JP2009245869A - 燃料電池用ガス拡散基材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】より好適に燃料電池用ガス拡散基材にガス流路を形成することのできる燃料電池用ガス拡散基材の製造方法を提供する。
【解決手段】流路を有するGDL(ガス拡散基材)を製造するにあたって、電極基材シート100を所定の方向Xに搬送しつつ、その搬送中の電極基材シート100の一面(表面)に、エンボスロール(ロール11)により上記ガス流路に対応したホットエンボス加工をするとともにそのロール11のロール面から搬送中の電極基材シート100へインクを転写し、電極基材シート100を介してロール11に対向するように配置された平面ロール(ロール12)のロール面から、電極基材シート100の他面(裏面)へインクを転写する。
【選択図】図1
【解決手段】流路を有するGDL(ガス拡散基材)を製造するにあたって、電極基材シート100を所定の方向Xに搬送しつつ、その搬送中の電極基材シート100の一面(表面)に、エンボスロール(ロール11)により上記ガス流路に対応したホットエンボス加工をするとともにそのロール11のロール面から搬送中の電極基材シート100へインクを転写し、電極基材シート100を介してロール11に対向するように配置された平面ロール(ロール12)のロール面から、電極基材シート100の他面(裏面)へインクを転写する。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池用ガス拡散基材(GDL)の製造方法に関する。
一般に、固体高分子型燃料電池は、膜−電極接合体(以下「MEA」という)がセパレータ(アノード用及びカソード用の2種のセパレータ)によって挟まれた構造を有する。ここで、MEAは、高分子電解質からなる電解質膜が、反応層としての触媒層と集電やガス拡散の役割を果たす拡散層(以下「GDL(ガス拡散基材)」という)とによって挟まれたスタック構造を有する。
こうした燃料電池では、アノード電極(燃料極)とカソード電極(空気極)に、それぞれ燃料(水素を含むガス)と酸化剤(空気等の酸素を含むガス)を供給することによって発電を行う。詳しくは、アノード電極で水素ガスが触媒に接触することにより「2H2→4H++4e−」といった反応が生じる。そして、生成したH+は、電解質膜中を移動し、カソード電極に達すると、触媒層において空気中の酸素と「4H++4e−+O2→2H2O」のような反応をして水となる。固体高分子型燃料電池は、これらの反応により水素と酸素を使用して電気分解の逆反応で発電する。
こうした燃料電池におけるGDLを製造する方法としては、従来、例えば特許文献1に記載される方法がある。
この方法では、
・抄紙法により、多孔質の電極基材シート(カーボンシート)を作製する。
・作製した電極基材シートをテトラフルオロエチレン粒子希釈溶液に浸漬し、電極基材シートの内部にテトラフルオロエチレン粒子希釈溶液を含浸させる。
・電極基材シートの水分を蒸発させる。
・電極基材シートをホットプレスして、ガス通流溝を形成する。
・スクリーン印刷法により、カーボンブラック粒子とエチレングリコールとを混合したペーストを、溝形成面とは反対の面(溝未形成面)から、電極基材シート中に含浸させた後、真空中でバインダ樹脂(成形助剤)を蒸発させて除去する。
・電極基材シートを再びテトラフルオロエチレン粒子希釈溶液に浸漬し、所定時間後、水分を蒸発させてから大気中で焼成して、テトラフルオロエチレン粒子を、カーボン繊維及びカーボンブラック粒子の表面に固着させる。
といった工程を経て、カソード用GDL(空気極)を製造する。
・抄紙法により、多孔質の電極基材シート(カーボンシート)を作製する。
・作製した電極基材シートをテトラフルオロエチレン粒子希釈溶液に浸漬し、電極基材シートの内部にテトラフルオロエチレン粒子希釈溶液を含浸させる。
・電極基材シートの水分を蒸発させる。
・電極基材シートをホットプレスして、ガス通流溝を形成する。
・スクリーン印刷法により、カーボンブラック粒子とエチレングリコールとを混合したペーストを、溝形成面とは反対の面(溝未形成面)から、電極基材シート中に含浸させた後、真空中でバインダ樹脂(成形助剤)を蒸発させて除去する。
・電極基材シートを再びテトラフルオロエチレン粒子希釈溶液に浸漬し、所定時間後、水分を蒸発させてから大気中で焼成して、テトラフルオロエチレン粒子を、カーボン繊維及びカーボンブラック粒子の表面に固着させる。
といった工程を経て、カソード用GDL(空気極)を製造する。
アノード用GDL(燃料極)も、概ね準ずる工程により製造する。こうした製造方法により、ガス通流溝をGDLに形成することで、燃料電池を低コストで製造することが可能になる。
特許第3941255号公報
特許文献1に記載の製造方法は、工程数が多いことなど、改善の余地を残したものとなっている。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、燃料電池用ガス拡散基材にガス流路をより好適に形成することのできる燃料電池用ガス拡散基材の製造方法を提供することを主たる目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る燃料電池用ガス拡散基材の製造方法は、ガス流路を有する燃料電池用ガス拡散基材を製造する方法であって、基材を所定の方向に搬送しつつ、その搬送中の基材の一面に、エンボスロールにより前記ガス流路に対応したエンボス加工をするとともに、塗布装置により前記搬送中の基材の前記一面及び他面へインクを塗布する塗布工程を備える、ことを特徴とする。
前記塗布装置は、例えば、前記基材を介して前記エンボスロールに対向するように配置された平面ロールを有するものである。この場合、前記塗布工程においては、例えば、前記エンボスロールによるエンボス加工に並行して、前記エンボスロール及び平面ロールのロール面からの転写により前記基材の一面及び他面にそれぞれインクを塗布する。
前記塗布工程において、前記基材の一面と他面とで、異なるインクを塗布するようにしてもよい。
前記塗布工程において、前記基材の一面及び他面へ塗布するインクとして、それぞれ撥水材を含むインクを用い、前記エンボス加工を、該撥水材の融点よりも高く、且つ該撥水材の分解点よりも低いロール温度でのホットエンボス加工とする、ようにしてもよい。
前記塗布工程においては、前記基材の一面及び他面へ塗布するインクとして、それぞれ、前記撥水材と、炭化温度が該撥水材の融点よりも低いバインダ樹脂とを含むインクを用いる、ようにしてもよい。
前記塗布工程においては、不活性雰囲気にて前記ホットエンボス加工をする、ようにしてもよい。
また、本発明の第2の観点に係る燃料電池用ガス拡散基材の製造方法は、ガス流路を有する燃料電池用ガス拡散基材を製造する方法であって、基材の一面及び他面の少なくとも一方に、前記ガス流路を形成する流路形成工程と、前記流路形成工程に並行して、前記基材の一面及び他面にインクを塗布する塗布工程と、を備える、ことを特徴とする。
前記基材を介して互いに対向するように配置されたエンボスロール及び平面ロールを用いて、前記流路形成工程においては、前記エンボスロールによるエンボス加工により前記基材の一面に前記ガス流路を形成し、前記塗布工程においては、前記流路形成工程に並行して、前記エンボスロール及び平面ロールのロール面からの転写により前記基材の一面及び他面にそれぞれインクを塗布する、ようにしてもよい。
また、第2の観点に係る燃料電池用ガス拡散基材の製造方法においても、前記塗布工程においては、前記基材の一面と他面とで、異なるインクを塗布する、ようにしてもよい。前記塗布工程においては、撥水材を含むインクを用い、前記流路形成工程においては、前記エンボス加工を、該撥水材の融点よりも高く、且つ該撥水材の分解点よりも低いロール温度でのホットエンボス加工とする、ようにしてもよい。
同様に、前記塗布工程においては、前記撥水材と、炭化温度が該撥水材の融点よりも低いバインダ樹脂とを含むインクを用いるようにしてもよい。さらに、前記流路形成工程においては、不活性雰囲気にて前記ホットエンボス加工をするようにしてもよい。
本発明によれば、燃料電池用ガス拡散基材にガス流路をより好適に形成することができる。
以下、図1〜図7を参照して、本発明の実施の形態に係る燃料電池用ガス拡散基材の製造方法を説明する。なお、本実施形態は、固体高分子型燃料電池におけるGDL(ガス拡散基材)を製造する方法に係るものである。
まず、準備段階として、カーボン繊維であるカーボンファイバーの短繊維(代表的な大きさは太さ13μm、長さ3mm)とパルプ(製紙用の繊維)とを「1:1(重量比)」で水に分散して抄紙用のスラリーをつくる。次に、このスラリーを抄紙して厚さ「約1mm」のシートにする。そして、このシートを所定の大きさに切断することにより、電極基材シートが作製される。こうして作製される電極基材シートは、多孔質のカーボンシートとなる。
次に、図1に示すように、連続ロール塗工機10により、作製した電極基材シート100の表裏面の一方(以下、シート表面という)にエンボス加工を施してガス通流溝(ガス流路)を形成する。また、それと並行して(ほぼ同時に)、該塗工機10により、電極基材シート100の表裏面、すなわちシート表面及びその反対面(以下、シート裏面という)に、それぞれインクを塗布する(流路形成工程、塗布工程)。
ここで、塗工機10は、大きくは、電極基材シート100にインクを塗布するロール11,12と、これらロール11,12に塗工液(インク)を供給する塗工液供給ノズル13,14と、から構成される。ロール11,12は、電極基材シート100の厚みに対応した所定の間隔を持って、互いに対向するように配置されている。シート表面に配置されるロール11は、エンボスロールからなり、図2(a)(b)に示すように、その表面(周面)に、当該ロール11の長手方向にまっすぐ延びる溝(谷部11bに相当)が形成されていることで、山部(凸部)11a及び谷部(凹部)11bを有する。この直線溝は、例えば深さ「0.3mm」、ピッチ「1mm」とする。
ロール12は、表面にこうした凹凸を有しない平面ロールから構成される。
また、ロール11,12にインクを供給するノズル13,14には、それぞれ、インク供給系により、所定のインクが供給される。
次に、塗工機10により、図3(a)(b)に示す条件で、電極基材シート100にガス通流溝を形成し、インクを塗布する。すなわち、電極基材シート100を所定の方向(例えば図中の方向X)に搬送しつつ、その表面には、不活性雰囲気(例えば真空中又は窒素雰囲気など)において、ロール11(図2)により、ロール温度「380℃」、圧力「10MPa」でホットエンボス加工を施すとともに、図3(b)に示すインク1を塗布(詳しくはロール11のロール面に付着したインクを転写)する。
なお、搬送中の電極基材シート100の表面を不活性雰囲気(例えば真空中又は窒素雰囲気など)に維持することが望ましい。このため、例えば、塗工機10全体を真空チャンバ内に配置したり、或いは、電極基材シート100の表面に窒素等の不活性ガスを吹き付けながら処理を行うことが望ましい。
また、ホットエンボス加工と並行して(ほぼ同時に)、搬送中の電極基材シート100の裏面には、ロール12により、図3(b)に示すインク2を塗布(詳しくはロール12のロール面に付着したインクを転写)する。
なお、ホットエンボス加工のロール11の温度は、インク1,2に含まれる撥水材の融点よりも高く、且つ、該撥水材の分解点よりも低い温度に設定されている。こうすることで、撥水材を溶解させ、且つ、分解しない温度で、インク1,2を電極基材シート100に塗布することができる。
こうした流路形成工程により、電極基材シート100の表裏面にそれぞれインク1,2が塗布され、シート表面には、ロール11のロール面形状に対応した溝(ガス通流溝(路))が形成される。そして、こうした電極基材シート100に所定の後処理を施すことにより、GDLが完成する。
上記製造方法により、アノード用及びカソード用のGDL(ガス拡散基材)を製造することで、それらGDLを用いて、固体高分子型燃料電池をつくることができる。
例えば、図4に示すように、それらアノード用及びカソード用のGDL23a,23bによって、アノード用及びカソード用の触媒層22a,22bの形成が完了した電解質層21を挟み、これらを例えばホットプレスにより接合する。そして、さらにそのスタック構造体、すなわちMEA(膜−電極接合体)に、アノード用及びカソード用のセパレータ30a,30bを設けることにより、固体高分子型燃料電池を完成させることができる。ここで、アノード用及びカソード用のGDL23a,23bには、それぞれロール11の山部11a及び谷部11bに対応した谷部231a,231b及び山部232a,232bが形成されており、両者の段差により谷部231a,231b表面に形成される空間233a,233bが、ガス通流溝となる。セパレータ30aには、水素供給口31a及び水素排出口32aが、セパレータ30bには、空気排出口32b及び空気供給口31bが、それぞれ形成されており、これら供給口及び排出口を通じて水素・酸素を給排させることにより、前述した電気分解の逆反応で発電することができる。なお、GDLの製造条件は、アノード用とカソード用とで変えるようにしてもよい。また、セパレータは、ガス通流溝があるものでも、無いものでもよい。
図3(b)に示す条件で、異なる3種類のインクを用いてGDL(実施例1〜3)を作製し、それらGDLのそれぞれについて撥水性などの特性を評価した。
実施例1では、CB(カーボンブラック)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVA(ポリビニルアルコール)を、「CB:PTFE:PVA」=「0.71:4:0」の重量比で混ぜたものを上記インク1として、また「CB:PTFE:PVA」=「6:4:0」の重量比で混ぜたものを上記インク2として、GDLを作製した。なお、CBは、電極基材シート100に導電性を付与するものである。PTFEは、撥水材及びバインダ樹脂として機能するものであり、その融点は「327℃」、分解点は「390℃」程度、炭化温度は「390℃」程度(分解点と同じ)である。また、PVAは、バインダ樹脂として機能するものであり、その融点は「200℃」程度、分解点は「245℃」、炭化温度は「245℃」(分解点と同じ)である。上記インク1及びインク2に含まれるPTFEの量を変えることで、電極基材シート100の表裏面で、異なる撥水性を持たせる(撥水性を傾斜化する)ことが可能である。
また、比較例として、本実施形態に係る製造方法とは異なる製造方法により2種類のGDL(比較例1,2)を製造し、これらについても評価し、両者の特性を対比した。
比較例1,2は、それぞれ以下の工程により製造されたものである。
比較例1,2は、それぞれ以下の工程により製造されたものである。
(比較例1)
・上記実施形態と同様の方法で作製した電極基材シート(カーボンシート)をPTFE粒子希釈溶液に浸漬し、電極基材シートの内部にPTFE粒子希釈溶液を含浸させる。
・電極基材シートの水分を蒸発させる。
・電極基材シートを、図5(a)に示す条件(温度「380℃」、圧力「10MPa」)で60分間ホットプレスして、ガス通流溝を形成する。
・スクリーン印刷法により、カーボンブラック粒子とエチレングリコールとを混合したペーストを、溝形成面とは反対の面(溝未形成面)から、電極基材シート中に含浸させた後、真空中、温度「80℃」で2時間保持してバインダ樹脂(成形助剤)を蒸発させて除去する。
・電極基材シートを再びテトラフルオロエチレン粒子希釈溶液に2分間浸漬し、「約80℃」で水分を蒸発させてから、大気中、温度「380℃」で60分間、焼成する。
・上記実施形態と同様の方法で作製した電極基材シート(カーボンシート)をPTFE粒子希釈溶液に浸漬し、電極基材シートの内部にPTFE粒子希釈溶液を含浸させる。
・電極基材シートの水分を蒸発させる。
・電極基材シートを、図5(a)に示す条件(温度「380℃」、圧力「10MPa」)で60分間ホットプレスして、ガス通流溝を形成する。
・スクリーン印刷法により、カーボンブラック粒子とエチレングリコールとを混合したペーストを、溝形成面とは反対の面(溝未形成面)から、電極基材シート中に含浸させた後、真空中、温度「80℃」で2時間保持してバインダ樹脂(成形助剤)を蒸発させて除去する。
・電極基材シートを再びテトラフルオロエチレン粒子希釈溶液に2分間浸漬し、「約80℃」で水分を蒸発させてから、大気中、温度「380℃」で60分間、焼成する。
(比較例2)
・上記実施形態と同様の方法で作製した電極基材シート(カーボンシート)について、その表裏面の一方(シート表面)に、図5(b)に示すインク1を塗布し、温度「380℃」で焼成した後、他方(シート裏面)に、図5(b)に示すインク2を塗布し、同じく温度「380℃」で焼成する。
・シート表面側から、図5(a)に示す条件(温度「90℃」、圧力「10MPa」)で10分間ホットプレスして、ガス通流溝を形成する。
・上記実施形態と同様の方法で作製した電極基材シート(カーボンシート)について、その表裏面の一方(シート表面)に、図5(b)に示すインク1を塗布し、温度「380℃」で焼成した後、他方(シート裏面)に、図5(b)に示すインク2を塗布し、同じく温度「380℃」で焼成する。
・シート表面側から、図5(a)に示す条件(温度「90℃」、圧力「10MPa」)で10分間ホットプレスして、ガス通流溝を形成する。
なお、比較例1は、上記特許文献1に記載される製造方法に準ずる製造方法によって製造されたものである。
上記実施例1〜3及び比較例1,2の評価結果について説明する。
図6(a)(b)に、上記実施例1〜3及び比較例1,2について、それぞれ製造後15日間、5日ごとに、面粗度計により溝深さ(図4に示す谷部231aに相当)を測定した結果を示す。図6に示されるように、溝の戻りについては、上記実施例1〜3が、上記比較例1よりも安定性に優れるという評価結果を得た。すなわち、実施例1〜3は、比較例1よりも溝の戻り(溝の深さが減少する程度)が小さかった。他方、比較例2は、他の4つに比べて、突出して溝の戻りが大きかった。
図7(a)(b)に、上記実施例1〜3及び比較例1,2について、それぞれ完成品の山部及び谷部(図4に示す谷部231a及び山部232aに相当)の撥水性に関する評価結果を示す。図7に示されるように、この撥水性についても、上記実施例1〜3において優れた特性を得ることができた。すなわち、これら実施例1〜3では、谷部・山部の粗密による撥水性の不均一の程度が小さかった。この撥水性の試験では、比較例1が、他の4つに比べて、突出して不均一の程度が大きかった。他方、比較例2では、上記実施例1〜3と同程度に不均一の小さい特性が得られた。なお、実施例2の溝形成面(シート表面)における転落角(図7(a))及び実施例3の溝未形成面(シート裏面)における転落角(図7(b))が、それぞれ他のデータに突出して大きくなっている原因は、各インク1,2に含ませた撥水材(製造後の基材に含有されているPTFE量)による効果である。
以上説明したように、本実施形態に係る燃料電池用ガス拡散基材の製造方法によれば、以下のような優れた効果が得られるようになる。
(1)本実施形態に係る燃料電池用ガス拡散基材の製造方法は、ガス流路(空間233a,233b)を有する燃料電池用ガス拡散基材(GDL23a,23b)を製造する方法であって、基材(電極基材シート100)を所定の方向X(図1)に搬送しつつ、その搬送中の電極基材シート100の一面(表面)に、エンボスロール(ロール11)により上記ガス流路に対応したエンボス加工をするとともにそのロール11のロール面から搬送中の電極基材シート100へインクを転写し、電極基材シート100を介してロール11に対向するように配置された平面ロール(ロール12)のロール面から、電極基材シート100の他面(裏面)へインクを転写する塗布工程(流路形成工程にも相当)を備える。この製造方法では、塗工(インクの塗布)と同時にガス通流溝を形成する(エンボス加工する)ことで、GDL23a,23bの製造工程数を減らすことができる。また、こうしたガス通流溝を有するGDL23a,23bによれば、図4に示したように、セパレータ30a,30bにガス通流溝を設ける必要がなくなるため、燃料電池としての製造コストを低く抑えることができる。
(2)エンボスロールによるロール成形により、ガス流路を形成するようにしたことで、容易且つ的確にガス流路を形成することができる。
(3)エンボス加工を施す面の反対側から、平面ロール(ロール12)により電極基材シート100が押さえられることで、良好なエンボス加工が可能になる。
(4)電極基材シート100の表裏面への各塗工とガス通流溝の形成とを全て同時にすることで、各面における撥水性及び導電性として、高い均一性が得られる。
(5)上記塗布工程において、電極基材シート100の一面と他面とで、異なるインク(インク1,2)を塗布するようにした(図3参照、特に実施例2,3)。こうすることで、電極基材シート100の表裏面で、異なる特性(撥水性など)を持たせることができる。
(6)上記塗布工程においては、電極基材シート100の表裏面の一方(一面)及びその反対面(他面)へ塗布するインクとして、それぞれ撥水材を含むインク(インク1,2)を用い、上記エンボス加工を、該撥水材の融点よりも高く、且つ、該撥水材の分解点よりも低いロール温度(380℃)でのホットエンボス加工とした。こうすることで、撥水材を溶解させ、且つ、分解しない温度で、インク1,2を電極基材シート100に塗布することができる。
(7)上記塗布工程においては、電極基材シート100の表裏面の一方(一面)及びその反対面(他面)へ塗布するインクとして、それぞれ撥水材と、炭化温度が該撥水材の融点よりも低いバインダ樹脂とを含むインクを用いるようにした。これにより、各インクに含まれるバインダ樹脂の炭化温度よりも高い温度でホットエンボス加工がなされ、そのバインダ樹脂の炭化により基材に含まれるPTFEの含有量の割合が炭化前に比べて増加し撥水性が向上する(図7参照)。
(8)上記塗布工程においては、不活性雰囲気にてホットエンボス加工をするようにした。これにより、ホットエンボス加工時の酸化を防ぐことが可能になる。
上記実施形態では、電極基材シート100を搬送しながら、エンボス加工と塗工をした。この発明は、これに限定されない。例えば、予め所定サイズにカットした基材電極シートを適当な治具に固定し、その一面にエンボスロールを押し当てつつ移動させてエンボス加工を施すとともに塗工し、それと並行して、その一面及び他面に、平面ロールなどを押し当てて移動させることにより、塗工するようにしてもよい。
また、図1に示す構成の塗工機10に、カット済の電極基材シートを1枚ずつ供給して、エンボス加工と塗工とを並行して行うようにしてもよい。
また、図1に示す構成の塗工機10に、カット済の電極基材シートを1枚ずつ供給して、エンボス加工と塗工とを並行して行うようにしてもよい。
上記実施形態では、電極基材シート100について、その表裏面の一方(表面)にはエンボスロールにより、他方には平面ロールにより、それぞれ塗工をした。しかし、エンボスロールで塗工した面の反対面については、平面ロールに代えて、他の任意の塗布装置によりインクを塗布した場合でも、前記(1)の効果を得ることはできる。例えばロール以外の塗工方法(ダイヘッドやスプレーなど)により塗布することが可能である。また、こちらの面についても、エンボスロールで塗工する(同時に両面をエンボス加工する)ようにしてもよい。
上記実施形態では、エンボスロールによるロール成形により、ガス流路を形成するようにした。しかしこれに限られず、例えばインクが塗布された金型により基材の表裏にホットプレスを行う成形方式、いわゆるバッチ成形によっても、その流路形成工程に並行して、塗布工程を行うことで、前記(1)の効果に準ずる効果を得ることはできる。要は、基材を所定の方向に搬送しつつ、その搬送中の基材の一面及び他面の少なくとも一方に、ガス流路を形成する流路形成工程と、この流路形成工程に並行して、搬送中の基材の一面及び他面の少なくとも一方にインクを塗布する塗布工程と、を備える方法であれば、前記(1)の効果に準ずる効果を得ることはできる。
上記実施例1〜3では、電極基材シート100の表裏について、互いに異なる種類のインク(インク1,2)を塗布するようにした。しかしこれに限られず、電極基材シート100の各面を、同種のインクにより塗布するようにしてもよい。こうした場合には、塗工液供給ノズル13,14にインクを供給するインク供給系を共通化(共通のインクを分岐して供給するなど)することができる。
上記実施形態では、電極基材シート100のカーボン繊維としてカーボンファイバーの短繊維を使用しているが、カーボンファイバーの長繊維でもよい。また、抄紙するときに、スラリーにパルプ等の繊維以外に、有機系の分散剤や他の有機結合材を同時に入れるようにしてもよい。また、電極基材シート100の作製にパルプを使用しているが、木綿などの植物性天然繊維でも羊毛などの動物性天然繊維でもレーヨンやナイロンなどの化学繊維でもよい。
上記実施形態では、カーボンシートを成形するのに抄紙法を用いたが、これに限定されることなく、例えば不織布を製造する方法やカーボン繊維と結合材を含むスラリーからドクターブレード法などでシート成形する方法などを採用してもよい。
ロール11のロール面形状は、図2に示したものに限られず、例えば曲線状の溝(又は凸部)であっても、網目状の溝(又は凸部)であっても、迷路状の溝(又は凸部)であってもよい。この形状は、用途等に応じて任意に設定することができる。
10 連続ロール塗工機(塗布装置)
11 ロール(エンボスロール)
12 ロール(平面ロール)
13、14 塗工液供給ノズル
21 電解質層
22a、22b 触媒層
23a,23b GDL(ガス拡散基材)
30a、30b セパレータ
100 電極基材シート
11 ロール(エンボスロール)
12 ロール(平面ロール)
13、14 塗工液供給ノズル
21 電解質層
22a、22b 触媒層
23a,23b GDL(ガス拡散基材)
30a、30b セパレータ
100 電極基材シート
Claims (12)
- ガス流路を有する燃料電池用ガス拡散基材を製造する方法であって、
基材を所定の方向に搬送しつつ、その搬送中の基材の一面に、エンボスロールにより前記ガス流路に対応したエンボス加工をするとともに、塗布装置により前記搬送中の基材の前記一面及び他面へインクを塗布する塗布工程を備える、
ことを特徴とする燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。 - 前記塗布装置は、前記基材を介して前記エンボスロールに対向するように配置された平面ロールを有するものであり、
前記塗布工程においては、前記エンボスロールによるエンボス加工に並行して、前記エンボスロール及び平面ロールのロール面からの転写により前記基材の一面及び他面にそれぞれインクを塗布する、
請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。 - 前記塗布工程においては、前記基材の一面と他面とに、異なるインクを塗布する、
請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。 - 前記塗布工程においては、前記基材の一面及び他面へ塗布するインクとして、それぞれ撥水材を含むインクを用い、前記エンボス加工を、該撥水材の融点よりも高く、且つ該撥水材の分解点よりも低いロール温度でのホットエンボス加工とする、
請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。 - 前記塗布工程においては、前記基材の一面及び他面へ塗布するインクとして、それぞれ、前記撥水材と、炭化温度が該撥水材の融点よりも低いバインダ樹脂とを含むインクを用いる、
請求項4に記載の燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。 - 前記塗布工程においては、不活性雰囲気にて前記ホットエンボス加工をする、
請求項4に記載の燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。 - ガス流路を有する燃料電池用ガス拡散基材を製造する方法であって、
基材の一面及び他面の少なくとも一方に、前記ガス流路を形成する流路形成工程と、
前記流路形成工程に並行して、前記基材の一面及び他面にインクを塗布する塗布工程と、
を備える、ことを特徴とする燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。 - 前記基材を介して互いに対向するように配置されたエンボスロール及び平面ロールを用いて、
前記流路形成工程においては、前記エンボスロールによるエンボス加工により前記基材の一面に前記ガス流路を形成し、
前記塗布工程においては、前記流路形成工程に並行して、前記エンボスロール及び平面ロールのロール面からの転写により前記基材の一面及び他面にそれぞれインクを塗布する、
請求項7に記載の燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。 - 前記塗布工程においては、前記基材の一面と他面とで、異なるインクを塗布する、
請求項7に記載の燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。 - 前記塗布工程においては、撥水材を含むインクを用い、
前記流路形成工程においては、前記エンボス加工を、該撥水材の融点よりも高く、且つ該撥水材の分解点よりも低いロール温度でのホットエンボス加工とする、
請求項8に記載の燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。 - 前記塗布工程においては、前記撥水材と、炭化温度が該撥水材の融点よりも低いバインダ樹脂とを含むインクを用いる、
請求項10に記載の燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。 - 前記流路形成工程においては、不活性雰囲気にて前記ホットエンボス加工をする、
請求項10に記載の燃料電池用ガス拡散基材の製造方法。
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- 2008-03-31 JP JP2008093281A patent/JP2009245869A/ja active Pending
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