JP6496275B2 - 洗濯耐久性を有する高通気性織物 - Google Patents
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Description
方法1;織密度を下げ、且つ、ハイマルチフィラメントを採用する
方法2;カレンダー加工(圧力、温度、速度等)の条件を緩くする
方法1では、織密度を下げたことで高通気度の織物が得られたものの、織密度が低いため単糸のズレが大きくなり、目寄れが生じてしまったため生地品位が大きく低下した。
方法2は、従来品(低通気度織物)の製造方法にヒントを得ている。カレンダー加工の条件を緩くすることで、単糸間の隙間が完全に潰されなくなったため、製織時に形成された単糸間の隙間が維持され織物の通気度は上昇した。しかしながら、単糸が固定されていないため、洗濯時のもみ等により単糸が容易にズレてしまい、洗濯後において初期通気度を維持することができなかった。特に単糸が丸型断面形状を有する場合には、単糸のズレ(転がり)が顕著であった。またカレンダー加工の条件を緩くすることで、表糸を構成する単糸が織物の厚さ方向に重なりやすくなった。しかしこの第2交差部では、外的な刺激によって単糸が毛羽立ち易く、新たな生地品位低下の問題が懸念されるようになった。
[1]複数の略四角形単糸からなる経糸と、複数の略四角形単糸からなる緯糸が表裏に重なり合う交差部を有する織物であって、
表糸を構成する略四角形単糸が一列に並んでいる交差部を第1交差部とし、
表糸を構成する単糸のうち60%以上が一列に並んで形成されている単糸列の上または下に、前記表糸を構成する単糸の残部が織物の厚さ方向に重なっている交差部を第2交差部としたとき、
経糸5本及び緯糸6本からなる組織に含まれる30個の交差部中、第1交差部の合計数が10%以上90%以下であることを特徴とする織物。
[2]前記略四角形単糸が、4本の辺からなる略四角形断面を有する単糸である[1]に記載の織物。
[3]前記略四角形断面が、一組の対角が30°以上90°以下の平行四辺形である[2]に記載の織物。
[4]前記略四角形断面が、4本の辺の長さが全て等しい菱形である[2]または[3]に記載の織物。
[5]前記略四角形単糸の単糸繊度が1.0dtex以上7.0dtex以下であり、
略四角形単糸からなる合成繊維マルチフィラメントの含有率が、織物100質量%中40質量%以上であり、
前記合成繊維マルチフィラメントの総繊度が5.0dtex以上40dtex以下である[1]〜[4]のいずれかに記載の織物。
[6]カバーファクターが1450以上2400以下である[1]〜[5]のいずれかに記載の織物。
[7]JIS L1096 8.27.1 A法のフラジール形法で測定される初期通気度が2.0cc/cm2/s以上25cc/cm2/s以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の織物。
[8]JIS L1096 8.27.1 A法のフラジール形法で測定される初期通気度(L0)に対するJIS L0217 103法で測定される洗濯10回後の通気度(L10)の変化率(L10/L0)が、0.8以上1.8以下である[1]〜[7]のいずれかに記載の織物。
[9]JIS L1096 B法による12kg荷重での滑脱抵抗値が、経方向及び緯方向のそれぞれで4.0mm以下である[1]〜[8]のいずれかに記載の織物。
[10]200回磨耗後の磨耗等級が2級以上である[1]〜[9]のいずれかに記載の織物。
[11][1]〜[10]のいずれかに記載の織物を側地とするウィンドブレーカー。
[12][1]〜[10]のいずれかに記載の織物を側地とするダウン製品。
本発明に係る織物は、複数の略四角形単糸からなる経糸と、複数の略四角形単糸からなる緯糸が表裏に重なり合う交差部を有する。通常緯糸は、経糸に対し直角に交差しており、織物を表面側からみたとき、前記交差部は、経糸と緯糸が重なる四角形として確認される。
図1には、交差部の説明図を示す。図1(a)は、本発明に係る織物の表面SEM写真であり(倍率:120倍)、この写真の上に交差部を示したものが図1(b)である。図1(b)では、経糸5本及び緯糸6本からなる組織に含まれる30個の交差部が観察される(但し、交差部が一部しか見えていないものは除く)。
第1交差部においては、表糸を構成する略四角形単糸が一列に並んでいる。略四角形単糸を一列に配列することにより、織物の厚さ方向に対する空気の通りを阻害できるため、第1交差部は、織物の低通気度化に寄与する。特に略四角形単糸は、隣り合う略四角形単糸と接した状態で配列されていることが好ましい。単糸の断面形状を略四角形としたことにより隣り合う単糸同士は広い面で接することが可能となるため、隣り合う略四角形単糸が密着していれば、略四角形単糸間の隙間が少なくなって織物の通気度が下がるためである。また第1交差部の比率が増えることで、第2交差部で生じていた毛羽立ち問題解消も期待できる。
一方、第2交差部では、表糸を構成する半数以上の略四角形単糸は一列に並んでいるが、残りの略四角形単糸は織物の厚さ方向に重なっている。第2交差部では、略四角形単糸の数本が織物の厚さ方向に重なっている分、第1交差部に比べて表糸の両脇に隙間が出来、空気が通りやすくなるため、第2交差部は織物の高通気度化に寄与することとなる。また第2交差部では、略四角形単糸が織物の厚さ方向に数本重なっていることにより、略四角形単糸同士は、横方向及び上下方向で面接触できるようになるため、単糸間の摩擦力が第1交差部に比べてより強固なものとなる。この単糸間の摩擦力によって単糸がより動きにくくなるため、第2交差部は外的な刺激による単糸のズレ(単糸の転がり)抑制にも寄与する。
また第2交差部も、第2交差部が2〜10個(より好ましくは、2〜6個)隣接する群として存在していることが好ましく、第2交差部が群として存在できれば、高い通気度の織物を得やすくなる。
本発明に係る織物は、複数の略四角形単糸からなる経糸と、複数の略四角形単糸からなる緯糸から構成される。単糸の断面を略四角形とすることで、隣り合う単糸同士の接触面積を大きくし、洗濯時等の外的刺激による単糸の転がりを抑制することが可能となる。
略四角形単糸とは、断面形状が略四角形の単糸である。ここで「略四角形」とは、4本の辺を有する平面図形を意味する。略四角形(後述する平行四辺形、菱形、長方形を含む)は、理想的には4つの頂点が明確で4つの辺が直線であることが望ましい。しかしながら、略四角形単糸を製造する工程において、樹脂の押し出し速度、吐出量、冷却速度のムラ等により、略四角形は、必ずしも頂点が明確にならなかったり、辺の一部が曲線になる場合がある。しかしながら、製造上の問題を包含するこのような略四角形(すなわち、頂点が明確でない略四角形や、辺の一部が曲線の略四角形)も、本発明の略四角形に含まれるものとする。
また略四角形において、長辺に対する短辺の比率(短辺/長辺)は、0.30〜1.0が好ましく、0.40〜1.0がより好ましく、0.55〜1.0が更に好ましい。
合成繊維マルチフィラメントは、主としてポリエステル類(より好ましくはポリエチレンテレフタレート)またはポリアミド類(より好ましくはナイロン)から形成されることが好ましい。特にポリアミド類は、織物の風合いを柔らかくでき、また織物の引裂き強力も高くできるため好ましい。ポリエステル類製の単糸の含有率は、合成繊維マルチフィラメントを構成する全単糸100質量%中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。ポリアミド類製の単糸の含有率は、合成繊維マルチフィラメントを構成する全単糸100質量%中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
合成繊維マルチフィラメントは、前述した略四角形断面を有する略四角形単糸を2本以上含んでいる。1本の合成繊維マルチフィラメントに含まれる略四角形単糸の本数は、3本以上が好ましく、より好ましくは4本以上であり、更に好ましくは5本以上であり、20本以下が好ましく、より好ましくは12本以下であり、更に好ましくは9本以下である。単糸本数を前記範囲内にすることで、第1交差部の存在比率を前記範囲内に調整することができる。また、合成繊維マルチフィラメントの総繊度を一定にした場合には、略四角形単糸の本数を多くし過ぎると、相対的に略四角形単糸の単糸繊度が小さくなるため、糸が切れやすくなる等の不具合が生じるため好ましくない。
以下、本発明に係る織物の特性について具体的に説明する。高通気性を確保しながら、擦れや引っかきに強い織物を得るため、略四角形単糸からなる合成繊維マルチフィラメントの含有率は、織物100質量%中、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは55質量%以上であり、更に好ましくは65質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上であり、より更に好ましくは90質量%以上であり、上限は特に限定されないが、100質量%が好ましく、95質量%以下であってもよい。略四角形単糸からなる合成繊維マルチフィラメントの含有比率を40質量%以上にすることで、高い通気度であっても、揉まれや洗濯などの外的刺激に強く、安定した通気を確保した織物を得ることができる。更には、縫い目滑脱や磨耗性にも耐性を得やすくなる。
CF=T×(DT)1/2+W×(DW)1/2
[式中、T及びWは織物の経密度及び緯密度(本/2.54cm)を示し、DT及びDWは織物を構成する経糸および緯糸の太さ(dtex)を示す。]
KT={1/T}/{L}×100 …(i)
KW={1/W}/{L}×100 …(ii)
〔式中、L:1本の合成繊維マルチフィラメントに含まれる単糸を密に一列に並べた長さ(cm)、TおよびWは織物の仕上げ経密度および仕上げ緯密度(本/2.54cm)〕
IV−1.略四角形単糸の製造方法
本発明で用いる略四角形単糸を製造するためには、4つの凸部(頂点)を有する口金吐出孔から樹脂を紡糸することが望ましい。具体的には、ノズルの口金吐出孔の形を図9に示すような星型に設計することが好ましい。すなわち、略四角形単糸を形成できる星型の口金吐出孔は、4つの凸部(例えば図9では、P〜S)と4つの凹部(例えば図9では、T〜W)を有しており、凸部の2組の対角はそれぞれ等しく、凸部の対角線は直交していることが望ましい。このような星型の口金吐出孔を通じて原料樹脂を紡糸すると、溶融した樹脂が4つの凹部内を広がるように膨らみ、その結果、4つの凸部を結ぶ略四角形の繊維横断面を有する単糸が製造される。そのため、吐出孔の3つの凸部を結んで形成される角度を調整することにより、略四角形の内角を設計することができる(すなわち、略四角形におけるQの内角は、凸部の3つの頂点P、Q、Rを結んで形成される角度とほぼ等しくなる)。
a)製織工程
まず、経糸及び緯糸として、略四角形単糸を2本以上含む合成繊維マルチフィラメントを用いて生機を製織する。製織工程で使用される合成繊維マルチフィラメントは前述した通りである。
同様の理由から、織緯密度は、50本/2.54cm以上が好ましく、80本/2.54cm以上がより好ましく、100本/2.54cm以上が更に好ましく、400本/2.54cm以下が好ましく、350本/2.54cm以下がより好ましく、250本/2.54cm以下が更に好ましい。なお、生機密度と仕上密度は同一であっても異なっていてもよい。
次いで、任意の工程として、製織工程で得られた織物の少なくとも片面に、カレンダー加工を実施することが望ましい。カレンダー工程では、織物の少なくとも片面にカレンダー加工を施すとよい。織物にカレンダー加工を施すことにより、織物に含まれる略四角形単糸が圧縮され、単糸間の隙間がなくなり、隣り合う略四角形単糸同士が面で接しやすくなる。これにより、単糸同士の摩擦力により織物を洗濯しても単糸が動きにくくなる。またカレンダー加工により、織物に柔らかさを付与することが可能となる。カレンダー加工は、織物の片面又は両面に施すことができ、特にデザイン性の観点から織物の両方に光沢面が必要な場合には、織物の両面にカレンダー加工を施すとよい。
初期通気度が2.0〜10cc/cm2/sの織物を製造する場合には、カレンダー回数:1回、カレンダー圧力:180〜200kg/cm、カレンダー温度:160〜180℃、カレンダー加工速度:30〜50m/分がよい;
初期通気度が10〜20cc/cm2/sの織物を製造する場合には、カレンダー回数:1回、カレンダー圧力:150〜180kg/cm、カレンダー温度:70〜100℃、カレンダー加工速度:15〜20m/分がよい;
初期通気度が20〜25cc/cm2/sの織物を製造する場合には、カレンダー加工を施さなくてもよい場合がある。
このようにして得られる本発明に係る織物は、軽量薄地で高通気度を有する高密度織物でありながら、従来にない磨耗性に優れた特性を有している。そのため、本発明に係る織物は、これを側地とするウィンドブレーカーや、これを側地とするダウン製品(例えば、ダウンジャケット、寝袋、蒲団等)に好ましく適用される。
極限粘度(IV)は、p−クロルフェノールとテトラクロルエタンからなる混合溶媒(p−クロルフェノール/テトラクロルエタン=75/25)を用い、30℃で測定した極限粘度〔η〕を、下記の式によりフェノールとテトラクロルエタンからなる混合溶媒(フェノール/テトラクロルエタン=60/40)の極限粘度(IV)に換算したものである。
IV=0.8325×〔η〕+0.005
96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸中にポリマー濃度が10mg/mlになるように試料を溶解させてサンプル溶液を調製した。20℃±0.05℃の温度で水落下秒数が6秒から7秒のオストワルド粘度計を用い、20℃±0.05℃の温度で、調製したサンプル溶液20mlの落下時間T1(秒)及び試料を溶解するに用いた96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸20mlの落下時間T0(秒)を、それぞれ測定した。使用する樹脂の相対粘度(RV)は下記の式により算出された。
RV=T1/T0
(1)辺の長さの測定
VH−Z450型顕微鏡およびVH−6300型測定器(KEYENCE社製)を用い、1500倍の倍率で略四角形単糸の断面をみながら各辺の長さを測定し、単糸3本の平均値を辺の長さとした。
(2)内角の測定
VH−Z450型顕微鏡およびVH−6300型測定器(KEYENCE社製)を用い、1500倍の倍率で略四角形単糸の断面を撮影し、市販(コクヨ社製)の分度器で鋭角と鈍角を測定し、それぞれの単糸3本の平均値を角度とした。
合成繊維マルチフィラメントの繊度(総繊度)は、100m長の合成繊維マルチフィラメントのカセを3つ作製し、各々の質量(g)を測定し、平均値を求め、100倍して求めた。
合成繊維マルチフィラメントの総繊度からフィラメント数を除して求めた。
単糸繊度=合成繊維マルチフィラメントの総繊度/フィラメント本数
織物の仕上げカバーファクター(CF)は、下記の式により計算した。
CF=T×(DT)1/2+W×(DW)1/2
[式中、TおよびWは織物の仕上げ経密度および仕上げ緯密度(本/2.54cm)を示し、DTおよびDWは織物を構成する経糸および緯糸の太さ(dtex)を示す。]
(1)走査型電子顕微鏡(日本電子社製「JSM−6610型」)を使い、織物の表面を120倍の倍率で生地の上から撮影した。経糸5本及び緯糸6本からなる組織が写真内に収まるようにするために、撮影時には、経糸方向に交差部が5個、緯糸方向に交差部が6個、合計30個の交差部が写真に含まれるように撮影位置を調整した。また撮影時には、リップストップタフタ組織のリップ部が複数本の糸を引き揃えて形成されている場合には、1本の糸(経糸または緯糸)が打ち込まれているとみなして撮影位置を調整した。
(2)撮影された写真を用い、以下の基準に基づいて、30個の交差部を、「第1交差部」または「第2交差部」に分類した。参考例を図4(a)に示す。
「第1交差部」:交差部において、単糸の露出表面の少なくとも一部が他の単糸で遮られていないと確認される単糸の本数が、表糸に実際に含まれる単糸の本数と一致している配列。
「第2交差部」:交差部において、単糸の露出表面の少なくとも一部が他の単糸で遮られていないと確認される単糸の本数が、表糸に実際に含まれる単糸の本数未満の配列。
(3)下記式に基づいて、第1交差部の占有率、第2交差部の占有率、第1交差部と第2交差部の合計占有率を計算する。
第1交差部の占有率(%)=(第1交差部の合計数)/交差部の数(30個)×100
第2交差部の占有率(%)=(第2交差部の合計数)/交差部の数(30個)×100
第1交差部と第2交差部の合計占有率(%)=(第1交差部と第2交差部の合計数)/交差部の数(30個)×100
例えば、図4(a)の場合、図4(b)に示すように、第1交差部の合計数は(1)〜(15)の15個、第2交差部の合計数は(i)〜(xv)の15個であるから、第1交差部の占有率は50%(=15個/30個×100)、第2交差部の占有率は50%(=15個/30個×100)、第1交差部と第2交差部の合計占有率は100%(=30個/30個×100)となる。
(4)上記(1)〜(3)を、織物表面の任意の2箇所及び織物裏面の任意の2箇所について行い、合計4箇所の平均値を以って、第1交差部の占有率、第2交差部の占有率、第1交差部と第2交差部の合計占有率とする。
織物の初期通気度(L0)は、JIS L 1096 8.27.1に規定されている通気性A法(フラジール形法)に準拠して測定した。
織物の10回洗濯後の通気度(L10)は、JIS L0217 103法に準拠して測定した。
織物の洗濯は、JIS L 1096織物 寸法変化の103法に規定される条件に準拠して実施した。「洗濯10回後」とは、洗濯−脱水−乾燥を10回繰り返した後の測定結果である。なお乾燥は吊干し乾燥で行った。洗濯10回後においても、通気度は前記方法により測定した。
JIS L1096 B法に準拠して測定した。
1.摩擦試験:図10−1〜図10−3に示されるJIS L0849に用いられる摩擦堅牢度試験機II型(学振形)試験機を用い、市販のベルクロ(登録商標)にクラレ製#A0380オスを使い、織物を幅60mm、縦230mmにカットし、試験片台に両面テープ(TERAOKA ANCHOR BRAND 幅25mm)を貼り、その上に織物を自然な状態でセットする。織物の両端は、試験機の試料止め金具で固定する。上記記載のベルクロ(登録商標)は長さ約60mm、幅約20mmにカットし、試験機の摩擦子に沿って長手方向に固定する。摩擦子に300gの荷重を追加し、合計500gとする。試験片は図11に示す形にカットするが、織物の経方向を測定する場合、織物の経糸を図11の長手方向に平行になるようにカットして試験片台にセットする。また、織物の緯方向を測定する場合は緯糸を図11の長手方向に平行にする。測定長は10cmとし、摩擦速度は、毎分30回往復で、測定回数は200回往復とする。測定一回毎(200回往復毎)に、ベルクロ(登録商標)を新しいものに変更する。
2.磨耗等級の評価:以下の表に基づき摩擦試験後の状態を、引きつれ、毛羽立ち、穴空きの3つの現象について観察及び評価した。経方向・緯方向のそれぞれについて一回ずつ判定を行い、経・緯の評価結果のうち、悪い方の評価結果を「磨耗評価」における評価結果として採用した。すなわち、少なくともいずれかの項目で一つでも「著しく目立つ」ものがあれば、「不可」と判定する(すなわち、毛羽立ち及び穴空きの判定結果が「優」であっても、引きつれが「不可」であれば、磨耗等級は「不可」と判定する)。各状態の評価に際し、引きつれ、毛羽立ち、穴空きが複数生じた場合には、いずれも最も長いものを評価した。判定は優、良、不可の三段階で行い、優を3級、良を2級、不可を1級と数値化した。
相対粘度3.5のナイロン6ポリマーチップを紡糸温度282℃で、吐出孔(図9に示す形状で、L1:0.481mm、L2:0.481mm、L3:0.07mm、角a:54°)を7個備える紡糸口金から溶融紡糸した。2つのゴデットローラーのうち、第1ゴデットローラー速度を2800m/分、第2ゴデットローラーの速度を4000m/分に設定し、第2ゴデットローラーのロール温度を160℃として延伸し、図6に示す略四角形において、角a:54°、辺A及びA’:18.7μm、辺B及びB’:18.7μmの菱形断面の単糸7本からなる繊度22dtexの合成繊維マルチフィラメントを得た。該合成繊維マルチフィラメントを経糸及び緯糸に用い、織経密度171本/2.54cm、織緯密度189本/2.54cmに設定し、タフタ組織(平組織)で製織した。
得られた生機を常法に従ってオープンソーパーを用いて精錬、ピンテンターを用いて190℃で30秒間プレセットし、液流染色機(日阪製作所製「ソフトサーキュラー CUT−NS」)を用い、酸性染料でグレーに染色した後、柔軟仕上げ加工を行って180℃で30秒間中間セットを行った。その後、カレンダー加工(カレンダー圧:180kg/cm、カレンダー速度:30m/分、カレンダー温度:160℃)を織物の片面に1回施した。
得られた生地の経密度、緯密度、洗濯前後の通気度変化率、滑脱抵抗値、磨耗等級のそれぞれを評価した。結果を表2に示す。
実施例2では、得られた織物にカレンダーを施さなかったこと以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
実施例3では、カレンダー加工の条件を変更したこと以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
実施例4では、織密度を変更したこと以外は、実施例2と同様にして織物を得た。
実施例5〜6では、押し出し機での樹脂の吐出量を変更して表に示す合成繊維マルチフィラメントを製造し、得られた合成繊維マルチフィラメントを用いて表に示す条件で織物を作製した。
実施例7では、織組織を図8−1に示すリップストップタフタ組織とし、表に示す条件で織物を作製した。
実施例8では、吐出口の角aを90°に変更し、単糸の断面形状を正方形に変更したこと以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
実施例9では、単糸の略四角形断面を、平行四辺形(辺a及びa’:18.7μm、辺b及びb’:28.0μm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
実施例10では、合成繊維マルチフィラメントの原料として、極限粘度0.50のポリエステルポリマーチップを用い、カレンダー加工の条件を表に示すものとした以外は、実施例1と同様にして織物を得た。
比較例1では、口金の孔の直径を0.2mmに変更し、単糸の断面形状を丸形に変更したこと以外は、実施例1と同様にして織物を得た。図5(a)には比較例1で得られた織物の表面SEM写真を、図5(b)には比較例1で得られた織物における第1交差部の断面SEM写真を示し、図5(c)には、比較例1で得られた織物における第2交差部の断面SEM写真を示す。得られた織物は、単糸が丸型断面形状であるため、図5(a)に示すように単糸が転がって隣接する経糸間及び隣接する緯糸間の隙間がそれぞれ大きくなってしまい、織物の目が粗くなった。そのため洗濯10回後の通気度が悪く、また滑脱抵抗値も値が大きくなってしまい、縫製時にメヨレが発生する品位の良くない生地となった。
比較例2では、単糸の断面形状を丸形に、口金の孔数を20に、単糸の本数を20本にそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして織物を得た。得られた織物は、単糸の本数が多いため、磨耗等級が悪く、また滑脱抵抗値も値が大きくなってしまい、縫製時にメヨレが発生する品位の良くない生地であった。
a、a’、b、b’:略四角形の内角
P、Q、R、S:凸部
T、U、V、W:凹部
L3:凹部の深さ
Claims (12)
- 複数の略四角形単糸からなる経糸と、複数の略四角形単糸からなる緯糸が表裏に重なり合う交差部を有する織物であって、
表糸を構成する略四角形単糸が一列に並んでいる交差部を第1交差部とし、
表糸を構成する単糸のうち60%以上が一列に並んで形成されている単糸列の上または下に、前記表糸を構成する単糸の残部が織物の厚さ方向に重なっている交差部を第2交差部としたとき、
経糸5本及び緯糸6本からなる組織に含まれる30個の交差部中、第1交差部の合計数が10%以上90%以下であり、
前記略四角形単糸の単糸繊度が1.0dtex以上3.1dtex以下であり、
前記略四角形単糸からなる合成繊維マルチフィラメントの総繊度が5.0dtex以上35dtex以下であることを特徴とする織物。 - 前記略四角形単糸が、4本の辺からなる略四角形断面を有する単糸である請求項1に記載の織物。
- 前記略四角形断面が、一組の対角が30°以上90°以下の平行四辺形である請求項2に記載の織物。
- 前記略四角形断面が、4本の辺の長さが全て等しい菱形である請求項2または3に記載の織物。
- 前記合成繊維マルチフィラメントの含有率が、織物100質量%中40質量%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の織物。
- カバーファクターが1450以上2400以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の織物。
- JIS L1096 8.27.1 A法のフラジール形法で測定される初期通気度が2.0cc/cm2/s以上25cc/cm2/s以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の織物。
- JIS L1096 8.27.1 A法のフラジール形法で測定される初期通気度(L0)に対するJIS L0217 103法で測定される洗濯10回後の通気度(L10)の変化率(L10/L0)が、0.8以上1.8以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載の織物。
- JIS L1096 B法による12kg荷重での滑脱抵抗値が、経方向及び緯方向のそれぞれで4.0mm以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の織物。
- 200回磨耗後の磨耗等級が2級以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の織物。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の織物を側地とするウィンドブレーカー。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の織物を側地とするダウン製品。
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