JP6024796B2 - 細胞培養基材及び細胞培養方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機高分子中に水膨潤性粘土鉱物が微分散している高分子複合体からなる細胞培養基材、及び該高分子複合体からなる細胞培養基材を利用した細胞培養方法と培養細胞分離方法に関する。
従来、動物組織等の細胞培養基材としては、プラスチックやガラスの容器が使用されていた。これら容器は、培養細胞の接着性を制御するために、その表面にプラズマ処理や、シリコンや細胞接着因子等のコーティングなどの表面処理が施されている。これら細胞培養容器を培養基材として用いた場合には、細胞培養容器上で培養・増殖した細胞が表面処理された容器表面に接着しており、トリプシン等のタンパク質加水分解酵素や化学薬品を用いて、容器表面から剥離する操作を行い、回収されるため、酵素や化学薬品により細胞を剥離する際に、雑菌やDNAあるいはRNA等の不純物が混入する恐れがあった。また、細胞と基材の結合部分が切断されるだけではなく、細胞同士の結合も切断され、細胞が増殖している形状のまま回収できないだけではなく、細胞の性質が変化してしまう問題があった。また、細胞を回収する際にバラバラになり、シート状に取り出すことは困難であった。また、酵素や化学薬品による細胞の剥離は行程が煩雑であった。また、複数種の細胞培養を行う際には、培養液等の種類を交換する必要があるが、容器の交換が出来ないために、容器内部に各種薬品等が残留してしまい、これらが細胞培養に混入するおそれがあった。
また、細胞培養容器の表面に温度応答性ポリマーをコーティングした基材を使用して、細胞培養温度ではポリマーを疎水性状態に保持して細胞を接着させ、培養後にポリマーを低温処理してポリマーを親水性状態にすることにより、細胞とポリマーとの接着性を低下させ、細胞を加水分解酵素や化学薬品を使用することなしに基材から細胞をシート状に剥離するという技術が用いられている(例えば特許文献1及び2参照)。しかしながら、上記基材はポリマーの架橋度によって性能が大きく変化し、架橋が不十分な場合は、細胞を剥離する際に、細胞と共にポリマーも基材から一部剥離してしまい、細胞と基材との分離が困難であった。また架橋が十分な場合には、温度応答性の応答速度が非常に悪くなり、ポリマーを親水性にするために長時間を要する問題があり、その間、細胞も低温状態にさらされる問題があった。さらに、該基材を使用した場合には、培養した細胞を次の実験に用いる場合、例えば動物の体内に移植する場合や、他の細胞と共培養を行う場合など、シート状となった細胞を支持体なしで移動させる必要があり、細胞シート自体をポリマーコーティングされた容器から剥離して、細胞シートのみを移動させる必要があり、剥離された、非常に強度の弱い細胞シートを強引に掴んで次の実験位置等に移動させなければならず、細胞シートが傷つきやすかったり、操作性が非常に悪いという問題を有していた。これらのことから、細胞を培養した後、汚染や傷つくことなく完全に分離され、且つ短時間で、且つ任意の場所で細胞シートを取り出し、さらに次の工程に移動させ用いることが必要であった。
一方、有機高分子と無機材料を複合化して得られる高分子複合材料としては、ガラス繊維、炭素繊維などの他、タルクや炭酸カルシウムなどを有機高分子に充填したものが古くから知られている。近年、有機高分子の中にナノメートルスケールの微小サイズの無機成分を分散し複合化することにより、優れた力学物性や熱特性の改良が発現され、有機・無機ナノコンポジット材料として注目されている。
近年、本発明者らは、水溶性(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、または水溶性(メタ)アクリルアミドとN−置換(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種と水溶性(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体からなる有機高分子と、水膨潤性粘土鉱物とが三次元網目を形成してなる高分子複合体を開発し、粘土鉱物を含まない重合体または共重合体に比べて、延伸度や強度などの力学物性が顕著に向上することを報告しており(特許文献3参照)、各種分野において有用な材料であるが、細胞培養基材に関する技術は開示されていない。
特公平6−104061公報 特開平5−192138公報 特開2002−53629号公報
本発明が解決しようとする課題は、広範囲の粘土鉱物含有率において、粘土鉱物が有機高分子中に均一微細に分散し、柔軟かつ強靱な優れた力学物性を持つ高分子複合体からなる細胞培養基材、さらには培養した細胞を分離回収する際に細胞の破損や基材の混入がなく、迅速に培養した細胞を回収できる細胞培養基材、及び培養した細胞の回収が容易な細胞培養方法を提供することにある。
本発明者らは、種々検討したところ、水溶性(メタ)アクリル酸エステルを用いた重合体中に水膨潤性粘土鉱物を微分散させた高分子複合体が、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち本発明は、2−メトキシエチルアクリレート、並びにN−イソプロピルアクリルアミド及びN,N−ジメチルアクリルアミドから選択される1種以上を単量体として用いた共重合体(A)中に、水膨潤性粘土鉱物(B)が微分散している高分子複合体(C)を用いたことを特徴とする細胞培養基材を提供する。
更に、本発明は上記の細胞培養基材を使用して、該細胞培養基材が細胞接着性を示す温度条件下で細胞を培養した後、該細胞培養基材の温度を下げ、該細胞培養基材が細胞非接着性を示す温度とすることにより、培養した該細胞を該細胞培養基材から分離することを特徴とする細胞培養方法を提供する。
本発明の細胞培養基材は、水溶性(メタ)アクリル酸エステルを主に用いた重合体であるため、該重合体中に広い含有比率範囲で水膨潤性粘土鉱物を微細に分散させることができる。そして、粘土鉱物を含まない重合体または共重合体に比べて、その表面上で好適に細胞を培養、増殖させることができ、また培養後の高分子複合体を保持する条件を変えた場合は、細胞との接着性を低下させることができ、培養、増殖させた細胞の破損や、基材の剥離混入を生じることなく、容易かつ迅速に剥離回収することができる。ちなみに、粘土鉱物を含まない(メタ)アクリル酸エステルの重合体、またはその架橋物の表面では、細胞接着性は比較例に示すように観測されなかった。また本発明の細胞培養基材は、柔軟かつ強靱な材料であることから、細胞をその表面上で様々な形状のシート状に培養して、その形状を保った状態で使用することができる。
本発明の細胞培養基材は、水膨潤性粘土鉱物をナノメーターレベルで微細且つ均一に、しかも広い濃度範囲で含有することができ、また良好な延伸性と優れた強度と弾性率などの力学物性を有する高分子複合体からなり、高分子複合体の表面の平滑性及び疎水性等を細胞の接着及び伸展に適した状態に制御出来るため、優れた培養性能を有する。また本発明の細胞培養基材は、細胞培養用培地に浸漬することにより、細胞培養に適した含水率を得ることが出来、それらの結果から、様々な種類の細胞に対して、優れた培養特性を示すことが出来る。また、該高分子複合体が外部環境変化にともない細胞接着性と非接着性とが可逆的に変化することが可能である。また、本発明の高分子複合体を膨潤させた時に、優れた柔軟性と強靱さを有することから、培養した細胞を基材ごと移送する際にも形状を保持したまま、安定に培養した細胞を移送できる。さらに最初の細胞培養後に共培養を行う場合等には、培養液や薬品による汚染がなく、再度の培養を行うことが可能である。また、本発明の高分子複合体は、培養基材として使用前に安定して長期間の保存が可能である。
細胞接着性と細胞非接着性とが外部環境により可逆的に変化する高分子複合体からなる細胞培養基材は、細胞接着性の条件下では細胞を好適に培養、増殖させることができ、また細胞非接着性条件下では、トリプシン等のタンパク質加水分解酵素や化学薬品を使用せずに細胞を剥離できるため、細胞の破損や、基材の剥離混入を生じることなく、容易に細胞の回収が可能である。さらに、疎水性から親水性、あるいは親水性から疎水性への変化が迅速であるため、温度をはじめとする外部環境を変化させる際に細胞に与える影響が少ない。
本発明の細胞培養基材は、水溶性(メタ)アクリル酸エステルから得られる重合体、または(メタ)アクリルアミドとN−置換(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種と水溶性(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体からなる有機高分子(A)中に水膨潤性粘土鉱物(B)が微分散している高分子複合体(C)からなり、延伸性や柔軟性などの優れた力学物性を示す。
本発明で用いる水溶性(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミドは、水または水と有機溶媒との混合溶媒に溶解可能なものが好ましい。一方、これらを重合もしくは共重合して得られる有機高分子(A)は疎水性をより多く有し、水に溶解せず、また過度に吸水して膨潤することはなく、水中でも安定して存在するものが好ましい。即ち、本発明の細胞培養基材を構成する高分子複合体(C)は主として水溶性モノマー及び水膨潤性粘土鉱物から合成されるが、得られた高分子複合体は好ましくは水膨潤性が低く、疎水性の高い材料である。ただし、高分子複合体の親水性と疎水性とのバランスを変化させたり、他の成分との相互作用を強めるために、親水性基、イオン性基及び/または疎水性基などを必要に応じて重合体または共重合体中に導入することも可能である。
水溶性(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、実質的に水に溶解し、重合時に水膨潤性粘土鉱物(B)を微分散しうるものであり、例えばメトキシエチルアクリレート(MEA)、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。本発明の水溶性(メタ)アクリル酸エステル(a)から得られる重合体は、これら(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる単独モノマーの重合体または複数モノマーの共重合体を含む。
(メタ)アクリルアミドとN−置換(メタ)アクリルアミドとしては、(メタ)アクリルアミドとアルキル基の炭素数が1以上のアルキル(メタ)アクリルアミドであり、具体的には、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−エチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリディン、N−アクリロイルピペリディン、N−アクリロイルモルフォリン、N−アクリロイルメチルホモピペラジン、N−アクリロイルメチルピペラジンまたはN−メチルメタクリルアミドが挙げられる。
有機高分子(A)が(メタ)アクリルアミドとN−置換(メタ)アクリルアミドの少なくとも1種(b)と水溶性(メタ)アクリル酸エステル(a)との共重合体からなる場合は、前記共重合体の(a)と(b)のモル比((b)/(a))は、得られる高分子複合体の室温での疎水性を保ったまま固さや弾性率を上げるためには、モル比を1以下にすることが好ましく、特に室温での柔軟性が高く、水中での吸水率を低くするためには、モル比で0.5以下が好ましく、より好ましくは0.25以下である。
有機高分子(A)のガラス転移温度は必ずしも限定されず、広い範囲のものが用いられるが、加工性や室温での延伸性や伸縮性などからは、有機高分子(A)はガラス転移温度が100℃以下であるものが好ましく、より好ましくは30℃以下、特に好ましくは0℃以下のものが用いられる。
水膨潤性粘土鉱物(B)としては、層状に剥離可能な膨潤性粘土鉱物が用いられ、好ましくは水または水と有機溶媒との混合溶液中で膨潤し均一分散可能な粘土鉱物、特に好ましくは水中で分子状(単一層)又はそれに近いレベルで均一分散可能な無機粘土鉱物が用いられる。より具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母などが挙げられる。
用いる開始剤及び触媒としては、公知のラジカル重合開始剤や触媒を適時選択して用いることができる。好ましくは水分散性を有し、系全体に均一に含まれるものが好ましく用いられる。具体的には、重合開始剤として、水溶性の過酸化物、例えばペルオキソ二硫酸カリウムやペルオキソ二硫酸アンモニウム,水溶性のアゾ化合物、例えばVA−044、V−50、V−501(いずれも和光純薬工業株式会社製)の他、鉄イオン(II)と過酸化水素との混合物などが例示される。
触媒としては、3級アミン化合物であるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどは好ましく用いられる。但し、触媒を必ずしも用いなくてもよい。重合温度は、0〜80℃の間で、重合時間は数十秒〜数十時間の間で行うことができる。
また本発明においては、有機架橋剤として少量の多官能有機架橋剤を併用することも可能であり、もっとも代表的にはN,N’−メチレンビスアクリルアミドが例示される。
本発明の細胞培養基材を構成する高分子複合体(C)は、有機高分子(A)中に水膨潤性粘土鉱物(B)が微細に分散した構造となっている。
水膨潤性粘土鉱物(B)の微細に分散した状態は、水膨潤性粘土鉱物(B)の濃度や、高分子複合体(C)の合成条件および延伸条件により変化するが、好ましくは、1層または10層以内に層状剥離した水膨潤性粘土鉱物(B)が、高分子複合体(C)中に単独で分散している場合、水膨潤性粘土鉱物(B)と有機高分子(A)が分子レベルで複合体を形成して分散した状態、更にそれらの状態の水膨潤性粘土鉱物(B)が高分子複合体(C)中で三次元網目を形成した状態などがあげられ、単独または混在した状態が用いられる。更に延伸により、これらの水膨潤性粘土鉱物(B)が配向したものも用いられる。
有機高分子(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)との相互作用は、効果的な微分散を達成できれば、イオン結合、水素結合、疎水結合、配位結合、共有結合などのいずれが一つ又は複数であって良い。該複合体は、合成直後はまだ水をかなり含んでおり、例えば水含有率(高分子複合体の固形分に対する質量%、以下同じ)が200〜800質量%であることが多く、強度的には弱い場合が多い。かかる複合体としては、合成直後のものを乾燥し、上記水含有率が好ましくは100質量%以下、より好ましくは50質量%以下、最も好ましくは20質量%以下のものとすることで、有機高分子(A)と水膨潤性粘土鉱物(B)の相互作用が大きく強化され、細胞接着性と優れた力学物性を有する特徴が発現される。いったん乾燥して得られた高分子複合体は、再度水中に入れても、白色化するが均一であり、大きく膨潤したり、また大きく強度が低下することはない。
また、本発明の効果を妨げない範囲で、前記有機高分子(A)を構成する重合成分と共に他の重合性有機分子などを併用、または得られる高分子複合体に機能性を付与する目的で有機または無機の各種機能性分子や粒子を添加して良い。特に、細胞接着性及び細胞増殖性を向上させる高分子化合物や低分子化合物等について、本発明の効果を損なわない範囲で添加することは好んで用いられ、例えばコラーゲンやヒアルロン酸等の細胞接着性因子,細胞増殖因子、ヒドロキシアパタイト粒子などを添加することができる。
本発明においては、高分子複合体(C)中に水膨潤性粘土鉱物(B)を微分散させることが必須であり、通常の有機架橋剤を全く用いないで水膨潤性粘土鉱物のみで前記力学物性および透明性を発現することが可能である。特に好ましくは、有機架橋剤を用いずに調製されるが、モノマーや反応条件の選択によっては、また細胞接着性や物性制御のためには、有機架橋剤を併用することが好ましい場合もある。粘土鉱物を用いない場合、即ち線状高分子だけの場合や有機架橋剤のみを用いた場合は、得られる複合体は細胞接着性が無く、延伸性や強度などの力学物性も低い材料となる。有機架橋剤を水膨潤性粘土鉱物と併用して用いると、細胞接着性は保持したまま、弾性率や延伸性などを制御した高分子複合体が得られる。具体的には、有機架橋剤を併用することで、延伸性を減少させ、弾性率を増加させる制御が行える。併用して用いる有機架橋剤の量としては、2モル%以下、より好ましくは1モル%以下、特に好ましくは0.5モル%以下である。
本発明の細胞培養基材を構成する高分子複合体(C)は、有機高分子(A)に対する水膨潤性粘土鉱物(B)の質量比が0.003〜3であることが好ましく、より好ましくは0.005〜2、特に好ましくは0.01〜1である。該質量比が0.003未満では機械的性質が高分子複合体として不十分となりやすく、3を超えると水膨潤性粘土鉱物の均一微細分散が困難となりやすい。
本発明の細胞培養基材を構成する高分子複合体(C)は、水膨潤性粘土鉱物の含有率によらず乾燥物は均一で透明性を有し、透明性を低下させるような水膨潤性粘土鉱物のミクロンサイズの不均一な凝集は観測されない。最終的には水膨潤性粘土鉱物の含有率は熱質量分析(TGA)により、また微細分散性は透過型電子顕微鏡(TEM)観察により測定される。該高分子複合体は、用いた水膨潤性粘土鉱物の全量が高分子複合体に含まれていることがTGAにより確認され、且つ1〜数ナノメーターの厚みの層状粘土鉱物層が均一に分散しているのがTEMにより確認される。
本発明の細胞培養基材を構成する高分子複合体は、通常用いられる有機架橋剤を一切添加していない場合でも、優れた力学物性、特に高い延伸性と伸縮性を示すことから、有機高分子と微細分散した水膨潤性粘土鉱物が相互作用して三次元網目を形成していると推定される。一方、水膨潤性粘土鉱物を含まない線状高分子及び有機架橋剤のみを添加して三次元網目を形成したものは、比較例に示すようにいずれも該高分子複合体に比べて極めて低い力学物性しか示さない。このことは、本発明の細胞培養基材を構成する高分子複合体が、従来にない効果的な複合構造を形成していることを示唆している。疎水性の高い有機高分子(A)の多くは架橋剤に束縛されることなく、自由鎖として存在しているため、優れた力学物性を有するが、親水性である水膨潤性粘土鉱物(B)との相互作用により、細胞接着に適した疎水性を有することとなり、優れた細胞接着性が実現される。
上記構造の形成は、透過型電子顕微鏡やX線回折測定による水膨潤性粘土鉱物の微細分散の他、以下に示す優れた延伸性や高い破断強度の達成、動的粘弾性測定や示差走査熱量分析(DSC)などによる水膨潤性粘土鉱物層間の有機高分子の自由鎖に近いガラス転移温度の測定によっても確認された。
本発明の細胞培養基材を構成する高分子複合体は、優れた力学物性を示し、例えば伸びについては、実質的に水含有量が0になっても数百%〜3000%の破断伸びを示し、3000%以上の大きい破断伸びを有する高分子複合体も得られる。また、本発明の高分子複合体は粘土鉱物を含有しない有機架橋高分子や線状高分子に比べて非常に高い破断強度を示す。具体的には、高分子複合体の引っ張り強度が500kPa以上、引っ張り破断伸びが200%以上,且つ引っ張り伸び100%での弾性率が50kPa以上である。また、得られた高分子複合体を100%以上、好ましくは100%〜3000%に延伸することにより、高分子複合体の延伸物を得ることができる。得られた高分子複合体延伸物は、延伸処理を行った後であるにもかかわらず、優れた延伸性(100%〜1500%)を保持しており、特に高い柔軟性と優れた伸縮性を有することが特徴である。具体的には、高分子複合体延伸物の引っ張り強度が1000kPa以上,引っ張り破断伸びが200%以上、且つ引っ張り100%での弾性率が100kPa以上である。得られた高分子複合体延伸物も優れた細胞接着性を有しており、高分子複合体を延伸状態で、あるいは細胞の接着と伸展を妨げない範囲での延伸と収縮を繰り返しながらの細胞培養が可能である。
本発明の細胞培養基材を使用して培養を行うことが可能な細胞は、ヒト及び動物の組織細胞であれば特に制限はなく、例えば、血管細胞、繊維芽細胞、筋肉細胞、神経細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、肝細胞、膵臓細胞、角膜細胞などが挙げられる。これらのうち、血管内皮細胞、皮膚繊維芽細胞、肝実質細胞、肝ガン細胞、軟骨細胞等好ましく用いられる。特に本発明においては、皮膚繊維芽細胞、血管内皮細胞、軟骨細胞などの培養に好適に使用できる。
本発明の細胞培養基材を構成する高分子複合体は、水に浸漬すると吸水することにより白色化するが、本発明において可能な培養細胞に用いられる液体培地に浸漬しても、ほとんど含水せず透明な状態を保つことができる。このため、培地浸漬によっても力学物性は乾燥状態とほとんど変化せず、優れた延伸性等を保つことができる。
また、本発明の細胞培養基材を構成する高分子複合体は、細胞培養基材として使用する場合、重合して乾燥後に精製を行う必要があり、特にその方法には限定されないが、高分子複合体の構造を保持できる水又は有機溶媒による洗浄により精製を行うことが出来る。例えば、クリーンベンチ内で水又は有機溶媒に高分子複合体を浸漬し、水又は有機溶媒を適宜交換することにより精製され、再度乾燥させることによって、精製された高分子複合体を得ることが出来る。
本発明の細胞培養基材を構成する高分子複合体(C)は、細胞培養後、外部環境条件に応じて細胞接着性から細胞非接着性に変化する性質を有する。このため、該高分子複合体からなる細胞培養基材は細胞を好適に培養することが出来、且つ培養した細胞の破壊や基材の剥離混入を生じることなく、培養した細胞を容易且つ迅速に剥離回収することが可能である。
該高分子複合体の細胞接着性と細胞非接着性とを外部環境条件に応じて変化させるには、外部温度を変化させることが簡便であり、細胞にとっても負荷の少ないことから最も都合が良く、該高分子複合体が細胞接着性を有する33℃〜40℃の温度範囲で細胞培養を行った後、該高分子複合体が細胞非接着性を示す0℃〜25℃程度の温度範囲で保持することにより、培養した細胞を迅速に剥離し、回収することが可能となる。
温度変化により、細胞の接着性、非接着性が変化するメカニズムとしては、高分子複合体(C)の含水率や最表面における微細構造が変化することが推定される。該高分子複合体を保持する温度が33℃〜40℃の範囲においては、高分子複合体の含水量は乾燥状態の重量に対して10%未満であり、優れた細胞接着性を有する疎水性であるが、保持する温度が0℃〜25℃程度である場合は、含水量がやや増加し、乾燥状態の重量に対して10%以上となり、親水性が高くなり細胞非接着性となる。この含水量の変化は該高分子複合体に含まれる粘土鉱物量、及び保持する温度によっても異なるが、含水量が乾燥状態の重量に対して20%以上であることが好ましく、30%以上であればより好ましい。
本発明の細胞培養基材に用いられる高分子複合体(C)は、単独で用いられる他、金属、セラミック、プラスチック等の平滑表面または凹凸表面を有する支持体に被覆して用いられる。また、各種形状に成形が可能であり、シート状、繊維状、中空繊維状、球状等で用いることが出来る。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(作製例1)
水膨潤性粘土鉱物には、[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na 0.66の組成を有する水膨潤性合成ヘクトライト(Rockwood Ltd.製「ラポナイトXLG」)を真空乾燥して用いた。アクリル酸エステルとしては、2−メトキシエチルアクリレート(和光純薬株式会社製:以下、MEAと略記。)を既知の方法により精製して、重合禁止剤を取り除いてから使用した。重合開始剤は、ペルオキソ二硫酸カリウム(関東化学株式会社製:以下、KPSと略記。)を脱酸素した超純水中に溶解し、水溶液にして使用した。触媒は、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(和光純薬工業株式会社製:以下、TEMEDと略記。)を使用した。重合に使用する超純水は、含有酸素を除去してから使用した。
内部を窒素置換した平底ガラス容器に、超純水57.06gを入れ、攪拌しながら0.96gのラポナイトXLGを加え、無色透明の溶液を調製した。これにMEA8.58gを加え、窒素雰囲気内で攪拌して溶解させ無色透明溶液を得た。次に、KPS水溶液3gとTEMED48μlを攪拌しながら無色透明溶液に加えた。この溶液をあらかじめ窒素雰囲気中に静置しておいた蓋付きのポリスチレン製容器(9cm×15cm)2枚にそれぞれ酸素にふれないようにして移した後、密栓をし、20℃の恒温水槽中で20時間静置して重合を行った。なお、これらの溶液調製から重合までの操作は、全てクリーンベンチ内にて行い、さらに酸素を遮断した窒素雰囲気下で行った。重合開始から20時間後に、ポリスチレン製容器内に白色で均一なシート状の含水高分子複合体(C’−1)が水中で遊離して得られた。
得られた含水高分子複合体(C’−1)中に水膨潤性粘土鉱物などによる不均一な凝集は観測されず、均一な白色固体(水含有率372質量%)であった。100℃で質量が一定になるまで真空乾燥することで、透明な高分子複合体(C−1)を得た。乾燥質量から計算した高分子重合収率は99.5質量%であった。この高分子複合体(C−1)を滅菌されたポリスチレン容器に入れ、注射用水(大塚製薬製)1Lを加えて密閉した。24時間ごとに注射用水を3回交換し、精製された含水高分子複合体を得た。再度この含水高分子複合体を真空乾燥することで、精製された透明な高分子複合体(C−1)を得た。なお、これらの精製工程はすべてクリーンベンチ内で行った。この得られた高分子複合体(C−1)を600℃までの熱質量分析(セイコー電子株式会社製TG−DTA−220:空気流通下、昇温:10℃/分)を行い、粘土鉱物含有率を求めた。粘土鉱物含有率(無機粘土/高分子複合体)は9.5質量%であり、重合溶液組成からの計算値をほぼ一致した。またKBr法によるフーリエ変換赤外線吸収スペクトル(FT−IR)の測定において、ポリ(2−メトキシエチルアクリレート)(PMEA)と水膨潤性粘土鉱物の特性ピークが確認された。
乾燥した高分子複合体(C−1)をエポキシ樹脂中に包埋後、厚さ50μmの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡観察を行った(日本電子株式会社製JEM−200CX使用)ところ、1〜数nmの厚みの層状粘土鉱物が微細且つ均一に分散しているのが観察された。また乾燥した高分子複合体(C−1)のX線回折測定(理学電機社製RX−7使用:CuKα線)を行ったところ、低角側に大きなピークは観測されなかった。以上の結果より、本実施例で得られた固体は、水膨潤性粘土鉱物とPMEAからなる高分子複合体であって、粘土鉱物含有量は9.5%であり、且つ水膨潤性粘土鉱物が均一に微細分散したものであることがわかった。
乾燥した高分子複合体(C−1)の動的粘弾性をセイコー電子工業株式会社製DMA−200を使用し、測定周波数1Hz、昇温2℃/分で測定した結果、高分子複合体(C−1)は約−34℃にガラス転移温度(Tg)を示した。また、Tgよりも低い温度では高い弾性率を示し、Tg以上の温度では広い温度範囲にわたって安定したゴム領域の弾性率を示した。一方、示差走査熱量分析(DSC)測定(パーキンエルマー社製DSC−7使用)においても、−34℃にガラス転移温度が観測され、この温度は粘土鉱物を用いないで調製した線状高分子乾燥物のガラス転移温度と同等であった。
乾燥した高分子複合体(C−1)を1cm×5cmの大きさに切り取り、チャック部での滑りの無いようにして引っ張り試験装置(株式会社島津製作所製「卓上型万能試験機AGS−H」)に装着し、評点間距離=20mm、引っ張り速度=100mm/分にて引っ張り試験を行った結果、初期弾性率は27MPa、破断伸びが1850%、破断強度が2.6MPaであった。引っ張り試験後の高分子複合体の残留歪みは約100%であり、ゴム的な伸縮性とタフネスを示した。かかる優れた力学物性、有機架橋剤を何ら使用していないのにゴム的な伸縮性を有すること、及び水膨潤性粘土鉱物の微細分散性、重合体のガラス転移温度などから、この高分子複合体(C−1)では、有機高分子と水膨潤性粘土鉱物の微細分散性、重合体のガラス転移温度などから、有機高分子中に水膨潤性粘土鉱物が微分散していると結論された。
(実施例1)(参考例)
上記作製例1で得られた高分子複合体(C−1)を、直径8cmの大きさに切断し、細胞培養基材(A)とした。それを細胞培養用ディッシュ(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア社製「ファルコン3003」)の中に移し替えてから蓋をして37℃で静置した。なお、これらの操作は、すべてクリーンベンチ内で行った。
このようにして得られた細胞培養基材(A)を入れた細胞培養ディッシュを用いて、細胞の培養を行った。培養する細胞は、ヒト肝上皮細胞由来のガン細胞HepG2細胞株(大日本製薬株式会社製)を使用した。培養は、ウシ胎児血清(ICN製)を10%含有するミニマム・エッセンシャル・イーグル培地(SIGMA製)(ピルビン酸(ICN製)及び非必須アミノ酸(ICN製)を添加剤として含有)を使用して、5%二酸化炭素含有37℃恒温器内で行った。また細胞培養基材(A)を入れたディッシュは2枚用意し、同じ条件で同時に播種を行った。播種してから1週間後、この細胞培養基材(A)を入れたディッシュ1枚を20℃恒温槽内に5分間静置してから、表面を光学顕微鏡にて観察したところ、細胞が細胞培養基材(A)上に接着して、また十分に増殖していたことが確認された。この培養を行ったもう1枚の細胞培養基材(A)を入れたディッシュから細胞培養基材(A)を培養した細胞ごと取り出して、あらかじめ20℃に保持しておいたウシ胎児血清を10%含有するミニマム・エッセンシャル・イーグル培地を含む組織培養ディッシュに移し替えた。蓋をしてから20℃で10分間静置後、細胞培養基材(A)上に増殖した細胞をピンセットで摘むことにより、細胞を細胞培養基材(A)から分離できた。この時、細胞培養基材(A)に何ら損傷はなく、また分離した細胞にも何ら付着物は見られなかった。この取り出した細胞について、トリプシン−EDTA処理を行うことにより、各細胞を個々の状態に分離した後、トリパンブルー染色を行うことによって、生細胞数を計測したところ、培養開始時には2.0×10個であった細胞数が、培養後は9.7×10個に増加したことが確認された。また、別に用意しておいた2枚の細胞培養基材(A−1及びA−2)を細胞培養ディッシュ内に入れて37℃で静置しておき、そこにあらかじめ37℃で保持しておいた上記の培地を添加し、37℃で1週間保持した。その後細胞培養基材(A−1)は細胞培養ディッシュから取り出し、また細胞培養基材(A−2)はそのまま20℃で10分間静置してから取り出した。それぞれの細胞培養基材を乾燥させることにより、含水量を求めたところ、37℃で取り出した細胞培養基材(A−1)は乾燥状態の重量に対して8%であったのに対して、20℃で取り出した細胞培養基材(A−2)は25%であり、静置温度を下げることにより含水量が増加したことが確認された。
(実施例2)(参考例)
上記実施例1で得られた細胞培養基材(A)を入れた細胞培養ディッシュを用いて、細胞の培養を行った。培養する細胞は、正常ヒト皮膚繊維芽細胞(大日本製薬株式会社製)を使用した。培養は、CS−C培地(大日本製薬株式会社製)を使用して、5%二酸化炭素含有37℃恒温器内で行った。また細胞培養基材(A)を入れたディッシュは2枚用意し、同じ条件で同時に播種を行った。播種してから1週間後、この培養を行った細胞培養基材(A)を入れたディッシュ1枚を20℃恒温槽内に5分間静置してから、表面を光学顕微鏡にて観察したところ、細胞が細胞培養基材(A)上に接着して、また十分に増殖していたことが確認された。この培養を行ったもう1枚の細胞培養基材(A)を入れたディッシュから細胞培養基材(A)を培養した細胞ごと取り出して、あらかじめ20℃に保持しておいたCS−C培地を含む組織培養ディッシュに移し替えた。蓋をしてから20℃で10分間静置後、細胞培養基材(A)上に増殖した細胞をピンセットで摘むことにより、細胞をシート状に細胞培養基材(A)から分離できた。この時、細胞培養基材(A)に何ら損傷はなく、またシート状の細胞にも何ら付着物は見られなかった。この取り出したシート状細胞についてトリプシン−EDTA処理を行うことにより、各細胞を個々の状態に分離した後、トリパンブルー染色を行うことによって、生細胞数を計測したところ、培養開始時には2.5×10個であった細胞数が、培養後は7.2×10個に増加したことが確認された。また、実施例1と同様に含水量の変化を求めたところ、37℃で8%であったものが、20℃では28%と増加したことが確認された。
(作製例2)
MEAを8.58gを用いる代わりに、MEA5.5g(4.2×10−2モル)とN−イソプロピルアクリルアミド(NIPA:興人株式会社製)1.18g(1.0×10−2モル)との混合物を用いること以外は作製例1と同様にして、含水高分子複合体(C’−2)を調製した。得られた含水高分子複合体は、均一な水膨潤性粘土鉱物と共重合体からなる高分子複合体であり、水膨潤性粘土鉱物などの不均一な凝集は観測されなかった。得られた含水高分子複合体(C’−2)を作製例1と同様にして100℃で真空乾燥を行い、その後さらに精製を行い、透明な乾燥した高分子複合体(C−2)を得た。作製例1と同様に測定したところ、この高分子複合体中の粘土鉱物含有率は12.2%であった。また作成例と同様にして、乾燥した高分子複合体(C−2)の引っ張り試験を行ったところ、弾性率4.8MPa、破断強度4.5MPa、破断伸び700%のタフネス、柔軟性のある高分子複合体であった。
(実施例3及び実施例4)
上記作製例2で得られた高分子複合体(C−2)を、直径8cmの大きさに切断し、細胞培養基材(B)とした。それを細胞培養用ディッシュ(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア社製「ファルコン3003」)の中に移し替えてから蓋をして37℃で静置した。なお、これらの操作は、すべてクリーンベンチ内で行った。
実施例1及び実施例2と同様にして、細胞培養基材(B)を用いて細胞の培養を行った。細胞はヒト肝ガン細胞HepG2細胞株(実施例3)及び正常ヒト皮膚繊維芽細胞(実施例4)を用いた。それぞれの細胞を播種して1週間後に培養を行った細胞培養基材(B)の表面を光学顕微鏡で観察したところ、細胞が細胞培養基材(B)上に接着して、また十分に増殖していたことが確認された。実施例1及び実施例2と同様の方法で、これらの培養を行ったそれぞれもう1枚の細胞培養基材(B)からの細胞の剥離を行ったところ、実施例3及び実施例4のいずれも細胞を細胞培養基材(B)から分離することが出来た。また実施例1と同様の方法で培養後の各細胞数を計測したところ、培養開始時には2.0×106個(実施例3)、2.5×10個(実施例4)であった細胞数が、それぞれ1.0×108個(実施例3)、8.9×10個(実施例4)に増加したことが確認された。また、実施例1と同様に含水量の変化を求めたところ、実施例3及び実施例4の場合のいずれも37℃で10%であったものが、20℃では60%と増加したことが確認された。
(作製例3)
ラポナイトXLGを添加した後に、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬工業株式会社製)を0.084g加えること以外は作製例1と同様にして、含水高分子複合体(C’−3)を得た。得られた含水高分子複合体(C’−3)は均一な固体であり、水膨潤性粘土鉱物などの不均一な凝集は観測されなかった。得られた含水高分子複合体(C’−3)を作製例1と同様にして100℃で真空乾燥を行い、その後さらに精製を行って、透明な乾燥した高分子複合体(C−3)を得た。作製例1と同様にしてこの乾燥した高分子複合体(C−3)の引っ張り試験を行ったところ、弾性率3.8MPa、破断強度1.8MPa、破断伸び400%の高い弾性率と破断伸びを示した。
(実施例5)(参考例)
上記作製例3で得られた高分子複合体(C−3)を直径8cmの大きさに切断し、細胞培養基材(C)とした。それを細胞培養用ディッシュ(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア社製「ファルコン3003」)の中に移し替えてから蓋をして37℃で静置した。なお、これらの操作は、すべてクリーンベンチ内で行った。
実施例2と同様にして、細胞培養基材(C)を用いて、正常ヒト繊維芽細胞の培養を行った。細胞を播種して1週間後に、培養を行った細胞培養基材(C)の表面を光学顕微鏡で観察したところ、細胞が細胞培養基材(C)上に接着して、また十分に増殖していたことが確認された。実施例2と同様の方法で、この培養を行ったもう1枚の細胞培養基材(C)からの細胞の剥離を行ったところ、培養後の細胞を細胞培養基材(D)から分離することが出来た。また実施例1と同様の方法で培養後の各細胞数を計測したところ、培養開始時には2.5×10個であった細胞数が、9.2×10個に増加したことが確認された。また、実施例1と同様に含水量の変化を求めたところ、37℃で8%であったものが、20℃では28%と増加したことが確認された。
(作製例4)
上記作製例1で得られた乾燥した高分子複合体(C−1)を、作製例1に記載した引っ張り試験と同様の方法で元の長さの30倍まで一軸延伸を行い、高分子複合体延伸物を調製した。高分子複合体延伸物を調製時の残留歪みは110%であった。
(実施例6)(参考例)
上記作製例4で得られた高分子複合体延伸物を直径8cmの大きさに切断し、細胞培養基材(D)とした。それを細胞培養用ディッシュ(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア社製「ファルコン3003」)の中に移し替えてから蓋をして37℃で静置した。なお、これらの操作は、すべてクリーンベンチ内で行った。
実施例2と同様にして、細胞培養基材(D)を用いて、正常ヒト繊維芽細胞の培養を行った。細胞を播種して1週間後に、培養を行った細胞培養基材(D)の表面を光学顕微鏡で観察したところ、細胞が細胞培養基材(D)上に接着して、また十分に増殖していたことが確認された。実施例2と同様の方法で、この培養を行ったもう1枚の細胞培養基材(D)からの細胞の剥離を行ったところ、培養後の細胞を細胞培養基材(D)から分離することが出来た。また実施例1と同様の方法で培養後の各細胞数を計測したところ、培養開始時には2.5×10個であった細胞数が、8.0×10個に増加したことが確認された。また、実施例1と同様に含水量の変化を求めたところ、37℃で8%であったものが、20℃では29%と増加したことが確認された。
(比較例1)
水膨潤性粘土鉱物を用いないこと以外は作製例1と同様にして、20℃で20時間重合を行ったところ、白濁した固体の重合物が得られた。この重合物は柔らかいが非常に脆く、またポリスチレン製容器との付着性が強く、ポリスチレン製容器から取り出そうとしたところ、剥離が困難であり、剥離に伴いすぐに破壊された。さらに細かく破壊された重合物を用いて実施例1と同様の方法で精製後、細胞培養用ディッシュに移し替えて、細胞の培養を行ったところ、細胞は重合物には全く接着せず、細胞を培養することは出来なかった。
(比較例2)
水膨潤性粘土鉱物を用いないこと、MEAを添加した後、有機架橋材としてN,N’−メチレンビスアクリルアミドをMEAの3モル%添加する以外は作製例1と同様にして、20℃で20時間重合を行ってPMEAの有機架橋物を得た。このPMEAの有機架橋物は白濁した非常に脆いゲルであり、またポリスチレン製容器との付着性が強く、ポリスチレン製容器から取り出そうとしたところ、剥離が困難であり、剥離に伴いすぐに破壊された。さらに細かく破壊されたPMEAの有機架橋物を用いて実施例1と同様の方法で精製後、細胞培養用ディッシュに移し替えて、細胞の培養を行ったところ、細胞はPMEAの有機架橋物には全く接着せず、細胞を培養することは出来なかった。

Claims (4)

  1. 2−メトキシエチルアクリレート(a)及びN−イソプロピルアクリルアミド(b)を単量体として用いた共重合体(A)中に、水膨潤性粘土鉱物(B)が微分散している高分子複合体(C)を用い
    前記2−メトキシエチルアクリレート(a)に対するN−イソプロピルアクリルアミド(b)のモル比((b)/(a))が0.5以下である、細胞培養基材。
  2. 保持温度0〜25℃における、前記高分子複合体(C)の乾燥状態の重量に対する含水量が30%以上である、請求項1に記載の細胞培養基材。
  3. 前記水膨潤性粘土鉱物(B)が、水膨潤性合成ヘクトライトである、請求項1又は2に記載の細胞培養基材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の細胞培養基材を使用して、該細胞培養基材が細胞接着性を示す温度条件下で細胞を培養した後、該細胞培養基材の温度を下げ、該細胞培養基材が細胞非接着性を示す温度とすることにより、培養した該細胞を該細胞培養基材から分離することを特徴とする細胞培養方法。
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