JP6495591B2 - 光学フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、耐熱性が高く、位相差が低く、流動性が良好でゲルの少ない光学フィルムに関するものである。
従来、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)にカーボネート前駆物質を反応させて得られるポリカーボネート樹脂(以下、PC−Aという)は透明性、耐熱性、機械的特性、寸法安定性が優れているがゆえにエンジニアリングプラスチックとして多くの分野に広く使用されてきた。さらに近年その透明性を生かして光ディスク、フィルム、レンズ等の分野への光学用材料としての利用が展開されている。
しかしながら、PC−Aからなるフィルムを透明導電性フィルム用基板に使用する場合、耐熱性が十分ではなく、使用が困難であった。
そこで、上記問題への対策として様々な手法が検討されている。その一つとして、ビスフェノールAと9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンにカーボネート前駆物質を反応させると耐熱性が高いポリカーボネート樹脂が得られることが提案され(例えば特許文献1、2参照)、そのポリカーボネート樹脂を用いてなるフィルムを位相差フィルム用、偏光板の保護フィルム用に使用することが提案されている(例えば特許文献3、4、5、6参照)。しかしながら、上記ポリカーボネート樹脂は溶融粘度が高く、溶液キャスト法での製膜に限られていた。また、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンとスピログリコールからなるポリカーボネート樹脂を溶融製膜法でフィルム化することが提案されている(特許文献7)。しかしながら、ガラス転移温度が150℃以上の樹脂では、熱分解温度が低いため、溶融製膜が困難で、製膜中に分解が起こり、気泡やゲルが発生する問題がある。またフィルムの強度も低く、折り曲げ特性に課題があった。また、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンとビスフェノールAとシロキサン化合物を共重合したポリカーボネート樹脂を溶融製膜したシート(特許文献8)や9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンとビスフェノールAを共重合したポリカーボネート樹脂を溶融製膜したシートが提案されている(特許文献9)。しかしながら、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンの比率が高いため、フィルムが脆く、位相差特性に関しては何ら記載がなく、光学フィルムとして適していなかった。
特開2004−331688号公報 特開平8−134199号公報 国際公開00/26705号パンフレット 国際公開01/09649号パンフレット 特開2001−296423号公報 特開2001−194530号公報 特許第5119250号公報 特開2011−89050号公報 特開平6−25399号公報
本発明の目的は、耐熱性が高く、位相差が低く、流動性が良好でゲルの少ないフィルムを提供することである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、フルオレン構造を有するビスフェノール化合物と芳香族ジオールにカーボネート前駆物質を特定の組成比で反応することが重要なことを見出した。この現象は従来の延伸での複屈折の発生現象とは異なり、驚くべきことに非常に狭い領域の組成でのみ位相差を低減できることを究明し、耐熱性が高く、位相差が低く、流動性が良好でゲルの少ないフィルムが得られることを究明した。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.主たる繰り返し単位が下記式
Figure 0006495591
[式(A)中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、mおよびnは夫々独立して0〜4の整数を示す。]
で表される繰り返し単位(A)と下記式
Figure 0006495591
[式(B)中、R、Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基又はハロゲン原子であり、pおよびqは同一または異なる1〜4の整数を示す。Wは、下記式(W)
Figure 0006495591
であり、ここにRとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、又は炭素原子数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとRが結合して炭素環または複素環を形成しても良い。RとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数6〜12アリール基を表す。Rは1〜9のアルキレン基である。aは0〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。]
で表される繰り返し単位(B)を含み、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比(A/B)が5/95以上18/82以下の範囲で、20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.20〜0.33であり、ガラス転移温度が150〜180℃であるポリカーボネート樹脂から溶融押出法により成形された、波長550nmにおける面内位相差値Reの絶対値が20nm以下であり、厚み方向位相差値Rthの絶対値が50nm以下である光学フィルム。
2.厚みが30〜400μmの範囲である前項1記載の光学フィルム。
3.波長550nmにおける面内位相差値Reの絶対値が15nm以下であり、厚み方向位相差値Rthの絶対値が30nm以下である前項1記載の光学フィルム。
4.ゲル数が100個/m以下である前項1記載の光学フィルム。
5.熱による5%重量減少の温度が485℃以上であるポリカーボネート共重合体樹脂からなる前項1記載の光学フィルム。
6.前項1記載のポリカーボネート樹脂を溶融押出する光学フィルムの製造方法であって、溶融押出する際の樹脂温度が240℃〜300℃である光学フィルムの製造方法。
7.真空度10kPa以下に保持した真空ホッパーから供給したポリカーボネート樹脂を溶融押出する前項6記載の光学フィルムの製造方法。
8.前項1記載の光学フィルムを用いて形成させたタッチパネル用基板。
本発明は、フルオレン構造を有するビスフェノール化合物と芳香族ジオールにカーボネート前駆物質を特定の組成比で反応することで、耐熱性が高く、位相差が低く、流動性が良好でゲルの少ない光学フィルムとすることが可能となった。そのため、その奏する工業的効果は格別である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリカーボネート樹脂>
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、主たる繰り返し単位が、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とから構成される。
(繰り返し単位(A))
繰り返し単位(A)は、前記式(A)に示され、R、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、またはハロゲン基(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)が好ましい。さらに好ましくは、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、またはハロゲン基(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)である。
具体的には、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−n−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−tart−プロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどから誘導されるカーボネート単位である。特に、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンから誘導されるカーボネート単位が好ましい。
(繰り返し単位(B))
繰り返し単位(B)は、前記式(B)に示したように、芳香族構造を有するカーボネート単位である。前記式(B)中、R、Rは、水素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数7〜13のアラルキル基およびハロゲン原子から選ばれる1種が好ましい。R、Rは水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数6〜9のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、炭素原子数7〜9のアラルキル基およびハロゲン原子から選ばれる1種がより好ましく、水素原子、メチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基がさらに好ましい。p、qはR、Rがベンゼン環上に置換している数を示し、1〜4の整数である。
とRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基または炭素原子数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとRが結合して炭素環または複素環を形成しても良い。
とRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、または炭素原子数6〜12アリール基を表す。Rは1〜9のアルキレン基である。aは0〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。
具体的には、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサンなどが例示される。なかでも、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールMが耐熱性、流動性の観点から好ましく、特にビスフェノールAが高流動、入手容易性の観点から好ましい。これらは2種類以上併用して用いても良い。
(組成比)
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の組成比は、主たる繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)のモル比(A/B)が、5/95以上18/82以下である。モル比(A/B)が5/95〜18/82の範囲である本発明のポリカーボネート樹脂をフィルム化した場合、流動性に優れ、フィルムの耐熱性が良好で、ゲル数が少なく、複屈折が低く光学用途に適したものとなり好ましい。好ましくはモル比(A/B)が7/93以上16/84以下、より好ましくは9/91以上15/85以下、さらに好ましくは10/90以上14/86である。繰り返し単位(B)を含むことは、流動性の制御という点で好ましい。モル比(A/B)は、日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し算出する。主たる繰り返し単位とは、繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)の合計が全繰り返し単位を基準として60モル%以上であり、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは実質的に繰り返し単位(A)および繰り返し単位(B)からなる。
(比粘度:ηSP
本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)としては、0.20〜0.33の範囲である。0.20以上であると強度等が向上し、0.33以下であると流動特性が優れる。好ましくは0.24〜0.33の範囲であり、より好ましくは0.27〜0.33の範囲であり、特に好ましくは0.30〜0.33の範囲である。本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂と併用してよい。
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
なお、本発明のポリカーボネート樹脂の比粘度を測定する場合は、次の要領で行うことができる。すなわち、ポリカーボネート樹脂をその20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度をオストワルド粘度計を用いて求める。
(ガラス転移温度:Tg)
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは150〜190℃、より好ましくは152〜180℃、特に好ましくは154〜170℃の範囲である。Tgが下限以上であると耐熱安定性が良好となり、フィルムの加工工程でのフィルムの変形を抑制できる。またTgが上限を超えない範囲では、フィルムの製膜加工に高い温度は必要なく、従来と異なる特別な加工設備を必要としないため好ましい。Tgは、アルキル基の導入により低くなると推定される。Tgはティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
(ポリカーボネート共重合体樹脂の熱による5%重量減少の温度)
本発明の光学フィルムに用いるポリカーボネート共重合体樹脂は、熱による5%重量減少の温度が485℃以上、好ましくは490℃以上である。485℃未満である場合、溶融製膜時に分解が起こり易く、異物が発生し表示品位に影響を与える場合がある。この温度は、DUPONT社(株)製のTGA 951 Thermogravimetric analyzerを用いて、40ml/minの窒素気流下、20℃/minの昇温速度で熱重量測定し、5%重量が減少した時の温度を求めた。
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。本発明のポリカーボネート樹脂は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
かかる単官能フェノール類としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよい。
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm−クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.97〜1.10モル、より好ましは1.00〜1.06モルである。
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
アルカリ金属化合物としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
アルカリ土類金属化合物としては、具体的に、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム等が例示される。
含窒素化合物としては、具体的に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が例示される。また、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が例示される。また、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
金属化合物としては、亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10−9〜1×10−2当量、好ましくは1×10−8〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−7〜1×10−3当量の範囲で選ばれる。
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、なかでもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
またスルホン酸のエステルとして、具体的に、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が例示される。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が特に好ましい。
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5〜50モルの割合で、より好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用することができる。
また、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
<光学フィルム>
本発明の光学フィルムは、具体的には、位相差フィルム、プラセル基板フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルム、輝度上昇フィルム、光ディスクの保護フィルム、拡散フィルム等の用途が挙げられる、なかでも位相差フィルム、偏光板保護フィルム、反射防止フィルムが好ましい。
光学フィルムの製造方法としては、生産性の点から溶融押出法が採用される。
溶融押出法においては、Tダイを用いて樹脂を押出冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。このときの溶融押出樹脂温度はポリカーボネート樹脂の分子量、Tg、溶融流動特性等から決められるが、240〜300℃の範囲が好ましく、250℃〜290℃の範囲がより好ましい。240℃より低いと粘度が高くなりポリマーの配向、応力歪みが残りやすく、また、300℃より高いと熱劣化によるゲル化、着色、Tダイからのダイライン(筋)等の問題が起きやすい。また、減圧状態に保持できる真空ホッパーを使用することが好ましい。真空度は10kPa以下が好ましく、5kPa以下がさらに好ましく、3kPa以下が特に好ましい。
未延伸の光学フィルムの厚みとしては、30〜400μmの範囲が好ましく、より好ましくは40〜300μmの範囲である。かかる未延伸光学フィルムは、ディスプレイ用基板やタッチパネル用基板として好適に用いられる。
未延伸光学フィルムは、波長550nmにおける面内位相差値Reの絶対値が20nm以下であることが好ましく、15nm以下であることがより好ましい。また、波長550nmにおける厚み方向位相差値Rthの絶対値が50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。上記範囲であるとディスプレイ用基板やタッチパネル用基板として使用した際に、ディスプレイやタッチパネルの画像のぼやけがなくなり、高精細な画像を表示することができ好ましい。
かかる未延伸光学フィルムは延伸配向することにより位相差を調整しても良い。なお、フィルムの製膜する機械軸方向を製膜方向または縦方向と称し、製膜方向とフィルムの厚み方向に直交する方向を横方向または幅方向と称する。延伸方法は、縦一軸延伸、テンター等を用いる横一軸延伸、あるいはそれらを組み合わせた同時二軸延伸、逐次二軸延伸等公知の方法を用いることが出来る。また連続で行うことが生産性の点で好ましいが、バッチ式で行っても良い。延伸温度は、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)に対して、好ましくは(Tg−20℃)〜(Tg+50℃)の範囲、より好ましくは(Tg−10℃)〜(Tg+30℃)の範囲である。この温度範囲であれば、ポリマーの分子運動が適度であり、延伸による緩和が起こり難く、配向制御が容易になり所望する面内位相差が得られ易いため好ましい。延伸温度が低いと位相差が発現しやすくなる傾向がある。
また、得られる光学フィルムのゲル数が100個/m以下であることが好ましく、50個/m以下であることがより好ましい。ゲル数が上記範囲内であるとディスプレイ用基板やタッチパネル用基板として使用した際に、ディスプレイやタッチパネルが高精細な画像を表示することができ好ましい。
以下実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「重量部」を意味する。実施例において使用した使用樹脂及び評価方法は以下のとおりである。
1.ポリマー組成比(NMR)
日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRにて測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
2.比粘度測定
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
3.ガラス転移温度測定
ポリカーボネート樹脂8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC−2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
4.熱による5%重量減少の温度(Td)
DUPONT社(株)製のTGA 951 Thermogravimetric analyzerを用いて、40ml/minの窒素気流下、20℃/minの昇温速度で熱重量測定し、5%重量が減少した時の温度を求めた。
5.Haze
得られたフィルムを用いて濁度計NDH−2000型(日本電色工業(株)製)を使用し、JIS K7105に準拠して、フィルムのHazeを測定した。
6.ゲル数
得られたフィルムをカラー3Dレーザ顕微鏡を用いて、500mm×1000mmに存在する長軸の直径が300μm以上の干渉縞を有するゲル数をフィルム1m中に換算して求めた。
7.位相差測定
延伸した光学フィルムを日本分光(株)製 Spectroellipsometer M−220を使用して測定した。
[実施例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
温度計、撹拌機、還流冷却器付き反応器にイオン交換水21540部、48%水酸化ナトリウム水溶液4930部を入れ、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称することがある)970部および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下“BPA”と略称することがある)3321部、ハイドロサルファイト15部を溶解した後、塩化メチレン14530部を加えた後撹拌下15〜25℃でホスゲン2200部を60分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール104.8部および48%水酸化ナトリウム水溶液705部を加え、乳化後、トリエチルアミン5.9部を加えて28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸で酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになったところで、ニーダーにて塩化メチレンを蒸発して、白色のポリマーを得た。得られたポリカーボネート樹脂の比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に、40mmφの単軸押出機に真空度を1kPa以下に調整した真空ホッパーと幅650mmのTダイを取り付け、得られたポリカーボネート樹脂を280℃でフィルム製膜することにより透明な厚さ100μmの押出未延伸フィルムを得た。得られた光学フィルムの位相差測定、ゲル数、Hazeを測定した。また長さ100mm×幅70mmサイズのサンプルをTg+10℃の温度にて長さ方向に1.5倍で一軸延伸し位相差を測定した。結果を表1に示した。
[実施例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF776部、BPA3439部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Haze、延伸後の位相差を測定した。結果を表1に示した。
[実施例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF647部、BPA3517部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Haze、延伸後の位相差を測定した。結果を表1に示した。
[実施例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF453部、BPA3634部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Haze、延伸後の位相差を測定した。結果を表1に示した。
[実施例5]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
ビスフェノールフルオレン(以下“BPFL”と略称することがある)599部、BPA3516部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Haze、延伸後の位相差を測定した。結果を表1に示した。
[比較例1]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF1294部、BPA3126部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Haze、延伸後の位相差を測定した。結果を表1に示した。
[比較例2]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF1552部、BPA2970部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Haze、延伸後の位相差を測定した。結果を表1に示した。
[比較例3]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF1941部、BPA2735部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Haze、延伸後の位相差を測定した。結果を表1に示した。
[比較例4]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF970部、BPA3321部、p−tert−ブチルフェノール98.8部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Haze、延伸後の位相差を測定した。結果を表1に示した。
[比較例5]
<ポリカーボネート樹脂の製造>
BCF259部、BPA3751部を用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂を得た。該ペレットの比粘度、ガラス転移温度を測定し、表1に記載した。
<光学フィルムの製造>
次に得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Haze、延伸後の位相差を測定した。結果を表1に示した。
[比較例6]
<光学フィルムの製造>
比較例1で得られたポリカーボネート樹脂を用いて、真空ホッパーを使用しなかった以外は実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Haze、延伸後の位相差を測定した。結果を表1に示した。
[比較例7]
<光学フィルムの製造>
比較例1で得られたポリカーボネート樹脂を用いて、310℃でフィルム製膜した以外は実施例1と同様にフィルムを製膜し、位相差測定、ゲル数、Haze、延伸後の位相差を測定した。結果を表1に示した。
Figure 0006495591
本発明の光学フィルムは、ディスプレイ用基板やタッチパネル用基板などの光学フィルムとして有用である。

Claims (8)

  1. 主たる繰り返し単位が下記式
    Figure 0006495591
    [式(A)中、RおよびRは夫々独立して、水素原子、炭素原子数1〜10の芳香族基を含んでもよい炭化水素基またはハロゲン原子を示し、mおよびnは夫々独立して0〜4の整数を示す。]
    で表される繰り返し単位(A)と下記式
    Figure 0006495591
    [式(B)中、R、Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよい炭化水素基又はハロゲン原子であり、pおよびqは同一または異なる1〜4の整数を示す。Wは、下記式(W)
    Figure 0006495591
    であり、ここにRとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数2〜5のアルケニル基、又は炭素原子数7〜17のアラルキル基を表す。また、RとRが結合して炭素環または複素環を形成しても良い。RとRはそれぞれ、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、又は炭素原子数6〜12アリール基を表す。Rは1〜9のアルキレン基である。aは0〜20の整数を表し、bは1〜500の整数を表す。]
    で表される繰り返し単位(B)を含み、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)とのモル比(A/B)が5/95以上18/82以下の範囲で、20℃の塩化メチレン溶液で測定された比粘度が0.20〜0.33であり、ガラス転移温度が150〜180℃であるポリカーボネート樹脂から溶融押出法により成形された、波長550nmにおける面内位相差値Reの絶対値が20nm以下であり、厚み方向位相差値Rthの絶対値が50nm以下である光学フィルム。
  2. 厚みが30〜400μmの範囲である請求項1記載の光学フィルム。
  3. 波長550nmにおける面内位相差値Reの絶対値が15nm以下であり、厚み方向位相差値Rthの絶対値が30nm以下である請求項1記載の光学フィルム。
  4. ゲル数が100個/m以下である請求項1記載の光学フィルム。
  5. 熱による5%重量減少の温度が485℃以上であるポリカーボネート共重合体樹脂からなる請求項1記載の光学フィルム。
  6. 請求項1記載のポリカーボネート樹脂を溶融押出する光学フィルムの製造方法であって、溶融押出する際の樹脂温度が240℃〜300℃である光学フィルムの製造方法。
  7. 真空度10kPa以下に保持した真空ホッパーから供給したポリカーボネート樹脂を溶融押出する請求項6記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 請求項1記載の光学フィルムを用いて形成させたタッチパネル用基板。
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