JP6459372B2 - 既設杭基礎構造に用いる制震構造、及び既設杭基礎構造の補強方法 - Google Patents
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このような軟弱地盤からなる液状化地盤では、中大規模の地震時において、地盤の抵抗力が低減し、杭基礎が大きく変形して損傷するおそれがある。そのため、既設の杭基礎構造における耐震補強方法としては、例えば下記特許文献1に示されるように、タンクなどの構造物の下方に鋼矢板を円周状に液状化地盤に達するまで打設し、リング状の液状化防止工を形成し、リング状に囲われた内側の地盤を拘束して構造物直下の液状化を防止する液状化対策が一般的に知られている。
すなわち、前述のような高架水槽やタンクといった上部構造物では、その基礎フーチング(基礎コンクリート)が地盤中に埋設された配管を介して他の設備と連結されている。
一方で、上述した特許文献1のような矢板工法によって上部構造物の直下の地盤を囲う液状化対策の場合、リング状に配置される鋼矢板の内側の液状化地盤の液状化を抑制し、杭基礎の変形を抑える効果はあるものの、基礎フーチング自体の変形を小さく抑えるものではない。そのため、基礎フーチングと周囲地盤との間での変形が大きくなり、地盤中に埋設され基礎フーチング内に接続されている配管が例えば接続部分で切断されたり、変形によって損傷するおそれがあり、その点で改善の余地があった。
また、本発明に係る既設杭基礎構造の補強方法は、液状化層に杭基礎が設けられ、該杭基礎の上部に既設の上部構造物を支持する平面視円形の基礎フーチングが設けられ、前記基礎フーチング内に、地盤に埋設され上部構造物に接続される配管が連結されている既設杭基礎構造の補強方法であって、前記基礎フーチングから前記液状化層の下層に位置する支持層に向けて複数の地中アンカーを設置し、該地中アンカーは、一端が前記基礎フーチングに固定され、他端が前記支持層に定着され、前記地中アンカーの上端の固定位置が前記円形の基礎フーチングの外周部に定着され、前記複数の地中アンカーは、周方向に間隔をあけて3方向以上の放射状となるように設けられていることを特徴としている。
また、本発明では、基礎フーチングの変形が低減されるので、基礎フーチングと地盤とのずれを小さくすることができる。そのため、地盤と基礎フーチングを通じて配管が設置されている場合には、地盤と基礎フーチングとのずれによって配管に作用する力が抑えられるので、配管が損傷したり、切断したりすることを防ぐことができる。
さらに、地中アンカーを基礎フーチングの外周部の任意の位置に設けることができるので、その設置方向に自由度があり、上部構造物の周囲設備の配置状態やスペースに応じて適宜な位置(方向)に地中アンカーを配置することができる。そのため、地中アンカーの施工時において、地上の設備を移設するといった作業を行う必要がない利点がある。
高架水槽1が設けられている地盤Gは、表層G0の下層に液状化層G1が設けられ、その下層に支持層G2を有する地盤となっている。杭基礎2は、鋼管杭などの適宜な杭種の、ものが採用され、複数本が支持層G2に達するまで打設されている。
配管13は、高架水槽1と他の設備とを地盤Gを介して連続される送水管であって、基礎フーチング3の側面(外周部3a)から内部を通過して、高架水槽1側に向けて立ち上がり支持脚部11内に配管されて、水槽本体12の下面に接続されている。
地中アンカー4は、図3に示すように、一端(上端4a)が基礎フーチング3の外周部3aに第2定着部42によって定着され、その上端4aから側面視で略斜め45°下方に向かうにしたがい杭基礎2から外側に離れるように延び、所望の張力が付与された状態で下端4bが第1定着部41によって支持層G2に定着されている。
本実施の形態では、図1に示すように、基礎フーチング3が所定の張力が付与された複数の地中アンカー4によって支持層G2に支持されているので、その地中アンカー4の張力によって、地震時の変形に抵抗することができ、基礎フーチング3及び高架水槽1の地震時の変形を低減することが可能となる。そのため、杭基礎2の変形も小さくなるので、杭基礎2の損傷を抑制することができる。
さらに、地中アンカー4を基礎フーチング3の外周部3aの任意の位置に設けることができるので、その設置方向に自由度があり、高架水槽1の周囲設備の配置状態やスペースに応じて適宜な位置(方向)に地中アンカー4を配置することができる。そのため、地中アンカー4の施工時において、地上の設備を移設するといった作業を行う必要がない利点がある。
実施例は、上述した実施の形態の既設杭基礎構造に用いる制震構造の制震効果について、FEM解析結果から明らかにしたものである。
すなわち、2次元動的解析により、地中アンカーによる杭基礎構造の制震効果を確認した。上部構造物である高架水槽に入力した地震動は、三浦半島での地震(EW波:東西方向の波、NS波:南北方向の波)、及び南海トラフによる地震とした。具体的には、EW波として235gal、NS波として281gal、南海トラフとして415galの地震波を与えている。なお、地盤条件としては、ローム、砂質ローム、及び粘土質ロームからなる土質と対象とした。
なお、地中アンカー4の設定に際して、構造に作用する地震力を設定するために、1次元の地盤液状化解析(非液状化も含む)を実施し、その地表面での地震動より応答スペクトルを求め、高架水槽の固有周期に相当する応答加速度より静的地震力を設定する。図4(a)において、縮合した杭60の紙面左側には、非液状化時の杭の水平ばね62を示している。
適用する地中アンカー4は、PC鋼より線7本より線B種φ12.7mm(SWPR7B)、断面積Asが09.71mm2、ヤング係数Esが2.0×105N/mm2、降伏荷重が156kN(0.2%永久ひずみ)、引張荷重が183kN(3.5%伸び)のものを使用した。なお、アンカーが設けられる液状化層として沖積層(地表面から11mの深さまで)、支持層として洪積層を対象とした。基礎フーチングの定着部から支持層の定着部までのアンカーの長さLは、斜め45°の角度で配置され、かつ沖積層の地表面からの深さを11mの条件において、15.6mに設定した。また、アンカーのばね定数Kは、As×Es/Lの式より、1266kN/mとなる。
また、鋼管杭は、直径406.9mm、厚さ6.4mmのものを使用した。
そして、第1実施例と第3実施例では、変位の差がほとんど無いが、南海トラフの波において、第3実施例が第1実施例よりも僅かに変位が小さくなっているので、制震ダンパによる減衰効果があることが確認できる。
このように、本実施例の条件においては、地中アンカー4を多くすることで基礎フーチング3の変位を小さくする効果があることがわかった。
また、地中アンカー4の構成、すなわち材質、本数、方向、角度、定着構造などの構成は、制震対象となる上部構造物の形状、重量、大きさ、あるいは、周辺施設の状態、地盤などの条件に応じて適宜に設定すればよい。
そして、地中アンカー4の上端4aの固定位置として、基礎フーチング3の外周部3aとしているが、外周部3aを固定位置とすることに制限されるものではなく、他の位置でもよい。例えば、基礎フーチング3を厚さ方向に削孔し、地中アンカー4を挿通させた上端4aを基礎フーチング3の上面で固定するといった固定構造としてもよい。
2 杭基礎
3 基礎フーチング
4 地中アンカー
4a 上端
4b 下端
5 制震ダンパ
12 水槽本体
13 配管
41 第1定着部
42 第2定着部
G 地盤
G1 液状化層
G2 支持層
Claims (3)
- 液状化層に杭基礎が設けられ、該杭基礎の上部に既設の上部構造物を支持する平面視円形の基礎フーチングが設けられ、前記基礎フーチング内に、地盤に埋設され前記上部構造物に接続される配管が連結されている既設杭基礎構造に用いる制震構造であって、
前記基礎フーチングから前記液状化層の下層に位置する支持層に向けて複数の地中アンカーが設けられ、
該地中アンカーは、一端が前記基礎フーチングに固定され、他端が前記支持層に定着されており、
前記地中アンカーの上端の固定位置が前記円形の基礎フーチングの外周部に定着され、
前記複数の地中アンカーは、周方向に間隔をあけて3方向以上の放射状となるように設けられていることを特徴とする既設杭基礎構造に用いる制震構造。 - 前記地中アンカーには、制震ダンパが介在されていることを特徴とする請求項1に記載の既設杭基礎構造に用いる制震構造。
- 液状化層に杭基礎が設けられ、該杭基礎の上部に既設の上部構造物を支持する平面視円形の基礎フーチングが設けられ、前記基礎フーチング内に、地盤に埋設され上部構造物に接続される配管が連結されている既設杭基礎構造の補強方法であって、
前記基礎フーチングから前記液状化層の下層に位置する支持層に向けて複数の地中アンカーを設置し、
該地中アンカーは、一端が前記基礎フーチングに固定され、他端が前記支持層に定着され、
前記地中アンカーの上端の固定位置が前記円形の基礎フーチングの外周部に定着され、
前記複数の地中アンカーは、周方向に間隔をあけて3方向以上の放射状となるように設けられていることを特徴とする既設杭基礎構造の補強方法。
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