JP5569682B2 - 石炭灰を原料とする魚礁・藻礁ブロックおよび魚礁・藻礁の形成方法 - Google Patents

石炭灰を原料とする魚礁・藻礁ブロックおよび魚礁・藻礁の形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、石炭灰を原料とする魚礁・藻礁ブロックおよび魚礁・藻礁の形成方法に関する。さらに詳しくは、石炭火力発電所において発生する石炭灰を原料として製造された石炭灰を原料とする魚礁・藻礁ブロックおよび魚礁・藻礁の形成方法に関する。
石炭火力発電所における火力発電に際しては、石炭灰(フライアッシュ、クリンカアッシュ)が多量に発生することから、従来、石炭灰をリサイクル資源として有効利用することが検討されている。
かかる石炭灰の利用例として、石炭灰を造粒した造粒物(石炭灰造粒物)を、水中における生物の生息環境改善に利用した技術が開発されている(特許文献1)。
特許文献1には、泥土層の間に石炭灰造粒物の層を設け、表面に覆砂を被せて形成された地層に、略柱状に形成した石炭灰造粒物を複数本千鳥状又は格子状となるように差し込んだ人工干潟が開示されている。
そして、かかる構造の人工干潟は、泥土層の間に石炭灰造粒物の層が設けられており、造成干潟内部への水循環が起こり、波浪等による覆砂の離散を低減することができるので、人工干潟として定着度を高めることができる旨が記載されている。
しかも、潮汐により石炭灰柱状体を通じて、泥土層により多くの酸素が供給され、泥土の還元状態が解消するから、泥土層が好気性状態となり、硫化水素の発生が抑制されるとともに、泥土層の泥質を生物の生息に好ましい環境へ改善できる旨も記載されている。
しかるに、特許文献1の技術は、石炭灰造粒物がその通気性に起因して泥土層の改質に有効であることは記載されているものの、石炭灰造粒物自体を生物の生息環境とするものではない。また、層構造を形成したり柱状に形成した石炭灰造粒物を埋め込んだりするなどの作業が必要であり、生物の生息環境を形成するために非常に手間が掛かる。
水中における生物の生息環境を簡易に改善する技術としては、従来、藻礁ブロックを海中などに設置することが行われている。
かかる藻礁ブロックはコンクリートによって形成することが一般的であったが、藻礁ブロックの材料に石炭灰を使用した技術も開発されている(例えば、特許文献2)。
特許文献2には、石炭灰と消石灰とを主要原料とした使用済み脱硫剤を結合材によって固結して形成された水生生物育成用の成形体が開示されており、使用済み脱硫剤が多孔質であるので、この細孔を水生生物の繁殖空間とすることが記載されている。
しかるに、特許文献2には、藻礁ブロックにホソメコンブが着床した実施例が記載されているものの、他の海藻はほとんど付着していなかったと推察される。
つまり、特許文献2の技術では、魚や小型動物が生息する自然環境のように、複数の海藻等が混在して存在している状態を形成することは困難であると考える。
そして、かかる魚や小型動物が生息する自然環境に近い環境を実現できる藻礁ブロックは現在のところ存在しておらず、かかる環境を実現できる藻礁ブロックが求められている。
特許第4360645号公報 特許第2773067号公報
本発明は上記事情に鑑み、魚や小型動物が生息する自然環境に近い環境を実現できる魚礁・藻礁ブロックおよび魚礁・藻礁の形成方法を提供することを目的とする。
第1発明の魚礁・藻礁ブロックは、石炭灰を粒状化した石炭灰粒状材を骨材として形成されたブロックであって、前記石炭灰粒状材が、石炭火力発電所において生成される石炭灰と、高炉セメントを含む原料から形成されたものであり、前記石炭灰がフライアッシュのみからなることを特徴とする。
第2発明の魚礁・藻礁ブロックは、第1発明において、前記ブロックは、炭酸ガスによる中性化処理が行われたものであることを特徴とする。
第3発明の魚礁・藻礁ブロックは、第1または第2発明において、前記石炭灰粒状材は、乾燥重量比において、前記石炭灰100重量部に対して、前記高炉セメント3〜7重量部、水15〜30重量部、となるように配合された原料から形成されたものであることを特徴とする。
第4発明の魚礁・藻礁ブロックは、第1、第2または第3発明において、前記石炭灰粒状材の粒径が、10〜20mmであることを特徴とする。
第5発明の魚礁・藻礁の形成方法は、第1、第2、第3または第4発明の魚礁・藻礁ブロックを、人工的に水流を形成する構造物とともに設置することを特徴とする。
第1発明によれば、石炭火力発電所において生成される石炭灰と高炉セメントを原料とした石炭灰粒状材を骨材として形成されているので、海藻等を自然環境に近い状態となるように着床させることができる。しかも、ブロックが多孔質状でありその表面に凹凸が形成されているので、ブロック表面には海藻等が着床し易くなる。また、石炭灰がフライアッシュのみからなるので、石炭灰粒状材の状態を均一な状態に保ち易くなるから、ブロックもその全体をほぼ均質な状態とすることができる。すると、ブロック全体を覆うように海藻等が育成し、しかも、海藻等の状態を自然環境に近い状態とすることができる。さらに、かかる自然環境に近い状態の海藻等によってブロック全体が覆われれば、魚や小型動物に適した生息環境をより広い範囲に形成することができる。
第2発明によれば、ブロックは、炭酸ガスによる中性化処理が行われているので、水中に設置しても、アルカリ成分が溶出して周辺の水を高アルカリ化することを防ぐことができる。
第3発明によれば、自然環境に近い状態となるように海藻等を着床させる上で、ブロックの性質をより好ましい状態とすることができる。
第4発明によれば、ブロックにおける石炭灰粒状材同士の間に、魚や小型動物の生息に適した空隙を形成することができる。
第5発明によれば、ブロックの周囲に形成される人工的な水流によってブロック周囲の環境が改善されるので、ブロックへの藻類の付着性を向上させることができ、また、付着した藻類の生育状況を向上させることができる。
本発明の魚礁・藻礁ブロックの一例を示した図であり、(A)はブロック1の概略外観図であり、(B)はブロック1の骨材となる石炭灰粒状材2の概略説明図である。 付着植物(海藻)の湿重量の実験結果を示した図である。 小型動物の個体数の実験結果を示した図である。 石炭灰粒状材2を形成する装置の概略説明図である。 本発明の魚礁・藻礁ブロックを設置する構造物の一例を示した概略説明図である。
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の魚礁・藻礁ブロックは、磯や湖沼、池、河川、海などの水中に設置するブロックである。つまり、通常、藻礁ブロックが設置される、光が届く程度の深さ、例えば水深数m〜10mm程度の場所に設置されるブロックである。
そして、本発明の魚礁・藻礁ブロックは、石炭灰を原料とする石炭灰粒状材を骨材として使用したことに特徴を有するものである。
とくに、本発明の魚礁・藻礁ブロックは、瀬戸内海などのように潮流の弱い水域において使用するブロックや、砂地等のように藻(例えば、シダモクなど)が生育しないまたはしにくい場所を藻場とするためのブロックとして適している。
(構造物との併用)
さらに、本発明の魚礁・藻礁ブロックは、潮流の弱い水域に設置する場合において、人工的に湧昇流や渦流などを形成する構造物などともに使用すると、構造物によって人工的に形成される流れの効果により、魚礁・藻礁ブロックとしてより一層優れた効果を発揮することができる。つまり、構造物によってブロックの周囲に形成される人工的な水流によってブロック周囲の環境が改善されるので、ブロックへの藻類の付着性を向上させることができ、また、付着した藻類の生育状況を向上させることができる。
例えば、図5に示すような形状を有する、特許第4183862号公報に記載されている構造物100において、その石積部117〜120に本発明の魚礁・藻礁ブロックを設置すると、この構造物100が形成する湧昇流や渦流の効果により、魚礁・藻礁ブロックとしてより一層優れた効果を発揮させることができる。
この構造物100とは、板状の部材を平面視してクロス状となるように組み合わせて形成されており、その中央部(板状の部材が交差している部分)に向かって周囲から徐々に高くなるように山形状に形成された湧昇流発生部材111を有するものである。この湧昇流発生部材111は、構造物100の中央上部に配置されて湧昇流を発生させるために設けられている。
また、この構造物100は、湧昇流発生部材111を中心として、湧昇流発生部材111を四方から囲むように配置されたブロック体112〜115を有しており、湧昇流発生部材111はブロック体112〜115の上端に固着されている。
さらに、このブロック体112〜115は、その上部には平面視で矩形の石積部117〜120を有しており、下部には矩形土台部131を有している。そして、矩形土台部131に立設された垂直柱部134及び傾斜柱部135によって石積部117〜120を支持するような構造となっている。なお、隣り合うブロック体112〜115同士は、金属製の連結部材116によって連結されている。
以上のごとき形状を有する構造物100を水中に配設すれば、湧昇流発生部材111が流動場の制御に優れているので、底層の栄養 塩を巻き上げる湧昇流を更に上方にまで発生させることができる。すると、石積部117〜120に本発明の魚礁・藻礁ブロックを設置し藻を成長させた場合、本発明の魚礁・藻礁ブロックに形成された藻が成長しても、藻全体に底層の栄養 塩を供給できる。
また、湧昇流発生部材111は潮流に対する抵抗となるが、この湧昇流発生部材111が石積部117〜120の高さより上方に配置されているので、湧昇流となる水塊を増大させることができる。すると、魚礁・藻礁ブロックに付着して成長した藻に対して、十分な量の栄養を供給できる。
しかも、潮流の抵抗となる面が拡大されるので、構造物100後方の後流域においてより広範囲に栄養塩を移送させる渦流域、及び滞留域を形成させることができる。すると、様々な方向から潮流が構造物100に衝突すれば、構造物100に設けられている全ての魚礁・藻礁ブロックに対して栄養を十分に含んだ水を供給できる。よって、魚礁・藻礁ブロックへの藻類の付着性を向上させることができ、また、付着した藻類の生育状況を向上させることができる。
(本発明の魚礁・藻礁ブロック1の説明)
つぎに、本発明の魚礁・藻礁ブロック1について、詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の魚礁・藻礁ブロック1(以下、単にブロック1という)は、石炭灰粒状材2を骨材として、この石炭灰粒状材2をセメントによって結合して形成されたものである。
このブロック1は、骨材となる石炭灰粒状材2同士の間に空隙が形成されるように形成されている。
具体的には、石炭灰粒状材2として粒径が10〜20mmものを使用し、石炭灰粒状材2とセメントとの配合割合が、乾燥重量比において、石炭灰粒状材2(100重量部)に対して、セメント15〜25重量部、水5〜10重量部となるように配合してブロック1が形成されている。
例えば、板状のブロック1を形成する場合には、パン型ミキサー等の混合機に対して、石炭灰粒状材2及びセメントを投入して空練りを行った後、水を添加し練り混ぜる。そして、練り混ぜられた原料を小型コンクリート平板即脱成型機に供給すれば、板状のブロック1を形成することができる。
上記のごとく形成されたブロック1は、その空隙率を20%程度とすることができるし、石炭灰粒状材2同士の間に形成される空隙の幅等を2〜15mm程度とすることができる。よって、ブロック1内を、魚や小型動物の生息に適した状態とすることができる。
しかも、石炭灰粒状材2とセメントとの配合割合を上記のごとき配合割合としているので、ブロック1が上記のごとき十分な空隙を有していても、十分な強度とすることができる。
なお、石炭灰粒状材2は、後述するような方法で製造された場合、最大粒径が40mm以下、粒径が0.075mm以下の細粒分含有率15%未満の範囲の粒状物が存在する状態となる。このため、製造された石炭灰粒状材2から、粒径10〜20mmの石炭灰粒状材2を選択して使用する必要がある。この粒径の石炭灰粒状材2を使用すれば、ブロック1の成形性や、成形されたブロック1の重量、また、ブロック1に形成される空隙を最適な状態とすることができるので、好ましい。
使用する石炭灰粒状材2を上記のごとき粒径を揃える方法は、とくに限定されないが、振動篩い分けなど方法を使用することが好ましい。
また、ブロック1は、上述したような方法で成形されたものをそのまま(つまり、何も処理せずに)使用してもよいが、使用前に炭酸ガスによる中性化処理を行うことが好ましい。中性化処理とは、成型後、炭酸ガス養生室内で養生を行うことで、表層部の中性化を促進することである。
かかる中性化処理を行えば、ブロック1を水中に設置しても、アルカリ成分が溶出して周辺の水を高アルカリ化することを防ぐことができるから、ブロック1近傍における海藻や魚の生息環境の悪化が生じないという利点が得られる。
(石炭灰粒状材2について)
ブロック1の骨材となる石炭灰粒状材2は、石炭火力発電所において生成される石炭灰と、高炉セメントと、水と、からなる混合材料を練って粒状化し固化させたものである。
(製造方法)
石炭灰粒状材2を形成する方法、つまり、混合材料を練って粒状化する方法は、とくに限定されない。しかし、特開2005−169379号公報に記載されている装置を用いて石炭灰粒状材2を形成すれば、製造される石炭灰粒状材2の大部分を球形に近い形状に形成することができるので、好ましい。
具体的には、図4に示すように、攪拌装置10は、混合材料を入れる撹拌槽11と、撹拌槽11内に平行に配設された二本の回転軸12、12と、回転軸12、12の各々に 所定間隔で配設され放射状に延びる複数のアーム13、13・・と、を備えている。
回転軸12、12は、矢印12a、矢印12bに示したように、互いに逆方 向に回転するようになっている。
また、複数のアーム13、13・・は、その一部のアーム13aの先端に、混合材料を撹拌槽11の内壁11aに押し当てて擦り潰す第一の羽根14を 備えている。
一方、複数のアーム13、13・・のうち、残部のアーム13bの先端には、撹拌槽11の内壁11aに付着した混合材料を掻き取る第二 の羽根15を備えている。
この撹拌装置10によって石炭灰粒状材2を形成する方法を説明する。
まず、撹拌装置10の撹拌槽11に、石炭灰と、高炉セメントと投入し、回転軸12、12を回転させてこれらを撹拌して混合すると、混合物が形成される。両者が十分に混合した混合物が形成されると、回転軸12,12の回転を継続したまま、撹拌槽11に水を投入する。
水が添加されることにより混合物が固化を開始するが、回転軸12,12の回転によって、固化が進行しつつある混合物は、第一の羽根14によって内壁11aに押し当てられる。すると、固化が進行しつつある混合物は、第一の羽根14と内壁11aとの間で磨り潰され、その状態で内壁11aに付着する。
そして、内壁11aに付着した混合物が第二の羽根15により掻き取られることによって、球形の石炭灰粒状材2が形成されるのである。
(配合割合)
石炭灰粒状材2の原料となる混合材料において、各原料の配合割合は、とくに限定されるものではないが、例えば、乾燥重量比において、石炭灰100重量部に対して、高炉セメント3〜8重量部、水15〜40重量部、となるように配合することが好ましい。
かかる配合割合とすれば、石炭灰粒状材2が多孔質な状態となるし、ある程度の強度(例えば、8,000kN/m程度)とすることができる。すると、ブロック1を形成する際に、石炭灰粒状材2が損傷したり、水中にブロック1を設置した後でも長期間その形状を維持できるので、好適である。
しかも、ブロック1が多孔質状となるので、ブロック1の表面に凹凸が形成される。すると、ブロック1の表面には海藻等が着床し易くなるという点でも好ましい。
(石炭灰)
石炭灰粒状材2の原料である石炭灰は、その石炭灰がどのようにして生成されたものであるかはとくに限定されないが、石炭火力発電所において生成される石炭灰を使用することが好ましい。かかる石炭灰を原料として使用すれば、石炭灰粒状材2を使用して形成されたブロック1を水中に設置したときに、その表面等に海藻等が着床し成育すると、海藻等の状態をより自然環境に近い状態とすることができる、という利点が得られる。
また、石炭火力発電所において生成される石炭灰には、フライアッシュとクリンカアッシュがあるが、石炭灰粒状材2の原料には、いずれの石炭灰も使用することが可能であるし、両者が混合された石炭灰を使用することもできる。
しかし、フライアッシュのみからなる石炭灰を使用した場合には、以下の利点が得られる点で好ましい。
フライアッシュのみからなる石炭灰を使用した場合、石炭灰の粒径が小さくまたその粒度分布が狭いので、形成される石炭灰粒状材2の状態を均一な状態に保ち易くなる。そして、かかる石炭灰粒状材2を骨材とするブロック1も、その全体の状態をほぼ均質な状態とすることができる。すると、ブロック1の表面全体において、自然環境に近い状態の海藻等をほぼ均一に生育させることができる。そして、ブロック1の表面全体が自然環境に近い状態の海藻等によって覆われれば、魚や小型動物に適した生息環境を、より広い範囲に形成することができるので、好ましい。
(高炉セメント)
また、高炉セメントには、例えば、高炉セメントB種などを使用することができるが、使用する高炉セメントの種類はとくに限定されない。例えば、普通ポルトランドセメント、エコセメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなども使用できる。しかし、高炉セメントB種を使用した場合には、海水等に対する化学的抵抗性、アルカリ骨材反応抑制等の向上という点で好ましい。
本発明の魚礁・藻礁ブロックの有効性を、他の材料からなる魚礁・藻礁ブロックと比較した。
実験では、本発明の魚礁・藻礁ブロックと、他の材料(コンクリート、鋼材、石材)からなるブロックを高松港周辺海域(水深約6m)に沈設して1年間のフィールド試験を実施した。比較は、沈設後6ヶ月、1年、2年の各時点において、(1)各ブロックの状態、(2)各ブロックに付着する植物の湿重量、(3)ブロックに生息する小型動物(選好性餌料生物)の個体数を比較した。
なお、植物の湿重量および小型動物の個体数は、植物が最も生長する春季(3月)に確認した。
実験では、本発明の魚礁・藻礁ブロックとして、300mm×300mm×60mmの直方体に形成されたものを使用し、このブロックを、図5の構造物100の石積部117〜120にそれぞれ配置した状態で沈設した。
なお、本発明の魚礁・藻礁ブロックでは、石炭灰粒状材を形成する際の各原料の配合割合、また、ブロックを形成する際の各原料の配合割合は、以下のとおりである。
(石炭灰粒状材)
石炭灰:フライアッシュ
高炉セメント:高炉セメントB種
水:工業用水
添加材:消石灰
(ブロック)
セメント:新日鉄高炉セメントB種(新日鉄高炉セメント(株)製)
水:水道水
形成されたブロックの各性質は以下のとおりである。
空隙率:20%
曲げ強度:0.94 N/mm(圧縮強度から換算した値)
(1)ブロックの状況
本発明の魚礁・藻礁ブロックは、沈設後1年が経過しても破損及び形状等の変化はみられなかった。基盤ブロックの表面には、沈設後6ヶ月に比べると浮泥の体積は多くなっていたが、基盤ブロックの表面から空隙は確認できた。
一方、コンクリート製のブロック(空隙なし)及び鋼材は、沈設後1年で基盤水平面の表層に薄く浮泥が確認できた。
(2)生物着生状況
各ブロックへの植物(海藻)の付着状況を図2に示す。
図2に示すように、本発明の魚礁・藻礁ブロックおよびコンクリート製のブロックでは、沈設後1年で大量の海藻が付着したが、鋼材や石材ではわずかな海藻しか付着しなかった。つまり、海藻を育成させる上では、本発明の魚礁・藻礁ブロックやコンクリート製ブロックが好ましいことが確認できた。
また、付着した海藻を確認すると、コンクリート製ブロックではほとんどシダモクしか付着していないのに対し、本発明の魚礁・藻礁ブロックでは、シダモク以外の海藻もある程度の量が付着している。
また、沈設後2年の時点では、鋼材や石材は沈設後1年と同様にわずかな海藻しか付着しないという点では同様である。
しかし、コンクリート製ブロックに付着する海藻が大幅(10分の1程度)に減っていることが確認できる。しかも、コンクリート製ブロックでは、幼稚魚の保護育成場及び魚類の摂餌場などの点で重要であるシダモクが全く見られなくなっている。
一方、本発明の魚礁・藻礁ブロックでは、沈設後1年と同等の量の海藻が付着している。また、シダモクの付着量は一年目とほぼ同等である上、一年目には見られなかったワカメも付着していることが確認できた。
以上の結果より、本発明の魚礁・藻礁ブロックを設置した場合、複数年に渡って継続して藻を付着育成させる機能を維持でき、しかも、複数の海藻等が混在している状態を形成できることから、魚や小型動物が生息する自然環境に近い状況を形成できることが確認できた。
また、図3に示すように、小型動物(選好性餌料生物、例えば、小型のえび、かに等)の存在状況は、本発明の魚礁・藻礁ブロックおよびコンクリート製のブロックでは、沈設後1年で大量の小型動物の存在が確認できたが、鋼材や石材では小型動物はわずかな量しか確認できなかった。
一方、2年経過後は、本発明の魚礁・藻礁ブロックでは、わずかに個体数は少なくなったものの、ほぼ1年目と同等の小型動物の生息が認められる。一方、コンクリート製のブロックでは、小型動物の生息数が半分以下にまで減少している。これは、コンクリート製のブロックにおけるシダモクの消失と海藻の付着量の大幅な減少が影響していると考えられる。
以上のことから、本発明の魚礁・藻礁ブロックでは、他のブロックに比べて、魚等の餌となる小型動物を大量に生息させておくことができることが確認できる。そして、本発明の魚礁・藻礁ブロックでは、大量の小型動物をブロックに維持しておくことができるので、ブロックに形成される環境が魚礁に適していることが確認できた。
以上のごとく、2年間のフィールド試験の結果、本発明の魚礁・藻礁ブロックは他の材料からなるブロックに比べて、魚礁・藻礁を形成する機能が非常に高く、また、魚礁に適した環境を形成できることが確認できる。
本発明の魚礁・藻礁ブロックは、磯や湖沼、池、河川、海等に沈降させるブロックに適している。
1 魚礁・藻礁ブロック
2 石炭灰粒状材

Claims (5)

  1. 石炭灰を粒状化した石炭灰粒状材を骨材として形成されたブロックであって、
    前記石炭灰粒状材が、
    石炭火力発電所において生成される石炭灰と、高炉セメントを含む原料から形成されたものであり、
    前記石炭灰がフライアッシュのみからなる
    ことを特徴とする魚礁・藻礁ブロック。
  2. 前記ブロックは、
    炭酸ガスによる中性化処理が行われたものである
    ことを特徴とする請求項1記載の魚礁・藻礁ブロック。
  3. 前記石炭灰粒状材は、
    乾燥重量比において、
    前記石炭灰100重量部に対して、前記高炉セメント3〜7重量部、水15〜30重量部、となるように配合された原料から形成されたものである
    ことを特徴とする請求項1または2記載の魚礁・藻礁ブロック。
  4. 前記石炭灰粒状材は、
    粒径が10〜20mmの略球形に形成されている
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の魚礁・藻礁ブロック。
  5. 請求項1、2、3または4記載の魚礁・藻礁ブロックを、人工的に水流を形成する構造物とともに設置する
    ことを特徴とする魚礁・藻礁の形成方法。
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