JP6482511B2 - マレイミド樹脂成型体、マレイミド樹脂成型体の製造方法、マレイミド樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents

マレイミド樹脂成型体、マレイミド樹脂成型体の製造方法、マレイミド樹脂組成物及びその硬化物 Download PDF

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Description

本発明は、マレイミド樹脂成型体、マレイミド樹脂成型体の製造方法、マレイミド樹脂組成物及びその硬化物に関する。詳しくは、高信頼性半導体封止材用途、電気・電子部品絶縁材料用途、及び積層板(プリント配線ガラス繊維強化複合材料)やCFRP(炭素繊維強化複合材料)を始めとする各種複合材料用途、各種接着剤用途、各種塗料用途、構造用部材等に有用な作業性、生産性に優れ、環境暴露の少ないマレイミド樹脂成型体、マレイミド樹脂組成物及びその硬化物に関する。
マレイミド樹脂は、エポキシ樹脂を超える耐熱性を有するとともに、エポキシ樹脂と同等の成型性を有し、更に低線膨張係数、高Tgという性質も有する化合物である。ポリマレイミド化合物は単独で架橋させるか、または各種のマレイミド化合物もしくは架橋剤と反応させることにより、耐熱性、難燃性に優れた材料を与えることができ、封止材料、基盤材料、絶縁材料各種用途に使用されてきた。特に極めて高い耐熱性および成型性を両立することが必要な、高耐熱基盤材料、フレキシブル基板材料、高耐熱低誘電材料、高耐熱CFRP用材料(炭素繊維複合材料)、車載向けSiCパワーデバイス用高耐熱封止材料用途に使用される。
従来、マレイミド樹脂は、自己反応性を有するため、その取り出しにおいては再結晶など結晶粉体での取り出し、あるいは再沈殿による樹脂粉末状として市販されているものが多く(特許文献1を参照)、使用の際には粉が舞うなどにより作業性・生産性だけでなく、環境への汚染(汚れ、および人体への吸入)などの問題があった。さらには結晶化、沈殿の際に溶剤等の取り込みがあり、除去しきれないという課題があり、製造時に使用する酢酸類が取り込まれ、できた製品に酢酸の臭気が残り、作業者の安全性に関わる課題となる。このような背景から、作業性、生産性、環境安全性に優れるマレイミド成型体が望まれている。例えば、特許文献2は、エバポレータを使用したマレイミド樹脂溶液の溶融取り出し方法を開示している。
特公平6−086425号公報 特開2009−001783号公報
特許文献2では、少量スケールでは大きな変化はないものの、合成量を多くした場合、溶媒留去には長時間を要するため、その間に自己重合が進行する恐れがある。したがって、実生産での製造においては、重合やゲル化のリスクが極めて大きく、分子量増加による粘度の上昇および生産する度に特性が異なる等の、成型性・安定生産性の観点から課題がある。また、この重合を抑えるために溶剤回収温度を下げると、特に50℃以上の軟化点を有するマレイミド樹脂の場合、溶剤の除去が困難となり、溶剤の残留が多くなる(特に30000ppmを超える溶剤の残留)ため、成型時のボイドやクラックの生成のおそれ、および作業者への暴露など安全性にも問題がある。さらに、これらマレイミド樹脂の合成においては酢酸やトルエン、キシレンといった人体への影響のある物質を使用する場合があるため、溶剤の残留は特に問題となる。
そこで、本発明は、作業性・生産性に優れ、環境暴露の少ないマレイミド樹脂成型体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、従来の結晶状や粉末状ではなく、マーブル状もしくはそのフレーク状の成型体として取り出すことで作業性、生産性等に優れ、環境暴露の少なくなることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]マレイミド樹脂と有機溶剤を含有し、マーブル状またはそのフレーク状のマレイミド樹脂成型体、
[2]残溶剤が30000ppm以下である前項[1]に記載のマレイミド樹脂成型体、
[3]前記有機溶剤が炭素数3〜10の芳香族炭化水素、ケトン類、エステル類、エーテル類から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤である前項[1]又は[2]に記載のマレイミド樹脂成型体、
[4]平均高さが10μm〜3mm、平均直径が1mm〜5mmである前項[1]〜[3]のいずれか一項に記載のマレイミド樹脂成型体、
[5]平均官能基数が2〜20であり、繰り返し単位を有するノボラック型マレイミド樹脂である前項[1]〜[4]のいずれか一項に記載のマレイミド樹脂成型体、
[6]前記マレイミド樹脂の軟化点が50〜150℃である前項[1]〜[5]のいずれか一項に記載のマレイミド樹脂成型体、
[7]炭素数3〜10の芳香族炭化水素、ケトン類、エステル類、エーテル類から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤に溶解したマレイミド樹脂溶液を表面支持体上に塗布し、乾燥した後、支持体から剥離することにより得られるマレイミド樹脂成型体の製造方法、
[8]乾燥温度が80〜200℃である前項[7]に記載のマレイミド樹脂成型体の製造方法、
[9]表面支持体上に塗布する際のWET膜厚を10μm〜5mmとする前項[7]又は[8]に記載のマレイミド樹脂成型体の製造方法、
[10]前項[7]〜[9]に記載の製造方法により得られたマレイミド樹脂成型体、
[11]前項[1]〜[6]並びに前項[10]のいずれか一項に記載のマレイミド樹脂成型体と、該マレイミド樹脂と架橋反応可能な化合物及び/又は硬化促進剤を含むマレイミド樹脂組成物、
[12]前項[11]のマレイミド樹脂組成物の硬化物、
に関する。
本発明のマレイミド樹脂成型体は、残溶剤量を抑えることができ、マーブル状もしくはそのフレーク状で成型されているため、作業性・生産性に優れ、環境暴露の少ないマレイミド樹脂成型体を提供することができる。さらに、残溶剤の量を抑えることができるため、成型時のボイドやクラックの生成を防ぐことができる。
図1は、合成例2より得られた重合反応終了時のマレイミド樹脂溶液(V1)の分子量分布を表す図である。 図2は、比較例1より得られた大量合成時溶媒留去後のマレイミド樹脂(B1)の分子量分布を表す図である。 図3は、実施例1より得られたマレイミド樹脂成型体(M1)の分子量分布を表す図である。 図4は、比較例4のマレイミド樹脂(C1)の酢酸の定量を表す図である。 図5は、左側がフィルム状のマレイミド樹脂成型体を表し、右側はマーブル状のマレイミド樹脂成型体を表す図である。 図6は、マーブル状の成型体を表す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のマレイミド樹脂成型体は、マレイミド樹脂と有機溶剤を含有し、マーブル状またはフレーク状で成型されていることを特徴とする。
従来一般的に結晶状もしくは粉末状で供給されていたマレイミド樹脂と比較して、マーブル状もしくはそのフレーク状の成型体で供給することが可能であるため作業性の面において粉塵等の問題が起こらずきわめて取り扱いが容易である。すなわち本発明のマレイミド樹脂成型体は容易にマレイミド樹脂組成物を調製することができる。
樹脂成型体とは、樹脂溶液を表面支持体上に塗布し、成型した後、過熱条件下で、溶剤を除去し、支持体から剥離したものをいい、例えば、マーブル状、フィルム状、シート状、繊維状、板状、棒状等が挙げられる。
ここで、マーブル状とは、平均高さが10μm〜3mm、平均直径が1mm〜5mmの比較的粒径が均一なビーズ状の形状をいう(図5及び図6を参照)。フレーク状とはマーブル状の成型体を粉砕した状態をいう。
次に、説明の便宜上、本発明のマレイミド樹脂成型体の製造方法について説明する。
本発明のマレイミド樹脂成型体は、有機溶剤に溶解したマレイミド樹脂溶液を表面支持体上に塗布し、マーブル状とした後、加熱条件下、(必要に応じて減圧条件下)溶剤を除去し、支持体からマーブル状の成型体を剥離することによりマレイミド樹脂成型体を得ることができる。すわなち、本発明のマレイミド樹脂成型体の製造方法は、樹脂溶液を表面支持体上に塗布する工程と、加熱乾燥する工程と、支持体から剥離する工程により行われる。
(マレイミド樹脂)
本発明において用いることができるマレイミド樹脂としては公知のものを用いることができるが、粘度および軟化点の観点から、平均官能基数が2を超えて10以下である繰り返し単位を有するノボラック型のマレイミド樹脂が好ましい。
本発明において用いることができるマレイミド樹脂としては、例えば、下記式(1)で表される構造を有する。
(式中、複数存在するRはそれぞれ独立して存在し、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基もしくはフェニル基を表す。Xは下記構造式(a)〜(e)で表される。nは平均値であり1<n≦5を表す。)。
または、マレイミド樹脂の混合物も挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
前記式(1)で表されるマレイミド樹脂の製法は、特に限定されず、マレイミド化合物の合成法として公知のいかなる方法で製造してもよい。具体的な製造方法としては例えば、特開2009−001783号公報のような方法を用いることが好ましい。
(マレイミド樹脂溶液)
本発明におけるマレイミド樹脂溶液とは、前記マレイミド樹脂が有機溶媒に溶解したものを意味する。
マレイミド樹脂溶液は、マレイミド樹脂が有機溶媒に溶解したものであれば特に限定されず、公知の溶液重合法や種々の制御重合法により合成された重合体溶液の他に、重合中に固体状重合体が一部析出したものであってもよいし、重合が終了した溶液に沈殿剤を添加して重合体を沈殿させたものであってもよい。
用いることができる有機溶媒としては、特に限定されず、例えば、炭素数3〜10の芳香族炭化水素、ケトン類、エステル類、エーテル類から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤が好ましく、また、重合後の反応液を処理することによって得られたものを用いることが好ましい。
有機溶剤の使用量は、マレイミド樹脂と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%であり、好ましくは15〜70重量%である。
マレイミド樹脂溶液の粘度(コーンプレート法、150℃溶融粘度):5mPa・s〜10000Pa・sが好ましく、10mPa・s〜100Pa・sがより好ましく、10mPa・s〜10Pa・sが特に好ましい。コーンプレート法での150℃溶融粘度が10000Pa・sを超えると残溶剤量の低減効果が十分に得られないおそれがある。
(表面支持体に塗布する工程)
次に、得られたマレイミド樹脂溶液を、離形処理を施した表面支持体に塗布し、フィルム状もしくはシート状に成型する。
マレイミド樹脂溶液を塗布する離形処理を施した表面支持体としては、表面が平滑であれば特に限定されないが、好ましくは離形処理を施したPETフィルム、金属、イミドフィルム等が挙げられる。表面支持体に離形処理を施すことで、加熱溶融したマレイミド樹脂が自身の表面張力により液滴となるため、マーブル状の成型体が形成される。
表面支持体に塗布する際の膜厚および面積が、表面支持体100cm当たりそれぞれ、膜厚10μm〜3mm、面積100cmとなるような行うことが好ましい。
塗布時のWET膜厚は10μm〜5mmが好ましく、10μm〜4.5mmがより好ましく、200μm〜4.3mmが特に好ましい。上記範囲を超えると残溶剤低減効果が十分に得られない恐れがあり、下回るとマレイミド樹脂成型体の生産性が下がる恐れがある。
(加熱乾燥する工程と表面支持体から剥離する工程)
次に、アプリケータを用いて離形処理を施した表面支持体に流涎塗布したマレイミド樹脂溶液を加熱乾燥条件下、(必要に応じて減圧条件下)溶剤を除去し、表面支持体からマーブル状の成型体を剥離し、取り出す。
乾燥温度は80〜250℃が好ましく、好ましくは80℃〜200℃、特に100℃〜200℃が好ましい。乾燥温度が250℃以上では樹脂の劣化が進行し易いため、必要とする加工特性に応じて設定される。また80℃未満では溶剤の除去が困難であり、溶剤の残量が多くなるため、成型時のボイドやクラックの生成、べた付きがあり、フィルムの形状を維持できず、引き剥がし粉砕することができない恐れがある。
マーブル状のマレイミド樹脂成型体の厚みは特に限定されないが、好ましくは10μm〜3mm、より好ましくは30μm〜1mmである。膜厚が3mmを超えると、残溶剤量の低減効果が十分に得られないため、必要とする加工特性に応じて設定される。
マーブル状のマレイミド樹脂成型体の直径は特に限定されないが、好ましくは1mm〜1cm、より好ましくは2mm〜1cmである。直径が2mmを下回ると、残溶剤量の低減効果が十分に得られないため、必要とする加工特性に応じて設定される。
上記工程により得られたマレイミド樹脂成型体は、残溶剤が30000ppm以下である。好ましくは20000ppm以下であり、より好ましくは10000ppm以下である。なお測定検出限界として下限値は5ppmである。
また、得られたマレイミド樹脂成型体は溶剤に可溶であることが好ましい。完全溶解するということはマレイミド樹脂が、高分子量化反応が進んでいないことを意味する。
このようにして得られるマレイミド樹脂成型体は従来の結晶状もしくは粉末状で供給されているマレイミド樹脂と比較して、作業性・生産性に優れる樹脂成型体となる。
次に、本発明のマレイミド樹脂組成物について説明する。
本発明のマレイミド樹脂組成物はマレイミド樹脂成型体と架橋反応可能な化合物を含むことができる。架橋可能な化合物はマレイミド樹脂成型体と架橋反応を起こし、マレイミド樹脂の硬化剤として作用する。架橋可能な化合物としては、アミノ基、シアネート基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、共役ジエン基を有する化合物等が挙げられる。例えば、耐熱性が必要なときはアミン化合物、誘電特性が必要なときはシアネートエステル化合物を配合することが好ましい。
本発明のマレイミド樹脂組成物には、必要に応じて硬化用の触媒(硬化促進剤)を配合することができる。例えば2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)7−ウンデセン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン等のアミン類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン類、オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛、ジブチルスズジマレエート、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オレイン酸スズ等の有機金属塩、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化スズなどの金属塩化物、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物、塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸、三フッ化ホウ素などのルイス酸、炭酸ナトリウムや塩化リチウム等の塩類などが挙げられる。硬化用の触媒の配合量は、前記マレイミド樹脂成型体100重量部に対して好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下の範囲である。
本発明のマレイミド樹脂組成物に有機溶剤を添加してワニス状の組成物(以下、単にワニスという)とすることができる。本発明のマレイミド樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、エポキシ樹脂組成物ワニスとし、炭素繊維、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明のマレイミド樹脂組成物の硬化物とすることができる。 この際の溶剤は、本発明のマレイミド樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有するマレイミド樹脂組成物の硬化物を得ることもできる。
また、本発明のマレイミド樹脂組成物をフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB−ステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明のマレイミド樹脂組成物を前記マレイミド樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
本発明のマレイミド樹脂組成物を加熱溶融し、低粘度化してガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維などの強化繊維に含浸させることによりプリプレグを得ることができる。
また、前記ワニスを、強化繊維に含浸させて加熱乾燥させることによりプリプレグを得ることもできる。
これらの強化繊維に本発明のマレイミド樹脂組成物を含浸させる方法にも特に制限はないが、溶剤を使用しない方法が好ましいため、本発明のマレイミド樹脂組成物を60〜110℃に加温し、流動性がある状態で含浸させるホットメルト法が好ましい。
得られるプリプレグ(強化繊維にマレイミド樹脂組成物を含浸させたもの)に占めるマレイミド樹脂組成物の割合は、強化繊維の形態にもよるが通常20重量%以上80重量%以下、好ましくは25重量%以上65重量%以下、より好ましくは30重量%以上50% 以下である。この範囲よりもマレイミド樹脂組成物の割合が多いと相対的に強化繊維の割合が減ることにより十分な補強効果が得られず、逆にマレイミド樹脂組成物が少ないと成型性が損なわれる。
このプリプレグは公知の手法により硬化させて最終成型品とすることができる。例えば、プリプレグを積層して、オートクレーブ中で2ないし10kgf/cmに加圧し、150℃から200℃で30分ないし3時間加熱硬化させて成型体とすることができるが、さらに耐熱性を向上させるため、ポストキュアとして180℃ないし280℃の温度範囲で温度をステップ的に加温しながら1時間ないし12時間処理することにより繊維強化複合材成型品とすることができる。
上記のプリプレグを所望の形に裁断、必要により銅箔などと積層後、積層物にプレス成形法やオートクレーブ成形法、シートワインディング成形法などで圧力をかけながら積層板用エポキシ樹脂組成物を加熱硬化させることにより積層板を得ることができる。
更に、表面に銅箔を重ねてできた積層板に回路を形成し、その上にプリプレグや銅箔等を重ねて上記の操作を繰り返して多層の回路基板を得ることができる。
本発明のプリプレグの硬化物は、液晶ガラス基板搬送ロボットハンド用途、シリコンウェハー搬送用ディスク用途、航空宇宙向け部材用途、自動車のエンジン部材用途など、軽量で高強度かつ高耐熱性が要求される部材に広く適用することができる。
本発明のマレイミド樹脂組成物の具体的な用途としては、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、電子材料用絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む、封止材の他、封止材、基板用のシアネート樹脂組成物)や、レジスト用硬化剤としてアクリル酸エステル系樹脂等、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。特にFRP用途においては環境への配慮、およびボイドによる欠陥の排除の問題から近年無溶剤化が大きく進んでいる。さらには半導体封止の用途においても同様に溶剤が工程中に入ることができない環境がある。
一方、従来マレイミドは結晶状を呈しており、溶解性が悪く取り扱いが困難である。本発明の成型体はこういった課題を解決できる材料である。
以下に実施例に基づいて本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。尚、本文中「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。実施例中、軟化点及び溶融粘度は下記の方法で測定した。
・軟化点:JISK−7234に準じた方法で測定
・溶融粘度:コーンプレート法での150℃における粘度
・残溶剤量の定量は島津製作所社製ガスクロマトグラフGC−2010を用いて行い、カラムとしてはDB−WAX(Agilene Technologies社製)長さ30m、内径0.25mmを用いた。
昇温プログラムとしては、70℃で5分保持し、10℃/minの昇温速度で140℃まで昇温後、20℃/minの昇温速度で220℃まで昇温し、220℃で5分保持するプログラムを用いた。
・分子量のデータ取得には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC 島津製作所社製LC−20AD)を用いた。カラムにはKF−603,KF−602.5,KF−602,KF−601を使用し、カラム温度40℃、移動相をTHFとし、流速 0.5ml/minの条件にて、RI検出器により測定を行った。
(合成例1)
温度計、冷却管、ディーンスターク共沸蒸留トラップ、撹拌機を取り付けたフラスコにアニリン559部とトルエン500部を仕込み、室温で35%塩酸167部を1時間で滴下した。滴下終了後加熱して共沸してくる水とトルエンを冷却・分液した後、有機層であるトルエンだけを系内に戻して脱水を行った。次いで4,4’−ビス(クロロメチル)ビフェニル251部を60〜70℃に保ちながら1時間かけて添加し、更に同温度で2時間反応を行った。反応終了後、昇温をしながらトルエンを留去して系内を190〜200℃とし、この温度で15時間反応をした。その後冷却しながら30%水酸化ナトリウム水溶液500部を系内が激しく還流しないようにゆっくりと滴下し、80℃以下で留去したトルエンを系内に戻し、70℃〜80℃で静置した。分離した下層の水層を除去し、反応液の水洗を洗浄液が中性になるまで繰り返した。次いで油層から加熱減圧下において過剰のアニリンとトルエンを留去することにより芳香族アミン樹脂335部(A1)を得た。芳香族アミン樹脂(A1)の軟化点は59℃、溶融粘度は0.05Pa・sであった。
(合成例2)
温度計、冷却管、ディーンスターク共沸蒸留トラップ、撹拌機を取り付けたフラスコに無水マレイン酸88部とトルエン300部を仕込み、加熱して共沸してくる水とトルエンを冷却・分液した後、有機層であるトルエンだけを系内に戻して脱水を行った。次に、芳香族アミン樹脂(A1)116部をN−メチル−2−ピロリドン116部に溶解した樹脂溶液を、系内を80〜85℃に保ちながら1時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で2時間反応を行い、p−トルエンスルホン酸2 部を加えて、還流条件で共沸してくる縮合水とトルエンを冷却・分液した後、有機層であるトルエンだけを系内に戻して脱水を行いながら10時間反応を行った。反応終了後、トルエンを120部追加し、水洗を繰り返してp−トルエンスルホン酸及び過剰の無水マレイン酸を除去し、加熱して共沸により水を系内から除いた。次いで反応溶液を濃縮して、マレイミド樹脂を70%含有するマレイミド樹脂溶液(V1)を得た。
(実施例1)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を120℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ0.799mm、直径4.9mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド成型体(M1)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M1)の残溶剤は2.98%(29800ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
(実施例2)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を140℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は厚さ1.045mm、直径4.1mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M2)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M2)の残溶剤は1.68%(16800ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
(実施例3)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を150℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ1.165mm、直径3.9mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M3)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M3)の残溶剤は0.843%(8430ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
(実施例4)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を160℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ1.178mm、直径3.8mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M4)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M4)の残溶剤は0.996%(9960ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
(実施例5)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚30μm)し、塗布された樹脂膜を120℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ0.227mm、直径2.1mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M5)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M5)の残溶剤は0.899%(8990ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
(実施例6)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚50μm)し、塗布された樹脂膜を120℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ0.240mm、直径2.0mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M6)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M6)の残溶剤は0.768%(7680ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
(実施例7)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚100μm)し、塗布された樹脂膜を120℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ0.277mm、直径2.6mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M7)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M7)の残溶剤は1.187%(11870ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
(実施例8)(表面支持体:離形PETフィルム)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚150μm)し、塗布された樹脂膜を120℃で1時間乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体は高さ0.577mm、直径4.1mmのマーブル状であり、引き剥がし、粉砕することでフレーク状の形状のマレイミド樹脂成型体(M8)とした。
得られたマレイミド樹脂成型体(M8)の残溶剤は2.182%(21820ppm)であった。
なお、本工程による分子量分布の変化は見られなかった(GPCによる測定)
(比較例1)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)300mLを、ロータリーエバポレータを用い、加熱減圧下160℃で溶剤を留去し、マレイミド樹脂(B1)を樹脂ブロック状で得た。重合反応終了後のマレイミド樹脂溶液(V1)と大量合成時溶媒留去後のマレイミド樹脂(B1)のGPCを測定したところ高分子量化していることを確認した。その結果を図1及び図2に示す。得られたマレイミド樹脂の残溶剤は0.1%(1000ppm)以下であった。
(比較例2)
合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)1.0Lを、ロータリーエバポレータを用い、加熱減圧下180℃で溶剤を留去したところゲル化していることが確認できた。得られたマレイミド樹脂(B2)は流動性がなくなった。
<マレイミド樹脂成型体の製造方法における乾燥温度の比較>
(比較例3)
実施例1と同様に、合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて市販のイミドフィルム(東レデュポン製「カプトン(登録商標)100H」)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を50℃の熱風にて1時間、加熱・乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体はべた付きがあり、フィルムの形状を維持できず、引き剥がし粉砕することができなかった。
実施例12
実施例1と同様に、合成例2により得られたマレイミド樹脂溶液(V1)を、アプリケータを用いて市販のイミドフィルム(東レデュポン製「カプトン(登録商標)100H」)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を250℃の熱風にて1時間、加熱・乾燥させることにより溶媒を除去した。
得られたマレイミド樹脂成型体はマーブルの形状かつ、引きはがしてフレーク化できたものの、高分子量化が進行し、アセトン等の各種溶剤に不溶となった。
<臭気の比較>
(実施例9、比較例5)
実施例1で得られたマレイミド樹脂成型体(M1)および比較用に4,4’−ビスマレイミドジフェニルメタン(TCI社製 以下C1とする)を用意し、臭気の比較を行った。
なお、酢酸の定量は島津製作所社製ガスクロマトグラフGC−2010Plusを用いて行い、カラムとしてはDB−WAX(Agilene Technologies社製)長さ30m、内径0.25mmを用いた。昇温プログラムとしては、60℃で7分保持し、20℃/minの昇温速度で220℃まで昇温し、220℃で5分保持するプログラムを用いた。
その結果、比較例5では酢酸の臭気がすることを確認し、実施例9では臭気は感じられなかった。
また、ガスクロマトグラフィーを測定したところ、比較例5では酢酸が検出された(図4を参照。 保持時間11.298分)。また、酸価を測定したところ、酸価10mgKOH/gとなり、酢酸1%相当に該当することを確認した。
<形状および溶剤溶解性の比較>
(実施例10、比較例6、7)
実施例4で得られたマレイミド樹脂成型体(M4)および比較用にマレイミド樹脂(C1)、比較例2に記載のマレイミド樹脂(B2)を用いてアセトンへの溶解試験を行った。
樹脂濃度50%にそろえて検討をしたところマレイミド樹脂成型体M1、M5〜M7は完全溶解したことを確認できたが、マレイミド樹脂(C1)とマレイミド樹脂(B2)は完全溶解ができないことを確認した。
以上より、実施例10では完全溶解したことからマレイミド樹脂成型体(M1、M5〜M7)は高分子量化反応が進んでいないことがわかる。一方、比較例6と7では完全溶解できなかったことからマレイミド樹脂成型体(C1、B2)は高分子量化反応が進んでいることがわかる。
<マレイミド樹脂組成物の調整、硬化物特性の比較>
(実施例11)
実施例1により得られたマレイミド樹脂成型体(M1)を10部、硬化促進剤として2−エチルー4−メチルイミダゾール(2E4MZ 四国化成株式会社製)を0.21部重量部配合し撹拌により均一に混合・混練し、本発明のマレイミド樹脂組成物を得た。このマレイミド樹脂組成物を、アプリケータを用いて市販の離形PETフィルム(リンテック社製 PTN756502)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、塗布された樹脂膜を硬化条件160℃×2h+180℃×6hで溶媒を取り除きながら硬化させることにより硬化物を得た。得られた硬化物の物性を評価した結果を表1に示す。
(比較例8)
EPPN−502H(日本化薬製 エポキシ当量169g/eq.軟化点67.5℃EP1)を61部、フェノールノボラック(P−2 明和化成製 H−1、水酸基当量106g/eq.)38重量部、トリフェニルホスフィン(TPP純正化学 試薬)1重量部を配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をタブレット化後、トランスファー成形で樹脂成形体を調製し、硬化条件160℃×2h+180℃×6hで硬化物を得た。得られた硬化物の下記の物性を評価した。結果を表1に示す。
(比較例9)
EOCN−1020-55(日本化薬製エポキシ当量194g/eq.軟化点54.8℃ EP2)を65部、フェノールノボラック(P−2 明和化成製 H−1、水酸基当量106g/eq.)34重量部、TPP(純正化学 試薬)1重量部を配合しミキシングロールで混ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物をタブレット化後、トランスファー成形で樹脂成形体を調製し、硬化条件160℃×2h+180℃×6hで硬化物を得た。得られた硬化物の下記の物性を評価した。結果を表1に示す。
得られた硬化物について下記の測定を実施した。
・DMA
測定項目:30℃、200℃、250℃の貯蔵弾性率、
:ガラス転移温度(tanδ最大時の温度)
測定方法:動的粘弾性測定器TA−instruments製、Q−800
測定温度範囲:30℃〜350℃
温速度:2℃/min
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚みは約800μm)。
(表1)
表1から、本発明のマレイミド樹脂組成物の硬化物は、エポキシ樹脂と同様の硬化条件で成形可能であり、また、得られた硬化物は高耐熱エポキシ樹脂を用いた場合と比較して、高温での弾性率変化が少ないことがわかる。
本発明のマレイミド樹脂成型体は容易にマレイミド樹脂組成物を調製することができ、高耐熱基盤材料、フレキシブル基板材料、高耐熱低誘電材料、高耐熱CFRP用材料(炭素繊維複合材料)、車載向けSiCパワーデバイス用高耐熱封止材料用途等の広範囲の用途に極めて有用である。

Claims (6)

  1. 平均官能基数が2〜20であり、繰り返し単位を有するノボラック型マレイミド樹脂と30000ppm以下の有機溶剤を含有し、マーブル状であるマレイミド樹脂成型体。
  2. 前記残溶剤が炭素数3〜10の芳香族炭化水素、ケトン類、エステル類、エーテル類から選ばれる少なくとも一種の有機溶剤である請求項1に記載のマレイミド樹脂成型体。
  3. 厚み10μm〜3mm、平均直径が1mm〜5mmである請求項1又は請求項2に記載のマレイミド樹脂成型体。
  4. 前記マレイミド樹脂の軟化点が50〜150℃である請求項1〜請求項のいずれか一項に記載のマレイミド樹脂成型体。
  5. 請求項1〜請求項のいずれか一項に記載のマレイミド樹脂成型体と、該マレイミド樹脂と架橋反応可能な化合物を含むマレイミド樹脂組成物。
  6. 請求項に記載のマレイミド樹脂組成物の硬化物。
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