JP2007049918A - 細胞培養支持体及びその細胞培養法、細胞回収法と細胞 - Google Patents

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Abstract

【課題】
容易に培養細胞を剥離回収でき,細胞培養時や細胞の剥離・回収時や剥離・回収後に生体や細胞に対する安全性が高く,しかも細胞機能を高く維持できる細胞培養支持体を得て,目的の培養細胞を得る。
【解決手段】
ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体を細胞培養基材上に直接共有結合で、あるいは細胞付着性物質で覆われた細胞培養基材上に共有結合で表面固定化された細胞培養支持体及びこの細胞培養支持体上にて細胞を培養することを特徴とする細胞培養法とこれにより得られた細胞を,温度変化や物理的振動操作によって,剥離回収できることを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、生化学、医学及び免疫学等における細胞類の培養用支持体に関するものである。本発明は又、そのような細胞培養支持体上で細胞を培養する細胞培養法と細胞回収法、およびそれより得られる細胞に関するものである。
従来、付着性細胞の培養は、ガラスや合成高分子のような基盤支持体、あるいはそれらを種々の表面処理したものを細胞支持体として、その表面に付着させて行なわれていた。例えば、ポリスチレンを支持体の基盤材料とした場合には電子線あるいはγ線照射、シリコンコーティング等の処理を基盤材料表面に施した種々の容器が細胞培養用容器として普及している。従来、このような細胞培養用容器を用いて培養・増殖した細胞は、トリプシンのような蛋白分解酵素や化学薬品(例えばEDTA(N,N,N,N-テトラエチレンアセティックアシッドのような金属キレート剤)により処理することで細胞支持体表面から剥離・回収されていた。しかしながら、上述のような蛋白質分解酵素や化学薬品処理を施して増殖した細胞を回収する場合、(a) 蛋白質分解酵素や金属キレート剤の作用の阻害物質の含まれる培地を処理前に除いたり、処理後に長期的にさらした場合に細胞毒性のある蛋白質分解酵素や金属キレート剤を遠心や吸引操作で除くなど、処理工程が煩雑になり、しかもこれらの剥離剤・回収剤の不純物混入の可能性が多くなること、(b) 増殖した細胞が剥離・回収処理により変性し細胞本来の機能が損なわれる例があること、等の欠点が指摘されている。
また、種々の目的により、生体内の細胞を生体外で培養しようとする試みが活発に行なわれている。その中で特に、生体外でも生体内と同様に立体的に細胞を培養し、皮膚や肝細胞などの組織様構造を持った細胞を得ようとする試みは、生体外で細胞本来の機能を維持させようとする点、また、各種ハイブリッド型人工臓器、バイオシミュレーター、安全性評価用細胞等の開発の点から、最近注目されている研究である。この組織様構造を持った細胞を得る方法としては、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等の細胞付着物質をスポンジ状に成型し、細胞を三次元に培養する方法、また、プロテオグリカン等の細胞非付着性物質上で培養する方法、さらに対象とする細胞を肝細胞とした場合、ポリ−N−p−ビニルベンジル−D−ラクトンアミド(PVLA)上で培養する方法等が開発されており、また、これらの方法で得られた細胞自身の生化学的機能も高いことが確認されている。
しかしながら、いずれの方法による培養細胞においても、細胞培養支持体から剥離させ更に高次の検討に供するためには、トリプシンのような蛋白質分解酵素や化学薬品あるいはそれらを混和した細胞剥離剤を用いなければならず、剥離・回収後の細胞が、変性し細胞本来の機能が損なわれるという問題や、細胞剥離の際に添加した細胞剥離剤や、細胞剥離剤によって剥離された人工支持体物質等が剥離後の細胞に混入し、細胞毒性等の臨床的な安全性の問題があった。
一方、岡野らは、トリプシンのようなたんぱく分解酵素や金属キレート剤のEDTA等による処理を施さずに環境温度を変化させるだけで、培養・増殖させた細胞を、支持体表面から剥離・回収することが可能な材料として、水に対する上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度を示すポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを始めとするポリマーもしくはコポリマーを用いた細胞培養支持体材料(特公平06104061号公報、特開平5−38278号公報)並びにそれを用いた細胞培養法を報告している(特開平5−244938号公報)。水に対する上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度を示すポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを始めとするポリマーもしくはコポリマーを支持体にして細胞を培養後,低温処理することで上皮細胞をシート状に回収することが可能になった。なお、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドを細胞培養支持体として用いる方法はRatnerらによって既に1975年に報告されている(Ratner, et al., J. Biomed. Mater. Res., 9(5), 407-422.(1975)) 。
特公平06104061号公報、特開平5−38278号公報,特開平5−244938号公報で用いられているポリマーは、水に対する臨界溶解温度(T)が0〜80℃の範囲を示しており、さらに化学構造式中に窒素を含有している。そのようなポリマーの例として特公平6−104061号公報並びに特開平5−244938号公報では以下のようなポリマーが提示されている。すなわち、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35℃)、及びポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=32℃)、等が挙げられる。その他のポリマーとしては、ポリ−N−エチルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタクリルアミド、ポリ−N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N−アクリロイルピペリジンと記載されている。
これらのポリマーはポリアミド系であり、ポリマー中に窒素原子を含んでいる。これらのポリマーの基であるモノマーはビニルアミド系であり、細胞毒性のあることが知られている。したがって、これらのポリマーによっで作成された細胞培養支持体では、ポリマー作成時に微量混入した細胞毒性のあるビニルモノマーの残留する可能性がある。細胞培養支持体としては,生体内で示す細胞の機能発現を損なうことなく、しかも細胞毒性物質による細胞の性質の変化を起すことがない細胞機能研究上も臨床医学上も安全なものが望まれている。
上記の観点から、樋口らはモノマーによる細胞毒性問題のない、医学的に安全なポリマーを細胞培養支持体材料にして細胞培養法と細胞回収法を検討した(A. Higuchi et al.、 Biomacromolecules、 5、 1770-1774 (2004))。 この報告では、酸素、水素原子のみから構成されるポリマーの例として、プルロニックF127単体の細胞培養支持体を用いた細胞培養法が提示されている。この細胞培養支持体上の細胞は、EDTA並びにトリプシン等化学薬品処理を行わなくても、プルロニック細胞培養基板上より温度を変化させるだけで、細胞を剥離させることが可能であることが記載されている。本発明で用いられるプルロニックF127を始めとするエチレンオキシドとプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体は、ある所定の水溶液中濃度において、低温では、ポリマー鎖は、十分に水和されて、水溶液中に溶解しているが、高温になると一部脱水和されて、ミセル、液晶、会合体等の凝集体を形成する。なお、市販のポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体であるプルロニックF127(分子量13388)は比較的高分子量であるために、15重量%以上の高濃度水溶液では、30℃未満の低温度では、均一な水溶液であるが、37℃前後の高温度にすると相転移は起こさないが、均一なゲルを形成してくる。これは、下限臨界温度のような相分離ではないことが文献(G. Wanka, Macromolecule, 27, 4145 (1994))に記載されている、温度と濃度に依存した相転移によるものである。
すなわち、文献(G. Wanka, Macromolecule, 27, 4145 (1994))によれば、特公平6−104061号公報並びに特開平5−244938号公報に記載されているポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(T=32℃)水溶液で観察されるような下限臨界温度を、本発明で用いられるプルロニックF127を始めとするエチレンオキシドとプロピレンオキシドよりなるブロック共重合体の水溶液は、高温でも高水溶性のために示さない。ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドよりなるブロック共重合体の水溶液は、温度、濃度変化により相転移を引き起こすが、これらは、下限臨界温度のような相分離ではない。この相転移現象は文献(G. Wanka, Macromolecule, 27, 4145 (1994))に詳細に記載されている。ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAM)水溶液は、低温から下限臨界温度以上にすると、白濁して、固体が析出してくる(図1)。一方、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドよりなるブロック共重合体,例えばプルロニックF68,F88,F108,F127)の水溶液は、相転移温度以下より、温度を昇温させても、均一で透明である (図1)。しかしながら、液晶相を取るために、ゲル化あるいはガラス化しているのみであり、固体の沈澱は観察されずに、下限臨界温度のような相分離は、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドよりなるブロック共重合体の水溶液に対しては観察されない。G. Wanka Macromolecule, 27, 4145 (1994))によれば下限臨界温度とは定義されていない。
すなわち、本発明で用いられるプルロニックF127を始めとするエチレンオキシドとプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体は、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドで示されるような下限および上限臨界温度を示すポリマーの範疇に分類されないし、水中での分子挙動のメカニズムも異なっている。
プルロニック主鎖中には、親水性であるエーテル結合を繰り返し単位当たり1ユニット必ず含むために、通常の下限臨界溶解温度を有するポリ−N−イソプロピルアクリルアミド等に比べて著しく親水性である。従って、プルロニックゲルを基材表面煮塗布しただけの細胞培養用基材では、培地中にプルロニック分子が溶解してくるために、3日以上の細胞培養を行うことは不可能であった。
特公平06104061号公報
特開平5−38278号公報
特開平5−244938号公報
Ratner, B. D.et al., Cell adhesion to polymeric materials: Implications with respect to biocompatibility. Biomed. Mater. Res., 1975年発行,9巻,5号,407-422ページ A. Higuchi et al., Photon-modulated changes of cell attachments on poly(spiropyran-co-methyl methacrylate) membranes. Biomacromolecules, 2004年9月発行 5巻,5号, 1770-1774ページ G Wanka, Phase Diagrams and Aggregation Behavior of Poly(oxyethlene)-Poly(oxypropylene)- Poly(oxyethylene) Triblock Coolymers in Aquieous Solutions. Macromolecule 1994年7月18日発行 27巻,15号,4145ページ E.P. Orringer et al., Purified poloxamer 188 for treatment of acute waso-occlusive orisis of sickle cell disease: A randomized controlled trial. JAMA, The Journal of the American Medical Association, アメリカ合衆国,2001年11月7日発行 286巻,17号, 2099-2106ページ M. Morishita et al., Pluronic F-127 gels incorporating highly purified unsaturated fatty acids for buccal delivery of insulin. Int. J. Pharm., 2001年1月16日発行 212巻,2号, 289-293ページ
生化学,細胞生物学,医療、医薬関連産業の分野において,容易に培養細胞を剥離回収でき,細胞培養時や細胞の剥離・回収時や剥離・回収後に生体や細胞に対する安全性が高く,しかも細胞機能を高く維持できる細胞培養支持体を得て,目的の培養細胞を得ることが切望されている。
本発明者らは、以上のような点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドからなるブロック共重合体を細胞培養基材上に直接共有結合で、あるいは細胞付着性物質で覆われた細胞培養基材上に共有結合で表面固定化された細胞培養支持体を細胞培養基材に利用することを見出した。
ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成される分子量1,000以上20,000以下のブロック共重合体は既に医療の分野で使用されていて、その生体に対する安全性については、公表されている。例えば、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック共重合体であるポロキサマー188(プルロニックF-68),は鎌状赤血球貧血の急性血管閉塞症の治療として用いられている(Orringer et al., JAMA, 286(17), 2099-2106(2001)
)。また、プルロニックは薬物の除放容器として米国FDA(医薬品食品安全局)で認可されており、人体への使用が認められている(M. Morishita et al., Int. J. Pharm., 212(2),289-293(2001))。
ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成される分子量1,000以上20,000以下のブロック共重合体は、ある所定の水溶液中濃度において、低温では、ポリマー鎖は、十分に水和されて、水溶液中に溶解しているが、高温になると脱水和されて、ミセル、液晶、会合体等の凝集体を形成する。上記ポリマーゲルを基材表面に塗布して固着させても,ポリマーゲル会合体からポリマー分子が水中に徐放的に流出してしまうので,細胞を3日以上培養できなかったが,本発明では,細胞培養基材上に直接共有結合で、あるいは細胞付着性物質で覆われた細胞培養基材上に共有結合で表面固定化された細胞培養支持体を作製することで可能となった。
ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体を細胞付着性物質で覆われた細胞培養基材上に共有結合で表面固定化された細胞培養支持体上で、細胞を培養することにより、細胞培養温度30℃から45℃では、細胞支持体に固定化されている上記のポリマー鎖は、ある程度脱水和されており、細胞培養に適した器材となっている。この細胞培養支持体(培地)の温度を20℃以下の低温にすると、細胞培養器材上に表面固定化された上記ポリマーが水和されて、細胞培養支持体表面が膨潤する。このために、細胞が細胞培養支持体表面から剥離される。すなわち、細胞培養支持体表面の温度を変化させるだけで、その細胞を剥離・回収することが可能である。
さらに、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体を細胞付着性物質で覆われた細胞培養基材上に共有結合で表面固定化された細胞培養支持体で培養した細胞は、細胞および周囲への物理的振動,例えば細胞の浸漬されている液性媒体のピペッティングによる振動、液性媒体を含む容器の微小振動、液性媒体の超音波処理等をすることにより、培養細胞を物理的に剥離させることが可能である。
この剥離・回収操作では、蛋白質分解酵素や金属キレート剤などの、細胞や生体の安全性に悪影響を与える物質を使わないので、回収後の細胞懸濁液中への混入がさけられる。また、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体を細胞付着性物質で覆われた細胞培養基材上に共有結合で表面固定化された細胞培養支持体上に表面固定されているために、このポリマーがゲル状にコーティング固着された場合に問題になった培地中へのポリマー分子の溶出を防ぐことができる。従って、本発明のポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体を細胞付着性物質で覆われた細胞培養基材上に共有結合で表面固定化された細胞培養支持体細胞培養支持体上の細胞は、3日以上の長期培養も可能である。さらにその剥離した細胞は,その機能を高度に保持していた。
即ち本発明によれば、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体(分子量は1,000以上20,000以下を提示したが,この範囲に限定されるものではない。)を細胞培養基材上に直接共有結合で、あるいは細胞付着性物質で覆われた細胞培養基材上に共有結合で表面固定化された細胞培養支持体上にて、細胞を培養することにより,容易に細胞を剥離回収でき,細胞培養時や細胞の剥離・回収時や剥離・回収後に生体や細胞に対する安全性が高く,しかも細胞機能を高く維持できる細胞培養材料,細胞培養支持体,および細胞培養法並びにそれより得られる細胞を得ることが可能となった。
ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体としては、ポリパラフィン、ポリエステル、ポリエーテル並びにこれらを含む共重合体が挙げられる。例えば、ポリエチレンオキシドをA、ポリプロピレンオキシドをBとした時に、ABAまたはBABまたは(AB)nとなるように、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドがエーテル結合、アミド結合、ペプチド結合,エポキシ結合、エステル結合を含む分子量100以下の結合部位により結合されている分子量1,000以上20,000以下のブロック共重合体が、一例として取り上げられる。ここで、nは繰り返し単位であり、1から10までの整数である。上記(AB)nタイプ(ポリエチレンオキシドーポリプロピレンオキシドのブロック共重合体)の合成法は、文献(A. Sosnik, D. Cohn, Biomaterilas, 26, 349 (2005))に記載されている。エチレンオキシドープロピレンオキシドブロック共重合体の他の例としては、プルロニックポリマーが市販品として知られている。例えば、エチレンオキシド11量体プロピレンオキシド16量体エチレンオキシド11量体のプルロニックL35(分子量1856)、エチレンオキシド80量体プロピレンオキシド30量体エチレンオキシド80量体のプルロニックF68(分子量8780)、エチレンオキシド106量体プロピレンオキシド70量体エチレンオキシド106量体のプルロニックF127(分子量13388)等であるが、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成される分子量1,000以上20,000以下のブロック共重合体が細胞培養器材上に2nmol/cm2以上表面固定化されていればよく、これに限定されるものではない。ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体の分子量は、1,100から14,600のものが入手可能であるので、本発明を実施するには、この範囲の分子量のポリマーを用いることは比較的簡便であるが、本発明はこの分子量範囲に縛られることはない。
また、上記ポリマーの細胞培養基材表面上への表面固定化量は、2nmol/cm2以上、1,000nmol/cm2未満であることが望ましい。表面固定化量が、2nmol/cm2以上であると、本発明の細胞培養支持体を20℃以下に処理するだけで、細胞培養支持体上より細胞を剥離させることが可能である。これは、細胞培養温度である37℃前後では上記表面固定化されたポリマーは会合しており、細胞培養に適しているが、20℃以下の低温にすることにより、上記表面固定化されたポリマーは、水和されてポリマー鎖が培地中で伸びきった形態を取るようになるためである。このために、細胞は細胞培養支持体表面より剥離されて、細胞回収することが可能となっている。
さらに、表面固定化量が、2nmol/cm2以上であると、本発明の細胞培養支持体を用いて細胞培養を行い、細胞および周囲への振動,例えば細胞の浸漬されている液性媒体のピペッティングによる振動、液性媒体を含む容器の微小振動、液性媒体の超音波処理することにより、細胞培養支持体上より細胞を剥離させることも可能である。
一方、表面固定化量が、1,000nmol/cm2以上であると、上記ポリマーが大過剰となり、表面に固定化されているもののみならずに、単に上記ポリマー同士が会合されているものも生じてくる。この上記ポリマー同士の会合体は、経時とともに細胞培養の培地中に溶出してくることになる。この場合には、文献3と同様な細胞培養表面となるために、上記ポリマーの溶出とともに細胞培養支持体からの細胞剥離が生じてくる。すなわち、細胞の長期培養には適さない細胞培養支持体となってしまう。
上記ブロック共重合体の表面存在量の確認は、X線光電子分析装置(XPS、ESCA)により細胞培養支持体表面の元素分析を行うことにより可能である。もし、上記ポリマーが単分子の櫛状に固定化された場合、細胞培養支持体表面の数ナノから数十ナノに上記ポリマーが固定化されていることになるので、ATR法を用いた赤外分光光度計測では、上記ポリマーの同定は困難であると予測される。逆に、本発明では、細胞培養支持体表面上に固定化されたポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成される分子量1,000以上20,000以下のブロック共重合体の存在量は、ATR法を用いた赤外分光光度計測では確認できないが、X線光電子分析測定で確認できるナノオーダーサイズのポリマー鎖が表面に固定化されているのが望ましい。
ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成される分子量1,000以上20,000以下のブロック共重合体を細胞培養器材上に表面固定化する方法としては、表面化学修飾法等が用いられる。
ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成される分子量1,000以上20,000以下のブロック共重合体の末端が水酸基である場合、末端を活性化させて、細胞培養基剤に表面固定する必要がある。末端活性化法の一例としては、(1)臭化シアン活性化法を用いてアミノ基に改質する方法(A. Higuchi et al., J. Membrane Sci., 205, 203 (2002)参照)、(2)N,N'-カルボニルイミダゾール活性化法をもちいてイミダゾール基に改質する方法(H.-F. Lu et al., Biomaterials, 24, 4893 (2003))が一般的であるが、他の方法により上記ポリマーの末端を活性化させても良い。ベースとなる細胞培養器材も活性化されている必要があるが、すでにポリリジンやポリエチレンイミンがコートされているポリリジンコートディシュやポリエチレンイミンコートディシュを用いても良い。あるいは、細胞培養器材にガンマ線照射あるいはプラズマ照射して、その後アンモニアガス等化学処理を行い、表面に、アミノ基またはカルボン酸基を導入する方法もある。細胞培養器材表面にアミノ基が存在する場合には、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成される分子量1,000以上20,000以下のブロック共重合体の末端と、1,6-ジメチルスベリイミデート(スクシンイミド)等を用いて細胞培養器材表面上に上記活性化ポリマーを表面結合させることが可能である。なお、スクシンイミドを用いた反応条件は、文献に記載されている(M. Hara,A. Higuchi et al., J. Biomater. Sci. Polym. Ed., 14, 139 (2003))。
上記ポリマーがイミダゾール基に改質されており、細胞培養器材表面にアミノ基が存在する場合には、メタノールに溶解させたイミダゾール化ポリマー溶液を細胞培養器材表面に接触させるだけで、イミダゾール化ポリマーを細胞培養器材表面に固定化することが可能である。代表的な本発明の反応例(実施例1で用いた反応)を図2に示すが、この反応に本発明は限定されることは無い。
細胞培養器材の形態は、板、糸、円柱、膜、中空糸、(多孔質)粒子、又は一般に細胞培養等に用いられる容器(フラスコ等)等いずれの形をしててもよい。
細胞接着性が弱い場合には、上記の方法で調製された細胞培養支持体上から細胞が剥離しやすいこともある。このような場合には、細胞接着性を高めた基盤支持体の上に、上記のポリマーを形成させることも、本特許の請求範囲内である。細胞接着性を高めるには、基盤支持体内あるいは上に、細胞付着性物質を添加あるいは含有あるいは固定させることが可能である。細胞付着性物質とは、細胞と親和性/付着性を持つものならば、いずれでも良い。細胞付着性天然物質の例としては、オリゴ糖、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、フィブリン、さらにそれらの成分である細胞接着ペプチド(アルギニンーグリシンーアスパラギン酸等)等が挙げられる。また細胞付着性合成物質としては、細胞付着性基を含有したモノマーを単独重合、若しくは細胞付着性基を含有したモノマー同士を共重合あるいは細胞付着性基を含有したモノマーと細胞付着性基を含有しないモノマーとを共重合することで得られるが、その細胞付着性基とは例えばカルボン酸基、及びその塩、無水物、スルホン酸基、及びその塩、スルホン酸エステル、スルホン酸アミド、リン酸基及びその塩、アミノ基、水酸基、長鎖アルキル基、メルカプト基、エーテル基、チオエーテル基、ポリエーテル基、ケトン基、アルデヒド基、アシル基、シアノ基、ニトロ基、アシルアミノ基、ハロゲン基、グリシジル基、アリル基あるいはこれらの細胞付着性を同一モノマー内に複合して含有するホスホベタイン基、スルホベタイン基等が挙げられる。本発明ではこれらの細胞付着性天然物質あるいは細胞付着性合成物質を単独で利用、あるいは併用して利用することができる。
本特許は、さらに、上記の方法で作成された細胞培養支持体を用いて、細胞培養すること、さらには、この方法により得られる細胞も本特許の請求範囲内である。
以上の方法に従って得られた細胞培養支持体上にて培養した細胞を支持体から剥離させ、回収するには、(1)20℃以下にする、あるいは、(2)細胞および周囲への物理的振動,例えば液性媒体のピペッティングによる振動、液性媒体を含む容器の微小振動、液性媒体の超音波処理を行うだけで良く、細胞を培養していた培養液においてもその他の等張液においても可能であり目的に合わせて選択することができる。
本発明の細胞培養支持体によれば、細胞増殖時には、細胞は細胞培養基材上に直接共有結合で、あるいは細胞付着性物質で覆われた表面固定化されたポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成されるブロック共重合体上に接着して、増殖をする。細胞剥離時に20℃以下にして、上記ポリマーを膨潤させることにより細胞は剥離することになる。または、細胞および周囲への物理的振動,たとえば,細胞の浸漬されている液性媒体のピペッティングによる振動、液性媒体を含む容器の微小振動、液性媒体の超音波処理を行うことにより細胞は剥離することになる。
この方法によれば、トリプシン、EDTAのような蛋白分解酵素や化学薬品等による処理を経ずに細胞培養基板から培養した細胞を剥離・回収することができるので、(a)処理工程が簡略化される、(b)不純物等の混入の可能性が完全になくなる、(c)増殖した細胞が化学的処理により細胞膜が阻害されるなどで細胞本来の機能が損なわれない、(d)剥離した細胞が集合状態を保持している等の顕著な特徴を獲得することが可能である。
さらに、本発明で用いられているポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成されるポリマーは,細胞毒性等,臨床医療上の使用での安全性が既に確かめられている物質であるので,細胞に対する安全性が高いという利点がある。
以下、本発明を実施例により説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
200mlの3口丸底フラスコに60mlテトラヒドロフラン(THF、和光純薬工業社製、203-13965)を入れた後、5.04g(0.38mmol)のエチレンオキシド106量体プロピレンオキシド70量体エチレンオキシド106量体であるプルロニックF127(分子量13388) (シグマーアルドリッチ社製、P-2443)を加えて、溶解させた。また、60mlテトラヒドロフラン(THF)中に、3.24g(20mmol)のN,N'-カルボイミダゾール(和光純薬工業社製、034-10491)を溶解させて、上記のプルロニックF127のTHF溶液中に、滴下ロートを用いて窒素パージ下で5時間かけて滴下させた。なお、この操作の間、溶液は室温で撹拌しながら操作を行った。その後、さらに2時間撹拌を続けた。その後、反応溶液をエバポレーターに移して、真空下で、溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)を蒸発させて、20ml前後まで濃縮させた。この濃縮反応液を1Lの三角フラスコに入れたジエチルエーテル(和光純薬工業社製、055-01155)500ml中に滴下させた。白色沈殿物をろ過して、再沈精製を行った。真空乾燥機を用いて、このイミダゾール化プルロニックF127を乾燥させた。さらに、10mlのテトラヒドロフラン中にイミダゾール化プルロニックF127を溶解させた後、1Lの三角フラスコに入れたジエチルエーテル500ml中に滴下させた。白色沈殿物をろ過して、再沈精製を再度行った。真空乾燥機を用いて、このイミダゾール化プルロニックF127を乾燥させた(収量4.6g)。本実施例の反応式を図2に示す。得られた生成物の元素分析の結果、Cは58.8%、Hは9.7%Nは0.51%であった。100%イミダゾール基がプルロニックF127に結合した時の元素割合は、Cは60.5%、Hは10.0%、Nは0.44%であるために、ほぼ100%反応が進行したことが確認された。さらに、イミダゾール化プルロニックF127のH−NMR測定を試みた。この結果を図2に示す。イミダゾール基に起因するプロトンのピークが7.1ppmと7.7ppmに観察された(図3中の右に示した拡大図参照)。これらのピーク強度と、プルロニック中のメチレン鎖中のピーク1.1ppmと3.6ppmのピーク強度とを比較することにより、100%イミダゾール基がプルロニックF127に結合していることが考察された。
合成したイミダゾール化プルロニックF127を0、0.1、0.25、0.5、1、2、5、10、20mg/mLの濃度になるようにメタノール中に溶解した。ポリリジンコートされた24穴培養フラスコ(旭テクノグラス社製、4820-040)の各穴中に上記の溶液を3穴づつ各2mL導入した。24穴培養フラスコをパラフィルムにて密閉させた後に、ドラフト内にてこのイミダゾール化プルロニックF127含有24穴培養フラスコをシェーカー上で24時間撹拌させた。その後、反応溶液を24穴培養フラスコの各穴から吸引した後、メタノールで3回洗浄した。その後、超純水で5回洗浄した。上記の方法で、調製したプルロニックF127表面固定化24穴培養フラスコを室温にて、真空乾燥させた。
プルロニックF127が、ポリリジンコートされた24穴培養フラスコに表面固定化されたかどうかを確認するために、X線光電子分析装置(AXIS-NOVA、島津製作所)を用いて元素分析を行った。各イミダゾール化プルロニックF127濃度で表面反応させたポリリジンコート24穴培養フラスコ表面の窒素/炭素、酸素/炭素の割合を表1に示す。ポリリジンの窒素/炭素の理論計算値並びに酸素/炭素理論計算値は0.334並びに0.167である。さらに、各イミダゾール化プルロニックF127がポリリジンに100%反応が進行した場合の窒素/炭素の理論計算値並びに酸素/炭素理論計算値は0.00866並びに0.4957である。また、本発明で用いた、細胞培養器材のベースであるポリリジンコート24穴培養フラスコ表面の窒素/炭素の実測値並びに酸素/炭素実測値は0.0318並びに0.146であった。このことから、ポリリジンへのイミダゾール化プルロニックF127の反応率を、表面元素分析値から算出した。この結果の値を表1に示す。また、表面修飾されたポリリジン存在量は、マイクロBCA法(フナコシ社製、23235)を用いて算出した結果、11.5μg/cm2であった。この値とポリリジンへのイミダゾール化プルロニックF127の反応率との積よりプルロニックF127の24穴培養フラスコ表面への固定化量を計算した。0.1mg/mLのイミダゾール化プルロニックF127を用いてポリリジンコート24穴培養フラスコ表面に反応を行った表面には、1.8nmol/cm2のプルロニックF127が固定化されていた。0.5mg/mLのイミダゾール化プルロニックF127を用いて表面反応を行った場合には、4.2nmol/cm2のプルロニックF127が固定化されていた。さらに、1.0mg/mLのイミダゾール化プルロニックF127を用いて表面反応を行った場合には、6.8nmol/cm2のプルロニックF127が固定化されていた。以上より、表面反応を用いて、培養フラスコ表面にプルロニックF127を固定化することが可能となった。
(実施例2)
10mg/mLのイミダゾール化プルロニックF127を用いて実施例1の方法で、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを調製した。常法(A. Higuchiら、J. Biomater. Sci., Polym. Ed., 11(2), 149-168 (2000))に基づいて調整されたRPMI1640培地(JRH56509-12、JRHバイオサイエンス製)を用いて20,000/mLの細胞濃度に調整した2mLのマウス繊維芽L929細胞(大日本製薬製)をプルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴に播種した。37℃に調整された5%CO2培養器中で、上記のプルロニックF127固定化24穴培養フラスコ上においてマウス繊維芽L929細胞を培養した。培養7日間後、マウス繊維芽L929細胞を含むプルロニックF127固定化24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出した。この時の細胞形態写真を図4(a)に示す。さらに細胞数を計測した。引き続き、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを氷上に設置させた。5分後に、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴中のマウス繊維芽L929細胞を含有した培地を取り除いた。この時の培地温度は、4℃であった。その後、培地を2mLづつ、24穴培養フラスコに添加した後に、温度制御箱の据え付けられたニコンTMD300倒立型位相差顕微鏡を用いてプルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴上に残存するマウス繊維芽L929細胞の形態観察を行った。この時の細胞形態写真を図4(b)に示す。剥離後の残存細胞の計数は,培養フラスコを倒立顕微鏡接続のオリンパス社製デジタルカメラで撮影してモニター画面上でおこなった。以下,細胞数の計測は,同様な方法でおこなった。プルロニックF127固定化24穴培養フラスコ各穴上のマウス繊維芽L929細胞の数は0個/cmであった。すなわち、細胞剥離率は100%であった。ここで、培養フラスコを低温にして、培地を吸引する前の細胞数をN、この操作後における細胞数をNと定義すると、細胞剥離率は、以下の式で定義される。
細胞剥離率(%)=(1N/N)x100
剥離された細胞はトリパンブルー染色で,生細胞は95%以上観察された。以上の結果より、EDTA並びにトリプシン等化学薬品処理を行わなくても、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコ上より温度を変化させるだけで、細胞を剥離させることが可能であることが明らかとなった。
(比較例1)
プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの代わりに、ポリスチレン製24穴培養フラスコ(旭テクノグラス製、3820-024N)を用いた以外は、実施例2と同様の細胞培養実験を行った(この場合の細胞支持体を以下,ポリスチレン細胞培養基板と呼ぶ。)。培養7日後、ポリスチレン細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞を含む24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出した。この時の細胞形態写真を図4(c)に示す。剥離後の残存細胞の計数は,培養フラスコを倒立顕微鏡接続のデジタルカメラで撮影してモニター画面上でおこなった。引き続き、24穴培養フラスコを氷上に設置させた。5分後にポリスチレン培養基板上のマウス繊維芽L929細胞の含有した培地を取り除いた。この時の培地温度は、4℃であった。その後、培地を2mLづつ、24穴培養フラスコに添加した後に、倒立型位相差顕微鏡を用いてポリスチレン細胞培養基板上に残存するマウス繊維芽L929細胞の形態観察を行った。この時の細胞形態写真を図3(d)に示す。さらに細胞数をデジタルカメラで撮影して同様に計測した。細胞剥離率を計算した所、0%であった。
以上の結果より、通常の培養フラスコ上の細胞は、EDTA並びにトリプシン等化学薬品処理を行わないと、細胞を剥離させることが不可能であることが明らかとなった。
(実施例3)
実施例2と同様にして、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを3フラスコ調製した。さらに、実施例2と同様にして、マウス繊維芽L929細胞を各々のプルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴上で7日間培養した。培養7日間後、マウス繊維芽L929細胞を含む各プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出した。さらに細胞数を計測した。その後、各々のプルロニックF127固定化24穴培養フラスコを30℃、25℃、20℃、15℃、10℃、4℃の各恒温層に入れて、培地温度を各々30℃、25℃、20℃、15℃、10℃、4℃にした。その後、各プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴中のマウス繊維芽L929細胞含有した培地を取り除いた。その後、30℃、25℃、20℃、15℃、10℃、4℃にした培地を2mLづつ、各々の24穴培養フラスコに添加した後に、倒立型位相差顕微鏡を用いてプルロニック細胞培養基板上に残存するマウス繊維芽L929細胞の数を計測した。これらの結果を図5に示す。30℃の恒温層に入れたプルロニック細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞の細胞剥離率を計算した所、1%であった。20℃の恒温層に入れたプルロニック細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞の細胞剥離率を計算したところ、22%であった。15℃の恒温層に入れたプルロニック細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞の細胞剥離率を計算した所、81%であった。
以上より、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴中の細胞は、培養フラスコの温度を低温(20℃以下)にすると、細胞が剥離することが明らかとなった。
(比較例2)
実施例2と同様にして、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを調製した。さらに、実施例2と同様にして、マウス繊維芽L929細胞をプルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴上で7日間培養した。培養7日間後、マウス繊維芽L929細胞を含むプルロニックF127固定化24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出した。さらに細胞数を計測した。その後、37℃の条件下で、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴中のマウス繊維芽L929細胞含有した培地を取り除いた。その後、培地を2mLづつ、24穴培養フラスコに添加した後に、倒立型位相差顕微鏡を用いてプルロニック細胞培養基板上に残存するマウス繊維芽L929細胞の数を計測した。プルロニック細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞の細胞剥離率を計算した所、1%であった。
以上より、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴中の細胞は、培養フラスコの温度を低温(20℃以下)にしないと、細胞剥離をしてこないことが明らかとなった。
(実施例4)
0、0.1、0.25、0.5、1、2、5、10、20mg/mLの濃度のイミダゾール化プルロニックF127を用いて実施例1の方法で、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを調製した。実施例2と同様な方法で、マウス繊維芽L929細胞の培養を7日間行った。培養7日後、マウス繊維芽L929細胞を含むプルロニックF127固定化24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出した。さらに細胞数を計測した。その後、24穴培養フラスコを氷上に設置させた。5分後に、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴中の、マウス繊維芽L929細胞の含有した培地を取り除いた。この時の培地温度は、4℃であった。その後、培地を2mLづつ、24穴培養フラスコに添加した後に、倒立型位相差顕微鏡を用いてプルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴上に残存するマウス繊維芽L929細胞の数を計測した。以上より、プルロニック細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞の細胞剥離率を計算した。その結果を図6に示す。以上の結果,0.25mg/mL以上の濃度のイミダゾール化プルロニックF127を用いて調製されたプルロニックF127固定化24穴培養フラスコ(プルロニック固定化量2.8nmol/cm2)で細胞剥離が有効であることがわかった。
(実施例5)
実施例2と同様にして、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを調製した。さらに、100μg/mLに調整されたフィブロネクチン水溶液(旭テクノグラス製、F0003)を0.3mLづつプルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴(底面積2cm2)に添加した。その後、37℃の恒温槽中でフィブロネクチン含有プルロニックを乾燥させた後に、37℃で24時間真空乾燥させてフィブロネクチン含有プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを調製した。実施例2と同様にして、培養7日後、マウス繊維芽L929細胞を含むフィブロネクチン含有プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出した。さらに細胞数を計測した。その後、24穴培養フラスコを氷上に設置させた。5分後に、フィブロネクチン含有プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴中のマウス繊維芽L929細胞含有した培地を取り除いた。この時の培地温度は、4℃であった。その後、培地を2mLづつ、24穴培養フラスコに添加した後に、倒立型位相差顕微鏡を用いてフィブロネクチン含有プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴上に残存するマウス繊維芽L929細胞の数を計測した。以上より、フィブロネクチン含有プルロニックF127固定化24穴培養フラスコ上のマウス繊維芽L929細胞の細胞剥離率を計算したところ、100%であった。
(比較例3)
実施例5と同様にして、フィブロネクチン含有プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを調製した。さらに、実施例2と同様にして、マウス繊維芽L929細胞をフィブロネクチン含有プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴上で7日間培養した。培養7日間後、マウス繊維芽L929細胞を含むフィブロネクチン含有プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出した。さらに細胞数を計測した。その後、37℃の条件下で、フィブロネクチン含有プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴中のマウス繊維芽L929細胞含有した培地を取り除いた。その後、培地を2mLづつ、24穴培養フラスコに添加した後に、倒立型位相差顕微鏡を用いてフィブロネクチン含有プルロニック細胞培養基板上に残存するマウス繊維芽L929細胞の数を計測した。以上より、フィブロネクチン含有プルロニック細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞の細胞剥離率を計算したところ、2%であった。
(実施例6)
エチレンオキシド80量体プロピレンオキシド30量体エチレンオキシド80量体(分子量8780)であるポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロック共重合体(プルロニックF68、旭電化社製)3.51g(0.40mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、イミダゾール化プルロニックF68共重合体を調製した。さらに100mg/mLの濃度のイミダゾール化プルロニックF68共重合体を用いて実施例1の方法で、プルロニックF68固定化24穴培養フラスコを調製した。その後、このプルロニックF68固定化24穴培養フラスコを用いて実施例2と同様な方法で、マウス繊維芽L929細胞の培養を7日間行った。培養7日後、マウス繊維芽L929細胞を含む、プルロニックF68固定化24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出して、細胞数を計測した。その後、24穴培養フラスコを氷上に設置させた。5分後にプルロニックF68固定化24穴培養フラスコの各穴中の剥離されたマウス繊維芽L929細胞を含む培地を取り除いた。この時の培地温度は、4℃であった。その後、培地を2mLづつ、24穴培養フラスコに添加した後に、倒立型位相差顕微鏡を用いて、プルロニックF68固定化24穴培養フラスコの各穴上に残存するマウス繊維芽L929細胞の数を計測した。以上より、プルロニックF68固定化24穴培養フラスコ上のマウス繊維芽L929細胞の細胞数を計測した。細胞剥離率を計算したところ、85%であった。
(実施例7)
エチレンオキシド20量体プロピレンオキシド30量体エチレンオキシド20量体(分子量2622)であるエチレンオキシドとプロピレンオシシドのブロック共重合体(PF40、ヘキストAG社製社製)1.05g(0.40mmol)を用いた以外は、実施例1と同様にして、イミダゾール化PF40共重合体を調製した。さらに10mg/mLの濃度のイミダゾール化PF40共重合体を用いて実施例1の方法で、PF40固定化24穴培養フラスコを調製した。その後、PF40固定化24穴培養フラスコを用いて実施例2と同様な方法で、マウス繊維芽L929細胞の培養を7日間行った。培養7日後、マウス繊維芽L929細胞を含む、PF40固定化24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出した後、細胞数を計測した。その後、24穴培養フラスコを氷上に設置させた。5分後PF40固定化24穴培養フラスコの各穴中の剥離されたマウス繊維芽L929細胞を含む培地を取り除いた。この時の培地温度は、4℃であった。その後、培地を2mLづつ、24穴培養フラスコに添加した後に、倒立型位相差顕微鏡を用いて、PF40固定化24穴培養フラスコの各穴上に残存するマウス繊維芽L929細胞の数を計測した。以上より、プルロニック細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞の細胞数を計測した。細胞剥離率を計算したところ、94%であった。
(実施例8)
0、0.1、0.25、0.5、1、10mg/mLの濃度のイミダゾール化プルロニックF127を用いて実施例1の方法で、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを調製した。実施例2と同様な方法で、マウス繊維芽L929細胞の培養を7日間行った。培養7日後、マウス繊維芽L929細胞を含むプルロニックF127固定化24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出した。さらに細胞数を計測した。その後、24穴培養フラスコを、パスツールピペットを用いて、10回ほどピペッティングを行った。この後に、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴中の、マウス繊維芽L929細胞を含む培地を取り除いた。この時の培地の温度は、37℃であった。その後、培地を2mLづつ、24穴培養フラスコに添加した後に、倒立型位相差顕微鏡を用いてプルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴上に残存するマウス繊維芽L929細胞の数を計測した。以上より、プルロニック細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞の細胞剥離率を計算した。その結果を図7に示す。0.25mg/mL以上の濃度のイミダゾール化プルロニックF127を用いて調製されたプルロニックF127固定化24穴培養フラスコ(プルロニック固定化量2.8nmol/cm2以上)では、培養フラスコの温度を低温(20℃以下)にすることなしに、物理的振動を与える操作により細胞を剥離させることが可能であることが明らかとなった。
(実施例9)
1mg/mL並びに10mg/mLの濃度のイミダゾール化プルロニックF127を用いて実施例1の方法で、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを調製した。さらに、100mg/mL並びに500mg/mLの濃度のイミダゾール化プルロニックF68を用いて実施例6の方法で、プルロニックF68固定化24穴培養フラスコを調製した。その後、実施例2と同様な方法で、マウス繊維芽L929細胞の培養を7日間行った。培養7日後、マウス繊維芽L929細胞を含むプルロニックF127固定化24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出した。さらに細胞数を計測した。その後、24穴培養フラスコを、ボルテックスミキサー(S-100、大洋科学工業製)上に設置して、出力を最大の状態で30秒間の間、24穴培養フラスコに物理振動を与えて、細胞の物理剥離実験を行った。この後に、プルロニック固定化24穴培養フラスコの各穴中の、剥離されたマウス繊維芽L929細胞を含む培地を取り除いた。この時の培地温度は、37℃であった。その後、培地を2mLづつ、24穴培養フラスコに添加した後に、倒立型位相差顕微鏡を用いてプルロニック固定化24穴培養フラスコの各穴上に残存するマウス繊維芽L929細胞の数を計測した。以上より、プルロニック細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞の細胞剥離率を計算した。その結果を表2に示す。剥離された細胞はトリパンブルーによる染色後の顕微鏡観察で95%以上が生細胞であった。プルロニック固定化培養フラスコを用いると、ボルテックスミキサーによる物理的操作により細胞を剥離させることが可能であることが明らかとなった。
(比較例4)
プルロニック固定化24穴培養フラスコの代わりに、ポリスチレン製24穴培養フラスコ(旭テクノグラス製、3820-024N)を用いた以外は、実施例9と同様の細胞培養実験並びに物理剥離実験を行った。細胞剥離率は6%にすぎず,プルロニックを固定化されていない培養フラスコ上では,プルロニックを固定化された場合と比較すると,ボルテックスミキサーによる物理的振動操作によって細胞はほとんど剥離させることができなかった。
(実施例10)
実施例2と同様にして、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを調製した。その後、マウス繊維芽L929細胞の代わりに、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、タカラバイオ製、C2517)と専用培地(EBM-2、タカラバイオ製、B3156)を用いた以外は、実施例2と同様にして、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴上で7日間培養した。さらに実施例2と同様にして、培養7日間後、HUVEC細胞を含む、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコを37℃の5%CO2培養器中より取り出した。さらに細胞数を計測した。その後、24穴培養フラスコを氷上に設置させた。5分後に、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴中のHUVEC細胞を含有した培地を取り除いた。この時の培地温度は、4℃であった。その後、培地を2mLづつ、24穴培養フラスコに添加した後に、倒立型位相差顕微鏡を用いてプルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴上に残存するHUVEC細胞の数を計測した。プルロニック細胞培養基板上のHUVEC細胞の細胞剥離率を計算したところ、100%であった。回収されたHUVEC細胞の機能を計測するために、HUVEC細胞表面に発現されている表面マーカーCD34並びにCD105の存在割合を計測した。この目的のために、先ず,回収されたHUVEC懸濁液を1500rpmの条件で遠心分離させた。上清液を取り除いた後に、FcRブロック溶液(ミリタリバイオテック製、130-059-901)7μLを細胞上に添加した。その後、ボルテックスミキサーを用いて、細胞溶液を懸濁させた。蛍光標識であるフルオレセインイソシアネート(FITC)が結合している抗CD34抗体(BDバイオサイエンス製、555821)並びにフィコエリスリン(PE)が結合している抗CD105抗体(ベックマンコールター製、A07414)各20μLをHUVEC懸濁液中に添加した。引き続き、0℃で30分培養した。その後、0.1%のアジ化ナトリウム並びに0.5%の牛血清アルブミンを含む2μLのpH7.2リン酸緩衝液をHUVEC懸濁液に添加した後に、1500rpmの条件で遠心分離した。上澄み液を除去した後に、細胞の生死判定を行うプロピヂウムヨウ素溶液10μLと0.1%のアジ化ナトリウム並びに0.5%の牛血清アルブミンを含む200μLのpH7.2リン酸緩衝液をHUVEC上に添加させた。以上の方法で抗CD34抗体並びに抗CD105抗体で染色した後に、HUVEC上のCD34細胞表面マーカーとCD105細胞表面マーカーの発現率をフローサイトメトリー分析により計測した。CD34+CD105-、すなわち細胞表面マーカーCD34は発現しており、CD105は発現していない、回収されたHUVEC細胞は、0.35%と計測された。また、CD34+CD105+、すなわち細胞表面マーカーCD34とCD105共に発現している、温度を可変することにより細胞剥離して回収されたHUVEC細胞は、0.27%と計測された。さらに、CD34-CD105+、すなわち細胞表面マーカーCD34は発現しておらず、CD105は発現している回収されたHUVEC細胞は、2.2%と計測された。
(比較例5)
ポリスチレン製24穴培養フラスコ(旭テクノグラス製、3820-024N)をプルロニックF127固定化24穴培養フラスコの代わりに用いた以外は、実施例10と同様にして、HUVECを培養した。培地を吸引除去した後に、1穴あたりHEPES緩衝溶液2mLを注入して、細胞を洗浄した。その後、トリプシンとEDTAの混液であるサブカルチャー試薬(タカラバイオ製、B5034)を1穴あたり0.5mL注入した。フラスコを手で叩いて、細胞を培養フラスコから剥離させた。直ちに、トリプシン中和剤0.5mL添加させた。細胞懸濁液を遠沈管に移した後に、1100rpmで5分間遠心分離を行った。上澄み液を除去した後に、EBM-2培地を添加した。FcRブロック、抗CD34抗体並びに抗CD105抗体による細胞染色は、実施例10と同様に行った。以上の方法で抗CD34抗体並びにCD105抗体で染色した後に、HUVEC上のCD34細胞表面マーカーとCD105細胞表面マーカーの発現率をフローサイトメトリー分析により計測した。CD34+CD105-、すなわち細胞表面マーカーCD34は発現しており、CD105は発現していないHUVEC細胞は、0.11%と計測された。また、CD34+CD105+、すなわち細胞表面マーカーCD34とCD105共に発現しているHUVEC細胞は、0.11%と計測された。さらに、CD34-CD105+、すなわち細胞表面マーカーCD34は発現しておらず、CD105は発現しているHUVEC細胞は、1.1%と計測された。
以上より、プルロニックF127固定化24穴培養フラスコの各穴中で培養し、温度を変化させることにより剥離されたHUVECは、トリプシン処理によりポリスチレン細胞培養フラスコから剥離されたHUVEC細胞よりも、いずれの細胞表面マーカー発現率は高いことが明らかとなった。すなわち、エチレンオキシドとプロピレンオキシドから構成される分子量1,000以上20,000以下のブロック共重合体を細胞培養基材上に表面固定化された細胞培養支持体上の細胞は、温度を可変することにより細胞剥離させても、細胞機能が高く維持されていることが明らかとなった。
(比較例6)
プルロニック細胞培養基板のかわりに、レプセルTM(セルシード製、窒素を化学構造式中に含む32℃の下限臨界溶解温度を有するポリーN-イソプロピルアクリルアミドを用いて調製された細胞培養基板)を用いた以外は、実施例10と同様にして正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を培養した。培養24時間後、実施例10と同様にしてレプセルTM 上のHUVEC細胞を回収した。さらに、実施例10と同様にして、FcRブロック、抗CD34抗体並びに抗CD105抗体による細胞染色を行った。抗CD34抗体並びに抗CD105抗体で染色した後に、HUVEC上のCD34細胞表面マーカーとCD105細胞表面マーカーの発現率をフローサイトメトリー分析により計測した。CD34+CD105-、すなわち細胞表面マーカーCD34は発現しており、CD105は発現していないHUVEC細胞は、0.15%と計測された。また、CD34+CD105+、すなわち細胞表面マーカーCD34とCD105共に発現しているHUVEC細胞は、0.14%と計測された。さらに、CD34-CD105+、すなわち細胞表面マーカーCD34は発現しておらず、CD105は発現しているHUVEC細胞は、1.6%と計測された。
実施例10、比較例5並びに比較例6に示されたHUVEC上の細胞表面マーカーの発現率を表3にまとめて示す。
以上より、エチレンオキシドとプロピレンオキシドから構成される分子量1,000以上20,000以下のブロック共重合体を細胞培養基材上に表面固定化された細胞培養支持体上で培養し、温度を変化させることにより剥離されたHUVECは、窒素を化学構造式中に含む32℃の下限臨界溶解温度を有するポリーN-イソプロピルアクリルアミドを用いて調製された細胞培養基板より剥離されたHUVECより表面マーカー発現率が高い、すなわち細胞機能が高く維持されていることが明らかとなった。

ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド水溶液および,プルロニックF127水溶液の低温から高温にした時の相変化の違いを示す図である。下限臨界溶解温度(LCST)を有するポリ-N-イソプロピルアクリルアミド水溶液を4℃(図上左)から37℃(図上右)にした場合,透明溶液は白色沈殿を形成する。一方,プルロニックF127水溶液を4℃(図下左)から37℃(図下右)にした場合,2相状態の白色沈殿を形成せず,均一で透明な液晶相を形成する。 本実施例に係るポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドから構成される分子量1,000以上20,000以下のブロック共重合体を細胞培養器材上に表面固定化する反応例を示す図である。 実施例1に係るイミダゾール化プルロニックF127とプルロニックF127のプロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクトルを示す図である。 実施例2に係るプルロニックF127固定化24穴培養フラスコ上(a、b)またはポリスチレン24穴培養フラスコ上(c、d)の37℃(a,c)並びに低温にした後に培地交換した時(b,d)のマウス繊維芽L929細胞の形態写真を示す図である。 実施例3に係るプルロニック固定化細胞培養基板を様々な温度に冷却した時の、マウス繊維芽L929細胞における細胞剥離率を示す図である。 実施例4に係る様々な固定化率のプルロニック固定化細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞における4℃に冷却した時の細胞剥離率を示す図である。 実施例8に係る様々な固定化率のプルロニック固定化細胞培養基板上のマウス繊維芽L929細胞のピペッティングによる物理的処理による細胞剥離率を示す図である。

Claims (9)

  1. ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドからなるブロック共重合体を細胞培養基材上に直接共有結合で、あるいは細胞付着性物質で覆われた細胞培養基材上に共有結合で表面固定化された細胞培養支持体。
  2. ポリエチレンオキシドをA、ポリプロピレンオキシドをBとした時に、ABAまたはBABまたは(AB)n、(nは繰り返し単位であり、1から10までの整数)となるように、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドがエーテル結合、アミド結合、ペプチド結合、エポキシ結合、エステル結合を含む分子量100以下の結合部位により結合されているブロック共重合体を細胞培養基材上に直接共有結合で、あるいは細胞付着性物質で覆われた細胞培養基材上に共有結合で表面固定化された細胞培養支持体。
  3. 分子量が1,000以上20,000以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の細胞培養支持体。
  4. 請求項1、請求項2または請求項3記載の細胞培養支持体上で培養された細胞に対して、細胞を20℃以下に処理することにより細胞剥離させることを特徴とする、細胞培養支持体からの培養細胞の回収法。
  5. 請求項1、請求項2または請求項3記載の細胞培養支持体上で培養された細胞に対して、細胞を物理的振動で処理することにより細胞剥離することを特徴とする、細胞培養支持体からの培養細胞の回収法。
  6. 細胞への物理的振動が、細胞の浸漬されている液性媒体のピペッティングによる振動、液性媒体を含む容器の微小振動、あるいは液性媒体の超音波処理であることを特徴とする請求項5記載の、細胞培養支持体からの培養細胞の回収法。
  7. 請求項4、請求項5、または請求項6記載の培養細胞の回収法を利用して培養細胞の継代や増幅をする細胞培養方法
  8. 請求項1、請求項2、または請求項3記載の細胞培養支持体上で培養された細胞。
  9. 請求項4、請求項5、請求項6、または請求項7記載の方法で得られた細胞
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