本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
<実施の形態1>
(概要について)
はじめに、本実施の形態に係る建物の外壁構造の概要について説明する。
図1および図2を参照して、建物の外壁構造1は、梁22および柱23を含む構造躯体部2と、構造躯体部2よりも屋外側に固定された複数の外壁パネル3,4とを備えている。外壁パネル3,4を正面(表面)側から見た形状は矩形形状である。外壁パネル3は標準仕様の外壁パネルであり、外壁パネル4の厚みの方が、外壁パネル3の厚みよりも大きい。厚みの異なる外壁パネル3,4は、横方向または上下方向に隣接して配置される。
本実施の形態において外壁構造1を採用する建物10は、たとえば鉄骨系の2階建て住宅である。建物10は、典型的には、いわゆるパネル工法によって造られた工業化住宅(プレハブ住宅)である。パネル工法とは、外壁、床および屋根などの建物の構成要素を予め工場にて所定の大きさにパネル化し、施工現場でこれらのパネルを組み立てて構築する工法である。
建物10自体の構造躯体は、基礎21、梁22、および柱23などを含むが、上記構造躯体部2は、建物10の構造躯体のうち、平面視において屋内空間と屋外空間とを仕切る外周ラインに沿って配置され、かつ、基礎21よりも上に位置する躯体部を示している。建物10の外周ラインは矩形状であり、建物10は、四方にそれぞれ配置された4つの外壁部を有している。
図1および図2に示されるように、建物10においては、直交する2つの外壁部10a,10bにおいて、2階の一部に厚い外壁パネル4が並べて配置され、2階のそれ以外の部分と1階全体に、標準仕様の外壁パネル3が配置されている。これにより、建物10の外壁部10a,10bにおいて、外壁面(外装面部材の表面)に段差が形成されている。
具体的には、外壁部10aと外壁部10bとが交わる2階コーナー部に、複数の厚い外壁パネル4が各外壁部の横方向に沿って隣接して配置されている。この場合、各外壁パネル4は、標準仕様の外壁パネル3と上下方向に隣接して配置される。また、各外壁部10a,10bにおいて、横方向に沿って、標準仕様の外壁パネル3と複数の外壁パネル4のうちの1つとが、隣接して配置されている。なお、図1には、外壁部10aの横方向を矢印A1で示し、外壁部10bの横方向を矢印A2で示している。各外壁部の横方向は、梁22の延在方向に一致する。
ここで、比較のために、公知の建物の外壁構造について簡単に説明する。図28には、単純な2階建ての建物(住宅)110が模式的に示されている。建物110の各外壁部においては、均一の厚みの複数の外壁パネル103が上下方向および横方向に並べられている。このような建物110においては、外壁面に凹凸がないため、外観の意匠性が乏しい。
また、外壁面に凹凸を持たせた一般的な建物においては、外壁パネル103の厚みはそのままで、構造躯体の配置を変えることで凹凸が形成されている。たとえば、図29に示されるように、キャンチルームを設けた建物110Aにおいては、梁22を屋外方向へ突出させている。この場合、梁22を含めた構造躯体の負担が増える。
また、図30(B)に示されるように、外壁の一部に突出構造部を設けた建物110Bにおいては、図30(A)に示される建物110の基礎21の配置と比較すると、基礎21の位置が凹凸に合わせて変更されている。また、凹凸を付けることにより、基礎121が余分に追加されている。具体的には、突出構造部81の屋内側に、入込部82の外壁ラインに沿って基礎121が追加されている。この場合、突出構造部81の突出具合が比較的小さいと、突出構造部81の外壁パネル下の基礎21とその屋内側に追加された基礎121とが近接するため、施工が難しい場合がある。
これに対し、本実施の形態に係る建物の外壁構造1は、構造躯体の配置を変えることなく、外壁パネル3,4の厚みの差によって、外壁に凹凸を持たせている。そのため、本実施の形態の建物10の構造躯体の配置は、図30(A)のようなシンプルな建物110の構造躯体の配置と同じのままで、構造躯体の負担を増加させることなく、意匠性が向上された外観を作り出すことができる。
なお、図30(B)に示した建物110Bのような外壁面の凹凸も、図3に示す外壁構造1Aのように、突出させたい位置にのみ、厚い外壁パネル4を配置することで、構造躯体の構成を複雑にすることなく、建物110Bと同様の外観を作り出すことができる。
以下に、このような外壁パネル3,4について、詳細に説明する。
(外壁パネルの構成例について)
図4〜図6を参照して、外壁パネル3,4の構成例について説明する。
図4(A)に示されるように、外壁パネル3は、フレーム部31と、フレーム部31に取付けられた外装面部材32とを含んでいる。同様に、図4(B)に示されるように、外壁パネル4も、フレーム部41と、フレーム部41に取付けられた外装面部材42とを含んでいる。フレーム部31,41を正面側(外装面部材側)から見た外形形状は、矩形形状である。なお、各外壁パネルは、フレーム部内に充填された断熱材(図示せず)をさらに含む。標準仕様の外壁パネル3の構成および構造は、公知の外壁パネル103と同じであってもよい。
図4に示されるように、外壁パネル3と外壁パネル4とは、外装面部材32,42の厚みは同じであるのに対し、フレーム部31,41の厚みが異なっている。つまり、フレーム部41の厚み寸法L2の方が、フレーム部31の厚み寸法L1よりも大きい。本実施の形態では、フレーム部31は、一定の厚み(寸法L1)の1つの枠体によって構成されているのに対し、フレーム部41は、複数の枠体が厚み方向に重ねられることによって構成されている。具体的には、フレーム部41は、予め接合された内側フレーム51と外側フレーム52とによって構成されている。以下の説明において、フレーム部31を標準フレーム部、フレーム部41をダブルフレーム部ともいう。
なお、外壁パネル3,4は、それぞれ、外装面部材32,42を含まなくてもよい。すなわち、外装面部材32,42は、工場において、フレーム部31,41とともにパネル化されていなくてもよく、現場において、フレーム部31,41が構造躯体部2に固定された後に取付けられるものであってもよい。
図5には、フレーム部31の外観斜視図が示されている。フレーム部31は、矩形枠状に形成されており、一対の縦枠311,312と、一対の横枠313,314とを含む。縦枠311,312および横枠313,314は各々、たとえばU字状(コの字状)断面を有しており、一対のフランジ部とフランジ部を繋ぐウェブ部とで構成されている。
図6には、フレーム部41の分解斜視図が示されている。図6に示されるように、内側フレーム51および外側フレーム52も、矩形枠状に形成されている。内側フレーム51は、一対の縦枠511,512と、一対の横枠513,514とを含む。外側フレーム52は、一対の縦枠521,522と、一対の横枠523,524とを含む。これらの縦枠および横枠もまた、各々、たとえばU字状(コの字状)断面を有しており、一対のフランジ部とフランジ部を繋ぐウェブ部とで構成されている。
正面側から見た内側フレーム51および外側フレーム52の外形寸法は、同じである。つまり、フレーム51,52は、縦寸法(L4)、および、横寸法(L6)の双方が同じである。なお、ここでの「同じ」は、完全に等しいとの意味に限定されず、若干異なっていてもよい。以下の記載においても同様であってよい。内側フレーム51の厚み寸法L21と、外側フレーム52の厚み寸法L22とは、異なっていてもよい。フレーム部41の厚み寸法L2は、内側フレーム51の厚み寸法L21と外側フレーム52の厚み寸法L22とを足し合わした寸法である。
ダブルフレーム部41の正面側から見た外形寸法(内側フレーム51および外側フレーム52の外形寸法)は、典型的には、標準フレーム部31の正面側から見た外形寸法と同じである。しかしながら、フレーム部31とフレーム部41とは、縦寸法および横寸法の少なくとも一方が同じであればよい。具体的には、フレーム部41の縦寸法L4は、外壁パネル3,4が外壁部の横方向に隣接して配置される場合、フレーム部31の縦寸法L3と同じであるが、外壁パネル3,4が外壁部の上下方向に隣接して配置される場合には、フレーム部31の縦寸法L3と異なっていてもよい。また、フレーム部41の横寸法L6は、外壁パネル3,4が上下に並べられる場合、フレーム部31の横寸法L5と同じであるが、外壁パネル3,4が横方向に並べられる場合には、フレーム部31の横寸法L5と異なっていてもよい。
互いに対向する内側フレーム51の屋外面510と外側フレーム52の屋内面520とは、たとえばボルトなどによって、予め接合されている。具体的には、内側フレーム51においては、枠511〜514それぞれの屋外側のフランジ部に、複数の貫通孔51aが設けられている。外側フレーム52においては、枠521〜524それぞれの屋内側のフランジ部の、貫通孔51aに対向する位置に、複数の貫通孔52aが設けられている。後に説明する図9に示されるように、内側フレーム51および外側フレーム52の貫通孔51a,52aに、両者を連結するためのボルト53が挿通される。なお、内側フレーム51および外側フレーム52は、工場において溶接接合されてもよい。
(外壁パネルの取付け例について)
図7〜図11を参照して、外壁パネル3,4の取付け例について説明する。
外壁パネル3,4は、いずれも、構造躯体部2の屋外側端部に固定される。本実施の形態では、図8および図10に示されるように、外壁パネル3のフレーム部31、および、外壁パネル4のフレーム部41が、いずれも、構造躯体部2のうちの梁22の屋外方向端部に固定されている。
フレーム部31,41の梁22への固定は、たとえば、特開2014−125775号公報において出願人が提案しているような、取付部材(金具)61とボルト部62とを用いて実現することができる。この場合、取付部材61は、H型鋼で造られた梁22のフランジ221の屋外方向端部に固定されている。ボルト部62は、フレーム部31,41のうち上下端部に位置する、裏面側(最も屋内側)のフランジ部に設けられている。フレーム部41においては、内側フレーム51の屋内側のフランジ部に、ボルト部62が貫通されている。
なお、図8および図10では、フレーム部31,41の上端部および下端部の双方が、梁22に固定される例を示したが、柱23など他の構造躯体部2に固定されてもよい。あるいは、建物10の1階に配置されるフレーム部31,41の下端部を固定する場合には、たとえば、基礎21上であって柱23よりも屋外側の位置に設けられた固定金具(図示せず)が用いられる。このような固定金具も、上記文献などにおいて出願人が提案しているようなプレートやボルトを利用してもよい。フレーム部41の下端部を基礎21上に固定する場合には、内側フレーム51の下側の横枠514が固定部材に固定される。
フレーム部31,41は、いずれも、構造躯体部2よりも屋外側に配置されるため、本実施の形態では、フレーム部31,41は、裏面側に構造躯体部2への連結基準面P1を有している。すなわち、フレーム部31の連結基準面P1は、屋内側のフランジ部の外面を含む、フレーム部31の屋内面により形成される。フレーム部41の連結基準面P1は、内側フレーム51の屋内側のフランジ部の外面を含む、フレーム部41の屋内面により形成される。また、フレーム部31,41は、正面側に外装面部材32,42の取付け基準面P2を有している。すなわち、フレーム部31の取付け基準面P2は、屋外側のフランジ部の外面を含む、フレーム部31の屋外面により形成される。フレーム部41の取付け基準面P2は、外側フレーム52の屋外側のフランジ部の外面を含む、フレーム部41の屋外面により形成される。
上述のように、フレーム部31,41のいずれもが、同一の取付金具や固定金具を用いて構造躯体部2に連結される。つまり、ダブルフレーム部41の構造躯体への取付けにおいても特別な納まりを必要とせず、標準フレーム部31と同じ納まりである。そのため、図7および図9に示す、フレーム部31,41の連結基準面P1の位置は、構造躯体部2との関係において同じ位置である。
たとえば、図11に示されるように外壁パネル3,4が隣接して配置される場合、両者の連結基準面P1は面一状となる。これに対し、フレーム部31,41は厚み寸法が異なるため、取付け基準面P2の位置は、構造躯体部2との関係において異なっている。つまり、図11に示されるように、標準フレーム部31とダブルフレーム部41とが隣接して配置される場合、両者の取付け基準面P2には段差が生じる。したがって、外壁パネル3,4が並べられた場合、取付け基準面P2に取付けられた外装面部材の表面に段差が生じる。理解の容易のために、図11では、各フレーム部の取付け基準面P2をハッチングで示している。
なお、フレーム部31,41に取付けられる外装面部材32,42は、複層であってもよい。図7には、外装面部材32が、空気層32cを挟んで外側面材32aと内側面材32bとで構成された例が示され、図9には、外装面部材42が、空気層42cを挟んで外側面材42aと内側面材42bとで構成された例が示されている。
(ダブルフレーム部の構成例)
標準フレーム部31は、工場において製造される既存のパネルフレームである。ダブルフレーム部41の内側フレーム51および外側フレーム52の少なくとも一方は、この既存のパネルフレームにより構成されていることが望ましい。
本実施の形態のダブルフレーム部41においては、外側フレーム52が、フレーム部31と同じパネルフレームにより構成されている。そのため、外側フレーム52の厚み寸法L22は、フレーム部31の厚み寸法L1と同じであり、固定値である。これに対し、内側フレーム51の厚み寸法L21は、実現したい凹凸度合に応じて定めることができる。
具体的には、図12に示すように、内側フレーム51の厚み寸法L21を、固定の厚み寸法L1よりも小さくしたり、大きくしたりすることで、連結基準面P1から取付け基準面P2までの突出寸法(L2)を変更することができる。これにより、フレーム部31の取付け基準面P2とフレーム部41の取付け基準面P2との段差を、大きくしたり小さくしたりすることができる。
このように、本実施の形態では、外側フレーム52は、標準フレーム部31と同じ既存のパネルフレームで構成されるため、工場の既存設備で外側フレーム52を製造することができる。また、内側フレーム51と外側フレーム52との固定を現場で行うような場合には、内側フレーム51を省いた外壁パネル4を、通常の外壁パネル3と同じように運搬することができる。
ここで、内側フレーム51は、流通している型鋼材を利用することができる。したがって、内側フレーム51を製造するための特別な設備を必要としない。また、この場合、内側フレーム51の厚み寸法は、工業化住宅の規格モジュール寸法に左右されず、たとえば30mm〜250mmの範囲内から選択することができる。なお、内側フレーム51の断面形状は、U字状でなく矩形状であってもよい。したがって、内側フレーム51は、流通している鋼管材を利用することもできる。
あるいは、内側フレーム51は、矩形枠状に形成されていなくてもよい。たとえば、図13に示されるように、内側フレーム51は、外側フレーム52に接合された複数のスペーサ51Aによって構成されてもよい。
(外観パターンの他の例)
上述のような厚みの異なる外壁パネル3,4を用いることによって、図1に示したような外壁構造1のような外観パターンの他にも、様々な外観パターンを構成することができる。
たとえば、図14に示す外壁構造1Bでは、下階に外壁パネル4のみが並べられ、上階に外壁パネル3のみが並べられている。これにより、建物10の重心が下がり安定感のある雰囲気の外観を構成することができる。
また、図15に示す外壁構造1Cでは、外壁パネル3の位置と外壁パネル4の位置とを上下階で揃え、これらが横方向に交互に配置されている。外壁パネル3,4の横寸法が比較的小さいような場合には、このような配置とすることで、列柱を設けたような外観を構成することもできる。
上記外壁構造1B,1Cのような外観パターンも、構造躯体の配置や間取りなどの条件を、図1の建物10と同じ(図28のシンプルな建物110と同じ)としたまま、実現することができる。
なお、図16に示すような、構造躯体の位置を変更させて凹凸が形成された建物10Aにおいても、厚い外壁パネル4を部分的に配置してもよい。たとえば、外壁構造1Dにおいては、建物10Aの入隅部83上の突出構造部84の両サイドにのみ厚い外壁パネル4を配置し、他の外壁パネルを標準仕様の外壁パネル3とすることで、突出構造部84の存在を際立たせることができる。
以上説明したように、本実施の形態の外壁構造によれば、建物の構造躯体の配置に依存することなく、また、構造躯体との連結方法を厚みの異なる外壁パネル3,4ごとに変えることなく、凹凸のある外観を実現することができる。その結果、簡易な構造で、建物の外観意匠性を向上させることができる。
また、建物の構造躯体の配置に依存しないため、工業化住宅の規格モジュールに縛られずに、50mmや60mmなどの段差の小さい外壁面を形成することができる。
また、図17に示すように、外壁パネル4に窓7を設ける場合、標準仕様の外壁パネル3に窓を設ける場合に比べて、開口部40に奥行きが増す。そのため、外壁パネル4の内側フレーム51に窓用サッシ71を取付けることで、外側フレーム52の厚み分、窓7を外壁面420よりも奥に配置することができる。これにより、建物の重厚感を強調することができる。
また、図18(A)に示すように、一般的な建物では、入込部82において、窓用サッシ71が設けられた外壁パネル3aと、標準仕様の外壁パネル3bとが交差する構成の場合、納まり上、外壁パネル3b側の窓用サッシ71の端位置を外壁パネル3bの外壁面320に隣接した状態とすることは困難である。これに対し、図18(B)に示すように、外壁パネル3aに交差する外壁パネルを、厚い外壁パネル4とした場合、内側フレーム51に外側フレーム52が重ねられることにより、その外壁面420の位置は、窓用サッシ71の端位置に一致させることができる。
これにより、外壁パネルにより外壁を構成する工業化住宅であっても、建物の入込部82において、建物の内外に貫通する壁(外壁11および間仕切壁12)に窓用サッシ71だけが当たるような構成を実現することができる。なお、窓用サッシ71の端位置と外壁パネル4の外壁面420とは、完全に一致していなくてもよく、これらは近接していればよい。また、外壁パネル3aも、厚い外壁パネル4であってもよい。
<実施の形態2>
上記実施の形態1では、厚みの異なる外壁パネルが隣接して配置されることによって、外壁面に段差が形成されるものであった。これに対し、本実施の形態では、外壁パネル自体に段差が形成されている。このような外壁パネルおよび外壁構造について、実施の形態1と異なる部分のみ詳細に説明する。
図19は、本実施の形態に係る建物の外壁構造11を模式的に示す断面図である。外壁構造11は、実施の形態1で示した外壁パネル4に代えて、外壁パネル4Aを備えている。図19においては、外壁パネル3と外壁パネル4Aとが上下に隣接して配置されている。
図20(A)に示されるように、外壁パネル4Aは、フレーム部43と外装面部材42とを含む。外壁パネル4Aは、部分的に屋外方向へ突出する凸部402を有しており、外壁面420に段差が形成されている。外壁パネル4Aの凸部402以外の部分を、ここでは平坦部401という。
図20(B)に示されるように、外壁パネル4Aのフレーム部43は、外装面部材42の取付け基準面P3に段差を有している。すなわち、フレーム部43は、連結基準面P1から取付け基準面P3までの突出寸法が異なる第1部分431および第2部分432を有している。第1部分431と第2部分432とは隣接している。
本実施の形態では、第2部分432の突出寸法L24の方が、第1部分431の突出寸法L23よりも大きい。図20(B)では、両部分431,432の突出寸法の差が、寸法L25として示されている。外壁パネル4Aがこのようなフレーム部43を備えることにより、外壁パネル4Aに、上記した平坦部401と凸部402とを形成することができる。
本実施の形態では、フレーム部43は、正面側から見た外形寸法の異なる複数の枠体が厚み方向に重ねられて構成されている。具体的には、フレーム部43は、厚み寸法が所定寸法(L23である)内側フレーム51と、内側フレーム51に部分的に重ねられる外側フレーム53とで構成されている。この場合、内側フレーム51と外側フレーム52とが重ねられた部分が、第2部分432を形成し、内側フレーム51のみの部分が、第1部分431を形成している。以下の説明では、第1部分431をシングルフレーム部、第2部分432をダブルフレーム部ともいう。
フレーム部43の連結基準面P1は、内側フレーム51の屋内面によって形成される。フレーム部43の取付け基準面P3は、外側フレーム53の屋外面と、内側フレーム51の屋外面のうち、外側フレーム53と重ならない部分の屋外面とによって形成される。
内側フレーム51の構成および寸法は、たとえば、実施の形態1の図6等に示した内側フレーム51と同じである。また、外側フレーム53の厚み寸法は、たとえば、実施の形態1の図6で示した外側フレーム52の厚み寸法L22と同じである。この場合、シングルフレーム部431の突出寸法L23は、内側フレーム51の厚み寸法L21と同じである。ダブルフレーム部432の突出寸法L24は、実施の形態1の図4に示したダブルフレーム部41の厚み寸法L2と同じである。また、両部分431,432の突出寸法の差L25は、外側フレーム53の厚み寸法L22と等しい。
外側フレーム53は内側フレーム51の屋外面に部分的に重ねられるが、外側フレーム53の縦寸法および横寸法のいずれか一方は、内側フレーム51の寸法と同じであることが望ましい。本実施の形態では、図21に示されるように、外側フレーム53の横寸法が、内側フレーム51の横寸法L6と同じであり、外側フレーム53の縦寸法L40が、内側フレーム51の縦寸法L4よりも小さい。したがって、フレーム部43の取付け基準面P3は、上下方向に段差を有している。フレーム部43においては、内側フレーム51と外側フレーム53とは、たとえば下端位置が合せられている。
このような外壁パネル4Aを建物10の外壁部に用いることで、1つの外壁パネル内において凹凸を持たせることができるため、狭い範囲で外壁面に段差を設けることができる。その結果、建物10の外観意匠性をさらに向上させることができる。
段差を有する外壁パネル4Aとしては、図21のようなフレーム部43以外にも、たとえば、図22〜図25に示すような構造のフレーム部を採用可能である。
図22に示すフレーム部43Aは、外側フレーム54の縦寸法が、内側フレーム51の縦寸法L4と同じであり、外側フレーム53の横寸法L60が、内側フレーム51の横寸法L6よりも小さい。したがって、フレーム部43Aの取付け基準面P3は、横方向に段差を有している。フレーム部43Aにおいては、内側フレーム51と外側フレーム53とは、たとえば正面側から見て左端位置が合せられている。
図23に示すフレーム部43Bは、図22のフレーム部43Aと同様に、外側フレーム55の縦寸法が、内側フレーム51の縦寸法L4と同じであるが、外側フレーム55は、内側フレーム51の横方向中央位置に重ねられている。このように、フレーム部43Bは、横方向中央位置にダブルフレーム部432を有し、その両側に2つのシングルフレーム部431を有していてもよい。
また、図24に示すフレーム部43Cは、2つ(複数)の外側フレーム56a,56bを有している。これらの外側フレーム56a,56bは、縦寸法が、内側フレーム51の縦寸法L4と同じである。この場合、外側フレーム56a,56bは、左右に離れて配置されている。したがって、フレーム部43Cは、横方向中央位置にシングルフレーム部431を有し、その左側および右側にそれぞれ2つのダブルフレーム部432を有している。
図25に示すフレーム部43Dは、2つ(複数)の外側フレーム57a,57bを有している。これらの外側フレーム57a,57bは、横寸法が、内側フレーム51の横寸法L6と同じである。この場合、外側フレーム57a,57bは、上下に離れて配置されている。したがって、フレーム部43Dは、上下方向中央位置にシングルフレーム部431を有し、その上側および下側にそれぞれ2つのダブルフレーム部432を有している。
フレーム部43Dは、シングルフレーム部431に窓用サッシを取付け可能な構成である。すなわち、内側フレーム51の1対の縦枠511,512間には、横桟材58aが架け渡されている。横桟材58aは、たとえば、下側の外側フレーム57bの上端の横枠573と同じ高さ位置に設けられている。また、内側フレーム51の下端の横枠574と横桟材58aとの間に、縦桟材58bが嵌め入れられている。
上述のように、外壁パネル4Aのフレーム部は、様々な構造が採用可能であるため、斬新なデザインの外壁面を作り出すこともできる。図26および図27には、外壁パネル4Aを用いた建物10の他の外観パターン例が示されている。
図26に示す外壁構造11Aでは、建物10の上階に、複数の外壁パネル4Aが横方向に隣接して配置されている。外壁パネル4Aの下側には、実施の形態1で示した標準仕様の外壁パネル3が隣接して配置されている。
外壁構造11Aにおいて、外壁パネル4Aは下側に凸部402(ダブルフレーム部432)を有しているため、建物10を上下に分断したようなデザインとなっている。また、外壁パネル4Aの平坦部401(シングルフレーム部431)の位置に窓7を設ける場合、開口部に奥行き感が増すため、重厚感のある外観を構成することができる。
また、図27に示す外壁構造11Bでは、建物10の上階および下階の双方に、複数の外壁パネル4Aが横方向に隣接して配置されている。また、外壁パネル4Aは、上下方向にも隣接するように配置されている。
外壁構造11Bにおいて、外壁パネル4Aは上側に凸部402を有している。この場合、上下階に、このような外壁パネル4Aが設けられているため、この場合も、外壁パネル4Aの平坦部401に窓7を設けた場合、重厚感のある外観を構成することができる。
また、図26および図27に示されるように、複数の外壁パネル4Aは、シングルフレーム部431およびダブルフレーム部432の少なくとも一方が連続するように、横方向または縦方向に隣接して配置することが望ましい。このようにすることで、平坦部401の表面または凸部402の表面が、隣接するパネル4A間を跨って面一状に配置される。この場合、タイルなどの見切りや複数の窓をまとめて見せることができる。また、複数の外壁パネル4A間の目地を目立たなくすることもできる。
また、図26および図27に示されるように、外壁パネル4Aと実施の形態1に示した厚い外壁パネル4とを、横方向または上下方向に並べて配置してもよい。この場合、外壁パネル4Aの凸部402が、厚い外壁パネル4に隣接するように配置されることが望ましい。また、外壁パネル4Aの平坦部401と、標準の外壁パネル3とを隣接して配置してもよい。
以上説明したように、本実施の形態の外壁パネル4Aを用いることで、より多様な外壁パターンを構成することができる。なお、建物の外壁を構成する外壁パネルの全てを、外壁パネル4Aとしてもよい。
なお、上記各実施の形態では、外壁パネルのフレーム部の全てまたは一部をダブルフレームにする構成について説明したが、内側フレームおよび外側フレームの少なくとも一方が、さらに複数のフレームで構成されていてもよい。
また、外壁パネルのフレーム部の厚みの大きい部分を、ダブルフレームにすることなく、厚みの大きい1つの枠体で構成してもよい。
また、上記各実施の形態で示した建物は、鉄骨系の工業化住宅であることとしたが、これに限定されない。すなわち、外壁パネルを用いる建物であれば、木造住宅などであってもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。