JP7292574B2 - リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法、およびリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法、およびリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法、およびリチウムイオン二次電池に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギー密度や耐久性を有する小型で軽量な非水系電解質二次電池の開発が強く望まれている。また、電動工具やハイブリッド自動車をはじめとする電気自動車用の電池として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす非水系電解質二次電池として、リチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極、正極、非水系電解質などで構成され、負極および正極の活物質として、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられている。
リチウムイオン二次電池については、現在研究開発が盛んに行われているところであるが、中でも、層状またはスピネル型の結晶構造を有するリチウム金属複合酸化物を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギー密度を有する電池として実用化が進んでいる。
リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、現在、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn)、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5)などのリチウム金属複合酸化物が提案されている。
ところで、リチウムイオン二次電池は、電池材料として非水系電解質を用いるため、高い熱安定性が求められている。例えば、リチウムイオン二次電池の内部で短絡した場合、急激な電流による発熱が生じることから、より高い熱安定性が要求される。短絡による急激な電流を抑制する方法の一つとして、正極活物質の導電性を低くすることが有効であると考えられる。
例えば、特許文献1では、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物からなる非水系電解質二次電池用正極活物質であって、リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、一般式(1):LiNi1-a-b-cMnNb2+γ(前記一般式(1)中、Mは、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Ti、Cr、Zr及びTaから選択される少なくとも1種の元素であり、0.05≦a≦0.60、0≦b≦0.60、0.0003≦c≦0.03、0.95≦d≦1.20、0≦γ≦0.5である。)で表され、ニオブの少なくとも一部が、前記一次粒子に固溶し、かつ、前記一次粒子内の平均ニオブ濃度に対して、前記一次粒子内の最大ニオブ濃度が1倍以上3倍以下である、非水系電解質二次電池用活物質が提案されている。特許文献1によれば、この正極活物質を用いた二次電池は、高いエネルギー密度、出力特性と、低い導電率による短絡時の熱安定性とを両立させることができるとされている。
国際公開2018/043669号 特開2008-017729号公報 特許第4807467号 特開2006-147499号公報 特開2007-265784号公報 特開2008-257902号公報 特開2008-198364号公報 特開2004-325278号公報 特開2013-239434号公報
しかしながら、通常、正極活物質の導電率は高いほど電池容量(充放電容量)や出力特性などの電池特性が良好になる傾向があるため、高い電池特性と低い導電性との両立は困難である。また、上記特許文献1に記載される正極活物質は、ニオブを特定の形態で含むことにより導電率を下げることが提案されているが、ニオブは高価であるため、コストの点で問題がある。
本発明は、これら事情を鑑みてなされたものであり、二次電池における高い電池容量及び出力特性と低い導電性とを低コストで両立できる正極活物質を提供することを目的とするものである。また、本発明は、このような正極活物質を、工業規模の生産において容易に製造することができる方法を提供することを目的とする。
ところで、高い電池特性を有する正極活物質を得ることを目的として、リチウム金属複合酸化物に種々の金属元素を添加する技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献2~7には、リチウム金属複合酸化物にチタンを添加する技術が提案されている。特許文献2~6によれば、リチウムニッケルコバルトチタン複合酸化物からなる正極活物質は、熱安定性が良好で、高い電池容量を有するとされている。
また、リチウム金属複合酸化物にホウ素を添加する技術もいくつか提案されている。例えば、特許文献8には、少なくとも層状の結晶構造のリチウム遷移金属複合酸化物を有する非水電解液二次電池用正極活物質であって、前記リチウム遷移金属複合酸化物は、粒子であるとともに、少なくとも前記粒子の表面にホウ酸リチウムを有する、非水電解液二次電池用正極活物質が提案されている。特許文献7によれば、この正極活物質は、熱安定性に優れるとされている。
また、例えば、特許文献9には、一般式LiNi1-x-yCoM1wO(1.0≦a≦1.5、0≦x≦0.5、0≦y≦0.5、0.002≦z≦0.03、0≦w≦0.02、0≦x+y≦0.7、M1はMn及びAlからなる群より選択される少なくとも一種、M2はZr、Ti、Mg、Ta、Nb及びMoからなる群より選択される少なくとも一種)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物と、少なくともホウ素元素及び酸素元素を含むホウ素化合物とを含む非水電解液二次電池用正極組成物が提案されている。特許文献8によれば、この正極組成物は、出力特性及びサイクル特性を向上させることができるとされている。
しかしながら、上記特許文献2~9には、リチウムニッケルマンガン複合酸化物にチタンや、ホウ素を添加した場合の正極活物質の導電性への影響については一切記載されていない。さらに、これらの特許文献には、チタン及びホウ素を組み合わせて添加することによる効果については、一切記載されていない。
本発明の第1の態様では、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗して得られるリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含み、水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、リチウム、ニッケル、マンガン、ホウ素、及びチタン、並びに、任意に元素M1を含み、それぞれの元素の物質量比がLi:Ni:Mn:M1:B:Ti=e:(1-a-b-c―d):a:b:c:d(ただし、0.05≦a≦0.60、0≦b≦0.60、0.001≦c≦0.03、0.001≦d≦0.05、0.95≦e≦1.20であり、元素M1は、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Cr、Zr及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表され、ホウ素の少なくとも一部が、前記一次粒子の表面及び粒界の少なくとも一方に偏析し、水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物中のホウ素の少なくとも一部が、水洗により除去されてなる、リチウムイオン二次電池用正極活物質が提供される。
また、二次粒子内の断面SEM観察において、二次粒子内に空隙が存在し、かつ、二次粒子内の空隙率が0.2%以上10%以下であることが好ましい。また、体積平均粒径MVが5μm以上30μm以下であることが好ましい。また、圧粉抵抗測定により求められる4.0g/cmで圧縮した時の導電率が、1.0×10-6S/cm以上4.0×10-3S/cm以下の範囲であることが好ましい。また、水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物中のホウ素含有量が、ニッケル、マンガン、ホウ素、チタン、及び、元素M1の合計量に対して、0原子%以上0.005原子%以下であることが好ましい。
本発明の第2の態様では、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含むリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、以下の工程(1-a)、(1-b)及び(1-c)のうち少なくとも一つを含む混合工程と、工程(2)と、工程(3)とを備え、リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、少なくとも、リチウム、ニッケル、マンガン、ホウ素、及びチタンを含み、リチウムと、リチウム以外の金属元素Meとの物質量比(Li/Me)が、0.95以上1.20以下であり、ホウ素の少なくとも一部が、一次粒子の表面及び粒界の少なくとも一方に偏析する、リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
工程(1-b):その表面にチタン化合物を被覆し、かつ、ニッケル、及びマンガン、並びに、任意に元素M2を含み、それぞれの元素の物質量比がNi:Mn:M2=(1-a-b’):a:b’(ただし、0.05≦a≦0.60、0≦b’≦0.60であり、M2は、Ti、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Cr、Zr、及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表されるニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、リチウム化合物と、を混合してリチウム混合物を得る、混合工程
工程(1-c):ニッケル、マンガン、及びチタン、並びに、任意に元素M1を含み、それぞれの元素の物質量比がNi:Mn:M1:Ti=(1-a-b-d):a:b:d(ただし、0.05≦a≦0.60、0≦b≦0.60、0.001≦d≦0.05であり、M1は、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Cr、Zr及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表されるニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、リチウム化合物と、を混合してリチウム混合物を得る、混合工程;
工程(2):前記リチウム混合物を酸化雰囲気中750℃以上1000℃以下で焼成してリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得る、焼成工程;
工程(3)前記焼成後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗して、前記水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物中のホウ素の少なくとも一部を除去する、水洗工程;
工程混合工程において、リチウム混合物 は、リチウムを除く金属元素Meの合計量に対して、チタンを0.1原子%以上5原子%以下含み、かつ、ホウ素を0.1原子%以上3原子%以下で含む。
また、混合工程の前に、以下の工程(1-1)を備え、混合工程における、ホウ素化合物の平均粒径が1μm以上1mm以下であってもよい。
工程(1-1):晶析によりニッケルマンガン複合化合物を得る晶析工程。
また、混合工程における、ホウ素化合物がホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸リチウム、及びホウ酸アンモニウムの少なくとも一つであってもよい。
また、混合工程の前に、以下の工程(1-1)及び工程(1-2)を備え、混合工程における、ホウ素化合物は、ニッケルマンガン複合化合物に含侵された状態で混合されてもよい。
(1-1)晶析によりニッケルマンガン複合化合物を得る晶析工程;
(1-2)ニッケルマンガン複合化合物と水とを混合して得られたスラリーに、ホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも一つを含む溶液を添加して、ニッケルマンガン複合化合物にホウ素を含浸させる、ホウ素含浸工程。
また、混合工程の前に、以下の工程(1-3)を備えてもよい。
(1-3)ニッケルマンガン複合化合物を105℃以上700℃以下の温度で熱処理する熱処理工程。また、圧粉抵抗測定により求められる4.0g/cmで圧縮した時の導電率が、前記水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物よりも、前記水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の方が小さいことが好ましい。
本発明の第3の態様では、正極と負極とセパレータと非水系電解液とを備え、正極は、上記の正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池が提供される。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、二次電池における高い電池容量及び出力特性と低い導電性とを低コストで両立できる。また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、このような正極活物質を、工業規模の生産において容易に製造することができるため、工業的価値はきわめて高いものといえる。
図1は、実施例1、参考例2、及び比較例1、2、3、6で得られた正極活物質の導電率を示したグラフである。 図2は、本実施形態の正極活物質の製造方法の一例を示した図である。 図3は、本実施形態の正極活物質の製造方法の一例を示した図である。 図4は、本実施形態の正極活物質の製造方法の一例を示した図である。 図5(A)及び図5(B)は、本実施形態に係るニッケルマンガン複合化合物の製造方法の一例を示した図である。 図6は、本実施形態に係る混合工程の一例を示した図である。 図7は、電池評価に使用したコイン型電池の概略断面図である。 図8は、インピーダンス評価に用いた等価回路と、ナイキストプロットの一例を示す図である。 図9は、参考例2で得られた正極活物質(断面)のSEM像を示す図である。 図10は、比較例2で得られた正極活物質(断面)のSEM像を示す図である。 図11は、参考例2及び比較例1、2、3で得られた正極活物質の導電率及び正極抵抗を示したグラフである。 図12は、参考例1~3及び比較例2、4で得られた正極活物質の導電率及び正極抵抗を示したグラフである。 図13は、参考例2、4~5及び比較例3、5で得られた正極活物質の導電率及び正極抵抗を示したグラフである。
以下、本実施形態について、リチウムイオン二次電池用正極活物質とその製造方法、さらに正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池について説明する。
1.リチウムイオン二次電池用正極活物質
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」ともいう。)は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗して得られるリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む。水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、リチウム、ニッケル、マンガン、ホウ素、及びチタン、並びに、任意に元素M1を含み、それぞれの元素の物質量比(モル比)がLi:Ni:Mn:M1:B:Ti=e:(1-a-b-c―d):a:b:c:d(ただし、0.05≦a≦0.60、0≦b≦0.60、0.001≦c≦0.03、0.001≦d≦0.05、0.95≦e≦1.20であり、元素Mは、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Cr、Zr、及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表される。
また、水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物に含まれるホウ素の少なくとも一部は、一次粒子の表面及び粒界の少なくとも一方に偏析する。また、水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物に含まれるホウ素の少なくとも一部は、水洗により除去される。
本発明は、本発明者らが鋭意検討した結果、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の製造工程において、(i)特定量のチタン(Ti)とホウ素(B)とを添加することにより、得られる正極活物質において、高い電池容量及び出力特性と低い導電率との両立を実現できること、及び、(ii)リチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗することにより、さらに導電率を低減できること、を見出し、完成させたものである。
リチウムイオン二次電池において、正極及び負極間を短絡させた場合、急激に電流が流れて大きな発熱が生じることにより、正極活物質が分解して、さらに発熱するという連鎖が生じることがある。ここで、本実施形態に係る正極活物質のように、導電率が低減された正極活物質を二次電池の正極に用いた場合、短絡によって生じる急激な電流の上昇を抑制することができ、短絡時の熱安定性をより向上させることができる。なお、短絡時の熱安定性は、例えば、釘刺し試験や異物短絡試験により評価することができる。
また、本実施形態に係る正極活物質は、導電率が低いにも関わらず、二次電池において、高い電池容量と、低い正極抵抗とを有する。正極抵抗が低い場合、電池内で損失される電圧が減少し、実際に負荷側に印加される電圧が相対的に高くなり、高出力を得ることができる。
以下、リチウムニッケルマンガン複合酸化物における、チタン(Ti)及びホウ素(B)の添加、水洗の有無、及び導電率との関係について、図1を参照して説明する。なお、図1は、後述する実施例及び比較例で得られた正極活物質及び二次電池の評価結果に基づいて作成されている。
図1は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物において、チタン及びホウ素を添加しない比較例1(水洗なし)、比較例6(水洗あり)と、チタンを単独で添加した比較例2(Ti:2.3原子%、水洗なし)と、ホウ素を単独で添加した比較例3(B:0.5原子%、水洗なし)と、チタン及びホウ素をそれぞれ比較例2、3と同量添加した参考例2(水洗なし)、実施例1(水洗あり)との導電率を示すグラフである。
まず、水洗をしない場合で比較すると、チタンを単独で添加した場合(比較例2)、チタン及びホウ素を添加しない場合(比較例1)と比較して、導電率が低減する。一方、ホウ素を単独で添加した場合(比較例3)、チタン及びホウ素を添加しない場合(比較例1)と比較して、導電率は増加し、短絡時の熱安定は悪化すると考えられる。ところが、チタン及びホウ素の両方を添加した場合(参考例2)、チタン、ホウ素をそれぞれ単独で添加した場合(比較例2、3)よりも導電率がさらに低下する。
また、チタン及びホウ素を添加せず、水洗した場合(比較例6)、水洗しない場合(比較例1)と比較して導電率が増加する。ところが、チタン及びホウ素の両方を添加し、かつ、水洗した場合(実施例1)、水洗しない場合(参考例2)と比較して、さらに導電性が低下する。
以上から、(i)リチウムニッケルマンガン複合酸化物では、チタン及びホウ素を組み合わせて添加することにより、高い電池特性と、低い導電性とを高いレベルで両立することができること、及び、(ii)さらに水洗をすることにより、導電率がより低減できること、が明らかである。以下、本実施系に係る正極活物質の構成について、詳細を説明する。
[水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物]
水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成される。また、水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、リチウム、ニッケル、マンガン、ホウ素、及びチタン、並びに、任意に元素Mを含み、それぞれの元素の物質量比(モル比)がLi:Ni:Mn:M1:B:Ti=e:(1-a-b-c―d):a:b:c:d(ただし、0.05≦a≦0.60、0≦b≦0.60、0.001≦c≦0.03、0.001≦d≦0.05、0.95≦e≦1.20であり、元素M1は、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Cr、Zr及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表される。なお、各元素の物質量比は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法による定量分析により測定することができる。以下、各元素について説明する。
(リチウム)
上記比において、リチウム(Li)の含有量を示すeは、Liと、リチウム以外の金属元素Me(すなわち、Ni、Mn、M1、Ti、及び、B)との物質量比(Li/Me)に対応する。また、eの範囲は、0.95≦e≦1.20であり、1.00≦e≦1.05であってもよい。なお、eの値は1を超えてもよい。
(マンガン)
上記比において、マンガン(Mn)の含有量を示すaの範囲は、0.05≦a≦0.60であり、好ましくは0.05≦a≦0.50であり、より好ましくは0.05<a≦0.35であり、さらに好ましくは0.05≦a≦0.25である。aが上記範囲である場合、熱安定性に優れる。また、後述する焼成工程(S3)において、マンガンを含むことにより、焼成温度を高くすることができ、ホウ素、チタンの分散を促進することができる。
(元素M1)
元素M1は、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Ti、Cr、Zr及びTaの中から選択される少なくとも1種の元素である。上記比において、元素M1の含有量を示すbの範囲は0≦b≦0.60である。bが0を超える場合、熱安定性、保存特性改善、電池特性等を改善することができる。例えば、元素M1がCoを含む場合、電池容量及び出力特性に優れる。上記比において、元素M1に含まれるCoの含有量をb1とする場合、好ましくは0.01≦b1≦0.5であり、より好ましくは0.01≦b1≦0.4である。
(ホウ素)
上記比において、ホウ素(B)の含有量を示すcの範囲は、0.001≦c≦0.03であり、好ましくは0.001≦c≦0.025であり、より好ましくは0.003≦c≦0.020である。上述したように、チタンとあわせて、ホウ素を上記範囲で含む場合、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の導電性を非常に低下させ、かつ、高い電池特性(電池容量、正極抵抗)を有することができる。一方、cの値が0.03を超える場合、正極抵抗が増加し、十分な電池容量及び出力特性を得ることができない。
また、ホウ素の少なくとも一部は、一次粒子の表面及び粒界の少なくとも一方に偏析する。なお、ホウ素の存在は、例えば、走査型透過電子顕微鏡(S-TEM)のEDX測定により、一次粒子断面の組成を線分析/面分析することにより確認することができる。
また、ホウ素の少なくとも一部は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗することにより除去することができる。例えば、水洗を、水洗濃度50g/L(活物質量20g、純水量0.4L)で、4時間程度行った場合、ホウ素の含有量が検出限界以下まで低減されてもよい。
(チタン)
上記比において、チタン(Ti)の含有量を示すdの範囲は、0.001≦d≦0.05であり、0.001≦d≦0.04であってもよく、0.005≦d≦0.035であってもよい。上述したように、ホウ素とあわせて、チタンを上記範囲で含む場合、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の導電性を非常に低下させ、かつ、高い電池特性(電池容量、正極抵抗)を有することができる。
なお、チタンの少なくとも一部は、ホウ素と同様に、一次粒子の表面及び粒界の少なくとも一方に存在してもよいが、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗したとしても、除去されない程度の強さで一次粒子の表面及び粒界の少なくとも一方と結合していることが好ましい。
(ニッケル)
上記比において、ニッケル(Ni)の含有量を示す(1-a-b-c―d)の範囲は、リチウム以外の他の金属元素の含有量により変動する値であり、好ましくは0<(1-a-b-c)≦0.948であり、より好ましくは0.3≦(1-a-b-c)≦0.948である。また、(1-a-b-c―d)の値は、電池容量(充放電容量)の向上の観点から、0.5以上であってもよく、0.6以上であってもよい。
なお、リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、例えば、一般式(1):LiNi1-a-b-c―dMnM1Ti(上記一般式(1)中、0.05≦a≦0.60、0≦b≦0.60、0.001≦c≦0.03、0.001≦d≦0.05、0.95≦e≦1.20であり、M1は、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Cr、Zr及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表されてもよい。上記一般式(1)中の各元素の好ましい範囲は、上記物質量比と同様である。また、リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、層状の結晶構造を有することが好ましい。
[水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物]
リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、水洗により、ホウ素の少なくとも一部が除去される。よって、水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物に含まれるホウ素の含有量は、水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物に含まれるホウ素の含有量よりも小さい。水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、水洗前と比較して、導電性がより向上する。
水洗は、ホウ素の少なくとも一部が除去される方法であれば、公知の方法で行うことができる。水洗は、例えば、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の粉末を純水に分散させたスラリーを特定の濃度に調整して撹拌することにより行う。なお、水洗条件は、ホウ素の少なくとも一部が除去され、導電性が低減する範囲で、適宜焼成することができる。
なお、水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の組成は、ホウ素、リチウム以外は、水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物と同様の組成とすることができる。すなわち、水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物に含まれるそれぞれの元素の物質量比(モル比)を、Li:Ni:Mn:M1:B:Ti=e’:(1-a’-b’-c’―d’):a’:b’:c’:d’とした場合、a’、b’、d’は、上記水洗前の比におけるa、b、dと同様の範囲とすることができる。以下、水洗後のホウ素(c’)、リチウム(e’)の含有量について説明する。
(ホウ素)
上記比において、水洗後のホウ素(B)の含有量を示すc’の範囲は、好ましくは0≦c’≦0.005であり、より好ましくは0≦c’≦0.003である。また、水洗後のホウ素(B)の含有量は、ICP発光分析法による定量分析による検出限界以下、すなわち、c’=0であってもよい。メカニズムの詳細は不明であるが、水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物において、ホウ素とチタンとを含むことにより、水洗後にホウ素が除去されたとしても、導電率のさらなる低減が可能となる。
(リチウム)
上記比において、水洗後のリチウム(e)の含有量を示すe’の範囲は、好ましくは0.90≦e’≦1.15であり、より好ましくは0.93≦e’≦1.10であり、さらに好ましくは0.95≦e’≦1.05である。
[空隙率]
水洗前及び水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、二次粒子内に空隙が存在してもよい。空隙は、二次粒子内の断面を走査電子顕微鏡(SEM)の観察により、確認することができる。二次粒子内の空隙率は、好ましくは0.2%以上10%以下であり、より好ましくは0.2%以上5%以下である。空隙率は、例えば、後述する製造方法において、ホウ素化合物の添加量を適宜調整することにより、上記範囲とすることができる。
なお、二次粒子内の空隙率は、例えば、以下の方法により測定することができる。まず、複数のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などにより二次粒子の断面観察が可能な状態とした後、走査型電子顕微鏡(SEM)により画像を取得する。次いで、取得した画像から、体積平均粒径(MV)の50%以上となる二次粒子の断面を無作為に20個選択し、下記の式から、それぞれの断面の空隙率(%)を算出し、その平均値を二次粒子断面の空隙率として算出する。
式:空隙率=[(二次粒子内の空隙面積)/(二次粒子の断面積)×100]
ただし、上記式の二次粒子内(断面内)の空隙面積、及び、二次粒子の断面積は、画像解析ソフト(ImageJ等)を用いて求める。
また、図8は、本実施形態に係るリチウムニッケルマンガン複合酸化物10の断面の一例を示す図である。図8に示すように、空隙Gは、二次粒子断面内に比較的に均一に存在することが好ましい。後述する製造方法においては、ホウ素化合物の添加に起因して空隙が形成されると考えられ、二次粒子内に空隙が均一に存在することは、ホウ素化合物が二次粒子全体に均一に拡散していることを間接的に示す。
なお、二次粒子内の空隙の大きさは、二次粒子の断面観察において、例えば、体積平均粒径MV±4μm以内の二次粒子径を有する粒子を観察した場合に、(1個あたりの)空隙の最長径(平均)を二次粒子径で除した値が0.005以上0.050以下程度である。なお、空隙率及び空隙の大きさは、水洗の前後で変化しない。
[体積平均粒径MV]
正極活物質は、体積平均粒径MVが好ましくは5μm以上40μm以下であり、より好ましくは10μm以上25μm以下である。体積平均粒径MVが上記範囲である場合、正極活物質を二次電池の正極に用いた際、高い出力特性および電池容量と、正極への高い充填性とを両立させることができる。二次粒子の平均粒径が5μm未満になると、正極への高い充填性が得られないことがあり、平均粒径が30μmを超えると、高い出力特性や電池容量が得られないことがある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー光回折散乱式粒度分布計により測定される体積積算値から求めることができる。
[導電率]
正極活物質は、圧粉抵抗測定で求められる導電率が、好ましくは1.0×10-6S/cm以上4.0×10-3S/cm以下の範囲である。通常、正極活物質の導電率が高いほど、電気化学反応における抵抗が低い優れた活物質と考えられるが、短絡時の熱安定性を考慮した場合、適度に導電率が低いことにより、短絡時の急激な電流の発生を抑制することができる。よって、正極活物質の導電率が上記範囲である場合、短絡時の高い熱安定性を得ることができる。また、導電率は、電池特性と短絡時の熱安定性との両立の観点から、1.0×10-5S/cm以上3.0×10-3S/cm以下であってもよく、1.0×10-4S/cm以上2.0×10-3S/cm以下であってもよく、1.0×10-4S/cm以上1.0×10-3S/cm以下であってもよい。なお、導電率は、例えば、正極活物質を4.5g以上5.5g以下の範囲内に秤量し、直径20mmの円柱状に4.0g/ccとなるように加圧成型した後、加圧した状態でJIS K 7194:1994に準拠した4探針法による抵抗率試験方法により測定した体積抵抗率を換算して求めることができる。
なお、リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、上述した金属元素(Li、Ni、Mn、M1、B、Ti)及び酸素以外の元素を、本発明の効果を阻害しない範囲で少量含んでもよい。また、正極活物質に含まれるリチウムニッケルマンガン複合酸化物としては、二次粒子以外に、単独の一次粒子を少量含んでもよい。また、正極活物質は、上記のリチウムニッケルマンガン複合酸化物以外の化合物を含んでもよい。
2.リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
図2~4は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」という。)の製造方法の一例を示す図である。
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、混合工程(S1)と、焼成工程(S2)と、水洗工程(S3)とを備える。また、混合工程(S1)は、以下の工程(1-a)、(1-b)及び(1-c)の少なくとも一つを含む。
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、例えば、図2に示すように、以下の工程(1-a)、工程(2)及び工程(3)を備えてもよい。
工程(1):ニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、チタン化合物と、リチウム化合物と、を混合して、リチウム混合物を得る、混合工程(S1);
工程(3):リチウム混合物を酸化雰囲気中750℃以上1000℃以下で焼成してリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得る、焼成工程(S3)。
工程(3)前記焼成後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗する、水洗工程(S3)。
また、本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、例えば、図3に示すように、以下の工程(1-b)、工程(2)及び工程(3)を備えてもよい。
工程(1-b):チタン化合物を被覆したニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、チタン化合物と、リチウム化合物と、を混合して、リチウム混合物を得る、混合工程(S1-a);
工程(2):リチウム混合物を酸化雰囲気中750℃以上1000℃以下で焼成してリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得る、焼成工程(S2)。
工程(3)前記焼成後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗する、水洗工程(S3)。
また、本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、例えば、図4に示すように、以下の工程(1-c)、工程(2)及び工程(3)を備えてもよい。
(2)ニッケル、マンガン、及びチタンを含むニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、リチウム化合物と、を混合してリチウム混合物を得る、混合工程(S2);
(3)リチウム混合物を酸化雰囲気中750℃以上1000℃以下で焼成してリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得る、焼成工程(S3)。
工程(3)前記焼成後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗する、水洗工程(S3)。
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、いずれの工程を備える場合においても、ニッケルマンガン複合化合物と、リチウム化合物と、特定量のホウ素、及びチタンとを含む、リチウム混合物を焼成し、水洗することにより得ることができる。また、この製造方法により、上述したリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含む正極活物質を工業的規模で容易に得ることができる。
以下、本実施形態に係る製造方法における各工程について、図を参照して説明する。なお、以下の説明は、製造方法の一例であって、本実施形態に係る製造方法を限定するものではない。
[晶析工程(S1-1)]
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、図5(A)に示すように、混合工程(S1)の前に、晶析によりニッケルマンガン複合化合物を得る晶析工程(S1-1)を備えることが好ましい。以下、晶析工程(S1-1)について説明する。
晶析工程(S1-1)は、晶析により、混合工程(S1)に用いられるニッケルマンガン複合化合物(ニッケルマンガン複合水酸化物)を得る工程である。晶析工程(S1-1)は、従来公知の方法により行うことができ、例えば、混合工程(S2)に用いられる、チタンを含むニッケルマンガン複合化合物を得る場合、特許文献4~6に記載の晶析方法を用いることができる。以下、晶析工程(S1-1)について、混合工程(S1-a)、(S1-b)に用いられるニッケルマンガン複合化合物(ニッケル、マンガン、任意に元素M2を含む)を得る場合を例として説明する。
まず、反応槽内において、ニッケル、及びマンガンを含む混合水溶液を、一定速度にて攪拌しながら、中和剤を加えて、中和することによりpHを制御して、ニッケルマンガン複合水酸化物(ニッケルマンガン複合化合物)を共沈殿により生成させる。
ニッケル、マンガンを含む混合水溶液は、例えば、ニッケル及びマンガンの硫酸塩溶液、硝酸塩溶液、塩化物溶液を用いることができる。また、混合水溶液は、元素M2を含んでもよい。混合水溶液に含まれる金属元素の組成は、得られるニッケルマンガン複合水酸化物に含まれる金属元素の組成とほぼ一致する。したがって、目的とする、ニッケルマンガン複合水酸化物の金属元素の組成と同じになるように混合水溶液の金属元素の組成を調製することができる。中和剤は、アルカリ水溶液を用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを用いることができる。
また、中和剤と併せて、錯化剤を混合水溶液に添加することが好ましい。錯化剤は、反応槽内の水溶液(以下、「反応水溶液」という。)中でニッケルイオンやその他金属イオンと結合して錯体を形成可能なものであれば特に限定されず、公知のものを用いることができ、例えば、アンモニウムイオン供給体を用いることができる。アンモニウムイオン供給体としては、とくに限定されないが、例えば、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウムなどを用いることができる。錯化剤を添加することにより、反応水溶液中に金属イオンの溶解度を調整することができる。
晶析工程(S1-1)において、錯化剤を使用しない場合、反応水溶液の温度は、温度(液温)を、60℃を越えて80℃以下の範囲とすることが好ましく、かつ、上記温度における反応水溶液のpHが10以上12以下(25℃基準)であることが好ましい。反応水溶液のpHが12を超える場合、得られる複合水酸化物粒子が細かい粒子となり、濾過性も悪くなり、球状粒子が得られないことがある。一方、反応水溶液のpHが10よりも小さい場合、複合水酸化物粒子の生成速度が著しく遅くなり、濾液中にNiが残留し、Niの沈殿量が目的組成からずれて、目的の比率の複合水酸化物が得られなくなることがある。
また、反応水溶液の温度が60℃を越える場合、Niの溶解度が上がり、Niの沈殿量が目的組成からずれ、共沈にならない現象を回避できる。一方、反応水溶液の温度が80℃を越えると、水分の蒸発量が多いためにスラリー濃度(反応水溶液濃度)が高くなり、Niの溶解度が低下する上、濾液中に硫酸ナトリウム等の結晶が発生し、不純物濃度が上昇する等、正極活物質の充放電容量が低下する可能性が生じる。
晶析工程(S1-1)において、アンモニウムイオン供給体(錯化剤)を使用する場合、反応水溶液の温度は、反応水溶液中のNiの溶解度が上昇するため、好ましくは30℃以上60℃以下であり、かつ、反応水溶液のpHが10以上13以下(25℃基準)であることが好ましい。
また、反応水溶液中のアンモニア濃度は、3g/L以上25g/L以下の範囲内で一定値に保持することが好ましい。アンモニア濃度が3g/L未満である場合、金属イオンの溶解度を一定に保持することができないため、形状及び粒径が整った複合水酸化物の一次粒子が形成されないことがある。また、ゲル状の核が生成しやすいため、得られる複合水酸化物粒子の粒度分布も広がりやすい。一方、アンモニア濃度が25g/Lを越えると、金属イオンの溶解度が大きくなりすぎ、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増えて、得られる複合水酸化物粒子の組成のずれなどが起きやすくなる。なお、アンモニア濃度が変動すると、金属イオンの溶解度が変動し、均一な水酸化物粒子が形成されないため、一定値に保持することが好ましい。例えば、アンモニア濃度は、上限と下限の幅を5g/L程度として所望の濃度に保持することが好ましい。
なお、晶析工程(S1-1)は、バッチ方式による晶析法を用いてもよく、連続晶析法を用いてもよい。例えば、バッチ方式による晶析法の場合、反応槽内の反応水溶液が定常状態になった後に沈殿物を採取し、濾過、水洗して複合水酸化物粒子を得ることができる。また、連続晶析法の場合、混合水溶液とアルカリ水溶液、場合によってはアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を連続的に供給して反応槽からオーバーフローさせて沈殿物を採取し、濾過、水洗して複合水酸化物粒子を得ることができる。
また、ニッケルマンガン複合水酸化物が元素M2を含む場合、元素Mを配合する方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、生産性を高めるという観点から、ニッケル、マンガンを含む混合水溶液に、元素M2を含む水溶液を添加し、元素M2を含むニッケルマンガン複合水酸化物を共沈させる方法が好ましい。
元素M2を含む水溶液としては、たとえば、硫酸コバルト、タングステン酸ナトリウム、酸化タングステン、酸化モリブデン、硫化モリブデン、五酸化バナジウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、水酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩化クロム、タンタル酸ナトリウム、タンタル酸などを含む水溶液を用いることができる。
なお、晶析条件を最適化して組成比の制御を容易にするという観点から、晶析によりニッケルマンガン複合水酸化物を得た後、さらに、得られたニッケルマンガン複合水酸化物に元素M2を被覆する工程を設けてもよい。元素M2を被覆方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
以下に、元素M2の被覆方法の一例について説明する。まず、晶析により得られたニッケルマンガン複合水酸化物を純水に分散させ、スラリーとする。次いで、このスラリーに狙いの被覆量見合いの元素M2を含有する溶液を混合し、所定のpHになるように酸を滴下し、調整する。酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸などが用いられる。次いで、スラリーを所定の時間で混合した後、スラリーのろ過及び乾燥を行い、元素M2が被覆されたニッケルマンガン複合水酸化物を得ることができる。なお、他の被覆方法としては、元素M2を含む化合物を含有する溶液をニッケルマンガン複合水酸化物に噴霧した後乾燥させるスプレードライ法、元素M2を含む化合物を含有する溶液をニッケルマンガン複合水酸化物に含浸させる方法などが挙げられる。
[熱処理工程(S1-3)]
また、本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、図5(B)に示すように、混合工程(S1)及び混合工程(S2)の前に、ニッケルマンガン複合化合物を105℃以上700℃以下の温度で熱処理する熱処理工程(S1-3)を備えてもよい。
熱処理工程(S1-3)は、ニッケルマンガン複合化合物に含まれる水分の少なくとも一部を熱処理により除去する工程である。熱処理工程(S1-3)を行うことにより、焼成工程(S3)で得られる正極活物質のLi/Meのばらつくことを防ぐことができる。
熱処理工程(S1-3)後のニッケルマンガン複合化合物は、例えば、晶析工程(S1-1)により得られたニッケルマンガン複合水酸化物の少なくとも一部が酸化物に転化したニッケルマンガン複合酸化物を含んでもよく、ニッケルマンガン複合水酸化物の全部が酸化物に転化したニッケルマンガン複合酸化物から構成されてもよい。
熱処理は、Li/Meのばらつきをより低減させるという観点から、ニッケルマンガン複水酸化物を、十分に酸化させ、ニッケルマンガン複合酸化物まで転換するようにすることが好ましい。なお、正極活物質のLi/Meにばらつきが生じない程度に水分が除去できればよいので、必ずしもニッケルマンガン複合化合物中のすべての水酸化物を酸化物に転換する必要はない。また、熱処理工程(S1-3)を行う場合、混合工程(S1)は、リチウム混合物を調整する前に、ニッケルマンガン複合水酸化物を熱処理して、その後、熱処理後のニッケルマンガン複合化合物(水酸化物及び/又は酸化物)と、リチウム化合物と、ホウ素化合物と、任意にチタン化合物とを混合して、リチウム混合物を調製することができる。なお、ニッケルマンガン複合化合物が元素M1又はM2を被覆する場合、元素M1又はM2を含む化合物をニッケルマンガン複合水酸化物に被覆した後、熱処理を行ってもよく、熱処理後のニッケルマンガン複合化合物に、元素M1又はM2を含む化合物を被覆してもよい。
熱処理の温度は、例えば、105℃以上700℃以下である。ニッケルマンガン複合化合物を105℃以上で加熱した場合、残留水分の少なくとも一部を除去することができる。なお、熱処理の温度が105℃未満の場合、残留水分を除去するために長時間を要するため工業的に適当でない。一方、熱処理の温度が800℃を超える場合、ニッケルマンガン複合酸化物に転換された粒子が焼結して凝集することがある。例えば、ニッケルマンガン複合水酸化物の大部分をニッケルマンガン複合酸化物まで転換する場合、熱処理の温度は、350℃以上700℃以下とすることが好ましい。
熱処理を行う雰囲気は、特に限定されず、例えば、容易に操作が行えるという観点から、空気気流中において行うことが好ましい。また、熱処理の時間は、特に限定されず、例えば、1時間以上とすることができる。熱処理の時間が1時間未満である場合、複合水酸化物粒子中の残留水分の除去が十分に行われない場合がある。また、熱処理の時間は、好ましくは5時間以上15時間以下である。また、熱処理に用いられる設備は、特に限定されず、複合水酸化物粒子を空気気流中で加熱できるものであればよく、例えば、送風乾燥器、ガス発生がない電気炉などが好適に使用できる。
なお、図5(B)では、晶析工程(S1-1)後のニッケルマンガン複合化合物(水酸化物)を熱処理しているが、晶析工程(S1-1)以外の工程で得られたニッケルマンガン複合化合物を熱処理してもよい。この場合でも、ニッケルマンガン複合化合物中の水分の少なくとも一部を除去することにより、上述した効果を得ることができる。
[混合工程(S1-a)]
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、例えば、図2に示すように、混合工程(S1-a)、焼成工程(S2)及び水洗工程(S3)を備える。混合工程(S1-a)は、図2に示すように、ニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、チタン化合物と、リチウム化合物と、を混合して、リチウム混合物を得る工程である。
得られるリチウム混合物は、リチウムを除く金属元素Me(Ni、Mn、M2、B、Ti)の合計量に対して、チタンを0.1原子%以上5原子%以下含み、かつ、ホウ素を0.1原子%以上3原子%以下で含む。以下、リチウム混合物に含まれる各成分について説明する。
(ニッケルマンガン複合化合物)
ニッケルマンガン複合化合物は、ニッケル、及びマンガン、並びに、任意に元素M2を含み、それぞれの元素の物質量比(モル比)がNi:Mn:M2=(1-a-b’):a:b’(ただし、0.05≦a≦0.60、0≦b’≦0.60であり、M2は、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Ti、Cr、Zr、及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表される。
なお、元素M2は、チタン(Ti)を含んでもよく、含まなくてもよい。また、ニッケルマンガン複合化合物に元素M2としてチタンが含まれる場合、リチウム混合物に含まれるチタンの量は、M2として含まれるチタンの量と、チタン化合物として添加したチタンの量とを合計した量となる。生産性の観点からは、M2はチタンを含まず、チタン化合物として、チタンを添加することが好ましい。
また、ニッケルマンガン複合化合物中の金属(Ni、Mn、M2)の含有量(組成)は、リチウムニッケルマンガン金属複合酸化物中でもほぼ維持されるため、各金属(Ni、Mn、M2)の含有量は、チタンを除いて、上述のリチウムニッケルマンガン金属複合酸化物中の各金属の含有量と同様の範囲であることが好ましい。なお、ニッケルマンガン複合化合物は、晶析工程(S1-1)により得ることができるが、他の方法で得てもよい。
(ホウ素化合物)
ホウ素化合物は、ホウ素を含む化合物であり、好ましくはホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸リチウム、及びホウ酸アンモニウムの少なくとも一つである。なお、ホウ素化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
また、ホウ素化合物は、固相(粉体)で混合されてもよい。ホウ素化合物が粉体で混合される場合、ホウ素化合物の平均粒径は、好ましくは1μm以上1mm以下であり、より好ましくは1μm以上700μm以下である。ホウ素化合物の粒径が上記範囲内で小さいほど、得られる正極活物質の導電率が低下し、かつ、電池特性が向上する傾向がある。なお、ホウ素の平均粒径は、例えば、レーザー光回折散乱式粒度分布計により測定される体積積算値から求めることができる。
また、図6に示すように、ホウ素化合物は、ニッケルマンガン複合化合物に含侵された状態で混合されてもよい。この場合、混合工程(S1)の前に、晶析工程(S1-1)及びホウ素含浸工程(S1-2)を備えることが好ましい。
ホウ素含浸工程(S1-2)は、ニッケルマンガン複合化合物と水とを混合して得られたスラリーに、ホウ酸及びホウ素塩の少なくとも一つを含む溶液を添加して、ニッケルマンガン複合化合物にホウ素を含侵させる工程である。この場合、ホウ素化合物は、ニッケルマンガン複合化合物の表面や内部に付着した状態で、他の成分と混合される。
ホウ素化合物は、混合後に得られるリチウム混合物において、リチウムを除く金属元素Me(Ni、Mn、Ti、B、M2)の合計量に対して、ホウ素(B)が0.1原子%以上3原子%以下、好ましくは0.1原子%以上2.5原子%以下、より好ましくは0.1原子%以上2.0原子%以下となるように混合される。
(チタン化合物)
チタン化合物は、チタンを含む化合物であり、例えば、酸化チタン、硫酸チタン、四臭化チタン、四塩化チタン、珪化チタンなどを用いることができる。これらの中でも、入手のしやすさや、リチウム金属複合酸化物中への不純物の混入を避けるという観点から、酸化チタンが好ましい。なお、チタン化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
チタン化合物は、リチウム混合物中、リチウムを除く金属元素(Ni、Mn、Ti、B、M2)の合計に対して、チタン(Ti)が0.1原子%以上5原子%以下、好ましくは0.1原子%以上4原子%以下、より好ましくは0.5原子%以上3.5原子%以下となるように混合される。
(リチウム化合物)
リチウム化合物は、特に限定されず、リチウムを含む公知の化合物を用いることができる。リチウム化合物は、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、又は、これらの混合物などが用いられる。これらの中でも、残留不純物の影響が少なく、焼成温度で溶解するという観点から、炭酸リチウム、水酸化リチウム、又は、これらの混合物が好ましい。
リチウム化合物は、リチウム混合物中のLi/Meが、0.95以上1.20以下となるように、混合される。つまり、リチウム混合物におけるLi/Meが、得られる正極活物質におけるLi/Meと同じになるように混合される。これは、焼成工程(ステップS3)前後で、Li/Me及び各金属元素のモル比は変化しないので、この混合工程(ステップS12)における、リチウム混合物のLi/Meが、正極活物質のLi/Meとなるからである。
(混合方法)
ニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、チタン化合物と、リチウム化合物との混合方法は、特に限定されず、ニッケルマンガン複合水酸化物等の形骸が破壊されない程度で、これらの化合物が十分に混合されればよい。混合方法としては、例えば、一般的な混合機を使用して混合することができ、例えばシェーカーミキサーやレーディゲミキサー、ジュリアミキサー、Vブレンダーなどを用いて混合することができる。なお、リチウム混合物は、後述する焼成工程(S3)の前に十分混合しておくことが好ましい。混合が十分でない場合、正極活物質の個々の粒子間でLi/Meがばらつき、十分な電池特性が得られない等の問題が生じることがある。
[混合工程(S1-b)]
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、例えば、図3に示すように、混合工程(S1-b)、焼成工程(S2)、及び、水洗工程(S3)を備える。混合工程(S1-b)は、図3に示すように、チタン化合物を被覆したニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、リチウム化合物と、を混合して、リチウム混合物を得る工程である。
また、図3に示すように、混合工程(S1-b)の前に、ニッケルマンガン複合化合物の表面にチタン化合物を被覆する工程(S1-4)を備えてもよい。チタン化合物の被覆方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、特開2008-198364号公報に記載の方法を用いることができる。
以下にチタン化合物の被覆方法の一例について説明する。まず、晶析により得られたニッケルマンガン複合水酸化物を純水に分散させて、スラリーとする。次いで、このスラリーに、チタン塩水溶液と、アルカリ水溶液とを添加してpHを8~11に調整する。その後、スラリーを濾過して、水洗、乾燥し、表面がチタン化合物で被覆されたニッケルマンガン複合水酸化物を得ることができる。また、チタン塩水溶液としては、硫酸チタニル水溶液を用いることができる。
得られるリチウム混合物は、リチウムを除く金属元素Me(Ni、Mn、M1、B、Ti)の合計量に対して、チタンを0.1原子%以上5原子%以下含み、かつ、ホウ素を0.1原子%以上3原子%以下で含む。
混合工程(S1-b)は、チタン化合物を被覆したニッケルマンガン複合化合物を用いること、及び、チタン化合物(粉末)を混合しなくともよいことが、混合工程(S1-a)と異なる。なお、ホウ素化合物、リチウム化合物、及び、混合方法については、上記混合工程(S1-a)と同様であるため、記載を省略する。
[混合工程(S1-c)]
本実施形態に係る正極活物質の製造方法は、例えば、図4に示すように、混合工程(S1-c)、焼成工程(S2)及び水洗工程(S3)を備える。混合工程(S1-c)は、図4に示すように、チタン(Ti)を含むニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、リチウム化合物と、を混合して、リチウム混合物を得る工程である。
得られるリチウム混合物は、リチウムを除く金属元素Me(Ni、Mn、M1、B、Ti)の合計量に対して、チタンを0.1原子%以上5原子%以下含み、かつ、ホウ素を0.1原子%以上3原子%以下で含む。
混合工程(S1-c)は、ニッケルマンガン複合化合物がチタン(Ti)を必須成分として含むこと、及び、チタン化合物を混合しなくともよいことが、混合工程(S1-a)と異なる。以下、リチウム混合物に含まれる各成分について説明する。なお、ホウ素化合物、リチウム化合物、及び、混合方法については、上記混合工程(S1-a)と同様であるため、記載を省略する。
(ニッケルマンガン複合化合物)
ニッケルマンガン複合化合物は、ニッケル、マンガン、及びチタン、並びに、任意に元素M1を含み、それぞれの元素の物質量比がNi:Mn:M1:Ti=(1-a-b-d):a:b:d(ただし、0.05≦a≦0.60、0≦b≦0.60、0.001≦d≦0.05であり、M1は、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Cr、Zr及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表される。
ニッケルマンガン複合化合物中の金属(Ni、Mn、M1、Ti)の含有量(組成)は、リチウムニッケルマンガン複合酸化物中でもほぼ維持されるため、各金属(Ni、Mn、M1、Ti)の含有量は、上述のリチウムニッケルマンガン複合酸化物中の各金属の含有量と同様の範囲であることが好ましい。なお、ニッケルマンガン複合化合物は、晶析工程(S1-1)により得ることができるが、他の方法で得てもよい。
なお、混合工程(1S)は、上記の混合工程(1-a)、(1-b)及び、(1-c)のいずれか一つを含めばよく、各工程を単独で行ってもよいが、各工程を組み合わせて行ってもよい。いずれの場合においても、リチウム混合物中のチタン及びホウ素の含有量が上記特定の範囲となるように混合する。
混合工程(1S)は、例えば、混合工程(1-a)と(1-b)を組み合わせて、チタン化合物を被覆したニッケルマンガン複合化合物と、チタン化合物(粉末)と、ホウ素化合物と、リチウム化合物とを混合してもよい。また、混合工程(1S)は、例えば、混合工程(1-a)と混合工程(1-c)とを組み合わせて、チタンを晶析工程で添加して得られた、チタンを含むニッケルマンガン複合化合物と、チタン化合物(粉末)と、ホウ素化合物と、リチウム化合物とを混合してもよい。また、混合工程(1S)は、混合工程(1-b)と(1-c)とを組み合わせて、チタンを晶析工程で添加して得られた、チタンを含むニッケルマンガン複合化合物を、チタン化合物で被覆した後、ホウ素化合物と、リチウム化合物とを混合してもよい。また、混合工程(1S)は、例えば、混合工程(1-a)、(1-b)及び、(1-c)を組み合わせて、チタンを晶析工程で添加して得られた、チタンを含むニッケルマンガン複合化合物を、チタン化合物で被覆した後、チタン化合物(粉末)と、ホウ素化合物と、リチウム化合物とを混合してもよい。
[焼成工程(S2)]
焼成工程(S2)は、混合工程(S1)で得られたリチウム混合物を、酸化雰囲気中750℃以上1000℃以下で焼成する工程である。リチウム混合物を焼成すると、ニッケルマンガン複合化合物にリチウム化合物中のリチウムが拡散するので、多結晶構造の粒子からなるリチウムニッケルマンガン複合酸化物が形成される。リチウム化合物は、焼成時の温度で溶融し、ニッケルマンガン複合化合物内に浸透して、リチウムニッケルマンガン複合酸化物を形成する。この際、リチウム混合物中に含まれるホウ素、チタンも、溶融したリチウム化合物とともに、二次粒子内部まで浸透し、一次粒子においても結晶粒界などがあれば浸透すると考えられる。
焼成温度は、750℃以上1000℃以下であり、好ましくは750℃以上950℃以下である。上記温度で焼成する場合、リチウム化合物の溶融が生じ、ホウ素、チタンの浸透と拡散が促進される。また、リチウム混合物は、マンガンを含むことにより、焼成温度を高くすることができる。焼成温度が高い場合、ホウ素、チタンの拡散が促進されるとともに、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の結晶性が高くなり、出力特性や電池容量をより向上させることができる。
一方、焼成温度が750℃未満である場合、ニッケルマンガン複合化合物中へのリチウム、ホウ素、チタンの拡散が十分に行われなくなり、余剰のリチウムや未反応の粒子が残ったり、結晶構造が十分整わなくなったりして、十分な電池特性が得られないという問題が生じることがある。また、焼成温度が1000℃を超える場合、形成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物の粒子間で激しく焼結が生じるとともに、異常粒成長を生じることがある。異常粒成長が生じると、焼成後の粒子が粗大となってしまい粒子形態を保持できなくなる。その結果、得られる正極活物質の比表面積が低下し、正極の抵抗の上昇、電池容量の低下という問題が生じる。
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とする。ここで、酸化性雰囲気とは、酸素濃度が3~100容量%の雰囲気をいう。焼成は、好ましくは、大気雰囲気、又は、酸素気流中で行う。焼成雰囲気の酸素濃度が3容量%未満である場合、十分に酸化できず、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の結晶性が十分でない状態になることがある。また、電池特性を考慮すると、焼成は、酸素気流中で行うことがより好ましい。また、焼成に用いられる炉は、特に限定されず、大気又は酸素気流中でリチウム混合物を焼成できるものであればよいが、ガス発生がない電気炉を用いることが好ましく、バッチ式又は連続式の炉のいずれも用いることができる。
焼成時間は、少なくとも3時間以上とすることが好ましく、より好ましくは、6時間以上24時間以下である。焼成時間が3時間未満である場合、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の生成が十分に行われないことがある。
[仮焼]
なお、焼成工程(S2)は、750℃以上1000℃以下の温度で焼成する前に、この焼成温度より低い温度で仮焼する工程をさらに含んでもよい。仮焼は、リチウム混合物中のリチウム化合物、ホウ素化合物が溶融し、ニッケルマンガン複合化合物と反応し得る温度で行うことが好ましい。仮焼の温度は、例えば、350℃以上、かつ、焼成温度より低い温度とすることができる。また、仮焼の温度の下限は、好ましくは400℃以上である。上記の温度範囲でリチウム混合物を保持(仮焼)することにより、リチウム、ホウ素、チタンの拡散が十分に行われ、均一なリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得ることができる。例えば、リチウム化合物として、水酸化リチウムを使用する場合、仮焼は、400℃以上550℃以下の温度で1時間以上10時間程度保持して行うことが好ましい。
[解砕]
なお、焼成工程(S2)後に得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、粒子間の焼結は抑制されているが、弱い焼結や凝集により粗大な粒子を形成していることがある。このような場合には、解砕により上記焼結や凝集を解消して粒度分布を調整することができる。
[水洗(S3)]
水洗工程(S3)は、焼成後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗して、水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物中のホウ素の少なくとも一部を除去する、工程である。水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物と比較して、導電率を低減することができる。
水洗は、ホウ素の少なくとも一部が除去される方法であれば、公知の方法で行うことができる。水洗は、例えば、リチウムニッケルマンガン複合酸化物の粉末を純水に分散させたスラリーを特定の濃度に調整して撹拌することにより行う。水洗条件は、特に限定されず、ホウ素の少なくとも一部を除去でき、導電率が低減できる範囲で、適宜調整することができる。
また、水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、圧粉抵抗測定により求められる4.0g/cmで圧縮した時の導電率が、水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物よりも小さいことが好ましい。また、水洗条件は、水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の導電率が所望の範囲となるように、適宜、調整することができる。
3.リチウムイオン二次電池
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池(以下、「二次電池」ともいう。)は、上述した正極活物質を含む正極と、負極と、非水系電解質とを備える。二次電池は、例えば、正極、負極、及び非水系電解液を備える。また、二次電池は、例えば、正極、負極、及び固体電解質を備えてもよい。また、二次電池は、リチウムイオンの脱離及び挿入により、充放電を行う二次電池であればよく、例えば、非水系電解液二次電池であってもよく、全固体リチウム二次電池であってもよい。なお、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本実施形態に係る二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基づいて、種々の変更、改良を施した形態に適用してもよい。
[構成部材]
(正極)
まず、上記の正極活物質100、導電材および結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。その際、目的とする二次電池の性能に応じて、正極合材ペースト中のそれぞれの混合比は、適宜、調整することができる。例えば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、正極活物質の含有量を60質量部以上95質量部以下、導電材の含有量を1質量部以上20質量部以下とし、結着剤の含有量を1質量部以上20質量部以下としてもよい。
導電材としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料を用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂およびポリアクリル酸を用いることができる。
必要に応じ、正極活物質、導電材および活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加してもよい。溶剤としては、具体的には、N-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加してもよい。
得られた正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じ、電極密度を高めるべく、ロールプレスなどにより加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断などをして、電池の作製に供することができる。なお、正極の作製方法は、上記の方法に限られることなく、他の方法によってもよい。
(負極)
負極として、金属リチウムやリチウム合金などを用いてもよい。また、負極として、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを用いてもよい。
負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
(セパレータ)
正極と負極との間には、必要に応じてセパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(非水系電解質)
非水系電解質としては、非水系電解液を用いることができる。非水系電解液は、例えば、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものを用いてもよい。また、非水系電解液として、イオン液体にリチウム塩が溶解したものを用いてもよい。なお、イオン液体とは、リチウムイオン以外のカチオンおよびアニオンから構成され、常温でも液体状を示す塩をいう。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO、およびそれらの複合塩などを用いることができる。さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
また、非水系電解質としては、固体電解質を用いてもよい。固体電解質は、高電圧に耐えうる性質を有する。固体電解質としては、無機固体電解質、有機固体電解質が挙げられる。
無機固体電解質として、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等が挙げられる。
酸化物系固体電解質としては、特に限定されず、酸素(O)を含有し、かつ、リチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものであれば用いることができる。酸化物系固体電解質としては、例えば、リン酸リチウム(LiPO)、LiPO、LiBO、LiNbO、LiTaO、LiSiO、LiSiO-LiPO、LiSiO-LiVO、LiO-B-P、LiO-SiO、LiO-B-ZnO、Li1+XAlTi2-X(PO(0≦X≦1)、Li1+XAlGe2-X(PO(0≦X≦1)、LiTi(PO、Li3XLa2/3-XTiO(0≦X≦2/3)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、Li3.6Si0.60.4等が挙げられる。
硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、硫黄(S)を含有し、かつ、リチウムイオン伝導性と電子絶縁性とを有するものであれば用いることができる。硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiS-SiS、LiI-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiS-B、LiPO-LiS-SiS、LiPO-LiS-SiS、LiPO-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P等が挙げられる。
なお、無機固体電解質としては、上記以外のものを用いてよく、例えば、LiN、LiI、LiN-LiI-LiOH等を用いてもよい。
有機固体電解質としては、イオン伝導性を示す高分子化合物であれば、特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、これらの共重合体などを用いることができる。また、有機固体電解質は、支持塩(リチウム塩)を含んでいてもよい。なお、固体電解質を用いる場合は、電解質と正極活物質の接触を確保するため、正極材中にも固体電解質を混合させてもよい。
(電池の形状、構成)
二次電池の構成は、特に限定されず、上述したように正極、負極、セパレータ、非水系電解質などで構成されてもよく、正極、負極、固体電解質などで構成されもよい。また、二次電池の形状は、特に限定されず、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。
例えば、二次電池が非水系電解液二次電池である場合、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に、非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して、二次電池を完成させる。
(二次電池の特性)
本実施形態に係る二次電池は、高い電池容量及び低い正極抵抗と、導電性の低下による短絡時の熱安定性とを両立できる。本実施形態に係る二次電池は、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。また、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、従来のリチウムコバルト系酸化物あるいはリチウムニッケル系酸化物を正極活物質として用いた電池と比較した倍、短絡時の熱安定性に優れており、さらに、出力特性、電池容量の点で優れている。そのため、本実施形態に係る二次電池は、小型化、高出力化が可能であり、搭載スペースに制約を受ける電気自動車用電源や、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃焼機関と併用するいわゆるハイブリッド車用の電源としても好適に用いることができる。
以下に、本発明の実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における正極活物質に含有される金属の分析方法及び正極活物質の各種評価方法は、以下の通りである。
(1)組成の分析:ICP発光分析法で測定した。
(2)体積平均粒径MV:レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)により行なった。
(4)形態観察、空隙率:正極活物質を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などにより二次粒子の断面観察が可能な状態とした後、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。次いで、SEM画像から、体積平均粒径(MV)の50%以上となる二次粒子の断面を無作為に20個選択し、それぞれの二次粒子の断面について、画像解析ソフト(ImageJ等)を用いて、下記式から、空隙率の平均値を算出した。
式:[(二次粒子内部の空隙面積)/(二次粒子の断面積)×100](%)
(5)導電率:正極活物質4gあたり1cmとなるように圧縮した状態で、JIS K 7194:1994に準拠した4探針法による抵抗率試験方法により測定した体積抵抗率を換算して求めた。
(電池作製)
得られた正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形し、図7に示す正極(評価用電極)PEを作製した。作製した正極PEを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した後、この正極PEを用いて2032型コイン型電池CBAを、露点が-80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。負極NEには、直径17mm厚さ1mmのリチウム(Li)金属を用い、電解液には、1MのLiClOを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。セパレータSEには膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。また、コイン型電池CBAは、ガスケットGAとウェーブワッシャーWWを有し、正極缶PCと負極缶NCとでコイン型の電池に組み立てた。得られた正極活物質の初期充放電容量および正極抵抗値の測定結果を表2に示す。
(7)初期充電容量:
図7に示すコイン型電池CBAを作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(open circuit voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電して初期充電容量とし、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。充放電容量の測定には,マルチチャンネル電圧/電流発生器(株式会社アドバンテスト製、R6741A)を用いた。
(8)正極抵抗(反応抵抗):
正極抵抗は、測定温度に温度調節したコイン型電池を充電電位4.1Vで充電して、交流インピーダンス法により抵抗値を測定した。測定には、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用して、図8(上段)に示すナイキストプロットを作成し、図8(下段)に示した等価回路を用いてフィッティング計算して、正極抵抗(反応抵抗)の値を算出した。
(参考例1)
(晶析工程)
反応槽(60L)に純水を所定量入れ、攪拌しながら槽内温度を45℃に設定した。このとき反応槽内に、反応槽液中の溶存酸素濃度が1.5mg/LとなるようにNガスを流した。この反応槽内にニッケル:マンガン:コバルトのモル比が85:10:5となるように、硫酸ニッケル、硫酸マンガン、硫酸コバルトの2.0Mの混合水溶液と、アルカリ溶液である25質量%水酸化ナトリウム溶液、錯化剤として25質量%アンモニア水を反応槽に同時に連続的に添加した。このとき混合水溶液の滞留時間は8時間となるように流量を制御し、反応槽内のpHを12.0~12.8に、アンモニア濃度を12~13g/Lに調整した。反応槽が安定した後、オーバーフロー口からニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を含むスラリーを回収した後、濾過を行いニッケルコバルトマンガン複合水酸化物のケーキを得た(晶析工程)。濾過を行ったデンバー内にあるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物140gに対して1Lの純水を通液することで、不純物の洗浄を行った。濾過後の粉を乾燥し、Ni0.85Co0.10Mn0.05(OH)2+α(0≦α≦0.4)で表されるニッケルコバルトマンガン複合水酸化物を得た。
(混合工程)
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物と、水酸化リチウムと、ホウ酸(HBO、平均粒径500μm)と、チタン化合物(TiO)とを、シェーカーミキサー装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて十分に混合し、リチウム混合物を得た。なお、各成分は、リチウム混合物において、リチウム以外の金属元素Me(Ni、Mn、Co、B、Ti)の合計量に対して、チタンが2.3原子%、ホウ素が0.3原子%となるように、かつ、リチウム(Li)と、Li以外の金属元素Meとのモル比(Li/Me)が1.01になるように、秤量して、混合した。
(焼成工程)
得られたリチウム混合物を酸素気流中にて800℃で10時間保持して焼成し、その後、解砕してリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質を得た。
得られた正極活物質の製造条件を表1に、評価結果(組成、体積平均粒径MV、空隙率、導電率、電池特性)を表2に示す。
(参考例2)
ホウ素が0.5原子%となるようにホウ酸を秤量したこと以外は参考例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。また、得られた正極活物質の断面SEM像を図9に示す。
(参考例3)
ホウ素が1.0原子%となるようにホウ酸を秤量したこと以外は参考例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(参考例4)
チタンが1.2原子%になるようにホウ酸を秤量したこと以外は参考例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(参考例5)
チタンが3.3原子%になるようにチタン化合物を秤量したこと、及び、焼成温度を830℃とした以外は、参考例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(参考例6)
焼成温度を830℃とした以外は、参考例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(参考例7)
焼成温度を850℃とした以外は、参考例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(参考例8)
ホウ酸の平均粒径を100μmとした以外は、参考例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(参考例9)
ホウ酸の平均粒径を50μmとした以外は、参考例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(参考例10)
ホウ酸の平均粒径を10μmとした以外は、参考例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(参考例11)
ホウ素化合物として、酸化ホウ素(平均粒径500μm)を用いた以外は、参考例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(実施例1)
焼成温度を830℃とした以外は参考例2と同様に得られたリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を、水洗濃度50g/L(正極活物質20g、純水量0.4L)、4時間で水洗して、正極活物質を得た。
(実施例2)
焼成温度を830℃とした以外は参考例3と同様に得られたリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を、水洗濃度50g/L(正極活物質20g、純水量0.4L)、4時間で水洗して、正極活物質を得た。
(比較例1)
混合工程において、ホウ酸とチタン化合物とを混合しなかった以外は、実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(比較例2)
ホウ酸を混合せず、焼成温度を830℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。また、得られた正極活物質の断面SEM像を図10に示す。
(比較例3)
チタン化合物を混合せず、焼成温度を830℃とした以外は、実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(比較例4)
ホウ素が5原子%となるようにホウ酸を秤量し、焼成温度を830℃としたこと以外は実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
(比較例5)
チタンが10原子%となるようにチタン化合物を秤量し、焼成温度を830℃としたこと以外は実施例1と同様に正極活物質を得るとともに評価した。製造条件及び評価結果を、表1および表2に示す。
Figure 0007292574000001
Figure 0007292574000002
(評価結果)
表1及び表2に示すように、チタン及びホウ素を特定量で含有する参考例の正極活物質では、導電率が4.0×10-3S/cm以下の範囲であり、正極抵抗も、チタン及び/又はホウ素を添加しない比較例1~3と比較して、低くなっている。また、参考例の正極活物質では、チタン及びホウ素を含まない比較例1と同程度の充電容量が維持されている。さらに、参考例2、3と焼成温度以外は同様の条件で得られたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗した、実施例1、2では、参考例2、3と比較して、導電率がより低下することが示された。
また、図11は、チタン及びホウ素を添加しない比較例1、チタンを単独で添加した比較例2(Ti:2.3原子%)、ホウ素を単独で添加した比較例3(B:0.5原子%)、及び、チタン及びホウ素をそれぞれ比較例2、3と同量添加した参考例2の導電率と正極抵抗とを示すグラフである(導電率:左軸、棒グラフ、正極抵抗:右軸、折れ線グラフ)。図10に示すように、チタンを単独で添加した場合(比較例2)、チタン及びホウ素を添加しない場合(比較例1)と比較して、導電率が低減し、かつ、正極抵抗も低減する。一方、ホウ素を単独で添加した場合(比較例3)、チタン及びホウ素を添加しない場合(比較例1)と比較して、正極抵抗は低減するものの、導電率は増加し、短絡時の熱安定は悪化すると考えられる。ところが、チタン及びホウ素の両方を添加した場合(参考例2)、チタン、ホウ素をそれぞれ単独で添加した場合(比較例2、3)よりも正極抵抗が低減されるのみならず、導電率が、チタンを単独で添加した場合(比較例2)よりも導電率がさらに低下することが示された。
また、図12は、ホウ素の添加量以外は、同様の条件で製造された参考例1~3、比較例2、4の正極活物質の導電率と正極抵抗を示したグラフである。図10及び表2に示されるように、ホウ素の添加量が3原子%を超える比較例4の正極活物質では、正極抵抗が非常に増加し、充電容量も低下することが示された。
また、図13は、チタンの添加量以外は、ほぼ同様の条件で製造された参考例2、4、5、比較例3、5の正極活物質の導電率と正極抵抗を示したグラフである。図11及び表2に示されるように、チタンの添加量が5原子%を超える比較例5の正極活物質では、正極抵抗が非常に増加し、充電容量も低下することが示された。
また、図9は、参考例2の正極活物質のSEM断面を示した図である。図9に示されるように、実施例の正極活物質では、リチウムニッケルマンガン複合酸化物10の二次粒子内部に複数の空隙Gが観察される。また、この空隙Gの割合は、表2に示されるように、ホウ素の添加量に応じて、大きくなる傾向が確認された。
本実施形態では、高い出力特性、エネルギー密度、短絡安全性を両立するリチウムイオン二次電池用正極活物質を工業的な製造方法で得ることができる。このリチウムイオン二次電池は、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。
また、本実施形態の二次電池は、従来のリチウムコバルト系酸化物あるいはリチウムニッケル系酸化物の正極活物質を用いた電池との比較においても、安全性に優れており、さらに出力特性、容量の点で優れている。そのため、小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける電気自動車用電源として好適である。
また、本実施形態の正極活物質及びそれを用いた二次電池は、純粋に電気エネルギーで駆動する電気自動車用の電源のみならず、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃焼機関と併用するいわゆるハイブリッド車用の電源としても用いることができる。
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態などで説明した態様に限定されるものではない。上述の実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、本明細書で引用した全ての文献の内容を援用して本文の記載の一部とする。
CBA…コイン型電池(評価用)
PE…正極(評価用電極)
NE…負極
SE…セパレータ
GA…ガスケット
WW…ウェーブワッシャー
PC…正極缶
NC…負極缶
G…空隙
10…リチウムニッケルマンガン複合酸化物

Claims (12)

  1. 複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗して得られるリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含み、
    前記水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物は、リチウム、ニッケル、マンガン、ホウ素、及びチタン、並びに、任意に元素M1を含み、それぞれの元素の物質量比がLi:Ni:Mn:M1:B:Ti=e:(1-a-b-c―d):a:b:c:d(ただし、0.05≦a≦0.60、0≦b≦0.60、0.001≦c≦0.03、0.001≦d≦0.05、0.95≦e≦1.20であり、元素M1は、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Cr、Zr及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表され、前記ホウ素の少なくとも一部が、前記一次粒子の表面及び粒界の少なくとも一方に偏析し、
    前記水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物中のホウ素の少なくとも一部が、前記水洗により除去されてなる、
    リチウムイオン二次電池用正極活物質。
  2. 前記二次粒子内の断面SEM観察において、二次粒子内に空隙が存在し、かつ、前記二次粒子内の空隙率が0.2%以上10%以下である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  3. 体積平均粒径MVが5μm以上30μm以下である、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  4. 圧粉抵抗測定により求められる4.0g/cmで圧縮した時の導電率が、1.0×10-6S/cm以上4.0×10-3S/cm以下の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  5. 前記水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物中のホウ素含有量が、ニッケル、マンガン、ホウ素、チタン、及び、元素M1の合計量に対して、0原子%以上0.005原子%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
  6. 複数の一次粒子が凝集した二次粒子で構成されたリチウムニッケルマンガン複合酸化物を含むリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    以下の工程(1-a)、(1-b)及び(1-c)のうち少なくとも一つを含む混合工程と、工程(2)と、工程(3)とを備え、
    前記リチウムニッケルマンガン複合酸化物は、少なくとも、リチウム、ニッケル、マンガン、ホウ素、及びチタンを含み、リチウムと、リチウム以外の金属元素Meとの物質量比(Li/Me)が、0.95以上1.20以下であり、前記ホウ素の少なくとも一部が、前記一次粒子の表面及び粒界の少なくとも一方に偏析する、
    リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
    工程(1-a):ニッケル、及びマンガン、並びに、任意に元素M2を含み、それぞれの元素の物質量比がNi:Mn:M2=(1-a-b’):a:b’(ただし、0.05≦a≦0.60、0≦b’≦0.60であり、M2は、Ti、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Cr、Zr、及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表されるニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、チタン化合物と、リチウム化合物と、を混合して、リチウム混合物を得る、混合工程;
    工程(1-b):その表面にチタン化合物を被覆し、かつ、ニッケル、及びマンガン、並びに、任意に元素M2を含み、それぞれの元素の物質量比がNi:Mn:M2=(1-a-b’):a:b’(ただし、0.05≦a≦0.60、0≦b’≦0.60であり、M2は、Ti、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Cr、Zr、及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表されるニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、リチウム化合物と、を混合してリチウム混合物を得る、混合工程
    工程(1-c):ニッケル、マンガン、及びチタン、並びに、任意に元素M1を含み、それぞれの元素の物質量比がNi:Mn:M1:Ti=(1-a-b-d):a:b:d(ただし、0.05≦a≦0.60、0≦b≦0.60、0.001≦d≦0.05であり、M1は、Co、W、Mo、V、Mg、Ca、Al、Cr、Zr及びTaから選択される少なくとも1種の元素である。)で表されるニッケルマンガン複合化合物と、ホウ素化合物と、リチウム化合物と、を混合してリチウム混合物を得る、混合工程;
    工程(2):前記リチウム混合物を酸化雰囲気中750℃以上1000℃以下で焼成してリチウムニッケルマンガン複合酸化物を得る、焼成工程;
    工程(3)前記焼成後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物を水洗して、前記水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物中のホウ素の少なくとも一部を除去する、水洗工程;
    前記混合工程において、前記リチウム混合物は、リチウムを除く金属元素Meの合計量に対して、チタンを0.1原子%以上5原子%以下含み、かつ、ホウ素を0.1原子%以上3原子%以下で含む。
  7. 前記混合工程の前に、以下の工程(1-1)を備え、前記混合工程における、前記ホウ素化合物の平均粒径が1μm以上1mm以下である、
    請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
    工程(1-1):晶析により前記ニッケルマンガン複合化合物を得る晶析工程。
  8. 前記混合工程における、前記ホウ素化合物がホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸リチウム、及びホウ酸アンモニウムの少なくとも一つである、請求項6又は請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
  9. 前記混合工程の前に、以下の工程(1-1)及び工程(1-2)を備え、前記混合工程における、前記ホウ素化合物は、前記ニッケルマンガン複合化合物に含侵された状態で混合される、
    請求項6に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
    (1-1)晶析により前記ニッケルマンガン複合化合物を得る晶析工程;
    (1-2)前記ニッケルマンガン複合化合物と水とを混合して得られたスラリーに、ホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも一つを含む溶液を添加して、前記ニッケルマンガン複合化合物にホウ素を含浸させる、ホウ素含浸工程。
  10. 前記混合工程の前に、以下の工程(1-3)を備える、
    請求項6~9のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質用正極活物質の製造方法。
    (1-3)前記ニッケルマンガン複合化合物を105℃以上700℃以下の温度で熱処理する熱処理工程。
  11. 圧粉抵抗測定により求められる4.0g/cmで圧縮した時の導電率が、前記水洗前のリチウムニッケルマンガン複合酸化物よりも、前記水洗後のリチウムニッケルマンガン複合酸化物の方が小さい、請求項6~10のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質用正極活物質の製造方法。
  12. 正極と負極とセパレータと非水系電解液とを備え、正極は、請求項1~5のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池。
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