以下、データ生成装置およびデータ生成方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、第1の実施例としてのデータ生成装置1Aの構成について説明する。図1に示すデータ生成装置1Aは、データ生成装置の一例であって、データ生成方法としての第1のデータ生成方法に従い、例えば、図2に示すように、回路基板100内において検査対象部品51(電子部品)を含んで構成される回路網50aの各検査対象部品51を検査する際に用いるデータを生成可能に構成されている。具体的には、データ生成装置1Aは、図1に示すように、操作部2、表示部3、記憶部4および制御部5を備えて構成されて、回路網50aの各検査対象部品51が良好状態であるか不良状態であるか(以下、良好状態と不良状態とを合わせて「良否状態」ともいう)を検査する際に回路網50a内に設定された測定点(図外の検査用プローブを接触させる部位であって、例えば、図2に示す測定点P1,P2)において測定されるべき被測定量のシミュレーション値を示すシミュレーションデータDdを生成する。
操作部2は、操作に応じて制御部5に対して操作信号を出力する。表示部3は、制御部5の制御に従い、各種の画像を表示する。
記憶部4は、制御部5によって実行されるデータ生成処理30(図3参照)において用いられる回路網データDa、定数データDbおよび測定内容データDcを記憶する。また、記憶部4は、データ生成処理30において生成されるシミュレーションデータDdを記憶する。
この場合、回路網データDaは、検査用プローブを接触させて被測定量を測定するための回路網50a内の測定点(図2に示す測定点P1,P2)、および各測定点P1,P2間に位置する検査対象部品51を特定可能なデータであって、回路基板100に形成される配線パターン、ランドおよびレジスト(いずれも図示を省略する)の形状や形成位置、並びに回路基板100に実装される検査対象部品51の形状や実装位置を示す各種のデータ(CADデータ、ガーバデータおよびマウントデータ)を含んでいる。
また、定数データDbは、検査対象部品51毎に規定されている定数(抵抗値や容量値)を特定可能な情報を含んでいる。また、測定内容データDcは、シミュレーションデータDdを用いて回路網50aの検査対象部品51に対する検査を行う図外の検査装置が、検査の際に測定する測定項目(抵抗、インピーダンス、静電容量およびインダクタンス等の被測定量の種類)、およびその測定項目の測定時における測定条件(どのような電気信号を用いるか等の条件)を含む測定内容を示す情報を含んでいる。
制御部5は、操作部2から出力される操作信号に従ってデータ生成装置1Aを構成する各部を制御する。また、制御部5は、データ生成部として機能し、図3に示すデータ生成処理30を実行することにより、シミュレーションデータDdを生成する。この場合、シミュレーションデータDdには、検査装置が行う被測定量の測定において設定可能な各測定内容の中で検査対象部品51に適した測定内容であることを意味する適正測定内容を示す情報や、検査対象部品51がショートや断線のない良好状態のときの適正測定内容におけるシミュレーション値Bs1(第1シミュレーション値)、および検査対象部品51が不良状態のときの不良状態の種類(例えば、断線状態および短絡状態)毎の適正測定内容におけるシミュレーション値Bs2(第2シミュレーション値:以下、シミュレーション値Bs1,Bs2を区別しないときには、「シミュレーション値Bs」ともいう)を示す情報が含まれている。
次に、データ生成装置1Aを用いて第1のデータ生成方法に従ってシミュレーションデータDdを生成する手順、およびその際のデータ生成装置1Aの動作について、図面を参照して説明する。なお、検査対象部品51の不良状態として、断線(オープン)状態および短絡(ショート)状態の2種類の不良状態を規定してシミュレーションデータDdを生成する例について説明する。
まず、回路基板100(図2参照)についての回路網データDa、定数データDbおよび測定内容データDcを記憶部4に記憶させる。次いで、操作部2を操作して、生成処理の実行を指示する。これに応じて、制御部5が、図3に示すデータ生成処理30を実行する。
このデータ生成処理30では、制御部5は、回路網データDa、定数データDbおよび測定内容データDcを記憶部4から読み出す(ステップ31)。続いて、制御部5は、読み出した回路網データDaに含まれているCADデータ、ガーバデータおよびマウントデータに基づき、回路基板100内において検査対象部品51を含んで構成される(検査対象部品51が配線パターン等によって接続された)回路網を特定する(ステップ32)。この場合、制御部5は、一例として、図2に示すように、検査対象部品51としての抵抗RおよびコンデンサCを含んで構成されて、他の回路網とは分離して存在する回路網50aを特定したものとする。
次いで、制御部5は、測定内容データDcに含まれている測定内容(測定項目および測定条件)を特定する(ステップ33)。この場合、測定内容データDcには、一例として、図4に示すように、測定用の電気信号として直流定電流を用いて検査対象部品51のインピーダンスを測定するとの測定内容R−CC、測定用の電気信号として直流定電圧を用いて検査対象部品51のインピーダンスを測定するとの測定内容R−CV、測定用の電気信号として160Hzの交流電流を用いて検査対象部品51のインピーダンスを測定するとの測定内容R−AC160、測定用の電気信号として16kHzの交流電流を用いて検査対象部品51のインピーダンスを測定するとの測定内容R−AC16k、および測定用の電気信号として160kHzの交流電流を用いて検査対象部品51のインピーダンスを測定するとの測定内容R−AC160kの5つの測定内容が含まれているものとする。
続いて、制御部5は、回路網50aに含まれる検査対象部品51の中の1つとして、抵抗Rを選択する(ステップ34)。次いで、制御部5は、不良状態の中の1つとして、「断線状態」を選択する(ステップ35)。続いて、制御部5は、上記したステップ33において特定した各測定内容の中の1つとして、測定内容R−CC(直流定電流を用いてインピーダンスを測定するとの測定内容)を選択する(ステップ36)。
次いで、制御部5は、測定内容R−CCにおいて、回路網50aに含まれる全ての検査対象部品51(抵抗RおよびコンデンサC)が良好状態のときに測定点P1,P2(図2参照)で測定されるべき被測定量としてのインピーダンスのシミュレーション値Bs1(図4参照)を、定数データDbに基づいてシミュレーションして求める(ステップ37)。
続いて、制御部5は、測定内容R−CCにおいて、抵抗Rが断線状態(図5に示す状態)のときに測定点P1,P2(同図参照)で測定されるべきインピーダンスのシミュレーション値Bs2(以下、シミュレーション値Bs1,Bs2を区別しないときには「シミュレーション値Bs」ともいう)を定数データDbに基づいてシミュレーションして求める(ステップ38)。
次いで、制御部5は、シミュレーション値Bs1とシミュレーション値Bs2との差の絶対値を示す差分値Bcを算出し、その差分値Bcが基準値Br(一例として、シミュレーション値Bs1の10%に相当する値)以上であるか否か(予め規定された条件を満たすか否か)を判定する判定処理を実行する(ステップ39)。
ここで、シミュレーション値Bs1とシミュレーション値Bs2とが明確に異なるときには、検査対象部品51の良否状態を検査する際に、測定点P1,P2における被測定量の測定値と、シミュレーション値Bs1,Bs2とを比較して、測定値に合致する(測定値に近い)シミュレーション値Bsを特定することができる。そして、測定値に合致するシミュレーション値Bsに対応する良否状態がその検査対象部品51の良否状態であるとの検査結果を得ることができる。このため、差分値Bcが基準値Br以上であるとき、つまり、シミュレーション値Bs1とシミュレーション値Bs2とが明確に異なるときには、その測定内容を検査対象部品51の検査に適した適正測定内容とすることができ、適正測定内容における各シミュレーション値Bsをその検査対象部品51を検査する際のシミュレーション値Bsとして採用することができる。
この場合、図4に示すように、測定内容R−CCにおけるシミュレーション値Bs1(1kΩ)とシミュレーション値Bs2(999GΩ)との差分値Bc(≒999GΩ)が基準値Br(シミュレーション値Bs1の10%に相当する値(100Ω))以上のときには、制御部5は、判定処理(上記したステップ39)において差分値Bcが基準値Br以上であると判定して、そのとき(判定したとき)に選択している測定内容R−CCを、抵抗Rが断線状態であるか否かの検査を行う際の適正測定内容として設定する(ステップ40)。
続いて、制御部5は、抵抗Rについて他の種類の不良状態が存在(規定されている)か否かを判別する(ステップ41)。この場合、制御部5は、他の不良状態(「短絡状態」)が存在すると判別して、上記したステップ35を実行し、このステップ35において「短絡状態」を選択する。次いで、制御部5は、上記したステップ36〜39を実行する。
この場合、制御部5は、ステップ36において、測定内容R−CCを選択する。また、制御部5は、ステップ38を実行する際に、測定内容R−CCにおいて、抵抗Rが短絡状態(図6に示す状態)のときのインピーダンスのシミュレーション値Bs2を求める。
また、制御部5は、ステップ39を実行する際に、図4に示すように、測定内容R−CCにおけるシミュレーション値Bs1(1kΩ)と短絡状態の抵抗Rのシミュレーション値Bs2(0Ω)との差分値Bc(1kΩ)が基準値Br(100Ω)以上のときには、差分値Bcが基準値Br以上であると判定して、測定内容R−CCを、抵抗Rが短絡状態であるか否かの検査を行う際の適正測定内容として設定する(ステップ40)。
続いて、制御部5は、上記したステップ41を実行する。この際に、抵抗Rについて他の種類の不良状態が存在しないため、次いで、制御部5は、他の検査対象部品51が存在するか否かを判別する(ステップ42)。
この場合、制御部5は、他の検査対象部品51(コンデンサC)が存在すると判別して、上記したステップ34を実行し、このステップ34において、コンデンサCを選択し、続いて、上記したステップ35〜39を実行する。
この場合、制御部5は、ステップ35において、不良状態の中の1つとして、「断線状態」を選択し、ステップ36において、測定内容R−CCを選択する。また、制御部5は、ステップ38を実行する際に、測定内容R−CCにおいて、コンデンサCが断線状態(図7に示す状態)のときのインピーダンスのシミュレーション値Bs2を求める。
また、制御部5は、ステップ39を実行する際に、図4に示すように、測定内容R−CCにおけるシミュレーション値Bs1(1kΩ)とコンデンサCが断線しているときのシミュレーション値Bs2(1kΩ)との差分値Bc(0Ω)が基準値Br(100Ω)未満のときには、差分値Bcが基準値Br以上ではないと判定する。この際には、制御部5は、測定内容R−CCを、コンデンサCが断線状態であるか否かの検査を行う際の適正測定内容として設定することなく、上記したステップ36を実行して、他の測定内容としての測定内容R−CV(直流定電圧を用いてインピーダンスを測定するとの測定内容)を選択する(測定内容を変更する)。
次いで、制御部5は、上記したステップ37〜39を実行する。この場合、制御部5は、ステップ38を実行する際に、測定内容R−CVにおいて、コンデンサCが断線状態(図7に示す状態)のときのインピーダンスのシミュレーション値Bs2を求める。
また、制御部5は、ステップ39を実行する際に、図4に示すように、測定内容R−CVにおけるシミュレーション値Bs1(1kΩ)とコンデンサCが断線しているときのシミュレーション値Bs2(1kΩ)との差分値Bc(0Ω)が基準値Br(100Ω)未満のときには、差分値Bcが基準値Br以上ではないと判定する。この際には、制御部5は、測定内容R−CVを、コンデンサCが断線状態であるか否かの検査を行う際の適正測定内容として設定することなく、上記したステップ36を実行して、他の測定内容としての測定内容R−AC160(160Hzの交流電流を用いてインピーダンスを測定するとの測定内容)を選択する。
続いて、制御部5は、上記したステップ37〜39を実行する。この場合、制御部5は、ステップ38を実行する際に、測定内容R−AC160において、コンデンサCが断線状態(図7に示す状態)のときのインピーダンスのシミュレーション値Bs2を求める。
また、制御部5は、ステップ39を実行する際に、図4に示すように、測定内容R−AC160におけるシミュレーション値Bs1(0.95kΩ)とコンデンサCが断線しているときのシミュレーション値Bs2(1kΩ)との差分値Bc(50Ω)が基準値Br(95Ω)未満のときには、差分値Bcが基準値Br以上ではないと判定する。この際には、制御部5は、測定内容R−AC160を、コンデンサCが断線状態であるか否かの検査を行う際の適正測定内容として設定することなく、上記したステップ36を実行して、他の測定内容としての測定内容R−AC16k(16kHzの交流電流を用いてインピーダンスを測定するとの測定内容)を選択する。
次いで、制御部5は、上記したステップ37〜39を実行する。この場合、制御部5は、ステップ38を実行する際に、測定内容R−AC16kにおいて、コンデンサCが断線状態(図7に示す状態)のときのインピーダンスのシミュレーション値Bs2を求める。
また、制御部5は、ステップ39を実行する際に、図4に示すように、測定内容R−AC16kにおけるシミュレーション値Bs1(0.95kΩ)とコンデンサCが断線しているときのシミュレーション値Bs2(0.5kΩ)との差分値Bc(450Ω)が基準値Br(95Ω)以上のときには、差分値Bcが基準値Br以上であると判定して、測定内容R−AC16kを、コンデンサC断線状態であるか否かの検査を行う際の適正測定内容として設定する(ステップ40)。
続いて、制御部5は、上記したステップ41を実行する。この際に、コンデンサCについて他の種類の不良状態として「短絡状態」が存在するため、次いで、制御部5は、上記したステップ35を実行し、このステップ35において「短絡状態」を選択する。続いて、制御部5は、上記したステップ36〜39を実行する。
この場合、制御部5は、ステップ36において、測定内容R−CCを選択する。また、制御部5は、ステップ38を実行する際に、測定内容R−CCにおいて、コンデンサCが短絡状態(図8に示す状態)のときのインピーダンスのシミュレーション値Bs2を求める。
また、制御部5は、ステップ39を実行する際に、図4に示すように、測定内容R−CCにおけるシミュレーション値Bs1(1kΩ)とコンデンサCが短絡しているときのシミュレーション値Bs2(0Ω)との差分値Bc(1kΩ)が基準値Br(100Ω)以上のときには、差分値Bcが基準値Br以上であると判定して、測定内容R−CCを、コンデンサCが短絡状態であるか否かの検査を行う際の適正測定内容として設定する(ステップ40)。
次いで、制御部5は、上記したステップ41を実行する。この際に、コンデンサCについて他の種類の不良状態が存在しないため、続いて、制御部5は、上記したステップ42を実行する。この際に、他の検査対象部品51が存在しないため、制御部5は、シミュレーションデータDdを生成する(ステップ43)。この場合、制御部5は、上記した各処理において設定した情報、つまり、検査対象部品51毎および短絡状態の種類毎の適正測定内容を示す情報と、各適正測定内容におけるシミュレーション値Bs1,Bs2(シミュレーション値Bs1,Bs2の少なくとも一方の一例)を示す情報とを対応付けてシミュレーションデータDdに含ませる。次いで、制御部5は、生成したシミュレーションデータDdを記憶部4に記憶させてデータ生成処理30を終了する。
ここで、このデータ生成装置1Aおよび第1のデータ生成方法では、上記したように、データ生成処理30において、各測定内容の中の1つを選択して検査対象部品51が良好状態のときのその測定内容におけるシミュレーション値Bs1と検査対象部品51が不良状態のときのその測定内容におけるシミュレーション値Bs2との差分値Bcが基準値Br以上との条件を満たすか否かを判定する判定処理を、その条件を満たすと判定するまで測定内容を変更しつつ繰り返して実行し、条件を満たすと判定したときに選択している測定内容を適正測定内容として設定する。このため、このデータ生成装置1Aおよび第1のデータ生成方法では、適正測定内容を設定した後においては、判定処理の対象としていない測定内容におけるシミュレーション値Bs1,Bs2の算出や判定処理を省略することができる結果、その分、シミュレーションデータの生成処理の効率を十分に向上させることが可能となっている。
次に、生成したシミュレーションデータDdの使用方法について説明する。一例として、図2に示す回路基板100内における回路網50aの検査対象部品51(抵抗RおよびコンデンサC)を検査装置を用いて検査する際のシミュレーションデータDdの使用方法について説明する。
まず、検査装置の記憶部にシミュレーションデータDdを記憶させ、次いで、検査装置に対して検査の開始を指示する。これに応じて、検査装置が、シミュレーションデータDdを読み出し、続いて、検査処理を実行する。この検査処理では、まず回路網50aの各検査対象部品51の中の1つとして、例えば抵抗Rを選択し、抵抗Rが不良状態としての断線状態であるか否かの検査を行う。この際には、シミュレーションデータDdに基づき、抵抗Rが断線状態であるか否かの検査を行う際の適正測定内容としての測定内容R−CCを特定すると共に、測定内容R−CCにおける抵抗Rが良好状態であるときのシミュレーション値Bs1、および測定内容R−CCにおける抵抗Rが断線状態であるときのシミュレーション値Bs2を特定する。
次いで、回路網50a内に設定された測定点P1,P2(図2参照)に接触させた検査用プローブを介して、測定内容R−CCに含まれる測定条件に規定されている測定用の電気信号として直流定電流を出力する。続いて、検査装置は、検査用プローブを介して入力した電気信号に基づき、測定内容R−CCに含まれる被測定量としてのインピーダンスを測定する。
次いで、検査装置は、測定したインピーダンスの測定値と、シミュレーションデータDdによって示されるシミュレーション値Bsとを比較して、測定値に合致するシミュレーション値Bsを特定する。続いて、検査装置は、合致したシミュレーション値Bsに対応する良否状態を特定する。次いで、検査装置は、特定した良否状態を検査結果とする。
この場合、測定値が、良好状態のシミュレーション値Bs1に合致するとき(例えば、測定値がシミュレーション値Bs1の99%の値から101%の値までの範囲内のとき)には、抵抗Rが良好との検査結果を得ることができる。また、測定値が、断線状態のシミュレーション値Bs2に合致するとき(例えば、測定値がシミュレーション値Bs2の99%の値から101%の値までの範囲内のとき)には、抵抗Rが断線状態であるとの検査結果を得ることができる。
また、抵抗Rが不良状態としての短絡状態であるか否かの検査を行う際には、シミュレーションデータDdに基づき、抵抗Rが短絡状態であるか否かの検査を行う際の適正測定内容としての測定内容R−CCを特定すると共に、シミュレーション値Bs1、および測定内容R−CCにおける抵抗Rが短絡状態であるときのシミュレーション値Bs2を特定する。以下、上記した各処理を実行することにより、抵抗Rが短絡状態であるか否かの検査結果を得ることができる。
また、コンデンサCが不良状態としての断線状態であるか否かの検査、およびコンデンサCが不良状態としての短絡状態であるか否かの検査を行う際にも、シミュレーションデータDdに基づき、対応する適正測定内容を特定して、上記した各処理を実行することにより、コンデンサCが断線状態であるか否か、およびコンデンサCが短絡状態であるか否かの検査結果を得ることができる。
このように、このデータ生成装置1Aおよび第1のデータ生成方法では、データ生成処理30において、検査対象部品51が良好状態のときのシミュレーション値Bs1と検査対象部品51が不良状態のときのシミュレーション値Bs2との差分値Bcが基準値Br以上との条件を満たすときの測定内容をその検査対象部品51の検査に適した適正測定内容として設定する。このため、このデータ生成装置1Aおよび第1のデータ生成方法によれば、検査対象部品51に適した測定条件でシミュレーションして求めたシミュレーション値Bsを含むシミュレーションデータDd、つまり検査対象部品51の検査を十分正確に行うことが可能なシミュレーションデータDdを生成することができる。
また、このデータ生成装置1Aおよび第1のデータ生成方法では、データ生成処理30において、各測定内容の中の1つを選択して、その測定内容におけるシミュレーション値Bs1とシミュレーション値Bs2との差分値Bcが基準値Br以上との条件を満たすか否かを判定する判定処理を、その条件を満たすと判定するまで測定内容を変更しつつ繰り返して実行し、条件を満たすと判定したときに選択しているその測定内容を適正測定内容として設定して、設定以後の判定処理を停止する。このため、このデータ生成装置1Aおよび第1のデータ生成方法では、適正測定内容を設定した後においては、判定処理の対象としていない測定内容におけるシミュレーション値Bs1,Bs2の算出や判定処理を省略することができる。したがって、このデータ生成装置1Aおよび第1のデータ生成方法によれば、シミュレーション値Bs1,Bs2の算出や判定処理を省略できる分、シミュレーションデータDdの生成処理の効率を十分に向上させることができる。
また、このデータ生成装置1Aおよび第1のデータ生成方法によれば、データ生成処理30において、検査対象部品51に短絡が生じている状態を不良状態とするシミュレーション値Bs2を示す情報を含むシミュレーションデータDdを生成することにより、例えば、数多くの検査対象部品51が含まれる回路網50aにおける各検査対象部品51を高速で検査するために、発生頻度が高い短絡状態の有無に絞って各検査対象部品51の検査を行う際に用いるシミュレーションデータDdを効率的に生成することができる。
また、このデータ生成装置1Aおよび第1のデータ生成方法によれば、データ生成処理30において、検査対象部品51に断線が生じている状態を不良状態とするシミュレーション値Bs2を示す情報を含むシミュレーションデータDdを生成することにより、例えば、数多くの検査対象部品51が含まれる回路網50aにおける各検査対象部品51を高速で検査するために、発生頻度が高い断線状態の有無に絞って各検査対象部品51の検査を行う際に用いるシミュレーションデータDdを効率的に生成することができる。
なお、抵抗RおよびコンデンサCの2つの検査対象部品51だけを含む回路網50aを対象としてシミュレーションデータDdを生成する例について上記したが、1つの検査対象部品51だけを含む回路網50aや、3つ以上の検査対象部品51を含む回路網50aを対象としてシミュレーションデータDdを生成することができ、この際にも上記した効果を実現することができる。また、インダクタやダイオード等の、抵抗RおよびコンデンサC以外の検査対象部品51を含む回路網50aを対象としてシミュレーションデータDdを生成することもでき、この際にも上記した効果を実現することができる。
また、断線状態および短絡状態を不良状態としてシミュレーションデータDdを生成する例について上記したが、検査対象部品51の定数が規定値と異なる状態(定数違いの状態)を不良状態としてシミュレーションデータDdを生成することもできる。
また、被測定量としてのインピーダンスのシミュレーション値Bsを示すシミュレーションデータDdを生成する例について上記したが、インピーダンス以外の被測定量(例えば、電圧、電流、静電容量およびインダクタンス等の物理量)のシミュレーション値Bsを示すシミュレーションデータDdを生成することができる。
また、シミュレーション値Bs1,Bs2の差分値Bcを差異として判定処理を実行する例について上記したが、シミュレーション値Bs1,Bs2の比率(シミュレーション値Bs1に対するシミュレーション値Bs2の比率、またはその逆数)を差異として判定処理を実行する構成および方法を採用することができる。この場合、例えば、この比率が予め決められた基準率以上(または、基準率以下)のときを予め規定された条件を満たしたときとすることができる。
また、シミュレーション値Bs1を示す情報およびシミュレーション値Bs2を示す情報の双方を含むシミュレーションデータDdを生成する例について上記したが、シミュレーション値Bs1を示す情報およびシミュレーション値Bs2を示す情報のいずれか一方だけを含むシミュレーションデータDdを生成する構成および方法を採用することもできる。この場合、例えば、シミュレーション値Bs1を示す情報だけを含むシミュレーションデータDdを用いる検査では、検査対象部品51が良好状態であるか否かを特定することができ、シミュレーション値Bs2を示す情報だけを含むシミュレーションデータDdを用いる検査では、検査対象部品51が不良状態であるか否かを特定することができる。一方、シミュレーション値Bs1を示す情報およびシミュレーション値Bs2を示す情報の双方を含む上記のシミュレーションデータDdを用いる検査では、上記した例のように、複数種類の不良状態が存在するときに、不良状態の種類毎のシミュレーション値Bs2を示す情報をシミュレーションデータDdに含ませることで、検査対象部品51が良好状態であるか否かを特定することができると共に、検査対象部品51が不良状態のときに、その不良の種類を直ちに特定することができる。
次に、第2の実施例としてのデータ生成装置1B(図1参照)の構成について説明する。なお、以下の説明において、上記したデータ生成装置1Aと同じ構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略すると共に、上記した第1のデータ生成方法と同じ内容については、重複する説明を省略する。
図1に示すデータ生成装置1Bは、後述する第2のデータ生成方法に従い、例えば、図9,12に示すように、回路基板100内において検査対象部品51(電子部品)を含んで構成される回路網50b,50c(以下、区別しないときには「回路網50」ともいう)の各検査対象部品51を検査する際に用いるデータを生成可能に構成されている。具体的には、データ生成装置1Bは、図1に示すように、操作部2、表示部3、記憶部4および制御部5を備えて構成されて、回路網50における検査対象部品51の良否状態を検査する際に回路網50内に設定された測定点(図外の検査用プローブを接触させる部位であって、例えば、図9,12に示す測定点P3〜P6)において測定されるべき被測定量のシミュレーション値を示すシミュレーションデータDdを生成する。
記憶部4は、制御部5によって実行されるデータ生成処理60(図10参照)において用いられる回路網データDa、定数データDbおよび測定内容データDcを記憶する。また、記憶部4は、データ生成処理60において算出される後述するシミュレーション値Bs1,Bs2、およびデータ生成処理60において生成されるシミュレーションデータDdを記憶する。
この場合、回路網データDaは、検査用プローブを接触させて被測定量を測定するための回路網50内の測定点(図9,12に示す測定点P3〜P6)、および各測定点間に位置する検査対象部品51を特定可能なデータであって、回路基板100に形成される配線パターン、ランドおよびレジスト(いずれも図示を省略する)の形状や形成位置、並びに回路基板100に実装される検査対象部品51の形状や実装位置を示す各種のデータ(CADデータ、ガーバデータおよびマウントデータ)を含んでいる。
また、定数データDbは、検査対象部品51毎に規定されている定数(抵抗値や容量値)を特定可能な情報を含んでいる。また、測定内容データDcは、シミュレーションデータDdを用いて回路網50の検査対象部品51に対する検査を行う図外の検査装置が、検査の際に測定する被測定量の種類(電流、電圧、抵抗、インピーダンス、静電容量およびインダクタンス等)、被測定量を測定する際に出力する測定用信号の種類、並びに測定用信号のパラメータ値(電圧値、電流値および周波数等)の変更範囲(パラメータ値を変更して出力することが可能な範囲)を含む測定内容を示す情報を含んでいる。
制御部5は、操作部2から出力される操作信号に従ってデータ生成装置1Bを構成する各部を制御する。また、制御部5は、データ生成部として機能し、図10に示すデータ生成処理60を実行することにより、シミュレーションデータDdを生成する。この場合、シミュレーションデータDdには、検査装置が被測定量を測定する際に出力する測定用信号のパラメータ値を予め決められた変更範囲内で変更可能となっている場合において、その変更範囲内における検査対象部品51に適したパラメータ値であることを意味する適正パラメータ値Ppを含む適正測定内容を示す情報や、適正パラメータ値Ppで測定用信号を出力した状態における検査対象部品51が良好状態のときのシミュレーション値Bs1(第1シミュレーション値)、および検査対象部品51が不良状態のときのシミュレーション値Bs2(第2シミュレーション値:以下、シミュレーション値Bs1,Bs2を区別しないときには、「シミュレーション値Bs」ともいう)を示す情報が含まれている。
次に、データ生成装置1Bを用いて第2のデータ生成方法に従ってシミュレーションデータDdを生成する手順、およびその際のデータ生成装置1Bの動作について、図面を参照して説明する。
まず、回路基板100(図9参照)についての回路網データDa、定数データDbおよび測定内容データDcを記憶部4に記憶させる。次いで、操作部2を操作して、生成処理の実行を指示する。これに応じて、制御部5が、図10に示すデータ生成処理60を実行する。
このデータ生成処理60では、制御部5は、回路網データDa、定数データDbおよび測定内容データDcを記憶部4から読み出す(ステップ61)。続いて、制御部5は、読み出した回路網データDaに含まれているCADデータ、ガーバデータおよびマウントデータに基づき、回路基板100内において検査対象部品51を含んで構成される(検査対象部品51が配線パターン等によって接続された)回路網を特定する(ステップ62)。この場合、制御部5は、一例として、図9に示すように、検査対象部品51としてのパッケージ型のバンドパスフィルタBPFを含んで構成されて、他の回路網とは分離して存在する回路網50bを特定したものとする。
次いで、制御部5は、測定内容データDcに含まれている測定内容を特定する(ステップ63)。この場合、測定内容データDcには、一例として、パラメータ値としての周波数frが10Hz〜10MHの範囲(以下「変更範囲Pr1」ともいう)で変更可能な交流電圧(電圧が10V程度)を測定用信号として出力して、被測定量としての電圧を測定するとの測定内容(以下、「測定内容M1」ともいう)を示す情報が含まれているものとする。
続いて、制御部5は、シミュレーション値Bs1(第1シミュレーション値)を算出する第1算出処理を実行する(ステップ64)。この第1算出処理では、制御部5は、測定用信号としての交流電圧の周波数frを変更範囲Pr1の下限値である10Hzに設定する。次いで、制御部5は、この交流電圧を出力した状態において検査対象部品51としてのバンドパスフィルタBPFが良好状態のときに測定点P3,P4で測定されるべき被測定量としての電圧のシミュレーション値Bs1をシミュレーションして算出する。
続いて、制御部5は、交流電圧の周波数frを予め決められた第1増加量ずつ増加させ、増加毎にシミュレーション値Bs1を算出する処理を周波数frが変更範囲Pr1の上限値である10MHに達するまで実行する。また、制御部5は、算出した各シミュレーション値Bs1を、そのときの周波数frと共に(これらを示す各情報を対応付けて)記憶部4に記憶させる。
続いて、制御部5は、シミュレーション値Bs2(第2シミュレーション値)を算出する第2算出処理を実行する(ステップ65)。この第2算出処理では、制御部5は、交流電圧を出力した状態において検査対象部品51としてのバンドパスフィルタBPFが不良状態のときに測定点P3,P4で測定されるべき被測定量としての電圧のシミュレーション値Bs2をシミュレーションして算出する処理を、上記した第1算出処理と同様にして、交流電圧の周波数frを変更範囲Pr1の下限値から上限値まで第1増加量ずつ増加させる毎に実行する。また、制御部5は、算出した各シミュレーション値Bs2を、そのときの周波数frと共に(これらを示す各情報を対応付けて)記憶部4に記憶させる。
次いで、制御部5は、検索処理を実行する(ステップ66)。この検索処理では、制御部5は、上記した第1算出処理および第2算出処理(ステップ64,65)で算出した各シミュレーション値Bs1,Bs2を記憶部4から読み出す。続いて、制御部5は、同じ周波数frにおけるシミュレーション値Bs1,Bs2同士を比較してその差異として、図11に示すように、差分値の絶対値(以下、「差分値Bc」ともいう)が最大となる(予め規定された条件を満たす)シミュレーション値Bs1,Bs2を特定する。
次いで、制御部5は、図11に示すように、特定したシミュレーション値Bs1,Bs2に対応する(シミュレーション値Bs1,Bs2を算出したときに設定した)交流電圧の周波数fr(測定用信号のパラメータ値)を適正パラメータ値Ppとして設定する(ステップ67)。
ここで、シミュレーション値Bs1とシミュレーション値Bs2とが明確に異なるときには、検査対象部品51の良否状態を検査する際に、測定点P3,P4における被測定量の測定値と、シミュレーション値Bs1,Bs2とを比較して、測定値に合致する(測定値に近い)シミュレーション値Bsを特定することができる。そして、測定値に合致するシミュレーション値Bsに対応する良否状態がその検査対象部品51の良否状態であるとの検査結果を得ることができる。つまり、シミュレーション値Bs1,Bs2の差分値Bcが大きいほど、検査対象部品51の良否を正確に検査することができる。このため、このデータ生成装置1Bでは、制御部5が、差分値Bcが最大となるシミュレーション値Bs1,Bs2に対応する交流電圧の周波数fr(パラメータ値)を検査対象部品51の検査に適した適正パラメータ値Ppとして設定する。
続いて、制御部5は、シミュレーションデータDdを生成する(ステップ68)。この場合、制御部5は、上記した各処理において設定した情報、つまり、適正パラメータ値Ppを含む適正測定内容を示す情報と、パラメータ値(周波数fr)を適正パラメータ値Ppに規定した交流電圧を出力した状態でシミュレーションしたシミュレーション値Bs1,Bs2(シミュレーション値Bs1,Bs2の少なくとも一方の一例)を示す情報とを対応付けてシミュレーションデータDdに含ませる。また、制御部5は、測定内容M1を示す情報をシミュレーションデータDdに含ませる。次いで、制御部5は、生成したシミュレーションデータDdを記憶部4に記憶させてデータ生成処理60を終了する。
次に、上記のデータ生成処理60を用いて、図9に示す回路基板100における回路網50bのバンドパスフィルタBPF(検査対象部品51)を検査する方法ついて説明する。
まず、検査装置の記憶部にシミュレーションデータDdを記憶させ、続いて、検査装置に対して検査の開始を指示する。これに応じて、検査装置が、シミュレーションデータDdを読み出し、次いで、検査処理を実行する。この検査処理では、検査装置がシミュレーションデータDdに基づき、バンドパスフィルタBPFについての測定内容M1を特定すると共に、バンドパスフィルタBPFが良好状態であるときのシミュレーション値Bs1、およびバンドパスフィルタBPFが不良状態であるときのシミュレーション値Bs2を特定する。また、シミュレーションデータDdに基づき、適正パラメータ値Ppを特定する。
続いて、検査装置は、回路網50b内に設定された測定点P3,P4(図9参照)に接触させた検査用プローブを介して測定用信号として交流電圧を出力する。この場合、交流電圧の周波数frを適正パラメータ値Ppに規定する。次いで、検査装置は、検査用プローブを介して入力した電気信号に基づき、被測定量としての電圧を測定する。
続いて、検査装置は、測定した電圧の測定値と、シミュレーション値Bsとを比較して、測定値に合致するシミュレーション値Bsを特定する。次いで、検査装置は、合致したシミュレーション値Bsに対応する良否状態を特定する。続いて、検査装置は、特定した良否状態を検査結果とする。
この場合、測定値が、良好状態のシミュレーション値Bs1に合致するとき(例えば、測定値がシミュレーション値Bs1の99%の値から101%の値までの範囲内のとき)には、バンドパスフィルタBPFが良好との検査結果を得ることができる。また、測定値が、不良状態のシミュレーション値Bs2に合致するとき(例えば、測定値がシミュレーション値Bs2の99%の値から101%の値までの範囲内のとき)には、バンドパスフィルタBPFが不良状態であるとの検査結果を得ることができる。
ここで、上記したように、差分値Bcが最大となるシミュレーション値Bs1,Bs2に対応する測定用信号の周波数frを検査対象部品51の検査に適した適正パラメータ値Ppとして設定し、その適正パラメータ値Ppを含む適正測定内容を示す情報がシミュレーションデータDdに含まれている。このため、このシミュレーションデータDdでは、シミュレーション値Bs1とシミュレーション値Bs2とが明確に異なるため、検査対象部品51の良否状態を検査する際に、検査対象部品51が良好状態であるか不良状態であるかを正確に検査することが可能となっている。
次に、第3の実施例について説明する。なお、上記した構成および方法と同様の構成および方法については、重複する説明を省略する。例えば、上記したデータ生成処理60のステップ62において、制御部5が、図12に示すように、検査対象部品51としてのダイオードDを含んで構成されて、他の回路網とは分離して存在する回路網50cを特定したものとする。また、測定内容データDcには、電圧値Vrが1V〜10Vの範囲(以下、「変更範囲Pr2」ともいう)で変更可能な直流電圧を測定用信号として出力して被測定量としての電流を測定するとの測定内容(以下、「測定内容M2」ともいう)を示す情報が含まれているものとする。
この際には、制御部5は、データ生成処理60のステップ63において測定内容M2を特定し、次いで、第1算出処理を実行する(ステップ64)。この場合、制御部5は、第1算出処理において、測定用信号としての直流電圧の電圧値Vrを変更範囲Pr2の下限値である1Vに設定する。続いて、制御部5は、この直流電圧を出力した状態において検査対象部品51としてのダイオードDが良好状態のときに測定点P5,P6(図12参照)で測定されるべき被測定量としての電流のシミュレーション値Bs1をシミュレーションして算出する。
次いで、制御部5は、直流電圧の電圧値Vrを予め決められた第2増加量ずつ増加させ、増加毎にシミュレーション値Bs1を算出する処理を電圧値Vrが変更範囲Pr2の上限値である10Vに達するまで実行する。また、制御部5は、算出した各シミュレーション値Bs1を、そのときの電圧値Vrと共に(これらを示す各情報を対応付けて)記憶部4に記憶させる。
続いて、制御部5は、第2算出処理を実行する(ステップ65)。この場合、制御部5は、第2算出処理において、第1算出処理と同様にして、電圧値Vrを変更範囲Pr2の下限値から上限値まで第2増加量ずつ増加させ、増加毎にシミュレーション値Bs2を算出する。また、制御部5は、算出した各シミュレーション値Bs2を、そのときの電圧値Vrと共に(これらを示す各情報を対応付けて)記憶部4に記憶させる。
次いで、制御部5は、検索処理を実行する(ステップ66)。この場合、制御部5は、算出した各シミュレーション値Bs1,Bs2を記憶部4から読み出し、同じ電圧値Vrにおけるシミュレーション値Bs1,Bs2同士を比較して、図13に示すように、差分値Bc(差異)が最大となる(予め規定された条件を満たす)シミュレーション値Bs1,Bs2を特定する。
続いて、制御部5は、図13に示すように、特定したシミュレーション値Bs1,Bs2に対応する直流電圧の電圧値Vr(測定用信号のパラメータ値)を適正パラメータ値Ppとして設定する(ステップ67)。次いで、制御部5は、適正パラメータ値Ppを含む適正測定内容を示す情報とシミュレーション値Bs1,Bs2を示す情報とを対応付けて含ませると共に、測定内容M2を示す情報を含ませたシミュレーションデータDdを生成する(ステップ68)。続いて、制御部5は、生成したシミュレーションデータDdを記憶部4に記憶させてデータ生成処理60を終了する。
上記のシミュレーションデータDdを用いて、図12に示す回路基板100における回路網50cのダイオードD(検査対象部品51)を検査する際には、検査装置の記憶部にシミュレーションデータDdを記憶させ、次いで、検査装置に対して検査の開始を指示する。これに応じて、検査装置が、上記した回路網50bのバンドパスフィルタBPFを検査する際に実行した処理と同様の処理を実行する。この場合、検査装置は、回路網50c内に設定された測定点P5,P6(図12参照)に接触させた検査用プローブを介して、シミュレーションデータDdに基づいて特定した電圧値Vrに規定した直流電圧を出力し、その状態で、検査装置は、検査用プローブを介して入力した電気信号に基づき、測定内容M2に示される被測定量としての電流を測定する。
続いて、検査装置は、測定した電流の測定値と、シミュレーションデータDdによって示されるシミュレーション値Bsとを比較して、測定値に合致するシミュレーション値Bsを特定する。次いで、検査装置は、合致したシミュレーション値Bsに対応する良否状態を特定する。続いて、検査装置は、特定した良否状態を検査結果とする。この場合においても、差分値Bcが最大となるシミュレーション値Bs1,Bs2に対応する直流電圧の電圧値Vrを検査対象部品51の検査に適した適正パラメータ値Ppを含む測定内容を適正測定内容として設定しているため、シミュレーションデータDdに含まれるシミュレーション値Bs1とシミュレーション値Bs2とが明確に異なっている。したがって、この場合においても、このシミュレーションデータDdを用いることで、検査対象部品51の良否状態を検査する際に、検査対象部品51が良好状態であるか不良状態であるかを正確に検査することが可能となっている。
このように、このデータ生成装置1Bおよび第2のデータ生成方法では、データ生成処理60において、測定用信号のパラメータ値(周波数frおよび電圧値Vr)を変更させつつ求めたシミュレーション値Bs1,Bs2の差分値Bcが予め規定された条件を満たす(一例として差分値Bcが最大となる)パラメータ値(適正パラメータ値Pp)を含む測定内容を適正測定内容として設定する。このため、このデータ生成装置1Bおよび第2のデータ生成方法で生成されたシミュレーションデータDdでは、シミュレーション値Bs1とシミュレーション値Bs2とが明確に異なっているため、このシミュレーションデータDdを用いることで、検査対象部品51の良否状態を検査する際に、検査対象部品51が良好状態であるか不良状態であるかを正確に検査することができる。したがって、このデータ生成装置1Bおよび第2のデータ生成方法によれば、シミュレーション値Bs1,Bs2の差異が小さいことがある従来のデータ生成装置およびデータ生成方法と比較して、検査対象部品51の良否を正確に検査可能なシミュレーションデータDdを生成することができる。
また、このデータ生成装置1Bおよび第2のデータ生成方法では、予め規定された条件を満たすパラメータ値として、パラメータ値が変更範囲内であってかつシミュレーション値Bs1,Bs2の差異(差分値Bc)が最大となるパラメータ値(適正パラメータ値Pp)を含む測定内容を適正測定内容として設定する。このため、このデータ生成装置1Bおよび第2のデータ生成方法によれば、シミュレーションデータDdに含ませるシミュレーション値Bs1とシミュレーション値Bs2とを最も明確に異ならせることができるため、検査対象部品51の良否をより正確に検査可能なシミュレーションデータDdを生成することができる。
なお、1種類の測定用信号について1種類のパラメータ値だけを適正パラメータ値Ppとして設定する例について上記したが、1種類の測定用信号について複数のパラメータ値をそれぞれ適正パラメータ値Ppとして設定する構成および方法を採用することができる。具体的には、例えば、検査装置が測定用信号としての交流電圧の周波数および電圧値の2つのパラメータ値を変更可能なときには、検査対象部品51の検査に適した周波数および電圧値の双方を特定して、その周波数および電圧値の双方をそれぞれ適正パラメータ値Ppとして設定することができる。
また、1つの検査対象部品51(バンドパスフィルタBPFまたはダイオードD)だけを含む回路網50を対象としてシミュレーションデータDdを生成する例について上記したが、2つ以上の検査対象部品51を含む回路網50を対象としてシミュレーションデータDdを生成することができ、この際にも上記した効果を実現することができる。また、抵抗やインダクタ等の、バンドパスフィルタBPFおよびダイオードD以外の検査対象部品51を含む回路網50を対象としてシミュレーションデータDdを生成することもでき、この際にも上記した効果を実現することができる。
また、被測定量としての電圧および電流のシミュレーション値を示すシミュレーションデータDdを生成する例について上記したが、電圧および電流以外の被測定量(例えば、抵抗、インピーダンス、静電容量およびインダクタンス等の物理量)のシミュレーション値を示すシミュレーションデータDdを生成することができる。
また、差分値Bcが最大となる(予め決められた条件を満たした)パラメータ値を適正パラメータ値Ppとして設定する例について上記したが、差分値Bcが予め決められた値以上のパラメータ値や予め決められた比率以上のパラメータ値を適正パラメータ値Ppとして設定する構成および方法を採用することもできる。
また、シミュレーション値Bs1,Bs2の差分値Bcを差異として検索処理を実行する例について上記したが、シミュレーション値Bs1,Bs2の比率(シミュレーション値Bs1に対するシミュレーション値Bs2の比率、またはその逆数)を差異として検索処理を実行する構成および方法を採用することができる。この場合、例えば、この比率が予め決められた基準率以上(または、基準率以下)のときを予め規定された条件を満たしたときとすることができる。
また、シミュレーション値Bs1を示す情報およびシミュレーション値Bs2を示す情報の双方を含むシミュレーションデータDdを生成する例について上記したが、シミュレーション値Bs1を示す情報およびシミュレーション値Bs2を示す情報のいずれか一方だけを含むシミュレーションデータDdを生成する構成および方法を採用することもできる。この場合、例えば、シミュレーション値Bs1を示す情報だけを含むシミュレーションデータDdを用いる検査では、検査対象部品51が良好状態であるか否かを特定することができ、シミュレーション値Bs2を示す情報だけを含むシミュレーションデータDdを用いる検査では、検査対象部品51が不良状態であるか否かを特定することができる。一方、シミュレーション値Bs1を示す情報およびシミュレーション値Bs2を示す情報の双方を含む上記のシミュレーションデータDdを用いる検査では、複数種類の不良状態(例えば、検査対象部品51が断線している状態や、検査対象部品51が短絡している状態)が存在するときに、不良状態の種類毎のシミュレーション値Bs2を示す情報をシミュレーションデータDdに含ませることで、検査対象部品51が良好状態であるか否かを特定することができると共に、検査対象部品51が不良状態のときに、その不良の種類を直ちに特定することができる。