JP2010235826A - 多価ヒドロキシ樹脂、それらの製造方法並びにエポキシ樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた難燃性を有し、高耐熱性、耐湿性及び異種材料との高密着性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂の硬化剤、改質剤及びその中間体となるアミノ基又はイミド基含有多価ヒドロキシ樹脂を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表わされるアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂であり、この樹脂はアニリン類とフェノール類の合計100モルに対し、4,4−ビスクロロメチルビフェニル等の架橋剤10〜90モルとを反応させることにより得られ、イミド基含有多価ヒドロキシ樹脂は、このアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂とジカルボン酸無水物と反応させてイミド化して得られる。
H−L−(X−L)n−H (1)
ここで、Lはアニリン類及びフェノール類から生じる2価の基であり、両者の存在割合(モル比)が1:9〜9:1であり、Xは上記架橋剤から生じる2価の基であり、nは1〜10の数を示す。
【選択図】なし
【解決手段】下記一般式(1)で表わされるアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂であり、この樹脂はアニリン類とフェノール類の合計100モルに対し、4,4−ビスクロロメチルビフェニル等の架橋剤10〜90モルとを反応させることにより得られ、イミド基含有多価ヒドロキシ樹脂は、このアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂とジカルボン酸無水物と反応させてイミド化して得られる。
H−L−(X−L)n−H (1)
ここで、Lはアニリン類及びフェノール類から生じる2価の基であり、両者の存在割合(モル比)が1:9〜9:1であり、Xは上記架橋剤から生じる2価の基であり、nは1〜10の数を示す。
【選択図】なし
Description
本発明は、エポキシ樹脂の硬化剤、改質剤等として有用な多価ヒドロキシ樹脂、これら用いたエポキシ樹脂組成物並びにその硬化物に関するものであり、プリント配線板、半導体封止等の電気電子分野の絶縁材料等に好適に使用される。
エポキシ樹脂は工業的に幅広い用途で使用されてきているが、その要求性能は近年ますます高度化している。例えば、エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物の代表的分野に半導体封止材料があるが、半導体素子の集積度の向上に伴い、パッケージサイズは大面積化、薄型化に向かうとともに、実装方式も表面実装化への移行が進展しており、半田耐熱性に優れた材料の開発が望まれている。従って、封止材料としては、低吸湿化に加え、リードフレーム、チップ等の異種材料界面での接着性・密着性の向上が強く求められている。回路基板材料においても同様に、半田耐熱性向上の観点から低吸湿性、高耐熱性、高密着性の向上に加え、誘電損失低減の観点から低誘電性に優れた材料の開発が望まれている。これらの要求に対応するため、様々な新規構造のエポキシ樹脂及び硬化剤が検討されている。更に最近では、環境負荷低減の観点から、ハロゲン系難燃剤排除の動きがあり、より難燃性に優れたエポキシ樹脂及び硬化剤が求められている。
従って、上記背景から種々のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤が検討されている。エポキシ樹脂硬化剤の一例として、ナフタレン系樹脂が知られており、特許文献1にはナフトールアラルキル樹脂を半導体封止材へ応用することが示されている。但し、ナフトールアラルキル樹脂は、低吸湿性、低熱膨張性等に優れるものの、硬化性に劣る欠点があった。また、特許文献2にはビフェニル構造を有する硬化剤が提案され、難燃性向上に有効であることが記載されているが、硬化性に劣る欠点があった。更に、ナフタレン系樹脂、ビフェニル系樹脂ともに、炭化水素のみで構成される主骨格を有することから、難燃性の発現に十分ではなかった。また、特許文献3には芳香族オレフィンと共重合したインドール系オリゴマーが記載されている。
一方、エポキシ樹脂についても、これらの要求を満足するものは未だ知られていない。例えば、周知のビスフェノール型エポキシ樹脂は、常温で液状であり、作業性に優れていることや、硬化剤、添加剤等との混合が容易であることから広く使用されているが、耐熱性、耐湿性の点で問題がある。また、耐熱性を改良したものとして、ノボラック型エポキシ樹脂が知られているが、耐湿性、接着性等に問題がある。更には、主骨格が炭化水素のみで構成される従来のエポキシ樹脂では、難燃性を全くもたない。
ハロゲン系難燃剤を用いることなく難燃性を向上させるための方策として、リン酸エステル系の難燃剤を添加する方法が開示されている。しかし、リン酸エステル系の難燃剤を用いる方法では、耐湿性が十分ではない。また、高温、多湿な環境下ではリン酸エステルが加水分解を起こし、絶縁材料としての信頼性を低下させる問題があった。
リン原子やハロゲン原子を含むことなく、難燃性を向上させるものとして、特許文献2、5、6ではビフェニル構造を有するアラルキル型エポキシ樹脂を半導体封止材へ応用した例が開示されている。特許文献4には、ナフタレン構造を有するアラルキル型エポキシ樹脂を使用する例が開示されている。しかしながら、これらのエポキシ樹脂は難燃性や、耐湿性、耐熱性のいずれかにおいて性能が十分でない。なお、特許文献7、8及び9にはアミノ基含有フェノール樹脂、イミド基含有フェノール樹脂及びこれを含有する半導体封止材料が開示されているが、難燃性に着目したものはない。
本発明の目的は、エポキシ樹脂組成物の硬化剤、改質剤等に有用な多価ヒドロキシ樹脂を提供すること、優れた成形性を有するとともに、難燃性、低吸湿性、及び密着性等に優れた硬化物を与える電気・電子部品類の封止、回路基板材料等に有用なエポキシ樹脂組成物を提供すること、及びその硬化物を提供することにある。
本発明は、下記一般式(1)で表され、軟化点40℃〜140℃、アミン当量150〜2000g/eq.であるアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂である。
H−L−(X−L)n−H (1)
H−L−(X−L)n−H (1)
ここで、Lは下記式(2)及び式(3)で表される基のいずれかであり、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくは水酸基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、式(2)と式(3)で表される基の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、Xは下記式(4)で表される架橋基であり、nは1〜10の数を示す。
また、本発明は、下記式(5)で表される芳香族アミン類と下記式(6)で表されるフェノール類のモル比が1:9〜9:1の範囲であり、両者の合計100モルに対し、下記式(7)で表される架橋剤10〜90モルとを反応させることを特徴とするアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂の製造方法である。
ここで、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜6のアルキル基若しくは水酸基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、YはOH、アルコキシ基又はハロゲンを示す。
また、本発明は、下記一般式(8)で表され、イミド基/水酸基のモル比が、1:9〜9:1の範囲にあるイミド基含有多価ヒドロキシ樹脂である。
H−L’−(X−L’)n−H (8)
H−L’−(X−L’)n−H (8)
ここで、L’は下記式(9)及び式(3)で表される基のいずれかであり、R2は水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくは水酸基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、式(9)と式(3)で表される基の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、Zは炭素数2〜24の不飽和脂肪族基、不飽和単環式脂肪族基、不飽和縮合多環式脂肪族基、環式脂肪族基が直接または架橋員により相互に連結された不飽和非縮合多環式脂肪族基、置換基として鎖状脂肪族基を有してもよい単環式芳香族基、置換基として鎖状脂肪族基を有してもよい縮合多環式芳香族基、置換基として不飽和単環式脂肪族基、及び置換基として不飽和単環式脂肪族基を有してもよい単環式芳香族基または縮合多環式芳香族基からなる群より選ばれる2価の基を示す。Xは下記式(4)で表される架橋基であり、nは1〜10の数を示す。
更に、本発明は上記のアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂にジカルボン酸無水物を反応させ、脱水閉環してイミド化することを特徴とする上記のイミド基含有多価ヒドロキシ樹脂の製造方法である。
また、本発明は、エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、硬化剤の一部又は全部として、上記のアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂又はイミド基含有多価ヒドロキシ樹脂を、エポキシ樹脂100重量部に対して2から200重量部配合してなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物、及びこのエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物である。
本発明のアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂又はイミド基含有多価ヒドロキシ樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤、改質剤及びエポキシ樹脂中間体として有用であり、エポキシ樹脂組成物に応用した場合、優れた難燃性を有するとともに、高耐熱性、耐湿性及び異種材料との高密着性に優れた硬化物を与え、電気・電子部品類の封止、回路基板材料等の用途に好適に使用することが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂(以下、AHRともいう)は一般式(1)で表される。また、本発明のイミド基含有多価ヒドロキシ樹脂(以下、IHRともいう)は一般式(8)で表される。IHRは、AHRをイミド化することにより得ることができるので、AHRはIHRの中間体でもある。
本発明のアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂(以下、AHRともいう)は一般式(1)で表される。また、本発明のイミド基含有多価ヒドロキシ樹脂(以下、IHRともいう)は一般式(8)で表される。IHRは、AHRをイミド化することにより得ることができるので、AHRはIHRの中間体でもある。
一般式(1)において、Lは式(2)及び式(3)で表される基から選ばれる基であり、その存在割合は1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2である。
式(2)において、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜7の炭化水素基を示す。好ましくは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基である。
式(3)において、Aは式(3)中に現れるOH以外の置換基を有してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基である。上記置換基としては、炭素数1〜8のアルキル基又は水酸基である。好ましくはAは置換基を有しないか、炭素数1〜3のアルキル基が置換したベンゼン環又はナフタレン環である。このAは、原料として使用するフェノール類から生じる基であるので、後記するフェノール類の説明からも理解することができる。そして、原料として使用するフェノール類は、ヒドロキシ基を1個有する単環フェノール類に限らず、多価フェノール類やナフトール類であってもよい。
また、Xは式(4)で表される基である。XはLを架橋する架橋基であり、この架橋基が、Lを構成する式(2)及び式(3)で表される基に対するXの置換位置は、特に限定するものではなく、芳香環の水素原子が架橋基で置換されて連結した構造をとり得る。
nは1〜10の数であるが、好ましくは平均(数平均)として、1.1〜5範囲にあることがよい。
式(1)中のn+1個のL及びn個のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、Lは樹脂中に上記存在割合で式(2)及び式(3)で表される基が存在する。しかし、樹脂は混合物であるため、平均として存在すればよい。
AHRは、軟化点が40℃〜140℃で、アミン当量150〜2000g/eq.である。アミン当量は式(2)及び式(3)で表される基の存在比、n数等によって調整可能である。軟化点も同様である。AHRの軟化点は、好ましくは50〜110℃、より好ましくは60〜100℃の範囲である。ここで、軟化点は、JISK−6911の環球法に基づき測定される軟化点を指す。40℃より低いと、これをエポキシ樹脂に配合したとき、硬化物の耐熱性が低下し、140℃より高いと成形時の流動性が低下する。また、好ましいアミン当量は200〜1000g/eq.である。
本発明のアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂は、多価ヒドロキシ構造に芳香族アミン類を導入し、また、これらを架橋するために、対称性の良い4,4’−ビフェニルアラルキル基を用いることを特徴とするものである。この結果、これらの多価ヒドロキシ樹脂は、メチレン架橋、キシリレン架橋によるものと比べて、軟化点が上昇しハンドリング性の向上が計れる。また、これらの多価フェノール化合物を用いた硬化物は、架橋基に対称性の良い4,4’−ビフェニルアラルキル基を持つため、剛直な構造に起因して耐熱性が向上し、また、疎水性に優れるビフェニル構造に起因して低吸湿化が達成される。また、窒素原子の導入による効果として、難燃性を向上させることが出来る。
本発明のAHRは、それ自体をフェノール樹脂組成物又はエポキシ樹脂組成物の一成分とすることができるが、場合により、AHRにハロゲン化アルキル化合物、ハロゲン化アルケニル化合物、エピハロヒドリン化合物等を反応させることにより、AHR中の−NH2及び−OHの水素原子の一部又は全部をアルキル基、アルケニル基、グリシジル基等に置換することができる。
本発明のAHRは、式(5)で表される芳香族アミン類及び式(6)で表されるフェノール類と、式(7)で表される架橋剤を反応させることにより合成することができる。この場合の架橋剤の使用量は、芳香族アミン類及びフェノール類の合計1モルに対して、0.1〜0.9モルの範囲であるが、好ましくは0.2〜0.8モルの範囲である。これより小さいと合成の際、未反応の芳香族アミン類及びフェノール類が多くなり、AHRの生産性が低下するとともに、合成されたAHRの軟化点が低くなり、エポキシ樹脂硬化剤として使用した場合の硬化物の耐熱性が低下する。また、これより大きいとAHRの軟化点が高くなり、場合により合成の際にAHRがゲル化することがある。なお、芳香族アミン類及びフェノール類の使用割合は前記割合となるように調整されるが、芳香族アミン類の方が架橋剤との反応性が高いので、フェノール類を理論量よりいくらか多めとすることがよい場合がある。
この反応は無触媒又は酸触媒の存在下に行うことができる。この酸触媒としては、周知の無機酸、有機酸より適宜選択することができる。例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸や、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸あるいはイオン交換樹脂、活性白土、シリカ-アルミナ、ゼオライト等の固体酸等が挙げられる。
また、この反応は通常、10〜250℃で1〜20時間行われる。更に、反応の際には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物等を溶媒として使用することができる。
原料として使用する芳香族アミン類としては、アニリン以外に、置換基として水酸基、アルコキシ基又は炭化水素基が置換したアニリンがある。この置換基は式(5)において、R1で表わされる。例えば、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ビニルエーテル基、イソプロポキシ基、アリルオキシ基、プロパルギルエーテル基、プトキシ基、フェノキシ基が挙げられる。また、炭化水素基としてはメチル基、エチル基、ビニル基、エチン基、イソプロピル基、アリル基、プロパルギル基、ブチル基、アミル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。これら種々の置換基を有する置換アニリン類を用いることができるが、好ましくは置換基を有しないアニリンである。
原料として使用するフェノール類としては、フェノールの他、クレゾール類、キシレノール類等のアルキルフェノール類、ヒドロキノン等の多価フェノール類、ナフトール類、ナフタレンジオール類等の多環フェノール類等の多官能性フェノール化合物が例示される。これらの原料類は、1種又は2種以上を混合して用いることができるが、AHR含有して得られる硬化物の物性面からは、AHR中の芳香族アミン類骨格の含有率が高いほどよいが特に制約はない。
架橋剤としては、式(7)で表される4,4’−ビスクロロメチルビフェニル、4,4’-ビスメトキシメチルビフェニル、4,4’-ビスヒドロキシメチルビフェニルが挙げられるが、反応性向上の点からは、4,4’−ビスクロロメチルビフェニルが好ましい。上記架橋剤は、ビフェニル骨格にクロロメチル基がそれぞれの環に1個づつ置換された構造を有しており、異性体としては、4,4’−ビス置換体以外に、2,4’−ビス置換体、2,2’−ビス置換体があるが、本発明で用いる原料としては、4,4’−ビス置換体であり、これは耐熱性の点で好ましく、90wt%以上含有しているものが好適に使用される。
反応終了後、場合により、得られたAHRには、未反応の芳香族アミン類及びフェノール類が残存する。残存した芳香族アミン類及びフェノール類は、通常、減圧蒸留、あるいは溶剤分割等の方法により系外に除去される。AHRに残存する未反応の芳香族アミン類及びフェノール類の量は少ない方が望ましく、通常は、5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。残存する芳香族アミン類及びフェノール類の量が多いと、成形物を作成する際に揮発し、成形作業性を低下させるとともに成形物のボイドの原因になることがある。また、成形物の難燃性も低下する。
本発明のAHRは、AHR以外の他の多価フェノール性化合物類と混合することでフェノール樹脂組成物とすることもできる。AHRの含有率は、他の多価フェノール性化合物類100重量部に対し、2〜200重量部、好ましくは5〜100重量部、更に好ましくは10〜80重量部の範囲である。これより少ないと低吸湿性、耐熱性、密着性、及び難燃性等の改質効果が小さく、これより多いと粘度が高くなり成形性が低下する。
ここで言う他の多価フェノール性化合物類とは、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有するもの全てを指し、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類、あるいは、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類がある。更には、フェノール類、ナフトール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-キシリレングリコール、p-キシリレングリコールジメチルエーテル、4,4’-ジメトキシメチルビフェニル、4,4’-ジメトキシメチルジフェニルエーテル、ジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル類、ジビニルナフタレン類等の架橋剤との反応により合成される多価フェノール性化合物等がある。以下、多価フェノール性化合物類を、フェノール樹脂で代表して述べることがある。
上記のフェノール樹脂組成物は、ヘキサメチルテトラミン等のフェノール樹脂成形材料に一般的に用いる硬化剤と併用することにより、フェノール樹脂硬化物とすることができる。
次に、一般式(8)で表される本発明のIHRについて述べる。
上記一般式(8)において、L’は式(9)又は式(3)で表される基から選ばれる基であり、その存在割合は1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2である。また、Xは式(4)で表される基であり、nは1〜10の数である。ここで、AHR又は一般式(1)の説明で使用されたと同一の記号又は式は、特に断りのない限りそれらと同様な意味を有する。
上記一般式(8)において、L’は式(9)又は式(3)で表される基から選ばれる基であり、その存在割合は1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2である。また、Xは式(4)で表される基であり、nは1〜10の数である。ここで、AHR又は一般式(1)の説明で使用されたと同一の記号又は式は、特に断りのない限りそれらと同様な意味を有する。
一般式(8)において、L’及びXが式(8)中に複数ある場合は、それらは同一であっても異なっていてもよいが、L’は樹脂中に上記存在割合で式(9)及び式(3)で表される基が存在する。しかし、樹脂は混合物であるため、平均として存在すればよい。
式(9)において、R2は式(2)のR2と同様な意味を有する。すなわち、R2は水素原子、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。ここで、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ビニルエーテル基、イソプロポキシ基、アリルオキシ基、プロパルギルエーテル基、プトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基が挙げられる。また、炭化水素基としてはメチル基、エチル基、ビニル基、エチン基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、プロパルギル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、sec−アミル基、tert−アミル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
式(9)において、Zは炭素数2〜24の不飽和脂肪族基、不飽和単環式脂肪族基、不飽和縮合多環式脂肪族基、環式脂肪族基が直接または架橋員により相互に連結された不飽和非縮合多環式脂肪族基、置換基として鎖状脂肪族基を有してもよい単環式芳香族基、置換基として鎖状脂肪族基を有してもよい縮合多環式芳香族基、置換基として不飽和単環式脂肪族基または置換基として不飽和単環式脂肪族基を有してもよい縮合多環式芳香族基から成る群より選ばれた2価の基を示す。このZは、原料として使用されるジカルボン酸無水物から生じる残基であるので、後記する酸無水物の説明からそれが理解される。
X及びnは一般式(1)のX及びnと同じ意味を有する。すなわち、Xは式(4)で表
される架橋基である。nは1〜10の数である。なお、樹脂は混合物であるが、その平均(数平均)のnも上記範囲にあることがよい。また、Aは一般式(1)の説明で現れる式(3)のAと同様な意味を有する。
される架橋基である。nは1〜10の数である。なお、樹脂は混合物であるが、その平均(数平均)のnも上記範囲にあることがよい。また、Aは一般式(1)の説明で現れる式(3)のAと同様な意味を有する。
次に、AHRにジカルボン酸無水物を反応させてイミド基含有フェノール樹脂を得る方法を説明する。ここで使用できるジカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水フタル酸、2,3−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4−ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボンキシフェニルフェニルエーテル無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルエーテル、2,3−ビフェニルジカルボン酸無水物、3,4−ビフェニルジカルボン酸無水物、2,3−ジカルボン酸フェニルフェニルスルホン無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルホン無水物、2,3−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、3,4−ジカルボキシフェニルフェニルスルフィド無水物、1,2−ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2−アントラセンジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、1,9−アントラセンジカルボン酸無水物、シクロブタン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロブタン−1,3−ジカルボン酸無水物、1,2−シクロペンタンジカルボン酸無水物、1−メチル−1,2−シクロペンタンジカルボン酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1−シクロヘキセン−1,3−ジカルボン酸無水物、3−シクロヘキセン−1,3−ジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,3−ジカルボン酸無水物、1,3−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物、2,4−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物、2,5−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物、2,6−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキセニルコハク酸無水物、5−ビシクロ[2,2,1]ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−ビシクロ[2,2,1]ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−ビシクロ[2,2,2]オクテン−2,3−ジカルボン酸無水物 5−ビシクロ[2,2,2]オクテン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。好適な化合物はマレイン酸、フタル酸又はナジック酸の無水物である。
この製造方法においては、まずAHRにカルボン酸無水物を反応させたのち、この付加物を加熱脱水閉環するか、酸性触媒の存在下、所定の溶媒中で加熱還流することにより脱水縮合させるものである。触媒を用いずに加熱脱水閉環する方法は、常圧もしくは減圧下において加熱脱水を行う。この時、反応温度は150〜200℃である。反応は通常無溶媒で行うが、反応に不活性な溶媒を使用してもよい。この方法では上記のカルボン酸無水物のいずれも使用できるが、特に不飽和脂肪族カルボン酸無水物を除くカルボン酸無水物が好適である。
酸性触媒を用いて脱水閉環させる場合では、酸性触媒として、硫酸、塩酸、リン酸等の鉱酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸等のヘテロポリ酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸等のハロゲン化カルボン酸、シリカアルミナ等の固体酸、カチオン型イオン交換樹脂等が使用できる。特に硫酸、リン酸、p−トルエンスルホン酸が好適である。またこれらの酸は、アミンとの塩の形となっていてもよい。これらの酸性触媒は、その種類によっても異なるが、一般にジカルボン酸無水物と前記アミノ基含有フェノール樹脂との合計量当り、0.1〜10重量%の量で使用することが望ましい。触媒量が、0.1重量%よりも少ない場合には所望の触媒効果が達成されず、また10重量%より多く用いたとしても一定以上の効果が得られず、経済的に不利となるばかりか、残存触媒の除去が困難になる。
縮合反応に際して用いる溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素およびそのハロゲン化物、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリル、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アニソール、n−ブチルエーテル等の含酸素ないしは含硫黄極性溶媒が使用される。溶媒量は、一般に前記アミノ基含有フェノール樹脂およびカルボン酸無水物との合計量の1〜20倍、特に2〜10倍の範囲にあることが好適である。
加熱還流下における反応温度は、用いる溶媒等によっても若干異なるが、一般に80〜190℃、特に100〜160℃の範囲が好適である。圧力は、加圧、常圧、減圧のいずれでもよく、用いる溶媒と反応温度とに応じて適宜選択される。反応時間は、一般に0.5〜20時間、特に1〜15時間の範囲である。尚、ジカルボン酸無水物とAHRの仕込量は、アミノ基含有フェノール樹脂成分に対して、ジカルボン酸無水物量を若干過剰とすることが好適である。一般には、モル基準で、AHR中の全アミノ基に対して、カルボン酸無水物が1.03〜1.50倍となるように仕込めばよい。縮合反応完了後、反応混合物を水洗して、残存触媒、未反応カルボン酸無水物を除去したのち、溶媒を留去して濃縮物を得る。このようにして得られるIHRは、イミド基/水酸基のモル比が3:97〜80:20、軟化点60〜140℃程度である。
上記製造方法で得られるIHRは、AHRのアミノ基部位が、ジカルボン酸無水物と反応してアミド酸がまず生成し、次いでこれが閉環してイミドとなって生じると考えられるが、ジカルボン酸無水物と反応してアミド酸が生成した後に、アミノ基部位の少なくとも一部、好ましくは全部がイミド基となっている樹脂である。イミド化後のアミン当量は5000g/eq.以上であることが好ましく、より好ましくは10000g/eq.以上である。なお、アミン当量が5000g/eq.以上であるようにイミド化することは難燃性、耐熱性向上の点で有利である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂及び硬化剤を含むものであるが、次の2種類がある。
1)硬化剤の一部又は全部として前記AHRを配合した組成物。
2)硬化剤の一部又は全部として前記IHRを配合した組成物。
1)硬化剤の一部又は全部として前記AHRを配合した組成物。
2)硬化剤の一部又は全部として前記IHRを配合した組成物。
上記1)及び2)の組成物の場合、AHR及びIHRの配合量は、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して2〜200重量部、好ましくは5〜80重量部の範囲である。これより少ないと難燃性、低吸湿性及び密着性向上の効果が小さく、これより多いと成形性及び硬化物の強度が低下する問題がある。
硬化剤の全量として本発明のAHR及びIHRを用いる場合、通常、それぞれの配合量は、-OH基とエポキシ樹脂中のエポキシ基の当量バランスを考慮して配合する。エポキシ樹脂及び硬化剤の当量比は、通常、0.2〜5.0の範囲であり、好ましくは0.5〜2.0の範囲である。これより大きくても小さくても、エポキシ樹脂組成物の硬化性が低下するとともに、硬化物の耐熱性、力学強度等が低下する。
硬化剤として本発明のAHR及びIHR以外の硬化剤を併用することができる。その他の硬化剤の配合量は、AHR及びIHRの配合量が、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して2〜200重量部、好ましくは5〜80重量部の範囲が保たれる範囲内で決定される。AHR及びIHRの配合量がこれより少ないと難燃性、低吸湿性及び密着性向上の効果が小さく、これより多いと成形性及び硬化物の強度が低下する問題がある。
AHR及びIHR以外の硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用でき、ジシアンジアミド、酸無水物類、多価フェノール類、芳香族及び脂肪族アミン類等がある。これらの中でも、半導体封止材等の高い電気絶縁性が要求される分野においては、多価フェノール類を硬化剤として用いることが好ましい。以下に、硬化剤の具体例を示す。
酸無水物硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル無水ハイミック酸、無水ドデシニルコハク酸、無水ナジック酸、無水トリメリット酸等がある。
多価フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類、あるいは、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類がある。更には、フェノール類、ナフトール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-キシリレングリコール等の縮合剤により合成される多価フェノール性化合物等がある。また、前記の本発明のフェノール樹脂組成物を配合することもできる。
アミン類としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類がある。
上記組成物には、これら硬化剤の1種又は2種以上を混合して用いることができる。
上記組成物に使用されるエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するもの中から選択される。例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、3,3',5,5'−テトラメチル−ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、2,2' −ビフェノール、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシビフェノール、レゾルシン、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類のエポキシ化物、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類のエポキシ化物、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、フェノール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるフェノールアラルキル樹脂類のエポキシ化物、フェノール類とビスクロロメチルビフェニル等から合成されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフトール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるナフトールアラルキル樹脂類のエポキシ化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。より好ましいエポキシ樹脂は3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ジヒドロキシビフェノール、3,3',5,5'−テトラメチル−ビスフェノールF等から得られる結晶性エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック等の多官能樹脂から得られるエポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂類、ビフェニルアラルキル樹脂類から得られるエポキシ樹脂等の常温で固体状エポキシ樹脂が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物中には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、石油樹脂、インデン樹脂、インデン・クマロン樹脂、フェノキシ樹脂等のオリゴマー又は高分子化合物を他の改質剤等として適宜配合してもよい。添加量は、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、2〜30重量部の範囲である。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機充填剤、顔料、難然剤、揺変性付与剤、カップリング剤、流動性向上剤等の添加剤を配合できる。無機充填剤としては、例えば、球状あるいは、破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、又はマイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ等が挙げられ、半導体封止材に用いる場合の好ましい配合量は70重量%以上であり、更に好ましくは80重量%以上である。
顔料としては、有機系又は、無機系の体質顔料、鱗片状顔料、等がある。揺変性付与剤としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系等を挙げることができる。
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて硬化促進剤を用いることができる。例を挙げれば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等があり、具体的には、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などがある。添加量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.2から5重量部の範囲である。
更に必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の滑剤等を使用できる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、有機溶剤の溶解させたワニス状態とした後に、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー等のポリエステル不織布、等の繊維状物に含浸させた後に溶剤除去を行い、プリプレグとすることができる。また、場合により銅箔、ステンレス箔、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等のシート状物上に塗布することにより積層物とすることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させれば、エポキシ樹脂硬化物とすることができ、この硬化物は低吸湿性、高耐熱性、密着性、難燃性等の点で優れたものとなる。この硬化物は、エポキシ樹脂組成物を注型、圧縮成形、トランスファー成形等の方法により、成形加工して得ることができる。この際の温度は通常、120〜220℃の範囲である。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
ここで、粘度はB型粘度計を用い、軟化点はJIS K−6911に従い環球法で測定した。また、GPC測定条件は、装置;HLC−82A(東ソー(株)製)、カラム;TSK−GEL2000×3本及びTSK−GEL4000×1本(いずれも東ソー(株)製)、溶媒;テトラヒドロフラン、流量;1 ml/min、温度;38℃、検出器;RIであり、検量線にはポリスチレン標準液を使用した。
ここで、粘度はB型粘度計を用い、軟化点はJIS K−6911に従い環球法で測定した。また、GPC測定条件は、装置;HLC−82A(東ソー(株)製)、カラム;TSK−GEL2000×3本及びTSK−GEL4000×1本(いずれも東ソー(株)製)、溶媒;テトラヒドロフラン、流量;1 ml/min、温度;38℃、検出器;RIであり、検量線にはポリスチレン標準液を使用した。
実施例1
アニリン93.1g、フェノール94.1g、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル125.6g、クロルベンゼン37.2gを仕込み、窒素を導入しながら105℃に加熱し、攪拌しながら2.5時間反応させた。次に、クロルベンゼンを除去し、さらに180℃まで昇温して9時間反応させた。この間、反応により生成する塩酸は系外に除いた。その後、25%アンモニア水147.2gを加えて中和し、減圧下180℃にて未反応フェノール、アニリンを除去した。それをトルエン400gに溶解させ、200gの純水にて5回水洗を行い、減圧蒸留にてトルエンを除去してAHR107.2gを得た。AHRの水酸基当量は178g/eq.、アミン当量は747g/eq.、軟化点は86℃、150℃における溶融粘度は0.23Pa・sであった。AHRの1H−NMRスペクトルを図1、赤外吸収スペクトルを図2、GPCチャートを図3に示す。
アニリン93.1g、フェノール94.1g、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル125.6g、クロルベンゼン37.2gを仕込み、窒素を導入しながら105℃に加熱し、攪拌しながら2.5時間反応させた。次に、クロルベンゼンを除去し、さらに180℃まで昇温して9時間反応させた。この間、反応により生成する塩酸は系外に除いた。その後、25%アンモニア水147.2gを加えて中和し、減圧下180℃にて未反応フェノール、アニリンを除去した。それをトルエン400gに溶解させ、200gの純水にて5回水洗を行い、減圧蒸留にてトルエンを除去してAHR107.2gを得た。AHRの水酸基当量は178g/eq.、アミン当量は747g/eq.、軟化点は86℃、150℃における溶融粘度は0.23Pa・sであった。AHRの1H−NMRスペクトルを図1、赤外吸収スペクトルを図2、GPCチャートを図3に示す。
実施例2
実施例1で得られたAHR50.0g、無水フタル酸9.9gを仕込み、窒素を導入しながら90℃に加熱し溶解させた。次に、撹拌しながら150℃まで昇温し2時間反応させた。この間、反応により生成する水は系外に除いた。その後、減圧下180℃にて未反応無水フタル酸、IHR55.5gを得た。IHRの水酸基当量は209g/eq.、アミン当量は16429g/eq.、軟化点は109℃、150℃における溶融粘度は1.15Pa・sであった。IHRの1H−NMRスペクトルを図4、赤外吸収スペクトルを図5、GPCチャートを図6に示す。
実施例1で得られたAHR50.0g、無水フタル酸9.9gを仕込み、窒素を導入しながら90℃に加熱し溶解させた。次に、撹拌しながら150℃まで昇温し2時間反応させた。この間、反応により生成する水は系外に除いた。その後、減圧下180℃にて未反応無水フタル酸、IHR55.5gを得た。IHRの水酸基当量は209g/eq.、アミン当量は16429g/eq.、軟化点は109℃、150℃における溶融粘度は1.15Pa・sであった。IHRの1H−NMRスペクトルを図4、赤外吸収スペクトルを図5、GPCチャートを図6に示す。
合成例1
アニリン40.0g、フェノール200.0g、37%ホルマリン溶液41.5gを仕込み、窒素を導入しながら80℃に加熱し溶解させた。次に、撹拌しながら95℃まで昇温して2時間還流させ、さらに脱水後180℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、減圧下180℃にて未反応フェノール、アニリンを除去し、アミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂102.0gを得た。得られた樹脂の水酸基当量は91g/eq.、アミン当量は242g/eq.、軟化点は61℃、150℃における溶融粘度は0.02Pa・sであった。
アニリン40.0g、フェノール200.0g、37%ホルマリン溶液41.5gを仕込み、窒素を導入しながら80℃に加熱し溶解させた。次に、撹拌しながら95℃まで昇温して2時間還流させ、さらに脱水後180℃まで昇温し、2時間反応させた。その後、減圧下180℃にて未反応フェノール、アニリンを除去し、アミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂102.0gを得た。得られた樹脂の水酸基当量は91g/eq.、アミン当量は242g/eq.、軟化点は61℃、150℃における溶融粘度は0.02Pa・sであった。
合成例2
合成例1で得られた樹脂102.0g、無水フタル酸63.6gを仕込み、窒素を導入しながら80℃に加熱し溶解させた。その後、撹拌しながら150℃まで昇温し1時間反応させた。この間、反応により生成する水は系外に除いた。その後、減圧下230℃にて未反応無水フタル酸を除去し、IHR152.1gを得た。IHRの水酸基当量は293g/eq.、アミン当量は39750g/eq.、軟化点は105℃、150℃における溶融粘度は0.65Pa・sであった。
合成例1で得られた樹脂102.0g、無水フタル酸63.6gを仕込み、窒素を導入しながら80℃に加熱し溶解させた。その後、撹拌しながら150℃まで昇温し1時間反応させた。この間、反応により生成する水は系外に除いた。その後、減圧下230℃にて未反応無水フタル酸を除去し、IHR152.1gを得た。IHRの水酸基当量は293g/eq.、アミン当量は39750g/eq.、軟化点は105℃、150℃における溶融粘度は0.65Pa・sであった。
合成例3
アニリン372.5g、フェノール376.4g、p−キシレンジクロライド350.1gを仕込み、窒素を導入しながら105℃に加熱し、攪拌しながら1時間反応させた。さらに180℃まで昇温して9時間反応させた。この間、反応により生成する塩酸は系外に除いた。その後、25%アンモニア水560.8gを加えて中和し、減圧下180℃にて未反応フェノール、アニリンを除去した。それをメチルイソブチルケトン700gに溶解させ、500gの純水にて5回水洗を行い、減圧蒸留にてメチルイソブチルケトンを除去してアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂497.2gを得た。アミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂の水酸基当量は165g/eq.、アミン当量は600g/eq.、軟化点は61℃、150℃における溶融粘度は0.05Pa・sであった。
アニリン372.5g、フェノール376.4g、p−キシレンジクロライド350.1gを仕込み、窒素を導入しながら105℃に加熱し、攪拌しながら1時間反応させた。さらに180℃まで昇温して9時間反応させた。この間、反応により生成する塩酸は系外に除いた。その後、25%アンモニア水560.8gを加えて中和し、減圧下180℃にて未反応フェノール、アニリンを除去した。それをメチルイソブチルケトン700gに溶解させ、500gの純水にて5回水洗を行い、減圧蒸留にてメチルイソブチルケトンを除去してアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂497.2gを得た。アミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂の水酸基当量は165g/eq.、アミン当量は600g/eq.、軟化点は61℃、150℃における溶融粘度は0.05Pa・sであった。
合成例4
合成例3で得られたアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂200.0g、無水フタル酸49.4gを仕込み、窒素を導入しながら90℃に加熱し溶解させた。さらに、撹拌しながら150℃まで昇温し2時間反応させた。この間、反応により生成する水は系外に除いた。その後、減圧下180℃にて未反応無水フタル酸を留去した後、イミド基含有多価ヒドロキシ樹脂228.7gを得た。イミド基含有多価ヒドロキシ樹脂の水酸基当量は305g/eq.、アミン当量は14110g/eq.、軟化点は87℃、150℃における溶融粘度は0.15Pa・sであった。
合成例3で得られたアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂200.0g、無水フタル酸49.4gを仕込み、窒素を導入しながら90℃に加熱し溶解させた。さらに、撹拌しながら150℃まで昇温し2時間反応させた。この間、反応により生成する水は系外に除いた。その後、減圧下180℃にて未反応無水フタル酸を留去した後、イミド基含有多価ヒドロキシ樹脂228.7gを得た。イミド基含有多価ヒドロキシ樹脂の水酸基当量は305g/eq.、アミン当量は14110g/eq.、軟化点は87℃、150℃における溶融粘度は0.15Pa・sであった。
実施例3〜6及び比較例1〜4
エポキシ樹脂成分としてo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(OCNE;エポキシ当量200、軟化点65℃)、硬化剤として実施例1、2で得たAHR、IHR、合成例1、2で得た多価ヒドロキシ樹脂、フェノールノボラック(硬化剤A:群栄化学製、PSM−4261;OH当量103、軟化点 82℃)、フェノールアラルキル樹脂(硬化剤B;明和化成製、MEH−7800SS、OH当量175、軟化点67℃)を用い、充填剤としてシリカ(平均粒径18μm)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを表1に示す配合で混練しエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃にて成形し、175℃にて12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。
エポキシ樹脂成分としてo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(OCNE;エポキシ当量200、軟化点65℃)、硬化剤として実施例1、2で得たAHR、IHR、合成例1、2で得た多価ヒドロキシ樹脂、フェノールノボラック(硬化剤A:群栄化学製、PSM−4261;OH当量103、軟化点 82℃)、フェノールアラルキル樹脂(硬化剤B;明和化成製、MEH−7800SS、OH当量175、軟化点67℃)を用い、充填剤としてシリカ(平均粒径18μm)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを表1に示す配合で混練しエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃にて成形し、175℃にて12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。
ガラス転移点(Tg)及び線膨張係数(CTE)の測定は、熱機械測定装置を用いて10℃/分の昇温速度で求めた。また吸水率は、直径50mm、厚さ3mmの円形の試験片を用いて、85℃、85%RHの条件で100時間吸湿させた吸水率は、本エポキシ樹脂組成物を用いて、直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後85℃、85%RHで100時間吸湿させた後の重量変化率とした。接着強度は、銅板2枚の間に25mm×12.5mm×0.5mmの成形物を圧縮成形機により175℃で成形し、180℃にて12時間ポストキュアを行った後、引張剪断強度を求めることにより評価した。難燃性は、厚さ1/16インチの試験片を成形し、UL94V-0規格によって評価し、5本の試験片での合計の燃焼時間で表した。結果を表2に示す。
Claims (8)
- エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、硬化剤の一部又は全部として、請求項1に記載のアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂を、エポキシ樹脂100重量部に対して2から200重量部配合してなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
- 下記一般式(8)
H−L’−(X−L’)n−H (8)
ここで、L’は下記式(9)及び式(3)
Xは下記式(4)
で表され、イミド基/水酸基のモル比が、1:9〜9:1の範囲にあるイミド基含有多価ヒドロキシ樹脂。 - 請求項1に記載のアミノ基含有多価ヒドロキシ樹脂にジカルボン酸無水物を反応させ、脱水閉環してイミド化することを特徴とする請求項3に記載のイミド基含有多価ヒドロキシ樹脂の製造方法。
- エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、硬化剤の一部又は全部として、請求項5に記載のイミド基多価ヒドロキシ樹脂を、エポキシ樹脂100重量部に対して2から200重量部配合してなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- 請求項7に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
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