JP6474953B2 - 水素分離体及び水素分離体を用いた水素製造装置 - Google Patents
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Description
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、高い水素透過性能と耐剥離性とを両立できる水素分離体及び水素分離体を用いた水素製造装置を提供することにある。
[経路長の測定方法]
(1)第1に、前記水素分離層に対して、前記厚み方向に垂直な平面方向にて平行な一対の辺に挟まれるとともに幅を規定した短冊状の測定領域を設定する。
(2)第2に、前記一対の辺の一方の辺から他方の辺に向かって垂線を引くとともに、以下の手順で経路線を引く。但し、この経路線を引く際には、該経路線を引く開始時であるスタート時の空孔は経路から外し、前記水素分離金属又は前記多孔質体を構成するセラミックス部分からのスタートとする。なお、途中の空孔はセラミックス部分とみなす。
<前記水素分離金属からスタートした場合>
(A)まず、前記水素分離金属の存在する領域内を前記垂線に沿って前記経路線を引く。
(B)次に、前記(A)にて引いた経路線が前記セラミックス部分に到達した場合、
前記セラミックス部分と前記水素分離金属との境界線と、前記経路線とが点Pにて交わるときには、前記点Pでの前記境界線の傾きを示す線を求め、前記他方の辺側に延びる方向における前記傾きを示す線と前記垂線との成す角度θを求め、下記(B−1)、(B−2)の方法にて、前記経路線を引く。
(B−1)角度θが50°より大きい場合
前記点Pから前記経路線を前記垂線に沿って進め、前記セラミックス部分と前記水素分離金属との前記境界線と、前記経路線とが点Qにて交わる場合には、前記点Pと前記点Qの長さを直径とした仮想円を描き、この点Pと点Qとをつなぐ仮想円の半円を前記経路線とする。この点Qからは前記(A)の手順に戻って前記経路線を引く。
(B−2)角度θが50°以下の場合
前記点Pから前記境界線の傾きを示す線に沿って前記経路線を進め、その際に前記垂線との成す角度が0°の方向に前記水素分離金属が出現する点Rまで経路線を進める。そして、前記点Rで再びθ=0°方向(即ち前記他方の辺の方向)に進み、この点Rからは前記(A)の手順に戻って前記経路線を引く。
<前記セラミックス部分からスタートした場合>
前記(B−1)の方法から始め、前記角度θに応じて前記経路線を引く。
そして、前記(A)、(B)に示す方法に従った操作を前記水素分離層の前記測定範囲における厚みの範囲内で繰り返して前記経路線を引き、この経路線の全長である前記経路長を計算する。
また、屈曲度(Tortuosity)τとは、後に詳述するように、「(水素分離層の厚み方向において水素分離金属中を水素が透過する経路の長さである)水素の経路長/水素分離層の厚み」で示される値である。
本第2態様では、水素分離層の厚みが0.1μm以上であるので、(原料ガス等から)分離される水素の純度が高い。また、水素分離層の厚みが10μm以下であるので、水素透過性能が高いという効果がある。
本第3態様の水素製造装置は、上述した水素分離体を備えているので、高い水素製造能力と高い耐久性を有している。
・多孔質体としては、多孔質支持体と、多孔質支持体の表面に形成された内側多孔質層と、内側多孔質層の表面に形成された外側多孔質層(保護層)とからなる構成が挙げられる。
この多孔質体の材料としては、例えばセラミックスが用いられる。このセラミックスとしては、イットリア安定化ジルコニア、安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、セリア、ドープドセリアのうち、少なくとも1種が挙げられる。
具体的には、下記の方法によって、充填率εを求めることができる。
具体的には、下記の方法によって、屈曲度τを求めることができる。
第1に、上述した短冊状の領域(測定範囲)に対して、水素分離層の厚み方向(図1の上下方向)に垂線を引く。例えば、同図の左右方向に広がる水素分離層に対して垂直(同図上下方向)に垂線を引く。
第2に、外側界面から内側界面に向かって、経路線を下記に従って、図1の白線で示すように引く。スタート時の空孔(K)は経路から外し、水素分離金属(M)又はセラミック(S)からのスタートとする。なお、途中の空孔はセラミック扱いとする。
(A)水素分離金属の存在する領域内を垂線に沿って経路線を引く。
(B)(A)にて引いた経路線がセラミック部分に到達した場合
セラミック部分と水素分離金属との境界線と、経路線とが点Pにて交わる。点Pでの境界線の傾線を求める。内側界面に延びる方向における傾線と垂線との成す角度θ(図2参照)を求める。
点P(P1)から経路線を垂線に沿って進めると、セラミック部分と水素分離金属との境界線と、経路線とが点Qにて交わる。点Pと点Qの長さを直径とした仮想円を描く。点Pと点Qとをつなぐ仮想円の半円が経路線となる。経路線の長さは仮想円の円周の長さの半分である。点Qからは(A)のルールに戻る。
点P(P2)から境界線を近似した直線に沿って経路線を進める。そして、その直線と垂線との成す角度が0°の方向に水素分離金属が出現する点Rまで経路線を進める。点Rで再びθ=0°方向(図1の下方向)に進むこととする。点Rからは(A)のルールに戻る。
(B−1)のルールから始める。
そして、これらのルールに従った操作を水素分離層の厚みの範囲内で繰り返す。これにより、実際の水素が水素分離金属中を進む距離(経路長)が計算される。
具体的には、多孔質の原料粉末の粒径や形成時の焼成温度等を調節することにより、多孔質体における空孔(細孔)の状態を調節でき、それによって、この細孔内に充填される水素分離金属の充填状態(従って水素分離体の組織の状態)を制御できる。
・なお、水素透過性能と充填率εと屈曲度τとの比(ε/τ)との間には、下記の関係があると考えられる。
J=q×(S/d)・{(P1)1/2−(P2)1/2} ・・・(1)
J:水素透過流速[mol/m2/sec]
q:水素透過係数[mol/sec/Pa0.5]
S:水素分離層面積[m2]
d:水素分離層厚[m]
P1:供給側圧力[Pa]
P2:透過側圧力[Pa]
また、細孔内に水素分離金属が充填される場合には、下記式(2)及び(3)の関係があると考えられる。
d=d'×τ ・・・(3)
S :相当水素分離層面積[m2]
S':水素分離層面積[m2]
d :相当水素分離層厚[m]
d':実測水素分離層厚[m]
ε :充填率
τ :屈曲度
従って、上記式(2)及び(3)を上記(1)に代入することにより、下記式(4)が得られる。
よって、この式(4)から、水素透過性能とε/τとには、対応関係があることが分かる。
a)まず、本実施例の水素分離体の構成について説明する。
このうち、多孔質支持体5は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなり、原料ガスを透過可能な通気性を有する多孔質セラミックス製の支持体である。
そして、後述するように、セラミック支持体9の外表面には、その大部分を(基端側を除いて)を覆うように、層状の表面構造11が形成されている。
この内側多孔質層13は、YSZからなり、原料ガスを透過可能な通気性を有する多孔質セラミックス製の被覆層である。
この保護層15は、水素分離層17の外側(図4上方)にも広がっているので、外部から水素分離層17を損なうような汚染物質(例えばFe)が、水素分離層17に付着することを防止している。
特に、本実施例では、多孔質層19(詳しくは水素分離層17)における水素分離金属の充填の割合を示す指標である充填率εと、水素分離層17の厚み方向における水素の透過経路の長さの程度を示す指標である屈曲度τとの比(ε/τ)が、0.2〜0.6の範囲である。
この水素製造装置としては、例えば特開2012−7727号公報に記載の装置を採用できる。
c)次に、本実施例の水素分離体1の製造方法について説明する。
<第1粉末充填工程>
本実施例では、図7(a)に示す様な型枠61を用いてプレス成形を行う。この型枠61の筒状のゴム型63の軸中心には、水素分離体1の外形に対応した円柱形の内部孔65が形成されており、この内部孔65の軸中心には、水素分離体1の中心孔3の形状に対応した円柱状(試験管形状)の中心ピン67が立設されている。これにより、略円筒形状の型枠孔69が形成されている。
<第2粉末充填工程>
次に、図7(b)に示す様に、同様に、ゴム型63の型枠孔69内において、緻密質形成部71の上に、多孔質支持体5を形成する材料として、造孔材として有機ビーズを48体積%添加したYSZ造粒粉を充填した。
<加圧工程>
次に、図7(c)に示す様に、ゴム型63の上部に、上部金型73を固定した。
<焼成工程>
次に、ゴム型63より取り出した有底円筒形状成形体79を脱脂し、その後、大気中で1500℃にて1時間焼成することにより、図8(a)に示す様に、φ10mm×長さ300mmのセラミック焼成体85を得た。なお、このセラミック焼成体85は、緻密質支持体7と多孔質支持体5とからなる
<内側多孔質層形成工程>
次に、YSZ粉末を有機溶媒中に分散させたスラリーを作製し、ディップコーティング法によって、セラミック焼成体85の表面(即ち多孔質支持体5の表面)にスラリーを付着させた。
<Pd金属核形成工程>
次に、内側多孔質層13を備えた多孔質支持体5(その外側)を、Snイオン溶液に浸漬し、Snイオンを内側多孔質層13の表面側(図8(b)の右側)に吸着させ、水洗後、Pdイオン溶液に浸漬させて、SnイオンとPdイオンの交換反応によりPdイオンを吸着させた。
<保護層形成工程>
次に、Pd金属核を付着させた内側多孔質層13に対して、再度上述したYSZスラリーをディップコーティングした後に、大気中で1500℃にて2時間焼き付けることにより、図8(c)に示す様に、保護層15を形成した。
<無電解メッキ工程>
次に、図8(d)に示す様に、無電解メッキ法(化学メッキ法)により、内側多孔質層13の細孔21内に付着させたPd金属核を成長させ、細孔21の一部を埋めるようにして、内側多孔質層13の表面側(保護層15側:図8(d)の右側)に、3.0μmの厚みでPdからなる無電解メッキ層91を形成した。
<電解メッキ工程>
次に、電解メッキによって、無電解メッキ層91の表面側(保護層15側)に、図8(e)に示す様に、電解メッキによって電解メッキ層93を形成した。
また、NaCl電解液中に給電電極95を挿し込んだ後、水素分離中間体87を、予め対極97の配置された浴温30℃の電解Agメッキ液(硝酸銀溶液:濃度37g/L)中にセットした。なお、電解Agメッキ液は、保護層15の外側(図9の右図の右側)に供給される。
<合金化工程>
洗浄後に、金属部形成体101に対して、窒素中750℃で熱処理を行い、PdとAgとを合金化し、厚み4μmのPdAg合金からなる水素分離金属部27とした。これにより、厚み4μmの水素分離層17が形成された。
e)次に、本実施例の効果について説明する。
[実験例]
次に、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
温度550℃の条件下で、水素分離体の外側(供給側)に水素ガスを供給して内側(透過側)に水素ガスを透過させて、外側と内側との圧力差を0.1MPaとなるよう調整し、湿式ガスメーターを用いて、内側に透過してくる水素ガスの単位面積[cm2]及び単位時間[min]当たりの透過量[cc]を測定した。
<実施例1>
実施例1では、画像解析による水素分離層における面積比は、空孔1.2%、YSZ47.1%、PdAg51.7%、厚み4.48μmである。
実施例2では、画像解析による水素分離層における面積比は、空孔1.5%、YSZ56.2%、PdAg42.3%、厚み3.96μmである。
実施例3では、画像解析による水素分離層における面積比は、空孔1.3%、YSZ64.1%、PdAg34.6%、厚み4.71μmである。
比較例1では、画像解析による水素分離層における面積比は、空孔1.3%、YSZ72.5%、PdAg26.2%、厚み4.92μmである。
つまり、この実験から、充填率εと屈曲度τとの比(ε/τ)が、0.2〜0.6の範囲の場合(実施例1〜5)には、高い水素透過性能と高い耐剥離性とを両立できることが分かる。
(1)例えば、水素分離金属層中の充填率は、層厚方向で片側から反対側へ傾斜していてもよく、中央部で充填率が高くなるよう傾斜していてもよく、また充填率の異なる複数の層で構成されていてもよい。
(3)更に、内部給電方式の場合には、セラミック支持体の外側に電解液を供給するとともに、内側に電解めっき液を供給し、内側(中心孔側)よりめっき金属を析出させてもよい。
5…多孔質支持体
7…緻密質支持体
9…セラミック支持体
13…内側多孔質層
15…外側多孔質層(保護層)
17…水素分離層
19…多孔質層
20…多孔質体
Claims (3)
- 多孔質体と、該多孔質体の細孔内に水素を含む気体のうち水素のみを選択して透過させる水素分離金属が充填された水素分離層と、を有する水素分離体において、
前記多孔質体を構成する材料は、イットリア安定化ジルコニア、安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、セリア、ドープドセリアのうち、少なくとも1種のセラミックスであり、
前記水素分離金属は、Pd、PdCu合金、PdAg合金、PdAu合金のうち、少なくとも1種であり、
前記水素分離層における前記水素分離金属の充填の割合を示す指標である充填率εと、「前記水素分離層の厚み方向において前記水素分離金属中を水素が透過する経路の長さである水素の経路長/前記水素分離層の厚み」で示す指標である屈曲度τとの比(ε/τ)が、0.26〜0.60の範囲であり、
前記経路長とは、前記水素分離層の厚み方向に沿って破断した断面において、下記の[経路長の測定方法]によって規定されるものであることを特徴とする水素分離体。
[経路長の測定方法]
(1)第1に、前記水素分離層に対して、前記厚み方向に垂直な平面方向にて平行な一対の辺に挟まれるとともに幅を規定した短冊状の測定領域を設定する。
(2)第2に、前記一対の辺の一方の辺から他方の辺に向かって垂線を引くとともに、以下の手順で経路線を引く。但し、この経路線を引く際には、該経路線を引く開始時であるスタート時の空孔は経路から外し、前記水素分離金属又は前記多孔質体を構成するセラミックス部分からのスタートとする。なお、途中の空孔はセラミックス部分とみなす。
<前記水素分離金属からスタートした場合>
(A)まず、前記水素分離金属の存在する領域内を前記垂線に沿って前記経路線を引く。
(B)次に、前記(A)にて引いた経路線が前記セラミックス部分に到達した場合、
前記セラミックス部分と前記水素分離金属との境界線と、前記経路線とが点Pにて交わるときには、前記点Pでの前記境界線の傾きを示す線を求め、前記他方の辺側に延びる方向における前記傾きを示す線と前記垂線との成す角度θを求め、下記(B−1)、(B−2)の方法にて、前記経路線を引く。
(B−1)角度θが50°より大きい場合
前記点Pから前記経路線を前記垂線に沿って進め、前記セラミックス部分と前記水素分離金属との前記境界線と、前記経路線とが点Qにて交わる場合には、前記点Pと前記点Qの長さを直径とした仮想円を描き、この点Pと点Qとをつなぐ仮想円の半円を前記経路線とする。この点Qからは前記(A)の手順に戻って前記経路線を引く。
(B−2)角度θが50°以下の場合
前記点Pから前記境界線の傾きを示す線に沿って前記経路線を進め、その際に前記垂線との成す角度が0°の方向に前記水素分離金属が出現する点Rまで経路線を進める。そして、前記点Rで再びθ=0°方向(即ち前記他方の辺の方向)に進み、この点Rからは前記(A)の手順に戻って前記経路線を引く。
<前記セラミックス部分からスタートした場合>
前記(B−1)の方法から始め、前記角度θに応じて前記経路線を引く。
そして、前記(A)、(B)に示す方法に従った操作を前記水素分離層の前記測定範囲における厚みの範囲内で繰り返して前記経路線を引き、この経路線の全長である前記経路長を計算する。 - 前記水素分離金属が充填された水素分離層の厚みが、0.1〜10μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の水素分離体。
- 前記請求項1又は2に記載の水素分離体を備えたことを特徴とする水素製造装置。
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