JP5847690B2 - 透明性の高い織物 - Google Patents

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Description

本発明は、軽量薄地で引裂強力が大きく、かつ洗濯後も低通気度である織物に関するものであり、より詳しくは、ワタやダウンの吹き出しを抑制した織物であって、特にダウンジャケット、ダウンウエア、ふとん、寝袋などの側地に好適に用いられる織物に関するものである。
ダウンウエアや羽毛ふとんの側地に用いられる生地は、ワタやダウン(以下、両者を合わせて「中綿」と称する)の吹き出しを抑制するために織物強度が高いことが要求される。従来のダウンウエアの側地には、機械特性に優れているポリエステルマルチフィラメント、ナイロンマルチフィラメント、またはこれらの複合合繊織物が使われてきたが、ダウンの吹き出しを抑制するためには織物を緻密な構造にする必要があり、織物が硬くなるという問題があった。
一方で、これらの側地は、防寒用途の観点から、通気度を低く制御されていなければならない。また、着心地の観点からは、軽量であることも求められる。
そこで、ダウンジャケット等の側地は、これらの要求に応えるため、改良が検討されている。例えば、特許文献1には、高い引裂強力を有し、薄地で軽量な織物として、繊度10dtex〜30dtexのベース糸と繊度20dtex〜60dtexの補強糸で構成され、カバーファクターが1300〜1700であり、引裂強力が8N以上である織物が開示されている。また、特許文献2には、引裂強力と防風性に優れた軽量な織物として、目付が65g/m2以下の織物であって、単繊維の横断面形状が2箇所以上のくびれ部を有する断面扁平度2〜6の扁平断面を用いた織物が開示されている。加えて、特許文献3には、軽量、薄地かつダウンプルーフ性に優れ、柔らかさを具備したふとんカバーとして、合成繊維マルチフィラメントで構成され、該合成繊維マルチフィラメントがW型またはV型の異形断面糸であり、引裂強度が6N〜15Nの織物が開示されている。
特開2004−316015号公報 特開2008−2039号公報 特開2005−139575号公報
ところで、最近では、単に低通気性なだけでなく、より軽量なものや、風合いが柔らかく、意匠性やファッション性の高いものが要求されるようになってきた。しかし、ダウンジャケット、寝布団、寝袋等に使用されるダウン、フェザー等の中綿は、通常意匠性を高めるための加工がされておらず、これらは決して見た目に美しいとは言えず、従来では、中綿を極力見せないように縫製デザインや使用する側地の色や柄を変えることで、衣服や寝具等のファッション性を高めてきた。
衣服のファッション性を高める方法として、例えばパソコンや電子機器では筐体をあえて透明性の高いものにして、中の電子機器が透けて見えるようにしたデザインが好評であったように、本発明者らは、従来の考え方とは逆に、側地の透明度を高めて中綿を積極的に見せることで衣類の意匠性を高めることに思い至った。衣類の側地を透明にすれば、例えば、中綿を着色して、衣類の外側から有色のダウンを見せることにより意匠性を高めた衣類や、高級品として名高い純白のマザーグースから得られる中綿を見せて高級感を誇示する衣類などが得られる。
しかし、特許文献1の織物には、ベース糸だけでなく補強糸も使用されており、この補強糸が経筋に見えたり、緯糸が斑状に見えてしまうため、審美性の観点からは満足して使用できるものではなかった。また、特許文献2の織物は、くびれ部を有する繊維を使用しており、この繊維は表面での反射や屈折が大きいため、織物の透明性は充分に向上しない。更に、特許文献3の織物には、W型やV型断面の繊維が使用されていることから、光の反射や屈折が大きくなるため、織物の透明性は低いものであった。
本発明者らが検討したところによると、織物を透明に仕上げるためには、(1)織物を構成する繊維表面での光の反射を少なくすること、(2)繊維表面や繊維内部における光の屈折や乱反射を低減すること、(3)織物を薄く仕上げること、が重要なファクターとなることが分かった。しかし、繊維表面等での光の反射や屈折等を低減するために、モノフィラメントの繊度を上げ、繊維の表面積を低下させたとしても、モノフィラメントの繊度を上げたことにより、織物が硬くなったり、織物が厚くなったりするため問題があった。また、織物を構成するモノフィラメントの数を減らすことにより、光の反射を防止し、織物を薄く仕上げようとしても、織物の通気性が上がってしまい、ダウンプルーフ性が低下してしまう。
この様な状況下、本発明では、従来にない中綿が透けて見える衣服や布団を提供するために、中綿が透けて見える程透明度が高く、衣服や布団の側地として必要な強度を有し、更に通気度の低い織物を提供することを課題として掲げた。
本発明者らが、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、織物を構成するモノフィラメントの形状を扁平断面とし、この扁平度を4〜9という高いレベルで制御して、モノフィラメント表面をより平坦なものとすることにより、光の反射や屈折等を低減できることが分かった。これにより、従来の織物に比べて、飛躍的に織物の透明性を向上することが可能となった。また、前述した高い扁平度を有するモノフィラメントを用いれば、合成マルチフィラメントの中でこれらが互いに重なりながら、織物全体に平行に横に広がった状態を維持できるため、織物の通気度を低く保つことができる。更に、洗濯等の際に生じる外力によって織物に力がかかった場合でも、隣接するモノフィラメント同士間の摩擦力により、繊維の動きが拘束されるため、繊維間に空隙が生じることを抑制でき、長期に亘って、織物の低通気度を保つことが可能となる。また、カレンダー加工を行うことにより、モノフィラメントの扁平断面を揃って重なった構造とすることにより、同じ繊度の丸断面糸に比べて織物の曲げ剛性が低下するため、柔らかく仕上げることができる。
すなわち、本発明者らは、織物を構成する合成マルチフィラメントとして、扁平度が4〜9であるモノフィラメントを80質量%以上配合されたものを使用し、織物の少なくとも片面にはカレンダー加工を施すことによって、織物の透明性を向上させながら、織物の通気度を低く制御し、更に、合成マルチフィラメントの繊度や織物のカバーファクターを調整することにより、側地として必要な強度と低通気度を有する織物が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明に係る織物は、扁平モノフィラメントを含む合成マルチフィラメントから形成される織物であって、合成マルチフィラメントの繊度が5〜44dtexであり、合成マルチフィラメント100質量%中、扁平度4〜9のモノフィラメントの使用量が80質量%以上であり、織物の少なくとも片面にはカレンダー加工が施され、可視光透過率が30〜70%であり、カバーファクターが1300〜2490であることを特徴とする。前記合成マルチフィラメント中の酸化チタンは0〜0.5質量%であり、扁平モノフィラメントの繊度が0.7〜3.1dtexであることが望ましい。更に、合成マルチフィラメントの破断強度が3〜7cN/dtexであり、織物の経方向及び緯方向の引裂強力がそれぞれ6〜50Nであることがより望ましい態様である。
加えて、本発明には、前述した織物を側地として用い、有色の中綿を使用することを特徴とするダウンジャケット、及び前述した織物を側地として用い、白色の中綿を使用することを特徴とするダウンジャケットも包含される。
本発明によれば、織物を構成する繊維として、扁平度が4〜9のモノフィラメントを用い、織物の少なくとも片面にはカレンダー加工を施した上で、更に、合成マルチフィラメントの繊度や織物のカバーファクターを調整することにより、透明度が高く、衣服や布団の側地として必要な強度を有し、更に通気度の低い織物が得られる。
本発明の織物の断面のSEM写真である。 本発明の織物に用いられるリップストップタフタ組織の一例を模式的に例示する説明図である。
≪モノフィラメント≫
まず、本発明で用いられるモノフィラメントについて具体的に説明する。
<扁平度>
本発明で用いられるモノフィラメントは断面形状が扁平であり、特に扁平度が4〜9であることを特徴とする(以降、断面が扁平度4〜9のモノフィラメントを「扁平モノフィラメント」と称する)。扁平モノフィラメントの扁平度は、より好ましくは5以上であり、更に好ましくは6以上であり、特に好ましくは6.5以上であり、より好ましくは8以下であり、更に好ましくは7.5以下である。扁平モノフィラメントの扁平度を前記範囲に調整することにより、作製される合成マルチフィラメントにおいて、扁平モノフィラメントを平行に引き揃えることができる。これにより、織物に仕上げた際に、織物の透明度を向上させることができる。すなわち、扁平モノフィラメント同士が平行に密着して重なり合うことで、マルチフィラメント内の合成繊維と空気との界面より、合成繊維同士の界面が増え、しかも扁平モノフィラメントが織物平面におおよそ平行に重なることで、光がマルチフィラメント内を通過する際の屈折や反射を低減することが可能となるため好ましい。また、扁平モノフィラメントが平行に重なるため、扁平モノフィラメントの接触面積が大きくなる。扁平モノフィラメントの接触面積が大きくなると、扁平モノフィラメント間に作用する摩擦力により、洗濯による扁平モノフィラメントの動きが拘束されるため、長期間の使用による織物の通気性低下を防止できる。一方、扁平モノフィラメントの扁平度が4未満である場合は、扁平モノフィラメント同士が織物の面に対して平行に重なり合うことが難しくなる。その結果、織物の透明性を維持することが困難となったり、繊維間に生じる摩擦力が小さくなるため、洗濯時等に生じる力により、扁平モノフィラメントが移動してしまい、織物の低通気度を維持することが難しくなる。また、扁平度が小さいとマルチフィラメントが扁平断面を揃えて重なり難くなるため、織物を曲げ柔らかく仕上げることが難しくなる。また、扁平度が9より大きくなると、得られる織物の引裂強力が低下したり、製織中に扁平モノフィラメントの摩擦が大きくなることにより、安定な生産が難しくなる。
なお、本発明において扁平モノフィラメントの扁平度は、モノフィラメントの断面において、長径(最も長い径)/短径(最も短い径)により算出されたものとして定義する。
<単糸繊度>
扁平モノフィラメントの繊度は、0.7dtex以上であることが好ましく、より好ましくは1.0dtex以上であり、更に好ましくは1.2dtex以上であり、3.1dtex以下であることが好ましく、より好ましくは2.5dtex以下である。扁平モノフィラメントの繊度を前記範囲に調整することにより、織物を構成する繊維間から中綿が出てくることを防止(すなわち、織物にダウンプルーフ性を付与)することができる。また、モノフィラメントが適度な太さを有することにより、側地として必要な引裂強力を有する織物が得られる。加えて、繊維間が密になることにより、通気性の低い織物が得られる。一方、扁平モノフィラメントの繊度が0.7dtexより小さいと、得られる織物の低通気度を維持することが難しく、また十分な引裂強力が得られない虞がある。一方、扁平モノフィラメントの繊度が3.1dtexを超えると、織物の透明度が低下したり、織物の風合が硬くなったりする。
<繊維の素材>
扁平モノフィラメントに使用する素材は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612或いはその共重合体などのポリアミド類;ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール等の繊維形成性ポリマー;等が挙げられる。特に、ポリアミド類であれば、モノフィラメントの断面が扁平であっても、織物の風合いが柔らかくなるため好ましい。
前記扁平モノフィラメントに使用する素材の極限粘度は、ポリエステルを用いる場合は、0.58以上であることが好ましく、より好ましくは0.6以上であり、更に好ましくは0.62以上であり、1以下であることが好ましく、より好ましくは0.9以下であり、更に好ましくは0.8以下である。素材の極限粘度を前記範囲にすることにより、適当な破断強度を有する扁平モノフィラメントが得られ、且つ、生産コストを安く抑えることができる。また、素材の極限粘度が特に0.6以上であれば、扁平断面にする場合、均一な断面形状を安定的に生産することができる。一方、素材の極限粘度が0.58未満であると、扁平モノフィラメントは丸断面のモノフィラメントに比べて破断強度が弱くなる場合もあるため、破断強度不足による製品の引裂強力や破断強度の低下、破断伸度不足による加工操業性の悪化、並びに製品耐久性の悪化が起りやすい。また、素材の極限粘度が1を超えると、扁平モノフィラメントの生産に多大なコストを要するため、実用性に欠けるものとなる。
扁平モノフィラメントに使用する素材の相対粘度は、例えばナイロンの場合、2.5以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、3.2以上であることが更に好ましく、4.5以下であることが好ましく、4.2以下であることがより好ましく、4以下が更に好ましい。素材の相対粘度が2.5以上であれば、得られる扁平モノフィラメントは適当な破断強度を発揮できる。また、特に素材の相対粘度が3以上であれば、高い扁平度を有する繊維を安定して紡糸できるようになる。一方、素材の相対粘度が2.5未満であると、扁平モノフィラメントは丸断面のモノフィラメントに比べて破断強度が弱くなる場合もあるため、破断強度不足による製品の引裂強力、破断強度の低下、破断伸度不足による加工操業性の悪化、並びに製品耐久性の悪化が起りやすい。一方、素材の相対粘度が4.5を超えると、製糸操業性が悪くなり、生産コストが非常に高額になってしまうため好ましくない。
<ダル化剤濃度>
扁平モノフィラメントには、必要に応じて、吸湿性物質、酸化防止剤、つや消し剤、紫外線吸収剤、抗菌剤等を単独または複合して添加しても良いが、透明性を低下させないよう添加剤の種類や添加濃度に注意する必要がある。特に、本発明では、ダル化剤としての酸化チタンは極力使用しないことが好ましい。しかし、製糸性を向上させる目的から、少量を添加することは差支えない。酸化チタンの添加量は、例えば、合成マルチフィラメント100質量%中(即ち、合成マルチフィラメントを構成する樹脂全量100質量%中)、0〜0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜0.1質量%であり、更に好ましくは0〜0.05質量%である。添加量が0.5質量%を超えると透明性が低下することが懸念される。
<扁平モノフィラメントの製造方法>
前記扁平モノフィラメントの製造方法は、モノフィラメントの扁平度を所定の範囲内に調整できれば、特に限定されるものではない。扁平モノフィラメントは、例えば、I字型の吐出口を備えた紡糸口金等を用いて、原料ポリマーを溶融紡糸することにより、適宜製造するとよい。
≪合成マルチフィラメント≫
次に、本発明で用いられる合成マルチフィラメントについて具体的に説明する。本発明で用いられる合成マルチフィラメントは、前述した扁平モノフィラメントを含む複数の繊維を束ねて得られる繊維である。
<繊度(トータル繊度)>
合成マルチフィラメントの繊度は、5dtex以上であり、より好ましくは10dtex以上であり、更に好ましくは25dtex以上であり、44dtex以下であり、より好ましくは40dtex以下であり、更に好ましくは33dtex以下である。合成マルチフィラメントの繊度を前記範囲に調整することにより、透明性が高く、かつ軽量薄地で必要な強度を有する織物が得られる。一方、合成マルチフィラメントの繊度が、5dtexより小さいと必要な強度が得られない場合がある。また、44dtexより大きいと、織物が嵩高なものとなってしまい透明性と軽量薄地を両立した織物が得られない。
1本の合成マルチフィラメントには、前述した扁平モノフィラメント以外の、断面形状の異なるモノフィラメント(例えば、断面が扁平であるものの扁平度が所望の範囲から外れるモノフィラメントや、扁平以外の異型断面形状を有するモノフィラメントなど)が使用されていてもよい。しかし、織物の透明性は、1本の合成マルチフィラメント中に含まれる扁平モノフィラメントの割合が増えるほど良好なものとなるため、1本の合成マルチフィラメント100質量%中の、前記扁平モノフィラメント量は、少なくとも80質量%以上とする。扁平モノフィラメントの使用量は、85質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。
<扁平モノフィラメントの本数>
1本の合成マルチフィラメントを構成する扁平モノフィラメントの数は、合成マルチフィラメントの繊度(総繊度)と、扁平モノフィラメントの繊度の関係により適宜選定できるが、例えば、2本以上であることが好ましく、3本以上であることがより好ましく、更に好ましくは5本以上であり、35本以下であることが好ましく、25本以下であることがより好ましく、更に好ましくは15本以下である。扁平モノフィラメントの本数が前記範囲内であれば、織物にある一定の力がかかるときに、この力に対する応力が1本の扁平モノフィラメントに集中することなく、複数の扁平モノフィラメントに分散する。これにより、1本の扁平モノフィラメントにかかる応力を軽減することができるため、引裂強力が向上する。
<合成マルチフィラメントの破断強度>
合成マルチフィラメントは、その破断強度が高い程、衣料・寝具用途として適している。合成マルチフィラメントの破断強度は、例えば、2.7cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは3cN/dtex以上であり、更に好ましくは3.3cN/dtex以上であり、特に好ましくは3.5cN/dtex以上である。合成マルチフィラメントの強度が2.7cN/dtex以上であれば、高扁平度においても適当な引裂強力の織物が得られる。また、合成マルチフィラメントの破断強度の上限は特に限定されるものではないが、通常7cN/dtex以下であり、6cN/dtex以下、更には5cN/dtex以下であっても、衣料・寝具用途として充分な強度を与えることができる。
<合成マルチフィラメントの破断伸度>
合成マルチフィラメントは、所定の破断伸度を有することが望ましい。合成マルチフィラメントの破断伸度が高まると、織物が引裂かれるときに織物にかかる応力が、引裂かれようとしている1本の糸に集中することなく、複数の糸に分散するようになる。そして、結果として、糸1本あたりにかかる応力が軽減するため、引裂強力が向上するという効果を期待できる。具体的には、合成マルチフィラメントの破断伸度は、例えば、35%以上であることが好ましく、より好ましくは38%以上であり、更に好ましくは40%以上であり、50%以下であることが好ましく、より好ましくは48%以下であり、更に好ましくは45%以下である。合成マルチフィラメントの破断伸度が35%より低いと、織物が引裂かされるときにかかる応力が、引裂かれようとしている1本の糸に集中しやすくなり、織物の引裂強力が低下する虞がある。また、合成フィラメントの破断伸度が50%よりも高いと、製織の高速化、高密度化に伴う各種接糸部品との摩擦抵抗による強い張力により、原糸が伸びきってしまい、断糸の発生頻度が増加しやすい。更に、原糸が伸びてしまうと、破断強度も低くなってしまい、織物にしたときの引裂強力が低下するという問題も生じ得る。
<製糸方法>
合成マルチフィラメントの製糸方法については、特に限定されないが、例えば、ポリアミド系マルチフィラメントやポリエステル系マルチフィラメントでは、スピンドロー方式による紡糸延伸連続装置、または紡糸装置と延伸装置を用いて2工程で行うことによって製造可能であり、例えばスピンドロー方式の場合、紡糸引取りゴデットローラの速度を1500m/分〜4000m/分に設定するとよい。
≪織物≫
以下、本発明の織物について具体的に説明する。
本発明の織物は、前述した合成マルチフィラメント(即ち、扁平モノフィラメントを含む合成マルチフィラメント)を含むものであり、前記合成マルチフィラメントが、織物100質量%中、50質量%以上の割合で使用されていることが望ましい。合成マルチフィラメントの使用量は多い程好ましく、具体的には、織物100質量%中、前述した合成マルチフィラメントが、70質量%以上使用されていることが好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは98質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。合成マルチフィラメントの使用量を増やすことにより、織物をより透明に仕上げることが可能となるため好ましい。
織物の織組織は特に限定されるものではなく、平組織、綾組織、朱子組織等任意の組織を用いることができる。中でも、織物の通気度を抑えることができることから、織組織としては、平組織を採用することが好ましい。更に好ましくは織物の引裂強力を高めることができるリップストップタフタや、ダブルリップが好適に採用される。
また、織物の製造に用いる織機も特に限定されるものではなく、ウォータージェットルーム織機、エアージェット織機、レピア織機等の各種織機を適宜使用するとよい。
織物の経糸密度は、140〜380本/2.54cmであることが好ましく、より好ましくは170〜250本/2.54cmである。また、織物の緯糸密度は、90〜350本/2.54cmであることが好ましく、より好ましくは120〜250本/2.54cmである。なお、生機密度と仕上げ密度は同一であっても、異なっていてもよい。
<カバーファクター(CF)>
得られる織物のカバーファクター(CF)は、1300〜2490とする。カバーファクター(CF)は、1600以上が好ましく、より好ましくは2000以下である。得られる織物のカバーファクターを前記範囲にすることにより、軽量薄地で低通気度を有する織物が得られる。織物のカバーファクターが1300より小さいと、薄く軽い織物が得られるが、低通気度を満足するものになりにくい。また、2490を超えると、低通気度を満足するものの、織物が重くなりやすく透明性も低下してしまう。
ここで、織物のカバーファクター(CF)とは、下記の式により計算されたものである。
CF=T×(DT)1/2+W×(DW)1/2
[式中、TおよびWは織物の経密度および緯密度(本/2.54cm)を示し、DTおよびDWは織物を構成する経糸および緯糸の太さ(dtex)を示す]
製織した織物は、一般的な薄地織物の加工機械を使って、精練、リラックス、プリセット、染色、仕上げ加工等をする。
<カレンダー加工>
仕上げ加工の際、本発明では、織物の少なくとも片面にカレンダー加工を施すことが必要である。カレンダー加工を施すことにより、扁平モノフィラメントが圧縮されるため、織物表面で重なりあうように、織物表面の個々の扁平モノフィラメントを、繊維断面が横に広がるように配列させることができ、個々の扁平モノフィラメントを接触面積が多い状態で重ね合わせることが可能となる。これにより、織物の透明性が格段に向上するとともに、洗濯後であっても、扁平モノフィラメント間のずれを防止できるため、長期に亘って、織物の低通気性を維持できる。また、カレンダー加工を行うことにより、モノフィラメントの扁平断面を揃って重なった構造とすることができる。そのため、同じ繊度の丸断面糸に比べて、織物の曲げ剛性を低下させることができ、織物を柔らかく仕上げることができる。
カレンダー加工は、織物の片面のみに施してもよく、両面に施すことも可能である。ただし、カレンダー加工を両面に施すと、織物表側の表面に好ましくない光沢感が出たり、風合いが硬くなったり、更に生地の肌離れ性が悪くなって濡れたときに生地が肌に貼り付いたような不快な感触となることがあるため、そのような風合いを好まない場合は、片面のみに施すことが好ましい。また、カレンダー加工の回数は特に限定されず、織物表面の横に広がるように、揃った状態で、扁平モノフィラメント同士が密接に重なることができれば、1回のみでも複数回行ってもかまわない。
カレンダー加工の温度は特に限定されないが、使用素材のガラス転移温度より50℃以上高いことが好ましく、80℃以上高いことがより好ましく、使用素材の融点より20℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましい。カレンダー加工の温度を前記範囲に調整することにより、低通気度と高引裂強力を両方維持できる織物が得られる。一方、前記カレンダー加工の温度が使用素材のガラス転移温度から50℃高い温度より低いと、扁平モノフィラメントの圧縮度合が弱く、低通気度を有する織物が得にくくなる。また、使用素材の融点から−20℃より高いと、扁平モノフィラメントの圧縮度合は高まるが、織物の引裂強力が著しく低下することがある。例えば、ポリアミドを素材とする場合、カレンダー加工の温度は、130℃〜200℃であることが好ましく、140℃〜190℃であることがより好ましい。また、ポリエステルを素材とする場合、カレンダー加工の温度は160℃〜240℃であることが好ましい。
カレンダー加工の圧力は、0.98MPa(10kgf/cm2)以上であることが好ましく、1.96MPa(20kgf/cm2)以上であることがより好ましく、5.88MPa(60kgf/cm2)以下であることが好ましく、4.90MPa(50kgf/cm2)以下であることがより好ましい。カレンダー加工の圧力を前記範囲に調整することにより、織物は、低通気度と引裂強力の向上を発揮できるようになる。一方、前記カレンダー加工の圧力が0.98MPa(10kgf/cm2)より小さいと、扁平モノフィラメントの圧縮度合が弱く、低通気度を有する織物が得られないことがある。また、5.88MPa(60kgf/cm2)より大きいと、扁平モノフィラメントが過度に圧縮されて、織物の引裂強力が著しく低下する虞がある。
また、カレンダーロールの材質は特に限定されないが、片方のロールは金属製であることが好ましい。金属ロールであれば、ロール自体の温度を調節することができる上、生地表面を均一に圧縮することが可能となる。もう一方のロールの材質についても、特に限定されるものではないが、金属製または樹脂製が好ましい。樹脂製の場合は、ナイロン製が好ましい。
<染色加工>
本発明では製織後の織物を染色することも可能である。色は用途に応じて適宜選定するとよい。濃色になると織物の可視光透過性が低下して、中綿が外から見えにくくなることも懸念されるため、特に織物の透明性を生かすには、白系;ベージュ系;グレー系;ピンク系;等の明度の明るい色で織物を染色するとよい。このように本発明では、織物を明るい色で染色することが望ましい一方で、濃い色、例えば、濃ブルーや濃グレー等による染色加工を施すことも可能である。本発明によれば、これらの濃い色で織物を染色した場合であっても、織物を透明に仕上げることができる。
<撥水加工>
本発明では、製織された織物を撥水剤で処理することも可能である。前記撥水剤は一般的な繊維用撥水加工剤でよく、例えば、シリコーン系撥水剤、パーフルオロアルキル基を有するポリマーからなるフッ素系撥水剤、パラフィン系撥水剤が好適に用いられる。中でもフッ素系撥水剤(特に、パーフルオロアルキル酸のアクリレート重合物)を用いると、被膜の屈折率を低く抑えることができ、更に、繊維表面における光の反射を低減できるため特に好適である。撥水加工の方法は、パディング法、スプレー法、プリント、コーティング、グラビア法等、一般的な方法を用いることができる。
なお、前記フッ素系撥水剤にはフッ素系の濃染化剤や撥水・撥油剤も包含される。
<その他の加工>
また前記織物には、必要に応じて、コーティング加工、ラミネート加工等の各種機能加工、風合いや織物の強力を調整するための柔軟仕上げや樹脂加工、帯電防止加工を実施することができる。柔軟仕上げに用いる柔軟剤としては、例えば、アミノ変性シリコーンや、ポリエチレン系、ポリエステル系、パラフィン系柔軟剤等が例示できる。また、これらを用いた柔軟加工や、シリコーン加工を仕上げのための後加工として行うことができる。更に、樹脂加工に使用する樹脂加工剤としては、メラミン樹脂、グリオキザール樹脂、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の各種樹脂が例示できる。
<可視光透過率>
本発明の織物が所望の透明性を有していることは、可視光透過率の値によって確認することができる。本発明では、織物の可視光透過率は30%以上であり、好ましくは35%以上であり、より好適には40%以上であり、可視光透過率は70%以下であり、好ましくは65%以下であり、より好適には55%以下である。可視光透過率を70%より高くすると、織物の透明度は向上する。しかしこのように高い可視光透過率を有する織物を製造するには、合成マルチフィラメントの密度を下げることを要求されることも考えられ、この様な織物では中綿が吹き出す虞があるため好ましくない。また可視光透過率が30%未満の織物では、所望の透明性を発現することが難しい。
<L*値>
本発明の織物はどのような色に染色することも可能であるが、織物をより透明に仕上げるためには、織物は白〜中色域の明るい色が好ましい。例えば、織物のL*値は、37以上が好ましく、より好ましくは45以上であり、更に好ましくは70以上であり、98以下であることが好ましく、より好ましくは95以下である。なおL*値とは、1976年に国際照明委員会(CIE)で規格化され、日本でもJIS Z 8729に採用される値である。また、(L*a*b*)は、(CIE)1976(L*a*b*)表色系と呼ばれ、係る表色系における明度をL*で表す。
<目視透明性>
本発明の織物は、後述する方法で測定される目視透明性が3級以上であることが好ましく、より好ましくは3.5級以上であり、更に好ましくは4級以上である。上限は特に限定されず、最も高い5級が望ましい態様である。目視透明性が前記範囲内であれば、織物の透明度がより高まり、中綿が表面に見えやすい織物が得られる。
<引裂強力>
織物のペンジュラム法による引裂強力は、必ずしも限定されるものではないが、衣料用や羽毛製品の側地としての要求性能から、経方向及び緯方向のいずれも6N以上であることが好ましく、より好ましくは8N以上であり、更に好ましくは10N以上であり、上限は、例えば、50N程度、若しくは40N程度であっても、織物に所望の強度を付与することができる。織物の引裂強力を前記範囲に調整することにより、軽量薄地で必要な引裂強力を有する織物が得られる。引裂強力が6Nより小さいときは、用途によっては、織物の引裂強力が不足する場合がある。また引裂強力が50Nを超えるような強度を付与するためには、フィラメントの繊度を大きくする必要があり、それに伴って生地が分厚く硬いものとなる傾向にあるため好ましくない。
<通気度>
織物のフラジール形法による通気度は、洗濯前の初期値で、1.5cc/cm2/s以下であることが好ましく、1cc/cm2/s以下であることがより好ましい。洗濯前の通気度が1.5cc/cm2/s以下であれば、ダウンプルーフ性に優れる織物が得られる。
また、織物を10回洗濯した後の通気度は、1.4cc/cm2/s以下であることが好ましく、1.2cc/cm2/s以下であることがより好ましい。洗濯10回後の通気度が1.4cc/cm2/s以下であれば、洗濯中の織物からの中綿の抜けが起こることなく、洗濯耐久性に優れているといえる。
更に、洗濯前、10回洗濯後のいずれにおいても通気度の下限は限定されるものではない。しかし、一定の通気性がなければ、衣服内の圧力を調整することが困難となることから、洗濯前及び10回洗濯後の通気度は0.1cc/cm2/s以上であることが好ましく、0.2cc/cm2/s以上がより好ましい。
<目付>
織物の目付は、10g/m2以上であることが好ましく、15g/m2以上であることがより好ましい。また60g/m2以下であることが好ましく、55g/m2以下であることがより好ましい。得られる織物の目付を前記範囲にすることにより、薄地軽量で低通気性を有する織物が得られる。一方、前記織物の目付が10g/m2より小さいと、薄くて軽い生地に仕上がるが、低通気性を有する織物が得られない。また、60g/m2を超えると、低通気度の織物が得られるが、厚い生地になり、織物を軽く仕上げることが難しい場合がある。
以下、本発明により得られる織物について、図面(SEM写真)に基づき説明する。
図1は、本発明の織物を例示する断面のSEM写真である(カレンダー加工後)。カレンダー加工後の織物は、扁平度の高い扁平モノフィラメント同士が平行に引き揃えられ、圧縮された形態となっている。このように扁平度の高いモノフィラメントが平行に引き揃えられることにより、モノフィラメント同士の境界面や繊維と空気の境界面での乱反射や屈折を極力低く制御することが可能となる。これにより、本発明の織物は、高い透明性を発揮することができる。また、モノフィラメント同士の接触面積が大きいため、洗濯中に織物を揉んだとしても、モノフィラメントは他のモノフィラメントにより動きが拘束されているため、織物を構成する繊維間に空隙ができにくく、低通気性を保つことが可能となる。
本発明の織物は、例えば、ダウンジャケットや布団等の側地として用いることができる。本発明の織物は透明性に優れるため、従来の側地とは異なり、中綿を見せることができる。そこで、これらの側地に本発明の織物を用い、有色の中綿を詰め、敢えてこの中綿を見せることにより、これまでにはない斬新で且つ審美性に優れた衣服を提供できるようになる。使用される中綿は、特に限定されないが、例えば、羽毛(ダウン)、羽根(フェザー、スモールフェザー)、綿、ポリエステル等の合成樹脂を原料とする繊維等を好適に使用でき、これらの中綿を混合して使用することもできる。また、衣服の審美性を高める点から、有彩色の中綿を少なくとも一部に使用していることが望ましい。有彩色の中綿としては、着色加工が施された中綿を使用することも可能である。
また、中綿は有色のものに限られず、白色の中綿も使用することができる。例えば、ホワイトグースから取得されるダウンは高級品として名高い。そのため、本発明の側地を用いて中綿としてこの高級ダウンを使用していることを誇示することもできる。例えば、ホワイトグース等の家禽から取得される高級な白色の中綿を詰めることも可能である。家禽から取得される白色の中綿を使用する場合、白色の中綿(ダウン)は、嵩高性(フィリングパワー)として16.5cm以上あるものが好ましく、より好ましいものは18.0cm以上である。尚、上記嵩高性の数値は下記の方法で測定される。
[測定方法]
中綿の嵩高性;内径29cm、高さ50cmのシリンダーに、中綿を30g入れ、120gの重りを2分間のせた後、重りを取り除いて復元した中綿の高さを測定する。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
<扁平度>
VH−Z450型顕微鏡およびVH−6300型測定機(KEYENCE社製)を用い、1500倍の倍率で、モノフィラメントの断面の長径(最も長い径)および短径(最も短い径)をそれぞれ測定し、モノフィラメントの断面の長径(最も長い径)/短径(最も短い径)を算出した。3本のモノフィラメントについて同様の測定を行い、これらの平均値をモノフィラメントの扁平度とした。
<繊度(総繊度・単糸繊度)>
合成マルチフィラメントの繊度(総繊度)には、100m長のマルチフィラメントのカセを3つ作製し、各々の質量(g)を測定し、算出される平均値を用いた。この平均値を100倍し、10000m当りに換算することにより、マルチフィラメントの繊度(総繊度、dtex)を求めた。
また扁平モノフィラメント(単糸繊度)の繊度は、前述した合成マルチフィラメントの繊度を、合成マルチフィラメントを構成する扁平モノフィラメント数で除した値とした。
<極限粘度>
極限粘度(IV)は、p−クロロフェノールとテトラクロロエタンからなる混合溶媒(p−クロロフェノール/テトラクロロエタン=75/25)を用い、30℃で測定した極限粘度〔η〕を、下記の式によりフェノールとテトラクロロエタンからなる混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40)の極限粘度(IV)に換算したものである。
IV=0.8325×〔η〕+0.005
<相対粘度>
96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸中にポリマー濃度が10mg/mlになるように試料を溶解させてサンプル溶液を調製した。20℃±0.05℃の温度で水落下秒数が6秒から7秒のオストワルド粘度計を用い、20℃±0.05℃の温度で、調製したサンプル溶液20mlの落下時間T1(秒)及び試料を溶解するのに用いた96.3±0.1質量%の試薬特級濃硫酸20mlの落下時間T0(秒)を、それぞれ測定した。使用する素材の相対粘度(RV)は下記の式により算出した。
RV=T1/T0
<破断強度・破断伸度>
インストロンジャパン社製の4301型万能材料試験機を使用し、合成マルチフィラメントの総繊度(dtex)に対し1/33の荷重(gf)を加え、合成マルチフィラメントの試料長(糸長)20cm、引張速度20cm/分の条件下でS−Sチャートを作成した。1試料に対し測定を3回実施して、破断強度及び破断伸度の値をそれぞれのチャートより読み取った。得られた値を平均することにより、破断強度・破断伸度を求めた。
<目付>
織物の目付は、JIS L 1096 8.4に規定されている単位面積あたりの質量に準拠して測定した。
<カバーファクター>
織物のカバーファクター(CF)は、下記の式により計算した。
CF=T×(DT)1/2+W×(DW)1/2
[式中、TおよびWは織物の経密度および緯密度(本/2.54cm)を示し、DTおよびDWは織物を構成する経糸および緯糸の太さ(dtex)を示す]
<可視光透過率>
分光光度計(島津製作所製 UV−3100PC)により、380nm〜780nmの波長域の可視光透過率を測定した。光度計に取付けた積分球付属装置にはISR−3100積分球内径60mmφ、標準白板は硫酸バリウムを使用した。試料を積分球付属のサンプルホルダーに取付けるために、タテ6cm×ヨコ3cmの長方形の中央にタテ2.5cm×ヨコ1cmの長方形スリットを切り抜いた厚紙を2枚用意した。サンプルとしてタテ6cm×ヨコ3cmの織物を切り取り、用意した2枚の厚紙に挟み込んでからサンプルホルダーに取り付けた。そのサンプルホルダーを積分球の入射光側の透過率測定用の取付け位置に、サンプルの金属層形成面を分光光度計の光源側に向けて取付けて測定を行った。尚、このスリットを切り抜いた厚紙を使う目的は、サンプルにシワがよって測定値の精度低下を防ぐためである。同じ試料からサンプルを3個作成し、3個の測定データの平均値で評価した。
<目視透明性>
標準光源装置の奥壁面中央部にJIS染色堅牢度試験用グレースケールを上側に45°で立て掛け、グレースケール面に測定サンプルを接触させるように覆って、測定サンプルより更に50cm前面からグレースケールをのぞき込み、グレースケールの白/グレーの境界線が視認できるかどうかを視認性の評価とした。視認できた最低のグレースケール級数で級判定し、測定箇所を変えて3回測定を行い、得られた級数を平均し、これを目視透明性の評価に用いた。
標準光源装置:VeriVide社製 VeriVide CAC60 (Apparatus for Standard Visual Assessment of Colour by Reflectance & Transmission)
光源:Artificial Daylight BS950PEL、F20T12/D65(VeriVide社製)
<L*値>
測定生地を4枚重ねにし、下記条件で同じ場所を3回測定して平均値を算出した。
測色機:コニカミノルタ社製CM−3700d、測定径:8mmφ、光源:D65、視野:2°
<引裂強力>
織物の引裂強力は、JIS L 1096 8.15.5に規定されている引裂強さD法(ペンジュラム法)に準拠して、経緯の両方向で測定した。
<通気度>
織物の通気度は、JIS L 1096 8.27.1に規定されている通気性A法(フラジール形法)に準拠して測定した。
<織物の染色方法>
製織された織物を、オープンソーパーを用いて精練し、ピンテンターを用いて190℃で30秒間熱セット(プレセット)し、液流染色機(日阪製作所製:サーキュラーNS)を用いて、ナイロンを主成分とする織物は酸性染料で、ポリエステルを主成分とする織物は分散染料で、常法にて染色した。表1に記載の染料濃度にて、織物をグレー又は濃いブルーに染色した後、180℃で30秒間熱セット(中間セット)を行った。
(1)ポリエステル織物の分散染料による染色処方
・染料(種類、添加量は表1に記載)
・均染剤(ディスパーTL、明成化学工業社製) 1g/L
・pH調整剤 酢酸/酢酸アンモニウムでpH5に調整
染色条件:130℃・45分間,浴比=1:12
(2)ナイロン織物の酸性染料による染色処方
・染料(種類、添加量は表1に記載)
・均染剤(レベロンNT、一方社油脂工業社製) 1g/L
・pH調整剤 酢酸/酢酸アンモニウムでpH5に調整
染色条件:95℃・45分間,浴比=1:12
(3)染料
・Kayanol(登録商標)シリーズ…日本化薬株式会社
・Dianix(登録商標)シリーズ…ダイスタージャパン株式会社
なお、表中に示す染料濃度の単位は、%owf(on the weight of fiber)である。
<仕上処方>
下記に記載する撥水撥油剤、柔軟剤、帯電防止剤を所定濃度となるように水に分散させて、仕上用処方液を調製した。調製された仕上用処方液を用いて、ウエットピックアップ50%、パッド−ドライ120℃×60秒の条件で織物を仕上げた。
・撥水撥油剤;フッ素系撥水撥油剤(明成化学工業社製「アサヒガード(登録商標)AG−E061」) 2wt%
・柔軟剤;コタニ化学社製「キングソフターN−301」 1wt%
・帯電防止剤;ノニオン系帯電防止剤(高松油脂社製「エレナイト139」) 1wt%
実施例1
相対粘度3.5のナイロン6(Ny6)ポリマーチップを紡糸温度288℃で、15個のI字型の吐出孔を備える紡糸口金から溶融紡糸した。3つのゴデットローラのうち、第1ゴデットローラの速度を2700m/分、第2ゴデットローラの速度を3450m/分、第3ゴデットローラの速度を3500m/分に設定し、第2ゴデットローラの延伸温度153℃、3ゴデットローラの延伸温度133℃にて延伸した。扁平度が7.0でI字型断面のモノフィラメント15本からなる、繊度33dtexのマルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントについて、前記の方法により、破断強度及び破断伸度を評価した。結果を表2に示す。
該マルチフィラメントを経糸及び緯糸に用い、経密度を186本/2.54cmに、緯密度を130本/2.54cmに設定し、平組織(タフタ)で製織した。
得られた生地を常法に従って、オープンソーパーを用いて精練、ピンテンターを用いて190℃×30秒でプレセットし、液流染色機(日阪製作所製:サーキュラーNS)を用い酸性染料でグレーに染色した後、180℃×30秒で中間セットを行った。その後、カレンダー加工(加工条件:シリンダー加工、温度150℃、圧力2.45MPa(25kgf/cm2)、速度20m/分)を織物の片面に施した後、ピンテンターを用いて上記(4)処方による仕上加工を行った。仕上った織物は、カバーファクターが1924で、目付が49g/m2であった。また、仕上った織物の測色値(L*a*b*)はL*=74.18、a*=−1.96、b*=−0.50であった。得られた織物について、透明度、引裂強力、通気度などの特性を前記方法で評価した。結果を表2に示す。
実施例2
染色処方を表1のグレーから濃ブルーに変更した以外は実施例1と同様に仕上げて評価をおこなった。仕上った織物の測色値(L*a*b*)はL*=46.75、a*=−5.85、b*=−38.37であった。
実施例3
織物に染色を施すことなく、白色(オフホワイト)に仕上げた以外は、実施例1と同様に仕上げて評価をおこなった。仕上った織物の測色値(L*a*b*)はL*=94.14、a*=0.11、b*=0.06であった。
実施例4
図3に示す形状で扁平度が5になるように紡糸口金を変更して溶融紡糸した以外は、実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
実施例5
図3に示す形状で扁平度が9になるように紡糸口金を変更して溶融紡糸した以外は、実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
実施例6
押し出し機の吐出量を、得られるマルチフィラメントの繊度が8dtexになるように変更し、10個のI型吐出孔を備える紡糸口金に変更し該マルチフィラメントを経糸及び緯糸に用い、図2に示すミニリップ組織(リップストップタフタ組織)で経密度・緯密度を表2の通りに設定して製織し、実施例1と同様に織物を仕上げた。この織物を評価した結果を表2に示す。
実施例7
得られる扁平モノフィラメントの本数が11本になるように変更した以外は、実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
実施例8
ポリマー中の酸化チタンの含有量が0.35質量%となるように添加した以外は、実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
実施例9
押し出し機の吐出量を、得られる合成マルチフィラメントの繊度が44dtexになるように変更し、34個のI型吐出孔を備える紡糸口金に変更し該マルチフィラメントを経糸及び緯糸に用い、経密度・緯密度を表2の通りに設定し、平組織(タフタ)で製織したた以外は、実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
実施例10
カレンダー(目潰し)加工を布帛の両面に実施した以外は実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
実施例11
経密度・緯密度を表2の通りに設定し、図2に示すミニリップ組織(リップストップタフタ組織)で製織した以外は、実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
実施例12
原料をナイロン6からポリエチレンテレフタレート(PET)に変更し、経密度・緯密度を表2の通りに設定し、タフタ組織で製織した以外は、実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
なお、本実施例で使用したポリエチレンテレフタレートとは、極限粘度0.62のポリエチレンテレフタレート(PET)ポリマーチップ(東洋紡社製)を、固相重合を行うことにより極限粘度(IV)を0.75に高め、酸化チタンをポリマー中の酸化チタンの含有量が0.35質量%となるように添加することにより得られたものである。
比較例1
押し出し機の吐出量を、得られるマルチフィラメントの繊度が3dtexになるように変更し、2個のI型吐出孔を備える紡糸口金に変更し、経密度・緯密度を表2の通りに設定し、タフタ組織で製織した以外は、実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
比較例2
経密度・緯密度を表2の通りに設定し、タフタ組織で製織した以外は、実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
比較例3
ノズル孔径の形を丸型に変更して、丸型断面のモノフィラメント15本からなる、繊度33dtexのマルチフィラメントを紡糸し、織物を濃ブルーに染色して、仕上用処方液から撥水撥油剤を除いた以外は、実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
比較例4
ノズル孔径の形を丸型に変更して、丸型断面のモノフィラメント15本からなる、繊度33dtexのマルチフィラメントを紡糸したこと、及び仕上用処方液から撥水撥油剤を除いた以外は、実施例1と同様に織物を仕上げて評価を行った。結果を表2に示す。
実施例1〜12では、織物の染色方法や、織組織に依存することなく、透明性の高い織物となった。また、これらの織物は、軽量薄地で引裂強力が高く、かつ洗濯後も低通気度を維持していた。
一方、比較例1では、使用された合成マルチフィラメントの繊度が小さいため、織物の引裂強力は4〜5Nと低く、比較例1の織物は側地として必要な強度を有していない。
比較例2の織物はカバーファクターが小さいため、織物の通気度は3cc/cm2/sと大きくなっている。そのため、比較例2の織物は、側地として必要な低通気度を有していない。
更に、比較例3では、扁平モノフィラメントの代わりに、丸断面のモノフィラメントを用いたため、織物を構成する繊維表面での光の反射等を充分に低減できていない。そのため、比較例3で得られる織物は、透明性が低くなっている。
比較例4では、モノフィラメントとして、丸断面のモノフィラメントを使用している。そのため、比較例4の織物は、同じ染色を施した実施例1の織物と比較した場合に、織物の可視光透過率が50%から34%まで低下し、目視透明性についても4−5級から3−4級まで低下している。また、比較例4で製造される織物には撥水加工が施されていないためか、繊維表面における光の反射を充分に低減できず、比較例4の織物は目視透明性の級数が低くなっている。
本発明は、ダウンウエア、ダウンジャケット、ふとん、寝袋などの側地に好適に用いられる。

Claims (5)

  1. 扁平モノフィラメントを含む合成マルチフィラメントから形成される織物であって、
    合成マルチフィラメントの繊度が5〜44dtexであり、
    合成マルチフィラメント100質量%中、扁平度4〜9のモノフィラメントの使用量が80質量%以上であり、
    織物の少なくとも片面にはカレンダー加工が施され、
    可視光透過率が30〜70%であり、
    カバーファクターが1814〜2490であることを特徴とする織物。
  2. 合成マルチフィラメント中の酸化チタンが0〜0.5質量%であり、
    扁平モノフィラメントの繊度が0.7〜3.1dtexであり、
    前記モノフィラメントの扁平度が6.5以上9以下である請求項1に記載の織物。
  3. 合成マルチフィラメントの破断強度が3〜7cN/dtexであり、
    織物の経方向及び緯方向の引裂強力がそれぞれ6〜50Nである請求項1または2に記載の織物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の織物を側地として用い、有色の中綿を使用することを特徴とするダウンジャケット。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の織物を側地として用い、白色の中綿を使用することを特徴とするダウンジャケット。
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