しかしながら、上記技術においては、捕集部(螺旋状部分)の最上流部(始端部)と最下流部(終端部)とを繋ぐように仕切り板が設けられており、捕集部の最下流部と仕切り板の境界部分には、角が形成されている。従って、前記境界部分に堆積(付着)した異物を取り除くことは決して容易ではない。つまり、上記技術では、清掃性の向上を十分に図ることができないおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、捕集部に堆積した異物を極めて容易に取り除くことができ、優れた清掃性を実現することができるヘアキャッチャーを提供することにある。
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
手段1.排水の流路に配置される捕集部を備えてなるヘアキャッチャーであって、
前記捕集部は、その中心軸を囲む環状をなし、
前記捕集部の上面は、前記中心軸の周囲に設けられ、高い側から低い側に向けて排水が流れるように構成された螺旋状の螺旋部を備え、
前記捕集部のうち前記螺旋部の存在する部位には、通水用の孔部が多数貫通形成され、
前記螺旋部における前記排水の流れ方向に沿った最下流部から前記螺旋部における前記排水の流れ方向に沿った最上流部にかけて連続する連続面が設けられ、
前記最下流部から前記連続面にかけての面は、滑面状をなすとともに、
前記連続面は、前記孔部が形成されていない滑面状をなすことを特徴とするヘアキャッチャー。
尚、「滑面状」とあるのは、凹凸や角のない滑らかな面状であることを意味する(以下同様)。また、「螺旋状」とあるのは、螺旋部の全域が傾斜している場合のみならず、螺旋部の一部が傾斜していない(高さが一定である)場合を含み、また、螺旋部の傾斜角度が一定でない場合も含むという趣旨である。
上記手段1によれば、螺旋部のうち異物の最も堆積しやすい部分である最下流部から、当該最下流部及び最上流部に連接する連続面にかけての面が滑面状をなしている。つまり、最下流部から連続面にかけての面は、角等のない滑らかな面とされている。従って、最下流部から連続面へと捕集部を拭いた際に、最下流部に堆積した異物を連続面側へとスムーズに移動させることができる。
さらに、上記手段1によれば、連続面が孔部の形成されていない滑面状とされている。従って、最下流部から連続面へと捕集部を拭いた後に続けて、連続面から最上流部側へと捕集部を拭き上げたときに、異物が連続面に引っ掛かってしまう(孔部に入ってしまう)といった事態が生じない。これにより、最上流部側へと異物をスムーズに移動させることができる。
すなわち、上記手段1によれば、最下流部から連続面を経て最上流部側へと捕集部を拭くことで、捕集部に堆積した異物を極めて容易に取り除くことができる。その結果、優れた清掃性を実現することができる。
加えて、上記手段1によれば、螺旋部の下部において異物がまとめて捕集されることに伴い螺旋部の下部側(下流側)に位置する孔部が多少閉塞したとしても、螺旋部の上流側に位置する孔部を通して排水を流すことができる。従って、排水能力の低下をより確実に防止することができる。
手段2.前記中心軸に沿って延びる軸部を備え、
前記螺旋部の内周側部分は、前記軸部の外周面に連続するとともに、前記軸部の外周面側に向けて徐々に高くなる形状をなすことを特徴とする手段1に記載のヘアキャッチャー。
上記手段2によれば、螺旋部の内周側部分は、軸部の外周面側に向けて徐々に高くなる形状とされている。従って、排水が螺旋部を流れる際に、螺旋部の内周側部分と軸部の外周面との境界部分には排水が流れにくくなる。これにより、この境界部分に対する異物の堆積(付着)を抑制することができる。その結果、清掃性をより高めることができる。
また、上記手段2によれば、螺旋部の内周側部分が、一定の高さを有する又は軸部の外周面側に向けて低くなる場合と比較して、螺旋部の中央部分や外周側部分において排水を集中的に流すことができる。これにより、螺旋部において排水をより勢いよく流すことができ、螺旋部の下部側(下流側)へと異物をより確実に押し流すことができる。その結果、清掃性や排水能力を一層向上させることができる。
手段3.前記螺旋部の内周側部分から前記軸部の外周面にかけての面が滑面状をなすことを特徴とする手段2に記載のヘアキャッチャー。
上記手段3によれば、螺旋部の内周側部分から軸部の外周面へと捕集部を拭くことで、捕集部に堆積(付着)した異物を一層容易に取り除くことができる。その結果、一層優れた清掃性を得ることができる。
手段4.前記捕集部の最外周に立設された環状の外壁部を備え、
前記螺旋部の外周側部分は、前記外壁部の内周面に連続するとともに、前記外壁部の内周面側に向けて徐々に高くなる形状をなすことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載のヘアキャッチャー。
上記手段4によれば、外壁部が設けられているため、螺旋部を排水が流れ落ちる際に、排水ひいてはこれに含まれる異物が捕集部から流れ出てしまうことをより確実に防止できる。従って、捕集部において異物をより確実に捕集することができる。また、螺旋部において排水を一層勢いよく流すことができ、螺旋部の下部側(下流側)へと異物を一層確実に押し流すことができる。その結果、清掃性や排水能力をさらに高めることができる。
また、上記手段4によれば、螺旋部の外周側部分は、外壁部の内周面側に向けて徐々に高くなる形状とされている。従って、螺旋部を排水が流れる際に、螺旋部の外周側部分と外壁部の内周面との境界部分には排水が流れにくくなる。これにより、この境界部分に対する異物の堆積(付着)を抑制することができる。その結果、清掃性を一層高めることができる。
さらに、上記手段4によれば、螺旋部の外周側部分が、一定の高さを有する又は外壁部の内周面側に向けて低くなる場合と比較して、螺旋部の中央部分や内周側部分において排水を集中的に流すことができる。これにより、螺旋部において排水をさらに勢いよく流すことができ、螺旋部の下部側(下流側)へと異物をより一層確実に押し流すことができる。その結果、清掃性や排水能力をより一層向上させることができる。
手段5.前記螺旋部の外周側部分から前記外壁部の内周面にかけての面が滑面状をなすことを特徴とする手段4に記載のヘアキャッチャー。
上記手段5によれば、螺旋部の外周側部分から外壁部の内周面へと捕集部を拭くことで、捕集部に堆積(付着)した異物を一層容易に取り除くことができる。その結果、一段と優れた清掃性を得ることができる。
手段6.前記外壁部の上端外周には、前記外壁部の径方向外側に向けて突出する環状のリング部が設けられ、
側面から見たとき、前記リング部は、前記中心軸とほぼ直交する形状をなすことを特徴とする手段4又は5に記載のヘアキャッチャー。
尚、「ほぼ直交」とあるのは、ヘアキャッチャーを側面から見たときに、リング部と捕集部の中心軸とが厳密に直交する(つまり、捕集部の中心軸と直交する仮想線とリング部とが平行となっている)場合のみならず、捕集部の中心軸と直交する仮想線に対しリング部が若干(例えば、5°以下だけ)斜めになっている場合も含むという趣旨である。
上記手段6によれば、外壁部にリング部が設けられているため、排水が螺旋部を流れ落ちる際に、排水が捕集部からより流れ出にくくなる。これにより、捕集部において異物を一層確実に捕集することができる。
さらに、上記手段6によれば、ヘアキャッチャーを側面から見たとき、リング部は、捕集部の中心軸とほぼ直交する形状とされている。つまり、螺旋部は各部において高さがそれぞれ異なる一方、リング部は各部において高さがほぼ一定とされている。従って、ヘアキャッチャーをよりコンパクトにすることができ、ヘアキャッチャーの納まり(ヘアキャッチャーとその周囲の部材との全体的なまとまり)をより容易に良好なものとすることができる。
手段7.前記螺旋部の最下流部及びその近傍部分の勾配が、前記螺旋部のうち前記最下流部及びその近傍部分を除いた部位の勾配よりも小さいことを特徴とする手段1乃至6のいずれかに記載のヘアキャッチャー。
尚、「勾配」とあるのは、捕集部の中心軸と直交する仮想平面を基準とした螺旋部の傾斜角度(螺旋部のうち傾斜が一定でない部分に関しては、当該部分の接線の傾斜角度)ということができる。また、螺旋部の最下流部及びその近傍部分の傾斜角度は、0°であってもよい。
螺旋部の極めて限られたごく一部において異物が捕集されるように構成した場合には、異物同士のからまり等が生じやすくなってしまい、また、それに伴い捕集部に対し異物がからまりやすくなってしまうおそれがある。
この点、上記手段7によれば、螺旋部の最下流部及びその近傍部分の勾配が、螺旋部のうち最下流部及びその近傍部分を除いた部位の勾配よりも小さなものとされている。従って、螺旋部の最下流部だけでなく、その手前(直上流側)にも異物が堆積しやすくなる。これにより、異物同士のからまり等を生じにくくすることができ、捕集部から異物を一層容易に除去することができる。その結果、さらに良好な清掃性を実現することができる。
また、上記手段7によれば、螺旋部のうち最下流部及びその近傍部分を除いた部位の勾配が比較的大きなものとされる。従って、螺旋部の上流側から下流側へと排水を一層勢いよく流すことができる。その結果、螺旋部の下部側(下流側)へと異物を一層確実に押し流すことができ、ひいては一層優れた清掃性や排水能力を得ることができる。
手段8.前記螺旋部の最下流部には、上側に突出する下部突起部が設けられることを特徴とする手段1乃至7のいずれかに記載のヘアキャッチャー。
上記手段8によれば、仮に毛髪等の細長い異物が螺旋部の最下流部に乗ったとしても、下部突起部の存在する位置においては、毛髪等の異物が浮いたような状態となる。従って、螺旋部の最下流部に対し異物が密着してしまうことを効果的に抑制できる。これにより、異物の除去を極めて容易に行うことができ、清掃性を飛躍的に高めることができる。
手段9.前記螺旋部における最下流部と最上流部との間に位置する部位には、当該部位における排水の流れ方向に対して交差する方向に延びるとともに、上側に突出する中間リブ部が設けられることを特徴とする手段1乃至8のいずれかに記載のヘアキャッチャー。
上記手段9によれば、仮に毛髪等の細長い異物が、螺旋部の最下流部と最上流部との間に位置する部位に対し、排水の流れ方向に沿うようにして延びた状態で乗ったとしても、中間リブ部の存在する位置においては、毛髪等の異物が浮いたような状態となる。従って、螺旋部に対し異物が密着してしまうことをより効果的に抑制できる。その結果、異物の除去をより一層容易に行うことができ、清掃性をさらに高めることができる。
手段10.前記螺旋部の最上流部は、前記孔部が形成されていない滑面状をなすことを特徴とする手段1乃至9のいずれかに記載のヘアキャッチャー。
上記手段10によれば、螺旋部の最上流部は、孔部の形成されていない滑面状とされている。従って、最上流部に流れ落ちた排水の多くを、螺旋部のうち連続面とは反対側に位置する部位側へと流すことができる。これにより、螺旋部において排水を一層勢いよく流すことができ、螺旋部の下部側(下流側)へと異物を一層確実に押し流すことができる。その結果、清掃性や排水能力をより一層高めることができる。
手段11.前記螺旋部の最上流部は、前記螺旋部の最下流部とは反対側に向けて排水を案内する上部突起部を備えることを特徴とする手段1乃至10のいずれかに記載のヘアキャッチャー。
上記手段11によれば、上部突起部によって、最上流部に流れ落ちた排水を、最下流部とは反対側(螺旋部の中間側)へとより効率よく流すことができる。従って、螺旋部において排水をさらに勢いよく流すことができ、ひいては清掃性や排水能力を一段と高めることができる。
手段12.前記螺旋部における排水の流れ方向の下流側に位置する前記孔部の通水面積は、基本的には、前記流れ方向の上流側に位置する前記孔部の通水面積よりも大きくされることを特徴とする手段1乃至11のいずれかに記載のヘアキャッチャー。
尚、「基本的には」とあるのは、下流側に位置する全ての孔部の通水面積が、上流側に位置する各孔部の通水面積よりも大きい場合のみならず、下流側に位置する大半(例えば、半数以上)の孔部の通水面積が、上流側に位置する各孔部の通水面積よりも大きい場合も含むという趣旨である。
上記手段12によれば、基本的には、下流側に位置する孔部の通水面積が、上流側に位置する孔部の通水面積よりも大きくされている。従って、螺旋部の下部において異物がある程度捕集された状態であっても、下流側の孔部を通って排水が流れやすくなり、排水能力を一段と高めることができる。
一方で、上記手段12によれば、上流側に位置する孔部の通水面積が比較的小さくされることから、排水が上流側の孔部を通りにくくなり、ひいては螺旋部の上流側から下流側へと排水をより勢いよく流すことができる。その結果、螺旋部の下部側(下流側)へと異物を一層確実に押し流すことができ、より一層優れた清掃性や排水能力を得ることができる。
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、排水栓装置1は、槽体としての洗面器100に取付けられており、排水管2と、栓蓋側機構部3と、排水口装置4と、ヘアキャッチャー5とを備えている。尚、洗面器100は、その底面を構成する底壁部101を備えており、当該底壁部101には排水口102が形成されている。また、洗面器100には、水の溢れ出しを防止するためのオーバーフロー口(図示せず)が設けられている。
排水管2は、主管21と、枝分かれ管22と、取付管23とを備えている。
主管21は、鉛直方向に沿って延びる筒状をなし、例えば、ねじ止め等により、自身の内部空間が排水口102と連通するようにして底壁部101の背面に取付けられている。洗面器100内の水は、主管21の内部を通って排出されるようになっている。尚、主管21の上端部と底壁部101との間には、弾性変形可能な材料からなる環状のシール部材6が配置されており、当該シール部材6によって排水管2及び底壁部101間が水密にシールされている。
枝分かれ管22は、主管21の外周から主管21の延びる方向と交差する方向に沿って延びている。さらに、枝分かれ管22は、その内部空間が主管21の内部空間に連通するとともに、前記オーバーフロー口に対し所定の連結管7を介して接続されている。これにより、前記オーバーフロー口を通過した排水は、連結管7を通って主管21へと流れ込むようになっている。
取付管23は、主管21の外周から主管21の延びる方向と直交する方向に沿って延びており、その内部空間が主管21の内部空間に連通している。取付管23は、栓蓋側機構部3の被取付部として機能する。
栓蓋側機構部3は、その一部が取付管23に挿通された状態で、取付管23に取付けられている。栓蓋側機構部3は、取付管23の中心軸と平行な回動軸にて回動する円板状の回動部(図示せず)と、当該回動部における主管21側の端面の外周側に設けられ、排水管2(主管21)内に向けて突出する支持突起31とを備えている。支持突起31は、排水管2(主管21)内に配置されており、排水口装置4を支持するものである。尚、本実施形態において、支持突起31は、排水管2(主管21)の中心軸に至らない程度の短いものとされている。
また、栓蓋側機構部3には、筒状のチューブ部材8と、当該チューブ部材8内に配置された伝達部材9(例えば、ワイヤー等)とが接続されている。伝達部材9は、チューブ部材8内にて往復移動可能となっており、図示しない所定の操作部材(例えば、往復移動可能な操作ボタンや回動可能な操作ハンドルなど)を変位させることで、往復移動するようになっている。そして、伝達部材9の往復移動に伴い、前記回動部が回動し、ひいては支持突起31が上下動するようになっている。
排水口装置4は、通水部材41と、支持軸42と、栓蓋43とを備えている。
通水部材41は、排水管2(主管21)内において上下動可能な状態で配置されており、環状の外周壁部41Aと、当該外周壁部41Aの内周から内側に向けて延びる下部捕集部41Bとを備えている。
外周壁部41Aは、排水管2(主管21)の内周面に沿うようにして排水管2(主管21)内に配置されている。また、外周壁部41Aの下端面が前記支持突起31に載置状態とされることで、通水部材41ひいては排水口装置4は、支持突起31により排水管2(主管21)内で支持されるようになっている。
下部捕集部41Bは、その内周部分が支持軸42に固定されており、外周壁部41Aの径方向に沿って延びる複数のリブを有している。下部捕集部41Bにおいて、排水管2を流れる排水は前記リブ間に形成された隙間を通って流れ落ち、その一方で、排水に含まれるゴミ等は捕集されることとなる。
支持軸42は、棒状をなし、その上端部が栓蓋43の背面中央部に取付けられるとともに、その下端側部分が通水部材41(下部捕集部41B)に固定されている。そのため、支持突起31が上下動することで通水部材41が上下動した際には、通水部材41とともに支持軸42及び栓蓋43が上下動するようになっている。
栓蓋43は、樹脂等からなる円板状の蓋部43Aと、当該蓋部43Aの背面外周側に取付けられた、弾性変形可能な材料(例えば、ゴムや樹脂等)からなる環状のパッキン部43Bとを備えている。本実施形態では、支持突起31の下動に伴い栓蓋43が下動したときに、パッキン部43Bの外周部分全域が底壁部101に接触することで、排水口102が閉鎖されるようになっている。一方で、支持突起31の上動に伴い栓蓋43が上動したときに、パッキン部43Bが底壁部101から離間することで、排水口102が開放されるようになっている。
また、本実施形態では、排水口102の開放時において、支持突起31は外周壁部41Aの下端面に接触しているが、排水口102の閉鎖時において、支持突起31は外周壁部41Aの下端面から離間するようになっている。これにより、排水口102の閉鎖時において、栓蓋43(パッキン部43B)を確実に底壁部101へと接触させることができ、良好な水密性を得ることができる。
尚、本実施形態においては、洗面器100の表側から栓蓋43や支持軸42を引き上げることで、排水口装置4及びヘアキャッチャー5を排水管2から一度に取外す(引抜く)ことができるようになっている。そして、排水口装置4及びヘアキャッチャー5を排水管2から取外したとき、排水管2(主管21)内においては、支持突起31のみが僅かに突出した状態となる。そのため、メンテナンス性や清掃性の向上を図ることができる。
次いで、本発明の特徴部分であるヘアキャッチャー5の構造について説明する。
本実施形態において、ヘアキャッチャー5は、排水管2(主管21)の内部(つまり、排水の流路)に配置されており、図2〜図5に示すように、軸部51及び皿部52を備えている。
軸部51は、ヘアキャッチャー5の中心軸CL1方向に沿って延びる円筒状をなし、その内周に対し前記支持軸42が挿通されている。また、軸部51の内周には、中心軸CL1と平行に延びる突条が軸部51の周方向に沿って等間隔に複数設けられている。これにより、軸部51及び支持軸42の密着を防止することができるため、支持軸42の上動時にヘアキャッチャー5が上動することなく、ヘアキャッチャー5を一定の位置に保持することができるようになっている。尚、本実施形態において、ヘアキャッチャー5は、排水管2(主管21)の内周面における窄み部分へと載置されており(図1参照)、通常この状態で維持されることとなる。
皿部52は、軸部51の外周面から外側に向けて広がる鍔状をなしており、外壁部53及び捕集部54を備えている。
外壁部53は、捕集部54へと流れ込んだ異物がヘアキャッチャー5の外側へと流れ出てしまうことを防止するものである。外壁部53は、前記中心軸CL1を中心とする円環状をなしており、ヘアキャッチャー5の最外周に位置している。また、外壁部53は、捕集部54の最外周部に立設された状態となっており、その内周面は、前記中心軸CL1側に向けて下方に傾斜する、比較的傾斜角度の大きな傾斜面となっている。外壁部53の内周面がこのように構成されていることで、捕集部54へと流れ込んだ異物の流出をより確実に防止しつつ、製造容易性(例えば、型抜きの容易性)を確保することができるようになっている。
捕集部54は、排水に含まれるゴミ等の異物を捕集するためのものである。本実施形態において、捕集部54の中心軸は、前記中心軸CL1と一致しており、捕集部54は、中心軸CL1を囲む環状をなしている。
また、捕集部54の上面は、前記中心軸CL1の周囲に設けられ、螺旋状をなす螺旋部55を備えている。本実施形態では、捕集部54の上面のほぼ全域が螺旋部55となっている。
螺旋部55は、前記中心軸CL1の周方向に沿って徐々に低くなる傾斜面状をなしており、高い側から低い側に向けて排水が流れるように構成されている。本実施形態において、螺旋部55の勾配は、螺旋部55の全域において一定とされている。さらに、螺旋部55は、排水の流れ方向に沿って最も上流側に位置する最上流部55Aと、最も下流側に位置する最下流部55Bとを備えている。本実施形態では、最上流部55A及び最下流部55Bの双方に、後述する孔部56が形成されている。
加えて、螺旋部55の内周側部分は、軸部51の外周面に連続するとともに、軸部51の外周面側に向けて徐々に高くなる形状をなしている。さらに、螺旋部55の内周側部分から軸部51の外周面にかけての面は、その形状が滑らかに遷移する滑面状をなしており、螺旋部55の内周側部分と軸部51の外周面との間は、角(Rが0又は比較的小さなものとされた隅部ということもできる)が存在しない状態となっている(図4参照)。
また、螺旋部55の外周側部分は、外壁部53の内周面に連続するとともに、外壁部53の内周面側に向けて徐々に高くなる形状をなしている。さらに、螺旋部55の外周側部分から外壁部53の内周面にかけての面は、その形状が滑らかに遷移する滑面状をなしている。そのため、螺旋部55の外周側部分と外壁部53の内周面との間は、角(Rが0又は比較的小さなものとされた隅部ということもできる)が存在しない状態となっている(図4参照)。
さらに、捕集部54のうち螺旋部55の存在する部位には、通水用の孔部56が多数貫通形成されている。本実施形態では、螺旋部55の内周側に設けられた孔部56の通水面積が、螺旋部55の外周側に設けられた孔部56の通水面積よりも小さなものとされている。これにより、排水が勢いよく流れにくい螺旋部55の内周側において排水が流れ落ちにくくなり、螺旋部55の上流側から下流側に向けて排水をより確実に流すことができる。また、遠心力により排水が勢いよく流れやすい螺旋部55の外周側において孔部56を通って排水が流れ落ちやすくなり、ヘアキャッチャー5の外側へと排水やこれに含まれる異物が飛び出してしまうことをより確実に防止できる。
加えて、捕集部54の上面は、最下流部55Bから最上流部55Aにかけて連続し、両者を連接する連続面57を備えている。連続面57には孔部56が形成されておらず、連続面57は滑面状(表面に凹凸や角のない形状)とされている。また、本実施形態において、最下流部55Bから連続面57にかけての面は、その形状が滑らかに遷移する滑面状をなしており、最下流部55B及び連続面57の間には、角(Rが0又は比較的小さなものとされた隅部ということもできる)が形成されていない。さらに、連続面57から最上流部55Aにかけての面の形状も滑らかに遷移するように構成されており、連続面57及び最上流部55Aの間には角が形成されていない。すなわち、本実施形態において、最下流部55Bから連続面57を経て最上流部55Aへと至る面は、表面に凹凸や角のない滑面状とされている。
以上詳述したように、本実施形態によれば、螺旋部55のうち異物の最も堆積しやすい部分である最下流部55Bから連続面57にかけての面が滑面状をなしている。つまり、最下流部55Bから連続面57にかけての面は、角等のない滑らかな面とされている。従って、最下流部55Bから連続面57へと捕集部54を拭いた際に、最下流部55Bに堆積した異物を連続面57側へとスムーズに移動させることができる。
さらに、連続面57は、孔部56の形成されていない滑面状とされているため、最下流部55Bから連続面57へと捕集部を拭いた後に続けて、連続面57から最上流部55A側へと捕集部54を拭き上げたときに、異物が連続面57に引っ掛かってしまう(孔部56に入ってしまう)といった事態が生じない。これにより、最上流部55A側へと異物をスムーズに移動させることができる。
すなわち、本実施形態によれば、最下流部55Bから連続面57を経て最上流部55A側へと捕集部54を拭くことで、捕集部54に堆積した異物を極めて容易に取り除くことができる。その結果、優れた清掃性を実現することができる。
加えて、螺旋部55を排水が流れることで、螺旋部55の下部(例えば、最下流部55B)において異物がまとめて捕集されるが、異物の捕集に伴い螺旋部55の下部側(下流側)に位置する孔部56が多少閉塞したとしても、螺旋部55の上流側に位置する孔部56を通して排水を流すことができる。従って、排水能力の低下をより確実に防止することができる。
さらに、外壁部53が設けられているため、螺旋部55を排水が流れ落ちる際に、排水ひいてはこれに含まれる異物が捕集部54から流れ出てしまうことをより確実に防止できる。従って、捕集部54において異物をより確実に捕集することができる。また、螺旋部55において排水を一層勢いよく流すことができ、螺旋部55の下部側(下流側)へと異物を一層確実に押し流すことができる。その結果、清掃性や排水能力をさらに高めることができる。
加えて、螺旋部55の内周側部分は、軸部51の外周面側に向けて徐々に高くなる形状とされており、また、螺旋部55の外周側部分は、外壁部53の内周面側に向けて徐々に高くなる形状とされている。従って、排水が螺旋部55を流れる際に、螺旋部55の内周側部分と軸部51の外周面との境界部分、及び、螺旋部55の外周側部分と外壁部53の内周面との境界部分には排水が流れにくくなる。これにより、これら境界部分に対する異物の堆積(付着)を抑制することができる。その結果、清掃性をより高めることができる。また、螺旋部55の内周側部分が、一定の高さを有する又は軸部51の外周面側に向けて低くなる場合や、螺旋部55の外周側部分が、一定の高さを有する又は外壁部53の内周面側に向けて低くなる場合と比較して、螺旋部55の中央部分において排水を集中的に流すことができる。これにより、螺旋部55において排水をより勢いよく流すことができ、螺旋部55の下部側(下流側)へと異物をより確実に押し流すことができる。その結果、清掃性や排水能力を一層向上させることができる。
加えて、螺旋部55の内周側部分から軸部51の外周面にかけての面、及び、螺旋部55の外周側部分から外壁部53の内周面にかけての面がそれぞれ滑面状をなすため、螺旋部55の内周側部分から軸部51の外周面へと捕集部54を拭いたり、螺旋部55の外周側部分から外壁部53の内周面へと捕集部54を拭いたりすることで、捕集部54に堆積(付着)した異物を一層容易に取り除くことができる。その結果、一層優れた清掃性を得ることができる。
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
(a)上記実施形態において、螺旋部55は、上側に向けた突出部分の存在しない形状とされているが、図6及び図7に示すように、螺旋部55の最下流部55Bに、排水の流れ方向に対して交差する方向(本例では、中心軸CL1と直交する方向)に延びるとともに、上側に突出する下部突起部58を設けることとしてもよい。この場合には、毛髪等の細長い異物が螺旋部55の最下流部55Bに乗ったとき、下部突起部58の存在する位置において、毛髪等の異物が浮いたような状態となる。従って、螺旋部55の最下流部55Bに対し異物が密着してしまうことを効果的に抑制できる。これにより、異物の除去を極めて容易に行うことができ、清掃性を飛躍的に高めることができる。尚、下部突起部58は、上側に向けて突出していればよく、必ずしも排水の流れ方向に対し交差する方向に延びている必要はない。
また、螺旋部55における最下流部55Bと最上流部55Aとの間に位置する部位に、当該部位における排水の流れ方向に対して交差する方向(本例では、中心軸CL1と直交する方向)に延びるとともに、上側に突出する中間リブ部59を設けることとしてもよい。この場合には、毛髪等の細長い異物が、螺旋部55の最下流部55Bと最上流部55Aとの間に位置する部位に対し、排水の流れ方向に沿うようにして延びた状態で乗ったとき、中間リブ部59の存在する位置において、毛髪等の異物が浮いたような状態となる。従って、螺旋部55に対し異物が密着してしまうことをより効果的に抑制できる。その結果、異物の除去をより一層容易に行うことができ、清掃性をさらに高めることができる。尚、中間リブ部59は、本例のように複数設けることとしてもよいし、1つのみ設けることとしてもよい。
さらに、最上流部55Aにおける連続面57側の部分に、上側に若干突出し、最下流部55Bとは反対側に向けて排水を案内する上部突起部60を設けることとしてもよい。尚、上部突起部60は、中心軸CL1と直交する方向に延びるとともに、最下流部55Bとは反対側に向けて下方に傾斜する面を備えており、これにより、最下流部55Bとは反対側(螺旋部55の中間側)に向けて排水が案内される。上部突起部60を設けることで、最上流部55Aに流れ落ちた排水を、最下流部55Bとは反対側(螺旋部55の中間側)へとより効率よく流すことができる。従って、螺旋部55において排水をさらに勢いよく流すことができ、ひいては清掃性や排水能力を一段と高めることができる。
(b)上記実施形態において、螺旋部55の勾配は、螺旋部55の全域において一定とされているが、必ずしも螺旋部55の勾配を一定としなくてもよい。従って、例えば、螺旋部55の最下流部55B及びその近傍部分(最下流部55Aに連なる部分)の勾配を、螺旋部55のうち最下流部55B及びその近傍部分を除いた部位の勾配よりも小さなものとしてもよい。この場合には、螺旋部55の最下流部55Bだけでなく、その手前(直上流側)にも異物が堆積しやすくなる。これにより、異物同士のからまり等を生じにくくすることができ、捕集部54から異物を一層容易に除去することができる。その結果、さらに良好な清掃性を実現することができる。また、結果的に、螺旋部55のうち最下流部55B及びその近傍部分を除いた部位の勾配を比較的大きなものとすることができる。従って、螺旋部55の上流側から下流側へと排水を一層勢いよく流すことができる。その結果、螺旋部55の下部側(下流側)へと異物を一層確実に押し流すことができ、ひいては一層優れた清掃性や排水能力を得ることができる。
(c)上記実施形態において、外壁部53の外周面は、凹凸のない形状とされているが、図8に示すように、外壁部53の上端外周に、外壁部53の径方向外側に向けて突出する環状のリング部61を設けることとしてもよい。このように構成した場合には、排水が螺旋部55を流れ落ちる際に、排水が捕集部54からより流れ出にくくなる。これにより、捕集部54において異物を一層確実に捕集することができる。
また、ヘアキャッチャー5を側面から見たとき、リング部61が、前記中心軸CL1とほぼ直交する形状をなすこととしてもよい。この場合、螺旋部55は各部において高さがそれぞれ異なる一方、リング部61は各部において高さがほぼ一定となる。従って、ヘアキャッチャー5をよりコンパクト(高さの小さなもの)とすることができ、ヘアキャッチャー5の納まり(ヘアキャッチャー5とその周囲の部材との全体的なまとまり)をより容易に良好なものとすることができる。
(d)上記実施形態において、螺旋部55は前記中心軸CL1の周方向に沿って徐々に低くなる傾斜面状をなしているが、螺旋部は高い側から低い側に向けて排水が流れるように構成されていればよく、必ずしも傾斜面状でなくてもよい。従って、例えば、図9に示すように、螺旋部65が、複数(3つ以上)の面部66及び段部67が交互に形成されてなる螺旋階段状であってもよい。この場合、面部66は、上方から流れてくる排水によって、螺旋部65において高い側から低い側に向けて排水が流れるような形状となっていればよい。すなわち、面部66に対し深さ及び面積が過度に大きな凹みをあえて設けるなど、面部66において排水が意図的に溜まるような構成にしなければよい。例えば、面部66は、前記中心軸CL1の周方向に沿ってほぼ同じ高さを有するものであってもよいし、隣接する低い側の段部67に向けて徐々に低くなるものであってもよい。
(e)上記実施形態において、ヘアキャッチャー5は軸部51を備えているが、軸部51を備えないこととしてもよい。すなわち、ヘアキャッチャーは中心に貫通孔を備えない皿状であってもよい。
(f)上記実施形態において、孔部56は、螺旋部55の内周側に位置するものの通水面積が、螺旋部55の外周側に位置するものの通水面積よりも小さなものとされているが、必ずしも孔部56の構成はこれに限定されるものではない。従って、例えば、各孔部56の通水面積が同一となるように構成してもよい。
また、例えば、基本的には、下流側に位置する孔部56の通水面積が、上流側に位置する孔部56の通水面積よりも大きくなるように構成してもよい。つまり、螺旋部55における排水の流れ方向の下流側に位置する各孔部56の大半(例えば、半数以上)は、その通水面積が、前記流れ方向の上流側に位置する各孔部56の通水面積よりも大きくなるように構成してもよい。この場合には、螺旋部55の下部において異物がある程度捕集された状態であっても、下流側の孔部56を通って排水が流れやすくなり、排水能力を一段と高めることができる。一方、上流側に位置する孔部56の通水面積が比較的小さくされることから、排水が上流側の孔部56を通りにくくなり、ひいては螺旋部55の上流側から下流側へと排水をより勢いよく流すことができる。その結果、螺旋部55の下部側(下流側)へと異物を一層確実に押し流すことができ、より一層優れた清掃性や排水能力を得ることができる。
また、例えば、前記流れ方向の上流側から下流側に向けて、孔部56の通水面積が徐々に大きくなるように構成してもよい。この場合においても、下流側の孔部56を通って排水が流れやすくなり、排水能力を一段と高めることができる。また、螺旋部55の上流側から下流側へと排水をより勢いよく流すことができ、ひいては一層優れた清掃性や排水能力を得ることができる。
(g)上記実施形態では、最上流部55Aに孔部56が形成されているが、最上流部55Aを、孔部56が形成されていない滑面状としてもよい(例えば、図9参照)。この場合には、最上流部55Aに流れ落ちた排水の多くを、螺旋部55(65)のうち連続面57とは反対側に位置する部位側へと流すことができる。これにより、螺旋部55(65)において排水を一層勢いよく流すことができ、螺旋部55(65)の下部側(下流側)へと異物を一層確実に押し流すことができる。その結果、清掃性や排水能力をより一層高めることができる。
(h)上記実施形態において、支持軸42は、支持突起31の上下動に伴い上下動するように構成されているが、支持軸42を移動させる手法は特に限定されるものではない。例えば、伝達部材9の動作による駆動力が支持軸42に対し直接伝達されたり、所定の弾性部材(例えば、ばね部材など)の弾性力が支持軸42に対し伝達されたりすることで、支持軸42が移動するように構成してもよい。
(i)上記実施形態では、槽体として洗面器100を例示しているが、本発明の技術思想を適用可能な槽体は洗面器に限定されるものではない。従って、例えば、浴槽やキッチンの流し台などに対して本発明の技術思想を適用することとしてもよい。
(j)上記実施形態では、栓蓋43(パッキン部43B)が底壁部101(洗面器100)に接触することで排水口102を閉鎖するように構成されているが、栓蓋43(パッキン部43B)が洗面器100に設置された部材(例えば、排水口102に挿通された筒状部材)に接触することで排水口102を閉鎖するように構成してもよい。