JP6464011B2 - 環境改善型コンクリートブロック - Google Patents

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Description

本発明は、環境改善型コンクリートブロックに関するものであり、より詳しくは、海岸や河川、農業用水路、ため池等の閉塞水域で護岸や護床、魚巣を形成するために使用され、或いは、海洋に設置される魚礁を形成するために使用されることにより、魚介類が生息できる生態系を作ることができる環境改善型コンクリートブロックに関するものである。
本出願人は、内部空隙での微生物や藻の繁殖を促し、これを栄養源として原生動物や水性昆虫等が生息でき、更にそれを求めて魚介類を呼び込むことができ、これによって水域の環境保全に寄与し得る護床ブロックを特許文献1で提供すると共に、かかる水域の環境保全に寄与し得る護岸ブロックを特許文献2で提供した。
かかる護床ブロックや護岸ブロックは、その一態様として、ポーラスコンクリートや火山軽石等の多孔質素材を用いて構成されていた。そして、これらのブロックを用いて構成された水域環境保全構造は、その空隙に泥や有機物が付着して微生物や水生植物が繁殖し、これらを栄養源として原生動物や水性昆虫等が繁殖し、それを求めて魚介類が集まり生息することを期待せんとするものであった。
然しながら、かかる護床ブロックや護岸ブロックを用いてなる水域環境保全構造にあっては、魚介類を誘引するための特別の工夫は施されていなかったために、魚介類がその場所を認知することができず、前記ポーラスコンクリート等の多孔質素材が形成する空隙に微生物がいつになったら繁殖し、又、水草や海藻類等がいつになったら繁殖するかは環境任せであり、前記効果が発揮されるまでには時間がかかった。
そこで、コンクリート組成中に生体誘引物質を高濃度で配合してなる環境活性コンクリートブロックが特許文献3で提供されている。該環境活性コンクリートブロックを河川や海中に沈設することにより、コンクリートの内部に浸透した水を通して該内部の生体誘引物質を環境に流出させ、これによって、魚介類の蝟集、育成、藻の付着やその育成を長期間に亘って維持せんとするものであった。
前記環境活性コンクリートブロックは、これが水と接触することによりコンクリートに水が染み込み、この染み込んだ水を通して内部の生体誘引物質をブロック表面から周辺環境に徐々に染み出させるものであったが、通常のコンクリートからなるブロックでは、コンクリートブロックの深い内部に配合されている生体誘引物質が周辺環境に出るのは難しく、表面に近い部分の生体誘引物質しか活用できなかった。そのため、高価なアミノ酸を高濃度に配合しても無駄が多かった。
又、通常のコンクリートからなるブロックでは表面が平滑であるために、水草の根や海類藻の基部が該表面に着床しにくく又その育成を効果的に行うことができず、環境改善効果に限界があった。
特開平8−27762号公報 特開平8−81938号公報 特開2011−142877号公報
本発明は、前記従来の問題点に鑑みて開発されたものであり、魚介類の蝟集・育成、及び、藻の付着・育成を効果的に行うことができ、又この効果を長期間に亘って維持させ得る等、より高い環境改善効果を期待し得る環境改善型コンクリートブロックの提供を課題とするものである。
前記課題を解決するため本発明は以下の手段を採用する。
即ち本発明に係る環境改善型コンクリートブロックは、全体がポーラスコンクリートからなり、或いは、該ポーラスコンクリートが通常のコンクリートに設けられてなる環境改善型コンクリートブロックであって、該ポーラスコンクリートは、セメントと、水と、粗骨材と、火山岩粒の微細な空隙にアミノ酸が含浸されてなるアミノ酸含浸粒状物とが少なくとも混合されて、硬化されてなり、前記粗骨材の表面は、前記アミノ酸含浸粒状物が分散混入されてなる被覆層で被覆されていることを特徴とするものである。
前記火山岩粒は凝灰岩粒、特に、ゼオライト質凝灰岩粒を用いるのがよい。
前記アミノ酸含浸粒状物は、火山岩粒の微細な空隙に、アミノ酸を含有する魚醤を含浸させて構成するのがよい。
前記凝灰岩粒の粒径は0.1〜1.0mmに設定し、該凝灰岩粒の配合割合は、ポーラスコンクリート質量比0.5〜2.0%に設定するのがよい。
本発明は以下の如き優れた効果を奏する。
(1) 本発明に係る環境改善型コンクリートブロックは、全体がポーラスコンクリートからなり、或いは該ポーラスコンクリートが通常のコンクリートに設けられてなる構成を有するため、これが海岸や河川、農業水路、ため池等の閉塞水域や海洋に設置されることにより、該ポーラスコンクリートの内部の各部に水が通り、粗骨材の表面を被覆する各部の前記被覆層に水が浸透する。該被覆層には、凝灰岩等の火山岩粒の微細な空隙にアミノ酸が含浸されてなるアミノ酸含浸粒状物がセメントに分散混入されてなるため、該被覆層に浸透した水にアミノ酸やアミノ酸の分解物質が溶出し、これがコンクリートブロックの周辺環境に流出する。アミノ酸は、該被覆層にしか混入されていないため、該アミノ酸を無駄なく活用できることとなる。
そして、このように周辺環境に流出されたアミノ酸やその分解物質は魚介類の餌となり、魚介類の蝟集を効果的に行うことができる。又、アミノ酸の分解物質は海藻類や水草の栄養素となり、水草の付着、育成や海藻類の付着、育成を効果的に行うことができる。そしてポーラスコンクリートの内部の連続空隙と、その表面の凹凸が水草の種や海藻類の胞子を保持する機能を有すると共に、又、ポーラスコンクリートの内部の連続空隙は、根の伸長を促す空間となるので、水草の付着、育成や海藻類の付着、育成を効果的に行うことができる。これにより、本発明に係る環境改善型コンクリートブロックは、その表面に水草や海藻類が繁茂する場所を提供できることとなる。
(2) 前記被覆層を構成する火山岩粒は多孔質粒状物であるため、該火山岩粒に含浸されているアミノ酸の溶出速度は遅く、アミノ酸の溶出が長期間に亘って持続されることとなり、この長期間のうちに水草や海藻類の育成が進行してブロック表面にこれらが繁茂した状態を形成できる。かかることから、被覆層の表面からのアミノ酸の溶出が減少乃至終了した後は、この繁茂場所が、良好な魚介類の生息環境を作ることとなり、環境改善効果を高めることができる。
(3) 特に、前記火山岩粒としてゼオライト質凝灰岩粒を用いた場合は、該ゼオライト質凝灰岩粒が有機物を分解する機能を有することから、該凝灰岩粒の微細な空隙に含浸されているアミノ酸の溶出速度が遅いことと相俟って、含浸されているアミノ酸の分解が促進され、該凝灰岩粒からはアミノ酸だけでなくその分解物質も溶出することとなり、これが長期間に亘って持続されることとなる。かかるアミノ酸の分解物質は水草や海藻類の栄養素として好適であるため、水草の育成や海藻類の育成をより効果的に行い得ることとなる。
(4) 前記被覆層にフライアッシュが混和材として添加されるときは、強アルカリであるコンクリートのPHを低下させることができるため、生育する海藻類の種類を増やすことができる。
本発明に係る環境改善型コンクリートブロックの一実施例を示す斜視図である。 ポーラスコンクリートの構造を説明する説明図である。 本発明に係る環境改善型コンクリートブロックの他の実施例を示す斜視図である。
図1において本発明に係る環境改善型コンクリートブロック(以下、コンクリートブロックともいう)1は、全体がポーラスコンクリートを以て構成されており、平面視で八角形状を呈しその中央部には比較的径の大なる円形状開口部2が設けられ、各辺部3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3hには、半円弧状の欠切部5と、緩い円弧状の欠切部6が交互に設けられている。又その下面部7には、図1(B)に示すように、該半円弧状の欠切部6が設けられている側で、前記円形状開口部2と連通するように連通溝部9が設けられている。そして該八角形状コンクリートブロックの径は800〜1500mm程度であり、その円形開口部2の径は500〜700mm程度である。該コンクリートブロック1は、海岸や河川、農業水路、ため池等の閉塞水域で護岸や護床、魚巣を形成するために使用され、或いは、海洋に設置される魚礁を形成するために使用されるものである。
該コンクリートブロック1は、ポーラスコンクリートを以て構成されてブロック内部に連続空隙を有するため、ブロックの内部の各部に水が通る。そして、その設置状態では、ブロック側面部10で開口する前記連通溝部9と前記円形状開口部2とが連通状態にあるため、水の行き来がより良好となる。又、該ブロック側面部10に半円弧状の欠切部5や緩い円弧状の欠切部6が設けられているため、該コンクリートブロック1は、水との接触面積が増大されている。
前記ポーラスコンクリートは、セメントと、水と、5〜40mm程度(例えば20mm程度)の粗骨材と、火山岩粒の微細な空隙にアミノ酸(例えば魚醤)が含浸されてなるアミノ酸含浸粒状物と、フライアッシュと、化学混和剤とを混合し、これを混練し、該粗骨材の表面がセメントペーストで被覆された混練物を形成し、該混練物を型枠内に投入すると共にこれを所要に加圧して硬化させることにより形成されている。このように硬化されて形成されたポーラスコンクリートの前記粗骨材の表面は、前記アミノ酸含浸粒状物を含む被覆層で被覆されている。
図2は、該ポーラスコンクリートの部分構造を模式的に示している。前記粗骨材11の表面12を被覆する被覆層13の厚さは通常0.1〜5mm程度であり、その平均厚さは0.5〜1.5mm程度であって、該被覆層13に、前記アミノ酸含浸粒状物14が分散混入されている。そして、このようにして形成された該コンクリートブロック1は、粗骨材相互が該被覆層13を介して点状接触状態にあって連続空隙を有している。
前記魚醤が含有するアミノ酸は、例えば鯖魚醤にあっては、例えば表1に示す通りである。該アミノ酸の主要成分は、ロイシン、アスパラギン酸、リジン、グルタミン酸の4成分であり、これらのアミノ酸は、夫々、鯖魚醤100g当り851mg程度、824mg程度、816mg程度、810mg程度含有されている。
Figure 0006464011
前記ポーラスコンクリートを構成する前記火山岩粒としては凝灰岩を用いるのがよく、取り分け、有機物の分解促進作用に富むゼオライト質凝灰岩粒を用いるのが好ましい。又、該凝灰岩粒(好ましくはゼオライト質凝灰岩粒)の粒径は、前記被覆層13の平均厚さが0.5〜1.5mm程度であることを考慮して、例えば0.1〜1.0mm程度に設定するのがよい。前記ポーラスコンクリートにおける前記凝灰岩粒(好ましくはゼオライト質凝灰岩粒)の配合割合は、ポーラスコンクリート質量比0.5〜2.0%であるのが好ましい。該配合割合が0.5よりも少ないと、前記被覆層の表面からの前記アミノ酸の溶出量が少なくなるために好ましくなく、該配合割合が2.0%よりも多いと、ポーラスコンクリートの強度低下を招き、又、ゼオライト質凝灰岩粒は高価であるためにポーラスコンクリートのコスト上昇を招くことになって好ましくない。
前記火山岩粒としてゼオライト質凝灰岩粒を用いた場合について説明すれば、該ゼオライト質凝灰岩粒の微細な空隙に前記魚醤が含浸されることにより、該空隙にアミノ酸が含浸された状態となる。該魚醤の配合割合は、ポーラスコンクリート質量比0.6〜1.9%(アミノ酸の配合割合では、ポーラスコンクリート質量比0.05〜0.15%)であるのが好ましい。該魚醤の配合割合が0.6%よりも少ないと、前記被覆層の表面からの前記アミノ酸の溶出量が少なくなるために好ましくなく、該配合割合が1.9%よりも多いと、ポーラスコンクリートの強度低下を招き、又、魚醤は高価であるためにポーラスコンクリートのコスト上昇を招くことになって好ましくない。
そして、該ゼオライト質凝灰岩には有機物の分解を促進する作用があることから、前記コンクリートブロック1が水中にある状態で、前記被覆層13に水が浸透し、該浸透した水にアミノ酸やアミノ酸の分解物質(アンモニウム塩や硝酸塩)が溶出し、これが該被覆層13の表面15から周辺環境に流出する。ポーラスコンクリートは連続空隙であるため、前記コンクリートブロック1の内部の各部に水が通り、各部の被覆層13に水が浸透し、この浸透した水にアミノ酸やアミノ酸の分解物質が溶出する。そのため、通常のコンクリートに比べて、アミノ酸やアミノ酸の分解物質の溶出が行われる被覆層13の表面積は各段に多い。
このようにして周辺環境に流出されたアミノ酸やその分解物質は魚介類の餌となり、又、アミノ酸の分解物質は水草や海藻類の栄養素となる。又、凝灰岩粒は多孔質粒状物であるため、凝灰岩内に含浸されているアミノ酸の溶出速度は遅く(即ち、過度なアミノ酸の溶出が抑制される)、この間に、該含浸されているアミノ酸が有効に分解されることとなる。そして、かかる分解物質の溶出が長期間に亘って持続されることとなる。
その結果、これらの溶出によって、長期間に亘って魚介類の蝟集、育成を効果的に行うことができる。又、前記コンクリートブロックの内部の連続空隙と、その表面の凹凸が、水草の種や海藻類の胞子を保持する機能を有すると共に、該内部の連続空隙は、根の伸長を促す空間となるので、水草の付着、育成や海藻類の付着、育成を効果的に行うことができて、前記コンクリートブロックの表面に水草や海藻類が繁茂する場所を形成できることとなる。かかることから、前記被覆層13の表面15からのアミノ酸等の溶出が減少乃至終了した後は、この繁茂場所が、良好な魚介類の生息環境を作ることとなり、環境改善効果が高まる。
なお、海藻類は一般的に、中性〜アルカリ性環境に生育するが、PH12を超えるような強アルカリ環境下においては、生育し得る海藻類の種類が減少する。そこで本実施例においては、前記セメントペーストにフライアッシュを混和材として添加している。これによって、フライアッシュによるセメント置換と、ポゾラン反応によりセメントの水酸化カルシウムを減少させることで、強アルカリであるコンクリートのPHを低下させることができ、その結果、生育する海藻類の種類を増やし得ることとなる。
かかる独特の作用効果を奏し得る前記ポーラスコンクリートの配合例は表2の通りである。
表2において、魚醤の配合割合はポーラスコンクリート質量比で0.9%であり、該魚醤中のアミノ酸の割合は、ポーラスコンクリート質量比で0.07%であり、又、ゼオライト質凝灰岩粒の配合割合は、ポーラスコンクリート質量比で0.8%である。
Figure 0006464011
本発明は、前記実施例で示したものに限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。その一例を挙げれば次のようである。
(1) 前記火山岩粒としてはゼオライト質でない凝灰岩や火山灰等を用いることもできる。
(2) 図3は、例えば護床ブロックとして応用される環境改善型コンクリートブロック1を示しており、その外形は前記したところと同様であるが、その下側部分16は通常のコンクリートで構成され、その上側部分17は、前記と同様に作用し得るポーラスコンクリートで構成されている。下側部分16を通常のコンクリートで構成しているのは、ブロックの強度向上を図ると共に、コンクリート全体としての重量を増大させてその設置状態の安定性を増大させるためである。
その他、本発明に係る環境改善型コンクリートブロック1の形態は、該コンクリートブロックの性能をより有効に発揮させることができるように、その設置場所に応じてU字状形態や角筒状、円筒状等の筒状、テトラポット状等の各種のものに設定できる。又、前記ポーラスコンクリートと通常のコンクリ−トとの組み合わせで構成することもできる。
(3) 前記フライアッシュの混和材の添加は省略されることもある。
(4) 前記混練物に多少の砂が混合されることもある。
1 コンクリートブロック
11 粗骨材
13 被覆層
14 アミノ酸含浸粒状物
15 表面

Claims (5)

  1. 全体がポーラスコンクリートからなり、或いは、該ポーラスコンクリートが通常のコンクリートに設けられてなる環境改善型コンクリートブロックであって、
    該ポーラスコンクリートは、セメントと、水と、粗骨材と、火山岩粒の微細な空隙にアミノ酸が含浸されてなるアミノ酸含浸粒状物とが少なくとも混合されて、硬化されてなり、前記粗骨材の表面は、前記アミノ酸含浸粒状物が分散混入されてなる被覆層で被覆されていることを特徴とする環境改善型コンクリートブロック。
  2. 前記火山岩粒は凝灰岩粒であることを特徴とする請求項1記載の環境改善型コンクリートブロック。
  3. 前記火山岩粒はゼオライト質凝灰岩粒であることを特徴とする請求項1記載の環境改善型コンクリートブロック。
  4. 前記火山岩粒の微細な空隙に、アミノ酸を含有する魚醤が含浸されていることを特徴とする請求項1記載の環境改善型コンクリートブロック。
  5. 前記凝灰岩粒の粒径は0.1〜1.0mmであり、該凝灰岩粒の配合割合は、ポーラスコンクリート質量比0.5〜2.0%であることを特徴とする請求項2又は3記載の環境改善型コンクリートブロック。
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