JP2007209969A - 水中設置型植物栽培容器体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 三面張り水路やため池等の水場環境に容易に設置することが出来、その設置に伴い、対象とする水場環境に、水質や景観の改善効果をもたらすだけでなく、生物多様性の向上も見込んだシステムを提供する。
【解決手段】目的とする水場環境に設置する水中設置型プランター1は、栽培容器本体2と該栽培容器本体を支える脚部4からなり、栽培容器本体は、充填剤10と、該充填材に植栽される水生植物5とからなり、該栽培容器の底板11には複数の貫通孔12が設けられ、栽培容器体と水路底の間に空間8が形成される構成とし、ここに水中根が繁茂する構成とした。該水中根の繁茂により、水質が浄化されるだけでなく、魚類、甲殻類に餌場や産卵場所等の生息空間が提供され、生物相が豊かになる。水中設置型プランターの脚部高と本体高は220mm〜350mm、220mm〜350mmの範囲で調整可能であり、栽培容器本体と脚部の高さを組み合わせることで、対象とする水路に適応した生態系復元システムが形成される。
【選択図】図1
【解決手段】目的とする水場環境に設置する水中設置型プランター1は、栽培容器本体2と該栽培容器本体を支える脚部4からなり、栽培容器本体は、充填剤10と、該充填材に植栽される水生植物5とからなり、該栽培容器の底板11には複数の貫通孔12が設けられ、栽培容器体と水路底の間に空間8が形成される構成とし、ここに水中根が繁茂する構成とした。該水中根の繁茂により、水質が浄化されるだけでなく、魚類、甲殻類に餌場や産卵場所等の生息空間が提供され、生物相が豊かになる。水中設置型プランターの脚部高と本体高は220mm〜350mm、220mm〜350mmの範囲で調整可能であり、栽培容器本体と脚部の高さを組み合わせることで、対象とする水路に適応した生態系復元システムが形成される。
【選択図】図1
Description
[発明の属する技術分野]
本発明は、流水路やため池などの水中に固定設置する、水路内の生態系復元システムに関する。
本発明は、流水路やため池などの水中に固定設置する、水路内の生態系復元システムに関する。
[従来の技術]
田園地帯を流れる用水路や排水路は、生活空間における水環境の大部分を占めるが、近年の改修工事の普及により、その多くがコンクリート張りとなっている。この一様単純な面で水路が構成されてしまった結果、泥の堆積が減少し、植物は水中にも水上にも植生が見られず、それを居住あるいは捕食する事に依存した底性動物や魚類が著しく減少し、絶滅を危惧される生物種が急増している現状がある。
田園地帯を流れる用水路や排水路は、生活空間における水環境の大部分を占めるが、近年の改修工事の普及により、その多くがコンクリート張りとなっている。この一様単純な面で水路が構成されてしまった結果、泥の堆積が減少し、植物は水中にも水上にも植生が見られず、それを居住あるいは捕食する事に依存した底性動物や魚類が著しく減少し、絶滅を危惧される生物種が急増している現状がある。
また、農業排水、合併浄化槽処理水、雑排水等、汚濁物質を含む汚水が流れ込む水路や池や湖沼等では、有機質、窒素、リンなどの過剰により、富栄養化状態となり、プランクトンの大量発生が生じるが、それら生物の呼吸に必要な酸素が不足する事につながり、水中のプランクトンや魚類や植物が死滅する状態が引き起こされ、その死体が原因となってさらに汚濁が進むといった悪循環の問題がある。
これらの問題を解決するための従来のシステムとしては、例えば特許公開広報「特開2003−112191」に示されるように、浄化材をつけた浮島を池や沼に浮かべるもの等や、特許公開広報[平4−27920]に示されるように、プランターを水路外壁に設置するもの等がある。
特許公開広報「特開2003−112191」に示される発明は、水質浄化材を収納した水質浄化装置を原水中に浮遊させ、浄化材を原水に接触させることで、池や沼などがもつ生態系機能と相乗させながら水質を浄化する水質浄化システムである。水質浄化装置には風車、または水車が取り付けられており、富栄養化により酸素不足となっている原水に酸素を供給することが出来る。また、水質浄化装置の上部に、水草類や水蘚類などの植物を生息させ、原水に含まれる窒素、窒素化合物、りん酸、カリウムなどを植物が栄養分として吸収することで原水の富栄養化の原因となる物質を減少させ水質を浄化する。
特許公開広報[平4−27920]は、流水路の流壁をなす対抗する両側壁の少なくとも一方に、水生植物を植え付けた網状容器を複数個、適宜間隔を介して着脱自在に設けることの出来る装置である。各容器と対抗する流水路の他方への側壁との間に形成された主流路で容器内に渦流が発生するため、汚染物質の栄養物が水生植物の水中根に有効に付着することが出来る。
以上に述べた従来技術は特許公開広報「特開2003−112191」、特許公開広報[平4−27920]いずれも生態系の昨日を回復する能力に乏しい。
また、「特開2003−112191」に示される発明については、池や沼等、比較的規模の大きいものに限られ、[平4−27920]については、流量の安定した緩やかな水路に限定される。従って、両発明共に、水位変動が伴う用排水路等や、ため池等小規模の水環境の水質改善へ用いることは出来なかった。さらに、設置工事が大掛かりであった。
具体的には、特許公開広報「特開2003−112191」に示される発明については、魚類生態系の改善効果が低いという問題もあった。これは、水面付近に容器体があり、水路の底から容器体までの水深が大きくなることが原因である。つまり、魚類の稚魚にとっては水面付近の植物が繁茂する空間を利用する事もできるが、水底付近に生息する成魚にとっては生息空間と成り難い。さらに、栽培容器体は水に浮いている状態であり、水深の変動を考慮してワイヤーやロープ等で慎重に係留している。このため、工事費用が高く、また水深変動の大きい水環境、例えば用水路や排水路では使用できなかった。
また、特許公開広報[平4−27920]については、流水壁へ浄化装置を取り付けるため、設置工事が大掛かりであった。また、容器は強度が不足するため、水流のある、かつ水流変動が大きい用排水路等に適応させることは出来なかった。
本発明は、水路やため池等の水環境に簡便に設置することが出来るシステムであって、その設置に伴い、植栽植物の根が水中で魚類などの良い生息場になり生物多様性が向上すること、植栽植物が水路の景観を改善すること、かつ植栽植物の根や充填剤が水質を浄化することを目的とするものである。
[発明を解決するための手段]
そして、本発明は、上記目的を達成するために、次の構成からなる。
そして、本発明は、上記目的を達成するために、次の構成からなる。
請求項1に記載の発明にかかわる水路やため池等の生態系復元システムは、栽培容器を流水路やため池などの水中に固定設置し生息空間としての機能回復を図るシステムであって、使用される栽培容器は、栽培容器本体と脚部とから、該栽培容器本体は充填材と該充填材に植栽される植物とからなり、該栽培容器の底部には複数の貫通孔が設けられ、栽培容器体と水路底の間に空間が形成され、該空間に水中根が繁茂することで魚類などの生息空間が形成されることを特徴とする。
請求項2に記載の発明に関わる水路やため池等の生態系復元システムのように、請求項1記載の水路やため池等の生態系復元システムにおいて、栽培容器本体の側壁はコンクリート製の複数の側板からなり、該側板を組み立てることで該側壁に隙間が複数箇所設けられることを特徴とする。
請求項3に記載の発明に関わる水路やため池等の生態系復元システムのように、請求項1記載の水路やため池等の生態系復元システムにおいて、栽培容器本体の側壁に、透水性コンクリート製の複数の側板からなり、該側板を組み立てることで該側壁に隙間が複数箇所設けられることを特徴とする。
請求項4に記載の発明に関わる水路やため池等の生態系復元システムのように、請求項1記載の水路やため池等の生態系復元システムにおいて、栽培容器本体が木で作製されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明にかかわる水路やため池等の生態系復元システムのように、請求項1ないし請求項4に記載の水路やため池等の生態系復元システムにおいて、栽培容器体の脚部の底部、及び水路底に貫通孔を設け、両者の固定設置を可能としたことを特徴とする。
請求項6に記載の発明にかかわる水路やため池等の生態系復元システムのように、請求項1ないし5に記載の水路やため池等の生態系復元システムにおいて、栽培容器体に使用する充填剤を、現場発生土にゼオライトとハイドロゲルを混合したものとしたことを特徴とする。
請求項7に記載の発明にかかわる水路やため池等の生態系復元システムのように、請求項1ないし6に記載の水路やため池等の生態系復元システムにおいて、栽培容器体の側壁のスリットを流壁側に設置し、汚水の原因となる物質が水と共に栽培容器内のゼオライトに触れ、吸着されやすい環境を与えることを特徴とする。
請求項8に記載の発明にかかわる水路やため池等の生態系復元システムのように、請求項1ないし7に記載の水路やため池等の生態系復元システムにおいて、栽培容器体を設置する水環境の通常時における水位が、栽培容器体の外壁の中央またはそれ以上に位置するように調節すべく、外壁、及び脚部の高さを設定して成ることを特徴とする。
請求項9に記載の発明にかかわる水路やため池等の生態系復元システムのように、請求項1ないし8に記載の水路やため池等の生態系復元システムにおいて、栽培容器体に水生植物を植栽し、その表面を流出防止剤で覆ったことを特徴とする。
[発明の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態として、一実施例を図1〜図12に基づいて説明する。
以下、本発明の実施の形態として、一実施例を図1〜図12に基づいて説明する。
図において、1は水中設置型プランターであり、栽培容器本体2と該栽培容器本体を支える脚部4からなり、栽培容器本体は、充填剤10と、該充填材に植栽される水生植物5とからなり、該栽培容器の底板11には複数の貫通孔12が設けられ、栽培容器体と水路底の間に空間8が形成され、該空間に水中根が繁茂している。
栽培容器本体は、コンクリート製の横側板3と、縦側板9と、底板11からなり、これらを組み立てることによって、側壁にスリット6が形成される。また、栽培容器本体は、図10に示すように、透水性コンクリート23を用いて自然石風に装飾することや、図11に示すように、間伐材24を用いて作製することが可能である。
栽培容器の横断面図の概略図である図3に示されるように、底板11には、複数の貫通孔12が開いており、充填材10に植栽させた水生植物5の根は該貫通孔から、栽培容器本体2と水路底面17の間の空間8へ伸張させることができる。ここで、図6に示されるように、該貫通孔は充填材10中に含まれる保水材21よりも小さいため、保水材の流出が防止できる。
以下、上記構成の動作を説明する。栽培容器を形成する横側板3及び縦側板9、脚部、充填材は、人が2〜3人で持ち運びできる重さである。従って、運搬車が通ることの出来ないような細い通りに位置する水路の場合、これを人力で持ち運び、現場施工により設置を行う。また、流れが強く、水位変動の激しい水路に設置する場合、図9に示されるように、脚部の貫通孔15と水路底面17に固定版14を当て、アンカーボルト16で固定する。
水位より上部は、プランターに植栽される水生植物が、水際環境の景観改善に寄与する。さらに、充填材として現場発生土を用いることで、在来植物の発生が期待できる。加えて、水中設置型プランターのスリット6を流壁側に設置することで、プランター内部への空気が出入りしやすい環境となり、さらに汚水の原因となる物質が水と共に栽培容器内のゼオライトに触れ、吸着されやすい環境となる。
植物は水路内の環境に適応性を有する植種を選定する。一時的な沈水や、あるいは直射日光などにも耐えうるもの、かつ景観に配慮した植物として、カキツバタやアヤメ、ミソハギなどがあるが、これらに限定せず、設置場所付近の類似環境に自生している植物種を調査して植生計画を行い、地域個体群の撹乱を生じさせないようにする。
栽培容器は、図7Bに示されるように、通常の水位時において、水位13が、栽培容器体の外壁の中央、又はそれ以上に位置するように、栽培容器本体、及び脚部を調節する。この際、栽培容器本体の高さは220mm〜350mm、栽培容器脚部の高さは220mm〜350mmの範囲で調整可能である。栽培容器本体と脚部の高さを組み合わせることで、対象とする水路に適応した生態系復元システムが形成される。また、栽培容器を設置する水環境の水深は、250mm〜950mmで設置対応が可能である。栽培容器本体と水路底との間には空間8が形成され、ここに水中根が繁茂する。これにより、水中根の繁茂により、魚類、甲殻類に餌場や産卵場所といった生息空間が提供され、生物相が豊かになる。加えて、流入した原水中の栄養塩類などの栄養物が植物の水中根に有効に付着し、根圏微生物の活性が高まる。
また、図7Aに示されるように、水深変動の激しい水路では、水位13が水中設置型プランターよりも上部に位置し、水生植物を含め栽培容器全体が水没する場合がある。この際、図8に示されるように、充填材10の表面は流出防止剤22で覆うことで、充填材10の流出を防止することが出来る。ここでも、水中設置型プランターのスリット6は、プランター内部への空気と水の出入りを可能にしており、高水位時においてもプランター内部の雰囲気のよどみを防止できる。
図7Cに示されるような水路の水が枯渇する時には、植物の枯れが懸念される。しかし、栽培容器の充填材に含まれる保水材21が水分補給源となるため、枯れが防止できる。
水路の幅が激しい場合は、水路の幅を40cm〜2m拡幅し、水路拡幅部分に本システムを設置することで、水流を阻害することなく本システムを設置することが可能である。拡幅する長さは1m〜20mであるが、長さすぎる場合は水路に面する部分の土地利用がそれだけ制約されることになるため、1m〜10mくらいが実用的な値である。
さらに、水路を拡幅した部分の水路底のみを非拡幅部分の水路底よりも5cm〜50cmの範囲で掘り下げてから、拡幅部分に本システムを設置することで、掘り下げた部分に泥がたまり、底性動物や微生物が住みやすくなり、貝類、特にカラスガイ等に代表される2枚ガイ等の良好な生息場所を形成し、かつ水生植物なども繁茂する為、生物多様性が向上する。
上述したように、本発明の水路やため池等の生態系復元システムは、水路へ簡便に設置することが出来るため、容易に水路、特に流れが強く水位変動の激しい水路において、適用性の高い植物栽培容器を提供できる。
また、該栽培容器に植生された植物は、底部の貫通孔を通り、水中へ根を伸張することが出来るため、該水中根が、水路に生息する魚類などの生物に餌場や産卵場を提供することが出来る。すなわち、該水中設置型プランターの底と水路底の空間が魚類の格好の生息空間となり、生物多様性を向上させる。
また、水路を拡幅し、且つ拡幅部分の水路底を下げた場合、泥の滞留により、生態系にとって重要な底性生物種の増加がなされ、それらのうちの貝類に産卵を依存するタナゴ類等の地域から絶滅を危惧される魚類の良質な生息空間となり、生物多様性を向上させる。
さらに、該水中根の根に繁殖したバクテリアは、水中の有機物を分解し、植物の根や魚介類に吸収され、また、充填材中に含まれるゼオライトも水中の有機物を吸着するため、富栄養化を抑制する等、水質を浄化する効果に富んでいる。
1:栽培容器体、2:栽培容器体本体、3:横側板、4:脚部、5:水生植物、6:スリット、7:水生植物の根、8:魚類の生息空間、9:縦側板、10:充填材、11:底板、12:底板の貫通孔、13:水面、14:固定版、15:脚部の貫通孔、16:アンカーボルト、17:水路底面、18:流水域、19:底板の穴、20:充填材の大きさ、21:保水材、22:流出防止材、23:透水性コンクリート、24:間伐材、25:拡幅延長、26:拡幅幅、27:水路壁面、28:拡幅部水路底、29:掘りこみ深さ
Claims (10)
- 栽培容器を水路やため池などの水中に設置し、生態系の復元をはかるシステムであって、使用される栽培容器は、栽培容器本体と脚部とから、該栽培容器本体は充填材と該充填材に植栽される植物とからなり、該栽培容器の底部には複数の貫通孔が設けられ、栽培容器体と水路底の間に空間が形成され、該空間に水中根が繁茂することで魚類などの生息空間が形成されることを特徴とする、水路やため池等の生態系の復元システム。
- 栽培容器本体の側壁はコンクリート製の複数の側板からなり、該側板を組み立てることで該側壁に隙間が複数箇所設けられることを特徴とした、請求項1記載の、水路やため池等の生態系の復元システム。
- 栽培容器本体の側壁は、透水性コンクリート製の複数の側板からなり、該側板を組み立てることで該側壁に隙間が複数箇所設けられることを特徴とした、請求項1記載の、水路やため池等の生態系の復元システム。
- 栽培容器本体を木で作成した、請求項1記載の、水路やため池等の生態系の復元システム。
- 栽培容器体の脚部の底部、及び水路底に貫通孔を設け、両者の固定設置を可能とした請求項1ないし4記載の、水路やため池等の生態系の復元システム。
- 栽培容器体に使用する充填剤は、現場発生土にゼオライトとハイドロゲルを混合したものを用いることを特徴とした、請求項1ないし5記載の、水路やため池等の生態系の復元システム。
- 栽培容器体の側壁のスリットを流壁側に設置し、汚水の原因となる物質が水と共に栽培容器内のゼオライトに触れ、吸着されやすい環境を与えることを特徴とした、請求項1ないし6記載の、水路やため池等の生態系の復元システム。
- 栽培容器体を設置する水環境の通常時における水位が、栽培容器体の外壁の中央またはそれ以上に位置するように調節すべく、外壁、及び脚部の高さを設定して成る、請求項1ないし7記載の、水路やため池等の生態系の復元システム。
- 上記記載の栽培容器体に水生植物を植栽し、その表面を流出防止剤で覆った、請求項1ないし8いずれか1項記載の水路やため池等の生態系の復元システム。
- 請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、いずれか1項に記載したシステムに使用する栽培容器体に充填材をつめ、植栽部を形成したものを水環境中に設置した、水路やため池等の生態系の復元システム。
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