JP2006217878A - 細胞培養担体 - Google Patents

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Abstract

【課題】培養した細胞層を短時間で剥離することができ、かつ剥離性等の物性が安定した、透明性のある細胞培養担体の提供。
【解決手段】支持体である高分子含水ゲル層、及び細胞培養面側最表面層に細胞接着性ゲル層を有し、該高分子含水ゲル層と該細胞接着性ゲル層との間にアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を有する細胞培養担体。

Description

本発明は、細胞培養の技術に関し、具体的には、細胞培養担体、該細胞培養担体を利用した細胞の培養方法、該培養方法により得られる細胞培養物、該細胞培養物を利用した細胞層の重層化方法、該重層化方法により得られる重層化した細胞層に関する。
高分子含水ゲルは、生体に類似した構造を持ち、温度、酸性・アルカリ性等の外部条件によって膨張、収縮する性質を有するため、人工筋肉などの人工臓器・組織への応用、内部に薬剤を封入して放出量をコントロールする医療分野への応用のみならず、各種サイトカイン等を含むゲルとして細胞を培養する際に細胞成長の足場としての利用も試みられている。
高分子含水ゲルの中でも温度応答性高分子であるポリN-イソプロピルアクリルアミド(以下「PNIPAM」と称する)は、低温では膨潤して液状であるが、34℃付近で相転移し急激に収縮しゲル化する。従来、培養細胞の階層化を行なうに当たり、37℃の温度条件下、ゲル化したPNIPAM上で培養した細胞をPNIPAMごと別の細胞層に重ね、その後34℃以下に下げることによりPNIPAMを液状化させて取り除き、細胞同士を直接重ねるという手法が取られていた(特許文献1:特公平6−104061号公報;非特許文献1:清水達也、岡野光夫、バイオサイエンスとバイオインダストリー、58(12)、851頁(2000);非特許文献2:大和雅之、岡野光夫、臨外、56(1)、53頁(2001);非特許文献3:大和雅之、岡野光夫、Materials Integration、13(2)、58頁(2000);非特許文献4:大和雅之、串田愛、岡野光夫、蛋白質・核酸・酵素、45(10)、72頁(2000);非特許文献5:大和雅之、廣瀬志弘、播元正美、岡野光夫、蛋白質・核酸・酵素、45(13)、162頁(2000))。
PNIPAM上で細胞培養を行った場合、通常、細胞は単層状に成長する。この際、隣り合った細胞同士ではコラーゲン等の細胞外マトリックス(Extracellular Matrix)(以下「ECM」と称する)が形成される。そして、細胞が増殖するためには、ECMに接着する必要がある。しかし、細胞の上部及び細胞と基底層であるPNIPAM間は他の細胞と接着しておらず、細胞接着に必要なECMは形成されない。
従って、PNIPAM上で培養した単層の細胞層同士を重層し、細胞層を34℃以下の条件下でPNIPAMを可溶化して取り除き、細胞同士が直接接するように重ねても、上部に重ねた細胞は、増殖するための足場が十分でなく、従って安定した増殖は望むことができなかった。また、液状化したPNIPAMが細胞毒として作用するため細胞の正常な成長を阻害する現象も認められるため、細胞の階層化の手段としては極めて不向きで不安定な技術であった。
上記の手法の問題点の解決のため、各種ゲル上に細胞外マトリックス成分を重層化しゲル化させた培地での細胞培養、及び重層後に不要となったゲルを容易に除去できるような培地を使用した培養系の確立につき検討が続けられていた。特許第3261456号公報(特許文献2)においては、多孔質膜と該多孔質膜上にアルギン酸ゲル層と細胞外マトリックス成分ゲル層又は細胞外マトリックス成分スポンジ層を形成させたことを特徴とする細胞培養担体が提案されている。しかし、この細胞培養担体では、細胞外マトリックス層が厚く、乾燥膜の状態で細胞培養担体を保管することが不可能であった。また、細胞の重層化操作にも邪魔になり安定に重層化細胞を得られない問題があった。
特開2003-259862号公報(特許文献3)には、細胞外マトリックス層を薄くして上記課題を解決した細胞培養担体が開示されているが、これらの公報に記載されている多孔質膜は透明性がなく、細胞培養中に生きた細胞の育成状況を目視又は顕微鏡等により直接観察することができない。シャーレ上に置いた細胞培養担体の周りのシャーレ上での細胞の育成状態から細胞担体上の細胞の状況を同等状態であると類推していたが、細胞培養担体の周りのシャーレ上での細胞の育成状態は、細胞担体上の細胞の状態と必ずしも一致せず、細胞の増殖が不足していたり、オーバーコンフルエントであったりする問題点があった。また、これらの細胞培養担体で用いられている細胞培養担体は、用いられているアルギン酸が天然物由来のポリマーであるため、原材料の種類、産地、季節などの要因により物性、特に溶解性に影響するウロン酸組成比(マンヌロン酸及びグルロン酸)が変動する場合があり、品質が安定しないという問題があった。したがって、通常の細胞培養で用いるシャーレのような透明性を有し、かつ品質の安定した細胞培養担体が望まれていた。
特公平6−104061号公報 特許第3261456号公報 特開2003-259862号公報 清水達也、岡野光夫、バイオサイエンスとバイオインダストリー、58(12)、851頁(2000) 大和雅之、岡野光夫、臨外、56(1)、53頁(2001) 大和雅之、岡野光夫、Materials Integration、13(2)、58頁(2000) 大和雅之、串田愛、岡野光夫、蛋白質・核酸・酵素、45(10)、72頁(2000) 大和雅之、廣瀬志弘、播元正美、岡野光夫、蛋白質・核酸・酵素、45(13)、162頁(2000)
本発明の課題は、培養した細胞層を短時間で剥離することができ、かつ剥離性等の物性が安定した、透明性のある細胞培養担体を提供することである。本発明はさらに、該細胞培養担体を用いた安定的かつ容易に培養細胞層を重層化する技術の提供を課題とする。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行い、アニオン性ポリマーを含むゲル層及びキトサンゲル等の高分子含水ゲルを支持体として有する細胞培養担体が、細胞層を短時間で剥離することができ、かつ剥離性等の物性が安定していることを見出した。本発明はこれらの知見を基に完成されたものである。
すなわち本発明は、支持体である高分子含水ゲル層、及び細胞培養面側最表面層に細胞接着性ゲル層を有し、該高分子含水ゲル層と該細胞接着性ゲル層との間にアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を有する細胞培養担体を提供する。本発明の好ましい態様によれば、高分子含水ゲル層とアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層とが隣接している上記の細胞培養坦体;及び細胞培養面側最表面層とアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層とが隣接している上記いずれかの細胞培養坦体が提供される。
本発明の別の好ましい態様によれば、アニオン性合成ポリマーがカルボン酸基を有するポリマーである上記いずれかの細胞培養坦体;高分子含水ゲル層の厚さが0.01μm以上50μm以下である上記いずれかの細胞培養坦体;高分子含水ゲルがキトサンである上記いずれかの細胞培養坦体;細胞接着性ゲルがゼラチン、コラーゲン、及びフィブロネクチンからなる群から選択される1種以上を含むゲルである上記いずれかの細胞培養坦体;及び細胞接着性ゲルが細胞接着性コラーゲンを含むゲルである上記いずれかの細胞培養坦体が提供される。
本発明のさらに好ましい態様によれば、電子線、γ線、紫外線のいずれか又は複数を照射することで滅菌された上記いずれかの細胞培養坦体が提供される。
本発明の別の観点からは、上記いずれかの細胞培養担体を用いて細胞を培養する工程を含む細胞の培養方法;上記いずれかの細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物におけるアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により細胞シートを得る工程を含む細胞培養方法;及び可溶化処理を、キレート剤を含みかつ多価金属カチオンが2.6 mM以下である培地を用いて行う該細胞培養方法;及び上記いずれかの細胞培養方法で得られる細胞シートが提供される。
本発明のさらに別の観点からは、上記いずれかの細胞培養担体を用いて細胞を培養する工程を含む細胞の培養方法により得られる細胞培養物を他の細胞培養担体上でさらに培養する工程を含む細胞転写法;該細胞転写法により得られる細胞培養物におけるアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により得られる細胞培養物又は細胞シート;可溶化処理を、キレート剤を含みかつ多価金属カチオンが2.6 mM以下である培地を用いて行う該細胞培養物又は細胞シート;上記いずれかの一項に記載の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物を他の培養細胞上に培養する工程を含む細胞重層化法;及び該細胞重層化法により得られる細胞培養物におけるアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により得られる重層化細胞培養物または重層化細胞シートが提供される。
本発明により、細胞層の転写又は重層化を容易に行なうことができる細胞培養担体が提供される。
細胞培養担体とは、細胞を培養する際の担体又は支持体となり得るものを意味する。本発明の細胞培養担体はシート状であるのが好ましい。
本発明の細胞培養担体は支持体である高分子含水ゲル層、及び細胞培養面側最表面層に細胞接着性ゲル層を有し、該高分子含水ゲル層と該細胞接着性ゲル層との間にアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を有することを特徴とする。本明細書においては、層を膜という場合もある。
アニオン性合成ポリマーとは天然物由来のアニオン性ポリマー以外のアニオン性ポリマーを意味する。本発明に用いられるアニオン性合成ポリマーは、多価金属イオンとキレート構造を形成していないときは水溶性であることが好ましく、また、共有結合によって三次元的に架橋されたアニオン性ポリマー以外のアニオン性ポリマーが好ましい。共有結合によって三次元的に架橋されたアニオン性合成ポリマーでは、多価金属イオンの存在で形成されるゲルがキレート剤によって溶解しないため、該ゲル層の可溶化処理ができない場合がある。多価金属イオンとキレート構造を形成していないときは水溶性であるアニオン性ポリマーとしては、少なくとも1種のアニオン性基を含むエチレン性不飽和モノマーを単独重合もしくは共重合した水溶性ポリマーが挙げられる。アニオン性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸モノエステル、リン酸モノエステル、亜硫酸モノエステル、フェノール性水酸基、スルホンアミド、ジスルホンイミド及びこれらの塩(例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩など)を挙げることができる。これらの中でも、カルボキシル基、スルホン酸基及びそれらの塩が好ましい。
アニオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、塩構造の有無にかかわらず、水溶性となるモノマーとして、例えば、アクリル酸;メタクリル酸;イタコン酸;マレイン酸;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチルなどのイタコン酸モノアルキル、;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどのマレイン酸モノアルキル;シトラコン酸;スチレンスルホン酸;スチレンスルフィン酸;ビニルベンジルスルホン酸;ビニルスルホン酸;アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸などのアクリロイルオキシアルキルスルホン酸;メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸などのメタクリロイルオキシアルキルスルホン酸;2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸などのアクリルアミドアルキルスルホン酸;2−メタクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸などのメタクリルアミドアルキルスルホン酸が挙げられる。なお、上記の例はいずれも非解離形として示したものである。
さらに、中和による塩構造をとることによって水溶性となるエチレン性不飽和モノマーの例として、以下の化学式で示される化合物を挙げることができる。
Figure 2006217878
Figure 2006217878
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本発明で用いられるアニオン性ポリマーにおいては、上記のアニオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーとともに他のエチレン性不飽和モノマーが共重合されていてもよい。該エチレン性不飽和モノマーの例としては、アクリル酸エステル類[メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、tert−オクチルアクリレート、2−クロロエチルアクリレート、2−ブロモエチルアクリレート、4−クロロブチルアクリレート、シアノエチルアクリレート、2−アセトキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、2−クロロシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェニルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−iso−プロポキシアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールアクリレート(付加モル数n=9)、1−ブロモ−2−メトキシエチルアクリレート、1,1−ジクロロ−2−エトキシエチルアクリレート等];
メタクリル酸エステル類[メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、N−エチル−N−フェニルアミノエチルメタクリレート、2−(3−フェニルプロピルオキシ)エチルメタクリレート、フル フリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、クレジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、ジプロピレングリコールモノメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−アセトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−iso−プロポキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルメタクリレート、ω−メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(付加モル数n=6)、アリルメタクリレート];
ビニルエステル類(ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニルなど);アクリルアミド類(アクリルアミド、メチルアクリルアミド、エチルアクリルアミド、プロピルアクリルアミド、ブチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、シクロヘキシルアクリルアミド、ベンジルアクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、メトキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、フェニルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、β−シアノエチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなど);メタクリルアミド類(メタクリルアミド、メチルメタクリルアミド、エチルメタクリルアミド、プロピルメタクリルアミド、ブチルメタクリルアミド、tert−ブチルメタクリルアミド、シクロヘキシルメタクリルアミド、ベンジルメタクリルアミド、メトキシエチルメタクリルアミド、フェニルメタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、ジエチルメタクリルアミド、β−シアノエチルメタクリルアミドなど);
オレフィン類(ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等;スチレン類:例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステルなど);ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテルなど);及びその他の化合物(クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチレンマロンニトリル、塩化ビニリデンなど)を挙げることができる。
本発明で用いられるアニオン性ポリマーにおいて、上記に述べたアニオン性基を有するエチレン性不飽和モノマー、あるいは、他のエチレン性不飽和モノマーはそれぞれ2種以上であってもよい。アニオン性ポリマーの総質量に対するアニオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーの割合は、該モノマーの極性や他のエチレン性不飽和モノマーの極性等により種々異なるが約1ないし100質量%、好ましくは5ないし100質量%であり、その他のエチレン性不飽和モノマーの割合は、その共重合体が水溶性を損なわない範囲で任意に設定することができ、通常アニオン性ポリマーの総質量に対して0ないし約99質量%、好ましくは0ないし95質量%である。
本発明で用いられるアニオン性ポリマーは、上述のように共有結合によって三次元的に架橋されたアニオン性ポリマー以外のアニオン性ポリマーが好ましい。従って、本発明で用いられるアニオン性ポリマーとしては、上記のアニオン性基を有するエチレン性不飽和モノマーが2つ以上のエチレン性不飽和基を有する架橋モノマーと共重合されていないアニオン性ポリマーが好ましい。また、側鎖に官能性基を有するエチレン性不飽和モノマーからアニオン性ポリマーを調製する場合は該官能基と反応する架橋剤は用いないのが好ましい。
以下に本発明で用いられるアニオン性ポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。カッコ内は、順に、共重合体における各モノマー成分の質量百分率比を表す。
P−1 メチルメタクリレート/メタクリル酸ソーダ共重合体(35/65)
P−2 メチルメタクリレート/メタクリル酸ソーダ共重合体(60/40)
P−3 n−ブチルアクリレート/アクリル酸ソーダ共重合体(70/30)
P−4 エチルアクリレート/アクリル酸ソーダ共重合体(30/70)
P−5 スチレン/n−ブチルアクリレート/メタクリル酸ソーダ共重合体(20/35/45)
P−6 エチルアクリレート/アクリル酸ソーダ/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ソーダ共重合体(65/36/5)
P−7 n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸ソーダ共重合体(60/40)
P−8 メチルメタクリレート/スチレンスルホン酸ソーダ共重合体(30/70)
P−9 エチルメタクリレート/メタクリル酸/A−8(Na塩)共重合体(50/35/15)
P−10 n−ブチルアクリレート/メチルアクリレート/A−8共重合体(15/15/70)
P−11 n−ブチルアクリレート/メタクリル酸ソーダ/スチレンスルホン酸カリウム共重合体(65/35)
P−12 アクリル酸単独重合体
P−13 メタクリル酸単独重合体
P−14 2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ソーダ単独重合体
P−15 アクリル酸/2−アセトアセトキシエチルメタクリレート共重合体(95/5)
P−16 アクリル酸/アクリルアミド/2−アセトアセトキシエチルメタクリレート共重合体(25/70/5)
本発明のアニオン性合成ポリマーの重量平均分子量は、1万以上100万以下が好ましく、3万以上50万以下がより好ましく、5万以上20万以下が最も好ましい。アニオン性合成ポリマーの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法等により測定することができる。
本発明で用いられるアニオン性ポリマーは、上記のモノマーを用いて、公知の重合方法に従って製造することができる。アニオン性ポリマーの製造方法としては、例えば、ラジカル重合法及び電子線を用いた重合法などが挙げられる。例えば、ビニル重合体の場合は、その調製に一般的によく知られているラジカル重合法(大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁など)に従って行えばよく、このうち溶液重合によるラジカル銃合法が好ましい。
「アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル」としては、アニオン性ポリマー分子中のアニオン性基と多価金属イオンとがキレート構造を形成してゲル化したものが挙げられ、「アニオン性ポリマー)及び多価金属イオンを含むゲル層」とは、層状のアニオン性ポリマーと多価金属イオンゲルを意味する。
アニオン性ポリマーは、その分子中のアニオン性基と多価金属イオンとがキレート構造を形成してゲル化する。アニオン性ポリマーとキレート構造を形成してゲル化を引き起こし得る多価金属カチオンの具体例としては、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、銅(Cu)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)等の金属イオンを例示でき、これらのうち特に好ましいものとして、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオンを例示できる。また、アニオン性ポリマーは、カチオン残基を有する有機高分子化合物とポリイオンコンプレックスゲルを形成することもできる。ここでいうカチオン残基を有する有機高分子化合物の例としては、ポリアクリルアミドなどの合成カチオンポリマー、ポリリジン、キトサン、ゼラチン、コラーゲンなどの複数のアミノ基を有する天然物由来の化合物などが挙げられる。
アニオン性ポリマーのゲル化は、常法に従って行なうことができる。アニオン性ポリマーのゲル化は、例えばイオン交換を利用して行なうことができる。例えば、ポリアクリル酸ナトリウム水溶液にカルシウムイオンを添加すると速やかにイオン交換が生じ、ポリアクリル酸ゲルが得られる。より具体的には、0.2〜5%ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を、高分子含水ゲル(例えば、キトサン)層上に塗布後0.01〜1.0 M 塩化カルシウム水溶液中に浸漬して塩化カルシウムをしみ込ませ、20〜30℃で3分〜3時間放置することによりアニオン性ポリマーのカルシウムゲル層が得られる。このように高分子含水ゲルを用いてアニオン性ポリマーのゲル化を行なえば、高分子含水ゲル層と該高分子含水ゲル層上に形成されたアニオン性ポリマーゲル層とを含む細胞培養担体を得ることができる。
本発明の細胞培養担体におけるアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の厚さは0.01μm以上50μm以下であることが好ましく、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがさらに好ましい。アニオン性ポリマーゲル層の固形分量が少なすぎると充分な膜状の層を形成できず穴が空いてしまい、多すぎると乾燥膜でのカールや割れの発生、培養工程での変形やアニオン性ポリマーゲル溶解工程での溶解不良といった問題が生じる。
本明細書において層の厚さは、特に言及のない限り充分に乾燥した状態で計測したものを示す。本明細書においては、この層の厚さを「乾燥膜厚」ということもある。層の厚さの計測は、電子顕微鏡断面像、マイクロメータ膜厚計、エリプソメーター、角度可変XPS、光干渉式膜厚計などを用いて行うことができ、好ましくはマイクロメータ膜厚計、電子顕微鏡断面像、光干渉式膜厚計を用いて行うことができる。
高分子含水ゲルとは親水性高分子を意味し、特に水には溶解しないが高分子中に水を含み系全体にわたって2次元的又は3次元的な支持構造を有する吸水性高分子をいう。本発明においては、高分子含水ゲル層として、キレート剤等の物質を層中に拡散させることにより該層の一方の面から他方の面にキレート剤を到達させることができるものを用いる。また、本発明においては、高分子含水ゲル層として、該層の一方の面から他方の面にアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲルは到達させないものを用いる。本発明で用いる高分子含水ゲル層は、このような層である限り特に限定されず、合成高分子であっても、天然高分子、生体高分子であってもよい。高分子含水ゲルの例としては、アクリルアミドゲル、架橋アクリル酸ゲル、寒天、ゼラチン、デキストラン、キトサン、シリカゲルなどがあげられるが、キトサンを用いることが好ましい。
本発明の細胞培養担体においては、「高分子含水ゲル層」は支持体である。ここで、細胞培養担体において支持体であるとは、多層構造の細胞培養担体を作製する際の基盤となる層であることをいう。
本発明における高分子含水ゲル層の厚さは好ましくは0.01μm以上5μm以下、より好ましくは0.1μm以上4μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上3μm以下である。高分子含水ゲル層が薄すぎると充分な膜を形成できず破れや裂けや穴が空いてしまうという問題が生じ、高分子含水ゲル層が厚すぎると培地成分や剥離操作時のキレート剤成分の拡散が遅く、細胞に悪影響を及ぼすという問題が生じる。
本発明の細胞培養担体における高分子含水ゲル層は、一般的に知られている種々の高分子含水ゲル膜の作製方法を用いて作製することができる。例えば、高分子含水ゲルの溶液をキャストする方法(キャスト法)やバーコーターで塗布する方法(バーコート法)、ギャップコーターで塗布する方法(ギャップコート法)などが挙げられるが、これらのうちバーコート塗布法、ギャップコート塗布法が好ましい。
本発明に用いられる高分子含水ゲルは、後述の本明細書で定義する溶液状態での粘度が1000 mPa・s以上50000 mPa・s 以下のものを用いることできるが、3000 mPa・s 以上30000 mPa・s 以下であることが好ましく、さらに6000 mPa・s 以上20000 mPa・s 以下であることが好ましい。
同一条件で調製した高分子溶液の粘度は、高分子の分子量の指標となるものであり、粘度の数値が大きいものほど高分子量であることを意味する。本明細書で定義する高分子含水ゲルの溶液状態での粘度とは、該高分子12 gを1質量%の酢酸水溶液1000 gに添加したゲル化前の溶液を、25℃にてB型粘度計で測定したときの粘度をいう。粘度が低いとき、すなわち分子量が小さいときは、作製された高分子含水ゲル層の強度が弱いことが示唆される。また、低粘であることから高分子含水ゲル層の作製時に溶液が流れだして膜厚が不均一になったり、溶液の最表面のみが乾燥して皮膜を形成する皮張り現象を起こしたり、溶媒の乾燥に時間がかかったりする。一方、粘度が高すぎる場合、すなわち分子量が高すぎる場合、作製された高分子ゲル膜の強度はあるが、高分子含水ゲル膜の作成時に流延性がなく膜厚が不均一になる、又は塗膜が形成できないと言った不具合が生じる。粘度が上記の範囲である高分子含水ゲルを用いることにより、強度が高いとともに、上記の一定の厚さである高分子含水ゲル層を得ることができる。
「細胞接着性ゲル層」とは、層状の細胞接着性を有するハイドロゲルを意味し、細胞毒性が無く、通常の培養条件で細胞が付着するゲルであれば天然、合成の化合物いずれでもよいが、好ましくは層状の細胞外マトリックス成分ゲルである。細胞外マトリックスは、一般的には「動物組織中の細胞の外側に存在する安定な生体構造物で、細胞が合成し、細胞外に分泌・蓄積した生体高分子の複雑な会合体」と定義されており(生化学辞典(第3版)p.570,東京化学同人(株))、細胞を物質的に支持する役割や細胞の活性を調節する役割(すなわち細胞外の情報を細胞に伝えその活性に変化を与える役割)等を担っている。「細胞外マトリックス成分」とは、細胞外マトリックスの構成成分を意味し、その具体例としては、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グルコサミノグリカン(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸など)、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、ゼラチン等を例示でき、これらのうち特に好ましいものとして、コラーゲン、アテロコラーゲン、マトリゲル(IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸よりなるゲル)、ヒアルロン酸、及びゼラチンを例示できる。細胞外マトリックス成分は、常法に従って得ることができる。また、市販の細胞外マトリックス成分を使用してもよい。細胞接着性成分のゲル化は、常法に従って行なうことができる。例えば、細胞接着性成分がコラーゲンである場合には、0.3〜0.5%コラーゲン水溶液を37℃で10〜20分間インキュベーションすることにより、コラーゲンゲルを得ることができる。細胞外マトリックス成分のゲル化の際には、必要に応じてゲル化剤を使用してもよい。
本発明における細胞接着性ゲル層の厚さは0.005μm以上5.0μm以下が好ましく、0. 005μm以上1.0μm以下がより好ましく、0. 005μm以上0.5μm以下がさらに好ましい。細胞接着性ゲル層が厚いと乾燥時に層に亀裂が発生するばかりか、細胞の転写が著しく困難になる。
アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層上に細胞接着性ゲル層を形成させる際には、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層と細胞接着性成分ゲル層とを別々に作製した後、両者を重ねてもよいが、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層上に細胞接着性成分含有水溶液を添加した後、該水溶液をゲル化させるのが好ましい。細胞接着性ゲル層は脱着を行なうのに十分な物理的強度を有していないため、細胞接着性ゲル層を形成させた容器(例えばディッシュ、シャーレ等)から細胞接着性ゲル層を剥離するのは困難だからである。また、極薄層の細胞接着性ゲル層は、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を再簿接着性成分の溶液に浸漬すること(浸漬法)や塗布すること(塗布法)、又はキャストすること(キャスト法)で簡便に得ることができるが、本発明の細胞培養担体の作成ではこれらのいずれの方法を用いてもよい。このうちキャスト法が好ましく用いられる。例えば、市販の0.3〜0.5%コラーゲン水溶液を必要により適当な濃度に希釈し、上記の方法で作成したアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層上にこの溶液をキャストし、乾燥させることで、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層上にコラーゲンゲル層が形成したものが得られる。
本発明の細胞培養担体上に形成された培養細胞層は、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化処理することにより細胞シートとして剥離させることができる。アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理はアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を構成するカチオン成分を除去することにより実施でき、カチオン種が多価金属イオンの場合は、培養細胞層が形成された細胞培養担体を1)リン酸などの多価金属カチオンと錯形成するもしくは難溶性塩を形成するイオンが添加された培地に浸漬する、2)キレート剤水溶液が添加された培地に浸漬する、3)多価金属イオンが低減された培地に浸漬する、又は4)該細胞の培養培地中の多価金属イオンをキレート剤によって隠蔽する方法によって実施できる。通常、細胞培養用の培地にはリン酸イオンが多く存在する。従って、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理は、多価金属カチオン濃度が通常細胞培養に用いられる最小培地における多価金属カチオンの濃度よりも少なく、かつキレート剤を含む培地を用いて行うことが好ましい。具体的には該濃度は2.6 mM以下であることが好ましく、3μM以下がより好ましく、さらに好ましくは0.5μM以下であり、実質的に0であることが最も好ましい。また、該キレート剤の濃度は2.3 mM以上かつ26000 mM以下が好ましく、2.3 mM以上かつ2600 mM以下がさらに好ましい。上記のように多価金属カチオン濃度を低減した培地を用いることにより、キレート剤の細胞への侵襲を低減したアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化が可能である。
本発明で用いられるキレート剤としては、例えば、エチレンジアミンジオルトヒドロキシフェニル酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,3-ジアミノプロパノール四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸(edta)、グリコールエーテルジアミン四酢酸、O,O'-ビス(2-アミノエチル)エチレングリコール-N,N,N',N'-四酢酸(egta)、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、1,1-ジホスホノエタン-2-カルボン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシ-1-ホスホノプロパン-1,3,3-トリカルボン酸、カテコール-3,5-ジスルホン酸、ピロリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、1-ヒドロキシプロピリデン−1,1-ジホスホン酸、1-アミノエチリデン-1,1-ジホスホン酸やこれらの塩が挙げられる。これらのうち好ましいものとしてはedta、egta、エチレンジアミンテトラホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸が挙げられる。
さらに、上記のアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化処理する際の培地においては,カチオン性アミノ酸の濃度が、通常細胞培養に用いられる最小培地におけるカチオン性アミノ酸濃度より少ない濃度であることが好ましい。具体的には、該濃度は1.0 mM以下であることが好ましく、2μM以下がより好ましく、さらに好ましくは0.5μM以下であり、実質的に0であることが最も好ましい。カチオン性アミノ酸成分とは、L-Lysin(Lys)、L-Arginine(Arg)、L-Histidine(His)、L-Cystine(Cys)及びこれらの塩をいう。
アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理は、上記のいずれかの可溶化処理用培地に一回又は複数回浸漬することにより実施すればよい。複数回の場合は用いる可溶化処理用培地は同一でも異なってもよい。
キレート剤を用いたアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理の際、すなわち培養細胞層が形成された細胞培養担体を可溶化処理用の培地に浸漬する際には、高分子含水ゲル層側からキレート剤がしみこむように行うのが好ましい。これによって、高分子含水ゲルとアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層とを容易に分離することができ、培養された細胞層を含む細胞シートを高分子含水ゲル層から容易に剥離させることができる。アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理によってアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を完全に除去する必要はなく、可溶化されなかったアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層が残っていてもよいが、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層はできるだけ可溶化して除去するのが好ましい。
本発明の細胞培養担体としては、上記の可溶化処理の操作性を向上させるために、細胞接着性ゲル層と反対側の高分子含水ゲル層の面に、物理的な補強治具を設けてもよい。物理的な補強治具の材質は、細胞に影響を与えない材質であれば特に限定はないが、金属類(たとえば鉄、ステンレス、チタン、金など)、プラスチック類(たとえばポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルなど)、陶器などの無機材料類などであり、ステンレス、チタン、プラスチック類が好ましい。
物理的な補強治具は、本発明の細胞培養担体の取り扱い性を向上させることができればいかなる形状をしていてもよいが、板状であることが好ましく、厚さは、好ましくは0.1μm以上10 mm以下、より好ましくは1μm以上1 mm以下、さらに好ましくは10μm以上200μm以下である。
物理的な補強治具は、細胞観察用に本発明の細胞培養担体が見える部分があればその形状は特に限定はないが、円、多角形(三角形、四角形、六角形など)、又はその組み合わせ(扇型など)等が例として挙げられる。そのなかで、円に近い形状であることが好ましい。また、細胞観察用に本発明の細胞培養担体が見える部分は1個でも複数でもよい。また高分子含水ゲル層の補強治具を接着した面の判別を容易にするために、非対称な形状であることが好ましい。
物理的な補強治具は、細胞培養に影響を及ぼさない限りいかなる方法で高分子ゲル膜に接着させてもよい。たとえば、高分子ゲル膜を作製した後市販の接着剤(たとえばアロンアルファ、ボンドなど)を使用して接着させる方法や高分子ゲル膜を作成する際に補強治具を未乾燥状態の高分子ゲル膜におくことで接着させてもよい。
物理的な補強治具は、その材質にもよるが、補助治具の縁が鋭利である場合がある。この場、補助治具の鋭い縁によって高分子含水ゲルが破けるばかりでなく、取り扱う作業者にも危険を及ぼす懸念がある。したがって、鋭い縁をなくすことが好ましい。鋭い縁をなくす方法として、細胞培養に支障がない限りいかなる方法を用いてもよいが、物理的な研磨(たとえば、やすりなどで磨くなど)や化学処理(たとえば、ケミカルエッチングなど)する方法が挙げられる。本発明において、物理的な補強治具はステンレス製の場合、ケミカルエッチングなどの化学処理を行うことが好ましい。
本発明の細胞培養担体上に形成された培養細胞層を細胞シートとして剥離させる際の操作性を向上させるために、細胞培養面側最表面に細胞接着性ゲル層を有する細胞培養担体においては、該細胞培養面側最表面の一部に該細胞接着性ゲル層未修飾部分、すなわち該細胞接着性ゲル層が形成されていない部分を設けてもよい。細胞接着性ゲル層未修飾部分は、高分子含水ゲル層又はアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層となる。細胞接着性ゲル層未修飾部分を設けることによって、高分子含水ゲル層と細胞接着性ゲル層を剥離する際の取り扱い性を向上させることができる。すなわち、細胞接着性ゲル層未修飾部分の高分子含水ゲル層をピンセットなどでつかむことにより細胞接着性ゲル層に触れないで高分子含水ゲル層を取り除くことができるため、細胞に悪影響が少ない。細胞接着性ゲル層未修飾部分は、本発明の細胞培養担体における高分子含水ゲル層の隅の部分であることが好ましい。
細胞接着性ゲル層未修飾部分を設ける方法としては細胞培養に支障がない限りいかなる方法を用いてもよいが、例えば一般的に良く知られているマスキング法が挙げられる。すなわち、高分子含水ゲル層上で細胞接着性ゲル層未修飾とする部分をあらかじめ別材料で覆い、該高分子含水ゲル層を細胞接着性ゲル成分で修飾した後、覆っていた別材料を除去することによって、細胞接着性ゲル層未修飾部分を設ける方法である。
細胞接着性ゲル層未修飾部分を設けるために覆う別材料の材質は、細胞培養に支障がない限りいかなる材質のものを用いてもよく、例えばシリコンゴム、市販のマスキングテープや粘着テープ、プラスチック類(例えばポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルなど)、金属類(例えば鉄、ステンレス、チタン、金など)などが挙げられるが、シリコンゴム、市販のマスキングテープが好ましい。
細胞接着性ゲル層未修飾部分の形状は、細胞培養に支障がない限り特に限定はないが、円もしくは多角形(三角形、四角形、六角形)又はこれらの組み合わせ(扇型など)であることが好ましく、三角形、扇形であることが好ましい。細胞接着性ゲル層未修飾部分の大きさは、細胞培養に支障がない限り特に限定はないが、円相当で好ましくは直径0.1 mm以上10 mm以下、より好ましくは直径1 mm以上5 mm以下である。
本発明の細胞培養担体を用いて、培養し得る細胞の具体例としては、繊維芽細胞、血管内皮細胞、軟骨細胞、肝細胞、小腸上皮細胞、表皮角化細胞、骨芽細胞、骨髄間葉細胞等を例示でき、好ましいものとしては繊維芽細胞を例示できる。細胞の培養の際には、通常、細胞濃度1〜1.5万cells/mlの培養液(例えば、D-MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を細胞接着性ゲル層上に添加する。細胞の培養条件は、培養する細胞に従って適宜選択し得る。細胞接着性ゲル層上で細胞を培養する場合には、通常、細胞接着性ゲル層上にコンフルエントな単層の細胞層が形成されるまで行なう。
本発明の細胞培養担体を用いた細胞の培養は具体的には次のようにして行なうことができる。細胞培養担体をシャーレ等の内部に設置し、シャーレ内に適当な培養液(例えば、D-MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を添加して5分浸漬後培地交換することを3回繰り返したのち12〜24時間放置し、培養液を細胞培養担体中に浸潤させる。シャーレ内の培養液を捨て、細胞培養担体の細胞接着性ゲル層上に細胞を播き、シャーレ内に適当な培養液(例えば、D-MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を添加する。37℃で1〜2時間放置し、細胞接着性ゲル層に保持(接着)させた後、37℃で培養を続ける。培養の際には、必要に応じて培養液を交換してもよい。通常は培養0.5〜2日ごとに培養液を交換する。
本発明の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物は、本発明の細胞培養担体と該細胞培養担体に保持された細胞層とを含む。「細胞培養担体に保持された細胞層」は好ましくは細胞接着性ゲル層上に形成された細胞層である。アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化処理して得られる細胞シートは、細胞層を含んでいるので、細胞層の重層化及び転写に使用できる。細胞層の重層化の際には、本発明の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物を細胞培養面が向き合うように予め培養した細胞上に荷重をかけた状態又はかけない状態で重ね、さらに培養した後、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化してもよいし、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化して得られる細胞シート同士を重層化してもよいし、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化して得られる細胞シートを別に作製した細胞層に重層化してもよい。重層化する細胞層の細胞の種類は、同一であっても異なっていてもよい。重層化する細胞層の数は特に限定されないが、通常1〜10、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3である。また、細胞層の転写の際には、別の細胞培養用基材上に本発明の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物を細胞培養面が別の細胞培養用基材側になるように荷重をかけた状態又はかけない状態で載せ、さらに培養した後、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化してもよいし、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化して得られる細胞シートを他の媒体に転写してもよい。好ましい重層化ならびに転写方法としては、本発明の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物を予め培養した細胞上もしくは別の細胞培養基材上で培養したのちアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化する方法が挙げられる。
荷重をかけた状態の細胞の培養法とは、細胞が転写される細胞もしくは基材にムラが生じない程度に充分荷重がかけられていればいかなる方法でもよい。ここで、荷重をかける際に細胞が密閉されると窒息をすることから、転写する側もしくは受ける側の少なくとも一方の細胞培養基材が水透過性のゲルや親水性高分子ゲルもしくはこれらの組み合わせでできていることが好ましい。また、ムラ無く転写するには細胞面を充分に覆う状態で荷重をかける必要があるが、均一に接触することで酸素の拡散を妨害することとなるため、不織布(ナイロン、ポリエステル、ステンレスなど)等を介して酸素の拡散を妨げないで荷重することが好ましい。
荷重をかけた細胞の培養法の荷重は0.1 g/cm2以上50 g/cm2以下であることが好ましく、0.5 g/cm2以上10 g/cm2以下であることがさらに好ましい。荷重をかけた細胞の培養の時間は充分な細胞の転写が実現できれば制限はないが4時間以上72時間以下が好ましく、6時間以上48時間以下がさらに好ましい。本発明においては、荷重をかけない状態で培養することが好ましい。
本発明の細胞培養担体を作製する際、密着性を改善する目的で、カルボジイミド類を含んだ調製液を用いてもよい。カルボジイミド類及びN-ヒドロキシコハクイミドはいかなる層の調製液に添加してもよいが、アニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層調製液もしくは予め高分子含水ゲルに含浸させておくこと、あるいはアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層塗布後に塩化カルシウムと共溶解した液に浸漬することが好ましい。該カルボジイミド類は水溶性のものが好ましく、例えば1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩などが挙げられる。該カルボジイミドを用いる場合その濃度としては0.01 mg/l以上200 g/l以下が好ましい。このときN-ヒドロキシコハクイミドを触媒として使用してもよく、濃度としては該カルボジイミドに対して1質量%以上50質量%以下が好ましい。
本発明においては、特に必要がない限りカルボジイミドは用いないことが好ましい。
本発明の細胞培養担体は、いかなる方法で滅菌されてもよいが、電子線、γ線、X線、紫外線などの放射線による滅菌が好ましく用いられ、電子線、γ線、紫外線がさらに好ましく用いられ、電子線滅菌が特に好ましい。電子線滅菌の照射線量としては0.1 kGy以上65 kGy以下が好ましく、1 kGy以上40 kGy以下が特に好ましい。EOG滅菌などの化学滅菌、高圧蒸気ガス滅菌などの高熱をかける滅菌は細胞接着性層やアニオン性ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を分解するため好ましくない。このように滅菌した細胞培養担体は無菌条件下であれば長期間に渡って室温保管が可能である。
滅菌法は単独もしくは複数種の組み合わせで実施されてもよく、同一種の滅菌法を繰り返し使用してもよい。
重層化する細胞層として、例えば、血管内皮細胞層、肝細胞層を使用すれば、肝臓の3次元組織構造物を構築できる。この3次元組織構造物は、in vitroにおける薬物の透過性試験へ適用できるとともに、動物実験代替モデルや移植用臓器へ応用できる。重層化した細胞層は、細胞層を構成する細胞の種類に応じた培養条件で培養することができる。培養の際には、例えば、D-MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地等の培地を使用できる。
本発明の細胞培養担体により培養することのできる細胞は、動物細胞及び植物細胞等のいずれでもよく、特に限定されないが、例えば、血管内皮細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、筋芽細胞、脂肪細胞、繊維芽細胞、皮膚細胞、乳腺細胞、幼若神経細胞、気管支上皮細胞、肝細胞、膵臓細胞、消化管上皮細胞などが挙げられる。またこれらが癌化された細胞を培養することもできる。
上記の細胞は、生体から取り出した細胞でもよく、細胞バンク(例えば、JCRB細胞バンク、ヒューマンサイエンス研究資源バンク、理化学研究所バイオリソースセンターなど)から入手した細胞でもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
〔例1〕
(1) 高分子含水ゲル膜の調製
ダイキトサン100D(大日精化工業株式会社製)12 gを1質量%の酢酸水溶液1000 gに徐々に添加した。この溶液を室温で7時間攪拌し、富士写真フイルム製ミクロフィルターFG-30でろ過した。
ろ過したキトサンの酢酸水溶液を、ポリエチレンテレフタレートフイルム(縦20 cm、横20 cm、フイルム厚200μm)上にアプリケータで乾燥膜厚1.5μmとなるように塗布し、これを37℃にて一晩乾燥させた。
得られた膜を、1.9質量%の水酸化ナトリウムのメタノール溶液浴に40分間浸漬し、引き続きPBS(Dulbecco's Phosphate buffered Saline)溶液浴に40分間浸漬し、その後、さらに蒸留水浴に60分浸漬してキトサンゲル膜を得た。得られたキトサンゲル膜を室温で1晩乾燥後、ビニール袋に入れ保存した。
(2)高分子含水キトサンゲル/アニオン性ポリマーカルシウム積層膜の調製
上記(1)で得られたキトサンゲル膜上に、2質量%の表1に示すアニオン性ポリマーの水溶液をウェット塗布膜厚300μmとなるように塗布した。この塗布物を0.1 mol/リットルの濃度の塩化カルシウムを含む20%メタノール水溶液浴に20分間浸漬した後、蒸留水浴に30分間浸漬し高分子含水キトサンゲル/アニオン性ポリマーカルシウム積層ゲル膜を得た。アニオン性ポリマーゲル層乾膜の厚さは膜厚計から計測すると約6μmであった。
また、比較用にアニオン性ポリマーをノニオン性ポリマーまたはカチオン性ポリマーの水溶液に変更した積層ゲル膜を上記と同様に作製した。
作製した高分子含水キトサンゲル/アニオン性ポリマーカルシウム積層膜を下記基準で評価した。○を許容範囲とした。
○・・・ ポリマーがカルシウムと反応してゲル状となった。
△・・・ カルシウム含有メタノール水溶液中ではゲル化していたが、その後の水洗時に溶解してゲル層を形成しなかった。
×・・・ ポリマーがカルシウムと反応せず、カルシウム含有メタノール水溶液中に溶解してゲル層を形成しなかった。
Figure 2006217878
表1中、ノニオン性ポリマー Nは、ポリエチレンオキサイド(分子量10万、関東科学株式会社製)であり、カチオン性ポリマー Kは、ポリアリルアミン塩酸塩(分子量6万、日東紡績株式会社製)である。また、アニオン性ポリマーP-1は以下の方法で調製した。また、P-8、P-12、P-14も同様の方法で作製した。
<アニオン性ポリマーP-1の調製>
攪拌装置、還流冷却管を装着した1リットル三ツ口フラスコに、ドデシル硫酸ソーダ0.65 g、亜硫酸水素ナトリウム0.63 g、イソプロピルアルコール24.0 g、蒸留水400 gを入れ、窒素気流下70℃で加熱攪拌した。この溶液に過硫酸カリウム0.41 gを蒸留水10.3 gに溶かした液を添加した。10分後、メチルメタクリレート(和光純薬製)35 g、およびメタクリル酸ソーダ(和光純薬製)65 gの混合液、及び過硫酸カリウム0.82 gと蒸留水20.9 gの混合水溶液を各々別々に等速で2時間にわたり滴下した。滴下終了の1時間後、過硫酸カリウム0.41 gと蒸留水10.3 gの混合水溶液を再度添加した。さらに3時間加熱攪拌を行った後、反応液を室温まで冷却したのち、水酸化ナトリウム30 gを蒸留水80 gに溶かしたものを添加した。反応液を室温で30分攪拌して、標記のアニオン性ポリマーP−1の水溶液を得た。得られたポリマーの固形分は12%、重量平均分子量は14万(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定)であった。得られた水溶液からアセトンで再沈殿させてアニオン性ポリマーを精製し、固形物として保存して使用時に蒸留水に再度溶解して用いた。
(3)高分子含水キトサンゲル/アニオン性ポリマーカルシウム積層/コラーゲン積層膜の調製
(2)で得られた乾燥させていない高分子含水キトサンゲル/アニオン性ポリマーカルシウム積層上にシリコンゴムとアルミ金属製(内径縦12 cm、横7 cm、厚み5 mm)の枠を置いた。氷冷下で新田ゼラチン社製Cellmatrix I-P 8 mlに10倍濃縮されたHam's F-12培地1 mlを添加して1分間スターラー混合した溶液に、氷冷下で緩衝液(NaHCO3の2.2 g又は4.7 gを0.05 N NaOH水溶液100 mlに溶解したもの)1 mlを添加して泡立てないように混合し、得られた溶液を上記の枠内に6.5 mlキャストした。これを室温下で一晩乾燥させ、引き続き蒸留水で洗浄後再度乾燥させることで含水キトサンゲル/アニオン性ポリマーカルシウム積層/極薄コラーゲン層修飾膜を得た。
比較として、アニオン性ポリマーをノニオン性ポリマーまたはカチオン性ポリマーの水溶液に変更し、塗布後塩化カルシウムを含むメタノール水溶液浴浸漬せずに乾燥させたものに、上記と同様にコラーゲンを積層したサンプルを作製した。
作製したサンプルを表2に示す。
Figure 2006217878
〔例2〕滅菌
例1で得られた膜につき、UV滅菌1、2、3時間、電子線滅菌20、40、60、80、100 kGyの6種類の滅菌を施したところ、いずれも菌が確認されなかった。このとき、滅菌処理を施していないサンプルからは8600個/m2の菌が確認された。
〔例3〕細胞培養担体を用いた細胞の培養
(1)例1で得られた細胞培養担体を用いて細胞の培養を行なった。細胞としてはラット由来血管内皮細胞、培地はEagle最小培地、10%牛胎児血清を使用した。
例1で作製した細胞培養担体Z-7〜Z-12を細胞接着性層を上向にポリエチレンテレフタレート(PET)製支持体に置き、さらにこのPET支持体をポリスチレン製細胞培養用シャーレの底面に置いたもの、及びポリスチレン製細胞培養用シャーレのみの比較例をUV滅菌もしくは電子線滅菌を施したのち、培地を添加して10分浸漬後培地交換することを2回繰り返したのち一晩放置し、培地を細胞培養担体中に浸潤させた。
予め培養しておいた細胞をトリプシン処理で回収し、細胞濃度を45000 cell/mlに調製した。セル及びシャーレ内の培地を捨てた後、この細胞液を細胞数8000 cell/cm2となるようにシャーレ内に播種し培地を添加した。その後、CO2インキュベーターを用いて37℃で3日間培養した。
(2)結果
本発明の実施例2で作製した細胞培養担体Z-7〜Z-10をPET製支持体に置き、さらにポリスチレン製細胞培養用シャーレの底面に置いたものは、透明性を有することから細胞培養中の細胞の生育状態が詳細に観察でき、細胞接着性や毒性に問題はなく、ポリスチレン製細胞培養用シャーレのみのサンプルとほぼ同様の状態であった。
また、本発明の細胞培養担体のサンプルにおいては、細胞培養中に高分子含水ゲルからの細胞接着性層の剥離はなく、問題はなかった。
一方、比較サンプルのZ-11〜Z-12はサンプルを作製することができなかった。

細胞の種類をHEPG2(ヒト肝癌由来細胞)やBAE(ウシ大動脈血管内皮細胞)に変更しても同様の結果が得られた。
〔例4〕細胞層の転写・重層化
例3で培養した細胞培養担体を、別途ポリスチレン製細胞培養用シャーレ上で培養していたHEPG2細胞上に、細胞面同士が接触するように置いて細胞層を重層化し、培地を加えCO2インキュベーターにて24時間培養した。その後、培地を可溶化培地(Eagle最小培地に、Eagle最小培地中に存在するカルシウムイオン、マグネシウムイオンの総モル数に対して200モル%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を添加したもの)に入れ替えCO2インキュベーターにて37℃で20分間浸漬した後剥離液を取り除き、高分子含水キトサンゲル/アニオン性ポリマーカルシウム積層/コラーゲン積層膜からの高分子含水キトサンゲルのみをピンセットで摘んで取り去り、コラーゲン層との剥離状況を観察した。
引き続き、培地を添加した後このサンプルを、CO2インキュベーターにて37℃で2日間培養したものを、光学顕微鏡で観察した。結果を表3に示す。
<剥離状況の評価基準>
高分子含水キトサンゲル層をピンセットで摘んで取り去る際、下記の基準で評価し、◎及び○を許容範囲とした。
◎:含水キトサンゲル層をピンセットで触るだけで、コラーゲン層と含水キトサンゲル層が自然と浮くように剥離できる。
○:含水キトサンゲル層をピンセットで摘んで引っ張ることでコラーゲン層から容易に剥離できる。
△:含水キトサンゲル層をピンセットで摘んで引っ張ることでコラーゲン層から剥離できるが、剥離しない部分がある。
×:含水キトサンゲル層をピンセットで摘んで引っ張ってもコラーゲン層から剥離しない。
<細胞生存率の評価基準>
重層化した細胞を顕微鏡にて観察する際、下記の基準で評価し、◎及び○を許容範囲とした。
◎: 90%以上の細胞は生きている。
○: 75%以上の細胞は生きている。
△: 40%以上の細胞は生きている。
×: 生きている細胞が40%以下である。
Figure 2006217878
本発明の領域Z-7〜Z-10で良好な剥離性を示し、また、細胞の生存率も高かった。
一方、サンプルZ-11〜Z-12はサンプルを作製することはできなかった。
〔例5〕細胞層の重層培養
例4と同様に実施例1で作製した細胞培養担体Z-7〜Z-10に下記の細胞を培養した。
・CHL(チャイニーズハムスター肺由来細胞)
・BRL(Buffalo Rat Liver 3A, ATCC No. : CRL 1442)
・BAE(ウシ大動脈血管内皮細胞)
別途シャーレ上に培養したHEPG2細胞上にそれぞれ上記各3種の細胞を転写し、例4の可溶化培地を用いて同様に細胞の剥離を行い、重層化細胞を得た。この重層化細胞を倍地中4日間培養したのち、トリパンブルーで染色して光学顕微鏡で状況を確認したところ、本発明の領域において、いずれの重層化細胞も良好に培養されていることが確認された。

Claims (18)

  1. 支持体である高分子含水ゲル層、及び細胞培養面側最表面層に細胞接着性ゲル層を有し、該高分子含水ゲル層と該細胞接着性ゲル層との間にアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層を有する細胞培養担体。
  2. 高分子含水ゲル層とアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層とが隣接している請求項1に記載の細胞培養坦体。
  3. 細胞培養面側最表面層とアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層とが隣接している請求項1又は2に記載の細胞培養坦体。
  4. アニオン性合成ポリマーがカルボン酸基を有するポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞培養担体。
  5. 高分子含水ゲル層の厚さが0.01μm以上50μm以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞培養担体。
  6. 高分子含水ゲルがキトサンである請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞培養担体。
  7. 細胞接着性ゲルがゼラチン、コラーゲン、及びフィブロネクチンからなる群から選択される1種以上を含むゲルである請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞培養担体。
  8. 細胞接着性ゲルが細胞接着性コラーゲンを含むゲルである請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞培養担体。
  9. 電子線、γ線、紫外線のいずれか又は複数を照射することで滅菌された請求項1〜8のいずれか一項に記載の細胞培養担体。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の細胞培養担体を用いて細胞を培養する工程を含む細胞の培養方法。
  11. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物におけるアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により細胞シートを得る工程を含む細胞培養方法。
  12. 可溶化処理を、キレート剤を含みかつ多価金属カチオンが2.6 mM以下である培地を用いて行う請求項11に記載の細胞培養方法。
  13. 請求項11又は12に記載の細胞培養方法で得られる細胞シート。
  14. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の細胞培養担体を用いて細胞を培養する工程を含む細胞の培養方法により得られる細胞培養物を他の細胞培養担体上でさらに培養する工程を含む細胞転写法。
  15. 請求項14に記載の細胞転写法により得られる細胞培養物におけるアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により得られる細胞培養物又は細胞シート。
  16. 可溶化処理を、キレート剤を含みかつ多価金属カチオンが2.6 mM以下である培地を用いて行う請求項15に記載の細胞培養物又は細胞シート。
  17. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物を他の培養細胞上に培養する工程を含む細胞重層化法。
  18. 請求項18に記載の細胞重層化法により得られる細胞培養物におけるアニオン性合成ポリマー及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により得られる重層化細胞培養物又は重層化細胞シート。
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