以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
図1は本実施形態に係るモータ制御装置のブロック図である。モータ制御装置は、例えば電気自動車又はハイブリッド車両等の車両に設けられる。なお、以下では、モータ制御装置が車両に設けられていることを前提として、実施形態を説明するが、モータ制御装置は、車両に限らず他の移動体又はモータを備えた装置に適用されてもよい。
モータ制御装置は、電源(バッテリ)1と、コントローラ100と、インバータ(電力変換器)21、22と、モータ30と、電流センサ41、42とを備えている。電源1は、モータ30を駆動するための電力源であって、複数の電池を直列又は並列に接続することで構成されている。電池は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池である。
インバータ21及びインバータ22は、それぞれ独立した電力変換器であって、バッテリ1とモータ30との間に接続されている。インバータ21は、平滑コンデンサCとスイッチング回路S1〜S6を有している。平滑コンデンサCは、バッテリ1から入力される電圧を平滑するための素子であって、一対の電源ラインの間に接続されている。スイッチング回路S1〜S6は、スイッチング素子をブリッジ状に接続することで、3相のアーム回路を形成している。スイッチング素子はIGBT又はMOSFET等のトランジスタが用いられている。また、ダイオードの電流の導通方向が、スイッチング素子の導通方向に対して逆向きになるように、ダイオードがスイッチング素子に並列に接続されている。スイッチング素子及びダイオードの並列回路が、各スイッチング回路S1〜S6となる。インバータ22は、インバータ21と同様の回路構成である。
インバータ21の上アームと下アームの接続点が、コイル結線31の中性点O1に接続されている。インバータ22の上アームと下アームの接続点が、コイル結線32の中性点O2に接続されている。インバータ21、22は、コイル結線31、32の中性点O1、O2にそれぞれ電気的に接続されることで、互い異なる中性点O1、O2をもつコイル結線31、32とインバータ21、22が対応しつつ接続されている。
バッテリ1とインバータ21、22との間を接続する電源ラインは、バッテリ1とインバータ21とを接続するラインと、バッテリ1とインバータ22とを接続するラインになるように、分岐している。
モータ30は、インバータ21、22から出力される交流電力により駆動する電動機である。モータ30は、コイル結線31及びコイル結線32を有している。コイル結線31は、各相のコイルの一端同士を中性点O1で接続することで構成されるY結線である。コイル結線32は、各相のコイルの一端同士を中性点O2で接続することで構成されるY結線である。コイル結線31及びコイル結線32を構成する複数のコイルは、同一のステータコアに巻回されている。なお、図1では、コイル結線31のうちUVW相のコイルをU1、V1、W1と示し、コイル結線32のうちUVW相のコイルをU2、V2、W2と示している。
電流センサ41、42は、モータ30の交流電流を検出するセンサである。電流センサ41は、インバータ21とコイル結線31との間に接続されており、コイル結線31の各相(U1、V1、W1)の電流を検出する。電流センサ42は、インバータ22とコイル結線32との間に接続されており、コイル結線32の各相(U1、V1、W1)の電流を検出する。
コントローラ100は、インバータ21、22を制御する制御回路である。コントローラ100は、トルク指令、電流センサ41、42の検出電流、及びモータ30の回転速度に基づき、トルク指令に応じたトルクをモータ30から出力するように、スイッチング信号を生成し、当該スイッチング信号をスイッチング素子S1〜S6に出力する。スイッチング信号は、スイッチング素子S1〜S6のオン、オフを切り替える信号である。
次に、図2を用いて、コントローラ100の制御ブロックを説明する。図2は、コントローラ100のブロック図である。コントローラ100は、非干渉制御器101と、dq電流制御器102と、座標変換器103、104、105、107と、dq2次電流制御器106とを備えている。コントローラ100は、インバータ21を制御するための機能ブロックとして、図2に示す非干渉制御器101等の制御器を有しており、インバータ22を制御するための機能ブロックとして、図2に示す各制御器と同様の制御器を有している。言い換えると、コントローラ100は、非干渉制御器101等の各制御器を、それぞれ二つずつ有しており、一方の制御器はインバータ21を制御するための機能ブロックであり、他方の制御器はインバータ22を制御するための機能ブロックである。なお、以下では、インバータ21を制御する制御器を説明しているが、インバータ22を制御する制御器も同様であり、インバータ22を制御する各制御器の説明を省略する。
非干渉制御器101は、電流指令値(id *、iq *)、電機角速度(ω)、電圧(Vdc)を入力として、dq軸非干渉電圧指令値を演算する演算部である。電流指令値(id *、iq *)は、トルク指令値(T*)に基づきマップにより演算される値である。トルク指令値は、ドライバーのアクセル操作又はシステム要求等により、モータ30に対して要求される出力トルクの目標値である。角速度(ω)は、モータ30の回転速度に相当する機械角速度である。非干渉制御器101には、干渉電圧を打ち消すための非干渉電圧のマップが記憶されており、入力値に対して当該マップを参照することで、dq軸非干渉電圧指令値を演算する。
dq電流制御器102は、電流センサ41の検出値に基づき計測されたd軸電流(id)及びq軸電流(iq)を、dq軸電流指令値(idq *)に一致させるようフィードバック制御する制御器である。dq電流制御器102の入力側には、dq軸電流(id、iqs)とdq軸電流指令値(id *、iq *)との偏差をとる減算器が設けられており、当該減算器の出力値がdq電流制御器102に入力される。dq電流制御器102は、dq軸電流指令値(id *、iq *)に対してdq軸電流(id、iq)を、定常的な偏差なく所定の応答性で追随させるよう制御演算を行い、dq軸の電圧指令値を出力する。これにより、dq電流制御器102は、フィードバックによるPI制御を実行している。
dq電流制御器102の出力側には加算器が設けられており、当該加算器において、dq電流制御器102から出力される電圧指令値と、dq軸非干渉電圧指令値とを加算することで、非干渉電圧で電圧指令値を補正し、当該加算器の出力値がdq軸電圧指令値(vd *、vq *)となる。
座標変換器103は、入力されるdq軸検出電流(iu *、iv *、iw *)に対して、電気角(θ)を用いた回転座標変換により、検出電流(iu *、iv *、iw *)をdq軸検出電流(id、iq)に変換して、変換したdq軸検出電流(id、iq)を減算器に出力する。電気角(θ)は、モータ30に設けられた位置検出器の出力値に基づき演算される値であって、モータ30の回転速度に対応している。
座標変換器104は、入力されるdq軸電圧指令値(vd *、vq *)に対して、電気角(θ)を用いた回転座標変換により、dq軸電圧指令値(vd *、vq *)を固定座標系のu、v、w軸の電圧指令値に変換する。
座標変換器104の出力側には、座標変換器104により演算された電圧指令値と座標変換器107により演算された電圧指令値(vu_2f *、vv_2f *、vw_2f *)とを加算するための加算器が設けられている。当該加算器で加算された電圧指令値(vu *、vv *、vw *)が、インバータ21に出力される。インバータ21には、入力される電圧指令値に基づき生成されるスイッチング信号が出力される。
座標変換器105は、入力されるdq軸検出電流(iu *、iv *、iw *)に対して、電気角(−θ)を用いた回転座標変換により、検出電流(iu *、iv *、iw *)を2次高調波電流(id_2f、iq_2f)に変換して、変換した2次高調波電流(id_2f、iq_2f)を減算器に出力する。座標変換器105は、座標変換器103による座標変換の電気角に対して逆方向にθだけ回転させることで、モータ30の交流電流の2次高調波電流を演算している。コイル結線31とコイル結線32との間で短絡が発生していない場合には、2次高調波電流(id_2f、iq_2f)はゼロである。一方、コイル結線31とコイル結線32との間で短絡が発生している場合には、2次高調波電流(id_2f、iq_2f)はゼロにならない。
dq2次電流制御器106は、2次高調波電流(id_2f、iq_2f)を、電流指令値(id_2f *、iq_2f *)に一致させるようフィードバック制御する制御器である。dq2次電流制御器106の入力側には、電流指令値(id_2f *、iq_2f *)と2次高調波電流(id_2f、iq_2f)との偏差をとる減算器が設けられており、当該減算器の出力値がdq2次電流制御器106に入力される。電流指令値(id_2f *、iq_2f *)は、短絡電流を抑制するために予め設定されている指令値であって、ゼロに設定されている。dq2次電流制御器106は、2次高調波電流(id_2f、iq_2f)を、電流指令値(id_2f *、iq_2f *)をゼロにするように、PI制御による制御演算を行い、dq軸の電圧指令値(vd_2f *、vq_2f *)を出力する。電圧指令値(vd_2f *、vq_2f *)は、2次の高調波成分の電圧指令値である。
座標変換器107は、入力される電圧指令値(vd_2f *、vq_2f *)に対して、電気角(−θ)を用いた回転座標変換により、電圧指令値(vd_2f *、vq_2f *)を固定座標系のu、v、w軸の電圧指令値(vu_2f *、vv_2f *、vw_2f *)に変換する。
コイル結線31とコイル結線32との間で短絡が発生している場合には、dq2次電流制御器106によるPI制御が機能し、フィードバック制御を行うことで、2次高調波電流(id_2f、iq_2f)をゼロになるような電圧指令値(vu_2f *、vv_2f *、vw_2f *)が演算される。そして、電圧指令値(vu_2f *、vv_2f *、vw_2f *)は、加算器により、座標変換器104により演算された電圧指令値に加算される。
次に、モータ制御装置における短絡検知について、図3を用いて説明する。図3は、モータ制御装置のブロック図である。ただし、コントローラ100は図示していない。
例えば、モータ30内で、コイル結線31のU相のコイルU1とコイル結線32のV相のコイルV2との間が短絡したと仮定する。本実施形態では、インバータ21がコイル結線31に接続されており、インバータ22がコイル結線32に接続されており、インバータ21、22の入力側も電源ラインによって電気的に接続されている。そのため、コイル結線31とコイル結線32との間で短絡が生じると、インバータ21、22及びコイル結線31、32による閉ループが形成される。
U相のコイルU1とV相のコイルV2との間が短絡した場合には、図3の点線の矢印で示す閉ループが形成される。そして、閉ループには、電流センサ41、42が接続されているため、コントローラ100は、電流センサ41、42の検出値から、U1相とV2相との間が短絡していることを検出できる。また、コントローラ100は、電流センサ41、42の検出値から、短絡電流がU1相とV2相に流れることを検出できる。これにより、コントローラ100は、電流センサ41、42に基づき、複数のコイル結線31、32の各相のうち、コイル結線間の短絡が発生している相を検出している。なお、図2に示したコントローラ100の機能ブロックでは、電流センサ41と座標変換器105が短絡電流を検知している。
次に、比較例と比較しつつ、高調波電流制御を行った場合のモータ30の電圧と電流の関係について説明する。図4は、比較例に係るモータ制御装置のコントローラのブロック図である。図5は、比較例に係るモータ制御装置において、モータ30の電圧特性と、モータ30の電流特性を示すグラフである。図6は、本実施形態に係るモータ制御装置において、2次高調波電流(id_2f、iq_2f)の特性を示すグラフである。図7は、本実施形態に係るモータ制御装置において、モータ30の電圧特性と、モータ30の電流特性を示すグラフである。
比較例では、本実施形態と異なり、コントローラは、高調波電流制御に係る機能ブロックを有していない。なお、高調波電流制御は、座標変換器105、107及びdq2次電流制御器106によるフィードバック制御に相当する。
例えば、コイル結線31のU相のコイルU1と、コイル結線32のV相のコイルV2が短絡した場合に、比較例では、インバータ21のスイッチング信号は電圧指令値(vu *、vv *、vw *)に基づいて生成される。当該電圧指令値(vu *、vv *、vw *)は、短絡の有無と関係なく、トルク指令に基づいて演算される値である。そのため、比較例の電圧指令値(vu *、vv *、vw *)は、短絡を抑制するための指令値にはなっていない。
比較例の電圧指令値(vu *、vv *、vw *)によりインバータ21、22を制御した場合に、モータ30の電圧は、図5(a)に示すように、平衡状態(同一振幅の3つのサイン波が120°の位相差でずれている状態)になる。また、比較例では、短絡電流を抑制するような制御が行われないため、交流電流の2次の高調波成分が定常的に残った状態になる。そして、モータ30の交流電流は、図5(b)に示すように、不平衡状態となる。
本実施形態に係るモータ制御装置のコントローラ100は、電流センサ41、42、座標変換器105を用いて、短絡している相に流れる高調波電流を検出している。図6は、コイル結線31のU相のコイルU1と、コイル結線32のV相のコイルV2が短絡した場合に、座標変換器105により変換された2次高調波電流(id_2f、iq_2f)の特性を示すグラフである。図6に示すように、コイル結線31、32の間で短絡が発生すると、2次高調波電流(id_2f、iq_2f)はゼロより大きくなる。
短絡電流を抑制する指令値(id_2f *、iq_2f *)はゼロに設定されているため、ゼロより大きい2次高調波電流(id_2f、iq_2f)が減算器に入力されると、dq2次電流制御器106は、PI制御により、減算器で演算された差分を抑制するように、電圧指令値(vu *、vv *、vw *)を演算する。この電圧指令値(vd_2f *、vq_2f *)は、座標変換器107で変換されて、基本波電流制御(2軸直流電流制御)で演算された電流指令値(座標変換器104で変換された電流指令値)に加算される。基本波の電流制御では、電圧指令値は比較例と、同様に平衡状態になっている。本実施形態では、基本波の電流制御で演算された電圧指令値に対して、高調波電流制御で演算された電圧指令値が加算されることで、図7(a)に示すように、電圧指令値(vu *、vv *、vw *)は不平衡状態になる。
図7の例では、U相のコイルU1とV相のコイルV2との間が短絡しているため、U相の電圧指令値(vu *)の振幅幅が、他の短絡の発生していないVW相の電圧指令値(vv *、vw *)の振幅幅より小さくなっている。すなわち、コントローラ100は、短絡が発生していない相の電圧指令値の振幅幅より、短絡が発生している相の電圧指令値の振幅幅を小さくすることで、モータの電圧を不平衡状態にする。また、本実施形態では、短絡電流を抑制する制御が行われるため、交流電流の2次の高調波成分は定常的にゼロとなり、モータ30の交流電流は、図7(b)に示すように、平衡状態となる。
コントローラ100は、U相のコイルU1とV相のコイルV2との間で短絡が発生している状態で、インバータ22を制御する際には、v相に流れる短絡電流を抑制するために、電圧指令値(vu *、vv *、vw *)を演算する。短絡の発生しているV相の電圧指令値(vv *)の振幅幅は、他の短絡の発生していないUW相の電圧指令値(vu *、vw *)の振幅幅より小さくなっている。
このように、本実施形態に係るモータ制御装置は、コイル結線31、32間で短絡が発生した場合に、短絡電流を抑制しつつ、モータの電流が平行状態になるように、モータ30を制御している。短絡の発生した相の電圧指令値を、他の相の電圧指令値より小さくすることで、モータ30の出力電圧には制限がかかる。しかしながら、本実施形態では、短絡発生時でも、モータ電流が平行状態になるようモータ30を制御できるため、電圧に制限がかからない範囲内において、要求トルクに応じてトルクを、モータ30から出力できる。その結果として、短絡発生時にも、ドライバーは、トルク低下を最小限に抑えつつ、車両を運転することができる。
上記のように、本実施形態では、電流センサ41、42の検出値に基づき、複数のコイル結線31、32間の短絡を検出し、短絡を検出した場合には、モータ30の交流電流の高調波に基づき複数のインバータ21、32を制御する。これにより、コイル結線31とコイル結線32との間が短絡した場合に、短絡部位の電位差を低減するように、インバータ21、22が制御されるため、短絡電流を抑えつつ、所望の出力トルクでモータを駆動させることができる。
また本実施形態では、電流センサ41、42の検出値に基づき、複数のコイル結線31、32の各相のうちコイル結線間の短絡が発生している相を検出し、短絡した相に流れる高調波電流を抑制するための電流指令値(id_2f *、iq_2f *)を設定し、高調波電流及び電流指令値(id_2f *、iq_2f *)に基づきモータの電圧指令値(vu *、vv *、vw *)を演算する。これにより、短絡電流を抑制しつつ、トルク指令に応じた出力トルクを維持させることができる。
また本実施形態では、短絡が発生していない相の電圧指令値の振幅幅より、短絡相の電圧指令値の振幅幅を小さくすることで、モータ30の電圧を不平衡状態にして、インバータ21、33を制御する。これにより、短絡電流を抑制しつつ、トルク指令に応じた出力トルクを維持させることができる。
また本実施形態では、モータ30の交流電流の基本波成分を制御する基本波制御器と、モータ30の交流電流の高調波成分を制御する高調波電流制御器とを有している。これにより、交流電流の高調波成分の定常偏差が抑制されるため、高次成分の短絡電流を低減できる。なお、基本波制御器は、図2に示す制御器のうち、基本波電流制御を実行する制御器に相当し、高調波電流制御器は、図2に示す制御器のうち、2次高調波電流を制御する制御器に相当する。
《第2実施形態》
図8は、発明の他の実施形態に係るモータ制御装置のコントローラのブロック図である。本例では上述した第1実施形態に対して、相毎に独立した電流制御を実行している点が異なる。コントローラ100以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、その記載を援用する。なお、以下では、インバータ21を制御する制御器について説明しているが、インバータ22を制御する制御器も同様であり、インバータ22を制御するための制御器の説明を省略している。
図8に示すように、コントローラ100は、電流制御器110及び非干渉制御器120を有している。電流制御器110は、第1実施形態における基本波電流制御及び高調波電流制御を、相毎に実行している。電流制御器110は、第1実施形態で示したdq電流制御器102及びdq2次電流制御器106に相当する制御器を有している。また電流制御器110は、電流指令値(iu *、iv *、iw *)と検出電流(iu、iv、iw)との偏差に基づき、短絡電流成分を検出する。そして、短絡電流が流れている場合には、短絡電流成分を抑制するように、電流指令値を演算して、インバータ21に出力する。
非干渉制御器120は、第1実施形態における非干渉制御器101と同様である。ただし、非干渉制御器120の出力は、固定座標系の電流指令値で出力する。電流制御器110及び非干渉制御器120の出力側に設けられた加算器により、非干渉電圧指令値と電圧指令値が加算され、加算された電圧指令値が、インバータ21に入力される。
上記のように、本実施形態では、相毎に独立した電流制御を実行することで、モータ30の電圧指令値を相毎にそれぞれ演算している。これにより、コイル結線31とコイル結線32との間が短絡した場合に、短絡部位の電位差を低減するように、インバータ21、22が制御されるため、短絡電流を抑えつつ、所望の出力トルクでモータを駆動させることができる。
《第3実施形態》
図9は、発明の他の実施形態に係るモータ制御装置のコントローラのブロック図である。本例では上述した第1実施形態に対して、コントローラ100がn次高調波電流を制御するための制御器を有している点が異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1実施形態及び第2実施形態の記載を適宜、援用する。なお、以下では、インバータ21を制御する制御器について説明しているが、インバータ22を制御する制御器も同様であり、インバータ22を制御するための制御器の説明を省略している。
図9に示すように、コントローラ100は、第1実施形態に係る非干渉制御器101等の構成に加えて、座標変換器131、133及びdqn次電流制御器132を有している。座標変換器131は、入力されるdq軸検出電流(iu *、iv *、iw *)に対して、電気角を用いた回転座標変換により、検出電流(iu *、iv *、iw *)をn次高調波電流(id_nf、iq_nf)に変換して、変換したn次高調波電流(id_nf、iq_nf)を減算器に出力する。nは3以上の整数である。座標変換器131の回転座標変換に用いる電気角は、抽出する高調波の次数nに応じて、予め設定されている。コイル結線31とコイル結線32との間で短絡が発生している場合には、2次高調波電流(id_2f、iq_2f)と同様に、3次以上の高調波電流の値も、正常時とは異なる値となる。
dqn次電流制御器132は、n次高調波電流(id_nf、iq_nf)を、電流指令値(id_nf *、iq_nf *)に一致させるようフィードバック制御する制御器である。dqn次電流制御器132の入力側には、2次高調波電流制御と同様に、減算器が設けられており、当該減算器の出力値がdqn次電流制御器132に入力される。電流指令値(id_nf *、iq_nf *)は、短絡電流を抑制するために予め設定されている指令値であって、ゼロに設定されている。dqn次電流制御器132は、n次高調波電流(id_nf、iq_nf)を、電流指令値(id_nf *、iq_nf *)をゼロにするように、PI制御による制御演算を行い、dq軸の電圧指令値(vd_nf *、vq_nf *)を出力する。電圧指令値(vd_nf *、vq_nf *)は、n次の高調波成分の電圧指令値である。
座標変換器133は、入力される電圧指令値(vd_nf *、vq_nf *)に対して、回転座標変換を行い、固定座標系のu、v、w軸の電圧指令値(vu_nf *、vv_nf *、vw_nf *)を演算する。電圧指令値(vu_nf *、vv_nf *、vw_nf *)は、電圧指令値(vu_2f *、vv_2f *、vw_2f *)に加算される。
上記のように本実施形態では、モータ30の交流電流の基本波成分を制御する基本波制御器と、モータ30の交流電流の高調波成分を制御する高調波電流制御器とを有している。これにより、交流電流の高調波成分の定常偏差が抑制されるため、高次成分の短絡電流を低減できる。また本実施形態では、2次高調波電流に加えてn次高調波電流を制御しているため、短絡の発生後、より早く短絡電流を低減できる。なお、基本波制御器は、図9に示す制御器のうち、基本波電流制御を実行する制御器に相当し、高調波電流制御器は、図9に示す制御器のうち、2次高調波電流を制御する制御器、及び、n次高調波電流を制御する制御器に相当する。
《第4実施形態》
本発明の他の実施形態に係るモータ制御装置を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、コイル結線を構成するコイルの巻線パターンが異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第3実施形態の記載を適宜、援用する。
図10は、ステータの一部を示す平面図である。図10において、U+とU−は、U相の1つのコイルを示しており、コイルは+と−の間で巻回されている。VW相も同様である。
モータ30は、ロータと、ロータの外周に位置するステータ3を有している。ステータ3は、ステータコア300と複数のコイルを備えている。複数のコイルは、コイル結線31、32を構成するコイルに相当する。ステータコア300は、複数の磁性鋼板を積層することで構成されるコアであって、ヨーク301と複数のティース302を備えている。ヨーク301は、ステータの周方向に沿って円環状に形成されている。複数のティース302は、ヨーク301の内周面から、ステータの径方向内側(図示しないロータ側)へ突出するように形成されている。複数のティース302は、ステータ周方向で互いに間隔を空けて配置されている。ステータの円周方向で隣り合う複数のティース302の間には、スロット303が形成されている。なお、図10に示すように、複数のティース302のうち、あるティース302をティース302aとし、ステータの円周方向でティース302aの隣に位置するティース302をティース302bとする。
ティース302aの周囲にはコイルU1が巻かれており、ティース302bの周囲にはコイルV2が巻かれている。コイルU1はコイル結線31のU相のコイルであり、コイルV2はコイル結線32のV相のコイルである。ステータの断面(xy面)において、ティース302aとティース302bとの間に位置するスロット303内では、ティース302a側の領域内にコイルU1が巻かれており、ティース302b側の領域内にコイルV2が巻かれている。スロット303内で、コイルU1とコイルV2が接している。本実施形態において、巻線パターンは集中巻のタイプである。
このように、本実施形態では、スロット303内に位置する2つのコイルは、互いに異なるコイル結線31、32を構成するコイルであり、かつ、互いに異なる相のコイルである。1つのスロット内に、2つのコイルが配置される場合には、当該2つのコイルが同じコイル結線を構成することはない。また、当該2つのコイルが、同相になることもない。ティース302aとティース302bとの間に位置するスロット303だけでなく、他のスロット303においても同様に、スロット303内で接する2つのコイルは、コイル結線31、32のコイルであり、異なる相のコイルとしている。
スロット303内で接する複数のコイルは、異なるコイル結線のコイルであり、かつ、異なる相のコイルであるため、スロット内の複数のコイル間の電位差は大きなっている。スロット内の複数のコイル間で短絡が発生した場合に、大きな短絡電流が、コイル結線31とコイル結線32との間に流れる。
本実施形態に係るモータ電流制御装置では、複数のコイル結線31、32間の短絡を検出し、短絡を検出した場合には、モータ30の交流電流の高調波に基づき複数のインバータ21、32を制御している。そのため、スロット303内で、電位差の大きい複数のコイルを配置し、複数のコイル間で短絡が発生した場合でも、短絡電流を抑えつつ、所望の出力トルクでモータ30を駆動させることができる。
《第5実施形態》
本発明の他の実施形態に係るモータ制御装置を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、コイル結線を構成するコイルの巻線パターンが異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第4実施形態の記載を適宜、援用する。
図11は、ステータの一部を示す平面図である。U+等の表示は図10と同様である。なお、図11では、45°モデルの巻線パターンを示している。図11に示すように、複数のティース302のうち、あるティース302をティース302aとし、ステータの周方向でティース302aの隣に位置するティース302をティース302bとする。
ステータコア300の構成は、第4実施形態に係るステータコア300と同様である。ティース302aの周囲にはコイルU1及びコイルU2が巻かれており、ティース302bの周囲にはコイルV1及びコイルV2が巻かれている。コイルU1はコイル結線31のU相のコイルであり、コイルU2はコイル結線32のU相のコイルであり、コイルV1はコイル結線31のV相のコイルであり、コイルV2はコイル結線32のV相のコイルである。ステータの断面(xy面)において、ティース302aとティース302bとの間に位置するスロット303内では、ティース302a側の領域内にコイルU1及びコイルU2が巻かれており、ティース302b側の領域内にコイルV1及びコイルV2が巻かれている。コイルU1及びコイルV1は径方向の外側に巻かれており、コイルU2及びコイルV2は径方向の内側に巻かれている。スロット303内で、コイルU1はコイルU2及びコイルV1とそれぞれ接しており、コイルV1はコイルU1及びコイルV2とそれぞれ接している。本実施形態において、巻線パターンは集中巻のタイプである。
このように、本実施形態では、スロット303内に配置される少なくとも2つのコイルは、互いに異なるコイル結線31、32を構成するコイルであり、かつ、互いに異なる相のコイルである。また、スロット内で径方向に隣接した2つのコイルは、互いに異なるコイル結線31、32を構成するコイルであり、かつ、互いに同じ相のコイルである。
本実施形態に係るモータ電流制御装置では、複数のコイル結線31、32間の短絡を検出し、短絡を検出した場合には、モータ30の交流電流の高調波に基づき複数のインバータ21、22を制御している。そのため、図11に示すように、スロット303内で電位差の大きい複数のコイルを配置し、複数のコイル間で短絡が発生した場合でも、短絡電流を抑えつつ、所望の出力トルクでモータ30を駆動させることができる。
また本実施形態では、スロット303内で径方向に同相のコイルを複数並べており、スロット内で、径方向の内側にコイル結線31のコイルを並べ、径方向の外側にコイル結線32のコイルを並べている。これにより、コイルのターン数を増やすことができる。
なお、本実施形態の変形例に係るモータ制御装置は、スロット303内で、コイル結線31を構成するコイルと、コイル結線32を構成するコイルを交互に複数並べてもよい。図12は、変形例に係るステータの一部を示す平面図である。
図12に示すように、変形例では、コイル結線31のコイルU1とコイル結線32のコイルU2とを並べた巻線パターンが、径方向で2パターンになるように、複数のコイルがスロット303内に並んでいる。これにより、コイルのターン数をさらに増やすことができる。
また、本実施形態は、1つのパターンを形成する際に、コイル結線31のコイルのターン数と、コイル結線32のコイルのターン数を、許容ターン数にしつつ、複数のパターンを径方向に沿って並ぶように、ステータを構成してもよい。許容ターン数は、短絡電流の許容値と対応したターン数である。例えば所定のターン数の同相のコイルが短絡した場合に、短絡電流が流れる。このとき短絡電流の大きさは、ターン数が多いほど大きくなる。短絡電流の許容値は、モータ30の構成、インバータ21、32の構成等に応じて予め決まっている。短絡電流の大きさがこの許容値より小さければ、短絡電流による車両の影響は少ない。
すなわち、同相のコイル内で短絡が発生した場合に、短絡電流が許容値以下になるようなターン数を許容ターン数として予め設定する。そして、コイルのターン数を許容ターン数以下にしつつ、パターンを形成する。これにより、短絡発生時の車両への影響を抑制しつつ、パターン数を増やすことができる。
なお、スロット303内で径方向に同相のコイルを並べる際に、コイル結線31のコイルとコイル結線32のコイルを、1ターン毎に交互に並べてもよい。
《第6実施形態》
本発明の他の実施形態に係るモータ制御装置を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、コイル結線を構成するコイルの巻線パターンが異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第5実施形態の記載を適宜、援用する。
図13は、ステータの一部を示す平面図である。U+等の表示は図10と同様である。なお、図13では、90°モデルの巻線パターンを示している。図13に示すように、複数のティース302のうち、あるティース302をティース302aとし、ステータの円周方向でティース302aの隣に位置するティース302をティース302bとする。
ステータコア300の構成は、第4実施形態に係るステータコア300と同様である。ティース302aの周囲にはコイルU1及びコイルU2が巻かれており、ティース302bの周囲にはコイルV1及びコイルV2が巻かれている。ステータの断面(xy面)において、ティース302aとティース302bとの間に位置するスロット303内では、径方向の内側にコイルU1及びコイルU2が巻かれており、径方向の外側にコイルV1及びコイルV2が巻かれている。スロット303内で、コイルU1及びコイルV2は隣接している。本実施形態において、巻線パターンは集中巻のタイプである。
上記のように、本実施形態では、スロット303内で、コイル結線31のコイルとコイル結線32のコイルであり、異なる相の複数のコイルを、径方向に並べている。そして、本実施形態では、複数のコイル結線31、32間の短絡を検出し、短絡を検出した場合には、モータ30の交流電流の高調波に基づき複数のインバータ21、32を制御している。そのため、図13に示すように、スロット303内で電位差の大きい複数のコイルを配置し、複数のコイル間で短絡が発生した場合でも、短絡電流を抑えつつ、所望の出力トルクでモータ30を駆動させることができる。
《第7実施形態》
本発明の他の実施形態に係るモータ制御装置を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、インバータ及びモータの構成と、コイルの巻線パターンが異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第6実施形態の記載を適宜、援用する。
図14はモータ制御装置のブロック図である。インバータ21〜24はそれぞれ独立した電力変換器であって、バッテリ1とモータ30との間に接続されている。インバータ21はコイル結線31に交流電流を供給する変換器であり、インバータ22はコイル結線32に交流電流を供給する変換器であり、インバータ23はコイル結線33に交流電流を供給する変換器であり、インバータ24はコイル結線34に交流電流を供給する変換器である。インバータ21〜24はコイル結線31〜34の中性点O1〜O4にそれぞれ電気的に接続されている。
モータ30は、コイル結線31〜34を有している。コイル結線31は、各相のコイルの一端同士を中性点O1で接続することで構成されるY結線である。コイル結線32〜34は、コイル結線31と同様な結線であり、複数のコイルのY結線である。中性点O1〜O4は、互いに異なる中性点である。
電流センサ41〜44は、コイル結線31〜34の各相に流れる電流を、それぞれ検出する。
図15は、ステータの一部を示す平面図である。図15において、U+とU−は、U相の1つのコイルを示しており、コイルは+と−の間で巻回されている。VW相も同様に、+と−の間で巻回されている。
ステータコア300の構成は、第4実施形態に係るステータコア300と同様である。ただし、ティース及びスロットの数は異なっている。ティース302aの周囲にはコイルU1及びコイルU3が巻かれており、ティース302bの周囲にはコイルV2及びコイルV4が巻かれている。ステータの断面(xy面)において、ティース302aとティース302bとの間に位置するスロット303内では、ティース302a側の領域内にコイルU1及びコイルU3が巻かれており、ティース302b側の領域内にコイルV2及びコイルV4が巻かれている。コイルU1及びコイルV3は径方向の外側に巻かれており、コイルU2及びコイルV4は径方向の内側に巻かれている。スロット303内で、コイルU1はコイルU3及びコイルV2とそれぞれ接しており、コイルV4はコイルU3及びコイルV2とそれぞれ接している。本実施形態において、巻線パターンは集中巻のタイプである。
このように、本実施形態では、スロット303内に位置する4つのコイルは、互いに異なるコイル結線31〜34を構成するコイルであり、一方のティース側に位置する複数のコイルと他方のティース側の複数のコイルは互いに異なる相のコイルである。また、ステータコア300の周方向で、コイルの相は、U相、V相、及びW相の順に並んでいる。
本実施形態に係るモータ制御装置では、複数のコイル結線31〜34間の短絡を検出し、短絡を検出した場合には、モータ30の交流電流の高調波に基づき複数のインバータ21〜24を制御している。そのため、図15に示すように、スロット303内で電位差の大きい複数のコイルを配置し、複数のコイル間で短絡が発生した場合でも、短絡電流を抑えつつ、所望の出力トルクでモータ30を駆動させることができる。また本実施形態に係るモータ制御装置は、同相のコイル間の短絡及び異なる相のコイル間の短絡をそれぞれ抑制できる。
《第8実施形態》
本発明の他の実施形態に係るモータ制御装置を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、インバータ及びモータの構成と、コイルの巻線パターンが異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第7実施形態の記載を適宜、援用する。
図16はモータ制御装置のブロック図である。インバータ21〜23はそれぞれ独立した電力変換器であって、バッテリ1とモータ30との間に接続されている。インバータ21はコイル結線31に交流電流を供給する変換器であり、インバータ22はコイル結線32に交流電流を供給する変換器であり、インバータ23はコイル結線33に交流電流を供給する変換器である。インバータ21〜23はコイル結線31〜33の中性点O1〜O3にそれぞれ電気的に接続されている。
インバータ21〜23は、スイッチング回路S1〜S10を有している。スイッチング回路S1〜S10は、スイッチング素子をブリッジ状に接続することで、5相のアーム回路を形成している。
モータ30は、コイル結線31〜33を有している。コイル結線31は、各相のコイルの一端同士を中性点O1で接続することで構成されるY結線である。コイル結線32、33は、コイル結線31と同様な結線であり、複数のコイルのY結線である。中性点O1〜O3は、互いに異なる中性点である。
電流センサ41〜43は、コイル結線31〜33の各相に流れる電流を、それぞれ検出する。
図17は、ステータの一部を示す平面図である。図17において、U+とU−は、U相の1つのコイルを示しており、コイルは+と−の間で巻回されている。VW相も同様に、+と−の間で巻回されている。なお、図17では、120°モデルの巻線パターンを示している。
ステータコア300の構成は、第4実施形態に係るステータコア300と同様である。ただし、ティース及びスロットの数は異なっている。コイルU1は、2つのティース302aとティース302bとの間で巻回されている。コイルV2は、2つのティース302bとティース302cとの間で巻回されている。コイルW3は、2つのティース302cとティース302dとの間で巻回されている。ステータの断面(xy面)において、ティース302aとティース302bとの間に位置するスロット303内では、コイルV2及びコイルY3が巻かれおり、当該スロット303内で接している。本実施形態において、巻線パターンは、2つのコイルピッチ毎にコイルを巻回させた分布巻のタイプである。
このように、本実施形態では、スロット303内に配置された2つのコイルは、互いに異なるコイル結線31〜33を構成するコイルであり、互いに異なる相のコイルである。また、スロット303内の2つのコイルは、ステータコア300の径方向で接している。ステータコア300の周方向で、コイルの相は、U相、V相、及びW相の順に並んでいる。
本実施形態に係るモータ制御装置では、複数のコイル結線31〜33間の短絡を検出し、短絡を検出した場合には、モータ30の交流電流の高調波に基づき複数のインバータ21〜24を制御している。そのため、図17に示すように、スロット303内で電位差の大きい複数のコイルを配置し、複数のコイル間で短絡が発生した場合でも、短絡電流を抑えつつ、所望の出力トルクでモータ30を駆動させることができる。
なお、本実施形態の変形例に係るモータ制御装置は、スロット303内で、コイル結線31〜34を構成するそれぞれのコイルを交互に複数並べてもよい。図18は、変形例に係るステータの一部を示す平面図である。
図18に示すように、変形例では、ティース302bとティース302cとの間に位置するスロット303内で、コイル結線31のコイルU1とコイル結線33のコイルW3とを並べたパターンが、径方向で2パターンになるように、複数のコイルがスロット303内に並んでいる。他のスロット303内でも同様に、異相であり、かつ、コイル結線の異なる2つのコイルがパターンとして並んでおり、このパターンが径方向で2つになるように、複数のコイルが並んでいる。これにより、コイルのターン数をさらに増やすことができる。
《第9実施形態》
本発明の他の実施形態に係るモータ制御装置を説明する。本例では上述した第1実施形態に対して、インバータ及びモータの構成と、コイルの巻線パターンが異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第8実施形態の記載を適宜、援用する。
図19はモータ制御装置のブロック図である。インバータ21〜24はそれぞれ独立した電力変換器であって、バッテリ1とモータ30との間に接続されている。インバータ21はコイル結線31に交流電流を供給する変換器であり、インバータ22はコイル結線32に交流電流を供給する変換器であり、インバータ23はコイル結線33に交流電流を供給する変換器であり、インバータ24はコイル結線34に交流電流を供給する変換器である。インバータ21〜24はコイル結線31〜34の中性点O1〜O4にそれぞれ電気的に接続されている。
モータ30は、コイル結線31〜34を有している。コイル結線31は、各相のコイルの一端同士を中性点O1で接続することで構成されるY結線である。コイル結線32〜34は、コイル結線31と同様な結線であり、複数のコイルのY結線である。中性点O1〜O4は、互いに異なる中性点である。
コイル結線31のU相のコイルは、2つのコイルU1a、U1bで構成されており、V相のコイルは、2つのコイルV1a、V1bで構成されており、W相のコイルは、2つのコイルW1a、W1bで構成されている。各2つのコイルは直列に接続されている。
コイル結線32のU相のコイルは、2つのコイルU2a、U2bで構成されており、V相及びW相のコイルは、2つのコイルV2a、V2bと2つのコイルW2a、W2bで構成されている。コイル結線33及びコイル結線34のUVW相のコイルも、同様にそれぞれ2つのコイルで構成されている。
電流センサ41〜44は、コイル結線31〜34の各相に流れる電流を、それぞれ検出する。
図20は、ステータの平面図である。図20において、U1a、U1b〜W4a、W4bの表示は、図19のコイルの表示に対応している。U1a+とU1a−は、U相の1つのコイルU1aを示しており、コイルは+と−の間で巻回されている。U1b+及びU1b−等の表示は、U1a+及びU1a−と同様である。またVW相の表示も同様である。
ステータコア300の構成は、第4実施形態に係るステータコア300と同様である。ただし、ティース及びスロットの数は異なっている。コイル結線31〜34を構成している各コイルU1a〜U4b、V1a〜V4b、W1a〜W4bは、コイルピッチを5に保ちつつ、ティース302に巻回されている。コイルピッチは、周方向に並ぶティース302の数に相当する。例えば、コイルU1aは、5つのティース302a〜302eを囲うように巻回されている。
各コイルU1a〜U4b、V1a〜V4b、W1a〜W4bは、図20に示されるように、巻回されると、複数のコイルが重なりあうため、コイル同士で接する部分が存在する。このとき、互いに接する複数のコイルは、異なる前記コイル結線を構成するコイルであり、かつ、異なる相のコイルになっている。図20では、この条件を満たすように、コイルが巻回されている。本実施形態において、巻線パターンは、5つのコイルピッチ毎にコイルを巻回させた分布巻のタイプである。
本実施形態に係るモータ制御装置では、図20に示すように、電位差の大きいコイルがステータ上で接するように、複数のコイルを配置している。そして、複数のコイル結線31〜34間の短絡を検出し、短絡を検出した場合には、モータ30の交流電流の高調波に基づき複数のインバータ21〜24を制御している。これにより、複数のコイル間で短絡が発生した場合でも、短絡電流を抑えつつ、所望の出力トルクでモータ30を駆動させることができる。
《第10実施形態》
本発明の他の実施形態に係るモータ制御装置を説明する。本例では上述した第9実施形態に対して、コイルの巻線パターンが異なる。これ以外の構成は上述した第1実施形態と同じであり、第1〜第9実施形態の記載を適宜、援用する。
図21はモータ制御装置のブロック図である。インバータ21〜24及び電流センサ41〜44は、第9実施形態に係るインバータ及び電流センサと同様の構成である。モータ30は、コイル結線31〜34を有している。コイル結線31のU相のコイルは、4つのコイルU1a、U1b、U1c、U1dで構成されており、V相のコイルは、4つのコイルV1a、V1b、V1c、V1dで構成されており、W相のコイルは、4つのコイルW1a、W1b、W1c、W1dで構成されている。各4つのコイルは直列に接続されている。コイル結線32〜34のUVW相のコイルも、同様にそれぞれ4つのコイルで構成されている。
図22は、ステータの平面図である。図22において、U1a、U1b〜W4a、W4bの表示は、図21のコイルの表示に対応している。U1a+とU1a−は、U相の1つのコイルU1aを示しており、コイルは+と−の間で巻回されている。U1b+及びU1b−等の表示は、U1a+及びU1a−と同様である。またVW相の表示も同様である。
ステータコア300の構成は、第9実施形態に係るステータコア300と同様である。ステータの周方向に沿って巻回されるコイルの巻線パターンは、第9実施形態に係る巻線パターンと同様であり、各コイルU1a〜U4b、V1a〜V4b、W1a〜W4bは、コイルピッチを5に保ちつつ、ティース302に巻回されている。
ステータの径方向の巻線パターンは、第9実施形態と異なっており、スロット303内で、同じ相のコイルであり、かつ、異なるコイル結線を構成するコイルが、径方向に沿って並ぶように、複数のコイルが配置されている。
本実施形態に係るモータ制御装置では、図22に示すように、電位差の大きいコイルがステータ上又はスロット内で接するように、複数のコイルを配置している。そして、複数のコイル結線31〜34間の短絡を検出し、短絡を検出した場合には、モータ30の交流電流の高調波に基づき複数のインバータ21〜24を制御している。これにより、複数のコイル間で短絡が発生した場合でも、短絡電流を抑えつつ、所望の出力トルクでモータ30を駆動させることができる。