JP2006238841A - 細胞培養担体 - Google Patents
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Abstract
【課題】細胞培養に十分な強度と細胞接着性を有しかつ短時間で容易に培養細胞を剥離できる細胞培養担体の提供。
【解決手段】支持体である高分子含水ゲル層、及び細胞培養面側最表面層に細胞接着性ゲル層を有し、該高分子含水ゲル層と該細胞接着性ゲル層との間にアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を有する細胞培養担体であって、該アルギン酸中のマンヌロン酸含有量が80質量%以下であり、かつグルロン酸含有量が20質量%以上である細胞培養担体。
【解決手段】支持体である高分子含水ゲル層、及び細胞培養面側最表面層に細胞接着性ゲル層を有し、該高分子含水ゲル層と該細胞接着性ゲル層との間にアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を有する細胞培養担体であって、該アルギン酸中のマンヌロン酸含有量が80質量%以下であり、かつグルロン酸含有量が20質量%以上である細胞培養担体。
Description
本発明は、細胞培養の技術に関し、具体的には、細胞培養担体、該細胞培養担体を利用した細胞の培養方法、該培養方法により得られる細胞培養物、該細胞培養物を利用した細胞層の重層化方法、該重層化方法により得られる重層化した細胞層に関する。
高分子含水ゲルは、生体に類似した構造を持ち、温度、酸性・アルカリ性等の外部条件によって膨張、収縮する性質を有するため、人工筋肉などの人工臓器・組織への応用、内部に薬剤を封入して放出量をコントロールする医療分野への応用のみならず、各種サイトカイン等を含むゲルとして細胞を培養する際に細胞成長の足場としての利用も試みられている。
高分子含水ゲルの中でも温度応答性高分子であるポリN-イソプロピルアクリルアミド(poly-N-isopropylacrylamide)(以下「PNIPAM」と称する)は、低温では膨潤して液状であるが、34℃付近で相転移し急激に収縮しゲル化する。従来、培養細胞の階層化を行なうに当たり、37℃の温度条件下、ゲル化したPNIPAM上で培養した細胞をPNIPAMごと別の細胞層に重ね、その後34℃以下に下げることによりPNIPAMを液状化させて取り除き、細胞同士を直接重ねるという手法が取られていた(特許文献1:特公平6−104061号公報;非特許文献1:清水達也、岡野光夫、バイオサイエンスとバイオインダストリー、58(12)、851頁(2000);非特許文献2:大和雅之、岡野光夫、臨外、56(1)、53頁(2001);非特許文献3:大和雅之、岡野光夫、Materials Integration、13(2)、58頁(2000);非特許文献4:大和雅之、串田愛、岡野光夫、蛋白質・核酸・酵素、45(10)、72頁(2000);非特許文献5:大和雅之、廣瀬志弘、播元正美、岡野光夫、蛋白質・核酸・酵素、45(13)、162頁(2000))。
PNIPAM上で細胞培養を行った場合、通常、細胞は単層状に成長する。この際、隣り合った細胞同士ではコラーゲン等の細胞外マトリックス(Extracellular Matrix)(以下「ECM」と称する)が形成される。そして、細胞が増殖するためには、ECMに接着する必要がある。しかし、細胞の上部及び細胞と基底層であるPNIPAM間は他の細胞と接着しておらず、細胞接着に必要なECMは形成されない。
従って、PNIPAM上で培養した単層の細胞層同士を重層し、細胞層を34℃以下の条件下でPNIPAMを可溶化して取り除き、細胞同士が直接接するように重ねても、上部に重ねた細胞は、増殖するための足場が十分でなく、従って安定した増殖は望むことができなかった。また、液状化したPNIPAMが細胞毒として作用するため細胞の正常な成長を阻害する現象も認められるため、細胞の階層化の手段としては極めて不向きで不安定な技術であった。
従って、PNIPAM上で培養した単層の細胞層同士を重層し、細胞層を34℃以下の条件下でPNIPAMを可溶化して取り除き、細胞同士が直接接するように重ねても、上部に重ねた細胞は、増殖するための足場が十分でなく、従って安定した増殖は望むことができなかった。また、液状化したPNIPAMが細胞毒として作用するため細胞の正常な成長を阻害する現象も認められるため、細胞の階層化の手段としては極めて不向きで不安定な技術であった。
上記の手法の問題点の解決のため、各種ゲル上に細胞外マトリックス成分を重層化しゲル化させた培地での細胞培養、及び重層後に不要となったゲルを容易に除去できるような培地を使用した培養系の確立につき検討が続けられていた。特許第3261456号公報(特許文献2)においては、多孔質膜と該多孔質膜上にアルギン酸ゲル層と細胞外マトリックス成分ゲル層又は細胞外マトリックス成分スポンジ層を形成させたことを特徴とする細胞培養担体が提案されている。しかし、この細胞培養担体では、細胞外マトリックス層が厚く、乾燥膜の状態で細胞培養担体を保管することが不可能であった。また、細胞の重層化操作にも邪魔になり安定に重層化細胞を得られない問題があった。
さらに、該特許公報に記載されている多孔質膜は透明性がなく、細胞培養中に生きた細胞の育成状況を目視又は顕微鏡等により直接観察することができないため、シャーレ上に置いた細胞培養担体の周りのシャーレ上での細胞の育成状態から細胞担体上の細胞の状況を同等状態である類推していたが、細胞培養担体の周りのシャーレ上での細胞の育成状態は、細胞担体上の細胞の状態と必ずしも一致せず、細胞の増殖が不足していたり、オーバーコンフルエントであったりする問題点があった。また、該特許公報に記載されている方法ではアルギン酸ゲル層の溶解にEDTA水溶液を用いて細胞培養物を細胞培養担体から剥離しているが、このときのEDTA水溶液の侵襲により細胞がダメージを受ける問題があった。
これらの問題を解決する方法としては、特開2004-141053号公報(特許文献3)には、透明性を有し細胞へのダメージの少ないアルギン酸ゲルの溶解方法が記載されている。
これらの問題を解決する方法としては、特開2004-141053号公報(特許文献3)には、透明性を有し細胞へのダメージの少ないアルギン酸ゲルの溶解方法が記載されている。
以上のように、細胞の階層化技術に道を開く技術として、可溶性ゲルの細胞培養担体への適用に関する研究が近年数多く行われている。その中で、細胞培養担体としての十分な強度と細胞接着性を有しつつ、細胞を剥離する際には短時間で容易に可溶化するゲルが求められている。上述のようにアルギン酸ゲルは、細胞培養担体に用いることができる好適な可溶性ゲルであるが、天然物のアルギン酸を用いたゲルは細胞接着性や剥離性などの物性が安定しないという問題点があった。
特公平6−104061号公報
特許第3261456号公報
特開2004-141053号公報
清水達也、岡野光夫、バイオサイエンスとバイオインダストリー、58(12)、851頁(2000)
大和雅之、岡野光夫、臨外、56(1)、53頁(2001)
大和雅之、岡野光夫、Materials Integration、13(2)、58頁(2000)
大和雅之、串田愛、岡野光夫、蛋白質・核酸・酵素、45(10)、72頁(2000)
大和雅之、廣瀬志弘、播元正美、岡野光夫、蛋白質・核酸・酵素、45(13)、162頁(2000)
本発明は、安定的かつ容易に細胞を重層する技術の提供を目的とする。
具体的には、本発明は、アルギン酸ゲル層を含む多層構造の細胞培養担体の細胞接着性及び剥離性をそれぞれ最適化し、細胞培養に十分な強度と細胞接着性を有しかつ短時間で容易に培養細胞を剥離できる細胞培養担体を提供することを目的とする。
具体的には、本発明は、アルギン酸ゲル層を含む多層構造の細胞培養担体の細胞接着性及び剥離性をそれぞれ最適化し、細胞培養に十分な強度と細胞接着性を有しかつ短時間で容易に培養細胞を剥離できる細胞培養担体を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行い、アルギン酸中のマンヌロン酸含有量及びグルロン酸含有量に着目し、特定マンヌロン酸含有量とグルロン酸含有量であるアルギン酸を用いることによって、優れた細胞接着性と剥離性を有する細胞培養担体が得られることを見出した。本発明はこれらの知見を基に完成されたものである。
すなわち本発明は、支持体である高分子含水ゲル層、及び細胞培養面側最表面層に細胞接着性ゲル層を有し、該高分子含水ゲル層と該細胞接着性ゲル層との間にアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を有する細胞培養担体であって、該アルギン酸中のマンヌロン酸含有量が80質量%以下であり、かつグルロン酸含有量が20質量%以上である細胞培養担体を提供する。本発明の好ましい態様によれば、細胞接着性ゲル層とアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層との間に高分子含水ゲル層を有さない上記細胞培養坦体;細胞培養面側最表面層とアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層が隣接している上記いずれかの細胞培養坦体が提供される。
本発明の別の好ましい態様によれば、上記いずれかの細胞培養担体において、アルギン酸の溶液状態での粘度が100 mPa・s以上50000 mPa・s以下である細胞培養担体;上記いずれかの細胞培養担体において、多価金属イオンがカルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、アルミニウムイオン、銅イオン、亜鉛イオン及びバリウムイオンからなる群から選択される1又は2種以上である細胞培養担体。;上記いずれかの細胞培養担体において、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層が、3 M以下かつ0.001 M以上の多価金属イオン溶液を用いたアルギン酸のゲル化により作製される細胞培養担体が提供される。
本発明のさらに好ましい態様によれば、上記いずれかの細胞培養担体において、高分子含水ゲル層とアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層とが隣接している細胞培養担体;上記いずれかの細胞培養担体において、高分子含水ゲルがキトサンを含むゲルである細胞培養担体;上記いずれかの細胞培養担体において、キトサンの脱アセチル化度が70%以上である細胞培養担体;上記いずれかの細胞培養担体において、キトサンの脱アセチル化度が90%以上である細胞培養担体;上記いずれかの細胞培養担体において、キトサンの溶液状態での粘度が100 mPa・s以上50000 mPa・s以下である細胞培養担体。;上記いずれかの細胞培養担体において、細胞接着性ゲルがゼラチン、コラーゲン及びフィブロネクチンからなる群から選択される1種以上を含むゲルである細胞培養担体;上記いずれかの細胞培養担体において、細胞接着性ゲルが細胞接着性コラーゲン又はフィブロネクチンを含むゲルである細胞培養担体;上記いずれかの細胞培養担体において、該細胞培養担体が電子線、γ線、紫外線のいずれか又は複数を照射することで滅菌された細胞培養担体が提供される。
本発明の別の観点からは、上記いずれかの細胞培養担体を用いて細胞を培養する工程を含む細胞の培養方法;上記いずれかの細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物におけるアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により細胞シートを得る工程を含む細胞培養方法;可溶化処理を、キレート剤を含みかつ多価金属カチオンが2.6 mM以下である培地を用いて行う該細胞培養方法;上記細胞培養方法で得られる細胞シート;上記いずれかの細胞培養担体を用いて細胞を培養する工程を含む細胞の培養方法により得られる細胞培養物を他の細胞培養担体上でさらに培養する工程を含む細胞転写法;該細胞転写法により得られる細胞培養物におけるアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により得られる細胞培養物又は細胞シート;可溶化処理を、キレート剤を含みかつ多価金属カチオンが2.6 mM以下である培地を用いて行う該細胞培養物又は細胞シート;上記いずれかの細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物を他の培養細胞上に培養する工程を含む細胞重層化法;該細胞重層化法により得られる細胞培養物におけるアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により得られる重層化細胞培養物又は重層化細胞シートが提供される。
本発明のさらに別の観点からは、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を有する細胞培養担体の製造方法であって、下記工程:
(1)アルギン酸中のマンヌロン酸含有量及びグルロン酸含有量を測定する工程、及び
(2)マンヌロン酸含有量が60質量%以下35質量%以上であり、かつグルロン酸含有量が65質量%以下40質量%以上であるアルギン酸を選択する工程を含む製造方法が提供される。
(1)アルギン酸中のマンヌロン酸含有量及びグルロン酸含有量を測定する工程、及び
(2)マンヌロン酸含有量が60質量%以下35質量%以上であり、かつグルロン酸含有量が65質量%以下40質量%以上であるアルギン酸を選択する工程を含む製造方法が提供される。
本発明により、細胞培養に十分な強度と細胞接着性を有しかつ短時間で容易に培養細胞を剥離できる細胞培養担体が提供される。
細胞培養担体とは、細胞を培養する際の担体又は支持体となり得るものを意味する。本発明の細胞培養担体の形状は特に限定されないが、シート状であるのが好ましい。
本明細書においては、層を膜という場合もある。
本明細書においては、層を膜という場合もある。
高分子含水ゲルとは親水性高分子を意味し、特に水には溶解しないが高分子中に水を含み系全体にわたって2次元的又は3次元的な支持構造を有する吸水性高分子をいう。本発明においては、高分子含水ゲル層として、キレート剤等の物質を層中に拡散させることにより該層の一方の面から他方の面にキレート剤を到達させることができるものを用いる。また、本発明においては、高分子含水ゲル層として、該層の一方の面から他方の面にアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲルは到達させないものを用いる。本発明で用いる高分子含水ゲル層は、このような層である限り特に限定されず、合成高分子であっても、天然高分子、生体高分子であってもよい。高分子含水ゲルの例としては、アクリルアミドゲル、架橋アクリル酸ゲル、寒天、ゼラチン、デキストラン、キトサン、シリカゲルなどがあげられるが、キトサンを用いることが好ましい。
キトサンは、キチンを脱アセチル化した高分子化合物であり、キチンはカニ、エビ、オキアミ、昆虫など無脊椎動物や菌類などに含まれている多糖である。キトサンは、「キチン・キトサンの応用」、「最後のバイオマス キチン、キトサン」、「キトサンハンドブック」キチンキトサン研究会編 技報堂出版などに記載がある方法に従って、キチンを30〜60%の濃アルカリ溶液中で加熱処理することによって調製することができる。キトサンの脱アセチル化度は好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上皿に好ましくは98%以上であればよい。
本発明で用いられる高分子含水ゲルの調製には、市販のキトサンを用いてもよい。市販のキトサンとしては、和光純薬製CT-10、CT-100、CT-500、CT-1000、大日精化工業株式会社製ダイキトサンH、ダイキトサンM、ダイキトサンPVL、ダイキトサンVL、ダイキトサン100D、ダイキトサン100DVL、株式会社キミカ製キミカキトサンLLWP、キミカキトサンLL-80、キミカキトサンMP、キミカキトサンF、キミカキトサンF2P、キミカキトサンS、キミカキトサンLL、キミカキトサンL、キミカキトサンL、キミカキトサンM、キミカキトサンH、キミカキトサンB、片倉チッカリン社株式会社製CTA-1、CTF、焼津水産化学工業株式会社製キトサンLL、キトサンLL-40、キトサンPL-90、及びキトサンPSH-80などが挙げられ、さらに甲陽ケミカル株式会社及び北海道曹達株式会社の製品などが挙げられる。
本発明で用いられる高分子含水ゲルの調製には、市販のキトサンを用いてもよい。市販のキトサンとしては、和光純薬製CT-10、CT-100、CT-500、CT-1000、大日精化工業株式会社製ダイキトサンH、ダイキトサンM、ダイキトサンPVL、ダイキトサンVL、ダイキトサン100D、ダイキトサン100DVL、株式会社キミカ製キミカキトサンLLWP、キミカキトサンLL-80、キミカキトサンMP、キミカキトサンF、キミカキトサンF2P、キミカキトサンS、キミカキトサンLL、キミカキトサンL、キミカキトサンL、キミカキトサンM、キミカキトサンH、キミカキトサンB、片倉チッカリン社株式会社製CTA-1、CTF、焼津水産化学工業株式会社製キトサンLL、キトサンLL-40、キトサンPL-90、及びキトサンPSH-80などが挙げられ、さらに甲陽ケミカル株式会社及び北海道曹達株式会社の製品などが挙げられる。
また、高分子含水ゲルとしてはキトサンの誘導体を用いてもよい。キトサンの誘導体としては、ピロリドンカルボン酸塩、ヒドロキシプロピルキトサン、カチオン化キトサン、グリセリル化キトサン、乳酸塩、アジピン酸塩などが挙げられる。これらのキトサンの誘導体は大日精化株式会社などから購入することができる。
本発明の細胞培養担体においては、「高分子含水ゲル層」は支持体である。ここで、細胞培養担体において支持体であるとは、多層構造の細胞培養担体を作製する際の基盤となる層であることをいう。
本発明における高分子含水ゲル層の厚さは好ましくは0.01μm以上5μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以上4μm以下、最も好ましくは0.5μm以上3μm以下である。高分子含水ゲル層が薄すぎると充分な膜を形成できず破れや裂けや穴が空いてしまうという問題が生じ、高分子含水ゲル層が厚すぎると培地成分や剥離操作時のキレート剤成分の拡散が遅く、細胞に悪影響を及ぼすという問題が生じる。
本発明における高分子含水ゲル層の厚さは好ましくは0.01μm以上5μm以下であり、さらに好ましくは0.1μm以上4μm以下、最も好ましくは0.5μm以上3μm以下である。高分子含水ゲル層が薄すぎると充分な膜を形成できず破れや裂けや穴が空いてしまうという問題が生じ、高分子含水ゲル層が厚すぎると培地成分や剥離操作時のキレート剤成分の拡散が遅く、細胞に悪影響を及ぼすという問題が生じる。
本明細書において層の厚さは、特に言及のない限り充分に乾燥した状態で計測したものを示す。本明細書においては、この層の厚さを「乾燥膜厚」ということもある。層の厚さの計測は、電子顕微鏡断面像、マイクロメータ膜厚計、エリプソメーター、角度可変XPS、光干渉式膜厚計などを用いて行うことができ、好ましくはマイクロメータ膜厚計、電子顕微鏡断面像、光干渉式膜厚計を用いて行うことができる。
本発明の細胞培養担体における高分子含水ゲル層は、一般的に知られている種々の高分子含水ゲル膜の作製方法を用いて作製することができる。例えば、高分子含水ゲルの溶液をキャストする方法(キャスト法)やバーコーターで塗布する方法(バーコート法)、ギャップコーターで塗布する方法(ギャップコート法)などが挙げられるが、これらのうちバーコート塗布法、ギャップコート塗布法が好ましい。
本発明に用いられる高分子含水ゲルは、後述の本明細書で定義する溶液状態での粘度が100 mPa・s以上50000 mPa・s 以下であることが好ましく、1000 mPa・s 以上30000 mPa・s 以下であることがより好ましく、4000 mPa・s 以上20000 mPa・s 以下であることがさらに好ましい。
同一条件で調製した高分子溶液の粘度は、高分子の分子量の指標となるものであり、粘度の数値が大きいものほど高分子量であることを意味する。本明細書で定義する高分子含水ゲルの溶液状態での粘度とは、該高分子12 gを1質量%の酢酸水溶液1000 gに添加したゲル化前の溶液を、25℃にてB型粘度計で測定したときの粘度をいう。粘度が低いとき、すなわち分子量が小さいときは、作製された高分子含水ゲル層の強度が弱いことが示唆される。また、低粘であることから高分子含水ゲル層の作製時に溶液が流れだして膜厚が不均一になったり、溶液の最表面のみが乾燥して皮膜を形成する皮張り現象を起こしたり、溶媒の乾燥に時間がかかったりする。一方、粘度が高すぎる場合、すなわち分子量が高すぎる場合、作製された高分子ゲル膜の強度はあるが、高分子含水ゲル膜の作成時に流延性がなく膜厚が不均一になる、又は塗膜が形成できないと言った不具合が生じる。粘度が上記の範囲である高分子含水ゲルを用いることにより、強度が高いとともに、上記の一定の厚さである高分子含水ゲル層を得ることができる。
同一条件で調製した高分子溶液の粘度は、高分子の分子量の指標となるものであり、粘度の数値が大きいものほど高分子量であることを意味する。本明細書で定義する高分子含水ゲルの溶液状態での粘度とは、該高分子12 gを1質量%の酢酸水溶液1000 gに添加したゲル化前の溶液を、25℃にてB型粘度計で測定したときの粘度をいう。粘度が低いとき、すなわち分子量が小さいときは、作製された高分子含水ゲル層の強度が弱いことが示唆される。また、低粘であることから高分子含水ゲル層の作製時に溶液が流れだして膜厚が不均一になったり、溶液の最表面のみが乾燥して皮膜を形成する皮張り現象を起こしたり、溶媒の乾燥に時間がかかったりする。一方、粘度が高すぎる場合、すなわち分子量が高すぎる場合、作製された高分子ゲル膜の強度はあるが、高分子含水ゲル膜の作成時に流延性がなく膜厚が不均一になる、又は塗膜が形成できないと言った不具合が生じる。粘度が上記の範囲である高分子含水ゲルを用いることにより、強度が高いとともに、上記の一定の厚さである高分子含水ゲル層を得ることができる。
アルギン酸は、褐藻類の細胞壁構成多糖又は細胞間充填物質として天然に存在しており、これらを原料として採取可能である。原料褐藻類の具体例としては、ヒバマタ目ダービリア科ダービリア属(例えばD.potatorum)、ヒバマタ目ヒバマタ科アスコフィラム属(例えばA.nodosum)、コンブ目コンブ科コンブ属(例えばマコンブ、ナガコンブ)、コンブ目コンブ科アラメ属(例えばアラメ)、コンブ目コンブ科カジメ属(例えばカジメ、ウロメ)、コンブ目レッソニア科レッソニア属(例えばL.flavikans)の褐藻類を例示できる。アルギン酸は、これらの原料からの酸による加水分解及び抽出を行い、抽出物の中和、沈殿回収を繰り返すことによって得られる。
また、市販のアルギン酸を使用することもできる。市販品としては、株式会社キミカ製キミカアルギンBシリーズ、キミカアルギンIシリーズ、キミカアルギンULVシリーズ、キミカアルギンHigh・Gシリーズ、キミカアルギンHigh・Mシリーズ、アルギテックスシリーズ、キミカアルギンK、キミカアルギンCa、キミカアルギンNH、キミカアルギンZ、または株式会社紀文フードケミファ製ダックアルギンNSPH、ダックアルギンNSPM、ダックアルギンNSPL、及びダックアルギンFF-SL-10などが挙げられる。
また、市販のアルギン酸を使用することもできる。市販品としては、株式会社キミカ製キミカアルギンBシリーズ、キミカアルギンIシリーズ、キミカアルギンULVシリーズ、キミカアルギンHigh・Gシリーズ、キミカアルギンHigh・Mシリーズ、アルギテックスシリーズ、キミカアルギンK、キミカアルギンCa、キミカアルギンNH、キミカアルギンZ、または株式会社紀文フードケミファ製ダックアルギンNSPH、ダックアルギンNSPM、ダックアルギンNSPL、及びダックアルギンFF-SL-10などが挙げられる。
「アルギン酸ゲル」とは、アルギン酸の分子中のカルボン酸基と多価金属イオンとがキレート構造を形成してゲル化したものを意味し、「アルギン酸ゲル層」とは、層状のアルギン酸ゲルを意味する。アルギン酸は、グルクロン酸(G)とマンヌロン酸(M)よりなるブロック共重合体であり、Mのみから成るMブロックとGのみから成るGブロックとM及びGがランダムに混合したランダムブロックが共存する。これらのブロックはそれぞれ加水分解やpH変化に対する耐性が異なる性質を利用して分画、定量することができる。本発明の細胞培養担体作製の際にはアルギン酸のグルクロン酸及びマンヌロン酸含有量の定量測定を行い、それぞれ下記の含有量であるアルギン酸を用いることができる。
本発明で用いられるアルギン酸は、マンヌロン酸(Mブロック)含有量が80質量%以下であり、グルロン酸(Gブロック)含有量が20質量%以上であることを特徴とする。本発明で用いられるアルギン酸は、好ましくはMブロック含有量が80質量%以下20質量%以上であり、かつGブロック含有量が20質量%以上80質量%以下であり、より好ましくはMブロック含有量が70質量%以下30質量%以上であり、かつGブロック含有量が30質量%以上70質量%以下であり、最も好ましくはMブロック含有量が50質量%以下30質量%以上であり、かつGブロック含有量が50質量%以上70質量%以下である。
マンヌロン酸の含量が80質量%を超えると作製したアルギン酸ゲルの細胞培養の支持体としての強度が不十分である。また、マンヌロン酸は、多価金属イオンとキレート構造を形成しにくいためアルギン酸ゲルを形成せず、このゲルを形成していない自由なマンヌロン酸が細胞培養担体中を拡散し、細胞接着性表面に吸着して細胞接着性を阻害する可能性がある。一方、グルロン酸の含有量が80質量%を超えると作製したアルギン酸ゲルの細胞培養の支持体としての強度は十分であるが脆くなり、さらにアルギン酸と多価金属イオンのゲル層をキレート剤を用いて可溶化処理する際に、十分に可溶化できず、細胞層の剥離が困難である。
本発明で用いられるアルギン酸は、溶液状態での粘度が、100 mPa・s以上50000 mPa・s以下であることが好ましく、500 mPa・s以上30000 mPa・s以下であることがより好ましく、1000 mPa・s以上10000 mPa・s以下であることが最も好ましい。
溶液状態とは、アルギン酸2 gを蒸留水1000 mlに溶解したときの溶液状態をいう。
溶液状態とは、アルギン酸2 gを蒸留水1000 mlに溶解したときの溶液状態をいう。
アルギン酸のゲル化は、主にGブロックが有するポケット構造に存在するカルボキシル基と多価金属カチオンが錯体を形成してエッグボックスを形成し、ゲル化することによると考えられている。
アルギン酸のゲル化を引き起こし得る多価金属カチオンの具体例としては、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、銅(Cu)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)等の金属イオンを例示できる。本発明の細胞培養担体における多価金属カチオンとして、好ましくは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、銅イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、又はストロンチウムイオン、より好ましくはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンを用いることができる。
また、「アルギン酸ゲル」はアルギン酸とカチオン残基を有する有機高分子化合物のポリイオンコンプレックスゲルでもよい。ここでいうカチオン残基を有する有機高分子化合物の例としては、ポリリジン、キトサン、ゼラチン、コラーゲンなどの複数のアミノ基を有する化合物が挙げられる。
アルギン酸のゲル化を引き起こし得る多価金属カチオンの具体例としては、バリウム(Ba)、鉛(Pb)、銅(Cu)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)等の金属イオンを例示できる。本発明の細胞培養担体における多価金属カチオンとして、好ましくは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、バリウムイオン、銅イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、又はストロンチウムイオン、より好ましくはカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンを用いることができる。
また、「アルギン酸ゲル」はアルギン酸とカチオン残基を有する有機高分子化合物のポリイオンコンプレックスゲルでもよい。ここでいうカチオン残基を有する有機高分子化合物の例としては、ポリリジン、キトサン、ゼラチン、コラーゲンなどの複数のアミノ基を有する化合物が挙げられる。
アルギン酸のゲル化は、常法に従って行なうことができる。アルギン酸のゲル化は、例えばイオン交換を利用して行なうことができる。例えば、アルギン酸ナトリウム水溶液にカルシウムイオンを添加すると速やかにイオン交換が生じ、アルギン酸カルシウムゲルが得られる。より具体的には、0.2〜5質量%アルギン酸ナトリウム水溶液を、高分子含水ゲル(例えば、キトサン)層上に塗布後0.01〜3.0 M 塩化カルシウム水溶液中に浸漬して塩化カルシウムをしみ込ませ、20〜30℃で3分〜3時間放置することによりアルギン酸カルシウムゲル層が得られる。このように高分子含水ゲルを用いてアルギン酸のゲル化を行なえば、高分子含水ゲル層と該高分子含水ゲル層上に形成されたアルギン酸ゲル層とを含む細胞培養担体を得ることができる。イオン交換によるアルギン酸のゲル化によってアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を作製する際の、多価金属イオン溶液中の多価金属イオンの濃度は、使用する多価金属イオンの種類にもよるが0.001 M以上3.0 M以下が好ましく、さらに0.01 M以上1.0 M以下が好ましく、0.02 M以上0.5 M以下が最も好ましい。
多価金属イオンの濃度が低い場合には、アルギン酸のゲル化が十分ではなく、作製したアルギン酸ゲルの強度が弱く、細胞培養の支持体として必要十分ではない。
さらに、マンヌロン酸含量が80質量%を超えるアルギン酸を用いかつ多価金属イオンの濃度が低いと、ゲル化していない自由なアルギン酸分子が培地中に拡散し、後述する細胞接着性ポリペプチド表面に最吸着して、細胞の接着性を阻害する可能性がある。
一方、多価金属イオンの濃度が高い場合には、作製したアルギン酸ゲルの強度は細胞培養の支持体として十分であるが、アルギン酸と多価金属イオンのゲル層をキレート剤を用いて可溶化処理する際に、十分に可溶化できず、細胞の剥離が困難となる。
さらに、マンヌロン酸含量が80質量%を超えるアルギン酸を用いかつ多価金属イオンの濃度が低いと、ゲル化していない自由なアルギン酸分子が培地中に拡散し、後述する細胞接着性ポリペプチド表面に最吸着して、細胞の接着性を阻害する可能性がある。
一方、多価金属イオンの濃度が高い場合には、作製したアルギン酸ゲルの強度は細胞培養の支持体として十分であるが、アルギン酸と多価金属イオンのゲル層をキレート剤を用いて可溶化処理する際に、十分に可溶化できず、細胞の剥離が困難となる。
本発明の細胞培養担体におけるアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の厚さは0.01μm以上50μm以下であることが好ましく、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上5μm以下であることがさらに好ましい。アルギン酸ゲル層の固形分量が少なすぎると充分な膜状の層を形成できず穴が空いてしまい、多すぎると乾燥膜でのカールや割れの発生、培養工程での変形やアルギン酸ゲル溶解工程での溶解不良といった問題が生じる。
本発明の好ましい態様としては、細胞培養面側最表面が細胞接着性ゲル層である細胞培養担体が挙げられる。
「細胞接着性ゲル層」とは、層状の細胞接着性を有するハイドロゲルを意味し、細胞毒性が無く、通常の培養条件で細胞が付着するゲルであれば天然、合成の化合物いずれでもよいが、好ましくは層状の細胞外マトリックス成分ゲルである。細胞外マトリックスは、一般的には「動物組織中の細胞の外側に存在する安定な生体構造物で、細胞が合成し、細胞外に分泌・蓄積した生体高分子の複雑な会合体」と定義されており(生化学辞典(第3版)p.570,東京化学同人(株))、細胞を物質的に支持する役割や細胞の活性を調節する役割(すなわち細胞外の情報を細胞に伝えその活性に変化を与える役割)等を担っている。「細胞外マトリックス成分」とは、細胞外マトリックスの構成成分を意味し、その具体例としては、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グルコサミノグリカン(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸など)、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、ゼラチン等を例示でき、これらのうち特に好ましいものとして、コラーゲン、アテロコラーゲン、マトリゲル(IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸よりなるゲル)、ヒアルロン酸、及びゼラチンを例示できる。細胞外マトリックス成分は、常法に従って得ることができる。また、市販の細胞外マトリックス成分を使用してもよい。細胞接着性成分のゲル化は、常法に従って行なうことができる。例えば、細胞接着性成分がコラーゲンである場合には、0.3〜0.5質量%コラーゲン水溶液を37℃で10〜20分間インキュベーションすることにより、コラーゲンゲルを得ることができる。また、新田ゼラチン株式会社記載のコラーゲンゲルの調製方法に従ってコラーゲンゲルを得ることもできる。細胞外マトリックス成分のゲル化の際には、必要に応じてゲル化剤を使用してもよい。
「細胞接着性ゲル層」とは、層状の細胞接着性を有するハイドロゲルを意味し、細胞毒性が無く、通常の培養条件で細胞が付着するゲルであれば天然、合成の化合物いずれでもよいが、好ましくは層状の細胞外マトリックス成分ゲルである。細胞外マトリックスは、一般的には「動物組織中の細胞の外側に存在する安定な生体構造物で、細胞が合成し、細胞外に分泌・蓄積した生体高分子の複雑な会合体」と定義されており(生化学辞典(第3版)p.570,東京化学同人(株))、細胞を物質的に支持する役割や細胞の活性を調節する役割(すなわち細胞外の情報を細胞に伝えその活性に変化を与える役割)等を担っている。「細胞外マトリックス成分」とは、細胞外マトリックスの構成成分を意味し、その具体例としては、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グルコサミノグリカン(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸など)、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、ゼラチン等を例示でき、これらのうち特に好ましいものとして、コラーゲン、アテロコラーゲン、マトリゲル(IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸よりなるゲル)、ヒアルロン酸、及びゼラチンを例示できる。細胞外マトリックス成分は、常法に従って得ることができる。また、市販の細胞外マトリックス成分を使用してもよい。細胞接着性成分のゲル化は、常法に従って行なうことができる。例えば、細胞接着性成分がコラーゲンである場合には、0.3〜0.5質量%コラーゲン水溶液を37℃で10〜20分間インキュベーションすることにより、コラーゲンゲルを得ることができる。また、新田ゼラチン株式会社記載のコラーゲンゲルの調製方法に従ってコラーゲンゲルを得ることもできる。細胞外マトリックス成分のゲル化の際には、必要に応じてゲル化剤を使用してもよい。
本発明における細胞接着性ゲル層の厚さは0.005μm以上5.0μm以下が好ましく、0. 005μm以上1.0μm以下がより好ましく、0. 005μm以上0.5μm以下がさらに好ましい。細胞接着性ゲル層が厚いと乾燥時に層に亀裂が発生するばかりか、細胞の転写が著しく困難になる。
アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層上に細胞接着性ゲル層を形成させる際には、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層と細胞接着性成分ゲル層とを別々に作製した後、両者を重ねてもよいが、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層上に細胞接着性成分含有水溶液を添加した後、該水溶液をゲル化させるのが好ましい。細胞接着性ゲル層は脱着を行なうのに十分な物理的強度を有していないため、細胞接着性ゲル層を形成させた容器(例えばディッシュ、シャーレ等)から細胞接着性ゲル層を剥離するのは困難だからである。また、極薄層の細胞接着性ゲル層は、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を再簿接着性成分の溶液に浸漬すること(浸漬法)や塗布すること(塗布法)、又はキャストすること(キャスト法)で簡便に得ることができるが、本発明の細胞培養担体の作成ではこれらのいずれの方法を用いてもよい。このうちキャスト法が好ましく用いられる。例えば、アルギン酸ゲル上にコラーゲンゲル層を形成する場合には、市販の0.3〜0.5質量%コラーゲン水溶液を必要により適当な濃度に希釈し、上記の方法で作成したアルギン酸カルシウムゲル上にこの溶液をキャストし、乾燥させることで、アルギン酸ゲル上にコラーゲンゲル層が形成したものが得られる。
本発明の細胞培養担体上に形成された培養細胞層は、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化処理することにより細胞シートとして剥離させることができる。アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理は、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を構成するカチオン成分を除去することにより実施でき、カチオン種が多価金属イオンの場合は、培養細胞層が形成された細胞培養担体を1)リン酸などの多価金属カチオンと錯形成するもしくは難溶性塩を形成するイオンが添加された培地に浸漬する、2)キレート剤水溶液が添加された培地に浸漬する、3)多価金属イオンが低減された培地に浸漬する、又は4)該細胞の培養培地中の多価金属イオンをキレート剤によって隠蔽する方法によって実施できる。通常、細胞培養用の培地にはリン酸イオンが多く存在する。従って、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理は、多価金属カチオン濃度が通常細胞培養に用いられる最小培地における多価金属カチオンの濃度よりも少なく、かつキレート剤を含む培地を用いて行うことが好ましい。具体的には該濃度は2.6 mM以下であることが好ましく、3μM以下がより好ましく、さらに好ましくは0.5μM以下であり、実質的に0であることが最も好ましい。また、該キレート剤の濃度は2.3 mM以上かつ26000 mM以下が好ましく、2.3 mM以上かつ2600 mM以下がさらに好ましい。上記のように多価金属カチオン濃度を低減した培地を用いることにより、キレート剤の細胞への侵襲を低減したアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化が可能である。
本発明で用いられるキレート剤としては、例えば、エチレンジアミンジオルトヒドロキシフェニル酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,3-ジアミノプロパノール四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸(edta)、グリコールエーテルジアミン四酢酸、O,O'-ビス(2-アミノエチル)エチレングリコール-N,N,N',N'-四酢酸(egta)、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、1,1-ジホスホノエタン-2-カルボン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ヒドロキシ-1-ホスホノプロパン-1,3,3-トリカルボン酸、カテコール-3,5-ジスルホン酸、ピロリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、1-ヒドロキシプロピリデン−1,1-ジホスホン酸、1-アミノエチリデン-1,1-ジホスホン酸やこれらの塩が挙げられる。これらのうち好ましいものとしてはedta、egta、エチレンジアミンテトラホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸が挙げられる。
さらに、上記のアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化処理する際の培地においては,カチオン性アミノ酸の濃度が、通常細胞培養に用いられる最小培地におけるカチオン性アミノ酸濃度より少ない濃度であることが好ましい。具体的には、該濃度は1.0 mM以下であることが好ましく、2μM以下がより好ましく、さらに好ましくは0.5μM以下であり、実質的に0であることが最も好ましい。カチオン性アミノ酸成分とは、L-Lysin(Lys)、L-Arginine(Arg)、L-Histidine(His)、L-Cystine(Cys)及びこれらの塩をいう。
アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理は、上記のいずれかの可溶化処理用培地に一回又は複数回浸漬することにより実施すればよい。複数回の場合は用いる可溶化処理用培地は同一でも異なってもよい。
キレート剤を用いたアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理の際、すなわち培養細胞層が形成された細胞培養担体を可溶化処理用の培地に浸漬する際には、高分子含水ゲル層側からキレート剤がしみこむように行うのが好ましい。これによって、高分子含水ゲルとアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層とを容易に分離することができ、培養された細胞層を含む細胞シートを高分子含水ゲル層から容易に剥離させることができる。アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理によってアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を完全に除去する必要はなく、可溶化されなかったアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層が残っていてもよいが、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層はできるだけ可溶化して除去するのが好ましい。
本発明の細胞培養担体上に形成された培養細胞層は、上述のようにアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化処理することにより細胞シートとして剥離させることができる。本発明の細胞培養担体としては、その際の操作性を向上させるために、細胞接着性ゲル層と反対側の高分子含水ゲル層の面に、物理的な補強治具を設けてもよい。物理的な補強治具の材質は、細胞に影響を与えない材質であれば特に限定はないが、金属類(たとえば鉄、ステンレス、チタン、金など)、プラスチック類(たとえばポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルなど)、陶器などの無機材料類などであり、ステンレス、チタン、プラスチック類が好ましい。
物理的な補強治具は、本発明の細胞培養担体の取り扱い性を向上させることができればいかなる形状をしていてもよいが、板状であることが好ましく、厚さは好ましくは0.1μm以上10 mm以下、より好ましくは1μm以上1 mm以下、さらに好ましくは10μm以上200μm以下である。
物理的な補強治具は、本発明の細胞培養担体の取り扱い性を向上させることができればいかなる形状をしていてもよいが、板状であることが好ましく、厚さは好ましくは0.1μm以上10 mm以下、より好ましくは1μm以上1 mm以下、さらに好ましくは10μm以上200μm以下である。
物理的な補強治具は、細胞観察用に本発明の細胞培養担体が見える部分があればその形状は特に限定はないが、円、多角形(三角形、四角形、六角形など)、又はその組み合わせ(扇型など)等が例として挙げられる。そのなかで、円に近い形状であることが好ましい。また、細胞観察用に本発明の細胞培養担体が見える部分は1個でも複数でもよい。また高分子含水ゲル層の補強治具を接着した面の判別を容易にするために、非対称な形状であることが好ましい。
物理的な補強治具は、細胞培養に影響を及ぼさない限りいかなる方法で高分子ゲル膜に接着させてもよい。たとえば、高分子ゲル膜を作製した後市販の接着剤(たとえばアロンアルファ、ボンドなど)を使用して接着させる方法や高分子ゲル膜を作成する際に補強治具を未乾燥状態の高分子ゲル膜におくことで接着させてもよい。
物理的な補強治具は、細胞培養に影響を及ぼさない限りいかなる方法で高分子ゲル膜に接着させてもよい。たとえば、高分子ゲル膜を作製した後市販の接着剤(たとえばアロンアルファ、ボンドなど)を使用して接着させる方法や高分子ゲル膜を作成する際に補強治具を未乾燥状態の高分子ゲル膜におくことで接着させてもよい。
物理的な補強治具は、その材質にもよるが、補助治具の縁が鋭利である場合がある。この場、補助治具の鋭い縁によって高分子含水ゲルが破けるばかりでなく、取り扱う作業者にも危険を及ぼす懸念がある。したがって、鋭い縁をなくすことが好ましい。鋭い縁をなくす方法として、細胞培養に支障がない限りいかなる方法を用いてもよいが、物理的な研磨(たとえば、やすりなどで磨くなど)や化学処理(たとえば、ケミカルエッチングなど)する方法が挙げられる。本発明において、物理的な補強治具はステンレス製の場合、ケミカルエッチングなどの化学処理を行うことが好ましい。
本発明の細胞培養担体上に形成された培養細胞層を細胞シートとして剥離させる際の操作性を向上させるために、細胞培養面側最表面に細胞接着性ゲル層を有する細胞培養担体においては、該細胞培養面側最表面の一部に該細胞接着性ゲル層未修飾部分、すなわち該細胞接着性ゲル層が形成されていない部分を設けてもよい。細胞接着性ゲル層未修飾部分は、高分子含水ゲル層又はアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層となる。細胞接着性ゲル層未修飾部分を設けることによって、高分子含水ゲル層と細胞接着性ゲル層を剥離する際の取り扱い性を向上させることができる。すなわち、細胞接着性ゲル層未修飾部分の高分子含水ゲル層をピンセットなどでつかむことにより細胞接着性ゲル層に触れないで高分子含水ゲル層を取り除くことができるため、細胞に悪影響が少ない。細胞接着性ゲル層未修飾部分は、本発明の細胞培養担体における高分子含水ゲル層の隅の部分であることが好ましい。
細胞接着性ゲル層未修飾部分を設ける方法としては細胞培養に支障がない限りいかなる方法を用いてもよいが、例えば一般的に良く知られているマスキング法が挙げられる。すなわち、高分子含水ゲル層上で細胞接着性ゲル層未修飾とする部分をあらかじめ別材料で覆い、該高分子含水ゲル層を細胞接着性ゲル成分で修飾した後、覆っていた別材料を除去することによって、細胞接着性ゲル層未修飾部分を設ける方法である。
細胞接着性ゲル層未修飾部分を設けるために覆う別材料の材質は、細胞培養に支障がない限りいかなる材質のものを用いてもよく、例えばシリコンゴム、市販のマスキングテープや粘着テープ、プラスチック類(例えばポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルなど)、金属類(例えば鉄、ステンレス、チタン、金など)などが挙げられるが、シリコンゴム、市販のマスキングテープが好ましい。
細胞接着性ゲル層未修飾部分を設けるために覆う別材料の材質は、細胞培養に支障がない限りいかなる材質のものを用いてもよく、例えばシリコンゴム、市販のマスキングテープや粘着テープ、プラスチック類(例えばポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルなど)、金属類(例えば鉄、ステンレス、チタン、金など)などが挙げられるが、シリコンゴム、市販のマスキングテープが好ましい。
細胞接着性ゲル層未修飾部分の形状は、細胞培養に支障がない限り特に限定はないが、円もしくは多角形(三角形、四角形、六角形)又はこれらの組み合わせ(扇型など)であることが好ましく、三角形、扇形であることが好ましい。細胞接着性ゲル層未修飾部分の大きさは、細胞培養に支障がない限り特に限定はないが、円相当で好ましくは直径0.1 mm以上10 mm以下、より好ましくは1 mm以上5 mm以下である。
本発明の細胞培養担体を用いて、培養し得る細胞の具体例としては、繊維芽細胞、血管内皮細胞、軟骨細胞、肝細胞、小腸上皮細胞、表皮角化細胞、骨芽細胞、骨髄間葉細胞等を例示でき、好ましいものとしては繊維芽細胞を例示できる。細胞の培養の際には、通常、細胞濃度1〜1.5万cells/mlの培養液(例えば、D-MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を細胞接着性ゲル層上に添加する。細胞の培養条件は、培養する細胞に従って適宜選択し得る。細胞接着性ゲル層上で細胞を培養する場合には、通常、細胞接着性ゲル層上にコンフルエントな単層の細胞層が形成されるまで行なう。
本発明の細胞培養担体を用いた細胞の培養は具体的には次のようにして行なうことができる。細胞培養担体をシャーレ等の内部に設置し、シャーレ内に適当な培養液(例えば、D-MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を添加して5分浸漬後培地交換することを3回繰り返したのち12〜24時間放置し、培養液を細胞培養担体中に浸潤させる。シャーレ内の培養液を捨て、細胞培養担体の細胞接着性ゲル層上に細胞を播き、シャーレ内に適当な培養液(例えば、D-MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地)を添加する。37℃で1〜2時間放置し、細胞接着性ゲル層に保持(接着)させた後、37℃で培養を続ける。培養の際には、必要に応じて培養液を交換してもよい。通常は培養0.5〜2日ごとに培養液を交換する。
本発明の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物は本発明の細胞培養担体と該細胞培養担体に保持された細胞層とを含む。「細胞培養担体に保持された細胞層」は好ましくは細胞接着性ゲル層上に形成された細胞層である。
アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化処理して得られる細胞シートは、細胞層を含んでいるので、細胞層の重層化ならびに転写に使用できる。細胞層の重層化の際には、本発明の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物を細胞培養面が向き合うように予め培養した細胞上に荷重をかけた状態又はかけない状態で重ね、さらに培養した後、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化してもよいし、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化して得られる細胞シート同士を重層化してもよいし、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化して得られる細胞シートを別に作製した細胞層に重層化してもよい。また、上記の方法などにより重層化した細胞層を含む細胞シート又は細胞培養物を、さらに別に作製した細胞層に重層化してもよい。別に作製した細胞層としては、本発明の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物の細胞層でもよく、他の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物の細胞層でもよく、また細胞シートでもよい。重層化する細胞層の細胞の種類は、同一であっても異なっていてもよい。重層化する細胞層の数は特に限定されないが、通常1〜10、好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3である。
細胞層の転写の際には、別の細胞培養用基材上に本発明の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物を細胞培養面が別の細胞培養用基材側になるように荷重をかけた状態又はかけない状態で載せて、さらに培養した後、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化してもよいし、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を可溶化して得られる細胞培養物を他の媒体に転写してもよい。また、転写される細胞培養物は重層化細胞培養物であってもよい。
好ましい重層化ならびに転写方法としては、予め培養した細胞上もしくは別の細胞培養基材上で培養したのちアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を溶解する方法が挙げられる。
好ましい重層化ならびに転写方法としては、予め培養した細胞上もしくは別の細胞培養基材上で培養したのちアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を溶解する方法が挙げられる。
荷重をかけた状態の細胞の培養法とは、細胞が転写される細胞もしくは基材にムラが生じない程度に充分荷重がかけられていればいかなる方法でもよい。ここで、荷重をかける際に細胞が密閉されると窒息をすることから、転写する側もしくは受ける側の少なくとも一方の細胞培養基材が水透過性のゲルや高分子含水ゲルもしくはこれらの組み合わせでできていることが好ましい。また、ムラ無く転写するには細胞面を充分に覆う状態で荷重をかける必要があるが、均一に接触することで酸素の拡散を妨害することとなるため、不織布(ナイロン、ポリエステル、ステンレスなど)等を介して酸素の拡散を妨げないで荷重することが好ましい。
荷重をかけた細胞の培養法の荷重は0.1 g/cm2以上50 g/cm2以下であることが好ましく、0.5 g/cm2以上10 g/cm2以下であることがさらに好ましい。荷重をかけた細胞の培養の時間は充分な細胞の転写が実現できれば制限はないが4時間以上72時間以下が好ましく、6時間以上48時間以下がさらに好ましい。本発明においては、荷重をかけない状態で培養することが好ましい。
本発明の細胞培養担体を作製する際、密着性を改善する目的で、カルボジイミド類を含んだ調製液を用いてもよい。カルボジイミド類及びN-ヒドロキシコハクイミドはいかなる層の調製液に添加してもよいが、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層調製液もしくは予め高分子含水ゲルに含浸させておくこと、あるいはアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層塗布後に塩化カルシウムと共溶解した液に浸漬することが好ましい。該カルボジイミド類は水溶性のものが好ましく、例えば1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩などが挙げられる。該カルボジイミドを用いる場合その濃度としては0.01 mg/l以上200 g/l以下が好ましい。このときN-ヒドロキシコハクイミドを触媒として使用してもよく、濃度としては該カルボジイミドに対して1質量%以上50質量%以下が好ましい。
本発明においては、特に必要がない限りカルボジイミドは用いないことが好ましい。
本発明においては、特に必要がない限りカルボジイミドは用いないことが好ましい。
本発明の細胞培養担体は、いかなる方法で滅菌されてもよいが、電子線、γ線、X線、紫外線などの放射線による滅菌が好ましく用いられ、電子線、γ線、紫外線がさらに好ましく用いられ、電子線滅菌が特に好ましい。電子線滅菌の照射線量としては0.1 kGy以上65 kGy以下が好ましく、1 kGy以上40 kGy以下が特に好ましい。EOG滅菌などの化学滅菌、高圧蒸気ガス滅菌などの高熱をかける滅菌は細胞接着性層やアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を分解するため好ましくない。このように滅菌した細胞培養担体は無菌条件下であれば長期間に渡って室温保管が可能である。
滅菌法は単独もしくは複数種の組み合わせで実施されてもよく、同一種の滅菌法を繰り返し使用してもよい。
滅菌法は単独もしくは複数種の組み合わせで実施されてもよく、同一種の滅菌法を繰り返し使用してもよい。
重層化する細胞層として、例えば、血管内皮細胞層、肝細胞層を使用すれば、肝臓の3次元組織構造物を構築できる。この3次元組織構造物は、in vitroにおける薬物の透過性試験へ適用できるとともに、動物実験代替モデルや移植用臓器へ応用できる。重層化した細胞層は、細胞層を構成する細胞の種類に応じた培養条件で培養することができる。培養の際には、例えば、D-MEM培地、MEM培地、HamF12培地、HamF10培地等の培地を使用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
〔例1〕高分子含水ゲル膜の作製
(1) 高分子含水キトサンゲル膜の調製
大日精化工業株式会社製ダイキトサン100D(脱アセチル化度98〜100%)の12gを1質量%の酢酸水溶液1000gに徐々に添加して室温で7時間攪拌して溶解し、富士写真フイルム製ミクロフィルターFG-30でろ過した。B型粘度計で測定した溶液粘度は7800 mPa・sであった。
得られたキトサンの酢酸水溶液を、ポリエチレンテレフタレートフイルム(縦20 cm、横20 cm、フイルム厚200μm)上にアプリケータで乾燥膜厚1.5μmとなるように塗布し、37℃にて一晩乾燥させた。乾燥させた膜を、1.9質量%水酸化ナトリウムメタノール溶液浴に40分間、引き続きPBS(Dulbecco's Phosphate buffered Saline)溶液浴に40分間、その後、蒸留水浴に60分浸漬してキトサンゲル膜K−1を得た。得られた膜を室温で1晩乾燥後、ビニール袋に入れ保存した。
K−1と同様に、脱アセチル化度及び溶液粘度(分子量)の異なるキトサン膜を表1に示すように作製した。また、上記各キトサン膜及びポリエチレンテレフタレート製の薄膜(膜厚5μm)を下記の基準で評価した結果を表1に示す。その結果、キトサン膜は本発明の範囲において、良好な透明性及び細胞培養担体の支持体として十分な強度を有していた。
〔例1〕高分子含水ゲル膜の作製
(1) 高分子含水キトサンゲル膜の調製
大日精化工業株式会社製ダイキトサン100D(脱アセチル化度98〜100%)の12gを1質量%の酢酸水溶液1000gに徐々に添加して室温で7時間攪拌して溶解し、富士写真フイルム製ミクロフィルターFG-30でろ過した。B型粘度計で測定した溶液粘度は7800 mPa・sであった。
得られたキトサンの酢酸水溶液を、ポリエチレンテレフタレートフイルム(縦20 cm、横20 cm、フイルム厚200μm)上にアプリケータで乾燥膜厚1.5μmとなるように塗布し、37℃にて一晩乾燥させた。乾燥させた膜を、1.9質量%水酸化ナトリウムメタノール溶液浴に40分間、引き続きPBS(Dulbecco's Phosphate buffered Saline)溶液浴に40分間、その後、蒸留水浴に60分浸漬してキトサンゲル膜K−1を得た。得られた膜を室温で1晩乾燥後、ビニール袋に入れ保存した。
K−1と同様に、脱アセチル化度及び溶液粘度(分子量)の異なるキトサン膜を表1に示すように作製した。また、上記各キトサン膜及びポリエチレンテレフタレート製の薄膜(膜厚5μm)を下記の基準で評価した結果を表1に示す。その結果、キトサン膜は本発明の範囲において、良好な透明性及び細胞培養担体の支持体として十分な強度を有していた。
膜の取り扱い性の評価
表1の高分子キトサンゲル膜を乾燥状態でR=0.1のサファイア製針で引掻き、表面を目視で確認した。評価は下記基準で行った。
◎・・・・・全くキズが付かない。
○・・・・・極わずかにキズが確認できるが、実用上問題なし。
△・・・・・はっきりとしたキズが確認でき、実用上問題となる。
×・・・・・針による引掻きキズばかりでなく、膜がちぎれる。
表1の高分子キトサンゲル膜を乾燥状態でR=0.1のサファイア製針で引掻き、表面を目視で確認した。評価は下記基準で行った。
◎・・・・・全くキズが付かない。
○・・・・・極わずかにキズが確認できるが、実用上問題なし。
△・・・・・はっきりとしたキズが確認でき、実用上問題となる。
×・・・・・針による引掻きキズばかりでなく、膜がちぎれる。
(2)高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム積層膜の調製
株式会社キミカ製キミカアルギンB-1の20gを蒸留水1000gに徐々に添加して室温で8時間攪拌して溶解し、富士写真フイルム製ミクロフィルターFG-30でろ過した。B型粘度計で測定した溶液粘度は600 mPa・sであった。
得られたアルギン酸ナトリウム水溶液(2質量%)を、上記(1)で得た高分子含水キトサンゲル膜K-1上に、ウェット塗布膜厚300μmとなるように塗布した。この塗布物を0.04 mol/Lの濃度の塩化カルシウムを含む20%メタノール水溶液浴に20分間浸漬したのち、蒸留水浴に30分間浸漬し高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム積層ゲル膜を得た。アルギン酸カルシウムゲル層乾膜の厚さは膜厚計から計測すると約6μmであった。
同様に、キミカアルギンB-1の代わりにマンヌロン酸含有量、グルロン酸含量の異なるアルギン酸を使用したサンプル、塩化カルシウムの濃度を変更したサンプル、及び塩化カルシウムの変わりに塩化ナトリウムを用いたサンプルで高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム積層ゲル膜を作製した。さらに、同様に上記(1)のK-2〜K-7を用いて高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム積層ゲル膜を作製した(表2)。その結果、本発明の範囲において、良好な透明性を有し細胞培養担体の支持体として十分な強度を有する膜が得られた。
株式会社キミカ製キミカアルギンB-1の20gを蒸留水1000gに徐々に添加して室温で8時間攪拌して溶解し、富士写真フイルム製ミクロフィルターFG-30でろ過した。B型粘度計で測定した溶液粘度は600 mPa・sであった。
得られたアルギン酸ナトリウム水溶液(2質量%)を、上記(1)で得た高分子含水キトサンゲル膜K-1上に、ウェット塗布膜厚300μmとなるように塗布した。この塗布物を0.04 mol/Lの濃度の塩化カルシウムを含む20%メタノール水溶液浴に20分間浸漬したのち、蒸留水浴に30分間浸漬し高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム積層ゲル膜を得た。アルギン酸カルシウムゲル層乾膜の厚さは膜厚計から計測すると約6μmであった。
同様に、キミカアルギンB-1の代わりにマンヌロン酸含有量、グルロン酸含量の異なるアルギン酸を使用したサンプル、塩化カルシウムの濃度を変更したサンプル、及び塩化カルシウムの変わりに塩化ナトリウムを用いたサンプルで高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム積層ゲル膜を作製した。さらに、同様に上記(1)のK-2〜K-7を用いて高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム積層ゲル膜を作製した(表2)。その結果、本発明の範囲において、良好な透明性を有し細胞培養担体の支持体として十分な強度を有する膜が得られた。
(3)高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム/コラーゲン積層膜の調製
上記(2)で得た高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム積層膜A-1を乾燥させない状態でシリコンゴムとアルミ金属製(内径縦12 cm、横7 cm、厚み5 mm)の枠を置いた。氷冷下で新田ゼラチン社製Cellmatrix I-P 8 mlに10倍濃縮されたHam's F-12培地1 mlを添加して1分間スターラー混合した溶液に、さらに氷冷下で緩衝液(NaHCO32.2g又は4.7gを0.05N NaOH水溶液100 mlに溶解した緩衝液)を1 ml添加して泡立てないように混合した溶液を、上記枠内に7mlキャストした。これを室温下で一晩乾燥させ、引き続き蒸留水で洗浄後再度乾燥させて含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム/極薄コラーゲン層修飾膜を得た。
上記(2)で得られたA-2〜A-13を用いて、同様に高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム/コラーゲン積層膜を作製した(表3)。
上記(2)で得た高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム積層膜A-1を乾燥させない状態でシリコンゴムとアルミ金属製(内径縦12 cm、横7 cm、厚み5 mm)の枠を置いた。氷冷下で新田ゼラチン社製Cellmatrix I-P 8 mlに10倍濃縮されたHam's F-12培地1 mlを添加して1分間スターラー混合した溶液に、さらに氷冷下で緩衝液(NaHCO32.2g又は4.7gを0.05N NaOH水溶液100 mlに溶解した緩衝液)を1 ml添加して泡立てないように混合した溶液を、上記枠内に7mlキャストした。これを室温下で一晩乾燥させ、引き続き蒸留水で洗浄後再度乾燥させて含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム/極薄コラーゲン層修飾膜を得た。
上記(2)で得られたA-2〜A-13を用いて、同様に高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム/コラーゲン積層膜を作製した(表3)。
(4)細胞培養担体の評価
上記(3)で得られた細胞培養担体を下記の測定で評価した。結果を表3に示す。
(a)膜強度測定
乾燥した細胞培養担体を細胞接着性コラーゲン面が上向きとなるようにシャーレに設置し、37℃でMEM培地に3日間浸漬したあとの膜強度を評価した。
膜強度の評価は下記の基準で行った。
○・・・・・細胞培養担体をピンセットつかむことができ、ちぎれがなく実用上問題なし。
△・・・・・細胞培養担体をセットでつかむことはできるが、ちぎれる場合がある。
×・・・・・細胞培養担体がゼリー状であり、ピンセットでつかめない。
(b)剥離性測定
乾燥させた細胞培養担体を細胞接着性層がシャーレ面と接触するように設置し、37℃でMEM培地に3日間浸漬した。その後、可溶化培地(Eagle最小培地に、Eagle最小培地中に存在するカルシウムイオン、マグネシウムイオンの総モル数に対して230モル%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を添加した培地)に37℃で15分間浸漬し、高分子含水キトサンゲル層をピンセットで掴んで取り除いた。
評価は下記の基準で行った。
◎・・・・・高分子含水ゲル層から細胞接着層が自然と浮くように剥離する。
○・・・・・細胞接着層をピンセットで引っ張ることで高分子含水ゲル層から容易に剥離できる。
△・・・・・細胞接着層をピンセットで引っ張ることで高分子含水ゲル層から剥離できるが、剥離しない部分がある。
×・・・・・細胞接着層をピンセットで引っ張っても高分子含水ゲルから剥離しない。
上記(3)で得られた細胞培養担体を下記の測定で評価した。結果を表3に示す。
(a)膜強度測定
乾燥した細胞培養担体を細胞接着性コラーゲン面が上向きとなるようにシャーレに設置し、37℃でMEM培地に3日間浸漬したあとの膜強度を評価した。
膜強度の評価は下記の基準で行った。
○・・・・・細胞培養担体をピンセットつかむことができ、ちぎれがなく実用上問題なし。
△・・・・・細胞培養担体をセットでつかむことはできるが、ちぎれる場合がある。
×・・・・・細胞培養担体がゼリー状であり、ピンセットでつかめない。
(b)剥離性測定
乾燥させた細胞培養担体を細胞接着性層がシャーレ面と接触するように設置し、37℃でMEM培地に3日間浸漬した。その後、可溶化培地(Eagle最小培地に、Eagle最小培地中に存在するカルシウムイオン、マグネシウムイオンの総モル数に対して230モル%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を添加した培地)に37℃で15分間浸漬し、高分子含水キトサンゲル層をピンセットで掴んで取り除いた。
評価は下記の基準で行った。
◎・・・・・高分子含水ゲル層から細胞接着層が自然と浮くように剥離する。
○・・・・・細胞接着層をピンセットで引っ張ることで高分子含水ゲル層から容易に剥離できる。
△・・・・・細胞接着層をピンセットで引っ張ることで高分子含水ゲル層から剥離できるが、剥離しない部分がある。
×・・・・・細胞接着層をピンセットで引っ張っても高分子含水ゲルから剥離しない。
表3から分かるように、本発明の膜は、細胞培養担体の支持体として十分な強度と良好な剥離性を有していた。
本発明において、細胞接着性ゲルとして、コラーゲンの代わりにフィブロネクチンを用いた膜でも許容範囲の強度と剥離性が得られた。
本発明において、細胞接着性ゲルとして、コラーゲンの代わりにフィブロネクチンを用いた膜でも許容範囲の強度と剥離性が得られた。
〔例2〕滅菌
実施例1の膜をUV滅菌1、2、3時間、電子線滅菌20、40、60、80、100 kGyの6種類の滅菌を施したところ、いずれも菌が確認されなかった。このとき、滅菌処理を施していないサンプルからは9000個/m2の菌が確認された。
実施例1の膜をUV滅菌1、2、3時間、電子線滅菌20、40、60、80、100 kGyの6種類の滅菌を施したところ、いずれも菌が確認されなかった。このとき、滅菌処理を施していないサンプルからは9000個/m2の菌が確認された。
〔例3〕細胞培養担体を用いた細胞の培養
得られた細胞培養担体を用いた細胞の培養を行なった。なお培地はEagle最小培地、10%牛胎児血清を使用した。
(1)細胞培養担体
例1で作製した細胞培養担体T-1〜T-12を細胞接着性層が上向になるようにポリエチレンテレフタレート(PET)製支持体に置いた。このPET支持体を底面に置いたポリスチレン製細胞培養用シャーレ及びポリスチレン製細胞培養用シャーレ(比較例)にUV滅菌もしくは電子線滅菌を施し、その後培地を添加して30分浸漬後培地交換することを2回繰り返したのち一晩放置し、培地を細胞培養担体中に浸潤させた。
得られた細胞培養担体を用いた細胞の培養を行なった。なお培地はEagle最小培地、10%牛胎児血清を使用した。
(1)細胞培養担体
例1で作製した細胞培養担体T-1〜T-12を細胞接着性層が上向になるようにポリエチレンテレフタレート(PET)製支持体に置いた。このPET支持体を底面に置いたポリスチレン製細胞培養用シャーレ及びポリスチレン製細胞培養用シャーレ(比較例)にUV滅菌もしくは電子線滅菌を施し、その後培地を添加して30分浸漬後培地交換することを2回繰り返したのち一晩放置し、培地を細胞培養担体中に浸潤させた。
(2)細胞の播種
予め培養しておいた細胞(ラット由来血管内皮細胞)をトリプシン処理で回収し、細胞濃度を40000 cell/mlに調製した。上記のシャーレ内の培地を捨て、この細胞液を細胞数5000 cell/cm2になるように該シャーレ内に播種し培地を添加した。その後、CO2インキュベーターを用いて37℃で5日間培養を行った。
(3)細胞層の転写・重層化
別途ポリスチレン製細胞培養用シャーレ上で培養していたHEPG2(ヒト肝癌由来細胞細胞)上に、上記(2)で培養した細胞培養物を細胞面同士が接触するように置いて細胞層を重層化し、培地を加えCO2インキュベーターにて24時間培養した。
その後、シャーレ内の培地を除去し可溶化培地(Eagle最小培地に、Eagle最小培地中に存在するカルシウムイオン、マグネシウムイオンの総モル数に対して200モル%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を添加した培地)を入れ、シャーレをCO2インキュベーターにて37℃で20分間置いた。可溶化培地を取り除き、再度培地を数滴添加し、高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム積層/コラーゲン積層膜からの高分子含水キトサンゲルのみをピンセットで摘んで取り去り、剥離状況を観察した。
引き続き、このサンプルに培地を添加してCO2インキュベーターで37℃で2日間培養し、光学顕微鏡で観察した。
予め培養しておいた細胞(ラット由来血管内皮細胞)をトリプシン処理で回収し、細胞濃度を40000 cell/mlに調製した。上記のシャーレ内の培地を捨て、この細胞液を細胞数5000 cell/cm2になるように該シャーレ内に播種し培地を添加した。その後、CO2インキュベーターを用いて37℃で5日間培養を行った。
(3)細胞層の転写・重層化
別途ポリスチレン製細胞培養用シャーレ上で培養していたHEPG2(ヒト肝癌由来細胞細胞)上に、上記(2)で培養した細胞培養物を細胞面同士が接触するように置いて細胞層を重層化し、培地を加えCO2インキュベーターにて24時間培養した。
その後、シャーレ内の培地を除去し可溶化培地(Eagle最小培地に、Eagle最小培地中に存在するカルシウムイオン、マグネシウムイオンの総モル数に対して200モル%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸を添加した培地)を入れ、シャーレをCO2インキュベーターにて37℃で20分間置いた。可溶化培地を取り除き、再度培地を数滴添加し、高分子含水キトサンゲル/アルギン酸カルシウム積層/コラーゲン積層膜からの高分子含水キトサンゲルのみをピンセットで摘んで取り去り、剥離状況を観察した。
引き続き、このサンプルに培地を添加してCO2インキュベーターで37℃で2日間培養し、光学顕微鏡で観察した。
(4)結果
細胞培養中の細胞培養担体、細胞の様子、転写及び剥離につき、下記基準(a)〜(e)に従った評価を行った。結果を表4に示す。
(a)細胞培養担体の評価基準:
○・・・・・高分子キトサンゲルとコラーゲンが密着しており、問題なし。
△・・・・・高分子キトサンゲルからコラーゲンが一部剥がれている。
×・・・・・高分子キトサンゲルからコラーゲンが全て剥がれている。
(b)細胞培養担体上の細胞の評価基準:
○・・・・・細胞の形態、増殖数が細胞培養用ポリスチレンシャーレの状態と同様で問題なく、生きている。
△・・・・・細胞は生きているが、細胞の形態、増殖数が細胞培養用ポリスチレンシャーレの状態と異なる。
×・・・・・細胞の形態、増殖数が細胞培養用ポリスチレンシャーレの状態と全く異なっていたり、細胞が死滅している。
細胞培養中の細胞培養担体、細胞の様子、転写及び剥離につき、下記基準(a)〜(e)に従った評価を行った。結果を表4に示す。
(a)細胞培養担体の評価基準:
○・・・・・高分子キトサンゲルとコラーゲンが密着しており、問題なし。
△・・・・・高分子キトサンゲルからコラーゲンが一部剥がれている。
×・・・・・高分子キトサンゲルからコラーゲンが全て剥がれている。
(b)細胞培養担体上の細胞の評価基準:
○・・・・・細胞の形態、増殖数が細胞培養用ポリスチレンシャーレの状態と同様で問題なく、生きている。
△・・・・・細胞は生きているが、細胞の形態、増殖数が細胞培養用ポリスチレンシャーレの状態と異なる。
×・・・・・細胞の形態、増殖数が細胞培養用ポリスチレンシャーレの状態と全く異なっていたり、細胞が死滅している。
(c)転写の様子の評価基準:
○・・・・・細胞培養担体を細胞面同士が接触するようにポリスチレンシャーレ上に置くことができ、問題なし。
△・・・・・細胞培養担体をピンセットで掴むことはできるが、ちぎれる場合があり、細胞面同士が接触するようにポリスチレンシャーレ上に置くことが容易でない。
×・・・・・細胞培養担体をピンセットで掴むことができず、細胞面同士が接触するようにポリスチレンシャーレ上に置くことができない。
(d)剥離の様子の評価基準:
○・・・・・細胞培養担体から含水キトサンゲル層をピンセットで摘んで引っ張ることで容易に剥離できる。
△・・・・・細胞培養担体から含水キトサンゲル層をピンセットで摘んで引っ張ると、キトサン膜がちぎれることがあり、剥離が容易でない。
×・・・・・細胞培養担体から含水キトサンゲル層が剥離しない。
(e)重層された細胞の様子の評価基準(重層した細胞を顕微鏡にて観察して評価した。):
○・・・・・80%以上の細胞は生きている。
△・・・・・40%以上の細胞は生きている。
×・・・・・生きている細胞が40%以下である。
○・・・・・細胞培養担体を細胞面同士が接触するようにポリスチレンシャーレ上に置くことができ、問題なし。
△・・・・・細胞培養担体をピンセットで掴むことはできるが、ちぎれる場合があり、細胞面同士が接触するようにポリスチレンシャーレ上に置くことが容易でない。
×・・・・・細胞培養担体をピンセットで掴むことができず、細胞面同士が接触するようにポリスチレンシャーレ上に置くことができない。
(d)剥離の様子の評価基準:
○・・・・・細胞培養担体から含水キトサンゲル層をピンセットで摘んで引っ張ることで容易に剥離できる。
△・・・・・細胞培養担体から含水キトサンゲル層をピンセットで摘んで引っ張ると、キトサン膜がちぎれることがあり、剥離が容易でない。
×・・・・・細胞培養担体から含水キトサンゲル層が剥離しない。
(e)重層された細胞の様子の評価基準(重層した細胞を顕微鏡にて観察して評価した。):
○・・・・・80%以上の細胞は生きている。
△・・・・・40%以上の細胞は生きている。
×・・・・・生きている細胞が40%以下である。
〔例4〕細胞層の重層培養
例3と同様に例1で作製した細胞培養担体を用い下記の細胞を培養した。
・CHL(チャイニーズハムスター肺由来細胞)
・BRL(Buffalo Rat Liver 3A, ATCC No. : CRL 1442)
・BAE(ウシ大動脈血管内皮細胞)
別途シャーレ上に培養したHEPG2細胞上にそれぞれ上記各3種の細胞を転写し、例3と同様に、重層化細胞を得た。この重層化細胞を倍地中4日間培養したのち、トリパンブルーで染色して光学顕微鏡で状況を確認したところ、本発明の領域において、いずれの重層化細胞も良好に培養されていることが確認された。
例3と同様に例1で作製した細胞培養担体を用い下記の細胞を培養した。
・CHL(チャイニーズハムスター肺由来細胞)
・BRL(Buffalo Rat Liver 3A, ATCC No. : CRL 1442)
・BAE(ウシ大動脈血管内皮細胞)
別途シャーレ上に培養したHEPG2細胞上にそれぞれ上記各3種の細胞を転写し、例3と同様に、重層化細胞を得た。この重層化細胞を倍地中4日間培養したのち、トリパンブルーで染色して光学顕微鏡で状況を確認したところ、本発明の領域において、いずれの重層化細胞も良好に培養されていることが確認された。
Claims (24)
- 支持体である高分子含水ゲル層、及び細胞培養面側最表面層に細胞接着性ゲル層を有し、該高分子含水ゲル層と該細胞接着性ゲル層との間にアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を有する細胞培養担体であって、該アルギン酸中のマンヌロン酸含有量が80質量%以下であり、かつグルロン酸含有量が20質量%以上である細胞培養担体。
- 細胞接着性ゲル層とアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層との間に高分子含水ゲル層を有さない請求項1に記載の細胞培養坦体。
- 細胞培養面側最表面層とアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層が隣接している請求項1又は2に記載の細胞培養坦体。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞培養担体において、アルギン酸の溶液状態での粘度が100 mPa・s以上50000 mPa・s以下である細胞培養担体。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞培養担体において、該価金属イオンがカルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、アルミニウムイオン、銅イオン、亜鉛イオン及びバリウムイオンからなる群から選択される1又は2種以上である細胞培養担体。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞培養担体において、アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層が、3 M以下0.001 M以上の多価金属イオン溶液を用いたアルギン酸のゲル化により作製される細胞培養担体。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞培養担体において、高分子含水ゲル層とアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層とが隣接している細胞培養担体。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載の細胞培養担体において、高分子含水ゲルがキトサンを含むゲルである細胞培養担体。
- 請求項8に記載の細胞培養担体において、キトサンの脱アセチル化度が70%以上である細胞培養担体。
- 請求項8に記載の細胞培養担体において、キトサンの脱アセチル化度が90%以上である細胞培養担体。
- 請求項8〜10のいずれか一項に記載の細胞培養担体において、キトサンの溶液状態での粘度が100mPa・s以上50000mPa・s以下である細胞培養担体。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載の細胞培養担体において、細胞接着性ゲルがゼラチン、コラーゲン及びフィブロネクチンからなる群から選択される1種以上を含むゲルである細胞培養担体。
- 請求項1〜11のいずれか一項に記載の細胞培養担体において、細胞接着性ゲルが細胞接着性コラーゲン又はフィブロネクチンを含むゲルである細胞培養担体。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載の細胞培養担体において、該細胞培養担体が電子線、γ線、紫外線のいずれか又は複数を照射することで滅菌された細胞培養担体。
- 請求項1〜14のいずれか一項に記載の細胞培養担体を用いて細胞を培養する工程を含む細胞の培養方法。
- 請求項1〜14のいずれか一項に記載の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物におけるアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により細胞シートを得る工程を含む細胞培養方法。
- 可溶化処理を、キレート剤を含みかつ多価金属カチオンが2.6 mM以下である培地を用いて行う請求項16に記載の細胞培養方法。
- 請求項16又は17に記載の細胞培養方法で得られる細胞シート。
- 請求項1〜14のいずれか一項に記載の細胞培養担体を用いて細胞を培養する工程を含む細胞の培養方法により得られる細胞培養物を他の細胞培養担体上でさらに培養する工程を含む細胞転写法。
- 請求項19に記載の細胞転写法により得られる細胞培養物におけるアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により得られる細胞培養物又は細胞シート。
- 可溶化処理を、キレート剤を含みかつ多価金属カチオンが2.6 mM以下である培地を用いて行う請求項20に記載の細胞培養物又は細胞シート。
- 請求項1〜14のいずれか一項に記載の細胞培養担体を用いて培養された細胞培養物を他の培養細胞上に培養する工程を含む細胞重層化法。
- 請求項22に記載の細胞重層化法により得られる細胞培養物におけるアルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層の可溶化処理により得られる重層化細胞培養物又は重層化細胞シート。
- アルギン酸及び多価金属イオンを含むゲル層を有する細胞培養担体の製造方法であって、下記工程:
(1)アルギン酸中のマンヌロン酸含有量及びグルロン酸含有量を測定する工程、及び
(2)マンヌロン酸含有量が60質量%以下35質量%以上であり、かつグルロン酸含有量が65質量%以下40質量%以上であるアルギン酸を選択する工程を含む製造方法。
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JP2008212026A (ja) * | 2007-03-01 | 2008-09-18 | Fit In:Kk | 免疫蛋白質の製造方法 |
WO2011102385A1 (ja) * | 2010-02-16 | 2011-08-25 | 財団法人神奈川科学技術アカデミー | 画像認識型細胞回収装置 |
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-
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