JP2015054801A - ジルコニア焼結体並びにその用途 - Google Patents

ジルコニア焼結体並びにその用途 Download PDF

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Koji Tsukuma
孝次 津久間
仁士 永山
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仁士 永山
山内 正一
Shoichi Yamauchi
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Abstract

【課題】黒色ジルコニアに匹敵する速い焼結速度をもつ白色ジルコニア及び前記白色ジルコニアを用いて、歪みや割れのない、鮮明な白色と深みのある黒色からなる二色焼結体の提供。
【解決手段】スポジュメン(LiO・Al・4SiO)等のリチウムアルミノシリケートがジルコニアの焼結を促進し、それに微量のリチウムシリケートを加えると、さらに焼結速度が上がり、黒色ジルコニアの焼結速度に匹敵する白色ジルコニアとなる。前記白色ジルコニア粉末と鉄とコバルトが必須成分であるスピネル酸化物結晶を顔料とする、黒色ジルコニア粉末を合体した成形体は歪みや割れを生じることなく、焼結することが可能である。前記鮮明な白色と深みのある黒色からなる焼結体は時計部品、装飾部品、日用部品及び携帯電子部品等に広く利用できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、白色ジルコニアと黒色ジルコニアからなるジルコニア焼結体に関する。該ジルコニア焼結体を用いることにより、深みのある光沢を有し、意匠性に優れた二色模様からなるセラミックス物品を提供する。
ジルコニアセラミックスは高屈折率でダイヤモンドに似た光沢を有し、又高硬度で傷付き難いため、高級時計部品、装飾物品等に利用されている。これら用途では、各種顔料を添加した様々な色の着色ジルコニアが用いられている。特に、黒色ジルコニアと白色ジルコニアはジルコニア特有の深みのある色調であることから、利用頻度が高い。
近年、単色ではなく、白色と黒色を組み合わせた二色模様からなるジルコニアセラミックスが高級感、優れた意匠性を与えることから強く要望されている。このセラミックスの作製には、白色ジルコニア粉末と黒色ジルコニア粉末を成形によって合体した後、焼結する方法が採られる。しかしながら、この方法には課題があった。黒色ジルコニア粉末は白色ジルコニア粉末に比べて、焼結が進み易く、速く収縮するため、焼結途中で合体形状が歪む、頻繁に破壊する、歩留まりが極めて低い等の課題である。
黒色ジルコニアの着色顔料として、鉄、コバルト等の遷移金属複合酸化物がよく用いられている(特許文献1〜3)。これらの遷移金属複合酸化物は着色作用の他、ジルコニアの焼結促進剤としても働き、焼結温度の大幅な低下をもたらす。
一方、白色ジルコニアの着色顔料として、アルミナがよく用いられている(特許文献4,5)。また、アルミナもジルコニアの焼結促進剤となる(特許文献6)。しかし、遷移金属複合酸化物ほどの効力はなく、焼結温度の大幅な低下はない。
従って、二色模様からなるジルコニアセラミックスの作製に上記の黒色ジルコニア粉末と白色ジルコニア粉末を用いた場合、黒色ジルコニア粉末が先に焼結収縮し、歪み、破壊等の課題は解決できなかった。
特2006−342036号公報 特許第4853103号公報 特許第3714563号公報 特許第5197634号公報 特開2000−75053号公報 特開昭60−239356号公報
白色ジルコニア粉末と黒色ジルコニア粉末を成形によって合体した後、焼結する場合、両粉末の焼結収縮速度は一致させる必要がある。一致していれば、焼結途中での収縮量の差に基づく歪みや破壊は起こらないからである。しかし、鉄、コバルト等の遷移金属複合酸化物を含有する黒色ジルコニアの速い焼結収縮に合致した白色ジルコニアはこれまで存在しなかった。白色顔料として、アルミナの他、シリカ、ムライト(2Al・3SiO)、スピネル(MgO・Al)等酸化物が存在するが、いずれも遷移金属複合酸化物の焼結促進効果には及ばなかった。
本発明者等は極めて強い焼結促進効果を有する白色顔料を探し出し、その白色ジルコニア粉末を用いて白黒二色模様のセラミックスを歪みや破壊を避けて実現することを課題とした。
本発明者等は、リチウムアルミノシリケート結晶がジルコニアの白色顔料のみならず、強力な焼結促進剤となり、その促進効果は、黒色ジルコニアの顔料である鉄、コバルト遷移金属複合酸化物のそれに匹敵することを見出した。その結果、白色ジルコニアと黒色ジルコニアの焼結収縮を合致させることができ、歪みのない白・黒二色模様のジルコニア焼結体が可能となった。
すなわち、本発明はリチウムアルミノシリケート結晶を顔料とする白色ジルコニアと鉄、コバルトが必須成分であるスピネル酸化物結晶を顔料とする黒色ジルコニアからなるジルコニア焼結体に関するものである。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明における白色ジルコニアはリチウムアルミノシリケート結晶を顔料とする。リチウムアルミノシリケート結晶として、例えばスポジュメン(LiO・Al・4SiO)、ユークリプタイト(LiO・Al・2SiO)等が挙げられ、その中でもスポジュメンが好ましい。アルミナ、シリカ、炭酸リチウムを原料として加熱固相反応により単一相を合成でき、工業的製造にも適した結晶である。又、スポジュメン固溶体(LiO・Al・nSiO 4<n<8)はスポジュメン組成よりシリカリッチな結晶で当然含まれる。
スポジュメンの含有量は2〜15wt%であることが好ましく、特に好ましくは3〜7wt%である。スポジュメンはジルコニア焼結体中に粒子分散して光を散乱することで白色度を増大させる白色剤である。2wt%未満では光散乱が不十分で、明度Lが90を超える鮮明な白色を得ることができないことがある。又、スポジュメンはジルコニアの焼結を促進する強力な焼結助剤となるが、15wt%を超えるとスポジュメン粒子が障壁となってジルコニア粒子同士の焼結を阻害する障壁効果が強くなり、好ましくない。
スポジュメンに加えて0.4wt%以下のリチウムシリケートを含有することが好ましく、特に0.1〜0.3wt%含有することが好ましい。該リチウムシリケートを含有することで、ジルコニアの焼結をさらに促進することができ、焼結温度は無添加ジルコニアのそれに比べて200℃以上低下する。リチウムシリケートとして、例えばLiO・SiO、LiO・2SiO等が挙げられ、その中でもLiO・SiO好ましい。LiO・SiOは炭酸リチウムと高純度シリカの加熱固相反応により単一相を合成でき、工業的製造にも適した結晶である。
リチウムシリケートが焼結を促進する理由は、リチウムシリケートがフラックスとして働く液相焼結のためと考えられる。例えば、LiO・SiOの融点は1200℃であり、焼結温度では溶融して、ジルコニアの溶解析出を起こすと考えられる。添加量が多すぎると、フラックス作用が強くなりすぎ、ジルコニアの結晶相転移を引き起こすと推定される。
一方、スポジュメンが焼結を促進する理由は、ジルコニア粒界への固溶による元素拡散の促進と考えられる。スポジュメンの融点は1420℃であり、1400℃以下の焼結では液相焼結は起こり得ない。
本発明における白色ジルコニアは、L表色系において、L=90〜100、a=−1〜1、b=−1〜2.5の範囲にあることが好ましく、該Lの範囲にあることで白色を呈する。明度Lは90以上であり、ジルコニアのみからなる焼結体が示す透光感は十分減少している。又、特に好ましくはa=−0.5〜0.5、b=−0.5〜1とどちらもゼロ付近にあると、鮮明な純白色を呈する。
本発明における黒色ジルコニアは、鉄、コバルトが必須成分であるスピネル酸化物結晶を顔料とするジルコニアである。鉄、コバルトが必須成分であるスピネル酸化物結晶として、例えば(Co2+ 1−X)(Fe3+ 1−Y(M2+=Zn、Mn、M3+=Al、Cr、0.1<X≦1、0.5<Y≦1)を挙げることができる。CoFeを基本組成とし、コバルトサイトをZn、Mnが一部置換、鉄サイトをAl、Crが一部置換したスピネル結晶である。いずれの組成でも黒色顔料となり、その中でも(CoZn1−X)(FeAl1−Y(0.5<X≦1、0.5<Y≦1)組成の顔料が深みのある黒色を与えるので好ましい。
鉄、コバルトを含有するスピネル酸化物はジルコニアの焼結を著しく促進し、焼結温度は無添加ジルコニアのそれに比べて200℃以上低下する。焼結促進の理由は鉄等の遷移金属元素がジルコニア粒界に固溶して元素拡散を活発にするためと考えられる。
黒色ジルコニアは、L表色系において、L=0〜10、a=−1〜1、b=−1〜1の範囲にあることが好ましく、該Lの範囲にあることで黒色を呈する。明度Lは10以下であり、深みのある真黒色を示す。特に好ましくはa=−0.5〜0.5、b=−0.5〜1どちらもゼロ付近にあると、赤味や青味を帯びた黒色ではない。
本発明における白色ジルコニアと黒色ジルコニアとは焼結収縮挙動が一致している。例えば、焼結途中の温度である1200℃における焼結体の寸法比、(白色ジルコニアの寸法)/(黒色ジルコニアの寸法)は0.95〜1.05の範囲となることが好ましい。その結果、収縮量の差に由来する歪みが回避され、両者の合体した成形体を焼結することが可能となる。
本発明の白色ジルコニア及び黒色ジルコニアは安定化剤としてイットリアを含有することが好ましく、特に2〜6モル%のイットリアで部分安定化され、正方晶ジルコニア粒子を含むことが好ましい。その結果、得られるジルコニア焼結体は正方晶粒子を含むことにより強靭化されるからである。イットリア以外の安定化剤として、カルシア、マグネシア、スカンジア等が含まれていても勿論よい。
次に、本発明のジルコニア焼結体の製造方法を説明する。
本発明のジルコニア焼結体はリチウムアルミノシリケート結晶を顔料とする白色ジルコニア粉末と鉄、コバルトが必須成分であるスピネル酸化物結晶を顔料とする黒色ジルコニア粉末とを乾式プレス、射出、或いは鋳込み等の粉末成形によって成形し、1300〜1450℃で焼結して製造する。
リチウムアルミノシリケート結晶、例えばスポジュメンは市販粉末を用いることもできるが、高純度かつ微細な粉末は入手困難であり、高純度原料から合成することが好ましい。高純度アルミナ、高純度シリカ、炭酸リチウムを湿式混合し、900〜1100℃で焼成する固相反応で合成できる。用いる高純度アルミナ、高純度シリカは比表面積20m/g以上の微細粉末が好ましい。リチウムシリケートも市販粉末の入手が困難であり、高純度シリカ、炭酸リチウムを用いて同様の方法で合成できる。
リチウムアルミノシリケート粉末とジルコニア粉末の混合はボールミル、攪拌ビーズミル、振動ミル等装置を用いて、水、エタノール等溶媒中で湿式混合することが好ましい。リチウムアルミノシリケート粉末の分散を均一にし、1μm以下の粒子とするためには、例えばボールミルの場合、混合時間を100時間以上とすることが好ましい。
鉄、コバルトが必須成分であるスピネル酸化物結晶を顔料とする黒色ジルコニア粉末は市販粉末(東ソー製、商品名TZ−Black)が入手でき、それを用いることが最も簡便である。
白色ジルコニア粉末と黒色ジルコニア粉末とを成形によって成形体とするには、乾式プレス、射出、或いは鋳込み等の粉末成形による。例えば、鋳込み成形で黒地に白色模様の入った二色成形を行う場合、黒色ジルコニア粉末スラリーを石膏型或いは吸水性プラスティック型に流し込み、造形した後、所望の箇所に新たな型を設置し、白色ジルコニア粉末スラリーを流し込み、白色成形体と黒色成形体を合せる方法が採用できる。
射出成形による二色成形の場合も操作方法は同様であり、鋳込みスラリーを射出用コンパウンドに、石膏型を金型に変更するだけで行える。
いずれの粉末成形法においても、白色ジルコニア粉末と黒色ジルコニア粉末の成形体嵩密度はほぼ等しいことが望ましい。成形体嵩密度が異なると、緻密な焼結体に至るまでの収縮量に差が生じるので、合体した成形体に歪みが発生するからである。成形体嵩密度を等しくするには、両者のジルコニア粉末の比表面積がほぼ同じであることが好ましい。
成形体は温度1300〜1450℃で焼結する。雰囲気は通常大気中でよい。1300℃未満では相対密度98%以上の緻密な焼結体とすることが難しく、1450℃を超えると、黒色顔料の飛散が多くなるので好ましくない。1350〜1400℃で15〜60分保持する焼結が最も好ましい。
本発明の白色ジルコニアと黒色ジルコニアからなるジルコニア焼結体(白/黒ジルコニア焼結体)は白黒境界面が極めて鮮明で、色滲みがない。両者の顔料成分が境界面を越えて相互拡散しないためである。
本発明は、白色ジルコニアと黒色ジルコニアからなるジルコニア焼結体に関する。本発明の焼結体は、鮮明な白色と深みのある黒色との組み合せが達成されており、高級感と優れた意匠性を与える。従って、時計部品、装飾物品、携帯機器部品、車載部品、高級日用部品等に広く利用することができる。
又、白色ジルコニアと黒色ジルコニアとの焼結収縮が一致しているため、焼結体に歪みや割れが発生せず、歩留まりよく製造できる。
さらに、従来、焼結収縮の不一致による歪みのため製造困難であった複雑形状物品にも対応できる。例えば、二色模様の曲面を有する容器、リング、筐体等が歪みなく焼結できるようになる。
合成例1〜7の焼結による収縮寸法を示す。 黒色ジルコニアと白色ジルコニアの2層からなる成形体を示す。 実施例5と比較例3の白/黒ジルコニア焼結体の変形を示す。 鋳込み成形による白/黒ジルコニア成形体の作製方法を示す。
1:石膏凹型 2:模様をもつ石膏凸型 3:黒色ジルコニアスラリー
4:鋳込み口をもつ石膏型 5:白色ジルコニアスラリー
鋳込み成形で作製された白/黒ジルコニア焼結体物品の写真。 合成例6の白色ジルコニア粉末を用いて作製し、破壊した白/黒ジルコニア焼結体物品の写真 射出成形による白/黒ジルコニア成形体の作製方法を示す。
1:射出ゲートをもつ下部金型 2:文字が刻まれた上部金型
3:白色ジルコニアコンパウンド4:黒色ジルコニア射出ゲートをもつ上部金型
5:黒色ジルコニアコンパウンド
射出成形で作製された白/黒ジルコニア焼結体時計部品(ベゼル) 射出成形で作製された白/黒ジルコニア焼結体時計文字盤 射出成形で作製された白/黒ジルコニア焼結体化粧品ケース 射出成形で作製された白/黒ジルコニア焼結体時計バンド
本発明の焼結体の物性評価方法を以下に示す。
(焼結体密度、相対密度)
焼結体の密度はアルキメデス法によって測定した。相対密度は実測密度を理論密度で割った値であり、焼結体の理論密度は、各物質の密度(3モル%イットリア含有ジルコニア:6.07g/cm、黒色ジルコニア:6.00g/cm、スポジュメン:2.5g/cm、リチウムシリケート:2.5g/cm、アルミナ:3.98g/cm)から計算で求めた。例えば、スポジュメン4.85wt%、リチウムシリケート0.15wt%含有ジルコニア焼結体の理論密度は、100g/{(95g/6.07)+(4.85g/2.5)+(0.15g/2.5)}=5.67g/cmである。
(L表色系による色)
JISZ8722に準拠し、D65光源、視野角2°の条件において色差計(カラーアナライザーTC−1800MK−II、東京電色社製)を用いて測定を行った。試料は両面を鏡面研磨した厚さ1mm、直径20mmの円板を用いた。
合成例1〜7
(スポジュメン粉末の調製)
スポジュメン(LiO・Al・4SiO)粉末の原料として、γ−アルミナ(大明化学製TM−300)、シリカ(電気化学工業製1−FX)、炭酸リチウム(和光純薬工業製)を用いた。γ−アルミナ並びにシリカに含まれる含水量を1000℃、1時間焼成し求めた。その結果、γ−アルミナ:12%、シリカ:0.9%であった。含水量を考慮して、γ−アルミナ:計算量×1.14、シリカ:計算量×1.01を秤量し、炭酸リチウムと共に20時間エタノール中でボールミル混合し、乾燥後、950℃、2時間焼成した。粉末X線回折から、スポジュメン結晶の単一相であることがわかった。
(リチウムシリケート粉末の調製)
リチウムシリケート(LiO・SiO)粉末の原料として、シリカ(電気化学工業製1−FX)、炭酸リチウム(和光純薬工業製)を用いた。スポジュメン粉末と同様の方法で秤量、混合、乾燥し、950℃、2時間焼成した。粉末X線回折から、LiO・SiO結晶の単一相であることがわかった。
(白色ジルコニア粉末の調製)
3モル%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製、商品名3YS、比表面積7m/g)に所定量のスポジュメン粉末とリチウムシリケート粉末を添加し、120時間エタノール中でボールミル混合した後、乾燥したものを白色ジルコニア粉末とした。
(黒色ジルコニア粉末)
黒色ジルコニア粉末として、スピネル構造の複合酸化物(Co0.7Zn0.3)(Fe0.7Al0.33wt%を含む3モル%イットリア含有ジルコニア粉末(東ソー製、商品名TZ−Black、比表面積7m/g)を用いた。
(比較用白色ジルコニア粉末の調製)
東ソー製ジルコニア粉末3YSに高純度アルミナ粉末(比表面積9m/g)を5wt%添加し、120時間エタノール中でボールミル混合した後、乾燥したもの、及び東ソー製ジルコニア粉末3YSE(アルミナ0.25wt%含有、比表面積7m/g)を比較用白色ジルコニア粉末とした。
(焼結体の作製、焼結体密度、収縮寸法の評価)
白色ジルコニア粉末、比較用白色ジルコニア粉末と黒色ジルコニア粉末の焼結収縮挙動を調べた。
合成例1〜5の粉末を、金型プレス(圧力50MPa)とラバープレス(圧力200MPa)でΦ20mm、厚さ2mmの円板に成形した。成形体を電気炉に入れ、1350℃まで100℃/hで昇温し、1時間保持した後、冷却した。焼結体の両面をダイヤモンド砥石と砥粒を用いて研削・研磨した。試料の色を測定し、表1の結果を得た。白色ジルコニアはL>90で、鮮明な白色を呈し、黒色ジルコニアはL<5で深みのある黒色を呈することがわかった。
Figure 2015054801
実施例1〜4、比較例1,2
粉末2gを金型プレス、圧力100MPaで直径20mm、厚さ約2mmの円板に成形した。成形体を電気炉に設置し、100℃/hで昇温し、1100〜1500℃の各温度に1分間保持した後、冷却した。焼結体の直径をマイクロメーターで測定し、成形体の直径で除した値を収縮寸法とした。又、1200℃以上の焼結体の密度を測定した。
結果を表1(以下、表ではスポジュメンをSp、リチウムシリケートをLSと記す)、表2、図1に示す。
スポジュメンと微量リチウムシリケートを含む白色ジルコニアの焼結収縮は黒色ジルコニアのそれとほぼ一致することがわかった。
Figure 2015054801
実施例5、比較例3
長方形状の金型に黒色ジルコニア粉末(合成例5)4gを充填し、その上に白色ジルコニア粉末A(合成例1)4gを充填した後、圧力100MPaでプレスし、黒白2層からなる成形体(図2)を得た。又、白色ジルコニア粉末E(合成例6)を用い、同様の成形体を得た。これらの成形体を1200℃で1分間保持して焼結した。両者の焼結体の歪みを測定した。結果を図3に示す。白色ジルコニア粉末Aを用いた焼結体はリチウムアルミノシリケート結晶を含まない白色ジルコニア粉末Eの焼結体に比べて、歪みが格段に小さいことがわかった。
実施例6
黒色ジルコニア粉末(合成例5)300g、3wt%PVA水溶液55g、ポリカルボン酸系分散剤4g、水75gをΦ10mmのジルコニア製ボールの入ったプラスティック容器に入れ、16時間混合し、黒色ジルコニアスラリーを調製した。白色ジルコニア粉末A(合成例1)50gと水22gから同様の方法で白色ジルコニアスラリーを調製した。
図4の石膏型1、2からなる空間に黒色ジルコニアスラリーを流し込み、鋳込み成形体を得た。次に、石膏型2を取り外し、鋳込み口の付いた石工型4を被せ、白色ジルコニアスラリーを流し込み、白黒合体した鋳込み成形体を得た。すべての型を取り外し、室温で2日間乾燥した。
電気炉に入れ、1350℃まで100℃/hで昇温し、30分間保持した後、冷却した。得られた焼結体の表面を研削・研磨した。
白色ジルコニアと黒色ジルコニアとの焼結収縮差による歪みは見られず、美観に優れたデザインをもつ焼結体(図5)が得られた。
比較例4
白色ジルコニアA(合成例1)の代わりに、白色ジルコニアE(合成例6)の粉末を用いた以外は実施例6と全く同様にして、焼結体を作製した。得られた焼結体には大きな凹凸が見られ、歪によって割れが発生した。結果を図6に示す。
実施例7
黒色ジルコニア粉末(合成例5)500gにアクリル系熱可塑性樹脂100gを添加し、加温した混練機で練り混ぜコンパウンドを調製した。白色ジルコニア粉末A(合成例1)のコンパウンドも同様の方法で調製した。
時計ベゼルを作製できる射出金型(図7)を準備した。文字を掘り込んだリング形状のキャビティをもつ金型に、加熱した白色ジルコニアコンパウンドを射出し、文字付きリング成形体を得た後、上部金型2を開き、別の上部金型4を設置し、黒色ジルコニアコンパウンドを文字に被せるように射出した。すべての金型を開き、黒白合体したベゼル形状の射出成形体を得た。
電気炉に入れ、1350℃まで100℃/hで昇温し、1時間保持した後、冷却した。得られた焼結体のリング上面を研削・研磨し、文字を露出させ、リング側面も研削加工し、形状を整えた。
白色ジルコニアと黒色ジルコニアとの焼結収縮差による歪みや剥離は見られず、白黒の鮮明な色彩対比をもつ時計ベゼル(図8)が得られた。
本発明の白色ジルコニアと黒色ジルコニアとが合体して二色模様を形成しているジルコニア焼結体は光沢のある質感と美観に優れるのみならず、高硬度であるため傷が付き難い。
従って、時計部品(時計バンド、ベゼル、文字盤、時計ケース等)、装飾部品(ブローチ、ネクタイピン、ハンドバッグ金具、腕輪等)、外装部品(携帯電子機器筐体、ライターケース、化粧品ケース、携帯電話ケース、イヤホンハウジング等)、日用製品(ナイフ、調理器具等)等に広範に利用することができる。利用の一例を図9〜11に示す。

Claims (12)

  1. リチウムアルミノシリケート結晶を顔料とする白色ジルコニアと鉄、コバルトが必須成分であるスピネル酸化物結晶を顔料とする黒色ジルコニアからなるジルコニア焼結体。
  2. リチウムアルミノシリケート結晶がスポジュメン(LiO・Al・4SiO)であり、その含有量が2〜15wt%である請求項1記載のジルコニア焼結体。
  3. 白色ジルコニアが、スポジュメンと0.4wt%以下のリチウムシリケート(LiO・SiO)とを含有する請求項1又は2記載のジルコニア焼結体。
  4. 白色ジルコニアが、L表色系において、L=90〜100、a=−1〜1、b=−1〜2.5である請求項1〜3のいずれかに記載のジルコニア焼結体。
  5. スピネル酸化物結晶が(Co2+ 1−X)(Fe3+ 1−Y(M2+=Zn、Mn、M3+=Al、Cr、0.1<X≦1、0.5<Y≦1)組成であり、その含有量が2〜6wt%である請求項1〜4のいずれかに記載のジルコニア焼結体。
  6. スピネル酸化物結晶が(CoZn1−X)(FeAl1−Y(0.5<X≦1、0.5<Y≦1)組成である請求項1〜5のいずれかに記載のジルコニア焼結体。
  7. 黒色ジルコニアが、L表色系において、L=0〜10、a=−1〜1、b=−1〜1である請求項1〜6のいずれかに記載のジルコニア焼結体。
  8. 1200℃における焼結体の寸法比、(白色ジルコニアの寸法)/(黒色ジルコニアの寸法)=0.95〜1.05である請求項1〜7のいずれかに記載のジルコニア焼結体。
  9. 白色ジルコニア及び黒色ジルコニアがイットリア2〜6mol%を含有する請求項1〜8のいずれかに記載のジルコニア焼結体。
  10. 白色ジルコニア及び黒色ジルコニアが正方晶粒子を含有する請求項1〜9のいずれかに記載のジルコニア焼結体。
  11. リチウムアルミノシリケート結晶を顔料とする白色ジルコニア粉末と鉄、コバルトが必須成分であるスピネル酸化物結晶を顔料とする黒色ジルコニア粉末とを乾式プレス、射出、或いは鋳込みの粉末成形によって成形し、1300〜1450℃で焼結する請求項1〜10のいずれかに記載のジルコニア焼結体の製造方法。
  12. 請求項1〜10のいずれかに記載のジルコニア焼結体からなる時計部品、装飾物品、携帯機器部品、車載部品、高級日用部品。
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