と1molのアミノ基とを有する化合物(c’)を反応させて得る方法が挙げられる。化合物(c’)は、アミノ糖であることが好ましい。この方法は、合成後の分子量測定が容易であるという点で好ましい。
<他のモノマー(c3)>
ポリマー(C)を得る際に、上記モノマー(c1)~(c2)以外の他のモノマーを用いることができる。他のモノマーを共重合することで、極性やT、溶媒溶解性、ポリマー層の安定性等を制御することができる。
その他モノマーとしては、炭素数1~18のアルキル基を有するモノマー(c3)を用いることが、合成の容易さの観点から好ましい。より好ましくは、炭素数4~18のアルキル基を有するモノマーである。
モノマー(c3)としては、特に限定はされないが、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等のA-オレフィン系エチレン性不飽和モノマー等が挙げられる。
さらに、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等アルキル(メタ)アクリレート;イソボニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアクリルエステル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族エステル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1-メチルアリル、(メタ)アクリル酸2-メチルアリル、(メタ)アクリル酸1-ブテ
ニル、(メタ)アクリル酸2-ブテニル、(メタ)アクリル酸3-ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3-メチル-3-ブテニル、(メタ)アクリル酸2-クロルアリル、(メタ)アクリル酸3-クロルアリル、(メタ)アクリル酸O-アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2-(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル、リノレン酸ビニル、(メタ)アクリル酸2-(2’-ビニロキシエトキシ)エチル等のエチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、2-パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルウンデシル(メタ)アクリレート等の炭素数1~20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和モノマー等の(メタ)アクリレート系モノマー;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシビニルベンゼン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、アリルアルコール、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等の3つ以下の水酸基を有するモノマー;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又は、これらのアルキル若しくはアルケニルモノエステル、フタル酸Β-(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸Β-(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸Β-(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸Β-(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等のカルボン酸基、若しくはその無水物を有するモノマー;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するモノマー;(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等のリン酸基を有するモノマー;(メタ)アクリルアミド、N-ビニル-2-ピロリドン、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド等の1~3級アミド基を有するモノマー;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル-3-(1-(メタ)アクリルアミド-1,1-ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル-3-(1-(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、及びトリメチル-3-(1-(メタ)アクリルアミド-1,1-ジメチルエチル)アンモニウムクロライド等の4級アミノ基を有するモノマー;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、N-ブトキシポリエチレングリコール(メタ)
アクリレート、N-ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N-ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、N-ペンタキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート等のポリエーテル鎖を有するモノマー;ラクトン変性(メタ)アクリレート等のポリエステル鎖を有するエチレン性不飽和化合物等の側鎖に高分子構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー;スチレン、A-メチルスチレン、2-メチルスチレン、クロロスチレン、アリルベンゼン、エチニルベンゼン等の芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有エチレン性不飽和モノマー;酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪酸ビニル系化合物;ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系エチレン性不飽和モノマー;酢酸アリル、シアン化アリル等のアリルモノマー;シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトン等のビニルモノマー;アセチレン、エチニルトルエン等のエチニルモノマーパーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル、アルキレン類等のパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和化合物等の、(メタ)アクリレートではないエチレン性不飽和結合を有するモノマーが挙げられる。
本発明において、ポリマー(C)は、公知の方法により合成できる。例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、分散(沈殿)重合が好ましく、溶液重合や分散(沈殿)重合がより好ましい。
<水酸基の含有量>
ポリマー(C)の水酸基含有量は、15.00mmol/g未満であることが好ましく、3.00mmol/g以上、15.00mmol/g未満であることがより好ましい。
ポリマー(C)の水酸基含有量が上記の範囲である場合、親水性に富む部分と疎水性に富む(メタ)アクリル系ポリマー部分のバランスにより、基材と細胞及び細胞同士の接着性を調整し、スフェロイドサイズが制御可能なため、内部壊死を防ぐことができる。加えて、大気中では平面基材/ポリマー層界面及びポリマー層/大気界面において、並びに、水中では基材/ポリマー層界面及びポリマー層/水界面において、それぞれの界面エネルギーが低くなるように、ポリマーの各ユニット部分の偏析がおこるため、大気中及び水中の表面粗さ及び/又は接触角を調整することが可能である。その結果、培養面への細胞の接着を抑制でき、ポリマーの基材への密着性、及びスフェロイドの形成性を両立することができる。
また、ポリマー(C)の水酸基含有量が、3.00mmol/g以上、15.00mmol/g以下であることにより、遺伝子発現量が高いスフェロイドの形成が可能となる。
ポリマー(C)中の水酸基含有量は、具体的には、下記式5によって算出できる。
(式5)
水酸基含有量(mmol/g)=[{モノマー(c1)又はモノマーc2の質量(g)/モノマー(c1)又はモノマー(c2)の分子量(g/mol)}/ポリマー(C)の質量(g)]×構造単位Gあたりの水酸基数×1000
[重合開始剤]
ポリマー(C)の重合においては、ラジカル重合開始剤(以下、重合開始剤という)を使用することが好ましい。重合開始剤としては、上記ポリマー(B)の説明における[重合開始剤]の欄で挙げたものを援用できる。
<細胞培養基材の製造方法>
本発明の細胞培養基材の製造方法は特に限定されないが、ポリマーを含むコーティング剤を平面基材上にコーティングし、ポリマー層を形成する工程を含むことが好ましい。コーティング剤は、ポリマー、溶媒、及び、任意に架橋剤を含むことが好ましい。ポリマーの含有量は、コーティング剤の総質量中0.1~10質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。この範囲であると、塗液の粘度が適切でハンドリング性がよく、形成された膜の膜厚及び均一性が良好となり、培地中での膜安定性も良好なポリマー層を形成することが容易となる。
(溶媒)
コーティング剤に用いられる溶媒は、コーティングによりポリマー層を形成可能なものであり、かつ平面基材を浸食しないものであれば特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶媒、又はこれらのいずれか二種以上の混合溶媒等が挙げられ、均一なポリマー層形成の観点から、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールからなる群より選ばれる一種以上であることが好ましい。また、コーティング剤の基材への濡れ性の観点から、混合溶媒のうち、より高表面張力の溶媒の含有率は、溶媒の総量中5~30質量%であることが好ましい。
溶媒の乾燥方法は、乾燥温度が平面基材及びポリマーが耐久可能な温度以下であれば、特に限定されない。算術平均粗さRa及び膜厚分布の標準偏差を調整しやすくする観点からは、60℃以下、好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下、特に好ましくは25℃以下の環境で、水平に静置して温和に乾燥させることが好ましい。
(コーティング方法)
コーティング方法は、特に限定されず、スピンコート;ドロップキャスト;ディップコート;刷毛、ローラ、スプレー、塗工機による塗工;等の方法が挙げられる。大気中及び水中での、算術平均粗さRa及び/又は接触角を所望の範囲に調整しやすい観点、及び後述の通り大量培養にも適用できる観点から、ドロップキャストが好ましい。
[ドロップキャスト法]
ドロップキャスト法とは、良溶媒で溶解した樹脂溶液を、平面基材に所定量滴下し、静置したまま溶剤を揮発させることで、基材上にポリマー層を簡便に形成させる手法である。特殊な装置は不要であり、樹脂溶液を保持することができる壁面があれば、塗工担体も特に制限されない方法である。そのため、塗工担体の種類やサイズに制限のある、一般的なスピンコート法と比較して、培養基材のポリマー層の大面積化が可能である。その結果、一度で培養できるスフェロイド数がポリマー層の面積に比例して向上するため、スフェロイドの大量製造が可能である。
<滅菌>
本発明の細胞培養基材は、滅菌処理を行ってもよい。滅菌方法は特に限定されないが、高圧蒸気滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、ガンマ線滅菌や電子線滅菌等の放射線滅菌等が挙げられ、ガンマ線滅菌、又は電子線滅菌が好ましく、大量生産を行う場合は放射線透過性の点でガンマ線滅菌が特に好ましい。
放射線の吸収線量については特に限定されるものではないが、吸収線量が低すぎると滅菌性は確保されず、高すぎると平面基材及びポリマー層が劣化してしまう。本発明における放射線の吸収線量としては1kGy~50kGyが好ましく、5kGy~50kGyがより好ましく、5kGy~30kGy以下が特に好ましい。これによって本発明の細胞培養基材の特性を充分に保持したまま、滅菌性を付与する事ができる。
<スフェロイドの製造方法>
本発明の細胞培養基材、又は本発明の細胞培養容器を具備する細胞培養容器によって細胞を培養することにより、スフェロイドを製造することができる。また、MCF-7(ヒト乳腺癌細胞)を初めとする細胞間の相互作用が弱くスフェロイド化しにくい細胞においても、基材-細胞間の相互作用を調整することにより活性の高い細胞を大量に製造することが可能である。
当該スフェロイドの製造方法において、培養される細胞の種類は特に限定されず、正常細胞、癌細胞、間葉系幹細胞、およびハイブリドーマ等の融合細胞等が使用でき、遺伝子導入等の人工的処理がされた細胞であってもよい。特に限定されないが、例えば、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞、間葉系幹細胞等の一般的に3次元培養を行うことが求められている細胞や、生体模倣システム(Microphysiological System:MPS)に搭載されることが望まれる、各種前駆細胞及び幹細胞を含む体細胞である、脂肪細胞、肝細胞、腎細胞、膵臓細胞、乳腺細胞、腸細胞、内皮細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、筋芽細胞、心筋細胞、神経細胞、グリア細胞、樹状細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、骨細胞、線維芽細胞、各種血液系細胞、網膜細胞、角膜由来細胞、生殖腺由来細胞、各種線細胞、その他間葉系前駆細胞、各種癌細胞等の細胞が挙げられる。これらの細胞が由来する生物種も特に制限されず、ヒトおよび非ヒト動物由来の各種細胞を用いることができる。また、幹細胞の場合は、供給源は特に限定されるものではなく、幹細胞を含む限り、例えば、脂肪組織、骨髄、皮膚、口腔粘膜、唾液腺、歯根膜、歯髄、軟骨、臍帶、胎盤、羊膜等、癌や肉腫等の任意の腫瘍組織から採取可能である。細胞が由来する生物種としては、例えば、ヒト、アカゲザル、ミドリザル、カニクイザル、チンパンジー、タマリンおよびマーモセット等の霊長類、マウス、ラット、ハムスターおよびモルモット等の齧歯類、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ウズラ、ミンク、ツパイ、ならびにゼブラフィッシュ等が例示できる。
当該培養基材においては、細胞を任意の比率で共培養し、スフェロイドを製造することも可能である。共培養の際の細胞の組み合わせは特に限定されるものではないが、スフェロイド内部へ酸素を供給するという観点ではHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)が好ましい。共培養の際の各細胞の比率は特に限定されないが、スフェロイド内に血管を形成して十分な酸素供給を可能にするという観点から30:1~2:1の比率が特に好ましい。
スフェロイドの製造において、細胞培養に用いる培地は、細胞に合わせて適宜選択すればよい。培地の種類は特に限定されないが、例えば、任意の細胞培養基本培地や分化培地、初代培養専用培地を用いることができる。具体的には、イーグル細小必須培地(EMEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、A-MEM、グラスゴーMEM(GMEM)、IMDM、RPMI1640、ハムF-12、MCDB培地、ウィリアムス培地E、HEPATOCYTETHAWMEDIUM、及びこれらの混合培地等が挙げられるが、これらには限定されず、細胞が増殖や分化に必要な成分が含まれる培地であれば利用可能である。さらに、血清、各種成長因子、分化誘導因子、抗生物質、ホルモン、アミノ酸、糖、塩類等を添加した培地を使用してもよい。培養温度も特に制限されないが、通常は25~40℃程度で行う。
スフェロイドの製造においては、上記の細胞及び培地の組み合わせで、表面の算術平均粗さ及び/又は接触角が特定の範囲内であるポリマー層に、細胞を播種して、通常の動物細胞培養で使用される条件、例えば37℃、5%CO、95%空気下で培養することが好ましい。本発明の細胞培養基材を用いると、細胞が培養面と接触し、細胞と基材及び細胞同士の接着性が制御され、最終的に細胞がコンフルエントになる前に凝集し始めて、活性の高い細胞を含むスフェロイドが一部選択的に形成される。
つまり、播種直後より、細胞が培養面に接着し始めて、活性の高い細胞を中心とした凝集体を形成し、増殖し、自発的にスフェロイドを形成する。播種1~3日を経過した後、スフェロイドが一定の大きさになると、自然に培養面から脱離し始める。あるいは容易に培養面から剥離される。この現象は、細胞種によってはさらに7日程度持続する。これにより、得られたスフェロイドは、容易に回収することもできるとともに、細胞本来の力による自己凝集によるものであるため、内部壊死が惹起されにくい。
本発明の細胞培養基材によって製造されるスフェロイドは、形成されたスフェロイドはほぼ活性の高い細胞によってのみ構成されており、増殖性の低い細胞や死細胞をほとんど含まない。これに対して一般的なスフェロイド製造法であるハンギングドロップ法、スピナーフラスコ法等では、分化細胞や死細胞を含むさまざまな細胞が選別されることなく、物理的な力によって接着され、細胞塊としてのスフェロイドを形成する。したがって、従来のハンギングドロップ法等により製造されたスフェロイドは、活性の悪い細胞が含まれる夾雑物であるのに対し、本発明の細胞培養基材によって製造されるスフェロイドは、それを構成する活性の高い細胞の割合(純度)が高く、スフェロイドとしての機能が高くなる。
本発明の細胞培養基材によって製造されるスフェロイドの直径は、好ましくは50~250μmである。スフェロイドが上記の直径に満たない場合は、相互作用しあう細胞の数が少なくスフェロイドとして十分な生物学的機能を発揮できない。また、上記の直径よりも大きいスフェロイドの場合、スフェロイドの中心部で酸素等の栄養が枯渇してしまうため、一部の細胞が内部壊死してしまい、生物学的機能が低下する。
本発明の細胞培養基材によって製造されるスフェロイドの、下記式3で表される培養面1cmあたりのスフェロイドの形成指標は、好ましくは0.2~1.4%であり、より好ましくは0.4~1.4%であり、さらに好ましくは0.6~1.4%である。
(式3)(ポリマー層の表面1cmあたりのスフェロイドの形成指標)=[(スフェロイドの密度)÷(播種密度)]×100(%)
この指標は、50~250μmの適切なサイズのスフェロイドを効率的に製造できる指標であり、この指標が前記式の範囲外であれば巨大スフェロイドが形成されるか、又は適切なサイズのスフェロイドが低効率でしか形成されない。なお、細胞培養基材におけるポリマー層表面のミクロ及びマクロな膜物性が安定的で均質であり、水中で膜内のポリマー親水ユニットが一定割合、表面に偏析されている場合のみ、上記の形成指標の範囲を満たす。
本発明の細胞培養基材によって製造されるスフェロイドは、平面培養と比較して、高い増殖能を有しており、増殖期にある細胞マーカーあるKi67の発現量を、RNAレベル及び/又はタンパク質レベルで決定する、又は、再播種後のスフェロイドの細胞数をカウントすることにより容易に判別することができる。本発明の細胞培養基材によって製造されるスフェロイドでは、細胞種に関わらずこれらの増殖マーカーを高発現する点で、通常平面培養及び一般的なスフェロイド製造法によって得られる細胞とは区別される。本発明の細胞培養基材によって製造されるスフェロイドにおける増殖マーカーKi67の発現量は、好ましくは平面培養に対して1.0以上であって1.5より小さく、より好ましくは、1.5以上であって2.0より小さく、さらに好ましくは、2.0以上である。
それぞれのマーカーの発現を確認するためには、本発明ではqRT-PCR法を用いる。プライマーは、それぞれの遺伝子情報から設計し、通常の化学合成により得ることができる。
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例及び比較例における「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を表す。
(質量平均分子量(Mw)の測定方法)
ポリマー(A)、(B)、及び(C)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用した。測定装置及び測定条件としては、下記条件1によることを基本とし、試料の溶解性等により条件2とした。ただし、重合体種によっては、さらに適宜適切なキャリア(溶離液)及びそれに適合したカラムを選定した。その他の事項については、JISK7252-1~4:2008に基づいた。なお、難溶の高分子化合物については下記条件の下、溶解可能な濃度で測定した。
また、ポリマー(B)の分子量測定が困難な場合は、アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量をポリマー(B)の質量平均分子量とした。アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用し、測定装置及び測定条件としては、下記条件3によった。
(条件1)
カラム:TOSOHTSKgelSuperHZM-H、
TOSOHTSKgelSuperHZ4000 及び
TOSOHTSKgelSuperHZ2000を連結したもの。
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件2)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAWM-Hを2本連結したもの。
キャリア:10mMLiBr/N,N-ジメチルホルムアミド
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件3)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAW4000、
TOSOHTSKgelSuperAW3000 及び
TOSOHTSKgelSuperAW2500を連結したもの。
キャリア:N,N-ジメチルホルムアミド(1L)、トリエチルアミン(3.04g)、LiBr(0.87g)の混合液
測定温度:40℃
キャリア流量:0.6mL/min
<ポリエチレンオキサイド含有ポリマー(A)の製造>
[製造例1-1]
ポリマー(A-1)
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてMEK50部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてメトキシエチルアクリレートを50部、重合開始剤としてVPE0201(富士フイルム和光純薬株式会社:マクロアゾ開始剤)0.05部を仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後5時間熟成させ、室温に冷却し反応を停止し、真空ポンプでエチルメチルケトン(MEK)を完全に揮発させた後、ポリマー(A-1)を得た。得られたポリマー(A-1)のMwは22.3万、PEGの割合は0.1質量%、モノマーの平均LogPは0.48であった。
[製造例1-2~14、比較製造例1-1~4]
ポリマー(A-2~18)
表1に示す組成に変更した以外は、製造例1-1と同様にして、ポリマー(A-2~18)を得た。
表1中の略称の詳細は以下の通りである。
MEA:メトキシエチルアクリレート、LogP=0.48
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート、LogP=0.78
ISTA:イソステアリルアクリレート、LogP=6.00
ST:スチレン、LogP=2.70
GLM:グリセリンモノメタクリレート、
BA:ブチルアクリレート、LogP=1.88
ADE200:ポリエチレングリコールジアクリレート
<双性イオン構造含有ポリマー(B)の製造>
[製造例1-15]
ポリマー(B-1)
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、酢酸エチル100部を仕込み、内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した。別途用意しておいた、2,2’-アゾジイソブチロニトリルを0.69部、モノマー(b2)としてN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートを300部、モノマー(b1)としてメタクリル酸ブチルを100部、混合したものを、内温を75℃に保ちながら3時間滴下を続け、さらに5時間撹拌を続けた。固形分測定によって転化率が98%超えたことを確認後、冷却して3級アミノ基を有するアミンオキシドポリマー前駆体の溶液を得た。
次に、得られた3級アミノ基を有するポリマーの溶液に、オキシド化剤として35%過酸化水素水を157.18部(用いたN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートと等モル量)加え、70℃で16時間反応させることでアミノ基のオキシド化を行った。アミンオキシド変換率が99%を超えたことを確認後、冷却して取り出し、真空ポンプで溶媒を完全に揮発させた後、ポリマー(B-1)を得た。なお、上記アミンオキシド変換率は、特開平10-182589に開示される方法に従い判断した。
得られたポリマーのアミンオキシド基含有量は、加えたN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート量と前述の式4から4.05mmol/gであった。また得られたポリマーの質量平均分子量をGPCにより測定したところ、211,000であった。
[製造例1-16~21、比較製造例1-5~6]
ポリマー(B-2~7、B-10、11)
表2に示す組成に変更した以外は、製造例1-15と同様にして、ポリマー(B-2~7、B-10、11)を得た。
[製造例1-22、23]
(B-8、9)
表2に示す組成に変更した以外は、製造例1-15の、ポリマー(B-1)の前駆体を得る操作と同様にして、ポリマー(B-8、9)を得た。
表2中の略称の詳細は以下の通りである。
DMAEMA:N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
DMAPAA:N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
VP:2-ビニルピリジン
VI:1-ビニルイミダゾール
BMA:メタクリル酸ブチル
MEA:2-メトキシエチルアクリレート
ST:スチレン
ISTA:イソステアリルクリレート
VMA-70ベヘニルアクリレート:
DMBS:N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムブチル-A-スルホベタイン
DMMC:N-メタクリロイルオキシエチル-N,N-ジメチルアンモニウムメチル-A-カルボベタイン
<ポリマー(C)の合成>
[製造例1-24]
攪拌機、窒素導入管、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてトルエン40部仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマー(cc1)として2-イソシアナトエチルメタクリレート43部、モノマー(c3)としてメタクリル酸ブチルを20部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.6部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後8時間熟成した。その後、室温に冷却し反応を停止した。
次に、化合物(c’)としてD-グルカミン43部及びエタノール40部を加え、室温で5時間反応させた。その後、ダイヤフラムポンプで溶剤を除去し、ポリマー(C-1)を得た。
[製造例1-25、26、比較製造例1-8]
(C-2、3、6)
表3に示す組成に変更した以外は、製造例1-24と同様にして、水酸基を含むポリマーC-2、3、6を得た。
[製造例1-27]
(C-4)
攪拌機、窒素導入管、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒としてDMF75部仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマー(c1)として2-ヒドロキシエチルメタクリレート100部、モノマー(c3)としてメタクリル酸ブチルを20部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.6部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後8時間熟成した。その後、室温に冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプで溶剤を除去し、ポリマー(C-4)を得た。
[比較製造例1-7]
(C-5)
表3に示す組成に変更した以外は、製造例1-27と同様にして、水酸基を含むポリマー(C-5)を得た。
表3中の略称の詳細は以下の通りである。
MOI:2-イソシアナトエチルメタクリレート
AOI:2-イソシアナトエチルアクリラート
BMA:メタクリル酸ブチル
MEA:2-メトキシエチルアクリレート
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
<ポリマーコーティング液の調製>
[実施例1-1]
上記で得たポリマー(A-1)を、IPA/水=90/10質量部からなる混合溶媒で1質量%に希釈し、コーティング液(P-1)を調製した。
[実施例1-2~30、比較例1-1~15]
表4に示すポリマー及びポリマーの質量部に変更した以外は、実施例1-1と同様にして、コーティング液(P-2~37)を調製した。
<細胞培養基材の製造方法>
(ポリマーのコーティング)
[実施例1-1]
直径35mmの細胞培養用ポリスチレンディッシュ(AGCテクノグラス株式会社)の底面に、上記で得たポリマーコーティング溶液(P-1)を、マイクロピペッターで200μL滴下し、25℃、RH=50%環境下で24時間乾燥させ、ドロップキャスト法によって、コーティング剤で底面が被覆された細胞培養基材を得た。
[実施例1-2~30、比較例1-1~4、1-11~12、1-14~15]
表4、5に示すポリマーコーティング液及びコーティング液濃度、ディッシュ直径に変更した以外は、実施例1-1と同様にして細胞培養基材を得た。
[比較例1-5、1-7、1-13、1―16]
直径35mmの未処理ポリスチレンディッシュ(Asnol、アズワン株式会社)にポリマーコーティング溶液(P-2)を500μL滴下し、スピンコーター(ミカサ株式会社)を用いて、3000rpmで30秒間スピンコートした。その後、25℃環境下で24時間乾燥させ、スピンコート法によって、コーティング剤で底面が被覆された細胞培養基材を得た。
[比較例1-6]
直径35mmの細胞培養用ポリスチレンディッシュ(AGCテクノグラス株式会社)にポリマーコーティング溶液(P-2)を500μL滴下し、スピンコーター(ミカサ株式会社)を用いて、3000rpmで30秒間スピンコートした。その後、25℃環境下で24時間乾燥させ、スピンコート法によって、コーティング剤で底面が被覆された細胞培養基材を得た。
[比較例1-8]
スフェロイド形成用シャーレPrime surface MS-90350(住友ベークライト)を用いた。
[比較例1-9]
ポリマー未塗工の細胞培養用ポリスチレンディッシュ(AGCテクノグラス株式会社)を用いた。
[比較例1-10]
U字底96ウェルプレートに、ポリマーコーティング液(P-5)を各ウェルに約0.5mLずつ注入した。これを吸引排出した後、50℃で3時間乾燥させることにより、コーティング剤で内面が被覆された細胞培養基材を得た。
(細胞培養基材の滅菌)
[実施例1-1~30、比較例1-1~16]
上記で得た細胞培養基材を、透明フィルムで脱気包装し、ガンマ線照射(25kGy、コーガアイソトープ社)をすることで細胞培養基材に滅菌を施した。
<ポリマー層表面の表面物性>
(大気中での算術平均粗さ)
[実施例1-1~30、比較例1-1~9、1-11~16]
上記で得た細胞培養基材の壁面をプラスチックカッターで切削除去し、残った底面のポリマー層表面について、走査型プローブ顕微鏡(MFP-3D、オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社)を用いて走査した。カンチレバーはAC-240TS-R3(ばね定数:2N/m)をホルダーにセットして、カンチレバーの共振周波数付近でチューニングを行なった後、表面を走査した。
上記走査条件は以下の通りである。
・Scanarea:25μm×25μm
・Target Amplitude:4.0V
・Setpoint:2.0V
(水中での算術平均粗さ)
[実施例1-1~30、比較例1-1~9、1―11~16]
上記で得た細胞培養基材の壁面をプラスチックカッターで切削除去した後、残った底面のポリマー層表面をサンプルとした。100μLの精製水をサンプル上にこぼれないように滴下し、サンプル台に設置した。その後、走査型プローブ顕微鏡で表面を走査した。カンチレバーはBL-AC40-TS(ばね定数:0.09N/m)をホルダーにセットして、カンチレバーの共振周波数付近でチューニングを行なった後、表面を走査した。また、同様に作製したサンプルのポリマー層表面を24時間精製水に浸漬させた後、走査型プローブ顕微鏡を用いて同様の走査条件で表面を走査した。
上記走査条件は以下の通りである。
・Scanarea:25μm×25μm
・Target Amplitude:4.0V
・Setpoint:2.0V
(走査画像の処理)
[実施例1-1~30、比較例1-1~9、1-11~16]
SPM画像解析ソフト(IGOR PRO 6、HULINKS INC.)を用いて、上記走査により得られた走査画像にFlatten処理を行なった後、走査画像全体の算術平均粗さRa(nm)を評価した。結果を表4、5に示す。
(大気中での接触角)
[実施例1-1~30、比較例1-1~9、1-11~16]
上記で得た細胞培養基材の壁面をプラスチックカッターで切削除去し、残った底面のポリマー層表面をサンプルとした。接触角計(DMS―401、協和界面科学株式会社)を用いて、水滴2μLを各サンプル上に5点滴下し、滴下から60秒後の接触角をθ/2法でカーブフィッティングすることで平均値を算出した。結果を表4、5に示す。
(水中接触角)
[実施例1-1~30、比較例1-1~9、1-11~16]
上記で得た細胞培養基材の壁面をプラスチックカッターで切削除去し、残った底面のポリ
マー層表面をサンプルとした。各サンプルにつき、三態系キットを用いて、水中(精製水)で2μLの気泡を基材表面に付着させ、60秒後の接触角を楕円フィッティング法でフィッティングすることで各5点の平均値を算出した。さらに、上記の大気中での接触角の値と水中接触角の値を以下の式1に代入することでヒステリシスを算出した。結果を表4、5に示す。
(式1)接触角ヒステリシス=(大気中での接触角)+(水中での接触角)―180(°)
(水中での弾性率)
[実施例1-1~30、比較例1-1~9、1-11~16]
上記で得た細胞培養基材の壁面をプラスチックカッターで切削除去した後、残った底面のポリマー層表面をサンプルとした。100μLの精製水の液滴をサンプル上にこぼれないように滴下し、サンプル台に設置した。その後、走査型プローブ顕微鏡でフォースカーブを測定することで、水中での弾性率を測定した。カンチレバーとしてNT_B500_V0030(ばね定数:0.2N/m)をホルダーにセットして、ばね定数のキャリブレーションを行なった後、弾性率を測定した。
上記フォースカーブ測定条件は以下の通りである。
・Scanarea:25μm×25μm
・Velocity:2.0μ/s
・Setpoint:1.0nN
・Scanpoint:16×16
(フォースカーブの解析)
[実施例1-1~30、比較例1-1~9、1-11~16]
SPM画像解析ソフト(IGOR PRO 6、HULINKS INC.)を用いて、上記測定で得られたフォースカーブのRetract CurveをJKRモデルでフィッティングすることで水中での弾性率を算出した。結果を表4、5に示す。
(膜厚標準偏差)
[実施例1-1~30、比較例1-1~9、1-11~16]
上記で得た細胞培養基材の壁面をプラスチックカッターで切削除去したサンプルにつき、エリプソメトリー(ALPHA-SE、ジェー・エー・ウーラムジャパン製(株))を用いて、以下の手順でディッシュ面内の膜厚の標準偏差を測定した。
測定するサンプルの射出成型の方向を揃えた後、ディッシュの中心を通る端部から端部まで0.5cmピッチの7点を、方向を変更して同様に繰り返し5回測定し、計35点の測定値から膜厚の標準偏差を算出した。結果を表4、5に示す。
<細胞を使用した評価>
<使用細胞>
(UCMSC)
UCMSC(ヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞;タカラバイオ社)1mLを37℃温水浴にて解凍した後、15mL遠心管中の5mLのDMEM-low glucose(10%FBS+1%PS入り)培地に加えた。その後、遠心分離を3分行ない、上清をアスピレートし、ペレットをタッピングした後、DMEM培地を5mL加えて細胞懸濁液を調製した。調製した細胞懸濁液を、5mLのDMEM培地が入ったAGCテクノグラス製のφ100mmのIWAKI接着処理ディッシュに添加し、細胞を播種した。
37℃、5%COにて、インキュベーターで3日培養した。培養3日目、1mLのトリプシンEDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5%で5分間静置し、接着細胞をディッシュから剥離し、DMEM培地10mLで細胞を回収した後、5.0×10cells/mLの細胞懸濁液を調製し、細胞解凍時と同様の操作で接着ディッシュに播種し、これを繰り返すことで継代を行なった。2継代目の細胞(パッセージ数:5)を評価に使用した。
(BMSC)
BMSC(ヒト骨髄由来間葉系幹細胞)1mLを7℃温水浴にて解凍した後、15mL遠心管中の5mLのDMEM-low glucose(10%FBS+1%PS入り)培地に加えた。その後、遠心分離を3分行ない、上清をアスピレートし、ペレットをタッピングした後、DMEM培地を5mL加えて細胞懸濁液を調製した。調製した細胞懸濁液を、5mLのDMEM培地が入ったAGCテクノグラス製のφ100mmのIWAKI接着処理ディッシュに添加し、細胞を播種した。
37℃、5%COにて、インキュベーターで3日培養した。培養3日目、1mLのトリプシンEDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5%で5分間静置し、接着細胞をディッシュから剥離し、DMEM培地10mLで細胞を回収した後、5.0×10cells/mLの細胞懸濁液を調製し、細胞解凍時と同様の操作で接着ディッシュに播種し、これを繰り返すことで継代を行なった。パッセージ数36を評価に使用した。
(HuH7)
HuH7(ヒト肝がん由来細胞株)1mLを37℃温水浴にて解凍した後、15mL遠心管中の5mLのDMEM-low glucose(10%FBS+1%PS入り)培地に加えた。その後、遠心分離を3分行ない、上清をアスピレートし、ペレットをタッピングした後、DMEM培地を5mL加えて細胞懸濁液を調製した。調製した細胞懸濁液を、5mLのDMEM培地が入ったAGCテクノグラス製のφ100mmのIWAKI接着処理ディッシュに添加し、細胞を播種した。
37℃、5%COにて、インキュベーターで3日培養した。培養3日目、1mLのトリプシンEDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5%で5分間静置し、接着細胞をディッシュから剥離し、DMEM培地10mLで細胞を回収した後、5.0×10cells/mLの細胞懸濁液を調製し、細胞解凍時と同様の操作で接着ディッシュに播種し、これを繰り返すことで継代を行なった。パッセージ数58を評価に使用した。
(HepG2)
HepG2(ヒト肝がん由来細胞株)1mLを37℃温水浴にて解凍した後、15mL遠心管中の5mLのDMEM-low glucose(10%FBS+1%PS入り)培地に加えた。その後、遠心分離を3分行ない、上清をアスピレートし、ペレットをタッピングした後、DMEM培地を5mL加えて細胞懸濁液を調製した。調製した細胞懸濁液を、5mLのDMEM培地が入ったAGCテクノグラス製のφ100mmのIWAKI接着処理ディッシュに添加し、細胞を播種した。
37℃、5%COにて、インキュベーターで3日培養した。培養3日目、1mLのトリプシンEDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5%で5分間静置し、接着細胞をディッシュから剥離し、DMEM培地10mLで細胞を回収した後、5.0×10cells/mLの細胞懸濁液を調製し、細胞解凍時と同様の操作で接着ディッシュに播種し、これを繰り返すことで継代を行なった。パッセージ数18を評価に使用した。
(C2C12)
C2C12(マウス筋芽細胞株)1mLを37℃温水浴にて解凍した後、15mL遠心管中の5mLのDMEM-high glucose(10%FBS+1%PS入り)培地に加えた。その後、遠心分離を3分行ない、上清をアスピレートし、ペレットをタッピングした後、DMEM培地を5mL加えて細胞懸濁液を調製した。調製した細胞懸濁液を、5mLのDMEM培地が入ったAGCテクノグラス製のφ100mmのIWAKI接着処理ディッシュに添加し、細胞を播種した。
37℃、5%COにて、インキュベーターで3日培養した。培養3日目、1mLのトリプシンEDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5%で5分間静置し、接着細胞をディッシュから剥離し、DMEM培地10mLで細胞を回収した後、5.0×10cells/mLの細胞懸濁液を調製し、細胞解凍時と同様の操作で接着ディッシュに播種し、これを繰り返すことで継代を行なった。パッセージ数20を評価に使用した。
(NIH3T3)
NIH3T3(マウス線維芽細胞株)1mLを37℃温水浴にて解凍した後、15mL遠心管中の5mLのDMEM-low glucose(10%FBS+1%PS入り)培地に加えた。その後、遠心分離を3分行ない、上清をアスピレートし、ペレットをタッピングした後、DMEM培地を5mL加えて細胞懸濁液を調製した。調製した細胞懸濁液を、5mLのDMEM培地が入ったAGCテクノグラス製のφ100mmのIWAKI接着処理ディッシュに添加し、細胞を播種した。
37℃、5%COにて、インキュベーターで3日培養した。培養3日目、1mLのトリプシンEDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5%で5分間静置し、接着細胞をディッシュから剥離し、DMEM培地10mLで細胞を回収した後、5.0×10cells/mLの細胞懸濁液を調製し、細胞解凍時と同様の操作で接着ディッシュに播種し、これを繰り返すことで継代を行なった。パッセージ数15を評価に使用した。
(HUVEC)
HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)1mLを37℃温水浴にて解凍した後、15mL遠心管中の5mLの内皮細胞増殖培地2(タカラバイオ社)に加えた。その後、遠心分離を3分行ない、上清をアスピレートし、ペレットをタッピングした後、DMEM培地を5mL加えて細胞懸濁液を調製した。調製した細胞懸濁液を、5mLの内皮細胞増殖培地が入ったAGCテクノグラス製のφ100mmのIWAKI接着処理ディッシュに添加し、細胞を播種した。
37℃、5%COにて、インキュベーターで3日培養した。培養3日目、1mLのトリプシンEDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5%で5分間静置し、接着細胞をディッシュから剥離し、DMEM培地10mLで細胞を回収した後、5.0×10cells/mLの細胞懸濁液を調製し、細胞解凍時と同様の操作で接着ディッシュに播種し、これを繰り返すことで継代を行なった。パッセージ数7を評価に使用した。
(MCF-7)
MCF-7(ヒト乳腺癌細胞)1mLを37℃温水浴にて解凍した後、15mL遠心管中の5mLのEMEM培地(10%FBS+1%PS入り)に加えた。その後、遠心分離を3分行ない、上清をアスピレートし、ペレットをタッピングした後、DMEM培地を5mL加えて細胞懸濁液を調製した。調製した細胞懸濁液を、5mLのDMEM-low glucose(10%FBS+1%PS入り)が入ったAGCテクノグラス製のφ100mmのIWAKI接着処理ディッシュに添加し、細胞を播種した。
37℃、5%COにて、インキュベーターで3日培養した。培養3日目、1mLのトリプシンEDTA溶液を加え、37℃、CO濃度5%で5分間静置し、接着細胞をディッシュから剥離し、DMEM培地10mLで細胞を回収した後、5.0×10cells/mLの細胞懸濁液を調製し、細胞解凍時と同様の操作で接着ディッシュに播種し、これを繰り返すことで継代を行なった。パッセージ数35を評価に使用した。
(スフェロイド形成)
[実施例2-1]
上記で準備した細胞UCMSCを、DMEM培地で懸濁して、播種密度:1.5×10cells/cmの条件で、上記実施例で得られた細胞培養基材D-1に播種し、37℃、5%COにて、インキュベーターで3日培養することで、スフェロイドを得た。
[実施例2-2~57、比較例2-1~20]
表8に示した通りに細胞及び細胞培養基材を変更した以外には、実施例2-1と同様にして、スフェロイドを得た。細胞種が2種類の場合は、各細胞をDMEM培地で懸濁し、HUVEC:0.30×10cells/cm、他細胞:1.2×10cells/cmの播種密度条件で、上記実施例で得られた細胞培養基材に共に播種し、37℃、5%COにて、インキュベーターで3日培養することで、スフェロイドを得た。
(スフェロイド直径の評価)
[実施例2-1~57、比較例2-1~20]
製造したスフェロイドを、細胞観察装置(BioStudio-T、ニコンエンジニアリング株式会社)で、各細胞培養基材をフルスキャンすることで、細胞培養基材全体のスフェロイド又はシングルセルの画像を取得した。これら全ての画像を、画像解析ソフト(Imagej、NationalInstituteSofhealth)を用いて、二値化処理後、スフェロイド直径の平均値を算出した。結果を表6、7に示す。なお、スフェロイドを形成しなかったものについては、表中「-」で表している。
(評価基準)
〇:スフェロイド直径の平均値が50~250μm
×:スフェロイド直径の平均値が50μm未満又は250μmより大きい
(スフェロイド形成指標の評価)
製造したスフェロイドを、細胞観察装置(BioStudio-T、ニコンエンジニアリング株式会社)で、各細胞培養基材をフルスキャンすることで、細胞培養基材材全体のスフェロイド及びシングルセルの画像を取得した。その後、スフェロイド径の評価と同様に、二値化処理後に、全画像のスフェロイドの個数をカウントした後、スフェロイドの密度を算出し、その値を以下の式3に代入することで、スフェロイド形成指標を算出した。
(式3)(ポリマー層の表面1cmあたりのスフェロイドの形成指標)=[(スフェロイドの密度)÷(播種密度)]×100(%)
(評価基準)
◎:スフェロイド形成指標が、0.6%以上
〇:スフェロイド形成指標が、0.2%~0.6%未満
×:スフェロイド形成指標が、0.2%未満
結果を表6、7に示す。
表6、7の結果から、実施例2-1~57は直径50~250μmの適切なサイズのスフェロイドを、0.2%以上の高いスフェロイド形成指標で効率よく製造することができた。また、表面粗さ、水中接触角、及び弾性率のパラメータが全て一定の範囲内であると特に、高効率で適切なサイズのスフェロイドを製造することができる。一方、比較例2-1~20ではスフェロイドが形成しない、サイズが大きいスフェロイドを形成する、又は、スフェロイド形成指標が0.2%より低く、スフェロイドを少量しか回収できない結果となった。
(スフェロイド内部壊死の評価)
[実施例2-1~57、比較例2-1~20]
製造したスフェロイドについて、以下の手順live/deae染色を行った。製造したスフェロイドの懸濁溶液を、ピペッティングにより回収しセルストレーナー(pluri Strainer、pluriSelect)を通し、1.5mLチューブに培地で回収後、遠心分離することで、40μm以上の直径のスフェロイドを得た。その後、PBS×3回洗浄、遠心、上清除去を行ない、Double staining kit(同仁化学株式会社)を用いて染色後、96ウェルプレートに播種した。暗所で25℃、1時間でインキュベートした後、蛍光顕微鏡(BZ-X810、キーエンス株式会社)を用いてスフェロイドの内部壊死観察を行なった。Calcein-AMとPI(Propidiu m Iodide)の波長に対応する蛍光画像のZスタックを取得し、スフェロイド中心部のPI画像の輝度からスフェロイドに対する死細胞の面積割合を定量化した。結果を表8,9に示す。なお、なお、スフェロイドを形成しなかったものについては、表中「-」で表している。
(評価基準)
◎:0~10%
〇:10~30%
△:31~50%
×:51%以上
<定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)>
(増殖性マーカー発現量)
[実施例2-1~57、比較例2-1~20]
製造したスフェロイドの懸濁溶液を、ピペッティングにより回収しセルストレーナー(pluri Strainer、pluriSelect)を通し、遠心分離することで、40μm以上の直径のスフェロイドを得た。その後、回収したスフェロイドをPureLink(R)RNAMinikit(ThemoFisher株式会社)を用いてトータルRNAを抽出した。細胞が接着したものについては、回収せずディッシュをそのまま上記kitで処理し、トータルRNAを抽出した。抽出した全RNAをSuperScript IV VILO MasterMix(ThermoFisher社)とNuclease-FreeWater(ThermoFisher社)と抽出した各サンプルのRNA溶液を混合し、ThermalCyclerを用いて逆転写反応によりcDNAを合成した。cDNA合成の際は、サンプルの全RNA濃度が100ng/mLになるように調製した。その後、cDNA、目的遺伝子(Oct4、Sox2、Nanog)のTaqManprobe、TaqManFastAdvancedMasterMix(ThermoFisher製)を用い、PCRを実施した。温度サイクルは、以下のサイクルで行なった。データは、ΔΔCT比定量により解析した。データをGAPDHレベルに対して標準化し、比較例2-9(二次元培養)と比較した。
1)95℃30秒(1サイクル)
2)95℃5秒-60℃30秒(40サイクル)
3)95℃15秒
4)60℃30秒
5)95℃15秒
以下が使用した、目的遺伝子のtaqmanprobeである。
Ki67:Hs04260396_g1、ThermoFisher株式会社
結果を表8、9に示す。なお、スフェロイドを形成しなかったものについては、表中「-」で表している。
(評価基準)
・Ki67
◎:2<遺伝子発現量;i67に対して陽性となる、遺伝子発現量がかなり高い。
〇:1.5<遺伝子発現量≦2.0;Ki67に対して陽性となる、遺伝子発現量が高い。
△:1.0<遺伝子発現量≦1.5;Ki67に対して陽性となる、遺伝子発現量がやや高い。
×:遺伝子発現量≦1.0;Ki67に対して陰性となる。
<細胞増殖性評価>
[実施例2-1~57、比較例2-1~20]
製造したスフェロイドの懸濁溶液を、ピペッティングにより回収しセルストレーナー(pluri Strainer、pluriSelect)を通し、遠心分離することで、40μm以上の直径のスフェロイドを得た。その後、AGCテクノグラス製のφ35mmのIWAKI接着処理ディッシュに再播種し、37℃インキュベーター内で3日間培養した。培養後、トリプシンで5分処理し、DMEM培地で細胞を15mL遠沈管に回収した後、上清を除去した。Accumax(ナカライテスク)を1mL添加した後、37℃,1時間インキュベートすることで、スフェロイドを充分にシングルセルに解離させた。セルカウンタープレート(アズワン)で細胞数をカウントした。培養0日と3日(72時間)の細胞数から増殖率を評価した。なお、スフェロイドを形成しなかったものについては、表中「-」で表している。
(評価基準)
◎:増殖率が2.0倍以上となる。
〇:増殖率が1.5倍以上2.0倍未満である
△:増殖率が1倍以上1.5倍未満である。
×:増殖率が1倍未満である。
表8、9の結果から、実施例2-1~57で得られたスフェロイドは細胞生存率が高く、かつ、増殖性マーカーの発現量及び増殖率が高く、高い活性を有するスフェロイドであることを示す結果となった。また、特には、水中表面粗さ、接触角、及び弾性率のパラメータが一定範囲であると活性の高いスフェロイドを製造することが可能であった。一方、比較例2-2の巨大スフェロイドは細胞生存率および増殖率が低く、実施例で得られたスフェロイドと比較して著しく活性が低いスフェロイドであった。また、比較例2-10のU底で製造したスフェロイドも内部壊死および増殖率は劣る結果となった。
本発明の細胞培養基材は、細胞種に依らずスフェロイドを内部壊死を引き起こさない適切なサイズに制御できる点や、活性の高いスフェロイドを高効率で提供できる点から、創薬スクリーニングの基礎及び応用研究、患部を治療するための移植用途、並びに製剤用途において再生医療に用いることができる。

Claims (15)

  1. 平面基材上にポリマー層を有する細胞培養基材であって、前記ポリマー層の表面における、大気中での算術平均粗さRaが0.8nm以下であり、水中での算術平均粗さRaが0.5~20.0nmであり、前記ポリマー層を形成するポリマーが、下記ポリマー(A)、ポリマー(B)及びポリマー(C)からなる群より選ばれるいずれか一種以上である、細胞培養基材。
    ポリマー(A):水/オクタノール分配係数LogPが-0.06~10であるアクリル系モノマー由来の構造単位とポリエチレンオキサイド部分とを含み、前記ポリエチレンオキサイド部分の質量割合が、0.1~10%であるポリマー。
    ポリマー(B):水/オクタノール分配係数LogPが0~10であるモノマー由来の構造単位と、ベタイン構造を有するモノマー由来の構造単位又はアミンオキシド基を有する構造単位とを含み、前記ベタイン構造又は前記アミンオキシド基の含有量が、2.00~8.00mmol/gであるポリマー。
    ポリマー(C):1molあたりに1mol以上の水酸基を含む構造単位(G)を含み、前記水酸基の含有量が、3.00mmol/g以上、15.00mmol/g未満であるポリマー。
  2. 平面基材上にポリマー層を有する細胞培養基材であって、前記ポリマー層の表面における、大気中での算術平均粗さRaが0.8nm以下であり、水中での接触角が130度以上160度以下であり、式1で表される接触角ヒステリシスが20度以上であり、前記ポリマー層を形成するポリマーが、下記ポリマー(A)、ポリマー(B)及びポリマー(C)からなる群より選ばれるいずれか一種以上である、細胞培養基材。
    (式1)接触角ヒステリシス=(大気中での接触角)+(水中での接触角)-180(°)
    ポリマー(A):水/オクタノール分配係数LogPが-0.06~10であるアクリル系モノマー由来の構造単位とポリエチレンオキサイド部分とを含み、前記ポリエチレンオキサイド部分の質量割合が、0.1~10%であるポリマー。
    ポリマー(B):水/オクタノール分配係数LogPが0~10であるモノマー由来の構造単位と、ベタイン構造を有するモノマー由来の構造単位又はアミンオキシド基を有する構造単位とを含み、前記ベタイン構造又は前記アミンオキシド基の含有量が、2.00~8.00mmol/gであるポリマー。
    ポリマー(C):1molあたりに1mol以上の水酸基を含む構造単位(G)を含み、前記水酸基の含有量が、3.00mmol/g以上、15.00mmol/g未満であるポリマー。
  3. ポリマー層の表面における、膜厚分布の標準偏差が40nm以下である、請求項1又は2記載の細胞培養基材。
  4. 式2で表される算術平均粗さRaの差が0.5~20nmである、請求項1又は2記載の細胞培養基材。
    (式2)算術平均粗さの差=(水中での算術平均粗さ)-(大気中での算術平均粗さ)(nm)
  5. ポリマー層の表面における水中での算術平均粗さRaが、前記ポリマー層の表面に水を接触させた直後及び24時間後においていずれも0.5~20.0nmである、請求項1又は2記載の細胞培養基材。
  6. ポリマー層の表面における、SPMのフォースカーブ測定により評価した水中での弾性率が、0.01~10MPaである、請求項1又は2記載の細胞培養基材。
  7. ポリマー層が、LogP(水/1-オクタノール水/オクタノール分配係数)が0~10である疎水ユニット及び親水ユニットを有するコポリマーから形成される、請求項1又は2記載の細胞培養基材。
  8. 平面基材上にポリマー及び溶媒を含むコーティング剤をドロップキャストし、ポリマー層を形成する工程を含む、細胞培養基材の製造方法であって、前記細胞培養基材の前記ポリマー層の表面における、大気中での算術平均粗さRaが0.8nm未満であり、水中での算術平均粗さRaが0.5~20.0nmであり、前記ポリマー層を形成するポリマーが、下記ポリマー(A)、ポリマー(B)及びポリマー(C)からなる群より選ばれるいずれか一種以上である、細胞培養基材の製造方法。
    ポリマー(A):水/オクタノール分配係数LogPが-0.06~10であるアクリル系モノマー由来の構造単位とポリエチレンオキサイド部分とを含み、前記ポリエチレンオキサイド部分の質量割合が、0.1~10%であるポリマー。
    ポリマー(B):水/オクタノール分配係数LogPが0~10であるモノマー由来の構造単位と、ベタイン構造を有するモノマー由来の構造単位又はアミンオキシド基を有する構造単位とを含み、前記ベタイン構造又は前記アミンオキシド基の含有量が、2.00~8.00mmol/gであるポリマー。
    ポリマー(C):1molあたりに1mol以上の水酸基を含む構造単位(G)を含み、前記水酸基の含有量が、3.00mmol/g以上、15.00mmol/g未満であるポリマー。
  9. 平面基材上にポリマー及び溶媒を含むコーティング剤をドロップキャストし、ポリマー層を形成する工程を含む、細胞培養基材の製造方法であって、前記細胞培養基材の前記ポリマー層の表面における、大気中での算術平均粗さRaが0.8nm未満であり、水中での接触角が130度以上160度以下であり、式1で表される接触角ヒステリシスが20度以上であり、前記ポリマー層を形成するポリマーが、下記ポリマー(A)、ポリマー(B)及びポリマー(C)からなる群より選ばれるいずれか一種以上である、細胞培養基材の製造方法。
    (式1)接触角ヒステリシス=(大気中での接触角)+(水中での接触角)―180(°)
    ポリマー(A):水/オクタノール分配係数LogPが-0.06~10であるアクリル系モノマー由来の構造単位とポリエチレンオキサイド部分とを含み、前記ポリエチレンオキサイド部分の質量割合が、0.1~10%であるポリマー。
    ポリマー(B):水/オクタノール分配係数LogPが0~10であるモノマー由来の構造単位と、ベタイン構造を有するモノマー由来の構造単位又はアミンオキシド基を有する構造単位とを含み、前記ベタイン構造又は前記アミンオキシド基の含有量が、2.00~8.00mmol/gであるポリマー。
    ポリマー(C):1molあたりに1mol以上の水酸基を含む構造単位(G)を含み、前記水酸基の含有量が、3.00mmol/g以上、15.00mmol/g未満であるポリマー。
  10. 請求項1又は2記載の細胞培養基材を用いて細胞を培養することにより、スフェロイドを形成する、スフェロイドの製造方法であって、前記スフェロイドが、直径50~250μmである、スフェロイドの製造方法。
  11. 式3で表わされる、ポリマー層の表面1cmあたりのスフェロイドの形成指標が、0.2~1.4%である、請求項10記載のスフェロイドの製造方法。
    (式3)(ポリマー層の表面1cmあたりのスフェロイドの形成指標)=[(スフェロイドの密度)÷(播種密度)]×100(%)
  12. スフェロイドにおいて、Ki67の発現が陽性で、かつ、再播種72時間後の細胞増殖率が2倍以上である、請求項10記載のスフェロイドの製造方法。
  13. スフェロイドにおいて、全体の細胞に対して内部の死細胞率が30%以下である、請求項10記載のスフェロイドの製造方法。
  14. スフェロイドを構成する細胞が、各種体細胞、癌細胞、体性幹細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞及びがん幹細胞からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項10記載のスフェロイドの製造方法。
  15. 請求項1又は2記載の細胞培養基材を具備する細胞培養容器。
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