JP2020038059A - 蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤、並びにその用途 - Google Patents

蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤、並びにその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、優れた蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制力を発現する、蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤、並びに、該接着抑制剤を含む生化学分析用ブロッキング剤、バイオフィルム形成抑制コート剤、細胞培養器材処理剤、タンパク質安定化剤及び細胞培養培地添加剤を提供することにある。【解決手段】 上記課題は、アミンオキシド基を有し、かつ質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマー(A)を含む、蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤によって解決される。【選択図】 なし

Description

本発明は、蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤、並びに、該接着抑制剤を含む生化学分析用ブロッキング剤、バイオフィルム形成抑制コート剤、細胞培養器材処理剤、タンパク質安定化剤及び細胞培養培地添加剤に関する。
生化学分析の分野では、抗原抗体反応による特異吸着を利用し、DNAやタンパク質を検出し可視化する方法が、サザンブロッティング法、ウエスタンブロッティング法、ELISA法、免疫染色法等として広く知られている。抗体は、標的タンパク質以外とも非特異的な吸着反応を起こす。このような非特異的吸着を防ぐために、検出・測定対象表面を、非特異的な吸着は防ぐけれど特異的吸着は妨げないようなブロッキング剤を覆うような前処理が行われる。
ブロッキング剤としては、正常血清、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、スキムミルクのような生体由来のタンパク質が知られている(特許文献1、非特許文献1)。また、ブロッキング剤としては、TWEEN20と称される界面活性剤、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、(メタ)アクリロイルモルホリンとその他のモノマーとの共重合体なども知られている(特許文献2、3、4)。また、ホスホリルコリン基を側鎖に有する共重合体を用いたブロッキング剤も検討されている(特許文献5、非特許文献2)。
しかし、特許文献1や非特許文献1に開示されるような生体由来のタンパク質は、性能にばらつきが生じやすいという潜在的な課題を有している。ところで、ブロッキング剤には、染色の標的であるタンパク質に染色剤が特異吸着し、発色する際、その発色を妨げないと共に、標的以外のタンパク質を覆い、標的以外のタンパク質には染色剤が吸着せずに発色しないことが求められる。しかし、特許文献2〜4に開示される界面活性剤等は、標的のタンパク質に対する染色剤の特異吸着による発色を妨げたり、標的以外のタンパク質を十分には覆えず、標的以外のタンパク質にも染色剤が吸着し、発色してしまったりするなどの課題を有している。さらに、特許文献5に開示される共重合体は、原料のモノマー合成時に複数の反応やそれに伴う精製が必要であるなど生産性に問題を有していた。
また、バイオフィルムは生物膜やスライムとも言われ、一般に水系で細菌やカビ等の微生物が物質の表面に付着・増殖することによって微生物細胞内から多糖やタンパク質などの高分子物質を産生して構造体を形成したものを指す。バイオフィルムが形成される前後で比較すると、バイオフィルムが一度形成された場合、洗浄・除去、抗生物質、薬剤、熱、乾燥等に対して著しく高い抵抗性を示す。その結果、付着・増殖した微生物を原因とする危害が発生して様々な産業分野で問題を引き起こす。
例えば、カテーテル等の医療機器の管内に細菌が付着しバイオフィルムを形成することで詰まりの原因となり、処すべき治療を施すことが不可能となる。また、バイオフィルムが剥がれ落ち、細菌の凝集体が体内に侵入し、深刻な疾病となる恐れがある。食品プラントの配管内にバイオフィルムが形成されると、バイオフィルムが剥がれ落ち、製品内への異物混入につながるだけでなく、微生物由来の毒素で食中毒の原因となる。更に、金属表面へのバイオフィルム形成は金属腐食の原因となり、設備の老朽化を促進する。また、水槽の内面にバイオフィルムが形成されると、水槽内の生物に悪影響を及ぼす。
このように、バイオフィルムの形成抑制が求められており、バイオフィルム形成抑制について種々検討されている。
特許文献6では、アルカリ無機塩を主成分とするバイオフィルム崩壊剤に、低分子量のアミンオキシド界面活性剤を含むバイオフィルム用処理剤が開示され、一度形成されたバイオフィルムを、低分子量の界面活性剤によって洗浄する手法が開示されている。しかし、一度形成されたバイオフィルムをはがすことは困難であり、洗浄作業による労働的負担が大きい。また洗浄作業の際、多量の水を使用するため処理問題や環境汚染問題を伴う。特許文献7では、アミノ基及び4級アンモニウム基から選ばれる基を1種類以上有し、かつ、アニオン性基を有するビニル系モノマーに由来する高分子化合物を特徴とする、バイオフィルムの形成を抑制する方法が開示され、該高分子化合物が、微生物の付着防止、殺菌、抗菌作用を発揮し、バイオフィルムの形成を抑制する手法が開示されている。しかし、該高分子化合物は耐水性が劣り、バイオフィルム形成抑制性が不十分である。
また、医薬品、農薬などの創薬や食品検査、診断、遺伝子工学等の分野において、細胞を用いた評価が幅広く行われている。従来、細胞の機能や応答を評価する場合には、細胞はシャーレなどに入れられた培地等により培養され、様々な実験に用いられている。しかし、数多くの薬品や導入物質による反応を調べる場合には、細胞の特定の反応を効率よく、短時間で多種類の分析を行い、しかもより少ない試料で結果が得られる評価方法が望まれていた。このような状況において、マイクロチップと呼ばれる細胞培養器材がガラス等の基板上で保持した細胞の化学反応を観察あるいは測定する試みは、操作の簡便化・自動化による分析時間の短縮などのメリットをもたらすと期待され、近年盛んに行われてきている。マイクロチップを利用したシステムの利点としては、サンプルや試薬の使用量あるいは廃液の排出量が軽減され、省スペースで持ち運び可能な安価なシステムの実現が考えられている。例えば非特許文献3には、上記利点を活かし、流路壁面に細胞を付着させたマイクロチップを用いて細胞の機能や応答を評価する研究もなされている。
しかしながら、細胞を用いるマイクロチップでは、デバイスの表面に生物試料由来の細胞や蛋白質による接着が生じ、目詰まりや分析の精度や感度の低下を招くという問題があった。その問題を解消するために、例えば特許文献8には、スルフィニル基を側鎖に有する繰り返し単位を有する重合体を有効成分とする細胞接着防止剤でコーティングされたマイクロ流路デバイスが報告されている。
また、タンパク質はポリペプチド鎖内のファンデルワールス相互作用、水素結合、静電的相互作用などの非共有結合性の弱い極性相互作用によって高次構造が維持されており、このような高次構造により様々な機能が発現されている。これらの結合は外的なさまざまな要因(温度、pH、塩濃度、タンパク質自身の濃度、界面活性剤、変性剤、二価金属、プロテアーゼの共存)によって変化し、場合によってはタンパク質の構造が壊れて本来の機能が失われた状態となる。そのためタンパク質の安定性は機能的な高次構造を維持する能力と言い換えることができる。
このような理由からタンパク質を水溶液中で安定化させる必要があり、緩衝溶液中で常に所定の温度にして保存するなど保管条件の最適化や、安定化剤(アルブミンなど他のタンパク質、グリセロース・ポリエチレングリコール・スクロースなどの多価アルコール、グルタミン酸・リジンなどのアミノ酸、グルタチオン・ジチオトレイトールなどの還元剤、EDTAなどの金属キレート剤、クエン酸などの有機酸塩、重金属塩、基質、補酵素)を単独又は併用しての使用が検討されている(非特許文献4)。特に合成化合物の安定化剤としては、例えば、特許文献9にはホスホリルコリン基を有する重合体、特許文献10にはポリエチレングリコール部位を有する高分子化合物、特許文献11には低分子アミンオキシド化合物、を使用する方法が開示されている。
しかし、これらの方法はタンパク質の種類によっては、保持率や安定期間が満足できるものではない場合があり、更なる改良が求められている。
また、化学物質や医薬品等の薬効及び毒性評価、抗体などの有用物質の大量生産、再生医療等の分野で利用される動物細胞は、シャーレやマルチウェルプレート、袋状容器などの培養容器内で培養されることが多い。培養容器内の細胞は、例えば、培養容器の表面に接着し、培養容器の培養面上で伸展することにより2次元的に増殖する。しかし、2次元的に増殖した細胞は生体内と環境が大きく異なるため、生体内における形態や機能を発現しない場合があり、3次元的な細胞凝集塊を形成させる方が、その機能維持に有利であると言われている。そこで、細胞が接着しにくい培養容器による細胞凝集塊を形成する技術が開示されている。例えば、非特許文献5には、親水性のポリヒドロキシエチルメタクリレートを塗布した培養器具で、肝細胞がスフェロイドを形成することが報告されている。また、特許文献12には、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレートとの共重合体がコーティングされた培養容器が開示されている。
しかし、非特許文献5や特許文献12に開示されるような技術では、培養容器の表面をコーティング剤で処理するためのコストや時間がかかってしまう。また、ポリスチレン表面に減圧した空気、アルゴンガス等の雰囲気下で高電圧をかけ、プラズマを発生させて表面にラジカルを生成させ、このラジカルに水蒸気や酸素を接触反応させ、水酸基やカルボキシル器などの親水性の官能基を生成させる方法も利用されているが、このような方法では、プラズマ処理後、ポリスチレン表面が徐々に疎水性に変化していき、親水性な表面状態を保持できず、3次元的な細胞凝集塊を形成することができないという問題があった。
また、動物細胞を大量に効率よく培養する技術は、モノクローナル抗体をはじめ有用な生理活性物質の生産に応用されているが、例えばRPM11640、イーグルMEM、Ham‘s F12などの合成基礎培地に10〜20%程度のウシ胎児血清(FBS)などの動物血清を添加した培養液が一般に用いられる。しかしながら、培地に血清を加えることは培地コストの上昇を招き、また、血清由来のタンパク質を含む培養液から目的とする生理活性物質を単離することが困難になるなどの欠点がある。また、多くの場合、血清にはロット間に品質のばらつきがみられる。そこで血清の使用に先立ってロットチェックを十分に行い、使用可能な血清を選択する必要があるが、この血清の選択には多くの労力を要する。
上記課題を解決すべく、血清を用いない培地(無血清培地)の検討が行われてきた。
例えば、特許文献13には、グリシルグリシンを培地に添加することで、動物細胞に高濃度に有用物質を生産させることができることが開示されている。また、特許文献14には、リン脂質類似構造を有するポリマーを含有する培地で細胞培養した場合に、生理活性物質を効率的に生産できることが開示されている。また、特許文献15には、疎水性D−アミノ酸を含有する培地が、細胞増殖を促進させ、有用物質の生産量を増大させることが開示されている。
しかし、従来の無血清培地の多くは、抗体産生細胞の増殖性、生存性及び抗体生産性の面で血清含有培地に比べて十分なものとは言えない。また、抗体産生細胞培養において、培地成分にアミンオキシド基を有し、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマーを培地添加剤として用いた効果に関する知見は無い。
国際公開第2016/052690号 特開2004−219111号公報 特開平04−019561号公報 特開2008−209114号公報 特開平07−083923号公報 特開2008−156389号公報 特開2010−163429号公報 国際公開第2013/099901号 特開平10−45794号公報 特開平10−237094号公報 特表2007−509164号公報 国際公開第2005/001019号 特開平7−23780号公報 特開平4−304882号公報 特開2015−027265号公報
「渡辺・中根 酵素抗体法」学際企画株式会社刊 2002年 高分子論文集 第35巻 7号 423(1978) Analytical Chemistry 2005:77,p.2125−2131 新生化学実験講座1 タンパク質I 分離・精製・性質 16章 EXPERIMENTALCELLRESEARCH,200,326−332(1992)
上記事情に鑑み、本発明の課題は、優れた蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制力を発現する、蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤、並びに、該接着抑制剤を含む各種用途を提供することにある。
また、本発明は、標的のタンパク質に対する染色剤の特異吸着による発色を妨げない性能や、標的以外のタンパク質を十分に覆い、標的以外のタンパク質に対する染色剤の非特異吸着を防止し、発色を防止する性能を安定して発現できる、生化学分析用ブロッキング剤を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、標的のタンパク質に対する染色剤の特異吸着による発色を妨げることなく、標的以外のタンパク質を十分に覆い、標的以外のタンパク質に対する染色剤の非特異吸着を防止して発色させない効果を安定して発揮する生化学分析用ブロッキング剤を提供することを目的とする。
また、本発明の課題は、安全性、塗工性及び耐水性に優れ、かつ、長期間のバイオフィルム形成抑制を可能とする、バイオフィルム形成抑制コート剤及び該コート剤からなる塗膜を有する、バイオフィルム形成抑制積層体を提供することである。
また、本発明は、蛋白質吸着性が抑えられ、且つ優れた細胞接着防止効果を発揮する細胞培養器材処理剤、該細胞培養器材処理剤からなる細胞接着防止膜を有する、細胞塊製造に適した細胞培養器材、該器材を具備するメディカルデバイス、及び該細胞培養器材の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明の課題は、アミンオキシド基を有し、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマー(A)を用いることで、タンパク質の機能を損なうことなく安定保管が可能な、タンパク質安定化剤を提供することにある。また、該タンパク質安定化剤とタンパク質とを共存させることで、タンパク質の機能を損なうことなく安定保管が可能な、タンパク質の安定化方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、コストや手間の増加を伴わずに3次元的かつ生細胞数の割合が良好な細胞凝集塊を作製するための、細胞培養培地添加剤、該添加剤を含む細胞培養培地、該添加剤を用いた細胞凝集塊の製造方法を提供することにある。
また、本発明の目的は、コストや手間の増加を伴わずに、抗体の生産性を高めるための、抗体産生細胞培養培地添加剤、該添加剤を用いた抗体産生細胞の培養方法、細胞培養培地及び抗体の製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔26〕に関する。
〔1〕 アミンオキシド基を有し、かつ質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマー(A)を含む、蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
〔2〕 ビニル系ポリマー(A)が、下記一般式1〜3で示される少なくともいずれかの構造を有する、〔1〕に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
Figure 2020038059
Figure 2020038059
Figure 2020038059
[一般式1〜3中、
Xは2価の結合基、
yは0又は1、
1は炭素数1〜6のアルキレン基、
2及びR3はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、
4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、
5〜R9のうち4つはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5〜R9のうちの1つはビニル系ポリマー(A)の主鎖との結合位置を表し、
*はビニル系ポリマー(A)の主鎖との結合位置を表す。]
〔3〕 前記ビニル系ポリマー(A)が、エチレン性不飽和基を有するモノマーを重合してなるポリマーと酸化剤との反応生成物であり、
前記エチレン性不飽和基を有するモノマーが、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と3級アミノ基とを有するモノマー(a)を必須成分として含む、〔1〕又は〔2〕に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
〔4〕 前記エチレン性不飽和基を有するモノマーが、少なくとも、3級アミノ基を有するモノマー(a)と、炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)とを含む、〔3〕に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
〔5〕 〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤を含み、前記接着抑制剤中のビニル系ポリマー(A)が、アミンオキシド基を1〜10mmol/g有するビニル系ポリマー(A)である、生化学分析用ブロッキング剤。
〔6〕 前記ビニル系ポリマー(A)が、チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体である、〔5〕に記載の生化学分析用ブロッキング剤。
〔7〕 基材表面に固定した病理組織に、〔5〕又は〔6〕に記載の生化学分析用ブロッキング剤を接触させた後、前記病理組織中の抗原に、染色用抗体を吸着させ、前記抗原を検出する免疫染色方法。
〔8〕 チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなるアミンオキシド基含有ビニル系ポリマー(A’)であって、該アミンオキシド基含有ビニル系ポリマー(A’)が、下記一般式1〜3で表される少なくともいずれかのアミンオキシド構造を含む、アミンオキシド基含有ビニル系ポリマー(A’)。
Figure 2020038059
Figure 2020038059
Figure 2020038059
[一般式1〜3中、
Xは2価の結合基、
yは0又は1、
1は炭素数1〜6のアルキレン基、
2及びR3はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、
4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、
5〜R9のうち4つはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5〜R9のうちの1つはビニル系ポリマー(A’)の主鎖との結合位置を表し、
*はビニル系ポリマー(A’)の主鎖との結合位置を表す。]
〔9〕 〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤を含み、前記接着抑制剤が、質量平均分子量が2,000〜10,000,000であるビニル系ポリマー(A)を含む、バイオフィルム形成抑制コート剤。
〔10〕 前記ビニル系ポリマー(A)が、アミンオキシド基を0.25〜5mmol/g含む〔9〕に記載のバイオフィルム形成抑制コート剤。
〔11〕 基材上に、〔9〕又は〔10〕に記載のバイオフィルム形成抑制コート剤からなる塗膜を有する、バイオフィルム形成抑制積層体。
〔12〕 〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤を含む、細胞培養器材処理剤。
〔13〕 前記ビニル系ポリマー(A)が、アミンオキシド基を0.25〜5mmol/g含む、〔12〕に記載の細胞培養器材処理剤。
〔14〕 前記ビニル系ポリマー(A)が、カルボキシル基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有する〔12〕又は〔13〕に記載の細胞培養器材処理剤。
〔15〕 さらに架橋剤を含む〔14〕に記載の細胞培養器材処理剤。
〔16〕 基材上に、〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤を含む細胞接着防止膜を有する細胞培養器材。
〔17〕 〔16〕に記載の細胞培養器材を具備する、メディカルデバイス。
〔18〕 〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤を含む、タンパク質安定化剤。
〔19〕 前記ビニル系ポリマー(A)が、アミンオキシド基を1〜10mmol/g含む、〔18〕に記載のタンパク質安定化剤。
〔20〕 〔18〕又は〔19〕に記載のタンパク質安定化剤と、タンパク質とを共存させることを特徴とする、タンパク質の安定化方法。
〔21〕 〔1〕〜〔4〕いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤を含む、細胞培養培地添加剤。
〔22〕 前記ビニル系ポリマー(A)が、アミンオキシド基を1〜10mmol/g含む、〔21〕に記載の細胞培養培地添加剤。
〔23〕 前記細胞が抗体産生細胞である、〔21〕又は〔22〕に記載の細胞培養培地添加剤。
〔24〕 〔21〕〜〔23〕いずれか1項に記載の細胞培養培地添加剤を含む、細胞培養培地。
〔25〕 前記細胞培養培地における前記ビニル系ポリマー(A)の濃度が0.01質量%以上1質量%以下である、〔24〕に記載の細胞培養培地。
〔26〕 〔21〕〜〔23〕いずれか1項に記載の細胞培養培地添加剤を含む細胞培養培地で細胞を培養して細胞凝集塊を形成する、細胞凝集塊の製造方法。
本発明により、優れた蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制力を発現する、蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤、並びに、該接着抑制剤を含む各種用途を提供することができる。
また、本発明のブロッキング剤は、標的のタンパク質に対する染色剤の特異吸着による発色を妨げない性能や、標的以外のタンパク質を十分に覆い、標的以外のタンパク質に対する染色剤の非特異吸着を防止し、発色を防止する性能を、生体由来のブロッキング剤とは異なり、安定して発現できる。このブロッキング剤を用いることにより、感度よくウエスタンブロッティングや免疫組織染色などの抗原抗体反応を利用した生化学分析を行うことが可能になる。
また、本発明により、標的のたんぱく質に対する染色剤の特異吸着による発色を妨げることなく、標的以外のたんぱく質を十分に覆い、標的以外のたんぱく質に対する染色剤の非特異吸着を防止して発色させない効果を発揮する生化学分析用ブロッキング剤を提供することが出来る。これにより、感度よくウエスタンブロッティングや免疫組織染色、ELISA法、イムノクロマト法などの抗原抗体反応を利用した生化学分析を行うことが可能になる。例えば、免疫組織染色では、基材表面に固定した病理組織に、本発明の生化学分析用ブロッキング剤を接触させた後、前記病理組織中の抗原に染色用抗体を吸着させて前記抗原を検出できる。
また、本発明により、安全性、塗工性及び耐水性に優れ、かつ、長期間のバイオフィルム形成抑制を可能とする、バイオフィルム形成抑制コート剤を提供することができる。
本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、医療機器、製造設備又は水槽内面等、微生物が付着し、バイオフィルムが形成することが想定される物質表面に、好適に用いることができる。
また、本発明によれば、細胞毒性が低く、かつ優れた蛋白質や細胞の接着防止効果を有する細胞培養器材処理剤を提供すること、また、細胞塊を簡単に製造することができる細胞培養器材、メディカルデバイス及び細胞培養器材の製造方法を提供することができる。
また、アミンオキシド基を有し、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマー(A)を用いることで、タンパク質の機能を損なうことなく安定保管が可能な、タンパク質安定化剤を提供することできる。また、該タンパク質安定化剤とタンパク質とを共存させることで、タンパク質の機能を損なうことなく安定保管が可能な、タンパク質の安定化方法を提供することができる。
また、アミンオキシド基を有し、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマー(A)を細胞培養培地添加剤として培地に添加することで、コストや手間の増加を伴わずに簡便に細胞凝集塊の作製を行うことが可能になる。すなわち、本発明により、コストや手間の増加を伴わずに3次元的かつ生細胞数の割合が良好な細胞凝集塊を作製するための、細胞培養培地添加剤、該添加剤を含む細胞培養培地、該添加剤を用いた細胞凝集塊の製造方法を提供することができる。
また、アミンオキシド基を有し、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマー(A)を抗体産生細胞培養培地添加剤として培地に添加することで、コストや手間の増加を伴わずに抗体を効率的に生産することができる。また、培養中の抗体産生細胞凝集物の発生が抑制され、目的とする抗体の精製が容易となる。すなわち、本発明により、コストや手間の増加を伴わずに、抗体の生産性及び精製性を高めるための、抗体産生細胞培養培地添加剤、該添加剤を用いた抗体産生細胞の培養方法、細胞培養培地及び抗体の製造方法を提供することができる。
本発明の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤は、アミンオキシド基を有し、かつ質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマー(A)を含むことを特徴とする。ビニル系ポリマー(A)を有することで、優れた蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制性を発現する。
<ビニル系ポリマー(A)>
本発明のビニル系ポリマー(A)は、アミンオキシド基を有し、かつ、質量平均分子量が2,000以上であればよく、従来公知のポリマーを用いることができ、2種以上を併用してもよい。アミンオキシド基のイメージを下記一般式4に示す。式中、R10、R11、R12は、それぞれ独立に有機基を表す。
Figure 2020038059
アミンオキシド基を有するビニル系ポリマー(A)は、前記R10、R11、R12のうち、少なくとも1つがポリマーに連結している。
ビニル系ポリマー(A)へのアミンオキシド基の導入方法は特に限定はされないが、例えば、
(1)1分子中に1つのエチレン性不飽和基と3級アミノ基とを有するモノマー(a)を必須成分として含むエチレン性不飽和基を有するモノマーを重合し、得られた重合体を酸化剤で酸化する方法と、
(2)1分子中に1つのエチレン性不飽和基とアミンオキシド基とを有するモノマー(b)を必須成分として含むエチレン性不飽和基を有するモノマーを重合する方法が挙げられる。
また、上記方法以外のものとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物や2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有不飽和化合物と、ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド基含有化合物との反応生成物を用いて共重合したものも用いることができる。
アミンオキシド基の含有量は、例えば、方法(1)でアミンオキシド基を導入した場合は下記数式1によって算出できる。
Figure 2020038059
B:アミンオキシド変換率は、酸化反応前に滴定により求めたアミン価がどの程度減少したかを計算により求めることで算出することができる。
アミンオキシド基の含有量は、例えば、方法(2)でアミンオキシド基を導入した場合は、重合に用いたアミンオキシド基を有するモノマーの量から求めることができる。
本発明でアミンオキシド基は、下記一般式1〜3のいずれかに該当するものが好ましい。
Figure 2020038059
Figure 2020038059
Figure 2020038059
[一般式1〜3中、
Xは2価の結合基、
yは0又は1、
1は炭素数1〜6のアルキレン基、
2及びR3はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、
4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、
5〜R9のうち4つはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5〜R9のうちの1つはビニル系ポリマー(A)の主鎖との結合位置を表し、
*はビニル系ポリマー(A)の主鎖との結合位置を表す。]
<モノマー(a)>
モノマー(a)は、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と、水素原子に置換されておらず、不対電子対を有する3級アミノ基とを有するモノマーを示す。3級アミノ基は各種酸化剤により酸化されることでアミンオキシド基化することができる。
モノマー(a)としては、特に限定はされないが、一般式1の構造を形成するためものとしては例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジエチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアリルアミン、p−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジメチルアミノエチルスチレン、p−ジエチルアミノメチルスチレン、p−ジエチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、
或いは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和基含有酸無水物と、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物、
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物等が挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を言い表すものとする。
一般式3の構造を形成するためのものとしては、例えば、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−3−ビニルピリジン、2−メチル−4−ビニルピリジン、3−メチル−4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−メチル−5−ビニルピリジン、4−メチル−5−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−4−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−5−ビニルピリジン等が挙げられる。
一般式2の構造を形成するためのものとしては、例えば、1−ビニルイミダゾール、
2−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−メチル−1−ビニルイミダゾール、5−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−(t−ブチル)−1−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
モノマー(a)に由来する三級アミン基は、各種酸化剤を使用することでアミンオキシド基化することができる。これによりビニル系ポリマー(A)にアミンオキシド基を導入することができる。
酸化剤としては、特に限定はされないが、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等の過酸化物やオゾンが挙げられる。
<モノマー(b)>
モノマー(b)とは、1分子中に1つのエチレン性不飽和基とアミンオキシド基とを有するモノマーを示す。アミンオキシド基を有するモノマー(b)を重合することで、ビニル系ポリマー(A)にアミンオキシド基を組み込むことができる。モノマー(b)としては、特に限定はされないが、上記モノマー(a)の有する3級アミン基をアミンオキシド基に置換したものが挙げられる。
<モノマー(c)>
モノマー(c)は、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と炭素数4〜18のアルキル基とを有するモノマーを示す。ビニル系ポリマー(A)は炭素数4〜18のアルキル基を有することで、極性が制御され、標的以外のタンパク質への吸着性能が向上させることができる。
モノマー(c)としては、特に限定はされないが、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;
1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン系エチレン性不飽和モノマーなどが挙げられる。
<モノマー(d)>
本発明においてモノマー(d)は、モノマー(a)(b)(c)と共重合可能な、モノマー(a)(b)(c)以外の、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有するモノマーを示す。
モノマー(d)としては、特に限定はされないが、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートなどアルキル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアクリルエステル(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族エステル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1−メチルアリル、(メタ)アクリル酸2−メチルアリル、(メタ)アクリル酸1−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3−メチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−クロルアリル、(メタ)アクリル酸3−クロルアリル、(メタ)アクリル酸o−アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2−(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルなどのエチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルウンデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和モノマーなどの(メタ)アクリレート系モノマー;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコールなどの水酸基を有するモノマー;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又は、これらのアルキル若しくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸などのカルボン酸基、若しくはその無水物を有するモノマー;
ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマー;
(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェートなどのリン酸基を有するモノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどの1〜3級アミド基を有するモノマー;
(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、及びトリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロライドなどの4級アミノ基を有するモノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエーテル鎖を有するモノマー;
ラクトン変性(メタ)アクリレートなどのポリエステル鎖を有するエチレン性不飽和化合物などの側鎖に高分子構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、アリルベンゼン、エチニルベンゼン等の芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有エチレン性不飽和モノマー;酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどの脂肪酸ビニル系化合物;ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系エチレン性不飽和モノマー; 酢酸アリル、シアン化アリルなどのアリルモノマー;シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトンなどのビニルモノマー;アセチレン、エチニルトルエンなどのエチニルモノマーパーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレンなどのパーフルオロアルキル、アルキレン類などのパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和化合物等の、(メタ)アクリレートではないエチレン性不飽和結合を有するモノマーなどが挙げられる。
以下に、蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤を含む各種用途について詳細を述べる。
<生化学分析用ブロッキング剤>
本発明のブロッキング剤は、前述のビニル系ポリマー(A)を含む。
本発明でアミンオキシド基の含有量は、1〜10mmol/gであることが好ましく、2〜8mmol/gであることが更に好ましい。アミンオキシド基の含有量が上記範囲にあることによって、好適な水溶性を発現すると共に、染色の標的であるタンパク質に対する吸着を抑制しつつ、標的以外のタンパク質への吸着性能を向上できる。
本発明でアミンオキシド基は、前述の一般式1〜3のいずれかに該当するものが好ましく、上記構造であることによって、好適な水溶性を発現すると共に、染色の標的であるタンパク質に対する吸着を抑制しつつ、標的以外のタンパク質への吸着性能を向上できる。
本発明では、ビニル系ポリマー(A)にアミンオキシド基を方法(1)で導入する場合、モノマー(a)を全モノマー中20〜99.9重量%含むモノマーを重合して得ることが望ましい。
本発明では、ビニル系ポリマー(A)にアミンオキシド基を方法(2)で導入する場合、モノマー(b)を全モノマー中20〜99.9重量%含むモノマーを重合して得ることが望ましい。
本発明では、ビニル系ポリマー(A)にアミンオキシド基を方法(1)で導入する場合、モノマー(c)を全モノマー中0.1〜80重量%含むモノマーを重合して得ることが望ましい。本発明では、ビニル系ポリマー(A)にアミンオキシド基を方法(2)で導入する場合、モノマー(c)を全モノマー中0.1〜80重量%含むモノマーを重合して得ることが望ましい。
<チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体>
また、本発明の生化学分析用ブロッキング剤は、チオール基含有化合物(x)とビニ ル系モノマーとからなる共重合体であるアミンオキシド基含有ビニル系ポリマー(A) (以下、ビニル系重合体ともいう)を含有してもよい。
アミンオキシド基を有することにより、好適な水溶性を発現すると共に、染色の標的であるタンパク質に対する吸着を抑制しつつ、標的以外のタンパク質への吸着性能を向上できる。またチオール基含有化合物(x)を用いることにより、共重合体にチオール基由来の硫黄原子が導入され、さらに後述の3官能以上のチオール基含有化合物を用いることにより分岐構造が導入される。この硫黄原子や分岐構造の導入は、牛血清アルブミン等生体由来のたんぱく質の構造や、あるいは水溶液中での溶解状態に近づけることができる。
上記により、チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体であるアミンオキシド基含有ビニル系重合体(A)を含む本発明の生化学分析用ブロッキング剤は、タンパク質への吸着性が制御され、優れたブロッキング性能を発揮する。
これらの中で、チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体であるアミンオキシド基含有ビニル系重合体は、ポリマーの製造及び精製の観点から、好ましくは下記(i)又は(i)のいずれかである。
(i)アミンオキシド基含有ビニル系モノマー(a1)を含むビニル系モノマーと、チオール基含有化合物(x)と、からなる共重合体。
(ii)3級アミノ基を有するビニル系モノマー(a2)を含むビニル系モノマーと、チオール基含有化合物(x)と、からなる共重合体の3級アミノ基に、オキシド化剤を反応させてなる共重合体。
すなわち、アミンオキシド基含有ビニル系重合体(A)の製造方法は特に限定はされないが、ポリマーの製造及び精製の観点から、好ましくは下記(1)又は(2)のいずれかである。
(1)アミンオキシド基含有ビニル系モノマー(a1)を含むビニル系モノマーと、チオール基含有化合物(x)とを共重合する方法。
(2)3級アミノ基を有するビニル系モノマー(a2)を含むビニル系モノマーと、チオール基含有化合物(x)とを共重合してなる共重合体の3級アミノ基に、オキシド化剤を反応させる方法。
さらに、より簡便にポリマーを製造及び精製するという点で(ii)の共重合体であることが好ましく、製造方法としては(2)が好ましい。
<ビニル系モノマー>
チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体であるアミンオキシド基含有ビニル系重合体は、後述のチオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体であり、ビニル系モノマーにより、アミンオキシド基を導入することができる。具体的には、アミンオキシド基含有ビニル系モノマー(a1)によりアミンオキシド基を導入してもよいし、3級アミノ基を有するビニル系モノマー(a2)を用いて共重合体を得た後に、3級アミノ基にオキシド化剤を反応させてアミンオキシド基に変性してもよい。
ビニル系モノマーとしては、重合性の観点から(メタ)アクリレート基若しくは芳香族ビニル基であることが好ましい。
以下に、各ビニル系モノマーについて説明する。
[アミンオキシド基含有ビニル系モノマー(a1)]
アミンオキシド基含有ビニル系モノマー(a1)は、特に限定はされず、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよく、例えば、後述の3級アミノ基を有するビニル系モノマー(a2)の3級アミノ基に、後述のオキシド化剤を反応させてアミンオキシド基としたものを用いてもよい。
本発明では、チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体であるアミンオキシド基含有ビニル系重合体にアミンオキシド基を方法(1)で導入する場合、アミンオキシド基含有ビニル系モノマー(a1)は、全ビニル系モノマー中20〜99.9重量%含むことが望ましい。
[3級アミノ基を有するビニル系モノマー(a2)]
3級アミノ基を有するビニル系モノマー(a2)は、3級アミノ基に後述のオキシド化剤を反応させることにより、アミンオキシド構造とすることができる。
本発明では、チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体であるアミンオキシド基含有ビニル系重合体にアミンオキシド基を方法(2)で導入する場合、3級アミノ基を有するビニル系モノマー(a2)は、全ビニル系モノマー中、20〜99.9重量%含むことが望ましい。
3級アミノ基を有するビニル系モノマー(a2)は、特に限定はされないが、一般式1の構造を形成するためのものとしては例えば、
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジエチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジメチルアリルアミン、p−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジメチルアミノエチルスチレン、p−ジエチルアミノメチルスチレン、p−ジエチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、
或いは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和基含有酸無水物と、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物、
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物等が挙げられる。
一般式3の構造を形成するためものとしては例えば、
2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−3−ビニルピリジン、2−メチル−4−ビニルピリジン、3−メチル−4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−メチル−5−ビニルピリジン、4−メチル−5−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−4−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−5−ビニルピリジン等が挙げられる。
一般式2の構造を形成するためものとしては例えば、
1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−メチル−1−ビニルイミダゾール、5−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−(t−ブチル)−1−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
[その他ビニル系ノマー]
ビニル系モノマー(a)は、アミンオキシド基含有ビニル系モノマー(a1)、3級アミノ基を有するビニル系モノマー(a2)以外の、その他ビニル系モノマーを含んでもよい。
(炭素数1〜18のアルキル基を有するビニル系モノマー(a3))
その他ビニル系モノマーとしては、炭素数1〜18のアルキル基を有するビニル系モノマー(a3)を用いることが好ましい。炭素数1〜18のアルキル基をビニル系重合体(A)に導入することにより、極性が制御され、標的以外のタンパク質への吸着性能を向上させることができる。
炭素数1〜18のアルキル基を有するビニル系モノマー(a3)としては、特に限定はされないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;
1−プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン系エチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
本発明では、炭素数1〜18のアルキル基を有するビニル系モノマー(a3)は、全ビニル系モノマー中0.1〜80重量%含むことが望ましい。
上述のビニル系モノマー(a1)〜(a3)以外に用いてもよいビニル系モノマーとしては、特に限定はされないが、例えば、
メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族含有(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1−メチルアリル、(メタ)アクリル酸2−メチルアリル、(メタ)アクリル酸1−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3−メチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−クロルアリル、(メタ)アクリル酸3−クロルアリル、(メタ)アクリル酸o−アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2−(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルなどのエチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルウンデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和モノマーなどの(メタ)アクリレート系モノマー;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコールなどの水酸基を有するモノマー;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又は、これらのアルキル若しくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸などのカルボン酸基、若しくはその無水物を有するモノマー;
ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマー;
(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェートなどのリン酸基を有するモノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどの1〜3級アミド基を有するモノマー;
(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、及びトリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロライドなどの4級アミノ基を有するモノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエーテル鎖を有するモノマー;
ラクトン変性(メタ)アクリレートなどのポリエステル鎖を有するエチレン性不飽和化合物などの側鎖に高分子構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー;
スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、アリルベンゼン、エチニルベンゼン等の芳香族ビニルモノマー;
(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有エチレン性不飽和モノマー;
酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどの脂肪酸ビニル系化合物;ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系エチレン性不飽和モノマー;
酢酸アリル、シアン化アリルなどのアリルモノマー;
シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトンなどのビニルモノマー;アセチレン、エチニルトルエンなどのエチニルモノマーパーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレンなどのパーフルオロアルキル、アルキレン類などのパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和化合物等の、(メタ)アクリレートではないエチレン性不飽和結合を有するモノマーなどが挙げられる。
チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体であるアミンオキシド基含有ビニル系重合体は、アミンオキシド基含有ビニル系モノマー(a1)若しくは3級アミノ基を有するビニル系モノマー(a2)を20〜99.9重量%、炭素数1〜18のアルキル基を有するビニル系モノマー(a3)を0.1〜80重量%、その他のエチレン性不飽和基単量体(c)を0〜79.9重量%の範囲で含むことが好ましい。
<オキシド化剤>
オキシド化剤としては、特に限定されないが、過酸化物又はオゾン等の酸化剤が好適に用いられる。過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等が挙げられ、過酸化水素が好ましく、通常は水溶液の形で用いられる。過酸化物にはラジカル発生剤としての機能もあるので、3級アミノ基含有ビニル系モノマーを共重合してなるビニル系共重合体の場合には、重合後にオキシド化することが好ましい。
<アミンオキシド基含有量>
アミンオキシド基は、水溶性とタンパク質非吸着性とを共重合体に付与する。チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体であるアミンオキシド基含有ビニル系重合体中のアミンオキシド基含有量は、好ましくは1〜10mmol/gであり、より好ましくは2〜8mmol/gである。上記範囲にあることによって、好適な水溶性を発現すると共に、染色の標的であるタンパク質に対する吸着を抑制しつつ、標的以外のタンパク質への吸着性能を向上できる。
アミンオキシド基の含有量は、前記一般式1〜3で示される少なくともいずれかのアミンオキシド構造の含有量であり、アミンオキシド基含有ビニル系モノマー(a1)を重合して共重合体を得る場合には、重合に用いたアミンオキシド基含有ビニル系モノマー(a1)の量から求めることができる。一方、3級アミノ基含有ビニル系モノマー(a2)を重合した後に得られたポリマーをオキシド化する場合には、前述の数式1によって算出できる。
<チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体であるアミンオキシド基含有ビニル系重合体の製造>
チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体であるアミンオキシド基含有ビニル系共重合体は、連鎖移動剤としてチオール基含有化合物(x)を用いてビニル系モノマーを共重合することで製造することができる。チオール基含有化合物(x)を用いることで、アミンオキシド基含有ビニル系重合体中に硫黄原子を組み込むことができ、かつ3官能以上のチオール基含有化合物を用いることで、重合体の構造に分岐構造を導入することができる。このような構造にすることで、生体由来のたんぱく質の水溶液中での溶解状態に近づけることができるため、優れたブロッキング性能が得られると推察される。
<チオール基含有化合物(x)>
チオール基含有化合物(x)は、重合反応において連鎖移動剤として働くチオールを含む化合物であればよい。その中でも特に複数のチオール基を持つものが好ましい。複数のチオール基を持つチオール基含有化合物として、例えば、
2−メルカプトエタノール、β−メルカプトプロピオン酸、2−エチルヘキシル−3−メルカプトプロピオネート、n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート、メトキシブ
チル−3−メルカプトプロピオネート、ステアリル−3−メルカプトプロピオネート、チオグリセロール、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。中でも、上述の理由から、3官能以上のチオール基含有化合物が好ましい。
[3官能以上のチオール基含有連鎖移動剤(x)]
3官能以上のチオール基含有化合物は、分子内に連鎖移動剤として作用する3官能以上のチオール基(‐SH基)があればよく、そのような化合物として、例えば下記一般式5で表す化合物が挙げられる。
一般式5
Figure 2020038059
[一般式5中、R5は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はイソシアヌレート基を表す。nはそれぞれ独立に0〜10の整数を表し、k1は0〜3の整数を表し、l1は0〜4の整数を表し、m1は0〜3の整数を表し、k2は0〜3の整数を表し、l2は0〜3の整数を表し、m2は0〜3の整数を表す。ただし、k1とl1とm1との総和は4以下であり、k2とl2とm2との総和は4以下であり、l1とl2の総和は3以上である。]
一般式5におけるR5が表すアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基を挙げることができ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基等を挙げることができる。一般式5におけるR5が表すアルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基を挙げることができ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等が挙げられる。一般式5におけるR5が表すアリール基としては、炭素数6から30のアリール基、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
3官能以上のチオール基含有化合物の具体例を以下に挙げるが、本発明で採用することができるチオール含有化合物はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2020038059
チオール基含有化合物(x)は、重合反応時の添加量でアミンオキシド基含有ビニル系重合体の重量平均分子量(Mw)が決まる。そのためチオール基含有化合物(x)の添加量は、アミンオキシド基含有ビニル系重合体を構成する全ビニル系モノマーに対して、好ましくは0.1重量%〜15重量%であり、より好ましくは0.1重量%〜10重量%である。0.1%重量%以上とすることで重合反応時の熱制御や分子量制御がしやすく、15重量%以下とすることでより優れたブロッキング性能を発揮する。
<アミンオキシド基含有ビニル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)>
アミンオキシド基含有ビニル系重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、1,000〜10,000,000であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が1,000以上であることで、標的以外の非特異的吸着を抑制でき、10,000,000以下であることで、水溶性とすることができる。
アミンオキシド基含有ビニル系重合体の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用する。測定装置及び測定条件としては、下記条件1によることを基本とした。ただし、重合体種によっては、さらに適宜適切なキャリア(溶離液)及びそれに適合したカラムを選定して用いてもよい。その他の事項については、JISK7252−1〜4:2008を参照することとする。またアミンオキシド基含有ビニル系重合体の分子量測定が困難な場合は、アミンオキシド基含有ビニル系重合体アミンオキシド化剤反応前の前駆体である3級アミノ基を有するビニル系重合体の重量平均分子量をアミンオキシド基含有ビニル系重合体の重量平均分子量とすることが出来る。アミンオキシド基含有ビニル系重合体のアミンオキシド化剤反応前の前駆体である3級アミノ基を有するビニル系重合体の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用し、測定装置及び測定条件としては、下記条件2によることを基本とした。
(条件1)
カラム:ShodexOHpark SB−800RL
ShodexOHpark SB−800RH
Shodex0Hpark SB−802.5 HQ
Shodex0Hpark SB−806M HQ
をつないだカラムを用いる
キャリア:リン酸緩衝水溶液
測定温度:40℃
試料濃度:0.2質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
(条件2)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAW4000、
TOSOHTSKgelSuperAW3000 、
TOSOHTSKgelSuperAW2500
をつないだカラムを用いる
キャリア:N,N−ジメチルホルムアミド(1L)、トリエチルアミン(3.04g)、LiBr(0.87g)の混合液
測定温度:40℃
試料濃度:0.2質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
<バイオフィルム形成抑制コート剤>
バイオフィルム形成抑制コート剤に含まれるビニル系ポリマーは、アミンオキシド基を含み、かつ、質量平均分子量が2,000〜10,000,000であることが好ましい。アミンオキシド基を有することで、優れたバイオフィルム形成抑制の効果を発揮する。
本発明において、アミンオキシド基を有するビニル系ポリマーは、以下のような2つの方法で得ることができる。即ち、アミンオキシド基を有するモノマーと他のモノマーとを重合して、アミンオキシド基を有するポリマーを得ることができる。あるいは、アミンオキシド基の前駆官能基とでもいうべき3級アミノ基を有するポリマーを得た後、前記3級アミノ基に酸化剤を反応させ、ポリマーにアミンオキシド基を導入することができ、副反応を生じ難いという点で後者の方法が好ましい。なお、3級アミノ基に酸化剤を反応させることを、以下「オキシド化」ともいう。
ビニル系ポリマーとしては、具体的には、前述の一般式1〜3で表される少なくともいずれかの構造を含むものであることが好ましく、中でも一般式1で表される構造を含むものが特に好ましい。
このような構造を有するビニルポリマーは、前述の通り、2つの方法で得ることができる。より好ましくは、3級アミノ基含有モノマー(A)をオキシド化した後に、他のモノマーと重合するか、あるいは3級アミノ基含有モノマー(A)と他のモノマーとを重合した後にオキシド化する方法である。
<3級アミノ基含有モノマー(A)>
オキシド化前の前駆体としての3級アミノ基含有モノマー(A)のうち、一般式1の構造を形成するためものとしては、
例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジエチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアリルアミン、p−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジメチルアミノエチルスチレン、p−ジエチルアミノメチルスチレン、p−ジエチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、
あるいは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和基含有酸無水物と、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物、
グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物等が挙げられる。
好ましくは、(メタ)アクリレートモノマーであり、より好ましくはN,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート又はN,N−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートである。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を言い表すものとする。
一般式3の構造を形成するためのものとしては、例えば、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−3−ビニルピリジン、2−メチル−4−ビニルピリジン、3−メチル−4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−メチル−5−ビニルピリジン、4−メチル−5−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−4−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−5−ビニルピリジン等が挙げられる。
一般式2の構造を形成するためのものとしては、例えば、1−ビニルイミダゾー
ル、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−メチル−1−ビニルイミダゾール、5−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−(t−ブチル)−1−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
<架橋性基を有するモノマー(B)>
ビニル系ポリマーの耐水性向上という観点から、ビニル系ポリマーを得る際に、前記モノマー(A)以外に、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、1級若しくは2級アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有するモノマー(B)を使用することが好ましい。モノマー(B)に由来する架橋性基は、後述する架橋剤と反応することでポリマー塗膜に架橋構造を導入し、優れた耐水性を発揮する。
例えば、カルボキシル基が導入された共重合体は、エポキシ化合物やアジリジン化合物、カルボジイミド化合物、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド化合物により架橋することができる。水酸基が導入された共重合体は、イソシアネート化合物等により架橋することができる。アミノ基が導入された共重合体は、エポキシ化合物により架橋することができる。イソシアネート基が導入された共重合体は、水酸基含有化合物により架橋することができる。
カルボキシル基含有モノマーとしては、その構造中にカルボキシル基有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端にカルボキシル基を有するアルキレンオキサイド付加系コハク酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有モノマーとしては、その構造中に水酸基を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシブチル、単官能(メタ)アクリル酸グリセロール、ラクトン環の開環付加により末端に水酸基を有するポリラクトン系(メタ)アクリル酸エステル、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系(メタ)アクリル酸エステル、グルコース環系(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
エポキシ基含有モノマーとしては、その構造中にエポキシ基を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
1級若しくは2級アミノ基含有モノマーとしては、その構造中にアミノ基を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等が挙げられる。
架橋性基を有するモノマー(B)としては、耐水性及び長期バイオフィルム形成抑制能の観点から、好ましくはカルボキシル基含有モノマーである。
<その他のモノマー(C)>
ビニル系ポリマーを得る際に、前記モノマー(A)、モノマー(B)の他に、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する、その他のモノマー(C)を用いることができる。モノマー(C)に基づく構造の導入により、極性やTgが適切に制御され、優れた塗工性、耐水性、及び耐候性を有することができる。
1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する、その他のモノマー(C)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;
1−プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン系エチレン性不飽和モノマー。
ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマー;
(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェートなどのリン酸基を有するモノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどの1〜3級アミド基を有するモノマー;
(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、及びトリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロライドなどの4級アミノ基を有するモノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエーテル鎖を有するモノマーが挙げられる。
<ビニル系ポリマーの共重合組成>
ビニル系ポリマーの共重合組成について説明する。
3級アミノ基含有モノマー(A)は、全モノマーの合計量に対して、1質量%以上で使用することが好ましい。好ましくは4質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。また、95質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。上記範囲とすることで、長期的なバイオフィルム形成抑制能の効果を発揮する。
架橋性基を有するモノマー(B)は、全モノマーの合計量に対して、20質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。上記範囲とすることで、架橋剤を併用した場合に適度な架橋密度を有する塗膜を得ることができる。
<オキシド化>
重合前のオキシド化、重合後のオキシド化について説明する。重合前のオキシド化は、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)を含む溶液に、重合後のオキシド化は、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)を必須とするモノマーを重合したポリマーを含む溶液に、オキシド化剤を加えて20℃〜100℃の範囲で0.1〜100時間、好ましくは1〜50時間反応させることによって、3級アミノ基をオキシド化することができる。
オキシド化剤としては、過酸化物又はオゾン等の酸化剤が用いられる。過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等が挙げられ、過酸化水素が好ましく、通常は水溶液の形で用いられる。程度の違いはあるとはいうものの、過酸化物にはラジカル発生剤としての機能もあるので、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)を必須の原料とするビニル系ポリマーの場合には、重合後にオキシド化することが好ましい。また、後述するウレタン系ポリマーの場合にも副反応が生じないように、重合後にオキシド化することが好ましい。
一般的にはオキシド化剤の使用量は、オキシド化可能な官能基、即ち、3級アミノ基に対して、0.2〜3倍モル当量の割合で使用し、更に0.5〜2倍モル当量使用するのがより好ましい。得られたポリマー溶液は、残存した過酸化物を公知の方法で処理した後、使用することもできる。具体的には還元剤添加処理、イオン交換処理、活性炭処理、金属触媒による処理等があげられる。
得られたポリマー溶液はそのまま使用することもできるが、必要に応じて再沈殿、溶媒留去等の公知の方法でアミンオキシド基含有ポリマーを単離して使用することも出来る。また、単離したアミンオキシド基含有ポリマーは、必要ならば再沈殿や、溶剤洗浄、膜分離、吸着処理等によってさらに精製できる。
本発明におけるビニル系ポリマーとしては、前述の如く、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)をオキシド化した後に他のモノマーと重合したもの、及び、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)を必須とするモノマーを重合し、ポリマーを得た後にオキシド化したものの他、モノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物や2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有不飽和化合物と、ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド基含有化合物との反応生成物を用いて共重合したものも用いることができる。
<アミンオキシド基含有量>
アミンオキシド基は、バイオフィルム形成抑制性をポリマーに付与する。ビニル系ポリマー中のアミンオキシド基含有量は、好ましくは0.25〜5mmol/gであり、より好ましくは0.5〜2mmol/gである。0.25〜5mmol/gであることにより、長時間水中に浸漬しても最適なバイオフィルム形成抑制能を維持することができる。
ビニル系ポリマー中のアミンオキシド基含有量は、アミンオキシド基を有するモノマーを重合してビニル系ポリマーを得る場合には、重合に用いたアミンオキシド基を有するモノマーの量から求めることができる。一方、3級アミノ基含有モノマーを必須とするモノマーを重合した後に得られたポリマーをオキシド化する場合には、前述の数式1によって算出できる。
<質量平均分子量(Mw)>
ビニル系ポリマーの質量平均分子量は、2,000〜10,000,000であり、好ましくは5,000〜6,000,000であり、より好ましくは10,000〜600,000であり、特に好ましくは10,000〜100,000である。分子量が2,000以上であることにより、凝集力を付与でき、塗工基材からの剥離を抑制でき、長期間のバイオフィルム形成抑制効果を発揮する。また、10,000,000以下であることにより、適正な粘度になることから、塗工適性が向上する。そのため、ビニル系ポリマーの質量平均分子量を、上記特定範囲内に限定する。
ビニル系ポリマーの質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用する。測定装置及び測定条件としては、下記条件1によることを基本とし、試料の溶解性等により条件2とすることを許容する。ただし、重合体種によっては、さらに適宜適切なキャリア(溶離液)及びそれに適合したカラムを選定して用いてもよい。その他の事項については、JISK7252−1〜4:2008を参照することとする。なお、難溶の高分子化合物については下記条件の下、溶解可能な濃度で測定することとする。
また、ビニル系ポリマーの分子量測定が困難な場合は、アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量をポリマー(a)の質量平均分子量とすることが出来る。アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用し、測定装置及び測定条件としては、下記条件3によることを基本とする。
(条件1)
カラム:TOSOHTSKgelSuperHZM−H、
TOSOHTSKgelSuperHZ4000 及び
TOSOHTSKgelSuperHZ2000を連結したもの。
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件2)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAWM−Hを2本連結したもの。
キャリア:10mMLiBr/N−メチルピロリドン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件3)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAW4000、
TOSOHTSKgelSuperAW3000 及び
TOSOHTSKgelSuperAW2500を連結したもの。
キャリア:N,N−ジメチルホルムアミド(1L)、トリエチルアミン(3.04g)、LiBr(0.87g)の混合液
測定温度:40℃
キャリア流量:0.6mL/min
<架橋剤>
本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、架橋剤を含むことができる。架橋剤を含むことにより、前述のビニル系ポリマーが架橋性基を有する場合、塗膜に架橋を形成して耐水性を向上させることができる。本発明で用いることのできる架橋剤としては、前述のビニル系ポリマーを形成するためのモノマー(B)におけるカルボキシル基、水酸基、エポキシ基、1級若しくは2級アミノ基及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性基と反応するものが好ましく、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、及びアジリジニル基から選ばれる少なくとも一種の官能基を有するものの他、金属キレート化合物、カルボジイミド基含有化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、塗膜の弾性率や耐性を上げる目的で使用したり、接着力を調製したりするために用いることができる。
[エポキシ基を有する架橋剤]
本発明で用いられるエポキシ基を有する架橋剤としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、特に限定されるものではない。2官能エポキシ基を有する架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンオキサイドジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジ
グリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゾフェノンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシアントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン等の芳香族エポキシ化合物、上記記載の芳香族エポキシ化合物の水素添加物、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等の脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。エポキシ基を3つ以上有する架橋剤としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、トリスフェノール型エポキシ化合物、テトラキスフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。
[イソシアネート基を有する架橋剤]
本発明で用いられるイソシアネート基を有する架橋剤としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有した化合物であればよく、特に限定されるものではない。2官能イソシアネート化合物としては、例えば、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
3官能イソシアネート化合物としては、上記で説明したジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
また、イソシアネート基を有する架橋剤中のイソシアネート基は、ブロック化されていても良いし、ブロック化されていなくても良い。本発明で用いられるブロック化イソシアネート架橋剤としては、前記イソシアネート化合物中のイソシアネート基がε−カプロラクタム、MEKオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックされたブロック化イソシアネート化合物であればよく、特に限定されるものではない。
[アジリジニル基を有する架橋剤]
本発明で用いられるアジリジン化合物としては、1分子中に2個以上のアジリジン基を有した化合物であればよく、特に限定されるものではない。アジリジン化合物としては、例えば、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノールトリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
[カルボジイミド基含有化合物]
本発明で用いられるカルボジイミド基含有化合物としては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズを用いることができ、V−02、V−04、V−06、V−10などの水性タイプ、V−01、V−03、V−05、V―07、V―09などの油性タイプ等が挙げられる。
[β−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物]
本発明では、β−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物も架橋剤として用いることができる。β−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物としては、分子内にβ−ヒドロキシアルキルアミド基を含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。β−ヒドロキシアルキルアミド基含有化合物としては、N,N,N’,N’−テトラキス(ヒドロキシエチル)アジパミド(エムスケミー社製PrimidXL−552)をはじめとする種々の化合物を挙げることができる。
本発明において、架橋剤は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用しても良い。架橋剤の使用量は、ビニル系ポリマー中に含まれる官能基の種類やモル数を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、通常はビニル系ポリマー100質量部に対して0.1質量部〜100質量部の範囲で用いられる。ビニル系ポリマー中に含まれる官能基のモル数よりも少ない範囲で配合することで、未反応の架橋剤が遊離する懸念をなくすことができる。この範囲であれば、目的とするバイオフィルム形成抑制の各効果に、特に優れた性能が発現される。
<バイオフィルム形成抑制コート剤の調整>
本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、コート剤100質量%中、前記ビニル系ポリマーを1〜50質量%含むことが好ましく、5〜30質量%含むことがより好ましい。ビニル系ポリマー含有量を1質量%以上とすることで、アミンオキシド基によるバイオフィルム形成抑制の効果を発揮することができる。また、本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、ビニル系ポリマー以外の成分を含んでも良い。
<溶媒>
本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、ビニル系ポリマー以外の成分として溶媒を含有してもよく、2種以上を併用して含んでもよい。溶媒は、アミンオキシド量に依存するビニル系ポリマーの溶解性や印刷条件等を考慮し、従来公知の溶媒から適宜選択することができる。例えば、ビニル系ポリマー中のアミンオキシド量が多い場合、水、メタノールやエタノール等のアルコール類、アセトンやエチルメチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフランやジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチルや酢酸エチル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ギ酸や酢酸等の有機酸、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機塩基を選択することができる。一方、ビニル系ポリマー中のアミンオキシド量がの少ない場合、アセトンやエチルメチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフランやジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチルや酢酸エチル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルに加え、ジクロロメタンやトリクロロメタン等のハロゲン溶媒を選択することができる。
さらに、本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。
<バイオフィルム形成抑制積層体>
本発明のバイオフィルム形成抑制積層体は、基材上に、本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤からなる塗膜を有するものである。塗膜を形成する方法としては、基材に応じて、様々な塗膜形成方法(塗工・印刷・乾燥方法)を選択することができる。一例として、グラビア・オフセット等の各種印刷方式のほか、インクジェット方式、スプレー方式、浸漬方式等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。塗工後の乾燥は、溶媒を除去できればよく、バイオフィルム形成抑制コート剤に含まれる溶媒等から適宜乾燥温度を選択することができる。工業的には、40〜180℃で2分間程度であるのが望ましい。さらに、本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤が架橋剤を含む場合、架橋反応を促進させるための工程を設けることが好ましい。架橋条件は、一般的に40〜150℃で6〜24時間であるが、これらに限定されない。バイオフィルム形成抑制コート剤からなる塗膜の厚みは、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択でき、0.5〜2μmでも十分効果を発揮する。
<基材>
本発明のバイオフィルム形成抑制コート剤は、バイオフィルムの危害が懸念される広い分野に適用することが可能であるため、医療機器、製造設備又は水槽内面等、微生物が付着し、バイオフィルムが形成することが想定される物質表面に、好適に用いることができる。そのため、基材としては、上記用途で従来公知に用いられる基材であれば制限無く使用することができ、例えば、プラスチック、ガラス、セラミックス、金属等の材質からなる基材が挙げられる。
<細胞培養器材処理剤>
細胞培養器材処理剤は、アミンオキシド基を有し、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマー(A)を含む。
本発明において、アミンオキシド基を有するポリマーは、以下のような2つの方法で得ることができる。即ち、アミンオキシド基を有するモノマーと他のモノマーとを重合して、アミンオキシド基を有するポリマーを得ることができる。あるいは、アミンオキシド基の前駆官能基とでもいうべき3級アミノ基を有するポリマーを得た後、前記3級アミノ基に酸化剤を反応させ、ポリマーにアミンオキシド基を導入することができ、副反応を生じ難いという点で後者の方法が好ましい。なお、3級アミノ基に酸化剤を反応させることを、以下「オキシド化」ともいう。
ビニル系ポリマーとしては、具体的には、前述の一般式1〜3で表される少なくともいずれかの構造を含むものであることが好ましく、中でも一般式1で表される構造を含むものが特に好ましい。ビニル系ポリマーは、共重合体であることが好ましく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
このような構造を有するビニルポリマーは、前述の通り、2つの方法で得ることができる。より好ましくは、3級アミノ基含有モノマー(A)をオキシド化した後に、他のモノマーと重合するか、あるいは3級アミノ基含有モノマー(A)とその他モノマーとを重合した後にオキシド化する方法である。
<3級アミノ基含有モノマー(A)>
オキシド化前の前駆体としての3級アミノ基含有モノマー(A)のうち、一般式1の構造を形成するためものとしては、
例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジエチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアリルアミン、p−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジメチルアミノエチルスチレン、p−ジエチルアミノメチルスチレン、p−ジエチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、あるいは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和基含有酸無水物と、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物等が挙げられる。
好ましくは、(メタ)アクリレートモノマーであり、より好ましくはN,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート又はN,N−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートである。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を言い表すものとする。
一般式3の構造を形成するためのものとしては、例えば、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−3−ビニルピリジン、2−メチル−4−ビニルピリジン、3−メチル−4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−メチル−5−ビニルピリジン、4−メチル−5−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−4−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−5−ビニルピリジン等が挙げられる。
一般式2の構造を形成するためのものとしては、例えば、1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−メチル−1−ビニルイミダゾール、5−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−(t−ブチル)−1−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
<架橋性基を有するモノマー(B)>
ビニル系ポリマーの耐久性の向上という観点から、ビニル系ポリマーは、カルボキシル基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有することが好ましい。具体的には、ビニル系ポリマーを得る際に、前記モノマー(A)以外に、カルボキシル基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有するモノマー(B)を使用することが好ましい。モノマー(B)に由来する架橋性基は、後述する架橋剤と反応することでポリマー塗膜に架橋構造を導入し、優れた耐久性を発揮する。
例えば、カルボキシル基が導入された共重合体は、エポキシ化合物、アジリジン化合物、オキセタン、カルボジイミド化合物、アミノ化合物又はイソシアネート化合物等により架橋することができる。水酸基が導入された共重合体は、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、アミノ化合物又はアルコキシラン化合物等により架橋することができる。
カルボキシル基含有モノマーとしては、その構造中にカルボキシル基有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端にカルボキシル基を有するアルキレンオキサイド付加系コハク酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基含有モノマーとしては、その構造中に水酸基を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ヒドロキシブチル、単官能(メタ)アクリル酸グリセロール、ラクトン環の開環付加により末端に水酸基を有するポリラクトン系(メタ)アクリル酸エステル、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系(メタ)アクリル酸エステル、グルコース環系(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
耐久性の観点から、ビニル系ポリマーは、架橋性基としてカルボキシル基を有することが好ましく、ポリマーを構成する架橋性基を有するモノマー(B)としてカルボキシル基含有モノマーを用いることが好ましい。
<その他のモノマー(C)>
ビニル系ポリマーを得る際に、前記モノマー(A)の他に、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する、その他のモノマー(C)を用いることができる。モノマー(C)に基づく構造の導入により、極性やTgが適切に制御され、優れた塗工性、塗工膜の耐久性を有することができるほか、溶媒溶解性等を制御することができる。
1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する、その他のモノマー(C)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;1−プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン系エチレン性不飽和モノマー。
ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマー;(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェートなどのリン酸基を有するモノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどの1〜3級アミド基を有するモノマー;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、及びトリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロライドなどの4級アミノ基を有するモノマー;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエーテル鎖を有するモノマーが挙げられる。
<ビニル系ポリマーの共重合組成>
ビニル系ポリマーの共重合組成について説明する。
3級アミノ基含有モノマー(A)は、全モノマーの合計量に対して、1質量%以上で使用することが好ましい。好ましくは4質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。また、95質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。上記範囲とすることで、長期的な、細胞毒性が低く、かつ優れた蛋白質や細胞の接着防止効果を発揮する。架橋性基を有するモノマー(B)は、全モノマーの合計量に対して、20質量%以下で使用することが好ましい。好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。上記範囲とすることで、架橋剤を併用した場合に適度な架橋密度を有する塗膜を得ることができる。
<オキシド化>
重合前のオキシド化、重合後のオキシド化について説明する。重合前のオキシド化は、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)を含む溶液に、重合後のオキシド化は、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)を必須とするモノマーを重合したポリマーを含む溶液に、オキシド化剤を加えて20℃〜100℃の範囲で0.1〜100時間、好ましくは1〜50時間反応させることによって、3級アミノ基をオキシド化することができる。
オキシド化剤としては、過酸化物又はオゾン等の酸化剤が用いられる。過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等が挙げられ、過酸化水素が好ましく、通常は水溶液の形で用いられる。程度の違いはあるとはいうものの、過酸化物にはラジカル発生剤としての機能もあるので、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)を必須の原料とするビニル系ポリマーの場合には、重合後にオキシド化することが好ましい。また、後述するウレタン系ポリマーの場合にも副反応が生じないように、重合後にオキシド化することが好ましい。
一般的にはオキシド化剤の使用量は、オキシド化可能な官能基、即ち、3級アミノ基に対して、0.2〜3倍モル当量の割合で使用し、更に0.5〜2倍モル当量使用するのがより好ましい。得られたポリマー溶液は、残存した過酸化物を公知の方法で処理した後、使用することもできる。具体的には還元剤添加処理、イオン交換処理、活性炭処理、金属触媒による処理等があげられる。得られたポリマー溶液はそのまま使用することもできるが、必要に応じて再沈殿、溶媒留去等の公知の方法でアミンオキシド基含有ポリマーを単離して使用することも出来る。また、単離したアミンオキシド基含有ポリマーは、必要ならば再沈殿や、溶剤洗浄、膜分離、吸着処理等によってさらに精製できる。
本発明におけるビニル系ポリマーとしては、前述の如く、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)をオキシド化した後に他のモノマーと重合したもの、及び、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)を必須とするモノマーを重合し、ポリマーを得た後にオキシド化したものの他、モノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物や2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有不飽和化合物と、ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド基含有化合物との反応生成物を用いて共重合したものも用いることができる。
<アミンオキシド基含有量>
アミンオキシド基は、細胞接着防止効果をポリマーに付与する。ビニル系ポリマー中のアミンオキシド基含有量は、好ましくは0.25〜5mmol/gであり、より好ましくは0.5〜5mmol/gである。0.25〜5mmol/gであることにより、長時間水中に浸漬しても細胞接着防止効果を維持することができる。
ビニル系ポリマー中のアミンオキシド基含有量は、アミンオキシド基を有するモノマーを重合してビニル系ポリマーを得る場合には、重合に用いたアミンオキシド基を有するモノマーの量から求めることができる。一方、3級アミノ基含有モノマーを必須とするモノマーを重合した後に得られたポリマーをオキシド化する場合には、前述の数式1によって算出できる。
<質量平均分子量(Mw)>
ビニル系ポリマー(A)の質量平均分子量は、2,000以上であり、好ましくは2,000〜10,000,000であり、より好ましくは5,000以上であり、さらに好ましくは10,000以上であり、特に好ましくは100,000以上である。分子量が2,000以上であることにより、塗膜の凝集力を付与でき、塗工基材からの剥離を抑制でき、長期間の細胞接着防止効果を発揮する。また、10,000,000以下であると、適正な粘度になることから、塗工適性が向上するため好ましい。より好ましくは、500,000以下である。
ビニル系ポリマーの質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用する。測定装置及び測定条件としては、下記条件1によることを基本とし、試料の溶解性等により条件2とすることを許容する。ただし、重合体種によっては、さらに適宜適切なキャリア(溶離液)及びそれに適合したカラムを選定して用いてもよい。その他の事項については、JISK7252−1〜4:2008を参照することとする。なお、難溶の高分子化合物については下記条件の下、溶解可能な濃度で測定することとする。また、ビニル系ポリマーの分子量測定が困難な場合は、アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量をビニル系ポリマーの質量平均分子量とすることが出来る。アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用し、測定装置及び測定条件としては、下記条件3によることを基本とする。
(条件1)
カラム:TOSOHTSKgelSuperHZM−H、
TOSOHTSKgelSuperHZ4000 及び
TOSOHTSKgelSuperHZ2000を連結したもの。
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件2)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAWM−Hを2本連結したもの。
キャリア:10mMLiBr/N−メチルピロリドン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件3)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAW4000、
TOSOHTSKgelSuperAW3000 及び
TOSOHTSKgelSuperAW2500を連結したもの。
キャリア:N,N−ジメチルホルムアミド(1L)、トリエチルアミン(3.04g)、LiBr(0.87g)の混合液
測定温度:40℃
キャリア流量:0.6mL/min
<架橋剤>
本発明の細胞培養器材処理剤は、さらに架橋剤を含むことができる。架橋剤を含むことにより、前述のビニル系ポリマーが架橋性基を有する場合、塗膜に架橋を形成して耐久性(耐水性)を向上させることができる。
本発明で用いることのできる架橋剤としては、前述のビニル系ポリマーを形成するためのモノマー(B)におけるカルボキシル基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性基と反応するものが好ましく、例えば、カルボキシル基が導入されたビニル系ポリマー(A)の架橋剤としては、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、アミノ化合物等が挙げられる。また、水酸基が導入されたビニル系ポリマー(A)の架橋剤としては、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、アミノ化合物、アルコキシラン化合物等が挙げられる。これらの架橋剤は、塗膜の弾性率や耐性を上げる目的で使用したり、基材への接着力を調製したりするために用いることができる。
以下に、好ましい架橋剤の例として、カルボジイミド化合物及びイソシアネート化合物について説明する。
[カルボジイミド基含有化合物(カルボジイミド化合物)]
カルボジイミド基含有化合物としては、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどのジカルボジイミドや、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフタレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどを挙げることができる。
カルボジイミド基含有化合物の市販品として、日清紡ホールディングス(株)製“カルボジライト”(登録商標)、ラインケミー製“スタバクゾール(登録商標)”などを挙げることができる。
[イソシアネート基を有する架橋剤(イソシアネート化合物)]
本発明で用いられるイソシアネート基を有する架橋剤としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有した化合物であればよく、特に限定されるものではない。
2官能イソシアネート化合物としては、例えば、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
3官能イソシアネート化合物としては、上記で説明したジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体が挙げられる。
また、イソシアネート基を有する架橋剤中のイソシアネート基は、ブロック化されていても良いし、ブロック化されていなくても良い。本発明で用いられるブロック化イソシアネート架橋剤としては、前記イソシアネート化合物中のイソシアネート基がε−カプロラクタム、MEKオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ピラゾール、フェノール等でブロックされたブロック化イソシアネート化合物であればよく、特に限定されるものではない。
本発明において、架橋剤は、一種のみを単独で用いてもよいし、複数を併用しても良い。架橋剤の使用量は、ビニル系ポリマー中に含まれる官能基の種類やモル数を考慮して決定すればよく、特に限定されるものではないが、通常はビニル系ポリマー100質量部に対して0.1質量部〜100質量部の範囲で用いられる。ビニル系ポリマー中に含まれる官能基のモル数よりも少ない範囲で配合することで、未反応の架橋剤が遊離する懸念をなくすことができる。この範囲であれば、目的とする細胞培養器材処理剤の各効果に、特に優れた性能が発現される。
<細胞培養器材処理剤の調製>
本発明の細胞培養器材処理剤は、細胞培養器材処理剤100質量%中、前記ビニル系ポリマーを50質量以下%含むことが好ましく、0.5〜10質量%含むことがより好ましい。ビニル系ポリマー含有量を0.5質量%以上とすることで、アミンオキシド基による細胞接着抑制の効果を発揮することができる。また、本発明の細胞培養器材処理剤は、ビニル系ポリマー以外の成分を含んでも良い。
<溶媒>
本発明の細胞培養器材処理剤は、ビニル系ポリマー以外の成分として溶媒を含有してもよく、2種以上を併用して含んでもよい。溶媒は、アミンオキシド量に依存するビニル系ポリマーの溶解性や製膜条件等を考慮し、従来公知の溶媒から適宜選択することができる。
例えば、ビニル系ポリマー中のアミンオキシド量が多い場合、水、メタノールやエタノール等のアルコール類、アセトンやエチルメチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフランやジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチルや酢酸エチル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ギ酸や酢酸等の有機酸、N,N−ジメチルホルムアミド等の有機塩基を選択することができる。一方、ビニル系ポリマー中のアミンオキシド量がの少ない場合、アセトンやエチルメチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフランやジエチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチルや酢酸エチル等のエステル類、ジメチルスルホキシド、アセトニトリルに加え、ジクロロメタンやトリクロロメタン等のハロゲン溶媒を選択することができる。
<その他添加剤等>
本発明の細胞培養器材処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種の添加剤を含有してもよく、界面活性剤、等張化剤、キレート化剤、pH調整剤、緩衝剤、増粘剤、安定化剤、タンパク質分解酵素、薬理活性成分、生理活性成分や、医薬品添加物辞典に記載された各種添加剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。これらは1種を単独で含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
例えば、イオンバランスを調製するために、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤としては、酸性又は塩基性の化合物が挙げられる。酸性pH調整剤の例としては、カルボン酸、無機酸及びスルホン酸が挙げられ、塩基性pH調整剤の例としては、水酸化物、アルコキシド、第一級及び第二級アミン以外の窒素含有化合物、塩基性炭酸塩、並びに塩基性リン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。細胞培養器材処理剤のpH値は、4.0〜9.0程度、好ましくは6.0〜8.0程度、であり、7.0付近になるように調整して用いることが好ましい。
また、等張化剤としては、糖、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトールなど)又は塩化ナトリウム等が挙げられる。増粘剤、安定化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリルアミド等の合成有機高分子化合物、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシエチルスターチ等のスターチ誘導体、コンドロイチン硫酸塩、ヒアルロン酸塩等が挙げられる。
<細胞培養器材>
本発明の細胞培養器材は、基材上に、アミンオキシド基を含み、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマーを含む細胞接着防止膜(塗膜とも言う場合もある)を有し、基材上に、アミンオキシド基を含み、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマーを含む細胞接着防止膜を形成する工程を含むこと、具体的には、アミンオキシド基を含み、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマーを含む細胞培養器材処理剤をコーティングする工程を含むことにより製造することができる。
細胞接着防止膜を形成する方法、即ちアミンオキシド基を含み、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマーを含む細胞培養器材処理剤をコーティングする工程としては、公知の方法で行うことができる。例えば、前記細胞培養器材処理剤を公知の方法でコーティングした後に、熱処理等をすることで、塗膜を形成することができる。なお、架橋剤を使用して硬化することもできる。
前記コーティング方法は、基材に応じて適宜選択でき、具体的には、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、インクジェット方式、刷毛塗り、スポンジ塗り等が挙げられる。また、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の各種印刷方式を用いてもよい。コーティング後の熱処理温度は、含有する溶媒の沸点や、架橋剤の架橋温度に応じて適宜選択できるが、工業的には、40〜180℃であるのが望ましい。さらに、本組成物が架橋剤を含む場合、架橋反応を促進させるための工程を設けることが好ましい。架橋条件は、一般的に40〜150℃で6〜24時間であるが、これらに限定されない。
<基材>
本発明の基材は、細胞培養器材用に使用可能であれば特に制限されない。具体的には、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリビニルアセテート、ビニル−アセテート共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体、アクリルニトリル−スチレン共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ナイロン、ポリメチルペンテン、シリコーン樹脂、アミノ樹脂、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、及びポリイミドの樹脂材料からなる群から選択された1種以上の樹脂のほか、ガラス基材等が挙げられる。
<シリコーン基材>
前記シリコーン基材は、シリコーン系樹脂を含む基材であれば特に制限されない。
シリコーン系樹脂としては、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンのようなポリオルガノシロキサンを主鎖とするものが挙げられ、好ましくは、ポリジメチルシロキサンである。また、このようなシリコーン基材としては、具体的には、例えば、シリコーン含有医療用デバイス、マイクロ流路を有するシリコーン基材、好ましくはシリコーン含有マイクロ流路デバイスが挙げられる。
前記医療用デバイスとは、生体内で使用される医療用の構造体のことをいい、斯様な構造体は、体内へ埋め込んで使用するものと、体内で(埋め込まずに)使用するものとに大別される。なお、医療用デバイスの大きさや長さは特に限定されるものではなく、微細な回路を有するものや、微量の試料を検出するものも包含される。
体内へ埋め込んで使用する構造体としては、例えば、心臓ペースメーカー等の疾患が生じている生体の機能を補うための機能補助装置;埋入型バイオチップ等の生体の異常を検出するための装置;インプラント、骨固定材、縫合糸、人工血管等の医療用器具が挙げられる。また、体内で(埋め込まずに)使用する構造体としては、カテーテル、胃カメラ等が挙げられる。
前記マイクロ流路デバイスとしては、例えば、微小反応デバイス(具体的にはマイクロリアクターやマイクロプラント等)、集積型核酸分析デバイス、微小電気泳動デバイス、微小クロマトグラフィーデバイス等の微小分析デバイス;質量スペクトルや液体クロマトグラフィー等の分析試料調製用微小デバイス;抽出、膜分離、透析などに用いる物理化学的処理デバイス;環境分析チップ、臨床分析チップ、遺伝子分析チップ(DNAチップ)、タンパク質分析チップ(プロテオームチップ)、糖鎖チップ、クロマトグラフチップ、細胞解析チップ、製薬スクリーニングチップ等のマイクロ流路チップが挙げられる。これらの中でも、マイクロ流路チップが好ましい。
なお、前記マイクロ流路は、微量の試料(好ましくは液体試料)が流れる部位であり、その流路幅及び深さは特に限定されないが、いずれも、通常、0.1μm〜1mm程度であり、好ましくは10μm〜800μmである。なお、マイクロ流路の流路幅や深さは、流路全長にわたって同じであってもよく、部分的に異なる大きさや形状であってもよい。
前記シリコーン基材は、プラズマ処理、UVオゾン処理、内部浸潤剤処理等がされていてもよい。これらの処理がなされたシリコーン基材は表面が親水化されているため、重合体が吸着しにくくなる場合があるが、本発明で用いる、アミンオキシド基を含み、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマーはこのようなプラズマ処理等がされたシリコーン基材にも吸着し、優れた親水性及び生体試料吸着抑制効果が付与される。
<メディカルデバイス>
前記メディカルデバイスは、医療用器材であれば特に制限されず、具体例としては、例えば、血液バッグ、採尿バッグ、輸血セット、縫合糸、ドレーンチューブ、各種カテーテル、ブラッドアクセス、血液回路、人工血管、人工腎臓、人工心肺、人工弁、血漿交換膜、各種吸着体、CAPD、IABP、ペースメーカー、人工関節、人工骨頭、歯科材料、各種シャント、が挙げられる。
メディカルデバイスの材質や形状は特に限定されず、材質としては、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニルやそれらの共重合体などの各種高分子材料、金属、セラミック、カーボン、及びこれらの複合材料等が挙げられる。また、形状は特に限定されず、平滑、多孔質などいずれであってもよい。
<細胞培養培地添加剤>
本発明の細胞培養培地添加剤は、アミンオキシド基を有し、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマー(A)を含む。上記ビニル系ポリマー(A)を含むことで、細胞が基材に接着することなく、細胞同士が集まった3次元的かつ生細胞数の割合が良好な細胞凝集塊を形成する効果を発揮する。
また、本発明の細胞培養培地添加剤は、ビニル系ポリマー(A)を含むことで、抗体を効率的に生産することができる。また、抗体産生細胞凝集物の発生が抑制され、目的とする抗体の精製が容易となる。
<ビニル系ポリマー(A)>
本発明のビニル系ポリマー(A)は、アミンオキシド基を有し、かつ、質量平均分子量が2,000以上であればよく、従来公知のポリマーを用いることができ、2種以上を併用してもよい。アミンオキシド基を有することで、優れた細胞凝集塊形成性を発揮する。
本発明において、アミンオキシド基を有するビニル系ポリマーは、以下のような2つの方法で得ることができる。
(1)アミンオキシド基を有するモノマーとその他モノマーとの共重合体として得る方法。
(2)アミンオキシド基の前駆官能基とでもいうべき3級アミノ基を有するビニル系ポリマーを得た後、前記3級アミノ基と酸化剤との反応生成物として得る方法。
(3)3級アミノ基を有するモノマーと酸化剤との反応生成物モノマー(アミンオキシド基含有モノマー)と、その他モノマーとの共重合体として得る方法。
3級アミノ基に酸化剤(以下、オキシド化剤ともいう)を反応させることで、アミンオキシド基を導入することができる。この反応を以下「オキシド化」ともいう。副反応を生じ難いという点で(2)の方法が好ましい。
ビニル系ポリマーとしては、具体的には、前述の一般式1〜3で表される少なくともいずれかの構造を含むものであることが好ましく、中でも一般式1で表される構造を含むものが特に好ましい。アミンオキシド基が下記式であらわされるものであることによって、好適な水溶性を発現することができる。
ビニル系ポリマーは、共重合体であることが好ましく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
このような構造を有するビニルポリマーは、前述の通り、3つの方法で得ることができる。より好ましくは前述の(2)である、3級アミノ基含有モノマー(a)と、その他モノマーとを重合した後にオキシド化する方法である。その他モノマーは、炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)を含むことが好ましい。
<3級アミノ基含有モノマー(a)>
オキシド化前の前駆体としての3級アミノ基含有モノマー(a)のうち、
一般式1の構造を形成するためものとしては、例えば、
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジエチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアリルアミン、p−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジメチルアミノエチルスチレン、p−ジエチルアミノメチルスチレン、p−ジエチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、あるいは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和基含有酸無水物と、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物等が挙げられる。
好ましくは、(メタ)アクリレートモノマーであり、より好ましくはN,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート又はN,N−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートである。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を言い表すものとする。
一般式3の構造を形成するためのものとしては、例えば、
2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−3−ビニルピリジン、2−メチル−4−ビニルピリジン、3−メチル−4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−メチル−5−ビニルピリジン、4−メチル−5−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−4−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−5−ビニルピリジン等が挙げられる。
一般式2の構造を形成するためのものとしては、例えば、
1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−メチル−1−ビニルイミダゾール、5−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−(t−ブチル)−1−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
<その他モノマー>
ビニル系ポリマー(A)を得る際に、前記3級アミノ基含有モノマー(a)の他に、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する、その他モノマーを用いることができる。その他モノマーに基づく構造の導入により、極性やTgが適切に制御され、溶媒溶解性等を制御することができる。
その他モノマーとしては、炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)を用いることが、細胞凝集塊形成性の観点及び細胞凝集物の吸着抑制性の観点から好ましい。
[炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)]
炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)は、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と炭素数4〜18のアルキル基とを有するモノマーが好ましい。ビニル系ポリマー(A)は、炭素数4〜18のアルキル基を有することで、極性が制御され、周囲の環境を適切に制御することができる。
モノマー(c)としては、特に限定はされないが、例えば、
ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;
1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン系エチレン性不飽和モノマーなどが挙げられる。
[(a)、(c)以外のモノマー(d)]
さらに、ビニル系ポリマーを得る際に、前記モノマー(a)、(c)以外のモノマー(c)を用いてもよい。(a)(c)以外のモノマー(d)は、モノマー(a)や(c)と共重合可能であり、モノマー(a)(c)以外の、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有するモノマーであることが好ましい。
モノマー(d)としては、特に限定はされないが、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートなどアルキル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアクリルエステル(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族エステル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1−メチルアリル、(メタ)アクリル酸2−メチルアリル、(メタ)アクリル酸1−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3−メチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−クロルアリル、(メタ)アクリル酸3−クロルアリル、(メタ)アクリル酸o−アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2−(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルなどのエチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルウンデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和モノマーなどの(メタ)アクリレート系モノマー;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコールなどの水酸基を有するモノマー;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又は、これらのアルキル若しくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸などのカルボン酸基、若しくはその無水物を有するモノマー;
ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマー;
(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェートなどのリン酸基を有するモノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどの1〜3級アミド基を有するモノマー;
(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、及びトリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロライドなどの4級アミノ基を有するモノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエーテル鎖を有するモノマー;
ラクトン変性(メタ)アクリレートなどのポリエステル鎖を有するエチレン性不飽和化合物などの側鎖に高分子構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、アリルベンゼン、エチニルベンゼン等の芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有エチレン性不飽和モノマー;酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどの脂肪酸ビニル系化合物;ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系エチレン性不飽和モノマー;
酢酸アリル、シアン化アリルなどのアリルモノマー;シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトンなどのビニルモノマー;アセチレン、エチニルトルエンなどのエチニルモノマーパーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレンなどのパーフルオロアルキル、アルキレン類などのパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和化合物等の、(メタ)アクリレートではないエチレン性不飽和結合を有するモノマーなどが挙げられる。
<ビニル系ポリマー(A)の共重合組成>
ポリマー(a)の共重合組成について説明する。
3級アミノ基含有モノマー(a)は、全モノマーの合計量中、20〜99.9質量%含むことが好ましく、より好ましくは65〜85質量%である。上記範囲とすることで、特に優れた細胞凝集塊形成性を発揮する。
炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)は、全モノマーの合計量中、0.1〜80質量%含むことが好ましく、より好ましくは12〜40質量%である。
その他モノマー(d)は、全モノマーの合計量中、0〜79.9質量%含むことが好ましく、より好ましくは0〜50質量%であり、特に好ましくは0〜25質量%である。
<オキシド化>
モノマー(a)に由来する3級アミン基は、各種酸化剤を使用することでアミンオキシド基化することができる。これによりビニル系ポリマー(A)にアミンオキシド基を導入することができる。オキシド化は、ビニル系ポリマー(A)の重合前、重合後のいずれであってもよく、重合前のオキシド化は、3級アミノ基含有モノマー(a)を含む溶液に、重合後のオキシド化は、3級アミノ基含有モノマー(a)を必須とするモノマーを重合したビニル系ポリマーを含む溶液に、オキシド化剤を加えて20℃〜100℃の範囲で0.1〜100時間、好ましくは1〜50時間反応させることによって、3級アミノ基をオキシド化することができる。
オキシド化剤としては、過酸化物又はオゾン等の酸化剤が用いられる。過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等が挙げられ、過酸化水素が好ましく、通常は水溶液の形で用いられる。程度の違いはあるとはいうものの、過酸化物にはラジカル発生剤としての機能もあるので、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)を必須の原料とするビニル系ポリマーの場合には、重合後にオキシド化することが好ましい。
一般的にはオキシド化剤の使用量は、オキシド化可能な官能基、即ち、3級アミノ基に対して、0.2〜3倍モル当量の割合で使用し、更に0.5〜2倍モル当量使用するのがより好ましい。得られたポリマー溶液は、残存した過酸化物を公知の方法で処理した後、使用することもできる。具体的には還元剤添加処理、イオン交換処理、活性炭処理、金属触媒による処理等があげられる。得られたポリマー溶液はそのまま使用することもできるが、必要に応じて再沈殿、溶媒留去等の公知の方法でアミンオキシド基含有ポリマーを単離して使用することも出来る。また、単離したアミンオキシド基含有ポリマーは、必要ならば再沈殿や、溶剤洗浄、膜分離、吸着処理等によってさらに精製できる。
本発明におけるビニル系ポリマーとしては、前述の如く、3級アミノ基含有モノマー(a)をオキシド化した後に他のモノマーと重合したもの、及び、3級アミノ基含有モノマー(a)を必須とするモノマーを重合し、ポリマーを得た後にオキシド化したものの他、モノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物や2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有不飽和化合物と、ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド基含有化合物との反応生成物を用いて共重合したものも用いることができる。
<アミンオキシド基含有量>
アミンオキシド基は、タンパク質の周辺環境を適切に制御し、機能の失活を抑える効果を発揮する。ポリマー(A)中のアミンオキシド基含有量は、好ましくは1〜10mmol/gであり、より好ましくは2〜8mmol/gである。アミンオキシド基の含有量が上記範囲にあることによって、好適な水溶性を発現すると共に、極性が制御され、周囲の環境を適切に制御することができる。
ビニル系ポリマー(A)中のアミンオキシド基含有量は、アミンオキシド基を有するモノマーを重合してポリマー(A)を得る場合には、重合に用いたアミンオキシド基を有するモノマーの量から求めることができる。一方、3級アミノ基含有モノマー(a)を必須とするモノマーを重合した後に得られたポリマーをオキシド化する場合には、前述の数式1によって算出できる。
<質量平均分子量(Mw)>
ビニル系ポリマー(A)の質量平均分子量は、好ましくは2,000〜10,000,000であり、より好ましくは5,000以上であり、さらに好ましくは10,000以上であり、特に好ましくは20,000以上である。より好ましくは、500,000以下であり、特に好ましくは、200,000以下である。分子量が上記範囲であることにより、増粘作用を低下させゲル化等の不具合を防ぐことができる。またピペット操作などの取り扱いが容易になる。
(質量平均分子量(Mw)の測定方法)
ビニル系ポリマー(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準プルラン換算で計測した値を採用した。測定装置及び測定条件としては下記条件1を用いた。その他の事項については、JISK7252−1〜4:2008を参照した。なお、難溶の高分子化合物については下記条件の下、溶解可能な濃度で測定した。また、ビニル系ポリマー(A)の分子量測定が困難な場合は、アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量をビニル系ポリマー(A)の質量平均分子量とすることが出来る。アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用し、測定装置及び測定条件としては、下記条件2によることを基本とした。
(条件1)
カラム:OHpak SB−G、
OHpak SB−806M HQを3本及び、
OHpak SB−802.5 HQを連結したもの。
キャリア:1/15 mol/L pH7.0 リン酸緩衝液
(りん酸緩衝剤粉末1/15 mol/L pH7.0(富士フイルム和光純薬(株)製)をイオン交換水1Lに溶解させたもの)
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件2)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAW4000、
TOSOHTSKgelSuperAW3000 及び
TOSOHTSKgelSuperAW2500を連結したもの。
キャリア:N,N−ジメチルホルムアミド(1L)、トリエチルアミン(3.04g)、LiBr(0.87g)の混合液
測定温度:40℃
キャリア流量:0.6mL/min
<細胞凝集塊の製造方法>
本実施形態に係る細胞凝集塊の製造方法では、前述のビニル系ポリマー(A)を含む細胞培養培地添加剤を細胞培養培地に添加する。ビニル系ポリマー(A)を培地に添加することにより、細胞が培養容器に接着しなくなる。そのため、本実施形態に係る製造方法では、静置培養にて細胞凝集塊を容易に形成することができる。
本発明においてビニル系ポリマー(A)の添加量は、細胞培養培地に対して0.01質量%以上5質量%以下の範囲で使用することが好ましく、ビニル系ポリマー(A)の添加量が培地に対して0.05質量%より多い場合に細胞凝集塊を特に良好に形成することができる。また、培地への溶解性の観点から、ビニル系ポリマー(A)の添加量は培地に対して1質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る細胞凝集塊の製造方法を適用可能な動物細胞は特に限定されない。このような動物細胞としては、例えば、ヒト、マウス、ラットなどの哺乳類由来細胞が挙げられる。
本実施形態に利用可能な細胞培養培地は特に限定されない。このような培地としては、例えば、市販されている各種培地(αMEM、MEM、DMEM、IMDEM、RPMI1640、DMEM/F12等)や、これらの組み合わせが挙げられる。
細胞培養培地には、必要に応じて、各種増殖因子(上皮成長因子やインスリン様成長因子、神経成長因子、肝細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、塩基性繊維芽細胞増殖因子、トランスフェリン、ステロイドホルモン、2−メルカプトエタノール等)や各種動物血清(ウシ胎児血清(FBS)やウシ血清等)、血清代替物などが添加される。
本実施形態に適用可能な培養容器としては、一般的な培養容器を採用することができる。このような培養容器としては、例えば、マルチウェルプレート、シャーレ、袋状容器や培養フラスコが挙げられる。これらの培養容器の材質としては、例えば、ポリスチレンが挙げられる。
本実施形態における培養条件は、通常の動物細胞の培養条件でよく、例えば、5%CO2雰囲気で、温度が37℃である条件とすることができる。
<抗体の製造方法>
本実施形態に係る抗体の製造方法では、前述のビニル系ポリマー(A)を含む抗体産生細胞培養培地添加剤を含む細胞培養培地を用いて抗体産生細胞を培養することを含む。
ビニル系ポリマー(A)の添加量は、細胞培養培地に対して0.01質量%以上5質量%以下の範囲で使用することが好ましく、ビニル系ポリマー(A)の添加量が培地に対して0.05質量%より多い場合に、抗体産生細胞凝集物の発生を特に抑制することができる。また、培地への溶解性の観点から、ビニル系ポリマー(A)の添加量は培地に対して1質量%以下であることが好ましい。
本発明の培養方法で培養される動物細胞は特に限定されず、細胞については抗体生産に使用可能な細胞であれば特に限定されず、CHO細胞、BHK細胞、HepG2細胞、rodent myeloma細胞(例えば、SP2/O細胞、NSO細胞等のマウス骨髄腫細胞等)、ハイブリドーマ、昆虫細胞及びそれらの細胞に外来遺伝子を導入した形質転換細胞が例として挙げられるが、例えばCHO細胞、SP2/O細胞又はNSO細胞等を細胞融合することによって得られるハイブリドーマ等を抗体産生細胞として採用することができる。
本発明の培養方法で産生される抗体は特に限定されず、例えば、マウスモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体又はヒトモノクローナル抗体である。また、免疫グロブリンのクラスは特に限定されないが、例えば、IgG(例えば、IgG1 、IgG2等) である。
本発明の培養方法又は製造方法において、培養を行う際、通常培養に用いられる容器又は装置を用いることができる。例えば、マルチウェルプレート、シャーレ、培養フラスコ、スピナーフラスコ、ジャーファーメンター、ファーメンター、ローラーボトル、ホローファイバー、マイクロキャリアー等が挙げられる。
本実施形態における培養条件は、通常の動物細胞の培養条件でよく、例えば、5%CO2雰囲気で、温度が37℃である条件とすることができる。
培養液から細胞を採取するには、浮遊細胞の場合は、例えば培養液を直接遠心分離機やろ過機にかけて集める。接着細胞の場合は、例えば0.25%トリプシン−0.02%EDTA液を添加して細胞を浮遊させた後遠心分離やろ過により集める。
細胞培養によって生産される抗体は、その物質が培養液中に蓄積される場合、ろ過又は遠心分離により上澄み液を得、これから採取される。また、細胞内に蓄積される物質の場合には、ろ過又は遠心分離により得た細胞をホモジナイズ、超音波処理、化学薬品処理等を施し、生産物を抽出した上澄み液を得る。
上記上澄み液から抗体を分離、精製するには、公知の方法を適宜組み合わせて行う。例えば、硫安沈殿、透析、限外ろ過、電気泳動、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィ、逆相クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ等が適用される。
<タンパク質安定化剤>
本発明のタンパク質安定化剤は、アミンオキシド基を有し、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるポリマー(A)を含むことを特徴とする。
本発明のビニル系ポリマー(A)は、アミンオキシド基を有していれば、かつ、質量平均分子量が2,000以上であればよく、従来公知のポリマーを用いることができ、2種以上を併用してもよく、アミンオキシド基を有することで、優れたタンパク質安定化効果を発揮する。
本発明において、アミンオキシド基を有するビニル系ポリマーは、以下のような2つの方法で得ることができる。
即ち、アミンオキシド基を有するモノマーと他のモノマーとを重合して、アミンオキシド基を有するビニル系ポリマーを得ることができる。
あるいは、アミンオキシド基の前駆官能基とでもいうべき3級アミノ基を有するビニル系ポリマーを得た後、前記3級アミノ基に酸化剤を反応させ、ビニル系ポリマーにアミンオキシド基を導入することができ、副反応を生じ難いという点で後者の方法が好ましい。なお、3級アミノ基に酸化剤を反応させることを、以下「オキシド化」ともいう。
ビニル系ポリマーとしては、具体的には、前述の一般式1〜3で表される少なくともいずれかの構造を含むものであることが好ましく、中でも一般式1で表される構造を含むものが特に好ましい。アミンオキシド基が下記式であらわされるものであることによって、好適な水溶性を発現すると共に、タンパク質との過度な相互作用を抑え、周囲の環境を適切に制御することができる。
ビニル系ポリマーは、共重合体であることが好ましく、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。
このような構造を有するビニルポリマーは、前述の通り、2つの方法で得ることができる。より好ましくは、3級アミノ基含有モノマー(a)と、その他のモノマーとを重合した後にオキシド化する方法である。その他モノマーは、炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)を含むことが好ましい。
<3級アミノ基含有モノマー(a)>
オキシド化前の前駆体としての3級アミノ基含有モノマー(a)のうち、一般式1の構造を形成するためものとしては、
例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジエチルアミノプロピオン酸ビニル、N,N−ジメチルアリルアミン、p−ジメチルアミノメチルスチレン、p−ジメチルアミノエチルスチレン、p−ジエチルアミノメチルスチレン、p−ジエチルアミノエチルスチレン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、あるいは、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和基含有酸無水物と、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物とN,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン等との反応生成物等が挙げられる。
好ましくは、(メタ)アクリレートモノマーであり、より好ましくはN,N−ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート又はN,N−ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリレートである。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を言い表すものとする。
一般式3の構造を形成するためのものとしては、例えば、
2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−3−ビニルピリジン、2−メチル−4−ビニルピリジン、3−メチル−4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、3−メチル−5−ビニルピリジン、4−メチル−5−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−4−ビニルピリジン、2−(t−ブチル)−5−ビニルピリジン等が挙げられる。
一般式2の構造を形成するためのものとしては、例えば、
1−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−メチル−1−ビニルイミダゾール、5−メチル−1−ビニルイミダゾール、4−(t−ブチル)−1−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
<その他モノマー>
ビニル系ポリマーを得る際に、前記モノマー(a)の他に、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する、その他モノマーを用いることができる。その他モノマーに基づく構造の導入により、極性やTgが適切に制御され、優れた塗工性、塗工膜の耐久性を有することができるほか、溶媒溶解性等を制御することができる。
その他モノマーとしては、炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)を用いることが、タンパク質安定化効果の観点から好ましい。
[炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)]
炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)は、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と炭素数4〜18のアルキル基とを有するモノマーが好ましい。ビニル系ポリマー(A)は、炭素数4〜18のアルキル基を有することで、極性が制御され、周囲の環境を適切に制御することができる。
モノマー(c)としては、特に限定はされないが、例えば、
ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;
1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン系エチレン性不飽和モノマーなどが挙げられる。
[(a)(c)以外のモノマー(d)]
(a)(c)以外のモノマー(d)は、モノマー(a)や(c)と共重合可能であり、モノマー(a)(c)以外の、1分子中に1つのエチレン性不飽和基を有するモノマーであることが好ましい。
モノマー(d)としては、特に限定はされないが、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレートなどアルキル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアクリルエステル(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族エステル(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸1−メチルアリル、(メタ)アクリル酸2−メチルアリル、(メタ)アクリル酸1−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−ブテニル、(メタ)アクリル酸3−ブテニル、(メタ)アクリル酸1,3−メチル−3−ブテニル、(メタ)アクリル酸2−クロルアリル、(メタ)アクリル酸3−クロルアリル、(メタ)アクリル酸o−アリルフェニル、(メタ)アクリル酸2−(アリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸アリルラクチル、(メタ)アクリル酸シトロネリル、(メタ)アクリル酸ゲラニル、(メタ)アクリル酸ロジニル、(メタ)アクリル酸シンナミル、ジアリルマレエート、ジアリルイタコン酸、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、オレイン酸ビニル,リノレン酸ビニル、(メタ)アクリル酸2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチルなどのエチレン性不飽和基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロノニルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロデシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルアミル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルウンデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和モノマーなどの(メタ)アクリレート系モノマー;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、アリルアルコールなどの水酸基を有するモノマー;
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、又は、これらのアルキル若しくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸などのカルボン酸基、若しくはその無水物を有するモノマー;
ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸基を有するモノマー;
(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェートなどのリン酸基を有するモノマー;
(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N−エトキシメチル−N−プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−N−(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N−メトキシメチル−N−(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミドなどの1〜3級アミド基を有するモノマー;
(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、及びトリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロライドなどの4級アミノ基を有するモノマー;
ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリエーテル鎖を有するモノマー;
ラクトン変性(メタ)アクリレートなどのポリエステル鎖を有するエチレン性不飽和化合物などの側鎖に高分子構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー;スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、クロロスチレン、アリルベンゼン、エチニルベンゼン等の芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有エチレン性不飽和モノマー;酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどの脂肪酸ビニル系化合物;ブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル系エチレン性不飽和モノマー; 酢酸アリル、シアン化アリルなどのアリルモノマー;シアン化ビニル、ビニルシクロヘキサン、ビニルメチルケトンなどのビニルモノマー;アセチレン、エチニルトルエンなどのエチニルモノマーパーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレンなどのパーフルオロアルキル、アルキレン類などのパーフルオロアルキル基含有エチレン性不飽和化合物等の、(メタ)アクリレートではないエチレン性不飽和結合を有するモノマーなどが挙げられる。
<ビニル系ポリマー(A)の共重合組成>
ポリマー(a)の共重合組成について説明する。
3級アミノ基含有モノマー(a)は、全モノマーの合計量中、20〜99.9質量%含むことが好ましく、より好ましくは65〜85質量%である。上記範囲とすることで、特に優れたタンパク質安定化効果を発揮する。 炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)は、全モノマーの合計量中、0.1〜80質量%含むことが好ましく、より好ましくは12〜40質量%である。
その他モノマー(d)は、全モノマーの合計量中、0〜79.9質量%含むことが好ましく、より好ましくは0〜50質量%であり、特に好ましくは0〜25質量%である。
<オキシド化>
モノマー(a)に由来する三級アミン基は、各種酸化剤を使用することでアミンオキシド基化することができる。これによりビニル系ポリマー(A)にアミンオキシド基を導入することができる。オキシド化は、ビニル系ポリマー(A)の重合前、重合後のいずれであってもよく、重合前のオキシド化は、3級アミノ基含有モノマー(a)を含む溶液に、重合後のオキシド化は、3級アミノ基含有モノマー(a)を必須とするモノマーを重合したビニル系ポリマーを含む溶液に、オキシド化剤を加えて20℃〜100℃の範囲で0.1〜100時間、好ましくは1〜50時間反応させることによって、3級アミノ基をオキシド化することができる。
オキシド化剤としては、過酸化物又はオゾン等の酸化剤が用いられる。過酸化物としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド等が挙げられ、過酸化水素が好ましく、通常は水溶液の形で用いられる。程度の違いはあるとはいうものの、過酸化物にはラジカル発生剤としての機能もあるので、3級アミノ基含有不飽和モノマー(A)を必須の原料とするビニル系ポリマーの場合には、重合後にオキシド化することが好ましい。
一般的にはオキシド化剤の使用量は、オキシド化可能な官能基、即ち、3級アミノ基に対して、0.2〜3倍モル当量の割合で使用し、更に0.5〜2倍モル当量使用するのがより好ましい。得られたポリマー溶液は、残存した過酸化物を公知の方法で処理した後、使用することもできる。具体的には還元剤添加処理、イオン交換処理、活性炭処理、金属触媒による処理等があげられる。得られたポリマー溶液はそのまま使用することもできるが、必要に応じて再沈殿、溶媒留去等の公知の方法でアミンオキシド基含有ポリマーを単離して使用することも出来る。また、単離したアミンオキシド基含有ポリマーは、必要ならば再沈殿や、溶剤洗浄、膜分離、吸着処理等によってさらに精製できる。
本発明におけるビニル系ポリマーとしては、前述の如く、3級アミノ基含有不飽和モノマー(a)をオキシド化した後に他のモノマーと重合したもの、及び、3級アミノ基含有不飽和モノマー(a)を必須とするモノマーを重合し、ポリマーを得た後にオキシド化したものの他、モノマーとして、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有不飽和化合物や2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基含有不飽和化合物と、ヒドロキシエチル−N,N−ジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド基含有化合物との反応生成物を用いて共重合したものも用いることができる。
<アミンオキシド基含有量>
アミンオキシド基は、タンパク質の周辺環境を適切に制御し、機能の失活を抑える効果を発揮する。ポリマー(A)中のアミンオキシド基含有量は、好ましくは1〜10mmol/gであり、より好ましくは2〜8mmol/gである。アミンオキシド基の含有量が上記範囲にあることによって、好適な水溶性を発現すると共に、タンパク質との過度な相互作用を抑え、周囲の環境を適切に制御することができる。
ビニル系ポリマー(A)中のアミンオキシド基含有量は、アミンオキシド基を有するモノマーを重合してポリマー(A)を得る場合には、重合に用いたアミンオキシド基を有するモノマーの量から求めることができる。一方、3級アミノ基含有モノマー(a)を必須とするモノマーを重合した後に得られたポリマーをオキシド化する場合には、前述の数式1によって算出できる。
<質量平均分子量(Mw)>
ビニル系ポリマー(A)の質量平均分子量は、好ましくは2,000〜10,000,000であり、より好ましくは5,000以上であり、さらに好ましくは10,000以上であり、特に好ましくは20,000以上である。より好ましくは、500,000以下であり、特に好ましくは、200,000以下である。分子量が上記範囲であることにより、増粘作用を低下させゲル化等の不具合を防ぐことができる。またピペット操作などの取り扱いが容易になる。
ビニル系ポリマー(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準プルラン換算で計測した値を採用した。測定装置及び測定条件としては下記条件1を用いた。その他の事項については、JISK7252−1〜4:2008を参照した。なお、難溶の高分子化合物については下記条件の下、溶解可能な濃度で測定した。また、ビニル系ポリマー(A)の分子量測定が困難な場合は、アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量をビニル系ポリマー(A)の質量平均分子量とした。アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用し、測定装置及び測定条件としては、下記条件2によることを基本とした。
(条件1)
カラム:OHpak SB−G、
OHpak SB−806M HQを3本及び、
OHpak SB−802.5 HQを連結したもの。
キャリア:1/15 mol/L pH7.0 リン酸緩衝液
(りん酸緩衝剤粉末1/15 mol/L pH7.0(富士フイルム和光純薬(株)製)をイオン交換水1Lに溶解させたもの)
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.5質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件2)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAW4000、
TOSOHTSKgelSuperAW3000 及び
TOSOHTSKgelSuperAW2500を連結したもの。
キャリア:N,N−ジメチルホルムアミド(1L)、トリエチルアミン(3.04g)、LiBr(0.87g)の混合液
測定温度:40℃
キャリア流量:0.6mL/min
<タンパク質の安定化方法>
本発明のタンパク質安定化剤と、タンパク質を共存させることにより、タンパク質を安定に保管することができる。安定化剤とタンパク質は、共通の溶媒に溶解又は分散させることで共存させることができる。
安定化剤とタンパク質を共存させる溶媒は水系の溶媒が好ましい。例えば、水やリン酸緩衝生理食塩水やトリス緩衝生理食塩水があげられる。水はメタノールやエタノール、プロピルアルコール、テトラヒドロフランなど水と混合できる有機溶剤を一部含んでもよい。
タンパク質に対して本発明の安定化剤は質量で好ましくは100倍、更に好ましくは10000倍加えて使用する。安定化剤の添加量が不十分な場合、安定化効果が発現できない可能性がある。同じ理由から、安定化剤は溶液の全量に対して好ましくは0.01%以上、更に好ましくは0.1%以上加えて使用する。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例及び比較例における「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表し、molとは物質量を表し、mol%は全単量体中の物質量の割合を表す。
<質量平均分子量(Mw)の測定方法>
ビニル系ポリマー(A)の質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用した。測定装置及び測定条件としては、下記条件1によることを基本とし、試料の溶解性等により条件2とした。ただし、重合体種によっては、さらに適宜適切なキャリア(溶離液)及びそれに適合したカラムを選定した。その他の事項については、JISK7252−1〜4:2008に基づいた。なお、難溶の高分子化合物については下記条件の下、溶解可能な濃度で測定した。
また、ポリマーの分子量測定が困難な場合は、アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量をポリマーの質量平均分子量とした。アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用し、測定装置及び測定条件としては、下記条件3によった。
(条件1)
カラム:TOSOHTSKgelSuperHZM−H、
TOSOHTSKgelSuperHZ4000 及び
TOSOHTSKgelSuperHZ2000を連結したもの。
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件2)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAWM−Hを2本連結したもの。
キャリア:10mMLiBr/N−メチルピロリドン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件3)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAW4000、
TOSOHTSKgelSuperAW3000 及び
TOSOHTSKgelSuperAW2500を連結したもの。
キャリア:N,N−ジメチルホルムアミド(1L)、トリエチルアミン(3.04g)、LiBr(0.87g)の混合液
測定温度:40℃
キャリア流量:0.6mL/min
<<生化学分析用ブロッキング剤の実施例>>
<ブロッキング剤の製造1>
[製造例1]
(ビニル系ポリマー(A)の調製)
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒として酢酸エチル150質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを80質量部、ブチルアクリレートを20質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.5質量部、溶媒として酢酸エチルを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後6時間熟成した。その後、室温に冷却し反応を停止した。
次に、エタノール150部とオキシド化剤として35%過酸化水素水を50部(用いたN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレートと等モル量)加え、70℃で16時間反応させることでアミノ基のオキシド化を行った。その後、ダイヤフラムポンプで溶剤を除去し、ビニル系ポリマー(A)を得た。
得られたポリマーのアミンオキシド基含有量は、加えたN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート量と上述の式から4.73mmol/gであった。なお、25℃のイオン交換水中99g中に、得られたビニル系ポリマー(A)を1g入れて撹拌し溶解後、25℃で24時間放置した。その結果これらの樹脂は分離、析出ともに見られず、完全に溶解可能であり、水溶性であることが示された。
(ブロッキング剤の製造)
上記で得られたビニル系ポリマー(A)を、リン酸緩衝生理食塩水(以下PBS溶液)に溶かし、濃度:5質量%の製造例1のブロッキング剤を得た。
[製造例2〜15]
表1に示す配合組成で、製造例1と同様の方法でビニル系ポリマー(A)を合成し、PBS溶液に溶解し、製造例2〜15のブロッキング剤を得た。なお、製造例15におけるビニル系ポリマー(A)は、製造例1と同様の方法でモノマーを重合し、オキシド化剤を反応させずに溶剤を除去したものである。
Figure 2020038059
表1中の記号は以下の通り。
DMAPAA: N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
DEAEMA: N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート
VP:ビニルピリジン
VI:ビニルイミダゾール
BA:ブチルメタクリレート
2EHA: 2−エチルヘキシルアクリレート
ISTA:イソステアリルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
AA:アクリル酸
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
<ブロッキング剤による処理及び性能評価>
[アクチンの付着]
ヒト血小板由来アクチン(Cytoskeleton社製)を1質量%となるようにPBS溶液で希釈し、評価用アクチン溶液を調整した。ニトロセルロース膜(メンブレン L-08002-010_アズワン製)2枚、各1カ所に、前記評価用アクチン溶液を、マイクロピペッターを用いてそれぞれ2μLずつ滴下し、静置し乾燥させた。
[ブロッキング剤による処理]
次いで、上記で調整したブロッキング剤に、アクチンを付着したニトロセルロース膜を入れ、室温で1時間振とうし、ブロッキング処理を行った。その後、ブロッキング剤からニトロセルロース膜を取り出し、取り出したニトロセルロース膜をPBS溶液に入れ、室温で15分間振とうした。PBS溶液を新しくし、同様の洗浄作業をもう1回繰り返し、余分なブロッキング剤を取り除いた。
[アクチンに対する2種類の抗体の付着]
抗β-アクチン,モノクローナル抗体,ペルオキシダーゼ結合(和光純薬工業社製)を、
PBS溶液に溶解し、濃度0.01質量%のアクチン抗体希釈液を得た。また同様に、抗GAPDH,モノクローナル抗体, ペルオキシダーゼ結合(和光純薬工業社製)を、PB
S溶液に溶解し、濃度0.01質量%のGAPDH抗体希釈液を得た。余分なブロッキング剤を除去した前述のニトロセルロース膜を、それぞれの抗体希釈液に入れ、室温で1時間振とうした。次いで、抗体希釈液からニトロセルロース膜を取り出し、取り出したニトロセルロース膜をPBS溶液に入れ、室温で一時間振とうし、余分な抗体を取り除いた。なお、GAPDHとはグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼの略である。
[染色と評価]
DAB錠(3,3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩、和光純薬工業製)10mgを0.05mol/L トリス−塩酸バッファー50mLに溶解し、さらに30%過酸化水素水を10μL加えて染色液を調整した。余分な抗体を取り除いた前述の2枚のニトロセルロース膜をそれぞれ染色液で覆い、表面の余分な染色液はタオルで除去した。以下の基準に従い、2種類の抗体希釈液を用いた場合におけるアクチン付着部位の染色状態を評価し、評価結果を表2に示す。
「アクチン抗体希釈液を用いた場合」
○:明確な染色あり
△:ほとんど染色なし
×:染色なし
「GAPDH抗体希釈液を用いた場合」
○:染色なし
△:染色あり
×:明確な染色あり
「総合評価」
○:アクチン抗体希釈液を用いた場合のみが染色され、GAPDH抗体希釈液を用いた場合に染色が無い。
△:アクチン抗体希釈液を用いた場合染色が薄く、GAPDH抗体希釈液を用いた場合とのコントラストが小さい、若しくは、アクチン抗体希釈液を用いた場合染色されるが、GAPDH抗体希釈液を用いた場合にも明確な染色が見られる。
×:アクチン抗体希釈液を用いた場合とGAPDH抗体希釈液を用いた場合との染色程度は変わらない(ブロッキング性能無し)
Figure 2020038059
表2に示すように、本発明の生化学分析用ブロッキング剤を用いることで、アクチンとアクチン抗体との生化学分析を行うことができた。これは本発明の生化学分析用ブロッキング剤に含まれる重合体(A)がたんぱく質と適切に吸着することで、抗原抗体反応を阻害せず、非特異的な吸着反応を抑えることができたためであると考えられる。
それに対して、アミンオキシド基を1.0〜10.0mmol/g有さない重合体を使用した比較例1〜3は、GAPDH抗体希釈液を用いた場合でも染色が見られ、アクチン抗体希釈液を用いた場合と明確な差は見られなかった。よって分析として十分な感度を得ることができなかった。これは、ブロッキング剤が抗原、抗体の両者に強力に非特異的吸着を起こしてしまい、ブロッキング性能を発現しなかったためであると考えられる。ただし、比較例1は参考例である。
<ブロッキング剤の製造2>
<アミンオキシド基含有ビニル系共重合体の製造>
[実施例2−1]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、ブタノールを25.8部、3級アミノ基含有ビニル系モノマー(a2)としてジメチルアミノエチルメタクリレートを80部(78.3mol%)、炭素数1〜18のアルキル基含有ビニル系モノマー(a3)としてブチルメタクリレートを20.0部(21.7mol%)仕込んだ。さらにここに、チオール基含有化合物(x)としてトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)を全ビニル系モノマーの合計量に対して3%になるように、3.0部加え、十分に窒素置換したのち、内温を90℃に昇温した。別途ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピネート)を0.1部とブタノール42.8部を混合したものを準備し、これを13分割して添加した。なお、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピネート)のブタノール溶液は、反応容器が90℃で安定化した時点で1回目の添加を行い、
以後30分おきに反応容器に添加した。合計反応時間が8時間となったところで固形分測定を行い、転化率が98%超えたことを確認し、室温に冷却し反応を停止した。
次に、オキシド化剤として35%過酸化水素水を49.7部(用いたジメチルアミノエチルメタクリレートと等モル量)加え、80℃で50時間反応させることで3級アミノ基のオキシド化を行った。その後、ダイヤフラムポンプでブタノールを除去し、アミンオキシド基含有ビニル系重合体(A−1)を得た。
得られたアミンオキシド基含有ビニル系重合体(A−1)のアミンオキシド基含有量は、加えたジメチルアミノエチルメタクリレート量と上述の数式1から4.58mmol/gであった。
得られたアミンオキシド基含有ビニル系重合体(A−1)を25℃のイオン交換水中99g中に1g入れて撹拌し溶解後、25℃で24時間放置した。その結果、これらの樹脂は分離、析出ともに見られず、完全に溶解可能であり、水溶性であることが示された。
[実施例2−2〜2−11]
表2−1に示す配合組成とした以外は実施例2−1と同様の方法で、アミンオキシド基含有ビニル系重合体(A−2〜A−11)を合成した。
[比較例2−1]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、ブタノールを25.8部、ブチルメタクリレートを70.0部(54.2mol%)、アクリル酸を30部(45.8mol%)、仕込んだ。さらにここに、チオール基含有化合物(x)としてトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネートを全ビニル系モノマーの合計量に対して3%になるように、3.0部加え、十分に窒素置換したのち、内温を90℃に昇温した。別途ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピネート)を0.1部とブタノール42.8部を混合したものを準備し、これを13分割して添加した。なお、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピネート)のブタノール溶液は、反応容器が90℃で安定化した時点で1回目の添加を行い、以後30分おきに反応容器に添加した。合計反応時間が8時間となったところで固形分測定を行い、転化率が98%超えたことを確認し、室温に冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプでブタノールを除去し、ビニル系共重合体(HA−1)を得た。
[比較例2−2]
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、ブタノールを25.8部、3級アミノ基含有ビニル系モノマー(a2)としてジメチルアミノエチルメタクリレートを50部(47.5mol%)、炭素数1〜18のアルキル基含有ビニル系モノマー(a3)としてブチルメタクリレートを50.0部(52.5mol%)仕込んだ。さらにここに、チオール基含有化合物(x)としてトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)を全ビニル系モノマーの合計量に対して3%になるように、3.0部加え、十分に窒素置換したのち、内温を90℃に昇温した。別途ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピネート)を0.1部とブタノール42.8部を混合したものを準備し、これを13分割して添加した。なお、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピネート)のブタノール溶液は、反応容器が90℃で安定化した時点で1回目の添加を行い、以後30分おきに反応容器に添加した。合計反応時間が8時間となったところで固形分測定を行い、転化率が98%超えたことを確認し、室温に冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプでブタノールを除去し、ビニル系共重合体(HA−2)得た。
Figure 2020038059
表2−1中の略称を以下に示す。
DMAEMA:ジメチルアミノエチルメタクリレート
DEAPAA:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
VP:ビニルピリジン
VI:ビニルイミダゾール
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
2EHA: 2−エチルヘキシルアクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
St:スチレン
AA:アクリル酸
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
TMMP:トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)
PEMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)
DPMP:(ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)
<ブロッキング剤の調製>
[実施例2−13]
(ブロッキング剤1溶液)
得られたアミンオキシド基含有ビニル系重合体(A−1)を、リン酸緩衝生理食塩水(以下PBS溶液)に溶かし、固形分5質量%のブロッキング剤1の溶液を得た。
[実施例2−14〜2−24、比較例2−3〜2−4]
(ブロッキング剤2〜13溶液)
アミンオキシド基含有ビニル系重合体(A−1)を、アミンオキシド基含有ビニル系重合体(A−2〜A−11)及び比較用のビニル系重合体(HA−1〜HA−2)に変更した以外は、ブロッキング剤1溶液と同様にして、ブロッキング剤2〜13の溶液を得た。
なお、ビニル系共重合体(HA−1)はアクリル酸を全てジメチルアミノエタノールで中和したものを使用した。また、ビニル系共重合体(HA−2)はジメチルアミノエチルメタクリレート由来のアミノ基を全て酢酸で中和したものを用いた。
<ブロッキング剤の評価>
得られたブロッキング剤溶液について、下記の通り、[抗原抗体反応試験]及び[非特異吸着試験]を実施し、吸光度の差異を基準に評価した。結果を表2−2に示す。
[抗原抗体反応試験]
(ウェルプレートの固相抗体処理)
固相用CRP抗体ab8279(abcam社製)が25μg/mlの濃度になるようにPBS溶液で調整した。この固相用CRP抗体溶液をPSt製96穴ウェルプレートに50μlずつ添加し、室温2時間静置した後、溶液を吸引し除去した。
(抗原吸着処理)
CRP抗原8C72(Hytest社製)が2μg/mlになるようにPBS溶液で調整した。このCRP抗原溶液を、前述の固相抗体処理した96穴ウェルプレートに50μlずつ添加し、4℃12時間静置した後、溶液を吸引し除去した。
(ブロッキング処理)
得られたブロッキング剤溶液を、前述の抗原処理した96穴ウェルプレートに50μlずつ添加し、室温2時間静置した後、溶液を吸引し除去した。
(標識抗体吸着処理)
HRP標識CRP抗体ab24462(abcam社製)が0.08μg/mlになるようにPBS溶液で調整した。このHRP標識CRP抗体溶液を、前述のブロッキング処理した96穴ウェルプレートに50μlずつ添加し、室温2時間静置した後、溶液を吸引し除去した。その後各ウェルにPBS溶液200μlずつ添加し吸引除去し、これを3回繰り返した。
(発色反応)
住友ベークライト社製ペルオキシダーゼ用発色キットの発色剤10mlと基質液0.1mlを用いて発色溶液を調整した。この発色溶液を前述の標識抗体吸着処理した96穴ウェルプレートに100μlずつ添加し、室温1時間静置した。次に各ウェルに住友ベークライト社製ペルオキシダーゼ用発色キットの停止液100μlを添加した。
(吸光度A測定)
各ウェルの450nmの吸光度(吸光度Aという)を測定した。これは、抗原抗体反応(特異吸着)によりウェルに吸着した抗体量を表す吸光度である。
[非特異吸着試験]
(ウェルプレートの固相抗体処理)
固相用CRP抗体ab8279(abcam社製)が25μg/mlの濃度になるようにPBS溶液で調整した。この固相用CRP抗体溶液をPSt製ELISA用96穴ウェルプレートに50μlずつ添加し、室温2時間静置した後、溶液を吸引し除去した。
(ブロッキング処理)
得られたブロッキング剤溶液を、前述の固相抗体処理した96穴ウェルプレートに50μlずつ添加し、室温2時間静置した後、溶液を吸引し除去した。
(標識抗体吸着処理)
HRP標識CRP抗体ab24462(abcam社製)が0.08μg/mlになるようにPBS溶液で調整した。このHRP標識CRP抗体溶液を、前述のブロッキング処理した96穴ウェルプレートに50μlずつ添加し、室温2時間静置した後、溶液を吸引し除去した。その後各ウェルにPBS溶液200μlずつ添加し吸引除去し、これを3回繰り返した。
(発色反応)
住友ベークライト社製ペルオキシダーゼ用発色キットの発色剤10mlと基質液0.1mlを用いて発色溶液を調整した。この発色溶液を前述の標識抗体吸着処理した96穴ウェルプレートに100μlずつ添加し、室温1時間静置した。次に各ウェルに住友ベークライト社製ペルオキシダーゼ用発色キットの停止液100μlを添加した。
(吸光度B測定)
各ウェルの450nmの吸光度(吸光度Bという)を測定した。これは、抗原がないため、標識抗体の非特異吸着によるウェルに吸着した抗体量を表す吸光度である。
[評価基準]
◎: 1.0≦(吸光度A−吸光度B) :良好
〇: 0.8≦(吸光度A−吸光度B)<1.0 :使用可能
△: 0.5≦(吸光度A−吸光度B)<0.8 :使用不可
×: (吸光度A−吸光度B)<0.5 :不良
Figure 2020038059
表2−2に示すように、本発明の生化学分析用ブロッキング剤を用いることで、CRP抗原抗体反応を利用した生化学分析を行うことができた。具体的には、本発明のアミンオキシド基含有ビニル系重合体(実施例2−1〜2−12)を使用した生化学分析用ブロッキング剤(実施例2−13〜2−24)は、CRP抗原抗体反応と非特異吸着反応の吸光度の差が大きく、CRP抗原抗体反応を高感度に検出できた。すなわち、これは本発明の生化学分析用ブロッキング剤に含まれるアミンオキシド基含有ビニル系重合体(A)が、アミンオキシド構造を有し且つ共重合体にチオール基由来の硫黄原子が導入されたため抗体との相互作用が適切に制御され、CRPの抗原抗体反応を阻害せず、CRP抗原抗体反応以外の非特異的な吸着反応を抑えることができたためであると考えられる。特に、3官能以上のチオール基含有化合物を連鎖移動剤として用いて、共重合体に分岐構造を導入した実施例2−13〜2−16、2−18〜2−24は、より良好な結果であった。
一方、チオール基含有化合物(x)を用いておらず、さらにアミンオキシド構造を有しないビニル系共重合体(比較例2−1〜2−2)を用いた生化学分析用ブロッキング剤(比較例2−3〜2−4)は、CRP抗原抗体反応と非特異吸着反応の吸光度の差が小さく、分析として十分な感度を得ることができなかった。これは、アミンオキシド構造とチオール基に由来する硫黄原子とを有しない場合は、CRPの抗原抗体反応以外の非特異的な吸着反応を抑えることができない、あるいは、CRPの抗原抗体反応自体を阻害したため、と推察される。
<<バイオフィルム形成抑制コート剤の実施例>>
<酸価の測定方法>
酸価は、樹脂1g中に含有する酸基は中和するのに必要とする水酸化カリウムのmmolで、測定方法は既知の方法でよく、一般的にはJISK0070に準じて行われる。その手法を以下に示した。試料を0.5〜2g精秤する(固形分量:Sg)。精秤した試料に中性エタノール10mLを加え溶解させる。得られた溶液を0.1mol/lエタノール性水酸化カリウム溶液(力価:F)で電位差滴定を行なう。電位差曲線が極大となった点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い次の(式2)により酸価を求めた。
(式2) 酸価(mmol/g)=(A×F×0.1)/S
<アミン価の測定方法>
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmmolである。アミン価の測定方法については、以下の方法により行った。試料を0.5〜2g精秤する(固形分量:Sg)。精秤した試料に中性エタノール10mLを加え溶解させる。得られた溶液を0.1mol/lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で電位差滴定を行なう。電位差曲線が極大となった点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い次の(式3)によりアミン価を求めた。
(式3) アミン価(mmol/g)=(A×f×0.1)/S
<アミンオキシド基含有ポリマーの合成>
(ポリマー溶液(P−1))
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、酢酸エチル100部を仕込み、内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した。別途用意しておいた、2,2’−アゾジイソブチロニトリルを0.3部、モノマー(A)としてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを20部、モノマー(B)としてアクリル酸を5部、モノマー(C)としてブチルアクリレートを75部混合したものを、内温を75℃に保ちながら3時間滴下を続け、さらに5時間撹拌を続けた。固形分測定によって転化率が98%超えたことを確認後、冷却して3級アミノ基を有するポリマーの溶液を得た。
次に、得られた3級アミノ基を有するポリマーの溶液に、オキシド化剤として30%過酸化水素水を14.4部(用いたN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートと等モル量)加え、70℃で16時間反応させることでアミノ基のオキシド化を行った。アミンオキシド変換率が99%を超えたことを確認後、冷却して取り出し、オーブンで溶媒を完全に揮発させた後、エタノールに溶解して、固形分50質量%のポリマー溶液(P−1)を得た。なお上記、アミンオキシド変換率は、特開平10−182589に開示される方法に従い判断した。
得られたポリマーのアミンオキシド基含有量は、加えたN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート量と前述の数式1から1.25mmol/gであった。また得られたポリマーの質量平均分子量をGPCにより測定したところ、60,000であった。
(ポリマー溶液(P−2〜18、20))
ポリマー溶液(P−1)と同様の方法で、表3−1の組成及び仕込み質量部に従って合成を行い、ポリマー溶液(P−2〜18、20)を得た。
(ポリマー溶液(P−19))
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、酢酸エチル100部を仕込み、内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した。別途用意しておいた、2,2’−アゾジイソブチロニトリルを0.3部、モノマー(B)としてアクリル酸を5部、モノマー(C)としてブチルアクリレートを95部混合したものを、内温を75℃に保ちながら3時間滴下を続け、さらに5時間撹拌を続けた。固形分測定によって転化率が98%超えたことを確認後、冷却して取り出し、酢酸エチルで希釈して、固形分50質量%のポリマー溶液(P−19)を得た。
(ポリマー溶液(P−21))
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、酢酸エチル100部を仕込み、内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した。別途用意しておいた、2,2’−アゾジイソブチロニトリルを0.3部、モノマー(A)としてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを20部、モノマー(B)としてアクリル酸を5部、モノマー(C)としてブチルアクリレートを95部混合したものを、内温を75℃に保ちながら3時間滴下を続け、さらに5時間撹拌を続けた。固形分測定によって転化率が98%超えたことを確認後、冷却して取り出し、エタノールで希釈して、固形分50質量%の3級アミノ基を有するポリマー溶液(P−21)を得た。
(ポリマー溶液(P−22))
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、酢酸エチル60部、イオン交換水40部を仕込み、内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した。別途用意しておいた、2,2’−アゾジイソブチロニトリルを0.3部、モノマー(B)としてアクリル酸を5部、モノマー(C)としてブチルアクリレートを75部、メタクロイルコリンクロリド20部混合したものを、内温を75℃に保ちながら3時間滴下を続け、さらに5時間撹拌を続けた。固形分測定によって転化率が98%超えたことを確認後、冷却して取り出し、エタノールで希釈して、固形分50質量%の4級アミノ基を有するポリマー溶液(P−22)を得た。
得られたポリマーについて、特性値を表3−1に示す。
Figure 2020038059
以下に、表3−1中の略称を示す。
DMAEMA:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
DEAEMA:N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート
DMAPAA:N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
VP:4−ビニルピリジン
VI:2−メチル−1−ビニルイミダゾール
AA:アクリル酸
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
OA:n−オクチルアリレート
MMA:メチルメタクリレート
TMAEMC:メタクロイルコリンクロリド
AIBN:2,2’−アゾジイソブチロニトリル
<バイオフィルム形成抑制コート剤の調整>
[実施例3−1]
(バイオフィルム形成抑制コート剤1)
得られたアミンオキシド基含有ポリマー溶液(P−1)4.0部と、架橋剤としてV−02(日清紡(株)製;カルボジライトV−02)2.0部とを混合し、エタノール16.0部で希釈し、10%塗液を調製し、バイオフィルム形成抑制コート剤1を得た。
[実施例3−2〜3−15、3−17〜3−26]
(バイオフィルム形成抑制コート剤2〜15、17〜26)
実施例1と同様にして、表3−2の組成及び仕込み質量部にてバイオフィルム形成抑制コート剤2〜15、17〜26を調整した。
[実施例3−16]
(バイオフィルム形成抑制コート剤16)
得られたアミンオキシド基含有ポリマー(P−12)4.0部をエタノール16部で希釈し、10%塗液を調製し、バイオフィルム形成抑制コート剤16を得た。
Figure 2020038059
以下に、表3−2中の略称を示す。
V−02:カルボジイミド基含有化合物(日清紡(株)製;カルボジライトV−02)
V−10:カルボジイミド基含有化合物(日清紡(株)製;カルボジライトV−10)
V−09:イソシアネート基含有化合物(日清紡(株)製;カルボジライトV−09)
MDI:イソシアネート含有化合物(2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート)
40E:エポキシ基含有化合物(共栄社化学(株)製;エポライト40E)
LV11:アミノ基含有化合物(三菱ケミカル(株)製;エポキシ樹脂硬化剤jERキュア)
EtOH:エタノール
EtOAc:酢酸エチル
<バイオフィルム形成抑制コート剤の評価>
実施例及び比較例で得られたバイオフィルム形成抑制コート剤(塗液)について、以下の評価を行った。結果を表3−3に示す。
[耐水性]
得られたコート剤を、精密秤量した浅型金属容器に2.0g添加し、150℃で10分加熱し乾燥させた。オーブンから取り出し、浅型金属容器ごと精密秤量した後、浅型金属容器にイオン交換水5.0gを加え一晩静置した。浅型金属容器からイオン交換水を吸引排出した後、再度150℃で10分乾燥し、浅型金属容器を精密秤量した。下記式で水への溶解度を算出し、耐水性を4段階の評価基準に基づいて評価した。
水への溶解度(%)=100−[(z−x)/(y−x)]×100
x:浅型金属容器の質量(g)
y:イオン交換水で処理する前の質量(g)
z:イオン交換水で処理した後の質量(g)
◎:水への溶解度≦2%:非常に良好
○:2%<水への溶解度≦4%:良好
△:4%<水への溶解度≦10%:使用可能
×:10%<水への溶解度:使用不可
<バイオフィルム形成抑制積層体の製造と評価>
得られたコート剤1−26を、各々75μm厚ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(パナック(株)製;ルミラー#75、表面オゾン処理済)上に、乾燥後膜厚が1.0μmになるようバーコーターで塗工し、80℃で2分乾燥した後、80℃で24時間加熱し、積層体1−26を得た。別途、黄色ブドウ球菌(ATCC 25923)を、37℃で24時間前培養し、増殖させた。菌液をリン酸緩衝水(PBW)に加えて、1%菌液を調製した。
得られた積層体を、1.5cm×1.5cmの大きさに切り取り、塗工面が上向きになるように24ウェルマイクロプレート(ファルコン社製)の各ウェルに1枚ずつセットし、滅菌水1.0mL加え、37℃で24時間浸漬した。
次いで、24ウェルマイクロプレートから、滅菌水1.0mLを除去し、別途調製した黄色ブドウ球菌液1.0mLを加え、25℃で24時間又は25℃で168時間、それぞれ培養した。24時間又は168時間培養後、菌液を除去し、塗膜を滅菌水1.2mLで3回洗浄し、0.1%クリスタルバイオレット水溶液(和光純薬工業株式会社製)を添加し、20分間静置してバイオフィルムを染色した。その後、滅菌水1.2mLで3回洗浄し、風乾して、バイオフィルムが染色された積層体を得た。
上記染色された積層体について、33%酢酸溶液2.0mLを用いてクリスタルバイオレットを抽出し、マイクロプレートリーダーを用いて、抽出液の吸光度を測定した。
バイオフィルム形成抑制性を、吸光度から以下の4段階の評価基準で評価した。結果を表3−3に示す。
◎:吸光度≦0.10:非常に良好
○:0.10<吸光度≦0.13:良好
△:0.13<吸光度≦0.20:使用可能
×:0.20<吸光度:使用不可
Figure 2020038059
表3−3から、比較例1で用いたポリマーは、アミンオキシド基を有していないため、培養24時間後、及び、168時間後のバイオフィルム形成抑制性が乏しかった。比較例3−2で用いたポリマーは、分子量が小さく、コーティングしたポリマーが剥がれ落ちたため、培養24時間後のバイオフィルム形成抑制性が乏しかった。比較例3−3で用いたポリマーは、3級アミノ基を有するがアミンオキシドを含有しないポリマーであるため、バイオフィルム形成抑制性を示さなかった。比較例3−4で用いたポリマーは、4級アミノ基を有するがアミンオキシドを含有しないポリマーであるため、バイオフィルム形成抑制性を示さなかった。
一方、アミンオキシド基を含み、かつ、質量平均分子量が2,000〜10,000,000であるポリマーを含むバイオフィルム形成抑制コート剤は、耐水性に優れ、かつ、長期的なバイオフィルム形成抑制性能で優れた効果を示すことが確認された。特に、ポリマー(a)中のアミンオキシド基含有量が、0.25〜5mmol/gであると、長時間水中に浸漬しても最適なバイオフィルム形成抑制能を維持することを確認した。中でも、0.5〜2mmol/gである場合に、非常に優れた長期的なバイオフィルム形成抑制能を発揮した。また、架橋性基を有するモノマー(B)としてカルボキシル基含有モノマーを用いた場合に、耐水性及び長期バイオフィルム形成抑制能に優れることが示された。
<<細胞培養器材処理剤の実施例>>
<質量平均分子量(Mw)の測定方法>
ポリマー(a)の質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用した。測定装置及び測定条件としては、下記条件1によることを基本とし、試料の溶解性等により条件2とした。ただし、重合体種によっては、さらに適宜適切なキャリア(溶離液)及びそれに適合したカラムを選定した。その他の事項については、JISK7252−1〜4:2008に基づいた。なお、難溶の高分子化合物については下記条件の下、溶解可能な濃度で測定した。
また、ポリマー(a)の分子量測定が困難な場合は、アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量をポリマー(a)の質量平均分子量とした。アミンオキシド前駆体ポリマーの質量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレン換算で計測した値を採用し、測定装置及び測定条件としては、下記条件3によった。
(条件1)
カラム:TOSOHTSKgelSuperHZM−H、
TOSOHTSKgelSuperHZ4000 及び
TOSOHTSKgelSuperHZ2000を連結したもの。
キャリア:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件2)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAWM−Hを2本連結したもの。
キャリア:10mMLiBr/N−メチルピロリドン
測定温度:40℃
キャリア流量:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI(屈折率)検出器
注入量:0.1mL
(条件3)
カラム:TOSOHTSKgelSuperAW4000、
TOSOHTSKgelSuperAW3000 及び
TOSOHTSKgelSuperAW2500を連結したもの。
キャリア:N,N−ジメチルホルムアミド(1L)、トリエチルアミン(3.04g)、LiBr(0.87g)の混合液
測定温度:40℃
キャリア流量:0.6mL/min
<アミンオキシド基含有ビニル系ポリマーの合成>
(ポリマー(P−1))
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、酢酸エチル100部を仕込み、内温を75℃に昇温し十分に窒素置換した。別途用意しておいた、2,2’−アゾジイソブチロニトリルを1.5部、3級アミノ基含有モノマー(A)としてN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートを50部、他のモノマー(C)としてブチルアクリレート45部を混合したもの、架橋性基含有モノマー(B)としてアクリル酸5部を混合したものを、内温を75℃に保ちながら3時間滴下を続け、さらに2時間撹拌を続けた。固形分測定によって転化率が98%超えたことを確認後、冷却して3級アミノ基を有するポリマーの溶液を得た。
次に、得られた3級アミノ基を有するポリマーの溶液に、オキシド化剤として35%過酸化水素水を30.9部(用いたN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートと等モル量)加え、70℃で16時間反応させることでアミノ基のオキシド化を行った。アミンオキシド変換率が98%を超えたことを確認後、冷却して取り出し、その後、ダイヤフラムポンプで溶媒を完全に揮発させ、アミンオキシド基含有ポリマー(P−1)を得た。
得られた(P−1)のアミンオキシド基含有量は、加えたN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート量と前述の数式1から3.0mmol/gであった。また、得られたポリマーの質量平均分子量をGPCにより測定したところ、131,300であった。
(ポリマー(P−2〜9、11))
ポリマー(P−1)と同様の方法で、表1の組成及び仕込み質量部に従って合成を行い、ポリマー(P−2〜9、11)を得た。
(ポリマー(P−10))
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、1−ブタノール98.0 部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、ブチルアク
リレート20部、スチレン50部、アクリル酸30部、及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)1部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、固形分測定によって転化率が98%超えたことを確認後、室温まで冷却し反応を停止した。その後、ダイヤフラムポンプで1−ブタノールを除去し、ポリマー(P−10)を得た。また、得られたポリマーの質量平均分子量は、133,000であった。
Figure 2020038059
表4−1中の略称を以下に示す。
DMAEMA:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
DEAEMA:N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート
DMAPAA:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
VP:2−ビニルピリジン
VI:1−ビニルイミダゾール
DCPA:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト
BA:ブチルアクリレート
St:スチレン
MEA:2−メトキシエチルアクリレート
AA:アクリル酸
HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
AIBN:2,2'-アゾジイソブチロニトリル
HPO:35%過酸化水素
<細胞培養器材処理剤の製造>
[実施例4−1]
(細胞培養器材処理剤(PC−1))
得られたポリマー(P−1)10.0部と、架橋剤としてカルボジイミド基含有化合物(日清紡ホールディングス(株)製;カルボジライトV−02)5.0部とをエタノールで希釈して10%溶液を調製し、細胞培養器材処理剤(PC−1)を得た。
[実施例4−2〜4−9、比較例4−1〜4−2]
(細胞培養器材処理剤(PC−2〜11))
表2の組成及び仕込み質量部に変更した以外は(PC−1)と同様にして、細胞培養器材処理剤(PC−2〜11)を調整した。
<細胞培養器材処理剤の評価>
得られた細胞培養器材処理剤(PC−1〜11)について、以下の評価を実施した。結果を表2に示す。
[評価項目1.<耐水性>]
細胞培養器材処理剤(PC−1〜11)を、精密秤量した浅型金属容器に2.0g添加し、150℃で10分加熱し乾燥させた。オーブンから取り出し、浅型金属容器ごと精密秤量した後、浅型金属容器にイオン交換水5.0gを加え一晩静置した。浅型金属容器からイオン交換水を吸引排出した後、再度150℃で10分乾燥し、浅型金属容器を精密秤量した。下記式で水への溶解度を算出し、耐水性を4段階の評価基準に基づいて評価した。耐水性が高いほど耐久性が良好である。
水への溶解度(%)=100−[(z−x)/(y−x)]×100
x:浅型金属容器の質量(g)
y:イオン交換水で処理する前の質量(g)
z:イオン交換水で処理した後の質量(g)
(評価基準)
◎:水への溶解度≦2%:非常に良好
○:2%<水への溶解度≦4%:良好
△:4%<水への溶解度≦10%:使用可能
×:10%<水への溶解度:使用不可
Figure 2020038059
表4−2中の略称を以下に示す。
V−02:カルボジイミド基含有化合物(日清紡ホールディングス(株)製;カルボジライトV−02)
V−10:カルボジイミド基含有化合物(日清紡ホールディングス(株)製;カルボジライトV−10)
MDI:イソシアネート含有化合物(2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート)
<細胞培養器材の製造と評価>
得られた細胞培養器材処理剤を用いて以下のとおり細胞培養器材を作製した。また得られた細胞培養器材について、以下の評価を行った。結果を表4−3〜4−5に示す。
[実施例4−10〜4−18、比較例4−3、4−4]
(細胞培養器材(D−1〜11))
U字底96ウェルプレートに、細胞培養器材処理剤(PC−1〜11)を各ウェルに約0.5mlずつ注入した。これを吸引排出した後、50℃ で3時間乾燥させることにより、ウェルプレート内部が細胞培養器材処理剤(PC−1〜11)で被覆された、細胞培養器材(D−1〜11)を作製した。
[評価項目2.<スフェロイド形成試験>]
細胞培養器材(D−1〜11)をエチレンオキサイドガス滅菌した後、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)にウシ胎児血清(FBS)を10%添加したものを培地とし、マウス線維芽細胞用細胞株(NIH/3T3細胞)を1ウェルあたり1×104個播種し、5%CO2/37℃のインキュベーターで5日目まで培養し、5日後の細胞培養状態を透過式光学顕微鏡40倍で写真撮影し、細胞の形態を観察することによって評価した。
(評価基準)
○:1つのスフェロイドを形成
△:複数個のスフェロイドを形成
×:スフェロイドを形成しない
Figure 2020038059
[実施例4−19〜4−27、比較例4−5、4−6]
(細胞培養器材(D−12〜22))
スライドガラス上に、細胞培養器材処理剤(PC−1〜11)を、膜厚1.0μmになるようにスピンコートし、90℃2分加熱処理して、ガラス上に細胞培養器材処理剤(PC−1〜11)で被覆された、細胞培養器材(D−12〜22)を得た。
[評価項目3.<水との接触角>]
得られた細胞培養器材(D−12〜22)の細胞培養器材処理剤塗工面について、水との接触角を、JISK 6788(ISO8296)に基づいて測定した。
[評価項目4.<抗体蛋白質吸着性>]
U字の24ウェルプレートに、細胞培養器材(D−1〜11)を11mm角にカットして入れ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で10000倍希釈したHPR-IgG溶液1
mlを添加して浸漬させた。室温で1時間インキュベートした後、PBS-T(0.1%
Tween20)を用いて各ウェルを4回洗浄した。染色液を各ウェルに1mlずつ分注し、室温で10分間インキュベートした後、反応停止液を各ウェルに1mlずつ分注後、450nm(副波長650nm)の吸光度Aλを、MITHRAS2 LD943−M2Mマイクロプレートリーダーを用いて測定した。吸光度Aλが小さいほど抗体蛋白質吸着性が低く良好である。以下の基準で評価した。
染色液:TMBZ溶液(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)
反応停止液:タカラバイオ社製 WASH and Stop Solution For ELISA With Solution for ELISA without Sulfuric Acid
HPR-IgG:酵素、抗体(HORSERADIH PEROXIDASE IMMU
NOGLOBULING)
PBS-T:PBSに0.1% Tween20を添加したもの
(評価基準)
◎:Aλ≦0.2(極めて良好)
○:0.2<Aλ≦0.6(良好)
△:0.6<Aλ≦0.8(使用可能)
×:0.8<Aλ(不良)
Figure 2020038059
[実施例4−28〜4−36、比較例4−7、4−8]
(細胞培養器材(D−23〜33))
幅200μm、高さ50μmの流路を有するPDMS(ポリジメチルシロキサン)製標準チップ(フルイドウェアテクノロジーズ社製)流路に、細胞培養器材処理剤(PC−1〜11)を流し込み、50℃加熱した状態で4時間精置した後、純水で3回、PBS(林純薬工業株式会社製;リン酸緩衝生理食塩水)で1回洗浄し、未吸着成分を除去して、細胞培養器材(D−23〜33)を得た。
[評価項目5.<血液送液試験>]
得られた細胞培養器材(D−23〜33)において、血液検体を一定圧力下、2μL/minの入口スピードで12分間送液し、送液直後から1分後の1分間に流路出口から流出した血液検体量と、送液開始5分後から6分後の1分間に流路出口から流出した血液検体量と、送液開始10分後から11分後の1分間に流路出口から流出した血液検体量と、をそれぞれ測定した。流出した血液検体量が多く、経時で減少せず一定であるほど良好である。
Figure 2020038059
表4−2〜4−5に示すように、本発明の細胞培養器材処理剤は耐水性が高く、該処理剤を用いた細胞培養器材は、抗体蛋白質吸着性が抑えられており、優れた血液送液性を示した。特に、ビニル系ポリマーが架橋性基を有し且つ架橋剤を含む場合に、耐水性に優れていた。一方、数平均分子量が2,000未満のポリマー(a)を用いた場合は耐水性が大きく劣る結果となった。また、特にアミンオキシド基含有量が0.5〜5mmol/gであると、蛋白質吸着抑制及び血液送液性に優れていた。
このように、本発明の細胞培養器材処理剤が耐水性に優れ、該処理剤を用いてなる細胞培養器材は、スフェロイド形成性が高く且つ優れた蛋白質、細胞接着防止効果を発揮し、血液送液性にも優れているため、メディカルデバイスとして有用であることが示された。
<<細胞培養培地添加剤の実施例>>
<細胞培養培地添加剤の製造>
[実施例5−1]
(細胞培養培地添加剤1)
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒として酢酸エチル150質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてジメチルアミノプロピルアクリルアミドを80質量部、ブチルアクリレートを20質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.5質量部、溶媒として酢酸エチルを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後6時間加熱を継続した。その後、室温に冷却し反応を停止した。
次に、エタノール150部とオキシド化剤として35%過酸化水素水を50部(用いたジメチルアミノプロピルアクリルアミドと等モル量)加え、70℃で16時間反応させることで3級アミノ基のオキシド化を行った。その後、ダイヤフラムポンプで溶剤を除去し、アミンオキシド基を有するビニル系ポリマー(A−1)を得た。
得られたビニル系ポリマー(A−1)のアミンオキシド基含有量は、加えたジメチルアミノプロピルアクリルアミド量と上述の数式1から4.73mmol/gであった。
次に、25℃のリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSという)99g中に、得られたビニル系ポリマー(A−1)を1g入れて撹拌して溶解させた後、25℃で24時間放置して、PBSで1質量%に希釈された細胞培養培地添加剤1を得た。
その結果、ビニル系ポリマー(A−1)の分離、析出ともに見られず、完全に溶解可能であり、PBSに対して可溶であることが示された。
[実施例5−2〜5−12、比較例5−1、5−2]
(細胞培養培地添加剤2〜14)
表5−1に示す組成に変更した以外は、細胞培養培地添加剤1と同様にして、アミンオキシド基を有するビニル系ポリマー(A−2〜12)及び、アミンオキシド基を有しないビニル系ポリマー(A−13、14)を得た後、PBSに溶解させて、PBSで1質量%に希釈された細胞培養培地添加剤2〜14を得た。
なお、アミンオキシド基を有しないビニル系ポリマー(A−13、14)は、オキシド化剤を反応させずに溶剤を除去した後、PBSで1質量%に希釈したところ、完全に溶解
せず、PBSに対して不溶であることが示されたが、上澄み部分を評価に用いた。
Figure 2020038059
表5−1中の略称を以下に示す。
DMAPAA: ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
DEAEMA: ジエチルアミノエチルメタクリレート
VP:ビニルピリジン
VI:ビニルイミダゾール
BA:ブチルメタクリレート
2EHA: 2−エチルヘキシルアクリレート
ISTA:イソステアリルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
AA:アクリル酸
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
<細胞培養培地添加剤の評価>
得られた細胞培養培地添加剤について、以下の評価を実施した。結果を表5−2に示す。
[細胞凝集塊の形成性]
培地にはダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)にウシ胎児血清(FBS)を10%添加したものを使用した(以下、「10%FBS−DMEM培地」とも呼ぶ。)。10%FBS−DMEM培地にマウス線維芽細胞用細胞株(NIH/3T3細胞)を加え、NIH/3T3の濃度が100,000cells/mlとなる細胞懸濁液を作製した。得られた細胞懸濁液100μLを、滅菌されたポリスチレン製のU底96ウェルプレートの各ウェルに播種した。さらに、得られた細胞培養培地添加剤を、ビニル系ポリマー(A)の濃度が0.05質量%及び0.5質量%になるようにそれぞれ添加し、ピペッティングした。その後、5%CO2/37℃のインキュベーターで5日目まで培養した。細胞凝集塊の形成性は、5日目の細胞培養状態を透過式光学顕微鏡40倍で写真撮影し、細胞の形態を目視観察することによって評価した。
a:1つのスフェロイドを形成 :良好
b:複数個のスフェロイドを形成 :使用不可
c:スフェロイドを形成しない :不良
[細胞のATPアッセイ]
上記5日目まで培養した細胞のATP(アデノシン−5’−三リン酸)アッセイを行い、生細胞の割合を評価した。具体的には、培養後のウェルに100μlのATP試薬(『塊』のATP測定試薬:東洋ビーネット社製)を添加、5回ピペッティングし、5分間室温で静置した後、100mlの試薬・細胞溶解液を別プレートに分取し1分間撹拌した。これをMithrasLB940(Berthold社製)を用いて発光量を測定した。
生細胞の割合=(培養5日後の発光量)/(細胞培養培地添加剤を加えずに5日間培養した際の発光量)×100
a:50%以上 :良好
b:20%以上50%未満 :使用可能
c:20%未満 :不良
Figure 2020038059
表5−2に示すように、本発明の細胞培養培地添加剤を用いることで1つのスフェロイドを形成し、細胞凝集塊の形成性が良好であることが示された。また、ATPアッセイの結果、細胞死は起こっておらず、使用可能水準の生細胞数であることが示された。これは本発明の細胞培養培地添加剤に含まれるビニル系ポリマー(A)がタンパク質と適切に吸着することで、細胞同士の接着が優先され、細胞と基材との接着性が阻害されたためであると考えられる。それに対して、アミンオキシド基を有しないビニル系ポリマーを使用した比較例5−1〜5−2は、細胞凝集塊が形成されなかった。また、ATPアッセイの結果、生細胞の割合が大きく減っていた。これは、アミンオキシド基を有していないことにより、細胞の周囲の環境を適切に制御できなかったためであると考えられる。
<抗体産生細胞培養培地添加剤の製造>
[実施例6−1]
(細胞培養培地添加剤1)
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒として酢酸エチル150質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてジメチルアミノプロピルアクリルアミドを80質量部、ブチルアクリレートを20質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.5質量部、溶媒として酢酸エチルを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後6時間加熱を継続した。その後、室温に冷却し反応を停止した。
次に、エタノール150部とオキシド化剤として35%過酸化水素水を50部(用いたジメチルアミノプロピルアクリルアミドと等モル量)加え、70℃で16時間反応させることで3級アミノ基のオキシド化を行った。その後、ダイヤフラムポンプで溶剤を除去し、アミンオキシド基を有するビニル系ポリマー(A−1)を得た。
得られたビニル系ポリマー(A−1)のアミンオキシド基含有量は、加えたジメチルアミノプロピルアクリルアミド量と上述の数式1から4.73mmol/gであった。
次に、25℃のリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSという)99g中に、得られたビニル系ポリマー(A−1)を1g入れて撹拌して溶解させた後、25℃で24時間放置して、PBSで1質量%に希釈された細胞培養培地添加剤1を得た。
その結果、ビニル系ポリマー(A−1)の分離、析出ともに見られず、完全に溶解可能であり、PBSに対して可溶であることが示された。
[実施例6−2〜6−12、比較例6−1、6−2]
(細胞培養培地添加剤2〜14)
表6−1に示す組成に変更した以外は、細胞培養培地添加剤1(実施例6−1)と同様にして、アミンオキシド基を有するビニル系ポリマー(A−2〜12)及び、アミンオキシド基を有しないビニル系ポリマー(A−13、14)を得た後、PBSに溶解させて、PBSで1質量%に希釈された細胞培養培地添加剤2〜14を得た。
なお、アミンオキシド基を有しないビニル系ポリマー(A−13、14)は、オキシド化剤を反応させずに溶剤を除去した後、PBSで1質量%に希釈したところ、完全に溶解せず、PBSに対して不溶であることが示されたが、上澄み部分を評価に用いた。
Figure 2020038059
表6−1中の略称を以下に示す。
DMAPAA: ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
DEAEMA: ジエチルアミノエチルメタクリレート
VP:ビニルピリジン
VI:ビニルイミダゾール
BA:ブチルメタクリレート
2EHA: 2−エチルヘキシルアクリレート
ISTA:イソステアリルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
AA:アクリル酸
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
<抗体産生細胞培養培地添加剤の評価>
得られた細胞培養培地添加剤について、以下の評価を実施した。結果を表6−2に示す。
[抗体産生細胞凝集物の発生抑制性]
培地はDynamis Medium(Gibco製)を用い、L−Glutaminを1質量%になるように添加した。以後、これを基礎培地と呼ぶ。これを2セット用意し、得られた抗体産生細胞培養培地添加剤をビニル系ポリマー(A)の濃度が0.05質量%又は0.5質量%になるようにそれぞれ添加した。ビニル系ポリマー(A)の濃度が異なる2種の培地にそれぞれIgG遺伝子を導入しIgG抗体を分泌産生するCHO細胞株(ATCC製CRL−12455)を加え、CHO細胞株の濃度が1,000,000cells/mlとなる細胞懸濁液を作製した。得られた細胞懸濁液20mLを、125mLの三角フラスコに播種し、37℃にて培養した。なお、培養中、栄養源が枯渇する前に3〜4日に一度、上澄み液15mLを回収し、新たな基礎培地15mLと交換し、これを5回繰り返した。
抗体産生細胞凝集物の発生抑制性は、培地交換を5回繰り返した後の三角フラスコの液面付近を目視観察することによって評価した。
a:凝集物が三角フラスコの液面付近に発生していない :良好
b:凝集物が三角フラスコの液面付近に僅かに発生している :使用可
c:凝集物が三角フラスコの液面付近に一様に発生している :使用不可
[抗体生産性]
抗体産生細胞凝集物の発生抑制性評価と同様にして細胞培養を行い、培地交換を5回繰り返した後の三角フラスコの上澄み液中の抗体量を、Bethyl Laboratories,Inc製のHuman IgG ELISA Quantitation Setを用いて測定した。抗体産生細胞培養培地添加剤を加えないで培養した場合の成績を1とした場合の相対値で判定した。
a:1.2以上 :良好
b:1以上〜1.2未満 :使用可
c:1未満 :使用不可
Figure 2020038059
表6−2に示すように、アミンオキシド基を有し、かつ、質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマー(A)を含む、本発明の抗体産生細胞培養培地添加剤を培地に添加することで、優れた抗体生産性を示した。また、培養中の抗体産生細胞凝集物の発生が抑制され、抗体の精製が容易となることが示された。これは、ビニル系ポリマー(A)の極性が制御され、抗体産生細胞の周囲の環境を適切に制御したため抗体産生細胞の増殖性、生存性及び抗体生産性の面で有効に働いたためであると考えられる。
それに対して、アミンオキシド基を有しないビニル系ポリマーを使用した比較例6−1、6−2は、抗体産生細胞凝集物が三角フラスコ壁に付着した。また、抗体生産性を測定した結果、抗体量の割合が大きく減少していた。これは、アミンオキシド基を有していないことにより、細胞の周囲の環境を適切に制御できなかったためであると考えられる。
<<タンパク質安定化剤の実施例>>
<ビニル系ポリマー(A)の調製>
[製造例1]
(ビニル系ポリマー(A−1))
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器、滴下管を備えた反応容器に、窒素気流下、有機溶媒として酢酸エチル150質量部を仕込み、撹拌下80℃で30分加熱した。滴下管にモノマーとしてジメチルアミノプロピルアクリルアミドを80質量部、ブチルアクリレートを20質量部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.5質量部、溶媒として酢酸エチルを10質量部仕込み、2時間かけて滴下した。滴下終了後6時間加熱を継続した。その後、室温に冷却し反応を停止した。
次に、エタノール150部とオキシド化剤として35%過酸化水素水を50部(用いたジメチルアミノプロピルアクリルアミドと等モル量)加え、70℃で16時間反応させることで3級アミノ基のオキシド化を行った。その後、ダイヤフラムポンプで溶剤を除去し、アミンオキシド基を有するビニル系ポリマー(A−1)を得た。
得られたビニル系ポリマーのアミンオキシド基含有量は、加えたジメチルアミノプロピルアクリルアミド量と上述の数式1から4.73mmol/gであった。
なお、25℃のイオン交換水中99g中に、得られたビニル系ポリマー(A−1)を1g入れて撹拌し溶解後、25℃で24時間放置した。その結果これらの樹脂は分離、析出ともに見られず、完全に溶解可能であり、水溶性であることが示された。
[製造例2〜14]
(ビニル系ポリマー(A−2〜14))
表7−1に示す組成に変更した以外は、製造例1と同様にして、アミンオキシド基を有するビニル系ポリマー(A−2〜12)及びアミンオキシド基を有しないビニル系ポリマー(A−13、14)を得た。なお、ビニル系ポリマー(A−13、14)は、オキシド化剤を反応させずに溶剤を除去したものである。
Figure 2020038059
表7−1中の略称を以下に示す。
DMAPAA: ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
DEAEMA: ジエチルアミノエチルメタクリレート
VP:ビニルピリジン
VI:ビニルイミダゾール
BA:ブチルメタクリレート
2EHA: 2−エチルヘキシルアクリレート
ISTA:イソステアリルアクリレート
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
AA:アクリル酸
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
<タンパク質安定化剤水溶液の調製>
[実施例7−1]
(タンパク質安定化剤水溶液(AS−1))
得られたビニル系ポリマー(A−1)を、リン酸緩衝生理食塩水(以下PBS溶液)に溶かし、固形分濃度0.1質量%のタンパク質安定化剤水溶液(AS−1)を得た。
[実施例7−2〜7−12、比較例7−1〜7−2]
(タンパク質安定化剤水溶液(AS−2〜14))
ビニル系ポリマー(A−1)を、表7−2に示すビニル系ポリマーに変更した以外は、実施例7−1と同様にして、それぞれタンパク質安定化剤水溶液(AS−2〜14)を得た。
[比較例7−3]
(タンパク質安定化剤水溶液(AS−15))
35%N,N-ジメチルドデシルアミンN−オキシド溶液(富士フィルムワコーケミカ
ル製)をPBS溶液で希釈し、固形分濃度0.1質量%のタンパク質安定化剤水溶液(AS−15)を得た。N,N-ジメチルドデシルアミンN−オキシドはアミンオキシド基含
有低分子化合物(分子量229.46)である。
<タンパク質安定化剤の評価>
得られたタンパク質安定化剤について以下の評価を実施した。結果を表7−2に示す。
[評価用酵素水溶液の調整]
HRP標識CRP抗体(abcam社製)を8.0ng/mlとなるように、得られたタンパク質安定化剤水溶液1mlで希釈・混合し、評価用の酵素水溶液を作成した。評価用酵素水溶液は濃度変化がないよう、よく密閉し25℃暗所で保管した。
[酵素活性評価]
ペルオキシダーゼ用発色キット(住友ベークライト製)を用い、発色剤(3,3‘,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMBZ)溶液)を10mlと基質液(過酸化水素水)100μlを混合し発色液を得た。
この発色液100μlと、評価用酵素水溶液100μlとを96穴ウェルプレートに加え、30℃暗所で20分間静置した。これに停止液(硫酸水溶液)を100μl加え反応を停止させた。450nmでの吸光度をプレートリーダーMultimode Reader Mithras2 LB943(BERTHOLD TECHNOLOGIES社製)で測定し、反応により生じたTMBZ酸化物の量を定量した。TMBZの酸化反応はHRP標識CRP抗体の活性と相関するため、得られた吸光度を酵素活性の指標として使用することができる。
[タンパク質安定化効果の評価]
上記酵素活性評価を、評価用酵素水溶液の保管前と25℃30日間保管後の2回行い、吸光度を測定した。保管前の吸光度を100%としたときの、保管後の吸光度の比率を計算して相対吸光度とし、下記基準にてタンパク質の変性を評価した。
30日保管後の相対吸光度
◎:95%以上(極めて良好)
○:90%以上、95%未満(良好)
△:80%以上、90%未満(使用可能)
×:80%未満(使用不可)
Figure 2020038059
表7−2に示すように、本発明のアミンオキシド基を有するビニル系ポリマーを含むタンパク質安定化剤を用いることで、高いタンパク質安定化効果が得られた。
一方、アミンオキシド基を有しないビニル系ポリマーを使用した比較例7−1〜7−2及びアミンオキシド基を有するが質量平均分子量が2,000未満である低分子化合物を用いた比較例7−3は、タンパク質と共存させ保管しても十分な安定化効果が得られないことが分かった。これはアミンオキシド基を有していない、又はアミンオキシド基を有していても低分子量であることにより、タンパク質の外部環境を適切に制御できなかったためであると考えられる。

Claims (26)

  1. アミンオキシド基を有し、かつ質量平均分子量が2,000以上であるビニル系ポリマー(A)を含む、蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  2. ビニル系ポリマー(A)が、下記一般式1〜3で示される少なくともいずれかの構造を有する、請求項1に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
    Figure 2020038059
    Figure 2020038059
    Figure 2020038059
    [一般式1〜3中、
    Xは2価の結合基、
    yは0又は1、
    1は炭素数1〜6のアルキレン基、
    2及びR3はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、
    4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、
    5〜R9のうち4つはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5〜R9のうちの1つはビニル系ポリマー(A)の主鎖との結合位置を表し、
    *はビニル系ポリマー(A)の主鎖との結合位置を表す。]
  3. 前記ビニル系ポリマー(A)が、エチレン性不飽和基を有するモノマーを重合してなるポリマーと酸化剤との反応生成物であり、
    前記エチレン性不飽和基を有するモノマーが、1分子中に1つのエチレン性不飽和基と3級アミノ基とを有するモノマー(a)を必須成分として含む、請求項1又は2に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  4. 前記エチレン性不飽和基を有するモノマーが、少なくとも、3級アミノ基を有するモノマー(a)と、炭素数4〜18のアルキル基を有するモノマー(c)とを含む、請求項3に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  5. 前記接着抑制剤中のビニル系ポリマー(A)が、アミンオキシド基を1〜10mmol/g有するビニル系ポリマー(A)であり、生化学分析用ブロッキング剤に用いられる、請求項1〜4いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  6. 前記ビニル系ポリマー(A)が、チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなる共重合体である、請求項5に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  7. 基材表面に固定した病理組織に、請求項5又は6に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤を接触させた後、前記病理組織中の抗原に、染色用抗体を吸着させ、前記抗原を検出する免疫染色方法。
  8. チオール基含有化合物(x)とビニル系モノマーとからなるアミンオキシド基含有ビニル系ポリマー(A’)であって、該アミンオキシド基含有ビニル系ポリマー(A’)が、下記一般式1〜3で表される少なくともいずれかのアミンオキシド構造を含む、アミンオキシド基含有ビニル系ポリマー(A’)。
    Figure 2020038059
    Figure 2020038059
    Figure 2020038059
    [一般式1〜3中、
    Xは2価の結合基、
    yは0又は1、
    1は炭素数1〜6のアルキレン基、
    2及びR3はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、
    4は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、
    5〜R9のうち4つはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R5〜R9のうちの1つはビニル系ポリマー(A’)の主鎖との結合位置を表し、
    *はビニル系ポリマー(A’)の主鎖との結合位置を表す。]
  9. 前記接着抑制剤が、質量平均分子量が2,000〜10,000,000であるビニル系ポリマー(A)を含み、バイオフィルム形成抑制コート剤に用いられる、請求項1〜4いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  10. 前記ビニル系ポリマー(A)が、アミンオキシド基を0.25〜5mmol/g含む、請求項9に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  11. 基材上に、請求項9又は10に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤からなる塗膜を有する、バイオフィルム形成抑制積層体。
  12. 細胞培養器材処理剤に用いられる、請求項1〜4いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  13. 前記ビニル系ポリマー(A)が、アミンオキシド基を0.25〜5mmol/g含む、請求項12に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  14. 前記ビニル系ポリマー(A)が、カルボキシル基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋性基を有する、請求項12又は13に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  15. さらに架橋剤を含む請求項14に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  16. 基材上に、請求項12〜15いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤を含む細胞接着防止膜を有する細胞培養器材。
  17. 請求項16に記載の細胞培養器材を具備する、メディカルデバイス。
  18. タンパク質安定化剤に用いられる、請求項1〜4いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  19. 前記ビニル系ポリマー(A)が、アミンオキシド基を1〜10mmol/g含む、請求項18に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  20. 請求項18又は19に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤と、タンパク質とを共存させることを特徴とする、タンパク質の安定化方法。
  21. 細胞培養培地添加剤に用いられる、請求項1〜4いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  22. 抗体産生細胞培養培地添加剤に用いられる、請求項1〜4いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  23. 前記ビニル系ポリマー(A)が、アミンオキシド基を1〜10mmol/g含む、請求項21又は22に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤。
  24. 請求項21〜23いずれか1項に記載の蛋白質、細胞又は微生物の接着抑制剤を含む、細胞培養培地。
  25. 前記細胞培養培地における前記ビニル系ポリマー(A)の濃度が0.01質量%以上1質量%以下である、請求項24に記載の細胞培養培地。
  26. 請求項24又は25に記載の細胞培養培地で細胞を培養して細胞凝集塊を形成する、細胞凝集塊の製造方法。
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