JP2004285619A - 環境適合性コンクリート構造物およびその製造方法 - Google Patents

環境適合性コンクリート構造物およびその製造方法 Download PDF

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Teruaki Kobayashi
映章 小林
Kazuhisa Ishigaki
和久 石垣
Hiroyuki Ogawa
洋征 小河
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Abstract

【課題】耐久性に優れた、生態系適合性と、騒音低減や温暖化防止などの社会環境適合性を併せ持つ環境適合性コンクリート構造物、ならびに上記環境適合性コンクリート構造物の実用的で安価な製造方法を提供すること。
【解決手段】水、セメント、コンクリート混和材料および固体粒子を練り混ぜて作った粒状結合材11によって、多孔質粒子15を相互に結合させて成る連続空隙を有するコンクリート(多孔質コンクリート)構造物であって、多孔質粒子15が多孔性表面を露出して多孔質コンクリート構造物中に分布している環境適合性コンクリート構造物とする。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、海岸、河川、各種水路、あるいは擁壁などの保護、構築に適用するのに好適で、かつ、自動車騒音の低減や都市の温暖化防止などに効果的な、生態系適合性ならびに社会環境適合性に優れた耐久性コンクリート構造物ならびにその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特公平7−74506号公報
【特許文献2】特開2001−295283号公報
【特許文献3】特許第3378636号公報
【非特許文献1】「論文 “コンクリート材料”玉井元治 コンクリート工学、Vol.32、No.11 1994」
【非特許文献2】「論文 “排水性舗装の騒音低減効果”島広志、富田尚隆 舗装 Vol.28、No.10、1993」
近年、環境問題に対する人々の関心が高まり、生態系の保全、自動車の騒音低減、都市温暖化の防止等々各方面で改善の動きが活発化している。
【0003】
いままでに、人工構築物で損なわれた生態環境を改善するために、各種の方策が講じられてきた。むき出しのコンクリート構造物に代わって、擁壁や護岸ブロックなどにおいても、動植物が生育可能な種々の緑化コンクリート構造物が考案されている。
【0004】
たとえば、擁壁などにおいては、初期には箱型や井型に成形したコンクリートに客土を入れ、そこに植物を生育させる方法等が各地で採用されたが、このような擁壁等では全面が緑化されず、かえって美観を損なうことがあったため、施工場所全面の緑化を目指して、連続空隙を有するコンクリート(透水性コンクリートと同意、以下、多孔質コンクリートという)の適用が増えてきた(たとえば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1等に記載)。水辺や水中に施工して、水生動植物の生育の場にすることができる球状の多孔質コンクリート構造体なども開発されている。
【0005】
多孔質コンクリートを植栽基盤として用いた場合、密充コンクリートに比して、植物の生育性は格段に向上することが期待される。ただ、大部分の製品は多孔質コンクリート用骨材として、粒子そのものが多孔質である多孔質粒子を使用しているわけではなく、通常の骨材を使用しており、コンクリート構造物の巨視的な多孔性を利用しようとするものであり、生物に快適な生育場を提供するという点では、なお満足すべきものとはいえない。
【0006】
近年、水質浄化を目指したもので、多孔質粒子を使用したコンクリート製品なども提案されているが、これも多孔質粒子を成形時にセメントペーストと練り混ぜるため、粒子表面がセメントペーストで被覆されて多孔性の表面性状が失われてしまい、多孔質粒子の持つ特長が活かされていないといった問題がある。
【0007】
また、生態系の保全のほかに、近年、連続空隙を有する透水性舗装(または、排水性舗装)が自動車走行の騒音を低減する効果があることが報告されている(たとえば、非特許文献2記載)。また、多孔質の軽量骨材を用いた連続空隙を有する吸音性コンクリート(吸音性の多孔質コンクリート)も提案されている(特許文献3記載)。
【0008】
また現在検討途上のものとして、多孔質粒子をビルの屋上に敷いて散水し、温度上昇を防止しようという試みがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
動植物が生育できる護岸や水路、擁壁など生態系に適合した耐久性構造物や、自動車騒音の低減や都市の温暖化防止などに有効な社会環境適合性構造物などの環境適合性構造物は、動植物の生育に適した表面や、吸音機能、水分の吸収・発散機能などを備えた表面を十分広く保有していることが望ましい。このような構造物はその表面が動植物の着生や、吸音などに適した凹凸の大きい粗面構造で、かつ、水分や各種有効化学成分などの保持や緩やかな放出に適した性質を有していることが望ましい。このような構造物は、保水やイオン交換の場を提供する孔径0.5〜100nm程度の微細孔から、透水や生物の着生などに寄与すると考えられる孔径が0.3〜1mmあるいはこれよりも大きい巨視的な連続孔などにわたる、様々な径の孔や凹みを保有する多孔質粒子を素材とし、しかも、成形後もこの粒子の特性を保持しているコンクリート構造物とすることで達成される。しかし、このようなコンクリート構造物は従来技術では製造するのがきわめて困難で、実用化されたものは存在しない。
【0010】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、耐久性に優れた、生態系適合性と、騒音低減や温暖化防止などの社会環境適合性を併せ持つ環境適合性コンクリート構造物、ならびに上記環境適合性コンクリート構造物の実用的で安価な製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は特許請求の範囲に記載のような構成とするものである。
【0012】
すなわち、本発明は、水、セメント、コンクリート混和材料および固体粒子を練り混ぜて作った粒状結合材によって、多孔質粒子を相互に結合させて成る連続空隙を有するコンクリート(多孔質コンクリート)構造物であって、上記多孔質粒子が多孔性表面を露出して上記多孔質コンクリート構造物中に分布している環境適合性コンクリート構造物とする。
【0013】
また、上記環境適合性コンクリート構造物を製造する方法において、(1)上記の水、セメント、コンクリート混和材料および固体粒子を練り混ぜて粒状結合材を調製する工程と、(2)多孔質粒子を表乾状態に調整する工程と、(3)上記表乾状態の多孔質粒子と上記粒状結合材を混合し、混合物を製造する工程と、(4)上記混合物を型枠に投入し、振動押圧締め固めを行って成形し、成形物を製造する工程と、(5)上記成形物を養生する工程とを含む製造工程とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者等は、動植物の生育、特に、水辺や水中で生育する動植物に適したコンクリート構造物に関して、詳しく検討し、さらに、それを実現するための各種材料・プロセス等を詳細に検討した結果、環境適合性コンクリート構造物として、多孔質粒子が粒状結合材を介して相互に連結することにより構成される多孔質コンクリートで、上記多孔質粒子の表面が、多孔質コンクリート内部に位置する粒子も含めて、多孔性表面性状を保持していることが望ましいという結論に到達した。また、このような構造物を製造する実用的な方法を見出した。
【0015】
また、上記の多孔質粒子が多孔性表面を露出して一様に分布している多孔質コンクリートが、自動車等の走行によって発生する騒音、特に、500Hz以上の高周波領域の騒音を低減する効果が大きいことを見出した。
【0016】
また、本発明になる多孔質コンクリートの水分の吸収・発散特性は、使用した多孔質粒子の性質を反映して非常に特異的であり、周辺の温度低下や湿度調節にきわめて有効に寄与することを確認した。
【0017】
本発明者らが目指す環境適合性コンクリート構造物は、生態環境の保全に適した性状の耐久性構造物を必要とする場所に所望の状態に配置したいという要望に応えられるように、ある形状、たとえば、平板の形状に加工したものである。粒状結合材を介して相互に強く連結した多孔質粒子で形成された上記構造物は、それ自体も巨視的な連続空隙を持つ強固な耐久性多孔体である。構造物を形成する個々の多孔質粒子は、相互に連結するときに、その表面の一部が粒状結合材に接してセメントペーストで覆われているが、粒状結合材に接していない部分は多孔性の表面を露出している。したがって、構造物内部に存在する粒子を含めて表面の多孔質性状は保持されている。
【0018】
上記のように、本発明になる環境適合性コンクリート構造物においては、多孔質粒子が粒状結合材に接する部位を除いて多孔質の表面性状を保持し、多孔質粒子が本来もつ特長、すなわち、保水性能やイオン交換性能などに寄与する孔径0.5〜100nmという微細孔や、それよりも大きい中間細孔あるいは微細な凹凸がコンクリートの練り混ぜ工程においても失われておらず、また、この多孔質粒子で構成される構造物自体が透水性に優れた巨視的な連続空隙を持つ多孔体であるため、従来にない優れた環境適合性が発現される。
【0019】
表面から内部にわたって構造物全体がnm領域からmm領域にわたる広範囲に分布した径の孔や凹みを持ち、また、強固な構造物でもある環境適合性コンクリート構造物は、本発明によって初めて実現可能となった。
【0020】
周知のように、強固なコンクリート構造物を製造するには、骨格になる粗骨材をセメントペーストで十分に包み、そのセメントペーストを介して粗骨材を相互に結合させる。透水性コンクリート舗装のような連続空隙が形成されている多孔質コンクリートにおいても、セメントペーストが粗骨材に強固に付着してそれを十分包み込むことが必要であることには変わりがない。この場合には、セメントペーストの厚さが薄いだけである。
【0021】
本発明の多孔質コンクリートをコンクリート構造物としてみたとき、粒状結合材の心材である固体粒子と共に多孔質粒子も上記の粗骨材の役割を担っている。強固な構造物とするために、セメントペーストと多孔質粒子を十分練り混ぜると、多孔質粒子表面には、セメントペーストが全面にわたって付着し、粒子の多孔質性が著しく損なわれてしまう。多孔質性を保持させようとしてセメントペーストの量を大幅に減らしたり、水/セメント比を小さくしたりすると、簡単に崩れてしまうような低強度の構造物しか得られない。いままでに検討されている多孔質粒子を骨材とする多孔質コンクリートは、通常の透水性コンクリートと同様にして練り混ぜを行っているため、多孔質粒子表面はセメントペーストで全面が覆われ、粒子が多孔質であることの利点が著しく失われたものとなっている。
【0022】
上記のような難点を解決するために、本発明においては、多孔質粒子を相互に結合させるための粒状結合材を用い、特異な条件下で多孔質粒子より成る構造物の製造を行うものである。
【0023】
すなわち、次の工程により、目的とする構造物を製造する。
(1)まず、多孔質粒子を結合するための粒状結合材を調製し、
(2)別に、多孔質粒子を表乾状態に調整しておき、
(3)上記表乾状態の多孔質粒子と上記粒状結合材を混合し、混合物をつくる。
(4)上記混合物を型枠に投入して振動押圧締め固めを行い、成形物をつくる。
(5)得られた成形物を養生する。
【0024】
上記のような製造方法は多孔質粒子という特異な粒子を用いることにより、初めて成立するものである。次に、上記各工程について詳しく説明する。
【0025】
製造方法の基本は、多孔質粒子をそのままセメントペーストと練り混ぜると、粒子表面に一様にセメントペーストが付着するので、予め、粒状結合材を作製し、該粒状結合材で多孔質粒子を相互に結合させることにある。
【0026】
ここでいう結合材は、ペースト状態の結合材ではなく、固体粒子の表面にセメントペーストを満遍なく付着させた粒状結合材である。図1に粒状結合材を模式的に示した。図1は、粒状結合材11の断面を示したもので、符号1は固体粒子、符号2はセメントペーストである。
【0027】
セメントペーストは、セメントとコンクリート混和材料を混合し、これに水を添加すればできる。セメントとしては、普通ポルトランドセメントの他、各種ポルトランドセメント、マグネシアセメントなど各種の水硬性材料が使用可能であり、必要に応じて適当なものを選択すればよい。
【0028】
コンクリート混和材料は、増粘剤、減水剤、ポリマーディスパージョン等のコンクリート混和剤や、各種の微粒子や粉体よりなる混和材である。増粘剤、減水剤、ポリマーディスパージョンなどは、コンクリート混和剤として市販されているものから適宜選んで使用することができる。微粒子や粉体などの混和材は、主としてセメントペーストの増量とコンクリートの練り混ぜを容易にし、さらに、ポゾラン性物質にあっては強度の向上に資するために添加するもので、使用可能な混和材として、岩石を破砕して得た微粒子や粉末、高炉粉末、炭酸カルシウム粉末、その他各種の無機物の微粒子、粉体がある。
【0029】
多孔質粒子を連結するための粒状結合材は適当な固体粒子を用いて製造する。該粒状結合材用の固体粒子は、無機粒子、有機粒子の何れでもよいが、無機粒子がより適しており、一般に流通しているコンクリート用骨材や多孔質粒子より成る軽量骨材などから適当なものを選択して用いることができる。固体粒子を選択するときには、多孔質粒子の粒径や密度を考慮することが望ましい。すなわち、固体粒子の粒径は多孔質粒子の粒径に近いか、若干、小さいことが望ましい。粒状結合材用の固体粒子の粒径が多孔質粒子の粒径に比して極端に小さいと、粒状結合材と多孔質粒子を混合する際に両者が分離しやすいなどの問題が生じるし、大き過ぎると、粒状結合材の占める割合が大きくなり過ぎるという問題が生じる。また、固体粒子の密度と多孔質粒子の密度が互いに近い方が両者の混合が容易で製造上有利である。
【0030】
粒状結合材は、固体粒子とセメントペースト用の粉体材料を混合し、これに水を加えて練り混ぜることにより製造することができる。この際、水/粉体比を適切に設定することが大切である。この比は使用する固体粒子の種類およびこれと混合する多孔質粒子の種類により変わるので、予め予備検討を行って決めるのがよい。水/粉体比を適切に設定すると、セメントペーストが個々の固体粒子の周囲に満遍なく付着した粒状結合材が得られる。
【0031】
多孔質粒子は、環境適合性コンクリート構造物に動植物の生育に適合した部位や、吸音や水の発散などの機能を発揮する部位などを提供するための主要材料である。多孔性を備えた固体として、多くの無機物、有機物が存在するが、本発明に適したものとして、天然ゼオライト、合成のゼオライト、溶岩、人工の軽量骨材などがある。天然ゼオライトとしては、火山灰が堆積して固まった凝灰岩のような堆積岩や火山岩由来のものが多く知られており、火山国である日本では多量に産出している。また、合成ゼオライトとしては、火山灰や石炭灰などを造粒したものや、頁岩などの泥質岩を粉砕造粒したものが実用化されている。
【0032】
上記多孔質粒子の大きさについては、特に、厳密な制限はなく、取り扱い性や経済性などを考慮して適宜選択すればよい。
【0033】
多孔質粒子は大小多数の孔を持つため、構造物を所定の場所に設置するのに先立ち、この孔を利用して生物の生育に有効な栄養分や酸化物半導体触媒などの環境浄化物質、その他所望の化学物質を予め取り込ませるなどの前処理を施すことも可能である。
【0034】
多孔質粒子は多量の水分を収着する性質を備えている。多孔質粒子の含水状態を、違いが理解しやすいように断面模式図として図2に示した。図において、多孔質粒子12は完全に乾燥した絶乾状態、多孔質粒子13は大気中で乾燥した気乾状態、多孔質粒子14は表面に付着した水分を除いた表乾状態にある(JISA 0203参照)。符号3は乾燥領域、符号4は水分含有領域を示す。表乾状態よりもさらに多くの水分が表面に付着すると、粒子系全体として湿潤状態になる。
【0035】
粒状結合材と混合する多孔質粒子は適切な水分を保有していることが必要である。したがって、両者を混合するに先立って、多孔質粒子の含有水分を所望の量に調節しておかなければならない。多孔質粒子は、湿潤状態や絶乾状態であってはならず、表乾状態または表乾状態に近い水分を保有するものがよい。多孔質粒子を表乾状態に調整するには、該多孔質粒子を十分水に浸漬した後、表面水を除くか、予め多孔質粒子の吸水量を測定しておき、それを基に計算量の水を加えて吸収させればよい。
【0036】
湿潤状態の多孔質粒子と粒状結合材を混合すると、多孔質粒子と接触した固体粒子の周りのセメントペーストが多孔質粒子表面に付着している水分で流動性が高まり、多孔質粒子表面に多量に付着する。このため、混合中に、粒子表面に開口している孔の多くがセメントペーストで塞がれることになる。
【0037】
また、絶乾状態または完全気乾状態の多孔質粒子に粒状結合材を混合すると、セメントペーストが多孔質粒子に瞬時に水分を奪われて流動性を失い、結合材と多孔質粒子が接着不良を起こして、強力な振動押圧によっても強固な成形物が得られない。
【0038】
多孔質粒子と粒状結合材よりなる良好な粒状混合物を得るためには、適切な水/粉体比で練り混ぜた粒状結合材と適切な水分を保有する多孔質粒子を、両者が均一に分布するように十分攪拌して混合する。良好な粒状混合物は、通常のフレッシュコンクリートのような流動性はなく、さらさらした状態を呈しているもので、混合は容易である。良好な粒状混合物では、多孔質粒子表面にセメントペーストが多少付着しているが、孔の開口部が著しく塞がれるようなことはない。図3に粒状結合材11と表乾状態の多孔質粒子14を混合したときの状態を模式的に示した。
【0039】
上記混合物を所定の型枠に投入し、振動押圧して締め固めを行う。振動押圧締め固めは比較的強力な力を加えて行うことが望ましい。締め固め中の振動力により、多孔質粒子中の水分が(粒状結合材用の固体粒子が多孔性の場合には、この粒子中の水分も)粒子内部から外部に浸出し、多孔質粒子表面を濡らすと共に、粒状結合材のセメントペーストに適度の流動性を与え、多孔質粒子と粒状結合材の接着性を高めることになる。
【0040】
図4に、図3に示した粒状混合物を型枠に充填して、振動押圧締め固めを行ったときの状態を模式的に示した。粒子15は表乾状態の粒子が振動により内部の水分の一部を外に浸出させた状態の多孔質粒子を表しているもので、表面層が乾燥していることを意味してはいない。
【0041】
振動により表面付近の収着水が外部に浸出して多孔質粒子の表面を濡らし、また、粒状結合材の表面に付着しているセメントペーストの流動性を高めることは、振動押圧直後の型枠内粒子を観察することで確認できる。振動押圧時の多孔質粒子は互いに密着しており、激しく位置を変えて混ざり合うことがないので、セメントペーストの流動性が高まっていても、この工程で多孔質粒子の全表面をセメントペーストが覆うようなことは起きにくい。
【0042】
締め固めを行った成形物を通常の養生を行ってコンクリートを硬化させると、所望の環境適合性コンクリート構造物が得られる。
【0043】
以下に、実施例を示す。
【0044】
【実施例】
〔実施例1〕
宮城県産のモルデナイトゼオライトより、粒径約6mmの粒子(6mmZ粒子)と、粒径約10mmの粒子(10mmZ粒子)を選別した。これら粒子は何れも十分水に浸漬した後、表面の水を拭き取り、表乾状態とした(6mm表乾Z粒子、10mm表乾Z粒子)。
【0045】
6mm表乾Z粒子(粒状結合材の固体粒子として使用)200重量部に普通ポルトランドセメント100重量部、5号珪砂25重量部およびセルロースエーテル粉末0.2重量部を加えて混合した。混合物にSBR系ポリマーディスパージョン6重量部と水を加えてよく練り混ぜて粒状結合材を製造した。水の添加量は、上記練り混ぜによって、セメントペーストが6mm表乾Z粒子の表面に満遍なく付着する程度とした。
【0046】
上記粒状結合材全量を10mm表乾Z粒子(多孔質粒子として使用)300重量部に添加し、全体が均一になるようによく攪拌した。この操作により、粒状物質がぱさぱさした状態で混ざり合った粒状混合物が得られた。すなわち、粒状結合材はセメントペーストで覆われた個々の固体粒子に分かれて10mmZ粒子と混ざり合った。10mmZ粒子の表面は、若干、セメントペーストが付着した程度で、ペーストによる被覆の程度は小さかった。
【0047】
上記粒状混合物を150mm×150mm×50mmの型枠に投入し、上部よりハンドバイブレータを用いて振動押圧して締め固めを行い、室温で1日養生して目的とする多孔質平板を作製した。
【0048】
上記のようにして10mmZ粒子が粒状結合材を介して強固に固定された、透水性の良好な平板が得られた。平板を破壊して内部の10mmZ粒子の表面状態を観察した。10mmZ粒子表面へのセメント硬化物の付着は10mmZ粒子を粒状結合材と混合した時点と比較してほとんど変わりがなかった。
【0049】
〔実施例2〕
市販の粒径5mmのみかげ砕石(結合材の固体粒子として使用)350重量部に普通ポルトランドセメント100重量部、5号珪砂25重量部およびセルロースエーテル粉末0.2重量部を加えて混合した。混合物にポリカルボン酸系減水剤0.6重量部、SBR系ポリマーディスパージョン6重量部および水を加え、よく練り混ぜて粒状結合材を製造した。水の添加量は上記練り混ぜによってセメントペーストがみかげ砕石の表面に満遍なく付着する程度とした。
【0050】
上記粒状結合材全量を6mm表乾Z粒子(多孔質粒子として使用)300重量部に添加し、全体が均一になるようによく攪拌した。この操作により、セメントペーストで覆われた粒状結合材と6mmZ粒子が混ざり合った粒状混合物が得られた。この際、6mmZ粒子表面は若干セメントペーストが付着した程度であった。
【0051】
上記粒状混合物を実施例1と同様にして型枠に投入し、振動押圧締め固めを行い、1日養生して多孔質平板を作製した。
【0052】
得られた平板は6mmZ粒子が粒状結合材を介して強固に固定された、透水性の良好な平板で、6mmZ粒子表面のセメント硬化物の付着による孔の閉塞は少なかった。
【0053】
〔実施例3〕
6mm表乾Z粒子(粒状結合材の固体粒子として使用)200重量部に酸化マグネシウム(MgO)粉末60重量部、塩化マグネシウム(MgCl・6HO)粉末38重量部、ゼオライト微粉末30重量部およびセルロースエーテル粉末0.2重量部を加えて混合した。混合物に水を過剰にならないように注意しながら添加し(約30重量部)、よく練り混ぜてマグネシアセメントよりなる粒状結合材を製造した。
【0054】
上記粒状結合材全量を6mm表乾Z粒子(多孔質粒子として使用)300重量部に添加し、全体が均一になるようによく攪拌して粒状混合物を作製した。多孔質粒子としての6mmZ粒子表面へのマグネシアセメントペーストの付着は普通ポルトランドセメントペーストの場合に比して多かったが、実施例1および実施例2に類似した状態の粒状混合物が得られた。
【0055】
上記粒状混合物を150mm×150mm×50mmの型枠に投入し、上部よりハンドバイブレータを用いて振動押圧して締め固めを行い、室温で1日養生して目的とする多孔質平板を作製した。
【0056】
上記のようにして6mmZ粒子(多孔質粒子)が粒状結合材を介して強固に固定された、透水性の良好な平板が得られた。上記6mmZ粒子表面へのセメント硬化物の付着は、該Z粒子を粒状結合材と混合した時点に比べてやや多い程度であった。
【0057】
〔実施例4〕
実施例1と同様にして、10mmZ粒子を多孔質粒子とする150mm×150mm×50mmの多孔質平板を3枚作製した。これら3枚の平板をZ平板−1、Z平板−2、Z平板−3と呼ぶ。また、比較のために、実施例1で示した材料を一度に混合して練り混ぜ、6mmZ粒子と10mmZ粒子を骨材とする硬練りコンクリートを作製し、これを上記と同様にして型枠に投入して締め固めを行い、多孔質コンクリート平板を3枚作製した。これらの平板を普通平板−1、普通平板−2、普通平板−3と呼ぶ。
【0058】
上記の平板を用いて、ゼオライト表面露出多孔質平板の、(a)生物付着・生育性、(b)吸音特性、(c)水分の吸収・発散特性、を上記普通平板との比較で観測した。
【0059】
(a)生物付着・生育性
Z平板−1および普通平板−1を小川の水辺に夏季1ヶ月間放置して、表面の状態を観察した。両平板とも表面に緑藻類の着生が認められたが、ゼオライト表面露出のZ平板−1の藻類着生は、普通平板−1に比較して顕著であった。
【0060】
(b)吸音特性
一般の交通騒音周波数は400〜1600Hzとされている。そこで、Z平板−2(露出)および普通平板−2(非露出)を用いて、200〜2000Hzの吸音特性を測定した。測定には、B&K社製の吸音率
測定装置を使用し、垂直入射吸音率を測定した。
【0061】
図5に吸音周波数と吸音率の関係を示した。ゼオライト表面露出平板は明らかな吸音率の上昇を示している。
【0062】
(c)水分の吸収・発散特性
Z平板−3(ゼオライト表面露出)および普通平板−3(ゼオライト表面非露出)を用い、水分の吸収・発散性を次のようにして調べた。Z平板−3および普通平板−3を長期間室内に放置した後、それぞれを1時間、水に浸漬し、十分水きりを行い、そのときの吸水量を測定した。水切りを行った平板を約20℃、45%RHの室内に放置し、放置時間と水の発散量の関係を測定した。
【0063】
測定結果を表1に示した。表で、Woは長期間室内に放置した気乾状態の平板の重量、Waは1時間水に浸漬してから十分水切りした平板の重量、Wd(t)は水切り後20℃、45%RHの室内にt時間(h)放置した平板の重量を表す。したがって、(Wa−Wo)/Woは気乾状態からの吸水率、{Wa−Wd(t)}/Waは吸着した水のt時間(h)放置による発散率である。表から分るように、ゼオライト表面を露出させることで、水分の吸収、発散ともに顕著に向上する。
【0064】
【表1】
Figure 2004285619
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明は、水、セメント、コンクリート混和材料および固体粒子を練り混ぜて作った粒状結合材によって、多孔質粒子を相互に結合させて成る連続空隙を有するコンクリート構造物であって、上記多孔質粒子が多孔性表面を露出して上記連続空隙を有するコンクリート構造物中に分布しているから、耐久性に優れた、生態系適合性と、騒音低減や温暖化防止などの社会環境適合性を併せ持つ環境適合性コンクリート構造物を提供することができる。
【0065】
また、上記連続空隙を有する環境適合性コンクリート構造物の製造方法において、(1)水、セメント、コンクリート混和材料および固体粒子を練り混ぜて粒状結合材を調製する工程と、(2)多孔質粒子を表乾状態に調整する工程と、(3)上記表乾状態の多孔質粒子と上記粒状結合材を混合し、混合物を製造する工程と、(4)上記混合物を型枠に投入し、振動押圧締め固めを行って成形し、成形物を製造する工程と、(5)上記成形物を養生する工程とを含むから、優れた環境適合性コンクリート構造物を容易に、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る粒状結合材の断面模式図である。
【図2】本発明に係る多孔質粒子の含水状態を示す断面模式図である。
【図3】本発明に係る多孔質粒子と粒状結合材を混合した状態を示す模式図である。
【図4】図3に示した混合物を締め固めた後の状態を示す断面模式図である。
【図5】実施例に示した多孔質コンクリート平板の吸音特性である。
【符号の説明】
1:固体粒子、2:セメントペースト、3:乾燥領域、4:水分含有領域、11:粒状結合材、12:絶乾状態の多孔質粒子、13:気乾状態の多孔質粒子、14:表乾状態の多孔質粒子、15:振動を受けた表乾状態の多孔質粒子

Claims (2)

  1. 水、セメント、コンクリート混和材料および固体粒子を練り混ぜて作った粒状結合材によって、多孔質粒子を相互に結合させて成る連続空隙を有するコンクリート構造物であって、上記多孔質粒子が多孔性表面を露出して上記連続空隙を有するコンクリート構造物中に分布していることを特徴とする環境適合性コンクリート構造物。
  2. 請求項1記載の連続空隙を有する環境適合性コンクリート構造物の製造方法において、(1)水、セメント、コンクリート混和材料および固体粒子を練り混ぜて粒状結合材を調製する工程と、(2)多孔質粒子を表乾状態に調整する工程と、(3)上記表乾状態の多孔質粒子と上記粒状結合材を混合し、混合物を製造する工程と、(4)上記混合物を型枠に投入し、振動押圧締め固めを行って成形し、成形物を製造する工程と、(5)上記成形物を養生する工程とを含むことを特徴とする環境適合性コンクリート構造物の製造方法。
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