JP6492632B2 - ジルコニア焼結体及びその用途 - Google Patents

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本発明は、異なる色調を有するジルコニアが焼結により接合したジルコニア焼結体に関する。より詳細には、異なる色調を有するジルコニアが焼結により接合したジルコニア焼結体であって、一方のジルコニアが他方のジルコニアに模様を形成しているジルコニア焼結体に関する。
高靱性及び高強度であることに加えて光沢感を有することから、ジルコニア焼結体は高級感を呈する部材とすることができる。そのため、ジルコニア焼結体は、例えば、高級時計部品や装飾品など、各種部材として利用されている。高級感を呈する部材であるにもかかわらず、ジルコニア焼結体の色調は単色である。さらに、通常、色調の異なるジルコニアは焼結挙動が互いに異なる。そのため、色調の異なるジルコニアを同時に焼結した場合、割れや亀裂、ひずみ等が生じ、欠陥のないジルコニア焼結体を得ることはできなかった。そのため、2以上の異なる色調を有するジルコニア焼結体、及び、これからなる部材を得ることはできなかった。
ジルコニア焼結体を用いた2以上の異なる色調を有する部材とするため、ジルコニア焼結体と、ジルコニア焼結体以外の材料であって当該ジルコニア焼結体と異なる色調を有するもの、とを組合せた部材が検討されている(例えば、特許文献1乃至3)。しかしながら、これらの部材は、材料間の質感が大きく異なる。そのため、得られた部材はセラミックスのみからなる部材の意匠性とは異なる意匠性を示すものであり、特にジルコニア焼結体特有の高級感を損ねるものであった。
また、接着材等の中間層を介して2以上のセラミックスを接合したセラミックス接合体が従来から知られている。しかしながら、セラミックス接合体は中間層を起点とした破壊が生じやすい。そのため、高靱性及び高強度を特徴とするジルコニア焼結体においては、中間層を介した接合体とすることは好ましくない。
一方、特許文献4では、2つの色調の異なるジルコニア成形体を焼結することにより得られたジルコニア焼結体が報告されている。特許文献4では、FeCrNiスピネルを含むジルコニア粉末の成形体と、CoAlを含むジルコニア粉末の成形体とを焼結することにより得られたジルコニア焼結体、が開示されている。
特開2011−191321号公報 特開平08−081255号公報 特許4370361号 特開平08−081255号公報
特許文献4で開示された焼結体はジルコニア焼結体からなるものであり、これは部材間の質感の相違がない。しかしながら、当該焼結体は、異なる色調を有するジルコニア焼結体の間に目視できる「色の移行帯域」を有する。このような色の移行帯域は「色滲み」として視認される。色滲みによってジルコニア焼結体同士の境界が不明確となる。その結果、ジルコニア焼結体とジルコニア焼結体とが接している部分、特に一方のジルコニア焼結体で形成される模様、が不明確になる。このような不明確な模様はジルコニア焼結体の高級感をさらに損なう印象を与える。
特許文献4では色の移行帯域を有さないジルコニア焼結体も開示されている。しかしながら、当該ジルコニア焼結体は、焼結が十分に進行していないため、ジルコニア焼結体同士の境界に隙間を有するものであった。すなわち、特許文献4における色の移行帯域を有さないジルコニア焼結体は、当該隙間のために色が移行していないに過ぎなかった。当該隙間は、いずれのジルコニア焼結体とも異なる色調として視認され、部材としての審美性を低下させる。これに加え、ジルコニア焼結体同士の境界に存在する隙間は破壊の起点となる。そのため、この様なジルコニア焼結体は、著しく機械的強度が弱く、部材として壊れやすいものであった。
さらに、特許文献4で開示された焼結体は、色滲みや隙間が部材の審美性に影響しない程度まで模様を大きくする必要があるため、微細な模様を有する焼結体とすることができない。
本発明は、これらの問題を解決し、2以上の異なる色調を有するジルコニア焼結体であって、高級感を呈する審美性を有し、なおかつ、部材として使用するに十分な強度を有したジルコニア焼結体を提供することを目的とする。特に、本発明は、白色を呈するジルコニア焼結体と、青色を呈するジルコニア焼結体とからなる多色ジルコニア焼結体であって、高級感を呈する審美性を有し、なおかつ、部材として使用するに十分な強度を有したジルコニア焼結体を提供することを別の目的とする。
本発明者らは、2以上の異なる色調を有するジルコニア焼結体、特に2以上の異なる色調を有するジルコニア焼結体であって、一方のジルコニアが他方のジルコニアの表面に模様として形成されているジルコニア焼結体について検討した。
その結果、スピネル酸化物を含有するジルコニア成形体とスピネル酸化物以外を含有するジルコニア成形体とを同時に焼結することで、2以上の異なる色調を有するジルコニア焼結体を得られることを見出した。更には、この様なジルコニア焼結体は、ジルコニア焼結体とジルコニア焼結体とがその接合面として粒界を形成し、なおかつ、当該界面が色滲み及び隙間を有さないことと見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は第一のジルコニア焼結体と第二のジルコニア焼結体を含むジルコニア焼結体であって、該第一のジルコニア焼結体が酸化アルミニウムを含有するジルコニア焼結体であり、該第二のジルコニア焼結体がコバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物を含有するジルコニア焼結体であり、該第一のジルコニア焼結体と該第二のジルコニア焼結体とが粒界を形成し、該粒界が隙間及び色滲みを有さないことを特徴とするジルコニア焼結体、である。
以下、本発明のジルコニア焼結体について説明する。
本発明のジルコニア焼結体は、第一のジルコニア焼結体と第二のジルコニア焼結体を含むジルコニア焼結体(以下、「多色ジルコニア焼結体」ともいう。)である。第一のジルコニア焼結体(以下、「淡色焼結体」ともいう。)と第二のジルコニア焼結体(以下、「濃色焼結体」ともいう。)は、互いに異なる色調を有するジルコニア焼結体である。本発明の多色ジルコニア焼結体は、スピネル酸化物を着色材として含有する濃色焼結体と、スピネル酸化物以外を着色剤として含有する淡色焼結体を含むこと、好ましくは実質的に濃色焼結体と淡色焼結体とからなることで、はじめてジルコニア焼結体のみからなり、なおかつ、高級感を呈する審美性を有する部材とすることができる。
本発明の多色ジルコニア焼結体において、淡色焼結体と濃色焼結体とは粒界を形成しており、これにより両焼結体が接合している。さらには、淡色焼結体と濃色焼結体とは焼結することに形成された粒界(以下、「界面」ともいう。)を有している。界面が焼結していることにより、該界面が亀裂やひずみなどの欠陥を有さない接合面となる。これにより、界面が破壊の起点とならなくなる。そのため、本発明の多色ジルコニア焼結体は、ジルコニア焼結体本来の強度が求められる部材としても使用することができる。
淡色焼結体と濃色焼結体とが焼結することで、これらが連続したひとつのジルコニア焼結体となる。そのため、本発明の多色ジルコニア焼結体は、淡色焼結体の結晶粒子同士が焼結した構造、及び、濃色焼結体の結晶粒子同士が焼結した構造に加え、淡色焼結体の結晶粒子と、濃色焼結体の結晶粒子とが焼結した結晶粒子構造を有した粒子構造を含む。
従って、本発明の多色ジルコニア焼結体は、このような粒子構造を有さないジルコニア複合体やジルコニア接合体とは異なる。ジルコニア複合体やジルコニア接合体は、淡色焼結体の結晶粒子同士が焼結した構造、及び、濃色焼結体の結晶粒子同士が焼結した構造のみからなる。ジルコニア複合体として、例えば、淡色焼結体と濃色焼結体とを別々に焼結した後、これらを組合せて得られたジルコニア複合体を挙げることができる。ジルコニア接合体として、淡色焼結体と濃色焼結体とが接着層その他の中間層を介して一体化されたジルコニア接合体を挙げることができる。
本発明における界面は、走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」とする。)などの電子顕微鏡観察により得られる電子像又は光学顕微鏡による観察から確認することができる。すなわち、淡色焼結体と濃色焼結体とは異なる色調を有する。そのため、光学顕微鏡観察において、色調の変化している部分をもって界面を確認することができる。また、淡色焼結体と濃色焼結体は異なる着色成分を含有する。着色成分の相違により、電子像が異なる色調を呈するため、電子像において色調が変化している部分をもって界面を確認することができる。
図1は本発明の多色ジルコニア焼結体の一例を示す光学顕微鏡写真である。図1において、(1)の領域は淡色焼結体、(2)の領域は濃色焼結体である。図1より、光学顕微鏡写真における色調の違いから(1)及び(2)の領域の境界部分である界面(3)を確認することができる(例えば、図1中の破線丸部)。
また、図2は本発明の多色ジルコニア焼結体のSEM観察により得られた二次電子像の一例を示す図である。図2において、(1)の領域は淡色焼結体、(2)の領域は濃色焼結体である。図2より、反射電子像における色調の違いから(1)及び(2)の領域の境界部分である界面(3)を確認することができる(例えば、図2中の矢印)。
本発明の多色ジルコニア焼結体は、淡色焼結体と濃色焼結体が焼結により接合している。さらに、淡色焼結体又は濃色焼結体の何れが一方のジルコニア焼結体が凹部を有し、他方のジルコニア焼結体が凸部を有しており、当該凹部と凸部とが組み合わさるように、淡色焼結体と濃色焼結体とが積層して接合していることが好ましい。このようなジルコニア焼結体同士の組み合わせは、段差や隙間のない模様として本発明の多色ジルコニア焼結体の表面に模様を形成することができる。
本発明の多色ジルコニア焼結体は、この様に淡色焼結体と濃色焼結体が界面を有しており、なおかつ、該界面は隙間を有さない。これにより、本発明の多色ジルコニア焼結体が、ジルコニア焼結体のみから作り出される審美性を呈し、本発明の多色ジルコニア焼結体をより高級感のある印象を与える部材とすることができる。これに加え、界面に隙間がないことにより、界面を起点とする破壊が生じにくくなるため、ジルコニア焼結体本来の機械的特性が損なわれることがない。
本発明において、隙間とは、淡色焼結体と濃色焼結体との接合面である界面及びその近傍に形成した空隙であって、光学顕微鏡観察や倍率500倍以下のSEM観察により得られる二次電子像又は反射電子像の少なくともいずれかの電子像(以下、これらをまとめて単に「電子像」ともいう。)により確認できるものである。
本発明の多色ジルコニア焼結体は倍率500倍超のSEM観察により得られる二次電子像や反射電子像により確認できる空隙などの微細な空隙を含まないことが好ましい。しかしながら、各種部材として本発明の多色ジルコニア焼結体を使用する場合、倍率500倍超のSEM観察や透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」とする。)観察により得られる電子像において、観察される空隙を有していてもよい。このような微細な空隙は、実施的に部材の審美性に影響を及ぼさない。
図2において、二次電子像における色調の違いから(1)及び(2)の領域の境界部分である界面(3)を確認することができる(例えば、図2中の矢印部)。さらに、図2で確認された界面は連続的な界面であり、当該界面の中に空隙が確認されない。一方、図3は、界面に隙間を有する多色ジルコニア焼結体を、倍率500倍でSEM観察して得られた反射電子像を示す図である。図3中、(1)は淡色焼結体、及び、(2)は濃色焼結体である。両者の間の界面は連続的に形成された界面ではなく、部分的に形成された界面であった(図3中、破線丸部)。さらに、当該界面の一部は剥離して、隙間が形成されていることが確認できる(図3中、矢印部)。
本発明の多色ジルコニア焼結体は、淡色焼結体と濃色焼結体とが界面を有しており、なおかつ、該界面に色滲みを有さない。これにより、淡色焼結体と濃色焼結体の境界が明確となるため、本発明の多色ジルコニア焼結体を明確な模様を有する部材とすることができる。さらには、一方のジルコニア焼結体により形成される模様を、微細な模様とすることができる。
色滲みとは、淡色焼結体の色調と、濃色焼結体の色調とが混合した色調を呈する部分であって、目視又は光学顕微鏡で観察されるものである。さらに、界面の色滲みとは、淡色焼結体又は濃色焼結体のいずれか一方のジルコニア焼結体において観察される、他方のジルコニア焼結体の色調を含む界面及び界面近傍の領域(以下、「移行領域」ともいう。)であって、目視又は光学顕微鏡で観察されるものである。本発明においては、淡色焼結体において観察される、濃色焼結体の色調を含む界面及び界面近傍の領域であって、目視又は光学顕微鏡で観察されるものを特に意味する。界面の色滲みの有無は、目視又は、例えば、倍率10〜100倍の光学顕微鏡で多色ジルコニア焼結体を観察することで、確認することができる。
図1は本発明の多色ジルコニア焼結体の光学顕微鏡写真を示す図である。図1において、光学電子顕微鏡写真における色調の違いから(1)及び(2)の領域の境界部分である界面(3)が明確であり、本発明の多色ジルコニア焼結体が色滲みを有さないことが確認できる。一方、図4は色滲みを有する多色ジルコニア焼結体の一例を示す光学顕微鏡写真である。図4において、(1)の領域は淡色焼結体、(2)の領域は濃色焼結体である。図4より、(1)及び(2)の領域の境界部分がぼやけており界面付近が不鮮明になっている(例えば、図4中の破線四角部)。このような多色ジルコニア焼結体は界面付近の色滲みを確認することができる。
本発明の多色ジルコニア焼結体は、目視又は光学顕微鏡で観察できない移行領域を有していてもよい。目視又は光学顕微鏡で観察できない移行領域は、本発明の多色ジルコニア焼結体を各種部材として使用した際の審美性に実質的な影響を与えない。
目視又は光学顕微鏡で観察できない移行領域として、淡色焼結体又は濃色焼結体のいずれか一方のジルコニア焼結体の領域であって、一方のジルコニア焼結体に含まれる着色成分を含む他方のジルコニア焼結体の領域を挙げることができる。
移行領域に含まれる着色成分は、3重量%以下、更には2.5重量%以下、また更には2重量%以下であれば、色滲みとはならない。ここで、移行領域の有無及びその着色成分の含有量は、界面から一定距離の淡色焼結体の領域の電子線マイクロアナライザの定量点分析(以下、「EPMA分析」とする。)により得られる全元素の重量に対する着色成分及び重量割合から確認することができる。
図5はEPMA分析により移行領域の測定を示す模式図である。図5において、(1)は淡色焼結体の領域、(2)は濃色焼結体の領域、及び(3)は界面である。さらに、(4)は界面から一定距離にある淡色焼結体の領域、及び(5)は当該(4)領域を中心として形成した直径10μmの円である。EPMA分析では、当該(5)に含まれる全元素を分析し、着色成分が含まれる場合、当該領域は移行領域となる。本発明においては、界面からの距離が異なる複数点の領域(図5中(4)に相当する領域)についてEPMA分析を行い、界面からの最大距離に相当する着色成分を含む領域を、試料における各着色成分の移行領域とした。
移行領域は着色成分が含まれる界面からの最大距離に相当する領域であり、界面から200μm以内の領域、更には150μm以内の領域、また更には100μm以内の領域を挙げることができ、特に界面から200μm以内の淡色焼結体の領域、更には150μm以内の淡色焼結体の領域、また更には100μm以内の淡色焼結体の領域を挙げることができる。
移行領域が上記の範囲の領域及び着色剤の量であれば、本発明の多色ジルコニア焼結体を部材として使用する際の審美性に与える色滲みを有さない。
移行領域に含まれる着色成分としては、濃色焼結体に含まれるスピネル酸化物を構成する金属元素を挙げることができ、更には鉄(Fe)又はコバルト(Co)少なくともいずれかを挙げることができる。
例えば、本発明の多色ジルコニア焼結体に含まれる淡色焼結体は、移行領域が界面から100μm以内の領域であり、当該領域に鉄を1重量%以下、更には0.6重量%以下、また更には0.3重量%以下含むが、移行領域を超える領域には鉄を含まないことを挙げることができる。この場合、鉄の移行領域は界面から100μm以内の領域となる。
さらに、本発明の多色ジルコニア焼結体に含まれる淡色焼結体は、界面から100μm以内の領域、更には50μm以内の領域にコバルトを0.5重量%以下、更には0.3重量%以下含み、さらに、界面から100μmを超える領域にはコバルトを含まないことを挙げることができる。この場合、コバルトの移行領域は界面から50μm以内である。但し、50μm以内の領域にコバルトを実質的にを含まない場合(0重量%)は、コバルトの移行領域を有さない、又は、少なくとも界面から50μmよりも界面近傍の領域となる。
本発明の多色ジルコニア焼結体は、淡色焼結体と濃色焼結体のいずれか一方のジルコニア焼結体が、他方のジルコニア焼結体の表面に模様を形成していることが好ましい。本発明の多色ジルコニア焼結体は、従来と比べてより微細な模様を形成することができる。これより、更に意匠性が高くなるだけでなく、より広い用途で使用される部材となる多色ジルコニア焼結体を提供することができる。
本発明において、模様とは、淡色焼結体又は濃色焼結体のいずれか一方のジルコニア焼結体の一部に形成された、他方のジルコニア焼結体による線図、図形又はこれらの組合せである。具体的な線図として実線、破線、波線などの線形、数字や文字などを例示することができ、図形として丸状、多面体形状などの幾何学的形状などを例示することができる。
本発明の多色ジルコニア焼結体は、濃色焼結体の表面に淡色焼結体が模様を形成していてもよく、一方、淡色焼結体の表面に濃色焼結体が模様を形成してもよい。
本発明の多色ジルコニア焼結体は、従来の多色ジルコニア焼結体で得られていた大きさの模様を形成すことができる。これに加え、本発明の多色ジルコニア焼結体は従来よりも微細な範囲であっても明確な模様を形成することができる。模様は、例えば、1cm以下の領域、更には1mm以下の領域、また更には0.5mm以下の領域、また更には0.05mm以下の領域、また更には0.005mm以下の領域であれば明確に形成することができる。さらに、本発明の多色ジルコニア焼結体が有する模様として、例えば、150μm程度の太さの線からなる線図や、150μm程度の間隔の線図や図形、直径1mm以下、更には直径0.5mm以下の図形を挙げることができる。
本発明の多色ジルコニア焼結体、及び、これが有する模様の形状は任意であるが、例えば、本発明の多色ジルコニア焼結体の形状及び模様の一例を図6乃至図11に示す。
例えば、図6は時計用ベゼルリングの形状を有し、当該ベゼルリング表面にする多色ジルコニア焼結体の模式図である。左図は正面図、中図は側面図、及び右図は背面図である。正面図は、ベゼルリング表面が濃色焼結体からなり(図6左図中(2))、該表面上に淡色焼結体からなるアラビア数字の形状の模様(図6左図中(1))を有することを示している。側面は、当該多色ジルコニア焼結体は、アラビア数字の形状の凸部を有する淡色焼結体上に、当該アラビア数字と同じ形状の凹部を有する濃色焼結体が積層していることを示している(図6中図)。また、淡色焼結体は中空部を有するリング状の形状をしており、淡色焼結体と濃色焼結体とが積層している(図6右図)。
また、例えば、図7は時計用文字盤の形状を有する多色ジルコニア焼結体の模式図である。左図は正面図、及び右図は背面図である。図7において円板状の形状からなる焼結体であり、表面が濃色焼結体からなる。当該焼結体の表面に、アナログ時計の1時〜12時の各時刻に相当する部分の線図、並びに、3、6、9及び12のアラビア数字の形状の模様を有する形状の淡色焼結体を有することを示している。また、淡色焼結体は円板状であり、淡色焼結体と濃色焼結体とが積層している(図7右図)。
図8乃至図11は、それぞれブレスレットの形状、筐体の形状、及び携帯電話用カバーの形状、円板状の形状を有する多色ジルコニア焼結体を示す模式図である。
淡色焼結体と濃色焼結体とが焼結により接合しているため、本発明の多色ジルコニア焼結体は高い密度を有する。本発明の多色ジルコニア焼結体の相対密度は99.5%以上、更には99.7%以上であることを挙げることができる。相対密度が99.5%以上であることで、界面に隙間がないことはもちろん、界面以外の部分における欠陥も少なくなる。これにより、本発明の多色ジルコニア焼結体の機械的強度がより高くなりやすい。
なお、ジルコニア複合体やジルコニア接合体は、異なるジルコニア焼結体を焼結後に組み合わせたものである。そのため、これらを構成するジルコニア焼結体の相対密度がそれぞれ99.5%以上であったとしても、ジルコニア複合体やジルコニア接合体としての相対密度が99.5%以上とはならない。
本発明において、多色ジルコニア焼結体の相対密度は以下の(1)式から求めることができる。
相対密度(%) = 多色ジルコニア焼結体の実測密度(g/cm)/多色ジルコニア焼結体の理論密度(g/cm)×100 ・・・(1)
多色ジルコニア焼結体の実測密度(焼結体密度)はアルキメデス法により求めることができる。
さらに、多色ジルコニア焼結体の理論密度は、淡色焼結体及び濃色焼結体の各密度及び体積比により以下の式から算出することができる。
M =(Ma・X+Mb・Y)/(X+Y)・・・(1’)
上記式において、Mは多色ジルコニア焼結体の理論密度(g/cm)、Maは淡色焼結体の理論密度(g/cm)、Mbは濃色焼結体の理論密度(g/cm)、Xは多色ジルコニア焼結体の体積に対する淡色焼結体の体積比、及び、Yは多色ジルコニア焼結体の体積に対する濃色焼結体の体積比である。
(1’)式中、Ma及びMbは、淡色焼結体及び濃色焼結体の組成により異なる。Ma及びMbは各焼結体を構成する化合物の理論密度及びこれら化合物の重量割合から求めればよい。各焼結体を構成する化合物の理論密度として、例えば、以下のものが挙げられる。
黒色ジルコニア :6.05g/cm
3mol%イットリア含有ジルコニア :6.09g/cm
酸化アルミニウム :3.98g/cm
酸化アルミニウムコバルトスピネル :4.42g/cm
酸化鉄 :5.24g/cm
(1’)式中、Xは、多色ジルコニア焼結体の重量に対する淡色焼結体の重量割合にMaを掛けて求まる体積比であり、Yは多色ジルコニア焼結体の重量に対する濃色焼結体の重量割合にMbを掛けて求まる体積比である。
淡色焼結体及び濃色焼結体は、2mol%以上6mol%以下、更には2.5mol%以上4mol%以下、また更には2.5mol%以上3.5mol%以下、また更には2.8mol%以上3.2mol%以下の安定化剤を含むことが好ましい。上記の範囲の安定化剤を含むことで、これらのジルコニア焼結体が、結晶構造が正方晶からなるジルコニア焼結体となる。これにより、高い機械的強度を有する焼結体となる。
安定化剤は、イットリア、カルシア、マグネシア、及びスカンジアからなる群から選ばれる少なくとも1種、更にはイットリアを挙げることができる。
本発明の多色ジルコニア焼結体に含まれる淡色焼結体は、酸化アルミニウム(アルミナ)を含有するジルコニア焼結体である。これにより、淡色焼結体が、スピネル酸化物を含有する濃色焼結体より淡い色調を有するジルコニア焼結体となる。
淡色焼結体の呈色は所望の色調であればよく、例えば、L*a*b*表色系おけるL*の値が、濃色焼結体よりも20以上高いことが挙げられる。更には、淡色焼結体のL*a*b*表色系おけるL*が55以上であることが例示できる。
本発明において淡色焼結体は白色ジルコニア焼結体であり、酸化アルミニウム(アルミナ)を含有する。アルミナを含有することで、ジルコニア結晶粒子の間にアルミナ粒子が分散する。これにより、ジルコニア本来の透明性が抑制され、淡色焼結体が明確な白色を呈するジルコニア焼結体となる。さらに淡色焼結体が安定化剤及びアルミナのみを含むことで、焼結時に隙間及び色滲みのない界面の形成が促進されやすくなる。
アルミナの含有量は、淡色焼結体重量に対するアルミナ重量として0.25重量%以上20重量%以下、更には1重量%以上15重量%以下、また更には5重量%以上10重量%以下であることが好ましい。この範囲のアルミナを含有することで、淡色焼結体の色調がより鮮明な白色となる。さらにアルミナの含有量が上記の範囲であれば、アルミナ粒子に阻害されることなくジルコニアの焼結が進行する。
淡色焼結体の呈色はL*a*b*表色系におけるL*、a*及びb*(以下、それぞれを単に「L*」、「a*」及び「b*」ともいう。)が、L*=85以上100以下、a*=−2以上2以下、及び、b*=−2以上3.0以下であること、更にはL*=85以上95以下、a*=−1以上−0.5以下、及び、b*=0以上1.5以下であること、また更にはL*=85以上93以下、a*=−1以上−0.4以下、及び、b*=0.5以上1.3以下であることが好ましい。明度Lが85以上であり、なおかつ、a及びbがどちらもゼロ付近であることで、淡色焼結体が着色のない鮮明な純白色を呈する白色ジルコニア焼結体となる。これにより淡色焼結体と組合せることで、より審美性の高い部材とすることができる。
本発明の多色ジルコニア焼結体に含まれる濃色焼結体はコバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物(以下、単に「スピネル酸化物」ともいう。)を含有するジルコニア焼結体である。スピネル酸化物を含有することで、淡色焼結体の色調と比べ、より濃い色調を有するジルコニア焼結体となる。
濃色焼結体の呈色は、例えば、淡色焼結体よりもL*の値が20以上低いことが挙げられる。更には、濃色焼結体のL*が55未満であることが例示できる。
本発明において濃色焼結体は青色ジルコニア焼結体である。濃色焼結体が含有するスピネル酸化物は、コバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物である。これにより濃色焼結体が青色を呈するジルコニア焼結体となる。
コバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物の含有量は、濃色焼結体重量に対する当該スピネル酸化物重量として0.25重量%以上13重量%以下、更には1重量%以上10重量%以下、また更には3重量%以上5重量%以下であることが好ましい。この範囲で当該スピネル酸化物を含有することで、焼結体の色調がより鮮明な青色となる。
好ましいスピネル酸化物として、CoAlを挙げることができる。
さらに、スピネル酸化物がコバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物である場合、濃色焼結体は、コバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物、及び、遷移金属酸化物を含有すること、更には酸化鉄(Fe)を含有することが好ましい。これにより、濃色焼結体がより深みのある青色を呈する。青色を呈色させるため、遷移金属酸化物の含有量は、濃色焼結体の重量に対して0.1重量%以上2重量%以下であることが挙げられる。
上記のスピネル酸化物を含有することで、濃色焼結体の呈色はL*=20以上60以下、a*=−20以上20以下、及び、b*=−70以上−20以下であること、更にはL*=30以上40以下、a*=−20以上15以下、及び、b*=−70以上−40以下であること、また更にはL*=30以上35以下、a*=0以上15以下、及び、b*=−65以上−60以下であることが好ましい。L*a*b*がこの範囲となることで、濃色焼結体が赤味を帯びていない、真青色を呈する青色ジルコニア焼結体となる。これにより、より高級感のある青色ジルコニア焼結体とすることができる。
次に、本発明の多色ジルコニア焼結体の製造方法を説明する。
本発明の多色ジルコニア焼結体は酸化アルミニウムを含有するジルコニア粉末、又は、コバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物を含有するジルコニア粉末のいずれか一方のジルコニア粉末を成形し一次成形体を得る一次成形工程、一次成形工程以下の成形温度で該一次成形体上に他方のジルコニア粉末を成形して二次成形体を得る二次成形工程、該二次成形体を1300℃以上で焼成し予備焼結体を得る焼結工程、及び、該予備焼結体を1250℃以上1650℃以下、100MPa以上250MPa以下で熱間静水圧プレス処理する熱間静水圧プレス処理工程、を含む製造方法により製造することができる。
一次成形工程では、一次成形体を得る。一次成形体は酸化アルミニウムを含有するジルコニア粉末(以下、「淡色粉末」ともいう。)を成形した成形体(以下、「淡色成形体」ともいう。)、又は、スピネル酸化物を含有するジルコニア粉末(以下、「濃色粉末」ともいう。)を成形した成形体(以下、「濃色成形体」ともいう。)のいずれかである。
一次成形工程における成形方法は任意である。成形方法としてプレス成形、冷間静水圧プレス、鋳込み成形、シート成形及び射出成形の群からなるいずれか1以上の成形方法を挙げることができる。任意形状の成形体が得られやすくなるため、成形方法は鋳込み成形又は射出成形の少なくともいずれかであることが好ましい。さらに、より複雑かつ微細な形状の成形体が得られやすいため、成形方法は射出成形であることがより好ましい。
二次成形工程では、淡色成形体又は濃色成形体のいずれか一方の成形体からなる一次成形体の上に、他方の粉末を成形した成形体を作製する。これにより、一次成形体と二次成形体とが接合された成形体が得られる。
二次成形工程における成形温度(以下、「二次成形温度」ともいう。)を、一次成形工程における成形温度(以下、「一次成形温度」ともいう。)以下とする。二次成形温度が一次成形温度より高い場合、二次成形時に一次成形体の形状に歪みや、崩れなどが生じやすくなる。この場合、凸部などの一次成形体の微細な形状を歪んだ状態を含む二次成形体が得られる。このような二次成形体を焼結すると、得られる多色ジルコニア焼結体が、形状の歪みに起因した色滲みを有する焼結体となる。
一次成形及び二次成形を有する一般的な成形方法、特に一次成形及び二次成形を有する鋳込み成形や射出成形では、二次成形時の熱により一次成形体の温度が上昇する。これにより、二次成形工程の温度が上昇する。従って、一次成形及び二次成形において成形温度を制御しない場合は、通常、二次成形温度が一次成形温度を超える。これに対し、本発明における二次成形温度は一次成形温度以下、更には一次成形温度未満である。二次成形温度が一次成形温度以下であること、すなわち、一次成形温度が二次成形温度以上であることにより、模様の流れ及びこれによる色滲みが生じなくなる。このようにして得られる二次成形体を焼結させることで、界面に隙間及び色滲みを有さない多色ジルコニア焼結体が得られる。なお、模様の流れとは、例えば一次成形体の凸部など、一次成形体の形状が二次成形体の成形により変形することを挙げられる。
二次成形工程においては、一次成形温度と二次成形温度の差が大きくなるほど、歪んだ形状を含まない二次成形体がより得られやすくなる。一次成形温度は、二次成形温度より3℃以上、更には5℃以上、また更には10℃以上、また更には20℃以上、また更には30℃以上であることが挙げられる。しかしながら、本発明の製造方法においては、二次成形温度が一次成形温度よりも低く、なおかつ、その差が3〜30℃、更には3〜20℃、また更には3〜10℃、また更には5〜10℃と小さくとも、歪んだ形状を含まない二次成形体を再現よく得ることができる。
一次成形温度及び二次成形温度は、成形体の型(以下、「成形型」ともいう。)の温度により制御してもよい。すなわち、成形工程では、一次成形の成形型の温度を二次成形の成形型の温度以上、更には3℃以上、また更には5℃以上、また更には10℃以上、また更には20℃以上、また更には30℃以上とすることで二次成形温度を一次成形温度以下とすることができる。
二次成形工程における成形方法は、一次成形温度と二次成形温度が上記の関係を満たせば、プレス成形、冷間静水圧プレス、鋳込み成形、シート成形及び射出成形からなる群のいずれか1以上の成形方法であればよい。任意形状の成形体が得られやすくなるため、成形方法は鋳込み成形又は射出成形の少なくともいずれかであることが好ましい。さらに、より複雑かつ微細な形状の成形体が再現よく得られやすいため、二次成形工程における成形は射出成形であることがより好ましい。
射出成形における射出圧力は50MPa以上150MPa以下、更には70MPa以上130MPa以下であることが例示できる。
一次成形工程、二次成形工程、又はその両工程(以下、「成形工程」ともいう。)に供する淡色粉末は、アルミナを含有するジルコニア粉末であり、更にはアルミナ粉末とジルコニア粉末との混合粉末であればよい。
淡色粉末は、BET比表面積が7〜20m/g、更には7.5〜15m/gであること好ましい。この範囲のBET比表面積とすることで、淡色成形体が、スピネル酸化物を含有する濃色成形体と同様な焼結挙動を有しやすくなる。
ジルコニア粉末としては3mol%のイットリアを含むジルコニア粉末を挙げることができる。
アルミナの含有量は、淡色粉末の重量に対してアルミナの重量が0.25重量%以上20重量%以下、更には1重量%以上20重量%以下、また更には5重量%以上10重量%以下であればよい。また、アルミナ粉末としては、純度99%以上、更には純度99.5%以上のアルミナ粉末を挙げることができる。
これらの粉末とジルコニア粉末が均一に混合されれば混合方法は任意である。混合方法として湿式混合、更にはボールミルあるいはビーズミルであることが好ましい。具体的な混合方法として、ボールミルで24時間以上、これらの粉末とジルコニア粉末とを混合することが挙げられる。
成形工程に供する濃色粉末は、スピネル酸化物を含有するジルコニア粉末であり、スピネル酸化物粉末とジルコニア粉末との混合粉末であればよい。
スピネル酸化物粉末の重量は、濃色粉末の重量に対して2重量%以上6重量%以下、更には2重量%以上4重量%以下であればよい。また、濃色粉末は、BET比表面積が4〜10m/gであることが挙げられる。
ジルコニア粉末は3mol%のイットリアを含むジルコニア粉末を挙げることができる。
濃色粉末が、コバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物粉末、更にはCoAl粉末を含む場合、濃色粉末重量に対する当該スピネル酸化物重量として0.25重量%以上13重量%以下、更には1重量%以上10重量%以下、また更には3重量%以上5重量%以下であることが好ましい。
さらに、当該スピネル酸化物粉末に加え、遷移金属酸化物粉末、更には酸化鉄粉末を含んでいてもよい。遷移金属酸化物粉末の含有量は、濃色粉末の重量に対して0.1重量%以上2重量%以下であることが挙げられる。
成形工程では、粉末の流動性を改善するため、淡色粉末又は濃色粉末の少なくともいずれかは、有機バインダーを含むことが好ましい。
有機バインダーを含む場合、各ジルコニア粉末中の有機バインダーの含有量は25〜65容量%、更には35〜60容量%を挙げることができる。
有機バインダーとしては、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス及び可塑剤かならる群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
ジルコニア粉末と有機バインダーとが均一に混合できれば、その混合方法は任意である。混合方法として加熱混練や湿式混合を例示することができる。
淡色成形体と濃色成形体とは焼結収縮強度が一致していることが好ましい。これにより、収縮量の差に由来する歪みが生じず、両者がより強固に接合した状態で成形体を焼結することができる。
焼成工程では、二次成形体を焼成することでこれを仮焼結し、予備焼結体を得る。
焼成工程において、焼成温度は1300℃以上、更には1350℃以上である。焼成温度が1300℃未満であると、HIP処理工程において焼結体が緻密化しなくなる。焼成温度は必要以上に高くする必要がなく、1300℃以上1550℃以下、更には1350℃以上1500℃以下、また更には1350℃以上1450℃以下を挙げることができる。
焼成雰囲気は大気中、不活性雰囲気又は真空のいずれでもよく、大気中又は不活性雰囲気の少なくともいずれかであること好ましく、大気中であることがより好ましい。上記の焼成温度及び焼成雰囲気は任意の組合せを適用することができる。焼成工程は、成形体に対して外的な力を加えずに単に加熱することにより焼結する方法である、常圧焼結であることが好ましい。
焼成時間は焼成温度により異なるが、1時間以上、更には2時間以上であることが好ましい。焼成時間が1時間以上であることで、焼成工程において隙間の除去が促進する。一方、焼成時間は5時間以下、更には3時間以下であればよい。
なお、有機バインダーを含むジルコニア粉末から成形体を作製した場合、焼成処理を行う前に脱脂処理を行ない、成形体から有機バインダー除去する。
脱脂処理における焼成温度は400℃以上600℃以下であればよい。また、脱脂処理の雰囲気は、大気中、不活性ガス雰囲気中及び酸化性ガス雰囲気中の群から選ばれるいずれかの雰囲気であればよい。
本発明の製造方法では、予備焼結体をHIP処理する。これにより、界面の色滲みを抑制したまま、界面の隙間の排除が促進されて予備焼結体が焼結され、本発明の多色ジルコニア焼結体が得られる。
HIP処理において、HIP温度は1200℃以上、更には1250℃以上、また更には1300℃以上、また更には1350℃以上を挙げることができる。緻密化が進行すれば、HIP温度は必要以上に高くする必要がない。HIP温度として1650℃以下、更には1450℃以下を挙げることができる。
HIP圧力は50MPa以上、更には100MPa以上、また更には140MPa以上であることが挙げられる。通常のHIP処理装置を使用したHIP処理では、HIP圧力は250MPa以下、更には180MPa以下となる。
HIP処理の雰囲気は不活性雰囲気であればよく、窒素雰囲気又はアルゴン雰囲気の少なくともいずれかを挙げることができ、アルゴン雰囲気であることが好ましい。上記のHIP温度、HIP圧力及び雰囲気、並びのその上下限の値は任意の組合せとすることができる。
本発明の製造方法により、界面に色滲み及び隙間のない多色ジルコニア焼結体を得ることができる。
さらに、本発明の製造方法においては、得られた多色ジルコニア焼結体を各種部材とするための、加工工程又は研磨工程の少なくともいずれか(以下、「後処理工程」ともいう。)を含んでいてもよい。
加工工程は、HIP処理で得られた多色ジルコニア焼結体を所望の形状に加工する。加工方法は任意の方法を使用することができる。加工方法は一般的な切削加工であればよく、例えば、旋盤加工、平面研削、R研削及びNC加工(numerical control machining)からなる群のいずれか1種以上を挙げることができる。
研磨工程は、HIP処理で得られた多色ジルコニア焼結体又はまたはこれを加工処理したものを研磨する。これにより、光沢をより強くすることができ、本発明の多色ジルコニア焼結体の高級感がより強調される。研磨方法は任意であるが、バレル研磨又はR研磨の少なくともいずれかを例示することができる。
本発明の製造方法では、一次成形工程、二次成形工程、焼成工程、HIP処理工程及び後処理工程において、上記の各条件の任意の組み合わせであってもよい。
本発明により、2以上の異なる色調を有するジルコニア焼結体であって、高級感を呈する審美性を有し、なおかつ、部材として使用するに十分な強度を有したジルコニア焼結体を提供することできる。また、本発明により、2以上の異なる色調を有するジルコニア焼結体であって、ジルコニア焼結体間に色滲みや隙間を有さないものを提供することができる。
さらに、本発明により、高級感を有した部材を提供することができる。
実施例1の白色/青色ジルコニア焼結体の界面の光学顕微鏡写真(図中スケールは10μm) 実施例1の白色/青色ジルコニア焼結体の界面の二次電子像(図中スケールは50μm) 界面に隙間を有する多色ジルコニア焼結体の反射電子像(図中スケールは50μm) 色滲みを有する多色ジルコニア焼結体の光学顕微鏡写真(図中スケールは50μm) EPMAの定量点分析により移行領域の測定を示す模式図 本発明の多色ジルコニア焼結体からなる時計用ベゼルリングの一例を示す模式図 本発明の多色ジルコニア焼結体からなる時計用文字盤の一例を示す模式図 本発明の多色ジルコニア焼結体からなるブレスレットの一例を示す模式図 本発明の多色ジルコニア焼結体からなる筐体の一例を示す模式図 本発明の多色ジルコニア焼結体からなる携帯電話用カバーの一例を示す模式図 本発明の多色ジルコニア焼結体からなる円板状焼結体の一例を示す模式図 比較例1の白色/青色ジルコニア焼結体の界面の光学顕微鏡写真(図中スケールは10μm) 比較例1の白色/青色ジルコニア焼結体の界面の二次電子像(図中スケールは50μm) 実施例4の白色/青色ジルコニア焼結体の概観
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらに限定されるものではない。
(焼結体密度、及び相対密度)
多色ジルコニア焼結体の実測密度(焼結体密度)はアルキメデス法により測定した。得られた実測密度と理論密度から、多色ジルコニア焼結体の相対密度を求めた。多色ジルコニア焼結体の理論密度は、(1’)式から算出した。なお、算出された実施例及び比較例の多色ジルコニア焼結体の理論密度は、表2に示した。
(比表面積)
窒素吸着によるBET比表面積を測定し、粉末試料の比表面積とした。測定には一般的な比表面積測定装置(QUANTA CHROME製)を使用した。
(光学顕微鏡観察)
光学顕微鏡(装置名:MM−800、ニコン製)又は三眼ズーム式実体顕微鏡(装置名AR−372ZH、アームシステム株式会社製)を使用し焼結体試料の界面を観察した。光学顕微鏡観察では、界面における隙間の有無及び色滲みの有無を観察した。
(SEM観察)
SEM(装置名:JSM−5400、日本電子製)を使用し焼結体試料の界面を観察した。SEM観察では、倍率を500倍として、界面における隙間の有無を観察した。
(EPMAによる元素定量分析)
波長分散型電子線マイクロアナライザー(EPMA)(装置名:EPMA1610、島津製作所製)を使用して、焼結体試料における、淡色焼結体の界面近傍の点分析を行なった。測定条件は以下のとおりである。
加速電圧 :15KV
照射電流 :100nA
分析範囲 :φ10μm
測定は、界面から淡色焼結体の距離を30μm、50μm、100μm、130μm、170μm及び200μmのいずれかで行い、着色成分が確認された領域であって、界面から最も遠い距離における測定領域を移行領域とした。
(L表色系による色調)
JISZ8722に準拠し、焼結体試料の色調を測定した。測定には一般的な色差計(装置名:カラーアナライザーTC−1800MK−II、東京電色社製)を用いた。測定条件は以下のとおりである。
光源 :D65光源
視野角 :2°
焼結体試料は厚さ1mm、直径20mmの円板状の形状として、両面を研磨したものを用いた。
(機械強度試験)
多色ジルコニア焼結体試料の機械的強度として。ISO14368−3に準じた剛球落下試験による衝撃強度を測定した。すなわち、SUS製の板の上に多色ジルコニア焼結体試料を配置した。その後、淡色焼結体と濃色焼結体との界面近傍に、多色ジルコニア焼結体試料から5cmの高さから重さ16gの鉄球を落下させ、多色ジルコニア焼結体のクラック、亀裂、割れその他破壊の有無を確認した。その後、5cm間隔で鉄球の落下開始位置(以下、「落球位置」ともいう。)を高くして、同様の測定を行った。多色ジルコニア焼結体に破壊が確認された落球位置(cm)をもって、多色ジルコニア焼結体試料の衝撃強度とした。
実施例1
白色ジルコニア焼結体と青色ジルコニア焼結体からなる時計用ベゼルリングを作製した。
(白色ジルコニア原料の調製)
3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末中のイットリア及びジルコニアの合計重量に対するアルミナの重量が5重量%となるように、BET比表面積が8m/gである3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末(商品名:TZ−3YS、東ソー株式会社製)に、高純度酸化アルミニウム(純度;99.9%)を添加した。
添加後、直径10mmのジルコニア製ボールを使用して、エタノール溶媒中、24時間ボールミルでこれらの粉末を混合した。混合後の粉末を乾燥して白色ジルコニア粉末を得た。
得られた白色ジルコニア粉末にアクリルバインダーを混合し、これを白色ジルコニア原料とした。白色ジルコニア原料中の白色ジルコニア粉末の含有量は45容積%であった。
(青色ジルコニア原料の調製)
3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末中のイットリア及びジルコニアの合計重量に対するスピネル酸化物の重量(以下、単に「スピネル重量」ともいう。)が3重量%となるように、BET比表面積が8m/gである3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末(商品名:TZ−3YS、東ソー株式会社製)に、コバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物粉末(商品名:酸化アルミニウムコバルト、和光純薬株式会社製)を添加した。
添加後、直径10mmのジルコニア製ボールを使用して、エタノール溶媒中、24時間ボールミルでこれらの粉末を混合した。混合後の粉末を乾燥して青色ジルコニア粉末を得た。
得られた青色ジルコニア粉末にアクリルバインダーを混合し、これを青色ジルコニア原料とした。青色ジルコニア原料中の青色ジルコニア粉末の含有量は45容積%であった。
(成形体の作製)
白色ジルコニア原料を射出成形により、凸部を有するベゼルリング状の白色ジルコニア成形体を得た。成形型の温度を55℃とし、射出成形の圧力を100MPaとした。
次に、得られた白色ジルコニア成形体の上に、青色ジルコニア原料を射出成形した。射出成形の圧力を100MPaとし、なおかつ、成形型の温度は、白色ジルコニア原料の射出成形温度より5℃低くした。これにより、白色ジルコニア成形体上に青色ジルコニア成形体が積層した形状で両者が接合した成形体を得た。
得られた成形体は、大気中、昇温速度2.0℃/h、脱脂温度450℃、及び脱脂時間4時間で脱脂処理した。
(焼成及びHIP処理)
脱脂処理後の成形体を、大気中、昇温速度100℃/h、焼成温度1500℃、及び焼結時間2時間で焼成することで予備焼結体を得た。
得られた予備焼結体をアルミナ製容器に配置した後、純度99.9%のアルゴンガスの雰囲気下で、HIP温度1450℃、HIP圧力150MPa、及び保持時間1時間でHIP処理することにより、HIP処理体を得た。当該HIP処理体を本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体とした。本実施例の製造条件を表1に、評価結果を表2に示す。
得られた白色/青色ジルコニア焼結体は白色ジルコニア焼結体と青色ジルコニア焼結体の体積比が41:59であり、当該白色/青色ジルコニア焼結体の相対密度は99.7%であった。
(部材加工)
白色ジルコニア焼結体の凸部が鮮明に確認されるまで、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体の青色ジルコニア焼結体側の表面を加工した。これにより、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体を、青色ジルコニア焼結体の表面に、白色ジルコニア焼結体からなる模様を有するベゼルリングとした。表面加工後のベゼルリングを研磨処理することで、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体からなり、強い光沢感を有するベゼルリングを得た。
当該ベゼルリングは、青色ジルコニア焼結体からなる表面を有し、なおかつ、当該表面上に、白色ジルコニア焼結体からなる模様を有していた。また、当該ベゼルリングの界面を目視にて確認した。その結果、界面の白色がぼやけることなく、当該界面は色滲みがないことが確認できた。
(評価)
ベゼルリングの界面の光学顕微鏡観察を実施した。結果を図1に示す。光学顕微鏡観察において、白色ジルコニアと青色ジルコニアとが焼結して界面を形成していることが確認できた(図1中破線丸部)。
さらに、ベゼルリングの界面のた二次電子像を図2に示す。二次電子像においても界面を確認することができた(図2中矢印部)。また、当該界面に隙間が生じていないこと、及び、結合層がないことが確認できた。
これらの結果より、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体及び本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体からなるベゼルリングは、その界面に隙間を有さないことが確認できた。
さらに、得られたベゼルリングの機械強度試験を行った。85cmの高さから鉄球を落下させても亀裂や割れが生じなかった。これより、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体は、衝撃強度が85cm以上であり、高い強度を有していることが確認できた。
実施例2
アルミナ重量を10重量%として高純度酸化アルミニウムを添加したこと以外は実施例1と同様な方法で、成形、焼成、HIP処理して本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体を得た。本実施例の製造条件を表1に、評価結果を表2に示す。
得られた白色/青色ジルコニア焼結体は白色ジルコニア焼結体と青色ジルコニア焼結体の体積比が41:59であり、当該白色/青色ジルコニア焼結体の相対密度は99.7%であった。
次に、実施例1と同様な方法で、得られた白色/青色ジルコニア焼結体を加工及び研磨処理し、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体からなり、強い光沢感を有するベゼルリングを得た。
当該ベゼルリングは、青色ジルコニア焼結体からなる表面を有し、なおかつ、当該表面上に、白色ジルコニア焼結体からなる模様を有していた。
当該ベゼルリングの界面を目視にて確認した。その結果、界面の白色がぼやけることなく、当該界面は色滲みがないことが確認できた。
さらに、当該ベゼルリングの界面を光学顕微鏡及びSEM観察で観察した。その結果、白色ジルコニアと黒色ジルコニアとが焼結して界面を形成していること、当該界面は曲率を有するにもかかわらず、界面において隙間が生じていないこと、当該界面に隙間が生じていないこと、及び、結合層がないことが確認できた。
さらに、得られたベゼルリングの機械強度試験を行った。85cmの高さから鉄球を落下させても亀裂や割れが生じなかった。これより、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体は、衝撃強度が85cm以上であり、高い強度を有していることが確認できた。
実施例3
青色ジルコニア粉末を、コバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物粉末、酸化鉄粉末、及び、3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末からなる混合粉末としたこと以外は実施例8と同様な方法で、成形、焼成、HIP処理して本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体を得た。
すなわち、スピネル重量が5重量%となり、なおかつ、3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末中のイットリア及びジルコニアの合計重量に対するFeの重量が0.1重量%となるように、BET比表面積が8m/gである3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末(商品名:TZ−3YS、東ソー株式会社製)に、コバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物粉末(商品名:酸化アルミニウムコバルト、和光純薬株式会社製)、及び、Fe粉末(商品名:α−Fe[3NG]、高純度化学製)を添加した。添加後、直径10mmのジルコニア製ボールを使用して、エタノール溶媒中、24時間ボールミルでこれらの粉末を混合した。混合後の粉末を乾燥して青色ジルコニア粉末を得た。得られた青色ジルコニア粉末にアクリルバインダーを混合し、これを青色ジルコニア原料として、白色/青色ジルコニア焼結体を得た。本実施例の製造条件を表1に、評価結果を表2に示す。
得られた白色/青色ジルコニア焼結体は白色ジルコニア焼結体と青色ジルコニア焼結体の体積比が41:59であり、当該白色/青色ジルコニア焼結体の相対密度は99.8%であった。
次に、実施例1と同様な方法で、得られた白色/青色ジルコニア焼結体を加工及び研磨処理し、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体からなり、強い光沢感を有するベゼルリングを得た。
当該ベゼルリングは、青色ジルコニア焼結体からなる表面を有し、なおかつ、当該表面上に、白色ジルコニア焼結体からなる模様を有していた。
当該ベゼルリングの界面を目視にて確認した。その結果、界面の白色がぼやけることなく、当該界面は色滲みがないことが確認できた。
さらに、当該ベゼルリングの界面を光学顕微鏡及びSEMで観察した。その結果、白色ジルコニアと青色ジルコニアとが焼結して界面を形成していること、当該界面は曲率を有するにもかかわらず、界面において隙間が生じていないこと、当該界面に隙間が生じていないこと、及び、結合層がないことが確認できた。
さらに、得られたベゼルリングの機械強度試験を行った。85cmの高さから鉄球を落下させても亀裂や割れが生じなかった。これより、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体は、衝撃強度が85cm以上であり、高い強度を有していることが確認できた。
比較例1
HIP処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様な方法で成形、焼成して本比較例の白色/青色ジルコニア焼結体を得た。本比較例の製造条件を表1に、評価結果を表2に示す。
得られた白色/青色ジルコニア焼結体は白色ジルコニア焼結体と青色ジルコニア焼結体の体積比が41:59であり、当該白色/青色ジルコニア焼結体の相対密度は98.9%であった。
次に、実施例1と同様な方法で、得られた白色/青色ジルコニア焼結体を加工及び研磨処理し、本比較例の白色/青色ジルコニア焼結体からなるベゼルリングを得た。
当該ベゼルリングは、青色ジルコニア焼結体からなる表面を有し、なおかつ、当該表面上に、白色ジルコニア焼結体からなる模様を有していた。
当該焼結体の界面を目視にて確認した。その結果、界面の白色がぼやけることなく、当該界面は色滲みがないことが確認できた。
ベゼルリングの界面の光学顕微鏡観察を実施した。結果を図12に示す。図12から、本比較例のジルコニア焼結体が界面を有するが、当該界面が隙間を有することが確認できた(図12中破線丸部)。
さらに、ベゼルリングの界面の二次電子像を図13に示す。図13から、本比較例のジルコニア焼結体が界面を有することが確認できる。しかしながら、当該界面において幅50μm程度の隙間が500μm以上の範囲で生じていることが確認できた(図13中矢印部)。これにより、光学顕微鏡観察で確認された界面は非常に大きな亀裂を含むものであることが確認できた。
これらの結果より、本比較例の白色/青色ジルコニア焼結体は、その界面が隙間を有することが確認できた。
さらに、得られたベゼルリングの機械強度試験を行った。10cmの高さから鉄球を落下させたところ、本比較例の白色/青色ジルコニア焼結体が破壊された。これより、本比較例の白色/青色ジルコニア焼結体は衝撃強度が10cm以下であり、機械的強度に劣るものであることが確認できた。
Figure 0006492632
Figure 0006492632
実施例4
白色ジルコニア焼結体と青色ジルコニア焼結体からなる円板状の白色/青色ジルコニア焼結体を作製した。
(原料の調製)
実施例1と同様な方法で得られた白色ジルコニア粉末を白色ジルコニア原料とし、なおかつ、実施例1と同様な方法で得られた青色ジルコニア粉末を青色ジルコニア原料とした。
(成形体の作製)
白色ジルコニア原料を室温で一軸プレス成形することにより、凸形状の一次成形体を得た。得られた一次成形体上に黒色ジルコニア粉末を充填し、一次成形体及び黒色ジルコニア粉末を同時に一軸プレス成形した。一軸プレス後の成形体を冷間静水圧プレス(CIP)処理することで二次成形体を得た。CIP処理の圧力は200MPaとし、CIP温度を室温以下とした。
(焼成及びHIP処理)
焼成温度を1450℃としたこと、及びHIP処理温度を1350℃としたこと以外は実施例8と同様な方法により、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体を得た。
(部材加工)
白色ジルコニア焼結体の凸部が鮮明に確認されるまで、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体の青色ジルコニア焼結体側の表面を加工した。これにより、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体を、青色ジルコニア焼結体の表面に、白色ジルコニア焼結体からなる模様を有する円板状ジルコニア焼結体とした。表面加工後の円板状ジルコニア焼結体を研磨処理することで、本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体からなり、強い光沢感を有する円板状ジルコニア焼結体を得た。得られた円板状ジルコニア焼結体の写真を図14に示す。円板状ジルコニア焼結体は、直径16mm、及び、厚み2.5mmであり、模様の幅は3mmであった。
当該円板状ジルコニア焼結体は、青色ジルコニア焼結体からなる表面を有し、なおかつ、当該表面上に、白色ジルコニア焼結体からなる模様を有していた。
当該円板状ジルコニア焼結体の界面を目視にて確認した。その結果、界面の白色がぼやけることなく、当該界面は色滲みがないことが確認できた。
さらに、当該円板状ジルコニア焼結体の界面を光学顕微鏡及びSEM観察で観察した。その結果、白色ジルコニアと青色ジルコニアとが焼結して界面を形成していること、当該界面に隙間が生じていないこと、及び、結合層がないことが確認できた。
実施例5
アルミナ重量が10重量%となるように、BET比表面積が8m/gである3mol%イットリア安定化ジルコニア粉末(商品名:TZ−3Y、東ソー株式会社製)に、高純度酸化アルミニウム(純度;99.9%)を添加したこと以外は実施例4と同様な方法で、成形、焼成、HIP処理して本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体を得た。さらに、得られた白色/黒色ジルコニア焼結体を実施例4と同様に加工し、直径16mm、及び、厚み2.5mmであり、模様の幅は3mmの円板状ジルコニア焼結体を得た。
当該円板状ジルコニア焼結は、青色ジルコニア焼結体からなる表面を有し、なおかつ、当該表面上に、白色ジルコニア焼結体からなる模様を有していた。
当該円板状ジルコニア焼結の界面を目視にて確認した。その結果、界面の白色がぼやけることなく、当該界面は色滲みがないことが確認できた。
さらに、当該円板状ジルコニア焼結の界面を光学顕微鏡及びSEM観察で観察した。その結果、白色ジルコニアと青色ジルコニアとが焼結して界面を形成していること、当該界面に隙間が生じていないこと、及び、結合層がないことが確認できた。
実施例6
実施例3と同様な方法で得られた青色ジルコニア粉末を青色ジルコニア原料としたこと以外は実施例4と同様な方法で、成形、焼成、HIP処理して本実施例の白色/青色ジルコニア焼結体を得た。さらに、得られた白色/黒色ジルコニア焼結体を実施例4と同様に加工し、直径16mm、及び、厚み2.5mmであり、模様の幅は3mmの円板状ジルコニア焼結体を得た。
当該円板状ジルコニア焼結体は、青色ジルコニア焼結体からなる表面を有し、なおかつ、当該表面上に、白色ジルコニア焼結体からなる模様を有していた。
当該円板状ジルコニア焼結体の界面を目視にて確認した。その結果、界面の白色がぼやけることなく、当該界面は色滲みがないことが確認できた。
さらに、当該円板状ジルコニア焼結体の界面を光学顕微鏡及びSEM観察で観察した。その結果、白色ジルコニアと青色ジルコニアとが焼結して界面を形成していること、当該界面に隙間が生じていないこと、及び、結合層がないことが確認できた。
本発明のジルコニア焼結体は、時計部品、装飾物品、携帯機器部品、車載部品、高級日用部品等に広く利用することができる。特に、本発明のジルコニア焼結体は、時計バンド、ベゼル、文字盤、時計ケースなどの時計部品、ブローチ、ネクタイピン、ハンドバッグ金具、腕輪などの装飾部品、携帯電子機器筐体、ライターケース、化粧品ケース、携帯電話ケース、イヤホンハウジングなどの外装部品、並びに、ナイフ、調理器具などの日用品をはじめ、各種製品のロゴマーク等にも利用することができる。
(1)・・・淡色焼結体
(2)・・・濃色焼結体
(3)・・・界面
(4)・・・界面から一定距離にある淡色焼結体の領域
(5)・・・界面から一定距離にある淡色焼結体の領域を中心として形成した直径10μmの円

Claims (4)

  1. 第一のジルコニア焼結体と第二のジルコニア焼結体を含む多色ジルコニア焼結体であって、該第一のジルコニア焼結体が酸化アルミニウムを含有するジルコニア焼結体であり、該第二のジルコニア焼結体がコバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物を含有するジルコニア焼結体であり、該スピネル酸化物がCoAlであり、該第一のジルコニア焼結体と該第二のジルコニア焼結体とが界面を有し、該第一のジルコニア焼結体が該界面から100μm以内の領域にコバルトを含み、該領域に含まれるコバルトが0.3重量%以下であり、多色ジルコニア焼結体の相対密度が99.5%以上であり、該第一ジルコニア焼結体又は該第二ジルコニア焼結体の何れか一方のジルコニア焼結体が凹部を有し、他方のジルコニア焼結体が凸部を有しており、該凹部と凸部とが組み合わさるように、該第一ジルコニア焼結体と第二ジルコニア焼結体とが積層して接合しており、該ジルコニア焼結体同士の組み合わせにより該第一ジルコニア焼結体又は該第二ジルコニア焼結体のいずれか一方のジルコニア焼結体が、他方のジルコニア焼結体の表面に模様を形成していることを特徴とする多色ジルコニア焼結体。
  2. 酸化アルミニウムを含有するジルコニア粉末、又は、コバルト及びアルミニウムを含むスピネル酸化物を含有するジルコニア粉末のいずれか一方のジルコニア粉末を成形し一次成形体を得る一次成形工程、一次成形工程以下の成形温度で該一次成形体上に他方のジルコニア粉末を成形して二次成形体を得る二次成形工程、該二次成形体を1300℃以上で焼成し予備焼結体を得る焼結工程、及び、該予備焼結体を1250℃以上1650℃以下、100MPa以上250MPa以下で熱間静水圧プレス処理するHIP処理工程、を含む請求項1に記載の多色ジルコニア焼結体の製造方法。
  3. 前記二次成形工程における成形が射出成形であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
  4. 請求項1に記載の多色ジルコニア焼結体を含む部材。
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