JP6484474B2 - 変位抑制免震装置及び免震システム - Google Patents

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本発明は、建築物や機械装置等の免震構造に用いられる変位抑制免震装置及びこれを用いた免震システムに関する。
構造物への地震力を低減する免震装置として、ゴム状弾性板と硬質板を交互に積層した積層ゴム支承体が知られている。
積層ゴム支承体は、鉛直方向に高い(硬い)剛性、水平方向に低い(軟らかい)剛性を有し、構造物の基礎部分や中間階層等の免震層に配置される。
積層ゴム支承体は、鉛直方向の硬い剛性で上部の構造物を支え、水平方向の柔らかい剛性で剪断変形し、上部の構造物の荷重を支えながら地震による揺れをゆっくりした周期で伝達するようにして構造物への地震力を低減している。
積層ゴム支承体は、想定される地震動に基づいて、該地震動を受けても支承する構造物が耐えうるよう設計されている。
しかしながら、上述した積層ゴム支承体の剪断変形は、長周期パルス性地震動や長周期・長時間地震動等のような想定外の巨大な地震動によって、許容範囲を超えてしまう虞がある。かかる場合には、積層ゴム支承体の損傷や、積層ゴム支承体等が設置された免震層の外周に配された擁壁への衝突が生じる懸念がある。
一方、想定外の巨大な地震動に対して、積層ゴム支承体の損傷や擁壁への衝突が起きないように、積層ゴム支承体の水平剛性を増加して設計すると、発生頻度の多い中・大規模の地震に対する免震性能が低下してしまう問題が生じる。
これらの点を鑑みて、積層ゴム支承体が一定以上変形した際に水平剛性を高くする、あるいは変形が一定以上進行しないようにして積層ゴム支承体の損傷や擁壁への衝突を防ぐ方法が知られている(例えば、特許文献1〜5参照)。
特許文献1には、常時構造物の荷重を受ける第1の免震支持機構と、所定範囲以上の水平方向の変位があった時にのみ構造物の荷重を受ける第2の免震支持機構とからなる免震装置が開示されている。この第2の免震支持機構は、構造物に取り付けられた円錐状凹部の傾斜面と、基礎に取り付けられた積層ゴム本体の凸部の傾斜面とを有する。そして、構造物の水平方向の変位が所定範囲以上になると、互いの傾斜面が当接して、第2の免震支持機構自体でも構造物を支持する。
また、特許文献2には、上部構造を支承する円柱状の中央の第1積層ゴムの外周に、上部構造と離間したリング状の第2積層ゴムを設けた免震構造が開示されている。第1積層ゴム及び第2積層ゴムの間には、上部構造からリング状の水平力伝達治具が下向きに突出している。この特許文献2では、中央の第1積層ゴムが所定量変形した時点で、第2積層ゴムの上端(上プレート)と水平力伝達治具が接触し、上部構造と直接接することなく、水平力を伝達して段階的に剛性を変化させる。
また、特許文献3には、基礎と建築物との間に介在して建築物を水平方向に移動自在に支持する免震積層ゴムを有する免震構造が開示されている。加えて、建築物の底面に滑り鋼板を設ける一方、基礎には、滑り鋼板との間に上下方向に所定量の隙間を有する滑り支持体が設けられている。この滑り支持体は、地震時に基礎が建築物に対して水平方向に変位し、免震積層ゴムが所定量沈み込んだときに、滑り鋼板に摺接し、かつ滑り鋼板を支持する。
また、特許文献4には、建物と基礎の間に配置した免震装置の周りに、所定の間隔をおいて弾性体を主体とする変位制限装置を備えた免震構造が開示されている。この免震構造では、地震時に免震装置が所定の間隔を超えて変形したときに、免震装置と変位制限装置が同時に剪断変形して、免震装置の所定以上の変形を防止する。
また、水平方向の変位を制限する装置として、例えば、特許文献5に示すように、免震床と固定床の間に設けられ、バネを用いて水平方向の変位を制限する免震床の水平大変位制限装置が知られている。この制限装置は、免震床の下面に取付けられて下方に突出している環状の当り板と、免震床に対向している台座の上面中央に固定される突出ストッパと、突出ストッパの外周側位置に固定されたゴム製のドーナツ形付加ばねと、からなる。付加ばねの上面は、環状の当り板の内側で、免震床に対向しており、この上面には環状の受板が固定されている。この装置では、固定床に対する免震床の水平変位が許容値を越えると、当り板が受板に衝突して付加ばねに作用し、水平方向ばね定数が増加して免震床の変位が抑えられる。さらに地震が大きくなって、その応答変位が増し、突出ストッパと付加ばねが当たると、応答水平変位を、全て抑えることができる。
特開平9−195569号公報 特開平2−16230号公報 特開平9−196116号公報 特開2010−270569号公報 実開平1−112235号公報
しかしながら、上述した特許文献1〜5に示す従来の免震装置、免震構造及び制限装置においては、それぞれ以下のような問題がある。
特許文献1では、構造物の水平方向の変位が所定範囲以上になると、第1の免震支持機構に加えて、第2の免震支持機構も構造物の鉛直荷重を支持するため、第2の免震支持機構から構造物の梁等に突き上げる方向に力が加わり、十分な補強をしないと梁にダメージを与える虞がある。また、第2の免震支持機構が構造物を支承した際、構造物を支承する免震支持機構のバランスが変わる。これにより、第1の免震支持機構が構造物から受ける鉛直荷重も変化し、免震装置全体として、所望の免震効果が得られなくなる虞がある。
また、特許文献2では、リング状の第2積層ゴムは、第1積層ゴムを囲むように設けるため、第1積層ゴムの外径によっては、かなり大きな外径で形成されることになる。例えば、第1積層ゴムの外径がφ600mmやφ1000mmである場合、内径がφ600mm、φ1000mmを超えるリング状の第2積層ゴムが必要となる。さらに、この構成では、巨大な地震動を抑制するための水平剛性を確保する場合、積層部面積を大きくしたリング状積層ゴムが必要となり、第2積層ゴムの外径は非常に大きくなり、設置スペースに加え、製造設備の問題や重量が一層嵩むという問題が生じる。
また、特許文献3では、滑り支持体の滑り鋼板に対する摺動による摩擦力によって変位抑制を行うため、巨大な地震動の変位抑制は困難である。また、滑り支持体による変位抑制が機能するタイミングは、滑り鋼板と滑り支持体とのクリアランス量によって決まるが、建築物を支持している免震積層ゴムでクリアランス量を一定に制御することは難しく、摩擦力がばらついてしまう。さらに、平常時は、滑り鋼板及び滑り支持体の互いの摺動面が開放された状態となるため、異物が摺動面に付着した場合、免震積層ゴムが所定量沈み込む場合でも、摺動しない虞がある。
更に、特許文献4では、免震装置の積層部側面が変位制限装置に接することで免震装置と変位制限装置が同時に剪断変形する機構となっている。これにより、免震装置が繰り返し変位制限装置と接触することによって、免震装置が局所的に変形し、装置の機能を損なうことで、想定内の中・大規模の地震における免震効果は維持できなくなる懸念がある。また、接触の際に免震装置の積層外周面が破損する虞もある。
また、特許文献5では、当り板と受板が衝突して付加ばねに作用し、さらに突出ストッパと付加ばねが当接した際、付加ばねの変形によって、環状の受板の内周面と突出ストッパが衝突する虞がある。硬質の受板と突出ストッパの衝突による衝撃が硬質の当り板を介して上部の免震床に伝播されてしまい、制限装置、ひいては、免震床を有する構造物の損傷を招く等の虞がある。また、台座(固定床)からの震動が、硬質の突出ストッパ、受板及び当り板を介して上部の免震床に伝播されてしまう問題もある。
本発明の目的は、想定内の中・大規模の地震に対する免震効果を維持しつつ、想定外の巨大な地震による過大な変位を抑制する変位抑制免震装置及び免震システムを提供することを目的とする。
本発明の変位抑制免震装置の一つの態様は、上部構造物と下部構造物の間に配置されて前記上部構造物を免震支承する免震部材とともに、前記上部構造物と前記下部構造物の間に配置される変位抑制免震装置であって、前記下部構造物に対して水平方向に移動可能に配置され、且つ、水平方向に剪断変形可能に形成される変位抑制弾性体と、前記下部構造物に固定され、且つ、前記変位抑制弾性体が水平方向に移動する際の前記下部構造物と前記変位抑制弾性体の相対的な水平変位量を規制する下部変位規制部と、前記上部構造物に固定され、且つ、前記変位抑制弾性体と前記上部構造物とを鉛直方向に常時離間させつつ前記変位抑制弾性体と前記上部構造物が相対的に水平方向に移動する際の水平変位量を規制する上部変位規制部と、を備え、前記変位抑制弾性体は、前記下部構造物に対する前記上部構造物の水平変位が、前記上部変位規制部における水平変位量と前記下部変位規制部における水平変位量との合計変位量を超えた際に、前記上部変位規制部及び前記下部変位規制部により水平方向への移動が規制されて、剪断変形し、前記下部変位規制部は、前記下部構造物から前記変位抑制弾性体側に突設され、且つ、前記変位抑制弾性体と対向配置される下部ロック部材及び下剪断キーのうちの一方を有し、前記変位抑制弾性体は、水平方向に剪断変形可能な弾性本体部の下部で前記下部構造物と対向する対向面から突出する前記下部ロック部材及び前記下剪断キーのうちの他方を有し、前記下部ロック部材は、前記下剪断キーを有する前記下部構造物又は前記変位抑制弾性体に摺動する対向面を有しており、前記下部ロック部材と前記下剪断キーとは、水平方向に間隔をあけて配置され、前記下剪断キーは、前記下部ロック部材を有する前記下部構造物又は前記変位抑制弾性体に対して、鉛直方向に間隔をあけて配置され、前記下部構造物に対する前記上部構造物の水平変位が、前記合計変位量以上生じた際に、水平方向で対向する前記下部ロック部材の側面と前記下剪断キーの側面が当接して、前記弾性本体部の剪断変形を可能にする、構成を採る。
本発明の免震システムの一つの態様は、上記構成の変位抑制免震装置と、上部構造物と下部構造物との間に、前記変位抑制免震装置とともに、前記変位抑制免震装置から離間して配置され、前記上部構造物を常時支持する免震部材と、を備える構成を採る。
本発明によれば、想定内の中・大規模の地震に対する免震効果を維持しつつ、想定外の巨大な地震による過大な変位を抑制することができる。
本発明の実施の形態1に係る免震システムを模式的に示す構造物の正面図 本発明の実施の形態1に係る免震システムの要部構成を模式的に示す拡大正面図 本発明の実施の形態1に係る免震システムの積層ゴム支承体(免震部材)を示す正面断面図 本発明の実施の形態1に係る免震システムの変位抑制免震装置を示す正面断面図 本発明の実施の形態1に係る免震システムのロックプレートを示す斜視図 本発明の実施の形態1に係る免震システムの変位抑制免震装置の動作を示す模式図 本発明の実施の形態1に係る免震システムにおける変位抑制免震装置の上部プレートの変形例1を示す水平断面図 本発明の実施の形態1に係る免震システムにおける変位抑制免震装置の上部プレートの変形例2を示す水平断面図 本発明の実施の形態1に係る免震システムの変位抑制免震装置の動作を示す図 本発明の実施の形態2に係る変位抑制免震装置の要部構成を示す正面断面図 本発明の実施の形態2の変位抑制免震装置の動作を示す図 本発明の実施の形態3に係る変位抑制免震装置の要部構成を模式的に示す正面断面図 本発明の実施の形態4に係る変位抑制免震装置の要部構成を模式的に示す正面断面図 本発明の実施の形態5に係る変位抑制免震装置の要部構成を模式的に示す正面断面図 本発明の実施の形態1の免震システムの上部プレートの他の設置例を示す図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
<免震システム10の概要>
図1は、本発明の実施の形態1に係る免震システム10を模式的に示す構造物の正面図である。
図1に示す免震システム10は、上部構造物としての建築物20と下部構造物としての基礎30との間に配置される免震部材としての複数の積層ゴム支承体40と、建築物20と基礎30との間に配置される変位抑制免震装置50とを有する。また、免震システム10の外周には擁壁33が設けられている。
免震システム10の免震部材としては、図1に示す積層ゴム支承体40のほか、プラグ入り積層ゴム、高減衰積層ゴム、弾性すべり支承、転がり支承やダンパー等が挙げられ、必要に応じて、これら免震部材も建築物20と基礎30との間に配置されてもよい。
図2は、同免震システム10の要部構成を模式的に示す拡大正面図である。
図1及び図2に示す免震システム10では、積層ゴム支承体40は、建築物(上部構造物)20の柱21の直下と基礎30の間に配置される。積層ゴム支承体40は、建築物20の鉛直荷重を支持しつつ、建築物20を基礎(下部構造物)30に対して相対的に水平方向(図1及び図4のL方向)へ移動可能とする。
また、免震システム10における変位抑制免震装置50は、建築物20及び基礎30間に、積層ゴム支承体40から離間して配置されている。変位抑制免震装置50は、ここでは、建築物20の柱21間に配設された梁22と基礎30との間に配置されているが、例えば、柱21の直下や建築物20の四隅等、反力をとることができる位置であればどこに配置してもよく、建築物20の外周部への配置も可能である。
本実施の形態での免震システム10では、変位抑制免震装置50を、複数の積層ゴム支承体40間に配置することによって、建築物20を常時支承する積層ゴム支承体40が所定範囲以上の水平変位となることを抑制する。
<積層ゴム支承体(免震部材)40の構成>
図3は、本発明の実施の形態1に係る免震システム10の積層ゴム支承体40の要部構成を示す断面図である。
図3に示す積層ゴム支承体40は、建築物を常時支持しており、複数の弾性板41及び硬質板(ここでは中間鋼板)42を交互に積層して一体化した積層体と、この積層体の上下両端に連結鋼板43、44と、フランジ46、47を配置した構造を有する。なお、連結鋼板43とフランジ46、並びに連結鋼板44とフランジ47とは、一体としたフランジ構成としてもよい。
弾性板41としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム等のゴム材が挙げられるが、これらに特に限定されず、合成樹脂、ゴムと合成樹脂との混合物等で形成してもよい。弾性板41と硬質板42及び上下端部に配した連結鋼板43、44は接着して一体化されている。なお、硬質板42は、鋼板の他、セラミック、プラスチック、繊維強化プラスチック等、金属製板であっても非金属製板であっても構わない。
この積層体(弾性板41及び硬質板42)の中央部に、必要に応じて上下に貫通して製造時に使用される位置決め孔45を設けてもよい。また、連結鋼板43、44とフランジ46、47は、ボルト46a、47aにより固定されている。
積層体の外周面(弾性板41及び硬質板42の外周面)には、耐候性に優れたゴム材料等からなる保護層48が被覆され、積層体は、保護層48により外部環境から保護されている。なお、保護層48と積層体との関係は、積層ゴムの外周面に接着剤を塗布して貼り合わせても、自己融着型のテープを巻いても、弾性板41と保護層48のゴム材を同時に加硫接着することで一体化してもよい。
このように構成される積層ゴム支承体40は、建築物20の柱の真下に位置させており、建築物20と基礎30とのそれぞれに、フランジ46、47の周縁部のボルト穴46b、47bに挿通されたボルト(図示略)により固定される。積層ゴム支承体40では、積層体とフランジ46、47とで、鉛直方向の硬い剛性で建築物20を支え、水平方向の柔らかい剛性で剪断変形することによって、建築物20の荷重を支えながら地震による揺れをゆっくりした周期で伝達するようにしている。
<変位抑制免震装置50の構成>
図4は、本発明の実施の形態1に係る免震システム10の変位抑制免震装置50を示す正面断面図である。
変位抑制免震装置50は、上部構造物(例えば、建築物20の梁22)と、下部構造物(例えば、基礎30)との間に配置され、上部構造物の下部構造物に対する所定範囲(クリアランスC21+C22)以上の水平方向への変位を抑制する。
変位抑制免震装置50は、変位抑制弾性体51と、下部構造物(ここでは、基礎30)に固定されるとともに変位抑制弾性体51が載置される下部ロックプレート(以下、「下部プレート」という)54と、上部構造物(ここでは、建築物20の梁22)に固定され、変位抑制弾性体51と対向配置される上部ロックプレート(以下、「上部プレート」という)57とを有する。本実施の形態1では、下部プレート54が、下部変位規制部に相当し、上部プレート57が、上部変位規制部に相当する。
変位抑制弾性体51は、弾性本体部512と、凸状の上下剪断キー514、515と、を有する。
弾性本体部512は、積層弾性体513と、上部対向フランジ516と、下部対向フランジ517と、を備えている。
積層弾性体513は、弾性板513aと硬質板としての中間鋼板513bが交互に積層され、上下端部に連結鋼板513c、513dが接着された構造を有する。積層弾性体513は、積層ゴム支承体40の積層体と同様の構造であり、中央部に円筒状の位置決め孔519を有する。位置決め孔519は、空孔のままであっても、弾性体で充填しても、鉛プラグ等の減衰プラグを挿入してもよい。なお、位置決め孔519が無い構成であっても構わない。弾性板513aとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム等のゴム材が挙げられるが、これらに特に限定されず、合成樹脂、ゴムと合成樹脂との混合物等で形成してもよい。弾性板513aは、積層ゴム支承体40の弾性板41を形成する弾性ゴム材と同一であっても、異なった弾性ゴム材でもよい。
また、積層弾性体513は、単層の弾性体の上下両端面を金属板である連結鋼板513c、513dで挟持して、接着により一体化する構成としてもよい。
このように構成された積層弾性体513において、連結鋼板513c、513dの上下両側には、それぞれ対向フランジ516、下部対向フランジ517が重ねて設けられている。なお、連結鋼板513cと上部対向フランジ516、並びに連結鋼板513dと下部対向フランジ517とは、一体としたフランジ構成としてもよい。
連結鋼板513c、513dと、上部対向フランジ516、下部対向フランジ517とは、ボルト518により連結固定されている。
上部対向フランジ516、下部対向フランジ517は、ここでは円盤状に形成されている。上部対向フランジ516は、他方の構造物である建築物20と対向する面(図4では上面516a)を有し、下部対向フランジ517は、その外周部517aを介して基礎(下部構造物)30に固定された下部プレート54上に載置されている。
下部対向フランジ517は、基礎30の対向面として機能し、下部対向フランジ517には、下剪断キー515が基礎30側(詳細には下部プレート54の内側)に突出して設けられている。
下剪断キー515は、下部プレート54(詳細は後述する)により囲まれる位置に配置される。図4における実施の形態では、下剪断キー515は、下部対向フランジ517の中央部、すなわち、弾性本体部512の下端中央部に突設されている。
下剪断キー515は、柱状、ここでは円柱状に形成され、下部対向フランジ517に図示しないボルトで固定されている。下剪断キー515の外周側面515a(側面)は、下部プレート54の内周側面(側面)541と水平方向で当接可能に配置されている。なお、剪断キー515の形状は特に限定されず、円柱状以外に多角形形状、筒状としてもよい。
なお、下剪断キー515は、積層弾性体513の変形でも、変位抑制弾性体51自体に荷重がかからないように、基礎30側の対向面とは、互いに離間した状態を保つよう設定されていることが望ましい。ここでは、下剪断キー515における基礎30側の端面(下端面515b)と、基礎30側の対向面30aとの間には、予めクリアランスC0が設けられている。
下部プレート54は、下剪断キー515の外周側面(側面)515aに対して水平方向に間隔をあけて同心円状に配置されている。下部プレート54の上面は低摩擦化処理が施され、摺動抵抗の低いコーティング層544で構成される。コーティング層544である上面に変位抑制弾性体51、詳細には、下部対向フランジ517の外周部517aが載置される。低摩擦化処理を施すことで下部プレート54の上面となるコーティング層544は、研磨により形成されても良く、また、PTFE(polytetrafluoroethylene)といったフッ素樹脂等の滑り材を下部プレート54の上面として設けることで、当該上面に載置される弾性本体部512(詳細には下部対向フランジ517)を摺動可能に支持する構成としてもよい。
具体的には、下部プレート54は、基礎30において、上方に突出し、且つ、下剪断キー515の外周側面515aから所定間隔(クリアランスC22)を空けて、下剪断キー515を取り囲むように設けられる。ここでは、下部プレート54は、図5に示すように、ドーナツ状に形成されている。下部プレート54は、ボルト穴542に挿通したボルトを介して基礎30の上面に固定される。下部プレート54は、例えば、軸を通る平面H1で分割可能な分割体54a、54bで構成されている。これにより、基礎30において、変位抑制弾性体51を配置する位置への設置を容易に行うことができ、設置後、下部プレート54の内側に、下剪断キー514を配置しつつ、下部プレート54上に変位抑制弾性体51を載置できる。なお、図5では2分割であるが、分割数は特に限定されず、分割しない構成としても構わない。また、分割位置は対称としなくてもよい。さらに、図4では下部プレート54における内周側面541の上端部を面取りした構成としているが、面取りがない構成としても構わない。
なお、下部プレート54の内周側面541と、下剪断キー515の外周側面515aとのクリアランスC22は、後述するクリアランスC21とともに、中・大規模の地震にて想定される変位量を基準に設定する。つまり、剪断キー515の外周側面515aと下部プレート54の内周側面541とのクリアランスC22は、想定される中・大地震における水平変位では接しない寸法とする。また、免震システム10の外周に配置された擁壁33と建築物20とのクリアランスC4(図2参照)よりも小さくし、ここでは、200[mm]程度に設定した。クリアランスC22によって、下部プレート54は、変位抑制弾性体51が水平方向に移動する際の基礎30と変位抑制弾性体51の相対的な水平変位量を規制する。
一方、変位抑制弾性体51の上方では、上部対向フランジ516の外周部は、他方の構造物である建築物20と対向する面(図4では上面516a)に向かって外径が小さくなるように傾斜している。これにより、水平変位により上部対向フランジ516の外周部端面が上部プレート57の内周側面571の内側に位置し(例えば、図6Dに示す上部対向フランジ外周部左側の端面)、さらに後述する上剪断キー514と上部プレート57の当接により変位抑制弾性体51が傾斜した状態から、再び元の位置(図4の状態)に戻る際に、上部プレート57の内周側面571の内側に位置していた上部対向フランジ516の外周部端面が上部プレート57の内周側面571に接触しても、傾斜によりスムーズに元の位置に移動できる。図4では上部プレート57における内周側面571の下端部を面取りした構成としているが、面取りがない構成としても構わない。
上部対向フランジ516の上面516aには、上剪断キー514が建築物20(詳細には上部プレート57)側に突出するように立設している。
上剪断キー514は、上部プレート57(詳細は後述する)により囲まれる位置に配置される。図4における実施の形態では、上剪断キー514は、上部対向フランジ516の中央部、すなわち、弾性本体部512の上端中央部に立設している。
上剪断キー514は、下剪断キー515と同様の柱状、ここでは円柱状に形成され、上部対向フランジ516にボルトで固定されている。剪断キー514の外周側面514a(側面)は、上部プレート57の内周側面(側面)571と水平方向で当接可能に配置されている。剪断キー514の形状は特に限定されず、円柱状以外に多角形形状、筒状等としてもよい。
上剪断キー514の上端面514bと上部構造物(例えば、梁22)の下面(例えば、梁下面22a)との間の鉛直方向には、クリアランスC1が設けられている。このクリアランスC1は、積層ゴム支承体40(図2参照)が過大変位して水平方向に変形(傾斜)して建築物20が沈み込む場合や経年による沈み込みの場合であっても、互いに離間した状態を保つよう設定される。例えば、平常時(水平変位0)におけるクリアランスC1を50[mm]程度とした。これにより、変位抑制弾性体51は、常時、無負荷状態(上部構造物である建築物20の荷重がかからない状態)が保たれる。クリアランスC1は、図4では、上剪断キー514の上端面514bと、建築物(上部構造物)20の梁下面22aとの間で形成しているが、上剪断キー514の上端面514bと対向する上部構造物側の面であれば、どの面で構成してもよい。例えば、上部プレート57を凹状に形成し、凹部の内周壁面を、内周側面571とする場合、凹部の底面部と、上剪断キー514の上端面514bとにより、クリアランスC1を構成してもよい。
上部プレート57は、上剪断キー514の外周側面(側面)514aに対して水平方向に間隔をあけて同心円状に配置されている。
上部プレート57は、建築物20に固定されている。具体的には、上部プレート57は、建築物20において、基礎30(一方の構造物)と対向する面(建築物20の梁22の下面22a)から突出し、且つ、上剪断キー514の外周側面514aから所定間隔(クリアランスC21)を空けて、上剪断キー514を取り囲むように設けられる。上部プレート57は、クリアランスC1によって、変位抑制弾性体51と建物20とを鉛直方向に常時離間させつつ、クリアランスC21によって、変位抑制弾性体51と建物20が相対的に水平方向に移動する際の水平変位量を規制する。
ここでは、上部プレート57は、図5に示す下部プレート54と同様に、ドーナツ状に形成されている。上部プレート57は、ボルト穴に挿通したボルトを介して建築物20の下面(梁下面22a)に固定される。上部プレート57は、例えば、下部プレート54と同様に、軸を通る平面で分割可能な分割体で構成する。これにより、上部プレート57は、下部プレート54上に載置した変位抑制弾性体51の剪断キー514を囲むように、建築物20(詳細には梁下面22a)に配置して固定できる。なお、上部プレート54は、図5に示す下部プレート54のように2分割で構成することが望ましいが、分割数は特に限定されず、分割しない構成としても構わない。また、分割位置は対称としなくてもよい。さらに、図4では上部プレート57における内周側面の下端部を面取りした構成としているが、面取りがない構成としても構わない。
また、変位抑制弾性体51の上部対向フランジ516の上面516aと、上部プレート57の下端面574との間には、クリアランス(所定間隔)C3が設けられている。このクリアランスC3は、積層ゴム支承体40(図2参照)が過大変位して水平方向に変形(傾斜)することで建築物20が沈み込む場合や経年による沈み込みの場合、さらに上剪断キー514と上部プレート57が当接して変位抑制弾性体51が傾斜しても、離間状態を保ち、上部対向フランジ516の上面516aと上部プレート57の下端面574とが接触しないように設定する。なお、当接して変位抑制弾性体51が傾斜した際に接触させて傾斜を抑えるようにしてもよい。クリアランスC3は、例えば、10〜30[mm]程度で形成される。
また、上部プレート57の内周側面571と、上剪断キー514の外周側面514aとのクリアランスC21は、中・大規模の地震にて想定される変位量を基準に設定する。つまり、上剪断キー514の外周側面514aと上部プレート57の内周側面571とのクリアランスC21は、想定される中・大地震における水平変位では接しない寸法とする。また、免震システム10の外周に配置された擁壁33と建築物20とのクリアランスC4(図2参照)よりも小さくし、ここでは、200[mm]程度に設定した。
なお、鉛直方向に対向する面(上端面514b、梁下面22a)間のクリアランスC1は、常時離間した状態を保つよう設定した上で、上部プレート57の内周側面571と上剪断キー514の外周側面514aが当接した際には、上剪断キー514の外周側面514aの高さ(鉛直)方向で半分程度の面が上部プレート57の内周側面571に当接するように配置されるのが好適である。
これにより、水平変位によって、上剪断キー514が、上部プレート57の内側から外方に抜けることを防止でき、水平力(剪断力)が剪断キー514から確実に弾性本体部512に伝達され、水平剛性を効率良く確保できる。
このように上部構造物である建物20に固定された上部プレート57と、基礎30に載置された状態の変位抑制弾性体51とが相対的に水平変位し、水平変位が所定の間隔(クリアランスC21)以上となった際に、上部プレート57の内周側面571が、上剪断キー514の外周面514aに当接する。一方、このとき、鉛直方向に対向する面(上端面514b、梁下面22a)間のクリアランスC1は、常時離間した状態が保たれ、上剪断キー514の上端面514bは、対向する建築物20及び上部プレート57の各下面とは鉛直方向に接しない。つまり、上剪断キー514は、上部プレート57及び上部構造物である建物に対向する対向面が鉛直方向に常時離間している。
<変位抑制免震装置50の動作>
図6は、本発明の実施の形態1に係る免震システム10の変位抑制免震装置50の動作を示す図である。
変位抑制免震装置50では、図6Aに示す状態において、地震動がある場合、図6Bに示すように、上部プレート57と変位抑制弾性体51とが相対的に水平変位する。このとき、所定の間隔(クリアランスC21)内の移動であれば、変位抑制弾性体51に対して、上部プレート57のみが水平変位することになる。
この地震動が、長周期パルス性地震動や長周期・長時間地震動等のような想定外の巨大な地震動である場合、上部プレート57が変位抑制弾性体51に対して、所定の間隔(クリアランスC21)以上に相対的に水平変位する。次いで、上剪断キー514の外周側面514aが上部プレート57の内周側面571に当接して、変位抑制弾性体51に水平力が働く。すると、図6Cに示すように、上部プレート57に上剪断キー514が当接した状態で、変位抑制弾性体51自体が、上部プレート57の移動に追従して、下部プレート54上を摺動して水平変位する。次いで、下剪断キー515の外周側面515aが、下部プレート54の内周側面541に当接する。すると、図6Dに示すように、変位抑制弾性体51の弾性本体部512に水平力(剪断力)が働き、曲げ変形することなく、剪断変形する。すなわち、変位抑制弾性体51は、基礎(下部構造物)30に対する建物(上部構造物)20の水平変位が、上部プレート(上部変位規制部)57における水平変位量(クリアランスC21と下部プレート(下部変位規制部)54における水平変位量(クリアランスC22)との合計変位量を超えた際に、上部プレート(上部変位規制部)57及び下部プレート(下部変位規制部)54により水平方向の移動が規制されて、水平方向に剪断変形する。これにより、変位抑制弾性体51に反力が発生することになり、免震システム10の水平剛性が増加する。
なお、上剪断キー514を弾性本体部512の上端(上部対向フランジ516の上面516a)に設ける場合、本実施の形態では、上剪断キー514は、弾性本体部512の中心部に設けている。これにより、上剪断キー514が上部プレート57に当接した際、弾性本体部512の外周部近傍に上剪断キー514を設けた場合より変位抑制弾性体51の傾斜を抑えることができる。よって、上剪断キー514から確実に変位抑制弾性体51に水平力(剪断力)が伝達され、免震システム10の水平剛性が増加する。また、下剪断キー515も、上剪断キー514と同様の理由により、弾性本体部512の下端(下部対向フランジ517の下面)に設ける場合、下剪断キー515は、弾性本体部512の中心部に設けることが望ましい。
本実施の形態の上部プレート57は、円環状(ドーナツ状)に形成され、上剪断キー514の外周面を囲む内周面を設けた構成としたが、上剪断キー514が相対的にどの方向に変位しても当接する形状であれば、どのように構成されてもよい。また、下部プレート54も、上部プレート57と同様に、円環状(ドーナツ状)に形成され、下剪断キー515の外周面を囲む内周面を設けた構成としたが、下剪断キー515が相対的にどの方向に変位しても当接する形状であれば、どのように構成されてもよい。図7及び図8に上部プレート57の変形例を示す。
図7は、本発明の実施の形態1に係る免震システムにおける変位抑制免震装置50の上部プレートの変形例1を示す水平断面図であり、図8は、同変位抑制免震装置50の上部プレートの変形例2を示す水平断面図である。
図7に示す上部プレート57Aは、常態位置にある円柱状の上剪断キー514の外周側面514aから所定間隔を空けて位置する内周側面571Aを有する円環状体に、円柱状の剪断キー514の軸心を中心とした放射状のスリット575を設けることで構成されている。なお、スリット575の幅は上剪断キー514の直径よりも短いものとする。このようにスリット575が形成されていれば、変位抑制弾性体51の外側(詳細には上部プレート57Aの外周)からでもスリット575を通して内側の上剪断キー514の状態を視認できる。なお。図7の上部プレート57Aは4分割の構成であるが、分割数は2分割でも8分割でも特に限定されない。なお、下部プレート54も、上部プレート57Aの構成と同様に形成してもよい。すなわち、下部プレート54は、常態位置にある円柱状の下剪断キー515の外周側面515aから所定間隔を空けて位置する内周側面を有する円環状体に、円柱状の下剪断キー515の軸心を中心とした放射状のスリットを設けた構成としてもよい。
また、図8に示す上部プレート57Bは、常態位置にある上剪断キー514の外周側面514aから所定間隔を空いて描く同心円の接線上に、複数の角柱576の一側面576aを位置させて、各一側面576aで上剪断キー514を囲むように、建築物20に固定することで構成されている。想定外の巨大な地震動の際は、点線のように複数の角柱576の一側面576aと上剪断キー514の外周側面514aが当接する。また、角柱576間に隙間を設けることで、上部プレート57Bの外側面から内側の上剪断キー514の状態を視認できる。なお、下部プレート54も、上部プレート57Bの構成と同様に形成してもよい。すなわち、下部プレート54は、常態位置にある下剪断キー515の外周側面515aから所定間隔を空いて描く同心円の接線上に、複数の角柱の一側面を位置させて、各側面で上剪断キー514を囲むように、建築物20に固定する構成としてもよい。
なお、変位抑制免震装置50は、変位抑制免震装置50を設置する以前の構造物(既存構造物)の免震層性状や、対象とする地震動の性状やレベル、制御目標等に基づいて、設置量を設定する。本実施の形態では、変位抑制免震装置50の設置量は、既存構造物の剛性の30%〜150%程度の範囲で、制御対象地震動の性状や制御目標を考慮し、時刻歴応答解析による検証を経た上で適切な量を決定する。
<免震システム10の動作>
本実施の形態では、免震システム10を設置した構造物(建築物20、基礎30)において、免震システム10の外周に配置された擁壁33と、建築物20とのクリアランスC4は(図2参照)、上剪断キー514の外周側面514aと上部プレート57の内周側面571とのクリアランスC21に、下剪断キー515の外周側面515aと下部プレート54の内周側面541とのクリアランスC22を加算したクリアランスC21+C22よりも大きい。なお、クリアランスC21+C22は、設計想定範囲内の地震における設計変形量である。例えば、本実施の形態では、クリアランスC21+C22を400[mm]として、クリアランスC4を800[mm]程度に設定した。
図2、図4及び図6A〜図6Cに示すように、設計想定範囲内の中・大地震においては、建築物20の水平変形量は、クリアランスC21+C22の範囲内となる。このとき、変位抑制免震装置50では、上剪断キー514の外周側面514aと上部プレート57の内周側面571は接触するものの、下剪断キー515の外周側面515aと下部プレート54の内周側面541は接触しない。これにより、積層ゴム支承体40の免震性能が機能する。
そして、設計想定範囲外(想定外)の巨大な地震により過大な変位が発生し、積層ゴム支承体40の水平変位量がクリアランスC21+C22(400[mm]程度)より大きくなる。すると、変位抑制免震装置50では、上剪断キー514の外周側面514aと上部プレート57の内周側面571が接触した後、下部プレート54上で、変位抑制弾性体51自体が水平変位し、下剪断キー515の外周側面515aと下部プレート54の内周側面541が接触する。これにより、剪断力が変位抑制弾性体51(具体的には積層弾性体512)に伝達されて、変位抑制弾性体51(具体的には積層弾性体512)が剪断変形する。これにより、変位抑制弾性体51の水平剛性が、積層ゴム支承体40による剛性に加わり、免震システム10全体の剛性が増し、水平力に対する変位を抑えることができる。したがって、図9に示すように、クリアランスC21+C22を境に水平変位に対する水平剛性K1が水平剛性K2に増加することで、水平変位量は、クリアランスC4(800[mm]程度)まで至らず、建築物20は、擁壁33に接触することがない。これにより、上部構造物である建築物20が、擁壁33に衝突する等して破損することを回避できる。また、仮にクリアランスC4(800[mm]程度)以上の変位となったとしても、変位抑制免震装置50の機能により水平力を大幅に抑え、速度が低減した状態で衝突させるため、破損を軽減することができる。なお、K1は、免震部材、ここでは積層ゴム支承体40による水平剛性を示す。
このように免震システム10によれば、想定内の中・大地震に対しては、変位抑制免震装置50が機能すること無く、免震部材(積層ゴム支承体40の他、プラグ入り積層ゴム、高減衰積層ゴム、弾性すべり支承、転がり支承やダンパー等)が免震効果を発揮する。
加えて、想定外の巨大地震による過大変位時には、上剪断キー514の外周側面514aと上部プレート57の内周側面571が当接した後、下剪断キー515の外周側面515aと上部プレート54の内周側面541が当接することで変位抑制弾性体51に水平力(剪断力)に対する反力が発生する。このように、変位抑制弾性体51の水平剛性が加わることで免震システム10の水平剛性が増加し、建築物20の変位を抑制して擁壁33への衝突を回避できる。また、仮に擁壁33に衝突したとしても破損を軽減することができる。このように、免震システム10によれば、想定内の中・大規模の地震に対する免震効果を維持しつつ、想定外の巨大な地震による過大な変位を抑制することができる。
また、変位抑制免震装置50における設定変形量を、変位抑制弾性体51(具体的には積層弾性体512)の上下で、クリアランスC21、C22として確保した。これにより、変位抑制弾性体51(具体的には積層弾性体512)の上下の一方のみで設定変形量、つまり、クリアランスを確保する構成と比較して、変位抑制弾性体51(具体的には積層弾性体512)の空動距離を小さくすることができ、変位抑制装置50全体のコンパクト化、ひいては、設置スペースのコンパクト化を図ることができる。また、変位抑制免震装置50全体のコンパクト化により、変位抑制免震装置50自体の設置作業も容易となる。
また、変位抑制弾性体51の上剪断キー514の上面は、平常時、想定内の中・大地震時及び過大変位時の何れの状態においても対向する建築物20下面(又は、上部プレート57の凹部底面)との鉛直方向におけるクリアランスC1は保たれる(C1>0)。よって、上剪断キー514の外周側面514aと上部プレート57の内周側面571が当接し、且つ、下剪断キー515の外周側面515aと下部プレート54の内周側面541が当接しても建築物20から免震部材(例えば、積層ゴム支承体40)個々に負荷される鉛直荷重のバランスは変わらない。これにより、特許文献1と異なり、第1の免震支持機構(積層ゴム支承体40に相当)が構造物から受ける鉛直荷重の変化によって、免震システム全体として、所望の免震効果が得られなくなる虞はない。
また、変位抑制弾性体51の設置に際して、上部構造物である建築物20をジャッキアップして取り付ける必要もなく、既存の建築物、具体的には、想定内の巨大な地震を免震する免震部材(積層ゴム支承体40)を取り付けた構造物にも容易に設置できる。加えて、変位抑制弾性体51の設置に際し、上部構造物である建物20と下部構造物である基礎30の双方に、弾性本体部512を含む変位抑制弾性体51を固定していない。これにより、弾性本体部512を建物20及び基礎30の一方に固定する場合と比較して、建物20及び基礎30の間に容易に設定できる。これにより、既に想定内の地震に対応する免震部材が設けられている構造物においても、想定内の中・大規模の地震に対する免震効果を維持しつつ、想定外の巨大な地震に対応する変位抑制効果を実現することができる。
また、本実施の形態では、免震システム10の免震層の外周に、擁壁33が設けられた構成としたが、擁壁33が無い構造物への適用も可能である。上下剪断キー514、515と上下部プレート57、54の当接により、変位抑制弾性体51の水平剛性が加わることで免震システム10の水平剛性が増加し、建築物20の水平変位を抑制して、想定内の中・大規模の地震に対する免震効果は勿論のこと、想定外の巨大な地震が発生しても好適に変位抑制効果を発揮できる。
さらに、変位抑制装置50では、剪断キー514、515が、平面視して弾性本体部512の中心(中央部)に設けられているので、地震により回転力を伴う過大変位であっても、確実に弾性本体部512に剪断力を伝達して、免震層全体の剛性を高くできる。
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2に係る変位抑制免震装置50Aの要部構成を示す正面断面図である。なお、この変位抑制免震装置50Aは、図4に示す実施の形態1における変位抑制免震装置50と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図10に示す変位抑制免震装置50Aは、図4に示す変位抑制免震装置50の構成において、下部プレート54及び上部プレート57の内周側面541、571に、上下剪断キー515、514が当接した際の衝撃を和らげる緩衝材55、56を設けたものである。
具体的には、変位抑制免震装置50Aは、変位抑制弾性体51と、下部構造物(ここでは、基礎30)に固定されるとともに変位抑制弾性体51が載置される下部プレート54と、上部構造物(ここでは、建築物20の梁22)に固定され、変位抑制弾性体51と対向配置される上部プレート57と、緩衝材55、56とを有する。
緩衝材55、56は、ゴム板等の弾性体で構成されている。緩衝材56は、下部プレート54の内周側面541と、下部プレート54の内側の底面、つまり、下剪断キー515の下端面515bと対向する基礎30の対向面30a(基礎30において内周側面541で囲まれた部位)とに跨がって設けられている。緩衝材56は、基礎30側の部位において、下剪断キー515が相対的に移動した際に当接する箇所に配置される。
緩衝材55は、上部プレート57の内周側面571と、上部プレート57の内側の底面、つまり、上剪断キー514の上端面514bと対向する建物20の対向面(梁20の下面22aにおいて内周側面571で囲まれた部位)とに跨がって設けられている。緩衝材55は、建物20側の部位において、上剪断キー514が相対的に移動した際に当接する箇所に配置される。
この構成により、想定外の巨大な地震により過大な変位が発生して、変位抑制弾性体51が動作して変位抑制弾性体51の水平剛性を、積層ゴム支承体40による剛性に加える際に、図11に示すように、滑らかに連続して加えることができる。
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3に係る変位抑制免震装置50Bの要部構成を模式的に示す正面断面図である。なお、この変位抑制免震装置50Bは、図4に示す実施の形態1における変位抑制免震装置50と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図12に示す変位抑制免震装置50Bは、図4に示す変位抑制免震装置50の構成において、下部プレート54に底面部545を形成するとともに、上部プレート(上部ロック部材)57を、上部対向フランジ516に一体に形成し、上剪断キー514を変位抑制弾性体51から外して上部構造物である建物20側に固定している。
具体的には、変位抑制免震装置50Bは、変位抑制弾性体51Bと、下部プレート(下部変位規制部)54Bと、上剪断キー(上部変位規制部)514と、を有する。
変位抑制弾性体51Bは、積層弾性体513を有する弾性本体部512と、弾性本体部512の上部対向フランジ516に一体に形成された上部プレート57Bと、下剪断キー515とを有する。
上部プレート部57Bは、水平方向に剪断変形可能な弾性本体部513の上部で前記上部構造物と対向する対向面から突出し、上剪断キー514の周囲に所定間隔(クリアランスC21)を空けて同心円状に配置されている。また、上部プレート部57Bにおける建物20(梁22の下面22a)に対向する対向面は、建物20(梁22の下面22a)に対して、鉛直方向に常時離間している。
上剪断キー514は、上部構造物(ここでは、建築物20の梁22)から変位抑制弾性体51側に突出して設けられ、変位抑制弾性体51と対向配置される。
上部プレート57Bと、上剪断キー514とは、基礎30に対する建物20の水平変位が、上剪断キー514における水平変位量(図4のクリアランスC21に相当)以上生じた際に、水平方向に対向する上部プレート57Bの内周側面571と上剪断キー514の外周側面514aが当接する。
下部プレート54Bは、基礎30から変位抑制弾性体51側に突設され、且つ、変位抑制弾性体51と対向配置されている。下部プレート54Bには、内側に下剪断キー515を配置した状態で、変位抑制弾性体51が載置される。
下部プレート54Bと、下剪断キー515とは、水平方向に間隔をあけて同心円状に配置され、且つ、基礎30に対する建物20の水平変位が、上剪断キー514における水平変位量と下部プレート54Bにおける水平変位量の合計変位量以上生じた際に、水平方向に対向する下部プレート54Bの内周側面541と下剪断キー515の外周側面515aが当接する。
これにより、実施の形態1の変位抑制免震装置50と同様の作用効果を得ることができる。
(実施の形態4)
図13は、本発明の実施の形態4に係る変位抑制免震装置50Cの要部構成を模式的に示す正面断面図である。なお、この変位抑制免震装置50Cは、図4に示す実施の形態1における変位抑制免震装置50と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図13に示す変位抑制免震装置50Cは、図4に示す変位抑制免震装置50の構成において、上部プレート57に底面部578を形成するとともに、下部プレート(下部ロック部材)54Cを、下部対向フランジ517に一体に形成し、下剪断キー515を変位抑制弾性体51から外して下部構造物である基礎30側に固定している。
具体的には、変位抑制免震装置50Cは、変位抑制弾性体51Cと、下剪断キー(下部変位規制部)515が形成された底面板5151と、上部プレート(上部変位規制部)57Cと、を有する。
変位抑制弾性体51Cは、積層弾性体513を有する弾性本体部512と、弾性本体部512の上部対向フランジ516に一体に形成された上剪断キー514と、弾性本体部512の下部対向フランジ517に一体に形成された下部プレート54Cと、を有する。
上部プレート57Cは、弾性本体部513の上部で突出する上剪断キー514の周囲に所定間隔(図4に示すクリアランスC21に相当)を空けて同心円状に配置されている。なお、上部プレート部57Cにおいて変位抑制弾性体51Cに対向する対向面は、変位抑制弾性体51Cに対して、鉛直方向に常時離間している。また、上剪断キー514における建物20(梁22の下面22a)側に対する対向面(ここでは、底面部578に対する対向面)は、底面部578に対して鉛直方向に常時離間している。
下剪断キー515は、基礎30側(ここでは、基礎30に固定される底面板5151の中央部)から変位抑制弾性体51側に突出して設けられ、変位抑制弾性体51と鉛直方向で離間して対向配置される。
底面板5151の上面には、下剪断キー515の周囲に低摩擦化処理が施され、摺動抵抗の低いコーティング層5152(コーティング層544と同様)が形成されている。
このコーティング層5152上に、下部プレート54Cが、その下端部を当接させた状態で、摺動可能に載置されている。
下部プレート54Cは、下剪断キー515の周囲に所定間隔(図4で示すクリアランスC22に相当)を空けて同心円状に配置されている。これにより、下剪断キー515は、弾性本体部512の下部で、下方に凹状に開口する下部プレート54C内の略中央部に配置される。なお、下剪断キー515は、下部プレート54Cの底面(下部対向フランジ517の下面に相当)と鉛直方向で常時離間していることが好ましい。
上部プレート57Cと、上剪断キー514とは、基礎30に対する建物20の水平変位が、上剪断キー514における水平変位量(図4のクリアランスC21に相当)以上生じた際に、水平方向に対向する上部プレート57Cの内周側面571と上剪断キー514の外周側面514aが当接する。
下部プレート54Cは、変位抑制弾性体51から基礎30側に突設され、且つ、基礎30(ここでは、基礎30に固定された底面板5151)と対向配置されている。また、下部プレート54Bと下剪断キー515とは、水平方向に間隔をあけて配置されている。
下部プレート54Cと下剪断キー515は、基礎30に対する建物20の水平変位が、上剪断キー514における水平変位量と下剪断キー515における水平変位量の合計変位量(図4で示すクリアランスC21+C22に相当)以上生じた際に、水平方向に対向する下部プレート54Cの内周側面541と下剪断キー515の外周側面515aが当接する。
これにより、実施の形態1の変位抑制免震装置50と同様の作用効果を得ることができる。
(実施の形態5)
図14は、本発明の実施の形態5に係る変位抑制免震装置50Dの要部構成を模式的に示す正面断面図である。なお、この変位抑制免震装置50Dは、図4に示す実施の形態1における変位抑制免震装置50と同様の基本的構成を有しており、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図14に示す変位抑制免震装置50Dは、図4に示す変位抑制免震装置50の構成において、上部プレート(上部ロック部材)57を、上部対向フランジ516に一体に形成し、上剪断キー514を変位抑制弾性体51から外して上部構造物である建物20側に固定している。加えて、上剪断キー514を、建物20(梁22の下面22a)に固定する円盤状の固定板5141の中央に一体的に形成し、下部プレート(下部ロック部材)54Dを、下部対向フランジ517に一体に形成し、下剪断キー515を変位抑制弾性体51から外して下部構造物である基礎30側に固定している。
具体的には、変位抑制免震装置50Dは、変位抑制弾性体51Dと、上剪断キー514Dが形成された固定板5141と、下剪断キー(下部変位規制部)515が形成された底面板5151と、を有する。
変位抑制弾性体51Dは、積層弾性体513を有する弾性本体部512と、弾性本体部512の上部対向フランジ516に一体に形成された上部プレート57Dと、弾性本体部512の下部対向フランジ517に一体に形成された下部プレート54Dと、を有する。
上部プレート57Dは、建物20(梁の下面22a)から突出する上剪断キー514Dの周囲に所定間隔(図4に示すクリアランスC21に相当)を空けて同心円状に配置されている。なお、上部プレート部57Dにおいて建物20(ここでは、梁の下面22aに固定された固定板5141の下面)に対向する対向面は、固定板5141に対して、鉛直方向に常時離間している。また、剪断キー514において建物20(梁22の下面22a)側に対する対向面(ここでは、底面部578に対する対向面)は、底面部578に対して鉛直方向に常時離間している。
下剪断キー515は、基礎30側(ここでは、基礎30に固定される底面板5151の中央部)から変位抑制弾性体51側に突出して設けられ、変位抑制弾性体51と鉛直方向で離間して対向配置される。
底面板5151の上面には、下剪断キー515の周囲に低摩擦化処理が施され、摺動抵抗の低いコーティング層5152が形成されている。
このコーティング層5152上に、下部プレート54Dが、その下端部を当接させた状態で、摺動可能に載置されている。
下部プレート54Dは、下剪断キー515の周囲に所定間隔(図4で示すクリアランスC22に相当)を空けて同心円状に配置されている。これにより、下剪断キー515は、弾性本体部512の下部で、下方に凹状に開口する下部プレート54C内の略中央部に配置される。なお、下剪断キー515は、下部プレート54Cの底面(下部対向フランジ517の下面に相当)と鉛直方向で常時離間していることが好ましい。
上部プレート57Dと、上剪断キー514Dとは、基礎30に対する建物20の水平変位が、上剪断キー514Dにおける水平変位量(図4のクリアランスC21に相当)以上生じた際に、水平方向に対向する上部プレート57Dの内周側面571と上剪断キー514の外周側面514aが当接する。
下部プレート54Dは、変位抑制弾性体51から基礎30側に突設され、且つ、基礎30(ここでは、基礎30に固定された底面板5151)と対向配置されている。また、下部プレート54Dと下剪断キー515とは、水平方向に間隔をあけて配置されている。
下部プレート54Dと下剪断キー515は、基礎30に対する建物20の水平変位が、上剪断キー514における水平変位量と下剪断キー515における水平変位量の合計変位量(図4で示すクリアランスC21+C22に相当)以上生じた際に、水平方向に対向する下部プレート54Dの内周側面541と下剪断キー515aの側面が当接する。
これにより、実施の形態1の変位抑制免震装置50と同様の作用効果を得ることができる。
なお、各実施の形態における変位抑制免震装置50、50A、50B、50C、50Dにおいて、変位抑制弾性体51の弾性本体部512は、単層の弾性体構造でも複数の弾性板513aと硬質板としての中間鋼板513bとを交互に積層した構造のどちらでもよいが、積層構造とすることで、単層構造より鉛直剛性や回転剛性を高くすることができる。
これにより、本実施の変位抑制免震装置50(50A〜50D)のように、変位抑制弾性体51、51B、51C、51D側の上部プレート或いは上剪断キーが、自由端であっても、上剪断キーと上部プレートが当接することによる変位抑制弾性体51、51B、51C、51Dの傾斜を抑え、回転を伴う変位であっても安定した水平変形を得ることができる。これにより、免震対象の建築物20の水平剛性を確実に増加させることができる。
変位抑制弾性体51、51B、51C、51Dの弾性本体部512を積層構造とする場合、弾性板513aの剪断弾性係数をG[N/mm]、一次形状係数をS、二次形状係数をSとしたとき、以下の条件を満足するよう構成する。
(a)0.20≦G≦1.20、好ましくは0.39≦G≦0.80
(b)10≦S≦60、好ましくは20≦S≦40
(c)4≦S≦10、好ましくは5≦S≦8
ここで、一次形状係数Sは、鉛直剛性、回転剛性に関するパラメーターであり、Sが大きくなるほど、鉛直剛性や曲げ剛性が大きくなる。また、二次形状係数Sは、載荷能力や水平剛性に関するパラメーターであり、Sが大きくなるほど座屈や曲げ変形を起こしにくい形状となる。S、Sは下記式(1)、(2)により求められる。
=(D−D)/4t −(1)
=D/nt −(2)
:弾性板513aの外径
:位置決め孔519の直径 (D=0を含む)
:弾性板513aの1層あたりの厚さ
n:弾性板513aの積層枚数n
各実施の形態における上剪断キー514、514Dは、常時、想定内の中・大地震時及び過大変位時の何れの状態においても、上部構造物である建物(或いは変位抑制弾性体)と対向する対向面は鉛直方向に離間し、無面圧の状態が維持されている。これにより、想定外の巨大な地震により、上部プレートと上剪断キー514、514Dが当接しても上部構造物(建築物20)から個々の免震部材(積層ゴム支承体40)への鉛直荷重のバランスは変わらない。よって、既に免震部材(積層ゴム支承体40のほか、プラグ入り積層ゴム、高減衰積層ゴム、弾性すべり支承、転がり支承やダンパー等)が構築された構造物に対して、既存の免震部材の免震機能を損なうこと無く、本実施の形態の変位抑制免震装置50を容易に設置して免震システム10を形成することができる。
このように本実施の形態の変位抑制免震装置50、50A〜50Dは、上部構造物(建築物)20と下部構造物(基礎)30の間に配置されて上部構造物20を免震支承する免震部材(積層ゴム支承体)40とともに、上部構造物20と下部構造物30の間に配置される変位抑制免震装置である。変位抑制免震装置50、50A〜50Dは、下部構造物30に対して水平方向に移動可能に配置され、且つ、水平方向に剪断変形可能に形成される変位抑制弾性体51、51B、51C、51Dと、下部構造物30に固定され、且つ、変位抑制弾性体51、51B、51C、51Dが水平方向に移動する際の下部構造物30と変位抑制弾性体51、51B、51C、51Dの相対的な水平変位量を規制する下部変位規制部(下部プレート54、54B、下剪断キー515等)と、上部構造物20に固定され、且つ、変位抑制弾性体51、51B、51C、51Dと上部構造物20とを鉛直方向に常時離間させつつ変位抑制弾性体51、51B、51C、51Dと上部構造物20が相対的に水平方向に移動する際の水平変位量を規制する上部変位規制部(上部プレート57、57C、上線断キー514等)と、を備える。変位抑制弾性体51、51B、51C、51Dは、下部構造物30に対する上部構造物20の水平変位が、上部変位規制部(上部プレート57、57C、上線断キー514等)における水平変位量と下部変位規制部(下部プレート54、54B、下剪断キー515等)における水平変位量との合計変位量を超えた際に、上部変位規制部及び前記下部変位規制部により水平方向への移動が規制されて、剪断変形する。
例えば、本実施の形態の変位抑制免震装置50、50A〜50Dによれば、下部構造物(基礎)30に対して水平方向に移動可能に配置され、且つ、水平方向に剪断変形可能に形成される変位抑制弾性体51、51B、51C、51Dと、上部構造物20又は下部構造物30の他方の構造物に固定され、変位抑制弾性体51、51B、51C、51Dと対向配置される剪断キー(上剪断キー514、514D、下剪断キー515)と、を備えてもよい。変位抑制弾性体51、51B、51C、51Dは、上部構造物と鉛直方向に常時離間させつつ、弾性本体部512と、弾性本体部512において前記他方の構造物と対向する対向面から突出するロックプレート(例えば、上部ロック部材である上部プレート57、下部ロック部材である下部プレート54C、54D等)とからなるようにしてもよい。剪断キー(上剪断キー514、514D、下剪断キー515等)は、弾性本体部512に対向する対向面が弾性本体部12に対して鉛直方向に常時離間している。ロックプレート(例えば、上部プレート57、57A〜57D、下部プレート54B〜54D)と、剪断キー(例えば、上剪断キー514、514D、下剪断キー515)とは、水平方向に間隔をあけて配置され、且つ、一方の構造物に対する他方の構造物の水平変位が間隔以上生じた際に、水平方向に対向するロックプレート(上部プレート57、57A〜57D、下部プレート54、54B〜54D)の側面(541、571)と剪断キーの側面(514a、515a)が当接する。
なお、実施の形態の変位抑制免震装置50Aにおける緩衝材55、56は、図12〜図14に示す変位抑制免震装置50B〜50Dに適用可能であることは勿論である。すなわち、図12〜図14に示す上下剪断キーが水平方向に変位した際に、上下部プレートの当接する箇所に緩衝材を設けても良い。また、緩衝材は、各実施の形態1〜5における上下剪断キーの外周側面に設けてもよい。
また、本実施の形態では、上部構造物としての建築物20と、下部構造物としての基礎30との間に配置した免震システム10として説明したが、構造物の中間階層に本発明の免震システム10を適用してもよい。
また、本実施の形態1では、変位抑制免震装置50は、建築物20の柱21間に配設された梁22と基礎30との間に配置されているが、例えば、柱21の直下や建築物20の四隅等、反力がとることができる位置であればどこに配置してもよい。
さらに、例えば、図4における実施の形態1では、上部プレート57は、梁下面22aに直接設置しているが、図15に示すように柱21から延設したフレーム24のフレーム面(下面)に上部プレート57を設置してもよく、固定方法は特に限定されない。
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
本発明に係る変位抑制免震装置及び免震システムは、想定内の中・大規模の地震に対する免震効果を維持しつつ、想定外の巨大な地震による過大な変位を抑制できる効果を有し、新規のみならず、既存の構造物に対して実施する免震システムとして有用である。また、建築物への適用のみならず、床免震や機械等に対する免震システムとしても有用である。
10 免震システム
20 建築物(上部構造物)
30 基礎(下部構造物)
33 擁壁
40 積層ゴム支承体(免震部材)
41 弾性板
42 硬質板(中間鋼板)
43、44 連結鋼板
45、519 位置決め孔
46、47 フランジ
46a、47a、518 ボルト
46b、47b ボルト穴
48 保護層
50、50A、50B、50C、50D 変位抑制免震装置
51、51B、51C、51D 変位抑制弾性体
55、56 緩衝材
57、57A、57B、57C、57D 上部プレート
512 弾性本体部
513 積層弾性体
513a 弾性板
513b 硬質板(中間鋼板)
513c、513d 連結鋼板
514、514D 上剪断キー
514a 外周側面
515 下剪断キー
515a 外周側面
516 上部対向フランジ
517 下部対向フランジ
517a 外周部
571 内周側面
C0、C1、C21、C22、C3、C4 クリアランス

Claims (6)

  1. 上部構造物と下部構造物の間に配置されて前記上部構造物を免震支承する免震部材とともに、前記上部構造物と前記下部構造物の間に配置される変位抑制免震装置であって、
    前記下部構造物に対して水平方向に移動可能に配置され、且つ、水平方向に剪断変形可能に形成される変位抑制弾性体と、
    前記下部構造物に固定され、且つ、前記変位抑制弾性体が水平方向に移動する際の前記下部構造物と前記変位抑制弾性体の相対的な水平変位量を規制する下部変位規制部と、
    前記上部構造物に固定され、且つ、前記変位抑制弾性体と前記上部構造物とを鉛直方向に常時離間させつつ前記変位抑制弾性体と前記上部構造物が相対的に水平方向に移動する際の水平変位量を規制する上部変位規制部と、
    を備え、
    前記変位抑制弾性体は、前記下部構造物に対する前記上部構造物の水平変位が、前記上部変位規制部における水平変位量と前記下部変位規制部における水平変位量との合計変位量を超えた際に、前記上部変位規制部及び前記下部変位規制部により水平方向への移動が規制されて、剪断変形し、
    前記下部変位規制部は、前記下部構造物から前記変位抑制弾性体側に突設され、且つ、前記変位抑制弾性体と対向配置される下部ロック部材及び下剪断キーのうちの一方を有し、
    前記変位抑制弾性体は、水平方向に剪断変形可能な弾性本体部の下部で前記下部構造物と対向する対向面から突出する前記下部ロック部材及び前記下剪断キーのうちの他方を有し、
    前記下部ロック部材は、前記下剪断キーを有する前記下部構造物又は前記変位抑制弾性体に摺動する対向面を有しており、
    前記下部ロック部材と前記下剪断キーとは、水平方向に間隔をあけて配置され、
    前記下剪断キーは、前記下部ロック部材を有する前記下部構造物又は前記変位抑制弾性体に対して、鉛直方向に間隔をあけて配置され、
    前記下部構造物に対する前記上部構造物の水平変位が、前記合計変位量以上生じた際に、水平方向で対向する前記下部ロック部材の側面と前記下剪断キーの側面が当接して、前記弾性本体部の剪断変形を可能にする、
    変位抑制免震装置。
  2. 前記上部変位規制部は、前記上部構造物から前記変位抑制弾性体側に突設され、且つ、前記変位抑制弾性体と対向配置される上部ロック部材及び上剪断キーのうちの一方を有し、
    前記変位抑制弾性体は、水平方向に剪断変形可能な弾性本体部の上部で前記上部構造物と対向する対向面から突出する前記上部ロック部材及び前記上剪断キーのうちの他方を有し、
    前記上剪断キーは、前記上部ロック部材を有する前記上部構造物又は前記変位抑制弾性体に対して、鉛直方向に常時離間して対向する対向面を有し、
    前記上部ロック部材と前記上剪断キーとは、水平方向に間隔をあけて配置され、且つ、前記下部構造物に対する前記上部構造物の水平変位が、前記上部変位規制部における水平変位量以上生じた際に、水平方向対向する前記ロック部材の側面と前記上剪断キーの側面が当接して、前記弾性本体部の剪断変形を可能にする、
    請求項1記載の変位抑制免震装置。
  3. 前記弾性本体部は、複数の弾性板と硬質板とを交互に積層した構造からなる積層弾性体を有する、
    請求項1または請求項2記載の変位抑制免震装置。
  4. 前記積層弾性体は、一次形状係数をS、二次形状係数をS、弾性板の剪断弾性係数をG〔N/mm〕としたときに、下記(a)〜(c)の条件を満足するように構成されている、
    請求項記載の変位抑制免震装置。
    (a)0.20≦G≦1.20
    (b)10≦S≦60
    (c)4≦S≦10
  5. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の変位抑制免震装置と、
    上部構造物と下部構造物との間に、前記変位抑制免震装置とともに、前記変位抑制免震装置から離間して配置され、前記上部構造物を常時支持する免震部材と、
    を備える、
    免震システム。
  6. 前記変位抑制免震装置は、前記上部構造物の梁下位置に配置される、
    請求項記載の免震システム。
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