JP6489009B2 - ガス拡散電極基材 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池、特に固体高分子型燃料電池に好適に用いられるガス拡散電極基材に関する。より詳しくは、耐フラッディング性、耐プラッギング性に優れ、低温で高い発電性能を発現可能であり、さらには、機械特性、導電性、熱伝導性が優れるガス拡散電極基材に関する。
水素を含む燃料ガスをアノードに供給し、酸素を含む酸化ガスをカソードに供給して、両極で起こる電気化学反応によって起電力を得る固体高分子型燃料電池は、一般的に、セパレータ、ガス拡散電極基材、触媒層、電解質膜、触媒層、ガス拡散電極基材、セパレータを順に積層して構成される。ガス拡散電極基材にはセパレータから供給されるガスを触媒層へと拡散するための高いガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すための高い導電性が必要であり、炭素繊維などからなる電極基材が広く用いられている。
しかしながら課題として、(1)固体高分子型燃料電池を70℃未満の比較的低い温度かつ高電流密度領域において作動させる場合、大量に生成する液水で電極基材が閉塞し、燃料ガスの供給が不足する結果、発電性能が低下する問題(以下、フラッディングと記載)、(2)固体高分子型燃料電池を70℃未満の比較的低い温度かつ高電流密度領域において作動させる場合、大量に生成する液水でセパレータのガス流路(以下、流路と記載)が閉塞し、燃料ガスの供給が不足する結果、瞬間的に発電性能が低下する問題(以下、プラッギングと記載)が知られている。これら(1)、(2)の問題を解決するために多くの取り組みがなされている。
特許文献1では、電極基材内部にマイクロポーラス層の一部を染みこませたガス拡散電極基材が提案されている。このガス拡散電極基材を用いた燃料電池によれば、セパレータ側のガス拡散電極基材表面が平滑で高い撥水性を有することにより、流路で液水が滞留しにくくなり、プラッギングが改善される。しかしながら、電極基材内部の空隙率が小さくなるため、ガス拡散性が低下し発電性能が低下するという問題があった。
特許文献2では、電極基材のフッ素樹脂としてFEPを用いたガス拡散電極基材が提案されている。このガス拡散電極基材を用いた燃料電池によれば、FEPが電極基材の炭素繊維を覆うため、セパレータ側のガス拡散電極基材表面が高い撥水性を有し、流路で液水が滞留しにくくなり、プラッギングが改善される。しかしながら、FEPが電極基材の炭素繊維を覆うため、セパレータとガス拡散電極基材の界面抵抗が増大するという問題があった。
特許文献3では、電極基材の両面にカーボンブラック、フッ素樹脂からなるマイクロポーラス層を形成したガス拡散電極基材を用いる燃料電池が提案されている。このガス拡散電極基材を用いた燃料電池によれば、セパレータ側のマイクロポーラス層が平滑で高い撥水性を有することにより、流路で液水が滞留しにくくなり、プラッギングが改善される。しかしながら、セパレータ側のマイクロポーラス層により電極基材からセパレータへの排水が阻害されるため、フラッディングが顕著になるという問題があった。
これらのような多くの取り組みがなされているが、耐フラッディング性、耐プラッギング性に優れ、なおかつ機械特性、導電性、熱伝導性に優れたガス拡散電極基材として満足できるものはまだ見出されていない。
特開2008−127661号公報 特開2006−120508号公報 特開平9−245800号公報
本発明の目的は、斯かる従来技術の背景に鑑み、耐フラッディング性、耐プラッギング性に優れ、低温で高い発電性能を発現可能であり、さらには、機械特性、導電性、熱伝導性が優れるガス拡散電極基材を提供することである。
本発明のガス拡散電極基材は、斯かる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、電極基材の片面に、炭素系フィラーとフッ素樹脂とから構成されるマイクロポーラス層を形成した、燃料電池に用いるガス拡散電極基材であって、マイクロポーラス層を形成した面とは反対側の面における水の滑落角が30度以下であり、面直ガス透過抵抗が15〜190mmAqである、ガス拡散電極基材である。
また、本発明のガス拡散電極基材の製造方法は、斯かる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、前記したガス拡散電極基材の製造方法であって、厚さが160μm以下である電極基材の片面に、炭素系フィラー、フッ素樹脂および分散媒から構成されるカーボン塗液を塗工した後、10秒以上5分未満の時間、カーボン塗液を塗工したガス拡散電極基材を水平に保持し、次いで乾燥および焼結を行うに際し、カーボン塗液を塗工する前に、フッ素樹脂を塗工しないか、または、フッ素樹脂を塗工した後に焼結を行わない、ガス拡散電極基材の製造方法である。
また、本発明の膜電極接合体は、斯かる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、電解質膜の両側に触媒層を有し、さらに前記触媒層の外側に、前記したガス拡散電極基材、または前記した製造方法で得られたガス拡散電極基材を有する、膜電極接合体である。
さらに、本発明の燃料電池は、斯かる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、前記した膜電極接合体の両側にセパレータを有する、燃料電池である。
本発明のガス拡散電極基材は、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側の面における水の滑落角が30度以下であるため、流路内を流れる液水がガス拡散電極基材に引っかかりにくく、耐プラッギング性が高い。さらに、本発明のガス拡散電極基材は、面直ガス透過抵抗が15〜190mmAqであるため、ガス拡散性が高く、本発明のガス拡散電極基材を用いると高い発電性能を発現可能である。電極基材にはカーボンペーパーなどを用いることができるため本発明のガス拡散電極基材は機械強度、導電性、熱伝導性も良好である。
従来撥水性の指標として、水の接触角が用いられることが多く、電極基材の片面にマイクロポーラス層を形成したガス拡散電極基材は大抵、マイクロポーラス層を形成した面とは反対側の面における水の接触角が140度以上となり、水の接触角では撥水性の違いが分からなかったが、水の滑落角で測定すると、ガス拡散電極基材の種類による違いが分かるようになり、斯かる指標を用いて本発明者が鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
本発明のガス拡散電極基材は、電極基材の片面にマイクロポーラス層が形成されている。
なお、本発明において、カーボンペーパーなどのみからなり、マイクロポーラス層を設けない基材、または「ガス拡散電極基材」におけるその部分を「電極基材」と称し、電極基材にマイクロポーラス層を設けた基材を「ガス拡散電極基材」と称する。
以下、各要素について説明する。
本発明における電極基材は、セパレータから供給されるガスを触媒へと拡散するための高い面内方向のガス拡散性、面直方向のガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する液水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すための高い導電性が必要である。なお、面直方向とは、基材面に対して直交する方向を意味する。
このため、電極基材として、炭素繊維織物、炭素繊維不織布、炭素繊維抄紙体などの炭素繊維を含む多孔体、発泡焼結金属、金属メッシュ、エキスパンドメタルなどの金属多孔体を用いることが好ましく、中でも、耐腐食性が優れることから、炭素繊維を含む多孔体を用いることが好ましく、さらには、機械強度に優れることから、炭素繊維抄紙体を炭化物で結着してなる基材、すなわち「カーボンペーパー」を用いることが好ましい。本発明において、炭素繊維抄紙体を炭化物で結着してなる基材は、通常、後述するように、炭素繊維の抄紙体に樹脂を含浸し炭素化することにより得られる。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が挙げられる。中でも、機械強度に優れることから、PAN系、ピッチ系炭素繊維が本発明において好ましく用いられる。
本発明における炭素繊維は、単繊維の平均直径が3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、単繊維の平均直径は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。平均直径が3μm以上であると、細孔径が大きくなり排水性が向上し、フラッディングを抑制することができる。一方、平均直径が20μm以下であると、水蒸気拡散性が小さくなり、高温での発電性能が向上する。また、異なる平均直径を有する2種類以上の炭素繊維を用いると、電極基材の表面平滑性を向上できるために好ましい。
ここで、炭素繊維における単繊維の平均直径は、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、炭素繊維を1000倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる30本の単繊維を選び、その直径を計測し、その平均値を求めたものである。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。
本発明における炭素繊維は、単繊維の平均長さが3mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。また、単繊維の平均長さは、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましい。平均長さが3mm以上であると、電極基材が機械強度、導電性、熱伝導性が優れたものとなり好ましい。一方、平均長さが20mm以下であると、抄紙の際の炭素繊維の分散性が優れ、均質な電極基材が得られるために好ましい。斯かる平均長さを有する炭素繊維は、連続した炭素繊維を所望の長さにカットする方法などにより得られる。
ここで、炭素繊維の平均長さは、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、炭素繊維を50倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる30本の単繊維を選び、その長さを計測し、その平均値を求めたものである。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。なお、炭素繊維における単繊維の平均直径や平均長さは、通常、原料となる炭素繊維についてその炭素繊維を直接観察して測定されるが、電極基材を観察して測定してもよい。
本発明において、電極基材の目付が50g/m以下という低目付であることが好ましく、45g/m以下であることがより好ましく、40g/m以下であることがさらに好ましい。また、電極基材の目付は、20g/m以上であることが好ましく、25g/m以上であることがより好ましく、30g/m以上であることがさらに好ましい。電極基材の目付が20g/m以上であると、電極基材を構成する炭素繊維の単位面積あたりの量がより適正となり、導電性がより向上し、得られるガス拡散電極基材の導電性がより高いものとなり、高温、低温のいずれにおいても発電性能がより向上する。また、電極基材の目付が20g/m以上であると、電極基材の機械強度がより向上し、電解質膜、触媒層を支えやすくなる。一方、電極基材の目付が50g/m以下であると、電極基材の面直方向のガス拡散性がより向上し、得られるガス拡散電極基材の面直方向のガス拡散性がより大きなものとなり、高温、低温のいずれにおいても発電性能がより向上する。
斯かる目付を有する電極基材は、後述する製法において、予備含浸体における炭素繊維目付、炭素繊維に対する樹脂成分の配合量を制御することにより得られる。なお、本発明において、炭素繊維を含む抄紙体に、樹脂組成物を含浸したものを「予備含浸体」と記載する。ここで、予備含浸体の炭素繊維目付を小さくすることにより低目付の基材が得られ、炭素繊維目付を大きくすることにより高目付の基材が得られる。また、炭素繊維に対する樹脂成分の配合量を小さくすることにより低目付の基材が得られ、樹脂成分の配合量を大きくすることにより高目付の基材が得られる。なお、本発明において、目付とは単位面積あたりの質量を意味する。
ここで、電極基材の目付は、電子天秤を用いて秤量した電極基材の質量を、電極基材のXY面の面積で除して得られる。なお、以下においてXY面とは基材面を意味する。なお、ガス拡散電極基材から電極基材を分離して、電極基材の目付を測定することも可能である。例えば、ガス拡散電極基材を大気中に600℃で30分加熱し、ガス拡散電極基材中のマイクロポーラス層に含まれる樹脂組成物を酸化分解させた後に、エタノールなどの溶媒中で超音波処理を行うことでマイクロポーラス層の残さを除去して電極基材を取り出すことができる。
本発明において、ガス拡散電極基材の目付が80g/m以下であることが好ましく、50g/m以下であることがより好ましい。また、ガス拡散電極基材の目付は、30g/m以上であることが好ましく、35g/m以上であることがより好ましい。ガス拡散電極基材の目付が30g/m未満であると、ガス拡散電極基材を構成する炭素繊維、炭素系フィラーの面積あたりの量が少なく、導電性が低いガス拡散電極基材となり、高温、低温のいずれにおいても発電性能が低下する場合がある。一方、ガス拡散電極基材の目付が80g/mを超えると、ガス拡散電極基材の面内方向のガス拡散性および面直方向のガス拡散性がともに低下するため、高温、低温のいずれにおいても発電性能が低下する場合がある。斯かる目付を有するガス拡散電極基材は、電極基材の目付とマイクロポーラス層の目付を制御することにより得られる。
ここで、ガス拡散電極基材の目付は、電子天秤を用いて秤量したガス拡散電極基材の質量を、ガス拡散電極基材のXY面の面積で除して得られる。
本発明において、電極基材内部の細孔径は30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。また、電極基材内部の細孔径は、80μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましく、70μm以下であることがさらに好ましい。細孔径が30μm以上であると、排水性がより向上し、フラッディングをより抑制することができる。細孔径が80μm以下であると、導電性がより高く、高温、低温のいずれにおいても発電性能がより向上する。斯かる細孔径の範囲に設計するには、単繊維の平均直径が3μm以上8μm以下である炭素繊維と、単繊維の平均直径が8μmを越える炭素繊維の両方を含むことが有効である。
ここで、電極基材内部の細孔径は、水銀圧入法により、測定圧力6kPa〜414MPa(細孔径30nm〜400μm)の範囲で測定して得られる細孔径分布のピーク径を求めたものである。なお、複数のピークが現れる場合は、最も高いピークのピーク径を採用する。測定装置としては、島津製作所社製オートポア9520、あるいはその同等品を用いることができる。
本発明において、電極基材の厚さが160μm以下であることが好ましく、140μm以下であることがより好ましく、120μm以下であることがさらに好ましい。また、電極基材の厚さが50μm以上であることが好ましく、60μm以上であることがより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましい。電極基材の厚さが160μm以下であると、排水のパスが短くなるため、排水性がより向上し、フラッディングをより抑制できるとともに、導電のパスが短くなり、導電性がより向上し、高温、低温のいずれにおいても発電性能がより向上する。また、電極基材の厚さが160μm以下であると、カーボン塗液を電極基材に塗工する際に、カーボン塗液を塗工する面とは反対側にカーボン塗液が染み出しやすくなるため、炭素繊維上への炭素系フィラーの付着をカーボン塗液の塗工の工程で行うことができるようになり、ガス拡散電極基材の生産性を向上させることができる。一方、電極基材の厚さが50μm以上であると、面内方向のガス拡散がより高くなり、セパレータのリブ下にある触媒へもガスの供給がより容易にできるため、低温、高温のいずれにおいても発電性能がより向上する。また、電極基材の厚さが50μm以上であると、電極基材の機械強度がより向上し、電解質膜、触媒層を支えやすくなる。
斯かる厚さを有する電極基材は、後述する製法において、熱処理時の厚さを制御することにより得られる。ここで、電極基材の厚さは、面圧0.15MPaで加圧した状態で、マイクロメーターを用いて求めることができる。10箇所の個別の測定値を平均したものを厚さとする。
なお、ガス拡散電極基材から電極基材を分離して、電極基材の厚さを測定することも可能である。例えば、ガス拡散電極基材を大気中に600℃で30分加熱し、ガス拡散電極基材中のマイクロポーラス層に含まれる樹脂組成物を酸化分解させた後に、エタノールなどの溶媒中で超音波処理を行うことでマイクロポーラス層の残さを除去して電極基材を取り出すことができる。
本発明に用いられる電極基材は、前記電極基材のマイクロポーラス層が形成される側の表面粗さに対して、その反対側の表面粗さが、1.0μm以上の差を持って大きいことが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましく、2.5μm以上であることがさらに好ましい。電極基材の表裏で表面粗さに一定の差があると、カーボン塗液を電極基材に塗工する際に、カーボン塗液を塗工する面とは反対側にカーボン塗液が染み出しやすくなるため、炭素繊維上への炭素系フィラーの付着をカーボン塗液の塗工の工程で行うことができるようになり、ガス拡散電極基材の生産性を向上させることができる。一方、斯かる表面粗さの差は5.0μm以下であることが好ましく、4.5μm以下であることがより好ましく、4.0μm以下であることがさらに好ましい。斯かる表面粗さの差は5.0μm以下であることにより、電極基材の機械強度がより向上し、電解質膜、触媒層を支えやすくなる。ここで、電極基材の表面粗さは、レーザー顕微鏡などを用いて、電極基材の表面において5mm四方の範囲を測定し、面傾き補正を行った後、表面の算術平均粗さ(Ra)[μm]を求めることで得ることができる。
本発明において、ガス拡散電極基材の厚さは190μm以下であることが好ましく、170μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。また、ガス拡散電極基材の厚さは、70μm以上であることが好ましく、80μm以上であることがより好ましく、90μm以上であることがさらに好ましい。ガス拡散電極基材の厚さが70μm以上であると、面内方向のガス拡散がより高くなり、セパレータのリブ下にある触媒へもガスを供給がより容易にできるため、低温、高温のいずれにおいても発電性能がより向上する。一方、ガス拡散電極基材の厚さが190μm以下であると、排水性がより向上し、フラッディングをより抑制できるとともに、導電のためのパスがより短くなり、導電性がより向上し、高温、低温のいずれにおいても発電性能がより向上する。斯かる厚さを有するガス拡散電極基材は、電極基材の厚さとマイクロポーラス層の厚さを制御することにより得られる。
ここで、ガス拡散電極基材の厚さは、面圧0.15MPaで加圧した状態で、マイクロメーターを用いて求めることができる。10箇所の個別の測定値を平均したものを厚さとする。
本発明において、電極基材の片面にマイクロポーラス層が配置されていることが必要である。マイクロポーラス層は、セパレータから供給されるガスを触媒へと拡散するための高い面直方向のガス拡散性、電気化学反応に伴って生成する液水をセパレータへ排出するための高い排水性、発生した電流を取り出すための高い導電性が必要である。さらには、電解質膜への水分の逆拡散を促進し、電解質膜を湿潤する機能も有する。本発明において、マイクロポーラス層は、電極基材の片面にのみ配置されていることが重要である。マイクロポーラス層が、電極基材の両面に配置されていると、電極基材とセパレータの間に電極基材よりも撥水性が高いマイクロポーラス層が配置されることになるため、電極基材内部からの排水が阻害され、低温での発電性能が低下する。
本発明において、マイクロポーラス層の目付は35g/m以下であることが好ましく、30g/m以下であることがより好ましく、25g/m以下であることがさらに好ましい。また、マイクロポーラス層の目付は、10g/m以上であることが好ましく、12g/m以上であることがより好ましく、14g/m以上であることがさらに好ましい。マイクロポーラス層の目付が10g/m以上であると、電極基材表面をより覆うことができ、生成水の逆拡散がより促進され、電解質膜の乾きを抑制することができる。また、マイクロポーラス層の目付が35g/m以下であると、排水性がより向上し、フラッディングをより抑制できる。
導電性と排水性を向上するという観点から、マイクロポーラス層は炭素系フィラーとフッ素樹脂を含む多孔体で構成されている。
炭素系フィラーとしてはカーボンブラック、線状カーボンなどを用いることができる。カーボンブラックとしては体積抵抗が低く、純度の高いアセチレンブラックを用いることが好ましい。線状カーボンとしてはアスペクト比が30〜5000である線状カーボンを用いることが好ましい。斯かるカーボンブラックと線状カーボンは併用することが好ましい。斯かる線状カーボンの使用により、炭素系フィラーとしてカーボンブラックのみを使用した場合よりもマイクロポーラス層の空隙率が向上し、面直方向のガス拡散性が改善されるため、フラッディングを抑制することができる。炭素系フィラーとしてカーボンブラックと線状フィラーを併用すると、炭素系フィラーとして線状カーボンのみをした場合に比べカーボン塗液の塗工時にカーボン塗液の電極基材への染み込みが促進され、炭素繊維への炭素系フィラーの付着が起こりやすくなり、滑落角を小さくすることができる。炭素系フィラーに対する線状カーボンの混合質量比が0.05以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましく、0.2以上であることがさらに好ましい。また、炭素系フィラーに対する線状カーボンの混合質量比が0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.65以下であることがさらに好ましい。
さらには、アスペクト比が30〜5000である線状カーボンを用いることにより、マイクロポーラス層の導電パスが短くなるため、電気抵抗が小さくなる。線状カーボンのアスペクト比が30以上であると、カーボン塗液中の線状カーボンの絡まりあいが多くなり、カーボン塗液の粘度が増加する。その結果、カーボン塗液の電極基材への染み込みが適度な状態となり、マイクロポーラス層の表面粗さが小さくなり、ガス拡散電極基材の電気抵抗が小さくなる。一方、線状カーボンのアスペクト比が5000以下であると、カーボン塗液中の線状カーボンの絡まりあいが適度な状態になり、カーボン塗液で固形分の凝集、沈降が起こりにくくなる。本発明において、線状カーボンのアスペクト比が3000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。また、線状カーボンのアスペクト比が35以上であることがより好ましく、40以上であることがさらに好ましい。
ここで、線状カーボンのアスペクト比は、平均長さ(μm)/平均直径(μm)を意味する。平均長さは、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などの顕微鏡で、1000倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる10個の線状カーボンを選び、その長さを計測し、平均値を求めたものであり、平均直径は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などの顕微鏡で、10000倍以上に拡大して写真撮影を行い、無作為に異なる10個の線状カーボンを選び、その直径を計測し、平均値を求めたものである。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。
線状カーボンとしては、気相成長炭素繊維、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カップ積層型カーボンナノチューブ、竹状カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバーが挙げられる。中でも、アスペクト比を大きくでき、導電性、機械特性が優れることから、気相成長炭素繊維、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブが、本発明において用いるに好適な線状カーボンとして挙げられる。気相成長炭素繊維とは気相中の炭素を触媒により成長させたものであり、平均直径が5〜200nm、平均繊維長が1〜20μmの範囲のものが好ましい。
本発明において、液水の排水を促進し、耐腐食性が優れるとの観点から、マイクロポーラス層にはフッ素樹脂を含む。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。中でも、融点が200℃以上320℃以下であるフッ素樹脂を用いることが好ましい。このようなフッ素樹脂を用いると、フッ素樹脂が溶融時に低粘度となり、フッ素樹脂の偏りが少なくなり、発電性能が向上する。このようなフッ素樹脂としては、FEPまたはPFAが挙げられ、特に好ましくはFEPである。
フッ素樹脂の含有量は、炭素系フィラーに対する質量比率で、5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく15質量%以上であるのがさらに好ましい。また、フッ素樹脂の含有量は、炭素系フィラーに対する質量比率で、50質量%以下であるのが好ましく、35重量%以下であるのがより好ましく、30質量%以下であるのがさらに好ましい。フッ素樹脂の含有量を斯かる範囲とすることで、十分な撥水性を持ちながらマイクロポーラス層のガス拡散性をより向上させることができる。
本発明において、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察できる炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していることが好ましい。さらに当該炭素系フィラーとして、前述したアスペクト比が30〜5000の線状カーボンを含むことが好ましい。ここで炭素系フィラーが付着しているかどうかの確認は、例えば、次の手順に従って行うことができる。まず、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維を2000倍の観察倍率で写真撮影を行う。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。前記表面の炭素繊維の画像を、ガス拡散電極基材から無作為に異なる10箇所について写真撮影を行った。そして得られた各画像の炭素繊維上に炭素系フィラーが存在するか否かを目視で確認し、1枚以上の写真で炭素系フィラーが確認できれば、炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していると判断した。
炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着することで、炭素繊維表面に凹凸が形成され、撥水性が上昇する。しかしながら、炭素繊維表面の炭素系フィラーの付着量が多くなると、電極基材の細孔が閉塞し排水性が低下するため、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側の電極基材表面に直径10μm以上の細孔を有する程度に炭素系フィラーの付着量を制御することが好ましい。また、前記電極基材表面の細孔の直径は20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましい。
ここで、ガス拡散電極基材におけるマイクロポーラス層を形成した面とは反対側の電極基材表面の細孔径は走査型電子顕微鏡で測定を行う。ガス拡散電極基材におけるマイクロポーラス層を形成した面とは反対側の電極基材表面から無作為に10箇所を選び、400倍の観察倍率で写真撮影を行い、各画像で細孔の直径を計測する。円形でない細孔については、内接する円の直径を細孔の直径とする。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。得られる画像内に複数の細孔が存在する場合、細孔の直径が最も大きいものを用いる。各画像で得られる値の平均を細孔の直径とする。
前記炭素系フィラーの炭素繊維表面への付着量の指標として、前記炭素系フィラーの炭素繊維表面の被覆率を用いることができる。つまり、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察できる斯かる被覆率は1〜70%の範囲内であることが好ましい。斯かる被覆率は50%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。また、斯かる被覆率は、6%以上であることがより好ましく、8%以上であることがさらに好ましい。前記被覆率が1%以上であると、炭素繊維表面に凹凸が形成され、撥水性が上昇する。また前記被覆率が70%以下であると、電極基材の細孔が閉塞しにくいため、面直方向のガス拡散性が高く、発電性能の高いガス拡散電極基材となる。
ここで炭素系フィラーの炭素繊維表面の被覆率は、例えば、次の手順に従って求めることができる。まず、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維を2000倍の観察倍率で写真撮影を行う。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。前記表面の炭素繊維の画像が10枚得られるまでガス拡散電極基材から無作為に異なる箇所を選び写真撮影を行う。次に、得られた画像から炭素繊維部分を切り出し、二値化を行う。二値化の方法は様々あり、炭素系フィラーで被覆されている部分と炭素系フィラーで被覆されていない部分とを明確に判別できる場合は目視にて判別する方法を採用しても良いが、本発明においては画像処理ソフトなどを用いる方法を採用することが好ましい。ここで、画像処理ソフトとしては、Adobe System社製Adobe“PHOTOSHOP”(登録商標)もしくはJTrimを用いることができる。次にJTrim v1.53cを用いた場合の処理方法について説明する。それぞれの画像で、ノーマライズ処理を行った後に、閾値128で二階調化を行い、二値化画像を得ることが好ましい。得られたそれぞれの二値化画像で、炭素繊維の面積(炭素系フィラーで被覆されている部分と炭素系フィラーで被覆されていない部分の面積の和)に対する炭素系フィラーで被覆されている部分の面積の割合(%)を算出し、その平均値を求め、前記の被覆率とする。画像処理ソフトで二値化を行う場合に、炭素繊維の形状効果により炭素繊維の側面部分が白くなっている場合、炭素繊維部分を切り出す際に炭素繊維側面0.5μm分を除くことが好ましい。画像処理ソフトで面積の割合を求める場合、画素数をカウントして算出することが好ましい。
本発明において、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察した炭素繊維表面および炭素系フィラー表面に、フッ素樹脂が存在することが好ましい。フッ素が検出されるか否かで、フッ素樹脂の存在を確認することができる。ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察した炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂を有することで、マイクロポーラス層を形成した面とは反対側の面は、滑落角30度以下の強い撥水性を示すようになる。ここで、フッ素の検出は、走査型電子顕微鏡(SEM)−EDX測定を用い、加速電圧10kV、拡大倍率400倍以上の条件で測定を行う。測定で得られるスペクトルデータ中において、0.68〜0.69keVにピークが観測される場合をフッ素が検出されたと定義する。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。エネルギー分散型X線分析装置としては、(株)堀場製作所EX−220SE、あるいはその同等品を用いることができる。
本発明において、マイクロポーラス層の空隙率は60%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。また、マイクロポーラス層の空隙率は85%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましく、75%以下であることがさらに好ましい。空隙率が60%以上であると、排水性がより向上し、フラッディングをより抑制することができる。空隙率が85%以下であると、水蒸気拡散性がより小さく、ドライアップをより抑制することができる。加えて、導電性が高く、高温、低温のいずれにおいても発電性能が向上する。
斯かる空隙率を有するマイクロポーラス層は、後述する製法において、マイクロポーラス層の目付、フッ素樹脂、その他材料に対する炭素系フィラーの配合量、炭素系フィラーの種類、および、マイクロポーラス層の厚さを制御することにより得られる。中でも、フッ素樹脂、その他材料に対する炭素系フィラーの配合量、炭素系フィラーの種類を制御することが有効である。ここで、フッ素樹脂、その他材料に対する炭素系フィラーの配合量を大きくすることにより高空隙率のマイクロポーラス層が得られ、フッ素樹脂、その他材料に対する炭素系フィラーの配合量を小さくすることにより低空隙率のマイクロポーラス層が得られる。
ここで、マイクロポーラス層の空隙率は、イオンビーム断面加工装置を用いた断面観察用サンプルを用い、走査型電子顕微鏡などの顕微鏡で、断面を1000倍以上に拡大して写真撮影を行い、空隙部分の面積を計測し、観察面積に対する空隙部分の面積の比を求めたものである。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、あるいはその同等品を用いることができる。
本発明において、電極基材の片面にマイクロポーラス層が配置されていることが必要であるが、ガス拡散電極基材の滑落角を低減およびセパレータとガス拡散電極基材間の電気抵抗を低減することができるとの観点から、マイクロポーラス層の一部が電極基材に染込んでいることが好ましい。
本発明において、耐プラッギング性の指標としてガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側の面における水の滑落角を用いる。前記滑落角が小さいほど、耐プラッギング性が高い。滑落角は30度以下であることが必要であり、25度以下であることがより好ましく、20度以下であることがさらに好ましい。滑落角が30度以下であると、燃料電池の発電時に流路内を流れる液水がガス拡散電極基材に付着することを抑制でき、流路内の液水を速やかに排水することが可能となり、耐プラッギング性が高くなる。滑落角とは、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側を上にして水平にし、前記面の上に精製水10μLを置き、1度/秒の速度で傾けた際に、精製水が転がり始める角度のことをいう。滑落角は、協和界面科学(株)製自動接触角計DM−501、あるいは同等品を用いて測定することができる。
斯かる滑落角を有するガス拡散電極基材は、後述する製法において、炭素系フィラーに対する線状カーボンの混合質量比、フッ素樹脂の種類と配合量、炭素系フィラーの炭素繊維表面の被覆率、カーボン塗液を塗工した後に乾燥を行うまでの水平保持時間などを制御することにより得られる。中でも、フッ素樹脂の配合量、炭素系フィラーの炭素繊維表面の被覆率を制御することが有効である。ここで、フッ素樹脂の配合量、炭素系フィラーの炭素繊維表面の被覆率を大きくすることにより滑落角を小さくすることができる。
本発明において、面直方向のガス拡散性の指標として面直ガス透過抵抗を用いる。ガス拡散電極基材の面直ガス透過抵抗が小さいほど、面直方向のガス拡散性は高い。面直ガス透過抵抗は15〜190mmAqの範囲内であることが必要である。面直ガス透過抵抗は180mmAq以下であることがより好ましく、170mmAq以下であることがさらに好ましい。また、面直ガス透過抵抗は25mmAq以上であることがより好ましく、50mmAq以上であることがさらに好ましい。面直ガス透過抵抗が15mmAq以上であると、水蒸気拡散性をより小さくし、電解質膜の乾燥をより抑制することができる。また、面直ガス透過抵抗が190mmAq以下であると、面直方向のガス拡散性がより向上し、低温から高温の広い温度範囲にわたって高い発電性能をより発現しやすくなる。ここで、ガス拡散電極基材の面直ガス透過抵抗は、次のようにして測定することができる。すなわち、ガス拡散電極基材から切り出した直径4.7cmの円形のサンプルを用い、マイクロポーラス層側の面からその反対面に空気を58cc/min/cmの流速で透過させたときの、マイクロポーラス層側の面とその反対面の差圧を差圧計で測定し、面直ガス透過抵抗とする。なお、ガス拡散電極基材単体が入手できない等の理由により、ガス拡散電極基材の面直ガス透過抵抗が求められない場合は、膜電極接合体中からガス拡散電極基材を取り出し、上述する方法によりガス拡散電極基材の面直ガス透過抵抗を求めることができる。
斯かる面直ガス透過抵抗を有するガス拡散電極基材は、後述する製法において、電極基材およびガス拡散電極基材の目付、電極基材およびガス拡散電極基材の空隙率、カーボン塗液の染み込みなどを制御することにより得られる。ここで、電極基材およびガス拡散電極基材の目付を小さくする、および、または、電極基材およびガス拡散電極基材の空隙率を大きくすることにより面直ガス透過抵抗を小さくすることができる。
本発明において、ガス拡散電極基材を1MPaで加圧した状態における面直方向の電気抵抗は7.4mΩ・cm以下であることが好ましく、7mΩ・cm以下であることがより好ましく、6.5mΩ・cm以下であることがさらに好ましい。電気抵抗が7.4mΩ・cm以下となることで燃料電池の抵抗過電圧を小さくすることができ、燃料電池スタックの発電性能が向上する。電気抵抗を低減するには前記炭素系フィラーの炭素繊維表面の被覆率を大きくする、もしくはフッ素樹脂の配合量を小さくすることで調整できる。またガス拡散電極基材を1MPaで加圧した状態における面直方向の電気抵抗の下限は特に限定されないが、電気抵抗を低減するために前記炭素系フィラーの炭素繊維表面の被覆率を大きくしすぎると面直ガス拡散抵抗が大きくなり、フッ素樹脂の配合量を小さくしすぎると滑落角が大きくなることから、2mΩ・cm程度に止めておくことが好ましい。
次に、本発明のガス拡散電極基材を得るに好適な方法について、電極基材として、炭素繊維抄紙体から得られる炭素繊維焼成体を例にとって、具体的に説明する。
<抄紙体、および抄紙体の製造方法>
炭素繊維を含む抄紙体を得るためには、炭素繊維を液中に分散させて製造する湿式抄紙法や、空気中に分散させて製造する乾式抄紙法などが用いられる。中でも、生産性が優れることから、湿式抄紙法が好ましく用いられる。
電極基材の排水性、面内方向のガス拡散性を向上する目的で、炭素繊維に有機繊維を混合して抄紙することができる。有機繊維としては、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、ポリアセタール繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維などを用いることができる。
また、抄紙体の形態保持性、ハンドリング性を向上する目的で、バインダーとして有機高分子を含むことができる。ここで、有機高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、セルロースなどを用いることができる。
抄紙体は、面内の導電性、熱伝導性を等方的に保つという目的で、炭素繊維が二次元平面内にランダムに分散したシート状であることが好ましい。
抄紙体で得られる細孔径分布は、炭素繊維の含有率や分散状態に影響を受けるものの、概ね20〜500μm程度の大きさに形成することができる。
抄紙体は、炭素繊維の目付が10g/m以上であることが好ましく、15g/m以上であることがより好ましく、20g/m以上であることがさらに好ましい。また、抄紙体は、炭素繊維の目付が40g/m以下であることが好ましく、35g/m以下であることがより好ましく、30g/m以下であることがさらに好ましい。炭素繊維の目付が10g/m以上であると、電極基材が機械強度の優れたものとなり好ましい。炭素繊維の目付が40g/m以下であると、電極基材が面内方向のガス拡散性と排水性の優れたものとなり好ましい。なお、抄紙体を複数枚貼り合わせる場合は、貼り合わせ後の炭素繊維の目付が上記の範囲内にあることが好ましい。
ここで、抄紙体における炭素繊維目付は、10cm四方に切り取った抄紙体を、窒素雰囲気下、温度450℃の電気炉内に15分間保持し、有機物を除去して得た残さの質量を、抄紙体の面積(0.01m)で除して求めることができる。
<樹脂組成物の含浸>
炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸することにより予備含浸体を形成する。炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸する方法として、樹脂組成物を含む溶液中に抄紙体を浸漬する方法、樹脂組成物を含む溶液を抄紙体に塗布する方法、樹脂組成物からなるフィルムを抄紙体に重ねて転写する方法などが用いられる。中でも、生産性が優れることから、樹脂組成物を含む溶液中に抄紙体を浸漬する方法が好ましく用いられる。
本発明に用いる樹脂組成物は、焼成時に炭化して導電性の炭化物となるものが好ましい。樹脂組成物は、樹脂成分に溶媒などを必要に応じて添加したものをいう。ここで、樹脂成分とは、熱硬化性樹脂などの樹脂を含み、さらに、必要に応じて炭素系フィラー、界面活性剤などの添加物を含むものである。
より詳しくは、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の炭化収率が40質量%以上であることが好ましい。炭化収率が40質量%以上であると、電極基材が機械特性、導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。
樹脂成分を構成する樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。中でも、炭化収率が高いことから、フェノール樹脂が好ましく用いられる。また、樹脂成分に必要に応じて添加する添加物としては、電極基材の機械特性、導電性、熱伝導性を向上する目的で、炭素系フィラーを含むことができる。ここで、炭素系フィラーとしては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭素繊維のミルドファイバー、黒鉛、薄片グラファイトなどを用いることができる。
本発明に用いる樹脂組成物は、前述の構成により得られた樹脂成分をそのまま使用することもできるし、必要に応じて、抄紙体への含浸性を高める目的で、各種溶媒を含むことができる。ここで、溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを用いることができる。
本発明において用いられる樹脂組成物は、25℃、0.1MPaの状態で液状であることが好ましい。液状であると抄紙体への含浸性が優れ、電極基材が機械特性、導電性、熱伝導性に優れたものとなり好ましい。
炭素繊維100質量部に対して、樹脂成分を30〜400質量部含浸することが好ましく、50〜300質量部含浸することがより好ましい。樹脂成分の含浸量が30質量部以上であると、電極基材が機械特性、導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。一方、樹脂成分の含浸量が400質量部以下であると、電極基材が面内方向のガス拡散性と面直方向のガス拡散性の優れたものとなり好ましい。
<貼り合わせ、熱処理>
炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸した予備含浸体を形成した後、炭素化を行うに先立って、予備含浸体の貼り合わせや、熱処理を行うことができる。
電極基材を所定の厚さにする目的で、予備含浸体の複数枚を貼り合わせることができる。この場合、同一の性状を有する予備含浸体の複数枚を貼り合わせることもできるし、異なる性状を有する予備含浸体の複数枚を貼り合わせることもできる。具体的には、炭素繊維の平均直径、平均長さ、抄紙体の炭素繊維目付、樹脂成分の含浸量などが異なる複数の予備含浸体を貼り合わせることもできる。
樹脂組成物を増粘、部分的に架橋する目的で、予備含浸体を熱処理することができる。熱処理する方法としては、熱風を吹き付ける方法、プレス装置などの熱板に挟んで加熱する方法、連続ベルトに挟んで加熱する方法などを用いることができる。
<炭素化>
炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸した後、炭素化するために、不活性雰囲気下で焼成を行う。斯かる焼成は、バッチ式の加熱炉を用いることもできるし、連続式の加熱炉を用いることもできる。また、不活性雰囲気は、炉内に窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを流すことにより得ることができる。
本発明において、焼成の最高温度が1300〜3000℃の範囲内であることが好ましく、1700〜3000℃の範囲内であることがより好ましく、1900〜3000℃の範囲内であることがさらに好ましい。斯かる最高温度が1300℃以上であると、樹脂成分の炭素化が進み、電極基材が導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。一方、斯かる最高温度が3000℃以下であると、加熱炉の運転コストが低くなるために好ましい。
焼成にあたっては、昇温速度が80〜5000℃/分の範囲内であることが好ましい。昇温速度が80℃/分以上であると、生産性が優れるために好ましい。一方、昇温速度が5000℃/分以下であると、樹脂成分の炭素化が緩やかに進み緻密な構造が形成されるため、電極基材が導電性、熱伝導性の優れたものとなり好ましい。
なお、本発明において、炭素繊維を含む抄紙体に樹脂組成物を含浸した後、炭素化したものを、「炭素繊維焼成体」と記載する。
<撥水加工>
後述するように、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察できる炭素繊維表面に炭素系フィラーを付着させるに際し、カーボン塗液の塗工前に、炭素系フィラーとフッ素樹脂が含まれる含浸液に電極基材を浸漬させる場合には、排水性を向上する目的で、炭素繊維焼成体に撥水加工を施してもよい。一方、後述するように、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察できる炭素繊維表面に炭素系フィラーを付着させるに際し、カーボン塗液の塗工により、電極基材にカーボン塗液の一部を染み込ませることで行う場合には、電極基材にカーボン塗液を塗工する前に、撥水加工をしないことが好ましい。
撥水加工は、炭素繊維焼成体にフッ素樹脂を塗布、熱処理することにより行うことができる。ここで、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などが挙げられる。フッ素樹脂の塗布量は、炭素繊維焼成体100質量部に対して1〜50質量部であることが好ましく、3〜40質量部であることがより好ましい。フッ素樹脂の塗布量が1質量部以上であると、電極基材が排水性に優れたものとなり好ましい。一方、フッ素樹脂の塗布量が50質量部以下であると、電極基材が導電性の優れたものとなり好ましい。フッ素樹脂塗工後には90℃以上200℃未満で乾燥を行うことが好ましいが、カーボン塗液の塗工前に焼結は行うべきではない。具体的には、200℃以上での熱処理は避けるべきである。フッ素樹脂を塗工した電極基材に200℃以上の温度で熱処理を行うと、フッ素樹脂の周りに付着していた界面活性剤が熱分解し、電極基材が撥水性となる。フッ素樹脂塗工後の乾燥を90℃以上200℃未満で行うことにより、カーボン塗液の電極基材への染み込みが促進され、炭素繊維への炭素系フィラーの付着にかかる時間が短時間となる。
なお、炭素繊維焼成体は「電極基材」に該当する。上述のとおり、炭素繊維焼成体は、必要に応じて、撥水加工が施こされるが、本発明では、撥水加工が施こされた炭素繊維焼成体も「電極基材」に該当するものとする(撥水加工が施されない炭素繊維焼成体は、当然に「電極基材」に該当する)。
<マイクロポーラス層の形成>
マイクロポーラス層は、電極基材の片面に、炭素系フィラー、フッ素樹脂および分散媒から構成されるカーボン塗液を塗工することによって形成することができる。なお、この際の電極基材としては、厚さが160μm以下であることが好適である。
カーボン塗液には、界面活性剤などの分散助剤を含んでもよい。分散媒としては、水や有機溶媒などが用いられるが、エチレングリコールなどのアルコールを分散媒として用いるとカーボン塗液の電極基材への染み込みが早すぎて制御が難しくなるため、分散媒としては水を用いることが好ましい。分散助剤にはノニオン性の界面活性剤を用いるのがより好ましい。また、炭素系フィラーとしては、前記したような、特定アスペクト比の線状カーボンを用いることが好ましいが、それ以外の各種炭素系フィラーを含有してもよい。
カーボン塗液の電極基材への塗工は、市販されている各種の塗工装置を用いて行うことができる。塗工方式としては、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、スプレー噴霧、凹版印刷、グラビア印刷、ダイコーター塗工、バー塗工、ブレード塗工などが使用できる。以上例示した塗工方法はあくまでも例示のためであり、必ずしもこれらに限定されるものではない。
ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察できる炭素繊維表面に炭素系フィラーを付着させるには、前記カーボン塗液の塗工により、電極基材にカーボン塗液の一部を染み込ませることで行ってもよいし、前記カーボン塗液の塗工前に、炭素系フィラーとフッ素樹脂が含まれる含浸液に電極基材を浸漬し乾燥することで付着させてもよいが、ガス拡散電極基材の生産性を向上させるため、カーボン塗液の塗工により、電極基材にカーボン塗液の一部を染み込ませることで行うことが好ましい。
ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察できる炭素繊維表面に炭素系フィラーを付着させるに際し、カーボン塗液の塗工により、電極基材にカーボン塗液の一部を染み込ませることで行う場合、電極基材にカーボン塗液を塗工する前に、撥水加工をしない(フッ素樹脂を塗工しない)ことが好ましい。撥水加工を行わないことでカーボン塗液の電極基材への染み込みが促進され、炭素繊維への炭素系フィラーの付着にかかる時間が短時間となる。さらに撥水加工の工程を削減できるため、ガス拡散電極基材の生産性が向上する。
電極基材にカーボン塗液を塗工した後、乾燥を行うまでに10秒以上5分未満の時間カーボン塗液を塗工したガス拡散電極基材を水平に保持することが好ましい。すなわち、斯かるガス拡散電極基材をXY面が水平になるように保持するのである。ここで、水平とは、基材内のカーボン塗液が面内で移動しない程度に水平を保つことができる平面であることを意味する。10秒以上水平に保持することで、カーボン塗液が電極基材に染み込み、炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着する。保持時間が5分未満であることで、ガス拡散電極基材の生産性が向上する。ここで、カーボン塗液の粘度は1〜25Pa・sの範囲内であることが好ましく、2〜20Pa・sの範囲内であることがより好ましく、3〜15Pa・sの範囲内であることがさらに好ましい。粘度はシアレート・シアストレス制御型の粘度計で測定を行う。カーボン塗液が23℃になるように温度調整した粘度計でコーン角度1度のコーンを使用し、シアレート17s‐1における粘度を測定する。シアレート・シアストレス制御型の粘度計としてはビスコテック(株)製シアレート・シアストレス制御型レオメーター RC30型、あるいはその同等品を用いることができる。
カーボン塗液の電極基材への塗工後、分散媒を除去するために、80〜150℃の温度で塗液を乾かすことが好ましい。すなわち、塗工物を、80〜150℃の温度に設定した乾燥器に投入し、5〜30分の範囲で乾燥する。乾燥風量は適宜決めればよいが、急激な乾燥は、マイクロポーラス層の表面に微小クラックを誘発する場合があるので望ましくない。このようにして、カーボン塗液中の固形分(炭素系フィラー、フッ素樹脂、界面活性剤など)が乾燥後に残存する。
乾燥後の塗工物は、マッフル炉や焼成炉または高温型の乾燥機に投入し、300〜380℃にて5〜20分間加熱して、フッ素樹脂を溶融し、炭素系フィラー同士のバインダーにして焼結する。焼結を行うことにより、界面活性剤が熱分解し、炭素系フィラーとフッ素樹脂を含む多孔体であるマイクロポーラス層が形成される。
カーボン塗液の塗工工程または撥水加工工程のいずれかで、フッ素樹脂として、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)を使用する場合、マッフル炉や焼成炉または高温型の乾燥機の温度は370℃以下であることが好ましい。370℃以下の温度にすることで、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)の熱分解を抑えることができる。
<膜電極接合体>
前記したガス拡散電極基材を、両面に触媒層を有する固体高分子電解質膜の少なくとも片面に接合することで膜電極接合体を構成することができる。その際、触媒層側にマイクロポーラス層を配置することで、より生成水の逆拡散が起こりやすくなるのに加え、触媒層とガス拡散電極基材の接触面積が増大し、接触電気抵抗を低減することができる。
<燃料電池>
本発明の燃料電池は、上述の膜電極接合体の両側にセパレータを有するものである。すなわち、上述の膜電極接合体の両側にセパレータを有することで燃料電池を構成する。通常、斯かる膜電極接合体の両側にガスケットを介してセパレータで挟んだものを複数個積層することによって固体高分子型燃料電池を構成する。触媒層は、固体高分子電解質と触媒担持炭素を含む層からなる。触媒としては、通常、白金が用いられる。アノード側に一酸化炭素を含む改質ガスが供給される燃料電池にあっては、アノード側の触媒としては白金およびルテニウムを用いるのが好ましい。固体高分子電解質は、プロトン伝導性、耐酸化性、耐熱性の高い、パーフルオロスルホン酸系の高分子材料を用いるのが好ましい。斯かる燃料電池ユニットや燃料電池の構成自体は、よく知られているところである。なお、本発明の燃料電池において、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層は触媒層に接していることが好ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。実施例で用いた材料、電極基材、およびガス拡散電極基材の作製方法、燃料電池の電池性能評価方法を次に示した。
<電極基材の作製>
東レ(株)製ポリアクリルニトリル系炭素繊維“トレカ”(登録商標)T300(平均炭素繊維径:7μm)を平均長さ12mmにカットし、水中に分散させて湿式抄紙法により連続的に抄紙した。さらに、バインダーとしてポリビニルアルコールの10質量%水溶液を当該抄紙に塗布し、乾燥させ、炭素繊維目付15.5g/mの抄紙体を作製した。ポリビニルアルコールの塗布量は、抄紙体100質量部に対して、22質量部であった。
熱硬化性樹脂としてレゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂を1:1の質量比で混合した樹脂、炭素系フィラーとして鱗片状黒鉛(平均粒径5μm)、溶媒としてメタノールを用い、熱硬化性樹脂/炭素系フィラー/溶媒=10質量部/5質量部/85質量部の配合比でこれらを混合し、超音波分散装置を用いて1分間撹拌を行い、均一に分散した樹脂組成物を得た。
15cm×12.5cmにカットした抄紙体をアルミバットに満たした樹脂組成物に浸漬し、炭素繊維100質量部に対して、樹脂成分(熱硬化性樹脂+炭素系フィラー)が130質量部となるように含浸させた後、100℃で5分間加熱して乾燥させ、予備含浸体を作製した。次に、平板プレスで加圧しながら、180℃で5分間熱処理を行った。なお、加圧の際に平板プレスにスペーサーを配置して、熱処理後の予備含浸体の厚さが130μmになるように上下プレス面板の間隔を調整した。
予備含浸体を熱処理した基材を、加熱炉において、窒素ガス雰囲気に保たれた、最高温度が2400℃の加熱炉に導入し、炭素繊維焼成体を得た。
炭素繊維焼成体95質量部に対し、5質量部のPTFEを付与し、100℃で5分間加熱して乾燥させ、厚さ100μm、目付24g/m、電極基材内部の細孔径が35μmの電極基材を作製した。
<マイクロポーラス層の形成>
スリットダイコーターを用いて電極基材にマイクロポーラス層を形成した。ここで用いたカーボン塗液には、炭素系フィラーとして、カーボンブラックの一種であるアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製“デンカ ブラック”(登録商標))、気相成長炭素繊維(昭和電工株式会社製“VGCF”(登録商標)、平均直径:0.15μm、平均繊維長:8μm、アスペクト比:50、線状カーボンの一種)、気相成長炭素繊維(昭和電工株式会社製VGCF−S、平均直径:0.10μm、平均繊維長:11μm、アスペクト比:110、線状カーボンの一種)、または、多層カーボンナノチューブ(チープ チューブス社製、平均直径:0.015μm、平均繊維長:20μm、アスペクト比:1300、線状カーボンの一種)のうちの少なくとも1種を用い、フッ素樹脂として、PTFE(ダイキン工業株式会社製“ポリフロン”(登録商標)D−1E)もしくはFEP(ダイキン工業株式会社製“ネオフロン”(登録商標)ND−110)を用い、界面活性剤としてナカライテスク株式会社製“TRITON”(登録商標)X−100を用い、分散媒として精製水もしくはエチレングリコール(ナカライテスク株式会社製)を用いて、表1〜5に示す配合量を質量部で記載したカーボン塗液の組成となるように調整した。なお、表1〜5に示すPTFEおよびFEPの配合量は、PTFEおよびFEPの水分散液としての配合量を表す。ダイコーターを用いて電極基材にカーボン塗液を塗工後、60秒間水平に保持した後、120℃で10分間、380℃で10分間加熱(焼結)し、ガス拡散電極基材の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着したガス拡散電極基材を作製した。
<固体高分子型燃料電池の発電性能評価>
白金担持炭素(田中貴金属工業(株)製、白金担持量:50質量%)1.00g、精製水 1.00g、“NAFION”(登録商標)溶液(Aldrich社製 “NAFION”(登録商標)5.0質量%)8.00g、イソプロピルアルコール(ナカライテスク社製)18.00gを順に加えることにより、触媒液を作成した。
次に7cm×7cmにカットした “ナフロン”(登録商標)PTFEテープ“TOMBO”(登録商標)No.9001(ニチアス(株)製)に、触媒液をスプレーで塗布し、室温で乾燥させ、白金量が0.3mg/cmの触媒層付きPTFEシートを作製した。続いて、10cm×10cmにカットした固体高分子電解質膜“NAFION”(登録商標)NRE−211CS(DuPont社製)を2枚の触媒層付きPTFEシートで挟み、平板プレスで5MPaに加圧しながら130℃で5分間プレスし、固体高分子電解質膜に触媒層を転写した。プレス後、PTFEシートを剥がし、触媒層付き固体高分子電解質膜を作製した。
次に、触媒層付き固体高分子電解質膜を、7cm×7cmにカットした2枚のガス拡散電極基材で挟み、平板プレスで3MPaに加圧しながら130℃で5分間プレスし、膜電極接合体を作製した。なお、ガス拡散電極基材はマイクロポーラス層を有する面が触媒層側と接するように配置した。
得られた膜電極接合体を燃料電池評価用単セルに組み込み、電流密度を変化させた際の電圧を測定した。ここで、セパレータとしては、溝幅1.0mm、溝深さ1.0mm、リブ幅1.0mmの一本流路のサーペンタイン型セパレータを用いた。また、アノード側には無加圧の水素を、カソード側には無加圧の空気を供給し、評価を行った。なお、水素、空気はともに80℃に設定した加湿ポットにより加湿を行った。また、水素、空気中の酸素の利用率はそれぞれ80%、67%とした。
まず、運転温度を65℃、加湿温度80℃、電流密度を2.2A/cmにセットした場合の、出力電圧を測定し、耐フラッディング性(低温性能)の指標として用いた。また、運転温度を65℃、電流密度を2.2A/cmにセットし、30分間保持した場合の、出力電圧低下回数をカウントし、耐プラッギング性の指標として用いた。すなわち、30分間に出力電圧が0.20V以下になった回数をカウントし、7回以上のものをC、回数が5〜6回のものをB、3〜4回のものをA、2回以下のものをSとした。
<滑落角の測定>
滑落角とは、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側を上にして水平にし、前記面の上に精製水10μLを置き、1度/秒の速度で傾けた際に、精製水が転がり始める角度のことをいう。滑落角は、協和界面科学(株)製自動接触角計DM−501を用いて測定した。測定は場所を変えて8回実施し、その平均値を用いた。
<電気抵抗の測定>
ガス拡散電極基材の面直方向の電気抵抗は、2.23mm×2.23mmにカットしたガス拡散電極基材を2枚の金メッキ板の間に挟んで1.0MPaの一様な面圧をかけたとき、1.0Aの電流を流して、電気抵抗を測定して面積をかけて求めた。
<面直ガス透過抵抗の測定>
ガス拡散電極基材から切り出した直径4.7cmの円形のサンプルを用い、マイクロポーラス側の面からその反対面に空気を58cc/min/cmの流速で透過させたときの、マイクロポーラス側の面とその反対面の差圧を差圧計で測定し、面直ガス透過抵抗とした。
<フッ素樹脂の融点の測定>
フッ素樹脂の融点を示差走査熱量分析により測定した。装置はセイコーインスツル株式会社(SII社)製DSC6220を用いて、窒素中にて昇温速度2℃/分で、30℃から400℃の温度まで変化させ、その際の吸発熱ピークを観察し、150℃以上の温度での吸熱ピークをフッ素樹脂の融点とした。
<表面粗さの測定>
電極基材の表面粗さを、レーザー顕微鏡を用いて測定した。測定装置はVK−X100(キーエンス(株)製)を用いて、倍率10の対物レンズにて5mm四方の範囲をスキャンして測定し、面傾き補正を行った後、5mm四方での算術平均粗さ(Ra)を求めた。無作為に選択した10箇所について測定を行い、各箇所の算術平均粗さの平均を表面粗さ[μm]とした。
<炭素系フィラーが付着しているかどうかの確認>
ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維を2000倍の観察倍率で写真撮影を行った。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800を用いて、前記表面の炭素繊維の画像を、ガス拡散電極基材から無作為に異なる10箇所について写真撮影を行った。そして得られた各画像の炭素繊維上に炭素系フィラーが存在するか否かを目視で確認し、1枚以上の写真で炭素系フィラーが確認できれば、炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していると判断した。
<フッ素樹脂の存在の確認>
ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察した炭素繊維表面および炭素系フィラー表面を走査型電子顕微鏡(SEM)−EDX測定を用い、加速電圧10kV、拡大倍率400倍以上の条件で測定を行い、測定で得られるスペクトルデータ中において、0.68〜0.69keVにピークが観測されるかを確認した。走査型電子顕微鏡としては、(株)日立製作所製S−4800、エネルギー分散型X線分析装置としては、(株)堀場製作所EX−220SEを使用した。0.68〜0.69keVにピークが観測される場合、フッ素樹脂が存在すると定義した。
(実施例1)
<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表1に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表1に記載のように、耐プラッギング性は良好であり、出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も良好であった。また、滑落角および電気抵抗は良好、面直ガス透過抵抗は極めて良好であった。実施例1で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(実施例2)
<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液を表1に示す組成のものに変更した以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表1に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表1に記載のように、耐プラッギング性はより良好であり、出力電圧0.40V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性もより良好であった。また、滑落角および電気抵抗はより良好、面直ガス透過抵抗は極めて良好であった。実施例2で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(実施例3)
電極基材の撥水加工を実施しない、すなわち、炭素繊維焼成体にPTFEを付与しなかった以外は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表1に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表1に記載のように、耐プラッギング性は極めて良好であり、出力電圧0.43V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も極めて良好であった。また、滑落角および電気抵抗および面直ガス透過抵抗も極めて良好であった。実施例3で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、260℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が260℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(実施例4)
<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液を表1に示す組成のものに変更した以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表1に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表1に記載のように、耐プラッギング性はより良好であり、出力電圧0.40V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性もより良好であった。また、滑落角はより良好、面直ガス透過抵抗および電気抵抗は極めて良好であった。実施例4で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(実施例5)
<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を30秒に変更したこと以外は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表1に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表1に記載のように、耐プラッギング性は良好であり、出力電圧0.40V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性もより良好であった。また、滑落角は良好、面直ガス透過抵抗および電気抵抗は極めて良好であった。実施例5で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(実施例6)
電極基材の撥水加工を実施しない、すなわち、炭素繊維焼成体にPTFEを付与しなかった以外は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表1に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表1に記載のように、耐プラッギング性は極めて良好であり、出力電圧0.42V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も極めて良好であった。また、面直ガス透過抵抗はより良好、滑落角および電気抵抗は極めて良好であった。実施例6で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、260℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が260℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(実施例7)
<電極基材の作製>において抄紙体の炭素繊維目付を23.3g/mにし、予備含浸体の厚さを195μmになるように調整し、電極基材の撥水加工を実施しない、すなわち、炭素繊維焼成体にPTFEを付与せずに電極基材の厚さを150μm、目付34.2g/mになるように変更したこと、<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を120秒に変更したこと以外は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表2に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表2に記載のように、耐プラッギング性は極めて良好であり、出力電圧0.41V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も極めて良好であった。また、滑落角および電気抵抗は極めて良好、面直ガス透過抵抗は良好であった。実施例7で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、260℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が260℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(実施例8)
電極基材の撥水加工を実施しない、すなわち、炭素繊維焼成体にPTFEを付与しなかったこと、<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を120秒に変更したこと以外は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表2に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表2に記載のように、耐プラッギング性は極めて良好であり、出力電圧0.42V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も極めて良好であった。また、滑落角および面直ガス透過抵抗は極めて良好、電気抵抗はより良好であった。実施例8で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、260℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が260℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(実施例9)
電極基材の撥水加工を実施しない、すなわち、炭素繊維焼成体にPTFEを付与しなかったこと、<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を180秒に変更したこと以外は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表2に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表2に記載のように、耐プラッギング性は極めて良好であり、出力電圧0.41V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も極めて良好であった。また、滑落角および面直ガス透過抵抗は極めて良好、電気抵抗は良好であった。実施例9で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、260℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が260℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(実施例10)
<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液を表3に示す組成のものに変更した以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表3に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表3に記載のように、耐プラッギング性はより良好であり、出力電圧0.40V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性もより良好であった。また、滑落角はより良好、面直ガス透過抵抗および電気抵抗は極めて良好であった。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(実施例11)
<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液を表3に示す組成のものに変更した以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表3に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表3に記載のように、耐プラッギング性は良好であり、出力電圧0.39V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も良好であった。また、滑落角はより良好、面直ガス透過抵抗および電気抵抗は極めて良好であった。また、実施例11で用いたカーボン塗液は実施例10で用いたカーボン塗液よりも沈降が起こりやすかった。実施例11で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(実施例12、13)
<樹脂組成物の含浸>において電極基材の表裏における樹脂成分の付着量を制御して、電極基材のマイクロポーラス層が形成される側の表面粗さに対して、その反対側の表面粗さが大きくなるように変えたこと以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表3に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表3に記載のように、比較例に比べ、耐プラッギング性および耐フラッディング性が向上した。また、滑落角および電気抵抗および面直ガス透過抵抗についても向上した。特に実施例13では電極基材のマイクロポーラス層が形成される側の表面粗さに対して、その反対側の表面粗さが最適であったため、発電性能が極めて大きく向上した。実施例12及び13で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、260℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が260℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
Figure 0006489009
Figure 0006489009
Figure 0006489009
(比較例1)
<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を5秒に変更した以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表4に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。ガス拡散電極基材の炭素繊維に付着している炭素系フィラーによる炭素繊維表面の被覆率は0%であった。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表4に記載のように、耐プラッギング性が低下し、出力電圧0.34V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も低下した。また、面直ガス透過抵抗は極めて良好であったが、電気抵抗はより不良、滑落角は非常に不良であった。比較例1で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していないこと、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(比較例2)
<電極基材の作製>において、フッ素樹脂(PTFE)の付与量を20質量部に変更したこと、<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を5秒に変更したこと以外は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表4に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。ガス拡散電極基材の炭素繊維に付着している炭素系フィラーによる炭素繊維表面の被覆率は0%であった。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表4に記載のように、耐プラッギング性が低下し、出力電圧0.33V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も低下した。電極基材の細孔にフッ素樹脂が充填されたため面直ガス透過抵抗もより不良であった。滑落角もより不良であり、電気抵抗は非常に不良であった。比較例2で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していないこと、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(比較例3)
<電極基材の作製>において、フッ素樹脂をFEPに変更したこと、<電極基材の作製>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を5秒に変更したこと以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表4に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。ガス拡散電極基材の炭素繊維に付着している炭素系フィラーによる炭素繊維表面の被覆率は0%であった。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表4に記載のように、耐プラッギング性はより良好であったが、出力電圧0.35V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性が低下した。面直ガス透過抵抗は極めて良好であったが、滑落角は不良であり、電気抵抗は非常に不良であった。比較例3で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していないこと、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(比較例4)
<電極基材の作製>において、フッ素樹脂をFEPに変更したこと、フッ素樹脂(FEP)の付与量を2質量部に変更したこと、<電極基材の作製>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を5秒に変更したこと以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表4に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。ガス拡散電極基材の炭素繊維に付着している炭素系フィラーによる炭素繊維表面の被覆率は0%であった。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表4に記載のように、耐プラッギング性が低下し、出力電圧0.22V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性が低下した。面直ガス透過抵抗は極めて良好であったが、滑落角はより不良であり、電気抵抗は不良であった。比較例4で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していないこと、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(比較例5)
<電極基材の作製>において、炭素繊維焼成体を東レ(株)製TGP‐H−030に変更し、フッ素樹脂をFEPに変更したこと、<電極基材の作製>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を5秒に変更したこと、<マイクロポーラス層の形成>において分散媒をエチレングリコールに変更し界面活性剤を用いなかったこと以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表4に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。ガス拡散電極基材の炭素繊維に付着している炭素系フィラーによる炭素繊維表面の被覆率は0%であった。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表4に記載のように、耐プラッギング性は良好であったが、出力電圧0.25V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性が低下した。電気抵抗は極めて良好であったが、滑落角および面直ガス透過抵抗は極めて不良であった。比較例5で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していないこと、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(比較例6)
<電極基材の作製>において、フッ素樹脂の乾燥温度を380℃に変更し、カーボン塗液の塗工前に電極基材の撥水性を高めた以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表4に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。ガス拡散電極基材の炭素繊維に付着している炭素系フィラーによる炭素繊維表面の被覆率は0%であった。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表4に記載のように、耐プラッギング性が低下し、出力電圧0.35V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も低下した。面直ガス透過抵抗は極めて良好であったが、滑落角は非常に不良であり、電気抵抗はより不良であった。比較例6で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していないこと、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(比較例7)
<電極基材の作製>において抄紙体の炭素繊維目付を38.8g/mにし、予備含浸体の厚さを260μmになるように調整し、電極基材の撥水加工を実施しない、すなわち、炭素繊維焼成体にPTFEを付与せずに電極基材の厚さを200μm、目付63.2g/mになるように変更したこと以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表5に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。ガス拡散電極基材の炭素繊維に付着している炭素系フィラーによる炭素繊維表面の被覆率は0%であった。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表5に記載のように、耐プラッギング性が低下し、出力電圧0.32V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も低下した。滑落角および面直ガス透過抵抗は極めて不良であり、電気抵抗は良好であった。比較例7で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していないこと、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していないことが確認された。
(比較例8)
<電極基材の作製>において抄紙体の炭素繊維目付を38.8g/mにし、予備含浸体の厚さを260μmになるように調整し、電極基材の撥水加工を実施しない、すなわち、炭素繊維焼成体にPTFEを付与せずに電極基材の厚さを200μm、目付63.2g/mになるように変更したこと、<電極基材の作製>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を5秒に変更したこと以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表5に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。ガス拡散電極基材の炭素繊維に付着している炭素系フィラーによる炭素繊維表面の被覆率は0%であった。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表5に記載のように、耐プラッギング性が低下し、出力電圧0.32V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性も低下した。滑落角および面直ガス透過抵抗は極めて不良であり、電気抵抗は良好であった。比較例8で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していないこと、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していないことが確認された。
(比較例9)
電極基材の撥水加工を実施しない、すなわち、炭素繊維焼成体にPTFEを付与しなかったこと、<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を350秒に変更したこと以外は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表5に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表5に記載のように、耐プラッギング性はより良好であったが、出力電圧0.25V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性は非常に不良であった。また、滑落角は極めて良好であったが、面直ガス透過抵抗は極めて不良、電気抵抗は良好であった。比較例9で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、260℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が260℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(比較例10)
<電極基材の作製>で得た電極基材に、カーボン塗液を水で希釈したものを、焼結後に目付15g/mとなるように含浸し、100℃で5分間加熱したこと、<マイクロポーラス層の形成>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を5秒に変更したこと以外は<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表5に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。ガス拡散電極基材の炭素繊維に付着している炭素系フィラーによる炭素繊維表面の被覆率は100%であり、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側の電極基材表面に直径10μm以上の細孔は確認されなかった。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表5に記載のように、耐プラッギング性はより良好であったが、出力電圧0.32V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性が低下した。滑落角はより良好であったが、面直ガス透過抵抗および電気抵抗が非常に不良であった。比較例10で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(比較例11)
<マイクロポーラス層の形成>において、380℃で焼結を行う前に、気相成長炭素繊維/PTFE/界面活性剤/精製水=7.7質量部/2.5質量部/14質量部/75.8質量部の配合比で混合したカーボン塗液を、先にマイクロポーラス層を形成したのとは反対側の面にも塗工し、100℃で5分間加熱することで第2のマイクロポーラス層を形成した以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表5に示す組成の両面にマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。なお、先に行うカーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を5秒とした。ガス拡散電極基材の炭素繊維に付着している炭素系フィラーによる炭素繊維表面の被覆率は100%であり、ガス拡散電極基材の、先にマイクロポーラス層を形成した面とは反対側の電極基材表面(第2のマイクロポーラス層表面)に直径10μm以上の細孔は確認されなかった。このガス拡散電極基材を先にマイクロポーラス層を形成した面を触媒層側と接するように配置して発電性能を評価した結果、表5に記載のように、耐プラッギング性は極めて良好であったが、出力電圧0.25V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性が低下した。滑落角および電気抵抗は極めて良好であったが、面直ガス透過抵抗が非常に不良であった。比較例11で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していること、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
(比較例12)
<電極基材の作製>において、炭素繊維焼成体を東レ(株)製TGP‐H−030に変更し、フッ素樹脂をFEPに変更したこと、<電極基材の作製>において、カーボン塗液塗工後の水平状態での保持時間を5秒に変更した以外は、<電極基材の作製>および<マイクロポーラス層の形成>に記載した方法に従って、表5に示す組成のマイクロポーラス層を有するガス拡散電極基材を得た。ガス拡散電極基材の炭素繊維に付着している炭素系フィラーによる炭素繊維表面の被覆率は0%であった。このガス拡散電極基材の発電性能を評価した結果、表5に記載のように、耐プラッギング性はより良好であったが、出力電圧0.25V(運転温度65℃、加湿温度80℃、電流密度2.2A/cm)であり耐フラッディング性が低下した。滑落角および面直ガス透過抵抗は不良であり、電気抵抗はより不良であった。比較例12で得られたガス拡散電極基材を示差走査熱量分析したところ、327℃に吸熱ピークが確認された。つまり、融点が327℃のフッ素樹脂を含むことが確認された。また、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側表面の炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着していないこと、炭素繊維表面および炭素系フィラー表面にフッ素樹脂が存在していることが確認された。
Figure 0006489009
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Claims (16)

  1. 電極基材の片面に、炭素系フィラーとフッ素樹脂とから構成されるマイクロポーラス層を形成した、燃料電池に用いるガス拡散電極基材であって、マイクロポーラス層を形成した面とは反対側の面における水の滑落角が30度以下であり、面直ガス透過抵抗が15〜190mmAqである、ガス拡散電極基材。
  2. ガス拡散電極基材を1MPaで加圧した状態における面直方向の電気抵抗が7.4mΩ・cm以下である、請求項1に記載のガス拡散電極基材。
  3. ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察できる炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着しており、かつ、ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側の電極基材表面に直径10μm以上の細孔を有する、請求項1または2に記載のガス拡散電極基材。
  4. ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察できる炭素繊維表面に炭素系フィラーが付着しており、かつ、炭素系フィラーとしてアスペクト比が30〜5000の線状カーボンを含む、請求項1〜3のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
  5. ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察できる炭素繊維表面の1〜70%が炭素系フィラーにより覆われている、請求項1〜4のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
  6. 前記電極基材の厚さが160μm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
  7. 前記電極基材のマイクロポーラス層が形成される側の表面粗さに対して、その反対側の表面粗さが、1.0μm以上5.0μm以下の差を持って大きい、請求項1〜6のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
  8. ガス拡散電極基材のマイクロポーラス層を形成した面とは反対側から観察した炭素繊維表面および炭素系フィラー表面に、フッ素樹脂が存在する、請求項1〜7に記載のガス拡散電極基材。
  9. 融点が200℃以上320℃以下であるフッ素樹脂を含む、請求項1〜8のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
  10. フッ素樹脂がテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)である、請求項1〜9のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
  11. 前記炭素系フィラーが気相成長炭素繊維を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のガス拡散電極基材。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載のガス拡散電極基材の製造方法であって、厚さが160μm以下である電極基材の片面に、炭素系フィラー、フッ素樹脂および分散媒から構成されるカーボン塗液を塗工した後、10秒以上5分未満の時間、カーボン塗液を塗工したガス拡散電極基材を水平に保持し、次いで乾燥および焼結を行うに際し、カーボン塗液を塗工する前に、フッ素樹脂を塗工しないか、または、フッ素樹脂を塗工した後に焼結を行わない、ガス拡散電極基材の製造方法。
  13. 分散媒が水である、請求項12に記載のガス拡散電極基材の製造方法。
  14. カーボン塗液を塗工する前に、フッ素樹脂を塗工した後に焼結を行わない場合において、フッ素樹脂を塗工した後、90℃以上200℃未満の温度で乾燥を行う、請求項12または13に記載のガス拡散電極基材の製造方法。
  15. 電解質膜の両側に触媒層を有し、さらに前記触媒層の外側に、請求項1〜11のいずれかに記載のガス拡散電極基材を有する、膜電極接合体。
  16. 請求項15に記載の膜電極接合体の両側にセパレータを有する、燃料電池。
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