JP6475064B2 - 正極活物質、その製造方法、正極活物質を用いた正極合材、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
しかし、現状、使用されているリチウム含有遷移金属酸化物材料の利用可能な容量は100〜200mAh/gと小さい。そのため、リチウム二次電池の更なる高エネルギー密度化を実現するためには、より大きな単位重量当たりの容量を有する正極活物質が必要とされている。
従来から開発されているLi2MnO3とLiMO2との固溶体の形状は、特許文献1にあるように一次粒子が凝集してなる凝集体が開発されているが、凝集体の強度が弱いために、塗布膜形成において問題がある。
これは、サイクル特性等の電池特性の低下につながり、また安全上も好ましくない。
そこで、従来正極活物質の二次粒子径を比較的小さくし、かつ粒度分布を狭くするように制御することや、粒子の崩れ易さに特徴を持たせた正極活物質が提案されている。
したがって、本発明は一次粒子が凝集した二次粒子からなる正極活物質であって、比表面積が大きいことによる問題点である、リチウムイオン二次電池用正極から正極活物質層の一部が脱落(粉落ち)することを防止できる非水電解質二次電池用正極活物質を提供することを目的とする。
Li[LiaMnbMec]O2−d (1)
(式中、MeはMn以外の遷移金属の中から選ばれる少なくとも1種類の元素であり、a、b、c及びdは、0<a<1/3、0<b<2/3、0<c<1、0≦d≦0.2を満たす)
で表される複合酸化物からなり、かつ一次粒子が凝集した二次粒子からなる正極活物質であって、平均一次粒子径が10〜80nmであり、BET比表面積が3〜100m2/gであり、粒度分布曲線において少なくとも粒子径0.3〜3.5μmの範囲にピークトップを持つ二次粒子からなる正極活物質。
〈2〉 層状構造を有し、下記式(1)
Li[LiaMnbMec]O2−d (1)
(式中、MeはMn以外の遷移金属の中から選ばれる少なくとも1種類の元素であり、a、b、c及びdは、0<a<1/3、0<b<2/3、0<c<1、0≦d≦0.2を満たす)
で表される複合酸化物からなり、かつ一次粒子が凝集した二次粒子からなる正極活物質であって、粒子径1.0〜3.5μmの範囲に第1のピークトップを持ち、かつ、0.3〜2.0μmの範囲に第2のピークトップを持つ二次粒子からなる正極活物質。
〈3〉 平均一次粒子径が10〜80nmであり、BET比表面積が3〜100m2/gである、上記〈2〉に記載の正極活物質。
〈4〉 二次粒子径の標準偏差が0.01〜0.5であり、かつ、粒子径5.0μm以上の二次粒子が占める全体の割合が2%以下であることを特徴とする上記〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載の正極活物質。
〈5〉 正極活物質を0.5g、底面積が1.32cm2の治具に入れて、10kNの荷重を10分かけて試料加圧プレスした際に、二次粒子の破砕率が0.5%以上30%以下であることを特徴とする上記〈1〉〜〈4〉のいずれかに記載の正極活物質。
〈6〉 以下の工程を含む、上記〈1〉〜〈5〉のいずれかに記載の正極活物質の製造方法。
(1)撹拌羽根を備える反応槽内において、撹拌羽根を周速度12〜50m/sで90s以上回転させ撹拌することにより、コバルト、マンガン、ニッケルを含む遷移金属の炭酸塩を共沈させて前駆体を製造する工程
(2)(1)で得られた前駆体とリチウム塩を混合した混合物を得る工程
(3)前記混合物を600℃〜720℃で熱処理する工程
〈7〉 上記〈1〉〜〈5〉のいずれかに記載の正極活物質と、導電助剤と、バインダーとを含む、正極合剤。
〈8〉 集電体と、当該集電体の一方の表面に上記〈7〉に記載の正極合剤からなる正極合剤層とを有する、非水電解質二次電池用正極。
〈9〉 正極合剤層の厚みに対する、上記〈1〉〜〈5〉のいずれかに記載の正極活物質の平均粒子径の割合が0.2以下であることを特徴とする上記〈8〉記載の非水電解質二次電池用正極。
〈10〉 上記〈8〉または上記〈9〉に記載の非水電解質二次電池用正極を含む、非水電解質二次電池。
Li[LiaMnbMec]O2−d (1)
で表される複合酸化物からなり、一次粒子が凝集した二次粒子からなる正極活物質である。式中、MeはMn以外の遷移金属の中から選ばれる少なくとも1種類の元素であり、a、b、c及びdは、0<a<1/3、0<b<2/3、0<c<1、0≦d≦0.2を満たす。
上記式(1)中のMeは、Ni、Co、Zr、Zn、Cr、Fe、Ti、Vなどの遷移金属の中から選択される少なくとも1種類の元素である。より高容量の正極活物質が得られる点から、Meは、Ni、Co又はこれらの組合せであることが好ましい。
本発明の一次粒子が凝集した二次粒子からなる正極活物質は、粒度分布曲線において
少なくとも粒子径0.3〜3.5μmの範囲にピークトップを持つ二次粒子であり、好ましくは0.4〜3.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下、例えば0.4〜2.0μmであってよい。
特に、粒子径1.0〜3.5μmの範囲に第1のピークトップを持ち、かつ、0.3〜2.0μmの範囲に第2のピークトップを持つ二次粒子であることが好ましい。第1のピークトップは好ましくは1.0〜3.5μm以下、より好ましくは3.0μm以下、例えば1.0〜3.0μm又は1.5〜3.0μmであってよい。第2のピークトップは好ましくは0.3〜1.8μm以下、より好ましくは1.8μm以下、例えば0.2〜1.8μm又は0.4〜1.6μmであってよい。
ピークトップの範囲を上記範囲に制御することにより、二次粒子が最密充填されやすくなり、それによって正極活物質の脱落防止につながると考えられる。ここで、「ピークトップ」とは、粒度分布曲線が有する各ピークにおいて縦軸の座標値が最も大きい値をとる点をいう。ただし、ピークが複数個ある場合には、いずれか1つのピークが上記範囲に含まれていればよい。
本発明の一次粒子が凝集した二次粒子からなる正極活物質は、粒度分布曲線においてある特定の範囲にピークトップを持つことを特徴としており、これにより比表面積が大きくても、リチウムイオン電池用正極から正極活物質が脱落(粉落ち)しにくくなる。
本発明の一次粒子が凝集した二次粒子からなる正極活物質の製造方法としては、例えば、後述する製造方法を挙げることができる。
本発明の一次粒子が凝集した二次粒子からなる正極活物質の製造方法は、(1)撹拌羽根を備える反応槽内において、撹拌羽根を周速度12〜50m/secで90sec以上回転させ撹拌することにより、コバルト、マンガン、ニッケルを含む遷移金属の炭酸塩を共沈させて前駆体を製造する工程、(2)(1)で得られた前駆体とリチウム塩を混合した混合物を得る工程、(3)前記混合物を600℃〜720℃で熱処理する工程を含む。
必要に応じ、アンモニウム塩水溶液などを用いてpH調整してもよい。
前記撹拌羽根を周速度12〜50m/secで回転させて、反応液を撹拌する。
ここで撹拌羽根の周速度V(m/sec)は、下記式で算出できる。
V=π×L×N÷60
(L:撹拌羽根の直径(m)、Nは回転数(rpm))
Mn原料としては、マンガン(金属マンガン)及びマンガン化合物の少なくとも1種を用いることができ、マンガン化合物としては例えば、硫酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、蓚酸マンガン、水酸化マンガン、オキシ水酸化マンガン、硫酸マンガン、酸化マンガン、酸化マンガンなどが挙げられ、これら遷移金属塩は目的とする組成に応じて選択するが、2種類以上の遷移金属塩を混合して用いることもできる。
上記遷移金属塩としては、例えばNi、Co、Zr、Zn、Cr、Fe、Ti、Vなどの硝酸塩、酢酸塩、蓚酸塩、炭酸塩、水酸化物、オキシ水酸化物、硫酸塩、酸化物、過酸化物や、塩化物などのハロゲン化物などが挙げられ、これら遷移金属塩は目的とする組成に応じて選択するが、2種類以上の遷移金属塩を混合して用いることも可能である。
金属イオン含有水溶液の調製に用いる化合物の量比は、目的の正極活物質の組成に合わせて適宜決定することができる。通常は、金属イオン含有水溶液中の金属イオンの量比が、(1)で得られる沈殿物(正極活物質前駆体)や本発明の正極活物質の組成にそのまま反映される。
なお、上記Li原料、遷移金属原料及び置換元素原料は、原料混合前或いは後に粉砕するようにしてもよい。この際の混合方法は、これらを均一に混合できる限り特に限定するものではない。例えば乳鉢を用いて乾式混合する方法やミキサー等の公知の混合機を用いて各原料を同時又は適当な順序で配合し、湿式又は乾式で混合すれば良い。
熱処理温度が600℃未満の場合には、熱処理が不十分であることから、結晶性も低く、目的の負荷特性が得られない場合がある。熱処理温度が720℃より高い場合には、得られる固溶体は規則構造が発達したものとなる結果、遷移金属原子配列の規則化によって単位格子の格子定数(結晶軸の軸長、軸比、軸角)が変化し、それによって積層欠陥密度が高くなり、負荷特性が低下する場合がある。
上記熱処理温度は、600℃〜700℃であることが好ましく、610〜660℃であることがより好ましい。
前熱処理として、焼成する最高到達温度に至る前に100℃〜550℃で焼成してもよく、段階的に焼成してもよい。より好ましくは、酸化物結晶に転移しない熱処理温度である150℃〜500℃であり、さらに好ましくは200℃〜400℃である。
熱処理時間は0.5時間から15時間であってよく、熱処理温度によるが、より好ましくは1時間から12時間が好ましく、さらに2時間から8時間であってもよい。
熱処理する際のガス雰囲気は、酸化雰囲気が確保されていれば、特に限定されるものではなく、例えば、空気、酸素、及び酸素との混合ガスを用いることができる。
本発明の正極合材は、上述した本発明の正極活物質と、導電助剤と、バインダーとを含む。
本発明の正極活物質は、少なくとも一部が炭素系材料を含んでいてもよく、被覆(コーティング)されていてもよい。炭素系材料とは、特に制限されず従来公知のものを利用することができ、例えば非晶質炭素(アモルファスカーボン)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト微粒子、鱗片上黒鉛、炭素繊維などの炭素材料を挙げることができる。
なお、これらの正極活物質がそれぞれ固有の効果を発現する上で最適な粒径が異なる場合には、それぞれの固有の効果を発現する上で最適な粒径同士をブレンドして用いればよく、全ての活物質の粒径を必ずしも均一化させる必要はない。
このような超極細繊維状炭素に関しては例えば、特開2010−245423号公報の記載を参照することができる。特開2010−245423号公報には、比表面積が5〜20m2/gの範囲にあり、平均繊維径が5〜900nmの範囲にあり、且つ分岐構造を有さない微細炭素繊維が記載されている。
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド、ポリアミド(PA)、全芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリアクリロニトリル(PAN)などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、及びユリア樹脂などの熱硬化性樹脂などが挙げられる。
水系バインダーエマルジョンを用いる場合、必要に応じてカルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の増粘材を使用することもできる。
本発明の非水電解質二次電池用正極は、上述した本発明の正極合材と集電体とからなる。本発明の非水電解質二次電池用正極は、本発明の正極合材が集電体の表面に形成されてなることが好ましい。本発明の非水電解質二次電池用正極は、非水電解質二次電池の容量を高くすることができ、さらに負荷特性を高めることもできる。
本発明の非水電解質二次電池用正極に用いられる集電体は、任意の導電性材料から形成することができる。したがって例えば、集電体は、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、等の金属材料、特にアルミニウム、ステンレス鋼から形成することができる。
また、乾燥温度は、使用する分散媒の沸点を考慮し適宜選択することがでる。例えば50℃以上、70℃以上、又は90℃以上であって、100℃以下、150℃以下、200℃以下、又は250℃以下であるように選択できる。
本発明の非水電解質二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池、リチウム電池、リチウムイオンポリマー電池、リチウム全固体電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池であることが好ましい。
本発明の非水電解質二次電池では、本発明の非水電解質二次電池用正極、電解液又は電解質を含む電解質層、及び負極材料層が集電体の表面に形成されてなる負極が、正極合材層と負極材料層とが向き合い積層されている。また、電解質層が液状又はゲル状の場合は、セパレータを介して積層してもよい。
また、電池の安全性改善の観点から、難燃剤を含有してもよい。難燃剤(酸素トラップ剤)としては、フォスファゼン系化合物、リン酸エステル系化合物等が挙げられる。好適な含有量は1〜20重量%である。
また、非水電解液としてリチウム塩からなる常温溶融塩(イオン性液体)を用いることも可能である。イオン性液体は粘度を調整するために、上記の非水電解液に混合しても構わない。
また、耐電圧の観点から、耐酸化性の良好なセパレータが特に好適に好まれ、多孔質膜や不織布等の基材の上にフッ素系樹脂やアラミド、あるいはセラミックコートしたものが好適に使用される。
具体的な、ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVDF−HFP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリシロキサンおよびこれらの共重合体、およびこれらの架橋物等が挙げられる。
例えば、高結晶性カーボンであるグラファイト(天然グラファイト、人造グラファイト等)、低結晶性カーボン(ソフトカーボン、ハードカーボン)、低温焼成カーボン、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック等)、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリルなどの炭素材料、Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等のリチウムと合金化する元素の単体、及びこれらの元素を含む酸化物(一酸化ケイ素(SiO)、SiOx(0<x<2)、二酸化スズ(SnO2)、SnOx(0<x<2)、SnSiO3など)及びナノ酸化鉄、リチウム金属等の金属材料、リチウム−チタン複合酸化物(チタン酸リチウム:Li4Ti5O12)等のリチウム−遷移金属複合酸化物を挙げることができる。なお、これらの負極活物質は、単独で使用することも、2種以上の混合物の形態で使用することも可能である。
負極に用いられる導電助剤、バインダー及び集電体は、集電体として銅が使用できることを除いては、本発明の非水電解質二次電池用正極で説明したものと同様である。
下記実施例及び比較例で得られた前駆体酸化物粒子及び正極活物質を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、50000倍の画像より無作為に10以上の一次粒子を選択し、その直径(x)及び長さ(y)を測長し、平均値(x+y)/2を算出した。
下記実施例及び比較例で得られた正極活物質は、下記2種類の方法で粒度分布曲線を作成し、ピークトップ粒子径を求めた。「ピークトップ」とは、粒度分布曲線が有する各ピークにおいて縦軸の座標値が最も大きい値をとる点をいう。ただし、ピークが複数個ある場合には、いずれか1つのピークが該当すればよい。
(i)走査型電子顕微鏡(SEM)で所定の倍率で観察した。得た画像を元に画像解析を行い、頻度による粒度分布曲線を作成した(下記実施例2)。
(ii)粒度分布測定装置にて粒度分布測定を実施した。レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(島津製作所社製SALD-2300)を用い、屈折率を2.20に設定し、粒子径基準を体積基準として測定した。このサンプルを水に分散させ、超音波処理(出力約40W、20秒間)を行いながら測定を行った(下記実施例1及び比較例1)。
高機能比表面積/細孔分布測定装置(micromeritics社ASAP 2020)を用いて測定した。
下記実施例及び比較例で得られた正極活物質の組成を確認するため、化学分析により、Li、Ni、Co、Mn比率を測定した。化学分析は、ICP発光光度分析装置(アジエントテクノロジー社製、ICP-AES 720-ES)により実施した。
実施例及び比較例で得られた正極活物質を0.5g、底面積が1.32cm2の治具に入れて、10kNの荷重を10分かけて作成したペレット中の中央部を切断したものを試料とし、それらの破断面の異なる8か所についてSEM観察を行った。荷重をかける治具は平滑性の高い治具であればよいが、表面粗さが算術平均粗さ(Ra)にして0.1μm以下の治具であってよい。SEM観察写真において、破砕された正極活物質粒子と破砕されていない正極活物質粒子とを数え、破砕された二次粒子の平均の割合を算出した。
なお、図中プレス後の固溶体の電子顕微鏡写真において、破砕された二次粒子は○で囲んだ。
実施例、比較例の正極活物質を用い、正極活物質とアセチレンブラック(電気化学工業製のデンカブラック(登録商標))とポリフッ化ビニリデンを12質量%含むポリフッ化ビニリデン溶液(溶媒N−メチルピロリドン)を混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加してスラリーを作製した。
正極活物質と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンは質量比で90/5/5とした。スラリーを厚さ17μmのアルミニウム箔(正極集電体、カーボンコート品)にアプリケーターを用いて片面塗工した。120℃で乾燥し、ロールプレス圧延(定圧、常温)を行うことによりリチウム電池用の正極体シートを作製した。
上記により作成した正極体シートに、直径4mmのステンレス棒を短手方向に横たえて設置した。そして、このステンレス棒を中心にして、電極が外側になるように180°折り曲げた。以上の試験を10枚の試験片について行い、各電極の折り曲げた部分について、ひび割れまたは粉落ちの有無を観察し、下記の基準により耐粉落ち性を評価した。ひび割れ、粉落ちが少ないほど、多孔膜が耐粉落ち性に優れることを示す。
A=10枚中全てに、ひび割れおよび粉落ちがみられない。
B=10枚中1〜3枚に、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
C=10枚中4〜6枚に、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
D=10枚中7〜9枚に、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
E=10枚中全てに、ひび割れまたは粉落ちがみられる。
[実施例1]
(前駆体酸化物粒子の作製)
本実施例の正極活物質の前駆体であるマンガン、コバルト及びニッケルを含む酸化物粒子(前駆体酸化物粒子)は、以下のように作製した。
硫酸マンガン五水和物(和光純薬工業社製、一級試薬)13.64g、硝酸コバルト六水和物(和光純薬工業社製、特級試薬)2.06g、及び硝酸ニッケル六水和物(和光純薬工業社製、特級試薬)5.04gを100mlの蒸留水に溶解し、水溶液を作製した。次に、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業社製、特級試薬)26.9gを1000mlの蒸留水に溶解し、水溶液を作製した。この炭酸水素ナトリウム水溶液を、撹拌羽根を備える反応槽内において、撹拌羽根を周速度36m/sで回転させ撹拌しながら、上記作製した水溶液を滴下し、90秒撹拌後、マンガン、コバルト及びニッケルを含む炭酸塩の粒子である乳白色の沈殿物を得た。その後、吸引濾過し、120℃で乾燥した。さらに200℃で酸化処理をすることで、マンガン、コバルト及びニッケルを含む前駆体酸化物粒子を得た。この前駆体酸化物粒子の平均一次粒子径は23nmであった。
本実施例の正極活物質の作製は以下のように行った。
炭酸リチウム(和光純薬工業社製、特級試薬、融点723℃)1.94gと、上記作製した前駆体酸化物粒子2.03gを秤量し、瑪瑙乳鉢を用いて乾式混合した。
次に、この混合物を50mlのアルミナ坩堝に入れ、焼成炉内で熱処理を行った。熱処理は、大気中で、昇温速度5℃/minで620℃まで昇温、12時間熱処理し、その後、室温まで降温した。
得られた粉末に蒸留水を加え、充分に撹拌し、蒸留水で洗浄を5回繰り返した後、吸引濾過し、100℃で5時間、200℃で5時間乾燥することで実施例1の正極活物質を得た。図1に得られた正極活物質について、SEM観察した結果を示す。
図1から平均一次粒子径は42nmであった。BETの比表面積は73m2/gであった。上記の方法で測定した正極活物質の組成は、Li[Li0.2Co0.07Ni0.17Mn0.56]O2であった。
得られた正極活物質について粒度分布測定により、粒度分布曲線を得て、ピークトップ粒子径を求めた。
粒度分布測定装置にて粒度分布測定を実施した結果を図2に示す。
粒子径0.65μmに第1のピークトップを持ち、かつ、1.6μmに第2のピークトップを持つ二次粒子からなる正極活物質であることを確認した。
D10は0.6μm、D50は1.4μm、D70は2.5μmであり、粒子径5μ以上の二次粒子が占める全体の割合は0%であった。
実施例1で得られた正極活物質を底面積が1.32cm2の治具に入れて、10kNの荷重を10分かけて作成したペレット中の中央部を切断したものを試料とし、それらの破断面の異なる8か所についてSEM観察を行った。図3にプレス前の固溶体SEM写真、図4にプレス後の固溶体SEM写真を示す。破砕された正極活物質粒子と破砕されていない正極活物質粒子とを数え、破砕された二次粒子の平均の割合を算出した。その結果、破砕率は1%であった。
実施例1の正極活物質を用い、正極活物質とアセチレンブラック(電気化学工業製のデンカブラック(商標))とポリフッ化ビニリデンを12質量%含むポリフッ化ビニリデン溶液(溶媒N−メチルピロリドン)を混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加してスラリーを作製した。
正極活物質と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンは質量比で90/5/5とした。スラリーを厚さ17μmのアルミニウム箔(正極集電体、カーボンコート品)にアプリケーターを用いて片面塗工した。120℃で乾燥し、ロールプレス圧延(定圧、常温)を行うことによりリチウム電池用の正極体シートを作製した。
上記の正極体シートを用いて粉落ち評価を実施した結果、A判定であった。
実施例1および比較例1の正極体シートを20mm×50mmに打ち抜いたものを正極に用い、厚さ500μmの金属リチウム箔を負極に用い、負極集電体に厚さ1mmのステンレス板を使用し、電解液には、1mol/lのLiPF6、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート(体積比30:70)(キシダ化学社製)、セパレータにはガラス不織布(厚さ400μm)(アドバンテック社製、GB−100R)と市販ポリエチレン製微孔膜(厚さ20μm)とを重ね合わせたものを用いて評価セルを作製した。
電極物性は、目付量10.9mg/cm2、厚み44μ、密度2.48g/cm3、1.7×10−2S/cmであった。
電極合剤層の厚みに対する、正極活物質の平均粒子径(D50)の割合は、1.4μm/44μm=0.03であり、0.2以下であった。
上記で得られた正極活物質を用いて以下の手順で評価セルを作製し、初期充放電特性及び高い電流密度条件での放電特性の評価を行った。
正極には、上記作製した正極、負極には厚さ200μmの金属リチウム箔(本荘ケミカル社製)、作成したセルの25℃における初期充放電特性を以下に示す充放電条件にて充放電を行い評価した。
・充放電条件
充電上限電圧を4.8V、放電下限電圧を2.0Vに設定して定電流・定電圧充放電を行った。初期を電流密度:48mA/g(約5時間率)、引き続いて2サイクル目を、120mA/g、3サイクル目を240mA/g、4サイクル目を480mA/g(2C)で試験を行った。得られた放電カーブを図5に示す。
48mA/gの容量維持率を100%とすると、480mA/gは92%と大変良好な結果が得られた。
本実施例の正極活物質の前駆体であるマンガン、コバルト及びニッケルを含む酸化物粒子(前駆体酸化物粒子)は、以下のように作製した。
硫酸マンガン五水和物(和光純薬工業社製、一級試薬)13.64g、硝酸コバルト六水和物(和光純薬工業社製、特級試薬)2.06g、及び硝酸ニッケル六水和物(和光純薬工業社製、特級試薬)5.04gを100mlの蒸留水に溶解し、水溶液を作製した。次に、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業社製、特級試薬)26.9gを1000mlの蒸留水に溶解し、水溶液を作製した。この炭酸水素ナトリウム水溶液を、撹拌羽根を備える反応槽内において、撹拌羽根を周速度15m/sで回転させ撹拌しながら、上記作製した水溶液を滴下し、90秒撹拌後、マンガン、コバルト及びニッケルを含む炭酸塩の粒子である乳白色の沈殿物を得た。その後、吸引濾過し、120℃で乾燥した。さらに200℃で酸化処理をすることで、マンガン、コバルト及びニッケルを含む前駆体酸化物粒子を得た。この前駆体酸化物粒子の平均一次粒子径は21nmであった。
本実施例の正極活物質の作製は以下のように行った。
炭酸リチウム(和光純薬工業社製、特級試薬、融点723℃)1gと、上記作製した前駆体酸化物粒子0.466gを秤量し、瑪瑙乳鉢を用いて乾式混合した。
次に、この混合物を50mlのアルミナ坩堝に入れ、焼成炉内で熱処理を行った。熱処理は、大気中で、昇温速度5℃/minで620℃まで昇温、12時間熱処理し、その後、室温まで降温した。これにより、実施例2の正極活物質を得た。
上記の方法で測定した正極活物質の組成は、Li[Li0.2Co0.07Ni0.17Mn0.56]O2であった。図6に得られた正極活物質について、SEM観察した結果を示す。平均一次粒子径は52nmであった。BETの比表面積は64m2/gであった。
上記で得られた正極活物質を、走査型電子顕微鏡(SEM)で5000倍の倍率で観察した。得た画像を元に画像解析を行い、頻度による粒度分布曲線を作成した結果を図7に示す。粒子径0.8μmにピークトップを持つ二次粒子からなる正極活物質であることを確認した。二次粒子径の標準偏差は0.3であった。粒子径5μ以上の二次粒子が占める全体の割合は0%であった。
実施例2で得られた正極活物質を底面積が1.32cm2の治具に入れて、10kNの荷重を10分かけて作成したペレット中の中央部を切断したものを試料とし、それらの破断面の異なる8か所についてSEM観察を行った。図8にプレス前の固溶体SEM写真、図9にプレス後の固溶体SEM写真を示す。破砕された正極活物質粒子と破砕されていない正極活物質粒子とを数え、破砕された粒子の平均の割合を算出した。その結果、破砕率は3%であった。
実施例1の正極活物質を用い、正極活物質とアセチレンブラック(電気化学工業製のデンカブラック(商標))とポリフッ化ビニリデンを12質量%含むポリフッ化ビニリデン溶液(溶媒N−メチルピロリドン)を混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加してスラリーを作製した。
正極活物質と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンは質量比で90/5/5とした。スラリーを厚さ17μmのアルミニウム箔(正極集電体、カーボンコート品)にアプリケーターを用いて片面塗工した。120℃で乾燥し、ロールプレス圧延(定圧、常温)を行うことによりリチウム電池用の正極体シートを作製した。
上記の正極体シートを用いて粉落ち評価を実施した結果、B判定であった。
(前駆体酸化物粒子の作製)
本実施例の正極活物質の前駆体であるマンガン、コバルト及びニッケルを含む酸化物粒子(前駆体酸化物粒子)は、以下のように作製した。
硫酸マンガン五水和物(和光純薬工業社製、一級試薬)13.64g、硝酸コバルト六水和物(和光純薬工業社製、特級試薬)2.06g、及び硝酸ニッケル六水和物(和光純薬工業社製、特級試薬)5.04gを100mlの蒸留水に溶解し、水溶液を作製した。次に、炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業社製、特級試薬)26.9gを1000mlの蒸留水に溶解し、水溶液を作製した。この炭酸水素ナトリウム水溶液を、撹拌羽根を備える反応槽内において、撹拌羽根を周速度1.8m/sで回転させ撹拌しながら、上記作製した水溶液を滴下し、60分撹拌後、マンガン、コバルト及びニッケルを含む炭酸塩の粒子である乳白色の沈殿物を得た。その後、吸引濾過し、120℃で乾燥した。さらに200℃で酸化処理をすることで、マンガン、コバルト及びニッケルを含む前駆体酸化物粒子を得た。この前駆体酸化物粒子の平均一次粒子径は35nmであった。
本比較例の正極活物質の作製は以下のように行った。
炭酸リチウム(和光純薬工業社製、特級試薬、融点723℃)1.94gと、上記作製した前駆体酸化物粒子2.03gを秤量し、瑪瑙乳鉢を用いて乾式混合した。
次に、この混合物を50mlのアルミナ坩堝に入れ、焼成炉内で熱処理を行った。熱処理は、大気中で、昇温速度5℃/minで620℃まで昇温、12時間熱処理し、その後、室温まで降温した。
得られた粉末に蒸留水を加え、充分に撹拌し、蒸留水で洗浄を5回繰り返した後、吸引濾過し、100℃で5時間、200℃で5時間乾燥することで比較例1の正極活物質を得た。
上記の方法で測定した正極活物質の組成は、Li[Li0.2Co0.07Ni0.17Mn0.56]O2であった。
得られたSEM写真を図10に示す。平均一次粒子径は114nmであった。BETの比表面積は23m2/gであった。
得られた正極活物質を、下記の方法で粒度分布曲線を作成し、ピークトップ粒子径を求めたところ、3.6μmであった。
粒度分布測定装置にて粒度分布測定を実施した結果を図11に示す。D10は1.9μm、D50は3.3μm、D70は5.1μmであり、粒子径5μ以上の二次粒子が占める全体の割合は9.9%であった。
比較例1で得られた正極活物質を底面積が1.32cm2の治具に入れて、10kNの荷重を10分かけて作成したペレット中の中央部を切断したものを試料とし、それらの破断面の異なる8か所についてSEM観察を行った。図12にプレス前の固溶体SEM写真、図13にプレス後の固溶体SEM写真を示す。破砕された正極活物質粒子と破砕されていない正極活物質粒子とを数え、破砕された粒子の平均の割合を算出した。破砕された正極活物質粒子と破砕されていない正極活物質粒子とを数え、破砕された粒子の平均の割合を算出した。その結果、破砕率は40%であった。
比較例1の正極活物質を用い、正極活物質とアセチレンブラック(電気化学工業製のデンカブラック(商標))とポリフッ化ビニリデンを12質量%含むポリフッ化ビニリデン溶液(溶媒N−メチルピロリドン)を混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加してスラリーを作製した。
正極活物質と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンは質量比で90/5/5とした。スラリーを厚さ17μmのアルミニウム箔(正極集電体、カーボンコート品)にアプリケーターを用いて片面塗工した。120℃で乾燥し、ロールプレス圧延(定圧、常温)を行うことによりリチウム電池用の正極体シートを作製した。
上記の正極体シートを用いて粉落ち評価を実施した結果、E判定であった。
Claims (10)
- 層状構造を有し、下記式(1)
Li[LiaMnbMec]O2−d (1)
(式中、MeはMn以外の遷移金属の中から選ばれる少なくとも1種類の元素であり、a、b、c及びdは、0<a<1/3、0<b<2/3、0<c<1、0≦d≦0.2を満たす)
で表される複合酸化物からなり、かつ一次粒子が凝集した二次粒子からなる正極活物質であって、平均一次粒子径が10〜80nmであり、BET比表面積が3〜100m2/gであり、粒度分布曲線において少なくとも粒子径0.3〜3.5μmの範囲にピークトップを持つ二次粒子からなる正極活物質。 - 層状構造を有し、下記式(1)
Li[LiaMnbMec]O2−d (1)
(式中、MeはMn以外の遷移金属の中から選ばれる少なくとも1種類の元素であり、a、b、c及びdは、0<a<1/3、0<b<2/3、0<c<1、0≦d≦0.2を満たす)
で表される複合酸化物からなり、かつ一次粒子が凝集した二次粒子からなる正極活物質であって、粒子径1.0〜3.5μmの範囲に第1のピークトップを持ち、かつ、0.3〜2.0μmの範囲に第2のピークトップを持つ二次粒子からなる正極活物質。 - 平均一次粒子径が10〜80nmであり、BET比表面積が3〜100m2/gである、請求項2に記載の正極活物質。
- 二次粒子径の標準偏差が0.01〜0.5であり、かつ、粒子径5.0μm以上の二次粒子が占める全体の割合が2%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の正極活物質。
- 正極活物質を0.5g、底面積が1.32cm2の治具に入れて、10kNの荷重を10分かけて試料加圧プレスした際に、二次粒子の破砕率が0.5%以上30%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の正極活物質。
- 以下の工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の正極活物質の製造方法。
(1)撹拌羽根を備える反応槽内において、撹拌羽根を周速度12〜50m/sで90s以上回転させ撹拌することにより、コバルト、マンガン、ニッケルを含む遷移金属の炭酸塩を共沈させて前駆体を製造する工程
(2)(1)で得られた前駆体とリチウム塩を混合した混合物を得る工程
(3)前記混合物を600℃〜720℃で熱処理する工程 - 請求項1〜5のいずれかに記載の正極活物質と、導電助剤と、バインダーとを含む、正極合剤。
- 集電体と、当該集電体の一方の表面に請求項7に記載の正極合剤からなる正極合剤層とを有する、非水電解質二次電池用正極。
- 正極合剤層の厚みに対する、請求項1〜5のいずれかに記載の正極活物質の平均粒子径の割合が0.2以下であることを特徴とする請求項8記載の非水電解質二次電池用正極。
- 請求項8または9に記載の非水電解質二次電池用正極を含む、非水電解質二次電池。
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