JP2006288251A - 細胞培養基材及び細胞培養方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 柔軟かつ強靱な細胞培養基材、さらには培養した細胞を分離回収する際に細胞の破損や基材の混入がなく、迅速に培養した細胞を回収できる細胞培養基材、及び培養した細胞の回収が容易な細胞培養方法を提供すること。
【解決手段】 水に均一に分散した水膨潤性粘土鉱物の存在下で、水溶性有機モノマーを放射線の照射により重合させてなる高分子ヒドロゲルからなり、水溶性有機モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物とから構成される三次元網目構造を有し、かつ、外部環境変化にともない親水性と疎水性とが可逆的に変化することを特徴とする細胞培養基材。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水に均一に分散した水膨潤性粘土鉱物の存在下で、水溶性有機モノマーを放射線により重合させてなる高分子ヒドロゲルからなり、水溶性有機モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物とから構成される三次元網目構造を有する有機無機複合高分子ヒドロゲルからなる細胞培養基材に関する。
従来、動物組織等の細胞培養基材としては、プラスチック(例:ポリスチレン)やガラスの容器が使用されていた。これら容器には、細胞培養を有効に行わせるために、その表面にプラズマ処理や、シリコンや細胞接着因子等のコーティングなどの表面処理が施されている。従って、これら細胞培養容器を培養基材として用いた場合には、培養・増殖した細胞が表面処理された容器表面に接着しており、細胞を単離・回収するためには、トリプシン等のタンパク質加水分解酵素や化学薬品を用いて、容器表面から剥離する必要があった。このような酵素や化学薬品により細胞を剥離する操作は工程が煩雑であるほか、雑菌やDNAあるいはRNA等の不純物が混入する恐れがあった。また、細胞と基材の結合部分が切断されるだけではなく、細胞同士の結合も切断されるため、細胞を増殖している形状(例:シート状)のままで取り出すことができなかったり、細胞の性質が変化してしまう問題があった。また、複数種の細胞培養を行う際には、複数の培養液等を交換して用いる必要があるが、容器の交換が出来ないために、容器内部に各種薬品等が残留してしまい、これらが培養細胞に混入するおそれがあるなど、培養細胞の利用の点から多くの課題を抱えていた。
近年、細胞培養容器の表面に温度応答性ポリマーを極薄くコーティングした基材を使用して、細胞培養温度ではポリマーを疎水性状態に保持して細胞を接着させ、培養後にポリマーを低温処理して親水性状態にすることにより、細胞とポリマーとの接着性を低下させ、細胞を加水分解酵素や化学薬品を使用することなしに基材から細胞をシート状に剥離するという技術が報告されている(例えば特許文献1及び2、非特許文献1参照)。しかしながら、上記基材はポリマーの架橋度によって性能が大きく変化し、架橋が不十分な場合は、細胞を剥離する際に、細胞と共にポリマーも基材から一部剥離してしまい、細胞と基材との分離が困難であった。また架橋が十分な場合には、温度応答性の応答速度が非常に悪くなり、ポリマーを親水性にするために長時間を要する問題があり、且つ、その間、細胞も低温状態にさらされる問題があった。さらに、細胞を培養した後、汚染や損傷させることなく、短時間で完全に基材から分離させること、且つ任意の場所で細胞シートを取り出し、次の工程に移動させ用いられるようにすることなどが求められていた。
一方、水溶性有機高分子と層状粘土鉱物とが複合化して形成された三次元網目を有する高分子ヒドロゲルが開示されている(特許文献3参照)。該高分子化合物は優れた吸水性や極めて高い伸張性などの特徴を有し、各種分野において有用な材料であるが、細胞培養基材としての有用性は知られていなかった。
特公平6−104061公報 特開平5−192138公報 特開2002−53629号公報 大和雅之、岡野光夫「ナノバイオテクノロジーの最前線」第6章P.340−P.347、シーエムシー出版(2003年出版)
本発明が解決しようとする課題は、柔軟かつ強靱な細胞培養基材、さらには培養した細胞を分離回収する際に細胞の破損や基材の混入がなく、迅速に培養した細胞を回収できる細胞培養基材、及び培養した細胞の回収が容易な細胞培養方法を提供することにある。
本発明において使用する細胞培養基材は、水に均一に分散した水膨潤性粘土鉱物の存在下で、水溶性有機モノマーを放射線により重合させて出来る、三次元網目構造を有する高分子ヒドロゲルからなり、三次元網目構造を有する高分子ヒドロゲルは、広範囲の粘土鉱物含有率において、粘土鉱物が該高分子ヒドロゲル中に均一に分散しており、且つ、該高分子ヒドロゲルの状態が外部環境変化により親水性と疎水性が可逆的に変化する特徴を有する。その表面が疎水性である状態では、その表面上で好適に細胞を培養、増殖させることができ、また親水性を示す条件下では、細胞との接着性を低下させることができるため、培養、増殖させた細胞の破損や、基材の剥離混入を生じることなく、容易かつ迅速に剥離回収することができる。また柔軟かつ強靱な材料であることから、細胞をその表面上で各種形状のシート状に培養して、その形状を保った状態で次の実験に用いることを実現できる。
即ち本発明は、水に均一に分散した水膨潤性粘土鉱物の存在下で、水溶性有機モノマーを放射線により重合させて出来る、三次元網目構造を有する高分子ヒドロゲルからなり、該高分子ヒドロゲルが外部環境変化にともない親水性と疎水性とが可逆的に変化することを特徴とする細胞培養基材、該細胞培養基材上で細胞を培養する細胞培養方法、および該細胞培養基材上で細胞を培養した後、該基材について親水性を示す温度とすることで培養した細胞を該細胞培養基材から分離する細胞分離方法を提供する。
本発明の細胞培養基材は、水に均一に分散した水膨潤性粘土鉱物の存在下で、水溶性有機モノマーを放射線により重合させて出来る、三次元網目構造を有する高分子ヒドロゲルからなり、且つ、該高分子ヒドロゲルが外部環境変化にともない親水性と疎水性が可逆的に変化することを特徴とするため、広範囲の粘土鉱物含有率において、粘土鉱物が該高分子ヒドロゲル中に均一に分散したものが得られ、高分子ヒドロゲルを細胞の接着及び伸展に適した状態に制御出来ることから、優れた培養性能を有する。また、本発明の細胞培養基材は、水に均一に分散した水膨潤性粘土鉱物の存在下で、水溶性有機モノマーを放射線により重合させて出来る、三次元網目構造を有する高分子ヒドロゲルからなるため、優れた柔軟性と強靱さを有することから、培養した細胞を基材ごと移送する際にも形状を保持したまま、安定に培養した細胞を移送できる。さらに最初の細胞培養後に共培養を行う場合等には、培養液や薬品による汚染がなく、再度の培養を行うことが可能である。
親水性と疎水性とが外部環境により可逆的に変化する高分子ヒドロゲルからなる細胞培養基材は、疎水性条件下では細胞と優れた接着性を示すため、細胞を好適に培養、増殖させることができ、また親水性条件下では、細胞との接着性を低下させることができるため、トリプシン等のタンパク質加水分解酵素や化学薬品を使用せずに細胞を剥離できるため、細胞の破損や、基材の剥離混入を生じることなく、容易に細胞の回収が可能である。さらに、疎水性から親水性、あるいは親水性から疎水性への変化が迅速であるため、温度をはじめとする外部環境を変化させる際に細胞に与える影響が少ない。
本発明の細胞培養基材は、水に均一に分散した水膨潤性粘土鉱物の存在下で、水溶性有機モノマーを放射線により重合させて出来る、三次元網目構造を有する高分子ヒドロゲルからなる。
本発明の高分子ヒドロゲルに用いる水溶性有機モノマーは、水に溶解する性質を有し、水に均一分散可能な水膨潤性の粘土鉱物と相互作用を有するとともに、放射線照射により重合するものであればよく、例えば、粘土鉱物と水素結合、イオン結合、配位結合、共有結合等を形成できる官能基を有するものが好ましい。これらの官能基を有する水溶性有機モノマーとしては、具体的には、アミド基、アミノ基、エステル基、水酸基、テトラメチルアンモニウム基、シラノール基、エポキシ基などを有する水溶性有機モノマーが挙げられ、なかでもアミド基を有する水溶性有機モノマーが好ましい。また、本発明で言う水には、水と混和する有機溶媒との混合溶媒で水を主成分とするものを含む。
本発明における水溶性有機モノマーの重合体は、水膨潤性粘土鉱物と三次元網目構造を形成して形状が安定な高分子ヒドロゲルを形成できるものであればよく、アクリル系化合物や、ビニル系化合物などを使用できる。なかでも、得られる細胞培養基材から容易に培養した細胞を分離できることから、水溶性または水を吸湿する親水性と共に、疎水性を併せ持つものであることが有効である。特に水溶液中でのポリマーの親水性と疎水性が温度、pH、溶質濃度、溶媒組成で変化するものが好んで用いられる。具体的には、例えば温度の場合、臨界温度(Tc)以上では疎水性となる下限臨界共溶温度(Lower Critical Solution Temperature:以下LCSTと略記する。)を持つポリマーや、Tc以上で親水性となる、上限臨界共溶温度(Upper Critical Solution Temperature:以下UCSTと略記する。)を持つポリマーがより好んで用いられる。また、溶質濃度の場合は、例えばある温度において、溶媒中の塩化ナトリウムの濃度が一定濃度以上では疎水性となり、一定濃度以下では親水性となるポリマーも好んで用いられる。さらに、溶媒組成の場合は、例えばある温度において、溶媒中の水に対するメタノール濃度が一定以上の濃度の場合は疎水性となり、一定濃度以下では親水性となるポリマーも好んで用いられる。
このような重合体を与える水溶性有機モノマーの例としては、N−置換アクリルアミド誘導体、N,N−ジ置換アクリルアミド誘導体、N−置換メタクリルアミド誘導体、N,N−ジ置換メタクリルアミド誘導体などを好ましく使用することができ、具体的にはN−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−エトキシエチルメタクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチル−N−メチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピペリディン、N−アクリロイルピロリディンがあげられる。
かかる有機モノマーの重合体としては、例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−n−プロピルアクリルアミド)、ポリ(N−シクロプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−イソプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−n−プロピルメタクリルアミド)、ポリ(N−エトキシエチルアクリルアミド)、ポリ(N−エトキシエチルメタクリルアミド)、ポリ(N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド)、ポリ(N−テトラフルフリルメタクリルアミド)、ポリ(N−エチルアクリルアミド)、ポリ(N,N−ジエチルアクリルアミド)、ポリ(N−アクリロイルピペリディン)、ポリ(N−アクリロイルピロリディン)が例示される。
本発明の細胞培養基材に用いられる粘土鉱物は、水又は水溶液中で層間が膨潤する性質を有することが必要である。より好ましくは少なくとも一部が水中で層状に剥離して分散できるものであり、更に好ましくは水中で1ないし10層以内の厚みに、特に好ましくは水中で1ないし3層以内の厚みに層状に剥離して均一分散できる層状粘土鉱物である。例えば、水膨潤性スメクタイトや水膨潤性雲母などを用いることができ、具体的には、ナトリウムを層間イオンとして含む水膨潤性ヘクトライト、水膨潤性モンモリロナイト、水膨潤性サポナイト、水膨潤性合成雲母が挙げられる。
本発明の細胞培養基材を構成する水溶性有機モノマーと粘土鉱物との比率は、用いる水溶性有機モノマーや粘土鉱物の種類により適宜選択すればよいが、ゲルの合成が容易であることや、力学物性及び均一性に優れることなどから、水溶性有機モノマー重合体に対する粘土鉱物の質量比が0.01〜10であることが好ましく、より好ましくは0.03〜2、特に好ましくは0.1〜1である。かかる質量比の範囲であれば、高分子ヒドロゲルの乾燥物の特性が十分に発揮され、調製が容易であり、また得られる細胞培養基材がより高い強度を示す。
本発明の細胞培養基材に用いられる高分子ヒドロゲルは、上記水膨潤性粘土鉱物と水溶性有機モノマーの重合体が三次元網目構造を有するものであることから、細胞を培養した後、高分子ヒドロゲルから細胞を剥離する際に破壊することがなく、形状を維持できる特徴を有する。また本発明の細胞培養基材に用いられる高分子ヒドロゲルは、細胞を培養後、次の実験位置まで移動させる必要がある場合に、培養した細胞のシートを破壊することなく移動できる。該高分子ヒドロゲルは、含水率90%の状態において、1kPa以上の引っ張り弾性率、20kPa以上の引っ張り強度、および50%以上の破断伸びのものを実現でき、これら特性を有するものは好ましく使用できる。また引っ張り弾性率が5kPa以上、引っ張り強度が50kPa以上、破断伸びが50%以上であればより好ましく、引っ張り弾性率が10kPa以上、引っ張り強度が80kPa以上、破断伸びが100%以上であればさらに好ましい。このような機械物性を持つ高分子ヒドロゲルは、細胞培養に適した表面状態を得ることが出来る。また含水率90%の条件において、このような力学物性をもつ高分子ヒドロゲルは、細胞培養を行う際、疎水性を示す状態においても優れた力学物性を保持し、細胞を培養後、形状にかかわらず、優れた形状安定性、取り扱い性、移動性などを示す。
該高分子ヒドロゲルは、三次元網目構造を形成する上記水溶性有機モノマーの重合体により、外部環境条件に応じて親水性と疎水性とを有する。このため、該高分子ヒドロゲルからなる細胞培養基材は細胞を好適に培養でき、かつ培養した細胞の破壊や基材の剥離混入を生じることなく、培養した細胞を容易かつ迅速に剥離回収することができる。
本発明の細胞培養基材に用いられる高分子ヒドロゲルは、水に均一に分散した水膨潤性粘土鉱物の存在下で、水溶性有機モノマーに放射線を照射することにより、水溶性有機モノマーが重合して得られるが、放射線照射による重合は、通常、重合開始剤を使用して行われる。その際、重合開始剤が均一に分散していることが好ましく、特に水中で均一分散した水膨潤性粘土鉱物表面またはその近傍に均一に分散しているのがより好ましい。このような水溶液に放射線を照射することにより、水膨潤性粘土鉱物が均一に分散した高分子ヒドロゲルを得ることができ、優れた細胞培養能を有する細胞培養基材とすることができる。)。
重合開始剤を均一に分散させる方法として、水中にあらかじめ重合開始剤を分散させておき、その溶液を用いて、粘土鉱物を分散、及び有機モノマーの重合を行うことが好ましい。この方法では、重合開始剤の添加による、重合前の溶液粘度上昇等が抑制され、広範囲の粘土鉱物含有率に制御することが可能となる。
本発明に用いられる重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を使用することが可能であるが、非水溶性の重合開始剤を使用することが好ましい。
本発明に用いられる非水溶性の重合開始剤としては、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノンなどのアセトフェノン類、4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、2−メチルチオキサントンなどのケトン類、ベンゾインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル類、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ヒドロキシケトン類、メチルベンゾイルホルメートなどのフェニルグリオキシレート類、メタロセン類などが挙げられる。
ここで言う非水溶性とは、重合開始剤の水に対する溶解量が0.5重量%以下であることを意味する。水に対する溶解量が0.5重量%以下であると、上記の力学物性を持つ高分子ヒドロゲルを得ることが出来る。
非水溶性の重合開始剤を水中に分散させるには、重合開始剤を溶媒に溶解させた状態で分散させることが好ましい。この方法によって、上記の力学物性を持つ高分子ヒドロゲルが放射線照射により得られる。
本発明の重合開始剤を溶解させる溶媒としては、非水溶性の重合開始剤を溶解できる水溶性の溶剤、または非水溶性の重合開始剤を溶解し、且つ、HLB(親水疎水バランス)値が8以上の有機モノマーを用いることができる。ここのHLB値はデービス式(「界面活性剤−物性・応用・化学生態学」、北原文雄ら編、講談社、1979、p24−27)に従って求められた値である。例えば、トリプロピレングリコールジアクリレートのようなポリプロピレングリコールジアクリレート類、ポリエチレングリコールジアクリレート類、ペンタプロピレングリコールアクリレートのようなポリプロピレングリコールアクリレート類、ポリエチレングリコールアクリレート類、メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレートのようなメキシポリエチレングリコールアクリレート類、ノニルフェノキシポリエチレングリコ−ルアクリレート類、ジメチルアクリルアミドのようなN置換アクリルアミド類、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、などが挙げられる。溶媒としての有機モノマーのHLB値が8以上であると、水中への溶解性または分散性に優れるため好ましい。これらの有機モノマーは、一種以上を混合して用いることができる。
また、本発明の重合開始剤を溶解させる溶媒としては、非水溶性の重合開始剤を溶解でき、且つ、一定以上の水溶性を有する溶剤を用いることができる。ここで言う水溶性を有する溶剤とは、水100gに対し50g以上溶解できる溶剤であることが好ましい。水への溶解性が50g未満であると、非水溶性の重合開始剤の水中への分散性が低下し、得られる高分子ヒドロゲルの力学物性が低い場合がある。
例えば、水溶性溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシド、メタノール、エタノールなどのアルコール類、テトラヒドロフラン、などが挙げられる。また、これらの溶剤を混合して用いても良い。
非水溶性の重合開始剤を溶媒に溶解させた溶液中における、溶媒に対する重合開始剤の重量比は、0.001〜0.1であることが好ましく、より好ましくは、0.01〜0.05である。0.001以上であると、エネルギー線の照射によるラジカルの発生量が十分に得られるため好適に重合反応を進行させることができ、0.1以下であれば、開始剤による発色や、臭気を実質的に生じることがない。
以上の溶媒として用いる有機モノマー、および水溶性を有する溶剤のいずれの場合においても、重合開始剤を溶媒に溶解させた溶液の分散量が、水溶性有機モノマー、水膨潤性粘土鉱物、水、重合開始剤及び溶媒の総重量に対し、0.1重量%〜5重量%であることが好ましく、0.2重量%〜2重量%であることが更に好ましい。該分散量が0.1重量%以上であると、重合が十分に開始され、5重量%未満であると、有機無機複合ヒドロゲルに関与しないリニアポリマーの生成やゲル中の重合開始剤の増加による臭気の発生、更には一旦分散された重合開始剤または重合開始剤と溶媒との溶液が再び凝集する等の問題を低減でき、均一な高分子ヒドロゲルを得ることができるため好ましい。
本発明に用いられる放射線としては、電子線、γ線、X線、紫外線、可視光などを用いることができる。中でも装置や取り扱いの簡便さから紫外線を用いることは特に好ましい。照射する紫外線の強度は10〜500mW/cmが好ましく、照射時間は一般に0.1秒〜200秒程度である。通常の加熱によるラジカル重合においては、酸素が重合の阻害因子として働くが、本発明では、必ずしも酸素を遮断した雰囲気で溶液の調製、および放射線照射による重合を行う必要がなく、空気雰囲気でもこれらを行うことが可能である。但し、紫外線照射を不活性ガス雰囲気下で行うことによって、更に重合速度を速めることが可能で、望ましい場合がある。
本発明の細胞培養基材を使用して培養を行うことが可能な細胞は、ヒト及び動物の組織細胞であれば特に制限はなく、例えば、血管細胞、繊維芽細胞、筋肉細胞、神経細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、肝細胞、膵臓細胞、角膜細胞などが挙げられる。これらのうち、血管内皮細胞、皮膚繊維芽細胞、肝実質細胞、肝ガン細胞、軟骨細胞等が好ましく用いられる。特に本発明は、皮膚繊維芽細胞、血管内皮細胞、軟骨細胞などの培養に好適に使用できる。
本発明の細胞培養基材に用いられる高分子ヒドロゲルは、単独で用いられる他、金属、セラミック、プラスチック、布、不織布、紙、木材等の平滑表面または凹凸表面を有する支持体に被覆して用いられる。また、高い力学物性のため、各種形状に形成が可能であり、シート状、繊維状、中空繊維状、球状で用いることができる。支持体に被覆された高分子ヒドロゲルは、最終的に支持体から剥離してもよいし、支持体と一体化されたまま使用しても良い。
本発明の細胞培養基材の製造においては、重合時に重合容器の形状を変化させたり、重合後のゲルを切削加工したりすることにより種々の大きさや形状をもった細胞培養基材を調製できる。例えば、繊維状、棒状、平板状、円柱状、中空状、らせん状、あるいは球状など任意の形状を有する細胞培養基材を調製することが可能である。また重合反応時に慣用の界面活性剤を共存させる等の方法で、得られる細胞培養基材を微粒子形態で製造することも可能である。また、本発明の細胞培養基材は、一般に細胞培養に用いられているプラスチック製やガラス製のシャーレ等の非親水性の支持体の上に積層して用いることが好ましい。このような積層部材は、支持体上部で重合を行い、そのまま細胞培養に使用してもよいし、他の容器で重合後、基材表面に充填して細胞培養に使用しても良い。
本発明の細胞培養基材に用いられる高分子ヒドロゲルは、各種形状に形成される際、任意の厚みで形成が可能である特徴を有し、特に支持体に被覆して用いられる際は、調製の容易さ、放射線照射による重合後の残留モノマーの低減、支持体からの剥離の容易さ等の理由から、放射線照射後の厚みが1000μm以下のものが好ましく用いられ、さらに好ましくは、10〜500μmのものが用いられる。
高分子ヒドロゲルの調製時には、その特性を改良する目的で、重合時に公知慣用の有機架橋剤を使用してもよい。使用する有機架橋剤濃度は特に限定されず、目的に応じて選択できる。使用できる有機架橋剤としては、従来から公知のN,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−プロピレンビスアクリルアミド、ジ(アクリルアミドメチル)エーテル、1,2−ジアクリルアミドエチレングリコール、1,3−ジアクリロイルエチレンウレア、エチレンジアクリレート、N,N’−ジアリルタータルジアミド、N,N’−ビスアクリリルシスタミンなどの二官能性化合物や、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなどの三官能性化合物が例示できる。
本発明の細胞培養基材は、支持体上で高分子ヒドロゲルを形成した後、必要に応じて洗浄を行った後、支持体に貼り付いた状態で乾燥させることにより、細胞培養基材乾燥物とすることができる。また、支持体の上に形成された高分子ヒドロゲルを支持体から剥離し、必要に応じて洗浄し、乾燥させることにより、細胞培養基材乾燥物とすることもできる。
本発明の細胞培養基材は、乾燥物にすることにより、細胞培養に適した表面状態を得ることが出来る。さらに、細胞培養基材として使用する際に、該細胞培養基材乾燥物を、細胞培養用液体培地に浸漬することにより、培地液を吸収させ、細胞培養に適した含水率の細胞培養基材とすることが容易である。この際の含水率は、乾燥前の該細胞培養基材の含水率とは異なるものであり、細胞培養基材を構成する高分子ヒドロゲル中の水溶性有機モノマーの重合物と粘土鉱物との比率を変化させること、及び高分子ヒドロゲルを可逆的に親水性と疎水性に状態を変化させることにより、広い範囲で任意に制御することが可能である。特に、高分子ヒドロゲルの有する下限臨界共溶温度よりも高温で高分子ヒドロゲルを培地に含浸することにより、細胞培養に適した含水率に制御され、好ましくは細胞培養基材乾燥物に対する溶媒の質量比が、0.01〜5のものが用いられ、さらに好ましくは0.01〜1のものが用いられる。かかる質量比の範囲であれば、高分子ヒドロゲルの表面状態が、平滑性や含水率などから細胞培養に適した状態となっており、様々な種類の細胞に対して、優れた培養特性を示すことが出来る。
細胞を培養する際には、細胞培養基材を滅菌してから用いる必要があるが、該滅菌工程は、高分子ヒドロゲルに対する放射線照射、蒸気滅菌、ガス滅菌等が可能である。このうち、ガンマ線等の放射線照射はより好ましく用いられ、特に、高分子ヒドロゲルの乾燥物に対して好ましく行うことが出来る。これにより高分子ヒドロゲルの性質を大きく低減させることなく、また、細胞に対して悪影響を与える物質が残留することなく細胞培養基材の滅菌を行うことができる。
高分子ヒドロゲルの調製時には、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤として、水溶性有機モノマーの重合体以外に、高分子化合物または低分子化合物を含有させたものが含まれる。例えばコラーゲンやヒアルロン酸等の細胞接着性因子、細胞増殖因子、ヒドロキシアパタイト粒子などを添加することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
粘土鉱物には、[Mg5.34Li0.66Si20(OH)]Na 0.66の組成を有する水膨潤性合成ヘクトライト(Rockwood Ltd.製「ラポナイトXLG」)を真空乾燥して用いた。有機モノマーは、N−イソプロピルアクリルアミド(興人株式会社製:以下、NIPAと略記。)を既知の方法により精製して、重合禁止剤を取り除いてから使用した。超純水は、全て微粒子除去用フィルターを通した高純度窒素をあらかじめ充分にバブリングさせ、含有酸素を除去してから使用した。
20℃の恒温室において、内部を窒素置換した平底ガラス容器に、超純水19.02gとテフロン(登録商標)製攪拌子を入れ、攪拌しながら0.8gのラポナイトXLGを加え、無色透明の溶液を調製した。これにNIPA2.23gを加え、窒素雰囲気内で攪拌して溶解させ無色透明な反応溶液(1)を得た。次に、溶媒として、ポリオキシプロピレン モノアクリレート「ブレンマーAP−400」(日本油脂株式会社製)98g、重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン「イルガキュアー184」(チバガイギー社製)2gを、均一に混合して溶液(2)を調製した。上記反応溶液(1)全量に、溶液(2)を50μl入れて、超音波分散機で均一に分散させた後、バーコーターを用いて厚みが200μmになるようにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布し、365nmにおける紫外線強度が40mW/cmの紫外線を120秒照射することにより、水溶性有機モノマーを重合させて、シート状の高分子ヒドロゲル(A)を得た。
このシート状のヒドロゲル(A)を20℃の水中で少し膨潤させ含水率90%に調整した後、高分子ヒドロゲルシートに傷が付かないようにして、PETフィルムから剥離した。その剥離した高分子ヒドロゲルシートを1cm×5cmの大きさに切り取り、チャック部での滑りの無いようにして引っ張り試験装置(株式会社島津製作所製「卓上型万能試験機AGS−H」)に装着し、評点間距離=30mm、引っ張り速度=100mm/分にて引っ張り試験を行った結果、引っ張り破断強度が95kPa、破断伸びが1010%であった。このヒドロゲル(A)の表面に付着した水分をていねいに取り除いてから、該ヒドロゲル(A)表面の20℃および50℃における水に対する接触角を接触角測定装置(協和界面科学株式会社製「CA−X200」)を用いて測定した。各々の温度における水の接触角は20℃では30°、50℃保持状態では60°であった。このことから、得られたヒドロゲル(A)は、温度条件により親水性と疎水性の両特性を示すことが確認された。
一方、シート状のヒドロゲル(A)を、20℃で2Lの超純水に2日間浸漬して、ヒドロゲルを膨潤させてから取り出し、次いで50℃の超純水1Lに2日間浸漬して、ヒドロゲルを収縮させてから取り出した。該洗浄による精製操作を3回繰り返した後、精製したシート状のヒドロゲル(A)を直径8cmの大きさに切断し、る細胞培養基材(A)とした。それを細胞培養用ディッシュ(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア社製「ファルコン3003」)の中に移し替えてから蓋をして37℃で静置した。なお、これらの精製から細胞培養ディッシュ内に細胞培養基材(A)を移し替えるまでの操作は、すべてクリーンベンチ内で行った。
このようにして得られた細胞培養基材(A)を入れた細胞培養ディッシュを用いて、細胞の培養を行った。培養する細胞は、ヒト肝上皮細胞由来のガン細胞HepG2細胞株(大日本製薬株式会社製)を使用した。培養は、ウシ胎児血清(ICN製)を10%含有するミニマム・エッセンシャル・イーグル培地(SIGMA製)(ピルビン酸(ICN製)及び非必須アミノ酸(ICN製)を添加剤として含有)を使用して、5%二酸化炭素含有37℃恒温器内で行った。また細胞培養基材(A)を入れたディッシュは2枚用意し、同じ条件で同時に播種を行った。播種してから1週間後、この細胞培養基材(A)を入れたディッシュ1枚を20℃恒温槽内に5分間静置してから、表面を光学顕微鏡にて観察したところ、細胞が細胞培養基材(A)上に接着して、また十分に増殖していたことが確認された。この培養を行ったもう1枚の細胞培養基材(A)を入れたディッシュから細胞培養基材(A)を培養した細胞ごと取り出して、あらかじめ20℃に保持しておいたウシ胎児血清を10%含有するミニマム・エッセンシャル・イーグル培地を含む組織培養ディッシュに移し替えた。蓋をしてから20℃で10分間静置後、細胞培養基材(A)上に増殖した細胞をピンセットで摘むことにより、細胞を細胞培養基材(A)から分離できた。この時、細胞培養基材(A)に何ら損傷はなく、また分離した細胞にも何ら付着物は見られなかった。この取り出した細胞について、トリプシン−EDTA処理を行うことにより、各細胞を個々の状態に分離した後、トリパンブルー染色を行うことによって、生細胞数を計測したところ、培養開始時には2.0×10個であった細胞数が、培養後は1.9×10個に増加したことが確認された。
(実施例2)
上記実施例1で得られた細胞培養基材(A)を入れた細胞培養ディッシュを用いて、細胞の培養を行った。培養する細胞は、正常ヒト皮膚繊維芽細胞(大日本製薬株式会社製)を使用した。培養は、CS−C培地(大日本製薬株式会社製)を使用して、5%二酸化炭素含有37℃恒温器内で行った。また細胞培養基材(A)を入れたディッシュは2枚用意し、同じ条件で同時に播種を行った。播種してから1週間後、この培養を行った細胞培養基材(A)を入れたディッシュ1枚を20℃恒温槽内に5分間静置してから、表面を光学顕微鏡にて観察したところ、細胞が細胞培養基材(A)上に接着して、また十分に増殖していたことが確認された。この培養を行ったもう1枚の細胞培養基材(A)を入れたディッシュから細胞培養基材(A)を培養した細胞ごと取り出して、あらかじめ20℃に保持しておいたCS−C培地を含む組織培養ディッシュに移し替えた。蓋をしてから20℃で10分間静置後、細胞培養基材(A)上に増殖した細胞をピンセットで摘むことにより、細胞をシート状に細胞培養基材(A)から分離できた。この時、細胞培養基材(A)に何ら損傷はなく、またシート状の細胞にも何ら付着物は見られなかった。この取り出したシート状細胞についてトリプシン−EDTA処理を行うことにより、各細胞を個々の状態に分離した後、トリパンブルー染色を行うことによって、生細胞数を計測したところ、培養開始時には2.5×10個であった細胞数が、培養後は9.1×10個に増加したことが確認された。
(実施例3)
添加するラポナイトXLGの量を1.6gとする以外は実施例1と同様にして、ほぼ無色透明で均一なシート状のヒドロゲル(B)を合成した。得られたヒドロゲル(B)を用いて、実施例1と同様にして、20℃および50℃における水に対する接触角を測定したところ、20℃では29°、50℃保持状態では45°であり、得られた細胞培養基材(B)は、温度条件により親水性と疎水性の両特性を示すことが確認された。得られたヒドロゲル(B)を、20℃で2Lの超純水に2日間浸漬して、ヒドロゲルを膨潤させてから取り出し、次いで50℃の超純水1Lに2日間浸漬して、ヒドロゲルを収縮させてから取り出した。該洗浄による精製操作を3回繰り返した後、精製したシート状のヒドロゲル(B)の四辺を変形しないように末端をクリップで固定して、クリーンベンチ内で3日間乾燥させることにより、ほぼ透明なヒドロゲルの乾燥物(B)を得た。得られたヒドロゲルの乾燥物(B)を、ガス遮断ポリ袋に入れて密封し、ガンマ線照射を行った(線源:コバルト60、ラジエ工業株式会社)。照射量は、25kGyとした。照射後のヒドロゲルの乾燥物(B)には特に変形や変色は見られなかった。得られたガンマ線照射後のヒドロゲルの乾燥物(B)を直径8cmの大きさに切断し、ヒドロゲルの乾燥物(B)からなる細胞培養基材(B)とした。
このようにして得られた細胞培養基材(B)を用いて、細胞及び培地、培養条件は実施例1と同様の方法で、HepG2細胞の培養を行った。細胞播種から1週間後に、実施例1と同様の方法で光学顕微鏡により表面を観察したところ、細胞が細胞培養基材(B)上に接着して、また十分に増殖していたことが確認された。実施例1と同様にして、もう1枚の細胞培養基材(B)を用いて、細胞培養を行った後、細胞培養基材(B)を入れたディッシュから細胞培養基材(B)を培養した細胞ごと取り出して、あらかじめ20℃に保持しておいたウシ胎児血清を10%含有するミニマム・エッセンシャル・イーグル培地を含む組織培養ディッシュに移し替えた。蓋をしてから20℃で10分間静置後、細胞培養基材(B)上に増殖した細胞をピンセットで摘むことにより、細胞を細胞培養基材(B)から分離できた。この時、細胞培養基材(B)に何ら損傷はなく、また分離した細胞にも何ら付着物は見られなかった。実施例1と同様の方法で生細胞数を計測したところ、培養開始時には2.0×10個であった細胞数が、培養後は1.3×10個に増加したことが確認された。
また、ヒドロゲル(B)を乾燥することにより得られたヒドロゲルの乾燥物(B)を上記実験で用いた培地に浸漬して、37℃恒温器内で24時間保持したところ、含水率が30%のヒドロゲルに戻ることが確認された。
(比較例1)
細胞培養用ディッシュ「ファルコン3003」を何も表面処理を行わずに使用して、細胞培養を行った。細胞及び培地、培養条件は実施例1と同様にして行った。培養開始から1週間後にディッシュ表面を光学顕微鏡にて観察したところ、細胞が接着して増殖していることが確認された。この培養を行ったディッシュを20℃の恒温槽に入れて,10分間静置後、ディッシュ上の細胞を取り出そうとしたが、全く剥離しなかった。また、公知の方法により、トリプシンを用いて培養細胞の分離を行ったところ、細胞が個々の細胞に分かれてしまい、細胞をシート状に取り出すことは不可能であった。
(比較例2)
粘土鉱物を用いないこと、またNIPAモノマーを添加した後、有機架橋剤をモノマーの5モル%添加すること以外は実施例1と同様にして、有機架橋ヒドロゲルを重合した。有機架橋剤としては、N,N’−メチレンビスアクリルアミド(和光純薬工業株式会社製)をそのまま使用した。その結果、20℃において白色化したシート状のヒドロゲル(C)が得られた。この得られたシート状のヒドロゲル(C)を実施例1と同様にして、精製を行ってから、細胞培養用ディッシュに移し替えたが、ヒドロゲルシート(C)は非常に脆く、精製及び移し替えは困難であった。またこのヒドロゲルシート(C)の接触角は、50℃保持状態で49°であった。
次に、このヒドロゲルシート(C)を入れた細胞培養ディッシュを用いて、実施例2と同様の方法で細胞培養を行った。培養開始から1週間後、このディッシュ内のヒドロゲルシートを一部切り取り、トリパンブルーにて染色したところ、ヒドロゲルシート上での細胞の増殖は確認されなかった。また、このヒドロゲルシートをディッシュから取り出そうとしたが、ヒドロゲルシートが破壊してしまい、取り出すことが出来なかった。

Claims (12)

  1. 水に均一に分散した水膨潤性粘土鉱物の存在下で、水溶性有機モノマーを放射線の照射により重合させてなる高分子ヒドロゲルからなり、水溶性有機モノマーの重合体と水膨潤性粘土鉱物とから構成される三次元網目構造を有し、かつ、外部環境変化にともない親水性と疎水性とが可逆的に変化することを特徴とする細胞培養基材。
  2. 前記高分子ヒドロゲルが、非水溶性の重合開始剤を水中に分散させた溶液中で、均一に分散した水膨潤性粘土鉱物の共存下において、水溶性有機モノマーを放射線の照射により重合させてなる高分子ヒドロゲルである請求項1に記載の細胞培養基材。
  3. 前記高分子ヒドロゲルが、一定の温度を境界にして親水性と疎水性とが可逆的に変化する高分子ヒドロゲルである請求項1又は2に記載の細胞培養基材。
  4. 前記水溶性有機モノマーの重合体が、下限臨界共溶温度を有する請求項1又は2に記載の細胞培養基材。
  5. 前記水溶性有機モノマーが、N−置換アクリルアミド誘導体、N,N−ジ置換アクリルアミド誘導体、N−置換メタクリルアミド誘導体、N,N−ジ置換メタクリルアミド誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項4に記載の細胞培養基材。
  6. 前記水溶性有機モノマーが、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチル−N−メチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピペリディン、N−アクリロイルピロリディンからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項4に記載の細胞培養基材。
  7. 前記水膨潤性粘土鉱物が、水膨潤性のヘクトライト、水膨潤性のモンモリロナイト、水膨潤性のサポナイト、水膨潤性の合成雲母からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜6のいずれかに記載の細胞培養基材。
  8. 前記高分子ヒドロゲルが、含水率90%の条件において、1kPa以上の引っ張り弾性率、20kPa以上の引っ張り強度、および50%以上の破断伸びを有する高分子ヒドロゲルである請求項1〜7のいずれかに記載の細胞培養基材。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の細胞培養基材を乾燥させた細胞培養基材乾燥物。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の細胞培養基材を使用して、該細胞培養基材が疎水性を示す温度で細胞を培養した後、該細胞培養基材の温度を下げ、該細胞培養基材が親水性を示す温度とすることにより培養した細胞を該細胞培養基材から分離する細胞培養方法。
  11. 請求項9に記載の細胞培養基材乾燥物を使用して、該細胞培養基材乾燥物に培地液を吸収させ、培地液を吸収した基材が疎水性を示す温度で細胞を培養した後、該培地液を吸収した基材の温度を下げ、該培地液を吸収した基材が親水性を示す温度とすることにより培養した細胞を該培地液を吸収した基材から分離する細胞培養方法。
  12. 前記培地液を吸収させる量が、細胞培養基材乾燥物の質量に対して0.01〜5の範囲の質量である請求項11に記載の細胞培養方法。
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